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▶ リンドラ,インコーポレイティドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】胃内滞留システムのための材料構造物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/34 20170101AFI20250108BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20250108BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20250108BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20250108BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 5/44 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 11/08 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/14
A61K47/44
A61K31/436
A61P37/06
A61P3/02
A61P3/02 101
A61P3/04
A61P5/44
A61P11/06
A61P11/08
A61P25/18
A61P25/04
A61P25/06
A61P25/08
A61P25/22
A61P25/24
A61P29/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P33/00
A61P33/06
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 112
A61P43/00 113
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022193244
(22)【出願日】2022-12-02
(62)【分割の表示】P 2018561622の分割
【原出願日】2017-05-26
(65)【公開番号】P2023022246
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】62/342,798
(32)【優先日】2016-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518137726
【氏名又は名称】リンドラ セラピューティクス, インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ベリンガー
(72)【発明者】
【氏名】ローズマリー カナスティー
(72)【発明者】
【氏名】タイラー グラント
(72)【発明者】
【氏名】ヌプラ ビース
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ディベネディクティス
(72)【発明者】
【氏名】チョン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ゼール
(72)【発明者】
【氏名】ジョン クリアー
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/191920(WO,A1)
【文献】特開平03-163011(JP,A)
【文献】特表2019-521968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00
A61K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の胃に投与するための胃内滞留システムであって、
エラストマー成分及び少なくとも3つの共押出された細長部材を備え、
少なくとも1つの細長部材は、担体ポリマー及び治療薬又はその塩を含む担体ポリマー-薬物成分を備え、前記担体ポリマー及び前記治療薬は前記エラストマー成分に結合し、
前記少なくとも3つの細長部材の各々は、近接端部、遠位端部、及びそれらの間の外面を備え;
各細長部材の前記近接端部は、前記エラストマー成分に結合し、前記エラストマー成分から放射状に突出しており、各細長部材は、前記エラストマー成分に結合していないその遠位端部を有し、前記近接端部より前記エラストマー成分からのラジアル距離が大きい位置にあり;
各細長部材は、3つ以上のセグメントを独立して含み、
前記3つ以上のセグメントの第1のセグメント及び前記3つ以上のセグメントの第2のセグメントは、第1のリンカーによって連結され、前記3つ以上のセグメントの第2のセグメント及び前記3つ以上のセグメントの第3のセグメントは、第2のリンカーによって連結され、ここで前記第1のリンカー及び前記第2のリンカーのうち、一方は時間依存リンカーであり、もう一方は腸溶性リンカーであり、
ここで時間依存リンカーは、低分子量のポリカプロラクトン、プラストイドB、トリアセチン、オイドラギットEPO、及びクエン酸トリエチルからなる群から選択される1つ以上の材料を含み、
ここで前記エラストマー成分、前記第1のセグメント、前記第1のリンカー、前記第2のセグメント、前記第2のリンカー、及び前記第3のセグメントが、この順序で連結される、胃内滞留システム。
【請求項2】
前記時間依存リンカーが、空腹時模擬胃液中で7日後に弱まるか又は脱共役される(decoupled)、請求項1に記載の胃内滞留システム。
【請求項3】
前記時間依存リンカーが、カルナウバロウ、パラフィンワックス、及びコリフォールRH40から選択される1つ以上の減弱剤を含み、前記減弱剤が、カルナウバロウ、パラフィンワックス、及びコリフォールRH40から選択される1つ以上である、請求項1又は2に記載の胃内滞留システム。
【請求項4】
前記時間依存リンカーが、プラストイドB及びトリアセチンを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の胃内滞留システム。
【請求項5】
前記担体ポリマーが、ポリエチレン酢酸ビニル(PEVA)、ポロキサマー407、プルロニック(登録商標)P407、ヒプロメロース、コリフォールRH40、ポリビニルカプロラクタム、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ソルプラス(ポリビニルカプロラクタム、ポリ酢酸ビニル、及びポリエチレングリコールの共重合体)、コポビドン、オイドラギット(E、EPO、RS、RL)、メタクリル酸メチル、カルナウバロウ、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンステアレート類、ポリビニルアセテートフタレート、アルギン酸塩、ポリデキストロース、ポリジオキサノン、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、親水性セルロース誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、カルボキシビニル重合体(カルボマー)、カーボポール(登録商標)酸性カルボキシポリマー、ポリカルボフィル、ポリ酸化エチレン(ポリオックスWSR)、多糖類及びその誘導体、ポリ酸化アルキレン類、キトサン、アルギン酸塩、ペクチン類、アカシア、トラガント、グアーガム、ローカストビーンガム、ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、デキストラン類、天然ゴム、寒天、アガロース、アルギン酸ナトリウム、カラゲナン、フコイダン、ファーセレラン、ラミナラン、イバラノリ、キリンサイ、アラビアゴム、ガムガッチ、カラヤゴム、アラビノガラクタン、アミロペクチン、ゼラチン、ジェラン、ヒアルロン酸、プルラン、スクレログルカン、キサンタン、キシログルカン、無水マレイン酸共重合体、エチレン無水マレイン酸共重合体、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル、アンモニオメタクリレート共重合体、オイドラギットRL、オイドラギットRS、ポリアクリル酸エチルメタクリル酸(オイドラギットNE)、オイドラギットE(メタクリル酸(ジメチルアミノ)エチル及び中性メタクリル酸エステルベースのカチオン性共重合体)、ポリアクリル酸、ポリメタクリレート/ポリエタクリレート類、ポリメタクリル酸、メタクリル酸メチル、及びアクリル酸エチル、ポリラクトン、ポリカプロラクトン、ポリ酸無水物類、ポリ[ビス(p-カルボキシフェノキシ)]プロパン無水物、ポリ無水テレフタル酸、ポリペプチド類、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリオルトエステル、DETOSUとジオール類の共重合体;DETOSUとヘキサンジオール、デカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、又はポリエチレングリコールとの共重合体;デンプン、アルファ化デンプン、デンプン系ポリマー類、カルボマー類、マルトデキストリン類、アミロマルトデキストリン類、デキストラン類、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリヒドロキシアルカン酸類、ポリヒドロキシ酪酸、ならびにこれらの共重合体、混合物、配合物及び組合せからなる群から選択される重合体を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の胃内滞留システム。
【請求項6】
前記担体ポリマーが、ポリエチレン酢酸ビニル(PEVA)を含む、請求項1~5いずれか1項に記載の胃内滞留システム。
【請求項7】
前記時間依存リンカー及び/又は前記腸溶性リンカーが、崩壊性マトリックスを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の胃内滞留システム。
【請求項8】
各細長部材が、リンカー領域により前記エラストマー成分と結合している、請求項1~のいずれか1項に記載の胃内滞留システム。
【請求項9】
記リンカー領域、崩壊性マトリックスを含む、請求項に記載の胃内滞留システム。
【請求項10】
患者の胃に投与するための胃内滞留システムであって、エラストマー成分及び少なくとも3つの共押出された細長部材を含み、少なくとも1つの細長部材は、担体ポリマー及び治療薬又はその塩を含む担体ポリマー-薬物成分を備え、前記担体ポリマー及び前記治療薬は前記エラストマー成分に結合し、
前記少なくとも3つの細長部材の各々は、近接端部、遠位端部、及びそれらの間の外面を備える細長部材であり;
各細長部材の前記近接端部は、前記エラストマー成分に結合し、前記エラストマー成分から放射状に突出しており、各細長部材は、前記エラストマー成分に結合していないその遠位端部を有し、前記近接端部より前記エラストマー成分からのラジアル距離が大きい位置にあり;
各細長部材は、3つ以上のセグメントを独立して含み、
前記3つ以上のセグメントの第1のセグメント及び前記3つ以上のセグメントの第2のセグメントは、第1のリンカーによって連結され、前記3つ以上のセグメントの第2のセグメント及び前記3つ以上のセグメントの第3のセグメントは、第2のリンカーによって連結され、ここで前記第1のリンカー及び前記第2のリンカーのうち、一方は時間依存リンカーであり、もう一方は腸溶性リンカーであり、
ここで時間依存リンカーは、低分子量のポリカプロラクトン、プラストイドB、トリアセチン、オイドラギットEPO、及びクエン酸トリエチルからなる群から選択される1つ以上の材料を含み、
ここで前記エラストマー成分、前記第1のセグメント、前記第1のリンカー、前記第2のセグメント、前記第2のリンカー、及び前記第3のセグメントが、この順序で連結され、
前記治療薬又はその塩が、疎水性薬物を含む、胃内滞留システム。
【請求項11】
前記担体ポリマーが、ポリエチレン酢酸ビニル(PEVA)、ポロキサマー407、プルロニック(登録商標)P407、ヒプロメロース、コリフォールRH40、ポリビニルカプロラクタム、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ソルプラス(ポリビニルカプロラクタム、ポリ酢酸ビニル、及びポリエチレングリコールの共重合体)、コポビドン、オイドラギット(E、EPO、RS、RL)、メタクリル酸メチル、カルナウバロウ、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンステアレート類、ポリビニルアセテートフタレート、アルギン酸塩、ポリデキストロース、ポリジオキサノン、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、親水性セルロース誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、カルボキシビニル重合体(カルボマー)、カーボポール(登録商標)酸性カルボキシポリマー、ポリカルボフィル、ポリ酸化エチレン(ポリオックスWSR)、多糖類及びその誘導体、ポリ酸化アルキレン類、キトサン、アルギン酸塩、ペクチン類、アカシア、トラガント、グアーガム、ローカストビーンガム、ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、デキストラン類、天然ゴム、寒天、アガロース、アルギン酸ナトリウム、カラゲナン、フコイダン、ファーセレラン、ラミナラン、イバラノリ、キリンサイ、アラビアゴム、ガムガッチ、カラヤゴム、アラビノガラクタン、アミロペクチン、ゼラチン、ジェラン、ヒアルロン酸、プルラン、スクレログルカン、キサンタン、キシログルカン、無水マレイン酸共重合体、エチレン無水マレイン酸共重合体、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル、アンモニオメタクリレート共重合体、オイドラギットRL、オイドラギットRS、ポリアクリル酸エチルメタクリル酸(オイドラギットNE)、オイドラギットE(メタクリル酸(ジメチルアミノ)エチル及び中性メタクリル酸エステルベースのカチオン性共重合体)、ポリアクリル酸、ポリメタクリレート/ポリエタクリレート類、ポリメタクリル酸、メタクリル酸メチル、及びアクリル酸エチル、ポリラクトン、ポリカプロラクトン、ポリ酸無水物類、ポリ[ビス(p-カルボキシフェノキシ)]プロパン無水物、ポリ無水テレフタル酸、ポリペプチド類、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリオルトエステル、DETOSUとジオール類の共重合体;DETOSUとヘキサンジオール、デカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、又はポリエチレングリコールとの共重合体;デンプン、アルファ化デンプン、デンプン系ポリマー類、カルボマー類、マルトデキストリン類、アミロマルトデキストリン類、デキストラン類、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリヒドロキシアルカン酸類、ポリヒドロキシ酪酸類、ならびにこれらの共重合体、混合物、配合物及び組合せからなる群から選択される重合体を含む、請求項10に記載の胃内滞留システム。
【請求項12】
前記担体ポリマーが、ポリエチレン酢酸ビニル(PEVA)を含む、請求項10に記載の胃内滞留システム。
【請求項13】
前記疎水性薬物が、水に100μg/ml未満の溶解性を有する、請求項1012のいずれか1項に記載の胃内滞留システム。
【請求項14】
前記疎水性薬物が、タクロリムスである、請求項1013のいずれか1項に記載の胃内滞留システム。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項で定義された担体ポリマー-薬物成分を備えた少なくとも1つの細長部材の製造方法であって、
前記細長部材を共押出することを含み、前記共押出することが、担体ポリマー-治療剤又は担体ポリマー-治療剤の塩の配合物、及び強化材を共押出することを含む、製造方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の胃内滞留システムでの使用のための細長部材の製造方法であって、前記細長部材を共押出することを含む、製造方法。
【請求項17】
前記細長部材を共押出することが、担体ポリマー-治療剤又は担体ポリマー-治療剤の塩の配合物、及び強化材を共押出することを含む、請求項16に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年5月27日に出願された米国特許仮出願第62/342,798号の優先権を主張する。この出願の全内容は参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、医薬品の徐放のために長時間胃内に残留するシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
胃内滞留システムは、数日から数週間、又はさらに長期間にわたって胃内に残留し、この間に薬物又は他の薬物が胃腸管内における吸収のために該システムから溶出することができる治療薬のための送達システムである。かかるシステムの例は、国際公開第2015/191920号パンフレット及び国際公開第2015/191925号パンフレットに記載されている。
【0004】
胃内滞留システムを、通常、飲み込むカプセルで、患者の胃内に投与、又は投与の代替方法(例えば、栄養管又は胃管)により胃内に導入するように設計する。胃内のカプセルが溶解すると、システムは胃内に滞留し、所望の滞留期間(3日間、7日間、2週間、その他など)にわたって幽門括約筋による排泄に抵抗する大きさに拡張又は広がる。これは、所望の滞留期間にわたって機械的安定を必要とする。滞留期間にわたって、システムは、1つ以上の薬剤、好ましくは最小限のバースト放出を含む薬剤などの薬物(単数)又は薬物(複数)を放出し、これは、所望の放出プロファイルを提供するために薬物のための担体物質の慎重な選択を必要とする。胃内に滞留しながら、システムは食物又は他の胃内容物の正常な排泄を妨げるべきでない。システムは、所望の滞留時間の最後に胃から排出され、患者から容易に排除されるべきである。システムが胃から小腸に時期を早めて通過する場合、腸閉塞を引き起こすべきでなく、患者から容易に排除されるべきである。これらの特性は、システムが構築される物質、ならびにシステムの寸法及び配置の注意深い選択を必要とする。
【0005】
本発明は、システムにおいて使用される物質の精巧な仕立てを可能とする胃内滞留システムの設計と製造、及びシステム構造の進歩について記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、正確に目的に合わせた物質構造を有する胃内滞留システムを提供する。胃内滞留システムを、薬物又は薬剤の徐放のために、患者の胃に投与することができる。システムで使用される物質のカスタマイズした構造は、胃内における薬剤又は薬物放出、システム安定性、システム安全性、及び胃腸管内の滞留時間を含むシステム性能の優れた制御を可能とする。かかる胃内滞留システムの製造方法及び使用方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの実施形態では、本発明は、エラストマー成分、ならびに該エラストマー成分に結合した担体ポリマー及び治療薬又はその塩を含む複数の少なくとも3つの担体ポリマー-薬物成分を含む、患者の胃に投与するための胃内滞留システムであって、複数の担体ポリマー-薬物成分の各々は近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備える細長部材であり;各細長部材の該近接端部は該エラストマー成分と結合し、該エラストマー成分から放射状に突出し、各細長部材は該エラストマー成分と結合していないその遠位端部を有し、かつ、該近接端部より該エラストマー成分から大きいラジアル距離に位置し;各細長部材は少なくとも2つのセグメントからなり、各セグメントは近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備え:該セグメントは外面を有するリンカー領域により連結しており;少なくとも1つのリンカー領域は第一リンカー物質及び第二リンカー物質を含み、i)第二リンカー物質は、少なくとも1つのリンカー領域の外面から少なくとも1つのリンカー領域の本体中に延びているか;又はii)第二リンカー物質は、少なくとも1つのリンカー領域の外面から少なくとも1つのリンカー領域の本体を通過して延びて、外面上に再出現するか;又はiii)第二リンカー物質の部分は、少なくとも1つのリンカー領域の外面から少なくとも1つのリンカー領域の本体中に延びており、かつ、第二リンカー物質の部分は、少なくとも1つのリンカー領域の外面から少なくとも1つのリンカー領域の本体を通過して延びて、外面上に再出現する、胃内滞留システムを包含する。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明は、エラストマー成分、ならびに該エラストマー成分に結合した担体ポリマー及び治療薬又はその塩を含む複数の少なくとも3つの担体ポリマー-薬物成分を含む、患者の胃に投与するための胃内滞留システムであって、複数の担体ポリマー-薬物成分の各々は近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備える細長部材であり;各細長部材の該近接端部は該エラストマー成分と結合し、該エラストマー成分から放射状に突出し、各細長部材は該エラストマー成分と結合していないその遠位端部を有し、かつ、該近接端部より該エラストマー成分から大きいラジアル距離に位置し;各細長部材は少なくとも2つのセグメントからなり、各セグメントは近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備え:該セグメントはリンカー領域により連結しており;少なくとも1つのセグメントはセグメント島物質をさらに含み、i)セグメント島物質は、少なくとも1つの担体ポリマー-薬物セグメントの外面から少なくとも1つの担体ポリマー-薬物セグメントの本体中に延びているか;又はii)セグメント島物質は、少なくとも1つの担体ポリマー-薬物セグメントの外面から少なくとも1つの担体ポリマー-薬物セグメントの本体を通過して延びて、外面上に再出現するか;又はiii)セグメント島物質の部分は、少なくとも1つの担体ポリマー-薬物セグメントの外面から少なくとも1つの担体ポリマー-薬物セグメントの本体中に延びており、かつ、セグメント島物質の部分は、少なくとも1つの担体ポリマー-薬物セグメントの外面から少なくとも1つの担体ポリマー-薬物セグメントの本体を通過して延びて、外面上に再出現する、胃内滞留システムを包含する。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明は、エラストマー成分、ならびに該エラストマー成分と結合した担体ポリマー及び治療薬もしくはその塩を含む複数の少なくとも3つの担体ポリマー-薬物成分を含む患者の胃に投与するための胃内滞留システムであって、複数の担体ポリマー-薬物成分の各々は近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備える細長部材であり;各細長部材の該近接端部は該エラストマー成分と結合し、該エラストマー成分から放射状に突出し、各細長部材は該エラストマー成分と結合しておらず、該近接端部より該エラストマー成分から大きいラジアル距離に位置し;各細長部材は少なくとも2つのセグメントからなり、各セグメントは近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備え:少なくとも1つのセグメントは強化材をさらに含み、該強化材は該少なくとも1つのセグメントの内部に沿って軸方向に延び;該セグメントはリンカー領域により連結している、胃内滞留システムを包含する。いくつかの実施形態では、強化材は、セグメントの長さの少なくとも約90%、少なくとも1つの内部に沿って軸方向に延びる。いくつかの実施形態では、強化材は、円柱状、三角柱、直方柱、又は正四角柱構造を有する。いくつかの実施形態では、強化材は、パイ状構造(一辺を円の弧により置き換えた三角形の構造)を有する。いくつかの実施形態では、強化材は、I形構造又はH形構造を有する。いくつかの実施形態では、強化材はトラス構造を有する。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明は、エラストマー成分、ならびに該エラストマー成分と結合した担体ポリマー及び治療薬もしくはその塩を含む複数の少なくとも3つの担体ポリマー-薬物成分を含む患者の胃に投与するための胃内滞留システムであって、複数の担体ポリマー-薬物成分の各々は近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備える細長部材であり;各細長部材の該近接端部は該エラストマー成分と結合し、該エラストマー成分から放射状に突出し、各細長部材は該エラストマー成分と結合しておらず、該近接端部より該エラストマー成分から大きいラジアル距離に位置し;各細長部材は少なくとも2つのセグメントからなり、各セグメントは近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備え:前記細長部材の1つ以上は、前記外面上に有窓のコーティングを備え;及びセグメントはリンカー領域により連結している、胃内滞留システムを包含する。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明は、エラストマー成分、ならびに該エラストマー成分と結合した担体ポリマー及び治療薬もしくはその塩を含む複数の少なくとも3つの担体ポリマー-薬物成分を含む患者の胃に投与するための胃内滞留システムであって、複数の担体ポリマー-薬物成分の各々は近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備える細長部材であり;各細長部材の該近接端部は該エラストマー成分と結合し、該エラストマー成分から放射状に突出し、各細長部材は該エラストマー成分と結合しておらず、該近接端部より該エラストマー成分から大きいラジアル距離に位置し;各細長部材は少なくとも2つのセグメントからなり、各セグメントは近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備え:セグメントは、外面を有するリンカー領域により連結しており;細長部材のセグメントは、少なくとも2つの層を含む層状構造を有する、胃内滞留システムを包含する。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明は、エラストマー成分、ならびに該エラストマー成分と結合した担体ポリマー及び治療薬もしくはその塩を含む複数の少なくとも3つの担体ポリマー-薬物成分を含む患者の胃に投与するための胃内滞留システムであって、複数の担体ポリマー-薬物成分の各々は近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備える細長部材であり;各細長部材の該近接端部は該エラストマー成分と結合し、該エラストマー成分から放射状に突出し、各細長部材は該エラストマー成分と結合しておらず、該近接端部より該エラストマー成分から大きいラジアル距離に位置し;各細長部材は少なくとも2つのセグメントからなり、各セグメントは近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備え:セグメントは、外面を有するリンカー領域により連結しており;リンカー領域の部分がセグメント中に延びているか、又はセグメントの部分がリンカー領域中に延びているか、又はリンカー領域の部分両方がセグメント中に延び、かつ、セグメントの部分がリンカー領域中に延びている、胃内滞留システムを包含する。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明は、細長部材の共押出を含む胃内滞留システムの使用のための細長部材の製造方法を包含する。細長部材の共押出は、担体ポリマー-薬物配合物の各領域をリンカー領域により担体ポリマー-薬物配合物の隣接する領域から分離する、担体ポリマー-薬物配合物を含む少なくとも2つの領域の共押出を含むことができる。リンカー領域が、腸溶性リンカー及び時間依存リンカーからなる群から選択される物質を含むことができる。いくつかの実施形態では、担体ポリマー-薬物領域及びリンカー領域の間の少なくとも1つの接合部を、インターロック構造で共押出する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの担体ポリマー-薬物領域を、海島構造で共押出する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのリンカー領域を、海島構造で共押出する。いくつかの実施形態では、海島構造の島成分が、腸溶性ポリマー及び時間依存ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、本発明は、付加的製造(例えば、三次元印刷)により細長部材を印刷することを含む、胃内滞留システムの使用のための細長部材の製造方法を包含する。三次元印刷による細長部材の印刷は、担体ポリマー-薬物配合物の各領域をリンカー領域により担体ポリマー-薬物配合物の隣接する領域から分離する、担体ポリマー-薬物配合物を含む少なくとも2つの領域の印刷を含むことができる。リンカー領域が、腸溶性リンカー及び時間依存リンカーからなる群から選択される物質を含むことができる。いくつかの実施形態では、担体ポリマー-薬物領域及びリンカー領域の間の少なくとも1つの接合部を、インターロック構造で印刷することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの担体ポリマー-薬物領域を、海島構造で印刷することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのリンカー領域を、海島構造で印刷することができる。海島構造の島成分が、腸溶性ポリマー及び時間依存ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含むことができる。
【0015】
本明細書で開示された共押出方法又は三次元印刷方法のいずれかにおいて、担体ポリマー-薬物配合物の担体ポリマーを、ポリカプロラクトン及びポリジオキサノンからなる群から選択することができる。
【0016】
本明細書に開示された共押出又は三次元印刷方法のいずれかにおいて、担体ポリマー-薬物配合物の薬物を、鎮痛薬;抗鎮痛薬;抗炎症薬;解熱薬;抗うつ薬;抗てんかん薬;統合失調症治療薬;神経保護薬;抗増殖剤;抗がん剤;抗ヒスタミン薬;抗片頭痛薬;ホルモン;プロスタグランジン;抗菌薬;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗寄生虫薬;抗ムスカリン薬;抗不安薬;静菌剤;免疫抑制薬;鎮静薬;睡眠薬;抗精神病薬;気管支拡張薬;抗ぜんそく薬;心血管治療薬;麻酔薬;抗凝固薬;酵素阻害薬;ステロイド系薬物;ステロイド系又は非ステロイド系抗炎症薬;副腎皮質ステロイド薬;ドーパミン作動薬;電解質;胃腸薬;筋弛緩薬;栄養剤;ビタミン類;副交感神経刺激薬;刺激物質;食欲低下薬;過眠症治療薬(anti-narcoleptics);抗マラリア薬;キニーネ;ルメファントリン;クロロキン;アモジアキン;ピリメタミン;プログアニル;クロルプログアニル-ダプソン;スルホンアミド;スルファドキシン;スルファメトキシピリダジン;メフロキン;アトバコン;プリマキン;ハロファントリン;ドキシサイクリン;クリンダマイシン;アルテミシニン;アルテミシニン誘導体;アルテメテル;ジヒドロアルテミシニン;アルテエーテル;及びアーテスネートからなる群から選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】そのぎっしり詰められていない状態における胃内滞留システムの星形デザインを示す。
図1B】圧縮又は折り畳み状態における胃内滞留システムの星形デザインを示す。
図1C】ぎっしり詰められていない状態における胃内滞留システムの環状デザインを示す。
図2A】三角柱の形状におけるアーム又はアームセグメントの三角形断面の寸法を示す。
図2B】担体ポリマー-薬物領域A及びリンカー(結合ポリマー)領域Bを有するアーム(細長部材)の構造を示す。
図2C】三角柱の形状における三角形断面を有するアーム(細長部材)の構造を示す(左図)。アームの軸長に沿った長軸方向断面を右図に示す。担体ポリマー-薬物領域(すなわち、薬物担持ポリマー領域)を印のない長方形で示し、時間依存リンカー領域を水平縞模様の長方形で示し、腸溶性リンカー領域を斜交平行模様の長方形で示している。
図2D】三角柱の形状における三角形断面を有するアーム(細長部材)の別の構造を示す(左図)。アームの軸長に沿った長軸方向断面を右図に示す。担体ポリマー-薬物領域(すなわち、薬物担持ポリマー領域)を印のない長方形で示し、時間依存リンカー領域を水平縞模様の四角形で示し、2つの別々の腸溶性リンカー領域を斜交平行模様の長方形で示している。
図2E】三角柱の形状における三角形断面を有するアーム(細長部材)の別の構造を示す(左図)。アームの軸長に沿った長軸方向断面を右図に示す。担体ポリマー-薬物領域(すなわち、薬物担持ポリマー領域)を印のない長方形で示し、時間依存リンカー領域を水平縞模様の長方形で示し、3つの別々の腸溶性リンカー領域を斜交平行模様の長方形で示している。
図3A】リンカー領域における物質の「海島」配置を有する細長部材の構造を示す。
図3B】リンカー領域における物質の「海島」配置を有する細長部材の構造を示す。
図3C図3Aのリンカー領域における物質の「海島」配置の拡大図を示す。
図3D】リンカー領域の「海」が担体ポリマー-薬物配合物を含むリンカー領域における物質の「海島」配置を有する、細長部材の構造を示す。
図3E】リンカー領域の「海」が担体ポリマー-薬物配合物を含み、かつ、「島」が様々な径を有する、リンカー領域における物質の「海島」配置を有する細長部材の構造を示す。
図4A】リンカー領域における物質の「海島」配置、及びリンカー領域と担体ポリマー-薬物領域の間に「鍵-鍵穴」デザインを有するアームセグメントの構造を示す。
図4B】リンカー領域における物質の「海島」配置、及びリンカー領域と担体ポリマー-薬物領域の間に「鍵-鍵穴」デザインを有するアームセグメントの別の構造を示す。
図4C】リンカー領域と担体ポリマー-薬物(薬物担持ポリマー)領域の間に「鍵-鍵穴」デザインを有するアームセグメントの別の構造を示す。鍵-鍵穴リンカーの1つは時間依存リンカーであるが、他の鍵-鍵穴リンカーは腸溶性リンカーである。
図4D】リンカー領域と担体ポリマー-薬物(薬物担持ポリマー)領域の間に「鍵-鍵穴」デザインを有するアームセグメントの別の構造を示す。鍵-鍵穴リンカーの1つは時間依存リンカーであるが、他の鍵-鍵穴リンカーは腸溶性リンカーである。
図5A】リンカー領域における物質の「海島」配置、及び担体ポリマー-薬物領域における物質の「海島」配置を有するセグメントの構造を示す。
図5B】時間依存リンカー及び腸溶性リンカーにより結合された構造ポリマーの「海」中の担体ポリマー-薬物物質の「島」の「海島」配置を有する細長部材の構造を示す。
図6A】胃内滞留システムの使用のための分岐部のセグメントの多層状の実施形態を示す。
図6B】時間依存リンカー及び腸溶性リンカーにより結合された多層状担体ポリマー-薬物セグメントを有する細長部材の多層状の実施形態を示す。
図7A】I形タイプ内部強化材を有するセグメントの実施形態を示す。
図7B】I形タイプ内部強化材を有する細長部材の実施形態を示す。
図8A】トラスタイプ内部強化材を有するセグメントの実施形態を示す。
図8B】トラスタイプ内部強化材を有する細長部材の実施形態を示す。
図9A】有窓(穿孔)外部支持体を有するセグメントの実施形態を示す。
図9B】有窓(穿孔)外部支持体を有する細長部材の実施形態を示す。
図9C】有窓(穿孔)外部支持体を有する細長部材の実施形態を示す。
図10A】アーム断面が三角形である、6つの細長アームを有する胃内滞留システムの実施形態の細長アームの配置を示す。
図10B】アーム断面が楔形である、6つの細長アームを有する胃内滞留システムの実施形態の細長アームの配置を示す。
図10C】先端が丸い細長アームを有するぎっしり詰められた状態における胃内滞留システムを示す。
図11A】外部強化薬物アームのための好適な構造(脊椎)の模式図を示す。
図11B】外部強化薬物アームのための好適な構造(外骨格)の模式図を示す。
図11C図11Bに例示した構造の写真を示す。
図11D】薬物アームの機械強度に対する外部強化材の結果を示す。
図12A】本発明の共押出方法の模式図を示す。
図12B】本発明の別の共押出方法の模式図を示す。
図12C図12Aに例示した本発明の共押出方法により製造された細長部材を示す。
図12D図12Bに例示した本発明の共押出方法により製造された細長部材を示す。
図13】共押出されたアームの引張試験結果を示す。
図14】様々な製剤についてタクロリムスの時間に対する放出プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
「担体ポリマー」は、本発明の使用のための薬物などの薬剤を配合するのに適したポリマーである。
【0019】
「薬剤」は、患者、個体、又は対象の治療、診断、又は栄養目的を意図した物質である。薬剤は、薬物、栄養、ビタミン類、及びミネラル類が挙げられるが、これに限定されない。
【0020】
「分散剤」は、担体ポリマーマトリックス中の薬剤粒子径の最小化及び薬剤粒子の分散に役立つ物質と定義される。すなわち、分散剤は、システムの製造中の粒子のアグリゲーション又はフロキュレーションを最小化又は防止する助けとなる。したがって、分散剤は、アグリゲーション防止作用及びフロキュレーション防止作用を有し、担体ポリマーマトリックス中の薬剤粒子の均一な分布を維持する助けとなる。
【0021】
「賦形剤」は、それ自体薬剤でない薬剤の処方物に添加される物質である。賦形剤としては、結合剤、コーティング、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、香料、流動促進剤、潤滑剤、及び防腐剤が挙げられるが、これに限定されない。分散剤の特定の分類は、賦形剤のより一般的分類内に入る。
【0022】
「弾性ポリマー」又は「エラストマー」(「高張力ポリマー」とも呼ぶ)は、印加された力によりある時間元の形状から歪み、それから、力が取り除かれるとすぐにその元形状に実質的に戻ることができるポリマーである。
【0023】
「結合ポリマー」は、第一担体ポリマー-薬物成分を第二担体ポリマー-薬物成分に結合するなど、他のポリマーに結合するのに適したポリマーである。結合ポリマーは、通常、他の成分間のリンカー領域を形成する。
【0024】
「時間依存ポリマー」又は「時間依存結合ポリマー」は、胃内滞留システムを胃内に配置する場合、時間に依存して分解するポリマーである。時間依存ポリマーは、通常、胃内の正常なpH変動に影響を受けない。
【0025】
「実質的に一定な血漿濃度」は、胃内滞留システムが胃内に滞留する期間にわたって測定された平均血漿濃度±25%以内を維持する血漿濃度を表す。
【0026】
「親水性治療薬」、「親水性薬剤」又は「親水性薬物」は、水に容易に溶解する薬剤である。親水性薬剤は、1mg/ml以上の水溶解性を有する薬剤と定義される。あるいは、親水性薬剤は、0.5未満の1-オクタノール/水系におけるlogPoct(log分配係数Poct、0.5Poct=(1-オクタノール中の濃度)/(HO中の濃度))を有する薬剤と定義することができる。胃内環境に近づけて、溶解度又はlogPoctが測定されるpHは1.6である。
【0027】
「疎水性治療薬」、「疎水性薬剤」、又は「疎水性薬物」は、水に容易に溶解しない薬剤である。疎水性薬剤は、1mg/ml未満の水溶解性を有する薬剤と定義される。あるいは、疎水性薬剤は、1より大きい1-オクタノール/水系におけるlogPoct(log分配係数)を有する薬剤と定義することができる。あるいは、疎水性治療薬は、水よりエタノールに高い溶解度を有する薬剤と定義することができる。あるいは、疎水性治療薬は、100%擬似胃液より、40%エタノール/60%擬似胃液に高い溶解度を有する薬剤と定義することができる。
【0028】
物質又はシステムを説明するために使用される場合、「生体適合性」は、ヒトなどの生物と接触する場合、該物質又はシステムが有害反応を誘発しないか、又は極小な容認できる有害反応しか引き起こさないことを示す。胃内滞留システムとの関連で、生体適合性は、胃腸管の環境において評価される。
【0029】
「患者」、「個体」、又は「対象」は、哺乳類、好ましくはヒト又はイヌもしくはネコなどの家畜を表す。好ましい実施形態では、患者、個体、又は対象はヒトである。
【0030】
本明細書で使用されるとき、粒子の「径」は、粒子の最長寸法を表す。
【0031】
本明細書に開示されたシステム及び方法による疾病もしくは障害の「治療」は、疾病もしくは障害、もしくは疾病もしくは障害の1つ以上の症状のいずれかを減らすもしくは取り除く,又は疾病もしくは障害の進行もしくは疾病もしくは障害の1つ以上の症状の進行を遅らせる、又は疾病もしくは障害の重症度もしくは疾病もしくは障害の1つ以上の症状の重症度を減らすために、追加の薬剤があってもなくても、それを必要とする患者に、本明細書で開示された1つ以上のシステムを投与することと定義される。本明細書に開示されたシステム及び方法による疾病もしくは障害の「抑制」は、疾病もしくは障害の臨床症状を阻止、又は疾病もしくは障害の有害徴候の症状を阻止するために、追加の薬剤があってもなくても、それを必要とする患者に、本明細書で開示された1つ以上のシステムを投与することと定義される。治療と抑制の区別は、疾病もしくは障害の有害徴候が患者に現れた後に治療を行うが、疾病もしくは障害の有害徴候が患者に現れる前に抑制を行うことである。抑制は部分的であってもよく、実質的に全てであってもよく、全てであってもよい。いくつかの疾病又は障害は遺伝性であるので、該疾病又は障害の危険のある患者を特定するために遺伝子スクリーニングを使用することができる。それから、本発明のシステム及び方法を使用して、有害徴候の発現を抑制するために、疾病又は障害の臨床症状の発症の危険性のある無症状の患者を治療することができる。
【0032】
本明細書に開示されたシステムの「治療用途」は、上記定義の通り、疾病又は障害を治療するために本明細書に開示された1つ以上のシステムを使用することと定義される。薬物などの治療薬の「治療有効量」は、患者に投与される場合、疾病もしくは障害、もしくは疾病もしくは障害の1つ以上の症状のいずれかを減らすもしくは取り除く,又は疾病もしくは障害の進行もしくは疾病もしくは障害の1つ以上の症状の進行を遅らせる、又は疾病もしくは障害の重症度もしくは疾病もしくは障害の1つ以上の症状の重症度を減らすのに充分である薬剤の量である。治療有効量を、単回用量で患者に投与してもよく、分割して反復用量で投与してもよい。
【0033】
本明細書に開示されたシステムの「予防用途」は、上記定義の通り、疾病又は障害を抑制するために本明細書に開示された1つ以上のシステムを使用することと定義される。治療薬の「予防有効量」は、患者に投与される場合、疾病もしくは障害の臨床症状を抑制、又は疾病もしくは障害の有害徴候の症状を抑制するのに充分である薬剤の量である。予防有効量を、単回用量で患者に投与してもよく、分割して反復用量で投与してもよい。
【0034】
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別段の指示がない限り、又は文脈上明らかに他の意味を示していると判断されない限り、複数を含む。
【0035】
本明細書において「約(about)」という語又は「約(approximately)」という語を用いて数値を表す場合、指定した値、ならびに指定した値に合理的に近い値の両方が含まれると理解される。例えば、「約(about)50℃」又は「約(approximately)50℃」は、50℃それ自体、ならびに50℃に近い値の開示の両方を含む。したがって、言い回し、「約(about)X」又は「約(approximately)X」は、値Xそれ自体の記載を含む。「約(approximately)50℃~60℃」又は「約(approximately)50℃~60℃」などの範囲が指定される場合、両端により指定された値の両方が含まれ、各端又は両端に近い値が各端又は両端に対して含まれると理解される;すなわち、「約(approximately)50℃~60℃」(又は「約(approximately)50℃~60℃」)は、「50℃~60℃」及び「約(approximately)50℃~約(approximately)60℃(又は「約(approximately)50℃~60℃」)の両方を記載することと均等である。
【0036】
本明細書に開示された数値範囲に関して、成分のいずれの開示された上限も、範囲を提供するその成分の開示されたいずれもの下限と組み合わせてもよい(但し、上限は組み合わせられる下限よりも大きい)。開示された上限及び下限のこれらの組合せのそれぞれは、本明細書中に明示的に考えられる。例えば、特定の成分の量の範囲が10%~30%、10%~12%、及び15%~20%と与えられる場合、範囲10%~20%及び15%~30%も認考えられるが、下限15%及び上限12%の組合せはあり得ず、したがって、考えられない。
【0037】
別段の指定がない限り、組成物中の成分%は重量%、又は重量/重量%で表される。組成物中の相対重量%と言うことは、組成物中の全成分の総重量%は合わせると総計100となると想定することと理解される。1つ以上の成分の相対重量%を、組成物中の成分の重量%が合わせて総計100であり、但し、どの特定の成分の重量%もその成分で指定された範囲の限界外にならないように上下に調節してもよいとさらに理解される。
【0038】
本明細書に記載されたいくつかの実施形態は、その様々な要素に関して「含む(comprising)」又は「含む(comprises)」と記載される。代替の実施形態では、これらの要素は、これらの要素に適用されるとき、移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「から本質的になる(consists essentially of)」と一緒に記載することができる。さらなる代替の実施形態では、これらの要素は、これらの要素に適用されるとき、移行句「からなる(consisting of)」又は「からなる(consists of)」と一緒に記載することができる。したがって、例えば、組成物又は方法がA及びBを含むとして本明細書に開示される場合、「A及びBから本質的になる(consisting essentially of)」のこの組成物又は方法の代替の実施形態ならびに「A及びBからなる(consisting of)」のこの組成物又は方法の代替の実施形態も本明細書に開示されたと見なされる。同様に、これらの様々な要素に関して「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」と記載された実施形態は、これらの要素に適用されるとき、「含む(comprising)」と記載することもできる。そして、これらの様々な要素に関して「から本質的になる(consisting essentially of)」と記載された実施形態は、これらの要素に適用されるとき、「からなる(consisting of)」と記載することもでき、「からなる(consisting of)」と記載された実施形態は、これらの要素に適用されるとき、「から本質的になる(consisting essentially of)」と記載することもできる。
【0039】
組成物又はシステムを列挙された要素「から本質的になる(consisting essentially of)」と記載される場合、該組成物又はシステムは、明示的に列挙された要素を含有し、かつ、(処理条件のための組成物に対して)処理される条件、又は(システムを含む組成物に対して)記載されたシステムの特性に実質的に影響を及ぼさない他の要素を含有してもよい。しかしながら、該組成物もしくはシステムは、(システムを処理するための組成物に対して)明示的に列挙されたこれらの要素以外の処理される条件に実質的に影響を及ぼす他の要素を含有しないか、又は(システムを含む組成物に対して)システムの特性に実質的に影響を及ぼす他の要素を含有しないかのいずれかであり;又は、該組成物もしくはシステムが、処理される条件もしくはシステムの特性に実質的に影響を及ぼし得る列挙されたもの以外の追加の要素を含有しない場合、該組成物もしくはシステムは、処理される条件もしくはシステムの特性に実質的に影響を及ぼすのに充分な追加要素の濃度もしくは量を含有しない。方法が列挙されたステップ「から本質的になる(consisting essentially of)」と記載される場合、該方法は列挙されたステップを含み、かつ、該方法により処理される条件又は該方法により製造されるシステムの特性に実質的に影響を及ぼさないが、該方法は明示的に列挙されたこれらのステップ以外の処理された条件又は製造されたシステムに実質的に影響を及ぼす他のステップを含まない。
【0040】
この開示は、いくつかの実施形態を提供する。いずれもの実施形態からのいずれもの特徴を、可能である場合、他の実施形態からのいずれもの特徴と組み合わせることができる。この様に、開示された特徴の混成構成は、本発明の範囲内である。
【0041】
本明細書で開示された実施形態及び方法に加えて、胃内滞留システムの追加の実施形態、ならびにかかるシステムの製造方法及び使用方法は、国際公開第2015/191920号パンフレット、国際公開第2015/191925号パンフレット、国際公開2017/070612号パンフレット、及びPCT米国特許出願公開第2016/065453号明細書に開示されており、これらは全内容を参照により本明細書に援用される。
【0042】
全体システム構造
本発明は、とりわけ、胃内に滞留している間の特定の機械特性及びカスタマイズした薬物放出速度を提供するように設計された胃内滞留システムの成分を提供する。本明細書に記載された成分は、星形胃内滞留システム及び環状胃内滞留システムを含むが、これに限定されない様々な胃内滞留システムの使用のために適している。
【0043】
胃内滞留システムの「星形(stellate)」構造は、「星(star)」(又は「星印(asterisk)」構造としても知られている。星形システム100の例を、図1Aに模式的に示している。複数の細長部材または、又は「アーム」(分かりやすくするために、かかるアーム108を1つのみに標識している)をディスク形状中央部エラストマー106に取り付けている。図1Aに図示された細長部材または又はアームは、リンカー領域の役割を果たす結合ポリマー又はリンカー領域104(再び、分かりやすくするために、1つのアームにおいてのみ成分に標識している)により結合されたセグメント102及び103からなる。この構造は、システムが中央部エラストマーにおいて折り畳まれるか又はぎっしり詰められることを可能とする。図1Bは、図1Aの胃内滞留システムの折り畳まれた構造190を示す(分かりやすくするために、図1Bでは2つのアームのみ図示している)。図1Bのセグメント192及び193、リンカー領域194、エラストマー196、及びアーム198は、それぞれ、図1Aのセグメント102及び103、リンカー領域104、エラストマー106、及びアーム108に対応する。折り畳まれた場合、システムの全体の長さはおおよそ2の倍数で減り、システムを、経口投与に適したカプセル又は他の容器などの容器内に便利に入れることができる。カプセルが胃に達した場合、カプセルは溶解し、胃内滞留システムを遊離する。それから、胃内滞留システムは、そのぎっしり詰まっていない状態に広がり、所望の滞留期間、胃内に滞留する。
【0044】
いくつかの実施形態では、星形システムは、リンカー両期により中央部エラストマーに結合した1つのセグメントのみからなる細長部材又はアームを有してもよい。これは、セグメント103を除いた図1Aに対応する。
【0045】
図1Cは、環状構造である胃内滞留システムの別のあり得る全体的構造120を示す。セグメント122は、結合ポリマー又はリンカー領域124により結合している(分かりやすくするために、1つのセグメントと1つの結合リンケージのみ標識している)。この設計における結合ポリマー/リンカー領域は、エラストマーとしても機能して、カプセルなどの容器内に入れられるようにぎっしり詰められた状態に環をねじられることが可能にならなければならない。
【0046】
星形構造の1つの実施形態では、セグメント102及び103は、薬物又は薬剤を配合された担体ポリマーを含む。環状構造の1つの実施形態では、セグメント122は、薬物又は薬剤を配合された担体ポリマーを含む。
【0047】
リンカー領域としての役割を果たす胃内滞留システムの結合ポリマーを、胃内においてシステムの滞留期間中制御された方法で徐々に崩壊するように設計する。胃内滞留システムが完全な形態で小腸内に時期を早めて通過する場合、腸閉塞を避けるためにずっとより迅速に崩壊するようにシステムを設計する。結合ポリマーとして腸溶性ポリマーを使用することにより、これを容易に達成する。腸溶性ポリマーは、胃内で直面する酸性pHレベルに対して比較的耐性を有するが、十二指腸で見られるより高いpHレベルにおいては迅速に溶解する。安全要素として腸溶性結合ポリマーの使用は、完全なままの胃内滞留システムが小腸内を通過する望ましくない状態から保護する。腸溶性結合ポリマーの使用は、その設計された滞留時間前に胃内滞留システムを取り除く方法も提供し;システムを取り除かなければならない場合、患者が、重炭酸ナトリウム溶液などの弱アルカリ溶液を飲むか、又は水和水酸化マグネシウム(マグネシア乳)もしくは炭酸カルシウムなどの制酸剤を摂取することができ、これにより胃内のpHレベルを上昇させて腸溶性結合ポリマーの迅速な分解を引き起こす。それから、胃内滞留システムはばらばらに壊れ、患者から取り除かれる。図1Aで示したシステムでは、少なくとも、結合のために使用された結合ポリマー104は、かかる腸溶性ポリマーから製造される。
【0048】
追加の実施形態では、時間依存結合ポリマー又はリンカーを使用することができる。かかる時間依存結合ポリマー又はリンカーは、予測可能な時間依存方法で分解する。いくつかの実施形態では、時間依存結合ポリマー又はリンカーの分解は、胃腸系の様々なpHにより影響を受けない。
【0049】
追加の実施形態では、異なるタイプのリンカーを胃内滞留システムで使用することができる。すなわち、腸溶性リンカー(又は腸溶性結合ポリマー)及び時間依存リンカー(又は時間依存結合ポリマー)を使用することができる。いくつかの実施形態では、星形システムの1つの細長部材(アーム)は、セグメント間のいくつかのリンカー領域において腸溶性リンカーと、セグメント間の他のリンカー領域において時間依存リンカーの両方を使用することができる。かかる細長部材の例は図2Cに示されており、第一セグメントと第二セグメント間で時間依存リンカー領域を使用し、かつ、第二セグメントと第三セグメント間で腸溶性リンカーを使用している。かかる細長部材の別の例は図2Dに示されており、第一セグメントと第二セグメント間で時間依存リンカー領域を使用し、かつ、第二セグメントと第三セグメント間で腸溶性リンカーを使用し、第三セグメントと第四セグメント間で別の腸溶性リンカーを使用している。かかる細長部材のさらに別の例は図2Eに示されており、第一セグメントと第二セグメント間で時間依存リンカー領域を使用し、かつ、第二セグメントと第三セグメント間で腸溶性リンカーを使用し、第三セグメントと第四セグメント間で別の腸溶性リンカーを使用し、第四セグメントと第五セグメント間で別の腸溶性リンカーを使用している。いくつかの実施形態では、星形システムの1つの細長部材(アーム)は、セグメント間の同じ接合部において1つ以上の腸溶性リンカー及び1つ以上の時間依存リンカーの両方を使用することができる;すなわち、2つ以上のリンカー領域によりセグメントを結合し、少なくとも1つのリンカー領域は腸溶性結合ポリマー又はリンカーであり、少なくとも1つのリンカー領域は時間依存結合ポリマー又はリンカーである。いくつかの実施形態では、星形システムの1つの細長部材(アーム)は、1つのタイプのリンカーのみ-すなわち、セグメント間の異なる結合領域において-腸溶性リンカーのみか又は時間依存リンカーのみを使用することができるが、星形システムは腸溶性リンカーのみを有する少なくとも1つのアーム及び時間依存リンカーのみを含む少なくとも1つのアームを使用することができる。
【0050】
複数のリンカー領域の使用は、胃内滞留システムが、胃腸管をより容易に通過するために所望の滞留時間後に比較的小さいかけらに崩壊することを可能にする。共押出及び三次元印刷を含む、本明細書に記載された製造方法は、胃内滞留システムの製造を複雑にしないで追加のリンカー領域を比較的簡単な追加方法を提供する。対照的に、早期の方法は、各担体ポリマー-薬物セグメント及び各リンカー領域を別々に製造した後に該領域を端と端とを接続して組み立てる製造を必要とした;かかる方法では、各追加のリンカー領域の追加は、リンカー領域により結合したセグメントの端部にリンカー領域を結合する追加の2ステップを必要とする。
【0051】
リンカー領域は、通常、約200μm~約2000μm、約300μm~約2000μm、約400μm~約2000μm、約500μm~約2000μm、約600μm~約2000μm、約700μm~約2000μm、約800μm~約2000μm、約900μm~約2000μm、約1000μm~約2000μm、約1100μm~約2000μm、約1200μm~約2000μm、約1300μm~約2000μm、約1400μm~約2000μm、約1500μm~約2000μm、約1600μm~約2000μm、約1700μm~約2000μm、約1800μm~約2000μm、約1900μm~約2000μm、約200μm~約1000μm、約300μm~約1000μm、約400μm~約1000μm、約500μm~約1000μm、約600μm~約1000μm、約700μm~約1000μm、約800μm~約1000μm、又は約900μm~約1000μm;又は約100μm~約900μm約100μm~約800μm、約100μm~約700μm、約100μm~約600μm、約100μm~約500μm、約100μm~約400μm、約100μm~約300μm、又は約100μm~約200μmなどの、約100ミクロン~約2ミリメートルの幅である。リンカー領域は、約100μm、約200μm、約300μm、約400μm、約500μm、約600μm、約700μm、約800μm、約900μm、約1000μmの幅、約1100μmの幅、約1200μmの幅、約1300μmの幅、約1400μmの幅、約1500μmの幅、約1600μmの幅、約1700μmの幅、約1800μmの幅、約1900μmの幅、又は約2000μmの幅であり得るが、各値はプラス又はマイナス50μm(±50μm)であり得る。
【0052】
図1Aのポリマー106などの星形システムの中央部弾性ポリマーは、通常、腸溶性ポリマーではないが、しかしながら、中央部弾性ポリマーは、望ましく実用的であるこのような腸溶性ポリマーからも製造され得る。図1Cで示されるような環状システムでは、少なくとも1つ、好ましくは全ての結合124はこのような腸溶性ポリマーから製造される。
【0053】
中央部エラストマーは、特定のデュロメータ及び圧縮永久ひずみを有すべきである。剤形の折り畳み力及び胃内に滞留するかどうかを決定するので、デュロメータは重量であり;好ましい範囲は約60~約90Aである。圧縮永久ひずみは、そのぎっしり詰めた構造におけるカプセル中に貯蔵される場合、胃内滞留システムの永久歪を有することを避けるように可能な限り低くあるべきである。好ましい範囲は、約10%~約20%である。これらの要件に適合する物質は、Dow Corning社の液状シリコーンゴムのQPIの種類である。1つの実施形態では、QPI-270(70Aデュロメータ)を使用することができる。
【0054】
システムアーム及びセグメントデザイン
セグメント形状
星形送達システムで使用される細長部材、又はアームは、様々な形状を有することができる。星形構造に適した細長部材は、通常、環状構造にも使用可能である。いくつかの実施形態では、胃内滞留システムのアームを形成するセグメントは、円柱状である(すなわち、これらは円形断面を有する)。いくつかの実施形態では、胃内滞留システムのアームを形成するセグメントは、正四角柱(正方形の断面を有する)などの直方柱である(すなわち、これらは、長方形断面を有する)。いくつかの実施形態では、胃内滞留システムのアームを形成するセグメントは、三角柱である(すなわち、これらは、三角形断面を有する)。図6A図6B図7A図7B図8A図8B図9A図9B、及び図9Cは、三角柱であるセグメントの例を示している。異なった形状のアームを、望ましく実用的である同じ胃内滞留システムで組み合わせることができる。異なった形状のセグメントを、望ましく実用的である同じ胃内滞留システムの同じアームで組み合わせることができる。1つの実施形態では、1つの胃内滞留システムにおけるアームの全て及びアームセグメントの全ては、同じ形状を有する(例えば、全ては円柱状である;全ては三角柱である;全ては直方柱である)。三角形断面を、図10A中左図に示す。6つの細長部材を備える胃内滞留システム1030の細長部材の三角形断面の配置を、図10Aの右図に示す;1つの細長部材のみ標識している(1010)。胃内滞留システムを、容器又はカプセル1020中に封入する。このように形成された六角形の頂点は、システムがそのぎっしり詰められた形態である場合、保持カプセルに対して応力を及ぼす。
【0055】
多角形の形状をした断面を有するアーム(三角形断面、長方形断面、又は正方形断面を有するアームなど)、又は鋭角を有するアーム(パイ状断面を有するアームなど)は、インビボでの安全性を向上させるために丸い角及び輪郭を有することができる。すなわち、交差する縁間又は面間の鋭い移行を有する代わりに、弧を使用して1つの縁又は面から別の縁又は面に移行する。したがって、「三角形断面」は、丸い角を有する三角形などのおおよそ三角形状を有する断面を含む。三角形断面を有するアームは、縁が丸く、該アームの端部における角が丸いアームを含む。丸い角を有するアーム断面の例を、図2Aに示す;丸い角にR、R、及びRと標識した矢印により標識している。丸い角及び縁は、フィレット角、フィレット状にした角、フィレット縁、又はフォレット状にした縁とも呼ぶ。長方形断面を有するアームは、縁が丸く、該アームの端部における角は丸いアームを備え;丸い角を有する長方形の形状はレクテリプス(rectellipse)と呼ばれることもある。正方形の断面を有するアームは、縁が丸く、該アームの端部の角が丸いアームを備え;丸い角を有する正方形の形状をスカークル(squircle)と呼ばれることもある。したがって、本明細書に記載されたシステムのいずれかの好ましい実施形態では、アーム、アームセグメント、又は細長部材の全ての鋭い縁又は角を丸く又はフィレット状にする。
【0056】
好ましい実施形態では、星形胃内送達システムで使用される細長部材、又はアームの断面は、円形断面が同じ面内、かつ、半径が交差する弧にある円筒柱の2つの半径により形成される円形断面である。2つの半径間の角度(弧の中央角度)は、好ましくは、4、6、又は8により割った約360°であるが、2と12の間のいずれもの整数(両端の値を含む)により割った約360°であり得る。すなわち、円形断面と記載された断面は、図10Bの左図に示された断面などのパイのスライスに類似している。楔状断面を有する6つの細長部材(1つの細長部材1010を標識している)を有する胃内滞留システム1030について図10Bの右図に示されているように、星形システムにおける細長部材のこのような断面は、胃内滞留システムがぎっしり詰められた場合におおよその円柱形状を有することを可能にする。図10A中の配置と比較して、システムがそのぎっしり詰められた形態である場合に、図10B中の配置は含有するカプセル1020に対する応力を軽減し、カプセル中に利用していない空間が少ないとき、細長部材においてより多い量が使用されることを可能とする。このような断面を有する細長部材を、かかる断面を有するダイによる押出により製造することができる。押出されたスラブ又はリボンなどのバルク構造中の複数の領域の共押出のため、圧縮成形又は熱成形を使用して、押出されたバルク構造の部分からかかる断面を有する細長部材を形成することができる。
【0057】
別の好ましい実施形態では、先端において平面を有する代わりに、図10Cに示されたように、細長部材の端部の先端を弯曲にする。このような構造は、システムがカプセル内によりぴったり合わせることを可能とし、これは製造及び貯蔵に役立ち、カプセル内の全空間を効率よく使用して細長部材の先端において追加の担体ポリマー-薬物組成物のための余裕もできる。図10Cは、エラストマー1002、第一セグメント1004、第一リンカー領域1006、第二(又は中央)セグメント1008、第二リンカー領域1010、及び第三(又は最終)セグメント1012を示す。最終セグメント1012の端部又は先端を、説明したように弯曲にしてカプセル内にぴったり合わせる。
【0058】
セグメント組成物:代替担体ポリマー-薬物領域及びリンカー領域
図2Aは、立体三角柱の形状であるアームの1つの実施形態の断面を示す。三角形断面は、幅W、W、及びWの辺、対応する部材側と反対の対応する角θ、θ、及びθ、ならびにR、R及びRのフィレット半径を特徴とする。アームは、高さHを有する。図2Bは、アームのこの実施形態の側面を示す。Aと記された領域は、担体ポリマー-薬物からなり、Bと記された領域はリンカー物質からなる。各領域の長さは、標識L、L、L、L、及びLと示された各他の領域の長さから独立しており;アームの全体的長さは、(L+L+L+L+L)である。
【0059】
押出装置から軸方向に物質を押出すことにより、このアーム実施形態を製造することができる;すなわち、押出されたアーム物質が現れる押出装置の端部を見れば、図2Aの断面を見るだろう。押出は、適切な長さ(例えば、L、L、及びL)の担体ポリマー-薬物領域(A領域)を押出し、次いで、適切な長さ(例えば、長さL、L)のリンカー領域(B領域)を押出すことが必要である。最終アーム実施形態を、L、L、L、L、Lの順でセグメントを接着又は結合することにより組み立てることができる。
【0060】
あるいは、図2A及び図2Bのアーム実施形態を、アーム又は細長部材の長軸方向の寸法(最長寸法)に対して垂直な方向に押出装置から物質を押出すことにより製造することができる。すなわち、押出されたアーム物質が現れる押出装置の面を見れば、図2Bの断面を見るだろう。角形ブロック又は角形平行六面体-すなわち、H、(L+L+L+L+L)の寸法、及び不特定長さの第三寸法を有するスラブとして物質を押出し;ブロックの押出はこの第三寸法の方向であり、したがって、第三寸法は要望通り長くすることができるが、但し、充分な原材料を押出装置に供給して所望の寸法を製造する。それから、角形ブロック又はスラブを傾斜角で断裁して立体三角柱を製造することができる。(すなわち、角形ブロックを、(L+L+L+L+L)側面及びブロックが押出される第三寸法により形成される面に対して傾斜した角度で断裁する。)アームのための立体直方柱形状が望ましい場合(示さず)、角形ブロックを、傾斜角の代わりに90°の角度で断裁することができる。パイ状裁断が望ましい場合、傾斜角で物質を断裁した後、この断片を第二裁断して弯曲した弧を形成する。あるいは、パイ状裁断望ましい場合、三角柱、直方柱、又は適切な大きさの他形状に物質を断裁してから、所望の形状に圧縮成形するか、又は打ち抜く。この共押出方法は、実施例2、図12A図12B図12C図12D、及び図13を参照して下記にさらに説明する。
【0061】
セグメント組成物:「海島」リンカー領域
いくつかのアーム実施形態を、「海島」リンカー領域により結合された担体ポリマー-薬物セグメントとして製造することができる。図3A図3B、及び図3Cは、かかるリンカー領域の例を示している。図3Aでは、セグメント304及び308を、「海島」リンカー領域306により連結し、一方、セグメント302及び304を、別の「海島」リンカー領域(上記挙げるのはラインセグメントLであるが、別の方法で標識していない)により連結する。リンカー領域の海島構造では、第一リンカー物質は、図3Cの324により示された「海」を含む。第二リンカー物質の多くの部分は、第一リンカー物質の「海」中に存在する「島」(図3C柱にこのような1つの島322を標識している)を含む。リンカー領域は、概して、アームの全体的構造に適合する;すなわち、アームが三角柱の形状である場合、リンカー領域は同様に三角柱の形状になる。
【0062】
第一リンカー物質の海島を形成する第二リンカー物質、又はリンカー物質を、様々な構造の海中に配置することができる。図3A及び図3Bでは、島は、アームの全体的長軸(軸)方向に対して横断する方向に海を貫通する円柱の形態である。図3Aの挿入図は、径Dを有する島(「C」と標識)を示す。島領域は、リンカー領域の面の1つの位置からリンカー領域に入り、「リンカーの海」を貫通してリンカー領域の面の別の位置から現れることができる。この構造を、共押出又は三次元印刷により製造することができる。島は、リンカー領域の面の1つの位置からリンカー領域に入り、リンカー領域の内側部分で止まる;この構造を、三次元印刷により製造することができる。
【0063】
「島」の径は、全島について均一であり得るか、又は図3Eで示された配置など、島間で異なり得る。リンカー領域中の島の径は、リンカー領域の幅を超えない。1つの実施形態では、島は、独立して、約1μm~約90μm、約1μm~約80μm、約1μm~約70μm、約1μm~約60μm、約1μm~約50μm、約1μm~約40μm、約1μm~約30μm、約1μm~約20μm、又は約1μm~約10μm;又は約10μm~約100μm約20μm~約100μm、約30μm~約100μm、約40μm~約100μm、約50μm~約100μm、約60μm~約100μm、約70μm~約100μm、約80μm~約100μm、又は約90μm~約100μmなどの約1μm~約100μmの径を有する。島は、独立して、約10μm、約20μm、約30μm、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、又は約100μm(各値はプラスもしくはマイナス約5μm(±5μm)である)の径を有する。島は、独立して、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、又は約10μmの径を有する。
【0064】
図中、断面に円として島を図示しているが、これらは、共押出又は三次元印刷により製造することができるいずれもの形状であり得る。円形でない断面に関し、上記で与えられた径の大きさの範囲は、円形でない領域の最長断面径の大きさの範囲である(例えば、島が楕円の形状である場合長軸)。
【0065】
様々な物質を、第一リンカー物質のために使用することができる(「海」)。1つの実施形態では、リンカー領域により連結されたセグメントを形成する同じ担体ポリマー-薬物配合物を、第一リンカー物質として使用することもできる。かかる配置を図3Dに示す。島をセグメントの共押出中に添加しなければならないだけなので、この実施形態は共押出製造の簡素化の利点がある。この実施形態を、三次元印刷を用いて製造する場合、第一リンカー物質として担体ポリマー-薬物配合物物質を用いることは、三次元印刷のために必要な異なるポリマーインプット数を最小限にする。これは、胃内の滞留期間中、比較的強力なリンカー領域も提供することができる。
【0066】
1つの実施形態では、薬剤なしで担体ポリマーを、担体ポリマー配合物セグメント及びリンカー領域間の結合を促進することができる第一リンカー物質として使用することができる。
【0067】
ポリカプロラクトン(PCL)は、「海」物質としての用途に好ましい物質です。別の実施形態では、ポリジオキサノンを、「海」物質として使用する。追加の実施形態では、「海」物質は、親水性セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、カルボキシビニル重合体(カルボマー)、カーボポール(Carbopol)(登録商標)酸性カルボキシポリマー、ポリカルボフィル、ポリ酸化エチレン(ポリオックス(Polyox)WSR)、多糖類及びその誘導体、ポリ酸化アルキレン類、ポリエチレングリコール、キトサン、アルギン酸塩、ペクチン類、アカシア、トラガント、グアーガム、ローカストビーンガム、ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、デキストラン類、天然ゴム、寒天、アガロース、アルギン酸ナトリウム、カラゲナン、フコイダン、ファーセレラン、ラミナラン、イバラノリ、キリンサイ、アラビアゴム、ガムガッチ、カラヤゴム、アラビノガラクタン、アミロペクチン、ゼラチン、ジェラン、ヒアルロン酸、プルラン、スクレログルカン、キサンタン、キシログルカン、無水マレイン酸共重合体、エチレン無水マレイン酸共重合体、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル、アンモニオメタクリレート共重合体(オイドラギット(Eudragit)RL、オイドラギットRSなど)、ポリアクリル酸エチルメタクリル酸(オイドラギットNE)、オイドラギットE(メタクリル酸(ジメチルアミノ)エチル及び中性メタクリル酸エステルベースのカチオン性共重合体)、ポリメタクリル酸、メタクリル酸メチル、及びアクリル酸エチルなどのポリアクリル酸、ポリメタクリレート/ポリエタクリレート類、ポリカプロラクトンなどのポリラクトン類、ポリ[ビス(p-カルボキシフェノキシ)]プロパン無水物、ポリ無水テレフタル酸などのポリ酸無水物類、ポリリジン、ポリグルタミン酸などのポリペプチド類、DETOSUとヘキサンジオール、デカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのジオールとの共重合体などのポリオルトエステル類ならびに米国特許第4,304,767号明細書に記載及び開示されているポリオルトエステル類が参照により本明細書に援用され、デンプン、特にアルファ化デンプン及びデンプン系ポリマー類、カルボマー類、マルトデキストリン類、アミロマルトデキストリン類、デキストラン類、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリヒドロキシアルカン酸類、ポリヒドロキシ酪酸、ならびにこれらの共重合体、混合物、配合物及び組合せを含むことができる。
【0068】
担体ポリマー(薬剤があってもなくても)の使用が所望の滞留時間後にシステムがばらばらに壊れることを可能にしないリンカー領域をもたらす場合では、第一リンカー物質として別のポリマーを使用することができる。1つの実施形態では、第一リンカー物質として腸溶性ポリマーを使用することができる。1つの実施形態では、第一リンカー物質として時間依存ポリマーを使用することができる。1つの実施形態では、低分子量ポリカプロラクトンを使用する。1つの実施形態では、担体ポリマーと共に減弱剤(weakening agent)を混合して、第一リンカー物質を形成する;例えば、カルナウバロウ、パラフィンワックス、又はRH40を担体ポリマー(ポリカプロラクトンなど)と共に混合してリンカー領域の使用のための減弱ポリマーを製造することができる。
【0069】
第二リンカー物質(「島」)として使用するために様々な物質を利用可能である。1つの実施形態では、第二リンカー物質として腸溶性ポリマーを使用することができる。1つの実施形態では、第二リンカー物質として時間依存ポリマーを使用することができる。「島」物質は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、酢酸フタル酸セルロース、セルロースアセテートサクシネート、メチルセルロースフタレート、エチルヒドロキシセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルブチレートアセテート、酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合物、スチレン-マレイン酸モノエステル共重合体、メタクリル酸メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体、メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、メタクリレート-メタクリル酸-アクリル酸オクチル共重合体、セラック、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)モノエチルエステル、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)n-ブチルエステル、ならびにこれらの共重合体、混合物、配合物及び組合せのうち1つ以上を含むことができる。
【0070】
疎水性構造ポリマーの海中の島又はチャネルとして配置される腸溶性又は時間依存ポリマーに関し、時間依存又は腸溶性リンカー物質の分解又は溶解に要する時間は、ポリマーマトリックス中への透水速度に依存する。ポリマー島への水の拡散時間は、t~L/2D(式中、Lは透水距離であり、Dはポリマー中の水の拡散率である)として近似することができる。所与の形状のため、水の拡散時間を、物質の拡散率を変更することにより調整することができる。ポリマーの拡散率を、結合剤又は他のポリマーとの配合により調整することができる。例えば、ポリメタクリル酸メチル毛細管(PMMA中の水に関して、Lの距離=1.5mm及びDは約3.35e-8cm/秒である)による製剤の中央部への透水は、約3.9日を要することになる。8日間かけてマトリックス中1.5mmの透水を達成するため、ポリマー中の水の拡散率は、1.6e-8cm/秒が目標となる。
【0071】
セグメント組成物:担体ポリマー-薬物及びリンカー領域間のインターロック結合(「鍵-鍵穴」接合)
アームに使用されるリンカー領域は、図2B中のアーム図の領域Bに示された実施形態などのその長さに沿った一定の寸法であり得る。あるいは、リンカー領域は、図4A図4B図4C、及び図4Dに図示されたように、その長さに沿った一定の寸法であり得る。図4A図4B図4C、及び図4D中のリンカー領域は、インターロック、又は「鍵-鍵穴」構造において、リンカー領域の本体から、担体ポリマー-薬物物質からなるセグメント中に延びる部分を有する。いくつかの実施形態では、担体ポリマー-薬物物質からなる1つ以上のセグメントの部分は、再び、インターロック、又は「鍵-鍵穴」構造において、担体ポリマー-薬物セグメントの本体から、リンカー領域中に延びる。いくつかの実施形態では、1つ以上のリンカー領域の部分は、リンカー領域の本体から、担体ポリマー-薬物セグメント中に延び、担体ポリマー-薬物物質からなる1つ以上のセグメントの部分は、担体ポリマー-薬物セグメントの本体から、リンカー領域中に延びる。
【0072】
担体ポリマー-薬物物質及びリンカー領域は、リンカー領域中の突起部を担体ポリマー-薬物物質中の凹部(図4A図4B図4C、及び図4Dに示されたものなど)と組み合わせることにより、又は担体ポリマー-薬物物質中の突起部をリンカー容易記中の凹部と組み合わせることにより、又はリンカー領域中の突起部を担体ポリマー-薬物物質中の凹部と組み合わせること、かつ、担体ポリマー-薬物物質中の突起部をリンカー容易記中の凹部と組み合わせることの両方により、インターロック結合を形成する。これらのインターロック結合は、リンカー領域及び担体ポリマー-薬物物質を含むセグメント間の増強された結合を提供する。
【0073】
インターロック結合構造中のリンカー領域は、図4A又は図4Bの海島ポリマーをさらに含む。図4C及び図4Dは、海島ポリマーを含まないインターロックリンカーを示す。図4C及び図4Dでは、1つのインターロックリンカー領域は時間依存リンカーであるが、他のインターロックリンカー領域は腸溶性リンカーである。
【0074】
1つの実施形態では、上記のインターロックセグメントを、三次元印刷により製造する。1つの実施形態では、上記のインターロックセグメントを、共押出により製造する。
【0075】
セグメント組成物:「島海」担体ポリマー-薬物領域
いくつかのアーム実施形態を、「海島」構造中に存在する担体ポリマー-薬物セグメントを含んで製造することができる。この実施形態では、1つ以上のセグメント島物質を使用して、担体ポリマー-薬物配合物がセグメント海物質を含む「島海」構造を製造することができる。図5Aはこのような構造を示し、担体ポリマー-薬物セグメント及びリンカー領域の両方は、海島構造を有する。しかしながら、海島構造を、海島構造を有するリンカー領域を用いないで担体ポリマー-薬物セグメントのために使用することができる。すなわち、海島構造を、均一なリンカー領域、又は1つのリンカー物質のみを有するリンカー領域を用いながら、担体ポリマー-薬物セグメントのために使用することができる。これは、胃内滞留システムの特性のさらなる調節を可能とする。例えば、比較的透過性物質のチャネルをセグメント島物質として使用することができ、液体、特に水又は胃液が該セグメント外面のみより大きな量の担体ポリマー-薬物セグメント海物質の表面積と接触することを可能とする。あるいは、追加の薬物(単数)又は薬物(複数)を、併用投与のために、セグメント島物質として使用することができる。追加の薬物の急速投与が胃内滞留システムを胃内に入れる時に望ましい、又は薬物(単数)もしくは薬物(複数)がセグメント海物質における担体ポリマー-薬物配合物中に含有される薬物と一緒に追加の薬物を徐々に共送達するためセグメント島物質からゆっくりと溶出することができる場合、追加の薬物(単数)もしくは薬物(複数)を含むセグメント島物質を比較的迅速溶出もしくは迅速溶解することができる。
【0076】
図5Bは、リンカー領域間のセグメントにおいて、海島構造を含む細長部材の別の実施形態を示す。この実施形態では、担体ポリマー-薬物配合物を、該担体ポリマー-薬物の機械的完全性及び安定性のための要件を有意に緩和する構造ポリマーの海中の島として使用する。軟質ポリマー及びワックスを、コリフォール(Kolliphor)RH40、カルナウバロウ、P407などの担体物質として使用することができる。ポリ酸無水物、ポリホスファゼン類、及びポリシアノアクリレート類などの分解性ポリマーも、担体ポリマーとして使用することができる。この構造で使用される構造ポリマーは、高いヤング率、引張強さ、圧縮強さを有すべきであり、担体ポリマー-薬物配合物とうまく相互作用する必要もある(すなわち、構造ポリマー及び担体ポリマーは化学的相溶性があり、同様な融解温度を有すべきである)。この構造において使用することができる構造ポリマーの例は、ポリ乳酸、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、及びポリプロピレンである。
【0077】
セグメント組成物:多層状セグメント
1つの実施形態では、胃内滞留システムは、多層状セグメントを利用する。多層状セグメントの1つの実装例を、図6Aに示す。セグメントは、2層以上の担体ポリマー-薬物配合物を備える。この層形成は、異なる濃度の薬物又は薬剤を可能とする。セグメント及び/又は全体的システムから薬物又は薬剤の所望の放出速度を提供するように層を横切って薬物又は薬剤の濃度勾配を生成することができる。
【0078】
1つの実施形態では、多層状セグメントは、各層における薬物又は薬剤の濃度が該セグメントの1つ以上の隣接する層の濃度と異なる、担体ポリマー-薬物配合物を含む2層以上の層を備える。1つの実施形態では、多層状セグメントは、各層における薬物又は薬剤の濃度が該セグメントの中央部からの径(又は距離)の増加と共に減少する、担体ポリマー-薬物配合物を含む2層以上の層を備える。1つの実施形態では、多層状セグメントは、各層における薬物又は薬剤の濃度が該セグメントの中央部からの径(又は距離)の増加と共に増加する、担体ポリマー-薬物配合物を含む2層以上の層を備える。
【0079】
例えば、3層を有し、第一層が1mmの径のコアシリンダーを備える、担体ポリマー-薬物配合物の円柱状セグメントを製造する。環状断面を有する本質的に円柱形チューブである第二層は、1mmの内径及び2mmの外径を有し、したがって、1mmの層厚を有する。環状断面を有する円柱形チューブである第三(外側)層は、2mmの内径及び3mmの外径を有し、1mmの層厚も有する。10mmの長さであるセグメントのため、第一(コア)層の全体積は約31.42立方ミリメートルになり、第二層の体積は約94.3mmとなり、第二層の体積は約157mmとなる。第二及び第三層の体積は、その外径を有する円柱の体積を算出し、その内径を有する円柱の体積を差し引くことにより得られ、例えば、第三層については、V=[π×(3mm)×10mm]-[π×(2mm)×10mm]となる。したがって、第二層は、第一層の3倍の体積を有し、第三層は第一層の5倍の体積を有する。セグメント層の薬物又は薬剤の濃度を、各層がおよそ同量の薬物又は薬剤を含有するように調節することができる。第三、最も体積の大きい層の濃度がCである場合、第二層に使用される薬物又は薬剤の濃度は1.67倍のCとなり、第一層に使用される薬物又は薬剤の濃度は5倍のCとなり得る。使用される薬物又は薬剤の多層状濃度を、薬物又は薬剤の所望の溶出速度を提供するように調節することができ;前の例では、時間とともに溶出の増加を提供するために、第三(外側)層では濃度1C、第二層では3C、及び第一層では15Cを使用することが望ましい場合がある。あるいは、薬物又は薬剤の溶出を、例えば、第三層において濃度1C、第二層において濃度2分の1C、及び第三層において4分の1Cを用いて時間とともに漸減することができる。
【0080】
さらなる実施形態では、1つより多い薬物又は薬剤を、複数の多層状セグメントの異なる担体ポリマー-薬物配合物層において使用することができる。1つの実施形態では、第一薬物又は薬剤はセグメント中の2つ以上の層のうち少なくとも1つの層に存在し、第二薬物又は薬剤はセグメント中の2つ以上の層のうち少なくとも1つの層に存在する。1つの実施形態では、第一薬物又は薬剤はセグメント中の2つ以上の層のうち少なくとも1つの層に存在し、1つ以上の追加薬物又は薬剤(すなわち、第二薬物又は薬剤、第三薬物又は薬剤、その他)も2つ以上の層のうち少なくとも1つの層に存在する。1つの実施形態では、1つの薬物のみ各層に存在する(すなわち、各層は1つの薬物のみ含有する)。1つの実施形態では、2つ以上の薬物が少なくとも1つの層に存在する(すなわち、1つ以上の層は2つ以上の薬物を含有することができる)。
【0081】
図6Bは、複数の担体ポリマー-薬物層を有する細長部材の実施形態を示す(図中、薬剤-ポリマー製剤と標識)。薬剤が剤形表面から放出されるので物質移動範囲の減少を補償するため、異なる保守津速度を有する製剤を、図6Bに図示された多層状構造を形成して層にすることができる。担体ポリマー-薬物(薬剤ポリマー)製剤1は製剤を比較的ゆっくりと放出するが、製剤4は製剤を迅速に放出し;製剤の放出速度の順序は、製剤1<製剤2<製剤3<製剤4である。各層からの放出速度及び層厚さを調節して、剤形から線形全体的放出速度を得ることができる。製剤1~4は、薬物もしく薬剤濃度(例えば、製剤4>製剤3>製剤2>製剤1における薬物又は薬剤負荷)又は賦形剤濃度で異なり得る。
【0082】
セグメント組成物:内部強化セグメント
セグメントの強度を、通常、該セグメントの中央部領域において該セグメントの内部部分に強化材を堆積させることにより向上させることができる。セグメントのための主要機械的支持体を提供するとき、強化材は、担体ポリマー-薬物物質の機械的要件を有意に緩和する。強化材は、セグメントに沿って軸方向に延びる。様々な形状及び構造を、強化材のために使用することができる。図7A及び図7Bに示されたものなど、I形デザインは、優れた捩り強さ及び曲げ強さを提供し、担体ポリマー-薬物配合物及び強化材間の相互作用を改良する。図8A及び図8Bに示されたものなど、強化材のトラス構造は、優れた強度も提供しながら、必要な強化材量を最小に抑える。強化材は、I形構造を有することができる。強化材は、H形構造を有することができる(H形はI形に類似しているがより広いフランジを有する)。強化材は、トラス構造を有することができる。強化材は、円柱状構造を有することができる。強化材は、三角柱構造(すなわち、三角形断面を有する桿体の構造)を有することができる。強化材は、「パイ状」構造(すなわち、「パイ状」断面を有する桿体の構造、「パイ形状」は三角形の一辺が円の弧により置き換えられた三角形により表され;図10Bに示されたアームの断面がパイ状断面の例である)を有することができる。強化材は、直方柱構造又は正四角柱構造(すなわち、長方形又は正方形断面を有する桿体の構造)を有することができる。内部強化材が多角形(三角形又は正方形など)の形状である場合、いずれか又は全ての鋭い角又は縁を丸く又はフィレット状にすることができる。強化材は、ポリカプロラクトン又はポリジオキサノンなどの純粋な担体ポリマーを含むことができる。強化材は、ポリカプロラクトン又はポリジオキサノンなどの純粋な担体ポリマーから本質的になるか、又はからなることができる。強化材は、他の成分を添加した担体ポリマーを含むことができる。強化材は、低濃度の薬物又は薬剤を含む担体ポリマーを含むことができる(すなわち、内部担体ポリマー強化材は、周囲の担体ポリマー-薬物物質より低い薬剤濃度の担体ポリマー-薬物配合物である。強化材は、薬物も薬剤も含まない担体ポリマーを含むことができる。強化材は、ポリ乳酸、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、又はポリプロピレンなどの別のポリマー(すなわち、担体ポリマーと異なるポリマー)を含むことができる。強化材は、非ポリマー物質であり得る。
【0083】
強化材は、セグメントの実質的全長に沿って軸方向に延びることができる。あるいは、強化材は、セグメントの全長の約50%に沿って、少なくとも約50%に沿って、約60%に沿って、少なくとも約60%に沿って、約70%に沿って、少なくとも約70%に沿って、約80%に沿って、少なくとも約80%に沿って、約90%に沿って、少なくとも約90%に沿って、約95%に沿って、又は少なくとも約95%に沿って軸方向に延びることができる。
【0084】
強化材は、セグメントの内部に沿った通常1つの連続した小片である。しかしながら、2つ、3つ、又はそれ以上の小片の強化材を使用することができ、角小片は、セグメントの内部の部分に沿って軸方向に延びる。
【0085】
内部強化材は、疎水性治療薬又はその塩を送達する胃内滞留システムにとって有用である。疎水性治療薬又は塩の低溶解度が理由で、高い割合の薬物又は塩を担体ポリマー及び他の賦形剤を使用して一緒に配合しなければならない。しかしながら、この高い割合の薬物又は塩は、セグメントの機械的強度を有意に低下させ得る。内部強化材を用いることで、セグメントの機械的強度を増大することができる。加えて、セグメントの最内側領域は、水又は胃液が透過する最も困難な領域であるので、担体ポリマー-治療薬の内部部分を強化材により置き換えることは、薬剤送達特性に対して比較的小さい効果を有する。実施例4及び図14の結果は、ポリカプロラクトンアームをタクロリムス及びポリエチレン酢酸ビニルを含有する溶液中に浸漬した、疎水性薬剤タクロリムスを含む内部強化セグメントの使用を示す。
【0086】
1つの実施形態では、本発明は、エラストマー成分、ならびに該エラストマー成分と結合した担体ポリマー及び治療薬もしくはその塩を含む複数の少なくとも3つの担体ポリマー-薬物成分を含む患者の胃に投与するための胃内滞留システムであって、複数の担体ポリマー-薬物成分の各々は近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備える細長部材であり;各細長部材の該近接端部は該エラストマー成分と結合し、該エラストマー成分から放射状に突出し、各細長部材は該エラストマー成分と結合しておらず、該近接端部より該エラストマー成分から大きいラジアル距離に位置し;少なくとも1つのセグメントは強化材をさらに含み、該強化材は該少なくとも1つのセグメントの内部に沿って軸方向に延び;該担体ポリマー-薬物成分は疎水性治療薬を含む、胃内滞留システムを提供する。さらなる実施形態では、細長部材をリンカー領域によりエラストマー成分と結合し;又は細長部材は2つ以上のセグメントを備え、セグメントはリンカー領域により連結し;又は細長部材はリンカー領域によりエラストマー成分と結合し、かつ、細長部材はセグメントがリンカー領域により連結する2つ以上のセグメントを備える。各セグメントは、近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備える。1つの実施形態では、疎水性治療薬は、水中約1mg/ml未満の溶解度を有する。1つの実施形態では、疎水性治療薬は、水中約500マイクログラム/ml未満の溶解度を有する。1つの実施形態では、疎水性治療薬は、水中約250マイクログラム/ml未満の溶解度を有する。1つの実施形態では、疎水性治療薬は、水中約100マイクログラム/ml未満の溶解度を有する。1つの実施形態では、疎水性治療薬は、水中約50マイクログラム/ml未満の溶解度を有する。1つの実施形態では、疎水性治療薬は、水中約25マイクログラム/ml未満の溶解度を有する。1つの実施形態では、疎水性治療薬は、水中約10マイクログラム/ml未満の溶解度を有する。1つの実施形態では、疎水性治療薬は、水中約5マイクログラム/ml未満の溶解度を有する。1つの実施形態では、疎水性治療薬は、水中約1マイクログラム/ml未満の溶解度を有する。1つの実施形態では、疎水性治療薬は、水中約1マイクログラム/ml~約1mg/ml、約1マイクログラム/ml~約500マイクログラム/ml、約1マイクログラム/ml~約250マイクログラム/ml、約1マイクログラム/ml~約100マイクログラム/ml、約1マイクログラム/ml~約50マイクログラム/ml、約1マイクログラム/ml~約25マイクログラム/ml、約1マイクログラム/ml~約10マイクログラム/ml、又は約1マイクログラム/ml~約5マイクログラム/mlの溶解度を有する。
【0087】
強化材を含むセグメントを、浸漬塗布(実施例4で使用)、共押出、又は三次元印刷などのいずれもの適切な方法により製造することができる。
【0088】
細長部材又はセグメントの機械的強度は主に強化材によってもたらされ、担体ポリマーではないので、強化材なしで使用できるより、細長部材の適切な機械的強度を維持しながら、担体ポリマー-薬物混合物で有意に多い薬物を使用することができる。したがって、担体ポリマー-薬物混合物における薬物の量は、約60重量%以下、約50重量%以下、又は約40重量%以下の範囲であり得るが、一方では、強化材なしではこのような高パーセントは達成できない。したがって、1つの実施形態では、薬物の量は、担体ポリマー-薬物混合物の約1重量%~約60重量%、約10重量%~約60重量%、約20重量%~約60重量%、約30重量%~約60重量%、約40重量%~約60重量%、約50重量%~約60重量%、約1重量%~約50重量%、約1重量%~約40重量%、約1重量%~約30重量%、約1重量%~約20重量%、又は約1重量%~約10重量%の範囲であり得る。
【0089】
また、強化材は細長部材又はセグメントの機械的強度を提供するので、強化材なしでの使用では適切でない可能性がある追加のポリマーを担体ポリマーとして使用することができる。ポリエチレン酢酸ビニルを、強化材を使用する場合に担体ポリマーとして使用することができる。ポロキサマー(Poloxamer)407、プルロニック(Pluronic)P407、ヒプロメロース、コリフォールRH40、ポリビニルカプロラクタム、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ソルプラス(BASFから入手可能;ポリビニルカプロラクタム、ポリ酢酸ビニル、及びポリエチレングリコールの共重合体)、コポビドン、オイドラギット(E、EPO、RS、RL)、メタクリル酸メチル、カルナウバロウ、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンステアレート類、ポリビニルアセテートフタレート、アルギン酸塩、ポリデキストロース、ポリジオキサノン、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、及びその混合物も、強化材に合わせて担体ポリマーとして使用することができる。あるいは、強化材なしで担体ポリマーとして使用することができる担体ポリマーとして列挙されたポリマーを、強化材と一緒に担体ポリマーとして使用することもでき;ポリカプロラクトン及びポリジオキサノンを含むこれらのポリマーを、「担体ポリマー-薬物成分のための担体ポリマー」の節において本明細書中に示す。
【0090】
セグメント組成物:外部支持体としての有窓性又は多孔性コーティング
図9Aに例示されたものなど、外部支持体として機能する有窓性(穿孔)コーティング又は層を用いて、セグメントの強度を改良することができる。セグメントのための主要機械的支持体を提供するとき、コーティング、又は外部支持体は、担体ポリマー-薬物物質の機械的要件を有意に緩和する。線形薬剤放出を達成するのに充分迅速に分解するポリマーは、不良な構造ポリマーである傾向にある(ポリ酸無水物)。したがって、このような比較的不良な構造担体ポリマーを強化する構造ポリマーシェルの使用は、このような担体ポリマーの使用における問題を取り除く。
【0091】
胃液の所望の移入、及び胃液による担体ポリマー-薬物配合物から溶出された薬物又は薬剤の所望の放出を提供するように大きさ、数、及び位置において開窓を調節することができる。
【0092】
図9Bは、有窓性コーティング又は層を有する細長部材の実施形態の横断面図及び縦断面図を示す。内部は完全に又は主に担体ポリマー-薬物配合物であり得るが、外部構造ポリマーは支持体を提供する。時間依存リンカー又は腸溶性リンカーを、細長部材において使用することができる。
【0093】
図9Cは、有窓性コーティング又は層を有する細長部材の別の実施形態を示す。この実施形態は、図9Bに示された実施形態より、その内部において少ない担体ポリマー-薬剤薬物を有する。細孔の断面積は構造の中央部に向かって増大する。物質が細孔から出て溶解するので、薬剤溶解のための表面積は、時間とともに増大する。
【0094】
多孔性シェルを、三次元印刷により作製することができる。海島アプローチを使用して、分解の遅い構造ポリマーシェル(例えば、PCL、PLA)内の高度に分化性のポリマー(例えば、オイドラギットE、プルロニックP407)を印刷することができる。胃液は、担体ポリマー-薬物配合物が入ることができる多孔性構造から離れて、島を迅速に分解及び/又は溶解するだろう。これらの島(及び島が溶解後得られた細孔)の大きさは、約10μm~約100μmであり得る。
【0095】
有窓の層は、治療薬を欠く担体ポリマーの厚い層などの構造支持体を提供するのに充分強い物質を含むことができる。有窓の層は、ポリカプロラクトン又はポリジオキサノンなどの純粋な担体ポリマーを含むことができる。有窓の層は、ポリカプロラクトン又はポリジオキサノンなどの純粋な担体ポリマーから本質的になるか、又はからなることができる。有窓の層は、他の成分を添加した担体ポリマーを含むことができる。有窓の層は、低濃度の薬物又は薬剤を含む担体ポリマーを含むことができる(すなわち、内部担体ポリマー有窓の層は、周囲の担体ポリマー-薬物物質より低い薬剤濃度の担体ポリマー-薬物配合物である。有窓の層は、薬物も薬剤も含まない担体ポリマーを含むことができる。有窓の層は、ポリ乳酸、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、又はポリプロピレンなどの別のポリマー(すなわち、担体ポリマーと異なるポリマー)を含むことができる。有窓の層は、非ポリマー物質であり得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、有窓の層は、約200マイクロメートル~約900マイクロメートル、約300マイクロメートル~約800マイクロメートル、約400マイクロメートル~約700マイクロメートル、約400マイクロメートル~約600マイクロメートル、又は約500マイクロメートルの厚さなどの、約100マイクロメートル~約1,000マイクロメートルの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、有窓の層は、約100マイクロメートル~約900マイクロメートル、約100マイクロメートル~約800マイクロメートル、約100マイクロメートル~約700マイクロメートル、約100マイクロメートル~約600マイクロメートル、約100マイクロメートル~約500マイクロメートル、約100マイクロメートル~約400マイクロメートル、約100マイクロメートル~約300マイクロメートル、約100マイクロメートル~約250マイクロメートル、約100マイクロメートル~約200マイクロメートル、約100マイクロメートル~約150マイクロメートル;又は約200マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約300マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約400マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約500マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約600マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約700マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約800マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、又は約900マイクロメートル~約1,000マイクロメートルの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、有窓の層は、約200、約300、約400マ、約500、約600、約700、約800、又は約900マイクロメートルの厚さを有することができる。
【0097】
セグメント組成物:外部支持体としての外部強化層又は外骨格
外部支持体として機能する「外骨格」又は外部強化層の使用により、セグメントの強度を向上させることもできる。この外部強化層は有窓のコーティングと類似するが、セグメント外面を完全には囲まない。外部強化層がセグメント外面を完全には囲まないので、有窓である必要はないにもかかわらず、外部強化層は望まれるなら必要に応じて有窓であってよい。したがって、1つの実施形態では、外部強化層は有窓でなく;別の実施形態では、外部強化層は有窓である。有窓のコーティングを有するとき、外部強化層は、セグメントのための主要機械的支持体の提供により、担体ポリマー-薬物物質の機械的要件を有意に緩和する。外部強化層を備えるセグメントは、実施例1、図11A図11B図11C、及び図11Dに記載されている。
【0098】
外部強化層を、セグメントの約10%、約20%、約25%、約30%、約33%、約40%、約50%、約60%、約67%、約70%、約75%、約80%、又は約90%を覆うように、該セグメントの表面の部分に適用することができる。なお、外部強化層がセグメントの100%を覆う場合、治療薬の溶出を可能とするために有窓である必要があり、したがって、上記の有窓のシェルとなる。外部強化層は、充分な強化を提供するためにセグメントの長さの有意な量に沿って延びるべきであり;例えば、セグメントの長さの少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は好ましくは少なくとも約95%延びるべきである。
【0099】
外部強化層を、強化するセグメント又は細長部材の形状を目的に合わせることができる。例えば、図2Aの左図に示された断面などの三角形の断面を有する細長部材又は「アーム」(すなわち、細長部材は三角柱である)のため、外部強化層を、細長部材の1つの側面に適用することができ、これは、細長部材の表面の約3分の1又は約33%を覆う。三角柱の1つの側面を覆う外部強化層は、細長部材の長さと同じ幅及び適用される三角形の側面の幅と同じ高さを有し;かかる外部強化層は、長方形の形状であり、該長方形は細長部材の1つの側面を成す平行四辺形である。例えば、図2Bに例示されたアームに関する図2Aに例示されたアーム断面の最も左側に適用した強化層は、(L+L+L+L+L)と同じ長さ、及びWと同じ高さを有する。強化層を、細長部材の表面の約3分の2又は67%を覆う細長部材の2つの側面に適用することができる。正方形又は長方形の断面を有する細長部材に関して、長方形強化層を、細長部材の1つ、2つ、又は3つの側面に付加することができる。概して、柱体の形状における細長部材に関して、細長部材の側面を含む平行四辺形の形状の強化層を細長部材に適用することができる。異なる形状を異なる面構造を有する細長部材のために使用することができ;例えば、弯曲した強化層を使用して図10Bの左図に示された断面の面の弯曲した部分を覆うことができる。
【0100】
強化材は、治療薬を欠く担体ポリマーの厚い層などの構造支持体を提供するのに充分強い物質を含むことができる。強化材は、ポリカプロラクトン又はポリジオキサノンなどの純粋な担体ポリマーを含むことができる。強化材は、ポリカプロラクトン又はポリジオキサノンなどの純粋な担体ポリマーから本質的になるか、又はからなることができる。強化材は、他の成分を添加した担体ポリマーを含むことができる。強化材は、低濃度の薬物又は薬剤を含む担体ポリマーを含むことができる(すなわち、内部担体ポリマー強化材は、周囲の担体ポリマー-薬物物質より低い薬剤濃度の担体ポリマー-薬物配合物である。強化材は、薬物も薬剤も含まない担体ポリマーを含むことができる。強化材は、ポリ乳酸、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、又はポリプロピレンなどの別のポリマー(すなわち、担体ポリマーと異なるポリマー)を含むことができる。強化材は、非ポリマー物質であり得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、強化材は、約200マイクロメートル~約900マイクロメートル、約300マイクロメートル~約800マイクロメートル、約400マイクロメートル~約700マイクロメートル、約400マイクロメートル~約600マイクロメートル、又は約500マイクロメートルの厚さなどの、約100マイクロメートル~約1,000マイクロメートルの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、強化材は、約100マイクロメートル~約900マイクロメートル、約100マイクロメートル~約800マイクロメートル、約100マイクロメートル~約700マイクロメートル、約100マイクロメートル~約600マイクロメートル、約100マイクロメートル~約500マイクロメートル、約100マイクロメートル~約400マイクロメートル、約100マイクロメートル~約300マイクロメートル、約100マイクロメートル~約250マイクロメートル、約100マイクロメートル~約200マイクロメートル、約100マイクロメートル~約150マイクロメートル;又は約200マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約300マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約400マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約500マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約600マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約700マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約800マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、又は約900マイクロメートル~約1,000マイクロメートルの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、強化材は、約200、約300、約400マ、約500、約600、約700、約800、又は約900マイクロメートルの厚さを有することができる。
【0102】
システム寸法
システムは、患者が該システムを飲み込むことができる寸法を有するぎっしり詰め込んだ状態に(又は、システムが栄養管もしくは胃管などの代替の方法により胃内に導入されるように)構成できなければならない。典型的には、システムは、カプセルなどの容器によりぎっしり詰め込んだ状態を保持する。胃内に入った時、システムは容器から放出され、広がった状態になる、すなわち、幽門括約筋をシステムが通過することを防ぎ、したがって、胃内にシステムの滞留を可能とする寸法を有する広がった構造になる。
【0103】
したがって、システムは、薬局で共通に使用される種類の標準サイズのカプセル内に入れることが可能であるべきである。米国で使用されている標準カプセルサイズを下表1に示す(”Draft Guidance for Industry on Size, Shape, and Other Physical Attributes of Generic Tablets and Capsules” at URL www.regulations.gov/#!documentDetail;D=FDA-2013-N-1434-0002参照)。これらはカプセルの外寸法であり、カプセル製造者間で僅かに寸法が異なるので、システムは、表1に示された外寸法より約0.5~1mm小さく、表1に示された長さより約1~2mm短い構造になることができるべきである。
【0104】
【表1】
【0105】
ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの当技術分野で周知の物質からカプセルを製造することができる。1つの実施形態では、胃内環境において溶解するが、口腔環境又は食道環境では溶解しない物質からカプセルを製造するが、これは胃に達する前にシステムの早過ぎる放出を防ぐ。
【0106】
1つの実施形態では、システムは、カプセル内にはめ込むためにぎっしり詰まった状態に折り畳まれるか又は圧縮される。一旦、カプセルが胃内で溶解したならば、システムは胃内滞留に適した構造になる。好ましいカプセルサイズは00及び00el(00elサイズのカプセルは000カプセルと近似した長さ及び00カプセルと近似した幅を有する)であり、結果、これは折り畳まれたシステムの長さ及び径に対する制約となる。
【0107】
一旦、容器から放出されたならば、システムは、胃内滞留システムが幽門括約筋を通過するのを防ぐのに適した寸法の広がった状態になる。1つの実施形態では、システムは少なくとも2つの寸法、各々が少なくとも2cmの長さを有する;すなわち、胃内滞留システムは、少なくとも2つの垂直な方向において少なくとも約2cmを超える。1つの実施形態では、その広がった状態のシステムの周囲長は、平面に投影された場合、2つの垂直な寸法、各々が少なくとも2cmの長さを有する。この2つの垂直な寸法は、約2cm~約7cm、約2cm~約6cm、約2cm~約5cm、約2cm~約4cm、約2cm~約3cm、約3cm~約7cm、約3cm~約6cm、約3cm~約5cm、約3cm~約4cm、約4cm~約7cm、約4cm~約6cm、約4cm~約5cm、又は約4cm~約4cmの長さを独立して有することができる。これらの寸法は、胃内滞留システムが幽門括約筋を通過するのを防ぐ。
【0108】
N個のアームを有する星形ポリマーシステム(Nは3以上である)に関して、アームは、システムが少なくとも2つの垂直な寸法、各々が上記長さを有するような寸法を有することができる。これらの2つの垂直な寸法は、胃内滞留システムの滞留を促進するために上記のように選択される。星形(star-shaped)(星形(stellate))胃内滞留システムにおけるアーム数は、少なくとも3であるべきである。アーム数は、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10であり得る。アーム数は、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つであり得る。星形胃内滞留システムの好ましいアーム(細長部材)数は6である。
【0109】
所望の滞留時間の終わりに胃内において最終的にばらばらに壊れるようにシステムを設計する。一旦、結合ポリマーが壊れれば、システムの残った成分は、幽門括約筋、小腸、及び大腸をシステムが通過することを可能する寸法である。最終的に、システムは、排泄、又は小腸及び大腸においてシステムが最終的に完全溶解することにより体内から排出される。
【0110】
システムポリマー組成物
担体ポリマー、結合ポリマー、及びエラストマーのための個別のポリマーの選択は、治療薬溶出速度(担体ポリマー、ならびに他の因子に依存する)、システムの滞留時間(ポリマー、主に結合ポリマーのいずれかの分解に依存する)、小腸に入った場合のシステムの脱共役時間(本明細書に記載されたように、結合ポリマーの腸溶分解速度に主に依存する)、及びそのぎっしり詰まった形態におけるシステムの有効寿命(エラストマーの特性に主に依存する)に影響を及ぼす。システムは胃腸管に投与されるので、システム成分の全ては胃腸内環境と生体適合性であるべきである。
【0111】
担体ポリマー-薬物成分から治療薬が溶出する速度は、それ自体いくつかのポリマー及び非ポリマー成分の混合物であり得る担体ポリマーの組成及び特性;親水性/疎水性、電荷状態、pKa、及び水素結合能などの治療薬の特性;ならびに胃内環境の特性を含む多くの因子により影響を受ける。胃の水性環境では、治療薬、特に親水性薬物のバースト放出(バースト放出は胃内のシステムの初期展開に対する活性医薬成分の高初期送達を言う)の回避、及び数日~数週の期間にわたる薬物の徐放の維持は困難だが挑戦しがいがある。
【0112】
胃内におけるシステムの滞留時間を、リンカー領域で使用される結合ポリマーにより調節する。胃内の機械的作用及び変動するpHが腸溶性結合ポリマーを結局は弱めるので、システムは、最終的に、腸溶性ポリマーの使用にもかかわらず、胃内で崩壊する。胃内において時間依存して分解する結合ポリマーを使用して、システムがばらばらに壊れるまでの時間を調節し、したがって、滞留時間を調節することもできる。一旦、システムがばらばらに壊れたならば、腸内に入り、それから排出される。
【0113】
システムで使用されるエラストマーは、システムの有効期間に重要である。システムがぎっしり詰められる場合、エラストマーは機械的応力に付される。次に、応力はポリマークリープを引き起こすことができ、これは充分に過剰な場合にシステムがカプセル又は他の容器から放出された場合にその広がった構造に戻ることを防止することができ;次に、これは胃内からシステムが早期に排出される。ポリマークリープは温度依存性でもあり得るが、したがって、システムの期待される貯蔵条件は、エラストマー及び他のポリマー成分を選択する場合に考慮される必要がある。
【0114】
システム成分及びポリマーは、胃内環境において、膨潤すべきでなく、又は微小な膨潤であるべきである。該成分は、滞留の期間にわたって胃内環境にある場合、約20%以下、約10%以下、又は好ましくは約5%以下の膨潤であるべきである。
【0115】
担体ポリマー-薬物成分のための担体ポリマー
担体ポリマー-薬物成分は、胃内環境の胃内滞留システムから溶出される治療薬(又は治療薬の塩)を含有する。治療薬を担体ポリマーに配合して、担体ポリマー-薬物混合物を生成する。この混合物を、システム柱の担体ポリマー-薬物成分として使用するために所望の形状(単数)又は形状(複数)に形成することができる。
【0116】
好ましくは、担体ポリマーは、以下の特性を有する。担体ポリマーは、加熱溶融押出法又は3D印刷技術を用いた押出を可能とするように熱可塑性であるべきである。担体ポリマーは、必要な形状に押し出し可能であるのに充分に高い溶融強度及び粘度を有する。担体ポリマーは、製造中に薬物又は薬剤が高温に暴露されることを避けるように低融解温度(例えば、約120℃未満)を有する。担体ポリマーは、所望の滞留期間中に胃内において崩壊するのを避けるのに充分な機械強度(ヤング率、圧縮強さ、引張強さ)を有すべきである。担体ポリマーは、薬物、治療薬、薬剤、賦形剤、分散剤、及び他の添加剤と安定に配合物を生成することができるべきである。
【0117】
本発明で使用するのに適した好適な担体ポリマーとしては、親水性セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、カルボキシビニル重合体(カルボマー)、カーボポール(登録商標)酸性カルボキシポリマー、ポリカルボフィル、ポリ酸化エチレン(ポリオックスWSR)、多糖類及びその誘導体、ポリ酸化アルキレン類、ポリエチレングリコール、キトサン、アルギン酸塩、ペクチン類、アカシア、トラガント、グアーガム、ローカストビーンガム、ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、デキストラン類、天然ゴム、寒天、アガロース、アルギン酸ナトリウム、カラゲナン、フコイダン、ファーセレラン、ラミナラン、イバラノリ、キリンサイ、アラビアゴム、ガムガッチ、カラヤゴム、アラビノガラクタン、アミロペクチン、ゼラチン、ジェラン、ヒアルロン酸、プルラン、スクレログルカン、キサンタン、キシログルカン、無水マレイン酸共重合体、エチレン無水マレイン酸共重合体、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル、アンモニオメタクリレート共重合体(オイドラギットRL、オイドラギットRSなど)、ポリアクリル酸エチルメタクリル酸(オイドラギットNE)、オイドラギットE(メタクリル酸(ジメチルアミノ)エチル及び中性メタクリル酸エステルベースのカチオン性共重合体)、ポリメタクリル酸、メタクリル酸メチル、及びアクリル酸エチルなどのポリアクリル酸、ポリメタクリレート/ポリエタクリレート類、ポリカプロラクトンなどのポリラクトン類、ポリ[ビス(p-カルボキシフェノキシ)]プロパン無水物、ポリ無水テレフタル酸などのポリ酸無水物類、ポリリジン、ポリグルタミン酸などのポリペプチド類、DETOSUとヘキサンジオール、デカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのジオールとの共重合体などのポリオルトエステル類ならびに米国特許第4,304,767号明細書に記載及び開示されているポリオルトエステル類が参照により本明細書に援用され、デンプン、特にアルファ化デンプン及びデンプン系ポリマー類、カルボマー類、マルトデキストリン類、アミロマルトデキストリン類、デキストラン類、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリヒドロキシアルカン酸類、ポリヒドロキシ酪酸、ならびにこれらの共重合体、混合物、配合物及び組合せを挙げられるが、これに限定されない。ポリカプロラクトン(PCL)は、好ましい担体ポリマーである。別の実施形態では、ポリジオキサノンを担体ポリマーとして使用する。
【0118】
他の賦形剤を担体ポリマーに添加して、治療薬の放出を調節することができる。かかる賦形剤を、約1%~15%、好ましくは約5%~10%、より好ましくは約5%又は約10%の量で添加することができる。かかる賦形剤の例としては、ポロキサマー407(コリフォールP407として入手可能、Sigma カタログ#62035);プルロニックP407;オイドラギットE、オイドラギットEPO(Evonikから入手可能);ヒプロメロース(Sigmaから入手可能、カタログ#H3785)、コリフォールRH40(Sigmaから入手可能、カタログ#07076)、ポリビニルカプロラクタム、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びソルプラス(Soluplus)(BASFから入手可能;ポリビニルカプロラクタム、ポリ酢酸ビニル、及びポリエチレングリコールの共重合体)が挙げられる。好ましい可溶性賦形剤としては、オイドラギットE、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、及びポリビニルアルコール(PVA)が挙げられる。好ましい難溶性賦形剤としては、オイドラギットRS及びオイドラギットRLが挙げられる。好ましい難溶性、膨潤性賦形剤としては、クロスポビドン、クロスカルメロース、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(HPMCAS)、及びカーボポールが挙げられる。
【0119】
担体ポリマー-薬物成分の製造方法
その範囲外の温度において最善に配合されるポリマーに対してより高温又はより低温が使用され得るが、治療薬をポリマーマトリックスに組み込むための配合温度は、通常、約80℃~約120℃の範囲である。特定のサイズの薬物粒子を使用し、配合中及び配合後に粒子サイズを維持することが望ましい場合、薬物の所望サイズを維持するように薬物の融点未満の温度で配合をすることができる。別のやり方では、ポリマー及び薬物の両方を融解させる温度を使用することができる。配合温度は、薬物の分解温度未満であるべきである。1つの実施形態では、薬物の約0.05%未満が製造中に分解される。1つの実施形態では、薬物の約0.04%未満が製造中に分解される。1つの実施形態では、薬物の約0.03%未満が製造中に分解される。1つの実施形態では、薬物の約0.02%未満が製造中に分解される。1つの実施形態では、薬物の約0.01%未満が製造中に分解される。
【0120】
加熱溶融押出法を使用して担体ポリマー-薬物成分を製造することができる。一軸スクリュー又は、好ましくは二軸スクリュー方式を使用することができる。上記のように、粒子サイズを配合中及び配合後に維持することが望ましい場合、薬物を分解しない温度で融解することができる担体ポリマーを使用するべきである。別のやり方では、ポリマー及び薬物の両方を融解させる温度を使用することができる。
【0121】
溶解及び鋳造法も使用して担体ポリマー-薬物成分を製造することができる。担体ポリマー及び治療薬物、ならびに他の所望の成分を一緒に混合する。担体ポリマーを融解し、薬物粒子を融解物中に均一に分布するように融解物を混合し、型に注ぎ入れ、放冷する。
【0122】
溶液流延法も使用して担体ポリマー-薬物成分を製造することができる。ポリマーを溶媒に溶解し、治療薬の粒子を添加する。薬物粒子のサイズが維持されるべき場合、粒子のサイズ特性の変動を避けるように薬物粒子を溶解しない溶媒を使用するべきであり;さもなければ、ポリマーと薬物粒子の両方を溶解する溶媒を使用することができる。それから、溶媒-担体ポリマー-薬物粒子混合物(又は溶媒-担体ポリマー-薬物溶液)を混合して、粒子を均一に分布させ(又は溶液を徹底的に混合する)、型に注ぎ入れ、溶媒を蒸発させる。
【0123】
三次元印刷のためのフィードポリマーの製造
三次元印刷は、プリントヘッドに固体物質の桿状体又は繊維の供給により行われることが多く、熱溶解積層法(押出積層法と呼ばれることもある)として公知の技術で、溶解し、積層して、次いで固化する;米国特許第5,121,329号明細書及び同第5,340,433号明細書参照。本明細書に記載された担体ポリマー-薬物成分の製造方法を使用して、胃内滞留システムの成分の三次元印刷による製造に使用することができるフィード物質を製造することもできる。
【0124】
治療薬粒子サイズ及び製粉
胃内滞留システムで使用される粒子サイズの制御は、システムの最適な治療薬放出及び機械的安定性の両方にとって重要である。治療薬の粒子サイズは、胃液がシステムの担体ポリマー-薬物成分を透過する場合に溶解に利用できる薬物の表面積に影響を及ぼす。また、システムの「アーム」(細長部材)が比較的薄い径(例えば、1ミリメートル~5ミリメートル)であるとき、アーム径の数%を超えるサイズの薬物粒子の存在は、薬物がデバイスから溶出する前、及び薬物粒子により以前に占有された空間に空隙が残された場合の溶出後の両方においてより弱いアームをもたらす。所望の滞留期間終了前にシステムが早期の崩壊及び排出をもたらし得るので、このようなアームの弱化は不都合である。
【0125】
1つの実施形態では、担体ポリマー-薬物成分への配合に使用される治療薬粒子は、約100ミクロン径より小さい。いくつかの実施形態では、治療薬粒子は、約75ミクロン径より小さい。いくつかの実施形態では、治療薬粒子は、約50ミクロン径より小さい。いくつかの実施形態では、治療薬粒子は、約40ミクロン径より小さい。いくつかの実施形態では、治療薬粒子は、約30ミクロン径より小さい。いくつかの実施形態では、治療薬粒子は、約25ミクロン径より小さい。いくつかの実施形態では、治療薬粒子は、約20ミクロン径より小さい。いくつかの実施形態では、治療薬粒子は、約10ミクロン径より小さい。いくつかの実施形態では、治療薬粒子は、約5ミクロン径より小さい。
【0126】
1つの実施形態では、担体ポリマー-薬物成分への配合に使用される治療薬粒子の少なくとも約80%は、約100ミクロン径より小さい。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の少なくとも約80%は、約75ミクロン径より小さい。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の少なくとも約80%は、約50ミクロン径より小さい。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の少なくとも約80%は、約40ミクロン径より小さい。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の少なくとも約80%は、約30ミクロン径より小さい。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の少なくとも約80%は、約25ミクロン径より小さい。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の少なくとも約80%は、約20ミクロン径より小さい。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の少なくとも約80%は、約10ミクロン径より小さい。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の少なくとも約80%は、約5ミクロン径より小さい。
【0127】
1つの実施形態では、担体ポリマー-薬物成分への配合に使用される治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約1ミクロン径~約100ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約1ミクロン径~約75ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約1ミクロン径~約50ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約1ミクロン径~約40ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約1ミクロン径~約30ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約1ミクロン径~約25ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約1ミクロン径~約20ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約1ミクロン径~約10ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約1ミクロン径~約5ミクロン径の大きさを有する。
【0128】
1つの実施形態では、担体ポリマー-薬物成分への配合に使用される治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約2ミクロン径~約100ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約2ミクロン径~約75ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約2ミクロン径~約50ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約2ミクロン径~約40ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約2ミクロン径~約30ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約2ミクロン径~約25ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約2ミクロン径~約20ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約2ミクロン径~約10ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約2ミクロン径~約5ミクロン径の大きさを有する。
【0129】
1つの実施形態では、担体ポリマー-薬物成分への配合に使用される治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約5ミクロン径~約100ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約5ミクロン径~約75ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約5ミクロン径~約50ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約5ミクロン径~約40ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約5ミクロン径~約30ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約5ミクロン径~約25ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約5ミクロン径~約20ミクロン径の大きさを有する。いくつかの実施形態では、治療薬粒子の質量の少なくとも約80%は、約5ミクロン径~約10ミクロン径の大きさを有する。
【0130】
治療薬の粒子サイズは、製粉により容易に調節することができる。いくつかの製粉技術を、より大きい粒子をより小さい粒子の所望のサイズに低減することに利用可能である。流体エネルギーミルは、粒子間衝突を使用して粒子サイズを低減する乾式製粉技術である。エアジェットミルと呼ばれる流体エネルギーミルのタイプは、治療薬粒子間の衝突を最大限にするような方法で円筒形チャンバー中にエアーを発射する。ボールミル粉砕は、その主軸の周りを回る円筒形チャンバーの回転を利用する。治療薬及び研削材(クロム鋼もしくはCR-NI鋼から製造された鋼球;ジルコニアなどのセラミック球;又はプラスチックポリアミドなど)は、薬物粒子サイズを小さくしながら衝突する。乾式状態、又は治療薬及び研削材が液体中で難溶性であるシリンダーに添加された液体と一緒のいずれかでボールミル粉砕を行うことができる。製粉に関するさらなる情報は、“Particle Size Reduction” in Water-Insoluble Drug Formulation, Second Edition (Ron Liu, editor), Boca Raton, Florida:CRC Press, 2008と題されたR.W. Lee et al.の章;及びHandbook of Pharmaceutical Granulation Technology, Third Edition (Dilip M. Parikh, editor)の“Granulation of Poorly Water-Soluble Drugs”, Boca Raton, Florida: CRC Press/Taylor & Francis Group,2010(及びハンドブックの他の節)と題されたA.W. Brzeczko et al.による章に記載されている。流体エネルギーミリング(すなわち、エアジェットミル)は、ボールミル粉砕などの他の乾式製粉技術と比較して、よりスケールアップし易いので、好ましい製粉方法である。
【0131】
製粉添加剤
所望のサイズの粒子を得ること、及び取扱中のアグリゲーションを最小にすることを補助するために、製粉中、治療薬物質に物質を添加することができる。シリカ(二酸化ケイ素、SiO)は、安価で広く入手可能で、無毒性であるので、好ましい製粉添加剤である。使用することができる他の添加剤としては、リン酸カルシウム、粉末セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、疎水性コロイド状シリカ、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、タルク、ポリビニルピロリドン、セルロースエーテ類、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、及び界面活性剤が挙げられる。特に、5ミクロン径未満の疎水性粒子は、特に、アグロメレーションする傾向にあり、このような粒子を製粉する場合、親水性添加剤を使用する。シリカなどの約0.1%~約5%、もしくは約0.1%~約4%、約0.1%~約3%、約0.1%~約2%、約0.1%~約1%、約1%~約5%、約1%~約4%、約1%~約3%、約1%~約2%、又は約0.1%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、約4%もしくは約5%の重量/重量比の製粉添加剤を流体ミリング又はボールミル粉砕に使用することができる。
【0132】
粒子サイジング
製粉後、粒子を適切なサイズのメッシュを通過させて所望のサイズの粒子を得る。所望の最大サイズの粒子を得るため、所望の最大サイズの穴を有するメッシュに粒子を通過させ;大きすぎる粒子をメッシュ上に残し、メッシュを通過した粒子が所望の最大サイズを有する。所望の最小サイズの粒子を得るため、粒子を所望の最小サイズの穴を有するメッシュに通過させ;メッシュを通過した粒子は小さすぎるものであり、所望の粒子がメッシュ上に保持される。
【0133】
ポリマー配合物の治療薬放出及び安定性の調整のための分散剤
担体ポリマー-薬物成分中の分散剤の使用は、多くの利点を提供する。担体ポリマー-薬物成分からの治療薬の溶出速度は、担体ポリマー(それ自体複数のポリマー及び非ポリマー成分を含み得る)の組成及び特性;治療薬の物理的及び化学的特性;ならびに胃内環境を含む上記の多くの因子により影響を受ける。治療薬、特に親水性薬物のバースト放出の回避、及び滞留期間にわたる治療薬の徐放の維持は、システムの重要な特性である。本発明に従った分散剤の使用は、放出速度及びバースト放出の抑制のより良好な制御を可能とする。バースト放出及び放出速度を、さまざまな濃度の分散剤を使用することにより調節することができる。
【0134】
本発明において使用することができる分散剤としては:二酸化ケイ素(シリカ、SiO)(親水性ヒュームド);ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸マグネシウムなどのステアリン酸塩;結晶セルロース;カルボキシメチルセルロース;疎水性コロイド状シリカ;ヒプロメロース;ケイ酸アルミニウムマグネシウム;リン脂質;ステアリン酸ポリオキシエチレン;酢酸亜鉛;アルギン酸;レクチン;脂肪酸;ラウリル硫酸ナトリウム;及び酸化アルミニウムなどの無毒性酸化金属類が挙げられる。多孔性無機物質及び極性無機物質を使用することができる。親水性ヒュームド二酸化ケイ素は好ましい分散剤である。
【0135】
アグリゲーション/フロキュレーション抑制作用に加えて、分散剤は、システムの製造及び/又は貯蔵中の相分離防止に役立つことができる。加熱溶融押出法によるシステムの製造のために、これは特に有用である。
【0136】
治療薬物質に対する分散剤の重量/重量比は、約0.1%~約5%、約0.1%~約4%、約0.1%~約3%、約0.1%~約2%、約0.1%~約1%、約1%~約5%、約1%~約4%、約1%~約3%、約1%~約2%、約2%~約4%、約2%~約3%、約3%~約4%、約4%~約5%、又は約0.1%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、約4%もしくは約5%であり得る。
【0137】
胃内滞留システムを投与する場合、分散剤を使用して初回期間中にバースト放出量を調節することもできる。毎週1回投与されるべき胃内滞留システムの実施形態では、初回投与後最初の約6時間にわたるバースト放出は、システム中の薬剤の総量の約8%未満、好ましくは約6%未満である。3日毎に1回投与されるべき胃内滞留システムの実施形態では、初回投与後最初の約6時間にわたるバースト放出は、システム中の薬剤の総量の約12%未満、好ましくは約10%未満である。毎日1回投与されるべき胃内滞留システムの実施形態では、初回投与後最初の約6時間にわたるバースト放出は、システム中の薬剤の総量の約40%未満、好ましくは約30%未満である。概して、新しい胃内滞留システムをD日毎に投与し、薬物の総質量がMである場合、胃内滞留システムは、初回投与後最初の約6時間にわたって、約[(MをDで割った商)の0.5倍]未満、好ましくは約[(MをDで割った商)に0.4を乗じる]未満、又は約[(MをDで割った商)に3/8を乗じる]未満、より好ましくは約[(MをDで割った商)に0.3を乗じる]未満を放出する。さらなる実施形態では、胃内滞留システムは、初回投与後最初の約6時間にわたって、少なくとも約[(MをDで割った商)に0.25を乗じる]を放出する、すなわち、システムは、投与初日の最初の4分の1にわたって毎日の投薬量の少なくとも約4分の1を放出する。
【0138】
結合ポリマー
1つ以上の担体ポリマー-薬物成分を1つ以上の担体ポリマー-薬物成分に結合するため、1つ以上の担体ポリマー-薬物成分を1つ以上のエラストマー成分に結合するため、又は1つ以上のエラストマー成分を1つ以上のエラストマー成分に結合するために、結合ポリマーを使用する。したがって、結合ポリマーは、システムの他成分間のリンカー領域を形成する。腸溶性ポリマー及び時間依存ポリマーは、結合ポリマーとしての使用に好ましい。
【0139】
胃内で直面する条件などの酸性条件下腸溶性ポリマーは比較的難溶性であるが、小腸で直面する低い酸性度~塩基性条件下では可溶である。小腸の最初の部分、十二指腸のpHが約5.4~6.1の範囲であるので、約pH5以上において溶解する腸溶性ポリマーを結合ポリマーとして使用することができる。胃内滞留システムが幽門弁を未変化で通過する場合、腸溶性結合ポリマーは溶解し、結合ポリマーにより結合された成分はばらばらに壊れて小腸及び大腸を滞留システムが通過するのを可能とする。したがって、あり得る腸閉塞を避けるために、48時間以内、好ましくは24時間以内、より好ましくは12時間以内、さらにより好ましくは1~2時間以内に結合ポリマーの溶解により腸内環境中で迅速に脱共役するように胃内滞留システムを設計する。治療中、胃内滞留システムが何らかの理由で迅速に取り除かなければならない場合、胃内滞留システムの速効性脱共役を誘導するために、患者は弱塩基性水溶液(重炭酸塩溶液など)を飲むことができる。
【0140】
好適な結合ポリマーとしては、酢酸フタル酸セルロース、セルロースアセテートサクシネート、メチルセルロースフタレート、エチルヒドロキシセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルブチレートアセテート、酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合物、スチレン-マレイン酸モノエステル共重合体、メタクリル酸メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体、メタクリレート-メタクリル酸-アクリル酸オクチル共重合体、ならびにその共重合体、混合物、配合物及び組合せが挙げられるが、これに限定されない。本発明において使用することができる腸溶性ポリマーのいくつかは、その溶解pHと共に、表2に列挙している。(Mukherji, Gour and Clive G. Wilson, “Enteric Coating for Colonic Delivery,” Chapter 18 of Modified-Release Drug Delivery Technology (editors Michael J. Rathbone, Jonathan Hadgraft, Michael S. Roberts), Drugs and the Pharmaceutical Sciences Volume 126, New York:Marcel Dekker, 2002参照)。好ましくは、約5又は約5.5と同じくらいのpHにおいて溶解する腸溶性ポリマーを使用する。メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体(商品名オイドラギットL100-55で販売されている;オイドラギットはEvonik Rohm GmbH(ドイツ国ダルムシュタット)の登録商標である)は、好ましい腸溶性ポリマーである。酢酸フタル酸セルロース、セルロースアセテートサクシネート、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートも、適切な腸溶性ポリマーである。
【0141】
1つの実施形態では、胃内滞留システムに使用される腸溶性ポリマーは、約4より高いpHで溶解する。いくつかの実施形態では、胃内滞留システムに使用される腸溶性ポリマーは、約5より高いpHで溶解する。いくつかの実施形態では、胃内滞留システムに使用される腸溶性ポリマーは、約6より高いpHで溶解する。いくつかの実施形態では、胃内滞留システムに使用される腸溶性ポリマーは、約7より高いpHで溶解する。いくつかの実施形態では、胃内滞留システムに使用される腸溶性ポリマーは、約7.5より高いpHで溶解する。いくつかの実施形態では、胃内滞留システムに使用される腸溶性ポリマーは、約4~約5のpHで溶解する。いくつかの実施形態では、胃内滞留システムに使用される腸溶性ポリマーは、約4~約6のpHで溶解する。いくつかの実施形態では、胃内滞留システムに使用される腸溶性ポリマーは、約4~約7のpHで溶解する。いくつかの実施形態では、胃内滞留システムに使用される腸溶性ポリマーは、約4~約7.5のpHで溶解する。いくつかの実施形態では、胃内滞留システムに使用される腸溶性ポリマーは、約5~約6のpHで溶解する。いくつかの実施形態では、胃内滞留システムに使用される腸溶性ポリマーは、約5~約7のpHで溶解する。いくつかの実施形態では、胃内滞留システムに使用される腸溶性ポリマーは、約5~約7.5のpHで溶解する。いくつかの実施形態では、胃内滞留システムに使用される腸溶性ポリマーは、約6~約7のpHで溶解する。いくつかの実施形態では、胃内滞留システムに使用される腸溶性ポリマーは、約6~約7.5のpHで溶解する。
【0142】
【表2】
【0143】
結合ポリマーとして使用するための追加の好ましいポリマーは時間依存ポリマー、すなわち、胃内環境において時間依存して分解するポリマーである。例えば、トリアセチンは、擬似胃液中7日にわたって時間依存して分解するが、プラストイドBは擬似胃液中7日の期間にわたってその強度を保持する。したがって、時間依存して分解するポリマーを、プラストイドB及びトリアセチンを混合することにより容易に製造することができ;プラストイドB-トリアセチン混合物の分解時間を、混合物中に用いたプラストイドBの量の増加により延ばすことができ、一方、分解時間を混合物中に用いたプラストイドBの量の増加により減少させることができる。
【0144】
様々な時間依存機構を利用可能である。水可溶性時間依存ポリマーは、水がポリマーを貫通するとき、崩壊する。かかるポリマーの例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリ酢酸ビニルである。酸可溶性時間依存ポリマーは、酸性環境下経時で崩壊する。例としては、オイドラギットEPOが挙げられる。時間依存ポリマーは水可溶性可塑剤を使用することができ;可塑剤を放出するとき、残りのポリマーは脆くなり胃の力で壊れる。かかるポリマーの例としては、トリアセチン及びクエン酸トリエチルが挙げられる。
【0145】
いくつかの実施形態では、担体ポリマー-薬物成分は腸溶性ポリマーにより結合されたセグメントからなる細長部材である。いくつかの実施形態では、担体ポリマー-薬物成分は、腸溶性ポリマーによりシステムのエラストマー成分と結合している。これらの実施形態のいずれかにおいて、腸溶性ポリマーをセグメントとセグメントとの結合及び細長部材とエラストマー成分との結合の両方のために使用する場合、セグメント-セグメント結合のために使用された腸溶性ポリマーは細長部材とエラストマー成分との結合のために使用される腸溶性ポリマーと同じ腸溶性ポリマーであってもよく、セグメントとセグメントとの結合のために使用される腸溶性ポリマーは細長部材とエラストマー成分との結合のために使用される腸溶性ポリマーと異なる腸溶性ポリマーであってもよい。セグメントとセグメントとの結合のために使用される腸溶性ポリマーは全て同じ腸溶性ポリマーであってもよく、全て異なる腸溶性ポリマーであってもよく、セグメント-セグメント結合におけるいくつかの腸溶性ポリマーは同じであり、セグメント-セグメント結合におけるいくつかの腸溶性ポリマーは異なっていてもよい。すなわち、各セグメント-セグメント結合のために使用される腸溶性ポリマー(単数又は複数)及び細長部材とエラストマー成分との結合のために使用される腸溶性ポリマーは独立して選択することができる。
【0146】
本明細書に記載された胃内滞留システムの実施形態のいずれかでは、結合ポリマー又はリンカーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)及びポリカプロラクトン(PCL)を含むことができる。これらの配合物を使用して、崩壊性リンカー又は崩壊性マトリックスを生成することができる。崩壊性リンカー又は崩壊性マトリックス中のポリカプロラクトンに対するHPMCASの比は、約80%HPMCAS:20%PCL~約20%HPMCAS:80%PCLであり得る。ポリカプロラクトンに対するHPMCASの比は、約80%HPMCAS:20%PCL~約20%HPMCAS:80%PCL;約70%HPMCAS:30%PCL~約30%HPMCAS:70%PCL;約60%HPMCAS:40%PCL~約40%HPMCAS:60%PCL;約80%HPMCAS:20%PCL~約50%HPMCAS:50%PCL;約80%HPMCAS:20%PCL~約60%HPMCAS:40%PCL;約70%HPMCAS:30%PCL~約50%HPMCAS:50%PCL;約70%HPMCAS:30%PCL~約60%HPMCAS:40%PCL;約20%HPMCAS:80%PCL~約40%HPMCAS:60%PCL;約20%HPMCAS:80%PCL~約50%HPMCAS:50%PCL;約30%HPMCAS:70%PCL~約40%HPMCAS:60%PCL;約30%HPMCAS:70%PCL~約50%HPMCAS:50%PCL;又は約80%HPMCAS:20%PCL,約70%HPMCAS:30%PCL,約60%HPMCAS:40%PCL,約50%HPMCAS:50%PCL,約40%HPMCAS:60%PCL,約30%HPMCAS:70%PCL、又は約20%HPMCAS:80%PCLであり得る。リンカーは、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、グリセリン、ヒマシ油、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトール-ソルビタン混合物、及びジアセチル化モノグリセリド類からなる群から選択される可塑剤をさらに含むことができる。
【0147】
胃内滞留システムが脱共役する場所に達して、幽門を通過し、所望の滞留時間後に胃の外に出ることを可能とするために、特定の期間後に充分に弱化するようにリンカーを選択する、すなわち、これらリンカーは脱共役する場所、又は脱共役もしくは幽門通過ポイントと呼ばれる、胃内滞留システムが幽門を通過することができる場所まで弱化する。したがって、1つの実施形態では、ヒト胃内で約2日後に;ヒト胃内で約3日後に;ヒト胃内で約4日後に;ヒト胃内で約5日後に;ヒト胃内で約6日後に;ヒト胃内で約7日後に;ヒト胃内で約8日後に;ヒト胃内で約9日後に;ヒト胃内で約10日後に;又はヒト胃内で約2週間後に脱共役するリンカーを使用する。1つの実施形態では、イヌ胃内で約2日後に;イヌ胃内で約3日後に;イヌ胃内で約4日後に;イヌ胃内で約5日後に;イヌ胃内で約6日後に;イヌ胃内で約7日後に;イヌ胃内で約8日後に;イヌ胃内で約9日後に;イヌ胃内で約10日後に;又はイヌ胃内で約2週間後に脱共役するリンカーを使用する。1つの実施形態では、ブタ胃内で約2日後に;ブタ胃内で約3日後に;ブタ胃内で約4日後に;ブタ胃内で約5日後に;ブタ胃内で約6日後に;ブタ胃内で約7日後に;ブタ胃内で約8日後に;ブタ胃内で約9日後に;ブタ胃内で約10日後に;又はブタ胃内で約2週間後に脱共役するリンカーを使用する。1つの実施形態では、空腹時人工胃液中約2日後に;空腹時人工胃液中約3日後に;空腹時人工胃液中約4日後に;空腹時人工胃液中約5日後に;空腹時人工胃液中約6日後に;空腹時人工胃液中約7日後に;空腹時人工胃液中約8日後に;空腹時人工胃液中約9日後に;空腹時人工胃液中約10日後に;又は空腹時人工胃液中約2週間後に脱共役するリンカーを使用する。1つの実施形態では、摂食時人工胃液中約2日後に;摂食時人工胃液中約3日後に;摂食時人工胃液中約4日後に;摂食時人工胃液中約5日後に;摂食時人工胃液中約6日後に;摂食時人工胃液中約7日後に;摂食時人工胃液中約8日後に;摂食時人工胃液中約9日後に;摂食時人工胃液中約10日後に;又は摂食時人工胃液中約2週間後に脱共役するリンカーを使用する。1つの実施形態では、pH2の水中で約2日後に;pH2の水中で約3日後に;pH2の水中で約4日後に;pH2の水中で約5日後に;pH2の水中で約6日後に;pH2の水中で約7日後に;pH2の水中で約8日後に;pH2の水中で約9日後に;pH2の水中で約10日後に;又はpH2の水中で約2週間後に脱共役するリンカーを使用する。1つの実施形態では、pH1の水中で約2日後に;pH1の水中で約3日後に;pH1の水中で約4日後に;pH1の水中で約5日後に;pH1の水中で約6日後に;pH1の水中で約7日後に;pH1の水中で約8日後に;pH1の水中で約9日後に;pH1の水中で約10日後に;又はpH1の水中で約2週間後に脱共役するリンカーを使用する。
【0148】
システムが胃から出る場合、すなわち、幽門を通過する場合、ヒト、イヌ、又はブタにおいて脱共役又は幽門通過点が起こる。擬似胃液又は酸性水におけるインビトロ測定のため、リンカーが通常約0.1ニュートン~0.2ニュートンである胃の正常な圧縮力下で崩壊する点まで弱化する場合、脱共役又は幽門通過点が起こる。結合強度(破断点)を、結合能、すなわち、国際公開第2017/070612号パンフレットの実施例18、又はPCT/米国特許出願公開第2016/065453号明細書の実施例12、13、15、17、又は18に記載されている四点曲げ曲げ試験(ASTM D790)などのリンカー破断に要する力を試験するのに役立ついずれかの関連試験により測定することができる。1つの実施形態では、約0.2Nの力でリンカーが脱共役する場合、脱共役又は幽門通過点に達する。別の実施形態では、約0.1Nの力でリンカーが脱共役する場合、脱共役又は幽門通過点に達する。
【0149】
エラストマー
エラストマー(弾性ポリマー又は高張力ポリマーとも呼ぶ)は、ぎっしり詰められたシステムを含有する容器又はカプセルを飲み込むことにより胃内に投与するのに適している形態に折り畳まれたり、又はぎっしり詰められることによるなど、胃内滞留システムがぎっしり詰められることを可能とする。胃内におけるカプセルの溶解次第、胃内滞留システムは、システムがシステムの所望の滞留時間患者の幽門括約筋を通過することを防ぐ形状に広がる。したがって、エラストマーは、合理的有効期間カプセル内にぎっしり詰められた構造中に貯蔵され、その元の形状、又はおおよそその元の形状に広がることが可能でなければならない。1つの実施形態では、エラストマーはシリコーンエラストマーである。1つの実施形態では、Dow Corning QP-1液状シリコーンゴムキットで販売されているなど、液状シリコーンゴムから、エラストマーを生成する。1つの実施形態では、エラストマーは、架橋されたポリカプロラクトンである。1つの実施形態では、エラストマーは、表2に列挙されたものなど、腸溶性ポリマーである。いくつかの実施形態では、システムで使用される結合ポリマー(単数又は複数)もエラストマーである。エラストマーは、胃内滞留システムの星形(star-shaped)又は星形(stellate)デザインで中央部ポリマーとして使用するのに好ましい。
【0150】
1つの実施形態では、結合ポリマー及びエラストマー両方は、システムが腸に入る場合、又はシステムの排出を誘導するために弱塩基性溶液を患者が飲む場合、担体ポリマー-薬物の小片にシステムがより完全な崩壊を提供する腸溶性ポリマーである。
【0151】
使用することができるエラストマーの例としては、Dow Corning QP-1キットを用いて形成されるものなどのシリコーン;ウレタン架橋ポリカプロラクトン;ポリ(6-アミノカプロン酸アクリロイル)(PA6ACA);メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体(オイドラギットL100-55);ならびにポリ(6-アミノカプロン酸アクリロイル)(PA6ACA)及びメタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体(オイドラギットL100-55)の混合物が挙げられる。
【0152】
他のシステム特性
治療薬の安定化
多くの治療薬は、胃内に存在することができる反応性酸素化学種に暴露された場合、酸化分解する傾向にある。したがって、システム中に含有される治療薬は、システムの胃内での長期滞留、及びシステムからの薬物の徐放期間が理由で酸化する可能性がある。したがって、酸化分解及び他の分解を抑制するように薬物を安定化することが望ましい。
【0153】
治療薬の酸化を低減又は抑制するためのシステム中に含むことができる酸化防止安定剤としては、α-トコフェノール(約0.01~約0.05%(v/v))、アスコルビン酸(約0.01%~約0.1%(w/v))、パルミチン酸アスコルビル(約0.01%~約0.1%(w/v))、ブチル化ヒドロキシトルエン(約0.01%~約0.1%(w/w))、ブチル化ヒドロキシアニソール(約0.01%~約0.1%(w/w))、及びフマル酸(3600ppm以下)が挙げられる。
【0154】
特定の治療薬は、pH、特に、胃内環境にある低pHにおいてpH感受性が高い。低pHにおいて治療薬の分解を低減又は抑制するためのシステム中に含むことができる安定剤化合物としては、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸ナトリウム、及び重炭酸ナトリウムが挙げられる。これらは、通常、約2%(w/w)以下の量で使用する。
【0155】
酸化防止安定剤、pH安定剤、及び他の安定剤化合物を、該安定剤(単数又は複数)を融解した担体ポリマー-薬物混合物に配合することにより治療薬を含有するポリマーに配合する。安定剤(単数又は複数)を、治療薬をポリマー-安定剤混合物に配合する前に融解した担体ポリマーに配合することもでき;安定剤(単数又は複数)を、担体ポリマー中に配合した治療薬-安定剤混合物を製剤化する前に治療薬と配合することもでき;安定剤(単数又は複数)、治療薬、及び融解した担体ポリマーを同時に配合することもできる。安定剤(単数又は複数)をポリマー-薬物混合物に配合する前に、治療薬を融解した担体ポリマーと配合することもできる。
【0156】
1つの実施形態では、約24時間の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約10%未満の治療薬を分解又は酸化する。1つの実施形態では、約48時間の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約10%未満の治療薬を分解又は酸化する。1つの実施形態では、約72時間の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約10%未満の治療薬を分解又は酸化する。1つの実施形態では、約96時間の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約10%未満の治療薬を分解又は酸化する。1つの実施形態では、約5日の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約10%未満の治療薬を分解又は酸化する。いくつかの実施形態では、約1週間の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約10%未満の治療薬を分解又は酸化する。いくつかの実施形態では、約2週間の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約10%未満の治療薬を分解又は酸化する。いくつかの実施形態では、約3週間の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約10%未満の治療薬を分解又は酸化する。いくつかの実施形態では、約4週間の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約10%未満の治療薬を分解又は酸化する。いくつかの実施形態では、約1か月の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約10%未満の治療薬を分解又は酸化する。
【0157】
1つの実施形態では、約24時間の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約5%未満の治療薬を分解又は酸化する。1つの実施形態では、約48時間の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約5%未満の治療薬を分解又は酸化する。1つの実施形態では、約72時間の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約5%未満の治療薬を分解又は酸化する。1つの実施形態では、約96時間の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約5%未満の治療薬を分解又は酸化する。1つの実施形態では、約5日の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約5%未満の治療薬を分解又は酸化する。いくつかの実施形態では、約1週間の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約5%未満の治療薬を分解又は酸化する。いくつかの実施形態では、約2週間の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約5%未満の治療薬を分解又は酸化する。いくつかの実施形態では、約3週間の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約5%未満の治療薬を分解又は酸化する。いくつかの実施形態では、約4週間の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約5%未満の治療薬を分解又は酸化する。いくつかの実施形態では、約1か月の胃内滞留期間後に、システム中に残留する約5%未満の治療薬を分解又は酸化する。
【0158】
胃内滞留システムの使用のための治療薬
胃腸管へ又は胃腸科を経て投与することができる治療薬を、本発明の胃内滞留システムに使用することができる。治療薬としては、薬剤、プロドラッグ、生物製剤、及び病気又は傷害に対して有益な効果を得るために投与することができるいずれもの他の物質が挙げられるが、これに限定されない。本発明の胃内滞留システムに使用することができる治療薬としては、ロスバスタチンなどのスタチン系薬剤;メロキシカムなどの非ステロイド系抗炎症剤(NSAID);エスシタロプラム及びシタロプラムなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI);クロピドグレルなどの抗凝血剤;プレドニゾンなどのステロイド剤;アリピプラゾール及びリスペリドンなどの抗精神病薬;ブプレノルフィンなどの鎮痛剤;ナロキソンなどのオピオイド拮抗薬;モンテルカストなどの抗喘息薬;メマンチンなどの抗認知症薬;ジゴキシンなどの強心配糖体;タムスロシンなどのα遮断薬;エゼチミブなどのコレステロール吸収阻害剤;コルチシンなどの抗痛風治療;ロラタジン及びセチリジンなどの抗ヒスタミン薬;ロペラミドなどのオピオイド;オメプラゾールなどのプロトンポンプ阻害薬;エンテカビルなどの抗ウイルス薬;ドキシサイクリン、シプロフロキサシン、及びアジスロマイシンなどの抗生物質;抗マラリア薬;レボチロキシン;メサドン及びバレニクリンなどの薬物乱用治療;避妊薬;カフェインなどの刺激物質;ならびに葉酸、カルシウム、ヨウ素、鉄、亜鉛、チアミン、ナイアシン、ビタミンC、ビタミンD、ビオチン、植物エキス、植物ホルモン、及び他のビタミン又はミネラルなどの栄養素が挙げられる。本発明の胃内滞留システム中に治療薬として使用することができる生物製剤としては、タンパク質、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、及びホルモン類が挙げられる。治療薬の好適な分類としては、鎮痛薬;抗鎮痛薬;抗炎症薬;解熱薬;抗うつ薬;抗てんかん薬;統合失調症治療薬;神経保護薬;抗がん剤などの抗増殖剤;抗ヒスタミン薬;抗片頭痛薬;ホルモン;プロスタグランジン;抗生物質などの抗菌薬;抗真菌剤;抗ウイルス剤、及び抗寄生虫薬;抗ムスカリン薬;抗不安薬;静菌剤;免疫抑制薬;鎮静薬;睡眠薬;抗精神病薬;気管支拡張薬;抗ぜんそく薬;心血管治療薬;麻酔薬;抗凝固薬;酵素阻害薬;ステロイド系薬物;ステロイド系又は非ステロイド系抗炎症薬;副腎皮質ステロイド薬;ドーパミン作動薬;電解質;胃腸薬;筋弛緩薬;栄養剤;ビタミン類;副交感神経刺激薬;刺激物質;食欲低下薬;過眠症治療薬;及びキニーネなどの抗マラリア薬;ルメファントリン;クロロキン;アモジアキン;ピリメタミン;プログアニル;クロルプログアニル-ダプソン;スルホンアミド(スルファドキシン及びスルファメトキシピリダジンなど);メフロキン;アトバコン;プリマキン;ハロファントリン;ドキシサイクリン;クリンダマイシン;アルテミシニン;及びアルテミシニン誘導体(アルテメテル、ジヒドロアルテミシニン、アルテエーテル及びアーテスネートなど)が挙げられるが、これに限定されない。用語「治療薬」は、前述の物質の塩、溶媒和物、多形体、及び共結晶を含む。特定の実施形態では、治療薬は、セチリジン、ロスバスタチン、エスシタロプラム、シタロプラム、リスペリドン、オランザピン、ドネゼピル(donezepil)、及びイベルメクチンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、治療薬は、抗精神病薬又はメマンチンなどの抗認知症薬などの精神神経疾患の治療のために使用されるものである。
【0159】
対象の治療薬分類
胃内滞留システムは、患者コンプライアンスの困難がある疾病及び障害の治療用途によく適しており、したがって、いくつかの実施形態では、胃内滞留システムを使用して、薬物投与計画に対する患者コンプライアンスが問題である疾病及び障害を治療する。かかる疾病及び障害としては、神経精神医学的疾病及び障害、認知症及び記憶に影響する他の疾病及び障害、アルツハイマー病、精神病、統合失調症、及び妄想性障害が挙げられる。したがって、胃内滞留システムに使用することができる治療薬としては、抗認知症薬、抗アルツハイマー病薬、及び抗精神薬が挙げられるが、これに限定されない。
【0160】
親水性治療薬
システムに使用することができる好適な親水性治療薬としては、リスペリドン、セチリジン、メマンチン、及びオランザピンが挙げられる。
【0161】
疎水性治療薬
システムに使用することができる好適な疎水性治療薬としては、タクロリムス、イベルメクチン、ロスバスタチン、シタロプラム、及びエスシタロプラムが挙げられる。
【0162】
低投薬量薬物
約1mg/日以下、約0.5mg/日、又は約0.1mg/日など比較的低投与量で投与される薬剤及び他の治療薬も、本発明の胃内滞留システムで使用するのによく適している。胃内滞留システムで使用することができるかかる薬物の例としては、レボチロキシン、低用量避妊薬、ならびにビタミンA、ビタミンD、ビタミンK、葉酸塩、ビタミンB12、及びビオチンなどのビタミン類及び他の栄養素が挙げられるが、これに限定されない。
【0163】
滞留時間
胃内滞留システムの滞留時間を、該システムを胃へ投与してから該システムが胃から出る時間と定義する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約24時間、又は約24時間以下の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約48時間、又は約48時間以下の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約72時間、又は約72時間以下の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約96時間、又は約96時間以下の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約5日、又は約5日以下の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約6日、又は約6日以下の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約7日、又は約7日以下の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約10日、又は約10日以下の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約14日、又は約14日以下の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約3週間、又は約3週間以下の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約4週間、又は約4週間以下の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約1か月、又は約1か月以下の滞留時間を有する。
【0164】
1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約24時間~約7日の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約48時間~約7日の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約72時間~約7日の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約96時間~約7日の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約5日~約7日の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約6日~約7日の滞留時間を有する。
【0165】
1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約24時間~約10日の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約48時間~約10日の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約72時間~約10日の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約96時間~約10日の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約5日~約10日の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約6日~約10日の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約7日~約10日の滞留時間を有する。
【0166】
1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約24時間~約14日の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約48時間~約14日の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約72時間~約14日の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約96時間~約14日の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約5日~約14日の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約6日~約14日の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約7日~約14日の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約10日~約14日の滞留時間を有する。
【0167】
1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約24時間~約3週間の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約48時間~約3週間の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約72時間~約3週間の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約96時間~約3週間の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約5日~約3週間の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約6日~約3週間の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約7日~約3週間の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約10日~約3週間の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約14日~約3週間の滞留時間を有する。
【0168】
1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約24時間~約4週間の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約48時間~約4週間の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約72時間~約4週間の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約96時間~約4週間の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約5日~約4週間の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約6日~約4週間の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約7日~約4週間の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約10日~約4週間の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約14日~約4週間の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約3週間~約4週間の滞留時間を有する。
【0169】
1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約24時間~約1か月の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約48時間~約1か月の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約72時間~約1か月の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約96時間~約1か月の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約5日~約1か月の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約6日~約1か月の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約7日~約1か月の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約10日~約1か月の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約14日~約1か月の滞留時間を有する。1つの実施形態では、胃内滞留システムは、約3週間~約1か月の滞留時間を有する。
【0170】
胃内滞留システムは、滞留時間の少なくとも一部の間、又はシステムが胃内に存在する滞留期間の間、治療有効量の治療薬を放出する。1つの実施形態では、システムは、滞留時間の少なくとも約25%の間、治療有効量の治療薬を放出する。1つの実施形態では、システムは、滞留時間の少なくとも約50%の間、治療有効量の治療薬を放出する。1つの実施形態では、システムは、滞留時間の少なくとも約60%の間、治療有効量の治療薬を放出する。1つの実施形態では、システムは、滞留時間の少なくとも約70%の間、治療有効量の治療薬を放出する。1つの実施形態では、システムは、滞留時間の少なくとも約75%の間、治療有効量の治療薬を放出する。1つの実施形態では、システムは、滞留時間の少なくとも約80%の間、治療有効量の治療薬を放出する。1つの実施形態では、システムは、滞留時間の少なくとも約85%の間、治療有効量の治療薬を放出する。1つの実施形態では、システムは、滞留時間の少なくとも約90%の間、治療有効量の治療薬を放出する。1つの実施形態では、システムは、滞留時間の少なくとも約95%の間、治療有効量の治療薬を放出する。1つの実施形態では、システムは、滞留時間の少なくとも約98%の間、治療有効量の治療薬を放出する。1つの実施形態では、システムは、滞留時間の少なくとも約99%の間、治療有効量の治療薬を放出する。
【0171】
放射線不透過性
システムは必要に応じて放射線不透過性であり、その結果、システムは必要ならば腹部X線により位置決めすることができる。いくつかの実施形態では、システムの構築に使用される1つ以上の物質は、X線可視化のために充分に放射線不透過性である。他の実施形態では、放射線不透過性物質を、システムの1つ以上の物質に添加するか、又はシステムの1つ以上の物質上に塗布するか、又はシステムのごく一部に添加する。適した放射線不透過性物質の例は、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、オキシ塩化ビスマス、及び三酸化ビスマスである。好ましくは、担体ポリマーからの治療薬放出、又は他のシステムポリマーの所望の特性が変化しないように、胃内滞留システムを構築するために使用されるポリマーへ、これらの物質を配合すべきでない。タングステンなどのシステム成分のごく一部上の金属ストライピング又はチップも使用することができる。
【0172】
システムの製造/組立:三次元印刷
アーム又はアームセグメントなどの胃内滞留システムの成分の三次元印刷を、市販の装置を用いて行う。三次元印刷は医薬製剤のために使用されている;Khaled et al., “Desktop 3D printing of controlled release pharmaceutical bilayer tablets,” International Journal of Pharmaceutics 461:105- 111 (2014);U.S. Patent No.7,276,252;Alhnan et al., “Emergence of 3D Printed Dosage Forms: Opportunities and Challenges,” Pharm. Res., May 18, 2016, PubMed PMID: 27194002);Yu et al., “Three-dimensional printing in pharmaceutics: promises and problems,” J. Pharm. Sci. 97(9):3666-3690 (2008);及びUrsan et al., “Three-dimensional drug printing: A structured review,” J. Am. Pharm. Assoc. 53(2):136-44 (2013)参照。
【0173】
三次元印刷の初回供給原料はポリマー又はポリマー配合物(例えば、腸溶性ポリマー、時間依存ポリマー、又は1つ以上の薬物、薬剤、賦形剤、その他と腸溶性ポリマー(単数)、腸溶性ポリマー(複数)、もしくは時間依存ポリマーとの配合物)である。製造しようとするセグメント又は細長部材の1つの領域のために使用しようとするポリマー又は成分を混合し、加熱溶融押出法を用いてペレット製造する。ポリマー又は配合ポリマー物質を、円形ダイを通して押し出し、スプールの周囲を巻いた円柱状ファイバーを作製する。
【0174】
複数のスプールを3Dプリンター(Hyrel 3Dから入手可能なHyrel Printer、米国ジョージア州ノークロス)に供給し、その代表的プリントヘッドに供給される。プリントヘッドは昇温し、ノズルにおいて物質を融解し、物質(ポリマー又はポリマー配合物)の薄層を製造される小片上の特定の位置に据える。物質は数秒以内で冷えて硬化し、完全に構造が形成されるまで次の層が加えられる。剤形の品質は、供給速度、ノズル温度、及びプリンター解像度に依存し、供給速度及びノズル温度を調節して所望の品質を得ることができる。
【0175】
三次元印刷を使用して、個別の細長部材、又は細長部材のセグメントを製造することができる。三次元印刷を使用して、本明細書に記載された共押出方法により製造されたものと同様な圧縮「スラブ」などのバルク構造を製造することができる。バルク構造を、必要に応じ、個別の部分(すなわち、個別の細長部材又は個別のセグメント)に断裁することもできる。
【0176】
いくつかの実施形態では、細長部材の三次元印刷により、全部そろった細長部材、又は胃内滞留システムの「アーム」の製造が企図されている。いくつかの実施形態では、細長部材のセグメントの三次元印刷により、細長部材のセグメント、又は胃内滞留システムの「アーム」の製造が企図されている。いくつかの実施形態では、細長部材又はそのセグメントを、スラブ構造などのバルク構造中の担体ポリマー-薬物配合物の隣接部分及びリンカー物質の三次元印刷により製造する。三次元印刷に次いで、バルク構造を所望の形状の細長部材又はそのセグメントを有する部分に断裁することができる。三次元印刷に次いで、バルク構造を所望の形状の細長部材又はそのセグメントを有する部分に圧縮成形することができる。
【0177】
システムの製造/組立:共押出
該胃内滞留システムの成分を、共押出により製造することができる。「海島」構造などの、本明細書で述べたセグメントのための様々な構造のほとんどを、三次元印刷又は共押出のいずれかにより製造することができる。しかしながら、共押出はあまり高価でなく、概してバッチ方法で行われる三次元印刷とは対照的に連続方法で行うことができる。
【0178】
「海島」構造の共押出は、繊維工業及び光ファイバー製造において使用されるが、生物医学システムにおいては応用されるのはまれである。米国特許第3,531,368号明細書;同第3,716,614号明細書;同第4,812,012号明細書;及びHaslauer et al., J. Biomed. Mater. Res. B Appl. Biomater. 103(5):1050-8 (2015)参照。
【0179】
細長部材(アーム)、又は細長部材(アーム)のセグメントなどの、胃内滞留システムの成分の共押出を、カスタマイズされた共押出機配管設備及びカスタマイズされた所望の構造用ダイと組み合わせた市販装置を用いて行うことができる。共押出の初回供給原料はポリマー又はポリマー配合物(例えば、腸溶性ポリマー、時間依存ポリマー、又は1つ以上の薬物、薬剤、賦形剤、その他と腸溶性ポリマー(単数)、腸溶性ポリマー(複数)、もしくは時間依存ポリマーとの配合物)である。製造しようとするセグメント又は細長部材の1つの領域のために使用しようとするポリマー又は成分を混合し、加熱溶融押出法を用いてペレット製造する。このように形成されたポリマーペレットを一軸スクリュー押出機上のホッパーに入れて、乾燥して表面水分を除去する。ペレットを重量測定法で個々の一軸スクリュー押出機に供給し、これらは融解し、共押出のために加圧される。
【0180】
それから、適切な融解ポリマーを複数のチャネルを有するカスタム設計されたダイを通してポンプで送り、必要な形状に成形する。複合ポリマーブロックを冷却(水冷、空冷、又は浴)し、これに限定されないが、三角柱、直方柱、又は円柱形切片(パイ状楔)などの形状を含む所望の形状に断裁又は打ち抜きする。
【0181】
いくつかの実施形態では、細長部材の共押出により、全部そろった細長部材、又は胃内滞留システムの「アーム」の製造が企図されている。いくつかの実施形態では、細長部材のセグメントの共押出により、細長部材のセグメント、又は胃内滞留システムの「アーム」の製造が企図されている。いくつかの実施形態では、細長部材又はそのセグメントを、スラブ構造などのバルク構造中の担体ポリマー-薬物配合物の隣接部分及びリンカー物質の共押出により製造する。共押出に次いで、バルク構造を所望の形状の細長部材又はそのセグメントを有する部分に断裁することができる。例えば、セグメント-リンカー-セグメントのバルク又はスラブ構造を、共押出方向に対して垂直な角度で断裁する。共押出に次いで、バルク構造を所望の形状の細長部材又はそのセグメントを有する部分に圧縮成形することができる。
【0182】
図12A及び図12Bは、このような共押出方法を模式的に例示している。図12Aは、3つのセグメント及び2つのリンカーを備える細長部材又は「アーム」の共押出を示す。押出機1202は、担体ポリマー-薬物配合物、すなわち、担体ポリマー、治療薬又はその塩、及びいずれかの所望の賦形剤の配合物を備える、3つのセグメントリボンストリップ領域1210、1212、及び1214を備える物質の1つの「リボン」(矢印1250により示された方向に押し出される)を押し出す。担体ポリマー-薬物配合物を備えるリボンストリップ領域1210、1212、及び1214は、リンカー配合物、すなわち、リンカーポリマー(単数又は複数)又は結合ポリマー(単数又は複数)を含む配合物を含むリボンストリップ領域1220及び1222により分離されている。このリボンを点線1230に沿って断裁し、リボンの小片1240を切り出し、図12Cに示されたセグメント-リンカー-セグメント細長部材又は「アーム」1260を形成することができる。断裁後、図12Aの小片1240のリボンストリップ領域1210は図12Cのアーム1260のセグメント1280になり、リボンストリップ領域1212は図12Cのアーム1260のセグメント1282になり、リボンストリップ領域1214は図12Cのアーム1260のセグメント1284になり、一方、図12Aのリボンストリップ領域1220は図12Cのアーム1260のリンカー1290になり、図12Aのリボンストリップ領域1222は図12Cのアーム1260のリンカー1292になる。リボン小片1240を断裁して、正四角形又は長方形切片を形成してもよく、三角形を断裁して三角形切片を形成してもよく、断裁してから、型で所望の形状に打ち抜いてもよい。
【0183】
図12Bは、2つのセグメントを連結する1つのリンカーを備えるアームの共押出を示す。押出機1202は、担体ポリマー-薬物配合物、すなわち、担体ポリマー、治療薬又はその塩、及びいずれかの所望の賦形剤の配合物を備える、2つのセグメントリボンストリップ領域1210及び1212を備える物質の1つの「リボン」(矢印1250により示された方向に押し出される)を押し出す。担体ポリマー-薬物配合物を備える2つリボンストリップ領域1210及び1212は、リンカー配合物、すなわち、リンカーポリマー(単数又は複数)又は結合ポリマー(単数又は複数)を含む配合物を含むリボンストリップ領域1220により分離されている。このリボンを点線1230に沿って断裁し、リボンの小片1240を切り出し、図12Dに示されたセグメント-リンカー-セグメント細長部材又は「アーム」1260を形成することができる。断裁後、図12Bの小片1240のリボンストリップ領域1210は図12Dのアーム1260のセグメント1280になり、リボンストリップ領域1212は図12Dのアーム1260のセグメント1282になり、図12Bのリボンストリップ領域1220は図12Dのアーム1260のリンカー1290になる。リボン小片1240を断裁して、正四角形又は長方形切片を形成してもよく、三角形を断裁して三角形切片を形成してもよく、断裁してから、型で所望の形状に打ち抜いてもよい。このようにする共押出は、実施例2及び図13に示されているように、セグメントの別々の部分とリンカーをとの熱溶着と比較して、セグメント-リンカー接合部においてより強力な結合を有する細長部材又は「アーム」を提供する。
【0184】
1つのみのセグメント及びリンカー、すなわち、セグメント-リンカー部分を備える細長部材又は「アーム」を、同様に製造することができる。これは、図12Dのセグメント1282を欠いたアームを製造するため、図12Bに例示した押出からセグメントリボン1212を省いたのに等しい。同様に、セグメント-リンカー-セグメント-リンカー-セグメント構造などの複数のリンカーとセグメントを備える細長部材又は「アーム」を、適切な領域の押出により製造することができる。セグメントの全てが組成の点で同じであってもよく、セグメントの全てが組成の点で異なっていてもよく、セグメントのいくつかは組成の点で同じだがセグメントの他は組成の点で異なっていてもよい。同様に、リンカーの全てが組成の点で同じであってもよく、リンカーの全てが組成の点で異なっていてもよく、リンカーのいくつかは組成の点で同じだがリンカーの他は組成の点で異なっていてもよい。
【0185】
細長部材又はアームを、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのセグメントを用いて製造することができる。細長部材を1つのセグメントを用いて製造する場合、1つのリンカーを細長部材の一端に結合することができる。細長部材を複数のセグメントを用いて製造する場合、リンカーをいずれか2つのセグメント間に位置付け接合する。必要に応じて、細長部材は、該細長部材の一端にリンカーを有することができ、すなわち、細長部材の一端をリンカーにより終端処理又は「キャッピング」することができ;これは、セグメント1284を欠いた図12Cのアームを製造するため、図12Aからリボン1214を省くことに等しい。
【0186】
細長部材の全体的長さは、通常、約10mm~約20mmであり、したがって、リボンから断裁後の細長部材(図12C及び図12Dに示された細長部材など)中のセグメントの長さ+リンカーの長さも、約10mm~約20mmの範囲であるべきである。細長部材の好ましい範囲は、約12mm~約20mm、約14mm~約20mm、約14mm~約18mm、又は約14mm~約16mmである。細長部材の全てのセグメント及びリンカーの長さは約10mm~約20mmの範囲、又は好ましい部分的な範囲内にあるべきという制約に従って、セグメントは、約2mm~約20mmの長さ、約2mm~約18mmの長さ、約2mm~約16mmの長さ、約2mm~約14mmの長さ、約2mm~約12mmの長さ、約2mm~約10mmの長さ、約2mm~約8mmの長さ、約2mm~約6mmの長さ、又は約2mm~約4mmの長さの範囲であり得る。細長部材の全てのセグメント及びリンカーの長さは約10mm~約20mmの範囲、又は好ましい部分的な範囲内にあるべきという制約に従って、細長部材のリンカー領域は、約50ミクロン~約2mmの長さ、約100ミクロン~約2mmの長さ、約250ミクロン~約2mmの長さ、約500ミクロン~約2mmの長さ、約750ミクロン~約2mmの長さ、約1mm~約2mmの長さ、約1.25mm~約2mmの長さ、約1.5mm~約2mmの長さ;又は約1.75mm~約2mmの長さの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、リンカー領域は、約50ミクロン~約1.75mmの長さ,約50ミクロン~約1.5mmの長さ,約50ミクロン~約1.25mmの長さ,約50ミクロン~約1mmの長さ,約50ミクロン~約750ミクロンの長さ,約50ミクロン~約500ミクロンの長さ,約50ミクロン~約250ミクロンの長さ,又は約50ミクロン~約100ミクロンの長さの範囲であり得る。
【0187】
いくつかの実施形態では、追加のポリマー又は担体ポリマー-薬物配合物、リンカー物質、又は担体ポリマー-薬物配合物とリンカー物質の両方のポリマーの共押出と同時に、細長部材又はそのセグメントを、スラブ構造などのバルク構造中の担体ポリマー-薬物配合物及びリンカー物質の隣接部分の共押出により製造する。追加のポリマー又は担体ポリマー-薬物配合物、リンカー物質、又は担体ポリマー-薬物配合物とリンカー物質の両方のポリマーの共押出を、海島構造で行うことができる。共押出に次いで、バルク構造を所望の形状の細長部材又はそのセグメントを有する部分に断裁することができる。共押出に次いで、バルク構造を所望の形状の細長部材又はそのセグメントを有する部分に圧縮成形することができる。
【0188】
本発明に記載された方法による細長部材の共押出は、細長部材の他の製造方法より有益な利点を提供する。「直線」状に、すなわち、細長部材又はセグメントがその長軸に沿って押出機から出るように、セグメント又は細長部材の断面形状を有するダイを通して担体ポリマー-薬物配合物を一成分押出することにより、セグメントを製造する場合、セグメントは適切な長さに断裁されなければならず、次いで、リンカー及び追加のセグメントを固定するために追加の押出後工程を必要とする。対照的に、本明細書で記載された共押出方法を用いることにより、細長部材全体を、リボン中の1つの共押出ユニットとして製造し、このリボンを適切な点で小片に切り分ける(必要に応じて、その後に別の形状に断裁した小片を打ち抜く)と、さらに押出後組立工程の必要がなく、細長部材を直ちに得る。余分な工程を省くことにより、細長部材の製造コストを低減する。線状押出より速い速度で細長部材の製造も可能となる。実施例2で述べるように、共押出は、複合材アームの高スループットで拡張性ある製造を可能とする。約12インチ(約30.5cm)/分での複合リボンの共押出は、毎分約180個の3.33mm幅細長部材又は「アーム」を生産するが、同じ線速度における軸方向の細長部材又は「アーム」の線状(一成分)押出は毎分6個未満のアームを生産し、セグメント間にリンカー(崩壊性マトリックスなど)を組み込むことにより細長部材にセグメントをアセンブルする押出後工程も要する。加えて、実施例2に示されるように、共押出により製造された細長部材は、リンカー及びセグメントの線状押出及び熱溶着により製造された細長部材より強力なリンカー-セグメント接合部を有する。
【0189】
したがって、1つの実施形態では、本発明の共押出方法は、毎分約30~約500の細長部材、又は約50~約500、約100~約500、約150~約500、約180~約500、約200~約500、約300~約500、又は毎分約400~約500の細長部材;又は毎分約50~約400、約50~約300、約50~約200、又は約50~約180の細長部材などの、毎分約もしくは少なくとも約30以下の細長部材、又は約もしくは少なくとも約 50以下、約もしくは少なくとも約100以下、約もしくは少なくとも約150以下、約もしくは少なくとも約180以下、約もしくは少なくとも約200以下、約もしくは少なくとも約300以下、約もしくは少なくとも約400以下、又は毎分約もしくは少なくとも約500以下の細長部材を製造するのに充分な速度でセグメント及びリンカーのアセンブリとして細長部材を共押出する方法を提供する。前述の実施形態のいずれかでは、アームは、約2mm幅及び4mm幅などの約1~5mm幅である。前述の実施形態のいずれかでは、アームを、1つの共押出装置から製造する。
【0190】
1つの実施形態では、本発明の共押出を、同じ線状押出速度における一成分押出より約もしくは少なくとも約5倍速い、約10倍速い、約20倍速い、約30倍速い、もしくは約50倍速く、又は同じ線状押出速度における一成分押出より約5~約10倍、約5~約20倍、約5~約30倍、もしくは約5~約50倍速い速度で細長部材を製造するのに充分な共押出速度で行う。
【0191】
リボンを押出するとき、リボンは押出に必要な温度から室温に冷却するか、又は追加の冷却を適用して冷却速度を速くするか、もしくは室温未満にリボンを冷却する。一旦、リボンが断裁することができる温度に達したならば、リボンを断裁して細長部材を製造する。断裁後に細長部材を所望の形状に打ち抜く場合、いくらかまだ可撓性がある間、すなわち、完全に冷却する前にリボンを断裁してもよい。あるいは、リボンを相当な長さ(例えば、12インチ又は30cm)で製造し、所蔵してもよく、後に、所望の細長部材に断裁して胃内滞留システムに組み立てることもできる。
【0192】
担体ポリマー-薬物セグメント及びリンカーを備える細長部材の製造に加えて、共押出を用いて、強化材を有する細長部材を製造することができる。例えば、図11Aに図示した強化細長部材を、薬剤担持ポリマー(担体ポリマー-薬物成分)及び構造ポリマー(強化材)の共押出により製造することができる。図11Aの左図の横断面図は、三角形細長部材の1つの側面を強化した強化共押出セグメントを製造するために使用することができるダイパターンを表す。使用することができる共押出の他のパターンとしては、三角形細長部材の2つの側面を強化した三角形細長部材などの、表面に強化材を有するいずれかの断面形状を有する細長部材を製造するための共押出が挙げられる。
【0193】
胃内滞留システムのための胃内送達薬物動態
本発明の胃内滞留システムは、治療薬の従来の経口用製剤のバイオアベイラビリティと比較して、システム投与後のAUC無限により測定したとき、高い治療薬のバイオアベイラビリティを提供する。システムは、治療薬の実質的に一定な血漿濃度の維持も提供する。
【0194】
2つの異なる製剤、製剤A及び製剤Bの相対的バイオアベイラビリティ、F相対は、次のように定義される。
相対=100×(AUC×用量)/(AUC×用量
式中、AUCは製剤Aの曲線下面積であり、AUCは製剤Bの曲線下面積であり、用量は使用された製剤Aの用量であり、用量は使用された製剤Bの用量である。AUC、時間に対する治療薬血漿濃度の曲線下面積は、通常、同じ時点における製剤の相対的バイオアベイラビリティを得るために、各製剤の投与後の同じ時間(t)において測定する。AUC無限は、「無限」時間、すなわち、初回投与で開始して治療薬の血漿濃度が無視できる量まで落ちる最終の時間にわたって測定又は算出されたAUCを表す。
【0195】
1つの実施形態では、本発明の胃内滞留システムにより提供される治療薬の実質的に一定な血漿濃度は、従来の経口用製剤で毎日投与される場合の治療薬の血漿濃度のトラフ濃度(すなわち、即時放出製剤で毎日投与された治療薬のC最小)以上から、従来の経口用製剤で毎日投与される場合の治療薬のピーク血漿濃度(すなわち、即時放出製剤で毎日投与された治療薬のC最大)以下までの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本発明の胃内滞留システムにより提供される治療薬の実質的に一定な血漿濃度は、従来の経口用製剤で毎日投与される場合の治療薬のピーク血漿濃度(すなわち、即時放出製剤で毎日投与された治療薬のC最大)の約50%~約90%であり得る。本発明の胃内滞留システムにより提供される治療薬の実質的に一定な血漿濃度は、従来の経口用製剤で毎日投与される場合の治療薬の平均血漿濃度(すなわち、即時放出製剤で毎日投与された治療薬のC平均)の約75%~約125%であり得る。本発明の胃内滞留システムにより提供される治療薬の実質的に一定な血漿濃度は、C最小の約100%~約150%など、従来の経口用製剤で毎日投与される場合の治療薬の平均血漿濃度のトラフ濃度(すなわち、即時放出製剤で毎日投与された治療薬のC最小)以上であり得る。
【0196】
本発明の胃内滞留システムは、治療薬の同量を含む即時放出形態により提供されたものの少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%のシステムから放出される治療薬のバイオアベイラビリティを提供することができる。上記に示されているように、バイオアベイラビリティを、血漿濃度-時間曲線下面積(AUC無限)により測定する。
【0197】
胃内滞留システムを用いた治療方法
胃内滞留システムを使用して、長期間にわたって治療薬の投与を必要としている病態を治療することができる。数ヶ月間、数年間、又は無期限の治療薬の長期投与のため、毎週1回、2週間毎に1回、又は毎月1回の胃内滞留システムの投与は、患者コンプライアンス及び便利さの点でかなりな利点を提供することができる。
【0198】
一旦、胃内滞留システムを患者に投与したならば、システムは、胃内滞留期間にわたって治療薬の徐放を提供する。胃内滞留期間後、システムは分解し、胃から出ていく。したがって、1週間の胃内滞留期間のシステムでは、患者は、毎週、新規なシステムを飲み込む(又は他の方法により胃に投与する)。したがって、1つの実施形態では、システム中の治療薬を含む、全ての所望の治療期間T全(T全は所望の治療期間日数)にわたって、日数Dの胃内滞留期間(D日は胃内滞留期間日数)を有する本発明の胃内滞留システムを用いた患者の治療方法は、全ての所望の治療期間にわたる経口投与又は他の方法による患者の胃内へのD日毎の新規な胃内滞留システムの導入を含む。患者に投与される胃内滞留システム数は、(T全)を(D日)で割った商である。例えば、1年(T全=365日)間の患者の治療が望まれ、かつ、システムの胃内滞留期間が7日(D日=7日)である場合、新規システムを7日毎に1回投与するので、約52個の胃内滞留システムを365日にわたって患者に投与する。
【0199】
キット及び製造物品
本発明の胃内滞留システムを用いた患者の治療のためのキットも本明細書に提供される。キットは、例えば、所望の全治療期間にわたる患者への定期的投与のための充分な数の胃内滞留システムを収容してよい。全治療日数(T全)、及び胃内滞留システムが(D日)の滞留時間を有する場合、D日毎の投与に関して、キットは、(T全を(D日)で割った商)(整数に四捨五入する)に等しい胃内滞留システムの数を収容する。キットは、例えば、容器(容器はカプセルであってよい)中にいくつかの胃内滞留システムを収容してもよく、必要に応じて、用法、治療期間、又は胃内滞留システムの使用及び/もしくは胃内滞留システム中に含有される治療薬に関する他の情報のための印刷した説明書又はコンピュータ読み取り可能な説明書を収容してもよい。例えば、患者に処方された全治療期間が1年であり、かつ、胃内滞留システムが1週間の滞留時間を有する場合、キットは52個のカプセルを収容してもよく、同日(例えば、毎土曜日)に毎週1回1つのカプセルを飲み込むための説明書と共に、各カプセルは1つの胃内滞留システムを含有する。
【0200】
所望の全治療期間にわたる患者への定期的投与のための充分な数の胃内滞留システムを備え、必要に応じて、用法、治療期間、又は胃内滞留システムの使用及び/もしくは胃内滞留システム中に含有される治療薬に関する他の情報を備える製造物品も本発明に包含される。製造物品を、ディスペンサー、トレイ、又は処方された間隔で患者が胃内滞留システムを投与することを補助する他のパッケージングなどの適切なパッケージング中に供給してもよい。
【0201】
好適な実施形態
本発明を次の実施形態によりさらに説明する。実施形態の各々の特徴は、必要かつ実行可能ならば、他の実施形態のいずれかと組み合わせることができる。
【0202】
実施形態1.
患者の胃に投与するための胃内滞留システムであって、前記胃内滞留システムは:
エラストマー成分、ならびに該エラストマー成分と結合した担体ポリマー及び治療薬もしくはその塩を含む複数の少なくとも3つの担体ポリマー-薬物成分を含み、
複数の担体ポリマー-薬物成分の各々は近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備える細長部材であり;
各細長部材の該近接端部は該エラストマー成分と結合し、該エラストマー成分から放射状に突出し、各細長部材は該エラストマー成分と結合しておらず、該近接端部より該エラストマー成分から大きいラジアル距離に位置するその遠位端部を有し;
各細長部材は少なくとも2つのセグメントからなり、各セグメントは近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備え;
セグメントは、外面を有するリンカー領域により連結しており;
リンカー領域の少なくとも1つは、第一リンカー物質及び第二リンカー物質を含み:
【0203】
i)第二リンカー物質は、少なくとも1つのリンカー領域の外面から少なくとも1つのリンカー領域の本体中に延びているか;又は
ii)第二リンカー物質は、少なくとも1つのリンカー領域の外面から少なくとも1つのリンカー領域の本体を通過して延びて、外面上に再出現するか;又は
iii)第二リンカー物質の部分は、少なくとも1つのリンカー領域の外面から少なくとも1つのリンカー領域の本体中に延びており、かつ、第二リンカー物質の部分は、少なくとも1つのリンカー領域の外面から少なくとも1つのリンカー領域の本体を通過して延びて、外面上に再出現する、胃内滞留システム。
【0204】
実施形態2.
患者の胃に投与するための胃内滞留システムであって、前記胃内滞留システムは:
エラストマー成分、ならびに該エラストマー成分と結合した担体ポリマー及び治療薬もしくはその塩を含む複数の少なくとも3つの担体ポリマー-薬物成分を含み、
複数の担体ポリマー-薬物成分の各々は近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備える細長部材であり;
各細長部材の該近接端部は該エラストマー成分と結合し、該エラストマー成分から放射状に突出し、各細長部材は該エラストマー成分と結合しておらず、該近接端部より該エラストマー成分から大きいラジアル距離に位置するその遠位端部を有し;
各細長部材は少なくとも2つのセグメントからなり、各セグメントは近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備え;
セグメントは、リンカー領域により連結しており;ならびに
少なくとも1つのセグメントは、セグメント島物質をさらに含み:
i)セグメント島物質は、少なくとも1つの担体ポリマー-薬物セグメントの外面から少なくとも1つの担体ポリマー-薬物セグメントの本体中に延びているか;又は
ii)セグメント島物質は、少なくとも1つの担体ポリマー-薬物セグメントの外面から少なくとも1つの担体ポリマー-薬物セグメントの本体を通過して延びて、外面上に再出現するか;又は
iii)セグメント島物質の部分は、少なくとも1つの担体ポリマー-薬物セグメントの外面から少なくとも1つの担体ポリマー-薬物セグメントの本体中に延びており、かつ、セグメント島物質の部分は、少なくとも1つの担体ポリマー-薬物セグメントの外面から少なくとも1つの担体ポリマー-薬物セグメントの本体を通過して延びて、外面上に再出現する、胃内滞留システム。
【0205】
実施形態3.
患者の胃に投与するための胃内滞留システムであって、前記胃内滞留システムは:
エラストマー成分、ならびに該エラストマー成分と結合した担体ポリマー及び治療薬もしくはその塩を含む複数の少なくとも3つの担体ポリマー-薬物成分を含み、
複数の担体ポリマー-薬物成分の各々は近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備える細長部材であり;
各細長部材の該近接端部は該エラストマー成分と結合し、該エラストマー成分から放射状に突出し、各細長部材は該エラストマー成分と結合しておらず、該近接端部より該エラストマー成分から大きいラジアル距離に位置するその遠位端部を有し;
各細長部材は少なくとも2つのセグメントからなり、各セグメントは近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備え;
少なくとも1つのセグメントは強化材をさらに含み、該強化材は少なくとも1つのセグメントの内部に沿って軸方向に延び;ならびにセグメントは、リンカー領域により連結している、胃内滞留システム。
【0206】
実施形態4.
強化材が、セグメントの長さの少なくとも約90%、少なくとも1つの内部に沿って軸方向に延びる、実施形態3に記載の胃内滞留システム。
【0207】
実施形態5.
強化材がI形構造又はH形構造を有する、実施形態3又は実施形態4に記載の胃内滞留システム。
【0208】
実施形態6.
強化材がトラス構造を有する、実施形態3又は実施形態4に記載の胃内滞留システム。
【0209】
実施形態7.
患者の胃に投与するための胃内滞留システムであって、前記胃内滞留システムは:
エラストマー成分、ならびに該エラストマー成分と結合した担体ポリマー及び治療薬もしくはその塩を含む複数の少なくとも3つの担体ポリマー-薬物成分を含み、
複数の担体ポリマー-薬物成分の各々は近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備える細長部材であり;
各細長部材の該近接端部は該エラストマー成分と結合し、該エラストマー成分から放射状に突出し、各細長部材は該エラストマー成分と結合しておらず、該近接端部より該エラストマー成分から大きいラジアル距離に位置するその遠位端部を有し;
各細長部材は少なくとも2つのセグメントからなり、各セグメントは近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備え;
細長部材の1つ以上は外面上に有窓性コーティングをさらに含み;ならびに
セグメントは、リンカー領域により連結している、胃内滞留システム。
【0210】
実施形態8.
患者の胃に投与するための胃内滞留システムであって、前記胃内滞留システムは:
エラストマー成分、ならびに該エラストマー成分と結合した担体ポリマー及び治療薬もしくはその塩を含む複数の少なくとも3つの担体ポリマー-薬物成分を含み、複数の担体ポリマー-薬物成分の各々は近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備える細長部材であり;
各細長部材の該近接端部は該エラストマー成分と結合し、該エラストマー成分から放射状に突出し、各細長部材は該エラストマー成分と結合しておらず、該近接端部より該エラストマー成分から大きいラジアル距離に位置するその遠位端部を有し;
各細長部材は少なくとも2つのセグメントからなり、各セグメントは近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備え;
セグメントは、外面を有するリンカー領域により連結しており;
細長部材のセグメントは、少なくとも2つの層を含む多層状構造を有する、前記胃内滞留システム。
【0211】
実施形態9.
患者の胃に投与するための胃内滞留システムであって、前記胃内滞留システムは:
エラストマー成分、ならびに該エラストマー成分と結合した担体ポリマー及び治療薬もしくはその塩を含む複数の少なくとも3つの担体ポリマー-薬物成分を含む患者の胃に投与するための胃内滞留システムであって、
複数の担体ポリマー-薬物成分の各々は近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備える細長部材であり;
各細長部材の該近接端部は該エラストマー成分と結合し、該エラストマー成分から放射状に突出し、各細長部材は該エラストマー成分と結合しておらず、該近接端部より該エラストマー成分から大きいラジアル距離に位置するその遠位端部を有し;
各細長部材は少なくとも2つのセグメントからなり、各セグメントは近接端部、遠位端部、及びその間の外面を備え;
セグメントは、外面を有するリンカー領域により連結しており;
リンカー領域の部分がセグメント中に延びているか、又はセグメントの部分がリンカー領域中に延びているか、又はリンカー領域の部分両方がセグメント中に延び、かつ、セグメントの部分がリンカー領域中に延びている、胃内滞留システム。
【0212】
実施形態10.
細長部材を共押出すること、
を含む胃内滞留システムの使用のための前記細長部材の製造方法。
【0213】
実施形態11.
前記細長部材を共押出することが、
担体ポリマー-薬物配合物を含む少なくとも2つの領域の共押出であって、担体ポリマー-薬物配合物の各領域をリンカー領域により担体ポリマー-薬物配合物の隣接する領域から分離する、共押出
を含む、実施形態10に記載の方法。
【0214】
実施形態12.
前記担体ポリマー-薬物配合物の前記担体ポリマーが、ポリカプロラクトン及びポリジオキサノンからなる群から選択される、実施形態11に記載の方法。
【0215】
実施形態13.
前記担体ポリマー-薬物配合物の前記薬物が、鎮痛薬;抗鎮痛薬;抗炎症薬;解熱薬;抗うつ薬;抗てんかん薬;統合失調症治療薬;神経保護薬;抗増殖剤;抗がん剤;抗ヒスタミン薬;抗片頭痛薬;ホルモン;プロスタグランジン;抗菌薬;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗寄生虫薬;抗ムスカリン薬;抗不安薬;静菌剤;免疫抑制薬;鎮静薬;睡眠薬;抗精神病薬;気管支拡張薬;抗ぜんそく薬;心血管治療薬;麻酔薬;抗凝固薬;酵素阻害薬;ステロイド系薬物;ステロイド系又は非ステロイド系抗炎症薬;副腎皮質ステロイド薬;ドーパミン作動薬;電解質;胃腸薬;筋弛緩薬;栄養剤;ビタミン類;副交感神経刺激薬;刺激物質;食欲低下薬;過眠症治療薬;抗マラリア薬;キニーネ;ルメファントリン;クロロキン;アモジアキン;ピリメタミン;プログアニル;クロルプログアニル-ダプソン;スルホンアミド;スルファドキシン;スルファメトキシピリダジン;メフロキン;アトバコン;プリマキン;ハロファントリン;ドキシサイクリン;クリンダマイシン;アルテミシニン;アルテミシニン誘導体;アルテメテル;ジヒドロアルテミシニン;アルテエーテル;及びアーテスネートからなる群から選択される、実施形態11又は実施形態12に記載の方法。
【0216】
実施形態14.
前記リンカー領域が、腸溶性リンカー及び時間依存リンカーからなる群から選択される物質を含む、実施形態11~13のいずれか1つに記載の方法。
【0217】
実施形態15.
担体ポリマー-薬物領域及びリンカー領域の間の少なくとも1つの接合部を、インターロック構造で共押出する、実施形態11~14のいずれか1つに記載の方法。
【0218】
実施形態16.
少なくとも1つの担体ポリマー-薬物領域を、海島構造で共押出する、実施形態11~15のいずれか1つに記載の方法。
【0219】
実施形態17.
少なくとも1つのリンカー領域を、海島構造で共押出する、実施形態11~16のいずれか1つに記載の方法。
【0220】
実施形態18.
前記海島構造の島成分が、腸溶性ポリマー及び時間依存ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む、実施形態16又は実施形態17に記載の方法。
【0221】
実施形態19.
以下を含む胃内滞留システムの使用のための前記細長部材の製造方法。
【0222】
三次元印刷による細長部材の印刷。
【0223】
実施形態20.
前記細長部材を共押出することが以下を含む、実施形態19に記載の方法。
【0224】
担体ポリマー-薬物配合物を含む少なくとも2つの領域の印刷であって、担体ポリマー-薬物配合物の各領域をリンカー領域により担体ポリマー-薬物配合物の隣接する領域から分離する、印刷
【0225】
実施形態21.
前記担体ポリマー-薬物配合物の前記担体ポリマーが、ポリカプロラクトン及びポリジオキサノンからなる群から選択される、実施形態20に記載の方法。
【0226】
実施形態22.
前記担体ポリマー-薬物配合物の前記薬物が、鎮痛薬;抗鎮痛薬;抗炎症薬;解熱薬;抗うつ薬;抗てんかん薬;統合失調症治療薬;神経保護薬;抗増殖剤;抗がん剤;抗ヒスタミン薬;抗片頭痛薬;ホルモン;プロスタグランジン;抗菌薬;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗寄生虫薬;抗ムスカリン薬;抗不安薬;静菌剤;免疫抑制薬;鎮静薬;睡眠薬;抗精神病薬;気管支拡張薬;抗ぜんそく薬;心血管治療薬;麻酔薬;抗凝固薬;酵素阻害薬;ステロイド系薬物;ステロイド系又は非ステロイド系抗炎症薬;副腎皮質ステロイド薬;ドーパミン作動薬;電解質;胃腸薬;筋弛緩薬;栄養剤;ビタミン類;副交感神経刺激薬;刺激物質;食欲低下薬;過眠症治療薬;抗マラリア薬;キニーネ;ルメファントリン;クロロキン;アモジアキン;ピリメタミン;プログアニル;クロルプログアニル-ダプソン;スルホンアミド;スルファドキシン;スルファメトキシピリダジン;メフロキン;アトバコン;プリマキン;ハロファントリン;ドキシサイクリン;クリンダマイシン;アルテミシニン;アルテミシニン誘導体;アルテメテル;ジヒドロアルテミシニン;アルテエーテル;及びアーテスネートからなる群から選択される、実施形態20又は21に記載の方法。
【0227】
実施形態23.
前記リンカー領域が、腸溶性リンカー及び時間依存リンカーからなる群から選択される物質を含む、実施形態20~22のいずれか1つに記載の方法。
【0228】
実施形態24.
担体ポリマー-薬物領域及びリンカー領域の間の少なくとも1つの接合部を、インターロック構造で印刷する、実施形態20~23のいずれか1つに記載の方法。
【0229】
実施形態25.
少なくとも1つの担体ポリマー-薬物領域を、海島構造で印刷する、実施形態20~24のいずれか1つに記載の方法。
【0230】
実施形態26.
少なくとも1つのリンカー領域を、海島構造で印刷する、実施形態20~25のいずれか1つに記載の方法。
【0231】
実施形態27.
前記海島構造の島成分が、腸溶性ポリマー及び時間依存ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む、実施形態25又は26に記載の方法。
【0232】
実施形態28.
前記リンカーが、空腹時人工胃液中、約7日後に脱共役する、実施形態20~27のいずれか1つに記載の方法。
【0233】
実施形態29.
以下を含む胃内滞留システムの使用のための前記細長部材の製造方法。
【0234】
付加製造により細長部材を製造すること。
【0235】
実施形態30.
付加製造による細長部材の製造が以下を含む、実施形態29に記載の方法。
【0236】
担体ポリマー-薬物配合物を含む少なくとも2つの領域の製造であって、担体ポリマー-薬物配合物の各領域をリンカー領域により担体ポリマー-薬物配合物の隣接する領域から分離する、製造。
【0237】
実施形態31.
前記担体ポリマー-薬物配合物の前記担体ポリマーが、ポリカプロラクトン及びポリジオキサノンからなる群から選択される、実施形態30に記載の方法。
【0238】
実施形態32.
前記担体ポリマー-薬物配合物の前記薬物が、鎮痛薬;抗鎮痛薬;抗炎症薬;解熱薬;抗うつ薬;抗てんかん薬;統合失調症治療薬;神経保護薬;抗増殖剤;抗がん剤;抗ヒスタミン薬;抗片頭痛薬;ホルモン;プロスタグランジン;抗菌薬;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗寄生虫薬;抗ムスカリン薬;抗不安薬;静菌剤;免疫抑制薬;鎮静薬;睡眠薬;抗精神病薬;気管支拡張薬;抗ぜんそく薬;心血管治療薬;麻酔薬;抗凝固薬;酵素阻害薬;ステロイド系薬物;ステロイド系又は非ステロイド系抗炎症薬;副腎皮質ステロイド薬;ドーパミン作動薬;電解質;胃腸薬;筋弛緩薬;栄養剤;ビタミン類;副交感神経刺激薬;刺激物質;食欲低下薬;過眠症治療薬;抗マラリア薬;キニーネ;ルメファントリン;クロロキン;アモジアキン;ピリメタミン;プログアニル;クロルプログアニル-ダプソン;スルホンアミド;スルファドキシン;スルファメトキシピリダジン;メフロキン;アトバコン;プリマキン;ハロファントリン;ドキシサイクリン;クリンダマイシン;アルテミシニン;アルテミシニン誘導体;アルテメテル;ジヒドロアルテミシニン;アルテエーテル;及びアーテスネートからなる群から選択される、実施形態30又は31に記載の方法。
【0239】
実施形態33.
前記リンカー領域が、腸溶性リンカー及び時間依存リンカーからなる群から選択される物質を含む、実施形態30~32のいずれか1つに記載の方法。
【0240】
実施形態34.
担体ポリマー-薬物領域及びリンカー領域の間の少なくとも1つの接合部を、インターロック構造で製造する、実施形態30~33のいずれか1つに記載の方法。
【0241】
実施形態35.
少なくとも1つの担体ポリマー-薬物領域を、海島構造で製造する、実施形態30~34のいずれか1つに記載の方法。
【0242】
実施形態36.
少なくとも1つのリンカー領域を、海島構造で製造する、実施形態30~35のいずれか1つに記載の方法。
【0243】
実施形態37.
前記海島構造の島成分が、腸溶性ポリマー及び時間依存ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む、実施形態35又は36に記載の方法。
【0244】
実施形態38.
前記リンカーが、空腹時人工胃液中、約7日後に脱共役する、実施形態30~37のいずれか1つに記載の方法。
【実施例
【0245】
本発明を、次の非限定的実施例によりさらに例示する。
【0246】
実施例1:構造ポリマーを含む強化薬剤アーム
高薬剤負荷を有する剤形は、構造的に脆く、胃内環境において水和作用をさらに弱化する。したがって、高薬剤負荷製剤に関して7日間の胃内滞留を成功裏に達成することは困難である。高薬剤負荷製剤を取り囲む外部強化材層を有する二層構造を製造して、剤形の機械的強度の維持に対する効果を理解し、外部機械的応力下のその性能を比較する。
【0247】
強化材層を作製するため、黒色酸化鉄顔料をドープしたPCLを、約500マイクロメートル厚のリボンとして押し出し、20mm長の小片に断裁した。互いに密着させた2層を保持することにより、薄い100%黒色PCL層を38%薬剤担持アームの1つの側面上に圧縮成形して置き、75℃で10分間乾燥機内においてインキュベートし、それから、一緒に圧縮した。この方法を使用して、担体ポリマー-薬物配合物が1つの側面に脊椎型強化材層を有する脊椎強化材構造を作製した;この構造の模式図を図11Aに示す。この方法を使用して、担体ポリマー-薬物配合物が3つの側面全てに外骨格型の強化材層を有する外骨格強化材構造を作製した;この構造の模式図を図11Bに示し、外骨格強化アームの写真を図11Cに示す。強化高薬剤担持サンプルの機械強度を、FaSSGF中で24時間4点曲げ試験インキュベーション前後の強化材構造両方(脊椎及び外骨格)に関して、非強化高薬剤担持サンプルと比較した。
【0248】
結果は、前インキュベーション条件では、図11Dの表に示されているように、強化材構造両方に関して、これらはより高い曲げ力を耐えるので、強化構造は高薬剤担持アームをより延性のあるものにする。インキュベーションしたら直ぐに、強化材層は、長期胃内滞留期間にとって重要である高薬剤担持製剤の剛性を強化及び維持する助けとなる。
【0249】
「システムの製造/組立:共押出」の節において述べたように、この強化細長部材を、強化材及び担体ポリマー-薬物成分を別々に製造して一緒に圧縮することの代わりに、強化材及び担体ポリマー-薬物配合物の共押出により製造することができる。
【0250】
実施例2:一成分押出と熱結合とを比較した共押出-溶接強さに対する効果
PCL(図12Cの要素1280、1282及び1284と均等)の3つの4mm~6.5mmセグメントに隣接する2つの1.5mmセグメント崩壊マトリックス(DM)(図12Cの要素1290及び1292と均等)からなる複合材アームを、共押出してから、図12Aに示されているように流れ(押出)方向に対して垂直に断裁して長方形断面を有するアームを得る二段階方法で製造した。特定の配向で配置される押出機両方からポリマーを流すことを可能とする共押出ヘッドと連結された2つの5/8インチ(約1.59cm)一軸スクリュー方式押出機からなる標準的実験室規模二成分共押出機を用いてリボンを製造した。共押出及び断裁により製造された細長部材(アーム)の例を図12Cに図示している。
【0251】
純粋80k PCLを1つの押出機にロードし、崩壊マトリックス(DM)配合物(60%80k PCL/40%HPMCAS-MG)を他の押出機にロードした。融解流速設定ポイントを、DM流速がPCL流速の約20%に設定するように調節した。共押出ヘッドから出る融解リボンをテフロンベルトのコンベヤー上に案内して、リボンに対して支持し、かつ、取り扱い前に硬化させた。リボンは、3.5mm×20.5mmの断面寸法を有した。リボンを、押出方向に対して垂直に断裁して、20.5mmの長さ、4mmの幅、3.5mmの高さの複合材アームを製造した。
【0252】
比較のため、アームを、PCLの前に押し出されたセグメント及び同じDM配合物を結合するために熱溶着を用いて製造した。押し出された80k PCLアームを1cm片に断裁した。1cm PCLセグメントの一端を5秒間100℃の加熱エレメントと接触させることにより融解し、DMのセグメントの一端を10秒間170℃の加熱エレメントと接触させることにより融解した。2つの融解端を約2秒間優しく加圧し、得られたヘッドを溶着部に沿って平らにした。クリッパーを用いて、接合したDMセグメントを2mmの長さに断裁した。DMセグメントの溶接していない端を、熱溶着方法を繰り返して第二の1cm PCLセグメントと接合した。
【0253】
共押出アーム及び熱溶着アームの溶着強度を、2つのPCLセグメントに隣接する1つのリンカー領域を含むサンプルが引張り応力下で裂かれた位置を観察することにより比較した。共押出ならびに熱溶着アームを、FaSSGF内で3つの異なる期間、1日、4日及び7日間インキュベートした。全3インキュベーション期間に関して、それぞれの時点でFaSSGF溶液からアームを取り出し、DI水で洗浄してドライワイプした。5つのインキュベーション後アームの溶着強度を、直線ステージ付き引張試験機で引張試験を行うことにより条件毎に試験した。試験した引っ張りの平均ステージ速度を、0.0796mm/秒に設定し、最大ステージ変位は降伏点に応じてサンプル間で異なった。
【0254】
図13のデータは、全てのインキュベーション期間に関して、80%以上の熱融着アームは、リンカー内でなく、溶着部において裂かれたが、溶着部において裂かれた共押出アームはなく、80%以上はリンカー内で裂かれた。リンカー内での裂けは、共押出アームがリンカーと薬剤製剤間の強い界面を有することを示し、溶着界面において破壊した熱溶着アームでは観察されなかった。
【0255】
実施例3:熱結合を有する一成分押出と比較した製造速度共押出
実施例2に記載されたように行われた共押出方法は、複合材アームの高スループットで拡張性ある製造を可能とする。毎分約12インチ(約30.48cm)における複合材リボンの共押出は、毎分約180個の3.33mm幅アームを生産した。同じ線速度において軸方向のアームの押出は、毎分6個超のアームを生産し、崩壊マトリックスセグメントを組み込むための追加の処理を必要とする。
【0256】
実施例4:疎水性APIの完全放出を達成するための内側強化材層及びAPI担持外層を有する2層構造
バルクマトリックス中の疎水性薬剤の製剤は、マトリックスコアの水和を限定し、7日目で約50%の総放出しか達成しない。構造PCLコアを囲む外層中の疎水性活性医薬成分(API)を含む2層構造を製造した。空のPCLアームをタクロリムス及びポリエチレン酢酸ビニル(PEVA)(ジクロロメタン中30%(w/v))を含有する溶液に浸漬した。タクロリムス:1:1、1:2及び2:1のPEVA比を評価した。浸漬塗布は、約10~20%の重量増加及びPCL構造エレメントの表面上の約6mgタクロリムスの堆積をもたらした。
【0257】
擬似生理学的条件下インビトロでの放出を試験するため、空腹時人工胃液(FaSSGF)を製造者説明書に従って調製した(www.biorelevant.com:国際公開第2017/070612号パンフレット、特に実施例3及び7も参照)。個々の塗布した薬剤アームを、37℃で7日間振盪インキュベーターにおいて10mL放出媒体中でインキュベートした。放出媒体中の薬剤含有率を、6時間後、24時間後、それから7日間まで毎日、HPLCにより通常通り分析した。各辞典において、放出媒体の全体積を新しい媒体で置き換えた。1:1及び2:1のタクロリムス:PEVA比を含有する製剤からインビトロで7日インキュベーション後にほとんど100%のタクロリムスを放出した。時間に対するタクロリムスの放出プロファイルを、図14の様々な製剤に関して示した。
【0258】
実施例5:海島共押出
共押出を使用して、セグメント-リンカー-セグメント複合材アームのための前駆体としての役割をすることができるモデル長方形リボンを製造し、各アームは、担体ポリマー-薬物配合物のセグメントに隣接する円柱状「海島」のアレイからなるリンカー領域を備える。海島は、1つの外面から反対側の面に延びた。ポリプロピレンをモデル島物質として使用し、PCLを使用してリンカーの海物質を形作った。PCLを使用し、担体ポリマー-薬物配合物も形作った。特定の配向で配置される押出機両方からポリマーを流すことを可能とする共押出ヘッドと連結された2つの5/8インチ(約1.59cm)一軸スクリュー方式押出機からなる標準的実験室規模二成分共押出機を用いてリボンを製造した。約3.5×20mmの断面寸法を有し、約4.5mm幅のPCL領域と各側面で隣接するPCLの海中8つの円柱状ポリプロピレン島(各約250μm径)を含む約2mm幅のリンカー領域からなるリボンを製造するように共押出ヘッドを設計した。純粋80kPCLを1つの押出機にロードし、ポリプロピレンを他の押出機にロードした。ポリプロピレン流速を含む融解流速設定ポイントを、PCL流速の約8%に設定した。共押出ヘッドから出る融解リボンをテフロンベルトのコンベヤー上に案内して、リボンに対して支持し、かつ、取り扱い前に硬化させた。
【0259】
実施例6:海島:リボン断裁
それから、実施例4で製造した硬化前駆体リボンを必要に応じて所望の形状に裁断する。所望の形状(例えば、三角形又はパイ状断面)の複合材アームを製造するため、押出方向に対して垂直にリボンを断裁した。
【0260】
全ての出版物、特許、特許出願及び特定引用により本明細書中参照される公開特許出願の開示は、その全文を参照することにより本明細書に援用される。ユニフォームリソースロケータ(URL)の最初の「ワールド・ワイド・ウェブ」を用いるウェブサイトの参照は、「ワールド・ワイド・ウェブ」を「www」で置き換えることによりアクセスすることができる。
【0261】
前述の本発明を明確に理解する目的のために例証及び実施例によっていくらか詳細に説明したが、特定の変更及び修正が実践されることは当業者には明白である。したがって、明細及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14