(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】過渡電圧保護デバイス
(51)【国際特許分類】
H01T 2/02 20060101AFI20250108BHJP
H01T 4/10 20060101ALI20250108BHJP
H01T 4/12 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
H01T2/02 F
H01T4/10 G
H01T4/12 F
(21)【出願番号】P 2021150221
(22)【出願日】2021-09-15
【審査請求日】2024-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】簗田 壮司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚義
(72)【発明者】
【氏名】早津 匡人
(72)【発明者】
【氏名】今井 悠介
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-326462(JP,A)
【文献】特開2011-124102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 2/02
H01T 4/10
H01T 4/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞が内部に形成されている素体と、
前記素体内に設けられ、第一方向に沿って延在している一対の内部電極と、
前記一対の内部電極のうち対応する内部電極にそれぞれ接続されている一対の外部電極と、を備え、
前記一対の内部電極は、前記第一方向において互いに対向している先端部をそれぞれ有し、
前記第一方向に直交する第二方向から見て、前記先端部は、前記第一方向と、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向とに対して傾斜している傾斜辺を有し、
前記傾斜辺の両端部を除いた部分が空洞に露出している、
過渡電圧保護デバイス。
【請求項2】
前記一対の内部電極と接するように前記素体内に設けられている放電補助部を更に備え、
前記第二方向から見て、前記放電補助部は、前記傾斜辺の両端部を除いた部分と接している、
請求項1に記載の過渡電圧保護デバイス。
【請求項3】
前記放電補助部は、前記空洞に露出している、
請求項2に記載の過渡電圧保護デバイス。
【請求項4】
前記一対の内部電極は、前記第三方向の中心位置が互いに一致するように配置されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の過渡電圧保護デバイス。
【請求項5】
前記一対の内部電極の前記第三方向の長さは、前記素体の前記第三方向の長さの6%以上65%以下である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の過渡電圧保護デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、過渡電圧保護デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、空洞部が内部に形成されている磁性基材と、空洞部内において互いに対向して配置された一対の対向電極と、一対の対向電極と接続された一対の外部電極と、を備えるESD(Electro-Static Discharge)保護デバイスが記載されている。このESD保護デバイスでは、空洞部により放電が生じ易いので、高ESD耐量を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のESD保護デバイスでは、対向電極の先端部に電界が集中するため、対向電極の先端部が劣化し易い。よって、ESD保護デバイスの長寿命化を図ることができない。
【0005】
本開示の一態様は、高ESD耐量及び長寿命化を図ることができる過渡電圧保護デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る過渡電圧保護デバイスは、空洞が内部に形成されている素体と、素体内に設けられ、第一方向に沿って延在している一対の内部電極と、一対の内部電極のうち対応する内部電極にそれぞれ接続されている一対の外部電極と、を備え、一対の内部電極は、第一方向において互いに対向している先端部をそれぞれ有し、第一方向に直交する第二方向から見て、先端部は、第一方向と、第一方向及び第二方向に直交する第三方向とに対して傾斜している傾斜辺を有し、傾斜辺の両端部を除いた部分は、空洞に露出している。
【0007】
上記過渡電圧保護デバイスでは、互いに対向している内部電極の先端部が傾斜辺を有している。このため、一対の先端部において、互いに対向し、放電する部分の長さを長くすることができる。傾斜辺の両端部を除いた部分は空洞に露出しているので、電界が集中し易い傾斜辺の両端部における放電が抑制される結果、先端部の劣化が抑制される。よって、高ESD耐量及び長寿命化を図ることができる。
【0008】
上記過渡電圧保護デバイスは、一対の内部電極と接するように素体内に設けられている放電補助部を更に備え、第二方向から見て、放電補助部は、傾斜辺の両端部を除いた部分と接していてもよい。この場合、放電補助部により放電が生じ易くなるので、更なる高ESD耐量を実現できる。第二方向から見て、放電補助部は、傾斜辺の両端部を除いた部分と接しているので、電界が集中し易い傾斜辺の両端部における放電が抑制される。よって、長寿命化を図りながら、更なる高ESD耐量を実現できる。
【0009】
放電補助部は、空洞に露出していてもよい。この場合、放電が更に生じ易くなるので、更なる高ESD耐量を容易に実現できる。
【0010】
一対の内部電極は、第三方向の中心位置が互いに一致するように配置されていてもよい。この場合、素体を第三方向において小型化し易い。
【0011】
一対の内部電極の第三方向の長さは、素体の第三方向の長さの6%以上65%以下であってもよい。65%以下の場合、製造誤差などにより内部電極が素体から露出することを抑制できる。6%以上の場合、放電特性を向上させ、高いESD耐量を実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様によれば、高ESD耐量及び長寿命化を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る過渡電圧保護デバイスを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の過渡電圧保護デバイスの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の過渡電圧保護デバイスを積層方向から見た透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0015】
図1~
図4に示される本実施形態に係る過渡電圧保護デバイス1は、図示しない電子機器に実装され、ESDなどの過渡電圧から電子機器を保護する電子部品である。過渡電圧保護デバイス1が保護する電子機器は、例えば、回路基板又は電子部品を含む。過渡電圧保護デバイス1は、素体2と、一対の外部電極3,4と、一対の内部電極5,6と、放電補助部7とを備える。内部電極5,6は、放電するように構成された放電電極である。内部電極5,6は、放電補助部7と共に、過渡電圧サプレッサを構成している。過渡電圧サプレッサは、過渡電圧吸収性能を有する。
【0016】
素体2は、直方体形状を呈している。直方体形状には、例えば、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。素体2は、外表面として、互いに対向している一対の端面2a,2bと、互いに対向している一対の側面2c,2dと、互いに対向している一対の側面2e,2fと、を有している。四つの側面2c,2d,2e,2fは、それぞれ端面2a及び端面2bと隣り合うと共に、端面2aと端面2bとを接続するように、端面2a,2bの対向方向に延在している。四つの側面2c,2d,2e,2fのうちの一側面は、保護対象の電子機器と対向する実装面として規定されている。
【0017】
本実施形態では、端面2a,2bの対向方向を第一方向D1、側面2c,2dの対向方向を第二方向D2、側面2e,2fの対向方向を第三方向D3とする。第一方向D1は、素体2の長さ方向であり、第二方向D2は、素体2の高さ方向であり、第三方向D3は、素体2の幅方向である。素体2の長さ(素体2の第一方向D1の長さ)は、例えば、0.4mm以上2.0mm以下である。素体2の高さ(素体2の第二方向D2の長さ)は、例えば、0.2mm以上1.2mm以下である。素体2の幅(素体2の第三方向D3の長さ)は、例えば、0.2mm以上1.2mm以下である。本実施形態では、素体2の長さは、1.6mmであり、素体2の高さは、0.8mmであり、素体2の幅は、0.8mmである。
【0018】
素体2の内部には、空洞Sが形成されている。空洞Sは、素体2の外表面から離間して形成されている。空洞Sは、素体2において第一方向D1、第二方向D2、及び第三方向D3のそれぞれの略中央部に形成されている。
図3に示されるように、空洞Sは、平面視で(すなわち、第二方向D2から見て)、矩形状を呈している。空洞Sの第一方向D1の長さは、例えば、0.01mm以上0.1mm以下である。空洞Sの第三方向D3の長さは、例えば、0.04mm以上0.25mm以下である。空洞Sは、内部電極5,6の間に位置しているギャップ領域Sgを含んでいる。放電ギャップ寸法は、0.01mm以上0.1mm以下である。放電ギャップ寸法は、第二方向D2から見て、後述の傾斜辺5g又は傾斜辺6gに直交する方向におけるギャップ領域Sgの長さである。
【0019】
空洞Sは、たとえば、絶縁体グリーンシート上に付与された有機ラッカーを、絶縁体グリーンシートと共に焼成することにより形成される。空洞Sは、有機ラッカーの焼失により形成される。有機ラッカーは、有機溶剤及び有機バインダを含む。有機ラッカーは、たとえば、印刷により、絶縁体グリーンシート上に付与される。
【0020】
図2に示されるように、素体2は、第二方向D2において積層された複数の絶縁体層10を有している。本実施形態では、素体2は、複数の絶縁体層10が積層されて構成されている。各絶縁体層10は、矩形板状を呈している。各絶縁体層10は、電気絶縁性を有する絶縁体であり、絶縁体グリーンシートの焼結体から構成される。実際の素体2では、各絶縁体層10は、その間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0021】
絶縁体層10は、Fe2O3、NiO、CuO、ZnO、MgO、SiO2、TiO2、MnCO3、SrCO3、CaCO3、BaCO3、Al2O3、ZrO2、B2O3などのセラミック材料によって構成される。絶縁体層10は、単独のセラミック材料によって構成されてもよいし、二種類以上のセラミック材料を混合させることによって構成されてもよい。絶縁体層10は、ガラスを含有していてもよい。絶縁体層10は、低温焼結を可能とするために酸化銅(CuO、Cu2O)を含有していてもよい。
【0022】
図1及び
図3に示されるように、外部電極3,4は、素体2の外表面に設けられている。外部電極3,4は、第一方向D1において互いに対向するように素体2に配置されている。外部電極3,4は、素体2の第一方向D1の両端部に設けられている。外部電極3,4は、第一方向D1において互いに離間している。
図2では、外部電極3,4の図示が省略されている。
【0023】
外部電極3は、端面2aに設けられ、内部電極5に接続されている。外部電極3は、端面2aを覆うと共に、その一部が側面2c,2d,2e,2f上に回り込むように形成されている。外部電極3は、端面2aの全面と、側面2c,2d,2e,2fの端面2a側の端部とに設けられている。
【0024】
外部電極4は、端面2bに設けられ、内部電極6に接続されている。外部電極4は、端面2bを覆うと共に、その一部が側面2c,2d,2e,2f上に回り込むように形成されている。外部電極4は、端面2bの全面と、側面2c,2d,2e,2fの端面2b側の端部とに設けられている。
【0025】
図2~
図4に示されるように、内部電極5,6は、互いに離間して素体2内に設けられている。内部電極5,6は、第一方向D1に沿って延在している。内部電極5,6は、ギャップ領域Sgを介して互いに対向している。内部電極5,6は、第二方向D2において同じ高さ位置(すなわち、同じ積層位置)に配置されている。内部電極5,6は、互いに同じ絶縁体層10上に配置されている。内部電極5,6は、積層方向(第二方向D2)の略中央に設けられている。
【0026】
内部電極5,6は、素体2の第三方向D3の略中央に設けられている。内部電極5,6は、第三方向D3の中心位置が互いに一致するように配置されている。内部電極5の第三方向D3の中心位置とは、内部電極5において最も第三方向D3の一方側に位置する点と、内部電極5において最も第三方向D3の他方側に位置する点との中間位置である。内部電極6の第三方向D3の中心位置とは、内部電極6において最も第三方向D3の一方側に位置する点と、内部電極6において最も第三方向D3の他方側に位置する点との中間位置である。第二方向D2から見て、内部電極5の第三方向D3の中心線は、内部電極6の第三方向D3の中心線とは、互いに一致している。第一方向D1から見て、内部電極5,6は、互いに完全に重なっている。
【0027】
内部電極5は、平面視で(すなわち、第二方向D2から見て)、四角形状を呈している。内部電極5は、接続端(接続端面)5aと、先端部5bと、側縁(側面)5cと、側縁5dと、主面5eと、主面5fと、を有している。接続端5aは、端面2aに露出し、外部電極3と接続されている。先端部5bは、外部電極3と反対側に位置している。先端部5bは、端面2bから離間している。接続端5aと先端部5bとは、第一方向D1において互いに対向している。
【0028】
各側縁5c,5dは、接続端5aと先端部5bとを接続するように第一方向D1において延在している。側縁5cは、第三方向D3において側面2eと対向している。側縁5dは、第三方向D3において側面2fと対向している。側縁5c及び側縁5dは、第三方向D3において互いに対向している。第二方向D2から見て、側縁5c及び側縁5dは、互いに平行である。側縁5cの第一方向D1の長さは、側縁5dの第一方向D1の長さよりも短い。
【0029】
主面5e,5fは、第二方向D2において互いに対向している。主面5eは、第二方向D2において側面2c(
図1参照)と対向している。主面5eは、放電補助部7と接している部分を含んでいる。主面5fは、第二方向D2において側面2d(
図1参照)と対向している。主面5fは、空洞Sに露出している部分を含んでいる。各主面5e,5fは、接続端5a、側縁5c、及び側縁5dのそれぞれと隣り合っている。
【0030】
第二方向D2から見て、先端部5bは、第一方向D1と第三方向D3とに対して傾斜している傾斜辺(傾斜面)5gを有している。傾斜辺5gの一方の端部5hは、側縁5cと傾斜辺5gとの間に形成される角部に含まれる。側縁5cと傾斜辺5gとは、鈍角をなしている。側縁5cと傾斜辺5gとの間に形成される角部は、丸められた形状を呈していてもよい。傾斜辺5gの他方の端部5iは、側縁5dと傾斜辺5gとの間に形成される角部に含まれる。側縁5dと傾斜辺5gとは、鋭角をなしている。側縁5dと傾斜辺5gとの間に形成される角部は、丸められた形状を呈していてもよい。
【0031】
内部電極6は、平面視で(すなわち、第二方向D2から見て)、四角形状を呈している。内部電極6は、接続端(接続端面)6aと、先端部6bと、側縁(側面)6cと、側縁6dと、主面6eと、主面6fと、を有している。接続端6aは、端面2bに露出し、外部電極4と接続されている。先端部6bは、外部電極4と反対側に位置している。先端部6bは、端面2aから離間している。接続端6aと先端部6bとは、第一方向D1において互いに対向している。
【0032】
各側縁6c,6dは、接続端6aと先端部6bとを接続するように第一方向D1において延在している。側縁6cは、第三方向D3において側面2eと対向している。側縁6dは、第三方向D3において側面2fと対向している。側縁6c及び側縁6dは、第三方向D3において互いに対向している。第二方向D2から見て、側縁6c及び側縁6dは、互いに平行である。側縁6cの第一方向D1の長さは、側縁6dの第一方向D1の長さよりも長い。
【0033】
主面6e,6fは、第二方向D2において互いに対向している。主面6eは、第二方向D2において側面2cと対向している。主面6eは、放電補助部7と接している部分を湯含んでいる。主面6fは、第二方向D2において側面2dと対向している。主面6fは、空洞Sに露出している部分を含んでいる。各主面6e,6fは、接続端6a、側縁6c、及び側縁6dのそれぞれと隣り合っている。
【0034】
第二方向D2から見て、先端部6bは、第一方向D1と第三方向D3とに対して傾斜している傾斜辺(傾斜面)6gを有している。傾斜辺6gの一方の端部6hは、側縁6cと傾斜辺6gとの間に形成される角部に含まれる。側縁6cと傾斜辺6gとは、鋭角をなしている。側縁6cと傾斜辺6gとの間に形成される角部は、丸められた形状を呈していてもよい。傾斜辺6gの一方の端部6iは、側縁6dと傾斜辺6gとの間に形成される角部に含まれる。側縁6dと傾斜辺6gとは、鈍角をなしている。側縁6dと傾斜辺6gとの間に形成される角部は、丸められた形状を呈していてもよい。
【0035】
内部電極5,6は、例えば、互いに同じ形状を呈している。内部電極5,6(内部電極5,6の第一方向D1の長さ)は、例えば、0.2mm以上1.8mm以下である。本実施形態では、内部電極5の長さは、側縁5dの長さであり、内部電極6の長さは、側縁6cの長さである。側縁5cの長さ及び側縁6dの長さは、例えば、0.8mm以上1.2mm以下である。
【0036】
内部電極5,6の幅(内部電極5,6の第三方向D3の長さ)は、例えば、素体2の幅(素体2の第三方向D3の長さ)の6%以上65%以下である。内部電極5,6の幅は、空洞Sの幅(空洞Sの第三方向D3の長さ)よりも長い。内部電極5,6の幅は、例えば、0.05mm以上0.3mm以下である。傾斜辺5g,6gの長さは、内部電極5,6の幅よりも長く、例えば、内部電極5,6の幅の100%以上200%以下である。傾斜辺5g,6gの長さは、例えば、0.05mm以上0.6mm以下である。内部電極5,6の厚さ(内部電極5,6の第二方向D2の長さ)は、例えば、3μm以上20μm以下である。
【0037】
先端部5b及び先端部6bは、第一方向D1において互いに対向している。傾斜辺5g及び傾斜辺6gは、互いに平行である。傾斜辺5g及び傾斜辺6gは、互いに対向している。端部5h及び端部6hは、第一方向D1において互いに対向している。端部5i及び端部6iは、第一方向D1において互いに対向している。傾斜辺5gのうち、両端部5h,5iを除いた部分5jが空洞Sに露出している。傾斜辺6gのうち、両端部6h,6iを除いた部分6jが空洞Sに露出している。
【0038】
外部電極3,4及び内部電極5,6は、例えば、Ag、Pd、Au、Pt、Cu、Ni、Al、Mo、又は、Wを含有する導体材料によって構成される。外部電極3,4及び内部電極5,6は、例えば、Ag/Pd合金、Ag/Cu合金、Ag/Au合金、又は、Ag/Pt合金によって構成されていてもよい。外部電極3,4及び内部電極5,6は、互いに同じ材料によって構成されていてもよいし、互いに異なる材料によって構成されていてもよい。
【0039】
外部電極3,4は、例えば、上記導電材料を含む導体ペーストを素体2の外表面に付与した後、導体ペーストを焼き付けることにより形成される。外部電極3,4は、めっき層を有していてもよい。内部電極5,6は、例えば、上記導電材料を含む導体ペーストを印刷により絶縁体グリーンシート上に付与した後、絶縁体グリーンシートと共に導体ペーストを焼成することにより形成される。
【0040】
放電補助部7は、内部電極5,6と接するように素体2内に設けられている。本実施形態では、放電補助部7は、内部電極5,6のうち、先端部5b,6bのみと接している。放電補助部7は、素体2の外表面から離間して設けられている。放電補助部7は、内部電極5,6を互いに接続している。放電補助部7は、平面視で(すなわち、第二方向D2から見て)、傾斜辺5g,6gの両端部5h,5i,6h,6iを除いた部分5j,6jと接している。放電補助部7は、第一方向D1に延在し、部分5jと部分6jとを接続している。放電補助部7は、内部電極5,6から露出している。放電補助部7は、空洞Sに露出している。放電補助部7は、特にギャップ領域Sgに露出している。
【0041】
放電補助部7は、平面視で、矩形状を呈している。放電補助部7は、平面視で空洞Sと同じ形状を呈し、空洞Sと重なっている。放電補助部7と空洞Sとは、平面視で完全に重なり合っている。放電補助部7の第一方向D1の長さは、例えば、0.01mm以上1mm以下である。放電補助部7の第三方向D3の長さは、例えば、0.04mm以上0.25mm以下である。放電補助部7の第二方向D2の長さは、例えば、1μm以上10μm以下である。
【0042】
放電補助部7は、絶縁体及び金属粒子を含んでいる。絶縁体は、例えば、セラミック材料により構成されている。セラミック材料としては、例えば、Fe2O3、NiO、CuO、ZnO、MgO、SiO2、TiO2、MnCO3、SrCO3、CaCO3、BaCO3、Al2O3、ZrO2、又はB2O3が挙げられる。放電補助部7は、これらのセラミック材料のうちの一種類のみを含んでもよいし、二種類以上を混合させて含んでもよい。金属粒子は、例えば、Ag、Pd、Au、Pt、Ag/Pd合金、Ag/Cu合金、Ag/Au合金、又は、Ag/Pt合金により構成されている。放電補助部7は、RuO2などの半導体粒子を含んでもよい。放電補助部7は、ガラスを含んでもよい。
【0043】
放電補助部7は、例えば、上記セラミック材料及び金属粒子などを含むスラリーを印刷により絶縁体グリーンシート上に付与した後、絶縁体グリーンシートと共にスラリーを焼成することにより形成される。
【0044】
以上説明したように、過渡電圧保護デバイス1では、互いに対向している内部電極5,6の先端部5b,6bが傾斜辺5g,6gを有している。このため、先端部5b,6bにおいて、互いに対向し、放電する部分の長さを長くすることができる。傾斜辺5gの両端部5h,5iを除いた部分5jと、傾斜辺6gの両端部6h,6iを除いた部分6jが空洞Sに露出している。空洞Sは、両端部5h,5i,6h,6iを避けて配置されている。よって、電界が集中し易い両端部5h,5i,6h,6iにおける放電が抑制される。この結果、先端部5b,6bの劣化が抑制される。よって、高ESD耐量及び長寿命化を図ることができる。
【0045】
過渡電圧保護デバイス1は、放電補助部7を備え、第二方向D2から見て、放電補助部7は、傾斜辺5g,6gの両端部5h,5i,6h,6iを除いた部分5j,6jと接している。このため、放電補助部7により放電が生じ易くなるので、更なる高ESD耐量を実現できる。放電補助部7は、第二方向D2から見て、傾斜辺5g,6gの両端部5h,5i,6h,6iを除いた部分5j,6jと接している。放電補助部7は、空洞Sと同様に、両端部5h,5i,6h,6iを避けて配置されている。このため、電界が集中し易い両端部5h,5i,6h,6iにおける放電が抑制される。よって、長寿命化を図りながら、更なる高ESD耐量を実現できる。
【0046】
放電補助部7は、空洞Sに露出している。このため、放電が更に生じ易くなる。よって、更なる高ESD耐量を容易に実現できる。
【0047】
内部電極5,6の第三方向D3の長さが素体2の第三方向D3の長さの65%よりも長いと、内部電極5,6を第三方向D3において側面2e,2fから十分に離間させることがない。このため、例えば製造誤差により、内部電極5,6が素体2に対して第三方向D3にずれて形成された場合、内部電極5,6が側面2e,2fから露出するおそれがある。本実施形態では、内部電極5,6の第三方向D3の長さは、素体2の第三方向D3の長さの65%以下である。これにより、内部電極5,6が側面2e,2fから露出することを抑制できる。
【0048】
内部電極5,6の第三方向D3の長さが短いと、パターン幅が狭くなることにより、パターンの抵抗値が高くなる。また、内部電極5,6と外部電極3,4との接続面積が小さくなるので、接続部の抵抗値も高くなる。このような抵抗値の増加は、放電特性に影響を与えるおそれがある。本実施形態では、内部電極5,6の第三方向D3の長さは、素体2の第三方向D3の長さの6%以上である。このため、放電特性に向上させ、高いESD耐量を実現できる。また、内部電極5,6と外部電極3,4との電気接続を安定させることができる。内部電極5,6の第三方向D3の長さは、素体2の第三方向D3の長さの25%以上であってもよく、50%以上であってもよい。
【0049】
内部電極5,6は、第三方向D3の中心位置が互いに一致するように配置されている。このため、内部電極5,6の第三方向D3の中心位置が互いに異なる場合に比べて、内部電極5,6が側面2e,2fから露出し難い。よって、素体2を第三方向D3において小型化し易い。
【0050】
本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0051】
上記実施形態では、放電補助部7と空洞Sとは、平面視で同形状を呈しているが、異なる形状を呈していてもよい。放電補助部7と空洞Sとは、平面視で完全に重なり合っているが、互いにずれて配置されていてもよい。放電補助部7は、両端部5h,5i,6h,6iを避けて配置されているが、放電補助部7は、平面視で両端部5h,5i,6h,6iと重なっていてもよい。過渡電圧保護デバイス1は、放電補助部7を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…過渡電圧保護デバイス、2…素体、3,4…外部電極、5,6…内部電極、5b,6b…先端部、5g,6g…傾斜辺、5h,5i,6h,6i…端部、5j,6j…部分、7…放電補助部、D1…第一方向、D2…第二方向、D3…第三方向、S…空洞。