(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】白内障の発症を抑制するおよびその装置
(51)【国際特許分類】
A61F 9/00 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
A61F9/00
(21)【出願番号】P 2021543762
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2020032972
(87)【国際公開番号】W WO2021045023
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2019162244
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】山本 聡彦
(72)【発明者】
【氏名】富本 公明
(72)【発明者】
【氏名】久保 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】船守 宏和
(72)【発明者】
【氏名】谷口 泰造
(72)【発明者】
【氏名】片桐 稔
(72)【発明者】
【氏名】松本 衣代
(72)【発明者】
【氏名】炬口 真理子
【審査官】丸山 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108873381(CN,A)
【文献】特開2012-075856(JP,A)
【文献】米国特許第04582405(US,A)
【文献】特開2015-230108(JP,A)
【文献】特開2006-326475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/00
A61N 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ヒト哺乳動物の眼の表面に対向する位置で固定された位置関係となるように設けられた
針状の放電電極であって、前記眼の表面に向けて前記針状の放電電極が前記眼の表面に向けて突出した状態であり且つ前記眼の表面とが一定間隔離間した状態で放電する前記針状の放電電極の放電により発生するプラスイオンおよびマイナスイオンを前記眼の表面に送出することによって、非ヒト哺乳動物の白内障の発症を抑制する、方法。
【請求項2】
非ヒト哺乳動物の眼を覆い、覆われた空間を前記プラスイオンおよび前記マイナスイオンにより満たす、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プラスイオンおよび前記マイナスイオンの濃度がそれぞれ50万個/cm
3以上である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
被験者の眼の表面に対向する位置で固定された位置関係となるように設けられ、且つ放電によりプラスイオンおよびマイナスイオンを発生する
針状の放電電極を備え、
前記眼の表面に向けて前記針状の放電電極が前記眼の表面に向けて突出した状態であり且つ前記眼の表面と前記針状の放電電極とが一定間隔離間した状態で放電して、前記眼の表面にプラスイオンおよびマイナスイオンを送出することによって、白内障の発症を抑制する、医療装置。
【請求項5】
眼を覆うカバーをさらに備え、覆われた空間に前記プラスイオンおよび前記マイナスイオンを送出する、請求項4に記載の医療装置。
【請求項6】
前記プラスイオンおよび前記マイナスイオンの濃度がそれぞれ50万個/cm
3以上である、請求項4または5に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、白内障の発症を抑制する方法、および、白内障の発症を抑制する医療装置に関する。本願は、2019年9月5日に日本で出願された特願2019-162244号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
白内障は眼の水晶体が混濁し、視力障害が起こる病気である。白内障は、眼球に対するストレス(例えば、紫外線ストレス、酸化ストレス、糖化ストレス等)が蓄積することによって発症することが知られている。白内障を予防または治療を目的とした研究はこれまでに多く行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、コラーゲンペプチドから成る白内障予防食品が記載されている。特許文献2には、サリドマイドを有効成分とする白内障の予防をするための医薬品製剤が記載されている。特許文献3には、酵母エキスを有効成分として含有する経口用白内障予防剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-169183号公報(2006年6月29日公開)
【文献】特開2012-100612号公報(2012年5月31日公開)
【文献】国際公開第2017/209336号(2017年12月7日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、白内障を予防する食品または医薬製剤の開発は進んでいる。一方、白内障の患部を含む眼に接触させる等、眼に直接作用させることによって、白内障を予防または治療する方法の開発はあまり進んでいない。また、白内障を予防または治療する装置の開発も進んでいない。
【0006】
したがって、本発明の一態様は、白内障の発症を抑制する、新規の方法および装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る方法は、非ヒト哺乳動物の眼の表面にプラスイオンおよびマイナスイオンを送出することによって、非ヒト哺乳動物の白内障を予防または治療する、方法である。
【0008】
また、本発明の一態様に係る医療装置は、放電によりプラスイオンおよびマイナスイオンを発生するイオン発生部を備え、眼の表面にプラスイオンおよびマイナスイオンを送出することによって、白内障を予防または治療する、医療装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、白内障の発症を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態1に係る医療装置の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態2に係る医療装置の概略構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態3に係る医療装置の概略構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態4に係る医療装置の概略構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態5に係る医療装置の概略構成を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態6に係る医療装置の概略構成を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態7に係る医療装置の概略構成を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態8に係る医療装置の概略構成を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態9に係る医療装置の概略構成を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態10に係る医療装置の概略構成を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態11に係る医療装置の概略構成を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態12に係る医療装置の概略構成を示す図である。
【
図13】実施例で使用した実験装置の正面を示す写真である。
【
図14】実施例で使用した実験装置の上面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、
図1に基づき、詳細に説明する。
図1は、実施形態1に係る医療装置10の概略構成を示す図である。
【0012】
白内障は眼の水晶体が混濁し、視力障害が起こる病気である。白内障は、眼球に対するストレス(例えば、紫外線ストレス、酸化ストレス、糖化ストレス等)に由来して発症すると考えられる。紫外線ストレスの例として、紫外線または放射線の照射等が挙げられる。酸化ストレスの例として、喫煙等が挙げられる。糖化ストレスの例として、糖尿病等の生活習慣病等が挙げられる。
【0013】
(医療装置10)
図1に示すように、医療装置10は、被験者の眼を覆うカバー11と、カバー11の内部に備えられるイオン発生器12(イオン発生部)とを備える。当該被験者の例として、ヒト等の哺乳動物が挙げられる。
【0014】
(カバー11)
カバー11は、被験者の眼を覆う空間を形成させるための部材である。カバー11には、被験者の眼を含む頭部をカバー11内に挿入するための開口部14が設けられている。開口部14から被験者の頭部をカバー11内に入れることにより、被験者の眼をカバー11の内部空間で覆うことができる。
【0015】
そして、後述するイオン発生器12から発生した高濃度のプラスイオンおよびマイナスイオンをカバー11の内部空間に満たし、当該眼の表面にプラスイオンおよびマイナスイオンを送出する。これによって、高濃度のプラスイオンおよびマイナスイオンを眼に直接作用させることができる。そして、白内障の予防または白内障の患部を治療することができる。
【0016】
図1のカバー11の形状は略半球状であるが、被験者の眼をカバー11の内部空間で覆うことができれば、その形状は特に限定されない。カバー11の大きさも、被験者の眼をカバー11の内部空間で覆うことができれば、特に限定されない。例えば、カバー11は、被験者の頭部の一部を覆ってもよく、被験者の頭部の全体を覆ってもよい。また、カバー11の材質は、後述するイオン発生器12から発生したプラスイオンおよびマイナスイオンをカバー11の内部空間に満たす際に影響を与えない限り、特に限定されない。カバー11の材質の例として、例えば、樹脂等が挙げられる。
【0017】
(イオン発生器12)
イオン発生器12は、プラスイオンおよびマイナスイオンを発生する部材である。イオン発生器12は、プラスイオン発生部(不図示)と、マイナスイオン発生部(不図示)と、プラスイオン発生部およびマイナスイオン発生部に電圧を供給する電圧供給部(不図示)と、を備える。プラスイオン発生部およびマイナスイオン発生部はそれぞれ、誘電電極(不図示)と針状の放電電極13を備える。放電電極13は、イオン発生器12からカバー11の内部空間へ突出するように設けられている。なお、
図1では、図示の便宜上、一方のイオン発生部の放電電極13のみを図示している。
【0018】
プラスイオン発生部において、電圧供給部から正電圧が印加されることによって、放電によって生じるプラズマ領域で大気(空気)中の水分子が電気的に分解される。そして、水素イオンH+が主に生成される。そして、生成された水素イオンH+の周りに空気中の水分子が凝集することによって、正のクラスターイオンH+(H2O)m(mは任意の整数)が形成される。
【0019】
マイナスイオン発生部において、電圧供給部から負電圧が印加されることによって、放電によって生じるプラズマ領域で大気(空気)中の酸素分子が電気的に分解される。そして、酸素イオンO2
-が主に生成される。そして、生成された酸素イオンO2
-の周りに空気中の水分子が凝集することによって、負のクラスターイオンO2
-(H2O)n(nは任意の整数)が形成される。
【0020】
また、正のクラスターイオンH+(H2O)m(mは任意の整数)および負のクラスターイオンO2
-(H2O)n(nは任意の整数)が反応することによって、活性種OHラジカル(・OH)等が生成される。
【0021】
上述のイオン発生器12の構成は、あくまで一例であり、所望の濃度のプラスイオンおよびマイナスイオンを放電により発生可能な装置であれば、特に限定されない。
【0022】
イオン発生器12は、放電によって生じるプラズマ領域から離れたところで、被験者の眼に高濃度のプラスイオンおよびマイナスイオンを直接作用し易くするために、当該眼の近くに配置されるようにカバー11の内部に備えられている。
【0023】
被験者の眼に高濃度のプラスイオンおよびマイナスイオンを直接作用させる点等で、放電により発生されるプラスイオンおよびマイナスイオンの濃度がそれぞれ50万個/cm3以上であることが好ましく、それぞれ100万個/cm3以上であることがより好ましい。イオン濃度は、イオン発生器12から送出されるイオン濃度またはカバー11の内部空間のイオン濃度を示す。イオン濃度は、小イオンを対象として計数したものであり、空気中の臨界移動度を1cm2/V・秒とする。
【0024】
特定の空間中にプラスイオンおよびマイナスイオンを含むか否かは、ガス質量分析検査、ガス濃度検査、変色検査、臭気検査、発光検査、および発生音検査等によって、ガス組成を検査することで判定することができる。ガス質量分析検査は、公知の質量分析装置を利用することができ、ガス濃度検査は、ガスクロマトグラフィやイオンカウンターを利用して計測することができる。また、変色検査や臭気検査は、目視判定および嗅覚検査等の官能性検査に付すことができるほか、色差計およびニオイセンサ等を利用することもできる。また、発光検査や発生音検査は、これも目視判定および聴覚検査等の官能性試験に付すことができるほか、吸光光度計、分光器、光センサ、照度計、およびマイクロフォン等を利用することができる。
【0025】
〔実施形態2〕
以下、本発明の実施形態2について、
図2に基づき、詳細に説明する。
図2は、本実施形態2に係る医療装置20の概略構成を示す図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0026】
図2に示すように、医療装置20のカバー11は略円筒状である。また、カバー11の上部には固定部22が備えられている。
【0027】
固定部22の一端はカバー21の上部に固定され、他端を壁および天井等に固定してもよい。固定部22を壁および天井等に固定することによって、カバー21を被験者が支える必要がなく、被験者の負担を減らすことができる。
【0028】
〔実施形態3〕
以下、本発明の実施形態3について、
図3に基づき、詳細に説明する。
図3は、本実施形態3に係る医療装置30の概略構成を示す図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。本実施形態は、実施形態1に係る医療装置10に保護部31が追加された構成に関する。
【0029】
(保護部31)
保護部31は、カバー11の内側に設けられた、イオン発生器12の放電電極13が被験者の前頭部に接触することを防ぐための部材である。保護部31は、カバー11の内面の一部に設けられてもよいし、全体に設けられていてもよい。保護部31の材質として、樹脂等が挙げられる。
【0030】
保護部31には、額設置部32および顎設置部33が設けられている。額設置部32および顎設置部33は、イオン発生器12の放電電極13への被験者の接触を防止するための部材である。また、額設置部32および顎設置部33の間に、イオン発生器12が備えられている。
【0031】
額設置部32および顎設置部33は、保護部31からカバー11の内部空間に向かって突出するように設けられている。この構成によって、被験者が医療装置30を装着したときに、被験者の額および顎がそれぞれ額設置部32および顎設置部33に接触するので、被験者がイオン発生器12の針状の放電電極13に接触するリスクを減らすことができる。
【0032】
〔実施形態4〕
以下、本発明の実施形態4について、
図4に基づき、詳細に説明する。
図4は、本実施形態4に係る医療装置40の概略構成を示す図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。本実施形態は、実施形態1に係る医療装置10に保護部41および送風器43(送風部)が追加された構成に関する。
【0033】
(保護部41)
保護部41は、カバー11の内側に設けられた、イオン発生器12の放電電極13が被験者の前頭部に接触することを防ぐための部材である。保護部41は、カバー11の内面の一部に設けられてもよいし、全体に設けられていてもよい。保護部41の材質として、樹脂等が挙げられる。
【0034】
保護部41には、頭部設置部42と、イオン発生器設置部44と、送風器設置部45とが設けられている。頭部設置部42には、被験者が医療装置40を装着したときに、被験者の額等の頭部が接触される。被験者の頭部をカバー11の内部で固定され易いように、
図4に示す頭部設置部42は曲面になっている。イオン発生器設置部44にはイオン発生器12が設置されている。
図4に示す構成では、イオン発生器12が被験者の眼付近に配置されるように、イオン発生器設置部44は、頭部設置部42の近くに設けられている。イオン発生器設置部44は、被験者がイオン発生器12の針状の放電電極13に接触するリスクを減らすために、頭部設置部42よりもカバー11の内面側に設けられている。送風器設置部45には後述する送風器43が設置されている。イオン発生器12から発生したプラスイオンおよびマイナスイオンを、イオン発生器12から被験者の眼の表面に送出するために、送風器設置部45はイオン発生器設置部44の近くに設けられている。また、送風器設置部45は、イオン発生器設置部44よりもカバー11の内面側に設けられている。
【0035】
(送風器43)
送風器43は、イオン発生器12から発生したイオンを、被験者の眼の表面に送出するための部材である。送風器43によって、イオン発生器12から発生したプラスイオンおよびマイナスイオンを、イオン発生器12から被験者の眼の表面に送出するための気流がカバー11の内部に発生する。この気流の発生によって、当該眼に高濃度のプラスイオンおよびマイナスイオンを直接作用させ易くなる。送風器43は、イオン発生器12から発生したプラスイオンおよびマイナスイオンを被験者の眼の表面に送出するための気流を発生する装置であれば、特に限定されない。また、送風器43は、プラスイオンおよびマイナスイオンを同時に送出させてもよいし、プラスイオンおよびマイナスイオンを交互に送出させてもよい。
【0036】
図4の医療装置40において、送風器43は、イオン発生器12の放電電極3が備えられている面に対して送風面が略垂直になるように、保護部41に備えられる。また、送風器43は、イオン発生器12の2つの放電電極3の配列方向と送風方向が略垂直になるように、保護部41に備えられる。送風器43の送風方向がイオン発生器12の放電電極3の配列方向と略垂直になることによって、イオン発生器12から発生したプラスイオンおよびマイナスイオンが互いに打ち消し合うことによるイオン損失が発生し難い。
【0037】
〔実施形態5〕
以下、本発明の実施形態5について、
図5に基づき、詳細に説明する。
図5は、本実施形態5に係る医療装置50の概略構成を示す図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0038】
図5に示すように、医療装置50は、2つのカバー51と、2つのテンプル52と、ブリッジ53とを備える。ブリッジ53は、2つのカバー51を連結するように、2つのカバー51間に設けられている。2つのカバー51はそれぞれ、ブリッジ53と連結する側面と反対側の側面にテンプル52を備える。カバー51の内部には空間が設けられ、当該内部にイオン発生器12が備えられる。
【0039】
図5の医療装置50は、2つのカバー51がそれぞれ左眼および右眼を覆うように構成されているが、一方の眼の白内障の予防または治療を行う場合は、医療装置50のカバー51は1つでもよい。医療装置50のカバー51の数が1つである場合、カバー51の両側面からは、カバー51が眼を覆うように固定するために、テンプル52の代わりにバンドを備えていてもよい。
【0040】
図5のカバー51の形状は略直方体形状であるが、被験者の眼をカバー51の内部空間で覆うことができれば、その形状は特に限定されない。
【0041】
カバー51には、被験者の顔と接触する側に、被験者の眼をカバー51の内部空間で覆うための開口部54が設けられている。開口部54は、被験者の片目を覆うことができる開口面積を有する。カバー51が被験者の顔に密着し易いように、開口部54にはシール部材を備えていてもよい。シール部材の材質として、ゴムおよび樹脂等が挙げられる。
【0042】
〔実施形態6〕
以下、本発明の実施形態6について、
図6に基づき、詳細に説明する。
図6は、本実施形態6に係る医療装置60の概略構成を示す図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0043】
図6に示すように、医療装置60は、カバー61と、カバー61の内部に設けられているイオン発生器12と、カバー61の側面63に備えられているバンド62とを備える。
【0044】
カバー61には、被験者の顔と接触する側に、被験者の眼をカバー61の内部空間で覆うための開口部64が設けられている。開口部64は、被験者の両目を覆うことができる開口面積を有する。被験者の両目に均一にプラスイオンおよびマイナスイオンを作用させる点で、イオン発生器12はカバー61の内部の中央に設けられている。
【0045】
バンド62は、カバー61が眼を覆うように固定するための部材である。バンド62は、被験者の頭部の大きさによって長さを調整できるように、調整部材を備えていてもよい。
【0046】
〔実施形態7〕
以下、本発明の実施形態7について、
図7に基づき、詳細に説明する。
図7は、本実施形態7に係る医療装置70の概略構成を示す図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0047】
図7に示すように、医療装置70は、カバー71と、カバー71の内部に設けられているイオン発生器12と、カバー71の側面に設けられている把持部72とを備える。
【0048】
カバー71には、被験者の顔と接触する側に、被験者の眼をカバー71の内部空間で覆うための開口部74が設けられている。開口部74は、被験者の眼を覆うことができる開口面積を有する。
【0049】
把持部72は、被験者が医療装置70を手に持って、被験者の眼をカバー71で覆うための部材である。被験者が把持部72を手に持って、カバー71の開口部74を被験者の顔に接触させることによって、被験者の眼をカバー71の内部空間で覆う。把持部72は被験者が手で持ち易い形状であることが好ましく、例えば、棒状等が挙げられる。
【0050】
〔実施形態8〕
以下、本発明の実施形態8について、
図8に基づき、詳細に説明する。
図8は、本実施形態8に係る医療装置80の概略構成を示す図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0051】
図8に示すように、医療装置80は、イオン発生器12と、イオン発生器12が固定されるイオン発生器固定部81と、イオン発生器固定部81を天井から吊るす吊下げ部82とを備える。イオン発生器固定部81に固定されるイオン発生器12の側面と反対側の側面からは、放電電極13が床に向けて突出している。
【0052】
医療装置80は、空間84に備えられる。空間84の例として、一般家庭の居室、寝室、病院の診察室、および会議室等が挙げられる。イオン発生器12から発生する高濃度のプラスイオンおよびマイナスイオンを被験者の眼に直接作用させる点で、医療装置80の使用時は、空間84は実質閉空間であることが好ましい。
【0053】
空間84内には、医療装置80の鉛直下方向に、寝台83が設置されている。イオン発生器12が被験者の眼の上方に位置するように、被験者は寝台83に仰向けで横たわる。そして、イオン発生器12から発生する高濃度のプラスイオンおよびマイナスイオンを被験者の眼の表面に送出する。これによって、高濃度のプラスイオンおよびマイナスイオンを眼に直接作用させることができる。そして、白内障の予防または白内障の患部を治療することができる。
【0054】
〔実施形態9〕
以下、本発明の実施形態9について、
図9に基づき、詳細に説明する。
図9は、本実施形態9に係る医療装置90の概略構成を示す図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0055】
図9に示すように、医療装置90は、イオン発生器12と、寝台93と、イオン発生器12が固定されるイオン発生器固定部91と、イオン発生器固定部91を寝台93に固定する固定部とを備える。イオン発生器固定部81に固定されるイオン発生器12の側面と反対側の側面からは、放電電極13が突出している。また、医療装置90は空間94内に備えられる。空間94内の例は、空間84の例と同じである。
【0056】
図9の医療装置90において、寝台93はリクライニングベッドである。寝台93の角度を調整し、被験者の眼の前方にイオン発生器12に備えられる。
【0057】
〔実施形態10〕
以下、本発明の実施形態10について、
図10に基づき、詳細に説明する。
図10は、本実施形態10に係る医療装置100の概略構成を示す図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。本実施形態は、実施形態1に係る医療装置10にカバー固定部101および寝台103が追加された構成に関する。
【0058】
図10に示すように、医療装置100は、カバー固定部101と寝台103とをさらに備える。寝台103は、リクライニングベッドである。カバー固定部101は、寝台103の上部に備えられている。
図10では、カバー11の外面がカバー固定部101に固定されているが、カバー11の内面がカバー固定部101に固定されることによって、カバー11を寝台103に固定してもよい。
【0059】
被験者は、寝台103に横たわり、開口部14から被験者の眼を含む頭部を挿入することによって、当該眼がカバー11の内部空間で覆われる。
【0060】
〔実施形態11〕
以下、本発明の実施形態11について、
図11に基づき、詳細に説明する。
図11は、本実施形態11に係る医療装置110の概略構成を示す図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0061】
図11に示すように、医療装置110は、被験者の全身を覆うカバー111と、カバー111の内部に設けられるイオン発生器12と、被験者の頭部を保護する頭部保護部材112とを備える。
【0062】
カバー111は、被験者の全身を覆うことによって、被験者の眼を覆う空間を形成させるための部材である。被験者がカバー111の内部に進入するための進入口がカバー111に設けられていてもよい。イオン発生器12は、被験者がカバー111内で横たわって白内障の予防または治療することができるように、被験者の眼(被験者の顔)の上方に設置されている。
【0063】
頭部保護部材112は、被験者の眼にイオン発生器12から発生するプラスイオンおよびマイナスイオンが直接作用し易いように、イオン発生器12の直下付近に配置されている。頭部保護部材112の例として、枕等が挙げられる。
【0064】
〔実施形態12〕
以下、本発明の実施形態12について、
図12に基づき、詳細に説明する。
図12は、本実施形態12に係る医療装置120の概略構成を示す図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0065】
図12に示すように、医療装置120は、被験者を覆うカバー121と、カバー111の内部に設けられるイオン発生器12と、被験者の頭部を保護する頭部保護部材112とを備える。
【0066】
カバー121は、被験者の身体の一部または全身を覆うことによって、被験者の眼を覆う空間を形成させるための部材である。カバー121の一方には開口部124が設けられている。カバー121は寝台123上に設置されることによって、カバー121の内部には空間が設けられ、被験者は開口部124から進入することによって、被験者の眼をカバー121の内部空間で覆うことができる。
【0067】
<非ヒト哺乳動物の白内障を予防または治療する方法>
本実施形態に係る、非ヒト哺乳動物の白内障を予防または治療する方法(以下、単に「本実施形態に係る方法」と略記する場合がある)は、非ヒト哺乳動物の眼の表面にプラスイオンおよびマイナスイオンを送出させる。プラスイオンおよびマイナスイオンの送出は、プラスイオンおよびマイナスイオンを同時に送出させてもよいし、プラスイオンおよびマイナスイオンを交互に送出させてもよい。送出させるプラスイオンおよびマイナスイオンの濃度はそれぞれ50万個/cm3以上であることが好ましく、それぞれ100万個/cm3以上であることがより好ましい。
【0068】
プラスイオンおよびマイナスイオンは例えば、放電によって発生させることができる。放電は大気中で行ってもよい。上記プラスイオンの例として、H+(H2O)mからなるプラスイオンが挙げられる(mは任意の整数)。上記マイナスイオンの例として、O2
-(H2O)nからなるマイナスイオンが挙げられる(nは任意の整数)。
【0069】
また、本実施形態に係る方法において、非ヒト哺乳動物の眼を覆い、覆われた空間をプラスイオンおよび前記マイナスイオンにより満たしてもよい。この際、覆われた空間のプラスイオンおよびマイナスイオンの濃度をそれぞれ50万個/cm3以上にすることが好ましく、それぞれ100万個/cm3以上にすることがより好ましい。
【0070】
さらに、本実施形態に係る、非ヒト哺乳動物の白内障を予防または治療する方法は、放電により発生するプラスイオンおよびマイナスイオンを、当該放電で生じるプラズマ領域から離れたところで、非ヒト哺乳動物の眼の表面に送出させてもよい。これにより、高濃度のプラスイオンおよびマイナスイオンを非ヒト哺乳動物の眼に直接作用させることができる。
【0071】
本実施形態に係る方法は、上述の医療装置を用いて、非ヒト哺乳動物の白内障を予防または治療することができる。
【0072】
本実施形態の方法において治療または予防の対象となる非ヒト哺乳動物の例として、ウシ、イノシシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、マウス、ラット、ハムスター、リス、ウサギイヌ、ネコ、フェレット等が挙げられる。非ヒト哺乳動物は、家畜または愛玩動物であってもよく、野生動物であってもよい。
【0073】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る方法は、非ヒト哺乳動物の眼の表面にプラスイオンおよびマイナスイオンを送出することによって、非ヒト哺乳動物の白内障を予防または治療する、方法である。
【0074】
上記の構成によれば、プラスイオンおよびマイナスイオンを非ヒト哺乳動物の眼に直接作用することができ、白内障を予防または治療することができる。
【0075】
本発明の態様2に係る方法は、上記態様1において、非ヒト哺乳動物の眼を覆い、覆われた空間を上記プラスイオンおよび上記マイナスイオンにより満たしてもよい。
【0076】
上記の構成によれば、上記態様1に記載の効果を得ることができる。
【0077】
本発明の態様3に係る方法は、上記態様1または2において、上記プラスイオンおよび上記マイナスイオンの濃度がそれぞれ50万個/cm3以上であってもよい。
【0078】
上記の構成によれば、上記態様1に記載の効果を得ることができる。
【0079】
本発明の態様4に係る医療装置10は、放電によりプラスイオンおよびマイナスイオンを発生するイオン発生部(イオン発生器12)を備え、眼の表面にプラスイオンおよびマイナスイオンを送出することによって、白内障を予防または治療する、医療装置である。
【0080】
上記の構成によれば、上記態様1に記載の効果を得ることができる。
【0081】
本発明の態様5に係る医療装置10は、上記態様4において、眼を覆うカバー11をさらに備え、覆われた空間に上記プラスイオンおよび上記マイナスイオンを送出してもよい。
【0082】
上記の構成によれば、上記態様1に記載の効果を得ることができる。
【0083】
本発明の態様6に係る医療装置10は、上記態様4または5において、上記プラスイオンおよび上記マイナスイオンの濃度がそれぞれ50万個/cm3以上であってもよい。
【0084】
上記の構成によれば、上記態様1に記載の効果を得ることができる。
【0085】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【実施例】
【0086】
〔白内障の発症抑制の検証〕
糖尿病を発症すると、眼球に糖化ストレスが蓄積し、白内障の発症リスクが高まることが知られている。そこで、糖尿病を発症したラットに、プラスイオンおよびマイナスイオンを作用させることにより、白内障の発症が抑制されるか否かを検証した。
【0087】
<実験動物>
ラットは、ストレプトゾトシン投与によりI型糖尿病を発症させた。また、コントロールとして糖尿病を発症していないマウスを用いた。
【0088】
<実験装置>
実験装置として、
図13および14に示す医療装置130を使用した。
図13は実験装置の正面を示す写真、
図14は実験装置の上面を示す写真である。実験装置(医療装置130)は、プラスチック製のゲージ131(縦305mm×横520mm×高さ170mm)と、ゲージ131の蓋134に取り付けたイオン発生器132を備える。イオン発生器132として、シャープ株式会社製のCKITTA252AKKZを使用した。また、イオン発生器132の上部には、発生したプラズマイオンおよびマイナスイオンがゲージ131内全体に充填されるように送風器(ファン)133を設けた。1つの実験装置当たり、1匹のラットを飼育した。
【0089】
<飼育条件>
糖尿病を発症したラットを2群に分けた。一方の群(糖尿病/PCI(+)群)には、イオン発生器132からプラスイオンおよびマイナスイオンを発生させた環境下で6週間飼育した。飼育時は、ゲージ131内のプラスイオン濃度およびマイナスイオン濃度が100万個/cm3になるように調整した。イオン濃度は、ゲージ131の上部にイオンカウンターの吸込み口を向け、適当なレンジにして測定を行った。
【0090】
もう一方の群(糖尿病/PCI(-)群)およびコントロール群(健常/PCI(-)群)は、イオン発生器132からプラズマイオンおよびマイナスイオンを発生させずに、6週間実験装置内で飼育した。
【0091】
糖尿病/PCI(+)群および糖尿病/PCI(-)群はそれぞれ3匹、健常/プラズマ(-)群は2匹で検証を行った。
【0092】
各群について、飼料としてCRF-1(オリエンタル酵母工業)を、飲料水として水道水を与えた。ゲージ131内の床敷の交換と吸水補充を4日に1回行った。また、体重測定、白内障の症状観察、およびイオン発生器132の放電針(放電電極)の掃除を週に1回行った。白内障の症状観察は、眼球の白濁の程度の観察により行った。
【0093】
<白内障症状観察の結果>
各群の白内障の症状観察の結果を表1に示す。表1中、症状確認日は、試験開始日からの経過日数で示す。
【0094】
【0095】
プラスイオンおよびマイナスイオンを発生させる際にオゾンが生成する。生成したオゾンによる酸化ストレスによって、白内障の発症が早まることが当初予想された。しかしながら、意外にも、糖尿病/PCI(+)群は、プラスイオンおよびマイナスイオンを発生させなかった糖尿病/PCI(-)群に比べて、白内障の発症が抑制された。また、試験開始日から7週目にラットから眼球を摘出して行った組織学的検討においても、糖尿病/PCI(+)群は糖尿病/PCI(-)群に比べて、白内障の発症が抑制された。
【0096】
以上の結果より、プラスイオンおよびマイナスイオンを発生させた空間で、白内障の発症を抑制することができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、例えば、白内障の治療および研究等に利用することができる。