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特許7615290かご呼び登録装置およびかご呼び登録方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】かご呼び登録装置およびかご呼び登録方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/50 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
B66B1/50 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023212968
(22)【出願日】2023-12-18
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】川崎 英樹
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-002332(JP,A)
【文献】特開2022-131209(JP,A)
【文献】特開2021-059428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00- 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗りかご内に設置され、利用者によりいずれか1つで行われた回転操作に連動して他も回転する複数個の操作部と、
前記乗りかご内に設置されたスピーカ装置と、に通信可能に接続され、
利用者による前記操作部の回転操作中に前記操作部の回転量を検出し、検出した回転量に対応する階床を特定する回転検出部と、
前記回転検出部が特定した階床の情報を前記スピーカ装置から出力させる出力制御部と、
前記操作部が所定量回転した状態で利用者による回転操作が完了したことを検知すると、前記回転操作の完了を検知したときの前記操作部の回転量に対応して前記回転検出部が特定した階床を行先階として、かご呼びを登録する登録処理部と、を備えるかご呼び登録装置。
【請求項2】
エレベータの乗りかご内に設置された、利用者の操作により所定方向に回転する操作部と、
前記乗りかご内に設置されたスピーカ装置と、
前記乗りかご内を撮影するカメラ装置と、に通信可能に接続され、
前記カメラ装置で撮影された撮像情報を解析することで、前記乗りかご内に視覚障がい者がいるか否かを判定する判定部と、
前記判定部が前記乗りかご内に視覚障がい者がいると判定すると、登録されている呼びに対応する階床の情報を、登録済みの呼びの階床情報として前記スピーカ装置から出力させる出力制御部と、
利用者による前記操作部の回転操作中に前記操作部の回転量を検出し、検出した回転量に対応する階床を特定する回転検出部と、
前記操作部が所定量回転した状態で利用者による回転操作が完了したことを検知すると、前記回転操作の完了を検知したときの前記操作部の回転量に対応して前記回転検出部が特定した階床を行先階として、かご呼びを登録する登録処理部と、を備えるかご呼び登録装置。
【請求項3】
前記操作部は、時計回り方向および反時計回り方向に回転する部材、または、上下方向に力が加えられることで回転する部材で構成される、請求項1または2に記載のかご呼び登録装置。
【請求項4】
前記操作部は、階床ごとの回転量に対応する位置に、凹部または凸部を有する、請求項1または2に記載のかご呼び登録装置。
【請求項5】
前記回転検出部は、前記乗りかごの現在位置情報を取得し、検出した回転量に対応する階床として、検出した回転量に対応する前記乗りかごの現在位置からの距離を有する階床を特定する、請求項1または2に記載のかご呼び登録装置。
【請求項6】
前記登録処理部は、前記操作部が所定量回転した状態で、前記操作部において所定の操作が行われるかまたは操作が行われずに所定時間が経過すると、利用者による回転操作が完了したことを検知する、請求項1または2に記載のかご呼び登録装置。
【請求項7】
前記登録処理部は、前記判定部が前記乗りかご内に視覚障がい者がいると判定し、前記操作部が所定量回転した状態で利用者による回転操作が完了したことを検知すると、前記かご呼びを登録する、請求項2に記載のかご呼び登録装置。
【請求項8】
エレベータの乗りかご内に設置され、利用者によりいずれか1つで行われた回転操作に連動して他も回転する複数個の操作部と、
前記乗りかご内に設置されたスピーカ装置と、に通信可能に接続されたかご呼び登録装置が、
利用者による前記操作部の回転操作中に前記操作部の回転量を検出し、検出した回転量に対応する階床を特定し、
特定した階床の情報を前記スピーカ装置から出力させ、
前記操作部が所定量回転した状態で利用者による回転操作が完了したことを検知すると、前記回転操作の完了を検知したときの前記操作部の回転量に対応して特定した階床を行先階として、かご呼びを登録する、かご呼び登録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、かご呼び登録装置およびかご呼び登録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ内には視覚障がい者に対応した設備が設置されている。例えば、乗りかご内の操作盤には、戸開閉ボタンおよび行先階登録ボタン等の操作ボタンを大型化して、それぞれの近傍に点字表示板を設置している。このように構成した操作ボタンを設置することで、視覚障がい者が乗りかご内での戸開閉操作および行先階を指定したかご呼び登録操作を実行し易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-103576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、階床数の多い建物のエレベータ内で上述したような操作ボタンを設置しようとすると、行先階登録ボタンの数が多くなることから、視覚障がい者が所望の行先階ボタンを探し当てるまでに時間を要してかご呼び登録操作が困難になるという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、視覚障がい者が簡易な操作でかご呼び登録操作を実行可能なかご呼び登録装置およびかご呼び登録方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための実施形態によればかご呼び登録装置は、エレベータの乗りかご内に設置された、利用者の操作により所定方向に回転する操作部と、乗りかご内に設置されたスピーカ装置とに通信可能に接続され、回転検出部と出力制御部と登録処理部とを備える。回転検出部は、利用者による操作部の回転操作中に操作部の回転量を検出し、検出した回転量に対応する階床を特定する。出力制御部は、回転検出部が特定した階床の情報をスピーカ装置から出力させる。登録処理部は、操作部が所定量回転した状態で利用者による回転操作が完了したことを検知すると、回転操作の完了を検知したときの操作部の回転量に対応して回転検出部が特定した階床を行先階として、かご呼びを登録する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態によるエレベータシステムの構成を示す全体図である。
図2】第1実施形態によるエレベータシステムの乗りかご内に設置されたかご内操作盤の正面図である。
図3】第1実施形態によるエレベータシステム内のエレベータ制御装置の動作を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態によるエレベータシステムの構成を示す全体図である。
図5】第2実施形態によるエレベータシステム内のエレベータ制御装置の動作を示すフローチャートである。
図6】他の実施形態によるかご内操作盤の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
《第1実施形態》
〈第1実施形態によるかご呼び登録装置を用いたエレベータシステムの構成〉
図1は、本実施形態によるかご呼び登録装置を用いたエレベータシステム1Aの構成を示す全体図である。エレベータシステム1Aは、建物内の昇降路2の上部に設置された巻き上げ機3と、巻き上げ機3に掛け渡されたロープ4と、ロープ4の一端に吊り下げられた乗りかご5Aと、昇降路2の上部に設置され、乗りかご5Aにテールコード6を介して接続されたエレベータ制御装置10Aとを備える。乗りかご5A内には、かご内操作盤51-1が設置される。
【0009】
図2は、かご内操作盤51-1の正面図である。かご内操作盤51-1は、行先階ボタン群511と、戸閉ボタン512と、戸開ボタン513と、ダイヤル式の第1操作部514と、スピーカ装置515と、表示装置516とを有する。図2に示すように、第1操作部514を、かご内操作盤51-1内の下方に設置することで、子供でも容易に操作可能になる。
【0010】
行先階ボタン群511は、一般の利用者が行先階を指定してかご呼び操作を行うために階床ごとに設置された、複数の行先階指定ボタンを有する。
【0011】
第1操作部514は、視覚障がい者が行先階を指定してかご呼び操作を行うために使用する操作部であり、回転操作および押下操作が可能な部材で構成される。具体的には、第1操作部514は円柱形を有し、一方の底面がかご内操作盤51-1の前面に設置され、円柱の中心軸を回転軸として時計回り方向および反時計回り方向に回転可能であり、且つ円筒の中心軸方向であるかご内操作盤51-1の表面側から裏面側、つまり利用者の手前側から奥側に向かう方向に押し込み可能に構成される。
【0012】
エレベータ制御装置10Aは、乗りかご5Aと通信可能に接続され、呼び登録部11と、CPU12Aとを有する。呼び登録部11は、利用者の操作に基づいてかご呼びおよび乗場呼びを登録する。
【0013】
CPU12Aは、例えば汎用のマイクロコンピュータが備えるCPU(中央処理装置)であって、所定のエレベータ制御プログラムをインストールして実行することにより、以下に示す1又は2以上の情報処理部を構成する。CPU12Aは、動作制御部121と、かご内情報処理部122と、回転検出部123と、出力制御部124Aと、登録処理部125Aとを有する。回転検出部123、出力制御部124A、および登録処理部125Aは、かご呼び登録装置20Aを構成する。
【0014】
動作制御部121は、呼び登録部11に登録された呼びに応答するように、巻き上げ機3を含む機器の動作を制御する。かご内情報処理部122は、テールコード6を介して乗りかご5A内の機器から情報を取得するとともに、乗りかご5A内の機器に情報を送信する。
【0015】
回転検出部123は、かご内情報処理部122が取得した情報に基づいて、利用者による第1操作部514の回転操作中に第1操作部514の回転方向および回転量を検出し、検出した回転方向および回転量に対応する階床を特定する。出力制御部124Aは、回転検出部123が特定した階床が変更する都度、特定した階床の情報を、スピーカ装置515から出力させる。
【0016】
登録処理部125Aは、第1操作部514が所定量回転した状態で利用者による回転操作が完了したことを検知すると、回転操作が完了したときの第1操作部514の回転状態に対応して回転検出部123が特定した階床を行先階として、かご呼びを呼び登録部11に登録する。また登録処理部125Aは、行先階ボタン群511の中のいずれかの行先階指定ボタンが操作されたことを検知すると、操作されたボタンに対応する階床を行先階として、かご呼びを呼び登録部11に登録する。
【0017】
〈第1実施形態によるエレベータシステムの動作〉
エレベータシステム1Aの動作について説明する。エレベータシステム1Aの稼動中、乗りかご5Aが乗場に着床して戸開すると、かご内情報処理部122が乗りかご5Aの着床階情報および戸開情報を取得する。出力制御部124Aは、かご内情報処理部122が取得した情報に基づいて乗りかご5Aが所定階で戸開したことを検知すると、これに基づいて、視覚障がい者向けのかご呼び登録のための操作部である、ダイヤル式の第1操作部514が乗りかご5A内に設置されていることを報知するアナウンス情報を、スピーカ装置515から出力させる。
【0018】
ここで、視覚障がい者X1が乗りかご5Aに乗り込み、第1操作部514を用いてかご呼びを登録する場合の処理について説明する。
【0019】
図3は、エレベータシステム1A内でかご呼びが登録されるときに、エレベータ制御装置10Aが実行する処理を示すフローチャートである。
【0020】
視覚障がい者X1が第1操作部514を回転させると、第1操作部514の回転方向および回転量の情報はかご内操作盤51-1からエレベータ制御装置10Aに送信され、かご内情報処理部122を介して回転検出部123が取得する。
【0021】
回転検出部123は、取得した情報に基づいて第1操作部514が回転操作されたことを認識し(S1の「YES」)、第1操作部514の回転方向および回転量を検出する。
【0022】
回転検出部123は、動作制御部121から乗りかご5Aの現在位置情報を取得し、検出した第1操作部514の回転方向または回転量に対応する、乗りかご5Aの現在位置からの方向および距離を有する階床を特定する(S2)。
【0023】
例えば、回転検出部123は、乗りかご5Aが8階に着床しているときに第1操作部514が時計回り方向に60°回転したことを検出すると、この検出した回転状況に対応する階床として、乗りかご5Aの現在位置の1階床上である9階を特定する。また回転検出部123は、乗りかご5Aが8階に着床しているときに第1操作部514が時計回り方向に120°回転したことを検出すると、この検出した回転状況に対応する階床として、乗りかご5Aの現在位置の2階床上である10階を特定する。また回転検出部123は、乗りかご5Aが8階に着床しているときに第1操作部514が反時計回り方向に60°回転したことを検出すると、この検出した回転状況に対応する階床として、乗りかご5Aの現在位置の1階床下である7階を特定する。なお、回転状況に対応する階床特定の際には、回転方向及び回転量は上述したものに限らず、任意に設定してよいものとする。
【0024】
出力制御部124Aは、回転検出部123が特定した階床を報知するアナウンス情報を、スピーカ装置515から出力させる(S3)。出力制御部124Aは、視覚障がい者X1が第1操作部514の回転操作を継続している間(S4の「NO」)、回転検出部123が特定した階床が変更する都度、変更後の階床を報知するアナウンス情報をスピーカ装置515から出力させる。例えば、視覚障がい者X1が第1操作部514を時計回り方向に継続して回転操作し、第1操作部514が60°→120°→180°・・・と回転すると、出力制御部124Aが、これに応じて順次「9階」、「10階」、「11階」・・・のアナウンス情報をスピーカ装置515から出力させる。
【0025】
視覚障がい者X1は、第1操作部514を回転させながらスピーカ装置515から出力されるアナウンス情報を聞き、所望の行先階に対応するアナウンス情報、例えば「11階」が出力されると、回転操作を停止する。そして視覚障がい者X1は、回転操作の完了を通知するために、第1操作部514を手前側から奥側に向かって、つまりかご内操作盤51-1の表面側から裏面側に向かって押下する。
【0026】
視覚障がい者X1が第1操作部514を押下すると、この押下操作の情報がエレベータ制御装置10Aに送信され、かご内情報処理部122を介して登録処理部125Aが取得する。
【0027】
登録処理部125Aは、取得した情報に基づいて、第1操作部514が所定量回転した状態で利用者による第1操作部514が押下操作されたことを検知する。登録処理部125Aは、検知した情報に基づいて、利用者による第1操作部514の回転操作が完了したことを認識する(S4の「YES」)。
【0028】
登録処理部125Aは、利用者による第1操作部514の回転操作が完了したことを認識すると、回転操作が完了したときの第1操作部514の回転方向および回転量に対応して回転検出部123が特定した階床「11階」を行先階として、かご呼びを呼び登録部11に登録する(S5)。かご呼びが登録されると、出力制御部124Aは、「11階」を行先階としてかご呼びが登録されたことを報知するアナウンス情報をスピーカ装置515から出力させる。
【0029】
ステップS1において、第1操作部514が回転操作されず(S1の「NO」)、行先階ボタン群511の中のいずれかの行先階指定ボタンが操作されたときには(S6の「YES」)、登録処理部125Aは、操作されたボタンに対応する階床を行先階として、かご呼びを呼び登録部11に登録する(S7)。
【0030】
以上の第1実施形態によれば、エレベータのサービス階が多数ある場合であっても、視覚障がい者は、乗りかご内で1つの操作部を用いて容易に行先階を指定してかご呼び登録操作を行うことができる。また視覚障がい者がかご呼び登録操作を行うために設置する第1操作部は、行先階の候補の情報を出力させるための回転動作と、候補の中から行先階を選択するための押下操作との双方の操作を行うことができるため、かご内操作盤内のスペースが小さい場合であっても設置可能である。
【0031】
上述した第1実施形態においては、登録処理部125Aが、第1操作部514が手前側から奥側に向かって押下操作されたことを検知すると、回転操作が完了したことを認識する場合について説明した。しかしこれには限定されず、利用者により第1操作部514が上方向、下方向、または横方向に向かって力が加えられたときに、回転操作が完了したと認識してもよい。または、登録処理部125Aは、第1操作部514が所定量回転した状態で停止され、その後何も操作が行われずに所定時間が経過したときに、回転操作が完了したと認識してもよい。
【0032】
また、上述した第1実施形態においては、乗りかご5A内にかご内操作盤51-1が1個設置された場合について説明したが、これには限定されず、2個以上設置してもよい。例えば、乗りかご5A内のかごドア(図示せず)近辺と、かごドアと対向する側板とにかご内操作盤51-1を設置してもよい。このように乗りかご5A内に複数個のかご内操作盤51-1を設置することで、複数人の視覚障がい者が乗りかご5A内の異なる位置に乗り込んだ場合にも、それぞれがかご呼び登録操作をし易くなる。
【0033】
このように乗りかご5A内に複数個のかご内操作盤51-1が設置された場合、これらの複数個のかご内操作盤51-1のうちの1つの第1操作部514で回転操作が行われると、他の第1操作部514もこれに連動して回転するようにしてもよい。この場合、複数のかご内操作盤51-1同士を、ベルト等で物理的に接続させてもよいし、無線通信により電気的に接続させてもよい。
【0034】
このように構成することで、例えば、乗りかご5A内で視覚障がい者X1が近くにある第1操作部514を用いてかご呼び登録操作を実行しようとしたときに、この第1操作部514が自動で回転していた場合、乗りかご5A内の他のかご内操作盤51-1を用いて他の視覚障がい者がかご呼び登録操作中であることを認識することができる。このとき視覚障がい者X1は、かご呼び登録操作を中断し、他の視覚障がい者によるかご呼び登録が完了してこのかご呼び登録による行先階を示すアナウンス情報が出力制御部124Aから出力されるまで待機する。視覚障がい者X1は、出力されたアナウンス情報を聞き、このアナウンス情報で示される行先階が視覚障がい者X1の行先階と同じである場合には、かご呼び登録操作を行う必要がないことを認識することができ、操作の手間を省くことができる。
【0035】
《第2実施形態》
〈第2実施形態によるかご呼び登録装置を用いたエレベータシステムの構成〉
図4は、本実施形態によるかご呼び登録装置を用いたエレベータシステム1Bの構成を示す全体図である。エレベータシステム1Bは、乗りかご5B内にカメラ装置52が設置され、エレベータ制御装置10BがCPU12B内に判定部126を有する他は、第1実施形態で説明したエレベータシステム1Aと同様の構成を有するため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0036】
カメラ装置52は、乗りかご5B内を撮影し、撮像情報をエレベータ制御装置10Bに送信する。
【0037】
判定部126は、カメラ装置52で撮影された撮像情報を取得して解析することで、乗りかご5B内に視覚障がい者がいるか否かを判定する。また判定部126は、乗りかご5B内に視覚障がい者がいると判定したときには、さらに、乗りかご5B内にこの視覚障がい者以外に利用者がいるか否かを判定する。
【0038】
登録処理部125Bは、判定部126が乗りかご5B内に視覚障がい者がいると判定し、第1操作部514が所定量回転した状態で利用者による回転操作が完了したことを検知すると、かご呼びを登録する。
【0039】
出力制御部124Bは、判定部126が乗りかご5B内に視覚障がい者を含む複数の利用者がいると判定すると、呼び登録部11に現在登録されている呼びに対応する階床を示すアナウンス情報を、登録済みの呼びの階床情報としてスピーカ装置515から出力させる。
【0040】
〈第2実施形態によるエレベータシステムの動作〉
エレベータシステム1B内で、かご呼びが登録されるときの動作について説明する。図5は、エレベータシステム1B内でかご呼びが登録されるときに、エレベータ制御装置10Bが実行する処理を示すフローチャートである。
【0041】
本実施形態において、エレベータシステム1Bの稼動中、カメラ装置52は乗りかご5B内を撮影して、撮像情報を順次エレベータ制御装置10Bに送信する。エレベータ制御装置10Bでは、カメラ装置52から送信された撮像情報を判定部126が取得し、所定時間間隔で解析処理を行って、乗りかご5B内に視覚障がい者X2がいるか否かを判定する(S11の「YES」)。
【0042】
判定部126は、例えば、撮像情報を解析することで白杖を携帯している人または所定の動作を行う人を検知したときに、乗りかご5B内に視覚障がい者X2がいると判定する。このような判定処理を実行するために、カメラ装置52をAI(Artificial Intelligence)カメラで構成して解析の精度を向上させてもよい。
【0043】
判定部126が乗りかご5B内に視覚障がい者X2がいると判定したときに、出力制御部124Bが、視覚障がい者向けのかご呼び登録のための操作部である、ダイヤル式の第1操作部514が乗りかご5B内に設置されていることを報知するアナウンス情報を、スピーカ装置515から出力させてもよい。
【0044】
判定部126は、乗りかご5B内に視覚障がい者X2がいると判定すると、さらに撮像情報を解析して、乗りかご5B内にこの視覚障がい者X2以外の利用者がいるか否かを判定する(S12)。
【0045】
判定部126が乗りかご5B内にこの視覚障がい者X2以外の利用者がいると判定したとき(S12の「YES」)、つまり乗りかご5B内にこの視覚障がい者を含む複数の利用者がいると判定したときには、出力制御部124Bが、呼び登録部11に現在登録されている呼びに対応する階床の情報を、登録済みの呼びの階床情報としてスピーカ装置515から出力させる(S13)。これにより、乗りかご5Aの視覚障がい者X2は、行先階を指定してかご呼び操作を行う必要があるか否かを判断することができる。
【0046】
以降、ステップS14~S20で実行される処理は、第1実施形態で説明したS1~S7の処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。ただし、ステップS18において登録処理部125Bは、判定部126が乗りかご5B内に視覚障がい者がいると判定し、且つ第1操作部514が所定量回転した状態で利用者による回転操作が完了したことを検知したときに、かご呼びを登録する。このように処理を行うことで、第1操作部514におけるいたずらまたは誤操作によりかご呼びが登録されることを防止することができる。
【0047】
上述した第2実施形態においても、第1実施形態で説明した場合と同様に、乗りかご5B内に複数個のかご内操作盤51-1を設置してもよい。また、これらの複数個のかご内操作盤51-1同士を物理的または電気的に接続させ、動作を連動させるようにしてもよい。
【0048】
上述した第1および第2実施形態においては、かご内操作盤51-1内で、視覚障がい者が行先階を指定してかご呼び操作を行う操作部を、ダイヤル式の第1操作部514で構成する場合について説明した。しかしこれには限定されず、図6に示すかご内操作盤51-2のように、視覚障がい者がかご呼び操作を行う操作部を、上下方向に力が加えられることで回転可能な第2操作部517で構成してもよい。この第2操作部517は、かご内操作盤51-2の幅方向に平行な軸を回転軸として回転する部材の一部をかご内操作盤51-2の表面に露出させて構成したものである。
【0049】
このように第2操作部517を用いてかご内操作盤51-2を構成した場合、回転検出部123は例えば、乗りかご5Aまたは5Bが8階に着床しているときに第2操作部517が上方向に力が加えられたことで60°回転したことを検出すると、この検出した回転状況に対応する階床として乗りかご5Aまたは5Bの現在位置の1階床上である9階を特定する。また回転検出部123は、乗りかご5Aまたは5Bが8階に着床しているときに第2操作部517が上方向に力が加えられたことで120°回転したことを検出すると、この検出した回転状況に対応する階床として、乗りかご5Aまたは5Bの現在位置の2階床上である10階を特定する。また回転検出部123は、乗りかご5Aまたは5Bが8階に着床しているときに第2操作部517が下方向に力が加えられたことで60°回転したことを検出すると、この検出した回転状況に対応する階床として、乗りかご5Aまたは5Bの現在位置の1階床下である7階を特定する。
【0050】
この場合も、出力制御部124Aまたは124Bは、回転検出部123が特定した階床を報知するアナウンス情報を、スピーカ装置515から出力させる。視覚障がい者は、第2操作部517を回転させながらスピーカ装置515から出力されるアナウンス情報を聞き、所望の行先階に対応するアナウンス情報が出力されると、回転操作を停止する。第2操作部517が所定量回転した状態で停止され、その後何も操作が行われずに所定時間が経過すると、登録処理部125Aまたは125Bは回転操作が完了したと認識する。登録処理部125Aまたは125Bは、このときの第2操作部517の回転方向および回転量に対応して回転検出部123が特定した階床を行先階として、かご呼びを呼び登録部11に登録する。
【0051】
このように第2操作部517を用いてかご内操作盤51-2を構成することで、視覚障がい者が容易に行先階を指定してかご呼び登録操作を行うことができる。
【0052】
また、第1操作部514または第2操作部517は、階床ごとの回転量に対応する外周面の所定位置に凹部または凸部を有してもよい。例えば、円柱形を有する第1操作部514または第2操作部517の外周面に、回転方向の所定間隔ごとに凹部または凸部を設ける。このように構成することで、視覚障がい者が第1操作部514または第2操作部517を操作する際に、どの程度回転させれば、指定対象の階床を1階床分、上昇または下降させることができるかを把握することができる。
【0053】
また、このように設けた凹部または凸部を利用して、第1操作部514または第2操作部517を、視覚障がい者が回転させたときに回転量に対応する階床を1階床ずつ感触で認識することが可能なラッチ式の操作部として構成してもよい。このように、第1操作部514または第2操作部517を構成することで、視覚障がい者がさらに容易に行先階を指定してかご呼び登録操作を行うことができる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1A,1B…エレベータシステム、2…昇降路、3…巻き上げ機、4…ロープ、5A,5B…乗りかご、6…テールコード、10A,10B…エレベータ制御装置、11…呼び登録部、12A,12B…CPU、20A,20B…かご呼び登録装置、51-1,51-2…かご内操作盤、52…カメラ装置、121…動作制御部、122…かご内情報処理部、123…回転検出部、124A,124B…出力制御部、125A,125B…登録処理部、126…判定部、511…行先階ボタン群、512…戸閉ボタン、513…戸開ボタン、514…第1操作部、515…スピーカ装置、516…表示装置、517…第2操作部
【要約】
【課題】 視覚障がい者が簡易な操作でかご呼び登録操作を実行可能なエレベータシステム、かご呼び登録装置、かご呼び登録方法を提供する。
【解決手段】 実施形態によればかご呼び登録装置は、エレベータの乗りかご内に設置された、利用者の操作により所定方向に回転する操作部と、乗りかご内に設置されたスピーカ装置とに通信可能に接続され、回転検出部と出力制御部と登録処理部とを備える。回転検出部は、利用者による操作部の回転操作中に操作部の回転量を検出し、検出した回転量に対応する階床を特定する。出力制御部は、回転検出部が特定した階床の情報をスピーカ装置から出力させる。登録処理部は、操作部が所定量回転した状態で利用者による回転操作が完了したことを検知すると、回転操作の完了を検知したときの操作部の回転量に対応して回転検出部が特定した階床を行先階として、かご呼びを登録する。
【選択図】図1
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図6