(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】柱接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20250108BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
E04B1/30 C
E04B1/58 503M
E04B1/58 503P
(21)【出願番号】P 2021134693
(22)【出願日】2021-08-20
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光一
(72)【発明者】
【氏名】花岡 和弘
(72)【発明者】
【氏名】児嶋 一雄
(72)【発明者】
【氏名】黒川 泰嗣
(72)【発明者】
【氏名】河野 賢一
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-282578(JP,A)
【文献】特開2015-063889(JP,A)
【文献】特開2006-214195(JP,A)
【文献】特開平06-093662(JP,A)
【文献】特開2000-034780(JP,A)
【文献】特開2019-138137(JP,A)
【文献】特開2020-169442(JP,A)
【文献】特開2020-204257(JP,A)
【文献】特開2012-177292(JP,A)
【文献】特開平03-244725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/16,1/30
E04C 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の所定の階層の途中の高さの位置に構築され前記建物のCFT柱部とRC柱部とを鉛直方向に接合する柱接合構造であって、
前記CFT柱部の鋼管の前記RC柱部側の端部に接合され前記鋼管よりも内側の位置に形成された開口であるコンクリート打設孔を有する水平な端部プレートと、
前記鋼管よりも内側且つ前記コンクリート打設孔よりも外側の位置において前記端部プレートの前記RC柱部側の面に設けられ前記RC柱部側に突出するせん断キーと、を備
え、
前記端部プレートよりもRC柱部側には前記鋼管が延び出しておらず、
前記せん断キーは、平面視で前記コンクリート打設孔の縁に沿って当該縁に平行に延在している、
柱接合構造。
【請求項2】
前記端部プレートは、
前記CFT柱部と前記RC柱部とからなる柱体に地震時に作用する曲げモーメントの反曲点と略同じ高さの位置に存在している、請求項1に記載の柱接合構造。
【請求項3】
前記RC柱部の主鉄筋の少なくとも一部が、前記端部プレートを貫通して前記CFT柱部の前記鋼管内に挿入されている、請求項1又は2に記載の柱接合構造。
【請求項4】
前記鋼管の内壁面に当該内壁面から内側に立ち上がるように設けられ、水平方向に延在する鋼管内リブ部を更に備える、請求項1~3の何れか1項に記載の柱接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、下層階をオフィス用途とし上層階を住宅用途とするといったように建物の階層で用途を分ける場合がある。この種の建物では、下層階は例えばCFT(コンクリート充填鋼管)を使用したS造で頑丈に構築しながらも、上層階は防音性があり住宅用途に適したRC造(鉄筋コンクリート造)で構築することが好ましい。この場合、建物の柱構造においては、下層階と上層階との境界層でCFT柱とRC柱とを切り替える必要があり、CFT柱とRC柱とを接合することが必要である。このようなCFT柱とRC柱との柱接合構造としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載の柱接合構造は、境界層におけるCFT柱の鋼管内にスタッドを設置し、更に当該鋼管内にRC柱側から連なる主筋及びせん断補強筋を設置して、当該鋼管内にコンクリートを打設する、といったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の柱接合構造では、境界層のCFT柱の鋼管内にせん断補強筋を配筋するといった煩雑な施工が必要である。また、鋼管内に多数のせん断補強筋が存在することにより、鋼管内に打設されるコンクリートの充填性も悪くなるので、施工性が良いとは言えなかった。このような課題に鑑み、本発明は、簡易な構造でCFT柱とRC柱とを接合する柱接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の柱接合構造は、建物の所定の階層の途中の高さの位置に構築され建物のCFT柱部とRC柱部とを鉛直方向に接合する柱接合構造であって、CFT柱部の鋼管のRC柱部側の端部に接合され鋼管よりも内側の位置に形成された開口であるコンクリート打設孔を有する水平な端部プレートと、鋼管よりも内側且つコンクリート打設孔よりも外側の位置において端部プレートのRC柱部側の面に設けられRC柱部側に突出するせん断キーと、を備える。
【0006】
この柱接合構造では、CFT柱部の鋼管のRC柱部側の端部に端部プレートが設けられ、端部プレートにはRC柱部側に突出するせん断キーが設けられている。この構造によれば、せん断キーを埋込むRC柱部のコンクリート部とせん断キーとの支圧によりCFT柱部とRC柱部との間のせん断力が伝達される。このようにせん断キーの存在によりCFT柱部とRC柱部との間でせん断力の伝達が図られるので、CFT柱部の鋼管内にせん断伝達のための要素を設けることが省略可能であり、柱接合構造を簡易化することができる。
【0007】
端部プレートは、CFT柱部とRC柱部とからなる柱体に地震時に作用する曲げモーメントの反曲点と略同じ高さの位置に存在している、こととしてもよい。この構成によれば、CFT柱部とRC柱部との境界部に作用する曲げモーメントを小さく抑えることができる。
【0008】
また、RC柱部の主鉄筋の少なくとも一部が、端部プレートを貫通してCFT柱部の鋼管内に挿入されている、こととしてもよい。この構成によれば、鋼管内に挿入された主鉄筋を通じてCFT柱部とRC柱部との間で曲げモーメントの伝達及び軸力の伝達が図られる。また、本発明の柱接合構造は、鋼管の内壁面に当該内壁面から内側に立ち上がるように設けられ、水平方向に延在する鋼管内リブ部を更に備える、こととしてもよい。この構成によれば、鋼管内リブ部を通じてCFT柱部とRC柱部との間で軸力の伝達が図られる。また、せん断キーは、コンクリート打設孔の縁に沿って延在している、こととしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構造でCFT柱とRC柱とを接合する柱接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は、本実施形態の柱接合構造を含む柱の断面図であり、(b)は、そのモーメント図である。
【
図2】柱接合構造の近傍を拡大して示す断面図である。
【
図3】(a)~(c)は、それぞれ、
図1(a)におけるIIIa-IIIa断面図、IIIb-IIIb断面図、IIIc-IIIc断面図である。
【
図4】変形例に係る柱接合構造の近傍を拡大して示す断面図である。
【
図5】他の変形例に係る柱接合構造の近傍を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明に係る柱接合構造の実施形態について詳細に説明する。
図1(a)は、本実施形態の柱接合構造1を含む柱体15の断面図である。
図2は、その柱接合構造1の近傍を拡大して示す断面図である。
図3の(a)~(c)は、それぞれ、
図1(a)におけるIIIa-IIIa断面図、IIIb-IIIb断面図、IIIc-IIIc断面図である。なお、
図3においては、柱接合構造1の特徴部分を表すために、コンクリート部分を除いた状態が図示されている。
【0012】
図1~
図3に示される柱接合構造1は、下層階101がS造で構築され上層階103がRC造で構築される建物100に適用され、下層階101と上層階103との間の境界層102に構築される。下層階101と境界層102との間には例えば鉄骨製の梁3が設けられ、下層階101と境界層102との間には鉄筋コンクリート製の梁5が設けられている。柱接合構造1は、下層階101側のCFT柱部11と上層階側のRC柱部13とを鉛直方向に接合するものであり、境界層102の階高の途中の高さに構築されている。すなわち、柱接合構造1は、梁3と梁5との間の高さの位置に構築されている。境界層102において梁3から梁5の高さまで延在する柱体15は、下部がCFT柱部11からなり上部がRC柱部13からなる。
【0013】
CFT柱部11は、柱の外殻をなす角型の鋼管17と当該鋼管17の内部に充填されるコンクリート部19とを備えている。RC柱部13は、コンクリート部21と当該コンクリート部21に埋設された主鉄筋23とを備えている。なお、RC柱部13は、主鉄筋23の周囲に巻かれたせん断補強筋等の他の鉄筋を更に備えるが、主鉄筋23以外の鉄筋については図示が省略されている。
【0014】
図2及び
図3に示されるように、柱接合構造1は端部プレート27を備えている。端部プレート27は、CFT柱部11の鋼管17の上端部に設けられた水平な平板状の鋼板からなる。端部プレート27は、平面視において鋼管17よりもやや大きい外形をなしている。そして端部プレート27は、鋼管17の外壁面から僅かに外側に張出すように鋼管17の上端面に溶接され、通しダイヤフラム状に設けられている。また、端部プレート27の中央には平面視矩形のコンクリート打設孔29が形成されている。コンクリート打設孔29は、平面視で鋼管17よりも内側の位置に形成された開口であり、CFT柱部11の施工の際にはコンクリート打設孔29を通じて鋼管17内にコンクリートが打設される。
【0015】
また、端部プレート27の上面27aには、鉛直上方に向けて突出する4つのリブ部31(せん断キー)が溶接されている。リブ部31は、例えば矩形断面の棒状部材からなる。4つのリブ部31は、鋼管17とは接しない位置に配置される。具体的には、リブ部31は、平面視で鋼管17よりも内側且つコンクリート打設孔29よりも外側の位置に配置される。更に具体的には、4つのリブ部31は、平面視矩形のコンクリート打設孔29の4辺をなす縁にそれぞれ沿って各辺と同程度の長さで延在している。すなわち、平面視において、4つのリブ部31がコンクリート打設孔29を囲むように概ね矩形状に配置されている。リブ部31は、RC柱部13のコンクリート部21に埋込まれている。
【0016】
また、端部プレート27には、主鉄筋23を挿通させるための円形の鉄筋挿通孔33が、上下に貫通して形成されている。鉄筋挿通孔33は、主鉄筋23よりもやや大径であり各主鉄筋23に対応する位置に主鉄筋23と同数存在している。各鉄筋挿通孔33は、平面視で鋼管17よりも内側且つリブ部31よりも外側の位置に形成されている。RC柱部13の主鉄筋23は、上記の鉄筋挿通孔33を通過してCFT柱部11の鋼管17内に挿入され鋼管17内で定着されており、これらの主鉄筋23の下端は境界層102の下端部近傍に位置する。鋼管17内には、挿入された主鉄筋23の周囲にせん断補強筋は設置されていない。
【0017】
更に、鋼管17の内壁面17aには、当該内壁面17aから内側に向けて水平に立ち上がるように鋼管内リブ部35が溶接されている。鋼管内リブ部35は、内壁面17aと主鉄筋23との間のスペースに収まる高さに設けられており、鋼管内リブ部35の先端は主鉄筋23に接触してもよい。鋼管内リブ部35は、例えば矩形断面の棒状部材からなる。鋼管内リブ部35は、概ね内壁面17aの幅いっぱいに亘って延在してもよい。鋼管内リブ部35は、4つの内壁面17aのそれぞれに2つずつ平行に上下に並ぶように配置されている。なお、鋼管内リブ部35の数はこれに限定されるものではなく、設計思想に応じて変更可能である。
【0018】
図1(b)は、地震時に柱体15に作用する曲げモーメントのモーメント
図Mを示す。
図1(a),(b)に示されるように、柱接合構造1は、地震時に柱体15に作用する曲げモーメントの反曲点Qと略同じ高さの位置に構築されている。より具体的には、CFT柱部11とRC柱部13とのちょうど境界に位置する端部プレート27が、上記反曲点Qと略同じ高さの位置に配置されている。反曲点Qは柱体15の中央付近である場合が多いが、中央付近から上下にずれる場合にも反曲点Qの位置に合わせて端部プレート27の高さ位置を設定すればよい。
【0019】
以上説明した柱接合構造1では、CFT柱部11の鋼管17の上端部にダイヤフラム状の端部プレート27が設けられ、端部プレート27には上に突出するリブ部31が設けられている。この構造によれば、コンクリート部21とリブ部31との支圧によりCFT柱部11とRC柱部13との間のせん断力が伝達される。すなわち、RC柱部13からのせん断力は、コンクリート部21からリブ部31、端部プレート27及び鋼管17を通じてCFT柱部11に伝達される。このようにリブ部31の存在によりCFT柱部11とRC柱部13との間でせん断力の伝達が図られるので、CFT柱部11の鋼管17内にせん断伝達のための要素を設けることが省略可能である。すなわち、例えば、鋼管17内に挿入された主鉄筋23を多数のせん断補強筋で補強するといったことが省略可能である。従って、柱接合構造を簡易化することができる。また、鋼管17内にせん断補強筋等が存在しなければ、鋼管17内に打設されるコンクリートの充填性が向上し、施工性が向上する。なお、コンクリート打設孔29もCFT柱部11とRC柱部13との間のせん断力伝達に一部寄与する。
【0020】
仮に柱接合構造1からリブ部31を除いた場合には、主に主鉄筋23のダウウエル効果によってCFT柱部11とRC柱部13との間のせん断力の伝達が図られることになる。なお、柱接合構造1における上記ダウウエル効果とは、CFT柱部11とRC柱部13との境界面における主鉄筋23自身のせん断抵抗効果であり、主鉄筋23の抜け出しを伴うずれ変形により発生する。しかしながら鉄筋のダウウエル効果は、鉄筋の降伏やその周囲のコンクリート部の圧壊が発生するような部材の終局状態で発揮される効果であるので、このダウウエル効果によるせん断力伝達を期待することは、柱体15の健全性確保の観点から好ましくない。これに対し、リブ部31を備える柱接合構造1によれば、柱体15が健全な状態におけるせん断力伝達を期待するものであるので、柱体15の健全性確保の観点からも好ましい。また、柱接合構造1では、CFT柱部11とRC柱部13との間のせん断力の伝達機構が、部材の弾性範囲から部材の終局時まで同じ伝達機構で評価可能である。
【0021】
柱接合構造1の端部プレート27は、鋼管17の上端面に設けられており、端部プレート27の上方には鋼管17が延び出していない。この構造は、柱接合構造1の設計の容易化に寄与する。すなわち、仮に、端部プレート27の上方に鋼管17の上端部が延び出していれば、当該上端部にコンクリート部21の水平方向の支圧による変形が生じるので、CFT柱部11とRC柱部13との間の応力伝達が不明瞭であり、柱接合構造1の設計法の確立が困難である。
【0022】
端部プレート27は、地震時に柱体15に作用する曲げモーメントの反曲点Qと略同じ高さの位置に存在している。すなわち、CFT柱部11とRC柱部13との境界が反曲点Qと略同じ高さに位置している。CFT柱部11とRC柱部13との境界部は構造上の弱部になり得るところ、上記構成によれば、地震時に当該境界部に作用する曲げモーメントを小さく抑えることができる。また、柱接合構造1が境界層102の中間部分に構築されているので、柱接合構造1の構成要素(リブ部31,鋼管内リブ部35等)の配置が比較的容易である。すなわち、境界層102の中間部分ではなく柱体15の柱頭部や柱脚部では、ダイヤフラム等の柱梁接合部の構成要素が邪魔になり柱接合構造1の構成要素の配置が困難な場合もある。
【0023】
また、主鉄筋23がRC柱部13から端部プレート27の鉄筋挿通孔33を貫通してCFT柱部11の鋼管17内に挿入され定着されている。この構成によれば、鋼管17内に挿入された主鉄筋23を通じてCFT柱部11とRC柱部13との間で曲げモーメントの伝達及び軸力の伝達が図られる。更に、CFT柱部11の鋼管17の内壁面17aに鋼管内リブ部35が設けられているので、鋼管内リブ部35を通じてCFT柱部11とRC柱部13との間で軸力の伝達が図られる。
【0024】
また、CFT柱部とRC柱部との接合部の周囲を鉄筋コンクリートで被覆した従来の構造の柱(充填被覆型のSRC柱)に比較して、柱接合構造1によれば、接合部の断面寸法を小さくすることができる。また、従来はCFT柱部とRC柱部との柱接合構造を柱脚部に設ける場合において、ベースプレート及びアンカーボルトを用いてCFT柱部の鋼管の端部を例えばRC造の梁等に固定する必要があった。これに対し、柱接合構造1を採用すればRC柱部13から鋼管17内に延ばした主鉄筋23によりCFT柱部11とRC柱部13との接続が図られるので、上記ベースプレート及びアンカーボルトは省略され、柱脚部における鉄筋の納まり等が改善される。
【0025】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して変形例を構成することも可能である。各実施形態等の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0026】
例えば、上述の実施形態では、端部プレート27が鋼管17の上端面に溶接され通しダイヤフラム状に設けられているが、端部プレート27は、例えば
図4に示されるように、鋼管17の内壁面17aの上端に溶接され内ダイヤフラム状に設けられてもよい。端部プレート27が内ダイヤフラム状である場合、端部プレート27と鋼管17との支圧がCFT柱部11とRC柱部13との間のせん断力伝達に一部寄与する。また、端部プレート27の上面に設けられるせん断キーはリブ部31には限定されない。例えば、端部プレート27の上面に鉄筋、頭付きスタッド、鋼板ジベル等を溶接してこれらをせん断キーとしてもよい。
【0027】
なお、
図4の例では、端部プレート27の上面が鋼管17の上端面とほぼ同じ高さに位置しているが、本発明はこの例には限定されず、
図5に示されるように、内ダイヤフラム状の端部プレート27が、鋼管17の上端面よりもやや低い位置に設置されてもよい。すなわち、
図5の例のように、鋼管17の上端の開口からやや奥の位置で、内ダイヤフラム状に端部プレート27が溶接されてもよい。この場合、端部プレート27よりも上方にはみ出した鋼管17の上端部を考えると、コンクリート部21の面外方向の支圧によってこの上端部に発生する応力が過大にならないようにする観点から、鋼管17の上端面から端部プレート27の上面までの距離は、鋼管17の肉厚の2.0倍以下であることが好ましく、その中でも1.5倍以下であれば更に好ましい。
【0028】
また、上述の実施形態では、曲げモーメントが小さい境界層102の中央の高さ位置近傍に柱接合構造1が構築されているが、柱接合構造1は柱頭部(梁5に近い位置)や柱脚部(梁3に近い位置)に構築されてもよい。また、上述の実施形態では
図3に示されるように、RC柱部13のすべての主鉄筋23が端部プレート27を貫通して鋼管17内に挿入され、境界層102の下端部近傍まで延びている。しかし、鋼管17内に挿入される主鉄筋23は、RC柱部13の主鉄筋23の一部であってもよい。この場合、端部プレート27の鉄筋挿通孔33は、鋼管17内に挿入される一部の主鉄筋23に対応する位置にのみ形成されればよい。また、主鉄筋23が境界層102の下端部近傍まで挿入されることも必須ではなく、鋼管17内における主鉄筋23の下端の位置は適宜設定されればよい。
【0029】
また、上述の実施形態ではCFT柱部11の上方にRC柱部13を接合する柱接合構造1について説明したが、本発明は、RC柱部の上方にCFT柱部を接合する柱接合構造にも適用可能である。この場合、
図1及び
図2に示される柱接合構造1を上下反転させた柱接合構造を構築すればよい。このような柱接合構造は、例えば、建物の1階のCFT柱を地下階まで延ばし、地下階の床レベル等で当該CFT柱をその下方のRC柱部と接合する場合等に適用することができる。また、上述の実施形態では、CFT柱部11及びRC柱部13が断面矩形であったが、本発明は、断面円形のCFT柱部11及びRC柱部13の接合方法にも適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…柱接合構造、11…CFT柱部、13…RC柱部、15…柱体、17…鋼管、17a…内壁面、23…主鉄筋、27…端部プレート、29…コンクリート打設孔、31…リブ部(せん断キー)、35…鋼管内リブ部、100…建物、102…境界層、Q…反曲点。