(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】連結方法及び連結構造
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
E01D19/12
(21)【出願番号】P 2021187936
(22)【出願日】2021-11-18
【審査請求日】2024-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】柑本 慎一郎
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-206870(JP,A)
【文献】特開2016-044467(JP,A)
【文献】特開2012-077471(JP,A)
【文献】特開2021-067052(JP,A)
【文献】特開平05-179618(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0135261(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/00 - 19/16
E04B 1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1プレキャスト部材の第1端面、及び第2プレキャスト部材の第2端面が並ぶ並設方向に沿って前記第1プレキャスト部材と前記第2プレキャスト部材を連結する連結方法であって、
前記第1端面に第1支圧板が取り付けられた前記第1プレキャスト部材を設置する工程と、
前記第2端面に第2支圧板が取り付けられた前記第2プレキャスト部材を、前記第2支圧板が前記第1支圧板に対向する位置に設置する工程と、
前記第1支圧板及び前記第2支圧板を介して前記並設方向に沿って前記第1プレキャスト部材及び前記第2プレキャスト部材を緊張する工程と、
前記第1端面と前記第2端面との間に間詰材を充填する工程と、
前記間詰材が硬化した後に、硬化した前記間詰材に前記並設方向に沿ってプレストレスを付与する工程と、
を備える、
連結方法。
【請求項2】
前記プレストレスを付与する工程では、
充填した前記間詰材が硬化して前記緊張する工程における緊張を解除した後に、前記第1プレキャスト部材及び前記第2プレキャスト部材を再度緊張することによって、前記間詰材にプレストレスを付与する、
請求項1に記載の連結方法。
【請求項3】
前記第1支圧板及び前記第2支圧板は、共に樹脂製であり、
前記プレストレスを付与する工程では、
充填した前記間詰材が硬化した後に、前記第1支圧板及び前記第2支圧板がクリープ変形することによって、前記間詰材にプレストレスを付与する、
請求項1に記載の連結方法。
【請求項4】
前記第1支圧板と前記第2支圧板との間に樹脂製板を配置する工程を備え、
前記プレストレスを付与する工程では、
充填した前記間詰材が硬化した後に、前記樹脂製板がクリープ変形することによって、前記間詰材にプレストレスを付与する、
請求項1に記載の連結方法。
【請求項5】
前記第1支圧板と前記第2支圧板との間に樹脂製板を配置する工程を備え、
前記プレストレスを付与する工程では、
充填した前記間詰材が硬化した後に、前記樹脂製板を軟化させることによって、前記間詰材にプレストレスを付与する、
請求項1に記載の連結方法。
【請求項6】
第1プレキャスト部材の第1端面、及び第2プレキャスト部材の第2端面が並ぶ並設方向に沿って前記第1プレキャスト部材と前記第2プレキャスト部材が連結された連結構造であって、
前記第1端面に取り付けられた第1支圧板と、
前記第2端面に取り付けられており、前記第1支圧板に対向する第2支圧板と、
前記第1端面と前記第2端面との間に充填されており、前記並設方向に沿ってプレストレスが付与されている間詰材と、
を備える、
連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プレキャスト部材を連結させる連結方法及び連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からプレキャスト部材を連結させる連結方法及び連結構造としては種々のものが知られている。特許第4148317号公報には、プレキャスト床版の連結構造が記載されている。この連結構造は、一対のプレキャスト床版と、一対のプレキャスト床版の間に形成された縦目地と、プレストレス導入装置とを備える。縦目地にはグラウトが充填され、グラウトが硬化することによって一対のプレキャスト床版を一体化させる。
【0003】
互いに対向する一対のプレキャスト床版の各連結側面には、横孔が形成されている。連結側面では、一対の横孔が互いに対向している。一対の横孔の一方には、プレキャスト床版の上方に開口する切り欠き凹部が形成されている。プレストレス導入装置は、一対の横孔に通される筒状の中空PC鋼棒と、中空PC鋼棒の内部に押し込まれる押込み用反力PC鋼棒と、押込み用反力PC鋼棒の圧縮力を解放するストッパとを備える。プレストレス導入装置では、中空PC鋼棒の内部に押込み用反力PC鋼棒を押し込むことにより、一対のプレキャスト床版に緊張力を付与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、一対のプレキャスト部材を互いに対向するように配置し、一対のプレキャスト部材の間に間詰材を充填させる作業において、一対のプレキャスト部材の一方が他方に対して振動することがある。一対のプレキャスト部材の間に間詰材を充填させた状態で、一対のプレキャスト部材の一方が他方に対して振動すると、充填された間詰材の品質低下が懸念される。すなわち、一方のプレキャスト部材の振動によって間詰材が健全に硬化しない懸念がある。従って、硬化する間詰材の品質を確保することが求められる。
【0006】
本開示は、硬化する間詰材の品質を確保することができるプレキャスト部材の連結方法及び連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る連結方法は、第1プレキャスト部材の第1端面、及び第2プレキャスト部材の第2端面が並ぶ並設方向に沿って第1プレキャスト部材と第2プレキャスト部材を連結する連結方法であって、第1端面に第1支圧板が取り付けられた第1プレキャスト部材を設置する工程と、第2端面に第2支圧板が取り付けられた第2プレキャスト部材を、第2支圧板が第1支圧板に対向する位置に設置する工程と、第1支圧板及び第2支圧板を介して並設方向に沿って第1プレキャスト部材及び第2プレキャスト部材を緊張する工程と、第1端面と第2端面との間に間詰材を充填する工程と、間詰材が硬化した後に、硬化した間詰材に並設方向に沿ってプレストレスを付与する工程と、を備える。
【0008】
この連結方法では、第1プレキャスト部材の第1端面に取り付けられた第1支圧板に第2プレキャスト部材の第2端面に取り付けられた第2支圧板が対向する。第1プレキャスト部材及び第2プレキャスト部材は、第1支圧板及び第2支圧板を介して並設方向に沿って緊張される。従って、第1支圧板及び第2支圧板を介して第1プレキャスト部材及び第2プレキャスト部材を並設方向に沿って緊張することにより、第1プレキャスト部材及び第2プレキャスト部材のいずれかが振動したとしても当該振動を同期させて硬化する間詰材の品質を確保することができる。第1端面と第2端面との間には間詰材が充填される。そして、硬化した間詰材に並設方向に沿ってプレストレスを付与する。従って、硬化した間詰材を介して第1プレキャスト部材及び第2プレキャスト部材をより強固に一体化できるので、一体性が高められたより強固な連結構造とすることができる。
【0009】
プレストレスを付与する工程では、充填した間詰材が硬化して緊張する工程における緊張を解除した後に、第1プレキャスト部材及び第2プレキャスト部材を再度緊張することによって、間詰材にプレストレスを付与してもよい。この場合、第1支圧板及び第2支圧板を介した緊張力を解除した後に、第1プレキャスト部材及び第2プレキャスト部材を再度緊張することによって間詰材にプレストレスを付与する。従って、再緊張により間詰材を介して第1プレキャスト部材及び第2プレキャスト部材をより強固に一体化させ、間詰部もPC構造にして耐久性を向上させることができる。
【0010】
第1支圧板及び第2支圧板は、共に樹脂製であってもよい。プレストレスを付与する工程では、充填した間詰材が硬化した後に、第1支圧板及び第2支圧板がクリープ変形することによって、間詰材にプレストレスを付与してもよい。この場合、充填した間詰材が硬化した後に樹脂製の第1支圧板及び第2支圧板がクリープ変形する。第1支圧板及び第2支圧板に付与されていたプレストレスが当該クリープ変形によって間詰材に移行し、その結果、間詰材にプレストレスが付与される。従って、樹脂製の第1支圧板及び第2支圧板のクリープ変形を利用して間詰材にプレストレスを移行することができるので、前述した再緊張を不要とすることができる。
【0011】
連結方法は、第1支圧板と第2支圧板との間に樹脂製板を配置する工程を備えてもよい。プレストレスを付与する工程では、充填した間詰材が硬化した後に、樹脂製板がクリープ変形することによって、間詰材にプレストレスを付与してもよい。この場合、充填した間詰材が硬化した後に樹脂製板がクリープ変形する。従って、樹脂製板のクリープ変形によって第1支圧板及び第2支圧板に付与されていたプレストレスが硬化した間詰材に移行するので、前述した再緊張を不要とすることができる。
【0012】
連結方法は、第1支圧板と第2支圧板との間に樹脂製板を配置する工程を備えてもよい。プレストレスを付与する工程では、充填した間詰材が硬化した後に、樹脂製板を軟化させることによって、間詰材にプレストレスを付与してもよい。この場合、第1プレキャスト部材及び第2プレキャスト部材の間に充填された間詰材が硬化した後に、樹脂製板を軟化させる。樹脂製板が軟化すると、第1支圧板及び第2支圧板に付与されていたプレストレスが第1支圧板及び第2支圧板から間詰材に移行する。従って、樹脂製板の軟化によって間詰材にプレストレスを移行することができるので、前述した再緊張を不要とすることができると共にプレストレスを速やかに間詰材に移行させることができる。
【0013】
本開示に係る連結構造は、第1プレキャスト部材の第1端面、及び第2プレキャスト部材の第2端面が並ぶ並設方向に沿って第1プレキャスト部材と第2プレキャスト部材が連結された連結構造であって、第1端面に取り付けられた第1支圧板と、第2端面に取り付けられており、第1支圧板に対向する第2支圧板と、第1端面と第2端面との間に充填されており、並設方向に沿ってプレストレスが付与されている間詰材と、を備える。
【0014】
この連結構造では、第1プレキャスト部材の第1端面に取り付けられた第1支圧板と、第2プレキャスト部材の第2端面に取り付けられた第2支圧板とが並設方向に沿って互いに対向する。第1端面と第2端面の間には間詰材が充填されており、硬化した間詰材には並設方向に沿ってプレストレスが付与されている。従って、付与されるプレストレスによって間詰材を健全に硬化させることができるので、硬化する間詰材の品質を確保することができる。このプレストレスによって間詰材を介して第1プレキャスト部材及び第2プレキャスト部材をより強固に一体化できるので、一体性が高められたより強固な連結構造とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、硬化する間詰材の品質を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る連結方法及び連結構造が適用される半断面床版取り替え工事が行われる現場を模式的に示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る連結構造を示す平面図である。
【
図6】実施形態に係る連結方法の一工程を示す平面図である。
【
図7】
図6の工程の続きの工程を示す平面図である。
【
図8】
図7の工程の続きの工程を示す平面図である。
【
図9】
図8の工程の続きの工程を示す平面図である。
【
図10】
図9の工程の続きの工程を示す平面図である。
【
図11】第2実施形態に係る連結構造を示す断面図である。
【
図12】第3実施形態に係る連結構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照しながら、本開示に係るプレキャスト部材の連結方法及び連結構造の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る連結方法及び連結構造が適用される現場Aの例を示す斜視図である。
図1に示されるように、本実施形態に係る連結構造が設けられる現場Aでは、半断面床版取替工法が用いられる。半断面床版取替工法では、複数の車線Lのうち1つの車線Lのみを規制して当該車線Lの床版を取り替える。但し、本実施形態に係る連結構造及び連結方法は、半断面床版取替工法が用いられる現場A以外の現場にも適用可能である。
【0019】
例えば、現場Aは、4本の車線Lを有する4車線(片側2車線)の道路Dの床版取り替え工事を行う現場であり、4本の車線Lのうち1本のみが規制され残りの3本の車線Lは自動車Mが走行可能な道路Dとして供用される。このように、半断面床版取替工法では、1つの車線L以外の車線Lを走行可能な道路Dとして供用できるので、上り線と下り線の対面通行規制を不要にすることができると共に、自動車Mの交通量を確保することができる。
【0020】
図2は、施工中における現場Aの例を模式的に示す平面図である。
図2に示されるように、現場Aでは、施工対象の車線Lにおいて、例えば、接合方向D1に沿って並ぶ複数の床版Fが取り替えられる。本実施形態において、接合方向D1は道路Dが延びる橋軸方向である。各床版Fは、複数の床版Fが並ぶ並設方向D2に隣接する車線Lに対して分割される。並設方向D2は、例えば、道路Dの幅員方向(橋軸直角方向)である。連結構造1は、並設方向D2に沿って並ぶ複数の床版Fのうちの第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20を含んでいる。
【0021】
図3は、
図2のIII-III線断面図である。
図4は、
図2のIV-IV線断面図である。
図2、
図3及び
図4に示されるように、第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20は、例えば、共にプレキャスト床版である。第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20は、例えば、接合方向D1及び並設方向D2に延びる路面部位を構成する。すなわち、第1プレキャスト部材10の上面11、及び第2プレキャスト部材20の上面21は、道路Dの路面を成しており、自動車Mの荷重を受ける。
【0022】
第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20は、例えば、道路Dを含む道路橋の橋梁を成すプレキャスト床版であってもよい。一例として、第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20の上には、防水層を介してアスファルト層(舗装層)が設けられる。
【0023】
第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20はコンクリート製(例えばプレキャストコンクリート床版)である。例えば、第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20は、工場において予め製造され、予め製造された第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20が現場Aに搬送される。第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20は、例えば、接合方向D1に延びる桁材50に載せられる。
【0024】
第1プレキャスト部材10は、直方体状を成している。第1プレキャスト部材10には、接合方向D1に延びる複数の鉄筋15、及び並設方向D2に延びる複数の鉄筋16が埋設されている。第2プレキャスト部材20も、第1プレキャスト部材10と同様、直方体状を成しており、接合方向D1に延びる複数の鉄筋25、及び並設方向D2に延びる複数の鉄筋26が埋設されている。
【0025】
第1プレキャスト部材10は、鉛直上方を向く上面11と、鉛直下方を向く下面17とを有する。第2プレキャスト部材20は、鉛直上方を向く上面21と、鉛直下方を向く下面27とを有する。第1プレキャスト部材10の上面11、及び第2プレキャスト部材20の上面21は、並設方向D2に沿って延びる長辺を有する長方形状を呈する。
【0026】
第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20は、高さ方向D3に厚みを有する。高さ方向D3は、接合方向D1及び並設方向D2の双方に直交する方向であり、接合方向D1及び並設方向D2は互いに直交する。第1プレキャスト部材10の並設方向D2の一端に位置する端面13(第1端面)と、第2プレキャスト部材20の並設方向D2の一端に位置する端面23(第2端面)とが互いに連結することによって連結構造1が構築される。端面13及び端面23は並設方向D2に沿って互いに対向する。
【0027】
第1プレキャスト部材10は、接合方向D1を向く一対の側面12と、第2プレキャスト部材20に対向する端面13と、端面13とは反対側を向く端面14とを有する。第2プレキャスト部材20は、接合方向D1を向く一対の側面22と、第1プレキャスト部材10に対向する端面23と、端面23とは反対側を向く端面24とを有する。
【0028】
一例として、第1プレキャスト部材10は既設の先行架設床版であり、第2プレキャスト部材20は新設の後行架設床版である。この場合、第1プレキャスト部材10は自動車Mが走行可能な道路Dとして供用されているので、第2プレキャスト部材20に対して第1プレキャスト部材10が振動するということが起こりうる。
【0029】
第2プレキャスト部材20に対して第1プレキャスト部材10が振動すると、第1プレキャスト部材10と第2プレキャスト部材20の間に間詰材30を充填した後に、充填した間詰材30が上記の振動を受けて間詰材30が健全に硬化しない懸念がある。従って、第1プレキャスト部材10に振動が生じた場合であっても、当該振動を第1プレキャスト部材10と第2プレキャスト部材20とで同期させる必要がある。本実施形態に係る連結方法及び連結構造1では、第1プレキャスト部材10と第2プレキャスト部材20とで振動を同期させることが可能である。
【0030】
連結構造1には、後述する第1支圧板60及び第2支圧板70からなる連結部(以下では、単に「連結部」と称する)及び第2プレキャスト部材20に並設方向D2に沿ったプレストレス(緊張力)を付与する緊張材40が設けられる。緊張材40は、例えば、PC鋼材である。連結構造1には、複数本の緊張材40が通される。緊張材40は、第2プレキャスト部材20の並設方向D2の一端(端面24)から他端(端面23)まで貫通すると共に、端面13から第1プレキャスト部材10の内部に入り込んでいる。
【0031】
端面13から第1プレキャスト部材10の内部に入り込んだ緊張材40は、第1プレキャスト部材10の下面17から突出する凸部18に固定されている。緊張材40の一端(例えば、端面24の部分)が固定され、緊張材40の他端(例えば、凸部18から突出する部分)が牽引されることにより、連結部及び第2プレキャスト部材20に並設方向D2に沿ったプレストレス(緊張力)が付与される。
【0032】
連結構造1は、第1プレキャスト部材10の端面13に固定された第1支圧板60と、第2プレキャスト部材20の端面23に固定された第2支圧板70とを備える。第1支圧板60及び第2支圧板70は、例えば、鋼製である。第1支圧板60及び第2支圧板70は、例えば、予め(工場において)端面13,23に固定されている。しかしながら、第1支圧板60及び第2支圧板70は、現場Aで固定されるものであってもよい。
【0033】
例えば、第1プレキャスト部材10の端面13において複数(一例として2枚)の第1支圧板60が接合方向D1に並んでおり、第2プレキャスト部材20の端面23において複数(一例として2枚)の第2支圧板70が接合方向D1に並んでいる。第1支圧板60及び第2支圧板70は、並設方向D2に沿って互いに対向している。すなわち、第1支圧板60及び第2支圧板70は並設方向D2に沿って並ぶように配置される。
【0034】
例えば、(一例として1つの)連結構造1において、複数の緊張材40が導入される。
図2では、連結構造1において3本の緊張材40が導入された例を示している。複数の緊張材40は、例えば、接合方向D1に沿って並んでいる。接合方向D1に沿って並ぶ2本の緊張材40の間に第1支圧板60及び第2支圧板70が配置される。
【0035】
連結構造1は間詰材30を備える。間詰材30は、第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20を一体化する。例えば、間詰材30は、コンクリートである。しかしながら、間詰材30は、無収縮モルタル、又は高強度繊維補強モルタルであってもよい。間詰材30の種類は適宜変更可能である。
【0036】
連結構造1は第1支圧板60及び第2支圧板70の間に配置される誤差吸収部材90を備える。誤差吸収部材90は、第1支圧板60の位置と、第2支圧板70の位置との誤差を吸収するために設けられる。誤差吸収部材90は、例えば、接着剤、金網又はライナープレートである。
【0037】
例えば、第1支圧板60と第2支圧板70の位置の誤差がほとんどない場合には、誤差吸収部材90として接着剤が第1支圧板60と第2支圧板70の間に充填される。また、第1支圧板60と第2支圧板70の位置の誤差がある程度ある場合には、誤差吸収部材90として金網又はライナープレートが第1支圧板60と第2支圧板70の間に挿入される。誤差吸収部材90として、接着剤が含浸された金網が第1支圧板60と第2支圧板70の間に挿入されてもよい。また、誤差吸収部材90として、複数枚のライナープレートが挿入されてもよい。このように誤差吸収部材90の種類は適宜変更可能である。
【0038】
第2プレキャスト部材20は、例えば、複数の貫通孔29を有する。第2プレキャスト部材20において、接合方向D1に沿って複数の貫通孔29が並ぶと共に、並設方向D2に沿って複数の貫通孔29が並んでいる。
図5は、
図2のV-V線断面図である。
図2及び
図5に示されるように、第2プレキャスト部材20は、第2プレキャスト部材20の内部に埋設されると共に貫通孔29の内面29bから突出する埋設金物29cと、埋設金物29cを桁材50に締結する締結手段29dとを備える。
【0039】
桁材50は接合方向D1に延びており、複数の桁材50が並設方向D2に沿って並んでいる。複数の桁材50によって第2プレキャスト部材20が支えられる。桁材50は、例えば、フランジ51及びウェブ52を有する鋼桁である。桁材50(フランジ51)と第1プレキャスト部材10(又は第2プレキャスト部材20)との間にはシール材120が配置されている。シール材120は、後述する充填材130の漏れ止めとして機能する。締結手段29dは、埋設金物29cの内面29bから突出した部分と桁材50のフランジ51(上フランジ)とを互いに接続する。
【0040】
締結手段29dは、埋設金物29c及びフランジ51を高さ方向D3に貫通するボルト29fと、埋設金物29cの上面でボルト29fに締め付けられるナット29gと、埋設金物29cの下面でボルト29fに締め付けられるナット29hと、フランジ51の上面でボルト29fに締め付けられるナット29jと、フランジ51の下面でボルト29fに締め付けられるナット29kとを有する。
【0041】
以上の締結手段29dによって第2プレキャスト部材20と桁材50とを仮支持して精度良く設置することが可能となる。また、貫通孔29は、締結手段29dによる一体化がなされた状態で充填材130が充填される。以上、第2プレキャスト部材20が貫通孔29、埋設金物29c及び締結手段29dを有する例について説明したが、第1プレキャスト部材10が貫通孔29、埋設金物29c及び締結手段29dを有していてもよい。
【0042】
次に、本実施形態に係る第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20の連結方法について説明する。例えば、
図6に示されるように、第1支圧板60が固定された第1プレキャスト部材10を桁材50に設置する(第1プレキャスト部材10を設置する工程)。
【0043】
例えば、接合方向D1に沿って並ぶ複数の第1プレキャスト部材10と既設床版F1とが設けられ、第1プレキャスト部材10及び既設床版F1が設けられた現場Bにおける連結方法について説明する。現場Bでは、第1プレキャスト部材10は道路Dとして供用されており、既設床版F1を第2プレキャスト部材20に更新する作業が行われる。
【0044】
図6及び
図7に示されるように、既設床版F1の一部が桁材50から撤去され、桁材50に複数の第2プレキャスト部材20を載せる(第2プレキャスト部材を載せる工程)。
図7では、3枚の第2プレキャスト部材20が桁材50に載せられた例を示している。
【0045】
第2プレキャスト部材20の端面23には第2支圧板70が予め固定されており、第1プレキャスト部材10の端面13には第1支圧板60が予め固定されている。第2プレキャスト部材20を載せる工程では、第1支圧板60に第2支圧板70が対向するように第2プレキャスト部材20を設置する(第2プレキャスト部材を設置する工程)。
【0046】
第2プレキャスト部材20の貫通孔29において埋設金物29cと桁材50とを締結手段29dによって一体化させる(桁材と一体化させる工程、
図5参照)。具体的には、埋設金物29cと桁材50のフランジ51にボルト29fを通し、ナット29g,29h,29j,29kによって埋設金物29cとフランジ51とを締結することによって一体化させる。そして、貫通孔29に充填材130を充填する(貫通孔に充填材を充填する工程)。
【0047】
次に、第1支圧板60と第2支圧板70の間に誤差吸収部材90を配置する(誤差吸収部材を配置する工程、
図4参照)。例えば、第1支圧板60と第2支圧板70の間の隙間が微小である場合には、第1支圧板60及び第2支圧板70の間に誤差吸収部材90として接着剤を充填する。また、第1支圧板60と第2支圧板70の間の隙間が微小でない場合には、第1支圧板60及び第2支圧板70の間に誤差吸収部材90として金網又はライナープレートを挿入する。
【0048】
続いて、
図8に示されるように、第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20に緊張材40を通す。緊張材40によって連結部及び第2プレキャスト部材20を並設方向D2に引っ張ることでプレストレス(緊張力)を連結部及び第2プレキャスト部材20に付与する。
【0049】
一例として、並設方向D2に沿って延びる3本の緊張材40を第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20に挿入する。挿入した各緊張材40を並設方向D2に引っ張ることによってプレストレスを連結部及び第2プレキャスト部材20に付与する(緊張する工程)。
【0050】
一例として、緊張材40を第2プレキャスト部材20から第1プレキャスト部材10の凸部18まで通し、緊張材40を並設方向D2に引っ張ることによって連結部及び第2プレキャスト部材20に並設方向D2に沿ったプレストレスを付与する。なお、この状態では、連結部及び第2プレキャスト部材20にプレストレスが付与されている。
【0051】
図9に示されるように、連結部及び第2プレキャスト部材20に並設方向D2へのプレストレスを付与した状態で間詰材30を充填する。このとき、第1プレキャスト部材10(端面13)と第2プレキャスト部材20(端面23)との間に間詰材30を充填する(間詰材を充填する工程)。
【0052】
並設方向D2に互いに隣接する第1プレキャスト部材10と第2プレキャスト部材20の間、及び接合方向D1に互いに隣接する一対の第2プレキャスト部材20の間、のそれぞれに間詰材30を打設する。なお、既設床版F1を交通開放する場合には、既設床版F1と第2プレキャスト部材20の間を仮覆工板F3で塞いでもよい。
【0053】
打設した間詰材30が硬化した後には、例えば、緊張材40による連結部及び第2プレキャスト部材20の緊張を解放する(緊張を解放する工程)。その後、緊張材40によって連結部及び第2プレキャスト部材20を再度緊張する(再度緊張する工程、間詰材にプレストレスを付与する工程)。
【0054】
間詰材30が硬化するまでは連結部及び第2プレキャスト部材20にプレストレスが付与されていた。間詰材30が硬化した後に、緊張材40による緊張力(圧縮力)を一度解除して緊張材40による再度の緊張を行うことにより、硬化した間詰材30にプレストレスを付与することが可能となる。すなわち、第1支圧板60及び第2支圧板70を介して付与されていたプレストレスを間詰材30に付与することができる。
【0055】
以上、間詰材30にプレストレスを付与する工程の後に、第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20の連結方法の一連の工程が完了する。
図10に示されるように、前述した各工程を既設床版F1に対して実行することにより、既設床版F1を第2プレキャスト部材20に更新することができる。
【0056】
次に、本実施形態に係る連結方法及び連結構造1から得られる作用効果について説明する。本実施形態に係る連結方法では、
図4に示されるように、第1プレキャスト部材10の端面13に固定された第1支圧板60に第2プレキャスト部材20の端面23に固定された第2支圧板70が対向する。第1支圧板60と第2支圧板70の間には誤差吸収部材90が配置される。従って、第1支圧板60及び第2支圧板70の間に誤差吸収部材90が介在することにより、第1プレキャスト部材10と第2プレキャスト部材20における位置の誤差を吸収できる。
【0057】
連結部及び第2プレキャスト部材20は、第1支圧板60及び第2支圧板70を介して並設方向D2に沿って緊張される。従って、第1支圧板60及び第2支圧板70を介して連結部及び第2プレキャスト部材20を並設方向D2に沿って緊張することにより、第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20のいずれかが振動したとしても当該振動を同期させて硬化する間詰材30の品質を確保することができる。
【0058】
端面13と端面23との間には間詰材30が充填され、間詰材30が硬化した後に第1支圧板60及び第2支圧板70を介した緊張を解除する。そして、硬化した間詰材30に並設方向D2に沿ってプレストレスを付与する。従って、硬化した間詰材30を介して第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20をより強固に一体化でき、間詰部をPC構造にして耐久性を高めることができる。
【0059】
本実施形態に係る連結方法において、プレストレスを付与する工程では、充填した間詰材30が硬化して緊張する工程における緊張を解除した後に、連結部及び第2プレキャスト部材20を再度緊張することによって、間詰材30にプレストレスを付与する。この場合、第1支圧板60及び第2支圧板70を介した緊張力を解除した後に、連結部及び第2プレキャスト部材20を再度緊張することによって間詰材30にプレストレスを付与する。従って、再緊張により間詰材30を介して第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20をより強固に一体化させることができ、間詰部をPC構造にして耐久性を高めることができる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る連結構造1Aについて
図11を参照しながら説明する。第2実施形態に係る連結構造1Aの一部の構成は、前述した連結構造1の一部の構成と同一である。従って、以下では、連結構造1の構成と重複する説明を同一の符号を付して適宜省略する。
【0061】
連結構造1Aでは、前述した誤差吸収部材90に代えて、第1支圧板60Aと第2支圧板70Aの間に樹脂製板190が配置される。樹脂製板190は、例えば、樹脂(樹脂プラスチック)によって構成されている。樹脂製板190の材料は、一例として、EPDM(エチレンプロピレンゴム)であるが、これに限定されない。樹脂製板190は、鋼板と比較して軟化しやすい。樹脂製板190は、荷重を継続的に受けると時間と共に変形するクリープ特性を有する。すなわち、樹脂製板190は、鋼板よりも変形しやすい性質を有する。
【0062】
間詰材30が硬化した後の状態では、樹脂製板190のクリープ変形により、プレストレスは第1支圧板60A及び第2支圧板70Aから間詰材30に移行している。具体的には、間詰材30の硬化前に第1支圧板60A及び第2支圧板70Aに付与されていたプレストレスは、間詰材30の硬化後に間詰材30に移行する。従って、間詰材30には並設方向D2に沿ったプレストレスが付与されている。
【0063】
第2実施形態に係る第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20の連結方法について説明する。以下では、第1実施形態に係る第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20の連結方法と重複する説明を適宜省略する。まず、桁材50に第1支圧板60Aが固定された第1プレキャスト部材10を設置し(第1プレキャスト部材を設置する工程)、第2支圧板70Aが固定された第2プレキャスト部材20を桁材50に載せて、第2支圧板70Aを第1支圧板60Aに対向させる(第2プレキャスト部材を設置する工程)。
【0064】
次に、第1支圧板60Aと第2支圧板70Aの間に樹脂製板190を配置し(樹脂製板を配置する工程)、第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20に緊張材40を通す。緊張材40によって連結部及び第2プレキャスト部材20を並設方向D2に引っ張ることでプレストレス(緊張力)を連結部及び第2プレキャスト部材20に付与する(緊張する工程)。
【0065】
連結部及び第2プレキャスト部材20に並設方向D2へのプレストレスを付与した状態で、端面13及び端面23の間に間詰材30を打設する(間詰材を打設する工程)。打設した間詰材30が硬化した後には、第1支圧板60A及び第2支圧板70Aを介して付与されていたプレストレスが、樹脂製板190のクリープ変形によって間詰材30に移行する(硬化した間詰材にプレストレスを付与する工程)。すなわち、第1支圧板60A及び第2支圧板70Aに付与されていたプレストレスが、樹脂製板190のクリープ変形によって間詰材30に移行する。以上のようにプレストレスを間詰材30に移行させた後に、一連の工程が完了する。
【0066】
以上、第2実施形態に係る連結方法は、第1支圧板60Aと第2支圧板70Aとの間に樹脂製板190を配置する工程を備える。プレストレスを付与する工程では、充填した間詰材30が硬化した後に、樹脂製板190がクリープ変形することによって、間詰材30にプレストレスを付与する。この場合、充填した間詰材30が硬化した後に樹脂製板190がクリープ変形する。従って、樹脂製板190のクリープ変形によって第1支圧板60A及び第2支圧板70Aに付与されていたプレストレスが硬化した間詰材30に移行するので、前述した再緊張を不要とすることができる。
【0067】
以上、樹脂製板190がクリープ変形する例について説明した。しかしながら、第2実施形態において、第1支圧板60A及び第2支圧板70Aが共に樹脂製(例えば樹脂製板190と同一の材料)であってもよい。そして、プレストレスを付与する工程では、充填した間詰材30が硬化した後に、第1支圧板60A及び第2支圧板70Aがクリープ変形することによって、間詰材30にプレストレスを付与してもよい。この場合も、第1支圧板60A及び第2支圧板70Aに付与されていたプレストレスが当該クリープ変形によって間詰材30に移行し、その結果、間詰材30にプレストレスが付与される。従って、連結部及び第2プレキャスト部材20を再度緊張する作業を省略できるので、樹脂製板190がクリープ変形する場合と同様の効果が得られる。
【0068】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係る連結構造1Bについて
図12を参照しながら説明する。第3実施形態に係る連結構造1Bは、第1支圧板60B及び第2支圧板70Bと、樹脂製板190と、樹脂製板190を通電する通電手段95とを備える。通電手段95は樹脂製板190を通電によって加熱する。第1支圧板60B及び第2支圧板70Bの形状は、例えば、矩形状である。
【0069】
通電手段95は樹脂製板190を通電して樹脂製板190を加熱して軟化させるために設けられる。
図12では、通電手段95の構成を模式的に示している。
図12に示されるように、一例として、通電手段95は、樹脂製板190から延びる一対の電線95bと、各電線95bを介して樹脂製板190を通電する電力供給部95cとを備える。一例として、電線95bはニクロム線であり、電力供給部95cはバッテリである。
【0070】
次に、第3実施形態に係る第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20の連結方法について説明する。まず、第1プレキャスト部材10を設置する工程、第2プレキャスト部材20を設置する工程、樹脂製板190を配置する工程、緊張する工程、及び間詰材30を打設する工程は、前述した第1実施形態及び第2実施形態と同様である。
【0071】
例えば、間詰材30を打設する前までに、通電手段95の電線95bを予め間詰材30が打設される部分から外に引き出しておき、この状態で間詰材30を打設し間詰材30を硬化させる。間詰材30が硬化した後に通電手段95が樹脂製板190への通電を行うことによって樹脂製板190を軟化させる(樹脂製板を軟化させる工程)。
【0072】
緊張材40によって第1支圧板60B及び第2支圧板70Bに付与されていたプレストレスは、間詰材30の硬化後に、樹脂製板190の軟化によって間詰材30に移行する。このように、通電及び軟化によって第1支圧板60B及び第2支圧板70Bを介して付与されていたプレストレスが間詰材30に移行する(硬化した間詰材にプレストレスを付与する工程)。以上の工程を経て、第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20の連結方法における一連の工程が完了する。
【0073】
以上、第3実施形態において、プレストレスを付与する工程では、充填した間詰材30が硬化した後に、樹脂製板190を軟化させることによって、間詰材30にプレストレスを付与する。この場合、第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20の間に充填された間詰材30が硬化した後に、樹脂製板190を軟化させる。
【0074】
本実施形態では、通電によって樹脂製板190に熱を付与することにより樹脂製板190を軟化させる。樹脂製板190が軟化すると、第1支圧板60B及び第2支圧板70Bに付与されていたプレストレスが第1支圧板60B及び第2支圧板70Bから間詰材30に移行する。従って、樹脂製板190の軟化によって間詰材30にプレストレスを移行することができるので、前述した再緊張を不要とすることができると共にプレストレスを速やかに間詰材30に移行させることができる。従って、プレキャスト部材の連結作業の作業性を更に向上させることができる。
【0075】
第3実施形態では、第1支圧板60B及び第2支圧板70Bが矩形状である例について説明した。しかしながら、第1支圧板60B及び第2支圧板70Bの形状は、特に限定されない。また、第1支圧板60B及び第2支圧板70Bの少なくともいずれかは、軟化した樹脂製板190が入り込む(逃げる)穴171(又は凹部)を備えていてもよい。
図12では、第2支圧板70Bに穴171が形成されている例を示している。この場合、樹脂製板190の軟化した樹脂部分を穴171(又は凹部)に逃がすことができる。第1支圧板60Bが上記の穴171を備えていてもよい。
【0076】
以上、本開示に係る連結方法及び連結構造の実施形態について説明した。しかしながら、本開示に係る連結方法及び連結構造は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用されるものであってもよい。すなわち、連結方法の各工程の内容及び順序、並びに、連結構造の各部の形状、大きさ、材料、数及び配置態様は、上記の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0077】
例えば、前述の第2実施形態ではクリープ変形する樹脂製の第1支圧板60A及び第2支圧板70Aについて説明した。しかしながら、第1支圧板60A及び第2支圧板70Aの一方のみがクリープ変形する材料によって構成されていてもよい。例えば、前述の実施形態では、複数の車線Lを有する道路Dにおいて半断面床版取替工法が用いられる現場Aに適用される連結方法及び連結構造1について説明した。しかしながら、本開示に係る連結方法及び連結構造は、半断面床版取替工法以外の工法が用いられる現場にも適用可能であり、適用可能な現場の種類は特に限定されない。
【0078】
前述の実施形態では、既設床版F1を第2プレキャスト部材20に更新する作業について説明した。しかしながら、本開示に係る連結方法及び連結構造は、道路橋の拡幅、又は床版の新設にも適用可能である。更に、前述の実施形態では、床版Fである第1プレキャスト部材10及び第2プレキャスト部材20について説明した。しかしながら、本開示に係る第1プレキャスト部材及び第2プレキャスト部材は、道路橋の床版以外のものであってもよく、例えば、梁同士を連結する連結構造、柱同士を連結する連結構造、又はボックスカルバートにおける連結構造を構成するものであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1,1A,1B…連結構造、10…第1プレキャスト部材、11…上面、12…側面、13…端面(第1端面)、14…端面、15,16…鉄筋、17…下面、18…凸部、20…第2プレキャスト部材、21…上面、22…側面、23…端面(第2端面)、24…端面、25,26…鉄筋、27…下面、29…貫通孔、29b…内面、29c…埋設金物、29d…締結手段、29f…ボルト、29g,29h,29j,29k…ナット、30…間詰材、40…緊張材、50…桁材、51…フランジ、52…ウェブ、60,60A,60B…第1支圧板、70,70A,70B…第2支圧板、90…誤差吸収部材、95…通電手段、95b…電線、95c…電力供給部、120…シール材、130…充填材、171…穴、190…樹脂製板、A,B…現場、D…道路、D1…接合方向、D2…並設方向、D3…高さ方向、F…床版、F1…既設床版、F3…仮覆工板、L…車線、M…自動車。