(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】通信制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 28/10 20090101AFI20250108BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20250108BHJP
H04W 48/16 20090101ALI20250108BHJP
H04W 92/20 20090101ALI20250108BHJP
【FI】
H04W28/10
H04W16/26
H04W48/16 131
H04W92/20 110
(21)【出願番号】P 2022575590
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 JP2022000640
(87)【国際公開番号】W WO2022153989
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-07-11
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤代 真人
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヘンリー
【審査官】青木 健
(56)【参考文献】
【文献】LG Electronics Inc.,Discussion on topology-wide fairness, multi-hop latency and congestion mitigation,3GPP TSG RAN WG2 #112-e R2-2009667,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_112-e/Docs/R2-2009667.zip>,2020年11月02日
【文献】Samsung (rapporteur),Discussion summary - [AT112-e][030][eIAB],3GPP TSG RAN WG2 #112-e R2-2011060,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_112-e/Docs/R2-2011060.zip>,2020年11月02日
【文献】ZTE, Sanechips,Discussion on topology-wide fairness, multi-hop latency and congestion mitigation,3GPP TSG RAN WG2 #112-e R2-2009388,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_112-e/Docs/R2-2009388.zip>,2020年11月02日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルラ通信システムで用いる通信制御方法であって、
配下に中継ノードを有するドナー基地局が、前中継ノードに対して、
前記中継ノードの親ノード又は子ノードのスケジューラにおいてデータパケットの転送における優先制御が行われるためのアシスト情報を当該親ノード又は子ノードへ通知させるか否かを設定することと、
前記中継ノードが、前記設定に従って、
前記親ノード又は子ノードへ、前記アシスト情報を通知することと
、
を有する通信制御方法。
【請求項2】
前記アシスト情報は、前記中継ノードを含む複数の中継ノードを経由するごとに変更される情報及び前記中継ノードが混雑していることを示す混雑情報の少なくともいずれか一方を含む、請求項
1記載の通信制御方法。
【請求項3】
ドナー基地局の配下にいる中継ノードあって、
前記ドナー基地局から、前記中継ノードの親ノード又は子ノードのスケジューラにおいてデータパケットの転送における優先制御が行われるためのアシスト情報を当該親ノード又は子ノードへ通知させるか否かを設定する設定情報を受信する受信部と、
前記親ノード又は子ノードへ、前記設定情報に従って、前記アシスト情報を通知する送信部と、を備える
中継ノード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セルラ通信システムに用いる通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラ通信システムの標準化プロジェクトである3GPP(Third Generation Partnership Project)において、IAB(Integrated Access and Backhaul)ノードと呼ばれる新たな中継ノードの導入が検討されている(例えば、「3GPP TS 38.300 V16.3.0(2020-09)」参照)。1又は複数の中継ノードが、基地局とユーザ装置との間の通信に介在し、この通信に対する中継を行う。
【発明の概要】
【0003】
第1の態様に係る通信制御方法は、セルラ通信システムで用いる通信制御方法である。前記通信制御方法は、配下に中継ノードを有するドナー基地局が、前記中継ノードに対して、前記中継ノードのスケジューラにデータパケットの転送における優先制御を行わせるか否かを設定することを有する。また、前記通信制御方法は、前記中継ノードが、前記設定に従って、前記スケジューラを動作させることを有する。
【0004】
第2の態様に係る通信制御方法は、セルラ通信システムで用いる通信制御方法である。前記通信制御方法は、中継ノードが、当該中継ノードを配下に有するドナー基地局へ、ルート毎のスループットを表す第1情報、データパケット破棄数を表す第2情報、又は障害発生通知を受信したことを表す第3情報を送信することを含む。また、前記通信制御方法は、前記ドナー基地局が、前記第1情報、前記第2情報、又は前記第3情報に基づいて、所定の動作を行うことを含む。
【0005】
第3の態様に係る通信制御方法は、セルラ通信システムで用いる通信制御方法である。前記通信制御方法は、親ノードと子ノードとの間に介在する中継ノードが、前記親ノードへ、プリエンプティブバッファステータスレポートを送信することを有する。また、前記通信制御方法は、前記親ノードが、前記プリエンプティブバッファステータスレポートを受信することを有する。さらに、前記通信制御方法は、前記送信することにおいて、前記中継ノードが、前記子ノードに滞留する第1データの第1データ量と前記中継ノードに滞留する第2データの第2データ量とを前記プリエンプティブバッファステータスレポートの異なる領域に格納することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るセルラ通信システムの構成例を表す図である。
【
図2】
図2は、IABノードと親ノード(Parent nodes)と子ノード(Child nodes)との関係を表す図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係るgNB(基地局)の構成例を表す図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係るIABノード(中継ノード)の構成例を表す図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係るUE(ユーザ装置)の構成例を表す図である。
【
図6】
図6は、IAB-MTのRRC接続及びNAS接続に関するプロトコルスタックの例を表す図である。
【
図7】
図7は、F1-Uプロトコルに関するプロトコルスタックの例を表す図である。
【
図8】
図8は、F1-Cプロトコルに関するプロトコルスタックの例を表す図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る設定例を表す図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る設定例を表す図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る動作例を表す図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る動作例を表す図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る動作例を表す図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態に係る動作例を表す図である。
【
図15】
図15は、第4実施形態に係る障害発生通知の送信例を表す図である。
【
図16】
図16は、第4実施形態に係る動作例を表す図である。
【
図17】
図17(A)は通常のBSRの送信例、
図17(B)と
図17(C)はpre-emptive BSRの送信例を夫々表す図である。
【
図18】
図18は、pre-emptive BSR MAC CEの構成例を表す図である。
【
図19】
図19は、IABノード、親ノード、及び子ノードの関係例を表す図である。
【
図20】
図20は、第5実施形態における動作例を表す図である。
【
図21】
図21は、第6実施形態に係る動作例を表す図である。
【
図22】
図22は、pre-emptive BSRと通常のBSRの送信例を表す図である。
【
図23】
図23は、第7実施形態に係る動作例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図面を参照しながら、実施形態に係るセルラ通信システムについて説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0008】
(セルラ通信システムの構成)
まず、一実施形態に係るセルラ通信システムの構成例について説明する。一実施形態に係るセルラ通信システム1は3GPPの5Gシステムである。具体的には、セルラ通信システム1における無線アクセス方式は、5Gの無線アクセス方式であるNR(New Radio)である。但し、セルラ通信システムには、LTE(Long Term Evolution)が少なくとも部分的に適用されてもよい。また、セルラ通信システム1は、6Gなど、将来のセルラ通信システムも適用されてよい。
【0009】
図1は、一実施形態に係るセルラ通信システム1の構成例を表す図である。
【0010】
図1に示すように、セルラ通信システム1は、5Gコアネットワーク(5GC)10と、ユーザ装置(UE:User Equipment)100、基地局装置(以下、「基地局」と称する場合がある。)200-1,200-2、及びIABノード300-1,300-2を有する。基地局200は、gNBと呼ばれる場合がある。
【0011】
以下において、基地局200がNR基地局である一例について主として説明するが、基地局200がLTE基地局(すなわち、eNB)であってもよい。
【0012】
なお、以下において、基地局200-1,200-2をgNB200(又は基地局200)、IABノード300-1,300-2をIABノード300とそれぞれ称する場合がある。
【0013】
5GC10は、AMF(Access and Mobility Management Function)11及びUPF(User Plane Function)12を有する。AMF11は、UE100に対する各種モビリティ制御等を行う装置である。AMF11は、NAS(Non-Access Stratum)シグナリングを用いてUE100と通信することにより、UE100が在圏するエリアの情報を管理する。UPF12は、ユーザデータの転送制御等を行う装置である。
【0014】
各gNB200は、固定の無線通信ノードであって、1又は複数のセルを管理する。セルは、無線通信エリアの最小単位を示す用語として用いられる。セルは、UE100との無線通信を行う機能又はリソースを示す用語として用いられることがある。また、セルは、gNB200など、基地局と区別しないで用いられる場合がある。1つのセルは1つのキャリア周波数に属する。
【0015】
各gNB200は、NGインターフェイスと呼ばれるインターフェイスを介して5GC10と相互に接続される。
図1において、5GC10に接続された2つのgNB200-1及びgNB200-2を例示している。
【0016】
各gNB200は、集約ユニット(CU:Central Unit)と分散ユニット(DU:Distributed Unit)とに分割されていてもよい。CU及びDUは、F1インターフェイスと呼ばれるインターフェイスを介して相互に接続される。F1プロトコルは、CUとDUとの間の通信プロトコルであって、制御プレーンのプロトコルであるF1-CプロトコルとユーザプレーンのプロトコルであるF1-Uプロトコルとがある。
【0017】
セルラ通信システム1は、バックホールにNRを用いてNRアクセスの無線中継を可能とするIABをサポートする。ドナーgNB(又はIABドナー。以下、「IABドナー」と称する場合がある。)200-1は、ネットワーク側のNRバックホールの終端ノードであり、IABをサポートする追加機能を備えたドナー基地局である。バックホールは、複数のホップ(すなわち、複数のIABノード300)を介するマルチホップが可能である。
【0018】
図1において、IABノード300-1がIABドナー200-1と無線で接続し、IABノード300-2がIABノード300-1と無線で接続し、F1プロトコルが2つのバックホールホップで伝送される一例を示している。
【0019】
UE100は、セルとの無線通信を行う移動可能な無線通信装置である。UE100は、gNB200又はIABノード300との無線通信を行う装置であればどのような装置であってもよい。例えば、UE100は、携帯電話端末、タブレット端末、ノートPC、センサ若しくはセンサに設けられる装置、及び/又は車両若しくは車両に設けられる装置である。UE100は、アクセスリンクを介してIABノード300又はgNB200に無線で接続する。
図1は、UE100がIABノード300-2と無線で接続される一例を示している。UE100は、IABノード300-2及びIABノード300-1を介してIABドナー200-1と間接的に通信する。
【0020】
図2は、IABノード300と親ノード(Parent nodes)と子ノード(Child nodes)との関係を表す図である。
【0021】
図2に示すように、各IABノード300は、基地局機能部に相当するIAB-DUとユーザ装置機能部に相当するIAB-MT(Mobile Termination)とを有する。
【0022】
IAB-MTのNR Uu無線インターフェイス上の隣接ノード(すなわち、上位ノード)は、親ノードと呼ばれる。親ノードは、親IABノード又はIABドナー200のDUである。IAB-MTと親ノードとの間の無線リンクは、バックホールリンク(BHリンク)と呼ばれる。
図2において、IABノード300の親ノードがIABノード300-P1及び300-P2である一例を示している。なお、親ノードへ向かう方向は、アップストリーム(upstream)と呼ばれる。UE100から見て、UE100の上位ノードは親ノードに該当し得る。
【0023】
IAB-DUのNRアクセスインターフェイス上の隣接ノード(すなわち、下位ノード)は、子ノードと呼ばれる。IAB-DUは、gNB200と同様に、セルを管理する。IAB-DUは、UE100及び下位のIABノードへのNR Uu無線インターフェイスを終端する。IAB-DUは、IABドナー200-1のCUへのF1プロトコルをサポートする。
図2において、IABノード300の子ノードがIABノード300-C1~300-C3である一例を示しているが、IABノード300の子ノードにUE100が含まれてもよい。なお、子ノードへ向かう方向は、ダウンストリーム(downstream)と呼ばれる。
【0024】
また、1つ又は複数のホップを介して、IABドナー200に接続されている全てのIABノード300は、IABドナー200をルートとする有向非巡回グラフ(DAG:Directed Acyclic Graph)トポロジ(以下、「トポロジ」と称する場合がある。)を形成する。このトポロジにおいて、
図2に示すように、IAB-DUのインターフェイス上の隣り合うノードが子ノード、IAB-MTのインターフェイス上の隣り合うノードが親ノードとなる。IABドナー200は、例えば、IABトポロジのリソース、トポロジ、ルート管理などを集中的に行う。
【0025】
(基地局の構成)
次に、実施形態に係る基地局であるgNB200の構成について説明する。
図3は、gNB200の構成例を表す図である。
図3に示すように、gNB200は、無線通信部210と、ネットワーク通信部220と、制御部230とを有する。
【0026】
無線通信部210は、UE100との無線通信及びIABノード300との無線通信を行う。無線通信部210は、受信部211及び送信部212を有する。受信部211は、制御部230の制御下で各種の受信を行う。受信部211はアンテナを含み、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換(ダウンコンバート)して制御部230に出力する。送信部212は、制御部230の制御下で各種の送信を行う。送信部212はアンテナを含み、制御部230が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換(アップコンバート)してアンテナから送信する。
【0027】
ネットワーク通信部220は、5GC10との有線通信(又は無線通信)及び隣接する他のgNB200との有線通信(又は無線通信)を行う。ネットワーク通信部220は、受信部221及び送信部222を有する。受信部221は、制御部230の制御下で各種の受信を行う。受信部221は、外部から信号を受信して受信信号を制御部230に出力する。送信部222は、制御部230の制御下で各種の送信を行う。送信部222は、制御部230が出力する送信信号を外部に送信する。
【0028】
制御部230は、gNB200における各種の制御を行う。制御部230は、少なくとも1つのメモリと、メモリと電気的に接続された少なくとも1つのプロセッサとを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサとCPU(Central Processing Unit)とを含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。プロセッサは、後述する各レイヤの処理を行う。また、制御部230は、以下に示す各実施例において、gNB200おける各処理を行うようにしてもよい。
【0029】
(中継ノードの構成)
次に、実施形態に係る中継ノード(又は中継ノード装置。以下、「中継ノード」と称する場合がある。)であるIABノード300の構成について説明する。
図4は、IABノード300の構成例を表す図である。
図4に示すように、IABノード300は、無線通信部310と、制御部320とを有する。IABノード300は、無線通信部310を複数有していてもよい。
【0030】
無線通信部310は、gNB200との無線通信(BHリンク)及びUE100との無線通信(アクセスリンク)を行う。BHリンク通信用の無線通信部310とアクセスリンク通信用の無線通信部310とが別々に設けられていてもよい。
【0031】
無線通信部310は、受信部311及び送信部312を有する。受信部311は、制御部320の制御下で各種の受信を行う。受信部311はアンテナを含み、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換(ダウンコンバート)して制御部320に出力する。送信部312は、制御部320の制御下で各種の送信を行う。送信部312はアンテナを含み、制御部320が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換(アップコンバート)してアンテナから送信する。
【0032】
制御部320は、IABノード300における各種の制御を行う。制御部320は、少なくとも1つのメモリと、メモリと電気的に接続された少なくとも1つのプロセッサとを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサ及びCPUを含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。プロセッサは、後述する各レイヤの処理を行う。また、制御部320は、以下に示す各実施例において、IABノード300における各処理を行うようにしてもよい。
【0033】
(ユーザ装置の構成)
次に、実施形態に係るユーザ装置であるUE100の構成について説明する。
図5は、UE100の構成例を表す図である。
図5に示すように、UE100は、無線通信部110と、制御部120とを有する。
【0034】
無線通信部110は、アクセスリンクにおける無線通信、すなわち、gNB200との無線通信及びIABノード300との無線通信を行う。また、無線通信部110は、サイドリンクにおける無線通信、すなわち、他のUE100との無線通信を行ってもよい。無線通信部110は、受信部111及び送信部112を有する。受信部111は、制御部120の制御下で各種の受信を行う。受信部111はアンテナを含み、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換(ダウンコンバート)して制御部120に出力する。送信部112は、制御部120の制御下で各種の送信を行う。送信部112はアンテナを含み、制御部120が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換(アップコンバート)してアンテナから送信する。
【0035】
制御部120は、UE100における各種の制御を行う。制御部120は、少なくとも1つのメモリと、メモリと電気的に接続された少なくとも1つのプロセッサとを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサ及びCPUを含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。プロセッサは、後述する各レイヤの処理を行う。また、制御部130は、以下に示す各実施例において、UE100における各処理を行うようにしてもよい。
【0036】
(プロトコルスタックの構成)
次に、実施形態に係るプロトコルスタックの構成について説明する。
図6は、IAB-MTのRRC接続及びNAS接続に関するプロトコルスタックの例を表す図である。
【0037】
図6に示すように、IABノード300-2のIAB-MTは、物理(PHY)レイヤと、MAC(Medium Access Control)レイヤと、RLC(Radio Link Controll)レイヤと、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤと、RRC(Radio Resource Control)レイヤと、NAS(Non-Access Stratum)レイヤとを有する。
【0038】
PHYレイヤは、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行う。IABノード300-2のIAB-MTのPHYレイヤとIABノード300-1のIAB-DUのPHYレイヤとの間では、物理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0039】
MACレイヤは、データの優先制御、ハイブリッドARQ(HARQ:Hybrid Automatic Rrepeat reQuest)による再送処理、及びランダムアクセスプロシージャ等を行う。IABノード300-2のIAB-MTのMACレイヤとIABノード300-1のIAB-DUのMACレイヤとの間では、トランスポートチャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。IAB-DUのMACレイヤはスケジューラを含む。スケジューラは、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式(MCS))及び割当リソースブロックを決定する。
【0040】
RLCレイヤは、MACレイヤ及びPHYレイヤの機能を利用してデータを受信側のRLCレイヤに伝送する。IABノード300-2のIAB-MTのRLCレイヤとIABノード300-1のIAB-DUのRLCレイヤとの間では、論理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0041】
PDCPレイヤは、ヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化を行う。IABノード300-2のIAB-MTのPDCPレイヤとIABドナー200のPDCPレイヤとの間では、無線ベアラを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0042】
RRCレイヤは、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル、及び物理チャネルを制御する。IABノード300-2のIAB-MTのRRCレイヤとIABドナー200のRRCレイヤとの間では、各種設定のためのRRCシグナリングが伝送される。IABドナー200とのRRC接続がある場合、IAB-MTはRRCコネクティッド状態である。IABドナー200とのRRC接続がない場合、IAB-MTはRRCアイドル状態である。
【0043】
RRCレイヤの上位に位置するNASレイヤは、セッション管理及びモビリティ管理等を行う。IABノード300-2のIAB-MTのNASレイヤとAMF11との間では、NASシグナリングが伝送される。
【0044】
図7は、F1-Uプロトコルに関するプロトコルスタックを表す図である。
図8は、F1-Cプロトコルに関するプロトコルスタックを表す図である。ここでは、IABドナー200がCU及びDUに分割されている一例を示す。
【0045】
図7に示すように、IABノード300-2のIAB-MT、IABノード300-1のIAB-DU、IABノード300-1のIAB-MT、及びIABドナー200のDUの各々は、RLCレイヤの上位レイヤとしてBAP(Backhaul Adaptation Protocol)レイヤを有する。BAPレイヤは、ルーティング処理及びベアラマッピング・デマッピング処理を行うレイヤである。バックホールでは、IPレイヤがBAPレイヤを介して伝送されることにより、複数のホップでのルーティングが可能になる。
【0046】
各バックホールリンクにおいて、BAPレイヤのPDU(Protocol Data Unit)は、バックホールRLCチャネル(BH NR RLCチャネル)によって伝送される。各BHリンクで複数のバックホールRLCチャネルを構成する。これにより、トラフィックの優先順位付け及びQoS制御が可能である。BAP PDUとバックホールRLCチャネルとの対応付けは、各IABノード300のBAPレイヤ及びIABドナー200のBAPレイヤによって実行される。
【0047】
なお、IABドナー200のCUは、IABノード300とIABドナー200のDUへのF1インターフェイスを終端し、IABドナー200のgNB-CU機能である。また、IABドナー200のDUは、IAB BAPサブレイヤをホストし、IABノード300へワイヤレスバックホールを提供し、IABドナー200のgNB-DU機能である。
【0048】
図8に示すように、F1-Cプロトコルのプロトコルスタックは、
図7に示すGTP-Uレイヤ及びUDPレイヤに代えて、F1APレイヤ及びSCTP(Stream Control Transmission Protocol)レイヤを有する。
【0049】
なお、以下においては、IABのIAB-DUとIAB-MTで行われる処理又は動作について、単に「IAB」の処理又は動作として説明する場合がある。例えば、IABノード300-1のIAB-DUが、IABノード300-2のIAB-MTへBAPレイヤのメッセージを送信することを、IABノード300-1がIABノード300-2へ、当該メッセージを送信するものとして説明する。また、IABドナー200のDU又はCUの処理又は動作についても、単に「IABドナー」の処理又は動作として説明する場合がある。
【0050】
また、アップストリーム方向とアップリンク(UL)方向とを区別しないで用いる場合がある。さらに、ダウンストリーム方向とダウンリンク(DL)方向とを区別しないで用いる場合がある。
【0051】
(第1実施形態)
IABにおいては、トポロジ全体の公平性(topology-wide fairness。以下、「公平性」と称する場合がある。)という考え方がある。公平性は、例えば、UE100がIABネットワークのどこに接続しても、トポロジ全体で要求されるQoS(Quality of Service)が満たされるようにQoSを管理するためのメカニズムを提供する。例えば、
図1において、UE100が、IABノード300-2に接続しても、IABドナー200-1に接続しても、同一のQoSを得るように、トポロジ全体を管理することが、公平性である、ということができる。
【0052】
このような公平性に対するアプローチは、例えば、以下の2つに分類される。
【0053】
(A1)局所/分散型公平性最適化(Local/distributed fairness optimization)
【0054】
(A2)中央集権型公平性最適化(Centralized fairness optimization)
【0055】
例えば、(A1)は、各IABノード300のスケジューラによって行われる。IABノード300は、残りホップ数などの情報をスケジューラに提供することによって、(A1)のような最適化を図ることが可能になる。
【0056】
他方、(A2)は、例えば、IABドナー200によるルーティング設定の更新などにより行われる。IABノード300が、IABドナー200へ、混雑状況及び/又は遅延情報などの情報を報告することで、ルーティング設定の更新が可能となる。
【0057】
(A1)は、より高速化を図ることが可能であるというメリットはあるものの、そのメリットはローカル接続内に限定され、スケジューラの実装に依存して変化する可能性がある。また、(A2)は、トポロジ全体の最適化を解決することは可能であるが、パケット単位での公平性を解決できない可能性がある。
【0058】
そこで、公平性に対するアプローチとして、(A1)と(A2)とを混在させるアプローチもある。上記2つを混在させることで、(A1)と(A2)のメリットを享受し、(A1)と(A2)のデメリットを最小限にすることが可能となる。
【0059】
第1実施形態では、このように混在する場合において、IABドナー200がIABノード300に対して、(A1)を行うか否かを指定する例である。具体的には、第1に、配下に中継ノード(例えば、IABノード300)を有するドナー基地局(例えば、IABドナー200)が、中継ノードに対して、中継ノードのスケジューラにデータパケットの転送における優先制御を行わせるか否かを設定する。第2に、中継ノードが、設定に従って、スケジューラを動作させる。以下では、データパケットの転送における優先制御を、単に、データパケットの転送制御と称する場合がある。
【0060】
図9は、IABドナー200が、IABノード300-Tに対して、IABノード300-Tのスケジューラにデータパケットの転送制御を行わせるか否かを設定する例を表す図である。データパケットの転送制御は、例えば、公平性に関する制御の一例である。このような設定により、例えば、IABドナー200がIABノード300-Tに対して、公平性に関する制御(以下、「公平性制御」と称する場合がある。)を行わせるか否かを指定することができる。これにより、上記(A1)を指定することが可能となる。
【0061】
図11は、第1実施形態に係る動作例を表す図である。
【0062】
IABドナー200は、ステップS10において、処理を開始すると、ステップS11において、IABノード300-Tへ、IAB用の公平性制御を行わせるか否かを設定する。公平性制御の具体例としては、例えば、以下がある。
【0063】
(B1)(過去の)経由ホップ数が大きいデータパケットの転送を優先する。これにより、例えば、遅延の大きいデータパケットが優先して転送されるため、上述した公平性の実現を図ることが可能となる。
【0064】
(B2)(未来の)残りホップ数が大きいデータパケットの転送を優先する。この場合も(B1)と同様に、遅延の大きいデータパケットが優先して転送されるため、公平性の実現を図ることが可能となる。
【0065】
(B3)BH RLCチャネルあたりのUEベアラ多重数(1:Nマッピングの“N”)が大きいデータパケットの転送を優先する。これにより、例えば、データ量が多いデータパケットが優先して転送されるため、データ量が多いことによる転送遅延を少なくして、上述した公平性の実現を図ることが可能となる。
【0066】
(B4)タイムスタンプを基準として経過時間が長いデータパケットの転送を優先する。これにより、例えば、ある時刻を基準にした経過時間が長いデータパケットが優先して転送されるため、転送遅延を少なくして、公平性の実現を図ることが可能となる。
【0067】
なお、IABドナー200は、上記(B1)から(B4)を組み合わせて、公平性制御の設定を行うようにしてもよい。また、IABドナー200は、このような公平性制御から除外するUEベアラID、又はBH RLCチャネルIDを、IABノード300-Tに設定するようにしてもよい。さらに、IABドナー200は、IABノード300-Tへ、RRCメッセージ、F1-APメッセージ、又はMAC CEなどを送信することで、IABノード300に対して公平性制御の設定を行うようにしてもよい。
【0068】
ステップS12において、IABノード300-Tは、設定に従って、スケジューラを動作させる。すなわち、IABノード300-TのIAB-DU(スケジューラ)は、上記(B1)から(B4)による設定に従って、データパケットの転送制御を行う。具体的には、以下となる。
【0069】
例えば、IABノード300を経由する毎にインクリメントされるホップ数がBAP Data PDUのヘッダに含まれる。上記(B1)が設定された場合、スケジューラは、当該ホップ数に基づいて、経由ホップ数の大きいデータパケットを優先して転送させる。
【0070】
例えば、BAP Data PDUのヘッダには、ターゲットまでのホップ数が含まれ、当該ホップ数はIABノード300を経由する毎にデクリメントされる。上記(B2)が設定された場合、スケジューラは、当該ホップ数に基づいて、残りホップ数が大きいデータパケットの転送を優先する。
【0071】
上記(B3)が設定された場合、スケジューラは、BH RLCチャネルあたりのUE100毎のベアラ多重数を確認して、当該ベアラ多重数の大きいデータパケットを優先して転送する。
【0072】
上記(B4)が設定された場合、スケジューラは、BAP Data PDUのヘッダに含まれるタイムスタンプ値を基準にして、経過時間が長いデータパケットを優先して転送する。
【0073】
ステップS13において、IABノード300は、一連の処理を終了する。
【0074】
上述した実施形態では、スケジューラによる公平性制御(優先制御)の例を示したが、これに限らない。公平性制御は、ルーティング処理においても実施されてもよい。具体的には、BAPレイヤにおいて、優先すべきパケット(例えば、残りホップ数が多いパケット)のルーティング処理を優先する。換言すると、BAPレイヤは、優先するパケットを、他のパケットよりも先に(もしくは早く)下位レイヤ(例えば、RLCレイヤ)に渡す(もしくは転送する)。この場合、上述した実施形態と同様に、IABドナー200は、IABノード300に対して、公平性制御に関する設定を行い、IABノード300は、当該設定に従って、ルーティング処理を実施することが可能であることに留意すべきである。
【0075】
第1実施形態における他の例を説明する。
【0076】
第1実施形態における他の例は、第1に、ドナー基地局(例えば、IABドナー200)が、中継ノード(例えば、IABノード300)に対して、アシスト情報を当該親ノード又は子ノードへ通知させるか否かを設定する。当該アシスト情報は、中継ノードの親ノード又は子ノードのスケジューラにおいてデータパケットの転送制御が行われるための情報である。第2に、中継ノードが、設定に従って、親ノード又は子ノードへ、アシスト情報を通知する。
【0077】
図10は、IABドナー200が、IABノード300-Tへ、アシスト情報を通知するか否かを設定する例を表す図である。このような設定により、IABノード300-Tの親ノード300-P又は子ノード300-Cは、アシスト情報に基づいて、公平性制御を実行することが可能となる。したがって、このような設定により、IABドナー200が、IABノード300-Tの親ノード300-P又は子ノード300-C(のスケジューラ)に対して、上記(A1)を(間接的に)指定することが可能となる。
【0078】
図12は、第1実施形態における他の例に係る動作例を表す図である。
【0079】
IABドナー200は、ステップS20において、処理を開始すると、ステップS21において、IABノード300-Tへ、スケジューリングのアシスト情報を当該IABノード300-Tの親ノード300-P又は子ノード300-Cへ通知するか否かの設定を行う。当該設定は、RRCメッセージ、又はF1-APメッセージなどを利用して行われる。
【0080】
なお、アシスト情報は、BAP Data PDUのヘッダに含まれる情報であって、IABノード300を経由するごとに変更される情報であってもよい。このような情報としては、例えば、ホップ数のカウント値、又は転送レイテンシ計測用のタイムスタンプ値がある。また、アシスト情報は、フロー制御フィードバック(flow control feedback)メッセージなどの混雑情報であってもよい。フロー制御フィードバックメッセージは、例えば、IABノード300-Tが混雑(congestion)しているときに、親ノード300-P又は子ノード300-Cへ、混雑していることを通知するために用いられるメッセージである。
【0081】
ステップS22において、IABノード300-Tは、設定に従って、アシスト情報を、親ノード300-P又は子ノード300-Cへ通知する。親ノード300-P又は子ノード300-Cのスケジューラは、アシスト情報に基づいて、公平性制御(例えば、(B1)から(B4)の全部又は一部)を行う。
【0082】
ステップS23において、IABノード300-Tは、一連の処理を終了する。
【0083】
第1実施形態における他の例において、アシスト情報が、IABノード300-Tから親ノード300-P又は子ノード300-Cへ提供される例を示したが、これに限らない。アシスト情報がIABドナー200からIABノード300-Tへ提供され、提供を受けたIABノード300-Tが公平性制御を行ってもよい。この場合、当該アシスト情報は、BH RLFチャネル毎もしくはルーティングID毎の、残りホップ数、UEベアラ数、優先度情報(例えば、QoS設定情報)、転送遅延情報(例えば、ある一定期間の実測平均レイテンシ)、及び/又は混雑度情報(例えば、負荷や無線リソースの使用率もしくは余裕度)などであってもよい。当該アシスト情報は、第2実施形態で、IABドナー200が集約した情報を用いてもよい。
【0084】
(第2実施形態)
公平性について、第1実施形態で説明した(A2)によるアプローチが採用される場合、できるだけ、IABノード300の情報を、IABドナー200へ、集約させた方が良い。トポロジ全体の公平性を把握しているのはIABドナー200であって、IABドナー200が中心となって公平性の実現を図ることができるからである。
【0085】
第2実施形態は、第1に、中継ノード(例えば、IABノード300)が、当該中継ノードを配下に有するドナー基地局(例えば、IABドナー200)へ、ルート毎のスループットを表す第1情報を送信する。第2に、ドナー基地局が、第1情報に基づいて、所定の動作を行う。IABドナー200は、所定の動作として、ルーティング設定を更新する。これにより、例えば、IABドナー200は、ルーティング設定の更新を行うことで、上記(A2)のアプローチによる公平性の実現を図ることが可能となる。
【0086】
図13は、第2実施形態に係る動作例を表す図である。
【0087】
IABノード300は、ステップS30において、処理を開始すると、ステップS31において、IABドナー200へ、ルート毎のスループット情報を通知する。
【0088】
DL方向の場合、IABノード300とその子ノードとの間のBHリンク又はIABノード300とUE100との間のアクセスリンクのリンク状態がスループットとして表される。この場合、当該IABノード300が、スループットを報告してもよい。一方、UL方向の場合、IABノード300とその親ノードとの間のBHリンクのリンク状態がスループットとして表される。この場合、当該親ノードが、スループットを報告してもよい。
【0089】
スループット情報は、当該BHリンク又はアクセスリンクの最大スループット及び最小スループットのうち少なくとも一方で表されてもよい。スループット情報は、理論値、及び/又は実効値であってもよい。また、スループット情報は、ある一定期間における平均スループットでもよい。一定期間(例えば、過去10秒など)は、IABドナー200によって設定されてもよい。なお、スループット情報は、ルート毎のスループット情報に代えて、パス毎のスループットでもよい。
【0090】
なお、ステップS31のように、IABノード300がスループット情報を報告することで、IABノード300は、IABノード300のスケジューラの実装性又は当該スケジューラの負荷状況に応じた正確なスループットを、IABドナー200へ報告できる。
【0091】
ステップS32において、IABドナー200は、スループット情報に基づいて、ルーティング設定の更新などを行う。
【0092】
ステップS33において、IABドナー200は、一連の処理を終了する。
【0093】
(第3実施形態)
5GのQoS特性の一つとして、PDB(Packet Delay Budget:パケット遅延バジェット)がある。PDBは、UE100とUPF12との間でパケットが遅延する時間の上限を表す。PDBを超えて遅延したパケットは、ローカルの判断に応じて破棄される場合がある。PDBが設定されることで、スケジューラでは、予期せぬ値を処理しなければならいことを回避することが可能となる。
【0094】
このようにPDBによるパケット破棄は、ローカルで実施されるため、IABドナー200はパケット破棄を検知することができない。
【0095】
そこで、第3実施形態では、IABノード300は、パケットを破棄した場合、破棄したパケット数をIABドナー200へ報告する。具体的には、第1に、中継ノード(例えば、IABノード300)が、配下に当該中継ノードを有するドナー基地局(例えば、IABドナー200)へ、データパケット破棄数を表す第2情報を送信する。第2に、ドナー基地局が、第2情報に基づいて、所定の動作を行う。これにより、例えば、IABドナー200は、IABノード300におけるパケット破棄を検知して、ルーティング設定の更新などを行うことで、上記(A2)のアプローチによる公平性の実現を図ることが可能となる。
【0096】
図14は、第3実施形態に係る動作例を表す図である。
【0097】
IABノード300は、ステップS40において、処理を開始すると、ステップS41において、IABドナー200から、パケット転送の有効期間が設定される。設定は、例えば、RRCメッセージ、及び/又はF1-APメッセージなどを用いて行われる。
【0098】
ステップS42において、IABノード300は、データパケット受信時に、当該データパケットが有効期間内であるか否かを判定する。例えば、IABノード300は、BAP Data PDUのヘッダに含まれるタイムスタンプ情報に基づいて、当該データパケットの遅延時間を計算し、設定された有効期間と比較する。これにより、IABノード300は、遅延時間が有効期間内であるか否かにより判定する。タイムスタンプ情報が、ソースにおける当該データパケット送信時の時間情報として表されている場合は、IABノード300は、現在時間と、タイムスタンプ情報とを比較して、遅延時間を計算してもよい。
【0099】
ステップS43において、当該データパケットが有効期間内でなければ(ステップS43においてNO)、ステップS44において、IABノード300は、当該データパケットを破棄する。このとき、IABノード300は、破棄したデータパケットの数をカウントし、そのカウント値と付随情報とを記録情報として、メモリなどに記憶する。付随情報は、例えば、流入(ingress)BH RLCチャネルID、ルーティングID(又は宛先(Destination)ID、或いはパスID)、及び/又は遅延時間(当該データパケットを受信した時点での遅延)を含む。
【0100】
ステップS45において、IABノード300は、IABドナー200へ、記録情報を報告する。例えば、IABノード300は、破棄したパケット数が(一定期間内に)一定以上となった場合に報告する。又は、IABノード300は、一定周期で、報告してもよい。又は、IABノード300は、IABドナー200から要求(リクエスト)があった場合に報告してもよい。IABノード300は、BAPメッセージなどを利用して、IABドナー200へ、記録情報を報告してもよい。
【0101】
ステップS46において、IABノード300は、一連の処理を終了する。なお、IABドナー200では、記録情報に基づいて、所定の動作として、ルーティング設定の更新などを行う。
【0102】
一方、ステップS43において、当該データパケットが有効期間内であれば(ステップS43でYES)、IABノード300は、受信したデータパケットを次ホップへ転送する。
【0103】
そして、ステップS46において、IABノード300は、一連の処理を終了する。
【0104】
(第4実施形態)
図15は、IABノード300が、IABドナー200へ、障害発生通知メッセージを送信する例を表す図である。
【0105】
図15に示すように、IABノード300の親ノード300-Pとその親ノードである上位ノード300-Uとの間のBHリンクでBH RLF(Back Haul Radio Link Failure:BHリンクの無線リンク障害)が発生したと仮定する。この場合、親ノード300-Pは、BH RLFが発生したことを表す障害発生通知を、IABノード300-Tへ通知する。
【0106】
しかし、障害発生通知は、親ノード300-PからIABノード300-Tへ通知され、IABドナー200には通知されない。したがって、IABドナー200は、親ノード300-PでBH RLFが発生したことを検知できない。IABドナー200が親ノード300-PでのBH RLFを検知できない場合、トポロジ全体のパフォーマンスが低下(混雑又は遅延など)する恐れがある。
【0107】
そこで、第4実施形態は、IABノード300が障害発生通知を受信したときに、IABドナー200へ、受信したことを報告する。具体的には、第1に、中継ノード(例えば、IABノード300)が、当該中継ノードを配下に有するドナー基地局(例えば、IABドナー200)へ、障害発生通知を受信したことを表す第3情報を送信する。第2に、ドナー基地局が第3情報に基づいて、所定の動作を行う。所定の動作として、例えば、IABドナー200は、ルーティング設定の更新などを行う。これにより、例えば、トポロジ全体のパフォーマンス低下を防止することが可能となる。また、例えば、IABドナー200に情報を集約させて、上記(A2)のアプローチによる公平性の実現を図ることが可能となる。
【0108】
なお、障害発生通知には、BH RLFのType1 Indication(RLF detected)がある。Type1 Indicationは、親ノード300-PのIAB-DUが、BH RLFを検出すると、IABノード300-T(又はUE100)へ、通知するIndicationである。また、障害発生通知には、BH RLFのType2 Indication(Trying to recover)がある。Type2 Indicationは、親ノード300-PのIAB-DUが、BH RLFからの回復動作を検知すると、IABノード300-TのIAB-MT(又はUE100)へ、通知するIndicationである。Type1 IndicationとType2 Indicationとを区別しないときは、親ノード300-PのIAB-DUがIABノード300-TのIAB-MT(又はUE100)へ、Type1/2 Indicationを通知できる。Type1/2 Indicationも、障害発生通知の一例である。
【0109】
図16は、第4実施形態に係る動作例を表す図である。なお、以下では、障害発生通知として、Type1/2 Indicationを例にして説明するが、Type1 Indicationでもよいし、Type2 Indicationでもよい。
【0110】
IABノード300-Tは、ステップS50において、処理を開始すると、ステップS51において、親ノード300-Pから、BH RLFのType1/2 Indicationを受信する。
【0111】
ステップS52において、IABノード300-Tは、IABドナー200へ、Type1/2 Indicationを受信したことを通知する。当該通知には、親ノード300-PのセルID、親ノード300-PのgNB ID、及び/又は親ノード300-PのBAPアドレスが含まれてもよい。
【0112】
なお、この通知の送信経路としては、IABノード300-TがDC(Dual Connectivity)により、親ノード300-Pと他の親ノードと接続されている場合、例えば、以下がある。すなわち、IABノード300-Tは、MCG(Master Cell Group)経由でType1/2 Indicationを受信すると、SCG(Secondary Cell Group)(SRB(Signaling Radio Bearer)3)経由で当該通知を送信してもよい。又は、IABノード300-Tは、SCG経由でType1/2 Indicationを受信すると、MCG(SRB1)経由で当該通知を送信してもよい。又は、IABノード300-Tは、Split SRB1経由で当該通知を送信してもよい。
【0113】
ステップS53において、IABドナー200は、Type1/2 Indicationを受信したことに応じて、親ノード300-PにおいてBH RLFが発生していることを認識し、所定の動作を行う。所定の動作としては、ルーティング設定の更新、IABノード300-Tに対するローカルリルーティングの指示、又はIABノード300-Tに対するハンドオーバなどがある。
【0114】
ステップS54において、IABノード300は、一連の処理を終了する。
【0115】
なお、上記動作例において、Type1/2 Indicationに代えて、Type3 Indication、Type4 Indication、又はフロー制御フィードバック(flow control feedback)メッセージでもよい。
【0116】
Type3 Indication(RLF recovered)は、親ノード300-PがBH RLFから回復したときに、IABノード300-Tへ通知される障害回復通知である。Type4 Indication(Recovery failure)は、親ノード300-PがBH RLFからの回復に失敗したときに、IABノード300-Tへ通知される回復失敗通知の一例である。障害回復通知及び回復失敗通知は、例えば、BHリンクにおける無線リンクの障害に関する通知である。
【0117】
また、フロー制御フィードバックメッセージは、例えば、親ノード300-Pにおいてデータパケットの混雑が発生しているときに、親ノード300-Pから通知されるメッセージである。
【0118】
(第5実施形態)
UL方向のスケジューリングに関して、プリエンプティブバッファステータスレポート(pre-emptive BSR(Buffer Status Report)。以下、「pre-emptive BSR」と称する場合がある。)が行われる場合がある。ここで、pre-emptive BSRについて説明する。
【0119】
(pre-emptive BSR)
図17(A)は通常のBSR(Regular BSR)の送信例、
図17(B)及び
図17(C)はpre-emptive BSRの送信例をそれぞれ表す図である。
【0120】
図17(A)に示すように、IABノード300-Tは、子ノード300-Cからデータを受信した後、親ノード300-Pへ、通常のBSRを送信する。親ノード300-Pは、BSRに基づいて、IABノード300-Tに対してスケジューリングを行い、UL grantをIABノード300-Tへ送信する。
【0121】
一方、
図17(B)に示すように、IABノード300-Tは、子ノード300-Cに対してUL grantを送信後、子ノード300-Cからデータを受信する前に、pre-emptive BSRを親ノード300-Pへ送信する。
【0122】
また、
図17(C)に示すように、IABノード300-Tは、子ノード300-CからBSRを受信した後、UL grantを子ノード300-Cへ送信する前に、pre-emptive BSRを親ノード300-Pへ送信する。
【0123】
このように、pre-emptive BSRは、通常のBSRよりも早いタイミングで、親ノード300-Pへ送信されるため、IABノード300-TにおけるULスケジューリングの遅延を低減させることが可能となる。
【0124】
pre-emptive BSRは、通常のBSRと同様に、MAC CEを用いて送信される。
図18は、pre-emptive BSR MAC CE(以下、「pre-emptive BSR」と称する場合がある。)の構成例を表す図である。
図18に示すように、pre-emptive BSR MAC CEは、LCG
iとバッファサイズの各領域を含む。
【0125】
LCGiは、論理チャネルグループ(LCG:Logical Channel Group)iのバッファサイズが存在することを示す領域である。すなわち、LCGiに「1」が設定されると、論理チャネルグループ(LCG:Logical Channel Group)iのバッファサイズが報告されることを示す。一方、LCGiに「0」が設定されると、論理チャネルグループiのバッファサイズが報告されないことを示す。
【0126】
バッファサイズは、pre-emptive BSRがトリガされたIABノード300のIAB-MTに到着することが期待されるデータの総量を識別し、IAB-MTにおいて現在利用可能なデータの総量は含まない。バッファサイズの詳細について、以下、説明する。
【0127】
図19は、IABノード300と親ノード300-P、及び子ノード300-Cとの関係例を表す図である。
図19は、IABノード300-Tが、親ノード300-Pへ、pre-emptive BSRを送信する例を表している。バッファサイズ領域には、
図19の例では、pre-emptive BSRがトリガされた親ノード300-PのIAB-MTに到着すると予想されるデータの総量が格納される。親ノード300-PのIAB-MTに到着すると予想されるデータは、IABノード300-TのIAB-DUに滞留するデータと、子ノード300-CのIAB-MTに滞留するデータとの総量である。言い換えると、pre-emptive BSRのバッファサイズ領域に格納されるバッファサイズは、IABノード300-TのIAB-DUに滞留するデータと、子ノード300-CのIAB-MTに滞留するデータとが混在したデータのデータ量となる。
【0128】
しかし、IABノード300-TのIAB-DUに滞留するデータのスケジューリングタイミングと、子ノード300-CのIAB-MTに滞留するデータのスケジューリングタイミングとは異なる。そのため、親ノード300-Pは、pre-emptive BSRを受信しても、異なるスケジューリングタイミングの2つのデータに対して、どのタイミングでスケジューリングを行えば良いのかわからない場合がある。
【0129】
そこで、第5実施形態では、IABノード300-Tは、自身のIAB-DUに滞留したデータのデータ量と、子ノード300-CのIAB-MTに滞留したデータのデータ量とを、pre-emptive BSRの異なるバッファサイズ領域に格納する。そして、IABノード300-Tは、当該pre-emptive BSRを親ノード300-Pへ送信する。
【0130】
具体的には、第1に、親ノード(例えば親ノード300-P)と子ノード(例えば子ノード300-C)との間に介在する中継ノード(例えばIABノード300)が、親ノードへ、プリエンプティブバッファステータスレポート(pre-emptive BSR)を送信する。この際、中継ノードが、子ノードに滞留する第1データの第1データ量をpre-emptive BSRの第1バッファサイズ領域に格納する。また、中継ノードは、中継ノードに滞留する第2データの第2データ量を、pre-emptive BSRの第2バッファサイズ領域に格納する。第2に、親ノードが、pre-emptive BSRを受信する。これにより、例えば、親ノード300-Pは、第1データ量と第2データ量とが異なる領域に格納されたpre-emptive BSRを受信できるため、第1データと第2データに対するスケジューリングを異なるタイミングで行うことが可能となる。
【0131】
【0132】
IABノード300-Tは、ステップS60において、処理を開始すると、ステップS61において、pre-emptive BSRをトリガする。
【0133】
ステップS62において、IABノード300-Tは、子ノード300-CのIAB-MTに滞留するデータのデータ量を、pre-emptive BSR MAC CEのBS(Buffer Size)#1の領域に格納し、自身(のIAB-DU)に滞留するデータのデータ量を、BS#2の領域に格納する。この際、IABノード300-Tは、子ノード300-Cに滞留するデータのデータ量を特定する。特定は、子ノード300-Cから受信したBSRに含まれるバッファサイズから特定してもよいし、IABノード300-Tが子ノード300-Cに対してスケジューリングしたUL grant値から特定してもよい。また、IABノード300-Tは、自身のIAB-DUに滞留するデータのデータ量を特定する。特定は、例えば、IABノード300-Tに滞留する受信側MAC SDU、受信側RLC PDU、及び/又は受信側BAP PDU(送信側BAP PDUを含めてもよい)のデータ量から特定する。なお、BS#1及びBS#2は、当該MAC CEにおいて、別々のバッファサイズ領域である。
【0134】
ステップS63において、IABノード300-Tは、BS#1とBS#2を含む、pre-emptive BSR MAC CEを、親ノード300-Pへ送信する。
【0135】
ステップS64において、IABノード300-Tは、一連の処理を終了する。
【0136】
なお、ステップS63では、1つのpre-emptive BSR MAC CEに、BS#1とBS#2を含む例について説明したが、BS#1とBS#2がそれぞれ異なるpre-emptive BSR MAC CEに含まれてもよい。この場合、IABノード300-Tは、BS#1を含むpre-emptive BSR MAC CEと、BS#2を含むpre-emptive BSR MAC CEと、を送信することになる。
【0137】
また、
図18に示すpre-emptive BSR MAC CEは一例である。例えば、pre-emptive BSR MAC CEは、バッファサイズ領域が含まれるMAC CEであればどのような構成のpre-emptive BSR MAC CEでもよい。
【0138】
(第6実施形態)
第6実施形態は、IABノード300-TのIAB-DUに滞留するデータのデータ量と、子ノード300-CのIAB-MTに滞留するデータのデータ量とを、pre-emptive BSRのLCGiを利用して区別する例である。
【0139】
具体的には、第1に、配下に中継ノード(例えば、IABノード300-T)を有するドナー基地局(例えば、IABドナー200)が、中継ノードに対して、第1論理チャネルグループを設定する。第2に、中継ノードが、第1論理チャネルグループに対応するバッファサイズ領域であって、プリエンプティブバッファステータスレポートの第3バッファサイズ領域に、中継ノードの子ノードに滞留する第1データの第1データ量を格納する。
【0140】
【0141】
ステップS70において、IABドナー200は、処理を開始する。
【0142】
ステップS71において、IABドナー200は、IABノード300-Tに対して、子ノード300-CのBSR値(又はバッファサイズ値)を格納するLCGを設定する。設定は、RRCメッセージ又はF1-APメッセージなどを用いて行われる。例えば、IABドナー200は、LCG
0(
図18)を、子ノード300-CのBSR値を格納するLCGとして設定する。
【0143】
ステップS72において、IABノード300-Tは、pre-emptive BSRをトリガする。
【0144】
ステップS73において、IABノード300-Tは、子ノード300-CのIAB-MTに滞留するデータのデータ量を、設定されたLCG(例えば、LCG0)に対応するBS(例えば、BS#1)に格納する。子ノード300-Cに滞留するデータは、第5実施形態と同様に、子ノード300-CからのBSR又は子ノード300-CへのUL grant値に基づいて、IABノード300-Tにおいて特定してもよい。
【0145】
ステップS74において、IABノード300-Tは、当該BSを含む、pre-emptive BSR MAC CEを親ノード300-Pへ送信する。
【0146】
ステップS75において、IABノード300-Tは、一連の処理を終了する。
【0147】
なお、上述した動作例は、子ノード300-Cに滞留するデータのデータ量を送信する例である。IABノード300-T自身のIAB-DUに滞留するデータのデータ量の送信は、例えば、以下のようにして行う。
【0148】
すなわち、IABノード300-TのIAB-DUに滞留するデータは、IABノード300-Tにおいて、子ノード300-Cから既に受信したデータである。IABノード300-Tは、当該データに対して、設定されたルーティング情報と比較することによって、どの論理チャネルを利用して当該データを送信するかを把握できる。そして、IABノード300-Tは、当該論理チャネルに対応するLCG(例えば、LCG1)を特定し、当該LCGに対応するBS(例えば、BS#2)に、IABノード300-TのIAB-DUに滞留するデータを格納できる。
【0149】
このような処理は、例えば、
図21に示す動作例のステップS73において行われる。すなわち、IABノード300-Tは、子ノード300-CのIAB-MTに滞留するデータのデータ量を、IABドナー200により設定されたLCGに対応するBS(例えば、BS#1)に格納する。IABノード300-Tは、自身のIAB-DUに滞留するデータのデータ量を、ルーティング情報から特定したLCGに対応するBS(例えば、BS#2)に格納する。
【0150】
なお、子ノード300-Cに滞留するデータのデータ量に関し、IABドナー200によるLCGの設定に代えて、ルーティング情報から特定したLCG以外のLCGに対応するBS(例えば、BS#3)に格納するようにしてもよい。すなわち、IABノード300は、IABノード300-TのIAB-DUに滞留するデータのデータ量をルーティング情報から特定したLCG(例えば、LCG1)に対応するBS(例えば、BS#2)に格納する。一方、IABノード300は、子ノード300-CのIAB-MTに滞留するデータのデータ量を当該LCG以外のLCG(例えば、LCG2)に対応するBS(例えば、BS#3)に格納する。したがって、IABノード300-Tは、2つのデータのデータ量をpre-emptive BSR MAC CEにおける異なるバッファサイズ領域に確実に格納して送信することが可能となる。
【0151】
(第7実施形態)
第7実施形態は、IABノード300-Tが、子ノード300-Cに滞留するデータのデータ量をpre-emptive BSRで報告し、IABノード300-Tに滞留するデータのデータ量を通常のBSRで報告する例である。
【0152】
図22は、IABノード300が、親ノード300-Pへ、pre-emptive BSRと通常のBSRとを送信する例を表す図である。
【0153】
通常のBSRは、現状では、IAB-MTに滞留するデータのデータ量のみを報告する。しかし、IABノード300-TのIAB-DUに滞留するデータも、すぐに送信可能となるため、pre-emptive BSRではなく、通常のBSRを用いて送信した方がよい。
【0154】
そこで、本第7実施形態では、IABノード300-Tは、自身のIAB-MTとIAB-DUに滞留するデータのデータ量を、BSRを用いて報告する。また、IABノード300-Tは、子ノード300-CのIAB-MTに滞留するデータのデータ量を、pre-emptive BSRを用いて報告する。
【0155】
具体的には、中継ノード(例えば、IABノード300-T)が、親ノード(例えば、親ノード300-P)へ、pre-emptive BSRを利用して子ノード(例えば、子ノード300-C)に滞留する第1データの第1データ量を送信する。中継ノードが、バッファステータスレポートを利用して中継ノードに滞留する第2データの第2データ量を送信する。
【0156】
【0157】
図23に示すように、ステップS80において、IABノード300-Tは、処理を開始する。
【0158】
ステップS81において、IABノード300-Tは、通常のBSRとpre-emptive BSRとをトリガする。
【0159】
ステップS82において、IABノード300-Tは、自身のIAB-DUとIAB-MTに滞留するデータを特定し、通常のBSR MAC CEのBSに格納する。IABノード300-Tは、例えば、送信側及び受信側BAP PDU、受信側RLC PDU、及び/又は受信側MAC SDUに基づいて、自身のIAB-DUに滞留するデータのデータ量を特定する。また、IABノード300-Tは、例えば、送信側MAC SDU、及び/又は送信側RLC PDUに基づいて、自身のIAB-MTに滞留するデータのデータ量を特定する。
【0160】
また、ステップS82において、IABノード300-Tは、子ノード300-CのIAB-MTに滞留するデータのデータ量をpre-emptive BSR MAC CEのBSに格納する。子ノード300-Cに滞留するデータのデータ量の特定は、例えば、第5実施形態と同様である。
【0161】
ステップS83において、IABノード300-Tは、通常のBSR MAC CEと、pre-emptive BSR MAC CEとを、親ノード300-Pへ送信する。
【0162】
ステップS84において、IABノード300-Tは、一連の処理を終了する。
【0163】
この動作例に伴い、3GPP TS38.321で規定された、pre-emptive BSR MAC CEのバッファサイズは、「pre-emptive BSRがトリガされたノードのIAB-MTに到着することが期待されるデータの総量」から、「pre-emptive BSRがトリガされたノードのIAB-DUに到着することが期待されるデータの総量」へと変更されることになる。
【0164】
なお、
図23における動作例において、IABノード300-Tは、pre-emptive BSR MAC CEとBSR MAC CEとを異なるタイミングで送信してもよい。
【0165】
(その他の実施形態)
UE100、gNB200、又はIABノード300が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0166】
また、UE100、gNB200、又はIABノード300が行う各処理を実行する回路を集積化し、UE100、gNB200、又はIABノード300の少なくとも一部を半導体集積回路(チップセット、SoC)として構成してもよい。
【0167】
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。また、矛盾しない範囲で、各実施例の全部又は一部を組み合わせることも可能である。
【0168】
本願は、米国仮出願第63/136,472号(2021年1月12日出願)の優先権を主張し、その内容の全てが本願明細書に組み込まれている。
【0169】
(付記)
(導入)
NRのためのeIAB(Enhancements to Integrated Access and Backhaul)に関する改訂されたワークアイテムが承認された。いくつかの目的は次の通りである。
【0170】
トポロジ適応の拡張
・シグナリング負荷を軽減するための機能拡張を含む、堅牢性及び負荷分散を強化するためのインタードナーIABノード移動のための手順の仕様。
・IABノード移動及びBH RLF回復によるサービス中断削減のための拡張機能の仕様。
・CP/UP分離のサポートを含む、トポロジの冗長性に対する拡張の仕様。
トポロジ、ルーティング、及びトランスポートの機能拡張
・トポロジ全体の公平性、マルチホップ遅延、及び輻輳緩和を改善するための拡張機能の仕様。
【0171】
トポロジ、ルーティング、及びトランスポートの機能拡張に関して、次の合意に達した。
【0172】
・R2は、Rel-17 IABのワークは、既存の5GQoSフレームワークに加えて新しいエンドユーザQoSメトリックを定義されないことを前提とする。
・Rel-17 IABのワークには、トポロジ全体の公平性の定義について合意することが含まれる。
・トポロジ全体の公平性は、UEがIABネットワークのどこにアタッチされるかに関わらず、トポロジ全体で必要なQoSが満たされるように、QoSを管理するためのメカニズムを提供する。この定義の変形は排除されない。そのようなメカニズムの成功がどのように評価されるかは、更なる検討が必要である。
・RAN2は、RAN3からのインプットなしで、DLE 2Eフロー制御の拡張について議論しない。
・RAN2が無線ベアラのデータを2つ以上のパスにスプリットする優先順位を下げるか否かは更なる検討が必要である。(RAN3は、IABでのデータスプリットでのマルチルートサポートの優先順位を下げることに合意)
【0173】
この付記では、Rel-17 IABのトポロジ、ルーティング、及びトランスポートの拡張について議論し、BSR及びプリエンプティブBSRの拡張、及びトポロジ全体の公平性のための一般的なフレームワークに焦点を当てる。
【0174】
(議論)
(BSR及びプリエンプティブBSRの拡張)
(LCG領域の拡張)
Rel-16では、UEのLCGの数、つまり、最大8つのLCGが、IAB-MTに再利用されました。多くの企業がLCGの数を増やすことを提案した。LCG領域を拡張すると、LCGあたりのLCHの数が減り、スケジューリングの粒度が細かくなり、トポロジ全体の公平性に貢献するようである。したがって、RAN2はLCGの数を増やすべきである。これは、レガシーBSR及びプリエンプティブBSRの両方に適用できる。
【0175】
提案1:RAN2は、BSR及びプリエンプティブBSRのLCGの数を増やすことに合意すべきである。
【0176】
(バッファサイズの計算)
レガシーBSRの場合、バッファサイズの計算は明確に規定される。これは、MAC、RLC、及びPDCPで利用可能なデータに基づく。RLC及びPDCPの場合、データ量の計算手順は各仕様で規定される。Rel-16では、これらのメカニズムはIAB-MTで再利用される。しかし、IABノードにはPDCPの代わりにBAPレイヤがあり、BAPにはデータ量の計算はない。そのため、現在の仕様では送信に利用可能なデータが不足している。トポロジ全体の公平性のためにより適切にスケジューリングするには、レガシーBSRで報告されるバッファサイズをより正確にすべきである。
【0177】
提案2:RAN2は、データ量の計算手順をBAPのために規定すべきかを議論すべきである。
【0178】
Rel-16では、プリエンプティブBSRのバッファサイズの計算は、IAB-DUの実装に大きく依存するが、仕様は、「バッファサイズフィールドは、プリエンプティブBSRがトリガされるノードのIAB-MTに到着すると予想されるデータの合計量を識別し、IAB-MTで現在利用可能なデータの量は含まれない。」という大まかなガイドラインを提供する。一部のIABノードは、プリエンプティブBSRで、実際に到着すると予想されるよりも大きなバッファサイズを報告する可能性がある。マルチベンダー展開の場合などでは、子ノードと親ノードとの間に同じ原則を設定することが難しい可能性がある。これは、非効率な無線リソースの割り当て、親でのスケジューリング遅延、及びIAB-MT間のリソース要求の不公平を引き起こす。IABノードがデュアルコネクティビティで設定されている場合、よりあいまいになる可能性がある。したがって、プリエンプティブBSRのバッファサイズの計算は、より正確に規定されるべきである。
【0179】
提案3:RAN2は、プリエンプティブBSRのバッファサイズの計算を規定すべきである。
【0180】
(トポロジ全体の公平性)
トポロジ全体の公平性の強化は、次の2つのアプローチによって分類される。
・スケジューラなどによる局所/分散型の公平性の最適化
・ルーティング設定の更新などによる中央集権型の公平性の最適化
【0181】
局所/分散型の公平性の最適化に関して、例えば、スケジューラアルゴリズムを最適化するために、IABノードには、利益メトリック、残りのホップ数などの情報が提供される。一部の解決策は各スケジューラの実装に強く依存していることに気づく。存在するならば、すべての実装に役立つ可能性のある共通/一般的な情報を規定することだけが望ましい。
【0182】
一方、中央集権型の公平性の最適化では、IABドナーには、輻輳状態、遅延/レイテンシなどの情報又は測定値とともに報告され、例えば、ルーティング設定の更新を決定する。したがって、このアプローチは一種のMDT及びSONと見なすことができる。
【0183】
私たちの見解では、これらのアプローチには長所と短所とがある。局所/分散型のアプローチはより高速なメカニズムであり得るが、メリットはローカル接続内に制限され、スケジューラの実装によって変わり得る。中央集権型のアプローチは、トポロジ全体/大幅な最適化を解決し得るが、パケットごとの公平性には機能しない可能性がある。したがって、RAN2は、トポロジ全体の公平性を強化するために、どちら(又は双方)のアプローチがより望ましいか議論すべきである。
【0184】
提案4:RAN2は、トポロジ全体の公平性の強化は、(例えば、各スケジューラによる)局所/分散型のアプローチ、又は(例えば、ルーティング設定の更新を伴うIAB-donor-CUによる)中央集権型のアプローチ、又はその双方によって実現すべきかを議論すべきである。