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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】位置検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
G01D5/20 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023529717
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 JP2022021299
(87)【国際公開番号】W WO2022270198
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2021105912
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】奥村 博文
(72)【発明者】
【氏名】村山 周
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隼斗
(72)【発明者】
【氏名】馬籠 隆博
(72)【発明者】
【氏名】繁田 一央
(72)【発明者】
【氏名】中川 俊一
(72)【発明者】
【氏名】宮地 聖
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-224925(JP,A)
【文献】特表2019-506614(JP,A)
【文献】特開2018-44817(JP,A)
【文献】特開2012-103194(JP,A)
【文献】特開2002-365006(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0156665(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号が供給される発信コイルと、
前記高周波信号の影響により1次渦電流を生ずるターゲットと、
前記1次渦電流の影響により2次電流を発生させる2つの受信コイルを備えたインダクティブ式の位置検知装置において、
前記ターゲットは、前記発信コイルおよび前記受信コイルに対向して配置され、被検知物に連動して変位可能であり、
前記発信コイルは、環状に形成され、
2つの前記受信コイルは、前記発信コイルに囲まれた領域に、互いにずらして配置され、
2つの前記受信コイルに発生した前記2次電流の波形から前記被検知物の位置を検知し、
前記発信コイルおよび前記受信コイルはそれぞれ、第1仮想線に沿って配置され、
前記ターゲットは、前記被検知物に連動して前記第1仮想線に沿って移動可能に配置され、
前記発信コイルは、前記第1仮想線に沿って延設された第1延設部と第2延設部と、前記第1延設部および前記第2延設部の両端において前記第1延設部と前記第2延設部とを接続する接続部と、を備えており、
2つの前記受信コイルは、互いに前記第1仮想線に沿った方向にずらして配置され、
前記第1仮想線は円弧であり、前記被検知物の前記位置が前記被検知物の回転角度であり、
前記ターゲットは、平面視において円弧である前記第1仮想線の中心を回転中心として回動可能な環状に形成され、
前記ターゲットの前記回転中心と前記ターゲットの外形の端部との距離a1および前記ターゲットの前記回転中心と前記ターゲットの内形の端部との距離a2のうち、少なくとも一方が、前記ターゲットの前記外形または前記内形の周方向に沿って周期的に変化し、
前記ターゲットの前記回転中心と前記ターゲットの前記外形の端部とを結ぶ第2の線分において、
前記ターゲットの前記内形の端部と前記外形の端部との中点から、前記ターゲットの前記回転中心までの距離Dが、前記ターゲットの前記外形の周方向に沿って一定であること
を特徴とする位置検知装置。
【請求項2】
高周波信号が供給される発信コイルと、
前記高周波信号の影響により1次渦電流を生ずるターゲットと、
前記1次渦電流の影響により2次電流を発生させる2つの受信コイルを備えたインダクティブ式の位置検知装置において、
前記ターゲットは、前記発信コイルおよび前記受信コイルに対向して配置され、被検知物に連動して変位可能であり、
前記発信コイルは、環状に形成され、
2つの前記受信コイルは、前記発信コイルに囲まれた領域に、互いにずらして配置され、
2つの前記受信コイルに発生した前記2次電流の波形から前記被検知物の位置を検知し、
前記発信コイルおよび前記受信コイルはそれぞれ、第1仮想線に沿って配置され、
前記ターゲットは、前記被検知物に連動して前記第1仮想線に沿って移動可能に配置され、
前記発信コイルは、前記第1仮想線に沿って延設された第1延設部と第2延設部と、前記第1延設部および前記第2延設部の両端において前記第1延設部と前記第2延設部とを接続する接続部と、を備えており、
2つの前記受信コイルは、互いに前記第1仮想線に沿った方向にずらして配置され、
前記第1仮想線は円弧であり、前記被検知物の前記位置が前記被検知物の回転角度であり、
前記ターゲットは、
回転中心から前記ターゲットの外形の端部までの距離a1が、前記外形の周方向に沿って、式(1)に則って変化し、前記外形の端部の座標が座標1で示され、
前記回転中心から前記ターゲットの内形の端部までの距離a2が、前記内形の周方向に沿って、式(2)に則って変化し、前記内形の端部の座標が座標2で示され、
平面視において、前記ターゲットにおける前記外形の端部、前記内形の端部および前記受信コイルが式(3)を満たすこと
を特徴とする位置検知装置。
a1=1/2(R1-r1)・cos(nθ)+1/2(R1+r1) …(1)
座標1=(x=a1・cosθ、y=a1・sinθ)
(式(1)において、θは座標1の仰角であり、R1はa1の最大値、r1はa1の最小値であり、nは前記ターゲットにおける周期回数である。)
a2=1/2(R2-r2)・(-cos(nθ))+1/2(R2+r2) …(2)
座標2=(x=a2・cosθ、y=a2・sinθ)
(式(2)において、θは座標2の仰角であり、R2はa2の最大値、r2はa2の最小値であり、nは前記ターゲットにおける周期回数である。)
B≧R1≧r1≧R2≧r2≧b …(3)
(式(3)において、Bは前記回転中心から前記受信コイルにおける最遠点までの距離であり、bは前記回転中心から前記受信コイルにおける最近点までの距離である。)
【請求項3】
高周波信号が供給される発信コイルと、
前記高周波信号の影響により1次渦電流を生ずるターゲットと、
前記1次渦電流の影響により2次電流を発生させる2つの受信コイルを備えたインダクティブ式の位置検知装置において、
前記ターゲットは、前記発信コイルおよび前記受信コイルに対向して配置され、被検知物に連動して変位可能であり、
前記発信コイルは、環状に形成され、
2つの前記受信コイルは、前記発信コイルに囲まれた領域に、互いにずらして配置され、
2つの前記受信コイルに発生した前記2次電流の波形から前記被検知物の位置を検知し、
前記発信コイルおよび前記受信コイルはそれぞれ、第1仮想線に沿って配置され、
前記ターゲットは、前記被検知物に連動して前記第1仮想線に沿って移動可能に配置され、
前記発信コイルは、前記第1仮想線に沿って延設された第1延設部と第2延設部と、前記第1延設部および前記第2延設部の両端において前記第1延設部と前記第2延設部とを接続する接続部と、を備えており、
2つの前記受信コイルは、互いに前記第1仮想線に沿った方向にずらして配置され、
平面視において前記ターゲットと前記受信コイルとが重なる領域の面積が、前記ターゲットの移動に伴って変化し、
2つの前記受信コイルはそれぞれ、平面視において8字型に巻き回され、略同一形状の2つの環状部が前記第1仮想線に沿った方向に並んでおり、
前記第1仮想線は円弧であり、前記被検知物の前記位置が前記被検知物の回転角度であり、
前記環状部は扇台形の形状を有するよう形成され、前記扇台形の上弧が前記円弧の中心側になるように配置されていること
を特徴とする位置検知装置。
【請求項4】
前記第1仮想線は円弧であり、前記被検知物の前記位置が前記被検知物の回転角度である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の位置検知装置。
【請求項5】
前記ターゲットが、平面視において環状であり、
平面視において、前記ターゲットと前記受信コイルとが重なる領域における、前記ターゲットの外形および前記ターゲットの内形がいずれも、前記受信コイルの内側に位置する、
請求項4に記載の位置検知装置。
【請求項6】
前記ターゲットは、幅が最大となる部分に取付孔を有する、
請求項5に記載の位置検知装置。
【請求項7】
前記ターゲットは、平面視において円弧である前記第1仮想線の中心を回転中心として回動可能な環状に形成され、
前記ターゲットの前記回転中心と前記ターゲットの外形の端部との距離a1および前記ターゲットの前記回転中心と前記ターゲットの内形の端部との距離a2のうち、少なくとも一方が、前記ターゲットの前記外形または前記内形の周方向に沿って周期的に変化する、
請求項4に記載の位置検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検知物の変位を検知する位置検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転する対象物の回転量、回転角度、回転位置のような対象物の位置を検知する装置が種々提供されている。例えば、特許文献1に記載のレゾルバを備えた角度検出装置は、電動モータの回転角度を制御する角度センサとして多く用いられている。電動モータを用いる車両においては、電気の消耗を抑制するため、検出装置を少しでも軽くしたいという要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開WO2020/152836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、レゾルバを備えた角度検出装置は、SN比が悪くなるなど性能劣化につながるため軽量化が困難であり、より精度を良くするためには本体がより大型化する傾向がある。また、磁気で動作するレゾルバは、磁気の原理を使う電動モータの影響を受けやすいため、電動モータの磁石から離して配置するなどの配慮が必要であった。
本発明の目的は、簡単な構成で被検知物の位置を検知できる位置検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上述した課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
高周波信号が供給される発信コイルと、前記高周波信号の影響により1次渦電流を生ずるターゲットと、前記1次渦電流の影響により2次電流を発生させる2つの受信コイルを備えたインダクティブ式の位置検知装置において、前記ターゲットは、前記発信コイルおよび前記受信コイルに対向して配置され、被検知物に連動して変位可能であり、前記発信コイルは、環状に形成され、2つの前記受信コイルは、前記発信コイルに囲まれた領域に、互いにずらして配置され、2つの前記受信コイルに発生した前記2次電流の波形から前記被検知物の位置を検知することを特徴とする位置検知装置。
【0006】
ターゲットの1次渦電流の影響により変化する、2つの前記受信コイルに発生した2次電流の波形から被検知物の位置を検知することにより、簡単な構成で位置検知装置が実現できる。
【0007】
前記発信コイルおよび前記受信コイルはそれぞれ、第1仮想線に沿って配置され、前記ターゲットは、前記被検知物に連動して前記第1仮想線に沿って移動可能に配置され、前記発信コイルは、前記第1仮想線に沿って延設された第1延設部と第2延設部と、前記第1延設部および前記第2延設部の両端において前記第1延設部と前記第2延設部とを接続する接続部と、を備えており、2つの前記受信コイルは、互いに前記第1仮想線に沿った方向にずらして配置されていてもよい。
この場合、平面視において前記ターゲットと前記受信コイルとが重なる領域の面積が、前記ターゲットの移動に伴って変化し、2つの前記受信コイルはそれぞれ、平面視において8字型に巻き回され、略同一形状の2つの環状部が前記第1仮想線に沿った方向に並んでいてもよい。
この構成により、2つの環状部のうちいずれがターゲットと重なる領域が大きいかによって、異なる方向の出力すなわち+と―の出力が得られるため、受信コイルのゲインが大きくなり、位置の検知精度が向上する。
【0008】
また、2つの前記受信コイルは、平面視において、同一形状であり、前記第1仮想線に沿った方向に、前記環状部の前記第1仮想線に沿った方向の長さの半分の距離ずらして配置されていてもよい。
この構成により、2つの受信コイルからの出力をサイン波とコサイン波として出力できるため、これらの合成により被検知物の位置を容易に算出できる。
【0009】
2つの前記受信コイルは、前記第1仮想線に交差する方向にずらして配置されていてもよい。
第1仮想線と直交する方向に受信コイルをずらして配置することにより、基板に形成する受信コイルの層数を抑えて、基板とターゲットとの距離を小さくできるため、検知精度が向上する。
【0010】
前記受信コイルは基板に形成され、前記受信コイルを構成する配線パターンのうち、前記第1仮想線に沿って延設された第1部分は前記基板の一方の面に形成され、前記第1部分を接続する第2部分は前記基板の他方の面に形成され、前記第1部分と前記第2部分とはスルーホールにより電気的に接続されてもよい。
【0011】
前記第1仮想線は直線であり、前記被検知物の前記位置が前記被検知物の移動距離であってもよい。
【0012】
前記第1仮想線は円弧であり、前記被検知物の前記位置が前記被検知物の回転角度であってもよい。この場合、前記環状部は扇台形の形状を有するよう形成され、前記扇台形の上弧が前記円弧の中心側になるように配置されていてもよい。この構成により、例えば、高速で回転するモータの回転角度を高精度で検出することができる。
【0013】
前記ターゲットが、平面視において環状であり、平面視において、前記ターゲットと前記受信コイルとが重なる領域における、前記ターゲットの外形および前記ターゲットの内形がいずれも、前記受信コイルの内側に位置していてもよい。
環状のターゲットの外形および内形と受信コイルとの間に隙間を設けることにより、ターゲットの取り付けにずれが生じた場合に、ターゲットにおける受信コイルと重なる領域の面積の変化を抑えることができる。したがって、ターゲットが所定の位置からずれて取り付けられた場合でも、位置検知装置の検知精度をよくすることができる。
【0014】
前記ターゲットは、幅が最大となる部分に取付孔を有していてもよい。
ターゲットを板状体とする場合、取付孔を設けることで、ターゲットを取り付ける際の位置合わせが容易になる。また、環の幅が最も広い部分に貫通孔を設けることで、ターゲットにおける受信コイルと重なる領域の面積への貫通孔の影響を抑えて、位置検知装置の検知精度をよくすることができる。
【0015】
前記ターゲットは、平面視において円弧である前記第1仮想線の中心を回転中心として回動可能な環状に形成され、前記ターゲットの前記回転中心と前記ターゲットの外形の端部との距離a1および前記ターゲットの前記中心と前記ターゲットの内形の端部との距離a2のうち、少なくとも一方が、前記ターゲットの前記外形または前記内形の周方向に沿って周期的に変化してもよい。
距離a1および距離a2のうちの少なくとも一方が、外形または内形の周方向沿って周期的に変化する形状のターゲットを用いることにより、高速で回転するモータの回転角度を精度よく検出できる。
【0016】
前記ターゲットの前記回転中心と前記ターゲットの前記外形の端部とを結ぶ第2の線分において、前記ターゲットの前記内形の端部と前記外形の端部との中点から、前記ターゲットの前記回転中心までの距離Dが、前記ターゲットの前記外形の周方向沿って一定であってもよい。
この構成により、検知対象である回転体の回転に伴う、ターゲットの内形と外形の形状変化の振幅を同じにすることができる。したがって、ターゲットの取り付けにおけるずれの方向による影響を抑えて、位置検知装置の検知精度を向上させることができる。
【0017】
前記ターゲットは、回転中心から前記ターゲットの外形の端部までの距離a1が、前記外形の周方向に沿って、式(1)に則って変化し、前記外形の端部の座標が座標1で示され、前記回転中心から前記ターゲットの内形の端部までの距離a2が、前記内形の周方向に沿って、式(2)に則って変化し、前記内形の端部の座標が座標2で示され、平面視において、前記ターゲットにおける前記外形の端部、前記内形の端部および前記受信コイルが式(3)を満たしていてもよい。
a1=1/2(R1-r1)・cos(nθ)+1/2(R1+r1) …(1)
座標1=(x=a1・cosθ、y=a1・sinθ)
(式(1)において、θは座標1の仰角であり、R1はa1の最大値、r1はa1の最小値であり、nは前記ターゲットにおける周期回数である。)
a2=1/2(R2-r2)・(-cos(nθ))+1/2(R2+r2) …(2)
座標2=(x=a2・cosθ、y=a2・sinθ)
(式(2)において、θは座標2の仰角であり、R2はa2の最大値、r2はa2の最小値であり、nは前記ターゲットにおける周期回数である。)
B≧R1≧r1≧R2≧r2≧b …(3)
(式(3)において、Bは前記回転中心から前記受信コイルにおける最遠点までの距離であり、bは前記回転中心から前記受信コイルにおける最近点までの距離である。)
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、互いにずらして配置された2つの受信コイルに発生した2次電流の波形を用いて、ターゲットと連動する被検知物の位置を検知することにより、レゾルバを備えた位置検知装置よりも小型軽量でありながら、高精度な検出が可能な位置検知装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】位置検知装置における発信コイル、受信コイルおよびターゲットを説明する模式図
図2】被検知物の回転角度を検知する位置検知装置の構造を模式的に示す斜視図
図3A】発信コイルおよび受信コイルの構成を示す斜視図
図3B】発信コイルおよび受信コイルの構成を示す平面図
図4A】円弧を直線として、発信コイルおよび受信コイルの配置を模式的に示した平面図
図4B】受信コイルの円弧に沿った位置関係を模式的に示した説明図
図5A】回転に伴うターゲットと受信コイル4Aとの重なりの変化を模式的に示す回転角度0度の平面図
図5B】回転に伴うターゲットと受信コイル4Aとの重なりの変化を模式的に示す回転角度22.5度の平面図
図5C】回転に伴うターゲットと受信コイル4Aとの重なりの変化を模式的に示す回転角度45度の平面図
図5D】回転に伴うターゲットと受信コイル4Aとの重なりの変化を模式的に示す回転角度77.5度の平面図
図6A】回転に伴うターゲットと受信コイル4Bとの重なりの変化を模式的に示す回転角度0度の平面図
図6B】回転に伴うターゲットと受信コイル4Bとの重なりの変化を模式的に示す回転角度22.5度の平面図
図6C】回転に伴うターゲットと受信コイル4Bとの重なりの変化を模式的に示す回転角度45度の平面図
図6D】回転に伴うターゲットと受信コイル4Bとの重なりの変化を模式的に示す回転角度77.5度の平面図
図7A】ターゲットの回転角度と受信コイル4Aの出力との関係を示すグラフ
図7B】ターゲットの回転角度と受信コイル4Bの出力との関係を示すグラフ
図8A】第1の実施形態に係るターゲットの平面図
図8B】第1の実施形態に係るターゲットと受信コイルとの平面図
図8C】第1の実施形態に係るターゲットと受信コイルとの平面図
図8D】第1の実施形態に係るターゲットと受信コイルとの平面図
図9A】受信コイルが正しい位置に取り付けられた場合の受信コイルとターゲットとの重なりを示す模式図
図9B】受信コイルがターゲットの内側にずれて取り付けられた場合の受信コイルとターゲットとの重なりを示す模式図
図9C】受信コイルがターゲットの外側にずれて取り付けられた場合の受信コイルとターゲットとの重なりを示す模式図
図10図8Aの受信コイルの出力に対するターゲットの取付位置の影響を示すシミュレーション結果のグラフ
図11A】第2の実施形態に係るターゲットの平面図
図11B】第2の実施形態に係るターゲットと受信コイルとの平面図
図12A】第2の実施形態に係る受信コイルが正しい位置に取り付けられた場合の受信コイルとターゲットとの重なりを示す模式図
図12B】第2の実施形態に係る受信コイルがターゲットの内側にずれて取り付けられた場合の受信コイルとターゲットとの重なりを示す模式図
図12C】第2の実施形態に係る受信コイルがターゲットの外側にずれて取り付けられた場合の受信コイルとターゲットとの重なりを示す模式図
図13図11Aの受信コイルの出力に対するターゲットの取付位置の影響を示すシミュレーション結果のグラフ
図14】第2の実施形態の変形例に係るターゲットの平面図
図15図14の受信コイルの出力に対するターゲットの取付位置の影響を示すシミュレーション結果のグラフ
図16】第3の実施形態に係るターゲットの平面図
図17図16の受信コイルの出力に対するターゲットの取付位置の影響を示すシミュレーション結果のグラフ
図18】第3の実施形態の変形例に係るターゲットの平面図
図19図18の受信コイルの出力に対するターゲットの取付位置の影響を示すシミュレーション結果のグラフ
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施する形態について、以下、図面を参照して説明する。同じ部材については、各図面において同じ部材番号を付して、適宜、説明を省略する。
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態の位置検知装置1における発信コイル2、ターゲット3および受信コイル4A、4Bの関係を説明する模式図である。同図に示すように、位置検知装置1は、環状に形成された発信コイル2と、2つの受信コイル4A、4Bが設けられた基板5に対向して、ターゲット3が配置されている。
【0021】
位置検知装置1は、2つの受信コイル4A、4Bに発生した2次電流の波形に基づいて、ターゲット3に連動して変位する被検知物の位置や動きを検知するインダクティブ式のセンサである。
発信コイル2は、数MHzの交流電流のような高周波信号(E1)が供給されることにより、対向するターゲット3に1次渦電流(E2)を発生させる。
【0022】
ターゲット3は、アルミや銅またはその合金などからなる非磁性材料で構成されており、発信コイル2に供給された高周波信号の影響により1次渦電流(E2)を生ずる。2つの受信コイル4A、4Bは、ターゲット3に生じた1次渦電流の影響により、1次渦電流の大きさに対応する2次電流(E3)を発生させる。2つの受信コイル4A、4Bに発生する2次電流は、ターゲット3の位置に応じて変化する。
2つの受信コイル4A、4Bは、発信コイル2に囲まれた領域に、互いにずらして配置されているため、ターゲット3の変位に伴って発生する2次電流も異なる変化を示す。
【0023】
図2は、被検知物の回転角度を検知する位置検知装置1の構造を模式的に示す斜視図である。同図に示すように、発信コイル2および受信コイル4A、4Bはそれぞれ、仮想線(第1仮想線)Lに沿った同心円状の配線パターンとして基板5に形成される。被検知物の位置として回転角度を検知する場合、仮想線Lは円弧であるが、被検知物の位置として移動距離を検出する場合、仮想線Lは直線である。
【0024】
被検知物がモータ(図示せず)である場合、ターゲット3は、モータの回転軸(被検知物)6に連動して回転可能に配置される。仮想線Lの中心Oは回転軸6の回転中心と一致し、ターゲット3は、仮想線Lと同心に回転可能に配置されている。位置検知装置1が検出した回転軸6の回転角度は、モータに供給する電流を制御して、高速回転させるため等の目的で用いられる。各実施形態では、仮想線Lの円弧を一部分とする円の中心を仮想線Lの中心Oという。また、ターゲット3の回転中心OTと仮想線Lの中心Oとは一致する。
【0025】
図3Aおよび図3Bは、発信コイル2および受信コイル4A、4Bの構成を示す、斜視図および平面図である。図3Bでは、発信コイル2を実線で示し、受信コイル4A、4Bを線分および間隔の長さが異なる破線で示している。
【0026】
発信コイル2は、仮想線Lに沿って延設された第1延設部2aと第2延設部2bを備えており、第1延設部2aおよび第2延設部2bの両端において、第1延設部2aと第2延設部2bとを接続する接続部2c、2dを備えている。
【0027】
受信コイル4Aおよび4Bは、扇台形の配線パターンとして、XY平面上に、平面視において同一形状(同寸法)に形成されており、Z軸方向からの平面視において互いに仮想線Lに沿った方向にずらして配置されている。
【0028】
受信コイル4Aおよび4Bは、それぞれ平面視において8字型に巻き回されている。受信コイル4Aは、同一形状の2つの環状部41A、42Aが仮想線Lに沿った方向に並んでいる。受信コイル4Bは、同一形状の2つの環状部41B、42Bが仮想線Lに沿った方向に並んでいる。ターゲット3の回転に伴って、受信コイル4A、4BにおけるZ軸方向から見てターゲット3により覆われる領域が変化する。これにより、受信コイル4A、4Bに2次電流が発生する。また、受信コイル4Aおよび4Bは、8(∞)字型にすることで、以下のような現象が起こる。受信コイル4Aの場合を例にとると、ターゲット3が主に環状部41Aに重なる領域を通過するときと、主に環状部42Aに重なる領域を通過するときと、では受信コイル4Aには反対向きの電流が流れる。このことは受信コイル4Bにおいても同じである。よって、受信コイル4Aおよび4Bを8(∞)字型にすることで、ターゲット3の通過に伴い、受信コイル4Aおよび4Bそれぞれに反対向きの電流が流れるため、+の出力と-の出力が得られゲインを大きくすることができる。
【0029】
環状部41A、42A、41B、42Bは平面視において、扇台形に形成され、扇台形の上弧が円弧状の仮想線Lの中心O側となるように配置されている。扇台形の上弧部分および下弧部分に相当する部分の配線パターンと、扇台形の母線部分に相当する部分の配線パターンとは、基板5(図2参照)において、スルーホール5cにより電気的に接続されている。複数の配線パターンが交差しない場合はスルーホール5cを介さずに直接配線してもよい。
【0030】
図4Aは、仮想線Lを直線として、発信コイル2および受信コイル4A、4Bの配置を模式的に示した平面図であり、図4Bは、受信コイル4Aと4Bとの仮想線Lに沿った位置関係を説明する説明図である。なお、発信コイル2および受信コイル4A、4Bの位置関係を示すために、図4Aは円弧状の仮想線Lを直線で示している。図4Bは、重ねて配置された受信コイル4A、4Bの仮想線L方向における位置関係が分かるように、受信コイル4Aと受信コイル4Bとを紙面の上下方向にずらして示している。また、図4Aおよび図4Bは、図3Aおよび図3Bにおける受信コイル4Aと4Bを、ターゲット3が配置された側とは反対側(紙面奥側)から見た状態を模式的に示している。図4Aの紙面に対向した場合の上側(受信コイル4Aおよび4Bの配線が引き出されている側)が扇台形の上弧である第1延設部2a側、下側が扇台形の下弧である第2延設部2b側である(図3B参照)。
【0031】
図4Aおよび図4Bに示すように、受信コイル4A、4Bはそれぞれ、弧部(第1部分)4AL、4BLおよび接続部(第2部分)4AP、4BPを備えている。仮想線Lに沿う弧部4AL、4BLが、隣り合う受信コイル4Bおよび4Aにおける弧部4BL、4ALと重ならないように、仮想線Lに直交する方向(半径方向)Rにずらして配置されている。また、受信コイル4Aおよび4Bにおける、発信コイル2の第1延設部2aおよび第2延設部2bに沿って伸長する弧部4AL、4BLが、仮想線Lに対して斜めに形成されている。これにより、受信コイル4A、4Bを形成するために必要な層の数を抑えて、基板5(図2参照)に受信コイル4A、4Bを設けるときの積層数を少なくすることができる。また、受信コイル4Aおよび4Bにおける、仮想線Lに沿う弧部4AL、4BLを基板5の同じ層に形成することが可能になる。したがって、ターゲット3と受信コイル4A、4Bとの間の距離を小さくし、ターゲット3から受信コイル4A、4BまでのZ軸(図3A参照)方向の距離を等しくできる。これにより、ターゲット3と受信コイル4A、4Bとの距離が離れることによる受信コイル4A、4Bのゲインが低下することを抑えられるため、位置検知装置1の検知精度が向上する。
【0032】
受信コイル4Aは、基板5に形成されている(図2参照)。受信コイル4Aを構成する配線パターンのうち、弧部4ALは基板5の一方の面5aに形成され、弧部4ALを接続する接続部4APは基板の他方の面5bに形成されている。弧部4ALと接続部4APとは、基板5のスルーホール5cにより電気的に接続されている。受信コイル4Bにおける弧部4BLおよび接続部4BPも、受信コイル4Aにおける弧部4ALおよび接続部4AP同様、基板5のスルーホール5cを介して電気的に接続されている。なお、複数の配線パターンが交差しない場合、受信コイル4Aと接続部4AP、あるいは、受信コイル4Bと接続部4BPを、スルーホール5cを介さすに直接接続してもよい。
【0033】
受信コイル4Aが備える2つの環状部41A、42Aは平面視において、同一形状である。また、受信コイル4Bが備える2つの環状部41B、42Bも平面視において、同一形状である。受信コイル4Aと4Bとは、平面視において、仮想線Lに沿った方向に、環状部41B、42Bの長さHの半分のH/2ずらして配置されている。この構成により、ターゲット3の回転によって、受信コイル4Aと受信コイル4Aに1/4波長ずれた波形を発生させることができる。なお、環状部41A、42Aが平面視において同一形状であるとは、受信用として主に機能する部分の形状が同一であることをいう。例えば、基板5の配線に用いられるスルーホール5cなどのように、受信以外を主な目的として設けられた部分の形状は異なってもよい。
【0034】
図5Aは回転角度0度、図5Bは回転角度22.5度、図5Cは回転角度45度、図5Dは回転角度77.5度における、回転に伴うターゲット3と受信コイル4Aとの重なりの変化を模式的に示す平面図である。
図6Aは回転角度0度、図6Bは回転角度22.5度、図6Cは回転角度45度、図6Dは回転角度77.5度における、回転に伴うターゲット3と受信コイル4Bとの重なりの変化を模式的に示す平面図である。
【0035】
図7Aはターゲット3の回転角度と受信コイル4Aの出力との関係を示すグラフであり、図7Bはターゲット3の回転角度と受信コイル4Bの出力との関係を示すグラフである。これらの図は、例えば、発信コイル2に流した電流(例えば50ミリアンペア程度の交流)に対して、受信コイル4A、4Bに発生する電流(数ミリアンペア程度)の振幅の大きさを示している。ターゲット3と受信コイル4A、4Bとの重なりの変化により生じる電流が流れる方向の変化をプラスとマイナスとで示している。
【0036】
ターゲット3の形状は4回対称(90度対称)であり、受信コイル4Aは、両端がターゲット3の回転角度0度および90度に重なり、平面視したときの扇台形状の中心Oがターゲット3の回転中心OTと重なるように配置されている。このため、ターゲット3の回転角度90度が一周期として測定される。ターゲット3の形状をn回対称とすれば、一周期として測定される回転角度が360/n度となる。例えば、ターゲット3の形状を3回対称とすれば、一周期として測定される回転角度は120度となり、5回対称とすれば、一周期として測定される回転角度は72度となる。
【0037】
受信コイル4Aは、平面視において、同一形状の2つの環状部41A、42Aが仮想線Lに沿った方向に並んだ8字型である。このため、回転角度0度(図5(a))から45度(図5(c))までは、ターゲット3と環状部41Aとが重なる斜線を付した領域S1が、ターゲット3と環状部42Aとが重なる斜線を付した領域S2よりも大きくなり、回転角度45度から90度までは、反対に領域S2が領域S1より大きくなる。環状部41A、42Aは独立したコイルではなく、8(∞)字型に配線された連続したコイルであるため、それぞれの巻方向としては逆向きになる。したがって、受信コイル4Aから出力される2次電流の方向は回転角度が0度から45度までのときと回転角度45度から90度までのときとで反対向きになる。
【0038】
回転角度0では、ターゲット3に生じた1次渦電流による影響は、環状部41Aと42Aとで等しいため、受信コイル4Aには二次電流は生じない。回転角度0から22.5度の間は、ターゲット3に生じた1次渦電流による環状部41Aに対する影響が増大する。環状部41Aに対する1次渦電流の影響は、回転角度22.5度で最大となった後減少し、回転角度77.5度で最小になり、その後、再び増大する。
【0039】
対して、環状部41Aに隣接する環状部42Aへの1次渦電流の影響は、回転角度0から22.5度まで減少し、回転角度22.5度で最少となった後に増大し、77.5度で最大となった後、再び減少する。
【0040】
ターゲット3の1次渦電流が環状部41Aと42Aとの2次電流に及ぼす影響は、回転角度45度と90度(0度)のときに、等しくなる。したがって、図7Aに示すように、45度と90度(0度)のときに受信コイル4Aの出力が0となる。
【0041】
コイルが長方形や円形などの環形状に沿って配線されていた場合、ターゲット3が一定方向に回転している限り、そのコイルに発生する二次電流の方向は一定である。それに対して受信コイル4Aは8(∞)字型に配線されたコイルであるため、受信コイル4Aに発生する二次電流の方向は、隣接する環状部41Aと環状部42Aとのいずれに対する1次渦電流の影響が大きいかによって決まる。このため、回転角度45度から90度と、0度から45度までとでは反対方向の電流が流れる。受信コイル4Aから出力される2次電流の方向は、回転角度45の前後で反対方向になる。したがって、受信コイル4Aから出力差(ゲイン)を大きくできるため、回転角度の検出精度が向上する。
【0042】
受信コイル4Bは、図6Aに示すように、図5Aに示す受信コイル4Aと、環状部41B、42Bの仮想線L方向の長さHの半分(H/2)の距離ずらして配置されている。位置検知装置1は1周期で90度の回転角度を検出するから、受信コイル4Bは、ターゲット3における受信コイル4Aとは22.5度ずれた部分の影響を受けることになる。このため、受信コイル4Bからの出力は、図7A図7Bに示すように受信コイル4Aの出力から1/4周期ずれた出力となる。
【0043】
ターゲット3は、受信コイル4A、4Bと重なる部分の径方向の高さW(図5A参照)の変化が、ターゲット3の回転に伴って余弦曲線を描く形状とされている。これにより、受信コイル4Aから出力される2次電流の波形がコサインカーブとなり、受信コイル4Bから出力される2次電流の波形がサインカーブとなる。したがって、受信コイル4A、4Bからの2次電流の波形に基づいて、被検知物の回転角度を容易に求めることができる。なお、ターゲット3は、高さW(図5A参照)の変化が、ターゲット3の回転に伴って正弦曲線を描く形状とされていてもよい。この場合、受信コイル4Aから出力される2次電流の波形がサインカーブとなり、受信コイル4Bから出力される2次電流の波形がコサインカーブとなる。
【0044】
図8Aは本実施形態に係るターゲット3の形状を示す平面図である。図8Bは平面視における、ターゲット3と受信コイル4A、4Bとの重なりを示す平面図である。
ターゲット3は、回転中心OTからターゲット3の外形の端部P1までの距離a1が、外形の周方向に沿って、式(1)に則って変化する。
a1=1/2(R1-r1)・cos(nθ)+1/2(R1+r1) …(1)
(式(1)において、θは図8Aにおける、回転中心OTを通過する水平方向右側の直線(X2側のX軸)を始線とした場合の仰角であり、R1はa1の最大値、r1はa1の最小値であり、nはターゲット3における周期回数、すなわちターゲット3の外形がn回対称であればnであり、図8Aおよび図8Bではターゲット3のnは4である。)
【0045】
ターゲット3の外形の端部P1は、回転中心OTを原点とするXY座標において、式(1)で示されるa1と仰角θを用いて、以下の座標1で表される。
座標1=(x=a1・cosθ、y=a1・sinθ)
(a1は回転中心OTから端部P1までの距離であり、θは仰角である。)
【0046】
図8Bはターゲット3の回転中心OTと、平面視において円弧である仮想線Lの中心Oと、を一致させたときの平面図である。同図に示すように、ターゲット3および受信コイル4A、4Bが所定の位置に取り付けられた場合、ターゲット3の回転中心OTは、平面視において円弧である仮想線Lの中心Oと一致する。ターゲット3は、回転中心OTを中心として回動可能に形成されている。そして、ターゲット3の回転中心OTとターゲット3の外形の端部P1との距離a1(図8A参照)が、ターゲット3の外形の周方向に沿って、すなわち、座標1における仰角θの変化に伴って周期的に変化する。したがって、図5A図5Dおよび図6A図6Dを参照して説明したように、検知対象物の角度に応じたターゲット3と受信コイル4A、4Bとの重なりの変化に基づいて、検知対象物の角度を検知することができる。なお、図8A図8Bのターゲット3は開口部を備えているが、開口のないターゲットとしてもよい。
【0047】
図8Cは、ターゲット3の回転中心OTから、平面視において円弧である仮想線Lの中心OがX1方向にずれて回転中心OTと中心Oとの間に間隙Gが生じたときの平面図である。図8Dは、中心OがX2方向にずれて回転中心OTと中心Oとの間に間隙Gが生じたときの平面図である。ターゲット3が所定の位置からずれて取り付けられ、回転中心OTと中心Oとがずれた場合、ターゲット3における受信コイル4A、4Bと重なる領域の面積が変化する。
【0048】
図9A図9Cは、図8Aの受信コイル4A、4Bの円弧に沿ったターゲット3の形状および、回転に伴うターゲット3と受信コイル4A、4Bとの重なりを模式的に示す図である。図9Aは、ターゲット3の回転中心OTと受信コイル4A、4Bの仮想線Lの中心Oとが一致する図8Bの状態を示している。図9Bは、仮想線Lの中心Oが回転中心OTに対してX軸X1方向にずれて取り付けられた図8Cの状態を示ししている。図9Cは、仮想線Lの中心Oが回転中心OTに対してX軸X2方向にずれて取り付けられた図8Dの状態を示している。
【0049】
ターゲット3が所定の位置に取り付けられた状態では、図9Aに示すように、a1の最大値R1と、ターゲット3の回転中心OTから受信コイル4A、4Bにおける最遠点4P1までの距離Bとが等しく、a1の最小値r1と、ターゲット3の回転中心OTから受信コイル4A、4Bにおける最近点4P2までの距離bとが等しい。したがって、ターゲット3が所定の位置に取り付けられた状態の場合、ターゲット3の回転に伴う、ターゲット3と受信コイル4A、4Bとが重なり合う領域の面積の変化に寄与するターゲット3の部位は図9Aの斜線部である。
【0050】
しかし、図9Bおよび図9Cに示すように、ターゲット3の回転中心OTと受信コイル4A、4Bの仮想線Lの中心Oとがずれて取り付けられた場合、ずれの程度が大きいと、図9Aに示すターゲット3が所定の位置に取り付けられた場合とは、ターゲット3における受信コイル4A、4Bと重なる領域の面積が変化する。またそれにより、ターゲット3と受信コイル4A、4Bとが重なり合う領域の面積の変化に寄与するターゲット3の部位は図9Bおよび図9Cの斜線を付した部分となり、図9Aとは異なる。図9A図9Bおよび図9Cにおける斜線部の面積を比較すると、図9Aにおける斜線部の面積が一番大きいことが分かる。すなわち、ターゲット3の回転に伴う、ターゲット3と受信コイル4A、4Bとが重なり合う領域の面積の変化率が一番大きいと言える。前述の重なり合う領域の面積の変化率が大きいほど位置検知装置1(図2参照)の検知精度がよくなる。逆に、図9Bおよび図9Cに示すように、ターゲット3が所定位置からずれて取り付けられた場合、位置検知装置1の検知精度が低下する原因となる。
【0051】
図10は、図8Aおよび図8Bに示したターゲット3の回転中心OTと受信コイル4A、4Bの仮想線Lの中心Oとのずれが受信コイル4A、4Bの出力に及ぼす影響のシミュレーション結果のグラフである。図10のシミュレーションでは、ターゲット3における回転中心OTから外形の端部P1までの距離a1の最大値R1=32mm、最小値r1=20mmとし、図9Aに示すように、平面視において、R1=32mmおよびr=20mmの部分で、受信コイル4A、4Bの外形と重なる形状のターゲット3について評価した。
【0052】
同図において「正しい位置」として示した結果がターゲット3の回転中心OTと受信コイル4A、4Bの仮想線Lの中心Oとが一致した状態に対応する(図8B図9A参照)。「ずれた位置(-1)」として示した結果が、中心Oが回転中心OTに対してX1方向に1mmずれて取り付けられた状態に対応する(図8C図9B参照)。「ずれた位置(+1)」として示した結果が、中心Oが回転中心OTに対してX2方向に1mmずれて取り付けられた状態に対応する(図8D図9C参照)。
【0053】
ターゲット3の回転中心OTと受信コイル4A、4Bの仮想線Lの中心Oとのずれは、図9A図9Cに示すように、ターゲット3における受信コイル4A、4Bと重なる領域に影響する場合がある。図10に示すように、図9Aの状態の時の受信コイル4A、4Bの出力に対して、図9Bおよび図9Cの状態の時の受信コイル4A、4Bの出力に誤差があることが分かる。すなわち、ターゲット3の取り付け位置のずれが位置検知装置1の検知精度の低下を招くおそれがある。
【0054】
<第2の実施形態>
本実施形態の位置検知装置は、第1の実施形態の位置検知装置1との相違点であるターゲット7以外は、第1の実施形態の位置検知装置1と同じ構成である。そこで以下では、ターゲット7の構成について説明する。
【0055】
図11Aは本実施形態に係るターゲット7の形状を示す平面図である。図11Bは、平面視における、ターゲット7と受信コイル4A、4Bとの重なりを示す平面図である。
ここで第1の実施形態のターゲット3と本実施形態のターゲット7との相違点の概要を説明する。ターゲット3およびターゲット7は回転中心OTの周囲に開口部を有している。ターゲット3の開口部は受信コイル4A、4Bと重なっていないが、ターゲット7の開口部は受信コイル4A、4Bに重なっている点が異なる。また、ターゲット3の外形の周方向に沿って開口部の形状が周期的に変化している点が異なる。すなわち、開口部の形状がターゲット7と受信コイル4A、4Bとが重なり合う領域の面積の変化に寄与している点で異なる。なお、以下の説明においては開口部の形状を内形と表現している。
【0056】
ターゲット7は、回転中心OTからターゲット7の外形の端部P1までの距離a1が、外形の周方向に沿って、式(1)に則って変化する点、および、回転中心OTを原点とするXY座標において、ターゲット7の外形の端部P1が、式(1)示されるa1と仰角θを用いて、以下の座標1で表される点については、ターゲット3と同じである。
a1=1/2(R1-r1)・cos(nθ)+1/2(R1+r1) …(1)
(式(1)において、θは図11Aにおける、回転中心OTを通過する水平方向右側の直線(X2側のX軸)を始線とした場合の仰角であり、R1はa1の最大値、r1はa1の最小値であり、nはターゲット7における周期回数、すなわちターゲット3の外形がn回対称であればnであり、図11Aおよび図11Bでは4である。)
座標1=(x=a1・cosθ、y=a1・sinθ)
(a1は回転中心OTから端部P1までの距離であり、θは仰角である。)
【0057】
ターゲット7は、回転中心OTからターゲット7の内形の端部P2までの距離a2が、距離a1同様、仰角θの変化に伴って、以下の式(2)に則って、周期的に変化する。この点において、第1の実施形態のターゲット3とは異なっている。
a2=1/2(R2-r2)・(-cos(nθ))+1/2(R2+r2) …(2)
(式(2)において、θは図11Aにおける、回転中心OTを通過する水平方向右側の直線(X2側のX軸)を始線とした場合の仰角であり、R2はa2の最大値、r2はa2の最小値であり、nはターゲット7における周期回数、すなわちターゲット7の内形がn回対称であればnであり、図11Aおよび図11Bでは4である。)
ターゲット7の内形の端部P2は、回転中心OTを原点とするXY座標において、式(2)で示されるa1と仰角θを用いて、以下の座標2で表される。
座標2=(x=a2・cosθ、y=a2・sinθ)
(a2は回転中心OTから端部P2までの距離であり、θは仰角である。)
【0058】
図11Bに示すように、上述した、a1の最大値R1、a2の最小値r2、回転中心OTから受信コイル4A、4Bにおける最遠点4P1までの距離B、および、回転中心OTから受信コイル4A、4Bにおける最近点4P2までの距離bとは、以下の式(4)の関係を満たしている。
B>R1>r1>R2>r2>b …(4)
平面視において、ターゲット7の外形の端部P1と内形の端部P2との距離、すなわち、ターゲット7の幅が最大となる部分において、ターゲット7の外形と受信コイル4A、4Bとの間には間隙G1が設けられ、ターゲット7の内形と受信コイル4A、4Bとの間には間隙G2が設けられている。
【0059】
図11Bには式(4)を満たすターゲット7を示したが、以下の式(3)の関係を満たすターゲットを用いて本発明を実施することもできる。式(3)では、B>bである。
B≧R1≧r1≧R2≧r2≧b …(3)
ただし、間隙G1、G2を設けることにより、ターゲット7が所定位置からずれて取り付けられた場合に、ターゲット7の回転中心OTと受信コイル4A、4Bの仮想線Lの中心Oとがずれを吸収して、検知精度の良い位置検知装置とする観点から、ターゲット7のように、以下の式(5)を満たす形状のものが好ましい。
B>R1≧r1≧R2≧r2>b …(5)
【0060】
間隙G1、G2の大きさは、ターゲット7の取り付けの際に通常生じうるずれ以上とすればよいが、ターゲット7と受信コイル4A、4Bとの重なる領域を大きくして、ターゲット3の回転に伴う重なる領域の変化率を大きくする観点から、1mm以上2mm以下程度が好ましい。
【0061】
図12A図12Cは、図11Aの受信コイル4A、4Bの円弧に沿ったターゲット7の形状および、回転に伴うターゲット7と受信コイル4A、4Bとの重なりを模式的に示す図である。図12Aはターゲット7が所定の位置に取り付けられた回転中心OTと中心Oとが一致する状態を示している。図12Bおよび図12Cはターゲット7が所定の位置からずれて取り付けられた回転中心OTと中心Oとがずれた状態を示している。図12B図12Cとは、中心Oが回転中心OTから反対方向にずれて取り付けられた状態を示している(図8Cおよび図8D参照)。
【0062】
中心Oと回転中心OTとがずれている場合でも、そのずれの大きさが、ずれの方向に対応した図12Aに示す間隙G1またはG2以下であるときには、図12Bおよび図12Cに示すように、図12Aに示すターゲット7が所定の位置に取り付けられた場合と、ターゲット7における受信コイル4A、4Bと重なる領域の面積が変化しない。すなわちターゲット7と受信コイル4A、4Bとが重なり合う領域の面積の変化に寄与するターゲット7の部位は、図12Aないし図12Cの斜線部であり、斜線部の面積はすべて同じ大きさである。
【0063】
ターゲット7は、環状であり、平面視において、ターゲット7と受信コイル4A、4Bとが重なる領域における、環の外形および環の内形がいずれも、受信コイル4A、4Bの内側に位置している。したがって、所定位置からずれてターゲット7が取り付けられた場合でも、そのずれの大きさが間隙G1、G2以下であれば、ターゲット7と受信コイル4A、4Bとが重なる領域の面積が変化しない。すなわち、ターゲット7の回転に伴う、ターゲット7と受信コイル4A、4Bとが重なり合う領域の面積の変化率が同じであり、検知精度のばらつきが少ない位置検知装置となる。
【0064】
図13は、図11Aおよび図11Bに示したターゲット7の取り付け位置のずれが受信コイル4A、4Bの出力に及ぼす影響のシミュレーション結果のグラフである。図13のシミュレーションでは、ターゲット3における回転中心OTから外側の端部P1までの距離a1の最大値R1=32.5mm、最小値r1=26.5mm、内形の端部P2の距離a2の最大値R2=25.5mm、最小値r2=19.5mm、受信コイル4A、4Bとの間隙G1=1.5mm、間隙G2=1.5mmのターゲット7について評価した。
【0065】
図13における「正しい位置」、「ずれた位置(-1)」および「ずれた位置(+1)」として示した結果は、第1の実施形態同様、この順に図12A図12Bおよび図12Cに示す状態についてシミュレーションした結果である。
【0066】
図11Bに示すように、ターゲット7を平面視した場合に、ターゲット7の外形の端部P1および内形の端部P2が、受信コイル4A、4Bの内側に位置している。このため、ターゲット7の取り付け位置のずれの影響によって、受信コイル4A、4Bと重なる領域が変化することを防止できる。すなわち、図12Bおよび図12Cに示すように、ターゲット7が所定位置からずれて取り付けられ、回転中心OTと中心Oとがずれた場合であっても、ターゲット7と受信コイル4A、4Bとの重なる領域の面積を一定に保つことができる。このため、ターゲット7は、位置検知装置1の製造において想定される取り付け位置のずれの大きさに対応して、ターゲット7の外形の端部P1と受信コイル4A、4Bとの間に間隙G1を設け、ターゲット7の内形の端部P2と受信コイル4A、4Bとの間に間隔G2を設けている。このように、間隙G1、G2が設けられていることにより、回転中心OTと中心Oとにずれが生じた場合でも、検知精度に対する影響を抑えることができる。
【0067】
図11Aおよび図12Aに示すように、ターゲット7は、平面視において円弧である仮想線Lの中心Oを回転中心OTとして回動可能な環状に形成されている。ターゲット7の回転中心OTとターゲット7の外形の端部P1と距離a1および、ターゲット7の回転中心OTとターゲット7の内形の端部P2との距離a2の両方が、ターゲット7の外形または内形の周方向に沿って周期的に変化する。
【0068】
ターゲット7は、回転中心OTとターゲット7の外形の端部P1とを結ぶ第2の線分L2において、ターゲット7の内形の端部P2と外形の端部P1との中点Cから、ターゲット7の回転中心OTまでの距離Dが、ターゲット7の外形または内形の周方向に沿って一定である。このため、回転中心OTと中心Oとが一致する場合、図11Aに示すように、平面視において中点Cの軌跡が回転中心OTおよび中心Oを中心とする仮想円になり、仮想線Lと重なる。
【0069】
ターゲット7の外形および内形を上述した構成とすることで、距離a1および距離a2の一方のみが周期的に変化するターゲットと比較して、回転に伴う受信コイル4A、4Bとの重複領域の変化が大きくなるため、検知精度がよくなる。
【0070】
図14は、本実施形態の変形例に係るターゲット8の平面図である。ターゲット8は、環の幅が最大となる部分に取付孔9を有する点において、ターゲット7と異なっている。なお、環の幅とは、外形の端部P1と回転中心OTとの直線上における、外形の端部P1と内形の端部P2との距離をいう。図14に示すターゲット8では、回転中心OTを原点とするXY座標の、X軸におけるX1側およびX2側、Y軸におけるY1側およびY2側に重なる部分にそれぞれ取付孔9が設けられている。ターゲット8に設けられた取付孔9は合計4つであり、ターゲットの周期回数と同じである。
【0071】
取付孔9は、板体のターゲット8を所定位置に取り付ける際に位置決め手段として用いることができる。このため、取付孔9によって位置決め作業が容易になるとともに、位置決め精度が向上する。取付孔9は、環の幅が最大となる部分の全てに設けられている必要はないが、位置決めの精度および作業性の観点からは、複数設けられていることが好ましい。また、環の幅が最大となる部分に取付孔9を設けることで、ターゲット8と受信コイル4A、4Bとが重なる領域への取付孔9による影響を抑えることができる。
【0072】
図15は、図14に示したターゲット8の取り付け位置のずれが受信コイル4A、4Bの出力に及ぼす影響のシミュレーション結果のグラフである。ターゲット8とターゲット7との相違点は、環の幅が最大となる4か所において、外形の端部P1と内形の端部P2との中点にそれぞれ設けられた、4つの内径2mmの円形の取付孔9の有無のみであり、他の構成は同一である。
【0073】
図15において「正しい位置」、「ずれた位置(-1)」および「ずれた位置(+1)」として示した結果は、第1の実施形態で説明した回転中心OTと中心Oとの位置関係と同じである。同グラフに示すように、環の幅が最大となる部分に取付孔9を設けることによって取付孔9の影響を抑えることができるため、ターゲット7同様、検知精度がよくなる。また、取付孔9を備えないターゲット8を用いたときのシミュレーション結果である図13と比較しても取付位置がずれた場合の出力のばらつきは同等レベルである。この結果より取付孔9を環の幅が最大となる部分に設けることで、取付孔9が出力にあたえる影響を小さくできることが分かる。
【0074】
<第3の実施形態>
本実施形態の位置検知装置は、ターゲット7とは形状が異なるターゲット10、11を用いた以外は、第2の実施形態の位置検知装置と同じ構成である。そこで、以下では、ターゲット10、11の構成について説明する。
【0075】
図16は、本実施形態のターゲット10の平面視における形状を示している。ターゲット10は、ターゲット7同様、回転中心OTからターゲット10の外形の端部P1までの距離a1が、外形の周方向に沿って、式(1)に則って変化する点、および外形の端部P1が、(1)で示されるa1と仰角θを用いて、以下の座標1で表される。
a1=1/2(R1-r1)・cos(nθ)+1/2(R1+r1) …(1)
座標1=(x=a1・cosθ、y=a1・sinθ)
【0076】
ターゲット10は、回転中心OTからターゲット10の内形の端部P2までの距離a2が一定である点において、ターゲット7と異なっている。ただし、R2=r2の場合、式(2)におけるR2-r2=0となるため、ターゲット10の内形の端部P2が、以下の式(2)と座標2で表されることはターゲット7と同じである。
a2=1/2(R2-r2)・(-cos(nθ))+1/2(R2+r2) …(2)
座標2=(x=a2・cosθ、y=a2・sinθ)
また、第1の実施形態のターゲット3の開口部(内形)は受信コイル4A、4Bと重なっていないが、ターゲット10の内形は受信コイル4A、4Bに重なっている点がターゲット3と異なる。
【0077】
ターゲット10は、R1、r2、B、およびbが、以下の式(6)の関係を満たす。
B>R1>r1>R2=r2>b …(6)
(R1、r1、R2、r2、Bおよびbは式(3)と同様)
ターゲット7同様、ターゲット10と受信コイル4A、4Bとの間には、間隙G1、G2(図11B参照)が設けられている。
【0078】
図17は、図16に示したターゲット10の取り付け位置のずれが受信コイル4A、4Bの出力に及ぼす影響のシミュレーション結果のグラフである。図17のシミュレーションでは、ターゲット3における回転中心OTから外側の端部P1までの距離a1の最大値R1=32.5mm、最小値r1=20.5mm、内形の端部P2の距離a2の最大値R2=最小値r2=19.5mm、受信コイル4A、4Bとの間隙G1=1.5mm、間隙G2=1.5mmであるターゲット10について評価した。
【0079】
図17における「正しい位置」、「ずれた位置(-1)」および「ずれた位置(+1)」として示した結果は、第1の実施形態で説明した回転中心OTと中心Oとの位置関係と同じである。同図に示すように、回転中心OTから内形の端部P2までの距離a2が一定であるターゲット10を用いた場合も、ターゲット7同様に、良好な検知精度を実現できる。
【0080】
図18は、本実施形態の変形例に係るターゲット11の平面視における形状を示している。ターゲット11は、ターゲット7同様、回転中心OTからターゲット11の内形の端部P2までの距離a2が、内形の周方向に沿って、式(2)に則って変化する点、および内形の端部P2が、式(2)で示されるa2と仰角θを用いて、以下の座標2で表される。
a2=1/2(R1-r1)・(-cos(nθ))+1/2(R1+r1)…(2)
座標2=(x=a2・cosθ、y=a2・sinθ)
【0081】
ターゲット11は、回転中心OTからターゲット10の外形の端部P1までの距離a1が一定である点において、ターゲット7と異なっている。ただし、R1=r2の場合式(1)におけるR2-r2=0となるため、ターゲット10の内形の端部P2が、以下の式(1)と座標2で表されることはターゲット7と同じである。
a1=1/2(R2-r2)・(cos(nθ))+1/2(R2+r2) …(1)
座標1=(x=a1・cosθ、y=a1・sinθ)
【0082】
ターゲット11は、R1、r2、B、およびbが、以下の式(7)の関係を満たす。
B>R1=r1>R2>r2>b …(7)
(R1、r1、R2、r2、Bおよびbは式(3)と同様)
また、ターゲット7と同様、ターゲット11と受信コイル4A、4Bとの間に間隙G1、G2(図11B参照)が設けられている。
【0083】
図19は、図18に示したターゲット11の取り付け位置のずれが受信コイル4A、4Bの出力に及ぼす影響についてのシミュレーション結果のグラフである。図19のシミュレーションでは、ターゲット3における回転中心OTから外側の端部P1までの距離a1の最大値R1=最小値r1=32.5mm、内形の端部P2の距離a2の最大値R2=31.5mm、最小値r2=19.5mm、受信コイル4A、4Bとの間隙G1=1.5mm、間隙G2=1.5mmであるターゲット11について評価した。
【0084】
図18における「正しい位置」、「ずれた位置(-1)」および「ずれた位置(+1)」として示した結果は、第1の実施形態で説明した回転中心OTと中心Oとの位置関係と同じである。同グラフに示すように、回転中心OTから外形の端部P1までの距離a1が一定のターゲット11を用いた場合も、ターゲット7同様に、良好な検知精度を実現できる。
【0085】
本明細書において開示された実施形態は、全ての点で例示であってこの実施形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。実施形態では、被検知物の回転角度を検知する態様について説明したが、検知する位置としては、例えば、直線方向の位置など、回転に伴って変化する位置以外の種々の位置も含む。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上説明したように、本発明は、例えば、モータの回転角度などの対象物の位置を検出する検出装置として有用である。
【符号の説明】
【0087】
1 :位置検知装置
2 :発信コイル
2a :第1延設部
2b :第2延設部
2c :接続部
2d :接続部
3、7、8、10、11:ターゲット
4A、4B:受信コイル
4AL、4BL:弧部(第1部分)
4AP、4BP:接続部(第2部分)
41A、41B、42A、42B:環状部
4P1 :最遠点
4P2: :最近点
5 :基板
5a、5b:基板の面
5c :スルーホール
6 :回転軸
9 :取付孔
E1 :高周波信号
E2 :1次渦電流
E3 :2次電流
L :仮想線(第1仮想線)
L2 :線分
R :仮想線Lに直交する方向
H :環状部の長さ
O :中心
OT :回転中心
S1、S2 :領域
W :ターゲットの高さ
a1、a2、B、b:距離
R1、R2:最大値
r1、r2:最小値
θ :仰角
P1 :外形の端部
P2 ;内形の端部
C :中点
D :距離
G、G1、G2:間隙
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19