(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】設計支援デバイス、設計支援デバイスを備える設計支援装置、及び設計支援方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/20 20200101AFI20250108BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20250108BHJP
G06F 111/04 20200101ALN20250108BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/10 100
G06F111:04
(21)【出願番号】P 2022010422
(22)【出願日】2022-01-26
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 絵里香
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 誠
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 達也
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-064091(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090352(WO,A1)
【文献】特開2015-036962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/398
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CADモデルの設計を支援する設計支援デバイスにおいて、
CADモデルと、CADモデルの形状及び位置を含む特徴量と、を入力する入力部と、
前記入力部により入力された特徴量を用いて、CADモデル上の形状及び位置を特定する特徴量特定部と、
前記特徴量特定部により特定された形状及び位置を含む特徴量の頻度分布を算出する頻度算出部と、
前記頻度算出部が算出した頻度分布を出力する出力部と、を備えることを特徴とする設計支援デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の設計支援デバイスにおいて、
前記頻度算出部により算出されたCADモデルの形状および位置における頻度から外れ値を抽出する外れ値抽出部と、を備え、
外れ値とは、CADモデルには適さない部分の候補のことであることを特徴とする設計支援デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の設計支援デバイスにおいて、
前記外れ値抽出部は、CADモデルの形状および位置に関する頻度に閾値を設け、
閾値とは、外れ値かどうかの境界値であることを特徴とする設計支援デバイス。
【請求項4】
請求項2に記載の設計支援デバイスにおいて、
過去に設計されたCADモデルの形状および位置における頻度分布を記憶する頻度分布記憶部を備え、
前記外れ値抽出部は、前記頻度分布記憶部が記憶する頻度分布と、前記頻度算出部が算出した頻度分布と、を比較し、外れ値を抽出することを特徴とする設計支援デバイス。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の設計支援デバイスにおいて、
前記出力部は、前記外れ値抽出部により抽出した外れ値の形状および位置をCADモデル上に強調して示すことを特徴とする設計支援デバイス。
【請求項6】
請求項1に記載の設計支援デバイスにおいて、
前記出力部は、頻度分布をヒストグラム、散布図、または自己組織化マップを用いて出力することを特徴とする設計支援デバイス。
【請求項7】
請求項1に記載の設計支援デバイスにおいて、
前記形状は、CADモデルの各部分の寸法であることを特徴とする設計支援デバイス。
【請求項8】
請求項1に記載の設計支援デバイスにおいて、
前記位置は、CADモデルにおける座標位置であることを特徴とする設計支援デバイス。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の設計支援デバイスと、
前記入力部に入力するための設定画面と、前記出力部が出力する頻度分布と、を表示する表示部と、を備えることを特徴とする設計支援装置。
【請求項10】
CADモデルの設計を支援する設計支援方法において、
入力部が、CADモデルと、CADモデルの形状及び位置と、を含む特徴量を入力し、
特徴量特定部が、前記入力部により入力された特徴量を用いて、CADモデル上の形状及び位置を特定し、
頻度算出部が、前記特徴量特定部により特定された形状及び位置における頻度分布を算出し、
出力部が、前記頻度算出部が算出した頻度分布を出力することを特徴とする設計支援方法。
【請求項11】
請求項10に記載の設計支援方法において、
外れ値抽出部は、前記頻度算出部により算出されたCADモデルの形状および位置の頻度分布から外れ値を抽出することを特徴とする設計支援方法。
【請求項12】
請求項11に記載の設計支援方法において、
外れ値抽出部は、CADモデルの形状および位置の頻度に関して閾値を設けることを特徴とする設計支援方法。
【請求項13】
請求項11に記載の設計支援方法において、
頻度分布記憶部は過去に設計されたCADモデルの形状および位置における頻度分布を記憶し、
前記外れ値抽出部は、前記頻度分布記憶部が記憶する頻度分布と、前記頻度算出部が算出した頻度分布と、を比較し、外れ値を抽出することを特徴とする設計支援方法。
【請求項14】
請求項11に記載の設計支援方法において、
前記出力部は、前記外れ値抽出部により抽出した外れ値の形状および位置をCADモデル上に強調して示すことを特徴とする設計支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援デバイス、設計支援デバイスを備える設計支援装置、及び設計支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CAD(Computer-Aided-Design)システムを用いて、コンピュータ上で製品などの設計を行うことが知られている。このCADを用いた設計をCAD設計と呼ぶ。
CAD設計では、製品設計時に問題となる、穴あけや曲げなどの加工のしやすさ、溶接やネジ締結などの組立のしやすさといった製造性を考慮した設計ガイドラインを考慮することが望ましい。
【0003】
さらに、CAD設計では、製品の保守時に問題になる、点検のしやすさや治具のアクセスのしやすさといった保守性を考慮した設計ガイドラインを考慮することが望ましい。これらの設計ガイドラインは、1つの製品に対して数万程度のルールが存在する場合もあり、通常はチェックリスト等で人手によってチェックされる。
【0004】
例えば、「ボルトを貫通させる穴は、ボルト径より〇mmから△mm大きい範囲とする」のような設計ガイドラインが存在する。この設計ガイドラインの中からCADモデル上でチェックできるルールを、ここでは判定ルールと呼ぶ。
この判定ルールに含まれる特徴量のしきい値の定量化を支援する技術として、特許文献1が開示されている。特許文献1には、過去に製品化され出図された3DCADデータから、寸法パラメータ、形状特性パラメータ、個数パラメータ及び属性パラメータを含む特徴量を抽出し、抽出した特徴量に基づき統計値を算出し、算出した統計値に基づき判定ルールの定量化を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、判定ルールを定量化するため、閾値が一意に決まらない判定ルールをチェックするのは困難である。
設計ガイドラインの中には、製品の荷重条件や実稼働条件によって、閾値が一意に決まらない判定ルールが多く存在する。例えば、樹脂成型におけるリブの厚みに関し、荷重が大きい部分はリブの厚みが厚く、荷重が小さい部分はリブの厚みが薄くなる。しかし、位置によって異なる荷重条件を全てCAD上に定義するのは困難である。
上記の課題を鑑み、本発明の目的は、閾値が一意に定義できない判定ルールに対してもCAD上でチェックすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記の課題を解決するため、CADモデルの設計を支援する設計支援デバイスにおいて、CADモデルと、CADモデルの形状及び位置を含む特徴量と、を入力する入力部と、前記入力部により入力された特徴量を用いて、CADモデルの形状及び位置を特定する特徴量特定部と、特定された形状及び位置の頻度を算出する頻度算出部と、前記頻度算出部が算出した頻度分布を出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、閾値が一意に定義できない判定ルールに対しても違反箇所をCAD上でチェックすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例1における設計支援デバイスの構成を例示する図である。
【
図2】
図2は、実施例1における設計支援デバイスのフローチャートを例示する図である。
【
図3】
図3は、実施例1における設計支援デバイスをコンピュータ上に実装した場合の設計支援装置の構成図である。
【
図4】
図4は、実施例1における入力画面を例示する図である。
【
図5】
図5は、実施例1における出力画面を例示する図である。
【
図6】
図6は、実施例1における頻度分布を例示する図である。
【
図7】
図7は、実施例1における外れ値1に該当する形状および位置をCADモデル上に示した図である。
【
図8】
図8は、実施例1における外れ値2に該当する形状および位置をCADモデル上に示した図である。
【
図9】
図9は、実施例2における出力画面を例示する図である。
【
図10】
図10は、実施例2における肉厚と曲げRとの頻度分布を例示する図である。
【
図11】
図11は、実施例2における外れ値1002に該当する形状および位置をCADモデル上に示した図である。
【
図12】
図12は、実施例3における計支援デバイスの構成を例示する図である。
【
図13】
図13は、実施例3における出力画面を例示する図である。
【
図14】
図14は、実施例3における頻度分布を例示する図である。
【
図15】
図15は、実施例3における過去算出頻度分布とチェック対象のCADモデルの頻度分布とを比較した図である。
【
図16】
図16は、実施例3における外れ値1502に該当する形状および位置をCADモデル上に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて発明の実施例を説明する。
【0011】
〈実施例1〉
実施例1では、考慮する1変数の場合の頻度算出方法と違反箇所特定方法の一例について説明する。違反箇所を特定する方法は、自動であっても手動であってもどちらでも良い。
【0012】
図1は、実施例1における設計支援デバイスの構成を示す図である。
図1において、設計支援デバイス10は、入力部101と、設計ガイドライン記憶部102と、判定ルール特定部103と、CADモデル記憶部104と、特徴量特定部105と、幾何認識関数モジュール記憶部106と、頻度算出部107と、外れ値抽出部108と、出力部109と、を備える。
【0013】
入力部101は、チェック対象のCADモデルとCADモデルの形状及び位置の特徴量を入力する。
設計ガイドライン記憶部102は、設計ガイドラインを記憶する。設計ガイドラインには、製造装置や工具の使用、加工限界、JISなどの規格に設計時に考慮すべきルールが含まれる。例えば、端部や曲げから穴までの位置規定、フィレットRの寸法規定、製造工具のアクセス性などが設計ガイドラインに含まれる。
【0014】
判定ルール特定部103は、CADモデル上で検証する判定ルールを特定する。判定ルール特定部103は、ユーザが設計ガイドライン内のルールを参照または取り込むなどして、判定ルールの要素を特定する部分と、ユーザの入力に基づいて、過去に蓄積された設計ガイドライン内から判定ルールを特定する部分と、を有する。判定ルール特定部103は、出力部109を介して、判定ルールをユーザに表示しても良い。
【0015】
CADモデル記憶部104には、チェック対象のCADモデルと過去に設計されたCADモデルとが含まれる。
特徴量特定部105では、CADモデルに含まれる形状及び位置の特徴量のうち、ユーザが選択したチェックに適用する変数の各特徴量を特定する。
【0016】
幾何認識関数モジュール記憶部106は、基本要素化されたコンピュータ上で呼び出し可能な手続き関数(以下、共通関数)の群が蓄積される。幾何認識関数モジュール記憶部106の蓄積方法は、例えば、外部から取得する方法や幾何認識関数モジュール記憶部106内で生成する方法などがある。
【0017】
頻度算出部107は、特徴量特定部105により特定した、CADモデルに含まれる形状及び位置の特徴量の頻度分布を算出する。ここでいう頻度分布とは、例えば、CADモデルに含まれるある形状の存在割合やCADモデルに含まれるある形状がどの位置にあるかなどを示すことである。
【0018】
外れ値抽出部108は、頻度算出部107により算出された、CADモデルに含まれる形状及び位置の特徴量の頻度分布の中から、外れ値を抽出する。外れ値とは、チェック対象のCADモデルには適さない部分の候補のことである。外れ値の抽出方法としては、例えば、頻度分布中の頻度が少ない部分を抽出する方法がある。具体的には、例えば、特徴量の頻度分布をヒストグラムで表し、特徴量の頻度が少ない部分を外れ値として抽出する方法である。
【0019】
特徴量の頻度が少ない部分を抽出する方法としては、例えば、頻度の閾値を設定し、その閾値以下の頻度に該当する形状及び位置を抽出する方法があげられる。閾値とは、外れ値かどうかを示す境界値のことである。閾値の設定方法としては、例えば、頻度の下限値を閾値として設定する方法や存在の有無を閾値として設定する方法などがある。頻度の下限値を閾値として設定する方法としては、例えば、95%信頼区間に基づき、5%以下の頻度を下限値として設定する方法がある。また、存在の有無を閾値として設定する方法としては、例えば、過去に設計されたCADモデル内の各位置に対する形状の存在の有無を閾値として設定する方法である。
【0020】
出力部109は、頻度算出部107が算出した頻度分布を出力する。頻度分布を出力し、設計者に示すことにより、設計者は容易にCADモデル内で修正が必要な部分を知ることが可能である。また、出力部109は、外れ値抽出部108が抽出した外れ値に該当する形状及び位置を設計者に出力しても良い。出力方法は、例えば、外れ値と特定した形状及び位置を、CADモデル上に出力する方法がある。
【0021】
設計者の見やすさの観点から、CADモデル上に、特定した形状及び位置をハイライトしても良い。また、設計者が外れ値の形状及び位置を修正しやすくするために、例えば、違反リストや設計ノウハウも併せて出力しても良い。なお、出力部109は、上記で示した出力方法をいくつかを組み合わせて出力したり、上記で示した出力方法をすべて組み合わせて出力しても良い。
【0022】
図2は、実施例1の動作を説明するフローチャート図である。
ステップS201では、入力部101がチェック対象のCADモデルの形状および位置を含む特徴量を入力する。
ステップS202では、判定ルール特定部103により定量化困難と選択された場合、特徴量特定部105が、チェックに用いるCADモデルの特徴量を特定する。なお、CADモデルの特徴量を特定する前に、判定ルール特定部103により、入力された特徴量に関する判定ルールの定量化が可能か不可能かを事前に判定しても良い。
【0023】
ステップS203では、頻度算出部107が、取得した共通関数を基に、CADモデルの形状及び位置の頻度分布を算出する。なお、頻度算出部107は、幾何認識関数モジュール記憶部106の幾何認識関数を参照し、CADモデルの形状及び位置の頻度分布を算出しても良い。
ステップS204では、頻度算出部107により算出した特徴量の頻度分布を用いて、外れ値抽出部108が特徴量の頻度分布から外れている値を検出する。
【0024】
ステップS205では、出力部109が、外れ値抽出部108により検出した外れている値の箇所を、CADモデル上に出力する。出力部109が外れている箇所を出力する際に、違反内容も同時に出力しても良い。ここで箇所とは、CADモデルの形状及び位置を含む部分である。
【0025】
図3は、実施例1の設計支援デバイス10をコンピュータ上に実装した際の設計支援装置30の構成図である。
設計支援装置30は、入力部101と、出力部109と、処理部31と、表示部32と、を備える。表示部32は、ユーザが設定する際の設定画面や頻度算出部が算出した頻度分布等をコンピュータの画面上に表示する。
入力部101及び出力部109は、ユーザに対してGUI(グラフィカルユーザインターフェース)による操作環境を提供する。
【0026】
処理部31は、主記憶部303と補助記憶装置304とを備える。また、処理部32は、入力部101により入力されるCADモデルや判定ルールを取り込む入力インターフェース(以下、入力I/F)301と、出力部109を制御する出力制御部302と、を備えても良い。入力I/F301と出力制御部302と制御部300と主記憶部303と補助記憶部304とがデータバス305を介して相互に接続しても良い。
【0027】
主記憶部303は、判定ルール特定部103と、特徴量特定部105と、頻度算出部107と、外れ値抽出部108と、を備える。
補助記憶部304は、設計ガイドライン記憶部102と、CADモデル記憶部104と、幾何認識関数モジュール記憶部106と、を備える。
【0028】
なお、処理部32のコンピュータとしてのハードウェアの一部または全部については、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)のいずれかを用いても良い。また、ハードウェアの一部または全部をネットワーク上のサーバに集中または分散してクラウド配置し、複数のユーザがネットワークを介して共同作業しても良い。
【0029】
図4は、実施例1の入力設定画面の一例を示した図である。表示部32には、判定ルール選択部103により選択された判定ルールが表示される。画面右側には、特徴量特定部106が特徴量を特定するために必要な情報を入力するための設定画面401を示している。
【0030】
実施例1では、チェック方法としては頻度チェックを選択し、頻度定義としては変数を選択し、変数としては曲げ・フィレットR(以下、曲げR)を選択する。この入力に対して、幾何認識関数モジュール記憶部107に格納されている共通関数の中から、曲げRの計算関数を抽出し、3DCADモデル上に存在する面の曲げRの値を算出しても良い。なお、実施例1では、3DCADモデルを用いているが、2DCADモデルにも適用可能である。
【0031】
図5は、実施例1の出力設定画面の一例を示した図である。設定画面401で選択した変数が曲げRであるため、出力変数選択画面501では、曲げRが選択可能である。次に、頻度分布出力選択画面502では、出力する頻度分布を選択することができる。頻度分布の例としては、例えば、ヒストグラム、散布図、自己組織化マップなどがある。実施例1では、ヒストグラムを用いて説明する。
【0032】
図6は、実施例1の頻度算出部107により算出された曲げRと曲げRの数量割合の関係をヒストグラム601により表した図である。実施例1の頻度算出部107は、各面に対する曲げRの長さと曲げRの数量割合を算出し、ヒストグラム601で表した。
【0033】
このヒストグラム601を用いて、外れ値抽出部108は、数量割合の閾値が0.1以下の曲げRの長さを違反部位として検出しても良い。閾値が0.1以下の曲げRの長さを違反部位として検出する場合、外れ値抽出部108は、曲げRが1.2となる外れ値602と、曲げRが1.0となる外れ値603と、を違反箇所として抽出する。閾値を設定することにより、違反箇所を自動で抽出することが可能である。また、閾値を設定せず、頻度算出部107により算出した曲げRと数量割合との関係をヒストグラム等の頻度分布をユーザに表示し、ユーザが外れ値を選択するという方法もある。
【0034】
図7は、実施例1における曲げRの値が1.2となる外れ値602におけるCADモデル上の形状及び位置を示した図である。特徴量特定部105により、各曲げRと各曲げRの位置を特定しているため、曲げRの値が1.2を示す違反箇所701を自動で特定することが可能である。また、違反箇所と併せて、チェック結果リスト702も出力しても良い。チェック結果リスト702は、例えば、チェック内容、計測値、修正の要否、コメント等がある。このチェック結果リスト702を出力することにより、ユーザが違反箇所についてより詳細に理解しやすくなる。
【0035】
図8は、実施例1における曲げRの値が1.0となる外れ値602におけるCADモデル上の形状及び位置を示した図である。
図8では、ユーザが、外れ値602が違反箇所801に該当しないと判断した場合について説明する。ユーザはチェック結果リスト702における修正要否欄の否にチェックを付ける。チェックを付けることで、次回以降のチェック対象から除外することが可能となる。また、修正要否を選択することにより、違反箇所でない箇所が違反箇所として出力された場合でも修正が可能である。
【0036】
〈実施例2〉
次に、実施例2では、変数が2変数の場合の頻度分布算出方法と違反箇所特定方法の一例について説明する。実施例2の違反箇所特定方法において、ユーザが一部介在する形でも良い。
【0037】
図9は、実施例2の出力設定画面の一例を示す図である。実施例2では、出力変数選択画面501で肉厚と曲げRの2変数を選択する。また、実施例2では、頻度分布出力選択画面502で散布図を選択する。散布図は、2変数の相関関係の傾向が分かり易いという特徴を有するため、2変数の頻度分布を示す図としては利点がある。2変数の頻度分布を示す図としては、散布図以外の図が使用されてもよい。
【0038】
図10は、実施例2の頻度算出部107により算出された肉厚と曲げRとの関係を散布図により表した図である。特徴量特定部105は、CADモデルの肉厚及び曲げRと、それらのCADモデル上の位置を特定する。幾何認識関数モジュール記憶部107の幾何認識関数モジュールの肉厚計算関数及び曲げR計算関数を用いて、頻度算出部107は、CADモデル上の肉厚及び曲げRを計算する。
【0039】
その結果、肉厚及び曲げRとの相関散布
図1001を得ることが可能である。この相関散布
図1001により、他の領域とは異なる厚肉部の特定が可能となる。これにより、肉厚と曲げRとの関係が一意に決まらない場合でも、肉厚と曲げRとの頻度分布を算出することにより、違反箇所をCAD上でチェック可能である。なお、閾値を設定し、外れ値抽出部108が、自動で外れ値1002を検出しても良い。
【0040】
図11は、実施例2における外れ値1002のCADモデル上の形状及び位置を示した図である。特徴量特定部105により、各肉厚と各曲げRの位置を特定しているため、散布
図1001における外れ値1002の違反箇所1101を特定することが可能である。
【0041】
このように、2変数における頻度分布を得ることにより、設計ミスへの気づきを得ることが可能である。また、曲げRと肉厚との関係が一意に決まらない場合でも、各形状及び位置の頻度分布を求めることにより、違反箇所をCAD上でチェック可能である。CAD上でチェック可能であるため、設計者が設計ミスの気づきを得ることが可能である。
【0042】
〈実施例3〉
実施例3では、変数が3変数以上の場合の頻度算出方法と違反箇所特定方法の一例について説明する。特に、実施例3では、位置決めピン及びロットマークに関し、作成漏れがないかをチェックする。
【0043】
ロットマークとは、部品の製造時期を明確にするためのマークのことである。樹脂成型における金型の管理や成型した樹脂部品の品質管理に用いられる。通常、同一製品において、製品を支持する位置や、ロットマークの付与位置はおおよそ決められている。そこで、従来の製造実績データをベースに、該当箇所に抜け漏れがないかをチェックする。
【0044】
図12は、実施例3における設計支援デバイス10の構成を示す図である。実施例1の設計支援デバイス10との差異は、過去の実績データから各変数における頻度分布におけるデータを頻度分布記憶部1201に記憶していることである。特徴量特定部105において、過去のデータを活用することにより、製造実績の反映が可能となる。さらに、頻度分布記憶部1201により、複数の変数間の複雑な頻度分布を事前に把握可能となる。
【0045】
図13は、実施例3の出力設定画面の一例を示す図である。頻度選択画面1301により、対象とする製品と、その製品の部位、頻度分布の表示方法を選択する。この選択により、頻度分布記憶部1201内に記憶した過去の実績データを参照に、頻度分布を作成可能である。また、頻度選択画面1301にて、予め頻度分布記憶部1201内に記憶されている変数からチェックに用いる変数を選択する。頻度分布出力選択画面1302にて、出力する頻度分布を選択することができる。
【0046】
図14は、頻度分布記憶部1201内の過去の実績データを参照に、頻度算出部107により算出されたCADモデルの形状及び位置を自己組織化マップにより表した図である。過去の製造実績CADモデル1401を参照し、頻度算出部107が、位置決めピン及びロットマークの2つのキー形状1402が、x、y、z座標における所定の位置に存在するかを自動で抽出する。
【0047】
実施例3では、頻度算出部107が位置決めピン及びロットマークの位置決めを計算する際に、幾何認識関数モジュール記憶部106に記憶している共通関数の中から、類似形状探索関数を用いた。類似形状探索関数とは、幾何的特徴量及び位置的特徴量から、キー形状に類似した形状を自動で探索する関数である。
【0048】
位置決めピンの存在領域1403及びロットマークの存在領域1404は3次元座標上にあるため、頻度分布記憶部1201に蓄積されている頻度相関性と照合する際、視覚的に差異を認識しにくい。そこで、頻度分布記憶部1201に格納されているキー形状と位置の頻度分布では、3次元座標を2次元に圧縮する自己組織化マップ(SOM)1407を適用した。この自己組織化マップ1407を用いるとで、多次元のデータを2次元に圧縮することが可能となり、多変数の相関性を視覚的に把握することが可能となる。実施例3では、自己組織化マップ1407を用いたが、これに限らない。他の方法として、例えば、ニューラルネットワークやオートエンコーダ等の機械学習を用いても良い。
【0049】
実施例3では、頻度算出部107が、位置決めピンのキー形状を探索した場合の値を1、ロットマークのキー形状を探索した場合の値を2とした。また、それら以外の領域の値を0とした。値ごとに色付けし、自己組織化マップ上に示す。自己組織化マップ上に色付けすることにより、どの部品がどこに存在するかを把握しやすくなる。
【0050】
図15は、頻度分布記憶部1201を用いた場合の外れ値抽出部108の結果を示した図である。チェック対象のCADモデルに対して、頻度分布記憶部1201に格納されているキー形状とキー形状の位置との頻度分布1407と、チェック対象のCADモデルに対して、自己組織化マップ上にマッピングしたキー形状とキー形状の位置との頻度分布1501と、を比較した。比較した際に、外れ値抽出部108は、頻度分布1407には存在するが、頻度分布1501には存在しない箇所1502を外れ値として選択した。
【0051】
つまり、外れ値抽出部108は、頻度分布1407における各位置の形状の存在の有無を閾値として設定し、頻度分布1501における各位置の形状の存在の有無で外れ値を抽出した。なお、設計者が、頻度分布1407と頻度分布1501とを比較し、外れ値を選択しても良い。
【0052】
図16は、外れ値抽出部108が外れ値となる箇所を特定している図である。ここでは、
図15で選択したキー形状の外れ値の箇所1601を出力する。また、チェック結果リスト1602には、キー形状の違反内容として、位置決めピンを意味するキー形状が無いことを示している。このように、形状作成漏れチェックへの適用も可能となる。
【0053】
最後に、本開示の設計支援方法について説明する。
本発明の一実施例は、入力部が、CADモデルの形状及び位置を含む特徴量を入力し、特徴量特定部が、前記入力部により入力された特徴量を用いて、CADモデル上の形状及び位置を特定し、頻度算出部が、前記特徴量特定部により特定された形状及び位置における頻度分布を算出し、出力部が、前記頻度算出部が算出した頻度分布を出力する。
【0054】
なお、本開示は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は、本開示を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0055】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【0056】
各実施例において、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10:設計支援デバイス
101:入力部
102:設計ガイドライン記憶部
103:判定ルール特定部
104:CADモデル記憶部
105:特徴量特定部
106:幾何認識関数モジュール記憶部
107:頻度算出部
108:外れ値抽出部
109:出力部