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特許7615021遺伝子発現の選択的スプライシング調節および治療方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】遺伝子発現の選択的スプライシング調節および治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20250108BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20250108BHJP
   A61K 31/551 20060101ALI20250108BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20250108BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20250108BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250108BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20250108BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20250108BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20250108BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K31/519
A61K31/551
A61K31/7088
A61K45/00
A61P25/00
A61P37/06
C12N15/63 100Z
A61P43/00 121
C12N15/09 110
C12N15/113 Z
C12N15/864 100Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021506457
(86)(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 US2019045401
(87)【国際公開番号】W WO2020033473
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】62/838,223
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/872,417
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/715,756
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/837,701
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】301040958
【氏名又は名称】ザ・チルドレンズ・ホスピタル・オブ・フィラデルフィア
【氏名又は名称原語表記】THE CHILDREN’S HOSPITAL OF PHILADELPHIA
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィッドソン ビヴァリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】モンティス アレハンドロ マス
(72)【発明者】
【氏名】ハンドリー アミール アル
(72)【発明者】
【氏名】ラナム ポール ティー.
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-508075(JP,A)
【文献】Nucleic Acids Research,2006年,Vol. 34, No. 5, e37,p. 1-7,doi:10.1093/nar/gkl034
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 48/00
A61K 31/519
A61K 31/551
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1発現制御要素に機能的に連結されたキメラ遺伝子を含む、第1発現カセットである発現カセットを含む、哺乳動物における疾患を処置するための医薬であって、
該キメラ遺伝子が、選択的スプライシングを受けるエクソンを有するミニ遺伝子を含む第1部分と、タンパク質をコードする第1のRNAをコードする第2部分とを含み、該第1部分が該第2部分の5'側にあり、該第2部分が開始コドンもしくはスタートコドンを欠き、該選択的スプライシングを受けるエクソンが翻訳開始調節配列を含み、該タンパク質の発現が、該選択的スプライシングを受けるエクソンの包含によって制御され、該医薬が、該選択的スプライシングを受けるエクソンのスプライシングを調節する低分子スプライシング修飾剤と組み合わせて用いられ
前記低分子スプライシング修飾剤が、
である、
前記医薬。
【請求項2】
前記第2部分によりコードされる第1のRNAが治療タンパク質をコードする、請求項1記載の医薬。
【請求項3】
前記治療タンパク質が、疾患に関連するタンパク質欠損を修正し、それによって疾患を処置する、請求項2記載の医薬。
【請求項4】
前記タンパク質がトランス活性化因子タンパク質である、請求項1記載の医薬。
【請求項5】
第2のRNAをコードする核酸配列を含む第2発現カセットをさらに含み、該核酸配列が、トランス活性化因子タンパク質が結合する第2発現制御要素に機能的に連結され、それによって哺乳動物における該第2のRNAの発現を増加させ疾患を処置する、請求項4記載の医薬。
【請求項6】
第2のRNAをコードする核酸配列を含む第2発現カセットと併用されるものであり、該核酸配列が、トランス活性化因子タンパク質が結合する第2発現制御要素に機能的に連結され、それによって哺乳動物における該第2のRNAの発現を増加させ疾患を処置する、請求項4記載の医薬。
【請求項7】
第2発現カセットの核酸配列によってコードされる前記RNAが阻害性RNAである、請求項5または6記載の医薬。
【請求項8】
前記阻害性RNAが、siRNA、shRNA、またはmiRNAである、請求項7記載の医薬。
【請求項9】
前記阻害性RNAが、疾患に関連する異常性タンパク質または異常タンパク質の発現を阻害するかまたは減少させ、それによって疾患を処置する、請求項7または8記載の医薬。
【請求項10】
前記第1発現制御要素が、構成的プロモーター、細胞タイプ特異的プロモーター、または誘導性プロモーターである、請求項1~9のいずれか一項記載の医薬。
【請求項11】
前記第1発現カセットの第1部分と前記第1発現カセットの第2部分とが、切断可能ペプチドによって分離されている、請求項1~10のいずれか一項記載の医薬。
【請求項12】
前記切断可能ペプチドが、自己切断ペプチド、薬物感受性プロテアーゼ、または内在性エンドプロテアーゼの基質である、請求項11記載の医薬。
【請求項13】
前記第1発現カセットの第2部分によってコードされる第1のRNAによってコードされる前記トランス活性化因子または前記タンパク質の増加した発現が、SMN2エクソン7の包含によって提供される、請求項1~12のいずれか一項記載の医薬。
【請求項14】
前記SMN2エクソン7の包含が、低分子スプライシング修飾剤の存在によってトリガーされる、請求項13記載の医薬。
【請求項15】
前記第1発現カセットまたは前記第2発現カセットがウイルスベクターに含まれる、請求項1~14のいずれか一項記載の医薬。
【請求項16】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レンチウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターから選択される、請求項15記載の医薬。
【請求項17】
前記疾患がタンパク質欠損を原因とする、請求項1~16のいずれか一項記載の医薬。
【請求項18】
前記疾患が遺伝的欠陥を原因とする、請求項1~16のいずれか一項記載の医薬。
【請求項19】
前記疾患が神経変性疾患である、請求項1~16のいずれか一項記載の医薬。
【請求項20】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1~19のいずれか一項記載の医薬。
【請求項21】
中枢神経系または脳へ投与するための、請求項1~20のいずれか一項記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は、2019年7月10日に出願された米国仮出願第62/872,417号、2019年4月24日に出願された米国仮出願第62/838,223号、2019年4月23日に出願された米国仮出願第62/837,701号および2018年8月7日に出願された米国仮出願第62/715,756号に基づく優先権の恩典を主張し、これら各仮出願の内容はすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
1. 分野
本開示は概して分子生物学および医学の分野に関する。より具体的には、本開示は、例えば阻害性RNA、治療タンパク質、またはCRISPR/Cas9システムの一部分などをコードする標的遺伝子の発現を調整するために選択的スプライシング調節を使用する方法に関係する。
【背景技術】
【0003】
2. 関連技術の説明
ハンチントン病(HD)は、主に成人を冒し、まれに小児を冒すこともある、常染色体顕性神経変性疾患である。HDは、特異的遺伝子におけるトリプレットCAGリピートの伸長に起因する少なくとも9種の異なる神経変性疾患を含むポリグルタミン(ポリQ)障害ファミリーの一部である1,2。HTTタンパク質は遍在的に発現しているが、最も影響を受ける組織は脳であり、初期に打撃を受けるのは線条体および運動皮質である。HD患者は、疾患発症後10~20年で死に至る進行性神経変性を有する2。HDには治療法がなく、現在の処置は対症療法である3。HD動物モデルを使った刺激的な初期研究により、変異型HTTの発現量を低減させると、疾患発症後に開始した場合でさえ、疾患は改善することが実証された4,5
【0004】
HTTレベルを低下させるためにいくつかの方法が使用されているが6~10、RNA干渉(RNAi)はその一つである8,9,11~14。RNAiは、小さなRNA分子が翻訳阻害またはmRNA分解によって特異的遺伝子の発現を調節する生物学的プロセスである15,16。科学者は、細胞内にRNAiトリガーを送達するために、さまざまな方法を考案してきた。それらには、低分子干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)または人工miRNA(amiRNA)がある(図1)。いずれも、RNAi経路にエンゲージした後に標的遺伝子の発現を効率よく低減させるように使用されてきた。報文は、RNAiで毒性ポリQタンパク質のレベルを低減させると疾患表現型が改善されることを、数種のポリグルタミンリピート病モデルを使って示している8 , 11,12。これらの研究は、HDを含む神経変性疾患のRNAiに基づく処置が可能であることの証拠となる。非ヒト霊長類(NHP)における短期間(6週間)データと、NHPにおける他の長期間(6ヶ月)データは、持続的RNAi治療が安全であることを示唆している17,18
【0005】
しかし、患者へのRNAi治療の反復施行または生涯にわたる施行には、意図せぬ遺伝子のサイレンシングおよび細胞性RNAi経路の持続的な流用(co-opting)が時間の経過と共に毒性を誘導する可能性を考慮する必要がある。オフターゲットサイレンシングは、RNAi配列と、完全にまたは部分的に相補的な意図せぬmRNA転写産物との相互作用から起こる19~21。標準的な検索アルゴリズムで完全に相補的なオフシークエンス(off-sequence)サイレンシングの可能性を低減させることはできるが、発現したRNAi部分と別の配列との間に部分的相補性がある場合に起こる意図せぬサイレンシングがmiRNA様の抑制を引き起こすことを避けるのは困難である19,22。オフターゲットサイレンシングに加えて、RNAi経路の流用が細胞性RNAi機構を飽和させ、内在性miRNA調節を妨げることで、毒性を生じる場合もある23。この毒性は、shRNAよりも効率よくプロセシングされる人工miRNA配列としてトリガーを送達すれば、最小限に抑えることができる24,25。これらのトリガーは、最初のドローシャ(Drosha)/DGCR8プロセシング工程の前に、RNAi経路に入る15。弱いプロモーター(H1またはApoE/hAATプロモーター)を使用することでも、このタイプの毒性を低減させることができる26。これらのアプローチは細胞において試験した場合またはマウスにおいて試験した場合には有望であるが、これらのプロモーターからの何十年にもわたる持続的発現がヒトにおいて安全であるかどうかを予測することは難しい。したがって、細胞において外因性RNAi配列が発現する時期と量を制御することができるRNAi発現システムは、構成的発現プラットフォームより、はるかに好ましい。この調節システム(regulated system)は、遺伝子サイレンシングがその個体の生涯にわたって必要とされるヒト疾患には、とりわけ重要である。
【発明の概要】
【0006】
概要
本発明は、遺伝子発現を調節するための機序として、pre-mRNAの選択的スプライシングを利用する。pre-mRNAのスプライシングは、イントロンを除去する転写後調節プロセスであり、タンパク質コードエクソン、エクソンの一部、ならびに選択的5'および3'非コードエクソンの選択的な包含(inclusion)または排除(exclusion)によって、タンパク質の多様性を生じる。この選択的エクソンスプライシングは、非コードRNA(例えばsiRNA)生産またはタンパク質生産のための上流デザイナープロモーター配列に結合するように設計された哺乳類トランス活性化因子などの特異的タンパク質の生産を制御するために、調節スイッチとして使用することができる。本発明は、哺乳動物細胞および哺乳動物対象、例えばヒト、例えばハンチントン病および脊髄小脳失調症などの神経変性疾患を持つヒトや、トリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)の欠損などといった遺伝的欠損を持つヒトにおける、非コードRNAおよびタンパク質の発現を調節するための革新的方法を提供する。
【0007】
したがって本発明は、細胞および対象における、例えば哺乳動物細胞および哺乳動物対象における、非コードRNAおよびタンパク質の発現を制御する(すなわち、発現を増加させるまたは発現を減少させるなど、発現を調整する)方法を提供する。
【0008】
一態様において、本方法は、
第1発現制御要素に機能的に連結されたキメラ遺伝子を含む、第1発現カセットであって、キメラ遺伝子が、選択的スプライシングを受けるミニ遺伝子を含む第1部分と、タンパク質をコードするRNAをコードする第2部分とを含み、タンパク質の発現が、第1部分の選択的スプライシングによって制御される、第1発現カセット
を細胞に投与し、それによってタンパク質の発現を提供かつ/または制御する、工程を含む。
【0009】
別の一態様において、タンパク質を提供する方法は、
第1発現制御要素に機能的に連結されたキメラ遺伝子を含む、第1発現カセットであって、キメラ遺伝子が、選択的スプライシングを受けるミニ遺伝子を含む第1部分と、タンパク質をコードするRNAをコードする第2部分とを含み、タンパク質の発現が、第1部分の選択的スプライシングによって制御される、第1発現カセット
を対象に投与する工程を含む。
【0010】
本発明は、神経変性疾患、遺伝的欠陥を原因とする疾患、または遺伝子発現の欠損を原因とする疾患などの疾患状態を処置する方法を、さらに提供する。
【0011】
一態様において、哺乳動物における疾患を処置する方法は、
第1発現制御要素に機能的に連結されたキメラ遺伝子を含む、第1発現カセットであって、キメラ遺伝子が、選択的スプライシングを受けるミニ遺伝子を含む第1部分と、タンパク質をコードするRNAをコードする第2部分とを含み、タンパク質の発現が、第1部分の選択的スプライシングによって制御される、第1発現カセット
を哺乳動物に投与する工程を含む。
【0012】
いくつかの態様において、タンパク質をコードするRNAをコードする第2部分は、翻訳停止コドンを含むか、開始(initiation)コドンもしくはスタート(start)コドンを欠いているか、タンパク質を生産するためのオープンリーディングフレームではないか、またはタンパク質の一部のみをコードする。いくつかの態様において、第1部分の選択的スプライシングは、転写産物を改変することによって停止コドンを欠失させもしくは無効にするか、開始コドンもしくはスタートコドンを導入するか、オープンリーディングフレームを回復させるか、またはタンパク質の欠落部分を提供する。
【0013】
いくつかの態様において、第1部分は第2部分の5'側にある。いくつかの態様において、第1部分はインフレームの翻訳停止コドンを含む。いくつかの態様において、第1部分の選択的スプライシングは翻訳停止コドンを除去する。
【0014】
いくつかの態様において、タンパク質はトランス活性化因子タンパク質である。いくつかの態様において、タンパク質はレポータータンパク質ではない。
【0015】
一態様において、本方法は、
第1発現制御要素に機能的に連結されたキメラ遺伝子を含む、第1発現カセットであって、キメラ遺伝子は、選択的スプライシングを受けるミニ遺伝子を含む第1部分と、第2発現制御要素に結合するトランス活性化因子タンパク質をコードする第2部分とを含み、トランス活性化因子の発現が、第1部分の選択的スプライシングによって制御される、第1発現カセット、ならびに
該トランス活性化因子タンパク質が結合する第2発現制御要素に機能的に連結されたRNAをコードする核酸配列を含む、第2発現カセット
を細胞に投与し、それによって哺乳動物細胞における該RNAの発現を増加させる、工程を含む。
【0016】
別の一態様において、RNAまたはタンパク質の発現を制御する方法は、
第1発現制御要素に機能的に連結されたキメラ遺伝子を含む、第1発現カセットであって、キメラ遺伝子が、選択的スプライシングを受けるミニ遺伝子を含む第1部分と、第2発現制御要素に結合するトランス活性化因子タンパク質をコードする第2部分とを含み、トランス活性化因子の発現が、第1部分の選択的スプライシングによって制御される、第1発現カセット、ならびに
該トランス活性化因子タンパク質が結合する第2発現制御要素に機能的に連結されたRNAをコードする核酸配列を含む、第2発現カセット
を対象に投与し、それによって対象における該RNAの発現を増加させる、工程を含む。
【0017】
一態様において、哺乳動物における疾患を処置する方法は、
第1発現制御要素に機能的に連結されたキメラ遺伝子を含む、第1発現カセットであって、キメラ遺伝子が、選択的スプライシングを受けるミニ遺伝子を含む第1部分と、第2発現制御要素に結合するトランス活性化因子タンパク質をコードする第2部分とを含み、トランス活性化因子の発現が、第1部分の選択的スプライシングによって制御される、第1発現カセット、または
該トランス活性化因子タンパク質が結合する第2発現制御要素に機能的に連結されたRNAをコードする核酸配列を含む、第2発現カセット
を哺乳動物に投与し、それによって哺乳動物における該RNAの発現を増加させ疾患を処置する、工程を含む。
【0018】
いくつかの態様において、RNAは阻害性RNA、例えばsiRNA、shRNA、またはmiRNAなどである。いくつかの態様において、阻害性RNAは、疾患に関連する異常性(aberrant)タンパク質または異常(abnormal)タンパク質の発現を阻害するかまたは減少させ、それによって疾患を処置する。
【0019】
いくつかの態様において、RNAは治療タンパク質をコードする。いくつかの態様において、治療タンパク質は疾患に関連するタンパク質欠損を修正し、それによって疾患を処置する。
【0020】
いくつかの態様において、RNAはCas9タンパク質をコードする。いくつかの態様において、本方法は、第3発現制御要素に機能的に連結されたガイドRNAをコードする核酸配列を含む第3発現カセットを対象に投与する工程をさらに含む。いくつかの態様において、第3発現制御要素は構成的プロモーターである。いくつかの態様において、Cas9タンパク質とガイドRNAの発現は遺伝的疾患を修正する。いくつかの態様において、Cas9タンパク質はヌクレアーゼ機能を欠き、Cas9タンパク質とガイドRNAの発現は遺伝子の発現を阻害する。
【0021】
いくつかの態様において、第1発現制御要素は構成的プロモーター、細胞タイプ特異的プロモーター、または誘導性プロモーターである。
【0022】
いくつかの態様において、第1発現カセットの第1部分と第1発現カセットの第2部分とは、切断可能ペプチドによって分離されている。いくつかの態様において、切断可能ペプチドは、自己切断ペプチド、薬物感受性プロテアーゼ、または内在性エンドプロテアーゼの基質である。
【0023】
いくつかの態様において、選択的スプライシングを受けるミニ遺伝子のスプライシングは、低分子スプライシング修飾剤によって調節される。いくつかの態様において、選択的スプライシングを受けるミニ遺伝子のスプライシングは、細胞における疾患状態によって調節される。いくつかの態様において、選択的スプライシングを受けるミニ遺伝子のスプライシングは、細胞タイプまたは組織タイプによって調節される。
【0024】
いくつかの態様において、トランス活性化因子またはタンパク質の増加した発現は、キメラ遺伝子の第1部分中の選択的スプライシングを受けるエクソンの包含によって提供される。いくつかの態様において、包含されるエクソンは翻訳開始調節配列を含む。
【0025】
いくつかの態様において、トランス活性化因子またはタンパク質の増加した発現は、SMN2エクソン7の包含によって提供される。いくつかの態様において、SMN2エクソン7の包含は、低分子スプライシング修飾剤の存在によってトリガーされる。いくつかの態様において、本方法は、低分子スプライシング修飾剤を細胞または対象に投与し、それによって該RNAまたは該タンパク質の発現を増加させる、工程をさらに含む。いくつかの態様において、低分子スプライシング修飾剤は、
である。
【0026】
いくつかの態様において、トランス活性化因子またはタンパク質の増加した発現は、キメラ遺伝子の第1部分中の選択的スプライシングを受けるエクソンのスキップによって提供される。いくつかの態様において、スキップされるエクソンは停止コドンを含む。いくつかの態様において、トランス活性化因子またはタンパク質の増加した発現は、MDM2エクソン4~11のスキップによって提供される。いくつかの態様において、MDM2エクソン4~11のスキップは、低分子スプライシング修飾剤の存在によってトリガーされる。いくつかの態様において、低分子スプライシング修飾剤はスデマイシン(sudemycin)である。
【0027】
いくつかの態様において、トランス活性化因子の増加した発現は、トランス活性化因子の転写産物へのエクソンの挿入によって与えられる。
【0028】
いくつかの態様において、トランス活性化因子の増加した発現は、トランス活性化因子の転写産物におけるエクソンのスキップによって提供される。
【0029】
いくつかの態様において、エクソンは、治療タンパク質などのタンパク質の全部または一部をコードする転写産物に挿入される。
【0030】
いくつかの態様において、転写産物に挿入されるエクソンは、転写産物中に導入された場合に、エクソンがタンパク質コード配列を回復させるか、または転写産物のタンパク質コード配列をインフレームにするように、配列を含む。それゆえに、転写産物へのエクソンの導入は、完全なタンパク質配列が転写産物によってコードされることを可能にするか、またはエクソンは、転写産物中のオープンリーディングフレームを提供しもしくは回復させ、それによって治療タンパク質などのタンパク質に翻訳される配列を提供しまたは回復させる。
【0031】
いくつかの態様において、転写産物に挿入されるエクソンは、転写産物に存在しないスタートコドンまたは開始コドン(例えばATG)を含む。エクソンが転写産物にインフレームで導入された場合、これは、コードされているタンパク質、例えば治療タンパク質の翻訳を可能にする。
【0032】
いくつかの態様において、転写産物に挿入されるエクソンは、転写産物中の翻訳停止コドンを欠失させるかまたは無効にする。エクソンが転写産物に導入された場合、翻訳停止コドンの欠失または無効化は、コードされているタンパク質、例えば治療タンパク質の翻訳を可能にする。
【0033】
いくつかの態様において、第1発現カセットまたは第2発現カセットは、ウイルスベクターに含まれる。
【0034】
さまざまな態様において、疾患は神経変性疾患である。さまざまな態様において、神経変性疾患はポリ-グルタミンリピート病である。さまざまな態様において、ポリ-グルタミンリピート病はハンチントン病(HD)を含む。
【0035】
さまざまな態様において、神経変性疾患は脊髄小脳失調症(SCA)である。特定の局面において、SCAは、SCA1、SCA2、SCA3、SCA4、SCA5、SCA6、SCA7、SCA8、SCA9、SCA10、SCA11、SCA12、SCA13、SCA14、SCA16、SCA17、SCA18、SCA19、SCA20、SCA21、SCA22、SCA23、SCA24、SCA25、SCA26、SCA27、SCA28、またはSCA29のいずれかである。
【0036】
さまざまな態様において、投与は中枢神経系(CNS)への投与である。特定の局面において、投与は脳への投与である。特定の局面において、投与は脳室への投与である。
【0037】
さまざまな態様において、第1発現カセットもしくは第2発現カセットまたはタンパク質をコードする核酸配列を含む発現カセットは、ウイルスベクターを構成する。一定の局面において、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レンチウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターから選択される。
【0038】
さまざまな態様において、AAVベクターはAAVキャプシドタンパク質を含むAAV粒子を含み、第1発現カセットもしくは第2発現カセットまたはタンパク質をコードする核酸配列を含む発現カセットは、一対のAAV逆方向末端反復(inverted terminal repeat)(ITR)の間に挿入される。特定の局面において、AAVキャプシドタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-rh10およびAAV-2i8のVP1、VP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-Rh10もしくはAAV-2i8のVP1、VP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質に対して70%以上の同一性を有するキャプシドタンパク質からなる群に由来するかまたは前記群より選択される。特定の局面において、一対のITRのうちの1つまたは複数は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-rh10もしくはAAV-2i8のITR、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-Rh10もしくはAAV-2i8のITR配列に対して70%以上の同一性を有するITRに由来するか、前記ITRを含むか、または前記ITRからなる。
【0039】
さまざまな態様において、第1発現カセットもしくは第2発現カセットまたはタンパク質をコードする核酸配列を含む発現カセットは、プロモーターを含む。
【0040】
さまざまな態様において、第1発現カセットもしくは第2発現カセットまたはタンパク質をコードする核酸配列を含む発現カセットは、エンハンサー要素を含む。
【0041】
さまざまな態様において、第1発現カセットもしくは第2発現カセットまたはタンパク質をコードする核酸配列を含む発現カセットは、CMVエンハンサーまたはニワトリβアクチンプロモーターを含む。
【0042】
さまざまな態様において、第1発現カセットもしくは第2発現カセットまたはタンパク質をコードする核酸配列を含む発現カセットは、イントロン、フィラーポリヌクレオチド配列(filler polynucleotide sequence)および/もしくはポリAシグナルまたはそれらの組合せのうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0043】
さまざまな態様において、複数のAAV粒子が投与される。
【0044】
いくつかの態様において、AAV粒子は約1×106~約1×1018vg/kgの用量で投与される。
【0045】
いくつかの態様において、AAV粒子は、約1×107~1×1017、約1×108~1×1016、約1×109~1×1015、約1×1010~1×1014、約1×1010~1×1013、約1×1010~1×1013、約1×1010~1×1011、約1×1011~1×1012、約1×1012~×1013、または約1×1013~1×1014ベクターゲノム毎キログラム哺乳動物(vg/kg)の用量で投与される。
【0046】
いくつかの態様において、AAV粒子は、1×106~1×1016vg/mlを約0.5~4mlの用量で投与される。
【0047】
いくつかの態様において、本方法は複数のAAV空キャプシドを投与する工程を含む。
【0048】
いくつかの態様では、空のAAVキャプシドが哺乳動物に投与されるAAV粒子と共に製剤化される。さまざまな局面において、AAV空キャプシドは、1.0~100倍過剰量のAAVベクター粒子と共に投与または製剤化される。さまざまな局面において、AAV空キャプシドは、AAV粒子に対して約1.0~100倍過剰量のAAV空キャプシドと共に投与または製剤化される。
【0049】
いくつかの態様において、投与は脳室内注射および/または実質内注射である。
【0050】
いくつかの態様において、投与は、脳室、くも膜下腔および/または髄腔内腔(intrathecal space)への投与である。
【0051】
いくつかの態様において、投与は、上衣細胞、軟膜細胞(pial cell)、内皮細胞、脳室細胞、髄膜細胞、グリア細胞および/またはニューロンなどの神経系細胞への投与である。さまざまな局面において、該上衣細胞、軟膜細胞、内皮細胞、脳室細胞、髄膜細胞、グリア細胞および/またはニューロンは、RNAiを発現する。
【0052】
さまざまな態様において、投与は、吻側側脳室(rostral lateral ventricle)、および/または尾側側脳室(caudal lateral ventricle)、および/または右側脳室、および/または左側脳室、および/または右吻側側脳室、および/または左吻側側脳室、および/または右尾側側脳室、および/または左尾側側脳室への投与である。
【0053】
さまざまな態様において、投与は脳内の単一箇所における投与である。
【0054】
さまざまな態様において、投与は脳内の1~5箇所における投与である。
【0055】
さまざまな態様において、投与は、哺乳動物の大槽、脳室内腔(intraventricular space)、脳室、くも膜下腔、髄腔内腔および/または上衣のいずれかへの単回投与または複数回投与である。
【0056】
さまざまな態様において、本方法は、ハンチントン病(HD)または脊髄小脳失調症(SCA)の有害な症状を低減させる。さまざまな局面において、有害な症状は、初期症状もしくは後期症状、行動症状、パーソナリティ症状もしくは言語症状、運動機能症状、および/または認知症状である。
【0057】
さまざまな態様において、本方法は、哺乳動物の記憶欠損、記憶障害、または認知機能を増加させるか、改善するか、維持するか、回復させるか、またはレスキューする。
【0058】
さまざまな態様において、本方法は、協調の喪失、動作緩慢、または身体のこわばりの悪化を改善するか、阻害するか、低減させるか、または防止する。
【0059】
さまざまな態様において、本方法は、れん縮(spasm)または落ち着きのない運動(fidgety movement)の悪化を改善するか、阻害するか、低減させるか、または防止する。
【0060】
さまざまな態様において、本方法は、抑うつまたは易怒性の悪化を改善するか、阻害するか、低減させるか、または防止する。
【0061】
さまざまな態様において、本方法は、物品の取り落し、転倒、バランスの喪失、発話困難、または嚥下困難の悪化を改善するか、阻害するか、低減させるか、または防止する。
【0062】
さまざまな態様において、本方法は、系統立てる(organize)能力の悪化を改善するか、阻害するか、低減させるか、または防止する。
【0063】
さまざまな態様において、本方法は、失調または反射低下の悪化を改善するか、阻害するか、低減させるか、または防止する。
【0064】
さまざまな態様において、本方法は、発作または振戦 発作、または振戦の悪化を改善するか、阻害するか、低減させるか、または防止する。
【0065】
さまざまな態様において、哺乳動物は非齧歯類哺乳動物である。さまざまな局面において、非齧歯類哺乳動物は霊長類である。さまざまな局面において、霊長類はヒトである。さまざまな局面において、ヒトは50歳以上である。さまざまな局面において、ヒトは小児である。さまざまな局面において、小児は約1歳~約8歳である。
【0066】
さまざまな態様において、本方法は、1種または複数種の免疫抑制剤を投与する工程を含む。さまざまな局面において、免疫抑制剤は、ベクターの投与の前に、またはベクターの投与と同時に投与される。さまざまな局面において、免疫抑制剤は抗炎症剤である。
【0067】
本明細書において使用する場合、指定された構成要素に関して「本質的に含まない」とは、本明細書において、指定されたその構成要素が組成物中に意図的に製剤化されているわけではないこと、および/または夾雑物として存在するにすぎないこと、もしくは微量にしか存在しないことを意味するために使用される。それゆえに、組成物の何らかの意図せぬ汚染に起因する指定された構成要素の総量は、0.05%よりはるかに低く、好ましくは0.01%未満である。最も好ましいのは、指定された構成要素の量を標準的な分析方法では検出することができない組成物である。
【0068】
本願明細書において使用する場合、「1つ(a)」または「1つ(an)」は、1つまたは複数を意味しうる。本願特許請求の範囲において使用する場合、単語「含む(comprising)」と一緒に使用される単語「1つ(a)」または「1つ(an)」は、1つまたは1つより大きい数を意味しうる。
【0069】
請求項における「または」という用語の使用は、代替的選択肢だけを指すと明示的に示されている場合または代替的選択肢が相互に排他的である場合を除き、「および/または」を意味するために使用される。ただし本開示は、代替的選択肢だけを指す定義も、「および/または」を指す定義もサポートする。本明細書において使用する場合、「別の(another)」とは、少なくとももう一つの、またはそれ以上の、を意味しうる。
【0070】
本願の全体を通して「約」という用語は、値が、その値を決定するために使用される器具、方法に固有の誤差の変動、または研究対象間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0071】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。ただし、本発明の要旨および範囲内にあるさまざまな改変および修飾は、この詳細な説明から当業者には明らかになるから、詳細な説明および具体的実施例は、本発明の好ましい態様を示してはいるものの、単なる例示であることを理解すべきである。
【0072】
本明細書において、数多くの態様および局面を記述するために、本発明を、肯定的な言葉(affirmative language)を使って、広く開示する。本発明は、物質または材料、方法工程および条件、プロトコール、または手順など、特定の内容が完全にまたは部分的に排除された態様も、特に包含する。例えば、本発明の一定の態様または局面では、材料および/または方法工程が排除される。したがって本明細書において、本発明は何を包含しないかという観点から本発明が表現されることは、一般にないが、本発明において明示的に排除されない局面は、本明細書において開示されている。
[本発明1001]
(a)第1発現制御要素に機能的に連結されたキメラ遺伝子を含む、第1発現カセットであって、該キメラ遺伝子が、選択的スプライシングを受けるミニ遺伝子を含む第1部分と、タンパク質をコードするRNAをコードする第2部分とを含み、該タンパク質の発現が、第1部分の選択的スプライシングによって制御される、第1発現カセット
を哺乳動物細胞に投与する工程を含む、哺乳動物細胞におけるタンパク質の発現を提供および/または制御する方法。
[本発明1002]
(a)第1発現制御要素に機能的に連結されたキメラ遺伝子を含む、第1発現カセットであって、該キメラ遺伝子が、選択的スプライシングを受けるミニ遺伝子を含む第1部分と、タンパク質をコードするRNAをコードする第2部分とを含み、該タンパク質の発現が、第1部分の選択的スプライシングによって制御される、第1発現カセット
を対象に投与する工程を含む、対象にタンパク質を提供する方法。
[本発明1003]
(a)第1発現制御要素に機能的に連結されたキメラ遺伝子を含む、第1発現カセットであって、該キメラ遺伝子が、選択的スプライシングを受けるミニ遺伝子を含む第1部分と、タンパク質をコードするRNAをコードする第2部分とを含み、該タンパク質の発現が、第1部分の選択的スプライシングによって制御される、第1発現カセット
を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物における疾患を処置する方法。
[本発明1004]
前記タンパク質をコードするRNAをコードする第2部分が、翻訳停止コドンを含むか、開始コドンもしくはスタートコドンを欠いているか、タンパク質を生産するためのオープンリーディングフレームではないか、またはタンパク質の一部のみをコードする、本発明1003の方法。
[本発明1005]
前記第1部分の選択的スプライシングが、転写産物を改変することによって停止コドンを欠失させもしくは無効にするか、開始コドンもしくはスタートコドンを導入するか、オープンリーディングフレームを回復させるか、またはタンパク質の欠落部分を提供する、本発明1004の方法。
[本発明1006]
前記第1部分が第2部分の5'側にある、本発明1001~1005のいずれかの方法。
[本発明1007]
前記第1部分がインフレームの翻訳停止コドンを含む、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
前記第1部分の選択的スプライシングが翻訳停止コドンを除去する、本発明1007の方法。
[本発明1009]
前記タンパク質がトランス活性化因子タンパク質である、本発明1001~1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
前記タンパク質がトランス活性化因子タンパク質であり、かつ
前記方法が、哺乳動物細胞におけるRNAの発現を制御する方法であって、
(b)トランス活性化因子タンパク質が結合する第2発現制御要素に機能的に連結されたRNAをコードする核酸配列を含む、第2発現カセット
を細胞に投与し、それによって哺乳動物細胞におけるRNAの発現を増加させる、工程
をさらに含む、
本発明1001および1004~1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
前記タンパク質がトランス活性化因子タンパク質であり、かつ
前記方法が、対象におけるRNAの発現を制御する方法であって、
(b)トランス活性化因子タンパク質が結合する第2発現制御要素に機能的に連結されたRNAをコードする核酸配列を含む、第2発現カセット
を対象に投与し、それによって対象におけるRNAの発現を増加させる、工程
をさらに含む、
本発明1002および1004~1009のいずれかの方法。
[本発明1012]
前記タンパク質がトランス活性化因子タンパク質であり、かつ
前記方法が、哺乳動物における疾患を処置する方法であって、
(b)トランス活性化因子タンパク質が結合する第2発現制御要素に機能的に連結されたRNAをコードする核酸配列を含む、第2発現カセット
を哺乳動物に投与し、それによって哺乳動物におけるRNAの発現を増加させ疾患を処置する、工程
をさらに含む、
本発明1003および1004~1009のいずれかの方法。
[本発明1013]
前記RNAが阻害性RNAである、本発明1010~1012のいずれかの方法。
[本発明1014]
前記阻害性RNAが、siRNA、shRNA、またはmiRNAである、本発明1013の方法。
[本発明1015]
前記阻害性RNAが、疾患に関連する異常性タンパク質または異常タンパク質の発現を阻害するかまたは減少させ、それによって疾患を処置する、本発明1013または1014の方法。
[本発明1016]
前記RNAが治療タンパク質をコードする、本発明1001~1015のいずれかの方法。
[本発明1017]
前記治療タンパク質が、疾患に関連するタンパク質欠損を修正し、それによって疾患を処置する、本発明1016の方法。
[本発明1018]
前記RNAがCas9タンパク質をコードする、本発明1001~1015のいずれかの方法。
[本発明1019]
第3発現制御要素に機能的に連結されたガイドRNAをコードする核酸配列を含む、第3発現カセット
を対象に投与する工程をさらに含む、本発明1018の方法。
[本発明1020]
前記第3発現制御要素が構成的プロモーターである、本発明1019の方法。
[本発明1021]
前記Cas9タンパク質と前記ガイドRNAの発現が遺伝的疾患を修正する、本発明1019または1020の方法。
[本発明1022]
前記Cas9タンパク質がヌクレアーゼ機能を欠き、前記Cas9タンパク質と前記ガイドRNAの発現が遺伝子の発現を阻害する、本発明1018~1020のいずれかの方法。
[本発明1023]
前記第1発現制御要素が、構成的プロモーター、細胞タイプ特異的プロモーター、または誘導性プロモーターである、本発明1001~1022のいずれかの方法。
[本発明1024]
前記第1発現カセットの第1部分と前記第1発現カセットの第2部分とが、切断可能ペプチドによって分離されている、本発明1001~1023のいずれかの方法。
[本発明1025]
前記切断可能ペプチドが、自己切断ペプチド、薬物感受性プロテアーゼ、または内在性エンドプロテアーゼの基質である、本発明1024の方法。
[本発明1026]
前記選択的スプライシングを受けるミニ遺伝子のスプライシングが、低分子スプライシング修飾剤によって調節される、本発明1001~1025のいずれかの方法。
[本発明1027]
前記選択的スプライシングを受けるミニ遺伝子のスプライシングが、細胞における疾患状態によって調節される、本発明1001~1025のいずれかの方法。
[本発明1028]
前記選択的スプライシングを受けるミニ遺伝子のスプライシングが、細胞タイプまたは組織タイプによって調節される、本発明1001~1025のいずれかの方法。
[本発明1029]
前記トランス活性化因子または前記タンパク質の増加した発現が、キメラ遺伝子の第1部分中の選択的スプライシングを受けるエクソンの包含によって提供される、本発明1001~1028のいずれかの方法。
[本発明1030]
前記包含されるエクソンが翻訳開始調節配列を含む、本発明1029の方法。
[本発明1031]
前記トランス活性化因子または前記タンパク質の増加した発現が、SMN2エクソン7の包含によって提供される、本発明1001~1030のいずれかの方法。
[本発明1032]
前記SMN2エクソン7の包含が、低分子スプライシング修飾剤の存在によってトリガーされる、本発明1031の方法。
[本発明1033]
前記低分子スプライシング修飾剤を前記細胞または前記対象に投与し、それによって前記RNAまたは前記タンパク質の発現を増加させる、工程
をさらに含む、本発明1032の方法。
[本発明1034]
前記低分子スプライシング修飾剤が、
である、本発明1032または1033の方法。
[本発明1035]
前記トランス活性化因子または前記タンパク質の増加した発現が、キメラ遺伝子の第1部分中の選択的スプライシングを受けるエクソンのスキップによって提供される、本発明1001~1028のいずれかの方法。
[本発明1036]
前記スキップされるエクソンが停止コドンを含む、本発明1035の方法。
[本発明1037]
前記トランス活性化因子または前記タンパク質の増加した発現が、MDM2エクソン4~11のスキップによって提供される、本発明1001~1036のいずれかの方法。
[本発明1038]
MDM2エクソン4~11のスキップが、低分子スプライシング修飾剤の存在によってトリガーされる、本発明1037の方法。
[本発明1039]
前記低分子スプライシング修飾剤がスデマイシン(sudemycin)である、本発明1038の方法。
[本発明1040]
前記第1発現カセットまたは前記第2発現カセットがウイルスベクターに含まれる、本発明1001~1039のいずれかの方法。
[本発明1041]
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レンチウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターから選択される、本発明1040の方法。
[本発明1042]
前記疾患がタンパク質欠損を原因とする、本発明1003~1006および1010~1041のいずれかの方法。
[本発明1043]
前記疾患が遺伝的欠陥を原因とする、本発明1003~1006および1010~1041のいずれかの方法。
[本発明1044]
前記疾患が神経変性疾患である、本発明1003~1006および1010~1041のいずれかの方法。
[本発明1045]
前記神経変性疾患がポリ-グルタミンリピート病を含む、本発明1044の方法。
[本発明1046]
前記ポリ-グルタミンリピート病がハンチントン病(HD)を含む、本発明1045の方法。
[本発明1047]
前記神経変性疾患が、脊髄小脳失調症(SCA)、任意でSCA1~SCA29のいずれかを含む、本発明1044の方法。
[本発明1048]
前記哺乳動物がヒトである、本発明1001~1047のいずれかの方法。
[本発明1049]
前記投与が中枢神経系への投与である、本発明1002~1006および1008~1048のいずれかの方法。
[本発明1050]
前記投与が脳への投与である、本発明1002~1006および1008~1049のいずれかの方法。
[本発明1051]
前記投与が脳室への投与である、本発明1050の方法。
[本発明1052]
前記AAVベクターが、AAVキャプシドタンパク質を含むAAV粒子を含み、前記第1発現カセットまたは前記第2発現カセットが、一対のAAV逆方向末端反復(inverted terminal repeat)(ITR)の間に挿入される、本発明1041~1051のいずれかの方法。
[本発明1053]
前記AAVキャプシドタンパク質が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-rh10およびAAV-2i8のVP1、VP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-Rh10もしくはAAV-2i8のVP1、VP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質に対して70%以上の同一性を有するキャプシドタンパク質からなる群に由来するかまたは前記群より選択される、本発明1052の方法。
[本発明1054]
前記一対のITRのうちの1つまたは複数が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-rh10もしくはAAV-2i8のITR、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-Rh10もしくはAAV-2i8のITR配列に対して70%以上の同一性を有するITRに由来するか、前記ITRを含むか、または前記ITRからなる、本発明1052の方法。
[本発明1055]
前記第1発現カセットまたは前記第2発現カセットがプロモーターを含む、本発明1001~1054のいずれかの方法。
[本発明1056]
前記第1発現カセットまたは前記第2発現カセットがエンハンサー要素を含む、本発明1001~1055のいずれかの方法。
[本発明1057]
前記第1発現カセットまたは前記第2発現カセットが、CMVエンハンサーまたはニワトリβアクチンプロモーターを含む、本発明1001~1055のいずれかの方法。
[本発明1058]
前記第1発現カセットまたは前記第2発現カセットが、イントロン、フィラーポリヌクレオチド配列および/もしくはポリAシグナルまたはそれらの組合せのうちの1つまたは複数をさらに含む、本発明1001~1057のいずれかの方法。
[本発明1059]
複数のウイルスベクターが投与される、本発明1041~1058のいずれかの方法。
[本発明1060]
前記ウイルスベクターが、約1×10 6 ~約1×10 18 ベクターゲノム毎キログラム(vg/kg)の用量で投与される、本発明1059の方法。
[本発明1061]
前記ウイルスベクターが、約1×10 7 ~1×10 17 、約1×10 8 ~1×10 16 、約1×10 9 ~1×10 15 、約1×10 10 ~1×10 14 、約1×10 10 ~1×10 13 、約1×10 10 ~1×10 13 、約1×10 10 ~1×10 11 、約1×10 11 ~1×10 12 、約1×10 12 ~×10 13 、または約1×10 13 ~1×10 14 vg/kg哺乳動物の用量で投与される、本発明1059の方法。
[本発明1062]
前記ウイルスベクターが、1×10 6 ~1×10 16 vg/mlを約0.5~4mlの用量で投与される、本発明1059の方法。
[本発明1063]
複数の空のウイルスキャプシドを投与する工程をさらに含む、本発明1041~1062のいずれかの方法。
[本発明1064]
前記空のウイルスキャプシドが、哺乳動物に投与されるウイルス粒子と共に製剤化される、本発明1063の方法。
[本発明1065]
前記空のウイルスキャプシドが、1.0~100倍過剰量のウイルスベクター粒子または空のウイルスキャプシドと共に投与または製剤化される、本発明1063または1064の方法。
[本発明1066]
前記空のウイルスキャプシドが、ウイルスベクター粒子に対して約1.0~100倍過剰量の空のウイルスキャプシドと共に投与または製剤化される、本発明1063または1064の方法。
[本発明1067]
前記送達または前記投与が、脳室内注射および/または実質内注射を含む、本発明1001~1066のいずれかの方法。
[本発明1068]
脳室、くも膜下腔、および/または髄腔内腔にそれを投与または送達する工程を含む、本発明1001~1068のいずれかの方法。
[本発明1069]
前記細胞が、上衣細胞、軟膜細胞、内皮細胞、脳室細胞、髄膜細胞、グリア細胞、および/またはニューロンを含む、本発明1001~1068のいずれかの方法。
[本発明1070]
前記上衣細胞、前記軟膜細胞、前記内皮細胞、前記脳室細胞、前記髄膜細胞、前記グリア細胞、および/または前記ニューロンが、前記RNAまたは前記タンパク質を発現する、本発明1069の方法。
[本発明1071]
前記投与が脳内の単一箇所における投与である、本発明1003~1006および1010~1070のいずれかの方法。
[本発明1072]
前記投与が脳内の1~5箇所における投与である、本発明1003~1006および1010~1070のいずれかの方法。
[本発明1073]
前記投与が、吻側側脳室、および/または尾側側脳室、および/または右側脳室、および/または左側脳室、および/または右吻側側脳室、および/または左吻側側脳室、および/または右尾側側脳室、および/または左尾側側脳室への投与である、本発明1003~1006および1010~1070のいずれかの方法。
[本発明1074]
前記投与が、哺乳動物の大槽、脳室内腔、脳室、くも膜下腔、髄腔内腔、および/または上衣のいずれかへの単回投与または複数回投与である、本発明1003~1006および1010~1070のいずれかの方法。
[本発明1075]
ハンチントン病(HD)または脊髄小脳失調症(SCA)の有害な症状を低減させる、本発明1003~1006および1010~1070のいずれかの方法。
[本発明1076]
前記有害な症状が、初期症状もしくは後期症状、行動症状、パーソナリティ症状もしくは言語症状、運動機能症状、および/または認知症状を含む、本発明1075の方法。
[本発明1077]
前記哺乳動物の記憶欠損、記憶障害、または認知機能を増加させるか、改善するか、維持するか、回復させるか、またはレスキューする、本発明1002~1006および1008~1076のいずれかの方法。
[本発明1078]
協調の喪失、動作緩慢、または身体のこわばりの悪化を改善するか、阻害するか、低減させるか、または防止する、本発明1002~1006および1008~1077のいずれかの方法。
[本発明1079]
れん縮または落ち着きのない運動(fidgety movement)の悪化を改善するか、阻害するか、低減させるか、または防止する、本発明1002~1006および1008~1078のいずれかの方法。
[本発明1080]
抑うつまたは易怒性の悪化を改善するか、阻害するか、低減させるか、または防止する、本発明1002~1006および1008~1079のいずれかの方法。
[本発明1081]
物品の取り落し、転倒、バランスの喪失、発話困難または嚥下困難の悪化を改善するか、阻害するか、低減させるか、または防止する、本発明1002~1006および1008~1080のいずれかの方法。
[本発明1082]
系統立てる(organize)能力の悪化を改善するか、阻害するか、低減させるか、または防止する、本発明1002~1006および1008~1081のいずれかの方法。
[本発明1083]
失調または反射低下の悪化を改善するか、阻害するか、低減させるか、または防止する、本発明1002~1006および1008~1082のいずれかの方法。
[本発明1084]
発作または振戦 発作または振戦の悪化を改善するか、阻害するか、低減させるか、または防止する、本発明1002~1006および1008~1083のいずれかの方法。
[本発明1085]
前記哺乳動物が非齧歯類哺乳動物である、本発明1001~1084のいずれかの方法。
[本発明1086]
前記非齧歯類哺乳動物が霊長類である、本発明1085の方法。
[本発明1087]
前記霊長類がヒトである、本発明1086の方法。
[本発明1088]
前記ヒトが50歳以上である、本発明1087の方法。
[本発明1089]
前記ヒトが小児である、本発明1088の方法。
[本発明1090]
前記小児が約1歳~約8歳である、本発明1089の方法。
[本発明1091]
1種または複数種の免疫抑制剤を投与する工程をさらに含む、本発明1003~1006および1010~1090のいずれかの方法。
[本発明1092]
前記免疫抑制剤が、ベクターの投与もしくは送達の前に、またはベクターの投与もしくは送達と同時に投与される、本発明1091の方法。
[本発明1093]
前記免疫抑制剤が抗炎症剤である、本発明1091の方法。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図面は本明細書の一部を形成し、本発明の一定の局面をさらに明示するために含まれる。本明細書において提示する具体的態様の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つまたは複数を参照することにより、本発明はより良く理解される。
【0074】
図1】哺乳動物細胞における発現をサイレンシングするためのRNAi経路の流用を表す。
図2】調節プロモーターシステム(regulated promoter system)の作用を表す。SMN2のエクソン7の包含は、LMI070によって誘導され、それがe6/7/8:トランス活性化因子の翻訳を可能にする。
図3】最適化されたプロモーターコンストラクトがトランス活性化因子に応答することを表す。図3aは、RNAipへのトランス活性化因子の結合がルシフェラーゼの発現を誘導することを表す。図3bは、HEK293細胞のトランスフェクションの24時間後にルシフェラーゼ活性によって決定した場合に、試験したプロモーターバリアント(TA、TF2、TF4およびTF5)が、ごくわずかな発現しかなくて空のプロモータープラスミドがトランスフェクトされた対照細胞(NO)と同等であること、そしてトランス活性化に応答して完全に活性化されることを表している。
図4】改変SMN2/トランス活性化因子ミニ遺伝子が、スプライシングされたRNA転写産物アイソフォームを発現して、エクソン7を構成的に排除するか(CSI3)、エクソン7を構成的に包含し(CSI5)、最適化されたRNAiプロモーターのバックグラウンド発現に影響を及ぼすことを表す。図4aは、トランス活性化因子が、自己切断2Aペプチドおよびエクソン6~7とエクソン8の5'端とを含むSMN2ミニ遺伝子およびSMN2スプライシングを再現するのに必要な最小イントロン性介在配列の下流にクローニングされたことを表す。SMN2/トランス活性化因子ミニ遺伝子中の3'エクソン7スプライシング部位と5'エクソン7スプライシング部位は、エクソン7を構成的に排除するように改変されるか(CSI3、3'改変)、またはエクソン7を構成的に包含するように改変された(CSI5、5'改変)。図4bは、CSIについては、転写産物の10%がエクソン7を含み、一方、CSI3およびCSI5では、エクソン7が包含されるかまたは排除されることを表す。図4cは、エクソン7を構成的に排除する改変(CSI3、3'改変)が、RNAiプロモーターのバックグラウンド活性化を最小限に抑えたことを表す。
図5】LIM070に応答したCSIミニ遺伝子およびCSI3ミニ遺伝子のスプライシングおよび活性を表す。図5aは、HEK293細胞において、LMI070処理の20時間後に、半定量RT-PCRによってエクソン7の包含が決定されたことを表す。図5bは、LMI070に応答したTF5 RNAiプロモーターの活性化を、SMN2ミニ遺伝子およびTF5 RNAiプロモータープラスミドを同時トランスフェクトしたHEK293細胞における処理の20時間後に、ルシフェラーゼ活性によって決定したことを表す。
図6】トランスフェクション後のHEK293における、mi2.4v1、miHDS1v6aおよびそれらのシードマッチ(seed match)miRNA対照によるHTTサイレンシングの定量的評価を表す。図6aはQ-PCR(24時間)を表し、図6bはウェスタンブロット(48時間)を表す。
図7】LMI070調節RNAiのモデルを表す。LMI070の投与はmiRNA発現およびmHTTノックダウンを誘導するだろう(黒、LM1070の単回投与によるRNAi効果)。RNAi発現はLMI070投薬の24~48時間後にピークに達するはずであり、その後は人工miRNAがバックグラウンドレベルに漸減するだろう。単回(赤)または二回(青破線)のLMI070投薬後、1週間にわたる予想RNAi発現を示す。
図8】LMI070に応答したHTTのデノボ(de novo)スプライシングを表す。DMSO(CTL)またはLMI070(25nM)で処理されたHEK293細胞からのRNAseqデータ。RNA-seqによって同定された新規ミニ遺伝子(処理試料における円の内側)をSashimiプロットが描画している。
図9】LMI070に応答したベクリン(beclin)1(BECN1)のデノボスプライシングを表す。DMSO(CTL)またはLMI070(25nM)で処理されたHEK293細胞からのRNAseqデータ。RNA-seqによって同定された新規ミニ遺伝子(処理試料における円の内側)をSashimiプロットが描画している。
図10】LMI070に応答した第12染色体オープンリーディングフレーム4(C12orf4)のデノボスプライシングを表す。DMSO(CTL)またはLMI070(25nM)で処理されたHEK293細胞からのRNAseqデータ。RNA-seqによって同定された新規ミニ遺伝子(処理試料における円の内側)をSashimiプロットが描画している。
図11】LMI070に応答した5'-3'エキソリボヌクレアーゼ2(XRN2)のデノボスプライシングを表す。DMSO(CTL)またはLMI070(25nM)で処理されたHEK293細胞からのRNAseqデータ。RNA-seqによって同定された新規ミニ遺伝子(処理試料における円の内側)をSashimiプロットが描画している。
図12】LMI070に応答したスプライシング因子3bサブユニット3(SF3B3)のデノボスプライシングを表す。DMSO(CTL)またはLMI070(25nM)で処理されたHEK293細胞からのRNAseqデータ。RNA-seqによって同定された新規ミニ遺伝子(処理試料における円の内側)をSashimiプロットが描画している。
図13】LMI070に応答したフォーミンホモロジー2ドメイン含有3(formin homology 2 domain containing 3)(FHOD3)のデノボスプライシングを表す。DMSO(CTL)またはLMI070(25nM)で処理されたHEK293細胞からのRNAseqデータ。RNA-seqによって同定された新規ミニ遺伝子(処理試料における円の内側)をSashimiプロットが描画している。
図14】LMI070に応答したグルコシドキシロシルトランスフェラーゼ1(GXYLT1)のデノボスプライシングを表す。DMSO(CTL)またはLMI070(25nM)で処理されたHEK293細胞からのRNAseqデータ。RNA-seqによって同定された新規ミニ遺伝子(処理試料における円の内側)をSashimiプロットが描画している。
図15】LMI070に応答したピリドキサール依存性デカルボキシラーゼドメイン含有1(pyridoxal dependent decarboxylase domain containing 1)(PDXDC1)および核膜孔複合体相互作用タンパク質(PDXDC2P-NPIPB14P)非コードRNAのデノボスプライシングを表す。DMSO(CTL)またはLMI070(25nM)で処理されたHEK293細胞からのRNAseqデータ。RNA-seqによって同定された新規ミニ遺伝子(処理試料における円の内側)をSashimiプロットが描画している。
図16】HEK293細胞においてLMI070(25nM)によって誘導されるデノボエクソンスプライシングを表す。LMI070処理に応答して新規エクソンが包含されていること(RNA-seqによって同定されたもの)がPCRによって確認される。
図17】遺伝子発現を制御するために使用されるXonSwitch戦略1を表す。スプライス修飾剤の非存在下では、新規エクソンは排除され、下流タンパク質はアウトオブフレームである。したがってこの場合、タンパク質は作られない。スプライス修飾剤による処理後は、オープンリーディングフレームが回復し、下流タンパク質が生成する。
図18】遺伝子発現を制御するために使用されるXonSwitch戦略2を表す。上流ATG翻訳開始コドンを削除し、新規シュードエクソン内に挿入した。スプライス修飾剤の非存在下では、ATG翻訳開始コドンが転写産物中に存在しないので翻訳は起こらず、非タンパク質コードRNAだけが生成する。スプライス修飾剤を加えると、シュードエクソンによってATG開始コドンが転写産物に含まれ、それが翻訳されてタンパク質を発現させることになる。これはタンパク質発現の厳格な調節を提供する。
図19】スプライス修飾剤RG7800に応答したSMN2ミニ遺伝子のスプライシングを表す。さまざまな用量(10nM、100nM、1μMおよび10μM)でのスプライス修飾剤(RG7800)処理に応答したSMN2ミニ遺伝子におけるエクソン7の包含の誘導を表すPCRスプライシングアッセイ。
図20】スプライス修飾剤(RG7800)処理に応答した調節Cas9発現による誘導性CRISPRエピジェネティックサイレンシングを表す。RG7800の非存在下では、Cas9タンパク質はアウトオブフレームであり、発現しない。RG7800による処理はエクソン7の包含を誘導し、Cas9の発現を回復させる。RG7800に応答したCas9発現の結果として、特異的Cas9/sgRNA/RBP-Krab複合体が形成され、それがHTTプロモーターに結合することで、変異型HTTアレルのエピジェネティックサイレンシングを誘導する。
図21】mHTTアレルの調節編集を表す。ウェスタンブロットは、スプライス修飾剤(RG7800)に応答したSMN2_CRISPRi調節システムによって誘導されるHTTエピジェネティックサイレンシングを表す。SMN2_CRISPRiシステムがトランスフェクトされたHEK293細胞における、RG7800(1μM)による処理後のHTTタンパク質レベルとCas9タンパク質レベルが示されている。図に示されるように、Cas9タンパク質レベルはRG7800に応答して増加し、HTT発現レベルはCas9媒介エピジェネティックサイレンシングの結果として約45%低減する。
【発明を実施するための形態】
【0075】
詳細な説明
本明細書において、下流のトランス活性化因子が発現されるかどうかをミニ遺伝子の選択的スプライシングが決定するキメラトランス活性化因子ミニ遺伝子が開示される。トランス活性化因子の発現は、デザイナープロモーター配列の制御を受ける標的遺伝子の転写をもたらす。標的遺伝子は、阻害性RNA、CRISPR-Cas9タンパク質、または治療タンパク質をコードしうる。
【0076】
一例において、ミニ遺伝子は3つのエクソン、エクソン1~3を含み、エクソン2は基礎状態ではスキップされる。エクソン2がスキップされるとエクソン3の読み枠がシフトし、その結果、エクソン3においてナンセンス変異が作出される。したがって、コードされているタンパク質の翻訳はエクソン3において停止し、その下流は何も翻訳されない。トランス活性化因子コード配列はミニ遺伝子の下流に位置するので、トランス活性化因子は基礎状態では発現されない。あるいは、翻訳開始調節配列がエクソン2に位置し、それゆえにエクソン2がスキップされると翻訳が起こらない。
【0077】
トランス活性化因子の発現をオンにするには、スキップされるエクソンの包含が誘導されなければならない。それは低分子スプライシング修飾剤の存在の結果として起こることができる。例えばミニ遺伝子はSMN2遺伝子のエクソン6~8を含みうる。この場合、エクソン7は基礎状態ではスキップされる。しかし、一定のスプライシング修飾剤低分子(例えばLMI070)の存在下では、エクソン7が包含される(図2参照)31。したがって、下流のトランス活性化因子は、LMI070の存在下では発現され、その非存在下では発現されないことになる。
【0078】
あるいは、スキップされるエクソンの包含が、ある細胞タイプでは誘導され、別の細胞タイプでは誘導されない場合もある。例えば、FGFR2のエクソン8とエクソン9は相互に排他的であり、間葉組織ではエクソン9だけが包含される(Takeuchi et al.,2010)。したがって、間葉細胞でのみトランス活性化因子の発現が可能になるように、ミニ遺伝子はFGFR2遺伝子のエクソン7、8、9、10を含みうる。この場合は、非間葉細胞におけるトランス活性化因子発現を防止するために、ミニ遺伝子のエクソン8中に停止コドンが工作される。
【0079】
本開示の発現制御システムにおいて使用されうる細胞タイプ特異的な選択的スプライシングイベントのさらなる例として、Eps8エクソン18B(chr12:15,792,360~15,792,395)およびEps8エクソン18C(chr12:15,787,673~15,787,696)が挙げられ、これらは聴覚有毛細胞に特異的である。
【0080】
別の選択肢として、スキップされるエクソンの包含は、一定の疾患状態によって誘導されうる。例えばハンチントン病は、選択的スプライシングによって生成する転写産物アイソフォームの生成をもたらす32。したがってミニ遺伝子は、ハンチントン病においてスプライシングが変化している遺伝子、すなわち変異型HTTが発現している場合には、健常細胞では通常スキップされるエクソンがそうではなく包含されるように変化している遺伝子(例えばPCDH1(5:141869432~141878222)からのエクソンを含みうる。必要であれば、トランス活性化因子が非疾患細胞中で生産されないことを保証するために、選択的スプライシングを受けるエクソン中に停止コドンを工作してもよい。その結果、トランス活性化因子は変異型HTTが存在する場合にのみ発現されることになる。この例において、標的遺伝子は、変異型HTTの発現をノックダウンする阻害性RNAをコードし、よって自己調節的フィードバックループを作出しうる。すなわち、変異型HTTの存在は、変異型HTTを標的とする阻害性RNAの発現を誘導することによって、変異型HTTレベルを、ミニ遺伝子のスプライシングを非罹患状態まで復帰させるレベルに低減させ、それにより、阻害性RNAの発現をオフにして変異型HTTの発現を可能にし、それが阻害性RNAの発現を誘導するレベルに到達するなどということになる。あるいは、標的遺伝子は、HTT遺伝子の転写を抑制するCRISPR-Cas9システムをコードしうる。
【0081】
別の一例では、ミニ遺伝子が3つのエクソン、エクソン1~3を含み、基礎状態ではエクソン2が包含される。エクソン2の包含は、翻訳がエクソン3で停止するように下流フレームシフトをもたらすことができるか、または停止コドンを含むようにエクソン2を工学的に操作することができる。したがって、エクソン2が包含される場合、すなわち基礎状態では、トランス活性化因子は発現されない。
【0082】
トランス活性化因子の発現をオンにするには、エクソン2のスキップが誘導されなければならない。それは低分子スプライシング修飾剤の存在の結果として起こることができる。例えば、ミニ遺伝子は、MDM2遺伝子(Singh et al.,2009)のエクソン3、4、10、11、12を含みうる。これらはすべて基礎状態では包含される。しかし、一定のスプライシング修飾剤低分子(例えばスデマイシン)の存在下では、エクソン4、10、11がスキップされる(Shi et al.,2015)。したがって、下流のトランス活性化因子は、スデマイシンの存在下では発現され、その非存在下では発現されないことになる。この場合、スデマイシンの非存在下ではタンパク質が生産されないことを保証するために、ミニ遺伝子のエクソン4中に、停止コドンを工作してもよい。
【0083】
あるいは、選択的に包含されるエクソンのスキップが、ある細胞タイプでは誘導され、別の細胞タイプでは誘導されない場合もある。Ninのエクソン18はニューロンではスキップされる(Zhang et al.,2016)。したがって、ニューロンでのみトランス活性化因子の発現が可能になるように、ミニ遺伝子はNin遺伝子のエクソン17、18、19を含みうる。この場合は、エクソン18が包含される非ニューロン細胞におけるトランス活性化因子発現を防止するために、ミニ遺伝子のエクソン18中に停止コドンが工作される。
【0084】
別の選択肢として、選択的に包含されるエクソンのスキップは、一定の疾患状態によって誘導されうる。例えばハンチントン病は、選択的スプライシングによって生成する転写産物アイソフォームの生成をもたらす32。したがってミニ遺伝子は、ハンチントン病においてスプライシングが変化している遺伝子、すなわち変異型HTTが発現している場合には、健常細胞では通常包含されるエクソンが、そうではなくスキップされるように変化している遺伝子からのエクソンを含みうる。トランス活性化因子が非疾患細胞中で生産されないことを保証するために、選択的スプライシングを受けるエクソンの下流にあるエクソン中に、停止コドンを工作してもよい。その結果、トランス活性化因子は変異型HTTが存在する場合にのみ発現されることになる。この例において、標的遺伝子は、変異型HTTの発現をノックダウンする阻害性RNAをコードし、よって自己調節的フィードバックループを作出しうる。すなわち、変異型HTTの存在は、変異型HTTを標的とする阻害性RNAの発現を誘導することによって、変異型HTTレベルを、ミニ遺伝子のスプライシングを非罹患状態まで復帰させるレベルに低減させ、それにより、阻害性RNAの発現をオフにして変異型HTTの発現を可能にし、それが阻害性RNAの発現を誘導するレベルに到達するなどということになる。あるいは、標的遺伝子は、HTT遺伝子の転写を抑制するCRISPR-Cas9システムをコードしうる。
【0085】
キメラトランス活性化因子ミニ遺伝子の発現は、所望の発現パターンに応じて、さまざまなタイプのプロモーターによって調節されうる。例えばプロモーターは、普遍的に構成的なプロモーター、例えばハウスキーピング遺伝子(例:ACTB)のプロモーターでありうる。別の一例として、プロモーターは細胞タイプ特異的プロモーター、例えばニューロン発現の場合であればシナプシンのプロモーターでありうる。さらに他の例として、プロモーターは誘導性プロモーターであってもよい。
【0086】
キメラトランス活性化因子ミニ遺伝子は、ミニ遺伝子とトランス活性化因子との間に位置する切断可能ペプチドを有しうる。場合により、切断可能ペプチドは、例えば2Aペプチドなどの自己切断可能ペプチドでありうる。2AペプチドはT2Aペプチド、P2Aペプチド、E2Aペプチド、またはF2Aペプチドでありうる。このペプチドが存在すると、ミニ遺伝子がコードするペプチドは、翻訳後に、トランス活性化因子タンパク質から分離されることになる。場合により、切断可能ペプチドは、広く発現している内在性エンドプロテアーゼ、例えばフューリン、プロホルモン変換酵素7(PC7)、ペアード塩基性アミノ酸切断酵素(paired basic amino-acid cleaving enzyme)4(PACE4)、またはサブチリシンケキシンアイソザイム(subtilisin kexin isozyme)2(SKI-1)などの切断部位であってもよい。場合により、切断可能ペプチドは、組織特異的エンドプロテアーゼまたは細胞特異的エンドプロテアーゼ(例えばプロホルモン変換酵素2(PC2;主に内分泌組織と脳において発現する)、プロホルモン変換酵素1/3(PC1/3;主に内分泌組織と脳において発現する)、プロホルモン変換酵素4(PC4;主に精巣と卵巣において発現する)、およびプロタンパク質変換酵素サブチリシンケキシン9(PSCK9;主に肺と肝臓において発現する)の切断部位であってもよい。
【0087】
本明細書において、ミニ遺伝子がトランス活性化因子のコード配列中に挿入されていて、トランス活性化因子が発現されるかどうかをミニ遺伝子の選択的スプライシングが決定する、キメラトランス活性化因子ミニ遺伝子も開示される。例えばエクソン4、10、11を含むMDM2ミニ遺伝子を、トランス活性化因子のコード配列中に挿入しうる(Shi et al.,2015)。基礎状態では、ミニ遺伝子のエクソンが包含されることにより、トランス活性化因子コード配列が分断される。ミニ遺伝子エクソンが取り込まれた場合に有害なタンパク質が生産されないことを保証するために、ミニ遺伝子部分がトランス活性化因子コード配列の5'端またはその近くに置かれるようにキメラトランス活性化因子ミニ遺伝子を工学的に操作し、停止コドンをミニ遺伝子のエクソン4中に工作しうる。トランス活性化因子の発現を誘導するには、スプライシング修飾剤分子(例えばスデマイシン)を使って、MDM2ミニ遺伝子のエクソン4、10、11のスキップを誘導する。同様に、細胞タイプ特異的または疾患状態選択的スプライシングイベントを、トランス活性化因子のコード配列中に挿入されるミニ遺伝子として使用してもよい。
【0088】
本明細書において、ミニ遺伝子が標的遺伝子のコード配列中に挿入されていて、標的遺伝子が発現されるかどうかをミニ遺伝子の選択的スプライシングが決定する、キメラ標的遺伝子ミニ遺伝子も開示される。標的遺伝子は、阻害性RNA、CRISPR-Cas9タンパク質、または治療タンパク質をコードしうる。例えばエクソン4、10、11を含むMDM2ミニ遺伝子を、標的遺伝子のコード配列中に挿入しうる(Shi et al.,2015)。基礎状態では、ミニ遺伝子のエクソンが包含されることにより、標的遺伝子コード配列が分断される。ミニ遺伝子エクソンが取り込まれた場合に有害なタンパク質が生産されないことを保証するために、ミニ遺伝子部分が標的遺伝子コード配列の5'端またはその近くに置かれるようにキメラトランス活性化因子ミニ遺伝子を工学的に操作し、停止コドンをミニ遺伝子のエクソン4中に工作しうる。標的遺伝子の発現を誘導するには、スプライシング修飾剤分子(例えばスデマイシン)を使って、MDM2ミニ遺伝子のエクソン4、10、11のスキップを誘導する。同様に、細胞タイプ特異的または疾患状態選択的スプライシングイベントを、標的遺伝子のコード配列中に挿入されるミニ遺伝子として使用してもよい。
【0089】
キメラトランス活性化因子ミニ遺伝子またはキメラ標的遺伝子ミニ遺伝子が、トランス活性化因子コード配列または標的遺伝子コード配列の5'端に挿入されたミニ遺伝子を有する場合、選択的に包含されるエクソンは、必要な翻訳開始調節配列を含有しうる。加えて、切断可能ペプチドは上述のとおり、ミニ遺伝子配列とトランス活性化因子または標的遺伝子との間に位置しうる。
【0090】
ここに提案するシステムでは他のタイプの選択的スプライシングイベントも使用しうることに留意されたい。例えば、選択的3'スプライス部位または選択的5'スプライス部位を、選択的にスキップされるエクソンまたは選択的に包含されるエクソンとして、同じ目的に役立つように工学的に操作できることは、当業者にはわかるだろう。同様に、残留イントロン(retained intron)スプライシングイベントも、相応に工学的に操作することができる。
【0091】
I. 選択的スプライシング調節のための標的遺伝子
A. 阻害性RNA
「RNA干渉(RNAi)」は、siRNAによって開始される配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングのプロセスである。RNAi中に、siRNAは標的mRNAの分解を誘導し、その結果、遺伝子発現の配列特異的阻害が起こる。本開示の発現システムを使って発現を阻害しうる遺伝子の例として、HTT(ハンチントン病の場合)、SCA(脊髄小脳失調症(1、2、3、6、7型)の場合)、FXTAS(脆弱X失調症候群の場合)、およびFMRP(脆弱Xの場合)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0092】
「阻害性RNA」、「RNAi」、「低分子干渉RNA」または「短鎖干渉RNA」または「siRNA」分子、「短鎖ヘアピンRNA」または「shRNA」分子、または「miRNA」は、関心対象の核酸配列にターゲティングされるヌクレオチドのRNA二重鎖である。本明細書において使用する場合、「siRNA」という用語はshRNAおよびmiRNAの部分集合を包含する一般名である。「RNA二重鎖」とは、RNA分子の2つの領域間の相補的ペアリングによって形成される構造を指す。siRNAの二重鎖部分のヌクレオチド配列は標的となる遺伝子のヌクレオチド配列に相補的であるので、siRNAはその遺伝子に「ターゲティング」される。一定の態様において、siRNAはハンチントンをコードする配列にターゲティングされる。いくつかの態様において、siRNAの二重鎖の長さは30塩基対未満である。いくつかの態様において、二重鎖は、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11または10塩基対長であることができる。いくつかの態様において、二重鎖の長さは19~25塩基対長である。一定の態様において、二重鎖の長さは19塩基対長または21塩基対長である。siRNAのRNA二重鎖部分はヘアピン構造の一部であることができる。ヘアピン構造は、二重鎖部分に加えて、二重鎖を形成する2つの配列の間に位置するループ部分を含有する。ループの長さはさまざまでありうる。いくつかの態様において、ループは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25ヌクレオチド長である。一定の態様において、ループは18ヌクレオチド長である。ヘアピン構造は3'オーバーハング部分および/または5'オーバーハング部分も含有することができる。いくつかの態様において、オーバーハングは、0、1、2、3、4または5ヌクレオチド長の3'オーバーハングおよび/または5'オーバーハングである。
【0093】
shRNAは、5'隣接領域、siRNA領域セグメント、ループ領域、3'siRNA領域および3'隣接領域を含有するように設計されたステム-ループ構造で構成される。大半のRNAi発現戦略では、強力なpolIII系プロモーターによって駆動される短鎖ヘアピンRNA(shRNA)が利用されてきた。多くのshRNAはインビトロでもインビボでも標的配列の効果的なノックダウンを示すが、標的遺伝子の効果的なノックダウンを示す一部のshRNAは、インビボで毒性を有することも見いだされた。
【0094】
miRNAは、前駆体ステムループ転写産物からプロセシングされる小さな細胞性RNA(約22nt)である。公知のmiRNAステムループは、関心対象の遺伝子に特異的なRNAi配列を含有するように改変することができる。miRNA分子はshRNA分子より好ましい場合がある。なぜならmiRNAは内因性に発現されるからである。それゆえに、miRNA分子は、dsRNA応答性インターフェロン経路を誘導する可能性が低く、shRNAより効率よくプロセシングされ、shRNAよりも80%効果的にサイレンシングを行うことが示されている。
【0095】
最近発見された代替的アプローチは、RNAiベクターとしての人工miRNA(siRNA配列をシャトルするpri-miRNAスキャフォールド)の使用である。人工miRNAの方が、内在性RNAi基質と、より自然に類似し、Pol-II転写(例えばRNAiの組織特異的発現が可能になる)およびポリシストロニック戦略(例えば複数のsiRNA配列の送達が可能になる)にも、より適している。参照により本明細書に組み入れられる米国特許第10,093,927号を参照されたい。
【0096】
「shRNA」の転写単位は、不対ヌクレオチドのループでつながれたセンス配列とアンチセンス配列とで構成される。shRNAはエクスポーチン-5によって核から搬出され、細胞質に入るとダイサー(Dicer)によるプロセシングを受けて、機能的siRNAを生成する。「miRNA」のステム-ループは不対ヌクレオチドのループでつながれたセンス配列とアンチセンス配列とで構成され、これは、典型的には、より大きな一次転写産物(pri-miRNA)の一部として発現され、それがドローシャ-DGCR8複合体によって切り出されてpre-miRNAとして公知の中間体を生成し、次にそれがエクスポーチン-5によって核から搬出され、細胞質に入ると、ダイサーによるプロセシングを受けて、機能的siRNAを生成する。本明細書において相互可換的に使用する場合、「人工miRNA」または「人工miRNAシャトルベクター」とは、ドローシャおよびダイサープロセシングによって切り出される二重鎖ステムループの領域(少なくとも約9~20ヌクレオチド)が、効果的なドローシャプロセシングに必要なステムループ内の構造要素を保ちつつ、標的遺伝子用のsiRNA配列で置き換えられている一次miRNA転写産物を指す。「人工」という用語は、隣接配列(上流の約35ヌクレオチドおよび下流の約40ヌクレオチド)がsiRNAのマルチクローニング部位内の制限酵素部位に由来するという事実に由来している。本明細書において使用する場合「miRNA」という用語は、天然のmiRNA配列と、人工的に作製されたmiRNAシャトルベクターを、どちらも包含する。
【0097】
siRNAは核酸配列によってコードすることができ、その核酸配列はプロモーターも含むことができる。該核酸配列はポリアデニル化シグナルも含むことができる。いくつかの態様において、ポリアデニル化シグナルは合成最小ポリアデニル化シグナルまたは6つのTの配列である。
【0098】
RNAiの設計では、siRNAの性質、サイレンシング効果の永続性および送達システムの選択など、考慮する必要のある因子が、いくつかある。RNAi効果を生じさせるために、生物に導入されるsiRNAは典型的にはエクソン配列(exonic sequence)を含有するだろう。さらにまた、RNAiプロセスは相同性に依存するので、配列は、相同的ではあるが遺伝子特異的ではない配列間の交差干渉の可能性を最小限に抑えつつ遺伝子特異性が最大になるように、注意深く選択されなければならない。好ましくは、siRNAは、siRNAの配列と阻害されるべき遺伝子との間に、80%、85%、90%、95%または98%より大きい同一性、さらには100%の同一性を呈する。標的遺伝子に対する同一性が約80%未満である配列は有効性がかなり低い。したがって、siRNAと阻害されるべき遺伝子との間の相同性が高いほど、無関係な遺伝子の発現が影響を受ける可能性は低くなる。
【0099】
加えて、siRNAのサイズも重要な考慮事項である。いくつかの態様において、本発明は、少なくとも約19~25ヌクレオチドを含み、遺伝子発現を調整することができる、siRNA分子に関する。本発明に関して、siRNAは、好ましくは、500、200、100、50または25ヌクレオチド長未満である。より好ましくはsiRNAは約19ヌクレオチド~約25ヌクレオチド長である。
【0100】
siRNA標的とは、一般に、ポリペプチドをコードする領域を含むポリヌクレオチド、または複製、転写もしくは翻訳もしくはポリペプチドの発現にとって重要な他のプロセスを調節するポリヌクレオチド領域を含むポリヌクレオチド、またはポリペプチドをコードする領域とそれに機能的に連結された領域であって発現を調節するものとをどちらも含むポリヌクレオチドを意味する。細胞中で発現する遺伝子はどれでも標的とすることができる。好ましくは、標的遺伝子は、疾患にとって重要な細胞活動の進行、または研究対象として特に関心がある細胞活動の進行に、関与または関連するものである。
【0101】
B. CRISPRシステム
遺伝子編集は生細胞内での標的遺伝子の改変を可能にする技術である。近年、細菌のCRISPR免疫システムを利用するオンデマンド遺伝子編集の実施は、科学者がゲノム編集にアプローチする方法に大きな変革をもたらした。RNAガイド型DNAエンドヌクレアーゼであるCRISPRシステムのCas9タンパク質は、そのガイドRNA配列を変化させることによって比較的容易に、新しい部位を標的とするように工学的に操作することができる。この発見により、配列特異的遺伝子編集は、機能的に有効になった。
【0102】
一般に「CRISPRシステム」とは、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現またはその活性の方向付けに関与する転写産物および他の要素、例えばCas遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えばtracrRNAまたは活性な部分tracrRNA)、tracr-mate配列(「ダイレクトリピート」および内在性CRISPRシステムの場合はtracrRNAプロセシングを受けた部分ダイレクトリピートを包含する)、ガイド配列(内在性CRISPRシステムの場合は「スペーサー」とも呼ばれる)ならびに/またはCRISPR遺伝子座からの他の配列および転写産物を、集合的に指す。本開示のCRISPR発現システムを使ってその発現を阻害しまたはその配列を編集しうる遺伝子の例として、HTT(ハンチントン病の場合)、SCA(脊髄小脳失調症(1、2、3、6、7型)の場合)、FXTAS(脆弱X失調症候群の場合)、およびFMRP(脆弱Xの場合)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0103】
CRISPR/CasヌクレアーゼまたはCRISPR/Casヌクレアーゼシステムは、DNAに配列特異的に結合する非コードRNA分子(ガイド)RNAと、ヌクレアーゼ機能性(例えば2つのヌクレアーゼドメイン)を持つCasタンパク質(例えばCas9)とを含むことができる。CRISPRシステムの1つまたは複数の要素は、I型、II型またはIII型CRISPRシステムに由来することができ、例えば内在性CRISPRシステムを含む特定生物、例えば化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)に由来することができる。
【0104】
CRISPRシステムは、本明細書において議論するように、標的部位における二本鎖切断(double stranded break:DSB)と、それに続く分断を誘導することができる。別の態様では、標的部位において一本の鎖にニックを入れるために、「ニッカーゼ」とみなされるCas9バリアントが使用される。例えば特異性を改良するなどの目的で、ニックが同時に導入された場合に5'オーバーハングが導入されるような形で配列を標的とする一対の異なるgRNAによってそれぞれが方向付けられるニッカーゼのペアを使用することができる。別の態様では、触媒的に不活性なCas9が、遺伝子発現に影響を及ぼすために、転写抑制因子(例えばKRAB)または転写活性化因子などの異種エフェクタードメインに融合される。あるいは、触媒的に不活性なCas9によるCRISPRシステムは、リボソーム結合タンパク質に融合された転写抑制因子または転写活性因子をさらに含む。
【0105】
いくつかの局面において、CasヌクレアーゼおよびgRNA(標的配列に特異的なcrRNAと不変のtracrRNAとの融合物を含む)が細胞に導入される。一般に、gRNAの5'端にある標的部位は、相補的塩基対合を使って、Casヌクレアーゼを標的部位、例えば遺伝子へとターゲティングする。標的部位は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列、例えば典型的にはNGGまたはNAGのすぐ5'側というその位置に基づいて選択されうる。この点において、gRNAは、ガイドRNAの最初の20、19、18、17、16、15、14、14、12、11または10ヌクレオチドを標的DNA配列に対応するように改変することによって、所望の配列にターゲティングされる。一般にCRISPRシステムは、標的配列の部位におけるCRISPR複合体の形成を促進する要素によって特徴づけられる。通例、「標的配列」とは、一般に、ガイド配列がそれに対する相補性を有するように設計される配列を指し、標的配列とガイド配列との間のハイブリダイゼーションが、CRISPR複合体の形成を促進する。ハイブリダイゼーションを引き起こしてCRISPR複合体の形成を促進するのに十分な相補性があるならば、完全な相補性は必ずしも必要ではない。
【0106】
標的配列は、DNAポリヌクレオチドまたはRNAポリヌクレオチドなど、任意のポリヌクレオチドを含みうる。標的配列は、細胞の小器官内など、細胞の核内または細胞質内に位置しうる。一般に、標的配列を含む標的となる遺伝子座への組換えのために使用されうる配列またはテンプレートは、「編集テンプレート」または「編集ポリヌクレオチド」または「編集配列」と呼ばれる。いくつかの局面において、外因性テンプレートポリヌクレオチドは編集テンプレートと呼びうる。いくつかの局面において、組換えは相同組換えである。
【0107】
通例、内在性CRISPRシステムの場合、CRISPR複合体(標的配列にハイブリダイズして1つまたは複数のCasタンパク質との複合体を形成しているガイド配列を含む)の形成は、標的配列内または標的配列近傍(例えば標的配列から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50塩基対以内またはそれ以上)における一方または両方の鎖の開裂をもたらす。野生型tracr配列の全部もしくは一部(例えば野生型tracr配列のうちの約20、26、32、45、48、54、63、67、85ヌクレオチドまたはそれ以上の部分)を含みうるまたはそれらからなりうるtracr配列も、例えばtracr配列の少なくとも一部分に沿った、ガイド配列に機能的に連結されたtracr mate配列の全部または一部へのハイブリダイゼーションなどによって、CRISPR複合体の一部を形成しうる。tracr配列は、tracr mate配列に対して、ハイブリダイズしてCRISPR複合体の形成に参加するのに十分な相補性、例えば最適にアラインメントした場合にtracr mate配列の全長にわたって少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%の配列相補性を有する。
【0108】
CRISPRシステムの1つまたは複数の要素の発現を駆動する1つまたは複数のベクターを細胞中に導入して、CRISPRシステムのそれら要素の発現が、1つまたは複数の標的部位におけるCRISPR複合体の形成を指示するようにすることができる。構成要素をタンパク質および/またはRNAとして細胞に送達することもできる。例えばCas酵素、tracr-mate配列に連結されたガイド配列、およびtracr配列を、それぞれ別々のベクター上の別々の調節要素に機能的に連結することができるだろう。Cas酵素は、キメラ標的遺伝子ミニ遺伝子としてまたはキメラミニ遺伝子トランス活性化因子にとっての標的遺伝子として本明細書において開示する調節選択的スプライシングイベントの制御を受ける標的遺伝子でありうる。gRNAは構成的プロモーターの制御を受けうる。
【0109】
あるいは、同じ調節要素または異なる調節要素から発現される2つ以上の要素を一つのベクター中で組み合わせ、1つまたは複数の追加ベクターが第1ベクター中に含まれていないCRISPRシステムの任意の構成要素を提供してもよい。ベクターは、制限エンドヌクレアーゼ認識配列(「クローニング部位」ともいう)など、1つまたは複数の挿入部位を含みうる。いくつかの態様において、1つまたは複数の挿入部位は、1つまたは複数のベクターの1つまたは複数の配列要素の上流および/または下流に位置する。複数の異なるガイド配列を使用すれば、単一の発現コンストラクト使って、CRISPR活性を細胞内の対応する複数の標的配列へとターゲティングしうる。
【0110】
ベクターは、Casタンパク質などのCRISPR酵素をコードする酵素コード配列に機能的に連結された調節要素を含みうる。Casタンパク質の非限定的な例として、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても公知である)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csfl、Csf2、Csf3、Csf4、それらのホモログ、またはそれらの改変型が挙げられる。これらの酵素は公知である。例えば化膿レンサ球菌(S. pyogenes)Cas9タンパク質のアミノ酸配列は、SwissProtデータベースにアクセッション番号Q99ZW2として見いだしうる。
【0111】
CRISPR酵素はCas9(例えば化膿レンサ球菌または肺炎球菌(S. pneumonia)由来のもの)であることができる。CRISPR酵素は、標的配列の場所、例えば標的配列内および/または標的配列の相補鎖内において、一方または両方の鎖の開裂を指示することができる。ベクターは、対応する野生型酵素と比較して突然変異型CRISPR酵素が標的配列を含有する標的ポリヌクレオチドの一方または両方の鎖を開裂する能力を欠くように変異させたCRISPR酵素をコードすることができる。例えば、化膿レンサ球菌由来のCas9のRuvC I触媒ドメインにおけるアスパラギン酸からアラニンへの置換(D10A)は、Cas9を、両方の鎖を開裂するヌクレアーゼからニッカーゼ(一本の鎖を開裂するもの)へと変換する。いくつかの態様において、Cas9ニッカーゼは、ガイド配列と組み合わせて、例えばDNA標的のセンス鎖とアンチセンス鎖をそれぞれ標的とする2つのガイド配列と組み合わせて、使用しうる。この組合せは、両方の鎖にニックを入れて、それらをNHEJまたはHDRの誘導に使用することを可能にする。
【0112】
いくつかの態様において、CRISPR酵素をコードする酵素コード配列は、真核細胞などの特定細胞における発現に関してコドン最適化される。真核細胞は、例えば限定するわけではないがヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌまたは非ヒト霊長類を含む哺乳動物などといった特定生物のものであるか、それら特定生物に由来しうる。一般に、コドン最適化とは、関心対象の宿主細胞における発現を強化するために、ネイティブ配列の少なくとも1つのコドンを、ネイティブアミノ酸配列を維持しつつ、当該宿主細胞の遺伝子中でより高頻度にまたは最も高頻度に使用されているコドンで置き換えることによって核酸配列に改変を加えるプロセスを指す。さまざまな種が、特定アミノ酸の一定のコドンに対して、特定のバイアスを呈する。コドンバイアス(生物間でのコドン使用頻度の相違)は、多くの場合、メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳効率と相関し、そしてそれは、なかんずく、翻訳されるコドンの特性および特定トランスファーRNA(tRNA)分子の利用可能性に依存すると考えられている。ある細胞における選ばれたtRNAの優勢は、一般に、ペプチド合成において最も高頻度に使用されるコドンの反映である。したがって遺伝子は、コドン最適化に基づいて、所与の生物における最適な遺伝子発現に適合させることができる。
【0113】
一般にガイド配列は、ターゲット配列とハイブリダイズして、ターゲット配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を指示するのに十分な、ターゲットポリヌクレオチド配列との相補性を有する任意のポリヌクレオチド配列である。いくつかの態様において、ガイド配列とその対応標的配列との間の相補性の程度は、適切なアラインメントアルゴリズムを使って最適にアラインメントした場合に、約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、またはそれらを上回る。
【0114】
最適なアラインメントは、配列をアラインメントするための任意の適切なアルゴリズムを使って決定することができ、そのようなアルゴリズムの非限定的な例として、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-Wheeler変換に基づくアルゴリズム(例えばBurrows Wheeler Aligner)、ClustalW、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies)、ELAND(Illumina、カリフォルニア州サンディエゴ)、SOAP(soap.genomics.org.cnで利用可能)およびMaq(maq.sourceforge.netで利用可能)が挙げられる。
【0115】
CRISPR酵素は、1つまたは複数の異種タンパク質ドメインを含む融合タンパク質の一部であってもよい。CRISPR酵素融合タンパク質は、任意の追加タンパク質配列と、任意で、任意の2つのドメイン間にあるリンカー配列とを含みうる。CRISPR酵素に融合されうるタンパク質ドメインの例としては、エピトープタグ、レポーター遺伝子配列、および以下の活性のうちの1つまたは複数を有するタンパク質ドメインが挙げられるが、それらに限定されるわけではない:メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写終結因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性および核酸結合活性。エピトープタグの非限定的な例として、ヒスチジン(His)タグ、V5タグ、FLAGタグ、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タグ、Mycタグ、VSV-Gタグ、およびチオレドキシン(Trx)タグが挙げられる。レポーター遺伝子の例としては、グルタチオン-5-トランスフェラーゼ(GST)、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)βガラクトシダーゼ、βグルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、HcRed、DsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、および青色蛍光タンパク質(BFP)を含む自家蛍光タンパク質が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。CRISPR酵素は、DNA分子に結合するか他の細胞性分子に結合するタンパク質またはそのようなタンパク質のフラグメント、例えば限定するわけではないが、マルトース結合タンパク質(MBP)、S-タグ、Lex A DNA結合ドメイン(DBD)融合物、GAL4A DNA結合ドメイン融合物、および単純ヘルペスウイルス(HSV)BP16タンパク質融合物などをコードする遺伝子配列に融合されうる。CRISPR酵素を含む融合タンパク質の一部を形成しうるさらなるドメインは、参照により本明細書に組み入れられるUS 20110059502に記載されている。
【0116】
C. 治療タンパク質
いくつかの態様は組換えタンパク質および組換えポリペプチドの発現に関する。本開示の発現システムを使って発現されうるタンパク質の例としては、STXBP1(Munc18-1としても公知である;STXBP1欠損症、新生児てんかんの一形態、発育遅延の一形態の場合)、SCN1a(遺伝性てんかん性脳症としても公知であり、乳児重症ミオクロニーてんかん(SMEI)としても公知であるドラベ症候群の場合;Nav1.1中の変異);SCN1b(Nav1.1βサブユニット中の変異);SCN2b(家族性心房細動の場合;II型電位作動性ナトリウムチャネルのβ2サブユニット);KCNA1(顕性遺伝性発作性運動失調症の場合;失調を伴うまたは失調を伴わない硬直性筋れん縮(muscle spasms with rigidity));KCNQ2(KCNQ2関連てんかん);GABRB3(早期発症型てんかん;GABAA受容体のβ3サブユニット);CACNA1A(家族性失調症および片麻痺性片頭痛の場合;P/Q型電位作動性カルシウムチャネルの膜貫通ポア形成サブユニット);CHRNA2(常染色体顕性夜間前頭葉てんかんの場合;ニューロンのニコチン性コリン作動性受容体(nAChR)のαサブユニット);KCNT1(常染色体顕性夜間前頭葉てんかん(ADNFLE)および乳児悪性焦点移動性部分発作(MMPSI)の場合;ナトリウム活性化カリウムチャネル);SCN8A(てんかんおよび神経発達障害の場合;Nav1.6欠損症、電位依存性ナトリウムチャネル);CHRNA4-αサブユニット(常染色体顕性夜間前頭葉てんかんの場合;ニコチン性アセチルコリン受容体のαサブユニット中の変異);CHRNB2-b2サブユニット(常染色体顕性夜間前頭葉てんかんの場合;ニコチン性アセチルコリン受容体のαサブユニット中の変異);ARX(Otohara症候群の場合、ARX遺伝子中のポリAla伸長);MECP1(レット症候群の場合);FMRP(脆弱Xの場合);およびCLN3(若年型バッテン病としても公知であり、JNCLとしても公知であるCLN病の場合)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。本開示の発現システムを使って発現させうるタンパク質の他の例は、Lindy et al.(2018)およびHeyne et al.(2018)に見いだすことができ、これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0117】
いくつかの局面では、血清中安定性を増加させるために、タンパク質またはポリペプチドを改変しうる。したがって、本願が「改変タンパク質」または「改変ポリペプチド」の機能または活性に言及する場合、それが、例えば無改変のタンパク質またはポリペプチドと比べて付加的な利点を有するタンパク質またはポリペプチドを包含することは、当業者には理解されるだろう。「改変タンパク質」に関する態様は「改変ポリペプチド」についても実施することができ、逆もまたそうであると、特に考えられる。
【0118】
組換えタンパク質はアミノ酸の欠失および/または置換を有しうる。したがって、欠失を持つタンパク質、置換を持つタンパク質、および欠失と置換とを持つタンパク質は、改変タンパク質である。いくつかの態様において、これらのタンパク質は、例えば融合タンパク質またはリンカーを持つタンパク質など、挿入または付加されたアミノ酸を、さらに含みうる。「改変欠失タンパク質」は、ネイティブタンパク質の1つまたは複数の残基を欠くが、ネイティブタンパク質の特異性および/または活性は有しうる。「改変欠失タンパク質」は低減した免疫原性または抗原性も有しうる。改変欠失タンパク質の例は、少なくとも1つの抗原領域から、すなわち特定の生物において、例えば改変タンパク質が投与されうるタイプの生物において、抗原性であると決定されたタンパク質の領域から、アミノ酸残基が欠失しているものである。
【0119】
置換(substitution)バリアントまたは置き換え(replacement)バリアントは、典型的には、タンパク質内の1つまたは複数の部位におけるあるアミノ酸と別のアミノ酸との交換を含有し、ポリペプチドの1つまたは複数の性質、特にそのエフェクター機能および/またはバイオアベイラビリティを調整するように設計されうる。置換は保存的置換、すなわちあるアミノ酸が類似する形状および電荷を持つもので置き換えられる置換であってもよいし、そうでなくてもよい。保存的置換は当技術分野において周知であり、これには、例えばアラニンからセリンへの変化、アルギニンからリジンへの変化、アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジンへの変化、アスパラギン酸からグルタミン酸への変化、システインからセリンへの変化、グルタミンからアスパラギンへの変化、グルタミン酸からアスパラギン酸への変化、グリシンからプロリンへの変化、ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミンへの変化、イソロイシンからロイシンまたはバリンへの変化、ロイシンからバリンまたはイソロイシンへの変化、リジンからアルギニンへの変化、メチオニンからロイシンまたはイソロイシンへの変化、フェニルアラニンからチロシン、ロイシンまたはメチオニンへの変化、セリンからスレオニンへの変化、スレオニンからセリンへの変化、トリプトファンからチロシンへの変化、チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニンへの変化、およびバリンからイソロイシンまたはロイシンへの変化が含まれる。
【0120】
欠失または置換に加えて、改変タンパク質は残基の挿入を有しうる。これは、典型的には、ポリペプチドにおける少なくとも1つの残基の付加を伴う。これには、ターゲティング(targeting)ペプチドまたはターゲティングポリペプチドの挿入または単なる単一残基の挿入が含まれうる。融合タンパク質と呼ばれる末端付加については後述する。
【0121】
「生物学的に機能的な等価物」という用語は、当技術分野においてよく理解されており、本明細書においてもさらに詳述する。したがって、約70%~約80%、または約81%~約90%、さらには約91%~約99%のアミノ酸が、対照ポリペプチドのアミノ酸と同一であるか機能的に等価である配列は、そのタンパク質の生物学的活性が維持されている限り、包含される。組換えタンパク質は、一定の局面において、対応するネイティブタンパク質に対する生物学的に機能的な等価物でありうる。
【0122】
アミノ酸配列および核酸配列が追加残基、例えば追加のN末端アミノ酸もしくはC末端アミノ酸、または5'配列もしくは3'配列を含みうること、そしてそれでもなお、その配列が、タンパク質発現が関係する場合であれば生物学的なタンパク質活性の維持を含む上述の基準を満たす限り、本質的に本明細書において開示する配列の一つにおいて説明するとおりであることも理解されるだろう。末端配列の付加は、例えばコード領域の5'部分または3'部分のどちらかに隣接するさまざまな非コード配列を含むか、または遺伝子内に存在することが公知であるさまざまな内部配列、すなわちイントロンを含みうる核酸配列に、特に当てはまる。
【0123】
本明細書において使用する場合、タンパク質またはペプチドは一般に、遺伝子から翻訳される約200アミノ酸超、最大で完全長配列までのタンパク質;約100アミノ酸を超えるポリペプチド;および/または約3~約100アミノ酸のペプチドを指すが、それらに限定されるわけではない。便宜上、「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」という用語は、本明細書において相互可換的に使用される。
【0124】
本明細書において使用する場合、「アミノ酸残基」とは、任意の天然アミノ酸、任意のアミノ酸誘導体、または当技術分野において公知である任意のアミノ酸模倣物(mimic)を指す。一定の態様において、タンパク質またはペプチドの残基は、アミノ酸残基の配列を中断する非アミノ酸配列を何も持たず、連続的である。別の態様では、配列が1つまたは複数の非アミノ酸部分を含みうる。特定の態様では、タンパク質またはペプチドの残基の配列が、1つまたは複数の非アミノ酸部分で中断されていてもよい。
【0125】
したがって「タンパク質またはペプチド」という用語は、天然タンパク質中に見いだされる20種の一般的アミノ酸のうちの少なくとも1つ、または少なくとも1つの修飾アミノ酸もしくは異常アミノ酸を含む、アミノ酸配列を包含する。
【0126】
本発明の一定の態様は融合タンパク質に関する。これらの分子は、N末端またはC末端において異種ドメインに連結された治療タンパク質を有しうる。例えば融合物には、異種宿主におけるタンパク質の組換え発現が可能になるように、他の種からのリーダー配列も使用しうる。他の有用な融合物は、タンパク質の精製が容易になるように、好ましくは切断可能な、血清アルブミンアフィニティータグもしくは6つのヒスチジン残基などといったタンパク質アフィニティータグ、または抗体エピトープなどの免疫学的に活性なドメインの付加を含む。アフィニティータグの非限定的な例として、ポリヒスチジン、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、およびグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)が挙げられる。
【0127】
融合タンパク質を作製する方法は当業者には周知である。そのようなタンパク質は、例えば完全な融合タンパク質のデノボ合成によって、または異種ドメインをコードするDNA配列の取り付けと、それに続く無傷の融合タンパク質の発現とによって、生産することができる。
【0128】
親タンパク質の機能的活性を回復する融合タンパク質の生産は、タンデムにつながれたポリペプチド間に接合されるペプチドリンカーをコードする橋渡しDNAセグメントで遺伝子をつなぐことによって、容易にすることができる。リンカーは、結果として生じる融合タンパク質の適正なフォールディングを可能とするのに十分な長さのものであるだろう。
【0129】
II. スプライシング修飾剤
代表的なスプライス修飾剤はLMI070(スピンラザ(Spinraza)(商標)、Novartis 31 )である。これは血液脳関門を透過することができ、以下の構造を有する。
【0130】
新規エクソンがLMI070の存在下でのみ包含され、本開示のシステムにおける遺伝子発現の制御に使用することができる、選択的スプライシングイベントの例としては、SF3B3(chr16:70,526,657~70,529,199)、BENC1(chr17:42,810,759~42,811,797)、GXYLT1(chr12:42,087,786~42,097,614)、SKP1(chr5:134,173,809~134,177,053)、C12orf4(chr12:4,536,017~4,538,508)、SSBP1(chr7:141,739,167~141,742,229)、RARS(chr5:168,517,815~168,519,190)、PDXDC2P(chr16:70,030,988~70,031,968)、STRADB(chr2:201,469,953~201,473,076)、WNK1(chr12:894,562~896,732)、WDR27(chr6:169,660,663~169,662,424)、CIP2A(chr3:108,565,355~108,566,638)、IFT57(chr3:108,191,521~108,206,696)、WDR27(chr6:169,660,649~169,662,458)、HTT(chr4:3,212,555~3,214,145)、SKA2(chr17:59,112,228~59,119,514)、EVC(chr4:5,733,318~5,741,822)、DYRK1A(chr21:37,420,144~37,473,056)、GNAQ(chr9:77,814,652~77,923,557)、ZMYM6(chr1:35,019,257~35,020,472)、CYB5B(chr16:69,448,031~69,459,160)、MMS22L(chr6:97,186,342~97,229,533)、MEMO1(chr2:31,883,262~31,892,301)およびPNISR(chr6:99,416,278~99,425,413)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。LMI070の存在下では新規エクソンの包含が強化され、本開示のシステムにおける遺伝子発現の制御に使用することができる、選択的スプライシングイベントの例としては、CACNA2D1(chr7:82,066,406~82,084,958)、SSBP1(chr7:141,739,083~141,742,248)、DDX42(chr17:63,805,048~63,806,672)、ASAP1(chr8:130,159,817~130,167,688)、DUXAP10(chr14:19,294,564~19,307,199)、AVL9(chr7:32,558,783~32,570,372)、DYRK1A(chr21:37,419,920~37,472,960)、FAM3A(chrX:154,512,311~154,512,939)、FHOD3(chr18:36,740,620~36,742,886)、TBCA(chr5:77,707,994~77,777,000)、MZT1(chr13:72,718,939~72,727,611)、LINC01296(chr14:19,092,877~19,096,652)、SF3B3(chr16:70,541,627~70,544,553)、SAFB(chr19:5,654,060~5,654,457)、GCFC2(chr2:75,702,163~75,706,652)、MRPL45(chr17:38,306,450~38,319,088)、SPIDR(chr8:47,260,788~47,280,196)、DUXAP8(chr22:15,815,315~15,828,713)、PDXDC1(chr16:15,008,772~15,009,763)、MAN1A2(chr1:117,442,104~117,461,030)、RAF1(chr3:12,600,376~12,604,350)およびERGIC3(chr20:35,548,787~35,554,452)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。上記のリストについて、各ゲノム位置は、LMI070が標的とする上流および下流のエクソンおよび介在イントロン配列を含む。
【0131】
例えば以下に挙げるように、LMI070などのスプライス修飾剤の類似体であって同様に使用することができるものも含まれる:6-(ナフタレン-2-イル)-N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、6-(ベンゾ[b]チオ-フェン-2-イル)-N-メチル-N-(2,2,6,6-テトラ-メチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、2-(6-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イルアミノ)-ピリダジン-3-イル)フェノール、2-(6-(メチル-(2,2,6,6-テトラ-メチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ベンゾ[b]-チオフェン-5-カルボニトリル、6-(キノリン-3-イル)-N-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、3-(ベンゾ[b]-チオフェン-2-イル)-6-(2,2,6,6-テトラ-メチルピペリジン-4-イルオキシ)ピリダジン、2-(6-(メチル-(2,2,6,6-テトラ-メチルピペリジン-4-イル)アミノ)-ピリダジン-3-イル)フェノール、6-(6-(メチル-(2,2,6,6-テトラ-メチルピペリジン-4-イル)アミノ)-ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、6-(ベンゾ[b]-チオフェン-2-イル)-N-(2,2,6,6-テトラ-メチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、7-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)イソキノリン、6-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)イソキノリン、N-メチル-6-(キノリン-7-イル)-N-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、N-メチル-6-(キノリン-6-イル)-N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、6-(イソキノリン-7-イル)-N-メチル-N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、6-(イソキノリン-6-イル)-N-メチル-N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、6-(イミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イル-ピリダジン-3-イル)-メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミン、メチル-[6-(6-フェニル-ピリジン-3-イル)-ピリダジン-3-イル]-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミン、メチル-[6-(6-ピロール-1-イル-ピリジン-3-イル)-ピリダジン-3-イル]-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミン、メチル-[6-(6-ピラゾール-1-イル-ピリジン-3-イル)-ピリダジン-3-イル]-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミン、メチル-(6-キノキサリン-2-イル-ピリダジン-3-イル)-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミン、メチル-(6-キノリン-3-イル-ピリダジン-3-イル)-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミン、N-メチル-6-(フタラジン-6-イル)-N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、6-(ベンゾ[c][1,2,5]オキサ-ジアゾール-5-イル)-N-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、6-(ベンゾ[d]チアゾール-5-イル)-N-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、6-(2-メチルベンゾ-[d]オキサゾール-6-イル)-N-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、5-クロロ-2-(6-(メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、3-(6-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イルアミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、5-クロロ-2-(6-(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルアミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、4-ヒドロキシ-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ベンゾニトリル、3-[6-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イルオキシ)-ピリダジン-3-イル]-ナフタレン-2-オール、2-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]-ピリダジン-3-イル}-4-トリフルオロメチル-フェノール、2-フルオロ-6-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]-ピリダジン-3-イル}-フェノール、3,5-ジメトキシ-2-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]-ピリダジン-3-イル}-フェノール、4,5-ジメトキシ-2-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]-ピリダジン-3-イル}-フェノール、5-メトキシ-2-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]ピリダジン-3-イル}-フェノール、4,5-ジフルオロ-2-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]-ピリダジン-3-イル}-フェノール、5-フルオロ-2-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]-ピリダジン-3-イル}-フェノール、3-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ベンゾニトリル、1-アリル-6-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、6-(ベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、N-アリル-3-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ベンズアミド、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、5-(5-メチル-オキサゾール-2-イル)-2-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]ピリダジン-3-イル}-フェノール、5-(4-ヒドロキシメチル)-1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(1H-イミダゾール-1-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(4-アミノ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(4-アミノ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(3-アミノ-ピラゾール-1-イル)-2-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]ピリダジン-3-イル}-フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1-(2-モルホリノ-エチル)-1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、
2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、5-(5-アミノ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-(メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-4-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、2-{6-[(2-ヒドロキシ-エチル)-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]ピリダジン-3-イル}-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-(6-(ピペリジン-4-イルオキシ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、2-(6-(((2S,4R,6R)-2,6-ジメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、2-(6-((-2,6-ジメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、2-(6-((-2,6-ジメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、5-(1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-(ピロリジン-3-イルオキシ)ピリダジン-3-イル)フェノール、2-(6-((-2-メチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、(S)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-(ピロリジン-3-イルメトキシ)ピリダジン-3-イル)フェノール、(R)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-(ピロリジン-3-イルメトキシ)ピリダジン-3-イル)フェノール、2-(6-((3-フルオロピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)-フェノール、2-[6-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-ピペリジン-4-イルオキシ)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、5-ピラゾール-1-イル-2-[6-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イルオキシ)-ピリダジン-3-イル]-フェノール、5-(1H-ピラゾール-4-イル)-2-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)フェノール、2-(6-ピペラジン-1-イル-ピリダジン-3-イル)-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、3-[6-(アゼチジン-3-イルアミノ)-ピリダジン-3-イル]-ナフタレン-2-オール、2-[6-(アゼチジン-3-イルアミノ)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(3,5-ジメチル-ピペラジン-1-イル)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(7-メチル-2,7-ジアザ-スピロ[4.4]ノナ-2-イル)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-(6-[1,4]ジアゼパン-1-イル-ピリダジン-3-イル)-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-{6-[4-(2-ヒドロキシ-エチル)-ピペラジン-1-イル]-ピリダジン-3-イル}-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(3,6-ジアザ-ビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(2,7-ジアザ-スピロ[3.5]ノナ-7-イル)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(3-ヒドロキシ-メチル-ピペラジン-1-イル)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(1,7-ジアザ-スピロ[4.4]ノナ-7-イル)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(4-アミノ-4-メチル-ピペリジン-1-イル)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(3-ジメチル-アミノ-ピペリジン-1-イル)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-ピペリジン-4-イルアミノ)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-[6-(3,3-ジメチル-ピペラジン-1-イル)-ピリダジン-3-イル]-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、2-(6-(7-(2-ヒドロキシエチル)-2,7-ジアザスピロ[4.4]-ノナン-2-イル)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、2-(6-((3aR,6aS)-ヘキサヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-2(1H)-イル)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、3-(6-(ピペラジン-1-イル)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、5-ピラゾール-1-イル-2-[6-(1,2,3,6-テトラヒドロ-ピリジン-4-イル)-ピリダジン-3-イル]-フェノール、2-(6-ピペリジン-4-イル-ピリダジン-3-イル)-5-ピラゾール-1-イル-フェノール、3-(6-(1,2,3,6-テトラ-ヒドロピリジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、3-(6-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、3-(6-(2,2,6,6-テトラメチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、3-(6-(1-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、3-(6-(ピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、3-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、3-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、[3-(7-ヒドロキシ-6-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]-ピリダジン-3-イル}-ナフタレン-2-イルオキシ)-プロピル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル、7-(3-アミノ-プロポキシ)-3-{6-[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]-ピリダジン-3-イル}-ナフタレン-2-オール、N-[3-(7-ヒドロキシ-6-{6[メチル-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-4-イル)-アミノ]-ピリダジン-3-イル}-ナフタレン-2-イルオキシ)-プロピル]-アセトアミド、7-(3-ヒドロキシプロポキシ)-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、7-(3-メトキシプロポキシ)-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、7-(2-モルホリノエトキシ)-3-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、3-(6-(ピペリジン-4-イルメチル)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、5-(1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)メチル)ピリダジン-3-イル)フェノール、3-メトキシ-2-(6-(メチル(2,2,6-トリメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(5-メチルオキサゾール-2-イル)フェノール、2-(6-((6S)-6-((S)-1-ヒドロキシエチル)-2,2-ジメチルピペリジン-4-イルオキシ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、7-ヒドロキシ-6-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-2-ナフトニトリル、3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-7-(ピペリジン-1-イルメチル)ナフタレン-2-オール、3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-7-(ピロリジン-1-イルメチル)ナフタレン-2-オール、1-ブロモ-6-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、
1-クロロ-6-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2,7-ジオール、7-メトキシ-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、7-メトキシ-3-(6-(メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、7-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-7-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ナフタレン-2-オール、7-(ジフルオロメチル)-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、7-((4-ヒドロキシ-2-メチルブタン-2-イル)オキシ)-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、7-(3-ヒドロキシ-3-メチルブトキシ)-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ナフタレン-2-オール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)ベンゼン-1,3-ジオール、3-メトキシ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、5-(1H-ピラゾール-4-イル)-2-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-3-(トリフルオロメトキシ)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-(トリフルオロメトキシ)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)-3-(トリフルオロメトキシ)フェノール、4-(3-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン、3-メトキシ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、3-メトキシ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)フェノール、3-メトキシ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(ピリジン-3-イル)フェノール、5-(1-シクロペンチル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-メトキシ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、3',5-ジメトキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-[1,1'-ビフェニル]-3-オール、3-(ベンジルオキシ)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(5-メチルオキサゾール-2-イル)フェノール、3-エトキシ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(5-メチルオキサゾール-2-イル)フェノール、3-(シクロプロピルメトキシ)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-ピリダジン-3-イル)-5-(5-メチルオキサゾール-2-イル)フェノール、2-メチル-5-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-オール、5-クロロ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、3-ヒドロキシ-4-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)ベンゾニトリル、2-(6-((2,2-ジメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-1-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-4-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-4-(4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-4-(4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピラジン-3-イル)フェノール、4-(1H-インドール-2-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、4-(シクロペンタ-1-エン-1-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-4-(1H-ピラゾール-3-イル)フェノール、4-(4-ヒドロキシ-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)ピリジン-2-オール、4-(4-ヒドロキシ-3-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)フェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン、4-(4-ヒドロキシ-3-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)フェニル)ピリジン-2-オール、5-(1H-インダゾール-7-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、4-クロロ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、4-フルオロ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、5-フルオロ-4-(1H-イミダゾール-4-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-フルオロ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-4-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、5-フルオロ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-4-(1H-ピラゾール-5-イル)フェノール、6-ヒドロキシ-5-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-オン、6-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-1,4-ジヒドロインデノ[1,2-c]ピラゾール-7-オール、6-ヒドロキシ-5-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-オンオキシム塩酸塩、5-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1,6-ジオール、2-アミノ-6-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-8H-インデノ[1,2-d]チアゾール-5-オール塩酸塩、9-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5,6-ジヒドロイミダゾ[5,1-a]イソキノリン-8-オール塩酸塩、4-ヒドロキシ-3-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-N-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)メチル)ベンズアミド、4-(4-(ヒドロキシメチル)-1H-ピラゾール-1-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(1H-ピラゾール-4-イル)-2-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)メチル)ピリダジン-3-イル)フェノール、6-(3-(ベンジルオキシ)イソキノリン-6-イル)-N-メチル-N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、6-(1-(ベンジルオキシ)イソキノリン-7-イル)-N-メチル-N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ピリダジン-3-アミン、3-フルオロ-5-(2-メトキシピリジン-4-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール塩酸塩、4-(3-フルオロ-5-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)ピリジン-2(1H)-オン塩酸塩、4-(3-フルオロ-5-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン塩酸塩、5-(3-フルオロ-5-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン塩酸塩、3-フルオロ-5-(1H-ピラゾール-4-イル)-2-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)フェノール塩酸塩、5-クロロ-3-フルオロ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール塩酸塩、3-フルオロ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール塩酸塩、3-フルオロ-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)フェノール塩酸塩、5-(5-メトキシピリジン-3-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(3-ヒドロキシ-4-(6-メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)ピリジン-2-オール、4-(3-ヒドロキシ-4-(6-メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)ピリジン-2-オール、5-(6-メトキシピリジン-3-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(3-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)-3-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-オール、5-(3-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン、4-(3-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン、5-(2-メトキシピリジン-4-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、4-(3-ヒドロキシ-4-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)フェニル)ピリジン-2-オール、5-(6-(ジメチルアミノ)ピリジン-3-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、4-(3-ヒドロキシ-4-(6-((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)オキシ)ピリダジン-3-イル)フェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(ピリミジン-5-イル)フェノール、
5-(3-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)ピリジン-3-オール、1-シクロプロピル-4-(3-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)ピリジン-2(1H)-オン、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)フェノール、5-(シクロペンタ-1-エン-1-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(イミダゾ[1,5-a]ピリジン-7-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(イミダゾ[1,2-a]ピリジン-7-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(2-メチルピリジン-4-イル)フェノール、5-(1H-イミダゾール-2-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(1H-イミダゾール-4-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、5-(イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(4-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(1-メチル-1H-イミダゾール-5-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(4-ニトロ-1H-イミダゾール-2-イル)フェノール、2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)-5-(2-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)フェノール、5-(1,2-ジメチル-1H-イミダゾール-4-イル)-2-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェノール、1-(3-ヒドロキシ-4-(6-(メチル(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)ピリダジン-3-イル)フェニル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、2-(6-((3aR,6aS)-5-(2-ヒドロキシエチル)ヘキサヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-2(1H)-イル)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、2-(6-((3aR,6aS)-ヘキサヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-2(1H)-イル)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、2-(6-((3aR,6aS)-5-メチルヘキサヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-2(1H)-イル)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、4-(3-ヒドロキシ-4-(6-(5-メチルヘキサヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-2(1H)-イル)ピリダジン-3-イル)フェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン、4-(3-ヒドロキシ-4-(6-((3aR,6aR)-1-メチルヘキサヒドロピロロ[3,4-b]ピロール-5(1H)-イル)ピリダジン-3-イル)フェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン、2-(6-(2,7-ジアザスピロ[4.5]デカン-2-イル)ピリダジン-3-イル)-5-(1H-ピラゾール-4-イル)フェノール、および4-(4-(6-(2,7-ジアザスピロ[4.5]デカン-2-イル)ピリダジン-3-イル)-3-ヒドロキシフェニル)-1-メチルピリジン-2(1H)-オン。
【0132】
他の代表的スプライス修飾剤は、以下の構造を有するRG7916(Roche/PTC/SMAF35、7-(4,7-ジアザスピロ[2.5]オクタン-7-イル)-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン)である。
【0133】
他の代表的スプライス修飾剤は、以下の構造を有するRG7800(Roche)である。
【0134】
例えば以下に挙げるように、RG7916およびRG7800などのスプライス修飾剤の類似体であって、同様に使用することができるものも含まれる:2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aR)-3,4,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aS)-3,4,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aR)-3,4,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aS)-8a-メチル-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aR)-8a-メチル-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3S)-3-メチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3R)-3-メチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-(1,4-ジアゼパン-1-イル)-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3S)-3-メチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3R)-3-メチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-(1,4-ジアゼパン-1-イル)-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル]-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aS)-3,4,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aS)-8a-メチル-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aR)-8a-メチル-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3R)-3-ピロリジン-1-イルピロリジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-(4,7-ジアザスピロ[2.5]オクタン-7-イル)-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-(4,7-ジアザスピロ[2.5]オクタン-7-イル)-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3R)-3-ピロリジン-1-イルピロリジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-(3,3-ジメチルピペラジン-1-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-(3,3-ジメチルピペラジン-1-イル)-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-9-メチル-7-[(3S)-3-メチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-9-メチル-7-[(3R)-3-メチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル]-9-メチル-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-(3,3-ジメチルピペラジン-1-イル)-9-メチル-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-(4,7-ジアザスピロ[2.5]オクタン-7-イル)-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-9-メチル-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3S,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3S)-3-ピロリジン-1-イルピロリジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3S)-3-ピロリジン-1-イルピロリジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(3S,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル]-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、9-メチル-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3S)-3-メチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、9-メチル-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3R)-3-メチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル]-9-メチル-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-(3,3-ジメチルピペラジン-1-イル)-9-メチル-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-(4,7-ジアザスピロ[2.5]オクタン-7-イル)-9-メチル-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(3S,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル]-9-メチル-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、および7-[(3R)-3-エチルピペラジン-1-イル]-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aS)-3,4,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aR)-3,4,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-[(3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル]-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-[(8aS)-3,4,6,7,8,8a-ヘキサヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ピラジン-2-イル]-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-9-メチル-7-[(3S)-3-メチルピペラジン-1-イル]ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-フルオロ-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-フルオロ-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、7-フルオロ-9-メチル-2-(2-メチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、2-(2,8-ジメチルイミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)-7-フルオロ-9-メチル-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、またはそれらの薬学的に許容される塩。
【0135】
スプライス修飾剤の他の代表的ファミリーは、(5',Z)-5-(((lR,4R)-4-((2JE',4JE)-5-((3R,55')-7,7-ジメチル-l,6-ジオキサスピロ[2.5]オクタン-5-イル)-3-メチルペンタ-2,4-ジエン-l-イル)シクロヘキシル)アミノ)-5-オキソペンタ-3-エン-2-イルメチルカルバメートおよび(5',Z)-5-(((lR,4R)-4-((2JE',4JE)-5-((3R,55')-7,7-ジメチル-l,6-ジオキサスピロ[2.5]オクタン-5-イル)-3-メチルペンタ-2,4-ジエン-l-イル)シクロヘキシル)アミノ)-5-オキソペンタ-3-エン-2-イルジメチルカルバメートを含む、米国特許第9,682,993号に開示されている化合物(スデマイシン)である。
【0136】
スプライス修飾剤のさらに他の代表的ファミリーは、以下の特許出願に開示されている物を含むプラジエノライド化合物である:WO 2002/060890、WO 2004/011459、WO 2004/011661、WO 2004/050890、WO 2005/052152、WO 2006/009276、WO 2008/126918およびWO 2015/175594(これらの特許文献はそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる)。プラジエノライド化合物の一例は、天然物プラジエノライドDの半合成誘導体であり、E7107としても公知の、(8E,12E,14E)-7-((4-シクロヘプチルピペラジン-1-イル)カルボニル)オキシ-3,6,16,21-テトラヒドロキシ-6,10,12,16,20-ペンタメチル-18,19-エポキシトリコサ-8,12,14-トリエン-11-オライドである。
【0137】
III. 投与の方法
本明細書において記載の方法または使用によって任意の適切な細胞または哺乳動物に投与または処置を行うことができる。典型的には、疾患状態と関連する異常タンパク質または異常性タンパク質を有しまたは発現すると疑われる哺乳動物が、本明細書において記載の方法を必要とする。
【0138】
哺乳動物の非限定的な例として、ヒト、非ヒト霊長類(類人猿、テナガザル、チンパンジー、オランウータン、サル(monkey)、マカクなど)、家畜(例えばイヌおよびネコ)、農用動物(例えばウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)および実験動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット)が挙げられる。一定の態様において、哺乳動物はヒトである。一定の態様において、哺乳動物は非齧歯類哺乳動物(例えばヒト、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、イヌなど)である。一定の態様において、非齧歯類哺乳動物はヒトである。哺乳動物は任意の齢または任意の発育段階にあることができる(例えば成人、ティーンエイジャー、小児、乳児または子宮内の哺乳動物)。哺乳動物は雄または雌であることができる。一定の態様において、哺乳動物は、例えば疾患状態と関連する異常タンパク質もしくは異常性タンパク質を有するもしくは発現する動物モデル、またはタンパク質の発現が不十分であってそれが疾患の原因となる動物モデルなどといった、動物疾患モデルであることができる。
【0139】
本明細書において記載する方法または組成物で処置される哺乳動物(対象)には、成人(18歳以上)および小児(18歳未満)が含まれる。成人には高齢者が含まれる。代表的な成人は50歳以上である。小児の年齢は、1~2歳または2~4歳、4~6歳、6~18歳、8~10歳、10~12歳、12~15歳および15~18歳の範囲にある。小児には乳児も含まれる。乳児は典型的には1~12月齢の範囲にある。
【0140】
一定の態様において、本方法は、本明細書において説明するように、複数のウイルス粒子またはナノ粒子を哺乳動物に投与する工程を含み、神経変性疾患などの疾患状態の1つまたは複数の症状の重症度、頻度、進行または発症の時間を、減少させるか、低減させるか、防止するか、阻害するか、または遅延させる。一定の態様において、本方法は、神経変性疾患などの疾患状態の有害な症状を処置するために、複数のウイルス粒子またはナノ粒子を哺乳動物に投与する工程を含む。一定の態様において、本方法は、神経変性疾患などの疾患状態の悪化または進行または逆転および有害な症状を安定化し、遅延させ、または防止するために、複数のウイルス粒子またはナノ粒子を哺乳動物に投与する工程を含む。
【0141】
一定の態様において、本方法は、本明細書において説明するように、複数のウイルス粒子またはナノ粒子を中枢神経系またはその一部分に投与する工程を含み、神経変性疾患などの疾患状態の1つまたは複数の症状の重症度、頻度、進行または発症の時間を減少させるか、低減させるか、防止するか、阻害するか、または少なくとも約5~約10日、約10~約25日、約25~約50日もしくは約50~約100日は遅延させる。
【0142】
一定の態様において、症状または有害な効果は、初期症状、中期症状もしくは後期症状、行動症状、パーソナリティ症状もしくは言語症状、嚥下、運動、発作、振戦または落ち着きのない症状、失調、および/または記憶、系統立てる能力などの認知症状を含む。
【0143】
いくつかの態様において、哺乳類細胞または哺乳類標的組織に核酸を導入するには、ウイルスベースおよび非ウイルスベースの遺伝子移入方法を使用することができる。そのような方法は、阻害性RNA、治療タンパク質、またはCRISPRシステムの構成要素をコードする核酸を、培養物中または宿主生物中の細胞に投与するために使用することができる。非ウイルスベクター送達システムとしては、DNAプラスミド、RNA(例えば本明細書において記載するベクターの転写産物)、裸の核酸、およびリポソームなどの送達媒体との複合体を形成した核酸が挙げられる。ウイルスベクター送達システムとしては、細胞への送達後に、エピソームゲノムを有するか、組み込まれたゲノムを有する、DNAウイルスおよびRNAウイルスが挙げられる。遺伝子治療の手順を概観するには、Anderson,1992、Nabel&Feigner,1993、Mitani&Caskey,1993、Dillon,1993、Miller,1992、Van Brunt,1988、Vigne,1995、Kremer&Perricaudet,1995、Haddada et al.,1995およびYu et al.,1994を参照されたい。
【0144】
核酸の非ウイルス送達の方法としては、エクソソーム、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティック法、ビロゾーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、人工ビリオン、および作用物質によって強化された(agent-enhanced)DNAの取り込みが挙げられる。リポフェクションは(例えば米国特許第5,049,386号、同第4,946,787号および同第4,897,355号)に記載されており、リポフェクション試薬は市販されている(例えばTransfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性脂質および中性脂質には、FeignerのWO 91117424、WO 91116024のものが挙げられる。送達は細胞(例えばインビトロ投与またはエクスビボ投与)または標的組織(例えばインビボ投与)への送達であることができる。
【0145】
いくつかの態様において、送達は、RNAウイルスまたはDNAウイルスに基づく核酸送達のためのシステムの使用による。いくつかの局面において、ウイルスベクターは患者に直接(インビボ)投与してもよいし、インビトロまたはエクスビボの細胞を処理するために使用してから、患者に投与することもできる。いくつかの態様において、ウイルスに基づくシステムとしては、遺伝子移入のためのレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、および単純ヘルペスウイルスベクターが挙げられる。
【0146】
A. ウイルスベクター
「ベクター」という用語は、小さな担体核酸分子、プラスミド、ウイルス(例えばAAVベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター)、または核酸の挿入もしくは組入れによって操作することができる他の媒体を指す。ウイルスベクターなどのベクターは、核酸を、細胞によってその核酸内の核酸配列が転写され、それがタンパク質をコードしているのであれば、続いて翻訳されるように、細胞に導入/移入するために使用することができる。
【0147】
「発現ベクター」は、遺伝子または核酸配列を宿主細胞における発現に必要な必須の調節領域と共に含有する特殊なベクターである。発現ベクターは、少なくとも細胞内で増殖するための複製起点と、任意で追加の要素、例えば異種核酸配列、発現制御要素(例えばプロモーター、エンハンサー)、イントロン、ITR、およびポリアデニル化シグナルを含有しうる。
【0148】
ウイルスベクターは、ウイルスゲノムを構成する1つまたは複数の核酸要素に由来するか、またはそれらに基づく。例示的なウイルスベクターとして、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、およびレンチウイルスベクターが挙げられる。
【0149】
組換えウイルスベクター、例えば組換えレンチウイルスまたは組換えパルボウイルス(例えばAAV)ベクターなどといった、ベクターの修飾語としての「組換え」という用語、ならびに組換え核酸配列または組換えポリペプチドなどといった配列の修飾語としての「組換え」という用語は、その組成物が、自然界では一般に起こらないような形で操作(すなわち工学的に操作)されていることを意味する。AAVベクター、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターなどの組換えベクターの特定例は、野生型ウイルスゲノムに通常は存在しない核酸配列がウイルスゲノム内に挿入されているものだろう。組換え核酸配列の一例は、核酸(例えば遺伝子)が、ウイルスゲノム内でその遺伝子が通常伴っている5'領域、3'領域および/またはイントロン領域と共に、またはそれらを伴わずに、ベクター中にクローニングされた阻害性RNAをコードするものだろう。「組換え」という用語は、ウイルスベクターなどのベクターおよびポリヌクレオチドなどの配列に関して、本明細書において常に使用されるわけではないが、核酸配列、ポリヌクレオチド、トランスジーンなどを含む「組換え」型は、そのような省略があっても、明らかに包含される。
【0150】
組換えウイルス「ベクター」は、分子法を使用して、ウイルスから野生型ゲノムを除去して核酸配列などの非ネイティブ核酸で置き換えることにより、AAV、レトロウイルスまたはレンチウイルスなどのウイルスの野生型ゲノムから導かれる。典型的には、例えばAAVの場合であれば、AAVゲノムの一方または両方の逆方向末端反復(ITR)配列が、組換えAAVベクターにおいて保持される。「組換え」ウイルスベクター(例えばrAAV)は、ウイルスゲノムの全部または一部が、ウイルスゲノム核酸と比較して、トランス活性化因子をコードする核酸または阻害性RNAをコードする核酸または治療タンパク質をコードする核酸などの非ネイティブ配列で置き換えられている点で、ウイルス(例えばAAV)ゲノムとは区別される。それゆえに、そのような非ネイティブ核酸配列の組入れがそのウイルスベクターを「組換え」ベクターと規定し、AAVの場合であればそれを「rAAVベクター」と呼ぶことができる。
【0151】
1. アデノ随伴ウイルス
アデノ随伴ウイルス(AAV)はパルボウイルス科の小さな非病原性ウイルスである。現在までに、血清学的に異なる数多くのAAVが同定されており、ヒトまたは霊長類からも12以上が同定されている。AAVは、複製をヘルパーウイルスに依存する点で、この科の他のメンバーとは異なる。
【0152】
AAVゲノムは、宿主細胞のゲノムに組み込まれることなく染色体外状態で存在すること、幅広い宿主域を有すること、インビトロおよびインビボで分裂細胞と非分裂細胞のどちらにも形質導入すること、および形質導入された遺伝子の高レベルな発現を維持することができる。AAVウイルス粒子は熱安定性を有し、溶媒、洗浄剤、pHおよび温度の変化に対して耐性であり、カラム精製することおよび/またはCsCl勾配もしくは他の手段によって濃縮することができる。AAVゲノムは、プラス鎖またはマイナス鎖の一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)を含む。AAVのおよそ5kbのゲノムは、極性がプラスまたはマイナスである一本鎖DNAの1セグメントからなる。ゲノムの両端は、ヘアピン構造に折り畳まれてウイルスDNA複製の起点として機能することができる短い逆方向末端反復(ITR)である。
【0153】
AAV「ゲノム」とは、最終的にはパッケージングまたは封入されてAAV粒子を形成する組換え核酸配列を指す。AAV粒子は、多くの場合、AAVキャプシドタンパク質でパッケージングされたAAVゲノムを含む。組換えベクターを構築または製造するために組換えプラスミドが使用される場合、AAVベクターゲノムは、「プラスミド」のうち、組換えプラスミドのベクターゲノム配列に対応しない部分は含まない。組換えプラスミドのこの非ベクターゲノム部分は、「プラスミドバックボーン」と呼ばれ、これは、増殖と組換えウイルスの生産にとって必要なプロセスであるプラスミドのクローニングと増幅にとって重要であるが、それ自体がウイルス粒子にパッケージングまたは封入されることはない。したがってAAVベクター「ゲノム」とは、AAVキャプシドタンパク質によってパッケージングまたは封入される核酸を指す。
【0154】
AAVビリオン(粒子)は、直径がおよそ25nmの無エンベロープ正二十面体粒子である。AAV粒子は、互いに相互作用してキャプシドを形成する3種の関連キャプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3で構成された正二十面体対称性を含む。右側のORFは、多くの場合、キャプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3をコードする。これらのタンパク質は、多くの場合、それぞれ1:1:10の比で見いだされるが、比は異なる場合もあり、いずれも右側ORFに由来する。VP1、VP2およびVP3キャプシドタンパク質は、選択的スプライシングと珍しいスタートコドンの使用によって、互いに異なる。欠失解析により、選択的スプライシングを受けるメッセージから翻訳されるVP1の除去または改造は、感染性粒子の収量の低減をもたらすことが示されている。VP3コード領域内の変異は、一本鎖子孫DNAまたは感染性粒子の生産不全をもたらす。
【0155】
AAV粒子はAAVキャプシドを含むウイルス粒子である。一定の態様において、AAV粒子のゲノムは、VP1、VP2およびVP3ポリペプチドのうちの1つ、2つまたは全部をコードする。
【0156】
大半のネイティブAAVのゲノムは、2つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含有することが多く、これらは左ORFおよび右ORFと呼ばれることもある。左ORFは、多くの場合、一本鎖子孫ゲノムの生産に加えて複製および転写の調節に関与する非構造Repタンパク質Rep40、Rep52、Rep68およびRep78をコードする。Repタンパク質のうちの2つは、ヒト第19染色体のq腕の一領域へのAAVゲノムの優先的包含と関連付けられている。Rep68/78は、DNAヘリカーゼ活性およびRNAヘリカーゼ活性に加えてNTP結合活性を有することが示されている。いくつかのRepタンパク質は、いくつかの潜在的リン酸化部位と共に、核局在化シグナルを有する。一定の態様において、AAV(例えばrAAV)のゲノムは、Repタンパク質のうちの一部または全部をコードする。一定の態様において、AAV(例えばrAAV)のゲノムはRepタンパク質をコードしない。一定の態様において、Repタンパク質のうちの1つまたは複数は、トランスに送達することができるので、ポリペプチドをコードする核酸を含むAAV粒子には含まれない。
【0157】
AAVゲノムの末端は、ウイルスDNA複製の基点として役立つT字型ヘアピン構造に折り畳まれる潜在能力を有する短い逆方向末端反復(ITR)を含む。したがってAAVのゲノムは、一本鎖ウイルスDNAゲノムに隣接する1つまたは複数(例えば一対)のITR配列を含む。ITR配列は、それぞれ約145塩基の長さを有することが多い。ITR領域内では、ITRの機能にとって中核であると考えられる2つの要素、GAGCリピートモチーフと末端解離部位(terminal resolution site:trs)が記載されている。リピートモチーフは、ITRが線状コンフォメーションまたはヘアピンコンフォメーションのどちらかにあるときに、Repに結合することが示されている。この結合は、部位および鎖特異的に起こるtrsでの開裂のためにRep68/78を位置決めすると考えられる。これら2つの要素は、複製におけるその役割に加えて、ウイルスの包含にとっても中核であると思われる。第19染色体組込座位にはtrsが隣接するRep結合部位が含まれている。これらの要素は、機能的であり、座位特異的な包含にとって必要であることが示されている。
【0158】
一定の態様において、AAV(例えばrAAV)は2つのITRを含む。一定の態様において、AAV(例えばrAAV)は一対のITRを含む。一定の態様において、AAV(例えばrAAV)は、少なくとも機能または活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列に隣接する(すなわち核酸配列の5'端および3'端にそれぞれ存在する)一対のITRを含む。
【0159】
AAVベクター(例えばrAAVベクター)はパッケージングされることができ、本明細書においてはそれを、エクスビボ、インビトロまたはインビボでの細胞の感染(形質導入)のための「AAV粒子」という。組換えAAVベクターがAAV粒子中に封入またはパッケージングされる場合は、その粒子を「rAAV粒子」と言うこともできる。一定の態様において、AAV粒子はrAAV粒子である。rAAV粒子は、多くの場合、rAAVベクターまたはその一部分を含む。rAAV粒子は、1つまたは複数のrAAV粒子(例えば複数のAAV粒子)であることができる。rAAV粒子は、典型的には、rAAVベクターゲノムを封入またはパッケージングするタンパク質(例えばキャプシドタンパク質)を含む。rAAVベクターへの言及はrAAV粒子に言及するためにも使用できることに留意されたい。
【0160】
本明細書における方法または使用には、任意の適切なAAV粒子(例えばrAAV粒子)を使用することができる。rAAV粒子および/またはそこに含まれるゲノムは、AAVの任意の適切な血清型または株に由来することができる。rAAV粒子および/またはそこに含まれるゲノムは、AAVの2つ以上の血清型または株に由来することができる。したがってrAAVは、AAVの任意の血清型または株のタンパク質および/もしくは核酸またはそれらの一部分を含むことができ、そのAAV粒子は哺乳動物細胞の感染および/または形質導入に適している。AAV血清型の非限定的な例とし、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-rh10およびAAV-2i8が挙げられる。
【0161】
一定の態様において、複数のrAAV粒子は、同じ株もしくは血清型(またはサブグループもしくはバリアント)の粒子、または同じ株もしくは血清型(またはサブグループもしくはバリアント)に由来する粒子を含む。一定の態様において、複数のrAAV粒子は、2種以上の異なる(例えば異なる血清型および/または異なる株の)rAAV粒子の混合物を含む。
【0162】
本明細書において使用する場合、「血清型」という用語は、他のAAV血清型とは血清学的に異なるキャプシドを有するAAVを指すために使用される特質である。血清学的特質は、別のAAVと比べてあるAAVに対する抗体間の交差反応性の欠如に基づいて決定される。そのような交差反応性の相違は、通常、キャプシドタンパク質配列/抗原決定基の相違による(例えばAAV血清型のVP1、VP2および/またはVP3配列の相違による)。キャプシドバリアントを含むAAVバリアントがリファレンスAAV血清型または他のAAV血清型と血清学的に異ならない可能性はあっても、それらは、リファレンス血清型または他のAAV血清型と比べて、少なくとも1つのヌクレオチド残基またはアミノ酸残基が異なる。
【0163】
一定の態様において、rAAV粒子からは、一定の血清型が除外される。一態様において、rAAV粒子はAAV4粒子ではない。一定の態様において、rAAV粒子は抗原的にまたは免疫学的にAAV4とは異なる。異なっていることは標準的方法で決定することができる。例えば、ウイルス粒子がAAV4とは抗原的または免疫学的に異なるかどうかを決定するために、ELISAおよびウェスタンブロットを使用することができる。さらにまた、一定の態様において、rAAV2粒子は、AAV4とは異なる組織指向性を保っている。
【0164】
一定の態様において、第1血清型ゲノムに基づくrAAVベクターは、ベクターをパッケージングするキャプシドタンパク質のうちの1つまたは複数の血清型に対応する。例えば、AAVベクターゲノムを構成する1つまたは複数のAAV核酸(例えばITR)の血清型は、rAAV粒子を構成するキャプシドの血清型に対応する。
【0165】
一定の態様において、rAAVベクターゲノムは、ベクターをパッケージングするAAVキャプシドタンパク質のうちの1つまたは複数の血清型に由来するAAV(例えばAAV2)血清型ゲノムに基づくことができる。例えばrAAVベクターゲノムはAAV2由来の核酸(例えばITR)を含むことができ、一方、3つのキャプシドタンパク質のうちの少なくとも1つまたは複数は、異なる血清型、例えばAAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh10、Rh74もしくはAAV-2i8血清型またはそれらのバリアントに由来する。
【0166】
一定の態様において、リファレンス血清型に関連するrAAV粒子またはそのベクターゲノムは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh10、Rh74またはAAV-2i8粒子のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは部分配列と少なくとも60%以上(例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など)同一である配列を含むかまたはそのような配列からなるポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはそれらの部分配列を有する。特定の態様において、リファレンス血清型に関連するrAAV粒子またはそのベクターゲノムは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh10、Rh74またはAAV-2i8血清型のキャプシドまたはITR配列と少なくとも60%以上(例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など)同一である配列を含むかまたはそのような配列からなるキャプシドまたはITR配列を有する。
【0167】
一定の態様において、本明細書における方法は、rAAV1、rAAV2、rAAV3、rAAV4、rAAV5、rAAV6、rAAV7、rAAV8、rAAV9、rAAV10、rAAV11、rAAV12、rRh10、rRh74またはrAAV-2i8粒子の使用、投与または送達を含む。
【0168】
一定の態様において、本明細書における方法は、rAAV2粒子の使用、投与または送達を含む。一定の態様において、rAAV2粒子はAAV2キャプシドを含む。一定の態様において、rAAV2粒子は、ネイティブAAV2粒子または野生型AAV2粒子の対応するキャプシドタンパク質と少なくとも60%、65%、70%、75%以上同一、例えば80%、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など、最大100%同一である、1つまたは複数のキャプシドタンパク質(例えばVP1、VP2および/またはVP3)を含む。一定の態様において、rAAV2粒子は、ネイティブAAV2粒子または野生型AAV2粒子の対応するキャプシドタンパク質と少なくとも75%以上同一、例えば80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など、最大100%同一である、VP1、VP2およびVP3キャプシドタンパク質を含む。一定の態様において、rAAV2粒子はネイティブAAV2粒子または野生型AAV2粒子のバリアントである。いくつかの局面において、AAV2バリアントの1つまたは複数のキャプシドタンパク質は、ネイティブAAV2粒子または野生型AAV2粒子のキャプシドタンパク質と比べて、1、2、3、4、5、5~10、10~15、15~20個またはそれ以上のアミノ酸置換を有する。
【0169】
一定の態様において、rAAV9粒子はAAV9キャプシドを含む。一定の態様において、rAAV9粒子は、ネイティブAAV9粒子または野生型AAV9粒子の対応するキャプシドタンパク質と少なくとも60%、65%、70%、75%以上同一、例えば80%、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など、最大100%同一である、1つまたは複数のキャプシドタンパク質(例えばVP1、VP2および/またはVP3)を含む。一定の態様において、rAAV9粒子は、ネイティブAAV9粒子または野生型AAV9粒子の対応するキャプシドタンパク質と少なくとも75%以上同一、例えば80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など、最大100%同一である、VP1、VP2およびVP3キャプシドタンパク質を含む。一定の態様において、rAAV9粒子はネイティブAAV9粒子または野生型AAV9粒子のバリアントである。いくつかの局面において、AAV9バリアントの1つまたは複数のキャプシドタンパク質は、ネイティブAAV9粒子または野生型AAV9粒子のキャプシドタンパク質と比べて、1、2、3、4、5、5~10、10~15、15~20個またはそれ以上のアミノ酸置換を有する。
【0170】
一定の態様において、rAAV粒子は、それらが1つまたは複数の所望のITR機能(例えばDNA複製を可能にするヘアピンを形成する能力、宿主細胞ゲノムへのAAV DNAの包含、および/または所望であればパッケージング)を保持している限り、ネイティブのまたは野生型のAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-rh10またはAAV-2i8の対応するITRと少なくとも75%以上同一、例えば80%、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など、最大100%同一である、1つまたは2つのITR(例えば一対のITR)を含む。
【0171】
一定の態様において、rAAV2粒子は、それらが1つまたは複数の所望のITR機能(例えばDNA複製を可能にするヘアピンを形成する能力、宿主細胞ゲノムへのAAV DNAの包含、および/または所望であればパッケージング)を保持している限り、ネイティブのまたは野生型のAAV2粒子の対応するITRと少なくとも75%以上同一、例えば80%、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など、最大100%同一である、1つまたは2つのITR(例えば一対のITR)を含む。
【0172】
一定の態様において、rAAV9粒子は、それらが1つまたは複数の所望のITR機能(例えばDNA複製を可能にするヘアピンを形成する能力、宿主細胞ゲノムへのAAV DNAの包含、および/または所望であればパッケージング)を保持している限り、ネイティブのまたは野生型のAAV2粒子の対応するITRと少なくとも75%以上同一、例えば80%、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など、最大100%同一である、1つまたは2つのITR(例えば一対のITR)を含む。
【0173】
rAAV粒子は、任意の適切な数の「GAGC」リピートを有するITRを含むことができる。一定の態様において、AAV2粒子のITRは1、2、3、4、5、6、7、8、9個もしくは10個またはそれ以上の「GAGC」リピートを含む。一定の態様において、rAAV2粒子は3つの「GAGC」リピートを含むITRを含む。一定の態様において、rAAV2粒子は、4つ未満の「GAGC」リピートを有するITRを含む。一定の態様において、rAAV2粒子は、4つより多い「GAGC」リピートを有するITRを含む。一定の態様において、rAAV2粒子のITRは、最初の2つの「GAGC」リピートにおける4番目のヌクレオチドがTではなくCであるRep結合部位を含む。
【0174】
rAAV粒子へのパッケージング/キャプシド化のためにrAAVベクターに組み入れることができるDNAの適切な長さの例は、約5キロベース(kb)以下であることができる。特定の態様において、DNAの長さは、約5kb未満、約4.5kb未満、約4kb未満、約3.5kb未満、約3kb未満、または約2.5kb未満である。
【0175】
RNAiまたはポリペプチドの発現を指示する核酸配列を含むrAAVベクターは、当技術分野において公知の適切な組換え技法を使って作製することができる(例えばSambrook et al.,1989参照)。組換えAAVベクターは、典型的には、形質導入可能なAAV粒子にパッケージングされ、AAVウイルスパッケージングシステムを使って増殖される。形質導入可能なAAV粒子は、哺乳動物細胞に結合して進入し、続いてその核酸カーゴ(例えば異種遺伝子)を細胞の核に送達する能力を有する。したがって、形質導入可能である無傷のrAAV粒子は、哺乳動物細胞に形質導入するように構成される。哺乳動物細胞に形質導入するように構成されたrAAV粒子は、複製可能でないことが多く、自己複製するには追加のタンパク質機構を必要とする。したがって、哺乳動物細胞に形質導入するように構成されたrAAV粒子は、哺乳動物細胞に結合して進入し、その細胞に核酸を送達するように工学的に操作されており、送達される核酸は、多くの場合、rAAVゲノム中の一対のAAV ITRの間に配置されている。
【0176】
形質導入可能なAAV粒子を生産するための適切な宿主細胞としては、異種rAAVベクターのレシピエントとして使用することができるか、または異種rAAVベクターのレシピエントとして使用されたものである微生物、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。安定ヒト細胞株HEK293(例えばAmerican Type Culture Collectionから受託番号ATCC CRL1573の下に容易に入手できる)を使用することができる。一定の態様では、アデノウイルス5型DNAフラグメントで形質転換されていてアデノウイルスのE1a遺伝子とE1b遺伝子を発現させる改変ヒト胎児腎臓細胞株(例えばHEK293)が、組換えAAV粒子を作製するために使用される。改変HEK293細胞株は容易にトランスフェクトされ、rAAV粒子を生産するためのとりわけ好都合なプラットフォームになる。哺乳動物細胞に形質導入する能力を有する高力価のAAV粒子を作製する方法は当技術分野において公知である。例えばAAV粒子はWright,2008およびWright,2009に説明されているように作ることができる。
【0177】
一定の態様において、AAVヘルパー機能は、AAV発現ベクターのトランスフェクションの前に、またはAAV発現ベクターのトランスフェクションと同時に、AAVヘルパーコンストラクトを宿主細胞にトランスフェクトすることによって、宿主細胞に導入される。このように、場合によっては、生産的AAV形質導入に必要な欠落したAAV機能を補完する目的で、AAVのrep遺伝子および/またはcap遺伝子を少なくとも一過性に発現させるために、AAVヘルパーコンストラクトが使用される。AAVヘルパーコンストラクトは、多くの場合、AAV ITRを欠き、複製することも自分自身をパッケージングすることもできない。これらのコンストラクトは、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス、またはビリオンの形態をとることができる。Rep発現産物とCap発現産物をどちらもコードするよく使用されるプラスミドpAAV/AdおよびpIM29+45など、いくつかのAAVヘルパーコンストラクトが記載されている。Rep発現産物および/またはCap発現産物をコードするいくつかの他のベクターも公知である。
【0178】
2. レトロウイルス
本明細書における方法、組成物および使用において、送達される作用物質として使用されるウイルスベクターには、レトロウイルスベクターが含まれる(例えばMiller(1992)Nature,357:455-460参照)。レトロウイルスベクターは、再編成されていない単一コピー遺伝子を、広範な齧歯類、霊長類およびヒトの体細胞に送達する能力を持つため、細胞への核酸の送達によく適している。レトロウイルスベクターは宿主細胞のゲノムに組み込まれる。他のウイルスベクターとは異なり、それらは分裂細胞にしか感染しない。
【0179】
レトロウイルスはRNAウイルスであるので、そのウイルスゲノムはRNAである。宿主細胞がレトロウイルスに感染すると、ゲノムRNAはDNA中間体へと逆転写され、それが極めて効率よく、感染細胞の染色体DNA中に組み込まれる。組み込まれたこのDNA中間体をプロウイルスという。プロウイルスの転写と感染性ウイルスへの組立ては、適当なヘルパーウイルスの存在下で起こるか、または夾雑ヘルパーウイルスの同時生産を伴わない封入を可能にする適当な配列を含有する細胞株中で起こる。封入のための配列が適当なベクターの同時トランスフェクションによって提供されるのであれば、ヘルパーウイルスは組換えレトロウイルスの生産には必要ない。
【0180】
レトロウイルスゲノムおよびプロウイルスDNAは、3つの遺伝子gag、polおよびenvを有し、それらは2つの長末端反復(LTR)配列で挟まれている。gag遺伝子は内部構造(マトリックス、キャプシドおよびヌクレオキャプシド)タンパク質をコードし、env遺伝子はウイルスのエンベロープ糖タンパク質をコードする。pol遺伝子は、ウイルスのRNAを二本鎖DNAに転写するRNA指向性DNAポリメラーゼ逆転写酵素、逆転写酵素によって生産されたDNAを宿主染色体DNAに組み込むインテグラーゼ、およびコードされているgagおよびpol遺伝子をプロセシングするように作用するプロテアーゼを含む産物をコードする。5'LTRおよび3'LTRは、ビリオンRNAの転写およびポリアデニル化を促進するのに役立つ。LTRは、ウイルス複製に必要な他のシス作用配列をすべて含有している。
【0181】
レトロウイルスベクターはCoffin et al.,Retroviruses,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1997)に記載されている。レトロウイルスの代表例はモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)またはマウス幹細胞ウイルス(MSCV)である。レトロウイルスベクターは複製可能である場合も、複製欠損性である場合もある。典型的には、レトロウイルスベクターは複製欠損性であって、ビリオンの複製およびパッケージングの新たなラウンドに必要な遺伝子のコード領域が欠失しているか他の遺伝子で置き換えられている。その結果、ウイルスは初期標的細胞に感染しても、典型的な細胞溶解経路を続けることができない。そのようなレトロウイルスベクターとそのようなウイルスを生産するために必要な作用物質(例えばパッケージング細胞株)は市販されている(例えばClontechから入手することができるカタログ番号634401、631503、631501などのレトロウイルスベクターおよびレトロウイルスシステム(Clontech、カリフォルニア州マウンテンビュー)を参照されたい)。
【0182】
そのようなレトロウイルスベクターは、複製に必要なウイルス遺伝子を、送達しようとする核酸分子で置き換えることにより、送達される作用物質として生産することができる。結果として得られるゲノムは両末端にLTRを含有し、それらの間に1つまたは複数の所望の遺伝子を持つ。レトロウイルスを生産する方法は当業者には公知である(例えば国際公開されたPCT出願WO1995/026411を参照されたい)。レトロウイルスベクターは、1つまたは複数のヘルパープラスミドを含有するパッケージング細胞株において生産することができる。パッケージング細胞株は、ベクターのキャプシド生産およびビリオン成熟に必要なウイルスタンパク質(例えばgag、polおよびenv遺伝子)を提供する。典型的には、ベクタープラスミド間での組換えが起こりえないように、少なくとも2つの別個のヘルパープラスミド(gag遺伝子およびpol遺伝子とenv遺伝子とを別々に含有するもの)が使用される。例えばレトロウイルスベクターは、リン酸カルシウムによるトランスフェクションなどの標準的なトランスフェクション法を使って、パッケージング細胞株中に移入することができる。パッケージング細胞株は当業者には周知であり、市販されている。例示的なパッケージング細胞株はGP2-293パッケージング細胞株(カタログ番号631505、631507、631512、Clontech)である。ビリオン産物にとって十分な時間の後、ウイルスが収穫される。所望であれば、収穫されたウイルスを使って、例えば宿主指向性が異なるウイルスを生産するために第2のパッケージング細胞株を感染させることもできる。最終結果は、関心対象の核酸を含むが、宿主細胞中で新しいウイルスが形成されえないように他の構造遺伝子を欠く、複製能を持たない(replicative incompetent)組換えレトロウイルスである。
【0183】
遺伝子治療におけるレトロウイルスベクターの使用を例証する参考文献として、Clowes et al.,(1994)J.Clin.Invest.93:644-651、Kiem et al.,(1994)Blood 83:1467-1473、Salmons and Gunzberg(1993)Human Gene Therapy 4:129-141、Grossman and Wilson(1993)Curr.Opin.in Genetics and Devel.3:110-114、Sheridan(2011)Nature Biotechnology,29:121、Cassani et al.(2009)Blood,114:3546-3556が挙げられる。
【0184】
3. レンチウイルス
レンチウイルスは、一般的なレトロウイルス遺伝子gag、polおよびenvに加えて、調節機能または構造機能を持つ他の遺伝子も含有する複合型レトロウイルス(complex retrovirus)である。その高い複雑さにより、このウイルスは、潜伏感染の経過に見られるように、その生活環を調整することができる。レンチウイルスの例として、ヒト免疫不全ウイルス:HIV-1、HIV-2や、サル免疫不全ウイルス:SIVが挙げられる。レンチウイルスベクターはHIVビルレンス遺伝子を多重に弱毒化することによって作製されたものであり、例えば遺伝子env、vif、vpr、vpuおよびnefを欠失させることで、ベクターは生物学的に安全になっている。レンチウイルスベクターは当技術分野において周知である(例えば米国特許第6,013,516号および同第5,994,136号を参照されたい)。
【0185】
組換えレンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染する能力を有し、インビボでもエクスビボでも、遺伝子移入と核酸配列の発現とに使用することができる。例えば、非分裂細胞に感染する能力を有する組換えレンチウイルスであって、適切な宿主細胞には、パッケージング機能を担う2つ以上のベクター、すなわちgag、polおよびenvならびにrevおよびtatがトランスフェクトされているものが、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,994,136号に記載されている。
【0186】
レンチウイルスゲノムおよびプロウイルスDNAは、レトロウイルス中に見いだされる3つの遺伝子gag、polおよびenvを有し、それらは2つの長末端反復(LTR)配列で挟まれている。gag遺伝子は内部構造(マトリックス、キャプシドおよびヌクレオキャプシド)タンパク質をコードし、pol遺伝子はRNA指向性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)、プロテアーゼおよびインテグラーゼをコードし、env遺伝子はウイルスのエンベロープ糖タンパク質をコードする。5'LTRおよび3'LTRは、ビリオンRNAの転写およびポリアデニル化を促進するのに役立つ。LTRは、ウイルス複製に必要な他のシス作用配列をすべて含有している。レンチウイルスはvif、vpr、tat、rev、vpu、nefおよびvpxを含む追加の遺伝子を有する。
【0187】
5'LTRには、ゲノムの逆転写に必要な配列(tRNAプライマー結合部位)と、ウイルスRNAが粒子へと効率のよくキャプシド化されるのに必要な配列(Psi部位)が隣接している。キャプシド化(またはレトロウイルスRNAの感染性ビリオンへのパッケージング)に必要な配列がウイルスゲノムから欠落している場合、シス欠陥(cis defect)によりゲノムRNAのキャプシド化が妨げられる。しかし、その結果生じる変異体は、依然として、全ビリオンタンパク質の合成を指示する能力を保っている。
【0188】
4. 他のウイルスベクター
遺伝子送達用のウイルスベクターの開発と有用性は絶え間なく改良され進歩している。ポックスウイルス、例えばワクシニアウイルス(Gnant et al.,1999、Gnant et al.,1999)、アルファウイルス、例えばシンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス(Lundstrom,1999)、レオウイルス(Coffey et al.,1998)およびインフルエンザAウイルス(Neumann et al.,1999)などの他のウイルスベクターも、本開示における使用が考えられ、標的システムに要求される性質に応じて選択されうる。
【0189】
5. キメラウイルスベクター
キメラウイルスベクターまたはハイブリッドウイルスベクターが、治療遺伝子送達における使用のために開発されており、本開示におけるそれらの使用が考えられる。キメラプロウイルス/レトロウイルスベクター(Holzer et al.,1999)、アデノウイルス/レトロウイルスベクター(Feng et al.,1997、Bilbao et al.,1997、Caplen et al.,2000)およびアデノウイルス/アデノ随伴ウイルスベクター(Fisher et al.,1996、米国特許第5,871,982号)が記載されている。これらの「キメラ」ウイルス遺伝子移入システムでは、2種以上の親ウイルス種の好ましい特徴を活用することができる。例えばWilsonらは、アデノウイルスの一部分、AAVの5'ITR配列および3'ITR配列、ならびに選択されたトランスジーンを含む、後述のキメラベクターコンストラクトを提供している(米国特許第5,871,983号、これは特に参照により本明細書に組み入れられる)。
【0190】
B. ナノ粒子
1. 脂質ベースのナノ粒子
いくつかの態様において、脂質ベースのナノ粒子はリポソーム、エクソソーム、脂質調製物、または他の脂質ベースのナノ粒子、例えば脂質ベースのベシクル(例えばDOTAP:コレステロールベシクル)である。脂質ベースのナノ粒子は、正に荷電している場合も、負に荷電している場合も、中性である場合もある。
【0191】
a. リポソーム
「リポソーム」は、閉じた脂質二重層または脂質集合体の生成によって形成されるさまざまな単層脂質媒体および多層脂質媒体を包含する総称である。リポソームは、一般にリン脂質を含む二重層膜と一般に水性組成物を含む内側の媒質とによるベシクル構造を有すると特徴づけることができる。本明細書において提供されるリポソームには、単層(unilamellar)リポソーム、多層(multilamellar)リポソームおよびマルチベシクル(multivesicular)リポソームが含まれる。本明細書において提供されるリポソームは、正に荷電している場合も、負に荷電している場合も、中性に荷電している場合もある。一定の態様において、リポソームは電荷的に中性である。
【0192】
多層リポソームは水性媒質で分離された多重脂質層を有する。そのようなリポソームは、リン脂質を含む脂質を過剰量の水溶液に懸濁すると、自発的に形成される。脂質構成要素は閉じた構造の形成の前に自己再配列を起こし、水と溶解している溶質とを脂質二重層の間に捕捉する。親油性分子または親油性領域を持つ分子も、脂質二重層に溶解するか、脂質二重層と会合しうる。
【0193】
具体的局面において、ポリペプチド、核酸または低分子薬は、例えばリポソームの水性内部に封入したり、リポソームに脂質二重層内に散在させたり、リポソームとポリペプチド/核酸との両方に会合する連結分子を介してリポソームに取り付けたり、リポソーム内に捕捉したり、リポソームとの複合体を形成させたりすることができる。
【0194】
本態様に従って使用されるリポソームは、当業者には公知であるだろうさまざまな方法で作ることができる。例えばリン脂質、例えば中性リン脂質ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)などを、tert-ブタノールに溶解する。次に、該脂質をポリペプチド、核酸および/または他の構成要素と混合する。この脂質混合物にTween 20が組成物重量の約5%になるようにTween 20を加える。この混合物に過剰量のtert-ブタノールを、tert-ブタノールの体積が少なくとも95%になるように加える。その混合物をボルテックスし、ドライアイス/アセトン浴で凍結し、一晩凍結乾燥する。凍結乾燥された調製物は-20℃で保存され、最長3ヶ月は使用することができる。必要になれば、凍結乾燥されたリポソームを0.9%食塩水に再構成する。
【0195】
上記に代えて、ガラス製梨型フラスコなどの容器において溶媒中の脂質を混合することによって、リポソームを調製することもできる。容器は、予想されるリポソーム懸濁液の体積の10倍大きい容積を有するべきである。ロータリーエバポレーターを使って、減圧下に、およそ40℃で溶媒を除去する。溶媒は通常、所望のリポソームの体積に依存して、約5分~2時間以内に除去される。その組成物をデシケーター中、真空下で、さらに乾燥することができる。乾燥された脂質は、時間の経過と共に劣化する傾向があるので、一般に、約1週間後には廃棄される。
【0196】
乾燥された脂質は、無菌パイロジェンフリー水中、約25~50mMリン脂質で、脂質薄膜が再懸濁されるまで振とうすることによって水和させることができる。次に、水性リポソームを小分けして、それぞれをバイアルに入れ、凍結乾燥し、真空下で密封することができる。
【0197】
上述のように調製された乾燥脂質または凍結乾燥リポソームは脱水されており、タンパク質またはペプチドの溶液中で再構成させて、適切な溶媒、例えばDPBSで、適当な濃度に希釈しうる。次に、その混合物をボルテックスミキサーで激しく撹拌する。封入されていない追加材料、例えば限定するわけではないが、ホルモン、薬物、核酸コンストラクトなどを含む作用物質は、29,000×gでの遠心分離によって除去され、リポソームペレットが洗浄される。洗浄されたリポソームは、適当な総脂質濃度、例えば約50~200mMで、再懸濁される。封入された追加材料または追加活性作用物質の量は、標準的方法に従って決定することができる。リポソーム調製物に封入された追加材料または追加活性作用物質の量の決定後に、リポソームを適当な濃度に希釈し、使用時まで4℃で保存することができる。リポソームを含む薬学的組成物は、通常は、無菌の薬学的に許容される担体または希釈剤、例えば水または食塩溶液を含むだろう。
【0198】
本態様で役立ちうるさらなるリポソームとして、カチオン性リポソーム、例えばWO02/100435A1、米国特許第5,962,016号、米国特許出願公開第2004/0208921号、WO03/015757A1、WO04029213A2、米国特許第5,030,453号および米国特許第6,680,068号に記載されているものが挙げられ、これらの特許文献は参照によりその全体が例外なく本明細書に組み入れられる。
【0199】
そのようなリポソームを調製する際には、本明細書において記載する任意のプロトコールまたは当業者に公知であるだろう任意のプロトコールを使用しうる。リポソーム調製のさらなる非限定的な例は、米国特許第4,728,578号、同第4,728,575号、同第4,737,323号、同第4,533,254号、同第4,162,282号、同第4,310,505号および同第4,921,706号、国際出願PCT/US85/01161および同PCT/US89/05040に記載されており、それぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0200】
一定の態様において、脂質ベースのナノ粒子は中性リポソーム(例えばDOPCリポソーム)である。本明細書において使用する場合、「中性リポソーム」または「非荷電リポソーム」は、本質的に中性の正味の電荷を与える(実質的に非荷電の)1種または複数種の脂質構成要素を有するリポソームと定義される。「本質的に中性」または「本質的に非荷電」とは、所与の集団(例えばリポソームの集団)内の脂質構成要素のうち、別の構成要素の反対電荷によって相殺されない電荷を含むものが、仮に存在するとしても、ごくわずかである(すなわち、構成要素のうちの10%未満、より好ましくは5%未満、最も好ましくは1%未満が、相殺されない電荷を含む)ことを意味する。一定の態様において、中性リポソームは、主として、生理的条件(すなわち約pH7)では、それ自身が中性である脂質および/またはリン脂質を含みうる。
【0201】
本態様のリポソームおよび/または脂質ベースのナノ粒子は、リン脂質を含みうる。一定の態様では、リポソームの作出に一種類のリン脂質を使用しうる(例えばDOPCなどの中性リン脂質を使って中性リポソームを作製しうる)。別の態様では、2種以上のリン脂質を使ってリポソームを作出しうる。リン脂質は天然供給源または合成供給源に由来しうる。リン脂質としては、例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロールおよびホスファチジルエタノールアミンが挙げられる。ホスファチジルエタノールアミンとホスファチジルコリンは、生理的条件下(すなわち約pH7)で非荷電であるから、これらの化合物は中性リポソームを作製するのにとりわけ役立ちうる。一定の態様では、リン脂質DOPCを使って非荷電リポソームが生産される。一定の態様では、リン脂質ではない脂質(例えばコレステロール)を使用しうる。
【0202】
リン脂質としては、グリセロリン脂質および一定のスフィンゴリピドが挙げられる。リン脂質としては、ジオレオイルホスファチジルコリン(「DOPC」)、卵ホスファチジルコリン(「EPC」)、ジラウリルオイルホスファチジルコリン(「DLPC」)、ジミリストイルホスファチジルコリン(「DMPC」)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(「DPPC」)、ジステアロイルホスファチジルコリン(「DSPC」)、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(「MPPC」)、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン(「PMPC」)、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン(「PSPC」)、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(「SPPC」)、ジラウリルオイルホスファチジルグリセロール(「DLPG」)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(「DPPG」)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(「DSPG」)、ジステアロイルスフィンゴミエリン(「DSSP」)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(「DSPE」)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(「DOPG」)、ジミリストイルホスファチジン酸(「DMPA」)、ジパルミトイルホスファチジン酸(「DPPA」)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(「DMPE」)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(「DPPE」)、ジミリストイルホスファチジルセリン(「DMPS」)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(「DPPS」)、脳ホスファチジルセリン(「BPS」)、脳スフィンゴミエリン(「BSP」)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン(「DPSP」)、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DAPC」)、1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DBPC」)、1,2-ジエイコセノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DEPC」)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(「DOPE」)、パルミトイルオレオイル(palmitoyloeoyl)ホスファチジルコリン(「POPC」)、パルミトイルオレオイル(palmitoyloeoyl)ホスファチジルエタノールアミン(「POPE」)、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミンおよびジリノレオイルホスファチジルコリンが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0203】
b. エクソソーム
「細胞外ベシクル」および「EV」とは、細胞由来で細胞が分泌するマイクロベシクルであり、これには種類として、エクソソーム、エクソソーム様ベシクル、エクトソーム(形質膜から直接的にベシクルが出芽することによって生じる)、マイクロパーティクル、マイクロベシクル、シェディング(shedding)マイクロベシクル(SMV)、ナノ粒子、さらには(大きい)アポトーシスブレブ(apoptotic bleb)もしくはアポトーシス小体(細胞死によって生じる)または膜粒子が含まれる。
【0204】
本明細書において使用する場合、「マイクロベシクル」および「エクソソーム」という用語は、約10nm~約5000nm、より典型的には30nm~1000nm、最も典型的には約50nm~750nmの直径(または粒子がスフェロイドでない場合には最大寸法)を有する膜粒子を指し、エクソソームの膜の少なくとも一部は細胞から直接的に得られる。最も一般的には、エクソソームは、ドナー細胞のサイズの5%までのサイズ(平均直径)を有するだろう。それゆえに、特に考えられるエクソソームとして、細胞から排出(shed)されたものが挙げられる。
【0205】
エクソソームは、例えば体液など、任意の適切な試料タイプに検出され、またはそこから単離されうる。本明細書において使用する場合、「単離(された)」という用語は、その自然環境からの分離を指し、少なくとも部分精製を包含するものとし、実質的精製を包含しうる。本明細書において使用する場合、「試料」という用語は、本発明が提供する方法に適した任意の試料を指す。試料は、検出または単離に適したエクソソームを含む任意の試料でありうる。試料の供給源としては、血液、骨髄、胸水、腹腔液、脳脊髄液、尿、唾液、羊水、悪性腹水、気管支肺胞洗浄液、滑液、乳汁、汗、涙、関節液および気管支洗浄液が挙げられる。一局面において、試料は、例えば全血またはその任意の画分もしくは構成要素を含む血液試料である。本発明での使用に適した血液試料は、例えば静脈血、動脈血、末梢血、組織血、臍帯血など、血球またはその構成要素を含む任意の公知供給源から抽出されうる。例えば試料は、周知の日常的臨床方法(例えば全血を採血して加工するための手順)を使って採取し、加工しうる。一局面において、例示的な試料は、がんを持つ対象から採血された末梢血でありうる。
【0206】
エクソソームは、組織試料、例えば外科試料、生検試料、組織、糞便、および培養細胞からも単離しうる。組織供給源からエクソソームを単離する場合は、単一細胞懸濁液を得るために組織をホモジナイズし、次に、それらの細胞を溶解してエクソソームを遊離させる必要があるだろう。組織試料からエクソソームを単離する場合は、エクソソームの分断をもたらさないホモジナイゼーションと溶解の手法を選択することが重要である。本明細書において想定されるエクソソームは、好ましくは、生理学的に許容される溶液、例えば緩衝食塩水、成長培地、さまざまな水性媒質などに、体液から単離される。
【0207】
エクソソームは、新たに収集された試料から、または冷凍保存もしくは冷蔵保存されていた試料から単離されうる。いくつかの態様において、エクソソームは細胞培養培地から単離されうる。必要ではないが、試料からあらゆる破片を除去するために、体積排除ポリマー(volume-excluding polymer)による沈殿前に液体試料を清澄化すれば、より高純度なエクソソームが得られるだろう。清澄化の方法として、遠心分離、超遠心分離、濾過、または限外濾過が挙げられる。最も典型的には、エクソソームは、当技術分野において周知の数多くの方法によって単離することができる。好ましい一方法は、体液または細胞培養上清からの分画遠心分離である。例示的なエクソソーム単離方法は(Losche et al.,2004、Mesri and Altieri,1998、Morel et al.,2004)に記載されている。あるいは、(Combes et al.,1997)に記載されているように、エクソソームをフローサイトメトリーによって単離してもよい。
【0208】
一般に是認されているエクソソーム単離プロトコールの一つは、超遠心分離を含み、これはしばしば、比較的低密度のエクソソームを浮かせるためのスクロース密度勾配またはスクロースクッションと組み合わされる。逐次的分画遠心分離によるエクソソームの単離は、他のマイクロベシクルまたは高分子複合体とサイズ分布がオーバーラップする可能性により、困難になる。さらにまた、遠心分離は、ベシクルをそれらのサイズに基づいて分離する手段としては、不十分な場合もある。しかし逐次的遠心分離を、スクロース勾配超遠心分離と組み合わせれば、エクソソームの高濃縮を得ることができる。
【0209】
超遠心分離に代わる方法を使ったサイズに基づくエクソソームの単離は、もう一つの選択肢である。超遠心分離より所要時間が短く、特別な設備を使用する必要もない、限外濾過手法を使ったエクソソームの精製の成功が報告されている。同様に、陽圧を使って流体を駆動することで、1つのマイクロフィルタでの細胞、血小板および細胞片の除去と、第2のマイクロフィルタでの30nmより大きなベシクルの捕捉とを可能にする市販のキットも利用できる(EXOMIR(商標)、Bioo Scientific)。ただし、このプロセスの場合、エクソソームは回収されず、それらのRNA内容物は、第2のマイクロフィルタ上に捕捉された材料から直接的に抽出され、それをPCR分析に使用することができる。HPLCベースのプロトコールにより、潜在的には、高純度なエクソソームを得ることが可能になるだろうが、これらのプロセスは専用の設備を必要とし、スケールアップが難しい。重大な問題は、血液と細胞培養培地はどちらも、エクソソームと同じサイズ範囲に多数のナノ粒子(一部は非ベシクル状のもの)を含有していることである。例えば、一部のmiRNAは、エクソソーム以外の細胞外タンパク質複合体内に含有されうるが、プロテアーゼ(例えばプロテイナーゼK)による処理を行うことで、考えうる「エクソソーム外」タンパク質の混入を取り除くことができる。
【0210】
別の一態様では、試料をエクソソームについて濃縮するために一般に使用される技法、例えば免疫特異的相互作用を伴う技法(例えば免疫磁気捕捉)によって、エクソソームを捕捉しうる。免疫磁気捕捉は免疫磁気細胞分離としても公知であり、典型的には、特定細胞タイプ上に見いだされるタンパク質に対する抗体を小さな常磁性ビーズに取り付けることを必要とする。抗体被覆ビーズを血液などの試料と混合すると、それらはその特定細胞に結合し、それらを取り囲む。次に、試料を強い磁場に入れて、ビーズを一方向にペレット化させる。血液の除去後も、捕捉された細胞はビーズと共に保持される。当技術分野においてこの一般的方法の変法が数多く周知であり、それらはエクソソームを単離するための使用に適している。ある例では、エクソソームを磁気ビーズ(例えばアルデヒド/サルフェートビーズ)に結合させてから、その混合物に抗体を加えて、ビーズに結合しているエクソソームの表面上のエピトープを認識させる。
【0211】
当業者には理解されるであろうが、カーゴを負荷する前に、またはカーゴを負荷した後に、カーゴを送達するための媒体としてのその有用性を高める目的で、ターゲティング部分を含めることによって、エクソソームをさらに変化させてもよい。これに関連して、特定の細胞タイプまたは組織タイプを特異的に標的とする実体を組み入れるために、エクソソームを工学的に操作してもよい。この標的特異的実体、例えば標的細胞または標的組織上の受容体またはリガンドに対するアフィニティーを有するペプチドは、例えば当技術分野において確立された方法を使ったエクソソーム膜マーカーへの融合などによって、エクソソームの膜に組み込まれうる。
【0212】
2. 非脂質ナノ粒子
球状核酸(Spherical Nucleic Acid)(SNA(商標))コンストラクトおよび他のナノ粒子(特に金ナノ粒子)も、意図した標的細胞にキメラミニ遺伝子を送達するための手段として考えられる。それらは充填が密であるため、カーゴ(例えばDNA)の大半は細胞内部でコンストラクトに結合したままであり、核酸に安定性と酵素分解に対する耐性とを付与する。研究されたすべての細胞タイプ(例えばニューロン、腫瘍細胞株など)で、これらのコンストラクトは、単体またはトランスフェクション剤を必要とすることなく、99%のトランスフェクション効率を示す。このコンストラクトのユニークな標的結合アフィニティーおよび特異性が、適合した標的配列に対するすばらしい特異性(すなわち限定的オフターゲット効果)を可能にする。これらのコンストラクトは、主要な従来のトランスフェクション試薬(Lipofectamine 2000およびCytofectin)よりも、有意に優れている。これらのコンストラクトは、明白な毒性を伴わずに、さまざまな培養細胞、初代細胞および組織に進入することができる。これらのコンストラクトが誘発する、全ゲノムマイクロアレイ研究およびサイトカイン特異的タンパク質アッセイによって測定される網羅的遺伝子発現の変化は、ごくわずかでしかない。これらのコンストラクトの表面のテーラリングには、単一のまたは組合せの作用物質(例えばタンパク質、ペプチド、低分子)をいくつでも使用することができる。例えばJensen et al.,Sci.Transl.Med.5,209ra152(2013)を参照されたい。
【0213】
核酸カーゴを持つ自己集合性ナノ粒子は、PEG化されたポリエチレンイミン(PEI)を使用し、ポリエチレングリコール(PEG)の遠位端にArg-Gly-Asp(RGD)ペプチドリガンドを取り付けることで構築されうる。ナノプレックスは、カチオン性ポリマーの水溶液と核酸の水溶液を等体積ずつ混合して、リン酸塩(核酸)に対してイオン化可能な窒素(ポリマー)を2~6の範囲にわたって正味のモル過剰にすることによって調製されうる。カチオン性ポリマーと核酸との間の静電相互作用がポリプレックスの形成をもたらした。これは約100nmの平均粒子サイズ分布を持つので、ナノプレックスと呼ばれる(例えばBartlett et al.,PNAS,104:39,2007を参照されたい)。
【0214】
C. カプセル化細胞移植
本明細書におけるキメラミニ遺伝子はエクスビボで細胞に送達することができ、次に、それは、患者に標的遺伝子を送達するためにカプセル化され、移植される。例えば、患者またはドナーから単離された細胞に外因性異種核酸を導入したものを、カプセル化細胞の移植によって患者に直接送達することができる。カプセル化細胞を移植することの利点は、細胞に対する免疫応答がカプセル化によって低減されることである。したがって本明細書において、遺伝子改変細胞を対称に投与する方法が提供される。送達される細胞の数は所望の効果、具体的核酸、処置される対象、その他類似する因子に依存し、当業者はそれを決定することができる。
【0215】
遺伝子治療のために核酸が導入される細胞には、任意の望ましい利用可能な細胞タイプが包含され、例えば上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋細胞、肝細胞;血液細胞、例えばTリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球;さまざまな幹細胞または前駆細胞、特に造血幹細胞または造血前駆細胞、例えば骨髄、臍帯血、末梢血または胎児肝臓から得られるものが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。例えば遺伝子改変細胞は、多能性幹細胞または全能性幹細胞(誘導多能性幹細胞を含む)であるか、胚性細胞、胎児細胞または完全分化細胞であることができる。遺伝子改変細胞は、レシピエント対象と同じ対象からの細胞であるか、レシピエント対象と同じ種または異なる種からの細胞であることができる。好ましい一例において、遺伝子治療に使用される細胞は患者にとって自家細胞である。細胞を遺伝子改変する方法および細胞を移植する方法は当技術分野において公知である。
【0216】
典型的には、まず核酸が細胞に導入されてから、その結果生じた組換え細胞がインビボ投与される。そのような導入は、当技術分野において公知の任意の方法によって、例えば限定するわけではないが、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含有するウイルスベクターまたはバクテリオファージベクターによる感染、細胞融合、染色体媒介遺伝子移入(chromosome-mediated gene transfer)、マイクロセル媒介遺伝子移入(microcell-mediated gene transfer)、スフェロプラスト融合などによって、実行することができる。外来遺伝子を細胞に導入するための数多くの技法が当技術分野において公知であり(例えばLoeffler and Behr,Meth.Enzymol.(1993)217:599-618、Cotten et al.,Meth.Enzymol.(1993)217:618-644、Cline,Pharmac.Ther.(1985)29:69-92を参照されたい)、レシピエント細胞の必要な発生機能および生理機能を乱さないのであれば、それらを使用することができる。特定の例において、本方法は、細胞への核酸の安定な移入を可能にするものであるので、核酸はその細胞による発現が可能であり、かつその子孫細胞への遺伝およびその子孫細胞による発現も可能である。
【0217】
カプセル化は、アルギネート/ポリリジン複合体で被覆されたアルギネートマイクロカプセルを使って行うことができる。ヒドロゲルマイクロカプセルは、組織工学および再生医学のための生細胞または生細胞集合体のカプセル化に関して、広く研究されてきた(Orive,et al.Nat.Medicine 2003,9,104、Paul,et al.,Regen.Med.2009,4,733、Read,et al.Biotechnol.2001,19,29)。一般にカプセルは、細胞によって分泌される治療タンパク質を放出しつつ、カプセル化細胞への酸素と栄養素の容易な拡散が可能になるように、また免疫系による攻撃から細胞を保護するように、設計される。これらは、I型糖尿病、がんおよびパーキンソン病などの神経変性障害を含む一連の疾患のための治療薬候補として開発されてきた(Wilson et al.Adv.Drug.Deliv.Rev.2008,60,124、Joki,et al.Nat.Biotech.2001,19,35、Kishima,et al.Neurobiol.Dis.2004,16,428)。最も一般的なカプセル製剤の一つは、アルギネートヒドロゲルに基づき、これはイオン架橋によって形成させることができる。典型的なプロセスでは、まず、細胞に粘稠なアルギネート溶液を配合する。次に、その細胞懸濁液を、空気せん断(air shear)、音響振動または静電液滴形成などといったさまざまな方法を使って、微小滴に加工する(Rabanel et al.Biotechnol.Prog.2009,25,946)。アルギネート液滴は、Ca2+またはBa2+などの二価イオンの溶液と接触させると、ゲル化する。
【0218】
対象に哺乳動物細胞を移植するためのカプセルが開示される。カプセルは、移植される細胞をカプセル化する生体適合性ヒドロゲル形成ポリマーから形成される。カプセル状過成長(capsular overgrowth)(線維形成)を阻害するために、カプセルの構造は、細胞性材料がカプセル表面に位置するのを妨げる。加えて、カプセルの構造は、細胞では十分なガス交換が起こること、およびその中にカプセル化されている細胞が栄養素を受け取ることを保証する。任意で、カプセルは、徐放されるようにその中に封入された1種または複数種の抗炎症薬も含有する。
【0219】
開示される組成物は、移植される細胞をカプセル化する生体適合性ヒドロゲル形成ポリマーから形成される。適切なヒドロゲルを形成させるために使用することができる材料の例としては、多糖、例えばアルギネート、コラーゲン、キトサン、セルロース硫酸ナトリウム、ゼラチンおよびアガロース、水溶性ポリアクリレート、ポリホスファジン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリビニルピロリドン(PVP)、およびそれらのコポリマーおよび配合物が挙げられる。例えば米国特許第5,709,854号、同第6,129,761号、同第6,858,229号および同第9,555,007号を参照されたい。
【0220】
IV. 薬学的組成物
本明細書において使用する場合「薬学的に許容される」および「生理学的に許容される」という用語は、1つまたは複数の投与経路、インビボ送達またはインビボ接触に適した生物学的に許容される組成物、製剤、液状物もしくは固形物、またはそれらの混合物を意味する。「薬学的に許容される」組成物または「生理学的に許容される」組成物は、生物学的にも他の面でも望ましくないことのない材料であり、例えばこの材料は、実質的に望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく対象に投与されうる。そのような組成物、「薬学的に許容される」および「生理学的に許容される」製剤および組成物は、無菌であることができる。そのような薬学的製剤および薬学的組成物は、例えばウイルス粒子またはナノ粒子を対象に投与する際に使用しうる。
【0221】
そのような製剤および組成物は、薬学的投与またはインビボでの接触もしくは送達に適合する、溶媒(水性または非水性)、溶液(水性または非水性)、エマルション(例えば水中油型または油中水型)、懸濁液、シロップ、エリキシル、分散媒および懸濁媒、コーティング、等張化および吸収促進または吸収遅延剤を含む。水性および非水性の溶媒、溶液および懸濁液は、懸濁化剤および増粘剤を含みうる。補助的活性化合物(例えば保存剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤および抗真菌剤)も、製剤および組成物に組み入れることができる。
【0222】
薬学的組成物は、典型的には、薬学的に許容される賦形剤を含有する。そのような賦形剤は、その組成物を投与される個体に有害な抗体の生産をそれ自体は誘導せず、過度の毒性を伴わずに投与しうる、任意の薬学的作用物質を含む。薬学的に許容される賦形剤としては、ソルビトール、Tween80、水、食塩水、グリセロールおよびエタノールなどの液体が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。そこには、薬学的に許容される塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩、および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩が含まれうる。さらにまた、補助物質、例えば界面活性剤、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質なども、そのような媒体中に存在しうる。
【0223】
薬学的組成物は、本明細書において示すまたは当業者に公知の特定投与経路または特定送達経路に適合するように製剤化することができる。したがって薬学的組成物は、さまざまな経路による投与または送達に適した担体、希釈剤または賦形剤を含む。
【0224】
ウイルス粒子またはナノ粒子の注射に適した医薬剤形としては、無菌の注射もしくは注入可能な溶液または分散体の即時調製に適応しており、任意でリポソーム中にカプセル化された、無菌の水性溶液または水性分散体を挙げることができる。いずれの場合も、最終的な剤形は無菌の流体であり、製造、使用および貯蔵条件下で安定であるべきである。液状の担体または媒体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液状ポリエチレングリコールなど)、植物油、無毒性グリセリルエステル、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または液状分散媒であることができる。適正な流動性は、例えばリポソームの形成によって、分散体の場合は必要とされる粒子サイズの維持によって、または界面活性剤の使用によって、維持することができる。等張化剤、例えば糖類、緩衝剤または塩類(例えば塩化ナトリウム)を含めることができる。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを、組成物に使用することによって生じさせることができる。
【0225】
ウイルス粒子またはナノ粒子の溶液または懸濁液は、任意で、以下の構成要素のうちの1つまたは複数を含むことができる:無菌希釈剤、例えば注射用水、食塩溶液、例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)、人工的CSF、界面活性剤、固定油、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液状ポリエチレングリコールなど)、グリセリン、または他の合成溶媒、抗菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸など;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、ならびに張性を適合させるための作用物質、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。
【0226】
本発明の組成物、方法および使用に適した薬学的製剤、組成物および送達システムは、当技術分野において公知である(例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy(2003)20th ed.,Mack Publishing Co.,ペンシルベニア州イーストン、Remington's Pharmaceutical Sciences(1990)18th ed.,Mack Publishing Co.,ペンシルベニア州イーストン、The Merck Index(1996)12th ed.,Merck Publishing Group,ニュージャージー州ホワイトハウス、Pharmaceutical Principles of Solid Dosage Forms(1993),Technonic Publishing Co.,Inc.,ペンシルベニア州ランカスター、Ansel and Stoklosa,Pharmaceutical Calculations(2001)11th ed.,Lippincott Williams&Wilkins,メリーランド州ボルチモア、およびPoznansky et al.,Drug Delivery Systems(1980)、R.L.Juliano,ed.,Oxford,ニューヨーク,pp.253-315を参照されたい)。
【0227】
ウイルス粒子、ナノ粒子およびそれらの組成物は、投与を容易にすると共に投薬量が均一になるように、投薬単位形(dosage unit form)に製剤化されうる。本明細書において使用する場合「投薬単位形」とは、処置される個体への単位投薬量として好適な物理的に離散した単位を指し、各単位は、所望の治療効果を生じるように計算された予め決定された分量の活性化合物を必要な薬学的担体と共に含有する。投薬単位形は、所望の効果を生じさせるために必要と考えられるウイルス粒子またはナノ粒子の数に依存する。必要な量は、単回投与で処方するか、複数の投薬単位で処方することができる。用量は、適切なウイルス粒子濃度またはナノ粒子濃度になるように調節し、任意で抗炎症剤と組み合わせ、使用のために梱包しうる。
【0228】
一態様において、薬学的組成物は、治療有効量、すなわち問題の疾患状態の症状もしくは有害な効果を低減させるかもしくは改善するのに十分な量、または所望の利益を与えるのに十分な量を提供するのに十分な遺伝物質を含むだろう。
【0229】
本明細書において使用する場合「単位剤形(unit dosage form)」とは、処置される対象への単位投薬量として好適な物理的に離散した単位を指し、各単位は、1回または複数回投与された場合に所望の効果(例えば予防効果または治療効果)を生じると計算された予め決定された分量を、任意で薬学的担体(賦形剤、希釈剤、媒体または充填剤)と共に含有する。単位剤形は、例えば、液状組成物、冷凍乾燥状態または凍結乾燥状態にある組成物を含みうるアンプルおよびバイアルに入っていてよく、インビボ投与またはインビボ送達の前に、例えば無菌液状担体を加えることができる。個々の単位剤形は、多用量型のキットまたは容器に含めることができる。したがって例えばウイルス粒子、ナノ粒子およびそれらの薬学的組成物は、投与を容易にすると共に投薬量が均一になるように、単一のまたは複数の単位剤形に梱包することができる。
【0230】
ウイルス粒子またはナノ粒子を含有する製剤は、通例、有効量を含有し、有効量は当業者によって容易に決定される。ウイルス粒子またはナノ粒子は、典型的には、組成物の約1%~約95%(w/w)、または適切であればさらに高い範囲にありうる。投与される分量は、処置が考慮されている哺乳動物またはヒト対象の齢、体重および健康状態などの因子に依存する。当業者は用量応答曲線を確立する日常的な試験によって有効投薬量を確立することができる。
【0231】
V. 定義
「ポリヌクレオチド」、「核酸」および「トランスジーン」という用語は、本明細書において、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)ならびにそれらのポリマーを含むあらゆる形態の核酸、オリゴヌクレオチドを指すために相互可換的に使用される。ポリヌクレオチドには、ゲノムDNA、cDNAおよびアンチセンスDNA、ならびにスプライシングされたまたはスプライシングされていないmRNA、rRNA、tRNAおよび阻害性DNAまたは阻害性RNA(RNAi、例えば低分子または短鎖ヘアピン(sh)RNA、マイクロRNA(miRNA)、低分子または短鎖干渉(si)RNA、トランススプライシングRNAまたはアンチセンスRNA)が含まれる。ポリヌクレオチドは、天然の、合成の、および意図的に改変または改造された、ポリヌクレオチド(例えばバリアント核酸)を含むことができる。ポリヌクレオチドは一本鎖、二本鎖または三重鎖の線状または環状であることができ、任意の適切な長さであることができる。ポリヌクレオチドの議論において、特定ポリヌクレオチドの配列または構造は、本明細書において、5'→3'方向に配列を記載する慣習に従って記載されうる。
【0232】
ポリペプチドをコードする核酸は、多くの場合、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む。別段の表示がある場合を除き、ある特定核酸配列には、縮重コドン置換も含まれる。
【0233】
核酸は、オープンリーディングフレームに機能的に連結された1つまたは複数の発現制御要素または発現調節要素を含むことができ、それら1つまたは複数の調節要素は、哺乳動物細胞においてそのオープンリーディングフレームがコードするポリペプチドの転写および翻訳を指示するように構成される。発現制御/調節要素の非限定的な例として、転写開始配列(例えばプロモーター、エンハンサー、TATAボックスなど)、翻訳開始配列、mRNA安定性配列、ポリA配列、分泌配列などが挙げられる。発現制御/調節配列は任意の適切な生物のゲノムから得ることができる。
【0234】
「プロモーター」とは、通常はコード配列の上流(5'側)にあって、RNAポリメラーゼおよび適正な転写に必要な他の因子に認識部位を提供することによってコード配列の発現を指示および/または制御するヌクレオチド配列を指す。「プロモーター」は、TATAボックスと、任意で転写開始部位を指定する働きをする他の配列とで構成される短いDNA配列である最小プロモーターを含み、そこに発現を制御するための調節要素が付加される。
【0235】
「エンハンサー」は転写活性を刺激できるDNA配列であり、発現のレベルまたは発現の組織特異性を強化する、プロモーター固有の要素または異種要素であることができる。これはどちらの方向にも作動することができ(5'→3'または3'→5')、プロモーターの上流または下流のどちらに配置されても機能する能力を有する。
【0236】
プロモーターおよび/またはエンハンサーはその全体がネイティブ遺伝子に由来してもよいし、自然界に見いだされる異なる要素に由来する異なる要素で構成されてもよいし、さらには合成DNAセグメントで構成されてもよい。プロモーターまたはエンハンサーは、刺激、生理学的条件または発生的条件に応答して転写開始の有効性を調整/制御する、タンパク質因子の結合に関与するDNA配列を含みうる。
【0237】
非限定的な例として、SV40初期プロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP)、単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えばCMV前初期プロモーター領域(CMVIE)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、pol IIプロモーター、pol IIIプロモーター、合成プロモーター、ハイブリッドプロモーターなどが挙げられる。加えて、非ウイルス遺伝子由来の配列、例えばマウスメタロチオネイン遺伝子も、ここでは役立つだろう。例示的な構成的プロモーターとしては、一定の構成的機能または「ハウスキーピング」機能をコードする以下の遺伝子のプロモーター、および当業者に公知の他の構成的プロモーターが挙げられる:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、アデノシンデアミナーゼ、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)、ピルビン酸キナーゼ、ホスホグリセロールムターゼ、アクチンプロモーター。加えて、多くのウイルスプロモーターが真核細胞では構成的に機能する。それらには、なかんずく、SV40の初期および後期プロモーター、モロニー白血病ウイルスおよび他のレトロウイルスの長末端反復(LTR)、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターなどがある。したがって、上述の構成的プロモーターはいずれも、異種遺伝子インサートの転写を制御するために使用することができる。
【0238】
本明細書において、細胞または生物に導入されるまたは導入された核酸配列/ポリヌクレオチドを指して、便宜上、「トランスジーン」という。トランスジーンには、任意の核酸、例えば阻害性RNAまたはポリペプチドもしくはタンパク質をコードする遺伝子が包含され、それらは一般的には天然のAAVゲノム配列に対して異種である。
【0239】
「形質導入」という用語は、ベクター(例えばウイルス粒子)による細胞または宿主生物への核酸配列の導入を指す。したがって、ウイルス粒子による細胞へのトランスジーンの導入は、細胞の「形質導入」ということができる。トランスジーンは、形質導入された細胞のゲノム核酸に組み込まれても組み込まれなくてもよい。導入されたトランスジーンがレシピエント細胞またはレシピエント生物の核酸(ゲノムDNA)に組み込まれる場合、それはその細胞または生物に安定に維持されることが可能になり、レシピエント細胞またはレシピエント生物の子孫細胞または子孫生物にさらに伝えられまたは受け継がれる。最後に、導入されたトランスジーンはレシピエント細胞またはレシピエント宿主生物において染色体外に存在するか、または一過性にのみ存在する場合もある。それゆえ、「形質導入細胞」とは、形質導入によってトランスジーンが導入された細胞である。したがって「形質導入」細胞は、トランスジーンが導入された細胞またはその子孫である。形質導入細胞を増殖させ、トランスジーンを転写し、コードされている阻害性RNAまたはタンパク質を発現させることができる。遺伝子治療での使用および遺伝子治療の方法の場合、形質導入細胞は哺乳動物中に存在することができる。
【0240】
誘導性プロモーターの制御を受けるトランスジーンは誘導剤の存在下でのみ発現するか、誘導剤の存在下ではより強く発現する(例えばメタロチオネインプロモーターの制御を受ける転写は一定の金属イオンの存在下で著しく増加する)。誘導性プロモーターは、それぞれの誘導因子が結合した場合に転写を刺激する応答性要素(responsive element:RE)を含む。例えば、血清因子、ステロイドホルモン、レチノイン酸およびサイクリックAMPに対するREがある。誘導性の応答を得るために特定のREを含有するプロモーターを選ぶことができ、場合により、REそのものを異なるプロモーターに結合することによって、その組換え遺伝子に誘導性を付与してもよい。したがって、適切なプロモーター(構成的プロモーターか誘導性プロモーターか、強いプロモーターか弱いプロモーターか)を選択することにより、遺伝子改変細胞におけるポリペプチドの存在と発現レベルの両方を制御することが可能である。ポリペプチドをコードする遺伝子が誘導性プロモーターの制御を受ける場合、インサイチューでのポリペプチドの送達は、インサイチューの遺伝子改変細胞を、ポリペプチドの転写を許す条件に暴露することによって、例えば作用物質の転写を制御する誘導性プロモーターの特異的誘導因子を腹腔内注射することによって、トリガーされる。例えば、メタロチオネインプロモーターの制御を受ける遺伝子がコードするポリペプチドの、遺伝子改変細胞によるインサイチュー発現は、遺伝子改変細胞を適当な(すなわち誘導性の)金属イオンを含有する溶液とインサイチューで接触させることによって強化される。
【0241】
核酸/トランスジーンは、それが別の核酸配列と機能的な関係に置かれた場合に、「機能的に連結」されているという。RNAiもしくはポリペプチドをコードする核酸/トランスジーンまたはポリペプチドの発現を指示する核酸は、コードされているポリペプチドの転写を制御するために、誘導性プロモーターまたは組織特異的プロモーターを含みうる。発現制御要素に機能的に連結された核酸は発現カセットと呼ぶこともできる。
【0242】
一定の態様において、本明細書において記載する方法および使用では、CNS特異的なまたは誘導性のプロモーター、エンハンサーなどが使用される。CNS特異的プロモーターの非限定的な例としては、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、およびニューロン特異的エノラーゼ(NSE)の遺伝子から単離されたものが挙げられる。誘導性プロモーターの非限定的な例としては、エクジソン、テトラサイクリン、低酸素症およびIFNに対するDNA応答性要素が挙げられる。
【0243】
一定の態様において、発現制御要素はCMVエンハンサーを含む。一定の態様において、発現制御要素はβアクチンプロモーターを含む。一定の態様において、発現制御要素は、ニワトリβアクチンプロモーターを含む。一定の態様において、発現制御要素はCMVエンハンサーとニワトリβアクチンプロモーターとを含む。
【0244】
本明細書において使用する場合、「改変する」または「バリアント」という用語およびそれらの文法上の異形は、核酸、ポリペプチドまたはその部分配列がリファレンス配列から逸脱していることを意味する。それゆえに、改変配列およびバリアント配列は、発現量、活性または機能が、リファレンス配列と比べて、実質的に同じことも、大きいことも、小さいこともありうるが、リファレンス配列の活性または機能を少なくとも部分的には保持している。特定タイプのバリアントは変異型タンパク質であり、これは、例えばミスセンス変異またはナンセンス変異などの突然変異を有する遺伝子によってコードされているタンパク質を指す。
【0245】
「核酸」バリアントまたは「ポリヌクレオチド」バリアントとは、野生型と比較すると遺伝子が変化している改変配列を指す。配列は、コードされているタンパク質配列を変化させることなく遺伝子改変されうる。あるいは、配列は、バリアントタンパク質をコードするように遺伝子改変されうる。核酸バリアントまたはポリヌクレオチドバリアントは、野生型タンパク質配列などのリファレンス配列に対して少なくとも部分的な配列同一性を依然として保持しているタンパク質をコードするようにコドン改変され、かつバリアントタンパク質をコードするようにもコドン改変されている組合せ配列も指すことができる。例えば、そのような核酸バリアントの一部のコドンは、それによってコードされているタンパク質のアミノ酸を変化させないように変化し、核酸バリアントの一部のコドンは変化して、その結果、それがコードするタンパク質のアミノ酸を変化させるだろう。
【0246】
「タンパク質」という用語と「ポリペプチド」という用語は本明細書において相互可換的に使用される。本明細書において開示する「核酸」または「ポリヌクレオチド」または「トランスジーン」がコードする「ポリペプチド」には、部分長または完全長のネイティブ配列、ならびに天然の野生型および機能的多形タンパク質、それらの機能的部分配列(フラグメント)、ならびにそれらの配列バリアントが、そのポリペプチドがある程度の機能または活性を保持している限り、含まれる。したがって、本発明の方法および使用において、核酸配列によってコードされているそのようなポリペプチドは、欠損性である内在性タンパク質、またはその活性、機能もしくは発現が処置される哺乳動物において不十分であり、欠乏しており、もしくは存在しない内在性タンパク質と、同一である必要はない。
【0247】
改変の非限定的な例として、1つまたは複数のヌクレオチドまたはアミノ酸の置換(例えば約1~約3、約3~約5、約5~約10、約10~約15、約15~約20、約20~約25、約25~約30、約30~約40、約40~約50、約50~約100、約100~約150、約150~約200、約200~約250、約250~約500、約500~約750、約750~約1000個またはそれ以上のヌクレオチドまたは残基)が挙げられる。
【0248】
アミノ酸改変の例は保存的アミノ酸置換または欠失である。特定の態様において、改変された配列またはバリアント配列は、無改変の配列(例えば野生型配列)の機能または活性の少なくとも一部を保持している。
【0249】
アミノ酸改変の他の例は、ウイルス粒子のキャプシドタンパク質に導入されるターゲティングペプチドである。組換えウイルスベクターまたはナノ粒子を中枢神経系、例えば血管内皮細胞へとターゲティングするペプチドが同定されている。したがって、改変組換えウイルス粒子またはナノ粒子は、例えば脳血管を裏打する内皮細胞を標的とすることができる。
【0250】
そのように改変された組換えウイルスは、あるタイプの組織(例えばCNS組織)に、別のタイプの組織(例えば肝臓組織)よりも優先的に結合しうる。一定の態様において、改変キャプシドタンパク質を保持する組換えウイルスは、匹敵する無改変キャプシドタンパク質より高いレベルで結合することにより、脳血管上皮組織を「標的とする」ことができる。例えば、改変キャプシドタンパク質を有する組換えウイルスは、無改変組換えウイルスよりも50%~100%高いレベルで脳血管上皮組織に結合しうる。
【0251】
「核酸フラグメント」とは所与の核酸分子の一部分である。大半の生物ではデオキシリボ核酸(DNA)が遺伝物質であり、一方、リボ核酸(RNA)は、DNA内に含有される情報のタンパク質への移動に関与する。開示されるヌクレオチド配列のフラグメントおよびバリアントならびにそれによってコードされるタンパク質または部分長タンパク質も、本発明に包含される。「フラグメント」または「部分」とは、完全長の、または完全長未満の、ポリペプチドもしくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列またはポリペプチドもしくはタンパク質のアミノ酸配列を意味する。一定の態様において、フラグメントまたは部分は、生物学的に機能的である(すなわち野生型の活性または機能のうち、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%または100%を保持している)。
【0252】
ある分子の「バリアント」は、ネイティブ分子の配列と実質的に類似している配列である。ヌクレオチド配列の場合、バリアントには、遺伝コードの縮重ゆえにネイティブタンパク質と同一のアミノ酸配列をコードする配列が包含される。そのような天然のアレルバリアントは、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびハイブリダイゼーション技法などといった分子生物学の技法を利用して同定することができる。バリアントヌクレオチド配列には、合成由来のヌクレオチド配列、例えば指定部位突然変異誘発法を使って作製された、ネイティブタンパク質をコードするもの、ならびにアミノ酸置換を有するポリペプチドをコードするものなども包含される。一般に、本発明のヌクレオチド配列バリアントは、ネイティブ(内在性)ヌクレオチド配列に対して少なくとも40%、50%、60%、ないし70%、例えば71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、ないし79%、一般的には少なくとも80%、例えば81%~84%、少なくとも85%、例えば86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、ないし98%の配列同一性を有する。一定の態様において、バリアントは生物学的に機能的である(すなわち野生型の活性または機能の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%または100%を保持している)。
【0253】
特定の核酸配列の「保存的置換」とは、同一または本質的に同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を指す。遺伝暗号は縮重しているので、任意の所与のポリペプチドは、機能的に同一な多数の核酸によってコードされる。例えばコドンCGT、CGC、CGA、CGG、AGAおよびAGGは、いずれもアミノ酸アルギニンをコードする。したがって、コドンによってアルギニンが指定される位置ではどこでも、コードされるタンパク質を変化させることなく、記載した対応コドンのいずれかに、コドンを変化させることができる。そのような核酸バリエーションは「サイレントバリエーション」であり、これは「保存的に改変されたバリエーション」の一種である。ポリペプチドをコードする本明細書において記載の核酸配列はいずれも、別段の注記がある場合を除き、考えうるすべてのサイレントバリエーションを表す。核酸中の各コドン(通常は唯一のメチオニンコドンであるATGを除く)を、標準的技法によって機能的に同一な分子が得られるように改変できることは、当業者にはわかるだろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各「サイレントバリエーション」は、記載された各配列に暗に示されている。
【0254】
ポリヌクレオチド配列の「実質的同一性」という用語は、ポリヌクレオチドが、記載のアラインメントプログラムの1つを標準的パラメータで使用することでリファレンス配列と比較した場合に、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、もしくは79%、または少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、もしくは89%、または少なくとも90%、91%、92%、93%、もしくは94%、さらには少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。2つのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の対応する同一性を決定するために、コドンの縮重、アミノ酸の類似性、読み枠の位置などを考慮して、これらの値を適宜適合させうることは、当業者には理解されるだろう。これらの目的の場合、アミノ酸配列の実質的同一性とは、通常、少なくとも70%、少なくとも80%、90%、さらには少なくとも95%の配列同一性を意味する。
【0255】
ポリペプチドに関して「実質的同一性」という用語は、ポリペプチドが、指定された比較ウィンドウにおいて、リファレンス配列に対して、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、もしくは79%、または80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、もしくは89%、または少なくとも90%、91%、92%、93%、もしくは94%、さらには95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を持つ配列を含むことを示す。2つのポリペプチド配列が同一であることの目安は、一方のポリペプチドが、他方のポリペプチドに対して生じさせた抗体と免疫学的に反応することである。したがって、例えば2つのポリペプチドの相違が保存的置換だけである場合、ポリペプチドはもう一つのポリペプチドと同一である。
【0256】
「処置する」および「処置」という用語は治療的処置と予防措置または防止措置の両方を指し、その目的は、望ましくない生理学的変化または生理学的障害、例えば障害の発生、進行または悪化を、防止するか、阻害するか、低減させるか、または減少させることである。本発明の場合、有益なまたは望ましい臨床結果としては、検出可能であるか検出不可能であるかを問わず、症状の緩和、疾患の程度の縮小、疾患の症状または有害な効果の安定化(すなわち悪化または進行がないこと)、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分的であるか完全であるかを問わない)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。「処置」は、処置を受けていない場合に予想される生存期間と比較した生存期間の延長も意味することができる。処置を必要とするものとしては、状態または障害を既に持っているもの、ならびに素因(例えば遺伝子アッセイによって決定されるもの)を持つものが挙げられる。
【0257】
「含む(comprising)」、「有する(having)」、「包含する(including)」および「含有する(containing)」という用語は、別段の注記がある場合を除き、非限定的用語(すなわち「含むが、それらに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。
【0258】
本明細書において記載するすべての方法および使用は、本明細書において別段の表示がある場合を除き、または文脈上明らかに矛盾する場合を除き、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書において提供されるありとあらゆる実施例または例示表現(例えば「など」または「例えば」)の使用には、本発明をより良く解明しようとする意図しかなく、別段の主張がある場合を除き、本発明の範囲に制約を課すものではない。本明細書におけるどの表現も、クレームされていない何らかの要素が本発明の実施に不可欠であることを示していると解釈されるべきではない。
【0259】
本明細書において開示する特徴はすべて、任意の組合せで組み合わせうる。本明細書に開示する各特徴は、同じ目的、等価な目的または類似する目的を果たす代替的特徴で置き換えうる。したがって、別段の明示的言明がある場合を除き、開示された特徴(例えば改変核酸、ベクター、プラスミド、組換えベクター配列、ベクターゲノム、またはウイルス粒子)は、等価な特徴または類似する特徴の類概念の一例である。
【0260】
本明細書において使用する場合、「1つの(a)」、「および(and)」および「その(the)」という形態は、文脈上そうでないことが明らかである場合を除き、単数および複数の指示対象を包含する。したがって、例えば「1つの核酸(a nucleic acid)」への言及は、複数のそのような核酸を包含し、「1つのベクター(a vector)」への言及は、複数のそのようなベクターを包含し、「1つのウイルス(a virus)」または「AAVまたはrAAV粒子(AAV or rAAV particle)」への言及は複数のそのようなビリオン/AAVまたはrAAV粒子を包含する。
【0261】
本明細書において使用する「約」という用語は、基準値の10%(プラスまたはマイナス)以内の値を指す。
【0262】
本明細書における値の範囲の具陳は、本明細書に別段の表示がある場合を除き、その範囲に含まれる個々の値について個別に言及することを簡略化した方法として役立つことを意図しているに過ぎず、個々の値は、それが本明細書において個別に具陳されているかのように、本明細書に組み入れられる。
【0263】
したがって、すべての数値または数値範囲は、文脈上そうでないことが明らかである場合を除き、そのような値の範囲内の整数、およびそれらの値または範囲内の整数の端数を包含する。したがって例えば、80%以上の同一性とは、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%などを包含すると共に、81.1%、81.2%、81.3%、81.4%、81.5%など、82.1%、82.2%、82.3%、82.4%、82.5%なども包含するなどである。
【0264】
より多い(より大きい)またはより小さいという文言と共に整数に言及する場合、それは、その基準数より大きいまたは小さいすべての数字を包含する。したがって例えば、100未満と言えば、99、98、97などから数字1までのすべてを包含し、10未満といえば、9、8、7などから数字1までのすべてを包含する。
【0265】
本明細書において使用する場合、すべての数値または数値範囲は、文脈上そうでないことが明らかである場合を除き、それらの値の端数ならびにそのような範囲内の整数およびそのような範囲内の整数の端数を包含する。したがって例えば1~10などの数値範囲への言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、ならびに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5などを包含する。それゆえに1~50の範囲への言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20など、最大50であり50を含み、ならびに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5など、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5などを包含する。
【0266】
一連の範囲への言及は、その中の異なる範囲の境界の値を組み合わせた範囲を包含する。したがって例えば、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~75、75~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~750、750~1,000、1,000~1,500、1,500~2,000、2,000~2,500、2,500~3,000、3,000~3,500、3,500~4,000、4,000~4,500、4,500~5,000、5,500~6,000、6,000~7,000、7,000~8,000、または8,000~9,000などといった一連の範囲への言及は、10~20、10~50、30~50、50~100、100~300、100~1,000、1,000~3,000、2,000~4,000、4,000~6,000などの範囲を包含する。
【0267】
VI. キット
本発明は、梱包材とその中の1つまたは複数の構成要素とを伴うキットを提供する。キットは、典型的には、そこに含まれる構成要素の記載またはそこに含まれる構成要素のインビトロ、インビボ、もしくはエクスビボでの使用に関する指示を含むラベルまたは添付文書を含む。キットは、そのような構成要素、例えば核酸、組換えベクター、ウイルス粒子、スプライシング修飾剤分子、および任意で第2の活性作用物質、例えば別の化合物、作用物質、薬物または組成物を揃えたものを含むことができる。
【0268】
キットとは、キットの1つまたは複数の構成要素を収容する物理的構造を指す。梱包材は、構成要素を無菌的に維持することができ、そのような目的のために一般に使用される材料(例えば紙、ダンボール、ガラス、プラスチック、ホイル、アンプル、バイアル、チューブなど)製であることができる。
【0269】
ラベルまたは添付文書は、そこに含まれている1つまたは複数の構成要素の識別情報、投薬量、活性成分の臨床薬理、例えば作用機序、薬物動態および薬力学を含むことができる。ラベルまたは添付文書は、製造者、ロット番号、製造場所および製造日、使用期限を確認する情報を含むことができる。ラベルまたは添付文書は、製造者情報、ロット番号、製造場所および製造日を確認する情報を含むことができる。ラベルまたは添付文書は、キットの構成要素を使用しうる疾患に関する情報を含むことができる。ラベルまたは添付文書は、キットの構成要素のうちの1つまたは複数を、方法、使用または処置プロトコールもしくは治療レジメンにおいて使用するための、臨床家または対象に対する指示を含むことができる。指示は、投薬量、投薬頻度または継続期間、および本明細書において記載の方法、使用、処置プロトコールまたは予防レジメンもしくは治療レジメンのいずれかを実施するための指示を含むことができる。
【0270】
ラベルまたは添付文書は、構成要素が提供しうる利益、例えば予防的利益または治療的利益に関する情報を含むことができる。ラベルまたは添付文書は、潜在的に有害な副作用、合併症または反応に関する情報、例えば、特定の組成物を使用することが適当ではないであろう状況に関する対象または臨床家への警告を含むことができる。有害な副作用または合併症は、対象が当該組成物とは不適合でありうる1種または複数の他の医薬を過去に服用していたか今後服用するか現在服用している場合にも、または対象が当該組成物とは不適合であるだろう別の処置プロトコールもしくは治療レジメンを過去に受けていたか今後受けるか現在受けている場合にも起こりうるので、指示には、そのような不適合に関する情報も含まれうる。
【0271】
ラベルまたは添付文書は、独立した、または構成要素、キットもしくは梱包材(例えば箱)に添付された、またはキットの構成要素が入っているアンプル、チューブもしくはバイアルに添付された、「印刷物」、例えば紙または厚紙を含む。ラベルまたは添付文書は、コンピュータ可読媒体、例えばバーコード付き印刷ラベル、ディスク、光学ディスク、例えばCD-もしくはDVD-ROM/RAM、DVD、MP3、または電子記憶媒体、例えばRAMおよびROM、またはそれらのハイブリッド、例えば磁気/光学記憶媒体、フラッシュメモリ、ハイブリッドおよびメモリ型カードをさらに含むことができる。
【実施例
【0272】
VII. 実施例
本発明のいくつかの態様を説明した。それでもなお、当業者は、さまざまな使用法および条件に適合させるために、本発明の要旨および範囲から逸脱することなく、本発明のさまざまな改変および変更を行うことができる。したがって以下の実施例は例示を意図しているのであって、特許請求される本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0273】
実施例1
脊髄性筋萎縮症(SMA)はSMN1遺伝子中の変異を原因とする常染色体劣性疾患である。相同なSMN2遺伝子はSMN1変異を機能的に補償することができない。SMN2転写産物の大半ではエクソン7がスキップされて不安定なタンパク質を生じるからである33。SMN1が存在しない場合、わずか10%のSMN2タンパク質しか生産されないが、これはエクソン7が包含されるSMN2転写産物の割合に対応する。SMN2のエクソン7のスキップを修正することによる低機能性SMN2「バックアップ」遺伝子の調整は、SMAを処置するための最も成功したアプローチの一つである。
【0274】
最近、SMN2エクソン7の包含を誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であるヌシネルセン(Nusinersen)(Ionis)が、SMAを処置するための最初のFDA承認薬になっている34。LMI070(スピンラザ(商標)、Novartis31)およびRG7800(Roche/PTC/SMAF35)などのエクソン7の包含を誘導する低分子は、臨床開発中である。
【0275】
LMI070(スピンラザ(商標)、Novartis31)の構造は次のとおりである。
【0276】
RG7916(Roche/PTC/SMAF35)の構造は次のとおりである。
【0277】
一態様では、遺伝子発現制御のために、薬物誘導性SMN2選択的スプライシングが使用される。一局面では、SMN2ミニ遺伝子が哺乳類トランス活性化因子をコードするcDNAに融合され、ここでは、エクソン7の包含または排除がトランス活性化因子の翻訳を決定する。スプライシング修飾剤低分子LMI070はトランス活性化因子発現のためにエクソン7のスキップを修正することができ、次にそれが、最適化された標的遺伝子発現カセットからの転写を誘導することになる。
【0278】
実施例2
トランス活性化因子の生産がSMN2エクソン7の包含に依存するキメラSMN2/トランス活性化因子ミニ遺伝子を作製した。結果として得られるトランス活性化因子は最適化されたプロモーターに結合し、下流の人工miRNAの発現を活性化する(図2)。このシステムは、1)オフ状態における極少のmiRNA発現、2)トランス活性化因子によるmiRNA発現の有意な誘導、3)トランス活性化因子レベルおよびそれに続くmiRNA発現レベルの制御、ならびに4)単一組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)へのパッケージングを許容できるサイズを有する。RNAi発現制御により、RNAi経路の持続的流用が回避され、オフターゲット遺伝子の意図せぬ慢性的サイレンシングが最小限に抑えられるだろう。
【0279】
哺乳類トランス活性化因子のための複数のDNA結合部位を本発明者らの最適化されたmiRNAプロモーターの上流にクローニングした。トランス活性化因子は、特異的DNA結合配列に結合するように改変された哺乳動物ジンクフィンガータンパク質と単純ヘルペスウイルスからのVp16ドメインとの融合タンパク質である36,37。ゲノムにおけるトランス活性化因子タンパク質のオフターゲット結合の結果として起こりうる遺伝子活性化を最小限に抑えるために、強力な活性化因子ドメイン(例えばVp64)の代わりにVp16ドメインを選んだことに留意されたい。miRNAプロモーターの活性化は、トランス活性化因子発現カセット、miRNAプロモーターが駆動するホタル発現カセット、およびウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ発現カセットによる三重トランスフェクション後のルシフェラーゼ比によって評価した(図3a図3b)。
【0280】
トランス活性化因子発現を調節するために、トランス活性化因子を、自己切断2Aペプチドならびにエクソン6~7とエクソン8の5'端とを含むSMN2ミニ遺伝子およびSMN2スプライシングを再現するのに必要な最小イントロン性介在配列の下流にクローニングした38図4a)。ネイティブのSMN2遺伝子状態と同様に、転写産物のうちの10%がエクソン7を含むことに注目されたい。この転写産物は、RNAi発現カセットを部分的に活性化するトランス活性化因子を生産する。そこで、SMN2/トランス活性化因子ミニ遺伝子中の3'エクソン7スプライシング部位と5'エクソン7スプライシング部位を、エクソン7を構成的に排除するように改変するか(CSI3、3'改変)、またはエクソン7を構成的に包含するように改変した(CSI5、5'改変)。これにより、RNAiプロモーターのバックグラウンド活性化は最小限に抑えられる39図4b図4c)。重要なことに、エクソン7の包含はLMI070用量応答性である(図5a図5b)。また、カセット全体がrAAV中に収まる。
【0281】
HTTエクソン2(mi2.4v1)またはHTTエクソン44(miHDS1v6A)のどちらか一方を標的とする非アレル特異的人工miRNA配列を作製した。これらのmiRNA配列は限定的オフターゲットプロファイルを持つようにsiSPOTR40を使って設計された。加えて、対照として使用される特異的シード対照(seed-controlled)miRNA配列(mi2.4v1CおよびmiHDS1v6a)も設計した。これらのmiRNA対照はHTT発現をサイレンシングしないが、それぞれmi2.4v1およびmiHDS1v6aのオフターゲットプロファイルと対応するように、同じmiRNAシード(5'ヌクレオチド2~8)を含有する(図6a図6b)。
【0282】
実施例3
インビトロ研究:中型有棘ニューロン(MSN)は線条体中の神経細胞集団の95%を占め、HDにおいて最も影響を受ける細胞タイプであり、これらの研究での主な標的細胞である。それゆえに、すべてのインビトロ研究ではMSNを使用した。MSN培養物は、健常者またはHD患者からのヒト線維芽細胞の直接的神経変換によって得ることができる41,42
【0283】
MSN培養物は、マウス脳においてインビボで、またMSN培養物においてインビトロで、MSNニューロンに効果的な形質導入をするAAV血清型であるrAAV2/1を使って、形質導入される43。以前の報告により、マウス脳ではHTT発現を50%低減すれば疾患表現型を改善するには十分であることが示されている8,11,12。それゆえに50%サイレンシングが、この調節プロモーターシステムに関して最初に設定されるバー(bar)である。mi2.4v1を発現するrAAV2/1ウイルスの用量を増やしながらMSN培養物に形質導入を行い、LMI070処理(1μM)後に、HTT mRNAレベルをQ-RTPCRによって決定する。基礎HTT発現レベルを明確にするためにモック処理された非形質導入MSN培養物および形質導入MSN培養物を対照として使用し、mi2.4v1バックグラウンドレベルが、HTTを、認識できるほどにはサイレンシングしないことを確認する。U6プロモーターの制御を受けるmi2.4v1を発現するAAV2/1で形質導入された細胞が、陽性サイレンシング対照として使用される。目的は、HTT発現がLMI070の存在下でのみ50%以上低減されるAAV治療ウィンドウを明確にすることである。有効AAV用量が確立されたら、さまざまな時間間隔およびさまざまなLMI070濃度でmi2.4v1発現を解析することによって、LMI070に応答するRNAi発現システムの動態が分析される。
【0284】
ヒト脳では上位20の内在性miRNAがmiRNA:mRNA結合部位の75%を占めているので44、mi2.4v1の発現をこれらの上位20の各miRNAおよびそれらの標的となるmRNAと比較することにより、内在性経路の流用が調べられる。LMI070で処理されたまたはモック処理された形質導入MSN培養物からトータルRNAが抽出され、成熟miRNAレベルが、以前に行われたように45、ステムループQ-PCRによって決定される。LMI070の非存在下で、mi2.4v1発現は内在性RNAi調節を妨害しないと予想され、それは公知の内在性標的mRNA44の発現を解析することによって確認される。mi2.4v1に関連するオフターゲットサイレンシングは、LMI070処理またはモック処理後の形質導入MSN培養物から得られるトータルRNA試料を使って、RNA-seqによって決定される。加えて、LMI070またはトランス活性化因子のみによって誘導されるトランスクリプトーム変化も調べられる。これらの場合、トランスクリプトーム変化は、LMI070で処理したMSN培養物から得られるトータルRNA試料、およびトランス活性化因子タンパク質のみを発現する形質導入MSN培養物から得られるトータルRNA試料を使って決定される。本発明者らの初期データを考慮すると、LMI070調節miRNA発現は、少なくとも50%のHTTサイレンシングを与えると予想される。細胞毒性-栄養素離脱(nutrient withdrawal)を使って測定されるもの-も極少であると予想される46。毒性の欠如は、細胞性miRNAレベルの変化または標的mRNA発現の変化がごくわずかであることとも相関する可能性が高い。
【0285】
実施例4
インビボ調節:調節プロモーターシステムの制御を受けるmi2.4v1を発現するrAAV2/1ウイルス(rAAV.RPmi2.4v1)を、マウス脳において変異型ハンチントンタンパク質の最初の171アミノ酸を発現する確立されたHDマウスモデルであるN171-82Qトランスジェニックマウスの線条体に注射する47。まず、システムが過負荷になる(バックグラウンドHTTサイレンシングが大きすぎる)用量があるかどうかを決定するために、rAAV.RPmi2.4v1またはrAAV.RPmi2.4v1C(シードベースの対照RNAiトリガー)を、5E10、2.5E10および5E9 vg/半球で与える(n=雄マウス10匹/群)。対照として、強いPol3構成的プロモーターであるU6プロモーターの制御を受けるmi2.4v1またはmi2.4v1Cを発現するrAAVウイルスをマウスに注射する。目的は、mi2.4v1パルスが50%以上の変異型HTT抑制を誘導するAAVとLMI070の用量、および抑制のピークに到達する時間を決定することである。rAAV用量が決定されたら、送達の3週間後に、1~30mg/kgのLMI070を経口胃管法によって投与する。30mg/kgは、マウス脳におけるSMN2エクソン7の包含を増加させると報告された最大用量であり、1mg/kgは、SMNマウスモデルにおいて治療効果を持つ最小用量であることに留意されたい31。実験対照は、調節プロモーター下のmi2.4v1またはmi2.4v1Cを発現するマウス、およびマウスU6プロモーターの制御を受けるmi2.4v1を発現するマウスであり、どちらも製剤緩衝液だけを与えられる(モック処理)。マウス(n=雄マウス8匹/群)をLMI070(またはモック)投与の24、48、72、96および120時間後に屠殺する。mi2.4v1および内在性miRNAならびに変異型HTTの発現レベルを脳溶解物において評価する。この研究では、RNAiパルスを開始するLMI070の効力およびインビボでのシステムの発現動態に関する関連データが得られる。LMI070を3mg/Kgの用量で経口投与されたマウスにおけるLMI070の薬物動態は、血清中で、86nMのCmax(最大濃度)および4.3時間のTmax(Cmaxに達する時間)を有し、脳内に良好に分布した(1.4の脳:血漿比濃度)。この濃度(脳内で120nM)では、LMI070が、CSIミニ遺伝子およびCSI3ミニ遺伝子のどちらか一方を使ったエクソン7の包含を誘導することに留意されたい(図5)。
【0286】
次に、再投与がいつ必要となりうるかに関する指針として、先行研究からのデータを使って、類似する効力レベルのためにHTTターゲティングRNAiトリガーをパルスする頻度を決定する。注射前にマウス(n=雄マウス15匹/群)にベースラインロータロッド試験を行って群を標準化してから、実験AAVベクターまたは対照AAVベクター±LMI070を両側性に注射した。加速ロータロッドはHDモデルにおける運動障害を検出するための鋭敏な手段になる。AAV注射後に、LMI070を、24~48時間の期間にわたって50%以上のサイレンシングに達するように前もって確立された用量で投与し、その後、週に1回または2回の再投与を行う。10、14および18週時に、マウスに追加のロータロッド試験を以前と同様に行い11、その後、マウスを安楽死させて、脳をRNA解析、生化学的試験および組織学のために加工する。
【0287】
LMI070が誘導するRNAiパルスは24~48時間持続してmHTTレベルを≧50%低減すると予想される。LMI070が取り除かれると、mi2.4v1レベルは低下し、mHTTレベルはもはや抑制されなくなる(図7)。アンチセンスオリゴヌクレオチド分子(ASO)を使った先行研究では、疾患表現型の逆転は、一過性のASO注入後に、HTTサイレンシングよりも長く持続することが報告された48。それゆえに、RNAiのパルスは、mHTTを標的とするASOで見られたものと同様に、数日、さらには数週間にわたって維持される必要がありうる。SMN2のエクソン7はSMN2/トランス活性化因子転写産物のうちの1%(CSI3)および10%(CSI)に包含されるので、RNAiプロモーターは、LMI070の非存在下でも部分的に活性化されうる。人工miRNAのレベルが最も豊富なmiRNAの転写産物レベルより高い場合には、これが問題になりうる。この問題は、より弱いプロモーター(例えばpGK、mCMV)を使ってトランス活性化因子発現を制御することによって解決されるだろう。先の研究によれば、LMI070はマウスにとって毒性ではないと予想されるが、もし観察されるのであれば、SMN2エクソン7の包含を誘導するために、LMI070の代替品となりうる他の低分子が設計されている。LMI070は経口投与することができ、LMI070と一部のrAAV血清型は血液脳関門を横切ることができるので、このシステムは、複数回の髄腔内投与を必要とする現行のASO治療よりも侵襲性が低い脳神経変性疾患の処置を開発する可能性も提供する。
【0288】
実施例5
HD患者からの組織試料およびマウスモデルを使った先行研究により、トランスクリプトーム調節不全が、初期疾患段階において細胞喪失が観察される前に発生する、HD脳で起きる主要イベントであると報告されている49~51。最近、HDの転写変化は、特異的遺伝子の総合的発現レベルに限定されるだけでなく、選択的スプライシングによって生成する転写産物アイソフォームにも限定されることが報告された32。目標は、変異型HTT発現の結果として起こり、変異型HTT抑制に応答して修正される、選択的スプライシング変化を同定することである。これにより、SMN2エクソン調節応答エレメントに代わる自己調節が提供され、薬物関連制御の必要が無くなるだろう。変異型HTT発現に応答して変化する選択的スプライシングイベントは、HDの状況においてトランス活性化因子の生産を制御するための調節スイッチとして有望である。この研究は、他の神経変性疾患における発現制御に同様のアプローチを使用するための基礎を提供することができる。
【0289】
実施例6
変異型HTTサイレンシングによって修正される選択的スプライシングイベント:HDヒト患者および対照からのMSN培養物に、HTT発現をサイレンシングするために、rAAV.U6mi2.4v1またはrAAV.U6miHDS1v6を形質導入し、シードマッチ対照としてrAAV.U6mi2.4v1CまたはrAAV.U6miHDS1v6aCを形質導入する(図6)。HTT発現を効果的に標的とする2つの異なるmiRNA配列と、それらのシードマッチmiRNA対照とを使用することにより、本発明者らはmHTTサイレンシングによる選択的スプライシングイベントと、RNAiオフターゲッティングによるイベントとを弁別することができるだろうという点に留意されたい。
【0290】
AAV形質導入の1週間後に、mHTT発現が50%低減したら、細胞を収穫し、トータルRNAを抽出して、選択的スプライシング変化を決定する。TruSeq Stranded mRNA試料調製キット(Sample prep kit)(Illumina)を使ってRNA-seqライブラリーを調製し、Illumina HiSeq 4000を使ったシーケンシングのために送る。STARソフトウェア(2.5以降)を使用し、リードあたり3つまでのミスマッチおよび25bpシードあたり2bpまでのミスマッチを許して、RNA-seqリードをヒトゲノム(hg38)およびトランスクリプトーム(Ensemble、リリース89)にマッピングする。FPKM測定規準を使ってRNA-seqに基づく遺伝子発現を計算するためにCuffdiffを使用する52,53。選択的スプライシングパターンの5つの基本タイプのすべてに対応する試料群間の差次的選択的スプライシングイベントを同定するためにrMATSを使用する54。FDR<5%およびΔPSI≧5%を使って有意なスプライシング変化が考慮される。転写産物アイソフォーム間で最も大きな不均衡を示し、mHTTタンパク質のサイレンシング時に修正される上位10個の選択的スプライシングイベントを、生物学的確認のために独立して得られた試料でのPCRによって検証する。
【0291】
次に、隣接する選択的にスプライシングされるエクソンと、介在最小イントロン配列とからなるキメラeGFPミニ遺伝子を作製し、本発明者らのAAVシャトルベクター中のeGFP cDNAの上流にクローニングする。これらのミニ遺伝子は、mHTTタンパク質抑制がスプライシングプロファイルを対照MSN培養物のそれに「正常化」した後には、eGFP発現が低減するように設計される。このシステムを試験するために、まず、MSN培養物に、変異型HTTを標的とするmiRNAまたはシードマッチ対照を発現するrAAV2/1およびeGFPミニ遺伝子(または対照としての非改変eGFP)を発現するrAAVを使って、形質導入する。eGFP発現の動態をウェスタンブロットおよび定量的蛍光ベースアッセイによって決定する。次に、mHTT抑制に対して相応に応答するミニ遺伝子を、SMN2ミニ遺伝子(図2)の代わりに使用し、Tg(N171-82Q)HDマウスモデルおよびzQ175 HDマウスモデルで試験する。
【0292】
この疾患調節発現システムは、mHTT発現に応答して起こる選択的スプライシング変化を利用したRNAiの制御を可能にする。HD MSN培養物と対照MSN培養物の間にはかなりの数の選択的スプライシング変化が同定されると予想される。選択的スプライシング変化は、エクソンスキップにも、他の4タイプの選択的スプライシングパターンにも限定されないと予想される。RNA転写産物アイソフォーム間で>2倍の不均衡を持つイベントが、いくつか同定されると予想され、それらの比はmHTTタンパク質のサイレンシング時に変化すると予期される。>2倍の比という基準に当てはまるエクソンスキップスプライシングイベントが見つからない場合、それは、上記の比に近いがそれを上回らない比を改良するために、SMN2ミニ遺伝子で行ったものと同様に、隣接するイントロン/エクソンコンストラクトに特異的配列改変を導入することによって解決されうる。この研究の終了時には、SMN2ミニ遺伝子を置き換えるために使用することができる一組の疾患調節ミニ遺伝子が得られるだろう。
【0293】
HDにおいて差次的にスプライシングされるイントロンの例には、以下に挙げるものがある。
【0294】
実施例7
以下の方法を使って図8~15に図解するデータを得た。簡単に述べると、Hek293細胞を濃度25nMのLMI070で処理した。処理の12時間後にTrizolを使ってRNAを抽出し、次にDNAseI処理を行った。試料を、品質管理のためにagilentバイオアナライザーで評価したところ、すべての試料がRIN値>9.8であり、それらをIllumina RiboZero GoldトータルRNAライブラリー調製およびIllumina HiSeq4000によるシーケンシングのために送った。illuminaシーケンシングにより、150bpペアエンドシーケンシングリードを得た。illuminaプラットフォームから得たFastqファイルを、STARアライナーを使って、ヒトゲノムGRCh38とアラインメントした。STARからのSAMフォーマットアラインメントファイル出力をソートし、BAMフォーマットに変換し、Samtoolsを使ってインデキシングした。アラインメント中の任意の領域におけるスプライシングを視覚化するために、BAMファイルをIGVで開き、Sashimiプロット機能を使って視覚化した。
【0295】
高レベルの差次的スプライシングを含有する関心対象の領域を同定するために、カスタムRプログラムを作成した。このカスタムRプログラムへの入力は、STARによって出力されるスプライスジャンクションの行列「.SJ.out.tab」とした。これらのファイルは、STARによるアラインメント中に計算される各スプライスジャンクションにおいて得られる生カウントを含んだ。このカスタムRプログラムは、処置群と対照群との間で高度に差次的にスプライシングされる位置を同定する目的で作成した。これらの領域を同定するために以下の工程を使用した。1)Rに入力ファイルを読み込む。2)データセット中の各行(スプライス部位)についてユニークな位置IDを作出する。3)すべての試料を1つのデータフレームにマージする。4)各スプライス部位IDについて平均カウント、カウントの和およびカウントの標準偏差を計算する。4)NA(not available:入手不可能)値を0で置き換える。5)対照において和=0であるスプライス部位(行)をすべて抽出する。6)抽出されたリードを平均カウント値で最高から最低に向かってソートする。これにより、対照において0カウントの和を持つ最も高レベルの差次的発現を伴うスプライス部位のリストが得られた。
【0296】
以下の方法を使って図16のデータを得た。上述の分析で同定された最も適切な遺伝子をPCRによって検証した。LMI070(25nM)で処理されたHEK293細胞からRNAを抽出した。LMI070処理によって生成する新規エクソンの上流および下流に結合するように設計されたPCRプライマーを使用した。PCRで観察されるとおり、LMI070で処理した試料ではサイズが増大したPCR産物が検出された(図16)。同定された新規エクソン配列の包含を確かめるために、サンガーシーケンシングを使ってこれらのPCR産物を配列決定した。
【0297】
実施例8
以下の方法を使って図19に示すデータを得た。SMN2ミニ遺伝子を発現するプラスミド(0.3μg)をHEK293細胞にトランスフェクトし、4時間後に、さまざまな用量のRG7800(10nM、100nM、1μMおよび10μM)で処理した。トランスフェクションの24時間後に、RNAを収穫し、DNAseI処理し、PCRを使ってSMN2ミニ遺伝子スプライシングを評価するために、1μgのRNAを逆転写した。PCR産物を3%アガロースゲル上で分離し、ChemiDocイメージングシステム(Bio-Rad)およびImagine Lab解析ソフトウェアを使ってエクソン7の生産を定量した。
【0298】
以下の方法を使って図21に示すデータを得た。HEK293細胞にCRISPRiサイレンシングシステム(dCas9発現カセット、sgRNA発現カセットおよびMCP-Krab発現カセット)をコードするプラスミドをトランスフェクトした。重要なことに、dCas9タンパク質発現をRG7800で制御するために、dCas9はSMN2スプライス調節カセット下にクローニングした。トランスフェクションの24時間後に、ピューロマイシン(3μM、24時間)を使って細胞を選択し、新しいプレートに継代し、RG7800(1μM)で処理した。RG7800処理の36時間後に受動的溶解緩衝液(Passive lysis buffer)(Promega、カリフォルニア州)を使ってHEK293細胞を溶解し、ハンチントン(HTT)、Cas9およびβカテニン(Beta cat)のタンパク質レベルをウェスタンブロットによって決定した。βカテニンタンパク質レベルはローディング対照として決定した。HTT、Cas9およびBeta Catのタンパク質レベルは、ChemiDocイメージングシステム(Bio-Rad)およびImagine Lab解析ソフトウェアを使って定量した。
【0299】
本明細書において開示し特許請求する方法はすべて、本開示に照らして、過度な実験を行うことなく、それらを作製し、実施することができる。本発明の組成物および方法を好ましい態様に関して説明したが、本明細書において記載した方法および方法の工程もしくは工程の順序に、本発明の概念、要旨および範囲から逸脱することなく、変更を加えうることは、当業者には明らかであるだろう。より具体的に述べると、本明細書において記載した作用物質の代わりに、化学的にも生理学的にも関連する一定の作用物質を使用することができ、それでも同じまたは類似する結果が達成されるであろうことは、明らかであるだろう。当業者にとって明白なそれら類似の代替物および変更はすべて、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の要旨、範囲および概念内にあるとみなされる。
【0300】
参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書における記載を補う例示的な手順の詳細または他の詳細を与える限りにおいて、参照により特に本明細書に組み入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
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