(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】哺乳類で発現した新規なヒト免疫不全ウイルスエンベロープタンパク質抗原
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20250108BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250108BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250108BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20250108BHJP
A61K 39/21 20060101ALI20250108BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20250108BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20250108BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20250108BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20250108BHJP
C07K 14/16 20060101ALN20250108BHJP
C12N 15/49 20060101ALN20250108BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
C12N5/10
A61P31/18
A61K39/21
A61K48/00
G01N33/543 501A
G01N33/53 N
G01N33/569 H
C07K14/16
C12N15/49
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023023515
(22)【出願日】2023-02-17
(62)【分割の表示】P 2021195360の分割
【原出願日】2018-11-16
【審査請求日】2023-02-24
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516315775
【氏名又は名称】グリフォルス ダイアグノステック ソリューションズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョディ・メルトン・ウィット
(72)【発明者】
【氏名】ソダニー・ソン
(72)【発明者】
【氏名】マーク・バウマイスター
(72)【発明者】
【氏名】ジョディ・ベリー
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/137632(WO,A2)
【文献】特表2006-509496(JP,A)
【文献】特表2011-502521(JP,A)
【文献】特表平05-503926(JP,A)
【文献】PLoS Pathog.,2017年01月11日,vol. 13, no.1,e1006074
【文献】PNAS,2014年12月30日,Vol. 111, No. 52,pp. 18542-18547
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)リーダーペプチド、
並びに
b)
i)HIV gp120タンパク質の少なくとも1つのエピトープ、及び
ii)HIV gp41タンパク質の少なくとも1つのエピトープ
を含む融合タンパク質
を含む、組換えポリペプチドであって、
融合タンパク質がHIVによってコードされていない領域を含み、前記領域が、ヒンジ領域を欠く抗体の
モノマーFcドメインからなり、
組換えポリペプチドが膜貫通ドメインを欠いており、かつ
HIVエンベロープタンパク質の少なくとも4個のエピトープを含む、組換えポリペプチド。
【請求項2】
前記
抗体Fcドメインのアミノ酸配列が、配列番号77または配列番号80からなる群から選択される、請求項
1に記載の組換えポリペプチド。
【請求項3】
組換えポリペプチドは、少なくとも5、6、7、8、9又は10個のエピトープを含む、請求項1又は2に記載の組換えポリペプチド。
【請求項4】
配列番号14または配列番号16に示されるアミノ酸配
列を含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項5】
配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項6】
リーダーペプチドが、配列番号84に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項7】
ポリヒスチジンアフィニティタグをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、及び
ヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーター
を含む核酸。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む細胞であって、哺乳類細胞である細胞。
【請求項10】
CHO、BHK、NS0、Sp2/0、COS、C127、HEK293、HT-1080、PER.C6、HeLa、又はJurkat細胞である、請求項9に記載の細胞。
【請求項11】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドを含む免疫アッセイ試薬であって、固体支持体に結合された、免疫アッセイ試薬。
【請求項12】
固体支持体と、請求項1から
7のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドとを含む、HIV抗体を含む組成物をアッセイするためのデバイスであって、
組換えポリペプチドが共有結合又は非共有結合で固体支持体に結合している、デバイス。
【請求項13】
固体支持体は、ビーズ、膜、マイクロタイタープレート、ポリペプチドチップ、又はクロマトグラフィーカラムの固相である、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
抗体を含む試料をアッセイする方法で使用するための、請求項1から7のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドを含む組成物であって、前記方法が、請求項1から7のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドを試料と接触させる工程、及び
抗体と組換えポリペプチドとの間の結合親和性を決定する工程を含む組成物。
【請求項15】
複数の抗体から抗HIV抗体を選択する方法
で使用するための、請求項1から7のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドを含む組成物あって、
(a)請求項1から
7のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド、及び
(b)複数の抗体を含む組成物
を接触させる工程、並びに
組成物中の他の抗体に対して
組換えポリペプチドに高い結合親和性を有する抗体を同定し、それにより抗HIV抗体を選択する工程
を含む、
組成物。
【請求項16】
ヒト患者におけるHIV感染を予防する
方法で使用するための、
請求項1から7のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドであって、
前記方法が、薬学的活性成分として請求項1から
7のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドを
患者に投与することを含む、
組換えポリペプチド。
【請求項17】
HIV感染を予防するための医薬の製造における、請求項1から7のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドの使用。
【請求項18】
ヒト患者におけるHIV感染を予防する方法で使用するための、請求項1から7のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドを含む組成物であって、前記方法が、請求項1から7のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドを患者に投与することを含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願はEFS-Webを介してASCIIテキストファイルとして電子配列リストとともに提出されている。電子配列リストは2018年11月15日に作成され最後に保存されたサイズ501,813バイトのSEQLIST1800393.txtと題するファイルとして提供される。電子配列リスト中の情報は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は組換えタンパク質の分野に関する。本開示のいくつかの実施形態は、HIV gp120又はgp41の少なくとも1つのエピトープ及び融合タンパク質を含むHIVエンベロープ組換えポリペプチドに関する。本開示はHIV抗体を含む試料をアッセイするための方法及びデバイスにも関する。
【背景技術】
【0003】
HIVはAIDS関連疾患によって推定3500万人の死をもたらす世界的な感染症を引き起こした。2016年には推定180万例のHIVの新規症例が発生し、世界中で約3670万人が感染している。HIVはレンチウイルスサブグループに属するレトロウイルスファミリーの一員であり、記述された2つの型、HIV-1及びHIV-2を有している。HIV-1はHIV-2よりも感染力が強く、より悪性であり、世界中で大多数のHIV感染を引き起こしている。
【0004】
それぞれのHIVビリオンは9個の遺伝子と19個のタンパク質をコードするRNAの2つのコピーを含んでいる。未変性のビリオンの表面上の唯一のタンパク質はenv遺伝子によってコードされているエンベロープ糖タンパク質である。env遺伝子の産物はgp160と呼ばれる約850アミノ酸の前駆体タンパク質である。このタンパク質は小胞体内の細胞プロテアーゼであるフリンによって2つの切断生成物、gp120及びgp41に切断される。gp120とgp41の両方は細胞表面上にトリマーとして存在し、ヘテロダイマー「スパイク」を形成する。gp41はこれが非共有結合的に結合した細胞外のgp120のアンカーとして作用する膜貫通糖タンパク質である。gp120はリンパ球上の細胞レセプターのための結合部位を含み、細胞内へのウイルスの侵入のために重要である。
【0005】
ビリオン表面上の唯一のタンパク質として、gp120及びgp41は宿主の免疫系の標的となる免疫優勢のエピトープを多く露出している。これらのタンパク質のバージョンは歴史的に、免疫アッセイにおいて、HIV感染の確認としてこれらの糖タンパク質に対して結合している抗体を捕捉し検出するために利用されてきた。
【0006】
gp120及びgp41はワクチン接種、診断アッセイ、及び診断アッセイの開発に有用である。組換えgp120及びgp41は典型的には酵母で産生されるが、酵母におけるgp120及びgp41の産生は、タンパク質の異常な折り畳み、凝集、及び/又は異常な翻訳後改変を生じることがあるので困難である。さらに、酵母からのgp120及びgp41の精製は面倒な多数工程のプロセスになる。したがって、gp120及びgp41抗原を産生するための改善された組成及び方法が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】https://www.hiv.lanl.gov/content/immunology/maps/ab/gp160.html
【文献】https://www.hiv.lanl.gov/components/sequence/HIV/search/search.html
【文献】https://www.hiv.lanl.gov/content/sequence/NEWALIGN/align.html
【文献】https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein
【文献】Senes et al., J. Molecular Biology 366(2):436 (2007)
【文献】Harbury、Zhang、Kim、Alber、「A switch between two-, three-, and four-stranded coiled coils in GCN4 leucine zipper mutants」、Science (1993) 262:1401頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の種々の実施形態はHIVエンベロープタンパク質の少なくとも1つのエピトープ及び融合タンパク質を含む組換えポリペプチドであって、組換えポリペプチドは膜貫通ドメインを欠いており、融合タンパク質はHIVによってコードされていないアミノ酸配列を含む、組換えポリペプチドに関する。
【0010】
本発明の種々の実施形態はリーダーペプチド、融合タンパク質、HIV gp120タンパク質の少なくとも1つのエピトープ及び/又はHIV gp41タンパク質の少なくとも1つのエピトープを含む組換えポリペプチドであって、融合タンパク質はHIVによってコードされていない領域を含み、前記領域は抗体のFcドメイン、p53ドメイン、GCN4ドメイン又はクラスリンドメインからなる群から選択され、組換えポリペプチドは膜貫通ドメインを欠いている、組換えポリペプチドに関する。
【0011】
本発明の組換えポリペプチドは膜貫通ドメインを欠いており、前記膜貫通ドメインは配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71又は配列番号72からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0012】
本発明の組換えポリペプチドはHIVエンベロープタンパク質の複数のエピトープを含んでよい。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは少なくとも4、5、6、7、8、9又は10個のエピトープを含む。いくつかの実施形態では、それぞれのエピトープは、アミノ酸配列がHIVによってコードされていないリンカーによって別のエピトープと連結されている。いくつかの実施形態では、それぞれのエピトープを別のエピトープと連結するリンカーは、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号109、配列番号110又は配列番号111で表わされるアミノ酸配列を含む。
【0013】
ポリペプチドはHIVエンベロープタンパク質の複数のエピトープを含んでよく、複数のエピトープのそれぞれのエピトープは、HIVによってコードされていないアミノ酸配列によって複数のエピトープの別のエピトープと連結されている。たとえば、複数のエピトープのそれぞれのエピトープは、複数のエピトープの別のエピトープとリンカーによって連結されてよい。いくつかの実施形態では、複数のエピトープのそれぞれのエピトープは、複数のエピトープの別のエピトープとリンカーによって連結されてよく、たとえばそれぞれのリンカーはαヘリックス又はβストランドを含む。複数のエピトープは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のエピトープを含んでよい。複数のエピトープを含むポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号20、配列番号21、若しくは配列番号22で表わされるアミノ酸配列、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号20、配列番号21、若しくは配列番号22で表わされるアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでよい。
【0014】
ポリペプチドは、HIV gp120タンパク質の1つ若しくは複数のエピトープ、HIV gp41タンパク質の1つ若しくは複数のエピトープ、又はHIV gp120タンパク質及びHIV gp41タンパク質の両方の1つ若しくは複数のエピトープを含んでよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、又は配列番号106で表わされるアミノ酸配列、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、又は配列番号106で表わされるアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドの融合タンパク質は抗体Fcドメインを含んでよい。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、アミノ酸配列が配列番号77、配列番号78、配列番号80、又は配列番号107からなる群から選択される抗体Fcドメインを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質の抗体Fcドメインはオリゴマー化ドメインを欠いており、組換えポリペプチドはモノマーである。そのようなモノマーポリペプチドは配列番号1、配列番号2、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号86、配列番号88、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、又は配列番号106で表わされるアミノ酸配列、又は配列番号1、配列番号2、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号86、配列番号88、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、又は配列番号106で表わされるアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドの融合タンパク質の抗体Fcドメインはダイマー化ドメインを含む。そのような組換えポリペプチドは、配列番号3、配列番号4、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号87、若しくは配列番号89で表わされるアミノ酸配列、又は配列番号3、配列番号4、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号87、若しくは配列番号89で表わされるアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドの融合タンパク質はオリゴマー化ドメインを含んでよい。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドの融合タンパク質は、p53、GCN4、クラスリン、又は抗体のFcドメイン(たとえば抗体のヒンジ領域を含む)からなる群から選択されるオリゴマー化ドメインを含む。そのようなポリペプチドは、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号87、若しくは配列番号89で表わされるアミノ酸配列、又は配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号87、若しくは配列番号89で表わされるアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでよい。
【0020】
ポリペプチドはHIV gp120及び/又はHIV gp41のエピトープを含んでよい。ポリペプチドはHIV gp120の1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10個のエピトープ及び/又はHIV gp41の1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10個のエピトープを含んでよい。
【0021】
ポリペプチドはリーダーペプチドを含んでよい。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドのN-末端はリーダーペプチドからなっていてよく、リーダーペプチドは哺乳類細胞(たとえばヒト細胞)中におけるポリペプチドの翻訳の後で哺乳類細胞の細胞表面膜の外側にある組換えポリペプチドを転位させることができる。いくつかの実施形態では、リーダーペプチドは配列番号84で表わされるアミノ酸配列を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドの融合タンパク質はリーダーペプチドであるが、融合タンパク質は典型的にはリーダーペプチドではない。融合タンパク質がリーダーペプチドである実施形態では、組換えポリペプチドはHIV gp120のエピトープ及びHIV gp41のエピトープを含み、組換えポリペプチドはgp120/gp41の切断部位を欠いている。そのようなポリペプチドは、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、若しくは配列番号38で表わされるアミノ酸配列、又は配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、若しくは配列番号38で表わされるアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドはポリヒスチジンアフィニティタグをさらに含む。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載した少なくとも2つのポリペプチド(本明細書に記載した2、3、又は4個のポリペプチド等)を含むオリゴマーポリペプチドに関する。オリゴマーポリペプチドのそれぞれのポリペプチドサブユニットは同じアミノ酸配列を有してもよく、又はオリゴマーポリペプチドは異なったアミノ酸配列を有するポリペプチドサブユニットを含んでもよい。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載したポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドを含む細胞であって、ヒト細胞等の哺乳類細胞である、細胞に関する。細胞はたとえばCHO、BHK、NS0、Sp2/0、COS、C127、HEK293、HT-1080、PER.C6、HeLa、又はJurkat細胞であってよい。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態は、実施形態のいずれか1つのポリペプチド若しくはオリゴマーポリペプチドをコードするヌクレオチド配列及びヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む核酸に関する。ヌクレオチド配列は哺乳類細胞(ヒト細胞等)中での発現のためにコドン最適化されてよい。プロモーターは哺乳類細胞(ヒト細胞等)中での発現を促進することができる。本発明のいくつかの実施形態は本明細書に記載したポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む細胞に関する。細胞はクローニング細胞(たとえばE.coli)又は発現細胞(たとえばCHO、BHK、NS0、Sp2/0、COS、C127、HEK293、HT-1080、PER.C6、HeLa、又はJurkat細胞)であってよい。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態は、抗HIV抗体を含む組成物をアッセイするためのデバイスであって、固体支持体と、本明細書に記載したポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドとを含み、ポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドは固体支持体に共有結合又は非共有結合で結合している、デバイスに関する。組成物はたとえばヒト患者から得た血液、血漿、血清、又は唾液等の体液を含んでよい。固体支持体はビーズ、膜、マイクロタイタープレート、ポリペプチドチップ、又はクロマトグラフィーカラムの固相であってよい。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態は本明細書に記載したポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドを含む免疫アッセイ試薬であって、固体支持体に結合している、免疫アッセイ試薬に関する。いくつかの実施形態では、固体支持体はビーズ、膜、マイクロタイタープレート、ポリペプチドチップ、又はクロマトグラフィーカラムの固相である。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載したポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドを動物に投与する工程を含む、抗体を産生する方法に関する。本方法は動物の抗体産生細胞を単離する工程をさらに含んでよい。本方法は動物の核酸を単離する工程であって核酸が抗体をコードする工程をさらに含んでよい。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態は、抗体を含む試料をアッセイする方法であって、試料と本明細書に記載したポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドを接触させる工程、及び抗体とポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドとの間の結合親和性を決定する工程を含む方法に関する。いくつかの実施形態では、結合親和性は相対的結合親和性であってよく、1つ又は複数の異なった抗体の結合親和性に相対的であるので、結合親和性は相対的結合親和性である。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態は、複数の抗体から抗HIV抗体を選択する方法であって、本明細書に記載したポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドと複数の抗体を含む組成物とを接触させる工程、及び組成物中の他の抗体に対してポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドに高い結合親和性を有する抗体を同定し、それにより抗HIV抗体を選択する工程を含む方法に関する。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載した組換えポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドを患者に投与する工程を含む、ヒト患者におけるHIV感染を予防し又は治療する方法に関する。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態は、ヒト生物学的試料の供給源から生物学的試料を選択する方法であって、前記供給源から、本明細書に記載した組換えポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドと抗原抗体複合体を形成する抗体を含まない試料を選択する工程を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1-1】
図1は、ポリペプチドenv_1~env_38、env_39~env_42及びenv_43~env_54の概念図を含む図で、これらは実施例の部に記載されており、それぞれ配列番号1~38、配列番号92~94、及び配列番号95~106で表わされるアミノ酸配列を有している。
【
図2】配列番号1で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分は抗体Fcドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIV gp120の複数のエピトープを含む。
【
図3】配列番号2で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分は抗体Fcドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIV gp120の複数のエピトープを含む。
【
図4】配列番号5で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分はp53テトラマー化ドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIV gp120の複数のエピトープを含む。
【
図5】配列番号6で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、GCN4トリマー化ドメイン及びHIV gp120の複数のエピトープを含む。
【
図6】配列番号7で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分はクラスリントリマー化ドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIV gp120の複数のエピトープを含む。
【
図7】配列番号8で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分は抗体Fcドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIV gp41の複数のエピトープを含む。
【
図8】配列番号9で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分は抗体Fcドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIV gp41の複数のエピトープを含む。
【
図9】配列番号10で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分は抗体Fcドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIV gp120のエピトープを含む。
【
図10】配列番号13で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドダイマーの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分は抗体Fcドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIV gp120のエピトープを含む。
【
図11】配列番号14で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分は抗体Fcドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIV gp120のエピトープ(左)及びHIV gp41のエピトープ(右)を含む。
【
図12】配列番号15で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドダイマーの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分は抗体Fcドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIV gp120のエピトープ(左)及びHIV gp41のエピトープ(右)を含む。
【
図13】配列番号18で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分は抗体Fcドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIV gp41のエピトープを含む。
【
図14】配列番号19で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドダイマーの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分は抗体Fcドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIV gp41のエピトープを含む。
【
図15】配列番号21で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分は抗体Fcドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIV gp41の複数のエピトープ及びHIV gp120の複数のエピトープを含む。
【
図16】配列番号22で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分は抗体Fcドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIV gp120のエピトープ及びHIV gp41の複数のエピトープを含む。
【
図17】配列番号23で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分は抗体Fcドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIVエンベロープタンパク質エピトープを含む。
【
図18】配列番号24で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分は抗体Fcドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIVエンベロープタンパク質エピトープを含む。
【
図19】配列番号28で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分は抗体Fcドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIVエンベロープタンパク質エピトープを含む。
【
図20】配列番号29で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分は抗体Fcドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIVエンベロープタンパク質エピトープを含む。
【
図21】配列番号30で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分は抗体Fcドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIVエンベロープタンパク質エピトープを含む。
【
図22】配列番号31で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分は抗体Fcドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIVエンベロープタンパク質エピトープを含む。
【
図23】配列番号32で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分はgp41エピトープを含む。
【
図24】配列番号33で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、構造の暗い部分は抗体Fcドメインとしての融合タンパク質を含み、明るい部分はHIV gp41エピトープを含む。
【
図25】配列番号34で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、HIV gp41エピトープ及びHIV gp120 エピトープを含む。
【
図26】配列番号92で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、明るい灰色の部分はHIV gp120エピトープを含み、中間の灰色は抗体Fcドメインを含み、暗い灰色はHIV gp41エピトープを含み、黒色はリンカーを含む。
【
図27】配列番号93で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、明るい灰色の部分はHIV gp41エピトープを含み、中間の灰色は抗体Fcドメインを含み、暗い灰色はHIV gp120エピトープを含み、黒色はリンカーを含む。
【
図28】配列番号94で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、明るい灰色の部分はHIV gp120エピトープを含み、中間の灰色は抗体Fcドメインを含み、暗い灰色はHIV gp41エピトープを含み、黒色はリンカーを含む。
【
図29】配列番号95で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、明るい灰色の部分はHIV gp120エピトープを含み、中間の灰色は抗体Fcドメインを含み、暗い灰色はHIV gp41エピトープを含み、黒色はリンカーを含む。
【
図30】配列番号96で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、明るい灰色の部分はHIV gp120エピトープを含み、中間の灰色は抗体Fcドメインを含み、暗い灰色はHIV gp41エピトープを含み、黒色はリンカーを含む。
【
図31】配列番号97で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、明るい灰色の部分はHIV gp120エピトープを含み、中間の灰色は抗体Fcドメインを含み、暗い灰色はHIV gp41エピトープを含み、黒色はリンカーを含む。
【
図32】配列番号98で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、明るい灰色の部分はHIV gp120エピトープを含み、中間の灰色は抗体Fcドメインを含み、暗い灰色はHIV p24エピトープを含み、黒色はリンカーを含む。
【
図33】配列番号99で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、明るい灰色の部分はHIV p24エピトープを含み、中間の灰色は抗体Fcドメインを含み、暗い灰色はHIV gp120エピトープを含み、黒色はリンカーを含む。
【
図34】配列番号100で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、明るい灰色の部分はHIV gp120エピトープを含み、中間の灰色は抗体Fcドメインを含み、暗い灰色はHIV p24エピトープを含み、黒色はリンカーを含む。
【
図35】配列番号101で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、明るい灰色の部分はHIV p24エピトープを含み、中間の灰色は抗体Fcドメインを含み、暗い灰色はHIV gp120エピトープを含み、黒色はリンカーを含む。
【
図36】配列番号102で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、明るい灰色の部分はHIV gp120エピトープを含み、中間の灰色は抗体Fcドメインを含み、暗い灰色はHIV p24エピトープを含み、黒色はリンカーを含む。
【
図37】配列番号103で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、明るい灰色の部分はHIV p24エピトープを含み、中間の灰色は抗体Fcドメインを含み、暗い灰色はHIV gp120エピトープを含み、黒色はリンカーを含む。
【
図38】配列番号104で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、明るい灰色の部分はHIV gp120エピトープを含み、中間の灰色は抗体Fcドメインを含み、暗い灰色はHIV p24エピトープを含み、黒色はリンカーを含む。
【
図39】配列番号105で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、明るい灰色の部分はHIV p24エピトープを含み、中間の灰色は抗体Fcドメインを含み、暗い灰色はHIV gp120エピトープを含み、黒色はリンカーを含む。
【
図40】配列番号106で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、明るい灰色の部分はHIV gp41エピトープを含み、中間の灰色は抗体Fcドメインを含み、暗い灰色はHIV gp120エピトープを含み、黒色はリンカーを含む。
【
図41】還元条件(上のイメージ)及び非還元条件(下のイメージ)で行なった4~20%トリス-グリシンTGX(商標)ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミド(SDS-PAGE)ゲルのイメージである。ゲルはInstantBlue(商標)タンパク質染色で染色した。それぞれのゲルのレーンは左から右へ1~9と番号付けしている。第1のレーンは分子量マーカーを含み、レーン2~9は、クローニングして真核細胞で発現したポリペプチドenv_1、2、3、4、5、8、9、及び10を含む。ポリペプチドenv_1、2、3、5、8、9、及び10は検出可能なレベルで発現した。
【
図42】還元条件(上のイメージ)及び非還元条件(下のイメージ)で行なった4~20%トリス-グリシンTGX(商標)SDS-PAGEゲルのイメージである。ゲルはInstantBlue(商標)タンパク質染色で染色した。それぞれのゲルのレーンは左から右へ1~9と番号付けしている。第1のレーンは分子量マーカーを含み、レーン2~9は、クローニングして真核細胞で発現したポリペプチドenv_11、12、13、14、15、16、17、及び18を含む。それぞれのポリペプチドは検出可能なレベルで発現することができた。
【
図43-1】
図43は、https://www.hiv.lanl.gov/content/immunology/maps/ab/gp160.html. で入手可能なLANL gp160 AB Epitope Mapの2017年10月19日版の一部のイメージである。
【
図44】配列番号91で表わされるアミノ酸配列を有する組換えポリペプチドの予想される構造のイメージであり、明るい灰色の部分はHIV gp120エピトープを含み、中間の灰色は抗体Fcドメインを含み、暗い灰色はHIV gp41エピトープを含み、黒色はリンカーを含む。
【発明を実施するための形態】
【0035】
HIV-1は、gp41が膜中に埋め込まれ、gp120がそれぞれのgp41タンパク質の上に存在するトリマー構造としてエンベロープタンパク質(gp120及びgp41)を発現する。本発明の種々の実施形態は診断用途に向けて従来技術のタンパク質に対していくつかの明確な利点を含んでいる。本実施形態のいくつかの態様は、モノマータンパク質を用いては産生することができないエピトープの実際の二次、三次、及び四次コンフォメーションを再現するオリゴマー化ドメインに関する。本実施形態の他の態様は、エピトープ、特にgp120エピトープについて重要であるが酵母(たとえばSaccharomyces又はPichia)又はE.coliでは再現できない正しい翻訳後改変を可能にする哺乳類細胞の使用によって創造される改善に関する。記載した実施形態の種々の態様は、哺乳類細胞で産生され、膜貫通ドメインを欠く組換えHIVエンベロープポリペプチドが、全長の組換えHIVエンベロープタンパク質に関連する改善された特徴を示すという発見に関する。
【0036】
これらのポリペプチドは、現在までに作られ、多くの診断薬のメーカーに用いられてきた酵母のバージョンがそれらを可溶化するために強い界面活性剤(たとえばドデシル硫酸ナトリウム)を必要とし、発現を助けるために大きくかつ無関係な融合タンパク質(たとえばスーパーオキサイドディスムターゼ)を含むという事実に基づいて、天然のHIVエンベロープ構造をより良く模倣し、組換えHIVエンベロープポリペプチドの溶解性及び収率を改善するために設計された。哺乳類細胞で産生されたHIVポリペプチドは天然のコンフォメーションを採用している。本明細書に記載した種々の融合ドメインの使用により、HIVエンベロープの溶解性及び安定性も改善され、精製の助けにもなる。
【0037】
天然のHIV gp120/gp41タンパク質の構造は、3つのgp41サブユニットの3つの膜貫通ドメインの脂質二重層への埋め込みに部分的に依存し、膜貫通ドメインを欠く組換えHIV gp120又はgp41ポリペプチドが天然類似の状態に折り畳まれるか否かは不明かつ予測不能であった。本明細書に記載したポリペプチドの大部分は界面活性剤なしで可溶性であり、したがって天然類似の三次元コンフォメーションに折り畳むことができる。
【0038】
天然のHIV gp120/gp41タンパク質は、ヘテロオリゴマーの四次構造を形成する。種々の実施形態は、天然のHIV gp120/gp41オリゴマー四次構造を再現するサブユニットを含むオリゴマーポリペプチドを含む。天然のHIV gp120/gp41タンパク質の四次構造は膜内におけるその配向によって部分的に定義され、この配向はgp41サブユニットの膜貫通ヘリックスによって固定されている。膜貫通ヘリックスを欠く組換えHIV gp120/gp41ポリペプチドはモノマーを配向させる成分を欠いている。開示されたポリペプチドのいくつかは、膜貫通ドメインが存在しなくても天然類似の四次構造を可能にするようにポリペプチドサブユニットを配向させるオリゴマー化ドメインを含んでいる。
I.ポリペプチド
【0039】
本発明の種々の実施形態は、HIVエンベロープタンパク質の少なくとも1つのドメインを含むポリペプチドを含む。本明細書に記載したポリペプチドは、HIVエンベロープタンパク質の少なくとも2つのドメインを含んでよい。HIVエンベロープタンパク質は、好ましくはHIV-2よりも感染力が強く、より悪性で、世界中で大多数のHIV感染を引き起こしているHIV-1のエンベロープタンパク質である。いくつかの実施形態では、HIVエンベロープタンパク質はHIV-2エンベロープタンパク質である。
【0040】
本明細書に記載した実施形態において特徴とするポリペプチドは全て組換えポリペプチドであり、即ちこれらは天然に存在するポリペプチドでは共存しない2つ又はそれ以上のアミノ酸配列を含む。したがって本明細書では用語「ポリペプチド」と「組換えポリペプチド」は相互交換可能に用いられる。
【0041】
未変性のHIVビリオンの表面上の唯一のタンパク質は、env遺伝子によってコードされているエンベロープ糖タンパク質である。env遺伝子の産物はgp160と呼ばれる約850アミノ酸の前駆体タンパク質であり、これも本明細書でHIVエンベロープタンパク質と称される。HIVエンベロープタンパク質の例示的なアミノ酸配列は配列番号39~62で表わされ、その他は、たとえば(たとえば「Alignment type」を「Web」(全での完全な配列)、「Year」を「2016」として)https://www.hiv.lanl.gov/components/sequence/HIV/search/search.html又はhttps://www.hiv.lanl.gov/content/sequence/NEWALIGN/align.html
に見ることができる。HIVエンベロープタンパク質のアミノ酸配列は、たとえば「gp160」又は「HIVエンベロープタンパク質」についてのNCBI's Protein databaseを(たとえばhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/proteinで)検索することによって同定することもできる。
【0042】
用語「ポリペプチド」は任意の長さのアミノ酸配列を有する分子を意味するが、本明細書に記載した特許請求の範囲及び実施形態で用いる用語「ポリペプチド」は、HIVエンベロープタンパク質エピトープ(即ち、少なくとも8アミノ酸)及び融合タンパク質を含むために十分に長いアミノ酸配列を必要とする。本明細書で用いる用語「ドメイン」も同様に、独立に折り畳むことができるために十分に長いアミノ酸配列を意味する。ドメインはエピトープ(即ち、少なくとも8アミノ酸)を含んでよいが、ドメインはエピトープを含まなくてもよい。膜貫通ドメインは8個又はそれ以上のアミノ酸を含んでよく、たとえばドメインが抗原性でない場合には膜貫通ドメインはエピトープを含まなくてもよい。
【0043】
本明細書の実施形態によるポリペプチドは、典型的には200~1000個のアミノ酸、たとえば約200~約400、約300~約500、約400~約600、約500~約700、約600~約800、約700~約900、又は約800~約1000個のアミノ酸を含む。これらのポリペプチドは典型的にはリボソーム上のRNAの翻訳によって産生されるので、ポリペプチドのアミノ酸は典型的にはペプチド結合によって連結されている。
【0044】
実施形態のポリペプチドは典型的には約20,000~約100,000ダルトン、たとえば約20,000~約40,000ダルトン、約30,000~約50,000ダルトン、約40,000~約60,000ダルトン、約50,000~約70,000ダルトン、約60,000~約80,000ダルトン、約70,000~約90,000ダルトン、又は約80,000~約100,000ダルトンの分子量を有する。
【0045】
実施形態のポリペプチドは典型的には約5~約10、たとえば約5.5~約8.5、約5.0~約7.0、約6.0~約8.0、約7.0~約9.0、約5.0~約6.0、約5.5~約6.5、約6.0~約7.0、約6.5~約7.5、約7.0~約8.0、約7.5~約8.5、約8.0~約9.0、約8.5~約9.5、又は約9.0~約10.0の等電点(pI)を有する。
【0046】
実施形態のポリペプチドはgp41膜貫通ドメインを欠いている。即ち、全てのポリペプチドは配列番号63~72のいずれか1つによってコードされているアミノ酸配列を欠いている。実施形態のポリペプチドは配列番号63~72によってコードされているアミノ酸配列と少なくとも60%、67%、75%、80%、85%、90%、又は95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を欠いてよい。実施形態のポリペプチドは生物学的膜(即ち脂質二重層)に埋め込まれたアミノ酸配列を欠いてよい。アミノ酸配列が生物学的膜に埋め込まれている確率は、たとえばEz深さ依存性ポテンシャル(Senes et al., J. Molecular Biology 366(2):436 (2007))に基づく計算を含む当技術で公知の種々の方法のいくつかを用いて決定することができる。
【0047】
本発明のポリペプチドは全長のHIVエンベロープタンパク質のgp120/gp41切断部位を欠いてよい。
A.HIVエンベロープタンパク質のエピトープ
【0048】
実施形態はHIVエンベロープタンパク質の少なくとも1つのエピトープを含むポリペプチドを含む。本明細書で開示するポリペプチドは、HIVエンベロープタンパク質の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のエピトープを含んでよい。ポリペプチドはHIVエンベロープタンパク質の複数のエピトープを含んでよい。ポリペプチドはHIVエンベロープタンパク質の複数のエピトープを含んでよく、複数のエピトープは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のエピトープを含む。
【0049】
この用語が明細書及び特許請求の範囲で用いられる場合には、「エピトープ」は、抗体の抗原結合部位に特異的に結合することができる少なくとも8個の連続したアミノ酸の配列を意味する。エピトープはたとえば少なくとも9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の連続したアミノ酸を含んでよい。
【0050】
エピトープは、配列が配列番号63~72として同定される膜貫通ドメインのN末端又はC末端を含まない限り、HIVエンベロープタンパク質の配列である配列番号39~62のいずれか1つで見出される少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の連続したアミノ酸のアミノ酸配列からなっていてよい。実施形態のポリペプチドは複数のエピトープを含んでよく、複数のエピトープのそれぞれは、配列が配列番号63~72として同定される膜貫通ドメインのN末端又はC末端を含まない限り、配列番号39~62のいずれか1つで見出される少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の連続したアミノ酸のアミノ酸配列からなっている。複数のエピトープのそれぞれのエピトープは異なったアミノ酸配列を有してよく、それぞれのエピトープは同じアミノ酸配列を有してもよい。実施形態のポリペプチドはHIVエンベロープタンパク質の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のエピトープを含んでよく、配列が配列番号63~72として同定される膜貫通ドメインのN末端又はC末端を含まない限り、配列番号39~62のいずれか1つで見出される少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の連続したアミノ酸のアミノ酸配列からなっている。
【0051】
HIVエンベロープタンパク質の多くのバリアントが知られている。したがって、エピトープは、配列が配列番号63~72として同定される膜貫通ドメインのN末端又はC末端を含まない限り、HIVエンベロープタンパク質の配列である配列番号39~62のいずれか1つで見出される少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の連続したアミノ酸と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなっていてよい。実施形態のポリペプチドは複数のエピトープを含んでよく、複数のそれぞれのエピトープは、配列が配列番号63~72として同定される膜貫通ドメインのN末端又はC末端を含まない限り、配列番号39~62のいずれか1つで見出される少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の連続したアミノ酸と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなっている。複数のエピトープのそれぞれのエピトープは異なったアミノ酸配列を有してよく、それぞれのエピトープは同じアミノ酸配列を有してもよい。実施形態のポリペプチドはHIVエンベロープタンパク質の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のエピトープを含んでよく、それぞれのエピトープは、配列が配列番号63~72として同定される膜貫通ドメインのN末端又はC末端を含まない限り、配列番号39~62のいずれか1つで見出される少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の連続したアミノ酸と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなっている。
【0052】
ポリペプチドがHIVエンベロープタンパク質の2個以上のエピトープを含む実施形態では、HIVエンベロープタンパク質のエピトープは同じエピトープ又は異なったエピトープであってよい。
【0053】
ポリペプチド(又は複数のエピトープ)は異なったHIVエンベロープタンパク質(たとえば配列番号39~62から選択される異なったアミノ酸配列)で見出されるエピトープを含んでよく、又はポリペプチド(又は複数のエピトープ)は同じHIVエンベロープタンパク質でそれぞれ見出されるエピトープを含んでよい。
【0054】
HIVエンベロープタンパク質のエピトープは公知である。HIVエンベロープタンパク質のエピトープは、たとえば
https://www.hiv.lanl.gov/content/immunology/maps/ab/gp160.htmlで入手可能なLANL gp160 AB Epitope Mapから選択することができる。LANL gp160 AB Epitope Mapの2017年10月19日版の一部を
図43に採録する。本発明の種々の実施形態はLANL gp160 AB Epitope Mapに記載されたエピトープを特徴としている。
【0055】
本発明の種々の態様は、HIVエンベロープタンパク質の新規なエピトープを含むポリペプチドに関する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドはHIVエンベロープタンパク質の少なくとも1つのエピトープを含み、この少なくとも1つのエピトープはLANL gp160 AB Epitope Mapで同定されていないエピトープを含む。ポリペプチドはたとえばエピトープ又は複数のエピトープを含んでよく、それぞれのエピトープは配列番号39~62のいずれか1つで見出される少なくとも8個の連続したアミノ酸のランダムに選択されたアミノ酸配列である。
【0056】
エピトープはHIV gp120タンパク質又はHIV gp41タンパク質のエピトープであってよい。ポリペプチドはHIV gp120タンパク質及び/又はHIV gp41タンパク質のエピトープを含んでよい。複数のエピトープはHIV gp120タンパク質及び/又はHIV gp41タンパク質のエピトープを含んでよい。
【0057】
ポリペプチドのエピトープは天然のHIVエンベロープタンパク質のアミノ酸配列に隣接していてよい。たとえば、ポリペプチドはHIVエンベロープタンパク質の少なくとも2つのエピトープを含んでよく、この少なくとも2つのエピトープの2つのエピトープはHIVエンベロープタンパク質の天然のアミノ酸配列によって連結されている。
【0058】
ポリペプチドはHIVエンベロープタンパク質の少なくとも2つのエピトープを含んでよく、この少なくとも2つのエピトープの2つのエピトープは天然に存在するHIVエンベロープタンパク質には見出されないアミノ酸配列によって連結されている。たとえば、ポリペプチドは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のエピトープを含んでよく、この少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のエピトープの2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個は、天然に存在するHIVエンベロープタンパク質には見出されないアミノ酸配列によって連結されている。ポリペプチドは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のエピトープを含んでよく、この少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のエピトープの2つのエピトープは、天然に存在するHIVエンベロープタンパク質に見出されるアミノ酸配列によって連結されている。
【0059】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドはHIVエンベロープタンパク質の複数のエピトープを含み、この複数のエピトープのそれぞれのエピトープは、HIVによってコードされていないアミノ酸配列によって、複数のエピトープの別のエピトープに連結されている。本明細書において用語「リンカー」又は「スペーサー」は、本明細書に記載した組換えポリペプチドの少なくとも2つのエピトープを連結する前記アミノ酸配列を意味するために用いられる。
B.リンカー
【0060】
複数のエピトープのそれぞれのエピトープは、リンカー又はスペーサーによって、複数のエピトープの別のエピトープに連結されている。複数のエピトープのそれぞれのエピトープは、リンカー又はスペーサーによって、複数のエピトープの1つ又は2つの他のエピトープに連結されている。リンカー又はスペーサーは、典型的にはペプチド結合によって連結され、定義された二次構造を有するか、又は本質的に無秩序である、設計されたアミノ酸配列を意味する。用語「リンカー」及び「スペーサー」は本明細書において相互交換可能に用いられる。リンカーはαヘリックス又はβストランドを形成するアミノ酸配列を含んでよい(たとえばβストランドは他のβストランドと組み合わされてβシートを形成する)。リンカーはαへリックス又はβシートを含んでよい。
【0061】
リンカーは、任意選択でN-末端ヘリックスキャッピングモチーフ(たとえばセリン-プロリン-グルタメート)及び/又はi番目とi+3/4番目に交互に荷電したアミノ酸(たとえばi番目にグルタメート、i+3又はi+4番目にリジン)を含んでよい、αヘリックスを形成する傾向が大きい連続したアミノ酸(たとえばアラニン)の配列からなっていてよい。αヘリックスを形成する傾向が大きい例示的なリンカーは、配列番号73(AEAAAKEAAAKA)で表わされる。
【0062】
リンカーは、βストランドを形成する傾向が大きい連続したアミノ酸の配列、たとえば「βブランチド」アミノ酸(たとえばバリン、イソロイシン、スレオニン)からなっていてよいが、βストランドを形成する傾向が大きい連続したアミノ酸の他の配列も当技術で公知であり、たとえばβシートを設計するために選択される。βストランドを形成する傾向が大きい例示的なリンカーは、配列番号74(TWIQNPGTKWYQNPGTKIYT)で表わされる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドはβシートを含み、βシートの少なくとも2つのβストランドはHIVエンベロープタンパク質のエピトープを含むアミノ酸配列によって連結されている。たとえば、ポリペプチドは少なくとも3つのβストランドを含むβシートを含んでよく、第1のβストランドはHIVエンベロープタンパク質の第1のエピトープを含むアミノ酸配列によって第2のβストランドに連結され、第3のβストランドはHIVエンベロープタンパク質の第2のエピトープによって第4のβストランドに連結されている(即ち、第1、第2、第3、及び第4のβストランドは3つ又は4つのβストランドを構成し(たとえば、第3のβストランドと第1若しくは第2のβストランドは同じβストランドであるか、又は第1、第2、第3、及び第4のβストランドは異なったβストランドである)、第1のエピトープと第2のエピトープは任意選択で同じ又は異なったアミノ酸配列を有する)。
【0063】
本質的に無秩序なリンカーは高度の構造的無秩序を有する連続したアミノ酸の配列からなってもよい。本質的に無秩序なリンカーは、典型的にはR基を欠き、したがって天然に存在する全ての他のアミノ酸よりも接近しやすいコンフォメーションを有する少なくとも1つのグリシン、及び/又は骨格のNと環を形成するR基を有し、したがって天然に存在する全ての他のアミノ酸よりも接近しにくいコンフォメーションを有する少なくとも1つのプロリンを含む。グリシンはポリペプチドの二次構造にエントロピーを導入することによって構造的無秩序を増大させ、プロリンはポリペプチドの二次構造にエントロピーを導入することによって構造的無秩序を増大させる。構造的に無秩序なリンカーは他の小アミノ酸(たとえばセリン、アラニン)及び親水性アミノ酸を含んでもよい。本質的に無秩序なリンカーのアミノ酸は、たとえばグリシン、プロリン、アラニン、セリン、アスパラギン、アスパルテート、グルタミン、グルタメート、リジン、及びアルギニンから選択されてよい。例示的な本質的に無秩序なリンカーは、配列番号75(SGSGASGS)、配列番号76(PSGP)、配列番号109(GGGGSGGGGSGGGGS)、又は配列番号110(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS)で表わされるアミノ酸配列を含むが、本質的に無秩序なリンカーの正確なアミノ酸配列には、特に制限はない。
【0064】
可撓性リンカーは、典型的には少なくとも1つのグリシン、少なくとも1つのプロリン及び少なくとも1つのセリンを含む連続したアミノ酸の配列からなっていてよい。例示的な可撓性リンカーは配列番号111(GGGPS)で表わされるアミノ酸配列を含むが、可撓性リンカーの正確なアミノ酸配列には、特に制限はない。
【0065】
複数のエピトープの(又は少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のエピトープの)2つのエピトープはリンカーで連結されていてよく、リンカーはαヘリックス、βストランド、本質的に無秩序な又は可撓性アミノ酸配列を含む。複数のエピトープの(又は少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のエピトープの)それぞれのエピトープは、複数のエピトープの(又は少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のエピトープの)別のエピトープにリンカーで連結されていてよく、リンカーはαヘリックス、βストランド、本質的に無秩序な又は可撓性アミノ酸配列を含む。
【0066】
リンカーは典型的には天然に存在するHIVエンベロープタンパク質には見出されず、リンカーは典型的には天然に見出されないが、いくつかの天然に存在するアミノ酸配列は好適なリンカーとして役立ち、又は好適なリンカーを設計するために用いられてよい。
【0067】
リンカーは約1~30個のアミノ酸、たとえば約2~25、約3~20、約4~16、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個のアミノ酸を含んでよい。
C.融合タンパク質
【0068】
実施形態のポリペプチドは典型的には天然に存在するHIVエンベロープタンパク質には見出されないアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む。融合タンパク質はHIVによってコードされていない領域を含んでよく、前記領域は抗体のFcドメイン、p53ドメイン、GCN4ドメイン又はクラスリンドメインからなる群から選択される。融合タンパク質は好ましくは少なくとも20個のアミノ酸、たとえば少なくとも30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、若しくは200個のアミノ酸、又は約20~500、約50~約400、若しくは約75~約250個のアミノ酸の配列であるが、融合タンパク質の正確な長さには特に制限はない。
【0069】
本明細書で用いる用語「融合タンパク質」は、ポリペプチドから分離された個別のタンパク質を意味しない。その代わりに用語「融合タンパク質」は、典型的にはタンパク質の発現、精製、オリゴマー化、及び/又は安定性に有用な構造的及び/又は機能的特徴を含むアミノ酸配列を意味する。ポリペプチドをコードする遺伝子は、典型的には融合タンパク質とポリペプチドの他の部分との間の停止コドンなしでポリペプチドの残りの部分とともにフレームごとに融合タンパク質をコードしている。融合タンパク質は典型的にはポリペプチドの一部としてmRNAから翻訳される。融合タンパク質は典型的には1つ又は複数の天然のペプチド結合によってポリペプチドの他の部分と連結されている。
【0070】
融合タンパク質は典型的には機能特性を有している。たとえば、融合タンパク質はポリペプチドを別のポリペプチドとオリゴマー化するように機能する。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は単にポリペプチドの安定性を増大させる。たとえば、ポリペプチドは抗体Fcドメインを含み、これがポリペプチドの安定性を増大させ得る。安定性はポリペプチドの分解、ポリペプチドの折り畳み、及び/又はポリペプチドの凝集を意味し、たとえば融合タンパク質は分解に関するポリペプチドの半減期を増大させ、ポリペプチド(又はオリゴマーポリペプチド)の天然の折り畳みの安定性を増大させ、及び/又はポリペプチドが凝集物を形成する傾向を低減させる。
【0071】
融合タンパク質は典型的には定義された二次構造並びに定義された三次構造及び/又は四次構造を有する。融合タンパク質はGCN4の一部を含んでよい。融合タンパク質は、たとえば定義された二次構造及び三次構造を有するが、(たとえばFcドメインフラグメントは抗体がダイマー又は高次オリゴマーを形成することを可能にするヒンジ領域及びその他の要素を欠いているので)四次構造を欠く抗体Fcドメインの一部を含んでよい。融合タンパク質は、たとえば定義された二次構造、三次構造、及び四次構造を有する抗体Fcドメインの一部を含んでよい。
【0072】
融合タンパク質はモノマーとして存在してよい。即ち、融合タンパク質はその天然のコンフォメーションに折り畳まれたとき、自己会合のための高い解離定数を有してよい。高い解離定数(KD)は、たとえばリン酸塩緩衝生理食塩液中、pH7で測定して>10mM、>1mM、又は>100μMであってよい。
【0073】
融合タンパク質はオリゴマーとして存在してよい。たとえば、融合タンパク質はその天然のコンフォメーションに折り畳まれたとき、自己会合のための低い解離定数を有してよい。低い解離定数(KD)は、たとえばリン酸塩緩衝生理食塩液中、pH7で測定して<100μM、<10μM、又は<1μMであってよい。融合タンパク質は、たとえば2つのシステインの間のジスルフィド結合等によって直接に、又は化学架橋剤等によって間接的に、1つ又は複数の他の融合タンパク質に共有結合で連結されているので、融合タンパク質はオリゴマーとして存在してよい。融合タンパク質は、たとえばビオチン-ストレプトアビジン相互作用によって1つ又は複数の他の融合タンパク質に非共有結合で連結されているので、融合タンパク質はオリゴマーとして存在してよい。
【0074】
融合タンパク質はオリゴマー化ドメインを含んでよい。ダイマーポリペプチド等のオリゴマーポリペプチドは天然のgp120/gp41複合体に対する抗体を発現するために優れている。それは、天然のgp120/gp41がヘテロダイマーのトリマーとして存在するからである。オリゴマー化ドメインはポリペプチドを配向させるためにも有用であり、それにより天然類似の四次構造を再現することができる。
【0075】
例示的なオリゴマー化ドメインは抗体Fcドメインのアミノ酸配列を含む。抗体Fcドメインは発現細胞中におけるポリペプチドの発現及び/又は分泌を増大させ得る。さらに、抗体Fcドメインによって形成されたダイマーポリペプチドは一般に、インビボにおけるポリペプチドの半減期を増大させる。Fcドメインはオリゴマーポリペプチドのサブユニットを配向させることもでき、それにより1つ又は複数のgp41膜貫通ヘリックスの欠失を機能的に補うことができる。ヒンジ領域の使用又は脱落は、それぞれダイマー又はモノマーのFc融合を形成し得る。
【0076】
抗体Fcドメインの種は、ポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドの所望の使用に基づいて選択され得る。たとえば、抗体Fcドメインの種は、アッセイにおいて特定の試薬が抗体Fcドメインを標的とし、又は無視するように選択され得る。たとえば、アッセイにおいて抗マウス二次抗体が他のマウス抗体を検出するために用いられなければ、マウスFcドメインは有用であろう。同様に、マウスFcドメインは抗マウス「二次」抗体を有するポリペプチドを検出するために有用であろう。インビボの使用のためには、Fcドメインの種は宿主に適合するように、たとえば宿主がFcドメインに対して免疫応答を開始する可能性を低減させるように選択してよい。マウスFcドメインは、たとえばマウスにおいてマウス抗HIVエンベロープタンパク質抗体を生じさせるために有用であり得る。Fcドメインの種はヒト、マウス、ウサギ、ラット、ハムスター、モルモット、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、又は上記の種のキメラであってよいが、Fcドメインの種には特に制限はない。抗体Fcドメインの種はマウスIgG Fcドメインであってよい。例示的な抗体FcドメインはマウスIgG1 Fcドメイン又はマウスIgG2 Fcドメインである。
【0077】
例示的な融合タンパク質はマウスIgG1 Fcドメイン又はマウスIgG2 Fcドメインであり、これらはヒンジ領域を欠いており、したがってオリゴマー化しない。
【0078】
モノマーマウスIgG2 Fcドメインは配列番号77(APNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGK)で表わされるアミノ酸配列又は配列番号77で表わされるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0079】
別の例示的な融合タンパク質はヒンジ領域を含むマウスIgG2 Fcドメインであり、これは融合タンパク質を含むポリペプチドのダイマー化を可能にする。ダイマーマウスIgG2 Fcドメインは、配列番号77で表わされるFcドメインアミノ酸配列にすぐに続くN末端ヒンジ領域PRGPTIKPCPPCKCP(配列番号79)からなる配列番号78(PRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGK;で表わされるアミノ酸配列、又は配列番号78で表わされるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0080】
モノマーマウスIgG1 Fcドメインは、配列番号80(VPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVDISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTQPREEQFNSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFPAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKEQMAKDKVSLTCMITDFFPEDITVEWQWNGQPAENYKNTQPIMDTDGSYFVYSKLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPG)で表わされるアミノ酸配列、又は配列番号80で表わされるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0081】
別の例示的な融合タンパク質はヒンジ領域を含むマウスIgG1 Fcドメインであり、これは融合タンパク質を含むポリペプチドのダイマー化を可能にする。ダイマーマウスIgG1 Fcドメインは、配列番号80で表わされるFcドメインアミノ酸配列にすぐに続くN末端ヒンジ領域VPRDCGCKPCICT(配列番号108)からなる配列番号107(VPRDCGCKPCICTVPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVDISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTQPREEQFNSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFPAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKEQMAKDKVSLTCMITDFFPEDITVEWQWNGQPAENYKNTQPIMDTDGSYFVYSKLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPG;で表わされるアミノ酸配列、又は配列番号107で表わされるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0082】
例示的な融合タンパク質は、配列番号77又は配列番号80で表わされるアミノ酸配列を有するオリゴマー化ドメインを欠くFcドメインを含んでよく、したがって組換えポリペプチドはモノマーである。例示的な融合タンパク質は、配列番号78又は配列番号107で表わされるアミノ酸配列を有するダイマー化ドメインを含むFcドメインを含んでよく、したがって組換えポリペプチドはダイマーである。
【0083】
Fcドメインを含むポリペプチドを精製する方法は公知であるので、Fcドメインはポリペプチドの精製の助けにもなる。
【0084】
別の例示的な融合タンパク質はp53テトラマー化ドメインである。p53テトラマー化ドメインは、配列番号81 (KPLDGEYFTLQIRGRERFEMFRELNEALELKDAQAGKEPG)で表わされるアミノ酸配列、又は配列番号81で表わされるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0085】
別の例示的な融合タンパク質はGCN4トリマー化ドメインである。GCN4トリマー化ドメインは配列番号82で表わされるアミノ酸配列(GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL)、又は配列番号82で表わされるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。GCN4様配列を含む融合タンパク質は、たとえば天然のgp120/gp41トリマーのトポロジーに対応するパラレルトリマーであるように設計され得る。代替のGCN4様配列を当技術で公知のように設計して、当技術で公知の方法によってパラレル又はアンチパラレル組織を有するダイマー、トリマー、及びテトラマーオリゴマーを調製することができる(たとえばHarbury、Zhang、Kim、Alber、「A switch between two-, three-, and four-stranded coiled coils in GCN4 leucine zipper mutants」、Science (1993) 262:1401頁参照)。パラレルトリマー以外のオリゴマーは、新規なHIVエンベロープタンパク質抗原を標的とする抗体を開発するために有用であろう。
【0086】
別の例示的な融合タンパク質はクラスリントリマー化ドメインである。クラスリントリマー化ドメインは、配列番号83(GSHMWKQSVELAKKDSLYKDAMQYASESKDTELAEELLQWFLQEEKRECFGACLFTCYDLLRPDVVLELAWRHNIMDFAMPYFIQVMKEYLTKV)で表わされるアミノ酸配列、又は配列番号83で表わされるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0087】
他のオリゴマー化ドメインは当技術で公知であり、オリゴマー化ドメインの特定の選択には特に制限はない。たとえばストレプトアビジンはテトラマーを形成し、精製の助けとなり種々のアッセイで有用なビオチンとも結合するので、特に有用なオリゴマー化ドメインであり得る。
【0088】
実施形態の融合タンパク質は、組換えHIVエンベロープタンパク質の調製に広く用いられるスーパーオキサイドディスムターゼを含まない。即ち、本発明のポリペプチドはスーパーオキサイドディスムターゼに対応するアミノ酸配列を欠いている。
D.リーダーペプチド配列
【0089】
本明細書に開示したポリペプチドは、典型的には発現ベクターの細胞膜、たとえば哺乳類細胞、特にヒト細胞の膜にわたるポリペプチドの転位を有利にするリーダーペプチド配列を含む。しかしポリペプチドは、たとえばリーダーペプチド配列が酵素切断又は化学切断によってポリペプチドから切断された場合には、リーダーペプチド配列を欠いてもよい。合成によって産生されたポリペプチドも同様にリーダーペプチド配列を欠いてよい。
【0090】
リーダーペプチド配列は典型的にはポリペプチドのN末端に含まれる。リーダーペプチド配列は好ましくは真核細胞(たとえばヒト細胞等の哺乳類細胞)中でのポリペプチドの翻訳に続いて真核細胞の細胞表面膜の外側のポリペプチドを転位させるのに十分であるが、ポリペプチドの他の配列モチーフも転位を助け得る。
【0091】
例示的なリーダーペプチド配列は配列番号84(MYRMQLLSCIALSLALVTNS)で表わされるアミノ酸配列を有し、これはヒトインターロイキン-2リーダーペプチド配列である。このよく特徴付けされた配列はヒト細胞と他の哺乳類細胞の両方からポリペプチドを転位させることができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示したポリペプチドのリーダーペプチドは、ポリペプチドの融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドはHIV gp120のエピトープ及びHIV gp41のエピトープを含み、ポリペプチドはgp120/gp41切断部位を欠いている。
【0093】
リーダーペプチド配列は典型的にはHIVエンベロープタンパク質から誘導されないが、いくつかの実施形態ではリーダーペプチド配列はHIVエンベロープタンパク質のシグナル配列である。
E.アフィニティタグ
【0094】
ポリペプチドは任意選択でアフィニティタグを含んでよい。アフィニティタグは精製に有用であり、ポリペプチドを利用するアッセイにも有用である。例示的なアフィニティタグにはポリヒスチジン、キチン結合タンパク質、マルトース結合タンパク質、ストレップタグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、FLAGタグ、V5タグ、Mycタグ、HAタグ、NEタグ、Aviタグ、カルモジュリンタグ、ポリグルタメート、Sタグ、SBPタグ、ソフタグ1、ソフタグ3、TCタグ、VSVタグ、Xpressタグ、Isopepタグ、Spyタグ、Snoopタグ、ビオチンカルボキシルキャリアタンパク質、緑色蛍光タンパク質タグ、Haloタグ、Nusタグ、及びチオレドキシンタグが含まれるが、アフィニティタグの選択には特に制限はない。しかし、たとえば使用後にアフィニティタグが除かれる場合、又はアフィニティタグを必要としない戦略を用いてポリペプチドを精製する場合には、ポリペプチドはアフィニティタグを欠いてもよい。例示的なアフィニティタグはポリヒスチジンであり、これは典型的には6個の連続したヒスチジンを含むアミノ酸配列(配列番号85)を含む。別の例示的なアフィニティタグは4~8個の連続したヒスチジンを含むポリヒスチジンである。
F.例示的なポリペプチド配列
【0095】
本明細書に記載した実施形態において特徴付けた組換えポリペプチドは、リーダーペプチド、融合タンパク質、HIV gp120タンパク質の少なくとも1つのエピトープ及び/又はHIV gp41タンパク質の少なくとも1つのエピトープを含み、組換えポリペプチドは膜貫通ドメインを欠き、融合タンパク質はHIVによってコードされていない領域を含む。
【0096】
本明細書に開示した種類のポリペプチドは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、又は配列番号106で表わされるアミノ酸配列を有してよい。ポリペプチドは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、又は配列番号106で表わされるアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有してよく、即ちポリペプチドの完全なアミノ酸配列は天然に存在するアミノ酸配列ではない。
II.HIV-1及びHIV-2による感染の免疫生物学
【0097】
HIVによる感染は、宿主の健康及び遺伝的性質に依存するいくつかの経路の1つにおける免疫系の応答をもたらす。一般には、HIVがCD4+ T細胞の感染を介して宿主に侵入すると、HIVは複製を開始して新たなウイルス粒子を産生し、これが溶解した細胞から血流中に放出される。このエンベロープを有するウイルスの表面には、「エンベロープ関連タンパク質」gp120及びgp41が、まばらに散在するトリマースパイク中に存在する。しかし、gp41タンパク質の上に存在するgp120タンパク質はウイルスから(おそらく種依存性に)放出される傾向があり、この放出はデコイタンパク質として機能すると、当分野のある者には信じられている。したがってgp41は宿主の抗体応答に対する第1の初期表面標的として現れる。まさに、HIV+患者の大部分はgp41部分に対して強い抗体応答を発現し、これが酵母で発現されるEnv13、Env31及びEnv70等の多くの診断薬メーカーによって用いられた過去のエンベロープタンパク質がgp120の小さな断片のみを有するgp41配列から本質的になっている理由である。HIVに感染して抗体応答を開始した大部分の患者には、このタンパク質が時間の90~98%にわたって抗体反応性を示すことになる。非反応性患者の少数の割合がgp120及び/又はp24抗原への測定可能な抗体応答を示す。
【0098】
いくつかの態様では、実施形態は本明細書に記載したp24又はp26(HIV-2)ポリペプチド(サブユニット)に融合した対応するgp120タンパク質を含むオリゴマーポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、オリゴマーポリペプチドはダイマーポリペプチド、即ち2つのサブユニットを含むオリゴマーポリペプチドであり、それぞれのサブユニットは本明細書に記載したポリペプチドである。修飾語「オリゴマー」、「ダイマー」、又はマルチサブユニット形態への他の明示的な言及なしに用いられる用語「ポリペプチド」は、ダイマー、トリマー、又はテトラマー等のオリゴマーに存在し、又は存在しないモノマーポリペプチドを意味する。これらのタンパク質は、血漿、血清、又は全血中の抗体のフロントラインスクリーニング、又は診断目的、又は確認アッセイのために用いられる。
【0099】
いくつかの態様では、実施形態は100%の関連する(任意のクレードの)gp120タンパク質、又は本明細書に記載したp24又はp26(HIV-2)ポリペプチド(サブユニット)に融合した90%、若しくは80%、若しくは70%、若しくは60%、若しくは50%、又は最小限の既知のエピトープを含むポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、gp120タンパク質はp24タンパク質(又はp26)に直接融合していてもよく、又は他の例では本明細書に記載したように融合タンパク質(たとえばFc、クラスリン、p53、その他)によって分離されていてもよい。これらのタンパク質は、血漿、血清、又は全血中の抗体のフロントラインスクリーニング、又は診断目的、又は確認アッセイのために用いられる。
【0100】
いくつかの態様では、実施形態は100%の対応するp24タンパク質(又はp26)に融合した(任意の関連するクレードの)gp120ポリペプチド、又はHIV-1若しくはHIV-2のgp120ポリペプチドに融合した90%、若しくは80%、若しくは70%、若しくは60%、若しくは50%又は最小限の既知のエピトープを含むポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、gp120タンパク質はp24タンパク質に直接融合していてもよく、又は他の例では本明細書に記載したようにスカフォールド(たとえばFc、クラスリン、p53、その他)によって分離されていてもよい。これらのタンパク質は、血漿、血清、又は全血中の抗体のフロントラインスクリーニング、又は診断目的、又は確認アッセイのために用いられる。
【0101】
gp120ドメイン(エピトープ)は、p24ドメイン(又はp26)(エピトープ)のN末端に融合したオリゴマー化ドメイン(当業者には知られている以下のFc又はその他)にそのC末端で融合した、本明細書に記載した多くのものの1つであってよい。或いは、p24ドメインはN末端にあって、それぞれのgp120タンパク質ドメイン(エピトープ)(配列番号86、配列番号87、配列番号88、又は配列番号89)のN末端に融合したオリゴマー化ドメインであってよい。これらはモノマー、ダイマー、トリマー、又はテトラマー若しくはペンタマーであってよい。
【0102】
いくつかの態様では、実施形態は、p26/26とFc若しくは他のオリゴマー化ドメインのC末端との間に設計された可撓性ヒンジ領域を伴い、又は伴わずに、関連するp24タンパク質(又はp26)に融合した(任意の関連するクレードの)gp120ポリペプチドを含むポリペプチドを含む。これらのタンパク質は、血漿、血清、又は全血中の抗体のフロントラインスクリーニング、又は診断目的、又は確認アッセイのために用いられる。
III.オリゴマーポリペプチド
【0103】
いくつかの態様では、実施形態は本明細書に記載した2、3、4、又はそれ以上のポリペプチド(サブユニット)を含むオリゴマーポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、オリゴマーポリペプチドはダイマーポリペプチド、即ち2つのサブユニットを含むオリゴマーポリペプチドであり、それぞれのサブユニットは本明細書に記載したポリペプチドである。修飾語「オリゴマー」、「ダイマー」、又はマルチサブユニット形態への他の明示的な言及なしに用いられる用語「ポリペプチド」は、ダイマー、トリマー、又はテトラマー等のオリゴマーに存在し、又は存在しないモノマーポリペプチドを意味する。
【0104】
オリゴマーポリペプチドのそれぞれのサブユニットは、典型的に同じアミノ酸配列を有するが、オリゴマーポリペプチドの異なったサブユニットは異なったアミノ酸配列を有してもよい。たとえばヘテロダイマーポリペプチドは脱離基を有する(たとえば2-2'ジチオ-ビス-(5-ニトロピリジン)を有する)第1のサブユニットのシステインチオールを活性化し、第2のサブユニット(たとえばβ-メルカプトエタノール又はトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)のチオールを還元し、次いで第1のサブユニットと第2のサブユニットとを接触させることによって、作成することができる。或いは、サブユニットをランダムに架橋し、次いで精製してもよい。ホモダイマーポリペプチドも同様の戦略を用いて作成することができる。オリゴマー化の後、オリゴマーポリペプチドを精製して、モノマーサブユニット及び他の望ましくない種から所望のオリゴマーポリペプチドを分離することができる。
【0105】
オリゴマーポリペプチドは対称であってよく、又はオリゴマーポリペプチドは対称性を欠いてもよい。たとえば、オリゴマーポリペプチドは「分子間」ジスルフィド結合パターンを形成し、それにより対称性を欠く四次構造を形成してもよい。
【0106】
オリゴマーポリペプチドは非共有結合性又は共有結合性相互作用によって架橋されていてもよい。非共有結合性相互作用の例は、GCN4若しくはクラスリンオリゴマー化ドメインのトリマー化又はp53オリゴマー化ドメインのテトラマー化である。共有結合性相互作用の例は抗体Fcドメインヒンジ領域のジスルフィド結合介在ダイマー化である。抗体Fcドメインを含むサブユニットを有するダイマーポリペプチドは、少なくとも1つのジスルフィド結合、典型的には2つのジスルフィド結合(たとえばIgG1及びIgG4誘導Fcドメイン)又は4つのジスルフィド結合(たとえばIgG2誘導Fcドメイン)によって共有結合で架橋されるが、ジスルフィド結合の数には特に制限はない。たとえばIgG3は11個のジスルフィド結合で架橋され得る。
【0107】
ダイマーポリペプチドは2つのサブユニットを含み、それぞれのサブユニットは抗体Fcドメインを含み、抗体Fcドメインはダイマーポリペプチドの2つのサブユニットを架橋している。
【0108】
トリマーポリペプチドは3つのサブユニットを含み、それぞれのサブユニットはGCN4トリマー化ドメインを含み、GCN4トリマー化ドメインはトリマーポリペプチドの3つのサブユニットを非共有結合で架橋している。トリマーポリペプチドは3つのサブユニットを含み、それぞれのサブユニットはクラスリントリマー化ドメインを含み、クラスリントリマー化ドメインはトリマーポリペプチドの3つのサブユニットを非共有結合で架橋している。
【0109】
テトラマーポリペプチドは4つのサブユニットを含み、それぞれのサブユニットはp53テトラマー化ドメインを含み、p53トリマー化ドメインはテトラマーポリペプチドの4つのサブユニットを非共有結合で架橋している。
【0110】
実施形態はダイマーポリペプチドを含む組成物をも含み、組成物はダイマーポリペプチドではないオリゴマーポリペプチドを実質的に含まない。組成物はダイマーポリペプチドでないオリゴマーポリペプチドを欠いてもよい。
【0111】
種々の実施形態はトリマーポリペプチドを含む組成物をも含み、組成物はトリマーポリペプチドではないオリゴマーポリペプチドを実質的に含まない。組成物はトリマーポリペプチドでないオリゴマーポリペプチドを欠いてもよい。
【0112】
種々の実施形態はテトラマーポリペプチドを含む組成物をも含み、組成物はテトラマーポリペプチドではないオリゴマーポリペプチドを実質的に含まない。組成物はテトラマーポリペプチドでないオリゴマーポリペプチドを欠いてもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、組成物はモノマーポリペプチドを含み、組成物はオリゴマーポリペプチドを実質的に含まない。組成物はオリゴマーポリペプチドを欠いてもよい。
IV.核酸、クローニング細胞、及び発現細胞
【0114】
本明細書に記載した実施形態は、本明細書に記載したポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸をも含む。核酸はDNA又はRNAであってよい。本明細書に記載したポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むDNAは、典型的にはヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む。プロモーターは、好ましくは目的の発現細胞におけるヌクレオチド配列の構成的又は誘導的な発現を促進することができる。ヌクレオチド配列が本明細書に記載したポリペプチドをコードする限り、核酸の正確なヌクレオチド配列には特に制限はない。コドンは、たとえば目的の発現細胞(たとえばヒト細胞等の哺乳類細胞)のコドンバイアスに適合するように、及び/又はクローニングの間の便宜のために選択してよい。DNAは、たとえば複製(たとえば原核細胞におけるプラスミドの複製のため)の起源を含むプラスミドであってよい。
【0115】
本開示の種々の態様は、本明細書に記載したポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む細胞にも関する。細胞は発現細胞
又はクローニング細胞であってよい。核酸は典型的にはE.coliでクローニングされるが、他のクローニング細胞を用いてもよい。細胞が発現細胞である場合には、核酸は任意選択で染色体の核酸であり、即ちヌクレオチド配列は染色体に挿入されるが、核酸はたとえば染色体外DNAとして発現細胞の中に存在してよい。
【0116】
本開示の種々の態様は、本明細書に記載したポリペプチド又はオリゴマーポリペプチド(たとえばダイマー、トリマー、又はテトラマーポリペプチド)をコードする配列を含む核酸を含む細胞を含む。細胞は典型的には発現細胞である。発現細胞の性質には特に制限はない。哺乳類発現細胞は好ましい折り畳み、翻訳後改変、及び/又はポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドの分泌を可能にするが、他の真核細胞又は原核細胞も発現細胞として用いてよい。例示的な発現細胞はCHO、BHK、NS0、Sp2/0、COS、C127、HEK、HT-1080、PER.C6、HeLa、及びJurkat細胞を含む。
【0117】
本発明の発現細胞は、典型的には組換えHIVエンベロープタンパク質を発現するための発現細胞として広く用いられている酵母ではない。酵母におけるHIVエンベロープタンパク質の発現は異常な折り畳み、凝集、及び/又は異常な翻訳後改変の発生をもたらすことがあるが、本明細書に記載したポリペプチドを哺乳類発現細胞(特にヒト発現細胞)で発現することによってこれが軽減される。
V.アッセイ及び試薬
【0118】
実施形態は、抗HIV抗体を含む組成物をアッセイするための本明細書に記載したポリペプチド又はオリゴマーポリペプチド(たとえばダイマーポリペプチド)を含む免疫アッセイ試薬を含む。免疫アッセイ試薬は固体支持体に結合してもよい。固体支持体はたとえばビーズ、膜、マイクロタイタープレート、ポリペプチドチップ、又はクロマトグラフィーカラムの固相であってよい。
【0119】
種々の実施形態は、抗HIV抗体を含む組成物をアッセイするためのデバイスをも含む。デバイスは、試料が抗HIV抗体を含むか否かを決定するため(たとえば試料がヒト患者への輸注又は移植に用いられるか否かを決定するため)のデバイスであってよい。アッセイは公知であり、典型的には直接又は間接に固体支持体に結合する成分を直接又は間接に固体支持体に結合しない成分から分離することを助ける固体支持体を特徴としている。固体支持体はたとえばビーズ、膜、マイクロタイタープレート、ポリペプチドチップ、又はクロマトグラフィーカラムの固相であってよい。デバイスは本明細書に記載したポリペプチド又はオリゴマーポリペプチド(たとえばダイマーポリペプチド)を含んでよい。ポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドは典型的には固体支持体に共有結合で又は非共有結合で結合している。
【0120】
本明細書で用いる場合、用語「直接」結合は、固体支持体への分子の直接共役、たとえばポリペプチドのシステインチオールを金の表面に結合する金-チオール相互作用を意味する。本明細書で用いる場合、用語「間接」結合は、表面に直接結合した別の分子へのポリペプチドの特異的結合を含む。たとえばポリペプチドは固体支持体に直接結合した抗体に結合することができ、それによりポリペプチドは固体支持体に間接的に結合する。用語「間接」結合は、分子の連鎖(daisy chain)の間のそれぞれの相互作用が特異的な又は共有結合的な相互作用であって連鎖の末端の分子が固体支持体に直接結合している限り、ポリペプチドと固体支持体との間の分子の数には依存しない。
【0121】
本明細書で用いる場合、用語「非共有結合」は、抗体とその抗原、リガンドとそのレセプター、又は酵素とその基質との間、たとえばビオチン-ストレプトアビジン相互作用によって例示される特異的結合を意味する。特異的結合は一般に、約100μM未満、約10μM未満、約1μM、約100nM、又は約10nM等の解離定数(KD)を有する相互作用を意味する。競合アッセイのようにポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドが固体支持体に決して結合しないアッセイも考案される。
【0122】
例示的なアッセイにおいては、固体支持体に結合したポリペプチド(又はオリゴマーポリペプチド)を、血液、血清、血漿、唾液、又は頬の拭い試料等の抗HIV抗体を含んでいる疑いがある試料と接触させる。次いでポリペプチド(又はオリゴマーポリペプチド)と存在すれば抗HIV抗体との間の結合を有意に妨害しない程度の厳しさで固体支持体を洗浄(たとえばリン酸塩緩衝液又は同様の洗浄)する。次いで固体支持体を、HIV抗体を認識する「二次」抗体(たとえば抗ヒトIgG抗体)と接触させる。二次抗体は検出ラベルを含む。検出ラベルは染料(たとえば目視検出のため)、蛍光分子(たとえば蛍光検出のため)、酵素(たとえばホースラディッシュペルオキシダーゼ、増幅したシグナルの目視又は蛍光検出のため)、放射ラベル、又は分子生物学若しくは医学診断において一般に用いられている任意の他の検出ラベルであってよい。このアッセイの様々な変形は当業者には容易に明確になる。たとえば、試料の抗体を固体支持体に固定化し、ポリペプチド(又はオリゴマーポリペプチド)を抗体と接触させ、次いで融合タンパク質又はポリペプチド(又はオリゴマーポリペプチド)のアフィニティタグを認識する抗体又はリガンドを用いてポリペプチド(又はオリゴマーポリペプチド)を検出することができる。
【0123】
実施形態は、本明細書に記載したポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドを試料と接触させる工程を含む、試料をアッセイする方法をも含む。さらなる実施形態は、本明細書に記載したポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドを試料と接触させる工程を含む、試料が抗HIV抗体を含むか否かを決定する方法を含む。実施形態は、本明細書に記載したポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドを試料と接触させる工程及び抗体とポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドとの間の結合親和性を決定する工程を含む、試料をアッセイする方法をも含む。試料はヒトから得た体液等のヒト試料であってよい。試料は、たとえば血液、血漿、血清、唾液、又は頬の拭い試料であってよい。試料は血液、血漿、血清、唾液、又は頬の細胞であってよい。試料は精液試料であってよい。
VI.薬学的組成物
【0124】
本発明の種々の実施形態は、本明細書に記載したポリペプチド又は本明細書に記載したオリゴマーポリペプチドを含む組成物に関する。組成物は薬学的に許容される担体及び/又は薬学的に許容される賦形剤を含んでよい。組成物は、たとえばワクチンであってよい。
【0125】
本発明の種々の実施形態は、本明細書に記載したポリペプチド又は本明細書に記載したオリゴマーポリペプチドを含む組成物を患者に投与する工程を含む、ヒト患者におけるHIV感染を治療し又は予防する方法に関する。本明細書で用いる場合、用語「予防する」は、組成物を受容していない同様の患者に対してその患者がHIVに感染する可能性を低減するための患者への組成物の投与を含む予防を意味する。用語「予防する」は、組成物を受容していない同様の患者の群に対してその群におけるHIVに感染した患者の数を低減させるための患者の群への組成物の投与をも含む。
【0126】
本発明の種々の実施形態は、本明細書に記載した実施形態によるワクチンを患者に投与する工程を含む、ヒト患者におけるHIV感染を治療し又は予防する方法に関する。
【0127】
患者はHIVに感染していてもよく、患者はHIVに曝露されていてもよく、又は患者はHIVへの曝露及び/又はHIVによる感染の高いリスクを示していてもよい。
VII.抗体選択の方法
【0128】
実施形態は、本明細書に記載したポリペプチド又はオリゴマーポリペプチド(たとえばダイマーポリペプチド)を動物に投与する工程を含む、抗体を産生するための方法をさらに含む。動物は、たとえばマウス、ウサギ、ラット、ハムスター、モルモット、ヤギ、ヒツジ、ウマ、又はニワトリであってよい。
【0129】
さらなる実施形態は、本明細書に記載したポリペプチド又はオリゴマーポリペプチド(たとえばダイマー、トリマー、又はテトラマーポリペプチド)を試料と接触させる工程及び抗体とポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドとの間の結合親和性を決定する工程を含む、抗体を含む試料をアッセイするための方法を含む。結合親和性は相対的結合親和性であってよく、たとえば結合親和性は、試料中に存在し、又は実質的に同一の方法でアッセイされる1つ又は複数の異なった抗体の結合親和性に相対的であってよい。同様に、結合親和性は定量的結合親和性であってよく、たとえば方法は±桁数、±50%、±10%等の所望の範囲の確かさで解離定数(KD)を決定する工程を含んでよい。方法は抗体親和性成熟法であってよい。
【0130】
実施形態は複数の抗体から抗HIV抗体を選択する方法をも含む。方法は本明細書に記載したポリペプチド又はオリゴマーポリペプチド(たとえばダイマーポリペプチド)を複数の抗体を含む組成物と接触させる工程および組成物中の他の抗体に対してポリペプチド又はオリゴマーポリペプチドに高い結合親和性を有する抗体を同定し、それにより抗HIV抗体を選択する工程を含む。方法は、本明細書に記載したgp120アミノ酸配列又はgp41アミノ酸配列の抗原決定部位と特異的に結合する抗HIV抗体を選択する方法であってよい。
VIII.生物学的試料を選択する方法
【0131】
さらなる実施形態は、ヒト生物学的試料の供給源から生物学的試料を選択する方法であって、供給源から、本明細書に記載したポリペプチド又はオリゴマーポリペプチド(たとえばダイマーポリペプチド)と抗原抗体複合体を形成する抗体を含む試料を選択する工程を含む、方法をも含む。これは供給源から除去すべきHIV陽性試料を同定するために有用であり、供給源が血液供給源である場合に特に関連がある。選択されなかったこれらの試料は血液関連製剤の調製のために利用することができる。HIV陽性試料を同定することによって、本方法は陽性試料を富化するために有用であり得る。
【0132】
実施形態は、本主題発明による免疫アッセイ試薬と抗原抗体複合体を形成する抗体を含まない試料を供給源から選択する工程を含む、ヒト生物学的試料の供給源から生物学的試料を選択する方法をも含む。これは血液関連製剤の調製のために有用な生物学的試料を同定するために有用である。
【実施例1】
【0133】
HIVエンベロープタンパク質のエピトープを含むポリペプチドの設計
HIVエンベロープタンパク質のエピトープを含む種々のポリペプチドを設計した。ポリペプチドenv_1~env_4は、αヘリカル又はβシートリンカー配列のいずれかを用いて継ぎ合わせたLANL HIV-1 gp160エンベロープエピトープマップ(https://www.hiv.lanl.gov/content/immunology/maps/ab/gp160.html)から誘導したgp120ヒトB細胞エピトープを用いて設計した。これらの配列はマウスIgG CH2/CH3領域とも融合した。いくつかのバージョンでは、IgGヒンジ領域も含まれ、それによりダイマーの形成が可能であった。ポリペプチドenv_5は、p53のテトラマー化モチーフに融合した同じSYN-gp120配列を用いて設計した。ポリペプチドenv_6は、GCN4のトリマー化モチーフに融合したSYN-gp120配列を用いて設計した。ポリペプチドenv_7は、クラスリンのトリマー化モチーフに融合したSYN-gp120配列を用いて設計した。ポリペプチドenv_8及びenv_9は、「SYN-gp41」と指定されたαヘリカルリンカーで継ぎ合わせ、ヒンジ領域を含み又は含まずに、IgG CH2/CH3ドメインと融合させたgp41に対応するLANL HIV gp160エピトープマップからのヒトB細胞エピトープを用いて設計した。ポリペプチドenv_10~env_17は、ヒンジ領域又はgp120のV3ループを含み又は含まずに、IgG CH2/CH3ドメインと融合したRCSB Protein Data Bank(PDB)エントリー5TE4及び5T33からのアミノ酸配列から誘導したHIV-1 gp120配列を用いて設計した。ポリペプチドenv_14~env_17は、αヘリカルリンカーに続くIgG CH2/CH3ドメインのC末端に融合したRCSB Protein Data Bank(PDB)エントリー5V8Lからのアミノ酸配列から誘導したHIV-1 gp41配列の一部をさらに含む。ポリペプチドenv_18及びenv_19は、それぞれヒンジ領域を含み又は含まずに、IgG CH2/CH3ドメインに融合したPDBエントリー5V8Lから誘導したgp41配列を用いて設計した。ポリペプチドenv_20は、1エピトープ領域を拡張したポリペプチドenv_8の改変であった。ポリペプチドenv_21は、C末端で融合したSYN-gp120ドメインを有するポリペプチドenv_20と同じであった。ポリペプチドenv_22は、NCBI Reference Sequence NP_579895から誘導し、gp41とgp120の配列の間のIgG CH2/CH3ドメインを有するSYN-gp120配列と融合した、切り詰めたgp41配列であった。ポリペプチドenv_23及びenv_24は、HIV-1エンベロープタンパク質エピトープから誘導し、それぞれそのC末端又はN末端でIgG CH2/CH3ドメインと融合した。ポリペプチドenv_25~env_27は、HIVエンベロープタンパク質エピトープに対応するクレードA、クレードC、及びコンセンサス配列であった。ポリペプチドenv_28及びenv_29は、それぞれそのN末端又はC末端でIgG CH2/CH3ドメインに融合したHIV-2エンベロープタンパク質エピトープに対応する。ポリペプチドenv_30及びenv_31は、それぞれそのN末端又はC末端でIgG CH2/CH3ドメインに融合したHIV-1エンベロープタンパク質エピトープに対応する。ポリペプチドenv_32及びenv_33は、それぞれそのN末端又はC末端で融合したIgG CH2/CH3ドメインを有するポリペプチドenv_22で用いた同じgp41配列に対応する。ポリペプチドenv_34は、米国特許第6284248号の配列番号10から誘導したgp160配列に対応し、これをポリペプチドenv_35~env_38の対照として用いた。この配列はエンベロープ膜貫通配列を含まず、gp120/gp41切断部位が変異している。ポリペプチドenv_35~env_38は、クレードA、C、AE及びポリペプチドenv_34の配列に整列したコンセンサス配列からのエンベロープ配列に対応している。ポリペプチドenv_39は、gp120とgp41の配列の間にIgG CH2/CH3ドメインを有するNCBI Reference Sequence NP_579895から誘導された、切り詰められたgp41配列に融合したHIV-1 gp120クレードBエンベロープタンパク質エピトープから誘導された。ポリペプチドenv_40は、HIV-1 gp120エンベロープの同じ配列、IgG CH2/CH3ドメイン及びより長いリンカーと融合した、切り詰められたgp41に対応する。ポリペプチドenv_41は、gp41とgp120の配列の間にIgG CH2/CH3ドメインを有するHIV-1 gp120エンベロープタンパク質エピトープにそのC末端で融合した、NCBI Reference Sequence NP_579895から誘導された、切り詰められたgp41配列に対応する。ポリペプチドenv_42~env_44はポリペプチドenv_40と同様であるが、それぞれクレードA、AE及びAG株からのgp120配列を用いている。ポリペプチドenv_45はポリペプチドenv_40と同様であるが、コンセンサスgp120配列を用いている。ポリペプチドenv_46はgp120とp24の配列の間にIgG CH2/CH3ドメインを有するHIV-1カプシドタンパク質p24配列に融合したHIV-1 gp120クレードBエンベロープタンパク質エピトープから誘導した。ポリペプチドenv_47は、p24とgp120の配列の間にIgG CH2/CH3ドメインを有するHIV-1 gp120クレードBエンベロープタンパク質エピトープに融合したHIV-1カプシドタンパク質p24配列から誘導した。ポリペプチドenv_48はポリペプチドenv_46と同様であるが、p24タンパク質の選択されたエピトープを除去している。ポリペプチドenv_49はポリペプチドenv_47と同様であるが、p24タンパク質の選択されたエピトープを除去している。ポリペプチドenv_50はポリペプチドenv_46と同様であるが、選択されたp24の変異を有している。ポリペプチドenv_51はポリペプチドenv_47と同様であるが、選択されたp24の変異を有している。ポリペプチドenv_52はポリペプチドenv_46と同様であるが、p24配列に選択されたアラニン置換を有している。ポリペプチドenv_53はポリペプチドenv_47と同様であるが、p24配列に選択されたアラニン置換を有している。ポリペプチドenv_54は、IgG CH2/CH3ドメインを有するHIV-1 gp120タンパク質にそのC末端で融合したHIV-1 gp41配列に対応している。
【0134】
env_1~env_38のそれぞれ番号付けした「ポリペプチド」は、配列番号1~38に対応する。env_39~env_54のそれぞれ番号付けした「ポリペプチド」は、配列番号91~106に対応する。
【実施例2】
【0135】
env組換えポリペプチドのモデル
実施例1に記載し、それぞれ配列番号1~38及び91~106で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドenv_1~env_38及びenv_39~env_54の構造を、Cyrus Biotechタンパク質モデリングツールの中のRosettaソフトウェアを用いて、又はPDBからの既知の構造をPyMolを用いて手動で継ぎ合わせることによって予測した。
図2~
図40及び
図44はPyMolで描いた。融合タンパク質を暗灰色で示し、HIVエンベロープタンパク質(これは1つ又は複数のエピトープを含む)のアミノ酸配列を明灰色で示す。
【0136】
図2は、配列番号1及び配列番号3で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0137】
図3は、配列番号2及び配列番号4で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0138】
図4は、配列番号5で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0139】
図5は、配列番号6で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0140】
図6は、配列番号7で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0141】
図7は、配列番号8及び配列番号20で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0142】
図8は、配列番号9で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0143】
図9は、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0144】
図10は、配列番号13又は配列番号15で表されるアミノ酸配列によってコードされている2つのモノマーポリペプチドから形成されるダイマーポリペプチドを代表するダイマーポリペプチドのモデルを示す。
【0145】
図11は、配列番号14及び配列番号16で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0146】
図12は、配列番号15又は配列番号17で表されるアミノ酸配列によってコードされている2つのモノマーポリペプチドから形成されたダイマーポリペプチドを代表するダイマーポリペプチドのモデルを示す。
【0147】
図13は、配列番号18で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0148】
図14は、配列番号19で表されるアミノ酸配列によってコードされている2つのモノマーポリペプチドから形成されたダイマーポリペプチドを代表するダイマーポリペプチドのモデルを示す。
【0149】
図15は、配列番号21で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0150】
図16は、配列番号22で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0151】
図17は、配列番号23で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0152】
図18は、配列番号24、配列番号25、配列番号26、及び配列番号27で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0153】
図19は、配列番号28で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0154】
図20は、配列番号29で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0155】
図21は、配列番号30で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0156】
図22は、配列番号31で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0157】
図23は、配列番号32で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0158】
図24は、配列番号33で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0159】
図25は、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、及び配列番号38で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0160】
図26は、配列番号92で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0161】
図27は、配列番号93で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0162】
図28は、配列番号94で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0163】
図29は、配列番号95で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0164】
図30は、配列番号96で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0165】
図31は、配列番号97で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0166】
図32は、配列番号98で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0167】
図33は、配列番号99で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0168】
図34は、配列番号100で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0169】
図35は、配列番号101で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0170】
図36は、配列番号102で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0171】
図37は、配列番号103で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0172】
図38は、配列番号104で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0173】
図39は、配列番号105で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0174】
図40は、配列番号106で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【0175】
図44は、配列番号91で表されるアミノ酸配列によってコードされているモノマーサブユニットを代表するモノマーポリペプチドのモデルを示す。
【実施例3】
【0176】
組換えポリペプチドのクローニング及び発現
ポリペプチドenv_1、2、3、4、5、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、及びenv_18をクローニングし、哺乳類細胞で発現し、細胞上清を単離した。細胞上清からのタンパク質を4~20%のトリス-グリシンTGX(商標)ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミド(SDS-PAGE)ゲルで、還元条件及び非還元条件下に分析した。ゲルをInstantBlue(商標)タンパク質染色で染色した。ポリペプチドenv_1、2、3、5、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、及び18は検出可能なレベルで発現した(
図41及び
図42)。
【実施例4】
【0177】
哺乳類で発現した組換えポリペプチドはELISAによってドナー試料中のHIV抗体を検出できる
酵素免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて、哺乳類で発現したHIV env組換えポリペプチドが、酵母で発現したHIV抗原Env13(対照)で検出できなかったドナーの血漿試料中のHIV抗体を検出できることを確定した。
【0178】
簡単には、マルチウェルプレートのウェルを、対照の抗原Env13(酵母)を含めて同じモル濃度で、それぞれの抗原50μlで室温、一夜コーティングした。インキュベーションの後、340μlの洗浄緩衝液でプレートを2回洗浄し、ブロッキング緩衝液で室温、90分ブロックした。プレートをブロッキングした後、ブロッキング緩衝液をウェルから吸引除去し、5μlの各ドナー試料を50μlの検体希釈液とともにウェルに加えた。次いでプレートをカバーして37℃で45分インキュベートした。その後、プレートを340μlの1倍洗浄緩衝液で4回洗浄し、50μlの抗IgG-HRPコンジュゲートを各ウェルに加えた。プレートをカバーして再び37℃で45分インキュベートし、340μlの1倍洗浄緩衝液で再び洗浄した。基質緩衝液12mlあたり1個のOPD錠剤(20mg)を溶解することによって基質溶液を調製した。その後、50μlの基質溶液を各ウェルに加え、プレートを暗所、室温で30分、さらにインキュベートした。最後に15μlの4N H2SO4を各ウェルに加えて反応を停止した。490nmにおける吸収スペクトルでホースラディッシュペルオキシダーゼ基質の生成物への変換をモニターすることによって、結合した抗原を定量した。最大で337試料を試験した。
【0179】
対照の抗原Env13(酵母)は、試験した337試料のうち307試料で陽性ヒットを検出したのみであった。試験した哺乳類誘導env抗原の大部分は、Env13によって見逃された陽性ヒットを検出することができた。Env13(酵母)で見逃された全ての試料はタイターが低い試料であると考えられた。しかし、哺乳類誘導envポリペプチドは、Env13(酵母で発現)で見逃された4つまでの試料をカバーすることができた。Table 1(表1)の結果は、新規な哺乳類誘導env組換えポリペプチドによって、従来技術の抗原Env13(酵母)によって見逃されたドナー試料中のHIV抗体の検出が可能になることを示している。
【0180】
【配列表】