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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】力覚センサモジュール
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/16 20200101AFI20250108BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
G01L5/16
B81B3/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021562560
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2020043140
(87)【国際公開番号】W WO2021111887
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2019220840
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝原 智子
(72)【発明者】
【氏名】塚本 圭
(72)【発明者】
【氏名】大鳥居 英
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特公平04-011346(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00-5/28
H01L 29/84
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリーズに配置された複数の力覚センサを備え、
各前記力覚センサは、
力の検出方向が互いに異なる複数のセンサ部と、
前記力覚センサごとに別個に設けられ、前記複数のセンサ部を支持する支持基板と、
各前記力覚センサに共通に設けられ、前記複数の力覚センサをシリーズに固定するとともに、互いに隣接する2つの前記支持基板の間隙に対応する箇所に溝部が形成された可撓性の有機部材と
を有する
力覚センサモジュール。
【請求項2】
各前記力覚センサは、前記センサ部ごとに1つずつ設けられた、前記センサ部を含む複数のセンサ基板、または、前記複数のセンサ部を全て含む共通センサ基板を有し、
前記溝部は、前記複数のセンサ基板もしくは前記共通センサ基板の底面よりも浅い位置に形成されている
請求項1に記載の力覚センサモジュール。
【請求項3】
前記溝部は、前記複数のセンサ基板もしくは前記共通センサ基板の上面よりも浅い位置に形成されている
請求項2に記載の力覚センサモジュール。
【請求項4】
前記支持基板は、前記複数のセンサ部と対向する位置に設けられ、前記複数のセンサ部から出力される検出信号を処理する処理回路を有する
請求項2に記載の力覚センサモジュール。
【請求項5】
前記複数のセンサ基板もしくは前記共通センサ基板は、バンプを介して前記支持基板に実装されており、
前記複数のセンサ部は、前記バンプを介して前記処理回路と電気的に接続されている
請求項4に記載の力覚センサモジュール。
【請求項6】
前記複数の力覚センサをシリーズに接続する接続線を更に備え、
各前記力覚センサは、前記支持基板と対向する位置に設けられ、前記接続線と前記処理回路とを電気的に接続するための配線を有する配線基板を更に有する
請求項5に記載の力覚センサモジュール。
【請求項7】
シリーズに接続された前記複数の力覚センサのうち、一方の端部に配置された第1力覚センサに対して前記接続線を介して接続され、各前記力覚センサにおける前記複数のセンサ部を制御するコントロール素子と、
シリーズに接続された前記複数の力覚センサのうち、他方の端部に配置された第2力覚センサに対して前記接続線を介して接続され、各前記力覚センサにおける前記複数のセンサ部で得られた検出信号もしくは前記検出信号に対応する信号を外部に出力するインターフェース素子と
を更に備えた
請求項6に記載の力覚センサモジュール。
【請求項8】
互いに隣接する2つの前記支持基板の間隙は、前記複数の力覚センサの配列ピッチよりも小さくなっている
請求項1に記載の力覚センサモジュール。
【請求項9】
互いに隣接する2つの前記配線基板の間隙は、前記複数の力覚センサの配列ピッチよりも小さくなっている
請求項に記載の力覚センサモジュール。
【請求項10】
前記センサ部は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)で構成されている
請求項1に記載の力覚センサモジュール。
【請求項11】
各前記力覚センサにおいて、前記複数のセンサ部は環状に配置されており、
各前記力覚センサは、前記複数のセンサ部を含む可撓性基板と、前記可撓性基板のうち、環状に配置された前記複数のセンサ部の中心と対向する位置に固定された柱部と、前記可撓性基板のうち、前記柱部の周囲であって、かつ前記柱部と所定の間隙を介した位置に固定された筒部とを含んで構成されたダイヤフラム式力覚センサである
請求項1に記載の力覚センサモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、力覚センサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットによる物体のハンドリングを制御するために、ロボットには多くのセンサが用いられる。ロボットに用いられ得るセンサが、例えば、下記の特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2016/0167949号
【文献】特開2015-197357号
【発明の概要】
【0004】
ところで、多数のセンサを高密度に配置することが可能になれば、単体のセンサからは得られ難い様々な情報が得られる。特に、ロボットの分野では、ロボットハンドの先端部分に多数のセンサを高密度に配置することが可能になれば、ロボットハンドを更に精密に制御することも可能となる。従って、高密度かつ高分解能に配置することの可能な力覚センサモジュールを提供することが望ましい。
【0005】
本開示の一実施形態に係る力覚センサモジュールは、シリーズに配置された複数の力覚センサを備えている。各力覚センサは、力の検出方向が互いに異なる複数のセンサ部と、力覚センサごとに別個に設けられ、複数のセンサ部を支持する支持基板と、各力覚センサに共通に設けられ、複数の力覚センサをシリーズに固定するとともに、互いに隣接する2つの支持基板の間隙に対応する箇所に溝部が形成された可撓性の有機部材とを有している。
【0006】
本開示の一実施形態に係る力覚センサモジュールでは、複数の力覚センサが可撓性の有機部材によってシリーズに配置されている。これにより、例えば、複数の力覚センサを、設置対象の形状に依らず高密度に配置することができる。また、本開示では、有機部材には、互いに隣接する2つの支持基板の間隙に対応する箇所に溝部が形成されている。これにより、外部から有機部材に力が入力されたときに、外部からの力が入力位置に対応する力覚センサに入力され、外部からの力が入力位置から離れた位置にある力覚センサへ伝播するのが抑制される。つまり、有機部材は、複数の力覚センサをシリーズに支持する機能と、外部からの力を入力位置に応じた力覚センサに選択的に入力する機能とを兼ね備えている。従って、本開示では、複数の力覚センサの高密度の配置と、複数の力覚センサによる高分解能の検出を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第1の実施の形態に係る力覚センサモジュールの平面構成例を表す図である。
図2図1の力覚センサモジュールの断面構成例を表す図である。
図3図2の力覚センサモジュールの平面構成例を表す図である。
図4図2の力覚センサモジュールの平面構成例を表す図である。
図5図1の力覚センサモジュールの断面構成の一変形例を表す図である。
図6図2の力覚センサモジュールの平面構成の一変形例を表す図である。
図7図1の力覚センサモジュールの平面構成の一変形例を表す図である。
図8】本開示の第2の実施の形態に係る力覚センサモジュールの平面構成例を表す図である。
図9図8の力覚センサモジュールの断面構成例を表す図である。
図10図9の力覚センサモジュールの平面構成例を表す図である。
図11図9の力覚センサモジュールの平面構成例を表す図である。
図12図8の力覚センサモジュールの断面構成の一変形例を表す図である。
図13図8の力覚センサモジュールの平面構成の一変形例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は本開示の一具体例であって、本開示は以下の態様に限定されるものではない。また、本開示は、各図に示す各構成要素の配置や寸法、寸法比などについても、それらに限定されるものではない。なお、説明は、以下の順序で行う。

1.第1の実施の形態(MEMS式力覚センサモジュール)
各力覚センサがMEMSを含んで構成されている例
2.第1の実施の形態の変形例
変形例1-1:複数のMEMS部が1つのチップに設けられている例
変形例1-2:複数のMEMS部によって6軸力覚センサを構成した例
変形例1-3:複数の力覚センサを蛇行して配置した例
3.第2の実施の形態(ダイヤフラム式力覚センサモジュール)
各力覚センサがダイヤフラムを含んで構成されている例
4.第2の実施の形態の変形例
変形例2-1:ダイヤフラム基板の底面に回路基板を実装した例
変形例2-2:複数の力覚センサを蛇行して配置した例
【0009】
<1.第1の実施の形態>
[構成]
本開示の第1の実施の形態に係るMEMS式力覚センサモジュール1の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係るMEMS式力覚センサモジュール1の平面構成例を表したものである。図2は、図1のMEMS式力覚センサモジュール1のA-A線での断面構成例を表したものである。図3図4は、図2のMEMS式力覚センサモジュール1の平面構成例の一部を拡大して表したものである。
【0010】
MEMS式力覚センサモジュール1は、接続線Lを介してシリーズに接続された複数のMEMS式3軸力覚センサ10を備えている。接続線Lは、例えば、クロックペア差動線およびデータペア差動線を基本とし、その他数種のコントロール線により構成されている。MEMS式力覚センサモジュール1が、本開示の「力覚センサモジュール」の一具体例に相当する。MEMS式3軸力覚センサ10が、本開示の「力覚センサ」の一具体例に相当する。接続線Lが、本開示の「接続線」の一具体例に相当する。
【0011】
MEMS式3軸力覚センサ10は、センサ基板11,12,13、回路基板14、配線基板15および有機部材16を有している。回路基板14は、MEMS式3軸力覚センサ10ごとに別個に設けられている。配線基板15も、MEMS式3軸力覚センサ10ごとに別個に設けられている。センサ基板11,12,13が、本開示の「センサ基板」の一具体例に相当する。回路基板14が、本開示の「支持基板」の一具体例に相当する。配線基板15が、本開示の「配線基板」の一具体例に相当する。有機部材16が、本開示の「有機部材」の一具体例に相当する。
【0012】
センサ基板11,12,13および回路基板14が互いに積層されている。センサ基板11,12,13は、回路基板14の上面と対向する位置に配置されている。配線基板15は、回路基板14の下面と対向する位置に配置されている。有機部材16は、回路基板14の上面と対向する位置に設けられており、センサ基板11,12,13および回路基板14を覆っている。
【0013】
センサ基板11は、第1の方向(X軸方向)の力を検出するMEMS部11Aを含む基板である。X軸は、例えば、複数のMEMS式3軸力覚センサ10の配列方向と平行な1軸に相当する。センサ基板11は、例えば、シリコン基板を有しており、MEMS部11Aは、例えば、シリコン基板上に形成されたMEMSで構成されている。MEMS部11Aは、有機部材16を介して入力された外力のうち、第1の方向(X軸方向)の成分を検出し、検出した外力に応じた検出信号を出力する。MEMS部11Aが、本開示の「センサ部」の一具体例に相当する。
【0014】
センサ基板12は、第2の方向(Y軸方向)の力を検出するMEMS部12Aを含む基板である。Y軸は、例えば、複数のMEMS式3軸力覚センサ10の配列方向と直交する1軸に相当する。センサ基板12は、例えば、シリコン基板を有しており、MEMS部12Aは、例えば、シリコン基板上に形成されたMEMSで構成されている。MEMS部12Aは、有機部材16を介して入力された外力のうち、第2の方向(Y軸方向)の成分を検出し、検出した外力に応じた検出信号を出力する。MEMS部12Aが、本開示の「センサ部」の一具体例に相当する。
【0015】
センサ基板13は、第3の方向(Z軸方向)の力を検出するMEMS部13Aを含む基板である。Z軸は、例えば、X軸およびY軸と直交する1軸に相当する。センサ基板13は、例えば、シリコン基板を有しており、MEMS部13Aは、例えば、シリコン基板上に形成されたMEMSで構成されている。MEMS部13Aは、有機部材16を介して入力された外力のうち、第3の方向(Z軸方向)の成分を検出し、検出した外力に応じた検出信号を出力する。センサ基板11,12,13では、力の検出方向が互いに異なっている。MEMS部13Aが、本開示の「センサ部」の一具体例に相当する。
【0016】
回路基板14は、センサ基板11,12,13と対向する位置に設けられており、センサ基板11,12,13を支持する支持基板である。回路基板14は、センサ基板11,12,13から出力される検出信号を処理する処理回路を有している。回路基板14は、処理回路として、例えば、MEMS部11A,12A,13Aにおける、外力の検出を制御する制御回路141と、MEMS部11A,12A,13Aから得られた検出信号を処理するDSP(Digital Signal Processing)回路142と、SerDes(SERializer/DESerializer)回路143とを有している。制御回路141は、トリガー信号が入力されると、MEMS部11A,12A,13Aにおける、外力の検出を制御する信号をMEMS部11A,12A,13Aに出力する。MEMS部11A,12A,13Aは、制御回路141から、外力の検出を制御する信号が入力されると、検出した外力に応じた検出信号を出力する。
【0017】
DSP回路142は、MEMS部11A,12A,13Aから出力された検出信号に対して各種の信号処理を行う。DSP回路142は、例えば、MEMS部11A,12A,13Aから出力された検出信号に基づいて、外力による有機部材16の3軸方向(X軸、Y軸、Z軸)の変位を計算し、外部に出力する。SerDes回路143は、DSP回路142から入力された信号のシリアル/パラレル変換を行う。SerDes回路143は、シリアル/パラレル変換後の信号を、測定データ10a(パケットデータ)として外部に出力する。DSP回路142およびSerDes回路143が、本開示の「処理回路」の一具体例に相当する。
【0018】
センサ基板11,12,13のXY面内のサイズは、例えば、回路基板14のXY面内のサイズよりも小さくなっている。センサ基板11は、例えば、回路基板14の上面に、複数のバンプ11Bを介して積層(実装)されている。センサ基板11内のMEMS部11Aは、例えば、複数のバンプ11Bを介して回路基板14(制御回路141およびDSP回路142)と電気的に接続されている。センサ基板12は、例えば、回路基板14の上面に、複数のバンプ12Bを介して積層(実装)されている。センサ基板12内のMEMS部12Aは、例えば、複数のバンプ12Bを介して回路基板14(制御回路141およびDSP回路142)と電気的に接続されている。センサ基板13は、例えば、回路基板14の上面に、複数のバンプ13Bを介して積層(実装)されている。センサ基板13内のMEMS部13Aは、例えば、複数のバンプ13Bを介して回路基板14(制御回路141およびDSP回路142)と電気的に接続されている。バンプ11B,12B,13Bは、本開示の「バンプ」の一具体例に相当する。バンプ11B,12B,13Bは、例えば、半田材料で形成されている。
【0019】
配線基板15は、接続線Lと回路基板14(制御回路141およびSerDes回路143)とを電気的に接続するための配線15Aを有している。配線基板15は、例えば、配線15Aと、配線15Aを支持する樹脂層とによって構成された可撓性基板である。配線基板15の上面には、センサ基板11,12,13および回路基板14が実装されている。回路基板14は、例えば、配線基板15の上面に、複数のバンプ14Aを介して積層されている。バンプ14Aは、例えば、半田材料で形成されている。回路基板14は、複数のバンプ14Aを介して、配線基板15(配線15A)と電気的に接続されている。配線基板15(配線15A)は、外部回路と電気的に接続される。複数のバンプ14Aは、例えば、アンダーフィル14Bによって覆われている。
【0020】
有機部材16は、外力により変形可能な柔軟性を有する可撓性の有機部材であり、例えば、シリコーンによって構成されている。有機部材16は、例えば、ドーム形状、または、台形状となっており、有機部材16に外力が加えられたときに、有機部材16が変形することによって、MEMS部11A,12A,13Aに、有機部材16に入力された外力を伝達することが可能となっている。
【0021】
本実施の形態では、有機部材16は、各MEMS式3軸力覚センサ10に共通に設けられており、複数のMEMS式3軸力覚センサ10をシリーズに固定している。有機部材16には、互いに隣接する2つの回路基板14の間隙に対応する箇所に溝部16Aが形成されており、互いに隣接する2つの溝部16Aの間隙に対応する箇所に凸部16Bが形成されている。各溝部16Aは、例えば、Y軸方向に延在しており、有機部材16をMEMS式3軸力覚センサ10ごとに区画している。
【0022】
溝部16Aは、センサ基板11,12,13の底面よりも浅い位置に形成されており、好ましくは、センサ基板11,12,13の上面よりも浅い位置に形成されている。つまり、溝部16Aは、以下の式(1),(2)を満たすように形成されている。
D1<D3…式(1)
D1<D2…式(2)
D1:溝部16Aの深さ
D2:センサ基板11,12,13の上面の、有機部材16の表面からの深さ
D3:センサ基板11,12,13の底面の、有機部材16の表面からの深さ
【0023】
溝部16Aは、外部からの力が入力位置から離れた位置にあるMEMS式3軸力覚センサ10へ伝播するのを抑制する。凸部16Bは、外部から有機部材16に力が入力されたときに、外部からの力が入力位置に対応するMEMS式3軸力覚センサ10に入力され易くする。つまり、有機部材16は、複数のMEMS式3軸力覚センサ10をシリーズに支持する機能と、外部からの力を入力位置に応じたMEMS式3軸力覚センサ10に選択的に入力する機能とを兼ね備えている。
【0024】
各MEMS式3軸力覚センサ10において、接続線Lと配線基板15(具体的には配線15A)とが接続されており、接続線Lと回路基板14(具体的には制御回路141およびSerDes回路143)とが電気的に接続されている。MEMS式力覚センサモジュール1において、互いに隣接する2つの配線基板15の間隙G1は、複数のMEMS式3軸力覚センサ10の配列ピッチPよりも小さくなっている。MEMS式力覚センサモジュール1において、互いに隣接する2つの回路基板14の間隙G2は、複数のMEMS式3軸力覚センサ10の配列ピッチPよりも小さくなっている。間隙G1は、間隙G2よりも小さくなっている。配列ピッチPは、例えば、1mm程度となっている。
【0025】
MEMS式力覚センサモジュール1は、例えば、図1に示したように、シリーズに接続された複数のMEMS式3軸力覚センサ10のうち、一方の端部に配置されたMEMS式3軸力覚センサ10(10A)に対して、接続線Lを介して接続されたコントロール素子20を備えている。コントロール素子20は、各MEMS式3軸力覚センサ10における、外力の検出を制御する。コントロール素子20は、MEMS式3軸力覚センサ10における、外力の検出を制御するトリガー信号を所定の周期でMEMS式3軸力覚センサ10Aに出力する。
【0026】
MEMS式3軸力覚センサ10Aは、トリガー信号が入力されると、外部から入力される外力に応じた検出信号を含む測定データ10aをパケットデータとして、接続線Lを介して、MEMS式3軸力覚センサ10Aに隣接するMEMS式3軸力覚センサ10に出力する。MEMS式3軸力覚センサ10Aに隣接するMEMS式3軸力覚センサ10は、MEMS式3軸力覚センサ10Aから、接続線Lを介して、パケットデータが入力されると、この入力を、外力を検出するトリガー信号とみなして、外力に応じた検出信号を含む測定データ10aをパケットデータとして出力する。MEMS式3軸力覚センサ10Aに隣接するMEMS式3軸力覚センサ10は、MEMS式3軸力覚センサ10Aで得られた測定データ10aと、自身の計測により得た測定データ10aとを含むパケットデータを、接続線Lを介して、隣接するMEMS式3軸力覚センサ10に出力する。MEMS式力覚センサモジュール1では、このようにして、バケツリレー方式で、外力の検出制御およびデータ伝送が行われる。
【0027】
MEMS式力覚センサモジュール1は、さらに、例えば、図1に示したように、シリーズに接続された複数のMEMS式3軸力覚センサ10Aのうち、他方の端部に配置されたMEMS式3軸力覚センサ10(10B)に対して、接続線Lを介して接続されたインターフェース素子30を備えている。インターフェース素子30は、各MEMS式3軸力覚センサ10おけるセンサ基板11,12,13で得られた検出信号もしくは検出信号に対応する信号(測定データ10aを含むパケットデータ)を外部に出力する。
【0028】
MEMS式力覚センサモジュール1は、さらに、例えば、図1に示したように、シリーズに接続された複数のMEMS式3軸力覚センサ10に対して電力を供給する電源回路40を備えている。電源回路40は、シリーズに接続された複数のMEMS式3軸力覚センサ10において、MEMS式3軸力覚センサ10A側から電源電圧Vccを供給する。
【0029】
[動作]
次に、MEMS式力覚センサモジュール1の動作について説明する。
【0030】
コントロール素子20から、配線基板15を介して制御回路141にトリガー信号が入力される。制御回路141は、トリガー信号が入力されると、外力を検出するための信号をMEMS部11A,12A,13Aに出力する。MEMS部11A,12A,13Aは、制御回路141から、外力を検出するための信号が入力されると、検出した外力に応じた検出信号をDSP回路142に出力する。DSP回路142は、入力された検出信号に対して各種の信号処理を行う。DSP回路142は、例えば、MEMS部11A,12A,13Aから出力された検出信号に基づいて、外力による有機部材16の3軸方向(X軸、Y軸、Z軸)の変位を計算し、SerDes回路143に出力する。SerDes回路143は、DSP回路142から入力された信号のシリアル/パラレル変換を行い、測定データ10aとしてのパケットデータをインターフェース素子30に出力する。インターフェース素子30は、各MEMS式3軸力覚センサ10おけるセンサ基板11,12,13で得られた検出信号もしくは検出信号に対応する信号(測定データ10aを含むパケットデータ)を外部に出力する。MEMS式3軸力覚センサ10は、コントロール素子20から、トリガー信号が入力されるたびに、上記の処理を実行する。
【0031】
[効果]
次に、MEMS式力覚センサモジュール1の効果について説明する。
【0032】
本実施の形態では、複数のMEMS式3軸力覚センサ10が可撓性の有機部材16によってシリーズに配置されている。これにより、例えば、複数のMEMS式3軸力覚センサ10を、設置対象の形状に依らず高密度に配置することができる。また、本実施の形態では、有機部材16には、互いに隣接する2つの回路基板14の間隙に対応する箇所に溝部16Aが形成されている。これにより、外部から有機部材16に力が入力されたときに、外部からの力が入力位置に対応するMEMS式3軸力覚センサ10に入力され、外部からの力が入力位置から離れた位置にあるMEMS式3軸力覚センサ10へ伝播するのが抑制される。つまり、有機部材16は、複数のMEMS式3軸力覚センサ10をシリーズに支持する機能と、外部からの力を入力位置に応じたMEMS式3軸力覚センサ10に選択的に入力する機能とを兼ね備えている。従って、本実施の形態では、複数のMEMS式3軸力覚センサ10の高密度の配置と、複数のMEMS式3軸力覚センサ10による高分解能の検出を実現することが可能である。
【0033】
本実施の形態では、溝部16Aは、センサ基板11,12,13の底面よりも浅い位置に形成されている。これにより、外部からの力が入力位置から離れた位置にあるMEMS式3軸力覚センサ10へ伝播するのを抑制することができる。その結果、複数のMEMS式3軸力覚センサ10による高分解能の検出を実現することが可能である。
【0034】
本実施の形態では、溝部16Aは、センサ基板11,12,13の上面よりも浅い位置に形成されている。これにより、外部からの力が入力位置から離れた位置にあるMEMS式3軸力覚センサ10へ伝播するのをより一層抑制することができる。その結果、複数のMEMS式3軸力覚センサ10による高分解能の検出を実現することが可能である。
【0035】
本実施の形態では、MEMS部11A,12A,13Aと対向する位置に回路基板14が設けられている。これにより、MEMS部11A,12A,13Aと同一面内に回路基板14を設けた場合と比べて、複数のMEMS式3軸力覚センサ10を高密度に配置することが可能である。
【0036】
本実施の形態では、センサ基板11,12,13がバンプ11B,12B,13Bを介して回路基板14に実装され、MEMS部11A,12A,13Aは、バンプ11B,12B,13Bを介して回路基板14(制御回路141およびSerDes回路143)と電気的に接続されている。これにより、MEMS部11A,12A,13Aと同一面内に回路基板14を設けた場合と比べて、複数のMEMS式3軸力覚センサ10を高密度に配置することが可能である。
【0037】
本実施の形態では、各MEMS式3軸力覚センサ10には、回路基板14と対向する位置に配線基板15が設けられている。これにより、回路基板14と同一面内に配線基板15設けた場合と比べて、複数のMEMS式3軸力覚センサ10を高密度に配置することが可能である。
【0038】
本実施の形態では、コントロール素子20およびインターフェース素子30が設けられている。これにより、シリーズに接続された複数のMEMS式3軸力覚センサ10の、外力の検出制御や、シリーズに接続された複数のMEMS式3軸力覚センサ10で得られたデータの伝送をバケツリレー方式で行うことが可能となる。従って、簡易な方法で、外力の検出制御およびデータ伝送を実現することができる。
【0039】
本実施の形態では、互いに隣接する2つの回路基板14の間隙G2が複数のMEMS式3軸力覚センサ10の配列ピッチPよりも小さくなっている。これにより、複数のMEMS式3軸力覚センサ10を高密度に配置することができる。
【0040】
本実施の形態では、互いに隣接する2つの配線基板15の間隙G1が複数のMEMS式3軸力覚センサ10の配列ピッチPよりも小さくなっている。これにより、複数のMEMS式3軸力覚センサ10を高密度に配置することができる。
【0041】
本実施の形態では、MEMS部11A,12A,13AがMEMS式3軸力覚センサ10ごとに設けられている。これにより、3軸(X軸、Y軸、Z軸)方向の力の入力を検出することができるので、例えば、ロボットハンドを精密に制御することが可能である。
【0042】
<2.第1の実施の形態の変形例>
次に、上記実施の形態に係るMEMS式力覚センサモジュール1の変形例について説明する。
【0043】
[変形例1-1]
上記実施の形態において、MEMS部11A,12A,13Aが、例えば、図5に示したように、共通のセンサ基板17に設けられていてもよい。つまり、センサ基板17がMEMS部11A,12A,13Aを全て含む。センサ基板17が、本開示の「共通センサ基板」の一具体例に相当する。
【0044】
この場合、溝部16Aは、センサ基板17の底面よりも浅い位置に形成されており、好ましくは、センサ基板17の上面よりも浅い位置に形成されている。つまり、溝部16Aは、以下の式(3),(4)を満たすように形成されている。このようにした場合であっても、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
D1<D3…式(3)
D1<D2…式(3)
D1:溝部16Aの深さ
D2:センサ基板17の上面の、有機部材16の表面からの深さ
D3:センサ基板17の底面の、有機部材16の表面からの深さ
【0045】
[変形例1-2]
上記実施の形態およびその変形例において、例えば、図6に示したように、X軸方向に並んで配置された2つのセンサ基板11と、Y軸方向に並んで配置された2つのセンサ基板12と、XY面内においてX軸に対して45°で交差する方向に並んで配置された2つのセンサ基板13と、XY面内においてX軸に対して-45°で交差する方向に並んで配置された2つのセンサ基板13とがMEMS式3軸力覚センサ10ごとに設けられていてもよい。
【0046】
このようにした場合には、X軸方向に並んで配置された2つのセンサ基板11で得られた検出信号から、Y軸を中心軸とする回転方向のモーメント成分が得られる。さらに、Y軸方向に並んで配置された2つのセンサ基板12で得られた検出信号から、X軸を中心軸とする回転方向のモーメント成分が得られる。さらに、XY面内においてX軸に対して45°で交差する方向に並んで配置された2つのセンサ基板13と、XY面内においてX軸に対して-45°で交差する方向に並んで配置された2つのセンサ基板13とで得られた検出信号から、Z軸を中心軸とする回転方向のモーメント成分が得られる。つまり、本変形例では、MEMS式力覚センサモジュール1は、6軸の力成分を検出することができる。
【0047】
[変形例1-3]
上記実施の形態およびその変形例において、MEMS式力覚センサモジュール1が多数のMEMS式3軸力覚センサ10を備えている場合には、例えば、図7に示したように、シリーズに接続された複数のMEMS式3軸力覚センサ10がジグザグに蛇行したレイアウトとなっていることが好ましい。このようにした場合には、電源回路40は、シリーズに接続された複数のMEMS式3軸力覚センサ10におけるUターン部分1A側から電源電圧Vccを供給し、シリーズに接続された複数のMEMS式3軸力覚センサ10において、Uターン部分1Aに対応するUターン部分1B側に基準電圧GNDを供給することができる。これにより、電圧降下によるセンサ不具合が防止される。
【0048】
<3.第2の実施の形態>
[構成]
本開示の第2の実施の形態に係るダイヤフラム式力覚センサモジュール2の構成について説明する。図8は、本実施の形態に係るダイヤフラム式力覚センサモジュール2の平面構成例を表したものである。図9は、図8のダイヤフラム式力覚センサモジュール2のA-A線での断面構成例を表したものである。図10図11は、図9のダイヤフラム式力覚センサモジュール2の平面構成例の一部を拡大して表したものである。
【0049】
ダイヤフラム式力覚センサモジュール2は、接続線Lを介してシリーズに接続された複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50を備えている。接続線Lは、例えば、クロックペア差動線およびデータペア差動線を基本とし、その他数種のコントロール線により構成されている。ダイヤフラム式力覚センサモジュール2が、本開示の「力覚センサモジュール」の一具体例に相当する。ダイヤフラム式6軸力覚センサ50が、本開示の「力覚センサ」の一具体例に相当する。接続線Lが、本開示の「接続線」の一具体例に相当する。
【0050】
ダイヤフラム式6軸力覚センサ50は、センサ基板51、力伝達部52、回路基板53、配線基板54および有機部材55を有している。センサ基板51が、本開示の「共通センサ基板」の一具体例に相当する。回路基板53が、本開示の「支持基板」の一具体例に相当する。配線基板54が、本開示の「配線基板」の一具体例に相当する。有機部材55が、本開示の「有機部材」の一具体例に相当する。
【0051】
センサ基板51および回路基板53が互いに積層されている。センサ基板51は、回路基板53の上面と対向する位置に配置されている。センサ基板51および力伝達部52が互いに積層されている。力伝達部52は、センサ基板51の上面と対向する位置に配置されている。配線基板54は、回路基板53の下面と対向する位置に配置されている。有機部材55は、回路基板53の上面と対向する位置に配置されており、センサ基板51、力伝達部52および回路基板53を覆っている。
【0052】
センサ基板51は、6軸の力を検出可能なダイヤフラムを構成しており、例えば、絶縁膜51A、4つの導電層51B、可撓性基板51Cおよび絶縁膜51Dを、回路基板53側からこの順に積層して構成されている。4つの導電層51Bは、本開示の「センサ部」の一具体例に相当する。可撓性基板51Cは、本開示の「可撓性基板」の一具体例に相当する。絶縁膜51A,51Dは、4つの導電層51Bを覆っており、例えば、SiO2などにより構成されている。
【0053】
4つの導電層51Bは、可撓性基板51Cの底面に接して設けられており、可撓性基板51Cに支持されている。可撓性基板51Cが薄膜のシリコン基板で構成されている場合、4つの導電層51Bは、例えば、薄膜のシリコン基板に対して不純物を高濃度にドープすることにより形成されている。4つの導電層51Bは、例えば、センサ基板51の中央を中心とする環状に配置されており、各導電層51Bの一部が、例えば、後述の溝部52Aと対向する位置に設けられている。4つの導電層51Bのうち2つの導電層51Bが、例えば、X軸方向に延在しており、4つの導電層51Bのうち残りの2つの導電層51Bが、例えば、Y軸方向に延在している。
【0054】
センサ基板11は、さらに、例えば、導電層51Bごとに2つずつ設けられた8個のパッド電極51Eと、パッド電極51Eごとに1つずつ設けられた8つのバンプ51Fとを有している。パッド電極51Eは、例えば、金(Au)などの金属材料によって構成されている。バンプ51Fは、例えば、半田材料で形成されている。
【0055】
力伝達部52は、例えば、センサ基板51の中央(環状に配置された4つの導電層51Bの中心)と対向する位置に固定された柱部52aと、センサ基板51のうち、柱部52aの周囲であって、かつ柱部52aと所定の間隙を介した位置に固定された筒部52bとを有している。柱部52aが、本開示の「柱部」の一具体例に相当する。筒部52bが、本開示の「筒部」の一具体例に相当する。柱部52aと筒部52bとの間隙が、溝部52Aを構成している。溝部52Aの底面には、センサ基板51が露出している。センサ基板51に含まれる各導電層51Bの一部が、溝部52Aの底面と対向する位置に配置されている。柱部52aおよび筒部52bは、例えば、シリコン基板を加工することにより形成されている。
【0056】
回路基板53は、センサ基板51と対向する位置に設けられており、センサ基板51を支持する支持基板である。回路基板53は、センサ基板51から出力される検出信号を処理する処理回路を有している。回路基板53は、処理回路として、例えば、4つの導電層51Bにおける、外力の検出を制御する制御回路531と、4つの導電層51Bから得られた検出信号を処理するDSP回路532と、SerDes回路533とを有している。制御回路531は、トリガー信号が入力されると、4つの導電層51Bにおける、外力の検出を制御する信号を4つの導電層51Bに出力する。4つの導電層51Bは、制御回路531から、外力の検出を制御する信号が入力されると、検出した外力に応じた検出信号を出力する。
【0057】
DSP回路532は、4つの導電層51Bから出力された検出信号に対して各種の信号処理を行う。DSP回路532は、例えば、4つの導電層51Bから出力された検出信号に基づいて、外力による有機部材55の6軸方向の変位を計算し、外部に出力する。SerDes回路533は、DSP回路532から入力された信号のシリアル/パラレル変換を行う。SerDes回路533は、シリアル/パラレル変換後の信号を、測定データ10a(パケットデータ)として外部に出力する。DSP回路532およびSerDes回路533が、本開示の「処理回路」の一具体例に相当する。
【0058】
センサ基板51のXY面内のサイズは、例えば、回路基板53のXY面内のサイズよりも小さくなっている。センサ基板51は、例えば、回路基板53の上面に、複数のバンプ51Fを介して積層されている。センサ基板51(4つの導電層51B)は、複数のバンプ51Fを介して、回路基板53(制御回路531およびDSP回路532)と電気的に接続されている。
【0059】
配線基板54は、外部回路と回路基板53(制御回路531およびSerDes回路533)とを電気的に接続するための配線54Aを有している。配線基板54は、例えば、配線54Aと、配線54Aを支持する樹脂層とによって構成された可撓性基板である。配線基板54の上面には、センサ基板51、力伝達部52および回路基板53が実装されている。回路基板53は、例えば、配線基板54の上面に、複数のバンプ53Aを介して積層されている。バンプ53Aは、例えば、半田材料で形成されている。回路基板53は、複数のバンプ53Aを介して、配線基板54(配線54A)と電気的に接続されている。複数のバンプ53Aは、例えば、アンダーフィル53Bによって覆われている。
【0060】
有機部材55は、外力により変形可能な柔軟性を有する可撓性の有機部材であり、例えば、シリコーンによって構成されている。有機部材55は、例えば、ドーム形状、または、台形状となっており、有機部材55に外力が加えられたときに、有機部材55が変形することによって、4つの導電層51Bに、有機部材55に入力された外力を伝達することが可能となっている。
【0061】
本実施の形態では、有機部材55は、各ダイヤフラム式6軸力覚センサ50に共通に設けられており、複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50をシリーズに固定している。有機部材55には、互いに隣接する2つの回路基板53の間隙に対応する箇所に溝部55Aが形成されており、互いに隣接する2つの溝部55Aの間隙に対応する箇所に凸部55Bが形成されている。各溝部55Aは、例えば、Y軸方向に延在しており、有機部材55をダイヤフラム式6軸力覚センサ50ごとに区画している。
【0062】
溝部55Aは、センサ基板51の上面よりも浅い位置に形成されている。つまり、溝部55Aは、以下の式(3)を満たすように形成されている。
D4<D5…式(3)
D4:溝部55Aの深さ
D5:センサ基板51の上面の、有機部材55の表面からの深さ
【0063】
溝部55Aは、外部からの力が入力位置から離れた位置にあるダイヤフラム式6軸力覚センサ50へ伝播するのを抑制する。凸部55Bは、外部から有機部材55に力が入力されたときに、外部からの力が入力位置に対応するダイヤフラム式6軸力覚センサ50に入力され易くする。つまり、有機部材55は、複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50をシリーズに支持する機能と、外部からの力を入力位置に応じたダイヤフラム式6軸力覚センサ50に選択的に入力する機能とを兼ね備えている。
【0064】
各ダイヤフラム式6軸力覚センサ50において、接続線Lと配線基板54(具体的には配線54A)とが接続されており、接続線Lと回路基板53(具体的には制御回路531およびSerDes回路533)とが電気的に接続されている。ダイヤフラム式力覚センサモジュール2において、互いに隣接する2つの配線基板54の間隙G1は、複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50の配列ピッチPよりも小さくなっている。ダイヤフラム式力覚センサモジュール2において、互いに隣接する2つの回路基板53の間隙G2は、複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50の配列ピッチPよりも小さくなっている。間隙G1は、間隙G2よりも小さくなっている。配列ピッチPは、例えば、1mm程度となっている。
【0065】
ダイヤフラム式力覚センサモジュール2は、例えば、図8に示したように、シリーズに接続された複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50のうち、一方の端部に配置されたダイヤフラム式6軸力覚センサ50(50A)に対して、接続線Lを介して接続されたコントロール素子20を備えている。コントロール素子20は、各ダイヤフラム式6軸力覚センサ50における、外力の検出を制御する。コントロール素子20は、ダイヤフラム式6軸力覚センサ50における、外力の検出を制御するトリガー信号を所定の周期でダイヤフラム式6軸力覚センサ50Aに出力する。
【0066】
ダイヤフラム式6軸力覚センサ50は、トリガー信号が入力されると、外部から入力される外力に応じた検出信号を含む測定データ10aをパケットデータとして、接続線Lを介して、ダイヤフラム式6軸力覚センサ50Aに隣接するダイヤフラム式6軸力覚センサ50に出力する。ダイヤフラム式6軸力覚センサ50Aに隣接するダイヤフラム式6軸力覚センサ50は、ダイヤフラム式6軸力覚センサ50Aから、接続線Lを介して、パケットデータが入力されると、この入力を、外力を検出するトリガー信号とみなして、外力に応じた検出信号を含む測定データ10aをパケットデータとして出力する。ダイヤフラム式6軸力覚センサ50Aに隣接するダイヤフラム式6軸力覚センサ50は、ダイヤフラム式6軸力覚センサ50Aで得られた測定データ10aと、自身の計測により得た測定データ10aとを含むパケットデータを、接続線Lを介して、隣接するダイヤフラム式6軸力覚センサ50に出力する。ダイヤフラム式力覚センサモジュール2では、このようにして、バケツリレー方式で、外力の検出制御およびデータ伝送が行われる。
【0067】
ダイヤフラム式力覚センサモジュール2は、さらに、例えば、図8に示したように、シリーズに接続された複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50Aのうち、他方の端部に配置されたダイヤフラム式6軸力覚センサ50(50B)に対して、接続線Lを介して接続されたインターフェース素子30を備えている。インターフェース素子30は、各ダイヤフラム式6軸力覚センサ50おける4つの導電層51Bで得られた検出信号もしくは検出信号に対応する信号(測定データ10aを含むパケットデータ)を外部に出力する。
【0068】
ダイヤフラム式力覚センサモジュール2は、さらに、例えば、図8に示したように、シリーズに接続された複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50に対して電力を供給する電源回路40を備えている。電源回路40は、シリーズに接続された複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50において、ダイヤフラム式6軸力覚センサ50A側から電源電圧Vccを供給する。
【0069】
[動作]
次に、ダイヤフラム式力覚センサモジュール2の動作について説明する。
【0070】
コントロール素子20から、配線基板54を介して制御回路531にトリガー信号が入力される。制御回路531は、トリガー信号が入力されると、外力を検出するための信号を4つの導電層51Bに出力する。4つの導電層51Bは、制御回路531から、外力を検出するための信号が入力されると、検出した外力に応じた検出信号をDSP回路532に出力する。DSP回路532は、入力された検出信号に対して各種の信号処理を行う。DSP回路532は、例えば、4つの導電層51Bから出力された検出信号に基づいて、外力による有機部材16の6軸方向の変位を計算し、SerDes回路533に出力する。SerDes回路533は、DSP回路532から入力された信号のシリアル/パラレル変換を行い、測定データ10aとしてのパケットデータをインターフェース素子30に出力する。インターフェース素子30は、各ダイヤフラム式6軸力覚センサ50おける4つの導電層51Bで得られた検出信号もしくは検出信号に対応する信号(測定データ10aを含むパケットデータ)を外部に出力する。ダイヤフラム式6軸力覚センサ50は、コントロール素子20から、トリガー信号が入力されるたびに、上記の処理を実行する。
【0071】
[効果]
次に、ダイヤフラム式力覚センサモジュール2の効果について説明する。
【0072】
本実施の形態では、複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50が可撓性の有機部材55によってシリーズに配置されている。これにより、例えば、複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50を、設置対象の形状に依らず高密度に配置することができる。また、本実施の形態では、有機部材55には、互いに隣接する2つの回路基板53の間隙に対応する箇所に溝部55Aが形成されている。これにより、外部から有機部材55に力が入力されたときに、外部からの力が入力位置に対応するダイヤフラム式6軸力覚センサ50に入力され、外部からの力が入力位置から離れた位置にあるダイヤフラム式6軸力覚センサ50へ伝播するのが抑制される。つまり、有機部材55は、複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50をシリーズに支持する機能と、外部からの力を入力位置に応じたダイヤフラム式6軸力覚センサ50に選択的に入力する機能とを兼ね備えている。従って、本実施の形態では、複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50の高密度の配置と、複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50による高分解能の検出を実現することが可能である。
【0073】
本実施の形態では、溝部55Aは、センサ基板51の上面よりも浅い位置に形成されている。これにより、外部からの力が入力位置から離れた位置にあるダイヤフラム式6軸力覚センサ50へ伝播するのを抑制することができる。その結果、複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50による高分解能の検出を実現することが可能である。
【0074】
本実施の形態では、4つの導電層51Bと対向する位置に回路基板53が設けられている。これにより、4つの導電層51Bと同一面内に回路基板53を設けた場合と比べて、複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50を高密度に配置することが可能である。
【0075】
本実施の形態では、センサ基板51がバンプ51Fを介して回路基板53に実装され、4つの導電層51Bは、バンプ51Fを介して回路基板53(制御回路531およびSerDes回路533)と電気的に接続されている。これにより、4つの導電層51Bと同一面内に回路基板53を設けた場合と比べて、複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50を高密度に配置することが可能である。
【0076】
本実施の形態では、各ダイヤフラム式6軸力覚センサ50には、回路基板53と対向する位置に配線基板54が設けられている。これにより、回路基板53と同一面内に配線基板54設けた場合と比べて、複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50を高密度に配置することが可能である。
【0077】
本実施の形態では、コントロール素子20およびインターフェース素子30が設けられている。これにより、シリーズに接続された複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50の、外力の検出制御や、シリーズに接続された複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50で得られたデータの伝送をバケツリレー方式で行うことが可能となる。従って、簡易な方法で、外力の検出制御およびデータ伝送を実現することができる。
【0078】
本実施の形態では、互いに隣接する2つの回路基板53の間隙G2が複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50の配列ピッチPよりも小さくなっている。これにより、複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50を高密度に配置することができる。
【0079】
本実施の形態では、互いに隣接する2つの配線基板54の間隙G1が複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50の配列ピッチPよりも小さくなっている。これにより、複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50を高密度に配置することができる。
【0080】
本実施の形態では、4つの導電層51Bがダイヤフラム式6軸力覚センサ50ごとに設けられている。これにより、6軸方向の力の入力を検出することができるので、例えば、ロボットハンドを精密に制御することが可能である。
【0081】
<4.第2の実施の形態の変形例>
次に、上記第2の実施の形態に係るダイヤフラム式力覚センサモジュール2の変形例について説明する。
【0082】
[変形例2-1]
上記第2の実施の形態において、回路基板53が、例えば、図12に示したように、センサ基板51の底面に実装されていてもよい。このとき、センサ基板51が、バンプ51Fを介して配線基板54に電気的に接続されている。さらに、回路基板53が、バンプ53A、センサ基板51およびバンプ51Fを介して配線基板54に電気的に接続されている。このようにした場合であっても、上記第2の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0083】
[変形例2-1]
上記第2の実施の形態およびその変形例において、ダイヤフラム式力覚センサモジュール2が多数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50を備えている場合には、例えば、図13に示したように、シリーズに接続された複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50がジグザグに蛇行したレイアウトとなっていることが好ましい。このようにした場合には、電源回路40は、シリーズに接続された複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50におけるUターン部分2A側から電源電圧Vccを供給し、シリーズに接続された複数のダイヤフラム式6軸力覚センサ50において、Uターン部分2Aに対応するUターン部分2B側に基準電圧GNDを供給することができる。これにより、電圧降下によるセンサ不具合が防止される。
【0084】
以上、実施の形態およびその変形例を挙げて本開示を説明したが、本開示は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。なお、本明細書中に記載された効果は、あくまで例示である。本開示の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されるものではない。本開示が、本明細書中に記載された効果以外の効果を持っていてもよい。
【0085】
また、例えば、本開示は以下のような構成を取ることができる。
(1)
シリーズに配置された複数の力覚センサを備え、
各前記力覚センサは、
力の検出方向が互いに異なる複数のセンサ部と、
前記力覚センサごとに別個に設けられ、前記複数のセンサ部を支持する支持基板と、
各前記力覚センサに共通に設けられ、前記複数の力覚センサをシリーズに固定するとともに、互いに隣接する2つの前記支持基板の間隙に対応する箇所に溝部が形成された可撓性の有機部材と
を有する
力覚センサモジュール。
(2)
各前記力覚センサは、前記センサ部ごとに1つずつ設けられた、前記センサ部を含む複数のセンサ基板、または、前記複数のセンサ部を全て含む共通センサ基板を有し、
前記溝部は、前記複数のセンサ基板もしくは前記共通センサ基板の底面よりも浅い位置に形成されている
(1)に記載の力覚センサモジュール。
(3)
前記溝部は、前記複数のセンサ基板もしくは前記共通センサ基板の上面よりも浅い位置に形成されている
(2)に記載の力覚センサモジュール。
(4)
前記支持基板は、前記複数のセンサ部と対向する位置に設けられ、前記複数のセンサ部から出力される検出信号を処理する処理回路を有する
(2)または(3)に記載の力覚センサモジュール。
(5)
前記複数のセンサ基板もしくは前記共通センサ基板は、バンプを介して前記支持基板に実装されており、
前記複数のセンサ部は、前記バンプを介して前記処理回路と電気的に接続されている
(4)に記載の力覚センサモジュール。
(6)
前記複数の力覚センサをシリーズに接続する接続線を更に備え、
各前記力覚センサは、前記支持基板と対向する位置に設けられ、前記接続線と前記処理回路とを電気的に接続するための配線を有する配線基板を更に有する
(5)に記載の力覚センサモジュール。
(7)
シリーズに接続された前記複数の力覚センサのうち、一方の端部に配置された第1力覚センサに対して前記接続線を介して接続され、各前記力覚センサにおける前記複数のセンサ部を制御するコントロール素子と、
シリーズに接続された前記複数の力覚センサのうち、他方の端部に配置された第2力覚センサに対して前記接続線を介して接続され、各前記力覚センサにおける前記複数のセンサ部で得られた検出信号もしくは前記検出信号に対応する信号を外部に出力するインターフェース素子と
を更に備えた
(6)に記載の力覚センサモジュール。
(8)
互いに隣接する2つの前記支持基板の間隙は、前記複数の力覚センサの配列ピッチよりも小さくなっている
(1)ないし(7)のいずれか1つに記載の力覚センサモジュール。
(9)
互いに隣接する2つの前記配線基板の間隙は、前記複数の力覚センサの配列ピッチよりも小さくなっている
(1)ないし(8)のいずれか1つに記載の力覚センサモジュール。
(10)
前記センサ部は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)で構成されている
(1)ないし(9)のいずれか1つに記載の力覚センサモジュール。
(11)
各前記力覚センサにおいて、前記複数のセンサ部は環状に配置されており、
各前記力覚センサは、前記複数のセンサ部を含む可撓性基板と、前記可撓性基板のうち、環状に配置された前記複数のセンサ部の中心と対向する位置に固定された柱部と、前記可撓性基板のうち、前記柱部の周囲であって、かつ前記柱部と所定の間隙を介した位置に固定された筒部とを含んで構成されたダイヤフラム式力覚センサである
(1)ないし(9)のいずれか1つに記載の力覚センサモジュール。
【0086】
本開示の一実施形態に係る力覚センサモジュールによれば、複数の力覚センサを可撓性の有機部材によってシリーズに配置するとともに、有機部材のうち、互いに隣接する2つの支持基板の間隙に対応する箇所に溝部を形成するようにしたので、複数の力覚センサを高密度かつ高分解能に配置することができる。なお、本開示の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されず、本明細書中に記載されたいずれの効果であってもよい。
【0087】
本出願は、日本国特許庁において2019年12月6日に出願された日本特許出願番号第2019-220840号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願のすべての内容を参照によって本出願に援用する。
【0088】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。
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