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特許7615215測定装置、水処理装置、測定方法、及び水処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】測定装置、水処理装置、測定方法、及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/72 20230101AFI20250108BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20250108BHJP
【FI】
C02F1/72 101
C02F1/32
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023081881
(22)【出願日】2023-05-17
(65)【公開番号】P2024165582
(43)【公開日】2024-11-28
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 幸男
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-214221(JP,A)
【文献】特開平09-145653(JP,A)
【文献】特開2019-132677(JP,A)
【文献】国際公開第2011/108478(WO,A1)
【文献】特開平03-278882(JP,A)
【文献】特開2000-131308(JP,A)
【文献】特開2018-079448(JP,A)
【文献】特開2012-061443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/50
C02F 1/70- 1/78
G01N 33/00-33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メイン流路から被処理水の一部を取り込み、前記被処理水に紫外線を照射可能な紫外線照射部と、
前記紫外線照射部から送出された紫外線照射後の前記被処理水中の照射後溶存酸素量を測定するメイン溶存酸素測定部と、
前記メイン流路から前記被処理水の一部を取り込み、前記被処理水中の非照射溶存酸素量を測定するサブ溶存酸素測定部と、
前記照射後溶存酸素量と、前記非照射溶存酸素量とを比較する溶存酸素量比較部と、
前記溶存酸素量比較部での比較対象となる前記照射後溶存酸素量と前記非照射溶存酸素量とが、同タイミングで前記メイン流路の同位置を流れる前記被処理水中のものとなるように、調整するタイミング調整部と、
前記溶存酸素量比較部での比較結果を出力する出力部と、
を備えた、
測定装置。
【請求項2】
前記タイミング調整部は、前記被処理水が前記メイン流路からの分岐部から前記メイン溶存酸素測定部へ到達するまでの時間と、前記分岐部から前記サブ溶存酸素測定部へ到達するまでの時間と、を揃える調整チャンバーを含む、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の測定装置と、
前記メイン流路からの分岐部よりも上流側に設けられ、前記被処理水に還元剤を添加する還元剤添加部と、
前記出力部から出力された比較結果に基づいて、前記還元剤添加部で添加する前記還元剤の量を調整する還元剤量調整部と、
を備えた、水処理装置。
【請求項4】
前記メイン流路からの分岐部よりも上流側に設けられ、前記被処理水に酸化剤を添加する酸化剤添加部と、
前記出力部から出力された比較結果に基づいて、前記酸化剤添加部で添加する前記酸化剤の量を調整する酸化剤量調整部と、
を備えた、請求項3に記載の水処理装置。
【請求項5】
メイン流路から取り込まれた被処理水に紫外線を照射した後、前記被処理水中の照射後溶存酸素量を測定し、
メイン流路から取り込まれた被処理水に紫外線を非照射で、前記被処理水中の非照射溶存酸素量を測定し、
同タイミングで前記メイン流路の同位置を流れる前記被処理水中の前記照射後溶存酸素量と前記非照射溶存酸素量とを比較し、比較結果に基づいて、前記メイン流路を流れる前記被処理水中の、酸化剤及び還元剤の少なくとも一方の量を測定する、
測定方法。
【請求項6】
メイン流路から取り込まれた被処理水に紫外線を照射した後、前記被処理水中の照射後溶存酸素量を測定し、
メイン流路から取り込まれた被処理水に紫外線を非照射で、前記被処理水中の非照射溶存酸素量を測定し、
同タイミングで前記メイン流路の同位置を流れる前記被処理水中の前記照射後溶存酸素量と前記非照射溶存酸素量とを比較し、比較結果に基づいて、前記メイン流路からの分岐部よりも上流で前記メイン流路の前記被処理水への、酸化剤及び還元剤の少なくとも一方の添加量を調整する、
水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置、水処理装置、測定方法、及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水中の溶存酸素の除去方法として、酸素を溶存する水に還元剤を溶解し、紫外線を照射する構成が記載されている。しかし、この特許文献1に記載されたメカニズムを用いて、還元剤を定量することに関しては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-278882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に市水等の原水には、殺菌等を目的として、次亜塩素酸等の酸化剤が添加されている。ところが、原水中の次亜塩素酸等の酸化剤の量は、河川水等の水質や浄水場の運転状況に応じて変動する。したがって、被処理水中の酸化剤を除去するために還元剤を添加する場合、被処理水中の酸化剤量に応じて、還元剤の添加量も変化させる必要があり、簡易に被処理水中の酸化剤量を把握することが重要となる。また、還元剤も経時変化により、有効濃度が低下し、必要な還元剤量も変化するため、添加後の還元剤量も合わせて把握することが重要である。しかしながら、試薬を用いて酸化剤量を測定する従来の方法では、試薬を用いるためメンテナンスに手間がかかるだけでなく、酸化剤の残存量は測定できるが、還元剤の残存量までは測定できない。還元剤の添加量が仮に一時的であれ不足すると、例えば、後段の逆浸透膜の劣化を引き起こす可能性もある。後段がイオン交換樹脂等であっても同様の問題が生じる可能性がある。また、それを防ぐために、過剰量の還元剤を添加すれば、後段の設備の塩の負荷となり、水質の悪化を起こす可能性もあるばかりか、ランニングコストの増加を引き起こしかねない。
【0005】
本開示の目的は、被処理水について、簡易に被処理水の酸化/還元状態を把握することが可能な測定装置、この測定装置を用いた水処理装置、測定方法、及び、水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様の測定装置は、メイン流路から被処理水の一部を取り込み、前記被処理水に紫外線を照射可能な紫外線照射部と、前記紫外線照射部から送出された紫外線照射後の前記被処理水中の照射後溶存酸素量を測定するメイン溶存酸素測定部と、前記メイン流路から前記被処理水の一部を取り込み、前記被処理水中の非照射溶存酸素量を測定するサブ溶存酸素測定部と、前記照射後溶存酸素量と、前記非照射溶存酸素量とを比較する溶存酸素量比較部と、前記溶存酸素量比較部での比較対象となる前記照射後溶存酸素量と前記非照射溶存酸素量とが、同タイミングで前記メイン流路の同位置を流れる前記被処理水中のものとなるように、調整するタイミング調整部と、前記溶存酸素量比較部での比較結果を出力する出力部と、を備えている。
【0007】
第一態様の測定装置では、紫外線照射部で紫外線を照射された後の被処理水中の照射後溶存酸素量をメイン溶存酸素測定部で測定し、紫外線を照射されていない被処理水中の非照射溶存酸素量をサブ溶存酸素測定部で測定する。そして、溶存酸素量比較部での比較対象となる照射後溶存酸素量と非照射溶存酸素量とが、同タイミングでメイン流路の同位置を流れる被処理水中のものとなるように、タイミング調整部で調整する。
【0008】
メイン流路を流れる被処理水中に酸化剤が混在していれば、紫外線照射により溶存酸素が増加し、出力部から出力される比較結果において照射後溶存酸素量が非照射溶存酸素量よりも大きくなる。一方、メイン流路を流れる被処理水中に還元剤が混在していれば、紫外線照射により溶存酸素が減少し、出力部から出力される比較結果において照射後溶存酸素量が非照射溶存酸素量よりも小さくなる。メイン流路を流れる被処理水中に酸化剤、還元剤のいずれも混在していなければ、出力部から出力される比較結果において両者の溶存酸素量は同様となる。なお、酸化剤が存在する場合には溶存酸素が増加するが、増加量は、酸化剤の種類によって若干変わるので、酸化剤の定量性はやや不正確である。また、還元剤が存在する場合には溶存酸素が減少するが、減少量は還元剤の種類によって若干変わるので、還元剤の定量性はやや不正確である。しかし、酸化剤、還元剤のいずれも混在していない条件、すなわち、当量点では、理想的には溶存酸素は増減しないが、このとき、酸化剤や還元剤の種類は関係ないので、この条件は正確に測定できる。
【0009】
このように、出力部から出力される溶存酸素の比較結果に基づいて、被処理水中の酸化状態、還元状態を簡易に測定することができる。特に、酸化剤と還元剤の量がちょうど等量となり、酸化剤、還元剤のいずれも混在していない条件は正確に測定できる。
【0010】
第二態様の測定装置は、前記タイミング調整部は、前記被処理水が前記メイン流路からの分岐部から前記メイン溶存酸素測定部へ到達するまでの時間と、前記分岐部から前記サブ溶存酸素測定部へ到達するまでの時間と、を揃える調整チャンバーを含む。
【0011】
第二態様の測定装置によれば、調整チャンバーにより、被処理水が分岐部からメイン溶存酸素測定部へ到達するまでの時間と、被処理水が分岐部からサブ溶存酸素測定部へ到達するまでの時間と、を揃えるので、簡易な構成にすることができる。
【0012】
なお、測定装置は、前記サブ溶存酸素測定部の上流側に設けられ、前記被処理水に紫外線を照射可能なサブ紫外線照射部、を更に備えていてもよい。
【0013】
この構成によれば、サブ紫外線照射部で、紫外線照射部と同様に紫外線を照射し、このときのメイン溶存酸素測定部とサブ溶存酸素測定部の測定値を合わせることにより、両測定部のゼロ合わせ(キャリブレーション)を容易に行うことができる。また、紫外線照射部及びサブ紫外線照射部の紫外線照射の出力低下などの不具合も、容易に確認することができる。
【0014】
第三態様の水処理装置は、第一態様または第二態様に記載の測定装置と、前記メイン流路からの分岐部よりも上流側に設けられ、前記被処理水に還元剤を添加する還元剤添加部と、前記出力部から出力された比較結果に基づいて、前記還元剤添加部で添加する前記還元剤の量を調整する還元剤量調整部と、を備えている。
【0015】
第三態様の水処理装置によれば、出力部から出力された比較結果に基づいて、還元剤添加部で添加する還元剤の量を調整するので、メイン流路を流れる被処理水中の溶存酸素が所望の溶存酸素量となるように、還元剤の量を調整することができる。
【0016】
第四態様の水処理装置は、前記メイン流路からの分岐部よりも上流側に設けられ、前記被処理水に酸化剤を添加する酸化剤添加部と、前記出力部から出力された比較結果に基づいて、前記酸化剤添加部で添加する前記酸化剤の量を調整する酸化剤量調整部と、を備えている。
【0017】
第四態様の水処理装置によれば、出力部から出力された比較結果に基づいて、酸化剤量調整部で添加する酸化剤の量を調整するので、メイン流路を流れる被処理水中に還元剤が残存した場合に、酸化剤を添加して還元剤を除去することができる。
【0018】
第五態様の測定方法は、メイン流路から取り込まれた被処理水に紫外線を照射した後、前記被処理水中の照射後溶存酸素量を測定し、メイン流路から取り込まれた被処理水に紫外線を非照射で、前記被処理水中の非照射溶存酸素量を測定し、同タイミングで前記メイン流路の同位置を流れる前記被処理水中の前記照射後溶存酸素量と前記非照射溶存酸素量とを比較し、比較結果に基づいて、前記メイン流路を流れる前記被処理水中の、酸化剤及び還元剤の少なくとも一方の量を測定する。
【0019】
第五態様の測定方法では、同タイミングで前記メイン流路の同位置を流れる前記被処理水中の前記照射後溶存酸素量と前記非照射溶存酸素量とを比較する。メイン流路を流れる被処理水中に酸化剤が混在していれば、紫外線照射により溶存酸素が増加し、比較結果において照射後溶存酸素量が非照射溶存酸素量よりも大きくなる。一方、メイン流路を流れる被処理水中に酸化剤が混在していれば、紫外線照射により溶存酸素が減少し、比較結果において照射後溶存酸素量が非照射溶存酸素量よりも小さくなる。メイン流路を流れる被処理水中に酸化剤、還元剤のいずれも混在していなければ、比較結果において両者の溶存酸素量は同様となる。
【0020】
このように、溶存酸素の比較結果に基づいて、被処理水中の酸化状態、還元状態を簡易に測定することができる。
【0021】
第六態様の水処理方法は、メイン流路から取り込まれた被処理水に紫外線を照射した後、前記被処理水中の照射後溶存酸素量を測定し、メイン流路から取り込まれた被処理水に紫外線を非照射で、前記被処理水中の非照射溶存酸素量を測定し、同タイミングで前記メイン流路の同位置を流れる前記被処理水中の前記照射後溶存酸素量と前記非照射溶存酸素量とを比較し、比較結果に基づいて、前記メイン流路からの分岐部よりも上流で前記メイン流路の前記被処理水への、酸化剤及び還元剤の少なくとも一方の添加量を調整する。
【0022】
第六態様の水処理方法では、照射後溶存酸素量と非照射溶存酸素量との比較結果に基づいて、メイン流路の被処理水への、酸化剤及び還元剤の少なくとも一方の添加量を調整する。これにより、メイン流路を流れる被処理水中の酸化剤または還元剤が所望の量となるように、調整することができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示の技術では、被処理水について、簡易に被処理水の酸化状態、還元状態を把握することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態の水処理装置を備えている超純水製造システムを示す構成図である。
図2】本実施形態の水処理装置を示す構成図である。
図3】本実施形態の測定装置の一部を示す構成図である。
図4】本実施形態の水処理装置の制御系を示す構成図である。
図5】還元剤添加量調整処理のフローチャートである。
図6】本実施形態の変形例に係る測定装置の一部を示す構成図である。
図7】本実施形態の変形例に係る水処理装置を示す構成図である。
図8】本実施形態の測定装置を他の用途とした場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して第一実施形態に係る水処理装置24及び超純水製造システム12について説明する。図1に示すように、この超純水製造システム12は、前処理装置14、一次純水装置16、純水タンク18、二次純水装置20、及びユースポイント22を有している。超純水製造システム12は、原水から不純物等を除去し、超純水を製造するシステムである。原水としては、工業用水、水道水、地下水、河川水等を挙げることができる。
【0026】
前処理装置14には原水が供給される。前処理装置14では、活性炭、凝集沈殿装置、色度除去装置を用いて除濁等の処理を行い、原水中の懸濁物質及び有機物の一部が除去された前処理水を得る。なお、原水の水質によっては、図1に一点鎖線で示すように、前処理装置14は省略し原水を一次純水装置16に送るようにしてもよい。前処理装置としては、砂濾過装置、加圧浮上装置等を備えていてもよい。前処理装置14で処理された被処理水(または、被処理水としての原水)は、一次純水装置16へ送出される。前処理装置での処理の段階で、原水中の次亜塩素酸等の酸化剤が消失もしくは減少した場合には適宜添加することも可能である。
【0027】
一次純水装置16は、水処理装置24を有している。図2に示すように、水処理装置24は、還元剤添加装置28、濾過装置26、紫外線照射装置30、脱イオン装置32、及び測定装置40を有している。被処理水は、メイン流路Mを介して水処理装置24へ送出される。
【0028】
還元剤添加装置28は、被処理水に対し、還元剤を添加可能である。本実施形態では、還元剤として亜硫酸ナトリウム(NaSO)、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)又はスルファミン酸ナトリウム(NHOSONa)等を用いる。
【0029】
濾過装置26は、内部に逆浸透膜を備えている。濾過装置26は被処理水を濾過し、これによって被処理水中の異物の一部が除去される。
【0030】
還元剤添加装置28よりも下流側、且つ、濾過装置26よりも上流側には、メイン流路Mから被処理水の一部を分岐する分岐部Bが設けられている。分岐部Bから配管P1を介して、被処理水の一部が測定装置40へ送出される。測定装置40の詳細については後述する。
【0031】
紫外線照射装置30は、還元剤を添加された被処理水に対し、紫外線を照射することにより酸化分解を促進する。紫外線の波長は、被処理水を酸化することが可能であればよい。たとえば、一般的に紫外線酸化用として用いられる波長185nm程度の紫外線を発するものが好ましい。
【0032】
脱イオン装置32は、紫外線照射装置30の下流側に設けられ、被処理水から残存するイオン等をイオン交換によって除去する。ただし、被処理水の種類や状態によっては、脱イオン処理を行わない構成でもよい。脱イオン装置としては、たとえば、電気再生式イオン交換装置、混床式イオン交換装置(MB塔)、ホウ素選択性イオン交換樹脂塔等を挙げることができるが、これに限定されない。これらのものを複数直列に設置することも可能である。混床式イオン交換装置(MB塔)には、ホウ素選択性イオン交換樹脂を混合することも可能である。
【0033】
一次純水装置16は、このようにして、被処理水に対し必要な処理(清浄化処理)を行うことで不純物を除去し、一次純水を得る装置である。すなわち、一次純水装置16は、水処理装置24を含むと共に、この水処理装置24によって処理された被処理水から純水を得る純水製造装置を成す。
【0034】
一次純水装置16は、必要に応じ、例えば、次の装置を設置することも可能である。活性炭塔、脱気塔、脱気膜装置、真空脱気塔。
【0035】
一次純水装置16で得られた一次純水は、純水タンク18へ送水される。純水タンク18は、一次純水装置16で得られた一次純水を一時的に貯留する容器である。
【0036】
純水タンク18に貯留された一次純水は、二次純水装置20に送られる。
【0037】
二次純水装置20は、たとえば、紫外線照射装置、膜脱気装置及びイオン交換装置(いずれも図示省略)等を有している。二次純水装置20は、被処理水に対し、さらに必要な処理(清浄化処理)を行うことで不純物を除去し、二次純水、すなわち超純水を得る装置である。
【0038】
得られた超純水は、ユースポイント22に送られて、たとえば半導体製造装置等における洗浄水として使用される。
【0039】
<測定装置>
測定装置40は、脱気膜41、メイン紫外線照射装置42、メイン溶存酸素測定装置44、サブチャンバー46A、サブ溶存酸素測定装置48、及び、制御部50を備えている。図3に示されるように、メイン紫外線照射装置42は、メインチャンバー42AとUV装置42Bを含んで構成されている。
【0040】
分岐部Bで配管P1へ分岐された被処理水は、脱気膜41へ送出される。脱気膜41では、被処理水中の溶存酸素が調整され、調整後の被処理水が下流へ送られる。脱気膜41では、溶存酸素濃度を下げたい場合は、窒素を注入する。また、溶存酸素濃度が低い場合、酸素または空気を注入する。いずもの場合も窒素(または酸素)の注入量を調整することで、所定の溶存酸素量に調整することができる。溶存酸素の濃度(以降DOと記載する場合もある。)は管理したいΔDOの値に対し、2~5倍程度の値にすることが好ましい。なお、脱気膜41に代えて、溶存酸素の調整のために、簡易タンクに窒素(または酸素)をバブリングするなどをしてもよい。また、DOの変動が大きい場合は、窒素(または酸素)注入量の調整を自動バルブにして、DOの値により、窒素(または酸素)の量を自動で調整できるようにしてもよい
【0041】
配管P1A、P1Bに更に2分岐され、メインチャンバー42Aとサブチャンバー46Aへ送出される。分岐部Bからメインチャンバー42Aへの流路、及び、分岐部Bからサブチャンバー46Aへの流路は、同一径、同一長さとされている。
【0042】
メインチャンバー42A及びサブチャンバー46Aは、同一容量の被処理水を貯留可能とされており、同一タイミングで分岐部Bから分岐された被処理水がメインチャンバー42A及びサブチャンバー46Aへそれぞれ流入し、同一時間を経て送出されるように構成されている。
【0043】
UV装置42Bは、メインチャンバー42A内の処理水へ紫外線を照射可能とされている。通常時には、UV装置42Bはオン状態(紫外線照射状態)とされている。UV装置42Bは、殺菌用として用いられる波長254nm程度の波長の紫外線を発生させるのもの、すなわち、殺菌用UVランプが好ましい。紫外線酸化用として用いられる184nm程度の波長の紫外線を発生させるものを使用すると、還元剤がなくても溶存酸素が低下するため、好ましくない。また、UV装置としては、水銀を封入したランプであっても、LED式ランプであってもよく、特に限定されない。
【0044】
メインチャンバー42Aとメイン溶存酸素測定装置44は、配管P2Aを介して接続されており、サブチャンバー46Aとサブ溶存酸素測定装置48は、配管P2Bを介して接続されている。配管P2Aと配管P2Bは、同一径、同一長さとされており、メインチャンバー42A及びサブチャンバー46Aから同一タイミングで送出された被処理水が、同一タイミングでメイン溶存酸素測定装置44、サブ溶存酸素測定装置48へそれぞれ流入するように構成されている。
【0045】
すなわち、分岐部Bで配管P1へ分岐された被処理水は、配管P1A、P1Bへ2分岐され、一方は、メインチャンバー42A、配管P2Aを経てメイン溶存酸素測定装置44へ流入し、他方は、サブチャンバー46A、配管P2Bを経てサブ溶存酸素測定装置48へ流入する。被処理水が分岐部Bからメイン溶存酸素測定装置44、サブ溶存酸素測定装置48へ到達するまでの時間は同時間となるように設定されており、同一タイミングでメイン溶存酸素測定装置44、サブ溶存酸素測定装置48を流れる被処理水は、同一タイミングで、メイン流路を流れている被処理水となる。
【0046】
メイン溶存酸素測定装置44では、流入した被処理水の溶存酸素を測定し、測定結果を制御部50へ送る。また、サブ溶存酸素測定装置48では、流入した被処理水の溶存酸素を測定し、測定結果を制御部50へ送る。通常時、メイン溶存酸素測定装置44での測定対象となる被処理水は、紫外線照射後のものであり、サブ溶存酸素測定装置48での測定対象となる被処理水は、紫外線照射されていないものである。溶存酸素測定後の被処理水は、メイン溶存酸素測定装置44、サブ溶存酸素測定装置48から外部へ排出される。
【0047】
図4に示されるように、制御部50は、CPU50A、ROM50B、RAM50C、ストレージ50D、I/O50E、及びこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバス50Fを備えている。ストレージ50Dには、還元剤添加装置28で添加する還元剤の量を調整するための還元剤添加量調整プログラムや、超純水製造システム12を制御するための各種プログラム、データが記憶されている。
【0048】
I/O50Eには、メイン溶存酸素測定装置44、サブ溶存酸素測定装置48、還元剤添加装置28、及び表示部52が接続されている。制御部50は、メイン溶存酸素測定装置44、サブ溶存酸素測定装置48、から入力される測定結果に基づいて、還元剤添加装置28で添加する還元剤の量を調整する。
【0049】
次に、本実施形態の水処理装置24の作用、及び水処理方法を説明する。
【0050】
この水処理装置24を用いた水処理方法では、前処理装置14によって前処理された被処理水が、メイン流路Mを介して一次純水装置16の水処理装置24へ送られる。還元剤添加装置28は、メイン流路を流れる被処理水に対して、予め設定された初期量の還元剤の添加を実行する。還元剤の初期量は、従来の被処理水の状態から、還元剤添加後の酸化剤の残存量が少なくなるように、且つ、濾過装置26へ流入する被処理水に還元剤が残存しないように設定されている。
【0051】
還元剤添加装置28により還元剤が添加された被処理水は、分岐部Bで一部がサンプル水として配管P1へ分岐され、測定装置40へ送られる。サンプル水の被処理水は、配管P1A、P1Bに2分岐され、メインチャンバー42A、サブチャンバー46Aへ送出される。
【0052】
メインチャンバー42Aへ送出された被処理水は、UV装置42Bから照射される紫外線により紫外線照射処理が施され、配管P2Aを経てメイン溶存酸素測定装置44へ送られ、メイン溶存酸素測定装置44で溶存酸素量が測定される。サブチャンバー46Aへ送出された被処理水は、紫外線照射処理が施されることなく、配管P2Bを経てサブ溶存酸素測定装置48へ送られ、サブ溶存酸素測定装置48で溶存酸素量が測定される。
【0053】
メイン溶存酸素測定装置44で測定された溶存酸素量(以下「紫外線照射後値DO1」という)、及び、サブ溶存酸素測定装置48で測定された溶存酸素量(以下「紫外線非照射値DO2」という)は、制御部50へ送られる。
【0054】
制御部50では、水処理装置24の稼働中、還元剤添加量調整処理が実行される。図5に示されるように、還元剤添加量調整処理では、ステップS10で、送られてきた紫外線照射後値DO1を取得し、ステップS12で、送られてきた紫外線非照射値DO2を取得する。ステップS14で、紫外線非照射値DO2と紫外線照射後値DO1との差(DO2-DO1)が予め設定されたAより小さいどうかを判断する。Aは、DO1とDO2との差が、還元剤雰囲気でA~Bの値になるように調整するための高い方の数値であり、予め設定されている。このAとBの値は、任意に設定可能である。一例として、Aを75ppb程度、Bを35ppb程度に設定することができる。この範囲内であれば、被処理水中の酸化剤の残存はゼロになり、且つ、還元剤の過剰量も最大で0.5ppm程度となる。
【0055】
なお、後段の逆浸透膜への影響を考慮すると、若干還元雰囲気となっていることが好ましいので、AはDO2の値であることが好ましい。
また、AとBの差の設定値を決めて、AとBの差が一定の範囲になるように、還元剤添加量の調整制御をすることも可能である。このとき、AとBの差の設定値は、事前に実験を行った結果等を用いて設定することが可能である。
【0056】
ステップS14での判断が否定された場合には、紫外線照射後値DO1の方が紫外線非照射値DO2よりも小さく、紫外線照射により被処理水中の溶存酸素量が減少している可能性が高い。これは、還元剤を含有する被処理水の酸化分解が促進されていることによるものである。したがって、還元剤添加装置28で還元剤を添加した後のメイン流路を流れる被処理水中に、所定以上の還元剤が残存していることがわかる(還元剤過多)。そこで、ステップS22へ進み、DO2とDO1との差ΔS2を表示部52へ出力して表示させ、ステップS24で、還元剤の添加量を還元剤の添加量をΔS2に応じて減少させるよう、還元剤添加装置28へ信号を出力する。
【0057】
ステップS14での判断が肯定された場合には、ステップS16で、紫外線非照射値DO2と紫外線照射後値DO1との差が予め設定されたBより大きいどうかを判断する。Bは、DO1とDO2との差(DO2-DO1)が、還元剤雰囲気でA~Bの値になるように調整するための低い方の数値である。
【0058】
ステップS16での判断が肯定された場合には、被処理水中の溶存酸素量がA~Bの範囲内であることになる。この場合には、還元剤の添加量を調整する必要がないため、ステップS26へ進む。
【0059】
ステップS16での判断が否定された場合には、紫外線照射後値DO1の方が紫外線非照射値DO2よりも大きい可能性が高く、紫外線照射により被処理水中の溶存酸素量が増加している。したがって、還元剤添加装置28で還元剤を添加した後のメイン流路を流れる被処理水中に酸化剤が残存している可能性が高い(酸化剤雰囲気)。そこで、ステップS18へ進み、DO2とDO1との差ΔS1を表示部52へ出力して表示させ、ステップS20で、還元剤の添加量をΔS1に応じて増加させるよう、還元剤添加装置28へ信号を出力する。
【0060】
ステップS20、ステップS24で、還元剤の添加量制御を行った後は、ステップS26へ進む。ステップS26では、水処理装置における水処理を終了するかどうかを判断する。水処理を終了しない場合には、ステップS10へ戻り上記の処理を繰り返す。水処理装置24での水処理を終了する場合には、本処理を終了する。
【0061】
本実施形態の測定装置40では、このようにして、被処理水中の溶存酸素の状態を測定し、表示部52に酸化/還元状態を表示させることができ、ユーザが、被処理水の酸化/還元状態を、把握することができる。ここでの測定は、試薬を用いないので、試薬を用いた場合のようなメンテナンスの手間がかからない。
【0062】
また、サブチャンバー46Aを用いることにより、紫外線照射される被処理水と、紫外線照射されない被処理水との流出の時間を調整するので、メイン流路Mを同一タイミングで流れていた被処理水について、紫外線照射後値DO1と紫外線非照射値DO2とを比較することができる。なお、本実施形態では、サブチャンバー46Aを用いることにより時間調整を行ったが、サブチャンバー46Aを用いない場合に生じる時間差を予め求めておいて、この時間差を加味して紫外線照射後値DO1と紫外線非照射値DO2とを比較してもよい。
【0063】
また、測定結果を還元剤添加装置28へフィードバックし、還元剤添加量を調整するので、濾過装置26へ送出される被処理水中の酸化剤の量を低減でき、濾過装置26の逆浸透膜の酸化劣化を抑制することができる。さらに、濾過装置26へ送出される被処理水中の還元剤の量も低減でき、還元剤の残留による下流部分における水質悪化やスライムコントロール剤の失活を抑制することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、メイン溶存酸素測定装置44とサブ溶存酸素測定装置48の2台の溶存酸素測定装置を用いて、メインチャンバー42Aからの被処理水とサブチャンバー46Aからの被処理水の各々の溶存酸素を測定したが、1台の溶存酸素測定装置を用いて測定してもよい。すなわち、自動バルブなどでメインチャンバー42Aからの被処理水とサブチャンバー46Aからの被処理水を互に切り替えて、紫外線照射後値DO1と紫外線非照射値DO2を測定してもよい。
【0065】
なお、本実施形態の変形例として、図6に示されるように、測定装置40のサブチャンバー46Aに紫外線を照射するUV装置46Bを設けてもよい。UV装置46Bは、通常時には紫外線照射を行わず、メイン溶存酸素測定装置44とサブ溶存酸素測定装置48の初期値を揃える際に、使用することができる。すなわち、メインチャンバー42AへUV装置42Bから紫外線照射を行うと共に、サブチャンバー46AへUV装置46Bから同様に紫外線照射を行い、メイン溶存酸素測定装置44で測定される溶存酸素量と、サブ溶存酸素測定装置48で測定される溶存酸素量が同じになるように、メイン溶存酸素測定装置44と、サブ溶存酸素測定装置48を調整することにより、ゼロ合わせをすることができると共に、紫外線装置の出力低下、不具合を確認することができる。なお、ゼロ合わせは、UV装置42BとUV装置46Bの両方をオフにしてメイン溶存酸素測定装置44と、サブ溶存酸素測定装置48を調整することによっても可能である。
【0066】
また、図7に示されるように、本実施形態のメイン流路Mの上流側に、酸化剤添加装置31を設けてもよい。この場合には、酸化剤添加装置31とも制御部50を接続し、測定装置40での酸化/還元状態に応じて、被処理水に酸化剤を添加することもできる。
【0067】
また、本実施形態では、測定装置40及び水処理装置24を超純水製造システム12に適用した例について説明したが、他の用途に用いることもできる。例えば、図8に示されるように、オゾンにより酸化処理した半導体製造工場等の排水について、還元剤を添加して還元処理するときに、還元剤添加後の排水について、測定装置40を用いて酸化/還元状態をモニターし、還元剤添加量を調整することもできる。この場合、排水の水質(有機物)量は、半導体製造工場の運転状況に応じて増減する。そのため、有機物の分解に用いられずに残留するオゾン量も増減するので、還元剤の添加量を最適にして、後段に設置されたイオン交換樹脂装置等の酸化劣化を防ぐことが可能となる。
なお、オゾン酸化に限らず、過硫酸、次亜臭素酸、過酸化水素等の酸化剤を用いた酸化処理の場合にも、その後段に添加する還元剤量の調整に本発明を利用することが可能である。
【0068】
<実施例>
図2に示した測定装置40で、以下の条件下で測定を行った。
【0069】
脱気膜41:DIC製のSEPAREL PF-015を使用し、窒素ガスを0.05NL/minで通水した。
メイン紫外線照射装置30: 三共電気製のUVランプSS801(ランプ電力8W)を使用し、流量を20mL/minで通水した。照射量は、3.6kWh/mとなる。また、サブチャンバー46A、UVランプ46Bも同様のものを使用し、UVランプ46Bは点灯させずに使用した。
DO測定装置44、48:HACK社製510型の溶存酸素計を使用した。
【0070】
<実施例1> 市水をRO膜(低圧RO。1段)に透過させて製造したRO透過水を脱気膜41でDO200ppbに調整したものを被処理水とした。
<実施例2> 実施例1の水に、亜硫酸ナトリウム1ppmを添加したものを用いた。
<実施例3> 実施例1の水に、次亜塩素酸ナトリウム1ppmを添加したものを用いた。
<実施例4> 実施例3の水に、次亜塩素酸と等量の亜硫酸ナトリウムを添加したものを用いた。
【0071】
DO1: メイン溶存酸素測定装置における測定値
DO2: サブ溶存酸素測定装置における測定値
【0072】
【表1】
【0073】
実施例2において、1ppmの亜硫酸ナトリウムに対し、溶存酸素が140ppb低下する結果となった。このとき、亜硫酸ナトリウムの量は、次の反応式(A)に基づくと、亜硫酸ナトリウムの量は、1.1ppmとなる。
2SO 2-+O→2SO 2- (A)
【0074】
実施例3において、1ppmの次亜塩素酸ナトリウムに対し、70ppbの溶存酸素が上昇したことがわかる。事前に求めた検量線(次亜塩素酸ナトリウムの濃度と溶存酸素増加量の関係)を用いると、次亜塩素酸ナトリウムの濃度は、1.1ppmであった。
【0075】
実施例1と実施例4の場合には、溶存酸素量の増減はほぼ0なので、何らかの方法で、溶存酸素の増減を酸化剤量や還元剤量へ換算しなくても、酸化剤と還元剤はほぼ等量となっていることがわかる。実施例1と実施例4を比較すると、次亜塩素酸と亜硫酸量が等量となっていることが正確に測定されていることがわかる。
【符号の説明】
【0076】
24 水処理装置
28 還元剤添加装置(還元剤添加部)
31 酸化剤添加装置(酸化剤添加部)
40 測定装置
42 メイン紫外線照射装置(紫外線照射部)
44 メイン溶存酸素測定装置
46A サブチャンバー(タイミング調整部、調整チャンバー)
46B UV装置(サブ紫外線照射部)
48 サブ溶存酸素測定装置(サブ溶存酸素測定部)
50 制御部(溶存酸素量比較部、出力部、還元剤量調整部、酸化剤量調整部)
B 分岐部
DO1 紫外線照射後値(照射後溶存酸素量)
DO2 紫外線非照射値(非照射溶存酸素量)
M メイン流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8