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特許7614917加熱調理器及び加熱調理器の扉の製造方法
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  • 特許-加熱調理器及び加熱調理器の扉の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】加熱調理器及び加熱調理器の扉の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/02 20060101AFI20250108BHJP
   F24C 7/02 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
F24C15/02 A
F24C7/02 521Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021067139
(22)【出願日】2021-04-12
(65)【公開番号】P2022162350
(43)【公開日】2022-10-24
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 和広
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-132573(JP,U)
【文献】特開2010-078308(JP,A)
【文献】特開2017-008152(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0234619(US,A1)
【文献】特開2020-090435(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033960(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/02
F24C 15/00
F24C 7/02
F24C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を加熱する加熱庫と、前記加熱庫の前面の開口を覆う扉とを有する加熱調理器であって、
前記扉は、枠体と、前記枠体の前面に設けられるドアガラスと、前記枠体の内部に設けられる液晶パネルとを備え、
前記ドアガラスは、第1透過率を有する第1領域と、前記第1透過率より低い第2透過率を有する第2領域とを備え、
前記液晶パネルは、前記第2領域の後方に配置される、加熱調理器。
【請求項2】
前記ドアガラスは、前記第1領域及び前記第2領域のそれぞれに、前記第1透過率を有する塗料及び前記第2透過率を有する塗料が塗布されてなる請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記扉は、前記枠体の内部において、前記液晶パネルの後方に設けられる中間ガラスをさらに備える請求項1又は請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記ドアガラスは、前記第2透過率より低い第3透過率を有する第3領域をさらに備え、
前記第3領域は、前記第1領域及び前記第2領域を囲むように設けられる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
被加熱物を加熱調理する加熱調理器の扉の製造方法であって、
前記扉は、枠体と、前記枠体の前面に設けられるドアガラスとを備え、
第1透過率を有する塗料を前記ドアガラスの第1領域に塗布するステップと、
前記第1透過率より低い第2透過率を有する塗料を前記ドアガラスの第2領域に塗布するステップと
を含む、加熱調理器の扉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器及び加熱調理器の扉の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加熱調理器などの調理家電に対して、家の内装にマッチする、並べて使う調理家電とマッチするなど、外観のデザインへのこだわりが高まっている。そのため、加熱調理器に対して、性能が良いことはもちろんのこと、外観品位が良いものが求められている。
【0003】
特許文献1には、外観品位を向上させた加熱調理器が開示されている。特許文献1に開示の加熱調理器は、加熱調理器の操作部が設けられるパネルベースがドアと一体のように見せるために、ドアスクリーン及びパネルベースにミラー処理を施している。具体的には、ドアスクリーンは、ミラー処理を施したガラスを用いている。パネルベースは、ドアスクリーンのミラー度と同等のミラー度を有するミラー処理を施した樹脂シートをパネルベースの前面に貼り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平8-33213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようなミラー処理を施しただけでは、樹脂シートを貼り付ける処理となるため、シートの接合面などに筋が残り、一体感や統一感が十分でないという問題が生じていた。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、外観品位を改善した加熱調理器及び加熱調理器の扉の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加熱調理器は、被加熱物を加熱する加熱庫と、加熱庫の前面の開口を覆う扉とを有する。扉は、枠体と、枠体の前面に設けられるドアガラスと、枠体の内部に設けられる液晶パネルとを備える。ドアガラスは、第1透過率を有する第1領域と、第1透過率より低い第2透過率を有する第2領域とを備える。液晶パネルは、第2領域の後方に配置される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外観の品位を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る加熱調理器の外観を示す斜視図である。
図2図1の切断線IIで切断した加熱調理器の扉の端面図である。
図3】本発明の実施形態に係る加熱調理器のドアガラスの正面図である。
図4】本発明の実施形態に係る加熱調理器の扉のドアガラスを取り外して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係る加熱調理器の実施形態について説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0011】
図1図4を参照して、本実施形態に係る加熱調理器100について説明する。図1は、本実施形態に係る加熱調理器100の外観を示す斜視図である。図2は、図1の切断線IIで切断した加熱調理器100の扉2の端面図である。図2では、扉2の内部に設けられる加熱調理器100を動作させるための回路及び配線などを省略して示す。図3は、本実施形態に係る加熱調理器100のドアガラス22を示す正面図である。図3では、後述するドアガラス22に設けられる各領域の位置を説明する便宜上、各領域の境界を破線で示すが、この破線は実際には視認できない。図4は、本実施形態に係る加熱調理器100の扉2のドアガラス22を取り外して示す正面図である。
【0012】
加熱調理器100は、例えば食品などの被加熱物を加熱調理する。図1及び図3に示すように、加熱調理器100は、加熱庫1と、扉2と、操作部3と、表示部4と、制御部(図示せず)とを備える。
【0013】
本実施形態では、加熱調理器100の扉2及び操作部3が配置される側を加熱調理器100の前側とし、その反対側を加熱調理器100の後側とする。また、加熱調理器100を前側から見た時の右側を加熱調理器100の右側とし、その反対側を加熱調理器100の左側とする。また、加熱調理器100の前後方向及び左右方向と直交する方向において、操作部3が配置される側を加熱調理器100の下側とし、その反対側を加熱調理器100の上側とする。なお、これらの向きは、本発明の加熱調理器の使用時の向きを限定するものではない。
【0014】
図1に示すように、加熱庫1は、前面に開口を有する略直方体の箱状である。加熱庫1は、開口から内部に収容された被加熱物を加熱する。
【0015】
操作部3は、ユーザーが被加熱物に対する加熱調理の方法を指定するために加熱調理器100を操作するためのものである。操作部3は、操作ボタンや操作ダイヤルなどから構成され、扉2の前面の下部に設けられる。
【0016】
制御部は、ユーザーからの操作を受けて加熱調理器100の動作を制御する。
【0017】
加熱庫1、操作部3及び制御部には、既知の加熱調理器の加熱庫、操作部及び制御部に採用されている任意の構成を用いることができる。
【0018】
図2図3とに示すように、扉2は、枠体21と、ドアガラス22と、インナーガラス23と、中間ガラス24と、液晶パネル25と、LEDライト26とを備える。
【0019】
枠体21は、内部に空間を有する略板状である。枠体21の前面には、ドアガラス22を取り付けるための開口21A、及び、操作部3を取り付けるための開口21Bが形成されている。一方、枠体21の後面には、インナーガラス23を取り付けるための開口21Cが形成されている。この枠体21は、金属や樹脂などを成形してなる。
【0020】
ドアガラス22は、1枚のガラス板で構成されている。ドアガラス22には、加熱調理器100のデザインに合う色に着色されているガラス、クリアガラス又はソーダガラスなどに加熱調理器100のデザインに合う色を着色したガラスなどを用いることができる。ドアガラス22は、枠体21の前面に設けられた開口21Aに既知の任意の手段によって取り付けられる。
【0021】
図3に示すように、ドアガラス22は、第1透過率を有する第1領域221と、第2透過率を有する第2領域222と、第3透過率を有する第3領域223とを備える。第3領域223は、第1領域221及び第2領域222を囲むように設けられる。
【0022】
第1透過率は、加熱庫1に設けられているライトが点灯したとき、ドアガラス22越しに加熱庫1の内部が視認できる程度の透過率である。第2透過率は、第1透過率よりも低く、液晶パネル25が表示されたときやLEDライト26が点灯したときに、液晶パネル25の表示及びLEDライト26の点灯が確認できる程度の透過率である。第3透過率は、第2透過率よりもさらに低く、加熱庫1の内部がほぼ視認できない程度の透過率である。
【0023】
次に、領域221,222,223ごとに透過率の異なるドアガラス22の製造方法について説明する。
【0024】
透過率の異なるドアガラス22は、スクリーン印刷によってスモークの印刷を行うことで製造される。具体的には、まず、第1領域221に第1透過率を有する塗料を塗布する。次に、第2領域222に第2透過率を有する塗料を塗布する。最後に、第3領域223に第3透過率を有する塗料を塗布する。塗料は、所定の透過率を実現できれば、有機塗料、無機塗料のいずれでもよい。
【0025】
インナーガラス23は、1枚のガラス板で構成されている。インナーガラス23には、既知の加熱調理器の扉に用いられているインナーガラスを用いることができる。図2に示すように、インナーガラス23は、枠体21の後面に設けられた開口21Cに既知の任意の手段によって取り付けられる。
【0026】
中間ガラス24は、1枚のガラス板で構成されている。中間ガラス24には、既知の任意のガラスを用いることができる。中間ガラス24は、断熱性能が高いものが好ましい。
【0027】
中間ガラス24は、枠体21の内部において、ドアガラス22とインナーガラス23との間に設けられる。具体的には、中間ガラス24は、枠体21に一体的に形成されている取付具21Dに既知の任意の手段によって取り付けられる。この中間ガラス24は、少なくとも液晶パネル25の後方を覆っていればよく、ドアガラス22全体の後方を覆うことが好ましい。
【0028】
液晶パネル25は、加熱調理器100の動作状況(例えば、設定温度、加熱時間など)などの各種の情報を表示する。液晶パネル25には、既知の加熱調理器に搭載されている液晶パネルを用いることができる。液晶パネル25は、ドアガラス22の着色に対して映える色で情報を表示するものが好ましい。
【0029】
液晶パネル25は、枠体21の内部のドアガラス22の第2領域222の後方において、ドアガラス22と中間ガラス24との間に設けられる。具体的には、液晶パネル25は、枠体21に一体的に形成されている取付具21Eに既知の任意の手段によって取り付けられる。
【0030】
図4に示すように、液晶パネル25の周囲には、仕切り板27が設けられている。仕切り板27は、前端が枠体21の前面及びドアガラス22に接し、後端が中間ガラス24に接するように設けられている。これにより、加熱庫1に設けられているライトが点灯したとしても、ライトからの光が液晶パネル25の表面に写り込まないようになっている。
【0031】
LEDライト26は、加熱調理器100の動作状況(例えば、電源ON、無線ラン接続など)などをON・OFFで表示する。LEDライト26には、既知の加熱調理器に搭載されているLEDライトを用いることができる。LEDライト26は、枠体21の内部において、ドアガラス22の第2領域222の後方に既知の任意の手段によって取り付けられる。
【0032】
扉2は、既知の任意の手段によって、枠体21の下端部が加熱庫1の下部に回動可能に支持されて、加熱庫1の前面の開口に対し開閉可能に取り付けられる。これにより、加熱庫1の前面の開口を覆っている。
【0033】
表示部4は、加熱調理器100の動作状況などの各種の情報を表示する。この表示部4は、ドアガラス22の第2領域222と、液晶パネル25及びLEDライト26とで構成される。
【0034】
以上のように、本発明の加熱調理器100では、表示部4を扉2に設けてドアガラス22に各種の情報を表示する構成とし、かつ、ドアガラス22を1枚のガラス板で構成している。これにより、従来のような表示部とドアガラスとが分離される構成と比較して、表示部とドアガラスとの境界がなくなり、外観の一体感や統一感を高めることができる。また、ドアガラス22を扉2に溶け込むようなデザインとすることで、窓感をなくし、より外観品位を高めることができる。
【0035】
一方で、ドアガラス22は、透過率が異なる領域を有している。第1領域221では、加熱調理器100が動作しているとき、加熱庫1のライトが点灯することで、加熱庫1の内部を視認することができる。第2領域222では、液晶パネル25が表示されたりLEDライト26が点灯したりしているとき、液晶パネル25やLEDライト26の明かりで、液晶パネル25の表示及びLEDライト26の点灯を視認することができる。つまり、液晶パネル25に表示される情報を視認可能としつつも、液晶パネル25とドアガラス22との境界がなくすことができる。この結果、外観の一体感や統一感を高めることが可能となり、外観品位を改善できる。加えて、使用時には必要な部位が視認できため、従来の加熱調理器と使用感は変わらない。
【0036】
また、ドアガラス22に表示部4としての機能を持たせるため、表示部のための樹脂部品が不要になる。さらに、ドアガラス22にはスクリーン印刷を施すだけであり、別途ドアガラスに貼り付ける樹脂シートなども不要になる。このように、高品位の外観構成を実現しつつも、部品点数を削減することもできる。
【0037】
また、加熱庫1で加熱調理を行うと、被加熱物を加熱する熱が扉2に伝わり、扉2が熱くなる。扉2の内部に設けられる液晶パネル25は、熱の影響を受けやすいため、扉2の特に液晶パネル25が配置される部分は温度を下げる必要がある。本発明の加熱調理器100では、中間ガラス24を設けているため、複層ガラス構造となり、加熱庫1で加熱調理を行う際の熱が扉2の前面や液晶パネル25が配置される部分に伝わることを抑制することができる。これにより、液晶パネル25が使用可能とされる温度まで温度を下げることができる。
【0038】
さらに、中間ガラス24をドアガラス22全体の後方を覆うように設けることで、ドアガラス22の温度を下げることができ、第1領域221から加熱庫1内を覗く際にドアガラス22に手が触れたとしても、火傷することを防止することができる。
【0039】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の速度、材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0040】
上記の実施形態では、第1領域221、第2領域222、及び第3領域223のそれぞれに、各領域221,222,223の透過率を有する塗料を塗布したが、本発明はこれに限定されない。
【0041】
上記の実施形態では、スクリーン印刷で透過率を変えたが、本発明はこれに限定されない。例えば、スクリーン印刷に代えて、他の印刷手段でスモークの印刷を行ってもよい。例えば、第1透過率を有する第1シートをドアガラス22の第1領域221に貼り付けてもよい。例えば、第2透過率を有する第2シートをドアガラス22の第2領域222に貼り付けてもよい。例えば、第3透過率を有する第3シートをドアガラス22の第3領域223に貼り付けてもよい。
【0042】
上記の実施形態では、ドアガラス22は、第1領域221、第2領域222及び第3領域223を備えるが、本発明はこれに限定されない。例えば、ドアガラス22は、第3領域を設けず、第1透過率を有する第1領域、及び、第2透過率を有する第2領域のみを備えてもよい。
【0043】
上記の実施形態では、ドアガラス22に塗布される塗料は、例えば、ドアガラス22を強化する成分、保護する成分、及び、遮熱する成分とのうちの少なくとも1つを含んでもよい。塗料は、例えば、樹脂である。樹脂は、例えば、熱硬化樹脂である。例えば、エポキシ系、フェノール系、又はポリエステル系である。その結果、ドアガラス22に簡易に膜を形成して、ドアガラス22を強化及び/又は保護できる。
【0044】
上記の実施形態では、加熱調理器100は、回動式の扉2を備えるが、本発明はこれに限定されない。例えば、回動式の扉2に代えて、引出し式の扉を備えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば、加熱調理器及び加熱調理器の扉の製造方法の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 加熱庫
2 扉
21 枠体
22 ドアガラス
24 中間ガラス
25 液晶パネル
100 加熱調理器
221 第1領域
222 第2領域
223 第3領域
図1
図2
図3
図4