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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】医療用管状体搬送装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20250108BHJP
【FI】
A61F2/966
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022551145
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2021022557
(87)【国際公開番号】W WO2022064789
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2024-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2020158618
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市村 想生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一博
(72)【発明者】
【氏名】別所 貞雄
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-512706(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0083869(US,A1)
【文献】国際公開第2011/016386(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用管状体を体内に搬送する装置であって、
前記医療用管状体が内腔に配置されている外側チューブと、
前記外側チューブに接続されており近位側に延伸している牽引部材と、
前記外側チューブの内腔に配置されている内側チューブと、
前記外側チューブの近位端部に配置されており該外側チューブの剛性よりも低い剛性の筒状低剛性部材を有し、
前記筒状低剛性部材は、前記外側チューブの近位端部を覆っており、
前記筒状低剛性部材の近位端は、前記外側チューブの近位端より近位側であり、
前記筒状低剛性部材の近位端は、前記外側チューブに対向していないことを特徴とする医療用管状体搬送装置。
【請求項2】
医療用管状体を体内に搬送する装置であって、
前記医療用管状体が内腔に配置されている外側チューブと、
前記外側チューブに接続されており近位側に延伸している牽引部材と、
前記外側チューブの内腔に配置されている内側チューブと、
前記外側チューブの近位端部に配置されており該外側チューブの剛性よりも低い剛性の筒状低剛性部材を有し、
前記筒状低剛性部材の遠位端と前記外側チューブの近位端は長手方向において当接していることを特徴とする医療用管状体搬送装置。
【請求項3】
前記外側チューブに対する押し込み荷重をa、前記筒状低剛性部材に対する押し込み荷重をbとしたとき、荷重aに対する荷重b(b/a)の割合が20~85%である請求項1または2に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項4】
前記筒状低剛性部材の遠位端と前記外側チューブの近位端の当接部は、相溶していない請求項に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項5】
前記外側チューブの近位端部と、前記牽引部材の少なくとも一部とを覆う筒状部材を有する請求項2または4に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項6】
前記筒状部材の剛性は、前記外側チューブの剛性よりも低い請求項に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項7】
前記筒状部材の剛性は、前記筒状低剛性部材の剛性よりも高い請求項に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項8】
前記外側チューブに対する押し込み荷重をa、前記筒状部材に対する押し込み荷重をcとしたとき、荷重aに対する荷重c(c/a)の割合が35~90%である請求項5~7のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項9】
前記筒状低剛性部材の近位端は、前記筒状部材の近位端より近位側である請求項5~8のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項10】
前記牽引部材は、前記外側チューブの外表面に接続されている請求項1~9のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項11】
前記牽引部材は、前記筒状低剛性部材にも接続されている請求項1~10のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項12】
前記牽引部材は、前記筒状低剛性部材の外表面に接続されている請求項11に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項13】
前記内側チューブは、内腔にガイドワイヤが挿通されるものである請求項1~12のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項14】
前記外側チューブの少なくとも近位端部、前記内側チューブ、および前記牽引部材が、内腔に配置されている保護チューブを有する請求項1~13のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項15】
前記医療用管状体は、自己拡張型ステントである請求項1~14のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用管状体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体内の病変部に医療用管状体を搬送して配置する最小侵襲治療技術が開発されている。医療用管状体としては、例えば、ステント、ステントグラフト、閉塞具、注入カテーテル、プロテーゼ弁等が用いられる。これらのうちステントは、一般に、血管または他の生体内管腔が狭窄または閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するために用いられる医療用管状体である。この技術では、体内管腔を通して病変部に医療用管状体を搬送して配置するために搬送装置が用いられている。搬送装置は外側チューブを備えており、この外側チューブの内腔に医療用管状体を保持させた状態で、体内管腔を通し、医療用管状体を体内の病変部に搬送する。搬送した後は、外側チューブに接続されており近位側に延伸している牽引部材を近位側に引くことによって、外側チューブの内腔から医療用管状体を解放し、体内の病変部に医療用管状体を配置する。なお、本明細書では、医療用管状体搬送装置のうち術者の手元側を近位端とし、近位端の反対側、すなわち病変部等に近い側を遠位端とする。
【0003】
従来における医療用管状体搬送装置の実施形態の一例を図1に示す。図1は、医療用管状体搬送装置の断面図であり、医療用管状体搬送装置の遠位側を示している。図1に示した医療用管状体搬送装置は、医療用管状体11が内腔に配置されている外側チューブ12と、該医療用管状体11より近位側に、外側チューブ12の一部である牽引チューブ14と、外側チューブ12の内腔に配置される内側チューブ13とを有している。内側チューブ13の遠位端は、先端チップ16の内腔に達している。内側チューブ13の近位端は、医療用管状体搬送装置の近位端(術者の手元)まで延伸しており、術者の手元の操作を、内側チューブ13を介して医療用管状体搬送装置の遠位側へ伝えることができる。外側チューブ12の一部である牽引チューブ14には、牽引部材15が接続されており、内側チューブ13に沿って近位側に延伸している。牽引部材15を近位側へ引くことにより牽引チューブ14と外側チューブ12が近位側に引かれ、医療用管状体11が外側チューブ12の内腔から体内管腔へ押し出され、解放され、体内の病変部に配置される。
【0004】
こうした医療用管状体搬送装置は、例えば、特許文献1~3に開示されている。具体的には、特許文献1には、伸縮自在なカテーテルであって、相対的に柔軟な材料から作製される細長い管状シースと、前記シースに引張り力を伝達して、縦方向にシースを引き込むための引張り要素とを備え、前記引張り要素が、前記相対的に柔軟な材料内に配置された端部を備え、少なくとも前記端部の厚さが、実質的にその長さよりも薄いことを特徴とする伸縮自在なカテーテルが記載されている。
【0005】
特許文献2には、ステント装置移送システムであって、ステント装置と、前記ステント装置の半径方向にコンパクトな移送形態で、前記ステント装置を覆う外側シースであって、前記ステント装置を半径方向に拡張して、展開形態に移行できるようにするために後退可能である、外側シースと、前記外側シースを近位側に引っ張って後退させる引っ張り部材とを備え、前記引っ張り部材の遠位部分を、前記外側シースと、相対的に耐熱収縮性を有する支持部材との間に半径方向に捕捉するために、前記外側シースの一部分が、前記耐熱収縮性を有する前記支持部材上で半径方向に熱収縮されているステント装置移送システムが記載されている。
【0006】
特許文献3には、ステント装置送達システムであって、ステント装置と、前記ステント装置の半径方向にコンパクトな送達形態における前記ステント装置を覆い、前記ステント装置に対して後退可能であり、前記ステント装置を半径方向に拡張して展開構成をとらせる外側シースとを備え、前記外側シースは、互いに積層された第1の層と補強層とを含み、引っ張り部材の一部が、前記一部を半径方向において前記外側シースの前記第1の層と前記補強層との間に捕捉することによって前記外側シースに取り付けられるステント装置送達システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2012-510329号公報
【文献】特表2013-512705号公報
【文献】特表2013-512706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
こうした医療用管状体搬送装置は体内管腔に挿入されるが、体内管腔は複雑に屈曲しているため、医療用管状体搬送装置も体内管腔の屈曲に追随して曲げられる。そのため図1に示したように牽引チューブ14の近位端部を曲げた状態で牽引部材15を近位側に引くと、牽引部材15は、図1に点線15aで示すように引かれた方向に向かって直線化する。その結果、牽引部材15と牽引チューブ14の接続部分のうち最近位位置15bに応力が集中し、牽引部材15が牽引チューブ14から外れることがあった。
【0009】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、医療用管状体の近傍を曲げた状態で牽引部材を近位側に引いても、牽引部材が外側チューブから外れることなく、医療用管状体を確実に解放できる医療用管状体搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の発明を含む。
[1] 医療用管状体を体内に搬送する装置であって、前記医療用管状体が内腔に配置されている外側チューブと、前記外側チューブに接続されており近位側に延伸している牽引部材と、前記外側チューブの内腔に配置されている内側チューブと、前記外側チューブの近位端部に配置されており該外側チューブの剛性よりも低い剛性の筒状低剛性部材を有することを特徴とする医療用管状体搬送装置。
[2] 前記外側チューブに対する押し込み荷重をa、前記筒状低剛性部材に対する押し込み荷重をbとしたとき、荷重aに対する荷重b(b/a)の割合が20~85%である[1]に記載の医療用管状体搬送装置。
[3] 前記筒状低剛性部材は、前記外側チューブの近位端部を覆っている[1]または[2]に記載の医療用管状体搬送装置。
[4] 前記筒状低剛性部材の近位端は、前記外側チューブの近位端より近位側である[3]に記載の医療用管状体搬送装置。
[5] 前記筒状低剛性部材の遠位端と前記外側チューブの近位端は当接している[1]または[2]に記載の医療用管状体搬送装置。
[6] 前記筒状低剛性部材の遠位端と前記外側チューブの近位端の当接部は、相溶していない[5]に記載の医療用管状体搬送装置。
[7] 前記外側チューブの近位端部と、前記牽引部材の少なくとも一部とを覆う筒状部材を有する[5]または[6]に記載の医療用管状体搬送装置。
[8] 前記筒状部材の剛性は、前記外側チューブの剛性よりも低い[7]に記載の医療用管状体搬送装置。
[9] 前記筒状部材の剛性は、前記筒状低剛性部材の剛性よりも高い[8]に記載の医療用管状体搬送装置。
[10] 前記外側チューブに対する押し込み荷重をa、前記筒状部材に対する押し込み荷重をcとしたとき、荷重aに対する荷重c(c/a)の割合が35~90%である[7]~[9]のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
[11] 前記筒状低剛性部材の近位端は、前記筒状部材の近位端より近位側である[7]~[10]のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
[12] 前記牽引部材は、前記外側チューブの外表面に接続されている[1]~[11]のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
[13] 前記牽引部材は、前記筒状低剛性部材にも接続されている[1]~[12]のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
[14] 前記牽引部材は、前記筒状低剛性部材の外表面に接続されている[13]に記載の医療用管状体搬送装置。
[15] 前記内側チューブは、内腔にガイドワイヤが挿通されるものである[1]~[14]のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
[16] 前記外側チューブの少なくとも近位端部、前記内側チューブ、および前記牽引部材が、内腔に配置されている保護チューブを有する[1]~[15]のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
[17] 前記医療用管状体は、自己拡張型ステントである[1]~[16]のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の医療用管状体搬送装置は、外側チューブの近位端部に、該外側チューブの剛性よりも低い剛性の筒状低剛性部材を配置しているため、医療用管状体が内腔に配置されている外側チューブの近位端付近を曲げた状態で外側チューブに接続されている牽引部材を近位側に引くと、外側チューブよりも筒状低剛性部材の方が優先的に大きく変形し、外側チューブと牽引部材との間にかかる応力は牽引部材と筒状低剛性部材との接触区間で分散されるため、牽引部材が外側チューブから外れにくくなる。また、外側チューブの近位端に、該外側チューブの剛性よりも低い剛性の筒状低剛性部材を配置しているため、屈曲する内側チューブに対する外側チューブの追従性を高めることができ、外側チューブと内側チューブとの間に生じる摩擦抵抗が大きくなることを防止できる。その結果、外側チューブを近位側に容易に引くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、従来の医療用管状体搬送装置における遠位側の実施形態の一例を示す断面図である。
図2図2は、本発明に係る医療用管状体搬送装置の第1実施形態を示す断面図である。
図3図3は、図2に示した外側チューブと牽引部材との接続位置付近を拡大した図である。
図4図4は、本発明に係る医療用管状体搬送装置の第2実施形態を示す断面図であり、外側チューブと牽引部材との接続位置付近を拡大して示した図である。
図5図5は、本発明に係る医療用管状体搬送装置の第3実施形態を示す断面図であり、外側チューブと牽引部材との接続位置付近を拡大して示した図である。
図6図6は、本発明に係る医療用管状体搬送装置の第4実施形態を示す断面図であり、外側チューブと牽引部材との接続位置付近を拡大して示した図である。
図7図7は、本発明に係る医療用管状体搬送装置の第5実施形態を示す断面図であり、外側チューブと牽引部材との接続位置付近を拡大して示した図である。
図8図8は、本発明に係る医療用管状体搬送装置の第6実施形態を示す断面図であり、外側チューブと牽引部材との接続位置付近を拡大して示した図である。
図9図9は、押し込み荷重を測定する装置を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る医療用管状体搬送装置は、医療用管状体を体内に搬送する装置であり、前記医療用管状体が内腔に配置されている外側チューブと、前記外側チューブに接続されており近位側に延伸している牽引部材と、前記外側チューブの内腔に配置されている内側チューブと、前記外側チューブの近位端部に配置されており該外側チューブの剛性よりも低い剛性の筒状低剛性部材を有する点に特徴がある。
【0014】
外側チューブの近位端部に、該外側チューブの剛性よりも低い剛性の筒状低剛性部材を配置しているため、外側チューブの近位端付近を曲げた状態で外側チューブに接続されている牽引部材を近位側に引くと、外側チューブよりも筒状低剛性部材の方が優先的に大きく変形し、外側チューブと牽引部材との間にかかる応力は牽引部材と筒状低剛性部材との接触区間で分散されるため、牽引部材が外側チューブから外れにくくなる。また、外側チューブの近位端に、該外側チューブの剛性よりも低い剛性の筒状低剛性部材を配置することによって、外側チューブの内腔に配置されている内側チューブが屈曲しても内側チューブに対する外側チューブの追従性を高めることができる。即ち、応力に対して外側チューブよりも筒状低剛性部材の方が変形しやすいため、応力が加わって内側チューブが屈曲すると外側チューブよりも筒状低剛性部材の方が先に変形し、内側チューブの屈曲に追従しやすくなる。しかも牽引部材と筒状低剛性部材が接触していることにより牽引部材と外側チューブとの接続部分にかかる引張応力が分散されるため、牽引部材を近位側に引っ張っても外側チューブの近位端と内側チューブは接触しにくくなる。その結果、牽引部材を近位側に引っ張っても外側チューブと内側チューブとの間に生じる摩擦抵抗が大きくならないため、外側チューブを近位側に容易に引くことができる。よって医療用管状体搬送装置の操作性が低下せず、医療用管状体搬送装置から医療用管状体を確実に解放できる。
【0015】
筒状低剛性部材は、例えば、外側チューブに対する押し込み荷重をa、筒状低剛性部材に対する押し込み荷重をbとしたとき、荷重aに対する荷重b(b/a)の割合が20~85%を満足するものであることが好ましい。荷重aに対する荷重b(b/a)の割合が20%以上であることにより、牽引部材が近位側に引っ張られても筒状低剛性部材は損傷することなく牽引部材が引っ張られる方向に追随して変形し、牽引部材の離断を防止できる。b/aの割合は、より好ましくは30%以上であり、更に好ましくは40%以上である。一方、荷重aに対する荷重b(b/a)の割合が85%以下であることにより、牽引部材が引っ張られた方向に筒状低剛性部材が追随して変形するため、外側チューブと牽引部材との接続部分のうち最近位位置にかかる応力を緩和でき、外側チューブから牽引部材が離断することを防止できる。b/aの割合は、より好ましくは75%以下であり、更に好ましくは50%以下である。荷重aに対する荷重b(b/a)の割合の具体的な測定方法は、後述する。
【0016】
以下、本発明に係る医療用管状体搬送装置の実施形態の一例について、図面を参照しつつ具体的に説明する。本発明は図示例に限定される訳ではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、部材符号等を省略する場合があるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々の寸法は、本発明の特徴を理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0017】
筒状低剛性部材は、外側チューブの近位端部に配置されており、例えば、筒状低剛性部材の遠位端部が外側チューブの近位端部を覆っていてもよいし、筒状低剛性部材の遠位端と外側チューブの近位端が当接していてもよい(突き当てされている状態であってもよい)。
【0018】
まず、筒状低剛性部材の遠位端部が、外側チューブの近位端部を覆っている実施形態について説明する。
【0019】
図2は、本発明に係る医療用管状体搬送装置における第1実施形態を示す断面図である。なお、図2には、医療用管状体搬送装置の遠位側のみを示した。また、図3は、図2に示した外側チューブ24と牽引部材25との接続位置付近を拡大して示した断面図である。図3では、図面に対して左側が医療用管状体搬送装置の遠位側であり、右側が医療用管状体搬送装置の近位側である。
【0020】
本発明に係る医療用管状体搬送装置の第1実施形態では、医療用管状体21が内腔に配置されている外側チューブ24と、外側チューブ24に接続されており近位側に延伸している牽引部材25と、外側チューブ24の内腔に配置される内側チューブ23と、外側チューブ24の近位端部に配置されており該外側チューブ24の剛性よりも低い剛性の筒状低剛性部材27を有している。
【0021】
内側チューブ23の内腔には、ガイドワイヤ(図示せず)が挿通される。内側チューブ23の遠位端は、先端チップ26の内腔に達している。一方、内側チューブ23の近位端は、医療用管状体搬送装置の近位側(術者の手元側)まで延伸しており、術者の手元の操作を、内側チューブ23を介して医療用管状体搬送装置の遠位側へ伝えることができる。
【0022】
牽引部材25は、内側チューブ23に沿って近位側に延伸しており、牽引部材25を近位側へ引くことにより外側チューブ24が近位側に引かれ、医療用管状体21が外側チューブ24の内腔から体内管腔へ押し出され、解放される。
【0023】
図2図3に示した医療用管状体搬送装置では、筒状低剛性部材27の遠位端部が、外側チューブ24の近位端部と牽引部材25の遠位端部を覆っており、筒状低剛性部材27の近位端27aは、外側チューブ24の近位端24aより近位側に配置されている。外側チューブ24の近位端24aより筒状低剛性部材27の近位端27aを近位側とすることにより、図2に示すように、外側チューブ24の近位端付近が曲がった状態で牽引部材25を近位側に引くと、筒状低剛性部材27が外側チューブ24よりも優先的に大きく変形し、筒状低剛性部材27が緩衝材となり、牽引部材25は直線化しにくくなる。その結果、牽引部材25と外側チューブ24との接続部分のうち最近位位置に応力が集中しにくくなるため、外側チューブ24から牽引部材25が離断することを防止できる。
【0024】
筒状低剛性部材27の軸方向の長さL1に対して、外側チューブ24の近位端24aと筒状低剛性部材27の近位端27aとの距離L2の比(L2/L1)は、0.1~0.7であることが好ましい。比(L2/L1)を0.1以上とすることにより、筒状低剛性部材27による応力緩和効果を有効に発揮させることができる。比(L2/L1)は、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上である。一方、比(L2/L1)を0.7以下とすることにより、筒状低剛性部材27が外側チューブ24から外れにくくなる。比(L2/L1)は、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下である。
【0025】
外側チューブ24の近位端24aと筒状低剛性部材27の近位端27aとの距離L2、即ち、外側チューブ24の近位端24aよりも近位側に突出している筒状低剛性部材27の軸方向の長さL2は、例えば、3~30mmであることが好ましく、より好ましくは25mm以下、更に好ましくは20mm以下である。
【0026】
図2図3に示した実施形態において、荷重aに対する荷重b(b/a)の割合を算出する際には、図3に示すように、矢印aの位置で外側チューブ24に対する押し込み荷重aを測定し、矢印bの位置で筒状低剛性部材27に対する押し込み荷重bを測定すればよい。即ち、外側チューブ24に対する押し込み荷重aは、筒状低剛性部材27で覆われていない位置で測定し、筒状低剛性部材27に対する押し込み荷重bは、外側チューブ24を覆っていない位置で測定すればよい。
【0027】
牽引部材25の遠位部分は、外側チューブ24の近位部分に接続されており、例えば、図2に示すように、牽引部材25の遠位部分と外側チューブ24の近位部分とを接触させて接着剤等により接続されていてもよいし、牽引部材25の遠位部分が外側チューブ24の近位部分に埋め込まれて接続されていてもよい。
【0028】
牽引部材25の遠位端部の形状は、任意の形状をとることができ、外側チューブ24との接続強度を高めるために、例えば、円筒状であってもよいし、平板状であってもよい。円筒状の場合は、遠位端から近位側に向かって外径が変化する形状でもよく、例えば、断面形状が真円から楕円に変化してもよい。平板状の場合は、遠位端から近位側に向かって厚み、幅が変化する形状でもよい。さらに、牽引部材25の遠位端部の外表面に表面処理を施すことで外側チューブ24との接続強度を高めてもよく、表面処理としては、例えば、梨地状に荒らす処理などが挙げられる。あるいは牽引部材25の遠位端部を外側チューブ24の近位部分に巻き付けて固定してもよいし、蛇行形状に変形させてから固定してもよい。
【0029】
牽引部材25の遠位端は、筒状低剛性部材27の遠位端より遠位側であってもよいが、図3に示すように、牽引部材25の遠位端は、筒状低剛性部材27の遠位端より近位側であることが好ましい。
【0030】
次に、本発明に係る医療用管状体搬送装置における第2実施形態について説明する。図4は、本発明に係る医療用管状体搬送装置における第2実施形態を示す断面図であり、外側チューブ24と牽引部材25との接続位置付近を拡大して示している。他の図面と同一の箇所には同じ符号を付すことにより重複説明を避ける(以下、同じ)。図4では、図面に対して左側が医療用管状体搬送装置の遠位側であり、右側が医療用管状体搬送装置の近位側である。
【0031】
図4に示した第2実施形態では、図3に示した第1実施形態に対し、牽引部材25を外側チューブ24の内側に配置している。これにより牽引部材25が医療用管状体搬送装置の軸位置に近く配置されるため、外側チューブ24を近位側へ引っ張りやすくなる。なお、牽引部材25を外側チューブ24から離断しにくくする観点では、牽引部材25は、外側チューブ24の内側に配置するよりも図3に示したように外側チューブ24の外側に配置することが好ましい。
【0032】
次に、本発明に係る医療用管状体搬送装置における第3実施形態について説明する。図5は、本発明に係る医療用管状体搬送装置における第3実施形態を示す断面図であり、外側チューブ24と牽引部材25との接続位置付近を拡大して示している。図5では、図面に対して左側が医療用管状体搬送装置の遠位側であり、右側が医療用管状体搬送装置の近位側である。
【0033】
図5に示した第3実施形態では、図3に示した第1実施形態に対し、牽引部材25を外側チューブ24および筒状低剛性部材27の外側に配置している。これにより生産効率を高めることができる。なお、牽引部材25を外側チューブ24から離断しにくくする観点では、牽引部材25の遠位端部は、外側チューブ24および筒状低剛性部材27の外側に配置するよりも図3に示したように外側チューブ24と筒状低剛性部材27との間に配置することが好ましい。
【0034】
次に、筒状低剛性部材27の遠位端と外側チューブ24の近位端が当接している実施形態について説明する。図6は、本発明に係る医療用管状体搬送装置における第4実施形態を示す断面図であり、外側チューブ24と牽引部材25との接続位置付近を拡大して示している。図6では、図面に対して左側が医療用管状体搬送装置の遠位側であり、右側が医療用管状体搬送装置の近位側である。
【0035】
図6に示した第4実施形態では、外側チューブ24の近位端と筒状低剛性部材27の遠位端が当接している。これにより、外側チューブ24の近位端付近が曲がった状態で牽引部材25を近位側に引いても、外側チューブ24よりも筒状低剛性部材27の方が牽引部材25に追随して優先的に大きく変形するため、牽引部材25は直線化しにくくなる。その結果、牽引部材25と外側チューブ24との接続位置に応力が集中しにくくなるため、外側チューブ24から牽引部材25が離断することを防止できる。
【0036】
筒状低剛性部材27の遠位端と外側チューブ24の近位端とを当接させる場合における筒状低剛性部材27の長手方向の長さは、例えば、3~25mmであることが好ましく、より好ましくは4mm以上であり、より好ましくは20mm以下、更に好ましくは15mm以下である。
【0037】
次に、本発明に係る医療用管状体搬送装置における第5実施形態について説明する。図7は、本発明に係る医療用管状体搬送装置における第5実施形態を示す断面図であり、外側チューブ24と牽引部材25との接続位置付近を拡大して示している。図7では、図面に対して左側が医療用管状体搬送装置の遠位側であり、右側が医療用管状体搬送装置の近位側である。
【0038】
図7に示した第5実施形態では、図6に示した第4実施形態に対し、牽引部材25を外側チューブ24および筒状低剛性部材27の内側に配置している。牽引部材25を外側チューブ24および筒状低剛性部材27の内側に配置することによって、牽引部材25が医療用管状体搬送装置の軸位置に近く配置されるため、外側チューブ24を近位側へ引っ張りやすくなる。なお、牽引部材25を外側チューブ24から離断しにくくする観点では、牽引部材25は、外側チューブ24および筒状低剛性部材27の内側に配置するよりも図3に示したように外側チューブ24および筒状低剛性部材27の外側に配置することが好ましい。
【0039】
筒状低剛性部材27の遠位端と外側チューブ24の近位端とを当接させる場合は、筒状低剛性部材27と外側チューブ24の当接部は、相溶していないことが好ましい。これにより当接部に応力が集中することを防止できる。
【0040】
図6図7に示した実施形態において、荷重aに対する荷重b(b/a)の割合を算出する際には、図6図7に示すように、矢印aの位置で外側チューブ24に対する押し込み荷重aを測定し、矢印bの位置で筒状低剛性部材27に対する押し込み荷重bを測定すればよい。
【0041】
次に、本発明に係る医療用管状体搬送装置における第6実施形態について説明する。図8は、本発明に係る医療用管状体搬送装置における第6実施形態を示す断面図であり、外側チューブ24と牽引部材25との接続位置付近を拡大して示している。図8では、図面に対して左側が医療用管状体搬送装置の遠位側であり、右側が医療用管状体搬送装置の近位側である。
【0042】
図8に示した第6実施形態では、図6に示した第4実施形態に対し、外側チューブ24の近位端部と牽引部材25の少なくとも一部を覆う筒状部材28を配置している。これにより牽引部材25が外側チューブ24から離断しにくくなる。
【0043】
筒状低剛性部材27の近位端27aは、筒状部材28の近位端28aよりも遠位側であってもよいが、図8に示すように、筒状低剛性部材27の近位端27aは、筒状部材28の近位端28aよりも近位側であることが好ましい。筒状部材28の近位端28aが、筒状低剛性部材27の近位端27aよりも遠位側となるように筒状部材28を配置することにより、牽引部材25が筒状部材28と筒状低剛性部材27の間に挟まれるため、牽引部材25が医療用管状体搬送装置の軸に対して外側方向に引っ張られても内側方向に引っ張られても牽引部材25が外側チューブ24から離断しにくくなる。また、このような構成により、牽引部材25を牽引して外側チューブ24を近位側に移動させる際に、筒状低剛性部材27の近位端部と内側チューブ23との間で生じる摩擦抵抗を低減でき、医療用管状体を展開するときの操作荷重を抑制できる。
【0044】
牽引部材25の遠位端は、筒状部材28の遠位端より遠位側であってもよいが、牽引部材25を外側チューブ24から離断しにくくする観点では、図8に示すように、牽引部材25の遠位端は、筒状部材28の遠位端より近位側であることが好ましい。
【0045】
筒状部材28の剛性は、外側チューブ24の剛性よりも低いことが好ましい。これにより外側チューブ24の近位端付近が曲がった状態で牽引部材25を近位側に引いたときに牽引部材25に追随して外側チューブ24よりも筒状部材28の方が大きく変形するため、牽引部材25は直線化しにくくなる。その結果、牽引部材25と外側チューブ24との接続部分における近位端に応力が集中しにくくなるため、外側チューブ24から牽引部材25が離断することを防止できる。また、このような構成により、牽引部材25を牽引して外側チューブ24を近位側に移動させる際に、筒状低剛性部材27の近位端部と内側チューブ23との間で生じる摩擦抵抗を低減することができ、医療用管状体を展開するときの操作荷重を抑制できる。
【0046】
また、筒状部材28の剛性は、筒状低剛性部材27の剛性と同じでよいが、筒状部材28の剛性は、筒状低剛性部材27の剛性よりも高いことが好ましい。即ち、筒状部材28の剛性は、外側チューブ24の剛性より低く、筒状低剛性部材27の剛性より高いことが好ましい。このような構成により、外側チューブ24の近位部分から筒状低剛性部材27の近位端27aまでの剛性を連続的に低減させることができ、牽引部材25を外側チューブ24の半径方向外側に引き上げても、筒状部材28または筒状低剛性部材27が優先的に屈曲して、外側チューブ24からの離断の発生をより一層抑制することが可能となる。
【0047】
筒状部材28は、外側チューブに対する押し込み荷重をa、筒状部材28に対する押し込み荷重をcとしたとき、荷重aに対する荷重c(c/a)の割合が35~90%を満足するものであることが好ましい。荷重aに対する荷重c(c/a)の割合が35%以上であることにより、牽引部材25が近位側に引っ張られたときに筒状部材28が損傷することなく、牽引部材25の引張方向に追随して変形するため、引張応力が分散し、牽引部材25が外側チューブ24から離断しにくくなる。c/aの割合は、より好ましくは40%以上、更に好ましくは70%以上である。一方、荷重aに対する荷重c(c/a)の割合が90%以下であることにより、牽引部材25が引っ張られた方向に筒状部材28が追随して変形しやすくなるため、外側チューブ24と牽引部材25との接続部分のうち近位端に応力が集中するのを防止でき、外側チューブ24から牽引部材25が離断しにくくなる。c/aの割合は、より好ましくは88%以下である。荷重aに対する荷重c(c/a)の割合の具体的な測定方法は、後述する。
【0048】
図8に示した第6実施形態において、荷重aに対する荷重c(c/a)の割合を算出する際には、図8に示すように、矢印aの位置で外側チューブ24に対する押し込み荷重aを測定し、矢印cの位置で筒状部材28に対する押し込み荷重cを測定すればよい。即ち、外側チューブ24に対する押し込み荷重aは、筒状部材28で覆われていない位置で測定し、筒状部材28に対する押し込み荷重cは、外側チューブ24を覆っている位置で測定すればよい。
【0049】
筒状部材28と筒状低剛性部材27は、接着されていることが好ましい。これにより筒状部材28と筒状低剛性部材27との間に配置されている牽引部材25が外側チューブ24から離断しにくくなる。
【0050】
筒状部材28と筒状低剛性部材27は、例えば、接着剤によって接着されていてもよいし、熱圧着によって接着されていてもよく、熱圧着により接着されていることが好ましい。
【0051】
筒状部材28と外側チューブ24は、相溶していてもよいが、相溶していないことが好ましい。相溶していないことにより、筒状部材28と外側チューブ24は独立して可動するため、医療用管状体搬送装置の複雑な動きに追随して変形しやすくなる。
【0052】
牽引部材25の遠位端部は、筒状部材28と外側チューブ24の両方に接着されていることが好ましく、例えば、接着剤によって接着されていてもよいし、熱圧着によって接着されていてもよく、熱圧着によって接着されていることが好ましい。熱圧着の場合、筒状部材28の内側表面にポリエチレンなどの接着性樹脂を配置することで牽引部材25の接続強度をより高めることができる。
【0053】
本発明に係る医療用管状体搬送装置においては、牽引部材25は、外側チューブ24に加えて、筒状低剛性部材27にも接続されていることが好ましい。これにより牽引部材25が外側チューブ24から離断しにくくなる。また、医療用管状体の展開時に牽引部材25を近位側に牽引して外側チューブ24を近位側に移動させる際、牽引部材25の張力を筒状低剛性部材27を介して外側チューブ24に伝達できるため、屈曲形状においてより効率的に牽引張力を外側チューブ24に伝達することが可能となり、その結果ステント展開操作の荷重を抑制できるようになる。
【0054】
牽引部材25と筒状低剛性部材27は、例えば、接着剤によって接着されていてもよいし、筒状低剛性部材27が一部溶融することによる熱圧着によって接着されていてもよく、熱圧着により接着されていることが好ましい。
【0055】
本発明に係る医療用管状体搬送装置において、牽引部材25が筒状低剛性部材27に接続されている場合は、牽引部材25は、筒状低剛性部材27の外表面に接続されていることが好ましい。牽引部材25が筒状低剛性部材27の外表面に接続されていることによって製造しやすくなる。
【0056】
本発明に係る医療用管状体搬送装置においては、外側チューブ24の少なくとも近位端部、内側チューブ23、および牽引部材25が、内腔に配置されている保護チューブを有することが好ましい。保護チューブで覆うことによって外側チューブ24の少なくとも近位端部、内側チューブ23、および牽引部材25をまとめることができるため、医療用管状体搬送装置の操作性が向上する。
【0057】
外側チューブ24および内側チューブ23の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、フッ素樹脂[例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等]、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、シリコーン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の樹脂材料が挙げられる。
【0058】
外側チューブ24は、単層構造であってもよいし、複層構造であってもよく、複層構造が好ましい。複層構造とすることにより、外側チューブ24の剛性を筒状低剛性部材27の剛性よりも容易に高めることができる。複層構造の例としては、例えば、内層がポリイミドであり、外層がポリアミドエラストマーである2層構造が例示できる。
【0059】
筒状低剛性部材27の構成材料は、筒状低剛性部材27の剛性が上記外側チューブ24の剛性よりも低くなるものであれば特に限定されず、上述した樹脂材料を用いることができる。なかでも、ポリアミドエラストマーが好ましい。
【0060】
筒状低剛性部材27は、単層構造であってもよいし、複層構造であってもよく、複層構造が好ましい。複層構造とすることにより、筒状低剛性部材27の内側の滑り性を高めて摺動しやすくすることができる。筒状低剛性部材27の外層を構成する材料としては、上述した樹脂材料を用いることができ、筒状低剛性部材27の内層を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、フッ素樹脂[例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等]、などが挙げられる。複層構造の例としては、例えば、内層がポリエチレンであり、外層がポリアミドエラストマーである2層構造が例示できる。
【0061】
筒状部材28の構成材料は、筒状部材28の剛性が、上記筒状低剛性部材27の剛性と同じであるか、筒状低剛性部材27の剛性よりも高くなるものであれば特に限定されず、上述した樹脂材料を用いることができる。なかでもポリアミド系エラストマーが好ましい。
【0062】
牽引部材25の構成材料としては、上述した樹脂材料であってもよいが、金属であることが好ましい。金属としては、例えば、チタン、ステンレス鋼、ニッケル・チタン合金などが挙げられる。
【0063】
医療用管状体21としては、例えば、ステント、ステントグラフト、閉塞具、注入カテーテル、プロテーゼ弁等を用いることができる。中でもステントを用いることが好ましい。ステントとしては、例えば、1本の線状の金属または高分子材料で形成されたコイル状のステント、金属チューブをレーザーによって切り抜いて加工したステント、金属シートをレーザーで切り抜いた後に円筒形状に巻いてレーザー溶接したステント、線状の部材をレーザーによって溶接して組み立てたステント、または、複数の線状金属を織って作ったステントが挙げられる。ステントは、ステントをマウントしたバルーンによって拡張させるバルーン拡張型ステントと、ステントの拡張を抑制する外部部材を取り除くことによって自ら拡張させる自己拡張型ステントに分類される。本発明では、自己拡張型ステントを用いることが好ましい。
【0064】
本願は、2020年9月23日に出願された日本国特許出願第2020-158618号に基づく優先権の利益を主張するものである。上記日本国特許出願第2020-158618号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例
【0065】
医療用管状体搬送装置の剛性を次の手順で評価した。
【0066】
本発明では、医療用管状体搬送装置の剛性は、医療用管状体搬送装置に楔形圧子を押し込んだときの押し込み荷重に基づいて評価した。測定装置は、島津製作所製の小型卓上試験機「EZ-SX」を用いた。図9に、押し込み荷重を測定するために用いた装置の模式図を示す。図9では、図面に対して左側が医療用管状体搬送装置の遠位端、右側が医療用管状体搬送装置の近位端を示している。
【0067】
図9に示すように、医療用管状体搬送装置32の遠位端が台座31の遠位端Bよりも遠位側となるように台座31に取り付け、医療用管状体搬送装置32の一部を台座31に挟んで固定する。医療用管状体搬送装置32を固定している位置Aから台座31の遠位端Bまでの距離を30mmとし、台座31の遠位端Bから遠位側に13mm離れた位置Cに圧子33を配置する。医療用管状体搬送装置32に対して圧子33を垂直下方向に押し込み、このときの荷重(押し込み荷重)を測定する。圧子は、楔形圧子を用い、圧子の押し込み速度は1.0mm/秒、圧子の押し込み距離は1.2mmとし、1.0mmまで押し込んだ時点での荷重を測定した。
【0068】
図8に示した医療用管状体搬送装置32を作製し、医療用管状体搬送装置32の剛性を具体的に評価した。医療用管状体搬送装置32は、外側チューブ24を構成する材料として内層がポリイミド、外層がポリアミドエラストマー(ARKEMA製のPebax7233)を用い、筒状低剛性部材27を構成する材料として内層が高密度ポリエチレン、外層がポリアミドエラストマー(ARKEMA製のPebax7233)を用い、筒状部材28を構成する材料としてポリアミドエラストマー(ARKEMA製のPebax7233)を用い、牽引部材25を構成する材料としてステンレス鋼(SUS304)を用いた。
【0069】
図8に示した位置aにおける押し込み荷重a(即ち、外側チューブに対する押し込み荷重a)は0.15N、位置bにおける押し込み荷重b(即ち、筒状低剛性部材に対する押し込み荷重b)は0.062N、位置cにおける押し込み荷重c(即ち、筒状部材に対する押し込み荷重c)は0.13Nであった。従って、荷重aに対する荷重b(b/a)の割合は、0.062/0.15×100=41.3%、荷重aに対する荷重c(c/a)の割合は、0.13/0.15×100=86.7%であった。
【符号の説明】
【0070】
11、21 医療用管状体
12、24 外側チューブ
13、23 内側チューブ
14 牽引チューブ
15、25 牽引部材
16、26 先端チップ
27 筒状低剛性部材
28 筒状部材
31 台座
32 医療用管状体搬送装置
33 圧子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9