(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】干渉フィルター、これを備えた広角分光イメージング装置、及びこれを備えた深度イメージング装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/28 20060101AFI20250108BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20250108BHJP
G02B 26/00 20060101ALI20250108BHJP
G01J 3/26 20060101ALI20250108BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
G02B5/28
G02B5/26
G02B26/00
G01J3/26
G01C3/06 120Q
(21)【出願番号】P 2023521910
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(86)【国際出願番号】 KR2021014635
(87)【国際公開番号】W WO2022250209
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0068223
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0096223
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515222838
【氏名又は名称】ジェイアンドシー テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ミン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ウー ジュン
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-011932(JP,A)
【文献】特開2015-184637(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0056277(KR,A)
【文献】特表2019-537708(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0120421(US,A1)
【文献】実公昭61-022250(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/28
G02B 5/26
G02B 26/00
G01J 3/26
G01C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が入射する第1表面、及びその反対側の第2表面を有する第1反射層と、前記第2表面と距離を置いて対向する第3表面、及びその反対側であり且つ光が出射する第4表面を有する第2反射層と、を備え、前記第1反射層の第1表面と前記第2反射層の第4表面との間の、光軸と並んだ仮想経路上の全ての媒質それぞれの前記経路上の厚さと屈折率とを乗じた値同士の和が、前記光軸から離れるほど大きくなるように構成され
、
前記第1反射層と前記第2反射層との間には、前記光軸から離れるほど厚さが厚くなり、前記第1反射層と前記第2反射層との間の他の媒質に比べて屈折率の大きい光学物質が充填される、干渉フィルター。
【請求項2】
前記干渉フィルターの前記第1反射層の前記第2表面と前記第2反射層の前記第3表面との間隔が、前記光軸から離れるほど広くなるように、前記第1反射層と前記第2反射層のうちの少なくとも一つが曲がっている、請求項1に記載の干渉フィルター。
【請求項3】
前記第1反射層と前記第2反射層のうち、曲がっている反射層の曲率が、前記光軸から離れるほど小さくなる、請求項2に記載の干渉フィルター。
【請求項4】
前記第1反射層と前記第2反射層のうちの少なくとも一つが複数の誘電体層を含み、
前記複数の誘電体層のうちの少なくとも一つが、前記光軸から離れるほど厚さが厚くなる、請求項1に記載の干渉フィルター。
【請求項5】
前記第1反射層の第1表面と前記第2反射層の第4表面との間の、光軸と並んだ経路上の全ての媒質それぞれの経路上の厚さと屈折率とを乗じた値同士の和が、下記[数式2]に従って、前記光軸から離れるほどCOSθ(x)値に反比例して大きくなる、請求項1に記載の干渉フィルター。
【数2】
(t
k(x)とn
k(x)は、光軸からの距離がxである光軸と並んだ経路上の媒質それぞれの経路上の厚さ(それぞれの媒質を通る前記経路の長さ)と屈折率を示し、θ(x)は、光軸からの距離(x)による入射角(Angle of Incidence)であり、mは整数、λは干渉フィルターの透過波長をそれぞれ意味する。)
【請求項6】
被写体からの光を受信するように構成された光受信器と、
前記第1反射層と前記第2反射層との間の光軸方向と並んだ光学距離を調節するように構成された光学距離調節メカニズムと、
前記光受信器の前段に配置される干渉フィルターと、を含む広角分光イメージング装置であって、
前記干渉フィルターは請求項1~
5のいずれか一項に記載の干渉フィルターである、広角分光イメージング装置。
【請求項7】
前記光学距離調節メカニズムは、
前記干渉フィルターの前記第1反射層と前記第2反射層との間に充填され、外部刺激に応じて厚さまたは屈折率が変更されるスマート光学物質である、請求項
6に記載の広角分光イメージング装置。
【請求項8】
前記光学距離調節メカニズムは、前記第1反射層を前記第2反射層に対して光軸方向に沿って相対移動させるように構成された間隔調節メカニズムである、請求項
6に記載の広角分光イメージング装置。
【請求項9】
ソース光を伝送するように構成された光送信器と、
前記ソース光の反射光を受信するように構成された光受信器と、
前記光受信器の前段に配置される干渉フィルターと、を含む深度イメージング装置であって、
前記干渉フィルターは請求項1~
5のいずれか一項に記載の干渉フィルターである、 深度イメージング装置。
【請求項10】
前記ソース光の中心波長の変化を測定する中心波長モニタリング装置と、
前記第1反射層と前記第2反射層との間の、光軸方向と並んだ光学距離を調節するように構成された光学距離調節メカニズムと、
前記中心波長モニタリング装置から測定された前記ソース光の中心波長の変化に対応して前記光学距離調節メカニズムを制御する制御器と、をさらに含む、請求項
9に記載の深度イメージング装置。
【請求項11】
前記光学距離調節メカニズムは、
前記干渉フィルターの前記第1反射層と前記第2反射層との間に充填され、外部刺激に応じて厚さまたは屈折率が変更されるスマート光学物質である、請求項
10に記載の深度イメージング装置。
【請求項12】
前記光学距離調節メカニズムは、
前記第1反射層を前記第2反射層に対して光軸方向に沿って相対移動させるように構成された間隔調節メカニズムである、請求項
10に記載の深度イメージング装置。
【請求項13】
前記中心波長モニタリング装置は、
前記ソース光の波長が増加するにつれて感度が向上するように構成された第1光センサーと、
前記ソース光の波長が増加するにつれて感度が低下するように構成された第2光センサーと、を含み、
前記第1光センサーと前記第2光センサーとの感度の差に基づいてソース光の中心波長の変化を測定する、請求項
9に記載の深度イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉フィルター、これを備えた広角分光イメージング装置、及びこれを備えた深度イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[分光イメージング技術]
分光イメージング技術は、スペクトル帯域に応じた二次元画像情報を提供する技術を意味する。分光イメージング技術は、PCB検査、偽造紙幣検査、皮膚特性測定、食品検査などの様々な分野に用いられる。
分光イメージング装置は、受光レンズや投光レンズなどの光学系と、受光センサーを有する光受信器(light receiver)と、分光装置と、を含む。
光受信器は、複数の領域に分けられており、被写体からの光を受信して電気信号を発生させる。
分光装置は、光受光器の受光センサーの前方に配置される。分光装置は、モノクロメータ(Monochromator)方式と光学可変フィルター(Optical tunable filter)方式に大別される。光学可変フィルターは、大きく固定型と可変型に分けられる。光学可変フィルターは、特定波長領域の光のみを通過させる役目をする。固定型可変フィルターは、フィルターホイール(Filter wheel)方式と、ファブリ・ペロー(Fabry-perot)干渉フィルターが代表的である。
図1は、光学可変フィルターの一例であるファブリ・ペロー干渉フィルター(Fabry-Perot Interferometer、FPP)を説明するための図である。
図1に示すように、ファブリ・ペロー干渉フィルターは、互いに対向している一対の反射面(R
1、R
2)を備える。入射した光は、反射面R
1、R
2の間で反射される。反射面R
1、R
2の反射率は100%ではないので、透過波長の光が反射面R
1、R
2の間で繰り返し反射される過程で一定比率の光L
tは干渉フィルターを透過し、残りは再び反射される。このような過程で、特定波長(透過波長)の光は補強干渉を起こし、残りの光は消滅干渉によって消える。
ファブリ・ペロー干渉フィルターでは、一対の反射面R
1、R
2間の距離t
opと入射角θに応じて透過波長が決定される。反射面は、金属系の単層で実現するか、或いはλ(透過波長)/4厚さの高屈折率(High Index)と低屈折率(Low Index)の誘電体層(Dielectric Layer)を形成した構造で構成できる。前者は、反射面での吸収成分のため透過率が低下するという欠点がある。これに対し、後者は、高い反射率と狭い半値幅のフィルター構成が可能である。
下記の数式1は、ファブリ・ペロー干渉フィルターの透過波長を決定するための公式である。ここで、nは反射面同士の間に充填された物質の屈折率(Refractive Index)、t
opは反射面間の距離、θは入射角(Angle of Incidence)、mは整数、λは透過波長を意味する。
【数1】
数式1によれば、ファブリ・ペロー干渉フィルターは、入射角に応じて透過波長が変化する。すなわち、mは1であり、一対の反射面間の距離(t
op)がλ
0/2(t
op=λ
0/2)であり、反射面同士の間に空気が満たされた場合(n=1)、ファブリ・ペロー干渉フィルターを垂直に入射する光の透過波長はλ
0となる。そして、入射光の入射角が大きくなると、cosθ値が小さくなるので、透過波長がλ
0に比べて短くなる。例えば、入射角が30度であれば、透過波長は0.866λ
0と短くなる。すなわち、ファブリ・ペロー干渉フィルターに垂直に入射する光は、波長λ
0の成分のみがファブリ・ペロー干渉フィルターを透過し、30度で入射する光は、波長0.866λ
0の成分のみ透過する。
また、数式1を参照して上述したように、入射光がファブリ・ペロー干渉フィルターに常に理想的な入射角で、すなわち垂直に入射するのではないため、入射角による偏差が生じることがある。入射光がファブリ・ペロー干渉フィルターに垂直に入射しない場合には、目標とする中心波長に比べて波長が10?20nm程度短い短波長の光がファブリ・ペロー干渉フィルターを通過し、むしろ目標とする中心波長の光がファブリ・ペロー干渉フィルターによって遮断できる。
入射角は干渉フィルターの位置によって異なる。一般に、ファブリ・ペロー干渉フィルターの中心部に入射する光の入射角は垂直に近く、ファブリ・ペロー干渉フィルターの外郭部に入射する光は斜めに入射するので、外郭部は中心部に比べて短波長の光が通過する。よって、ファブリ・ペロー干渉フィルターの外郭部では、目標とする中心波長の光がむしろ干渉フィルターによって遮断できる。
例えば、光学フィルターとして、中心波長940nm、半値全幅30nmのファブリ・ペロー干渉フィルターを用いたが、ファブリ・ペロー干渉フィルターの外郭部に入射する光の入射角が大きくなって透過波長が20nm短波長側へ移動する場合、外郭部でファブリ・ペロー干渉フィルターの透過波長は925~955nmから905~935nmに変更されるので、波長範囲935~955nmの光は、ファブリ・ペロー干渉フィルターの外郭部の透過波長範囲の上限値である935nmから外れて、ファブリ・ペロー干渉フィルターの外郭部によって遮断される。よって、分光イメージング装置で取得したイメージの外郭部が歪むことがある。
また、入射光がファブリ・ペロー干渉フィルターに垂直に入射しない場合には、クロストークによるヘイズ現象が生じることがあるという問題もある。
図2は、従来のファブリ・ペロー干渉フィルターに入射角の大きい入射光が流入したときの反射面R
1、R
2間における光の進行を説明するための図である。
図2に示すように、入射角が大きい場合には、光が反射面R
1、R
2の間で反射を繰り返し行いながら反射面R
1、R
2と直交する方向に移動する距離が増加する(ゾーン1からゾーン3へと進むにつれて距離が増加する)。この距離は、反射面R
1、R
2の反射率が高く、入射角が大きいほど、長くなる。
より具体的には、入射角5度の入射光は、繰り返し行われる反射によって強度が弱くなるまで横方向に多く移動しないが、入射角25度の光は、かなり遠い距離を移動して、光受信器LR内のアレイセンサーの被写体分割領域に該当するピクセルだけでなく、隣接ピクセルにまで入射する。
表1は、反射面の反射率と入射角による反射面と直交する方向への移動距離を示す。光受信器のアレイセンサーは、通常、数マイクロメートルのピクセルサイズを有する。
【表1】
表1を参照すると、入射角0度(垂直に入射)の場合には、反射率に関係なく、移動距離は0μmであり、入射角30度の場合には、反射率0.9のときに約9.3μmであり、反射率0.95のときに約24.4μmである。反射率が大きくなると、反射回数が増加するので、移動距離が増加する。入射角が大きくなると、一度反射されるまでの移動距離が増加する。
したがって、反射率と入射角が増加するほど移動距離が長くなって隣接領域に影響を多く及ぼし、結局、分光イメージング装置の解像度を低下させることが分かる。
図3は、ヘイズ(曇り度)成分による隣接角度(ピクセル)への漏光を示すグラフである。
図3の横軸は散乱角(Scattering Angle)を示し、縦軸は出力(強度)を示す。
図3によれば、ヘイズ(曇り度)成分が増加するほど隣接角度(ピクセル)への漏光(Angular Crosstalk)が増加することが分かる。
【0003】
まとめると、従来のファブリ・ペローフィルターを使用する従来の分光イメージング装置は、次の問題点があった。
第一に、ファブリ・ペロー干渉フィルターの外郭部に入射する光の入射角が大きいため、目標とする波長帯域の光がファブリ・ペロー干渉フィルターによって遮断され、むしろ目標とする波長帯域の光に比べて波長の短い光がファブリ・ペロー干渉フィルターを通過することができる。
第二に、ファブリ・ペロー干渉フィルターに入射する入射光の入射角が大きい場合には、一対の反射面の間で繰り返し反射される過程で、反射面と直交する方向に反射光が移動する距離が増加する。したがって、入射光が対応するアレイセンサーの被写体分割領域に該当するピクセルだけでなく、隣接ピクセルにまで照射されるクロストーク現象が発生して、ファブリ・ペロー干渉フィルターの外郭部に行くほどヘイズ成分が増加し、解像度が低下する。
[深度イメージング技術]
顔面認識、AR、VR技術などに活用できる深度イメージング技術には、構造光(SL、Structured Light)を使用するカメラ、及び光の飛行時間を測定するTOFカメラが用いられる。
構造光を用いる方式は、数万個程度の点からなる赤外線パターンを被写体に照射した後、被写体による赤外線パターンの歪みを読み取る方式である。この方式は、カメラと被写体との距離が長くなるほど認識率が大きく低下するという欠点がある。
TOF方式には、ナノ秒(nS)間隔で赤外線光を連続して放射し、その光が被写体から反射されて赤外線センサーに到達する時間を測定することにより被写体までの距離を測定する直接(direct)方式と、被写体から反射される光の位相の変化を測定する間接(in-direct)方式がある。
TOFカメラは、被写体を多数の領域に分け、そのそれぞれの領域までの距離を測定して3次元画像を取得する。領域を分ける方法によって、機構的にスキャンする方式、MEMSミラーなどを用いるソリッドステート(Solid State)TOF方式、被写体を一括照射するフラッシュ(Flash)TOF方式に分けられる。
TOF方式のカメラは、受光レンズや投光レンズなどの光学系、受光センサーを備える光受信器(light transmitter)、光源及び駆動装置を備える光送信器(light transmitter)、並びに光学フィルター(optical filter)を含む。
光受信器は、複数の領域に分けられており、それぞれの領域は、光送信器から被写体に向かって照射された後に反射された光、光受信器に向かう外部光、または被写体から反射された外部光を受信して、電気信号を発生させる。外部光は、太陽や人工照明などによる光であり得る。
光送信器は、被写体に向かって光を照射する役割を果たす。光送信器は、例えば、紫外線、可視光線、赤外線領域に属する帯域幅の狭い光をパルス状に照射することができる。
光学フィルターは、光受信器の受光センサーの前方に配置され、光送信器から照射された光以外の外部光が光受信器に入るのを遮断する役割を果たす。光学フィルターは、干渉フィルター(interference filter)、吸収フィルター(absorptive filter)、ダイクロイックフィルター(dichroic filter)などであり得る。光学フィルターは、特定の波長領域のみを通過させるバンドパスフィルターであり得る。
光学フィルターとして干渉フィルターを用いる場合には、深度イメージング装置も上述した従来の分光イメージング装置と同様の問題がある。
すなわち、第一に、バンドパスフィルターの外郭部に入射するソース光の入射角が大きいため、ソース光がバンドパスフィルターによって遮断され、むしろソース光に比べて波長の短い外部光がバンドパスフィルターを通過することができる。
第二に、バンドパスフィルターに入射する入射光の入射角が大きい場合には、一対の反射面の間で繰り返し反射される過程で、反射面と直交する方向に反射光が移動する距離が増加する。したがって、入射光が対応するアレイセンサーの被写体分割領域に該当するピクセルだけでなく、隣接ピクセルにまで照射されるクロストーク現象が発生して、深度イメージング装置の外郭部に行くほどヘイズ成分が増加し、解像度が低下する。
かかる問題点のうちの第1の問題を解決するための方法として、米国公開特許第2019/0162885A1号には、ソース光を送信するように構成された光送信器と、ソース光の反射光を受信するように構成された光受信器と、受信されたソース光が光検出器以前にバンドパスフィルターで受信されるように光受信器の光検出器の前に配置された赤外線または近赤外線バンドパスフィルターと、を含む装置であって、バンドパスフィルターは、第1波長範囲内で光の伝達が可能な第1領域と、第2波長範囲内で光の伝達が可能な第2領域と、を含む複数の領域を有する装置が開示されている。
より具体的には、入射光が主に垂直に近く入射する中心部である第1領域には、帯域幅(band width)5nmのフィルターを使用し、入射光が斜めに入射する場合が相対的に多い外郭部である第2領域には、帯域幅30nmのフィルターを用いて、少なくとも反射光が垂直に近く入射する中心部では外部光が遮断されるようにして感度を高める。
ところが、このような方法は、光源自体の製造偏差、光源周辺の温度、光源の出力などによって発生する偏差に対しては対応することができないので、中心部でさえバンドパスフィルターの帯域幅を十分に減らすことができないという問題がある。
また、外郭部での信号対雑音比を改善することができないという問題がある。
また、クロストーク現象も改善することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国公開特許第2019/0162885号公報
【文献】韓国公開特許第10-2012-0089312号公報
【文献】日本国特開2016-050803公報
【文献】日本国特開2016-011932公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した問題点を改善するためのもので、その目的は、外郭部での感度が向上し、クロストーク現象が改善された広角分光イメージング装置、深度イメージング装置、及びそのための干渉フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、光が入射する第1表面、及びその反対側の第2表面を有する第1反射層と、前記第2表面と距離を置いて対向する第3表面、及びその反対側であり且つ光が出射する第4表面を有する第2反射層と、を備え、前記第1反射層の第1表面と前記第2反射層の第4表面との間の、光軸と並んだ仮想経路上の全ての媒質それぞれの前記経路上の厚さと屈折率とを乗じた値同士の和が、前記光軸から離れるほど大きくなるように構成された、干渉フィルターを提供する。
また、本発明は、前記干渉フィルターの前記第1反射層の前記第2表面と前記第2反射層の前記第3表面との間隔が、前記光軸から離れるほど広くなるように、前記第1反射層と前記第2反射層のうちの少なくとも一つが曲がっている、干渉フィルターを提供する。
また、本発明は、前記第1反射層と前記第2反射層とのうち、曲がっている反射層の曲率が、前記光軸から離れるほど小さくなる、干渉フィルターを提供する。
また、本発明は、前記干渉フィルターの前記第1反射層と前記第2反射層との間には、前記光軸から離れるほど厚さが厚くなり、前記第1反射層と前記第2反射層との間の他の媒質に比べて屈折率の大きい光学物質が充填される、干渉フィルターを提供する。
また、本発明は、前記第1反射層と前記第2反射層のうちの少なくとも一つが複数の誘電体層を含み、前記複数の誘電体層のうちの少なくとも一つは、前記光軸から離れるほど厚さが厚くなる、干渉フィルターを提供する。
また、本発明は、前記第1反射層の第1表面と前記第2反射層の第4表面との間の、光軸と並んだ経路上の全ての媒質それぞれの経路上の厚さと屈折率とを乗じた値同士の和が、下記[数式2]に従って、前記光軸から離れるほどCOSθ(x)値に反比例して大きくなる、干渉フィルターを提供する。
【数2】
(t
k(x)とn
k(x)は、光軸からの距離がxである光軸と並んだ経路上の媒質それぞれの経路上の厚さ(それぞれの媒質を通る前記経路の長さ)と屈折率を示し、θ(x)は、光軸からの距離(x)による入射角(Angle of Incidence)であり、mは整数、λは干渉フィルターの透過波長をそれぞれ意味する。)
また、本発明は、被写体からの光を受信するように構成された光受信器と、前記第1反射層と前記第2反射層との間の光軸方向と並んだ光学距離を調節するように構成された光学距離調節メカニズムと、前記光受信器の前段に配置される干渉フィルターと、を含む広角分光イメージング装置であって、前記干渉フィルターは上述した干渉フィルターである、広角分光イメージング装置を提供する。
また、本発明は、前記光学距離調節メカニズムが、前記干渉フィルターの前記第1反射層と前記第2反射層との間に充填され、外部刺激に応じて厚さまたは屈折率が変更されるスマート光学物質である、広角分光イメージング装置を提供する。
また、本発明は、前記光学距離調節メカニズムが、前記第1反射層を前記第2反射層に対して光軸方向に沿って相対移動させるように構成された間隔調節メカニズムである、広角分光イメージング装置を提供する。
また、本発明は、ソース光を伝送するように構成された光送信器と、前記ソース光の反射光を受信するように構成された光受信器と、前記光受信器の前段に配置される干渉フィルターと、を含む深度イメージング装置であって、前記干渉フィルターは上述した干渉フィルターである、深度イメージング装置を提供する。
また、本発明は、前記ソース光の中心波長の変化を測定する中心波長モニタリング装置と、前記第1反射層と前記第2反射層との間の、光軸方向と並んだ光学距離を調節するように構成された光学距離調節メカニズムと、前記中心波長モニタリング装置から測定された前記ソース光の中心波長の変化に対応して前記光学距離調節メカニズムを制御する制御器と、をさらに含む、深度イメージング装置を提供する。
また、本発明は、前記光学距離調節メカニズムが、前記干渉フィルターの前記第1反射層と前記第2反射層との間に充填され、外部刺激に応じて厚さまたは屈折率が変更されるスマート光学物質である、深度イメージング装置を提供する。
また、本発明は、光学距離調節メカニズムが、前記第1反射層を前記第2反射層に対して光軸方向に沿って相対移動させるように構成された間隔調節メカニズムである、深度イメージング装置を提供する。
【0007】
また、本発明は、前記中心波長モニタリング装置が、前記ソース光の波長が増加するにつれて感度が向上するように構成された第1光センサーと、前記ソース光の波長が増加するにつれて感度が低下するように構成された第2光センサーと、を含み、前記第1光センサーと第2光センサーとの感度の差に基づいてソース光の中心波長の変化を測定する、深度イメージング装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明による干渉フィルターは、中心部だけでなく、入射角の大きい外郭部においても、目標とする波長帯域の光を透過させ、他の帯域の光を遮断することができる。したがって、本発明による干渉フィルターを用いる深度イメージング装置と広角分光イメージング装置は、外郭部での感度が向上し、イメージが歪まない。
また、本発明の一部の実施形態による干渉フィルターは、干渉フィルターの外郭部における反射層間の距離が長くなるので、入射角の大きい光によるクロストーク現象を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】光学可変フィルターの一例であるファブリ・ペロー干渉フィルター(Fabry-Perot Interferometer、FPP)を説明するための図である。
【
図2】従来のファブリ・ペロー干渉フィルターに入射角の大きい入射光が流入したときの反射面間における光の進行を説明するための図である。
【
図3】ヘイズ(曇り度)成分による隣接角度(ピクセル)への漏光を示すグラフである。
【
図4】本発明の一実施形態による広角分光イメージング装置の概略図である。
【
図5】
図4に示された干渉フィルター及び光受信器の概略図である。
【
図6】
図5に示された干渉フィルターの一部を示す図である。
【
図7】
図7の(a)は反射層間の間隔が一定である従来の干渉フィルターを通過した光のスペクトルを示し、(b)は
図5及び
図6に示された干渉フィルターを通過した光のスペクトルを示す。
【
図8】
図5に示された干渉フィルターの作用を説明するための図である。
【
図9】干渉フィルターの別の例及び光受信器の一部を示す図である。
【
図10】干渉フィルターの別の例を示す概略図である。
【
図11】干渉フィルターの別の例を示す概略図である。
【
図12】干渉フィルターの別の例を示す概略図である。
【
図13】本発明の一実施形態による深度イメージング装置の概略図である。
【
図14】デュアルセンサーを用いた中心波長測定器の原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。ところが、本発明は、以下に開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態で実現される。但し、本実施形態は、本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。図面上の同一符号は同一要素を指す。
[広角分光イメージング装置]
図4は、本発明の一実施形態による広角分光イメージング装置の概略図である。
図4に示すように、本発明の一実施形態による広角分光イメージング装置100は、受光レンズや投光レンズなどの光学系10と、光受光器20と、干渉フィルター40と、制御器50と、を含む。
本発明の一実施形態による広角分光イメージング装置100は、干渉フィルター40の通過帯域を調節することにより、目標とする特定波長帯域の光によるイメージを得ることができる。例えば、被写体8から反射された光6のうち、赤色光のみのイメージや緑色光のみのイメージなどを得ることができる。
光受信器20は、太陽や室内灯などの光源から照射されて被写体8から反射された後、干渉フィルター40を通過した光6を受信する役割を果たす。光受信器20は、複数の領域に分けられており、それぞれの領域は、被写体8からの光6のうち、干渉フィルター40を透過した光を受信して、電気信号を発生させる。
干渉フィルター40は、光受信器20に向かう光のうち、特定波長帯域の光のみを通過させる役割を果たす。干渉フィルター40は、光学系10と受光器20の受光センサーアレイとの間に配置される。
図5は、
図4に示された干渉フィルターの一例及び光受信器の概略図であり、
図6は、
図5に示された干渉フィルターの一部を示す図である。
本発明の干渉フィルター40は、入射光が干渉フィルター40の全ての位置に理想的な入射角で、すなわち垂直に入射しないために生じる位置別偏差を減らすための構造を持つ。
図5に示すように、干渉フィルター40に入射する光Lは、光軸OAからの距離xが離れるほど入射角θ(x)が大きくなる。レンズ10としてモバイル用イメージングレンズを用いる場合、干渉フィルター40に入射する光は、0~30°程度の入射角θ(x)を有する。すなわち、干渉フィルター40の中心部(光軸OA付近)に入射する光の入射角θ(x)は0°に近く、光軸OAから遠い最外郭部に入射する光の入射角θ(x)は30°に近くてもよい。
本発明は、入射角θ(x)による偏差を減らすために、干渉フィルター40を通る入射光の光学的経路が入射光の入射角θ(x)に関係なく一定であるように構成される。このために、干渉フィルター40を構成する媒質の厚さ及び屈折率が調節される。
図5に示すように、干渉フィルター40は、第1光学部材41と第2光学部材42とを備える。第1光学部材41は、ガラス基板43と、ガラス基板43に形成された第1反射層44と、を含む。第2光学部材42は、ガラス基板45と、ガラス基板43に形成された第2反射層46と、を含む。第1光学部材41と第2光学部材42は円板状または楕円板状であってもよい。
干渉フィルター40の第1反射層44と第2反射層46は、距離t
G(x)を置いて対向する。干渉フィルター40に入射した光は、第1反射層44と第2反射層46によって反射され、特定波長の光は、ファブリ・ペロー干渉原理に従って干渉フィルター40を透過し、残りの光は遮断される。第1反射層44と第2反射層46との間のギャップGは、一般に空気で満たされるが、光が通過しうる他の媒質から満たされてもよい。
図6に示すように、第1反射層44は、光が入射する第1表面441と、その反対側である第2表面442と、を備える。そして、第2反射層46は、第2表面442と距離をおいて対向する第3表面461と、その反対側であり且つ光が出射する第4表面462と、を備える。第1反射層44は複数のサブ層44-1~44-hを含み、第2反射層46も複数のサブ層46-1~46-jを含むことができる。サブ層は誘電体層であってもよい。
本発明において、干渉フィルター40は、第1反射層44の第1表面441と第2反射層46の第4表面462との間の、光軸OAと並んだ仮想経路P(x)上のすべての媒質それぞれの仮想経路P(x)上の厚さt
k(x)と屈折率n
k(x)とを乗じた値同士の和が、光軸OAからの距離xが長くなるほど大きくなるように構成される。光軸OAは、干渉フィルター40の前段に配置される光学系10の光軸を意味する。
ここで、媒質は、第1反射層44を構成する媒質と、第1反射層44と第2反射層46との間のギャップGを埋める媒質と、第2反射層46を構成する媒質とを全て含む。第1反射層44が複数のサブ層を含む場合には、それぞれのサブ層を構成する媒質を含む。第2反射層46が複数のサブ層を含む場合には、それぞれのサブ層を構成する媒質を含む。また、第1反射層44と第2反射層46との間のギャップGを複数の媒質で埋める場合には、これらの媒質を全て含む。
より詳細には、干渉フィルター40は、第1反射層44の第1表面441と第2反射層46の第4表面462との間の、光軸OAと並んだ経路P(x)上の全ての媒質それぞれの経路上の厚さと屈折率とを乗じた値同士の和が、下記数式2に従って光軸OAから離れるほどCOSθ(x)値に反比例して大きくなるように構成される。
【数2】
t
k(x)とn
k(x)は、光軸OAからの距離がxである、光軸OAと並んだ経路P(x)上の媒質それぞれの経路P(x)上の厚さ(それぞれの媒質を通る経路P(x)の長さ)と屈折率を示し、θ(x)は、光軸OAからの距離xによる入射光の入射角(Angle of Incidence)であり、mは整数、λは干渉フィルターの透過波長をそれぞれ意味する。θ(x)は光軸からの距離(x)が離れるほど大きくなる。)
もちろん、数式2の左辺は、下記数式3のように第1反射層44に関する項(右辺の第1項)と、第1反射層44と第2反射層46との間のギャップGに関する項(右辺の第2項)、第2反射層46に関する項(右辺の第3項)に分けて表示することもできる。
【数3】
【0011】
(t
RAa(x)とn
RAa(x)は、第1反射層44を構成するサブ層それぞれの経路P(x)上の厚さと屈折率を示す。t
Gb(x)とn
Gb(x)は、第1反射層44と第2反射層46との間のギャップを埋める媒質それぞれの経路P(x)上の厚さと屈折率を示す。そして、t
RBc(x)とn
RBc(x)は、第2反射層46を構成するサブ層それぞれの経路P(x)上の厚さと屈折率を示す。)
数式2から分かるように、左辺の値が光軸OAからの距離xに関係なく一定であれば、入射角θ(x)が大きくなるにつれて干渉フィルター40の透過波長λが短波長に移動する。
図5に示すように、入射角θ(x)は、光軸OAからの距離xが長くなるほど大きくなるので、左辺の値が一定に保たれると、光軸OAから離れるほど短波長の光が干渉フィルター40を透過する。したがって、広角分光イメージング装置100から得たイメージの外郭部と中心部とが互いに異なる色で表示される。イメージの中心部は選択した色で表示されるが、イメージの輪郭部は異なる色で表示される。
このような現象を防止するために、本発明の干渉フィルター40は、光軸OAからの距離xに関係なく、透過波長λを一定に保つために光軸OAからの距離xによる入射角θ(x)の変化を補償するように構成される。すなわち、干渉フィルター40は、光軸OAからの距離xによる入射角θ(x)の変化に伴う透過波長λの短波長として移動を相殺することができるように、光軸OAからの距離(x)による媒質それぞれの厚さt
k(x)と屈折率n
k(x)との積の和が大きくなるように構成される。
例えば、
図5及び
図6に例示された干渉フィルター40では、第1反射層44と第2反射層46の厚さと屈折率、及び第1反射層44と第2反射層46との間のギャップGを埋める媒質の屈折率は、光軸OAからの距離xとは無関係に一定に保ちながら、第1反射層44と第2反射層46との間隔t
G(x))のみを調節する方式で、光軸OAからの距離xによる入射角θ(x)の変化を補償する。
図5及び
図6に例示された干渉フィルター40は、光軸OAから離れるほど、第1反射層44と第2反射層46との間隔t
G(x)が広くなるように、第1反射層44が曲がっている。このとき、第1反射層44の曲率は、光軸OAから離れるほど小さくなる。
図5及び
図6の干渉フィルター40のt
RAa(x)とn
RAa(x)は、光軸OAからの距離xに関係なく一定であり、t
RBc(x)とn
RBc(x)も一定であるので、第1反射層44と第2反射層46との間隔t
G(x)のみを調節する方式で、光軸OAからの距離xによる入射角θ(x))の変化を補償する。
図7の(a)は、反射層間の間隔が一定である従来の干渉フィルターを通過した光のスペクトルを示し、(b)は、
図5及び
図6に示された干渉フィルターを通過した光のスペクトルを示す。
図7の(a)から分かるように、反射層間の間隔が固定されると、入射角に応じて通過帯域の中心波長が変化するため、目標とする中心波長(
図7では850nm)の光だけでなく、様々な中心波長の光が干渉フィルターを透過する。すなわち、入射角0度の干渉フィルター40の中心部には850nmの光が透過するが、入射角の大きい干渉フィルター40の外郭部は850nmよりも波長の短い光が透過する。
図7の(b)から分かるように、数式2によって、第1反射層44と第2反射層46との間隔t
G(x)が光軸OAから離れるほど広くなるように調節される場合には、入射角θ(x)に関係なく(光軸OAからの距離xに関係なく)、目標とする中心波長(850nm)の光のみが通過する。
また、
図8に示すように、本実施形態の干渉フィルター40は、クロストーク現象を低減する役割を果たす。
数式2から分かるように、干渉フィルター40を透過する光の波長は、第1反射層44と第2反射層46との間隔t
G1(x)に応じて決定される。ところが、
図8に示すように、外郭部に進むほど、間隔t
G1(x)が広くなるので、特定の角度で入射した光が第1反射層44と第2反射層46との間で反射挙動を繰り返しながら、第2反射層46と直交する方向に移動すると、反射光の第1反射層44と第2反射層46との間の光移動経路が益々長くなる。結局、第1反射層44と第2反射層46との間の距離は、もはや反射光に対して数式2を満たさなくなり、反射光は、もはや干渉フィルター40を透過して光受信器20の受光センサーアレイの隣接領域のピクセルに入射しない。
結局、入射光が対応するターゲット領域の当該ピクセルだけでなく、隣接領域のピクセルにまで入射して影響を与えるクロストーク現象が改善される。すなわち、
図2の従来の干渉フィルターに比べて反射光の移動距離が短くなる。したがって、広角分光イメージング装置100の外郭部におけるヘイズが減少し、解像度が向上する。
さらに、広角分光イメージング装置100は、第1反射層44と前記第2反射層46との間の光軸OAと並んだ経路の光学距離(optical distance)を調節するように構成された光学距離調節メカニズムを含む。
光学距離調節メカニズムは、干渉フィルター40の透過波長を調節する役割を果たす。光学距離は、媒質の屈折率を考慮した距離である。すなわち、媒質の屈折率と距離とを乗じた値である。光学距離調節メカニズムは、第1反射層44と第2反射層46との間の距離、または第1反射層44と第2反射層46との間を埋める媒質の屈折率を変化させて光学距離を調節することができる。光学距離調節メカニズムは、干渉フィルター40の透過波長を調節するためのものなので、第1反射層44と第2反射層46との間の距離を光軸OAとの距離xに関係なく一度に調節する。
図5に示すように、本実施形態において、光学距離調節メカニズムは、第1反射層44を第2反射層46に対して光軸OA方向に沿って相対移動させて第1反射層44と第2反射層46との幾何学的距離を調節するように構成された間隔調節メカニズム49であり得る。
間隔調節メカニズム49は、例えば、アクチュエータとばね部材であってもよい。アクチュエータは、第1光学部材41と第2光学部材42とが互いに近づく方向、または互いに遠ざかる方向に第1光学部材41と第2光学部材42のうちの少なくとも一方を押したり引いたりするように設置できる。ばね部材は、第1光学部材41と第2光学部材42にアクチュエータと反対の方向に弾性力を加えるように設置され、第1反射層44と第2反射層46との間隔を維持する。
また、間隔調節メカニズム49は、電磁力を利用する装置であってもよい。例えば、第1光学部材41と第2光学部材42にそれぞれ電極層を形成し、互いに異なる極性を帯びるようにして互いに近づくようにし、互いに異なる極性を帯びるようにして互いに遠ざかるようにすることができる。
制御器50は、目標とする特定波長帯域に対応して干渉フィルター40の一対の反射層44、46間の間隔を調節する制御信号を生成して間隔調節メカニズム49に伝達する役割を果たす。
図9は、干渉フィルターの別の例及び光受信器の一部を示す図である。
図9に示すように、光学距離調節メカニズムとしては、第1反射層244と第2反射層246との間を埋めるスマート光学物質(SOM、Smart Optical Material)247と、スマート光学物質247に外部刺激を加える手段(図示せず)を用いることもできる。外部刺激を加える手段としては、光学部材に形成された透明電極を用いることができる。スマート光学物質247は、外部刺激に応じて厚さまたは屈折率が変更される物質である。制御器50が、スマート光学物質247に加えられる外部刺激を調節することにより、第1反射層244と第2反射層246との幾何学的間隔または屈折率を変更することができる。また、幾何学的間隔と屈折率を同時に変更することもできる。間隔が広くなったり屈折率が大きくなったりすると、第1反射層244と第2反射層246との間の光学距離が増加し、干渉フィルター240の透過波長が長くなる。
図10~
図12は、
図4に示された干渉フィルターの別の例の概略図である。
図10に示された干渉フィルター340は、ガラス基板342の上面に第2反射層346を形成し、第2反射層346上に光学物質層347を形成した後、光学物質層347上に第1反射層344を形成する方法で製造することができる。
ここで、光学物質層347は、外郭部に進むほど厚さが厚くなるように形成する。よって、外郭部に行くほど、光学物質層347上に形成された第1反射層344と第2反射層346との間隔t
g(x)も広くなる。第1反射層344及び第2反射層346を構成する残りの媒質の厚さ及び屈折率は、光軸OAからの距離xによって変わらない。
したがって、第1反射層344の第1表面3441と第2反射層346の第4表面3462との間の、光軸OAと並んだ仮想経路P(x)上のすべての媒質それぞれの仮想経路P(x)上の厚さと屈折率とを乗じた値同士の和が、光軸OAからの距離xが長くなるほど大きくなる。
図11に示されている干渉フィルター440は、第1反射層444と第2反射層446との間には、干渉フィルター440の厚さ方向を基準に一部に空気よりも屈折率が大きい光学物質447が埋められる。第1反射層444と第2反射層446との間の残りの空間は空気で満たされる。第1反射層444側は光学物質447で充填され、第2反射層446側は空気(または他の光学物質)で充填される。
図11に示すように、逆に、第2反射層446側が光学物質447で充填されてもよい。そして、この光学物質447は、光軸OAから離れるほど厚さが厚くなる。
光軸OAから離れるほど厚くなる光学物質447の屈折率n
G1値が空気の屈折率に比べて大きいので、光軸OAから離れるほど光学物質447の厚さと屈折率の積と、空気層の厚さと屈折率の積との和t
G1(x)×n
G1+t
G2(x)×1が大きくなる。第1反射層444及び第2反射層446を構成する残りの媒質の厚さ及び屈折率は、光軸OAからの距離によって変わらない。
結局、第1反射層444の第1表面4441と第2反射層446の第4表面4462との間の、光軸OAと並んだ仮想経路P(x)上の全ての媒質それぞれの仮想経路P(x)上の厚さと屈折率とを乗じた値同士の和が、光軸OAからの距離xが長くなるほど大きくなる。
図12に示されている干渉フィルター540は、第2反射層546を構成する複数の誘電体層546a?546dのうちの少なくとも1つ546cが光軸OAから離れるほど厚さt
RB3(x)が厚くなるように構成されている。
第2反射層546を構成する残りの誘電体層546a、546b、546dの厚さt
RB1、t
RB2、t
RB4と屈折率、及び第1反射層544を構成する残りの誘電体層544a、544b、544c、544dの厚さと屈折率は、光軸OAからの距離xによって変わらないので、結局、第1反射層544の第1表面5441と第2反射層546の第4表面5462との間の、光軸OAと並んだ仮想経路P(x)上の全ての媒質それぞれの仮想経路相P(x)の厚さと屈折率とを乗じた値同士の和は、光軸OAからの距離xが長くなるほど大きくなる。
[深度イメージング装置]
図13は、本発明の一実施形態による深度イメージング装置の概略図である。
図13に示すように、本発明の一実施形態による深度イメージング装置200は、光送信器110と、光受信器120と、干渉フィルター40と、を含む。
光送信器110は、被写体8に向かってソース光1を照射する役割を果たす。光送信器110は、例えば、紫外線、可視光線、赤外線領域に属する帯域幅が狭い光をパルス状に照射することができる。光送信器110としては、例えば、垂直共振型表面発光レーザ(VCSEL、Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を用いることができる。
TOFカメラ用光送信器110から照射されるソース光としては、中心波長850、940、1064nmの光などを用いることができる。車両用LIDAR用光送信器110から照射されるソース光としては、中心波長905、1550nmの光などを用いることができる。パルス状のソース光のパルス幅は1?5nS程度であり得る。
光受信器120は、ソース光1の反射光2を受信する役割を果たす。光受信器120は複数の領域に分けられており、それぞれの領域は、光送信器110から被写体に向かって照射された後に反射された光2、光送信器110に向かう外部光4、または被写体から反射された外部光6を受信して、電気信号を発生させる。
干渉フィルター40は、光受信器120に向かう光のうち、外部光4、6を最大限遮断して、光受信器120の信号対雑音比(SNR)を向上させる役割を果たす。干渉フィルター140は、光受光器120の受光センサーアレイの前段に配置される。干渉フィルター40としては、上述した干渉フィルターも全て用いることができる。
[広角分光イメージング装置]部分で既に説明したように、干渉フィルター40は、入射光が干渉フィルター40に理想的な入射角で、すなわち垂直に常に入射するのではないために生じる偏差及びクロストークを減らす役割を果たす。
また、本実施形態による深度イメージング装置200は、
図13に示すように、中心波長モニタリング装置130及び制御器150をさらに含むことができる。
このような構成をさらに含むことにより、光送信器110から伝送されるソース光の波長変化に連動して、干渉フィルター40の通過帯域を調節することにより、光受信器120の信号対雑音比を向上させることができる。
中心波長モニタリング装置130は、ソース光1の中心波長の変化を測定する役割を果たす。中心波長モニタリング装置130としては、デュアルセンサーを用いた中心波長測定器を使用することができる。
デュアルセンサーを用いた中心波長測定器は、ソース光1の波長が増加するにつれて感度が向上するように構成された第1光センサーと、ソース光の波長が増加するにつれて感度が低下するように構成された第2光センサーと、を含む。
デュアルセンサーを用いた中心波長測定器は、第1光センサーと第2光センサーの感度の差に基づいてソース光の中心波長の変化を測定する。
第1光センサーは、
図14に示すように、ソース光の波長が増加するにつれて感度が増加するように構成される。第1光センサーは、第1受光素子と第1光学フィルターと、を含む。第1光学フィルターは、入射光の波長が増加するにつれて透過率が増加するように構成されている。第1光センサーの感度グラフの傾きkと切片lは、第1受光素子と第1光学フィルターを適宜選択して変更することができる。
第2光センサーは、
図14に示すように、ソース光の波長が増加するにつれて感度が低下するように構成される。第2光センサーは、第2受光素子と第2光学フィルターと、を含む。第2光学フィルターは、入射光の波長が増加するにつれて透過率が減少するように構成されている。第2光センサーの感度グラフの傾きmと切片nは、第2受光素子と第2光学フィルターとを適宜選択して変更することができる。
一般に、受光素子は、入射光の波長が増加するにつれて透過率が減少または増加するので、第1光センサーと第2光センサーのうちのいずれかは光学フィルターなしに受光素子のみで構成されてもよい。受光素子の透過率が入射光の波長の増加に伴って増加するか減少するかは、入射光の波長範囲に応じて決定される。
デュアルセンサーを用いた中心波長測定器は、第1光センサーと第2光センサーの感度値の差異値を測定して、ソース光の中心波長を測定することができる。例えば、
図14に示すような感度グラフを有する第1光センサーと第2光センサーを用いる場合、第1光センサーと第2光センサーの感度値の差異値が0であるときには、ソース光の中心波長は約535nmとなり、 第1光センサーと第2光センサーの感度値の差異値が0.8であるときには、ソース光の中心波長は500nmとなる。
また、中心波長モニタリング装置130としては、従来の光学分光器(spectrometer)を用いてもよい。光学分光器は、波長または周波数の関数で光の強度を示す装置である。デュアルセンサーを用いた中心波長測定器は、光学分光器に比べてサイズが非常に小さいという利点がある。
本実施形態では、中心波長モニタリング装置130を用いて、ソース光1の中心波長を知ることができるので、光送信器110自体の製造偏差、周囲温度による偏差、光送信器110が消費する電力や光送信器110に流れる電流などの要因による中心波長の変動を考慮して、干渉フィルター40の通過帯域を広く設計する必要がない。
従来は、干渉フィルター40の通過帯域が30nm程度となるように干渉フィルター40を設計したが、本発明では、5nm以下に通過帯域の幅を減らすことができる。干渉フィルター40の通過帯域の幅を減らすと、光受信器120に入射する外部光が減少するため、信号対ノイズ比が向上する。例えば、中心波長940nm、半値全幅0.7nm、パワー75Wのパルス型ソース光を用いる場合、干渉フィルター40の半値全幅が30nmから5nmに減少すると、ソース光の照射面の面積が1m
2であり、太陽光の照明度が100kLuxである場合、信号対ノイズ比が約585%向上する。太陽光の照明度が20kLuxである場合にも同様に向上する。
制御器150は、中心波長モニタリング装置130から測定されたソース光の中心波長の変化に対応して干渉フィルター40の一対の反射層44、46間の光学距離を調節する制御信号を生成する役割を果たす。
より詳細に説明すると、制御器150は、中心波長モニタリング装置130から測定されたソース光の中心波長が長くなると、「広角分光イメージング装置」部分で説明したように、干渉フィルター40の光学距離調節メカニズムに制御信号を送信して、第1反射層44と第2反射層46との間の光学距離が長くなるように調節する。逆に、ソース光の中心波長が短くなると、光学距離が短くなるように調節する。
以上、図面及び実施形態を参照して説明したが、当該技術分野の熟練した当業者は、下記の特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱することなく本発明に多様な修正及び変更を加え得ることを理解することができるだろう。
【符号の説明】
【0012】
100 広角分光イメージング装置
200 深度イメージング装置
20 光受信器
40 干渉フィルター
50 制御器