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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】被覆工具および切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/14 20060101AFI20250108BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
B23B27/14 A
C23C14/06 L
C23C14/06 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023545180
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2022029847
(87)【国際公開番号】W WO2023032582
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2021141975
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 聡史
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/050542(WO,A1)
【文献】特開2005-212002(JP,A)
【文献】特開2004-091920(JP,A)
【文献】特開2009-167503(JP,A)
【文献】特開2013-079445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/14
B23B 51/00
B23C 5/00
C23C 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と該基体の表面の少なくとも一部に位置する被覆層とを有する被覆工具であって、
前記被覆層は、周期表第4族元素、第5族元素および第6族元素ならびにAl、Si、B、YおよびMnの中から選ばれた少なくとも1種の元素と、C、NおよびOの中から選ばれた少なくとも1種の元素とからなる立方晶の結晶を含有し、
前記被覆層の表面から前記被覆層の厚みの20%の深さまでを測定範囲とし、圧子の押し込み荷重を変化させつつ、前記測定範囲における異なる深さの5カ所で各々15回ずつ硬度を測定した場合において、
前記15回分の測定値の平均値および標準偏差から求められる硬度の変動係数(前記標準偏差/前記平均値)が、各前記深さにおいて0.11以下である、被覆工具。
【請求項2】
前記平均値が、各前記深さにおいて25GPa以上である、請求項1に記載の被覆工具。
【請求項3】
前記平均値が、各前記深さにおいて30GPa以上である、請求項1に記載の被覆工具。
【請求項4】
前記被覆層の算術平均粗さRaが、0.2μm以下である、請求項1に記載の被覆工具。
【請求項5】
前記被覆層は、前記立方晶の結晶としてAlTiN結晶を含有するAlTiN層を有する、請求項に記載の被覆工具。
【請求項6】
前記被覆層は、前記立方晶の結晶としてAlCrN結晶を含有するAlCrN層を有する、請求項に記載の被覆工具。
【請求項7】
前記被覆層は、前記立方晶の結晶として、AlTi結晶を含有する複数のAlTiN層と、AlCrN結晶を含有する複数のAlCrN層とを有する、請求項に記載の被覆工具。
【請求項8】
前記基体は、超硬合金、サーメット、セラミックス、および立方晶窒化硼素を含有する焼結体から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の被覆工具。
【請求項9】
第1端から第2端に向かって延び、前記第1端側にポケットを有するホルダと、
前記ポケットに位置する請求項1~のいずれか一つに記載の被覆工具と、を備えた切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被覆工具および切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
旋削加工や転削加工等の切削加工に用いられる工具として、たとえば超硬合金、サーメット、セラミックスあるいは窒化硼素質焼結体等の基体を有する被覆工具が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-3284号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様による被覆工具は、基体と基体の表面の少なくとも一部に位置する被覆層とを有する被覆工具である。本開示の一態様による被覆工具は、被覆層の表面から被覆層の厚みの20%の深さまでを測定範囲とし、圧子の押し込み荷重を変化させつつ、測定範囲における異なる深さの5カ所で各々15回ずつ硬度を測定した場合において、15回分の測定値の平均値および標準偏差から求められる硬度の変動係数(標準偏差/平均値)が、各深さにおいて0.11以下である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、実施形態に係る被覆工具の一例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る被覆工具の一例を示す側断面図である。
図3図3は、図2に示すIII部の模式的な拡大図である。
図4図4は、図3に示すVI部の模式的な拡大図である。
図5図5は、実施形態に係る切削工具の一例を示す正面図である。
図6図6は、試料No.1~No.7についての硬度測定の結果をまとめた表である。
図7図7は、試料No.1~No.7についての硬度測定の結果に基づいて算出した標準偏差、変動係数および変動係数差をまとめた表である。
図8図8は、試料No.1~No.3についての切削試験の結果をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下に、本開示による被覆工具および切削工具を実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示による被覆工具および切削工具が限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0007】
また、以下に示す実施形態では、「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」といった表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密に「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、例えば製造精度、設置精度などのずれを許容するものとする。
【0008】
上述した従来技術には、耐久性を損なうことなく、被削材の仕上げ面品位を向上させるという点で更なる改善の余地がある。
【0009】
<被覆工具>
図1は、実施形態に係る被覆工具の一例を示す斜視図である。図1に示すように、実施形態に係る被覆工具1は、チップ本体2と、切刃部3とを有していてもよい。実施形態に係る被覆工具1は、たとえば、上面および下面(図1に示すZ軸と交わる面)の形状が平行四辺形である六面体形状を有する。
【0010】
被覆工具1は、第1面6(ここでは、上面)と、第1面6に連接する第2面7(ここでは、側面)と、第1面6と第2面7との間に位置する稜線部8とを有する。第1面6は、切削により生じた切屑をすくい取るすくい面を有する。また、第2面7は、逃げ面を有する。
【0011】
第1面6は、平面視したとき、複数(ここでは、4つ)の角部61を有する。角部61は、第1面6の角を含む領域である。複数の角部61のうちの少なくとも1つにおける稜線部8には、切刃11が位置している。被覆工具1は、切刃11を被削材に当てることによって被削材を切削する。
【0012】
(チップ本体2)
チップ本体2は、たとえば超硬合金で形成される。超硬合金は、W(タングステン)、具体的には、WC(炭化タングステン)を含有する。また、超硬合金は、Ni(ニッケル)およびCo(コバルト)の少なくとも一方を含有していてもよい。また、チップ本体2は、サーメットで形成されてもよい。サーメットは、たとえばTi(チタン)、具体的には、TiC(炭化チタン)またはTiN(窒化チタン)を含有する。また、サーメットは、NiやCoを含有していてもよい。
【0013】
チップ本体2のうち、被覆工具1の角部61に対応する箇所の1つには、切刃部3を取り付けるための座面4が位置していてもよい。また、チップ本体2の中央部には、チップ本体2を上下に貫通する貫通孔5が位置していてもよい。貫通孔5には、後述するホルダ70に被覆工具1を取り付けるためのネジ75が挿入される(図5参照)。
【0014】
(切刃部3)
切刃部3は、チップ本体2の座面4に取り付けられることによってチップ本体2と一体化されている。切刃部3は、被覆工具1が有する複数の角部61のうちの1つを構成する。また、切刃部3は、上述した第1面6、第2面7および稜線部8の一部を構成する。切刃11は、切刃部3における稜線部8の少なくとも一部に位置している。
【0015】
かかる切刃部3の構成について図2を参照して説明する。図2は、実施形態に係る被覆工具1の一例を示す側断面図である。図2に示すように、切刃部3は、基体10を有する。また、切刃部3は、基体10の表面の少なくとも一部に位置する被覆層20を有する。
【0016】
(基体10)
基体10は、超硬合金やサーメット、セラミックスであってもよい。また、基体10は、複数の窒化硼素粒子を含有する窒化硼素質焼結体であってもよい。実施形態において、基体10は、複数の立方晶窒化硼素粒子を含有する立方晶窒化硼素(cBN)質焼結体であってもよい。基体10は、複数の窒化硼素粒子の間に、TiN、Al、Al等を含有する結合相を有していてもよい。複数の窒化硼素粒子は、かかる結合相によって強固に結合される。なお、基体10は、必ずしも結合相を有することを要しない。
【0017】
切刃11の少なくとも一部には、第1面6と第2面7とに連続する第3面9が位置していてもよい。第3面9は、たとえば、第1面6と第2面7との角部を斜め且つ直線的に削ったC面(チャンファー面)であってもよい。また、第3面9は、第1面6と第2面7との角部を丸めたR面(ラウンド面)であってもよい。なお、切刃11は、必ずしも第3面9を有することを要しない。
【0018】
基体10の下面には、たとえば超硬合金またはサーメットからなる基板30が位置していてもよい。この場合、基体10は、基板30および接合材40を介してチップ本体2の座面4に接合している。接合材40は、たとえばロウ材である。チップ本体2の座面4以外の部分では、基体10は接合材40を介してチップ本体2と接合していてもよい。
【0019】
(被覆層20)
被覆層20は、例えば、切刃部3の耐摩耗性、耐熱性等を向上させることを目的として基体10に被覆される。図2の例では、被覆層20がチップ本体2および基体10の両方に位置しているが、被覆層20は、少なくとも基体10の上に位置していればよい。被覆層20が切刃部3の第2面7に相当する基体10の側面に位置する場合、第2面7の耐摩耗性、耐熱性が高い。
【0020】
実施形態に係る被覆工具1は、被覆層20の表面を測定開始点とし、圧子の押し込み荷重を変化させながら、被覆層20の表面から被覆層20の20%の深さまで圧子を押し込んで異なる深さの5ヶ所で各々15回ずつ硬度を測定した場合において、15回分の測定値の平均値および標準偏差から求められる硬度の変動係数(標準偏差/平均値)が、各深さにおいて0.11以下であってもよい。
【0021】
かかる構成を有する被覆工具1は、耐久性を損なうことなく、被削材の仕上げ面品位を向上させることができる。また、かかる構成を有する被覆工具1は、被覆層20の硬度が均質である。被覆層20の硬度が均質であると、加工中の刃先の摩耗が均一となる。この結果、被削材の仕上げ面品位が向上する。
【0022】
また、被覆層20における変動係数の最大値と最小値との差は、0.06以下であってもよい。かかる構成を有する被覆工具1は、被覆層20の硬度が深さ方向においても均質である。これにより、加工中の刃先の摩耗がより均一となるため、被削材の仕上げ面品位がさらに向上する。
【0023】
また、15回分の測定値の平均値は、各深さにおいて25GPa以上であってもよい。かかる構成を有する被覆工具1は、硬度が高く、刃先の耐摩耗性が向上し、加工面の加工バラツキが小さくなる。この結果、被削材の面品位が向上する。
【0024】
また、15回分の測定値の平均値は、各深さにおいて30GPa以上であってもよい。かかる構成を有する被覆工具1は、硬度がさらに高く、刃先の耐摩耗性がさらに向上し、加工面の加工バラツキがより小さくなる。この結果、被削材の面品位がさらに向上する。
【0025】
また、被覆層20の算術平均粗さRaは、0.2μm以下であってもよい。かかる構成を有する被覆工具1は、耐久性を損なうことなく、被削材の仕上げ面品位を向上させることができる。
【0026】
(被覆層20の具体的な構成)
次に、被覆層20の具体的な構成について図3を参照して説明する。図3は、図2に示すIII部の模式的な拡大図である。
【0027】
図3に示すように、被覆層20は、少なくとも硬質層21を有する。硬質層21は、1層以上の金属窒化物層を有していてもよい。硬質層21は、後述する中間層22と比較して耐摩耗性に優れた層である。硬質層21は1層であってもよいし、複数の金属窒化物層が重なっていてもよい。具体的には、硬質層21は、複数の金属窒化物層が積層された第1硬質層23と、第1硬質層23の上に位置する第2硬質層24とを有していてもよい。かかる硬質層21の構成については後述する。
【0028】
(中間層22)
また、被覆層20は、中間層22を有していてもよい。中間層22は、基体10と硬質層21との間に位置していてもよい。具体的には、中間層22は、一方の面において基体10に接し、且つ、他方の面において硬質層21に接していてもよい。
【0029】
中間層22は、基体10との密着性が硬質層21と比べて高い。このような特性を有する金属元素としては、たとえば、Zr、V、Cr、W、Al、Si、Yが挙げられる。中間層22は、上記金属元素のうち少なくとも1種以上の金属元素を含有する。
【0030】
なお、Tiの単体、Zrの単体、Vの単体、Crの単体およびAlの単体は、中間層22としては用いられない。これらはいずれも融点が低く、耐酸化性が低いことから、切削工具への使用に適さないためである。また、Hfの単体、Nbの単体、Taの単体、Moの単体は基体10との密着性が低い。ただし、Ti、Zr、V、Cr、Ta、Nb、Hf、Alを含む合金については、この限りではない。
【0031】
中間層22は、Al-Cr合金を含有するAl-Cr合金層であってもよい。かかる中間層22は、基体10との密着性が特に高いことから、基体10と被覆層20との密着性を向上させる効果が高い。
【0032】
中間層22がAl-Cr合金層である場合、中間層22におけるAlの含有量は、中間層22におけるCrの含有量よりも多くてもよい。たとえば、中間層22におけるAlとCrとの組成比(原子%)は、70:30であってもよい。このような組成比率とすることで、基体10と中間層22との密着性はより高い。
【0033】
中間層22は、上記金属元素(Zr、V、Cr、W、Al、Si、Y)以外の成分を含有していてもよい。ただし、基体10との密着性の観点から、中間層22は、上記金属元素を合量で少なくとも95原子%以上含有していてもよい。より好ましくは、中間層22は、上記金属元素を合量で98原子%以上含有してもよい。たとえば、中間層22がAl-Cr合金層である場合、中間層22は、少なくとも、AlおよびCrを合量で95原子%以上含有していてもよい。さらに中間層22は、少なくとも、AlおよびCrを合量で98原子%以上含有していてもよい。たとえば、STEM(走査透過電子顕微鏡)に付属しているEDS(エネルギー分散型X線分光器)を用いた分析により特定可能である。
【0034】
また、Tiは実施形態に係る基体10との濡れ性が悪いため、基体10との密着性向上の観点から、中間層22は、Tiを極力含有していないことが好ましい。具体的には、中間層22におけるTiの含有量は、15原子%以下であってもよい。
【0035】
このように、実施形態に係る被覆工具1では、基体10との濡れ性が硬質層21と比べて高い中間層22を基体10と硬質層21との間に設けることにより、基体10と被覆層20との密着性を向上させることができる。なお、中間層22は、硬質層21との密着性も高いため、硬質層21が中間層22から剥離するといったことも生じにくい。
【0036】
また、基体10として用いられるcBNは、絶縁体である。絶縁体であるcBNには、PVD法(物理蒸着)により形成される膜との密着性に改善の余地があった。これに対し、実施形態に係る被覆工具1では、導電性を有する中間層22を基体10の表面に設けることで、PVDにより形成される硬質層21と中間層22との密着性が高い。
【0037】
(硬質層21)
次に、硬質層21の構成について図3および図4を参照して説明する。図4は、図3に示すIV部の模式的な拡大図である。
【0038】
図3に示すように、硬質層21は、中間層22の上に位置する第1硬質層23と、第1硬質層23の上に位置する第2硬質層24とを有する。
【0039】
(第1硬質層23)
第1硬質層23は、周期表第4族元素、第5族元素および第6族元素ならびにAl、Si、B、YおよびMnの中から選ばれた少なくとも1種の元素と、C、NおよびOの中から選ばれた少なくとも1種の元素とからなる立方晶の結晶を含有していてもよい。
【0040】
具体的には、第1硬質層23は、複数の第1金属窒化物層23aと複数の第2金属窒化物層23bとを有していてもよい。また、第1硬質層23は、第1金属窒化物層23aと第2金属窒化物層23bとが交互に積層された構成を有していてもよい。
【0041】
第1金属窒化物層23aおよび第2金属窒化物層23bの厚みは、それぞれ50nm以下としてもよい。このように、第1金属窒化物層23aおよび第2金属窒化物層23bを薄く形成することで、第1金属窒化物層23aおよび第2金属窒化物層23bの残留応力が小さい。これにより、たとえば、第1金属窒化物層23aおよび第2金属窒化物層23bの剥離やクラック等が生じ難くなることから、被覆層20の耐久性が高い。
【0042】
第1金属窒化物層23aは、中間層22に接する層であり、第2金属窒化物層23bは、第1金属窒化物層23a上に形成される。
【0043】
第1金属窒化物層23aおよび第2金属窒化物層23bは、中間層22に含まれる金属を含有していてもよい。
【0044】
たとえば、中間層22に2種類の金属(ここでは、「第1の金属」、「第2の金属」とする)が含まれているとする。この場合、第1金属窒化物層23aは、第1の金属および第3の金属の窒化物を含有する。第3の金属は、中間層22に含まれない金属である。また、第2金属窒化物層23bは、第1の金属および第2の金属の窒化物を含有する。
【0045】
たとえば、実施形態において、中間層22は、AlおよびCrを含有してもよい。この場合、第1金属窒化物層23aは、Alを含有してもよい。具体的には、第1金属窒化物層23aは、AlおよびTiの窒化物であるAlTiNを含有するAlTiN層であってもよい。また、第2金属窒化物層23bは、AlおよびCrの窒化物であるAlCrNを含有するAlCrN層であってもよい。
【0046】
このように、中間層22に含まれる金属を含有する第1金属窒化物層23aを中間層22の上に位置させることで、中間層22と硬質層21との密着性が高い。これにより、硬質層21が中間層22から剥離し難くなるため、被覆層20の耐久性が高い。
【0047】
第1金属窒化物層23aすなわちAlTiN層は、上述した中間層22との密着性の他、たとえば耐摩耗性に優れる。また、第2金属窒化物層23bすなわちAlCrN層は、たとえば耐熱性、耐酸化性に優れる。このように、被覆層20は、互いに異なる組成の第1金属窒化物層23aおよび第2金属窒化物層23bを含むことで、硬質層21の耐摩耗性や耐熱性等の特性を制御することができる。これにより、被覆工具1の工具寿命を延ばすことができる。たとえば、実施形態に係る硬質層21においては、AlCrNが持つ優れた耐熱性を維持しつつ、中間層22との密着性や耐摩耗性といった機械的性質を向上させることができる。
【0048】
なお、第1硬質層23は、たとえばアークイオンプレーティング法(AIP法)により成膜してもよい。AIP法は、真空雰囲気でアーク放電を利用してターゲット金属(ここでは、AlTiターゲットおよびAlCrターゲット)を蒸発させ、Nガスと結合することによって金属窒化物(ここでは、AlTiNとAlCrN)を成膜する方法である。なお、中間層22もAIP法により成膜してもよい。
【0049】
第2硬質層24は、第1硬質層23の上に位置してもよい。具体的には、第2硬質層24は、第1硬質層23のうち第2金属窒化物層23bと接する。第2硬質層24は、たとえば、第1金属窒化物層23aと同様、TiおよびAlを含有する金属窒化物層(AlTiN層)である。
【0050】
第2硬質層24の厚みは、第1金属窒化物層23aおよび第2金属窒化物層23bの各厚みよりも厚くてもよい。具体的には、上述したように第1金属窒化物層23aおよび第2金属窒化物層23bの厚みは50nm以下とした場合、第2硬質層24の厚みは、1μm以上としてもよい。たとえば、第2硬質層24の厚みは、1.2μmであってもよい。
【0051】
これにより、たとえば、第2硬質層24の摩擦係数が低い場合には、被覆工具1の耐溶着性を向上させることができる。また、たとえば、第2硬質層24の硬度が高い場合には、被覆工具1の耐摩耗性を向上させることができる。また、たとえば、第2硬質層24の酸化開始温度が高い場合には、被覆工具1の耐酸化性を向上させることができる。
【0052】
また、第2硬質層24の厚みは、第1硬質層23の厚みよりも厚くてもよい。具体的には、実施形態において、第1硬質層23の厚みは0.5μm以下とした場合、第2硬質層24の厚みは、1μm以上であってもよい。たとえば、第1硬質層23の厚みが0.3μmである場合、第2硬質層24の厚みは1.2μmであってもよい。このように、第2硬質層24を第1硬質層23よりも厚くすることで、上述した耐溶着性、耐摩耗性等を向上させる効果がさらに高い。
【0053】
なお、中間層22の厚みは、たとえば0.1μm以上、0.6μm未満であってもよい。すなわち、中間層22は、第1金属窒化物層23aおよび第2金属窒化物層23bの各々よりも厚く、且つ、第1硬質層23よりも薄くてもよい。
【0054】
<切削工具>
次に、上述した被覆工具1を備えた切削工具の構成について図5を参照して説明する。図5は、実施形態に係る切削工具の一例を示す正面図である。
【0055】
図5に示すように、実施形態に係る切削工具100は、被覆工具1と、被覆工具1を固定するためのホルダ70とを有する。
【0056】
ホルダ70は、第1端(図5における上端)から第2端(図5における下端)に向かって伸びる棒状の部材である。ホルダ70は、たとえば、鋼、鋳鉄製である。特に、これらの部材の中で靱性の高い鋼が用いられることが好ましい。
【0057】
ホルダ70は、第1端側の端部にポケット73を有する。ポケット73は、被覆工具1が装着される部分であり、被削材の回転方向と交わる着座面と、着座面に対して傾斜する拘束側面とを有する。着座面には、後述するネジ75を螺合させるネジ孔が設けられている。
【0058】
被覆工具1は、ホルダ70のポケット73に位置し、ネジ75によってホルダ70に装着される。すなわち、被覆工具1の貫通孔5にネジ75を挿入し、このネジ75の先端をポケット73の着座面に形成されたネジ孔に挿入してネジ部同士を螺合させる。これにより、被覆工具1は、切刃部3がホルダ70から外方に突出するようにホルダ70に装着される。
【0059】
実施形態においては、いわゆる旋削加工に用いられる切削工具を例示している。旋削加工としては、例えば、内径加工、外径加工及び溝入れ加工が挙げられる。なお、切削工具としては旋削加工に用いられるものに限定されない。例えば、転削加工に用いられる切削工具に被覆工具1を用いてもよい。転削加工に用いられる切削工具としては、たとえば、平フライス、正面フライス、側フライス、溝切りフライスなどフライス、1枚刃エンドミル、複数刃エンドミル、テーパ刃エンドミル、ボールエンドミルなどのエンドミルなどが挙げられる。
【0060】
(実施例)
立方晶窒化硼素粉末と、結合相としてTiの化合物及びAlの化合物と、を含有する立方晶窒化硼素質焼結体を作製し、得られた立方晶窒化硼素質焼結体を、超硬合金からなるチップ本体の座面に接合材を介して接合した。
【0061】
具体的に説明すると、まず、TiN原料粉末72体積%以上82体積%以下と、Al原料粉末13体積%以上23体積%以下と、Al原料粉末1体積%以上11体積%以下とを準備した。次にて、準備した各原料粉末に有機溶媒を添加した。有機溶媒としては、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール類が用いられ得る。その後、ボールミルにて、20時間以上24時間以下、粉砕および混合した。粉砕および混合後、溶媒を蒸発させることにより、第1混合粉末を得た。
【0062】
また、平均粒径が2.5μm以上4.5μm以下であるcBN粉末と、平均粒径が0.5μm1.5μm以下であるcBN粉末とを、体積比で8以上9以下:1以上2以下の割合で調合した。次に、調合した粉末に有機溶媒を添加した。有機溶媒としては、アセトン、IPA等のアルコール類が用いられ得る。その後、ボールミルにて、20時間以上24時間以下、粉砕および混合した。粉砕および混合後、溶媒を蒸発させることにより、第2混合粉末を得た。
【0063】
次に、得られた第1混合粉末と第2混合粉末とを、体積比で68以上78以下:22以上32以下の割合で調合した。調合した粉末に有機溶媒と有機バインダとを添加した。有機溶媒としては、アセトン、IPA等のアルコール類が用いられ得る。また、有機バインダとしては、パラフィン、アクリル系樹脂等が用いられ得る。その後、ボールミルにて20時間以上24時間以下粉砕混合し、さらにその後、有機溶媒を蒸発させることにより、第3混合粉末を得た。なお、ボールミルを用いた工程では必要に応じて分散剤を添加しても良い。
【0064】
そして、この第3混合粉末を所定形状に成形することによって成形体を得た。成形には、一軸加圧プレス、冷間等方圧プレス(CIP)等の既知の方法が使用され得る。この成形体を300℃以上600℃以下の範囲内の所定の温度にて加熱し、有機バインダを蒸発除去した。
【0065】
次に、成形体を超高圧加熱装置に装入し、4GPa以上6GPa以下の圧力下において1200℃以上1500℃以下で15分以上30分以下加熱した。これにより、実施形態に係る立方晶窒化硼素質焼結体を得た。そして、得られた立方晶窒化硼素質焼結体を、超硬合金からなるチップ本体の座面に接合材を介して取り付けた。
【0066】
次に、物理気相蒸着(PVD)法によってチップの表面に被覆層を製膜した。その後、被覆層に対し、エアロラップ(登録商標)処理を以下に示す条件にて行うことにより、試料No.1(実施例1)を作製した。また、製膜した被覆層に対してエアロラップ(登録商標)処理を行わなかった被覆工具を試料No.2(比較例1)とした。また、基体がcBNである市販の被覆工具を用意し、試料No.3(比較例2)とした。
【0067】
また、超硬合金(WC-Co系合金)の表面に物理気相蒸着法によって被覆層を成膜し、その後、被覆層に対してエアロラップ(登録商標)処理を以下に示す条件にて行うことにより、試料No.4(実施例2)を作製した。また、製膜した被覆層に対してエアロラップ(登録商標)処理を行わなかった被覆工具を試料No.5(比較例3)、試料No.6(比較例4)および試料No.7(比較例5)とした。
【0068】
<エアロラップ(登録商標)処理の条件>
装置:日本スピードショア社製 エアロラップ(登録商標)
メディア:マルチコーン
メディア径:0.1~0.5mm
羽部インバータ周波数:40Hz
噴射時間:0秒(処理なし、試料No.2,No.3,No.5~No.7)、10秒(試料No.1,No.4)
湿式/乾式:湿式
【0069】
なお、メディアは、羽部の回転により噴射される。羽部の回転数は、インバータによって40Hz(1秒間に40回転)に制御される。
【0070】
次に、微小押し込み硬さ試験機「ENT-1100b/a」((株)エリオニクス製)を用い、各試料に対して、被覆層の表面から被覆層の厚みの20%の深さまでを測定範囲とし、圧子の押し込み荷重を10N~50Nの範囲において10N刻みで変化させて硬度の測定(ナノインデンテーション試験)を行った。
【0071】
具体的には、被覆層の表面に圧子を接触させた後、荷重印加、最大荷重保持および除荷の流れで荷重を変化させたときの圧子の変位(押込深さの変化)を測定することによって荷重変位曲線を得た。そして、得られた荷重変位曲線から硬度を算出した。この一連の測定を、押込荷重(最大荷重)10N、20N、30N、40Nおよび50Nにて(すなわち、異なる深さの5ヶ所で)それぞれ15回ずつ行い、15回分の硬度の測定値の平均を、その押込荷重における硬度とした。
【0072】
また、エアロラップ(登録商標)処理の効果を確認するために、刃先の立方晶窒化硼素質焼結体及び、チップ本体の超硬合金上の被覆層に対しても上述した硬度の測定を行った。
【0073】
図6は、試料No.1~No.7についての硬度測定の結果をまとめた表である。図6に示すように、試料No.1~No.7のうち、試料No.1~No.3はcBNからなる基体を有し、試料No.4~No.7は超硬合金(WC-Co系合金)からなる基体を有する。被覆層の厚み(平均厚み)は、試料No.1~No.7ともに3.0μmである。実施例である試料No.1およびNo.4は、被覆層に対してエアロラップ(登録商標)を行っているのに対し、比較例である試料No.2,3,5~7は、被覆層に対してエアロラップ(登録商標)を行っていない。
【0074】
図6に示す「平均厚みに対する押込深さの割合1」は、押込荷重を10Nとした場合における、被覆層の平均厚みに対する圧子の最大押込深さの割合のことである。同様に、平均厚みに対する押込深さの割合2~5は、それぞれ押込荷重を20N、30N、40Nおよび50Nとした場合における、被覆層の平均厚みに対する圧子の最大押込深さの割合のことである。
【0075】
試料No.1について、平均厚みに対する押込深さの割合1~5は、それぞれ4.6%、6.8%、8.6%、9.9%および11.1%であった。試料No.2について、平均厚みに対する押込深さの割合1~5は、それぞれ5.5%、8.4%、10.1%、12.3%および12.9%であった。試料No.3について、平均厚みに対する押込深さの割合1~5は、それぞれ5.5%、8.4%、10.1%、12.3%および12.9%であった。試料No.4について、平均厚みに対する押込深さの割合1~5は、それぞれ4.6%、6.5%、8.2%、9.7%および11.0%であった。試料No.5について、平均厚みに対する押込深さの割合1~5は、それぞれ4.6%、6.6%、8.6%、10.0%および11.2%であった。試料No.6について、平均厚みに対する押込深さの割合1~5は、それぞれ4.7%、6.8%、8.8%、10.6%および12.5%であった。試料No.7について、平均厚みに対する押込深さの割合1~5は、それぞれ5.0%、6.7%、8.5%、10.2%および11.8%であった。
【0076】
また、図6に示す「硬度1」は、押込荷重を10Nに設定して実施した15回の測定の測定値の平均である。同様に、硬度2~5は、それぞれ押込荷重を20N、30N、40Nおよび50Nに設定して実施した15回の測定の測定値の平均である。
【0077】
試料No.1の硬度は、硬度1が28.7GPa、硬度2が28.5GPa、硬度3が27.8GPa、硬度4が28.1GPa、硬度5が28.5GPaであった。試料No.2の硬度は、硬度1が12.9GPa、硬度2が20.0GPa、硬度3が20.7GPa、硬度4が20.1GPa、硬度5が20.8GPaであった。試料No.3の硬度は、硬度1が29.9GPa、硬度2が32.2GPa、硬度3が30.8GPa、硬度4が30.4GPa、硬度5が31.1GPaであった。
【0078】
試料No.4の硬度は、硬度1が30.2GPa、硬度2が31.7GPa、硬度3が32.1GPa、硬度4が30.5GPa、硬度5が31.2GPaであった。試料No.5の硬度は、硬度1が29.2GPa、硬度2が30.7GPa、硬度3が28.7GPa、硬度4が29.5GPa、硬度5が29.2GPaであった。試料No.6の硬度は、硬度1が27.6GPa、硬度2が27.4GPa、硬度3が25.3GPa、硬度4が23.8GPa、硬度5が22.0GPaであった。試料No.7の硬度は、硬度1が24.5GPa、硬度2が29.1GPa、硬度3が27.5GPa、硬度4が26.8GPa、硬度5が25.2GPaであった。
【0079】
このように、エアロラップ(登録商標)処理を行った試料No.1の硬度は、硬度1~5において(言い換えれば、各押込深さにおいて)、いずれも25GPa以上である。これに対し、エアロラップ(登録商標)処理を行わなかった試料No.2の硬度は、硬度1~5において、いずれも25GPa未満であった。このように、エアロラップ(登録商標)処理を行った試料No.1は、エアロラップ(登録商標)処理を行わなかった試料No.2と比べて高硬度であることがわかる。
【0080】
図7は、試料No.1~No.7についての硬度測定の結果に基づいて算出した標準偏差、変動係数および変動係数差をまとめた表である。
【0081】
図7に示す「σ1」は、押込荷重(最大荷重)10Nで実施した15回の測定の測定値の標準偏差である。具体的には、15回分の各測定値と平均値(すなわち硬度1)との差の2乗を平均し、その正の平方根をσ1として算出した。同様に、σ2~σ5は、それぞれ、押込荷重20N、30N、40Nおよび50Nで実施した15回の測定の測定値の標準偏差である。
【0082】
試料No.1について、硬度の標準偏差は、σ1が2.49GPa、σ2が2.29Gpa、σ3が2.79GPa、σ4が2.78GPa、σ5が1.71GPaであった。試料No.2について、硬度の標準偏差は、σ1が8.32GPa、σ2が8.70Gpa、σ3が8.88GPa、σ4が12.27GPa、σ5が7.17GPaであった。試料No.3について、硬度の標準偏差は、σ1が4.42GPa、σ2が4.50Gpa、σ3が4.13GPa、σ4が4.16GPa、σ5が3.84GPaであった。
【0083】
試料No.4について、硬度の標準偏差は、σ1が2.70GPa、σ2が2.70Gpa、σ3が2.70GPa、σ4が1.92GPa、σ5が2.71GPaであった。試料No.5について、硬度の標準偏差は、σ1が5.82GPa、σ2が4.11Gpa、σ3が5.77GPa、σ4が4.95GPa、σ5が4.17GPaであった。試料No.6について、硬度の標準偏差は、σ1が4.00GPa、σ2が4.23Gpa、σ3が4.47GPa、σ4が4.72GPa、σ5が4.17GPaであった。試料No.7について、硬度の標準偏差は、σ1が7.46GPa、σ2が4.96Gpa、σ3が7.56GPa、σ4が5.31GPa、σ5が5.25GPaであった。
【0084】
また、図7に示す「変動係数1」は、標準偏差σ1を硬度1で割った値(標準偏差σ1/硬度1)である。同様に、変動係数2は、標準偏差σ2を硬度2で割った値であり、変動係数3は、標準偏差σ3を硬度3で割った値であり、変動係数4は、標準偏差σ4を硬度4で割った値であり、変動係数5は、標準偏差σ5を硬度5で割った値である。
【0085】
試料No.1について、変動係数1は0.09、変動係数2は0.08、変動係数3は0.10、変動係数4は0.10、変動係数5は0.06であった。試料No.2について、変動係数1は0.42、変動係数2は0.43、変動係数3は0.43、変動係数4は0.61、変動係数5は0.34であった。試料No.3について、変動係数1は0.15、変動係数2は0.14、変動係数3は0.13、変動係数4は0.14、変動係数5は0.12であった。
【0086】
試料No.4について、変動係数1は0.09、変動係数2は0.09、変動係数3は0.08、変動係数4は0.06、変動係数5は0.09であった。試料No.5について、変動係数1は0.20、変動係数2は0.13、変動係数3は0.20、変動係数4は0.17、変動係数5は0.14であった。試料No.6について、変動係数1は0.15、変動係数2は0.15、変動係数3は0.18、変動係数4は0.20、変動係数5は0.23であった。試料No.7について、変動係数1は0.30、変動係数2は0.17、変動係数3は0.27、変動係数4は0.20、変動係数5は0.21であった。
【0087】
このように、実施例である試料No.1およびNo.4の変動係数は、変動係数1~5のいずれにおいても(すなわち、測定した全ての押込深さにおいて)0.11以下であった。これに対し、比較例である試料No.2,No.3,No.5~No.7の変動係数は、変動係数1~5のいずれにおいても0.11よりも大きかった。この結果から、実施例である試料No.1およびNo.4の被覆層は、比較例である試料No.2,No.3,No.5~No.7の被覆層と比較して、測定箇所による硬度のバラツキが少ない、言い換えれば、硬度がより均質であることがわかる。
【0088】
また、基体がcBNである試料No.1~No.3について切削試験を行った。具体的には、被削材にSCr420Hを使用して、下記に示す条件にて断続試験を行った。断続試験後、被削材SC420Hの切削面の算術平均粗さを測定した。
【0089】
<切削試験条件>
被削材:SCr420H(Φ70×50mm、Φ10-8穴)
切削速度Vc:150m/min
送りf:0.2mm/rev
切込ap:0.2mm
雰囲気:WET
【0090】
図8は、試料No.1~No.3についての切削試験の結果をまとめた表である。図8に示すように、試料No.1~No.3について、被削材の切削面の算術平均粗さRaは、それぞれ、0.69μm、1.48μmおよび1.34μmであった。
【0091】
このように、実施例である試料No.1を用いて切削した被削材は、比較例である試料No.2およびNo.3を用いて切削した被削材と比べて切削面の面粗さが小さかった。この結果から明らかなように、実施例に係る被覆工具は、比較例に係る被覆工具と比べて、被削材の仕上げ面品位を向上させることができる。
【0092】
<その他の実施形態>
上述した実施形態では、窒化硼素粒子等からなる基体10を、超硬合金等からなるチップ本体2に取り付け、これらを被覆層20でコーティングした被覆工具1について説明した。これに限らず、本開示による被覆工具は、たとえば、上面および下面の形状が平行四辺形である六面体形状の基体の全てが立方晶窒化硼素質焼結体であって、かかる基体の上に被覆層が形成されたものであってもよい。
【0093】
上述した実施形態では、被覆工具1の上面および下面の形状が平行四辺形である場合の例を示したが、被覆工具1の上面および下面の形状は、ひし形や正方形等であってもよい。また、被覆工具1の上面および下面の形状は、三角形、五角形、六角形等であってもよい。
【0094】
また、被覆工具1の形状は、ポジティブ型であってもよいしネガティブ型であってもよい。ポジティブ型は、被覆工具1の上面の中心および下面の中心を通る中心軸に対して側面が傾斜しているタイプであり、ネガティブ型は、上記中心軸に対して側面が平行なタイプである。
【0095】
上述した実施形態では、基体10が立方晶窒化硼素(cBN)の粒子を含有する場合の例について説明した。これに限らず、本願の開示する基体は、たとえば、六方晶窒化硼素(hBN)、菱面体晶窒化硼素(rBN)、ウルツ鉱窒化硼素(wBN)等の粒子を含有していてもよい。また、基体10は、窒化硼素に限らず、たとえば超硬合金およびサーメット等であってもよい。超硬合金は、W(タングステン)、具体的には、WC(炭化タングステン)を含有する。また、超硬合金は、Ni(ニッケル)やCo(コバルト)を含有していてもよい。また、サーメットは、たとえばTi(チタン)、具体的には、TiC(炭化チタン)またはTiN(窒化チタン)を含有する。また、サーメットは、NiやCoを含有していてもよい。
【0096】
上述した実施形態では、被覆工具1が切削加工に用いられるものとして説明したが、本願による被覆工具は、たとえば掘削用の工具や刃物など、切削工具以外への適用も可能である。
【0097】
上述してきたように、実施形態に係る被覆工具(一例として、被覆工具1)は、基体(一例として、基体10)と基体の表面の少なくとも一部に位置する被覆層(一例として、被覆層20)とを有する被覆工具である。本開示の一態様による被覆工具は、被覆層の表面から被覆層の厚みの20%の深さまでを測定範囲とし、圧子の押し込み荷重を変化させつつ、測定範囲における異なる深さの5カ所で各々15回ずつ硬度を測定した場合において、15回分の測定値の平均値および標準偏差から求められる硬度の変動係数(標準偏差/平均値)が、各深さにおいて0.11以下である。
【0098】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 被覆工具
2 チップ本体
3 切刃部
4 座面
5 貫通孔
8 稜線部
10 基体
11 切刃
20 被覆層
21 硬質層
22 中間層
23 第1硬質層
23a 第1金属窒化物層
23b 第2金属窒化物層
24 第2硬質層
30 基板
40 接合材
61 角部
70 ホルダ
73 ポケット
75 ネジ
100 切削工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8