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特許7614963船舶下架支援システム、船舶制御装置、船舶下架支援方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】船舶下架支援システム、船舶制御装置、船舶下架支援方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B63C 3/12 20060101AFI20250108BHJP
   B63H 11/107 20060101ALI20250108BHJP
   B63H 21/21 20060101ALI20250108BHJP
   B63H 25/04 20060101ALI20250108BHJP
   B63H 25/46 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
B63C3/12
B63H11/107
B63H21/21
B63H25/04 Z
B63H25/46
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021115239
(22)【出願日】2021-07-12
(65)【公開番号】P2023011404
(43)【公開日】2023-01-24
【審査請求日】2024-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】白尾 真人
(72)【発明者】
【氏名】秋田 まり乃
(72)【発明者】
【氏名】徳重 潤
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆史
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5142473(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0368578(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0113769(US,A1)
【文献】米国特許第4976211(US,A)
【文献】米国特許第5228713(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 3/12
B63H 11/107
B63H 25/46
B63H 21/21
B63H 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶を積載するトレーラから前記船舶を離脱させる前記船舶の下架作業を支援する船舶下架支援システムであって、
前記船舶は、
前記船舶の推進力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、
前記アクチュエータを作動させる船舶制御装置とを備え、
前記船舶制御装置は、前記船舶の前記下架作業時に、
前記船舶の後進推力を前記アクチュエータに発生させると共に、
前記船舶の実際の船首方位である実船首方位と目標船首方位との偏差に基づいて前記船舶の船首方位のフィードバック制御を実行する、
船舶下架支援システム。
【請求項2】
前記下架作業の開始指示の入力を受け付ける下架作業開始指示入力部を有する入力装置を備え、
前記船舶は、前記船舶の実船首方位を検出する船首方位検出部を備え、
前記下架作業開始指示入力部は、前記船舶が前記トレーラに積載されている状態で、前記下架作業の開始指示の入力を受け付け、
前記船首方位検出部は、前記下架作業開始指示入力部が前記下架作業の開始指示の入力を受け付けた時に、前記船舶の実船首方位を検出する、
請求項1に記載の船舶下架支援システム。
【請求項3】
前記船舶制御装置は、前記船舶の前記下架作業時における前記船舶の目標船首方位を設定する目標船首方位設定部を備え、
前記目標船首方位設定部は、前記下架作業開始指示入力部が前記下架作業の開始指示の入力を受け付けた時に前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の実船首方位を、少なくとも、前記下架作業開始指示入力部が前記下架作業の開始指示の入力を受け付けた時から前記船舶が前記トレーラから離脱する時までの期間である第1期間中における前記船舶の目標船首方位として設定する、
請求項2に記載の船舶下架支援システム。
【請求項4】
前記目標船首方位設定部は、前記下架作業開始指示入力部が前記下架作業の開始指示の入力を受け付けた時に前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の実船首方位を、前記船舶が前記トレーラから離脱する時以降の期間である第2期間中における前記船舶の目標船首方位として設定する、
請求項3に記載の船舶下架支援システム。
【請求項5】
前記目標船首方位設定部は、前記下架作業開始指示入力部が前記下架作業の開始指示の入力を受け付けた時に前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の実船首方位とは異なる方位を、前記船舶が前記トレーラから離脱する時以降の期間である第2期間中における前記船舶の目標船首方位として設定する、
請求項3に記載の船舶下架支援システム。
【請求項6】
前記目標船首方位設定部は、予め設定された方位を前記第2期間中における前記船舶の目標船首方位として設定する、
請求項5に記載の船舶下架支援システム。
【請求項7】
前記入力装置は、前記船舶の後進推力の発生指示の入力を受け付ける後進推力発生指示入力部を備え、
前記船舶制御装置は、前記後進推力発生指示入力部が受け付けた前記船舶の後進推力の発生指示の入力に応じて、
前記船舶の後進推力を前記アクチュエータに発生させると共に、
前記船舶の実船首方位を前記船舶の目標船首方位に保持する前記船舶の船首方位保持制御を開始する、
請求項3に記載の船舶下架支援システム。
【請求項8】
前記入力装置は、前記船舶の船首方位の変更指示の入力を受け付ける船首方位変更指示入力部を備え、
前記船舶制御装置が、前記船舶の実船首方位を前記船舶の目標船首方位に保持する前記船舶の船首方位保持制御を開始した後、前記船首方位変更指示入力部が、前記船舶の船首方位の変更指示の入力を受け付けた場合、
前記船舶制御装置は、
前記船舶の実船首方位を前記船舶の目標船首方位に保持する前記船舶の船首方位保持制御を中断すると共に、
前記船首方位変更指示入力部が受け付けた前記船舶の船首方位の変更指示の入力に応じて、前記アクチュエータに前記船舶の船首方位を変更させる、
請求項7に記載の船舶下架支援システム。
【請求項9】
前記船舶制御装置が、前記アクチュエータに前記船舶の船首方位を変更させた後、前記船首方位変更指示入力部が、前記船舶の船首方位の変更指示の入力を受け付けなくなった場合、
前記船舶制御装置は、
前記船舶の実船首方位を前記船舶の目標船首方位に保持する前記船舶の船首方位保持制御を再開する、
請求項8に記載の船舶下架支援システム。
【請求項10】
前記船舶制御装置が、前記船舶の実船首方位を前記船舶の目標船首方位に保持する前記船舶の船首方位保持制御を開始した後、前記船首方位変更指示入力部が、前記船舶の船首方位の変更指示の入力を受け付けた場合、
前記船舶制御装置は、
前記船首方位変更指示入力部が受け付けた前記船舶の船首方位の変更指示の入力に応じて、予め設定された角度だけ前記船舶の船首方位を前記アクチュエータに変更させる、
請求項8に記載の船舶下架支援システム。
【請求項11】
前記船舶制御装置が、前記船舶の実船首方位を前記船舶の目標船首方位に保持する前記船舶の船首方位保持制御を開始した後、前記船首方位変更指示入力部が、前記船舶の船首方位の変更指示の入力を受け付けた場合、
前記船首方位変更指示入力部が前記船舶の船首方位の変更指示の入力を受け付けている期間中、
前記船舶制御装置は、
所定時間が経過する毎に、前記船舶の船首方位の変更量を予め設定された角度だけ前記アクチュエータに増加させる、
請求項8に記載の船舶下架支援システム。
【請求項12】
前記後進推力発生指示入力部が前記船舶の後進推力の発生指示の入力を受け付けた場合に、
前記船舶制御装置は、予め設定された期間中、前記船舶の後進推力を前記アクチュエータに発生させる、
請求項7に記載の船舶下架支援システム。
【請求項13】
前記船首方位変更指示入力部が受け付けた前記船舶の船首方位の変更指示の入力に応じて、前記船舶制御装置が、前記アクチュエータに前記船舶の船首方位を変更させている期間中に、前記船首方位検出部によって検出された前記船舶の実船首方位の変化速度が所定の閾値を超えた場合、
前記船首方位変更指示入力部が前記船舶の船首方位の変更指示の入力を受け付けても、
前記船舶制御装置は、
前記アクチュエータに前記船舶の船首方位を変更させることなく、前記船舶の実船首方位を前記船舶の目標船首方位に保持する前記船舶の船首方位保持制御を実行する、
請求項8に記載の船舶下架支援システム。
【請求項14】
前記船舶は、前記船舶の速度を検出する船速検出部を備え、
前記後進推力発生指示入力部が受け付けた前記船舶の後進推力の発生指示の入力に応じて、前記船舶制御装置が、前記船舶の後進推力を前記アクチュエータに発生させている期間中に、前記船速検出部によって検出された前記船舶の速度が所定の閾値を超えた場合、
前記船首方位変更指示入力部が前記船舶の船首方位の変更指示の入力を受け付けても、
前記船舶制御装置は、
前記アクチュエータに前記船舶の船首方位を変更させることなく、前記船舶の実船首方位を前記船舶の目標船首方位に保持する前記船舶の船首方位保持制御を実行する、
請求項8に記載の船舶下架支援システム。
【請求項15】
船舶の推進力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータを作動させる船舶制御装置であって、
前記船舶を積載するトレーラから前記船舶が離脱させられる前記船舶の下架作業時に、
前記船舶の後進推力を前記アクチュエータに発生させると共に、
前記船舶の目標船首方位と実船首方位との偏差に基づいて前記船舶の船首方位のフィードバック制御を実行する、
船舶制御装置。
【請求項16】
船舶の推進力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータを備える前記船舶を積載するトレーラから、前記船舶が離脱させられる前記船舶の下架作業を支援する船舶下架支援方法であって、
前記船舶の後進推力を前記アクチュエータに発生させる後進推力発生ステップと、
前記船舶の目標船首方位と実船首方位との偏差に基づいて前記船舶の船首方位のフィードバック制御を実行するフィードバック制御ステップとを備える船舶下架支援方法。
【請求項17】
船舶の推進力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータを備える前記船舶に搭載されたコンピュータに、
前記船舶の後進推力を前記アクチュエータに発生させる後進推力発生ステップと、
前記船舶の目標船首方位と実船首方位との偏差に基づいて前記船舶の船首方位のフィードバック制御を実行するフィードバック制御ステップとを、前記船舶を積載するトレーラから前記船舶が離脱させられる前記船舶の下架作業時に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶下架支援システム、船舶制御装置、船舶下架支援方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、船舶をトレーラから離脱させるトレーリングシステムが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術では、船舶をトレーラから水面に移動(離脱)させる際(離脱時)に、トレーラが傾斜部(ランプ)に移動させられ、船舶が自動でトレーラから離間する方向に移動することによって、離脱作業が自動で行われる。詳細には、船舶の離脱作業時に、船舶の後方や周囲に障害物があるか否かが判断され、船舶とトレーラとの距離に基づいて、船舶がトレーラから離間する方向への船舶の後方推進がフィードバック制御される。
特許文献1には、発信機がトレーラに設けられている実施形態と、発信機がトレーラに設けられていない実施形態とが記載されている。
【0003】
ところで、特許文献1に記載された技術では、船舶とトレーラとの距離が所定の閾値を超えた場合に、船舶がトレーラから離脱したと判断され、船舶が定点保持されるものの、船舶の離脱作業中には、船舶の船首方位の制御が行われない。
そのため、特許文献1に記載された技術では、船舶の離脱作業が不安定になってしまうおそれがある(つまり、安全な船舶の離脱作業を実現できないおそれがある)。
【0004】
特許文献2には、船体後部を水没させ、ジェット推進機の推進力によって、船体をトレーラから水中へと移動させる進水方法である後方ランチングについて記載されている。特許文献2に記載された技術では、後方ランチング時に、エンジン回転速度が一定に制御され、エアドローに起因する推進力の低下が最小限にされる。
ところで、特許文献2に記載された技術においても、後方ランチング時に、船舶の船首方位の制御が行われない。
そのため、特許文献2に記載された技術においても、船舶の離脱作業が不安定になってしまうおそれがある(つまり、安全な船舶の離脱作業を実現できないおそれがある)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/163559号
【文献】特開2011-189847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した問題点に鑑み、本発明は、安全で簡単な船舶の下架作業(離脱作業)を実現することができる船舶下架支援システム、船舶制御装置、船舶下架支援方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、船舶を積載するトレーラから前記船舶を離脱させる前記船舶の下架作業を支援する船舶下架支援システムであって、前記船舶は、前記船舶の推進力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータと、前記アクチュエータを作動させる船舶制御装置とを備え、前記船舶制御装置は、前記船舶の前記下架作業時に、前記船舶の後進推力を前記アクチュエータに発生させると共に、前記船舶の実際の船首方位である実船首方位と目標船首方位との偏差に基づいて前記船舶の船首方位のフィードバック制御を実行する、船舶下架支援システムである。
【0008】
本発明の一態様は、船舶の推進力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータを作動させる船舶制御装置であって、前記船舶を積載するトレーラから前記船舶が離脱させられる前記船舶の下架作業時に、前記船舶の後進推力を前記アクチュエータに発生させると共に、前記船舶の目標船首方位と実船首方位との偏差に基づいて前記船舶の船首方位のフィードバック制御を実行する、船舶制御装置である。
【0009】
本発明の一態様は、船舶の推進力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータを備える前記船舶を積載するトレーラから、前記船舶が離脱させられる前記船舶の下架作業を支援する船舶下架支援方法であって、前記船舶の後進推力を前記アクチュエータに発生させる後進推力発生ステップと、前記船舶の目標船首方位と実船首方位との偏差に基づいて前記船舶の船首方位のフィードバック制御を実行するフィードバック制御ステップとを備える船舶下架支援方法である。
【0010】
本発明の一態様は、船舶の推進力を発生する機能と前記船舶にモーメントを発生させる機能とを有するアクチュエータを備える前記船舶に搭載されたコンピュータに、前記船舶の後進推力を前記アクチュエータに発生させる後進推力発生ステップと、前記船舶の目標船首方位と実船首方位との偏差に基づいて前記船舶の船首方位のフィードバック制御を実行するフィードバック制御ステップとを、前記船舶を積載するトレーラから前記船舶が離脱させられる前記船舶の下架作業時に実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、本発明は、安全で簡単な船舶の下架作業を実現することができる船舶下架支援システム、船舶制御装置、船舶下架支援方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の船舶制御装置が適用された船舶下架支援システムの一例を示す図である。
図2】トレーラから船舶を離脱させる船舶の下架作業の開始時における船舶とトレーラとの関係の一例を示す図である。
図3】入力装置の後進推力発生指示入力部が船舶の後進推力の発生指示の入力を受け付けた時における船舶とトレーラとの関係の一例を示す図である。
図4】船舶がトレーラから離脱した後における船舶とトレーラとの関係の一例を示す図である。
図5】船舶がトレーラから離脱させられる船舶の下架作業時に船舶制御装置において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図6】第2実施形態の船舶制御装置が適用された船舶下架支援システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明の船舶下架支援システム、船舶制御装置、船舶下架支援方法およびプログラムの第1実施形態について説明する。
【0014】
図1は第1実施形態の船舶制御装置11Cが適用された船舶下架支援システム1の一例を示す図である。
図1に示す例では、船舶下架支援システム1が、船舶11と、トレーラ12と、入力装置13とを備えている。船舶下架支援システム1は、船舶11を積載するトレーラ12から船舶11を離脱させる船舶11の下架作業を支援する。
船舶11は、例えば特許第5196649号公報の図1に記載されたパーソナルウォータークラフト(PWC、水上オートバイ)が有する機能と同様の機能を有するPWCである。船舶11は、アクチュエータ11Aと、操作部11Bと、船舶制御装置11Cと、船首方位検出部11Dと、船速検出部11Eと、通信部11Fとを備えている。
アクチュエータ11Aは、船舶11の推進力を発生する機能と船舶11にモーメントを発生させる機能とを有する。アクチュエータ11Aには、例えば特開2019-171925号公報の図1に記載されたエンジン、ノズル、デフレクタ、トリムアクチュエータ、バケット、バケットアクチュエータなどが含まれる。
操作部11Bは、船舶11の操船者の入力操作を受け付ける。操作部11Bは、例えば操舵部11B1と、スロットル操作部11B2とを備えている。操舵部11B1が操船者の入力操作を受け付けることによって、アクチュエータ11Aは船舶11にモーメントを発生させる。スロットル操作部11B2は、アクチュエータ11Aに船舶11の推進力を発生させる操船者の入力操作を受け付ける。
【0015】
船舶制御装置11Cは、アクチュエータ11Aの制御などを行う。船舶制御装置11Cは、アクチュエータ制御部11C1と、実船首方位取得部11C2と、目標船首方位設定部11C3と、下架作業開始指示取得部11C4と、後進推力発生指示取得部11C5と、船首方位変更指示取得部11C6とを備えている。
アクチュエータ制御部11C1は、アクチュエータ11Aの制御を行う。つまり、アクチュエータ制御部11C1は、アクチュエータ11Aを作動させる。
実船首方位取得部11C2は、船首方位検出部11Dによって検出された船舶11の実船首方位(船舶11の実際の船首方位)を取得する。「船首方位」とは、船舶11の船首が指す水平面上の方位であり、一般的に、基準の方位に対してなす角度によって表現される。通常、真北が「0°」として表現され、真東が「90°」として表現され、真南が「180°」として表現され、真西が「270°」として表現される。
目標船首方位設定部11C3は、船舶11の下架作業時における船舶11の目標船首方位を設定する。
下架作業開始指示取得部11C4は、入力装置13が受け付けた船舶11の下架作業の開始指示を取得する。後進推力発生指示取得部11C5は、入力装置13が受け付けた船舶11の後進推力の発生指示を取得する。船首方位変更指示取得部11C6は、入力装置13が受け付けた船舶11の船首方位の変更指示を取得する。
【0016】
船首方位検出部11Dは、船舶11の実船首方位を検出する。船首方位検出部11Dは、例えば方位センサを備えている。方位センサは、例えば地磁気を利用することによって、船舶11の実船首方位を算出する。
他の例では、方位センサが、高速回転するジャイロスコープに指北装置と制振装置とを付加し、常に北を示すようにした装置(ジャイロコンパス)であってもよい。
更に他の例では、方位センサが、複数のGPS(Global Positioning System)アンテナを備え、複数のGPSアンテナの相対的な位置関係から船首方位を算出するGPSコンパスであってもよい。
【0017】
図1に示す例では、船速検出部11Eは、船舶11の速度を検出する。船速検出部11Eは、例えば船舶11の対水速度を検出する水圧感知式であっても、船舶11の対地速度を検出するGPS計測式であってもよい。
他の例では、船舶11が船速検出部11Eを備えていなくてもよい。
【0018】
図1に示す例では、通信部11Fが、入力装置13との通信を行う。具体的には、通信部11Fは、例えば船舶11の下架作業の開始指示などを入力装置13から受信する。
トレーラ12は、下架作業の対象の船舶11を積載する。
入力装置13は、トレーラ12から船舶11を離脱させる船舶11の下架作業の開始指示などの入力を受け付ける。入力装置13は、船舶11とは別個の例えば専用のコントローラ、下架作業者によって携帯される携帯端末装置(例えばスマートフォン等)などである。入力装置13は、下架作業開始指示入力部131と、後進推力発生指示入力部132と、第1船首方位変更指示入力部133と、第2船首方位変更指示入力部134と、通信部135とを備えている。
下架作業開始指示入力部131は、例えば船舶11の下架作業者による船舶11の下架作業の開始指示の入力を受け付ける。後進推力発生指示入力部132は、例えば船舶11の下架作業者による船舶11の後進推力の発生指示の入力を受け付ける。
第1船首方位変更指示入力部133は、例えば船舶11の下架作業者による左回り(反時計回り)の船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付ける。第2船首方位変更指示入力部134は、例えば船舶11の下架作業者による右回り(時計回り)の船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付ける。
通信部135は、船舶11の通信部11Fとの通信を行う。具体的には、通信部135は、下架作業開始指示入力部131、後進推力発生指示入力部132、第1船首方位変更指示入力部133および第2船首方位変更指示入力部134のそれぞれが受け付けた指示を船舶11の通信部11Fに送信する。
詳細には、船舶11の船舶制御装置11Cの目標船首方位設定部11C3は、船舶11の下架作業時のうちの、入力装置13の下架作業開始指示入力部131が下架作業の開始指示の入力を受け付けた時から船舶11がトレーラ12から離脱する時までの期間(第1期間)中における船舶11の目標船首方位と、船舶11がトレーラ12から離脱する時以降の期間(第2期間)中における船舶11の目標船首方位とを設定する。
【0019】
図2はトレーラ12から船舶11を離脱させる船舶11の下架作業の開始時における船舶11とトレーラ12との関係の一例を示す図である。つまり、図2は特許文献2の図15に記載されたタイミングにおける船舶11とトレーラ12との関係の一例を示している。
図2に示す例では、船舶11がトレーラ12に積載されている状態で、入力装置13の下架作業開始指示入力部131が、例えば船舶11の下架作業者による船舶11の下架作業の開始指示の入力を受け付ける。船舶11の船首方位検出部11Dは、下架作業開始指示入力部131が船舶11の下架作業の開始指示の入力を受け付けた時(詳細には、船舶制御装置11Cの下架作業開始指示取得部11C4が、入力装置13から送信された船舶11の下架作業の開始指示を取得した時)に、船舶11の実船首方位を検出する。
船舶制御装置11Cの目標船首方位設定部11C3は、下架作業開始指示入力部131が船舶11の下架作業の開始指示の入力を受け付けた時に船首方位検出部11Dによって検出された船舶11の実船首方位を、船舶11の下架作業時(上述した第1期間中および第2期間中)における船舶11の目標船首方位として設定する。
つまり、この時に目標船首方位設定部11C3によって設定された船舶11の目標船首方位は、船舶11の下架作業が終了するまでの期間中(つまり、第1期間中および第2期間中)、船舶11の目標船首方位として用いられる。
【0020】
図3は入力装置13の後進推力発生指示入力部132が船舶11の後進推力の発生指示の入力を受け付けた時における船舶11とトレーラ12との関係の一例を示す図である。
図3に示す例では、船舶11の船首方位検出部11Dが船舶11の実船首方位を検出した後、入力装置13の後進推力発生指示入力部132が、例えば船舶11の下架作業者による船舶11の後進推力の発生指示の入力を受け付ける。
次いで、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、入力装置13の後進推力発生指示入力部132が受け付けた船舶11の後進推力の発生指示の入力に応じて(詳細には、船舶制御装置11Cの後進推力発生指示取得部11C5が取得した船舶11の後進推力の発生指示に応じて)、図3に直線状の矢印で示すように船舶11の後進推力をアクチュエータ11Aに発生させると共に、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を開始する。
つまり、船舶11の下架作業時(詳細には、第1期間中および第2期間中)に、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、船舶11の後進推力をアクチュエータ11Aに発生させると共に、船舶11の実船首方位と目標船首方位との偏差に基づいて船舶11の船首方位のフィードバック制御を実行する。
【0021】
一方、船舶11とトレーラ12との間には摩擦力が発生するため、船舶11の実船首方位が船舶11の目標船首方位に保持された状態で、アクチュエータ11Aが船舶11の後進推力を発生するだけでは、船舶11がトレーラ12から離脱できない場合がある。
そのような場合には、入力装置13の第1船首方位変更指示入力部133が、例えば船舶11の下架作業者による左回り(反時計回り)の船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けるか、あるいは、入力装置13の第2船首方位変更指示入力部134が、例えば船舶11の下架作業者による右回り(時計回り)の船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付ける。
第1船首方位変更指示入力部133が、左回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けた場合には、第1船首方位変更指示入力部133が受け付けた左回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力に応じて(詳細には、船舶制御装置11Cの船首方位変更指示取得部11C6が取得した左回りの船舶11の船首方位の変更指示に応じて)、図3に左回りの矢印で示すように、船舶11のアクチュエータ11Aが、船舶11に反時計回りのモーメントを発生させる。
第2船首方位変更指示入力部134が、右回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けた場合には、第2船首方位変更指示入力部134が受け付けた右回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力に応じて(詳細には、船舶制御装置11Cの船首方位変更指示取得部11C6が取得した右回りの船舶11の船首方位の変更指示に応じて)、図3に右回りの矢印で示すように、船舶11のアクチュエータ11Aが、船舶11に時計回りのモーメントを発生させる。
その結果、船舶11がトレーラ12から離脱する(つまり、上述した第1期間が終了する)。
【0022】
詳細には、図3に示すように、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を開始した後、入力装置13の第1船首方位変更指示入力部133が、左回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けた場合、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を中断すると共に、第1船首方位変更指示入力部133が受け付けた左回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力に応じて、アクチュエータ11Aに船舶11の船首方位を左回りに変更させる。
船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、アクチュエータ11Aに船舶11の船首方位を左回りに変更させた後、入力装置13の第1船首方位変更指示入力部133が、左回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けなくなった場合、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を再開する。
【0023】
また、図3に示すように、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を開始した後、入力装置13の第2船首方位変更指示入力部134が、右回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けた場合、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を中断すると共に、第2船首方位変更指示入力部134が受け付けた右回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力に応じて、アクチュエータ11Aに船舶11の船首方位を右回りに変更させる。
船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、アクチュエータ11Aに船舶11の船首方位を右回りに変更させた後、入力装置13の第2船首方位変更指示入力部134が、右回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けなくなった場合、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を再開する。
【0024】
図3に示す例では、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を開始した後、入力装置13の第1船首方位変更指示入力部133が、左回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けた場合、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、第1船首方位変更指示入力部133が受け付けた左回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力に応じて、予め設定された角度だけ左回りに船舶11の船首方位をアクチュエータ11Aに変更させる。
同様に、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を開始した後、入力装置13の第2船首方位変更指示入力部134が、右回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けた場合、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、第2船首方位変更指示入力部134が受け付けた右回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力に応じて、予め設定された角度だけ右回りに船舶11の船首方位をアクチュエータ11Aに変更させる。
【0025】
他の例では、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を開始した後、入力装置13の第1船首方位変更指示入力部133が、左回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けた場合、第1船首方位変更指示入力部133が左回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けている期間中、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、所定時間が経過する毎に、左回りの船舶11の船首方位の変更量を予め設定された角度だけアクチュエータ11Aに増加させてもよい。
同様に、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を開始した後、入力装置13の第2船首方位変更指示入力部134が、右回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けた場合、第2船首方位変更指示入力部134が右回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けている期間中、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、所定時間が経過する毎に、右回りの船舶11の船首方位の変更量を予め設定された角度だけアクチュエータ11Aに増加させてもよい。
【0026】
図4は船舶11がトレーラ12から離脱した後(つまり、上述した第2期間中)における船舶11とトレーラ12との関係の一例を示す図である。
図4に示す例では、入力装置13の第1船首方位変更指示入力部133が受け付けた左回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力に応じて、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、アクチュエータ11Aに船舶11の船首方位を左回りに変更させることなく、また、第2船首方位変更指示入力部134が受け付けた右回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力に応じて、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、アクチュエータ11Aに船舶11の船首方位を右回りに変更させることもなく、後進推力発生指示入力部132が受け付けた船舶11の後進推力の発生指示の入力に応じて、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、図3に直線状の矢印で示すように船舶11の後進推力をアクチュエータ11Aに発生させた結果、船舶11がトレーラ12から離脱する。
船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が開始した船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御は、図4に示す段階(つまり、第2期間中)においても継続されている。すなわち、目標船首方位設定部11C3は、下架作業開始指示入力部131が下架作業の開始指示の入力を受け付けた時に船首方位検出部11Dによって検出された船舶11の実船首方位を、船舶11がトレーラ12から離脱する時以降の期間(第2期間)中における船舶11の目標船首方位として設定する。そのため、図4に直線状の矢印で示すように、船舶11は、船舶11の実船首方位が船舶11の目標船首方位に保持された状態で直進する。
【0027】
他の例では、入力装置13の第1船首方位変更指示入力部133が受け付けた左回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力に応じて、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、アクチュエータ11Aに船舶11の船首方位を左回りに変更させている期間中に、船舶11がトレーラ12から離脱する。
船舶11がトレーラ12から離脱すると、船舶11の船首方位検出部11Dによって検出される船舶11の実船首方位の変化速度が所定の閾値を超える。
そこで、この例では、船舶11の船首方位検出部11Dによって検出される船舶11の実船首方位の変化速度が所定の閾値を超えた場合に、船舶制御装置11Cは、船舶11がトレーラ12から離脱した(つまり、第2期間になった)と判定する。船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、第1船首方位変更指示入力部133が左回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けても、アクチュエータ11Aに船舶11の船首方位を左回りに変更させることなく、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を実行する。すなわち、目標船首方位設定部11C3は、下架作業開始指示入力部131が下架作業の開始指示の入力を受け付けた時に船首方位検出部11Dによって検出された船舶11の実船首方位を、船舶11がトレーラ12から離脱する時以降の期間(第2期間)中における船舶11の目標船首方位として設定する。
そのため、図4に示す例と同様に、図4に直線状の矢印で示すように、船舶11は、船舶11の実船首方位が船舶11の目標船首方位に保持された状態で直進する。
【0028】
更に他の例では、入力装置13の第2船首方位変更指示入力部134が受け付けた右回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力に応じて、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、アクチュエータ11Aに船舶11の船首方位を右回りに変更させている期間中に、船舶11がトレーラ12から離脱する。
船舶11がトレーラ12から離脱すると、船舶11の船首方位検出部11Dによって検出される船舶11の実船首方位の変化速度が所定の閾値を超える。
そこで、この例においても、船舶11の船首方位検出部11Dによって検出される船舶11の実船首方位の変化速度が所定の閾値を超えた場合に、船舶制御装置11Cは、船舶11がトレーラ12から離脱した(つまり、第2期間になった)と判定する。船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、第2船首方位変更指示入力部134が右回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けても、アクチュエータ11Aに船舶11の船首方位を右回りに変更させることなく、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を実行する。すなわち、目標船首方位設定部11C3は、下架作業開始指示入力部131が下架作業の開始指示の入力を受け付けた時に船首方位検出部11Dによって検出された船舶11の実船首方位を、船舶11がトレーラ12から離脱する時以降の期間(第2期間)中における船舶11の目標船首方位として設定する。
そのため、図4に示す例と同様に、図4に直線状の矢印で示すように、船舶11は、船舶11の実船首方位が船舶11の目標船首方位に保持された状態で直進する。
【0029】
図4に示す例では、入力装置13の後進推力発生指示入力部132が船舶11の後進推力の発生指示の入力を受け付けた場合、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、入力装置13の後進推力発生指示入力部132が受け付けた船舶11の後進推力の発生指示の入力に応じて(詳細には、船舶制御装置11Cの後進推力発生指示取得部11C5が取得した船舶11の後進推力の発生指示に応じて)、予め設定された期間中、船舶11の後進推力をアクチュエータ11Aに発生させる。その期間の経過後、アクチュエータ11Aが船舶11の後進推力を発生しなくなり、船舶11の下架作業が完了する。
他の例では、入力装置13の後進推力発生指示入力部132が船舶11の後進推力の発生指示の入力を受け付けている期間中のみ、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、船舶11の後進推力をアクチュエータ11Aに発生させてもよい。この例では、後進推力発生指示入力部132が船舶11の後進推力の発生指示の入力を受け付けなくなると、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、アクチュエータ11Aが船舶11の後進推力を発生しなくなり、船舶11の下架作業が完了する。
【0030】
また、入力装置13の後進推力発生指示入力部132が受け付けた船舶11の後進推力の発生指示の入力に応じて、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、船舶11の後進推力をアクチュエータ11Aに発生させている期間中に、船舶11がトレーラ12から離脱すると、船速検出部11Eによって検出される船舶11の速度が所定の閾値を超える。
そこで、他の例では、船速検出部11Eによって検出される船舶11の速度が所定の閾値を超えた場合に、船舶制御装置11Cは、船舶11がトレーラ12から離脱したと判定する。
船舶11がトレーラ12から離脱したと船舶制御装置11Cが判定した場合、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、入力装置13の第1船首方位変更指示入力部133が船舶11の左回りの船首方位の変更指示の入力を受け付けても、アクチュエータ11Aに船舶11の船首方位を左回りに変更させることなく、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を実行する。
同様に、船舶11がトレーラ12から離脱したと船舶制御装置11Cが判定した場合、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、入力装置13の第2船首方位変更指示入力部134が船舶11の右回りの船首方位の変更指示の入力を受け付けても、アクチュエータ11Aに船舶11の船首方位を右回りに変更させることなく、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を実行する。
【0031】
図5は船舶11がトレーラ12から離脱させられる船舶11の下架作業時に船舶制御装置11Cにおいて実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図5に示す例では、ステップS11において、船舶制御装置11Cの下架作業開始指示取得部11C4が、入力装置13から送信された船舶11の下架作業の開始指示を取得する。
ステップS12では、船舶制御装置11Cの実船首方位取得部11C2が、船首方位検出部11Dによって検出された船舶11の実船首方位を取得する。
ステップS13では、船舶制御装置11Cの目標船首方位設定部11C3が、ステップS12において検出された船舶11の実船首方位を、船舶11の下架作業時における船舶11の目標船首方位として設定する。
【0032】
ステップS14では、船舶制御装置11Cの後進推力発生指示取得部11C5が、入力装置13から送信された船舶11の後進推力の発生指示を取得する。
ステップS15では、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、船舶11の後進推力をアクチュエータ11Aに発生させる。
また、ステップS16では、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を開始する。つまり、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、船舶11の目標船首方位と実船首方位との偏差に基づいて船舶11の船首方位のフィードバック制御を実行する。
【0033】
ステップS17において、船舶制御装置11Cは、船首方位変更指示取得部11C6が船舶11の船首方位の変更指示を取得したか否かを判定する。船首方位変更指示取得部11C6が船舶11の船首方位の変更指示を取得した場合にはステップS18に進み、船首方位変更指示取得部11C6が船舶11の船首方位の変更指示を取得していない場合にはステップS22に進む。
ステップS18では、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を中断する。
ステップS19では、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、アクチュエータ11Aに船舶11の船首方位を変更させる。
【0034】
ステップS20において、船舶制御装置11Cは、船首方位変更指示取得部11C6が船舶11の船首方位の変更指示を取得しなくなったか否かを判定する。船首方位変更指示取得部11C6が船舶11の船首方位の変更指示を取得しなくなった場合にはステップS21に進み、船首方位変更指示取得部11C6が船舶11の船首方位の変更指示を取得した場合にはステップS18に戻る。
ステップS21では、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を再開する。
【0035】
ステップS22において、船舶制御装置11Cは、船舶制御装置11Cの後進推力発生指示取得部11C5が船舶11の後進推力の発生指示を取得してから、予め設定された期間が経過したか否かを判定する。後進推力発生指示取得部11C5が船舶11の後進推力の発生指示を取得してから、予め設定された期間が経過した場合には、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、船舶11の後進推力をアクチュエータ11Aに発生させなくなり、船舶11の下架作業が終了する。後進推力発生指示取得部11C5が船舶11の後進推力の発生指示を取得してから、予め設定された期間が経過していない場合には、後進推力発生指示取得部11C5が船舶11の後進推力の発生指示を取得してから、予め設定された期間が経過するまで、ステップS22が繰り返し実行される。
【0036】
第1実施形態の船舶制御装置11Cが適用された船舶下架支援システム1の第2例では、目標船首方位設定部11C3は、下架作業開始指示入力部131が下架作業の開始指示の入力を受け付けた時に船首方位検出部11Dによって検出された船舶11の実船首方位とは異なる方位(着水後目標方位)を、船舶11がトレーラ12から離脱する時以降の期間(第2期間)中における船舶11の目標船首方位として設定する。
この例では、目標船首方位設定部11C3が、予め設定された方位(着水後目標方位)を第2期間中における船舶11の目標船首方位として設定する。
【0037】
<第2実施形態>
以下、本発明の船舶下架支援システム、船舶制御装置、船舶下架支援方法およびプログラムの第2実施形態について説明する。
第2実施形態の船舶制御装置11Cが適用された船舶下架支援システム1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の船舶制御装置11Cが適用された船舶下架支援システム1と同様に構成されている。従って、第2実施形態の船舶制御装置11Cが適用された船舶下架支援システム1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の船舶制御装置11Cが適用された船舶下架支援システム1と同様の効果を奏することができる。
【0038】
図6は第2実施形態の船舶制御装置11Cが適用された船舶下架支援システム1の一例を示す図である。
図6に示す例では、船舶下架支援システム1が、船舶11と、トレーラ12とを備えている。船舶11は、アクチュエータ11Aと、操作部11Bと、船舶制御装置11Cと、船首方位検出部11Dと、船速検出部11Eと、入力装置11Gとを備えている。
船舶制御装置11Cの下架作業開始指示取得部11C4は、入力装置11Gが受け付けた船舶11の下架作業の開始指示を取得する。後進推力発生指示取得部11C5は、入力装置11Gが受け付けた船舶11の後進推力の発生指示を取得する。船首方位変更指示取得部11C6は、入力装置11Gが受け付けた船舶11の船首方位の変更指示を取得する。
【0039】
入力装置11Gは、トレーラ12から船舶11を離脱させる船舶11の下架作業の開始指示などの入力を受け付ける。入力装置11Gは、船舶11に設けられた複数のボタン、タッチパネルなどである。入力装置11Gは、下架作業開始指示入力部11G1と、後進推力発生指示入力部11G2と、第1船首方位変更指示入力部11G3と、第2船首方位変更指示入力部11G4とを備えている。
図6に示す例では、スロットル操作部11B2と後進推力発生指示入力部11G2とが別個に設けられているが、他の例では、スロットル操作部11B2が、後進推力発生指示入力部11G2として機能してもよい。
【0040】
図6に示す例では、下架作業開始指示入力部11G1が、例えば船舶11の下架作業者による船舶11の下架作業の開始指示の入力を受け付ける。後進推力発生指示入力部11G2は、例えば船舶11の下架作業者による船舶11の後進推力の発生指示の入力を受け付ける。
第1船首方位変更指示入力部11G3は、例えば船舶11の下架作業者による左回り(反時計回り)の船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付ける。第2船首方位変更指示入力部11G4は、例えば船舶11の下架作業者による右回り(時計回り)の船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付ける。
【0041】
図6に示す例では、船舶11がトレーラ12に積載されている状態で、入力装置11Gの下架作業開始指示入力部11G1が、例えば船舶11の下架作業者による船舶11の下架作業の開始指示の入力を受け付ける。船舶11の船首方位検出部11Dは、下架作業開始指示入力部11G1が船舶11の下架作業の開始指示の入力を受け付けた時(詳細には、船舶制御装置11Cの下架作業開始指示取得部11C4が、下架作業開始指示入力部11G1が受け付けた船舶11の下架作業の開始指示を取得した時)に、船舶11の実船首方位を検出する。
船舶制御装置11Cの目標船首方位設定部11C3は、下架作業開始指示入力部11G1が船舶11の下架作業の開始指示の入力を受け付けた時に船首方位検出部11Dによって検出された船舶11の実船首方位を、船舶11の下架作業時における船舶11の目標船首方位として設定する。
【0042】
図6に示す例では、船舶11の船首方位検出部11Dが船舶11の実船首方位を検出した後、入力装置11Gの後進推力発生指示入力部11G2が、例えば船舶11の下架作業者による船舶11の後進推力の発生指示の入力を受け付ける。
次いで、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、入力装置11Gの後進推力発生指示入力部11G2が受け付けた船舶11の後進推力の発生指示の入力に応じて(詳細には、船舶制御装置11Cの後進推力発生指示取得部11C5が取得した船舶11の後進推力の発生指示に応じて)、船舶11の後進推力をアクチュエータ11Aに発生させると共に、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を開始する。
つまり、船舶11の下架作業時に、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、船舶11の後進推力をアクチュエータ11Aに発生させると共に、船舶11の実船首方位と目標船首方位との偏差に基づいて船舶11の船首方位のフィードバック制御を実行する。
【0043】
一方、上述したように、船舶11とトレーラ12との間には摩擦力が発生するため、船舶11の実船首方位が船舶11の目標船首方位に保持された状態で、アクチュエータ11Aが船舶11の後進推力を発生するだけでは、船舶11がトレーラ12から離脱できない場合がある。
そのような場合には、入力装置11Gの第1船首方位変更指示入力部11G3が、例えば船舶11の下架作業者による左回り(反時計回り)の船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けるか、あるいは、入力装置11Gの第2船首方位変更指示入力部11G4が、例えば船舶11の下架作業者による右回り(時計回り)の船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付ける。
第1船首方位変更指示入力部11G3が、左回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けた場合には、第1船首方位変更指示入力部11G3が受け付けた左回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力に応じて(詳細には、船舶制御装置11Cの船首方位変更指示取得部11C6が取得した左回りの船舶11の船首方位の変更指示に応じて)、船舶11のアクチュエータ11Aが、船舶11に反時計回りのモーメントを発生させる。
第2船首方位変更指示入力部11G4が、右回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けた場合には、第2船首方位変更指示入力部11G4が受け付けた右回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力に応じて(詳細には、船舶制御装置11Cの船首方位変更指示取得部11C6が取得した右回りの船舶11の船首方位の変更指示に応じて)、船舶11のアクチュエータ11Aが、船舶11に時計回りのモーメントを発生させる。
その結果、船舶11がトレーラ12から離脱する。
【0044】
詳細には、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を開始した後、入力装置11Gの第1船首方位変更指示入力部11G3が、左回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けた場合、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を中断すると共に、第1船首方位変更指示入力部11G3が受け付けた左回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力に応じて、アクチュエータ11Aに船舶11の船首方位を左回りに変更させる。
船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、アクチュエータ11Aに船舶11の船首方位を左回りに変更させた後、入力装置11Gの第1船首方位変更指示入力部11G3が、左回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けなくなった場合、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を再開する。
【0045】
また、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を開始した後、入力装置11Gの第2船首方位変更指示入力部11G4が、右回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けた場合、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を中断すると共に、第2船首方位変更指示入力部11G4が受け付けた右回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力に応じて、アクチュエータ11Aに船舶11の船首方位を右回りに変更させる。
船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1が、アクチュエータ11Aに船舶11の船首方位を右回りに変更させた後、入力装置11Gの第2船首方位変更指示入力部11G4が、右回りの船舶11の船首方位の変更指示の入力を受け付けなくなった場合、船舶制御装置11Cのアクチュエータ制御部11C1は、船舶11の実船首方位を船舶11の目標船首方位に保持する船舶11の船首方位保持制御を再開する。
【0046】
<適用例>
上述した例では、第1または第2実施形態の船舶制御装置11Cが、船舶11としてのPWCをトレーラ12から離脱させる下架作業を支援する船舶下架支援システム1に適用される。
他の例では、第1または第2実施形態の船舶制御装置11Cが、船舶11としてのスポーツボートをトレーラ12から離脱させる下架作業を支援する船舶下架支援システム1に適用されてもよい。
更に他の例では、第1または第2実施形態の船舶制御装置11Cが、船舶11としての例えば特許第6198192号公報、特開2007-22284号公報などに記載された船外機を装備した船舶を、トレーラ12から離脱させる下架作業を支援する船舶下架支援システム1に適用されてもよい。
【0047】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。上述した各実施形態および各例に記載の構成を組み合わせてもよい。
【0048】
なお、上述した実施形態における船舶下架支援システム1が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0049】
1…船舶下架支援システム、11…船舶、11A…アクチュエータ、11B…操作部、11B1…操舵部、11B2…スロットル操作部、11C…船舶制御装置、11C1…アクチュエータ制御部、11C2…実船首方位取得部、11C3…目標船首方位設定部、11C4…下架作業開始指示取得部、11C5…後進推力発生指示取得部、11C6…船首方位変更指示取得部、11D…船首方位検出部、11E…船速検出部、11F…通信部、11G…入力装置、11G1…下架作業開始指示入力部、11G2…後進推力発生指示入力部、11G3…第1船首方位変更指示入力部、11G4…第2船首方位変更指示入力部、12…トレーラ、13…入力装置、131…下架作業開始指示入力部、132…後進推力発生指示入力部、133…第1船首方位変更指示入力部、134…第2船首方位変更指示入力部、135…通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6