(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】電磁波シールド性能を有する熱可塑性樹脂組成物ならびに成形部品
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20250108BHJP
C08K 3/10 20180101ALI20250108BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20250108BHJP
H01F 1/153 20060101ALI20250108BHJP
H01F 1/26 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/10
H05K9/00 W
H01F1/153 175
H01F1/153 133
H01F1/153 108
H01F1/26
(21)【出願番号】P 2022547009
(86)(22)【出願日】2021-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2021032862
(87)【国際公開番号】W WO2022050425
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2020149956
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】見山 彰
(72)【発明者】
【氏名】増子 芳弘
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-151206(JP,A)
【文献】特許第4514828(JP,B2)
【文献】特開2013-118348(JP,A)
【文献】特開2018-078263(JP,A)
【文献】実開平05-005837(JP,U)
【文献】特開2004-221602(JP,A)
【文献】特許第4362403(JP,B2)
【文献】特開2013-055182(JP,A)
【文献】特表2017-510993(JP,A)
【文献】特表2018-536299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 -101/14
C08K 3/00 - 13/08
H05K 9/00
H01F 1/153
H01F 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、組成式Fe
aB
bSi
cP
xC
yCu
zで表される合金を含む軟磁性粉末を
50~80体積%と、を含有し、
79≦a≦86原子%、5≦b≦13原子%、0<c≦8原子%、1≦x≦8原子%、0<y≦5原子%、0.4≦z≦1.4原子%、及び0.08≦z/x≦0.8である、熱可塑性樹脂組成物
(但し、前記軟磁性粉末を50体積%含むものを除く)。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン・酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリブチレンテレフタレートの少なくとも一種以上を含む請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂組成物の厚み1.0mmシートを用いて、KEC法で測定した周波数0.3MHzと1MHzでの磁界成分の減衰率が共に3dB以上である、請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3記載の熱可塑性樹脂組成物を加熱溶融成形加工してなる成形部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の装置内部、とりわけ電動車両に搭載されている電力変換機器やデータ処理装置などから発生する、周波数が1MHz以下の電磁波(以下、これをしばしば低周波数領域電磁波と言い換える)を遮蔽または吸収して電磁波ノイズを抑制する低周波数領域の電磁波のシールド性能を有する軟磁性粉末を配合した軟磁性粉末含有樹脂組成物ならびに、シート、ホースなどの成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器から発生する不要電磁波は、他の電子機器に影響を及ぼして誤動作を招く原因となっている。こうした不要電磁波の弊害を抑制するために、電磁波シールド材料が用いられている。
【0003】
こうした電磁波シールド材料として、種々の軟磁性材料が提案されている。このような軟磁性材料としては、周波数が数百MHz~数GHzの電磁波に対して、パーマロイ類が優れたシールド性を示すことが一般的に知られている。
【0004】
軟磁性材料の一つとして、Fe基部分が結晶化したレアアース元素(Nbなど)を必須成分とするナノ結晶軟磁性材料が知られており、1GHz以上の高周波数領域の電磁波シールド材として検討されている。
【0005】
最近になって、Fe基ナノ結晶軟磁性材料において前記したレアアース元素を含まない汎用元素のみから構成された、以下に記す新規なナノ結晶軟磁性材料が見出されている。この材料は、組成式FeaBbSicPxCyCuzの合金組成物であって、添え字のa,b,c,x,y,zは79≦a≦86原子%、5≦b≦13原子%、0<c≦8原子%、1≦x≦8原子%、0<y≦5原子%、0.4≦z≦1.4原子%、及び0.08≦z/x≦0.8の関係を満たすものである。また、この材料は、高周波誘導溶解設備などを用いて溶融し、その後、溶解した合金組成物を単ロール液体急冷法により急冷処理して連続薄帯を形成し、次に、温度保持部を450~550℃×10分などの条件とし、昇温速度を60~1200℃/分の条件で熱処理することでFe基部分が高度に結晶化したナノ結晶合金組織を有する薄帯形状が得られることが記されている。
【0006】
電磁波シールド材料の成形形態としては、シート、シート積層体、ホース、シールドケースなどが提案され、実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特公平4-4393
【文献】特開平11-298187
【文献】特許第4195400号
【文献】特許第4557301号
【文献】特許第4514828号
【文献】特表2017-510993
【文献】特許第4362403号
【文献】特開平5-145271
【文献】実開平4-133446
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これまで、1MHz以下の低周波数領域電磁波を有効にシールドするために、既存の軟磁性材料を厚板化、積層化したり、ケース状に囲むことで対応を取っていた。しかしながら、こうした方法ではシールド部が過度に重くなる課題があった。昨今の各種電子機器の軽薄短小化や電動車両の軽量化を達成するために、薄肉化や複雑な部品形状に対応できる溶融成形加工可能な熱可塑性樹脂組成物が要望されていた。
【0009】
すなわち、本発明は1MHz以下の低周波数領域電磁波に対する優れたシールド性(遮蔽性)を有する加熱溶融成形加工可能な軟磁性粉末含有樹脂組成物、及びその組成物の成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、熱可塑性樹脂と、組成式FeaBbSicPxCyCuzで表される合金を含む軟磁性粉末を20~80体積%と、を含有し、79≦a≦86原子%、5≦b≦13原子%、0<c≦8原子%、1≦x≦8原子%、0<y≦5原子%、0.4≦z≦1.4原子%、及び0.08≦z/x≦0.8である、熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【0011】
本発明に係るナノ結晶合金組織を有する軟磁性粉末を熱可塑性樹脂に配合した低周波数領域の電磁波のシールド性能を有する樹脂組成物は、公知の密閉混合機や押出機などを用いて熱可塑性樹脂が加熱溶融する適正な温度範囲を設定して溶融混練することにより得ることができる。また、適正なダイスや金型を用いることにより、該溶融混練物をシート、ホース、その他の形状に成形することができる。
【0012】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン・酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリブチレンテレフタレートの少なくとも一種以上を含む熱可塑性樹脂組成物である。
好ましくは、前記熱可塑性樹脂組成物の厚み1.0mmシートを用いて、KEC法で測定した周波数0.3MHzと1MHzでの磁界成分の減衰率が共に3dB以上である、熱可塑性樹脂組成物である。
【0013】
本発明の別の観点によれば、上記熱可塑性樹脂組成物を加熱溶融成形加工してなる成形部品が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱可塑性樹脂に特定の軟磁性粉末を配合することにより、低周波数領域の電磁波に対する優れた電磁波シールド性を有し成形加工可能な組成物を得ることができ、また、その組成物のシート、ホースなどの成形部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0016】
本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、軟磁性粉末と熱可塑性樹脂を含有する。
【0017】
本発明における軟磁性粉末は、組成式FeaBbSicPxCyCuzの合金を含む軟磁性粉末である。当該合金は、Fe基部分が高度に結晶化したナノ結晶合金組織を有する合金組成物である。軟磁性粉末は、好ましくは、当該合金を主成分として含む。軟磁性粉末は、好ましくは、当該合金を50質量%以上含み、より好ましくは当該合金を90質量%以上含み、さらに好ましくは実質的に当該合金のみを含む。
【0018】
組成式中の、a、b、c、x、y、zは、79≦a≦86原子%、5≦b≦13原子%、0<c≦8原子%、1≦x≦8原子%、0<y≦5原子%、0.4≦z≦1.4原子%、及び0.08≦z/x≦0.8の関係を満たす。また、軟磁性粉末は、例えば、引用した特許文献5に記載の方法により溶融状態からの急冷処理、次に一定条件の下で昇温することにより、Fe基部分が高度に結晶化したナノ結晶合金組織を有する薄帯を原料として、公知の粉砕方法を用いて粉末化することにより得ることができる。粉砕方法は、乾式粉砕法、湿式粉砕法等が挙げられる。また、生産性や粉砕粉の磁気特性保持の観点から、サイクロンミル、ミキサーミル、遊星ボールミル、ジェットミルなどの粉砕方式が好ましく用いられる。また、公知の篩分け、分級法により所定の粒度範囲の軟磁性粉末を得ることができる。なお、薄帯としては、株式会社東北マグネットインスティテュート製NANOMET(商品名)がある。
【0019】
軟磁性粉末の形状は、球状、扁平状、不定形のいずれでもよく、類似のシールド効果が発現する。この軟磁性粉末は最大径が500μm、好ましくは100μmであり、公知の篩分け操作により得ることができる。なお、粉末の最大径とは、不定形や扁平粉の場合には各粒子の最大径を言う。粉末の最大径が500μmを超えて大きくなると電磁波シールド性が成形物内で不均質となることや、欠陥部位となることの懸念があり好ましくない。
【0020】
軟磁性粉末含有樹脂組成物は、軟磁性粉末を、20体積%~80体積%含み、好ましくは30体積%~70体積%含む。軟磁性粉末の含有量が20体積%未満では十分満足し得る電磁波シールド性が発現せず、80体積%を超えると混練時または成形時の流動性が不足し、所定の形状に成形できなくなる場合があり、また、混練物が脆くなり好ましくない。また、本発明による効果を損なわない範囲で、その他の軟磁性粉末を少量添加してもかまわない。軟磁性粉末含有樹脂組成物における軟磁性粉末の含有量は、具体的には例えば、20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80体積%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、本明細書において、チルダ記号「~」は、その前後に記載される数値を含む数値範囲を示すために用いる記号である。具体的には「X~Y」の記載(X、Yはともに数値)は、「X以上Y以下」であることを示している。
【0021】
熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン・酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリウレタン(PU)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などからなる群から選ばれる少なくとも一種以上を含む。軟磁性粉末が分散しやすく、均一な電磁波シールド性が得やすいという点からは、熱可塑性樹脂は、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、エチレン・酢酸ビニル樹脂等が好ましい場合がある。
【0022】
また、本発明による低周波数領域の電磁波シールド性を有意に損なわない範囲で、前記以外の成形加工助剤や各種配合剤を添加することができる。加工助剤を添加する場合には、熱可塑性樹脂と軟磁性粉末の合計に対して、加工助剤を好ましくは0.1質量%~1質量%含有し、より好ましくは0.3~0.5質量%含有する。加工助剤としては、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0023】
混練方法は、公知の密閉混合機や押出機などの溶融混練機を採用することができる。混練温度と混練時間は、熱可塑性樹脂毎に混練、成形可能な公知の適正条件が選定される。軟磁性粉末の分散性を高めるためには、熱可塑性樹脂の劣化や軟磁性粉末の破砕が明瞭に起きない範囲で、高速回転、高剪断条件が好ましい。また、軟磁性粉末の混練順序は熱可塑性樹脂と同時に一括添加してもよいが、熱可塑性樹脂加熱溶融後あるいは加熱溶融途中で軟磁性粉末を添加する(後添加)方法でもよく、分散性向上と樹脂劣化抑制の観点から適宜選定される。
【0024】
得られた軟磁性粉末を配合した熱可塑性樹脂組成物(成形原料)は、熱プレスや溶融押出機などを使用し、適正なダイスや金型などを用いることで所望する形状に成形される。形状としては、例えばシート、ホース、ケース状などがあり、金型を選定することで様々な形状に成形することができる。また、複数の押出成形機を用いた積層シートや、接着剤などを用いた多層化したラミネートシートなどを作製することができる。
【0025】
成形品は、各種機器の低周波数領域の電磁波を遮蔽するために用いられる成形部材であってよく、一例として、上述のようにシートに加工されることがある。なお、シートが複数の層で構成されることにより、同じ厚さであっても遮蔽効果が増幅されることがある。本発明に係る一実施形態においても、シートが複数の層である場合に高い遮蔽効果を期待することができる。一方で、本発明においては、単層によってシート等を構成する実施形態であっても十分な遮蔽効果が得られる。
【0026】
電磁波ノイズのシールド性(遮断性)を評価する方法としては、一般財団法人関西電子工業振興センター(KEC)が開発したKEC法が知られており、例えば繊維製品消費科学(繊消誌)vol.40、No.2(1999)や、「https://www.kec.jp/testing-division/kec-method/」で紹介されている。このKEC法は近傍界で発生する電磁波のシールド効果を電界成分と磁界成分に分けて測定する方法であり、送信アンテナ(送信用治具)から送信された電磁波を、シート状の測定試料を介して受信アンテナ(受信用治具)で受信し、減衰した電磁波を測定して減衰率(測定単位:dB)として定量化する。本発明においては、室温条件下、一定厚み試料(2.0mm)を用いて、周波数0.1MHz~1000MHzの範囲で磁界成分の減衰率を測定した。なお、本発明で重要となる1MHz以下の周波数の電磁波シールド性(磁界成分)は0.3MHzと1MHzの減衰率測定値を比較して優劣を判定した。
【0027】
熱可塑性樹脂組成物は、成形して得た厚み1.0mmのシートをKEC法で測定した周波数0.3MHzと1MHzでの磁界成分の減衰率(当該組成物の成形品である厚み1.0mmのシートを用い、周波数0.3MHz及び1MHzの電磁波に対して、KEC法で測定した電磁波の磁界成分の減衰率)が共に3dB以上であることが好ましい。当該組成物は、1MHz以下の低周波数領域の電磁波に対して優れたシールド性を有する。
【実施例】
【0028】
[実施例1~7]
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について説明する。表1に示す組成に従って、軟磁性粉末を配合した樹脂組成物を作製した。軟磁性粉末として、株式会社東北マグネットインスティテュート製NANOMET薄帯(幅126mm、厚み25μ)を公知の方法により粉砕したNANOMET薄帯粉砕粉(平均粒径30μ、最大粒径100μ、比重7.3)を用いた。以下、この粉砕粉をNANOMET粉砕粉と略記する。熱可塑性樹脂として、EVA樹脂(東ソー株式会社製、EVA樹脂U-636、比重0.94)を用いた。なお、実施例5~7では成形加工助剤としてポリエチレングリコール脂肪酸エステル(花王株式会社製、エマノーン1112)を、EVA樹脂とNANOMET粉砕粉合計重量当たり、0.1重量%となるように添加した。混練装置として東洋精機製ラボプラストミル(内容積60mL)を用い、表1の仕込組成となるようにEVA樹脂と本発明による軟磁性粉末を同時に添加し、回転数50rpm、130℃×10分の条件で混練し、軟磁性粉末を配合した樹脂組成物(以下、単に組成物と言い換える)を得た。この組成物を、150℃に設定した熱プレスと厚み1mmのシート金型を用いて溶融成形し、厚みが1.0mmであり、縦横の寸法が150mm×150mmの正方形の成形シートを作製した。前記実施例の1.0mm成形シートの電磁波シールド性(磁界成分)は、「一般社団法人 KEC関西電子工業振興センター(京都府相楽郡精華町)」で測定した。同所にて「繊維製品消費科学(繊消誌)vol.40、No.2(1999)」に示される磁界シールド効果評価用セル(
図6)の一対に前記成形シートを挟み、
図7に示される装置による測定値である。なお測定における印加周波数は0.1MHz~1000MHzの範囲で連続的に変化させたが、特に0.3MHz及び1MHzにおける送信/受信強度値から算出される減衰率(相対値)をもって、本発明における磁界シールド効果を代表する値として採用した。その結果を表1に示した。本発明による組成物のシートはいずれも周波数0.3MHzと1MHzでの減衰率が3dB以上を示し、有意な電磁波シールド性を有している。また、NANOMET粉砕粉の配合量を20体積%から80体積%へと増すにつれて、減衰率が向上することがわかる。とりわけ、40体積%以上の配合量では減衰率が5dB以上であり、電磁波(磁界成分)のシールド性がより明瞭である。
【0029】
【0030】
[実施例8~10]
バレル径30mm、L/D=16の混練機能の付いた単軸押出機を用い、先端部にスリット0.7mm、幅150mmのTダイを取り付け、バレル設定温度80~150℃、回転数40rpmの条件で、所定量のEVA樹脂と加工助剤(ポリエチレングリコール脂肪酸エステル)と軟磁性粉末を投入し、軟磁性粉末を配合した樹脂組成物をシート状に成形した成形物を得た。次に、成形シートの厚みを微調整するために、150℃に設定した熱プレスと厚み1mmのシート金型を用いて再度プレス成形し、最終的に厚み1.0mmの成形シートを得た。この1.0mm成形シートの電磁波シールド性(磁界成分)を実施例1と同じ方法で測定した結果を表2に示す。表2より、いずれも周波数0.3MHzと1MHzでの減衰率が4dB以上を示すことがわかる。
【0031】
【0032】
[比較例1~3]
比較例1は本発明によるNANOMET粉砕粉を配合しない場合である。減衰率は0.1~0.3dB程度であり、ほとんど電磁波シールド性を示さない。比較例2はNANOMET粉砕粉の配合量が10体積%の場合である。0.3MHzでの減衰率が1.6dBであり、僅かな電磁波シールド性を有するものの十分とは言えない。比較例3はNANOMET粉砕粉を90体積%配合した場合である。成形物は非常に脆く、シート状態を保持できず、KEC法測定ができなかった。比較例4は軟磁性粉末としてソフトフェライト粉(戸田工業株式会社製BSN-714、比重5.3、平均粒径6μ)を50体積%添加した場合である。比較例5は軟磁性粉末としてパーマロイC粉(大同特殊鋼株式会社製DAPPC(78Ni-4Mo-Fe)、比重8.8、平均粒径9μ)を50体積%添加した場合である。いずれも0.3MHzと1MHzでの減衰率が3.0未満であることがわかる。一連の結果より、本発明によるNANOMET粉砕粉を配合した組成物は1MHz以下の低周波数領域で優れた電磁波シールド性を有し、更に、溶融成形加工が可能であり成形部品を作製できることが明らかである。
【0033】
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明による軟磁性粉末を配合した熱可塑性樹脂組成物は、周波数が1MHz以下の低周波数領域の電磁波ノイズに対して優れたシールド性能を有し、工業上極めて有用である。また、加熱溶融成形可能であり各種電子機器や電動車両に搭載されている電力変換機器やデータ処理装置などから発生する、低周波領域の電磁波ノイズをシールドする成形部品として好適である。