(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】物質排出量の確認方法
(51)【国際特許分類】
F02D 41/14 20060101AFI20250108BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
F02D41/14
F02D45/00 362
F02D45/00 364A
F02D45/00 360A
F02D45/00 360E
F02D45/00 358
(21)【出願番号】P 2022517790
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(86)【国際出願番号】 EP2020079930
(87)【国際公開番号】W WO2021083811
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】102019216843.4
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591005165
【氏名又は名称】ディーア・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】DEERE AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】ゴッサード,クリストフ
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0300422(US,A1)
【文献】特開2003-328732(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0233326(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0201054(US,A1)
【文献】特開平11-351049(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011009179(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00-45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業用ユーティリティビークルの機能ユニッ
トの動作の結果として排出される物
質の量を確認する方法であって、
-確認対象の前記物
質の量に関係なく生成される信号
源からの信
号が入力デー
タとしてデータ処理装
置に送信され、
-前記データ処理装
置は、前記入力デー
タを処理するための訓練済みモデルとして少なくとも1つのニューラルネットワー
クを含み、
-前記物
質の排出量を表す出力デー
タが、前記データ処理装
置内で前記少なくとも1つのニューラルネットワー
クを使用して生成さ
れ、
-前記入力データは、前記信号源からの前記信号の値が、該信号の許容される最大値より大きい場合に前記データ処理装置に送信される、
方法。
【請求項2】
前記物
質の排出量は以下の物質の群:NOx、CO
2、CO、HC、N、NH
4、P、Kから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機能ユニットは以下のユニットの群:
-内燃機
関、
-排ガス後処理システム、
-スラリの充填又は散布装
置
から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記信号
源からの信
号は前記機能ユニッ
トのパラメー
タを表すことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記信号
源からの信
号は、以下のパラメータ:
-排ガス温
度、
-内燃機
関のトル
ク、
-内燃機
関の速
度、
-前記スラリ組成に影響を与える可変
値
のうちの少なくとも1つの値を表すことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
確認対象の前記物
質の量に関係なく生成される信
号は以下の信号源:
-少なくとも1つのセン
サ、
-制御ユニッ
ト
のうちの少なくとも1つにより提供されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
農業用ユーティリティビークルの機能ユニッ
トの動作の結果として排出される物
質の量を確認するための機
構であって、
-確認対象の前記物
質の量に関係なく生成される信
号を提供するための信号
源と、
-前記信
号を入力デー
タとして受信し、前記入力デー
タを処理するための訓練済みモデルとしての少なくとも1つのニューラルネットワー
クを含むデータ処理装
置と、
-前記少なくとも1つのニューラルネットワー
クを使用して生成され、前記物
質の排出量を表す出力デー
タを出力するための前記データ処理装
置の出
力と、
を有
し、
-前記入力データは、前記信号源からの前記信号の値が、該信号の許容される最大値より大きい場合に前記データ処理装置に送信される、
機構。
【請求項8】
前記物
質の排出量による所定の限界
値の遵守をチェックするために使用されることを特徴とする、請求項
7に記載の機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ユーティリティビークルの機能ユニットの動作の結果として排出される物質の量を確認する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用ユーティリティビークルの重要な評価基準は、それらの内燃機関の動作中の特定物質の排出である。これらの排出物質の量又は濃度が測定され、所定の限界値が遵守されているか否かがチェックされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、農業用ユーティリティビークルの機能ユニットの動作の結果として排出される物質の量を、技術的努力をほとんど用いずに確認するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、特許請求項1の特徴を有する方法によって達成される。
【0005】
本発明による方法のその他の有利な構成は、従属項からわかる。
【0006】
特許請求項1に記載の方法は、農業用ユーティリティビークルの機能ユニットの動作の結果として排出される物質の量を確認するために使用される。この場合、分析対象の物質に関係なく、又は確認対象の物質の量に関係なく生成される信号源からの信号が、データ処理装置に入力データとして送信される。データ処理装置は、入力データを処理するための訓練済みモデルとして少なくとも1つのニューラルネットワークを含む。物質の排出量を表す出力データが、データ処理装置内で少なくとも1つのニューラルネットワークを使用して生成される。
【0007】
少なくとも1つのニューラルネットワークを有するデータ処理装置の使用によって、入力データは、一方では高い正確さで、他方で技術的努力をほとんど用いずに、確実に処理されることが可能となる。このような人工知能は、特定の定義フェーズと特定の学習フェーズ(訓練フェーズ)を経るだけで、物質の量を正しく確認するための十分に正確な出力データを提供できる。これらの定義及び学習フェーズが完了した後、この人工知能は、ソフトウェアベースのモデル、特にアルゴリズムベースのモデルとして、技術的モデルによる使用に、ひいてはユーティリティビークルの技術的に複雑でそれに相応の高いコストがかかるセンサシステムに置き換わるものとしての使用に適している。
【0008】
したがって、例えば酸化窒素(NOx)の排出濃度を確認するための高価なセンサシステムを回避できる。むしろ、それぞれ排出される物質の量は、ユーティリティビークル内でいずれかの方法(例えば、センサシステム、制御ユニット、CANバス)で入手可能な信号を少なくとも1つのニューラルネットワークと組み合わせることによって、技術的に簡単で費用対効果の高い方法により確認できる。この場合、それぞれのニューラルネットワーク又はモデルは、定義及び学習フェーズにおいて、正確にユーティリティビークル内でいずれかの方法で入手可能なこのような信号を利用して訓練されることが好ましい。機能ユニットの動作中、データ処理装置又はその少なくとも1つのニューラルネットワークは次に、訓練された仮想センサシステムとして、関係する物質量を技術的に確実に、費用対効果の高い方法で確認するために使用できる。
【0009】
各々がそれらの排出量(例えば、濃度、粒子個数、粒子流量、体積流量)に関して分析又は試験される異なる排出物質が、確認される物質量として考えられる。物質の具体的な量は、その物理的状態(固体、液体、気体)に関係なく分析又は確認できる。同時に複数の物理的状態を有する個々の物質もまた、それらの量に関して、適切に設計されたデータ処理装置を用いてチェックできる。
【0010】
データ処理装置とその少なくとも1つのニューラルネットワークは、1つの物質を分析し、その結果、1つの具体的な物質量を確認するために設計されてよい。代替的に、データ処理装置は、複数の異なる具体的な物質を分析するのに適当であるような方法で適切に訓練されたニューラルネットワークを用いて設計される。
【0011】
好ましくはそれらの物質排出量に関して分析される物質は、各種の酸化窒素NOx、例えばNO及びNO2、二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(CH)である。これらの物質は、例えば機能ユニットとしての内燃機関の動作中に関係する。
【0012】
確認されることになるその他の物質は、アンモニウム(NH4)及び化学元素N、P、Kであってよく、これらの元素は元素形態でも、又は化合物形態、例えば窒素化合物、硝酸塩(NO3)、リン酸塩(P2O5)、カリ(K2O)でも確認できる。これらの物質は、例えば有機肥料又はスラリの散布時、好ましくはスラリトレーラの充填又は散布装置の動作中に関係する。
【0013】
(例えば、田畑や牧草地の)土壌中の硝酸塩もまた物質排出量として確認できる。この場合、硝酸塩の量又は硝酸塩の濃度は、土壌へのスラリ又は窒素の散布によって、及びその後の土壌中での変換によって間接的に排出される。
【0014】
方法は、分析又は確認されることになる物質量を排出する様々な機能ユニットに適用できる。特に、ユーティリティビークルの内燃機関又は排ガス後処理システムが機能ユニットとして考えられる。さらに、後者の器具又はサブユニットも農業用ユーティリティビークルの機能ユニットとして考えられ、それは、これらがユーティリティビークルが作業への使用中に機能を果たすからである。例えば、これらは好ましくはスラリトレーラ上のスラリ充填又は散布装置(例えば、ノズル、バルブ、ライン)である。全てのケースにおいて、本発明による方法を用いた場合、技術的に複雑で、したがって高コストのセンサシステム及び測定装置を回避できる。
【0015】
それぞれの信号源からの信号は好ましくは、機能ユニットの1つ又は複数のパラメータを表す。特に、信号は、あるパラメータに関するその機能ユニットの現在の状態又は実際の状態を表すために使用される。したがって、データ処理装置は常に機能ユニットの現在の状態を考慮に入れることができる。
【0016】
データ処理装置のための入力データとして適した信号は例えば、以下のパラメータの少なくとも1つのパラメータ値である:農業用ユーティリティビークルの内燃機関の燃焼ガスの排ガス温度、内燃機関のトルク、内燃機関の速度。その他のパラメータは、環境条件(例えば、温度、外気圧)又は機能ユニット内のその他の技術的パラメータであってよい。
【0017】
上述のパラメータは、特に内燃機関又は排ガス後処理システムが機能ユニットである場合に適当である。
【0018】
スラリの充填又は散布装置(例えば、スラリトレーラ上に配置される)が機能ユニットである場合、スラリの組成に影響を与える可変値(例えば、動物の種類、動物の飼料、スラリの保管の種類及び/又は期間)が好ましくはパラメータとして使用できる。
【0019】
土壌の硝酸塩濃度が確認対象の物質量である場合、上述のパラメータのほかに、以下のパラメータが、例えば機能ユニットとしてのスラリ充填又は散布装置に関連して考慮される:異なる気象条件、太陽放射、影響を受ける田畑の表面組成。
【0020】
一方で、パラメータの信号は物質量の直接的確認に依存せず、機能ユニットの現在の状態及び現在の特性に同時に関係する。他方で、これらのパラメータは、ユーティリティビークルにおいては多くの場合、特に従来のセンサシステムによって定常的に利用可能である。したがって、物質量を確認する目的で物質量に関係なく信号を提供するために必要な技術的努力は小さいままである。
【0021】
少なくとも1つのセンサ、複数のセンサの組合せ、又は制御ユニットが好ましくは、物質量に関係なく信号を生成し、提供するために提供される。これらの信号源には、ユーティリティビークルにおいて多くの場合にこれらがすでに定常的に利用可能であり、追加の出費を必要としない、という利点がある。この場合、制御ユニットはまた、制御及び/又はデータバス(例えば、CAN)から信号を受信でき、これらを物質量に無関係な信号として提供できる。特性曲線群から得られるセンサ信号もまた、制御ユニットを使用して提供されてもよい。その他の場合に、センサ又はセンサシステムはユーティリティビークルの外部のユニット、例えば衛星、ドローン、測候所の一部であってもよい。そこからの信号又はデータは次に、当初、制御ユニットに供給することも、又はデータ処理装置に入力データとして直接送信することもできる。データネットワーク(例えば、インタネット)からのデータも入力データとして使用できる。後者のデータはおそらく、当初、制御ユニットに供給されてよく、それがその後、関係するテータをデータ処理ユニットに入力データとして送信する。
【0022】
入力データは好ましくは、信号源からの信号と少なくとも1つの所定の参照値との比較に基づいて、データ処理装置に送信される。これによって、入力データを特定の比較結果のみに基づいて送信することが可能となる。適当な比較はしたがって、分析される物質量が連続的に確認されず、むしろ特に特定された条件下でのみ、すなわち確認が必要であると思われたときにのみ確認されるという事実を制御するための根拠とすることができる。これによって、有利な点として、データ送信の回数と必要な計算能力が減る。使用されるデータ伝送媒体に応じて、この削減もまたコスト節減効果を有する。
【0023】
1つの好ましい実施形態において、所定の参照値は機能ユニットの較正状態を表す較正値として有効である。この較正状態は次に、信号源からの信号により表される機能ユニットの現在の実際の状態と比較できる。例えば、内燃機関の較正状態は参照値、特に超えるべきではない最大値によって事前に決定され、これは試験フェーズで、又は内燃機関の承認中にあらかじめ得られる。これらの参照値は例えば、内燃機関の最大トルク、内燃機関の最大速度、又は燃焼ガスの最大排ガス温度に関する。したがって、較正状態と実際の状態との比較は、物質排出量が実際に確認する必要があるか否かを効率的に決定するための予備チェックとして適当である。
【0024】
特に、入力データは、信号源からの信号の値(例えば、内燃機関のトルクの測定値)が所定の参照値(例えば、内燃機関の承認中に特定された最大トルク)より大きい場合にデータ処理装置に送信される。したがって、データエコノミの目的のために、物質排出量は物質が潜在的に過剰に大量である兆候があるときにのみ確認されることになる。
【0025】
農業用ユーティリティビークルの機能ユニットの動作の結果として排出される物質量を確認するための機構は、信号源とデータ処理装置を含む。
【0026】
信号源は、物質量とは無関係に生成される信号を提供するために使用される。したがって、これらの信号は物質量を表さないが、データ処理装置のための入力データを形成する。それが今度は、出力において、データ処理装置に実装された少なくとも1つのニューラルネットワークを使用して生成され、物質の排出量を表す出力データを出力する。したがって、それぞれ排出される物質の量は、例えばユーティリティビークルにおいていずれかの方法(例えば、センサシステム、制御ユニット)により入手可能な信号を少なくとも1つのニューラルネットワークと組み合わせることによって、技術的に簡単で、費用対効果の高い方法で確認できる。
【0027】
機構は好ましくは、物質の排出量を確認し、それが所定の限界値を遵守しているか否かをチェックするために使用される。これは例えば、遵守すべき、又は超過すべきではない、法令により規定された最大値であってよい。この目的のために、データ処理装置からの出力データは、例えば対応する比較アルゴリズムを有する下流のチェックステージに供給されてもよい。
【0028】
農業用ユーティリティビークルは特に、トラクタ、収穫機、フィールドチョッパ、又はその他である。
【0029】
以下に、添付の図面に基づいて本発明をより詳しく説明する。その中で、一致する、又は同等の機能を有するコンポーネントは同じ参照符号を使用して示される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】概略的に示された、本発明による方法を実行するための機構の例示的な実施形態を示す。
【
図2】概略的に示された、本発明による方法を実行するための機構の他の例示的な実施形態を示す。
【
図3】概略的に示された、本発明による方法を実行するための機構の他の例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、農業用ユーティリティビークル、特にトラクタの機能ユニット12、14の動作の結果として排出される物質Emの量を確認するための複数のコンポーネントを有する機構10を示す。
図1及び
図2において、機能ユニット12はユーティリティビークルの内燃機関であり、
図3による実施形態では、機能ユニット14は概略的にのみ示されているスラリ散布装置の形態である。この散布装置14は、動作中にユーティリティビークルによって引かれるスラリトレーラ16の一部である。
【0032】
図1によれば、センサシステム18は内燃機関12の現在のパラメータ値、例えば内燃機関12の排ガス温度T、トルクM、及びエンジン速度を捕捉する。簡略化するために、センサシステム18はここでは、パラメータを捕捉するために必要な個々のセンサの総称として言及されている。センサ信号S_senは、センサシステム18によって確認対象の物質Emの量に関係なく生成され、制御ユニット20に供給される。制御ユニット20は好ましくは、信号又はデータ処理に必要な機能、例えば読出し及び/又は書込みユニット、メモリユニット、プロセッサを含む。それに加えて、データ及び/又は制御バス22からの信号又はデータもまた制御ユニット20に供給される。このバス22は好ましくは、車両内にあり、例えばCANバスである。
【0033】
制御ユニット20は、センサシステム18又はバス22から受け取った信号又はデータをデータ処理装置26の入力24に、おそらくは処理された形態で、入力データD_einとして送信する。
【0034】
代替的に、センサ信号S_senはまた、制御ユニット20を介さずに、データ処理装置26に直接送信することもできる。
【0035】
データ処理装置26は、少なくとも1つのニューラルネットワークNNを含み、これは、入力データD_einを処理するための訓練されたソフトウェアベースのモデルの形態である。少なくとも1つのニューラルネットワークNNは、あたかも、物質Emの排出量の直接測定に代わる仮想センサシステムを形成する。
【0036】
出力データD_ausは、データ処理装置26の出力28にあり、物質Emの排出量を表し、データ処理装置26の中で少なくとも1つのニューラルネットワークNNを使用して生成される。
【0037】
出力データD_ausはチェックステージ30に供給され、そこで出力データD_ausは、おそらくはすでにさらに処理されたデータで所定の限界値W_grと比較される。比較は、所定の限界値W_grが、出力データD_ausの値により、及びその結果、物質Emの計算によって確認された量の値により遵守され、特にそれが超過されていないかをチェックするために使用される。チェックステージ30において、比較結果に依存する情報も生成され、ユーザ又は第三者に出力されることが可能である。さらに、測定はチェックステージ30において、例えば適切な制御信号を出力することによって開始できる。
【0038】
図2による機構の
図1による実施形態との違いは実質的に、制御ユニット20での比較ステップS1中に、センサシステム18からの信号S_senが所定の参照値W_refと比較される点である。入力データD_einは、比較ステップS1での比較結果に基づいてデータ処理装置26に送信される。
【0039】
この例示的な実施形態において、参照値W_refは、内燃機関12の較正状態を表す較正値W_kalに対応する。較正状態は、内燃機関12の試験フェーズ又は承認によって事前に定義される。換言すれば、内燃機関12の許容動作範囲はそれによって定義される。したがって、較正値W_kalは例えば、内燃機関12の最大許容排ガス温度T_max、許容最大トルクM_max、又は最大許容速度n_maxに対応する。
【0040】
センサシステム18からの信号S_senは内燃機関12の捕捉された現在の状態を表すが、それは、センサシステム18が内燃機関12の個々のパラメータの現在の値、例えば現在の排ガス温度T、現在のトルクM、及び/又は現在のエンジン速度nを捕捉するからである。
【0041】
比較ステップS1で、したがって、内燃機関12の較正状態は選択されたパラメータに関するその現在の状態と比較される。比較によって、選択されたパラメータの現在の値が所定の参照値W_ref又は較正値W_kalを超えないこと(これは、S_sen≦W_refを意味する)がわかった場合、制御ユニット20はデータ処理装置26に何れの入力データD_einも送信しないことを決定する。それに対して、比較によって検討対象のパラメータの現在の値が所定の参照値W_ref又は較正値W_kalを超えること(これは、S_sen>W_refを意味する)がわかった場合、制御ユニット20は入力データD_einがデータ処理装置26に送信されるようにする。そのために、比較ステップS1のYES出力に2進値J=1を割り当てることができ、この2進値は、AND演算子ANDにおけるその処理によって制御ユニット20に入力データD_einを送信させる。
【0042】
したがって、比較ステップS1により、入力データD_einは、内燃機関12のその較正状態から外れた動作が特定されたときにのみデータ処理装置26に送信される。その場合にかぎり、物質Emの過剰に高い排出量が生成される可能性があり、したがってこれはデータ処理装置26によって計算される。したがって、比較ステップS1は、内燃機関12がその所定の較正状態内で動作している場合には不必要なデータトランザクションを回避する。
【0043】
図1及び
図2による実施形態において、機構10は、物質NO、NO
2、CO
2、CO、HCのうちの少なくとも1つの物質Emの排出量を確認する。これらの物質は、内燃機関12の動作に関連した関心対象である。
【0044】
これに対して、
図3による機構10は農業区域へのスラリの散布に関連する物質Emの排出量を確認する。例えば、以下の物質のうちの少なくとも1つの物質Emがこの場合に確認される:アンモニウム(NH
4)、リン酸塩(P
2O
5)、カリ(K
2O)、窒素(N)、硝酸塩(NO
3)。
【0045】
図3による実施形態においても、信号は確認対象の物質Emの量に関係なく生成され、制御ユニット20において、おそらくは処理された形態で提供されて、その後、データ処理装置26に入力データD_einとして送信される。
図3の所期の用途によれば、ニューラルネットワークNNは、散布されたスラリの結果として排出された物質(例えば、NH
4、P
2O
5、K
2O、N、NO
3)の排出量を計算又は確認するために、仮想センサシステムとして特に訓練される。
【0046】
制御ユニット20により提供される信号は、センサ信号S_sen及び/又はデータネットワーク32(例えば、インタネット)からの信号又はデータに基づく。これは例えば、農業従事者又はユーザによって、スラリ組成に影響を与える可変値G_gを制御ユニット20にパラメータとして送信するために使用されてよい。この可変値G_gはまた、データベースからのデータとして、又はセンサ信号としてデータネットワーク32を介して制御ユニット20に自動的に送信されることも可能である。
【0047】
スラリ組成に影響を与える可変値G_gは好ましくは、スラリを生成する動物の種類、動物の飼料、又はスラリの保管の種類及び/若しくは期間である。
【0048】
土壌34内の硝酸塩濃度が確認対象の物質Emの量である場合、上述の可変値G_gのほかに、以下のパラメータが例えばパラメータとして検討される:気象条件、太陽放射、影響を受ける田畑36の表面組成。これらのパラメータの値は好ましくは、適当なセンサシステム18’によって捕捉される。このセンサシステム18’は少なくとも1つのセンサを含み、少なくとも部分的に、操作されているユーティリティビークルの外部の1つ又は複数のユニット、例えば衛星、ドローン、測候所の一部であってもよい。そこからの信号又はデータS_senはその後、制御ユニット20に供給される。
【0049】
土壌34内の硝酸塩濃度も同様に、物体Emの排出量として確認されてよい。この場合、硝酸塩の量また濃度は、スラリ又は窒素の土壌34への散布によって、及び土壌34中でのその後の変換によって間接的に排出される。
【0050】
図3において、データ処理装置26からの出力データD_ausは、物質Emのそれぞれの排出量を表し、これもチェックステージ30に供給される。
図3のチェックステージ30の機能に関しては、
図1による実施形態の説明を参照されたい。