(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】車載器、課金システム、課金サーバ、位置推定方法、課金方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/30 20060101AFI20250108BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20250108BHJP
G07B 15/00 20110101ALI20250108BHJP
G07B 15/06 20110101ALI20250108BHJP
【FI】
G01C21/30
G08G1/00 D
G08G1/00 J
G07B15/00 510
G07B15/06
(21)【出願番号】P 2023549305
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2021035408
(87)【国際公開番号】W WO2023047590
(87)【国際公開日】2023-03-30
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】是永 剛志
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-263881(JP,A)
【文献】特開2016-045063(JP,A)
【文献】特開2004-184089(JP,A)
【文献】特開2005-115674(JP,A)
【文献】特開2012-094118(JP,A)
【文献】特開平08-018498(JP,A)
【文献】特開2015-94680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/30
G08G 1/00
G07B 15/00
G07B 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度センサから取得した車両の加速度に基づいて、前記車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定する路面状態推定部と、
複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データと、前記車両が走行する地点の前記路面の前記凹凸状態とを照合して、前記車両の前記地図データ上の位置を推定するマップマッチング部と、
を備え
、
前記路面状態推定部は、第1時刻に前記車両が走行した地点の路面の第1凹凸状態と、前記第1時刻と時系列に連続する第2時刻に前記車両が走行した路面の第2凹凸状態とをそれぞれ推定し、
前記マップマッチング部は、前記地図データから前記第1凹凸状態と一致する第1凹凸状態情報を有する第1地点候補と、前記第2凹凸状態と一致する第2凹凸状態を有する第2地点候補とをそれぞれ抽出し、前記第1凹凸状態および前記第2凹凸状態の組み合わせと一致する前記第1地点候補および前記第2地点候補の組み合わせを絞り込み、前記車両の前記第1時刻および前記第2時刻における位置を推定する、
車載器。
【請求項2】
前記路面状態推定部は、前記加速度に基づいて国際ラフネス指数を算出し、前記国際ラフネス指数に基づいて前記凹凸状態を推定する、
請求項1に記載の車載器。
【請求項3】
前記路面状態推定部は、前記加速度に基づいて前記車両が走行する地点の前記路面の凹凸に起因する前記車両の上下方向の振動の周波数を算出し、前記周波数と、前記車両から取得した速度とに基づいて、前記車両が走行する地点の前記路面の凹凸状態を推定する、
請求項1に記載の車載器。
【請求項4】
GNSS衛星から受信した衛星信号に基づいて推定した前記車両の位置座標を含む測位情報を生成するGNSS測位部を更に備え、
前記マップマッチング部は、前記地図データと前記車両の位置座標とを更に照合して、前記車両の前記地図データ上の位置を推定する、
請求項1から3の何れか一項に記載の車載器。
【請求項5】
前記地図データは、前記地点を複数の異なる速度で走行して計測した速度別の前記凹凸状態情報を含み、
前記マップマッチング部は、車速センサから取得した前記車両の速度と最も近い速度に対応する前記凹凸状態情報と照合して、前記車両の前記地図データ上の位置を推定する、
請求項1から4の何れか一項に記載の車載器。
【請求項6】
請求項1から
5の何れか一項に記載の車載器と、
前記車載器と無線通信を介して接続される課金サーバと、を備え、
前記車載器は、前記車両の前記地図データ上の推定位置を示す推定位置情報を前記課金サーバに送信する送信部を更に備え、
前記課金サーバは、
課金ポイントの地図データ上の位置を示す課金ポイント情報と、前記車載器から受信した前記推定位置情報とを照合して、前記車両が前記課金ポイントを通過したか否かを判定する判定部と、
前記車両が前記課金ポイントを通過したと判定された場合に、前記車両に対し通行料金を課金する課金処理部と、
を備える、
課金システム。
【請求項7】
車両に搭載された車載器から、前記車両の加速度を取得する取得部と、
前記加速度に基づいて、前記車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定する路面状態推定部と、
複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データと、前記車両が走行する地点の前記路面の前記凹凸状態とを照合して、前記車両の前記地図データ上の位置を推定するマップマッチング部と、
課金ポイントの地図データ上の位置を示す課金ポイント情報と、推定した前記車両の前記地図データ上の位置とを照合して、前記車両が前記課金ポイントを通過したか否かを判定する判定部と、
前記車両が前記課金ポイントを通過したと判定した場合に、前記車両に所定の通行料金を課金する課金処理部と、
を備え
、
前記路面状態推定部は、第1時刻に前記車両が走行した地点の路面の第1凹凸状態と、前記第1時刻と時系列に連続する第2時刻に前記車両が走行した路面の第2凹凸状態とをそれぞれ推定し、
前記マップマッチング部は、前記地図データから前記第1凹凸状態と一致する第1凹凸状態情報を有する第1地点候補と、前記第2凹凸状態と一致する第2凹凸状態を有する第2地点候補とをそれぞれ抽出し、前記第1凹凸状態および前記第2凹凸状態の組み合わせと一致する前記第1地点候補および前記第2地点候補の組み合わせを絞り込み、前記車両の前記第1時刻および前記第2時刻における位置を推定する、
課金サーバ。
【請求項8】
加速度センサから取得した車両の加速度に基づいて、前記車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定するステップと、
複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データと、前記車両が走行する地点の前記路面の前記凹凸状態とを照合して、前記車両の前記地図データ上の位置を推定するステップと、
を有
し、
前記凹凸状態を推定するステップは、第1時刻に前記車両が走行した地点の路面の第1凹凸状態と、前記第1時刻と時系列に連続する第2時刻に前記車両が走行した路面の第2凹凸状態とをそれぞれ推定し、
前記位置を推定するステップは、前記地図データから前記第1凹凸状態と一致する第1凹凸状態情報を有する第1地点候補と、前記第2凹凸状態と一致する第2凹凸状態を有する第2地点候補とをそれぞれ抽出し、前記第1凹凸状態および前記第2凹凸状態の組み合わせと一致する前記第1地点候補および前記第2地点候補の組み合わせを絞り込み、前記車両の前記第1時刻および前記第2時刻における位置を推定する、
位置推定方法。
【請求項9】
加速度センサから車両の加速度を取得するステップと、
前記加速度に基づいて、前記車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定するステップと、
複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データと、前記車両が走行する地点の前記路面の前記凹凸状態とを照合して、前記車両の前記地図データ上の位置を推定するステップと、
課金ポイントの地図データ上の位置を示す課金ポイント情報と、推定した前記車両の位置とを照合して、前記車両が前記課金ポイントを通過したか否かを判定するステップと、
前記車両が前記課金ポイントを通過したと判定した場合に、前記車両に所定の通行料金を課金するステップと、
を有
し、
前記凹凸状態を推定するステップは、第1時刻に前記車両が走行した地点の路面の第1凹凸状態と、前記第1時刻と時系列に連続する第2時刻に前記車両が走行した路面の第2凹凸状態とをそれぞれ推定し、
前記位置を推定するステップは、前記地図データから前記第1凹凸状態と一致する第1凹凸状態情報を有する第1地点候補と、前記第2凹凸状態と一致する第2凹凸状態を有する第2地点候補とをそれぞれ抽出し、前記第1凹凸状態および前記第2凹凸状態の組み合わせと一致する前記第1地点候補および前記第2地点候補の組み合わせを絞り込み、前記車両の前記第1時刻および前記第2時刻における位置を推定する、
課金方法。
【請求項10】
加速度センサから取得した車両の加速度に基づいて、前記車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定するステップと、
複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データと、前記車両が走行する地点の前記路面の前記凹凸状態とを照合して、前記車両の前記地図データ上の位置を推定するステップと、
を車載器に実行させるプログラム
であって、
前記凹凸状態を推定するステップは、第1時刻に前記車両が走行した地点の路面の第1凹凸状態と、前記第1時刻と時系列に連続する第2時刻に前記車両が走行した路面の第2凹凸状態とをそれぞれ推定し、
前記位置を推定するステップは、前記地図データから前記第1凹凸状態と一致する第1凹凸状態情報を有する第1地点候補と、前記第2凹凸状態と一致する第2凹凸状態を有する第2地点候補とをそれぞれ抽出し、前記第1凹凸状態および前記第2凹凸状態の組み合わせと一致する前記第1地点候補および前記第2地点候補の組み合わせを絞り込み、前記車両の前記第1時刻および前記第2時刻における位置を推定する、
プログラム。
【請求項11】
車両に搭載された車載器から前記車両の加速度を取得するステップと、
前記加速度に基づいて、前記車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定するステップと、
複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データと、前記車両が走行する地点の前記路面の前記凹凸状態とを照合して、前記車両の前記地図データ上の位置を推定するステップと、
課金ポイントの地図データ上の位置を示す課金ポイント情報と、推定した前記車両の位置とを照合して、前記車両が前記課金ポイントを通過したか否かを判定するステップと、
前記車両が前記課金ポイントを通過したと判定した場合に、前記車両に所定の通行料金を課金するステップと、
を課金サーバに実行させるプログラム
であって、
前記凹凸状態を推定するステップは、第1時刻に前記車両が走行した地点の路面の第1凹凸状態と、前記第1時刻と時系列に連続する第2時刻に前記車両が走行した路面の第2凹凸状態とをそれぞれ推定し、
前記位置を推定するステップは、前記地図データから前記第1凹凸状態と一致する第1凹凸状態情報を有する第1地点候補と、前記第2凹凸状態と一致する第2凹凸状態を有する第2地点候補とをそれぞれ抽出し、前記第1凹凸状態および前記第2凹凸状態の組み合わせと一致する前記第1地点候補および前記第2地点候補の組み合わせを絞り込み、前記車両の前記第1時刻および前記第2時刻における位置を推定する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載器、課金システム、課金サーバ、位置推定方法、課金方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
GNSS(Global Navigation Satellite System)の技術を利用した課金対象道路(有料道路など)の課金システムが考えられている。例えば、特許文献1には、GNSS衛星より受信した衛星信号に基づく測位結果から、車両が課金対象道路に進入した(課金対象道路の入口など、道路上の所定の地点を示す課金ポイントを通過した)ことを検出した場合に、通行料金を課金するシステムが記載されている。
【0003】
GNSS課金システムでは、GNSSの測位結果に含まれる誤差を考慮して、所定の閾値以上の確信度で課金ポイントを通過したことを検出した場合に、通行料金の課金が行われる。これにより、課金ポイント付近の別の道路を走行していた車両に対する測位誤差の影響による誤課金を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、二つの道路が隣接している場所(例えば、一般道路と有料道路が並走している箇所)や、衛星信号の受信条件が悪い場所(例えば、高層ビル付近)では、測位結果の確信度が大きく下がることがある。このような場所に課金ポイントが設けられていると、車両が課金ポイントを通過したにも関わらず、この車両に対する課金が行えない(課金漏れが発生する)可能性がある。また、このような課金漏れを回避するように確信度について十分小さい閾値を設定すると、実際には車両が課金ポイントを通過していない場合にも課金ポイントを通過したと誤判断されて、誤課金が発生する可能性がある。このため、このように測位誤差が生じやすい課金ポイントについては、誤課金及び課金漏れの両方を抑制可能な閾値を設定することが困難である。したがって、測位結果の確信度に関わらず、車両の位置を精度よく推定できる技術が望まれている。
【0006】
本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであって、車両の走行位置を精度よく推定可能な車載器、課金システム、課金サーバ、位置推定方法、課金方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、車載器は、加速度センサから取得した車両の加速度に基づいて、前記車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定する路面状態推定部と、複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データと、前記車両が走行する地点の前記路面の前記凹凸状態とを照合して、前記車両の前記地図データ上の位置を推定するマップマッチング部と、を備える。
【0008】
本開示の一態様によれば、課金システムは、上述の態様に係る車載器と、前記車載器と無線通信を介して接続される課金サーバと、を備え、前記車載器は、前記車両の前記地図データ上の推定位置を示す推定位置情報を前記課金サーバに送信する送信部を更に備え、前記課金サーバは、課金ポイントの地図データ上の位置を示す課金ポイント情報と、前記車載器から受信した前記推定位置情報とを照合して、前記車両が前記課金ポイントを通過したか否かを判定する判定部と、前記車両が前記課金ポイントを通過したと判定された場合に、前記車両に対し通行料金を課金する課金処理部と、を備える。
【0009】
本開示の一態様によれば、課金サーバは、車両に搭載された車載器から、前記車両の加速度を取得する取得部と、前記加速度に基づいて、前記車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定する路面状態推定部と、複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データと、前記車両が走行する地点の前記路面の前記凹凸状態とを照合して、前記車両の前記地図データ上の位置を推定するマップマッチング部と、課金ポイントの地図データ上の位置を示す課金ポイント情報と、推定した前記車両の前記地図データ上の位置とを照合して、前記車両が前記課金ポイントを通過したか否かを判定する判定部と、前記車両が前記課金ポイントを通過したと判定した場合に、前記車両に所定の通行料金を課金する課金処理部と、を備える。
【0010】
本開示の一態様によれば、課金サーバは、車両に搭載された車載器から前記車両の加速度を取得する取得部と、前記加速度に基づいて、前記車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定する路面状態推定部と、課金ポイントが設けられた地点の路面の凹凸状態情報を含む課金ポイント情報と、前記車両が走行する地点の前記路面の前記凹凸状態とを照合して、前記車両が前記課金ポイントを通過したか否かを判定する判定部と、前記車両が前記課金ポイントを通過したと判定した場合に、前記車両に所定の通行料金を課金する課金処理部と、を備える。
【0011】
本開示の一態様によれば、位置推定方法は、加速度センサから取得した車両の加速度に基づいて、前記車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定するステップと、複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データと、前記車両が走行する地点の前記路面の前記凹凸状態とを照合して、前記車両の前記地図データ上の位置を推定するステップと、を有する。
【0012】
本開示の一態様によれば、課金方法は、加速度センサから車両の加速度を取得するステップと、前記加速度に基づいて、前記車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定するステップと、複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データと、前記車両が走行する地点の前記路面の前記凹凸状態とを照合して、前記車両の前記地図データ上の位置を推定するステップと、課金ポイントの地図データ上の位置を示す課金ポイント情報と、推定した前記車両の位置とを照合して、前記車両が前記課金ポイントを通過したか否かを判定するステップと、前記車両が前記課金ポイントを通過したと判定した場合に、前記車両に所定の通行料金を課金するステップと、を有する。
【0013】
本開示の一態様によれば、プログラムは、加速度センサから取得した車両の加速度に基づいて、前記車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定するステップと、複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データと、前記車両が走行する地点の前記路面の前記凹凸状態とを照合して、前記車両の前記地図データ上の位置を推定するステップと、を車載器に実行させる。
【0014】
本開示の一態様によれば、プログラムは、車両に搭載された車載器から前記車両の加速度を取得するステップと、前記加速度に基づいて、前記車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定するステップと、複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データと、前記車両が走行する地点の前記路面の前記凹凸状態とを照合して、前記車両の前記地図データ上の位置を推定するステップと、課金ポイントの地図データ上の位置を示す課金ポイント情報と、推定した前記車両の位置とを照合して、前記車両が前記課金ポイントを通過したか否かを判定するステップと、前記車両が前記課金ポイントを通過したと判定した場合に、前記車両に所定の通行料金を課金するステップと、を課金サーバに実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る車載器、課金システム、課金サーバ、位置推定方法、課金方法、及びプログラムによれば、車両の走行位置を精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態に係る課金システムの全体構成を示す概略図である。
【
図2】第1の実施形態に係る車載器の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る課金サーバの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】第1の実施形態に係る車載器の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】第1の実施形態に係る地図データの一例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係るマップマッチング部の機能を説明するための図である。
【
図7】第1の実施形態に係る課金サーバの処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】第1の実施形態に係る課金ポイント情報の一例を示す図である。
【
図9】第2の実施形態に係る車載器の機能構成を示すブロック図である。
【
図10】第2の実施形態に係る車載器の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】第3の実施形態に係る課金サーバの機能構成を示すブロック図である。
【
図12】第3の実施形態に係る課金サーバの処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】第4の実施形態に係る課金サーバの処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】第4の実施形態に係る課金ポイント情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
以下、本開示の第1の実施形態に係る課金システム1について、
図1~
図7を参照しながら説明する。
【0018】
(全体構成)
図1は、第1の実施形態に係る課金システムの全体構成を示す概略図である。
本実施形態に係る課金システム1は、車両Aの走行位置を逐次収集して、車両Aの走行経路に応じた通行料金を課金する。
図1に示すように、課金システム1は、車両Aに搭載された車載器10と、課金サーバ30とを備えている。
【0019】
車載器10は、車両Aの走行位置を推定し、推定した走行位置(推定位置情報)を課金サーバ30に送信する。車載器10は、車両Aに搭載されたセンサ20から受信したセンサ情報などに基づいて、車両Aの走行位置を推定する。
【0020】
課金サーバ30は、車載器10と無線通信を介して接続される。課金サーバ30は、車載器10から収集した推定位置情報に基づいて車両Aの走行経路を特定し、車両Aが走行した課金対象道路に応じた通行料金を課金する。
【0021】
課金対象道路は、例えば有料道路である。また、課金対象道路は、混雑解消を目的とした有料エリア内に位置する道路(又は、道路の一部区間)であってもよい。
【0022】
本実施形態に係る課金サーバ30は、車両Aの走行経路から、車両Aが所定の課金ポイントを通過したことを検出した場合に、当該車両Aに対して通行料金を課金する。課金ポイントは、例えば、課金対象道路の入口である。また、課金ポイントは、課金対象道路の出口であってもよい。
【0023】
なお、
図1には、課金サーバ30が一台の車両Aの推定位置情報を収集する例が示されているが、これに限られることはない。課金サーバ30は、複数の車両Aそれぞれに搭載された車載器10から推定位置情報を収集し、各車両Aに対して走行経路に応じた通行料金の課金を行うようにしてもよい。
【0024】
(車載器の機能構成)
図2は、第1の実施形態に係る車載器の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、車載器10は、CPU11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信インタフェース14と、インタフェース15と、加速度センサ16とを備えている。
【0025】
CPU11は、予め用意されたプログラムに従って動作することで種々の機能を発揮するプロセッサである。CPU11の機能については後述する。
【0026】
メモリ12は、いわゆる主記憶装置であって、CPU11の動作に必要な記憶領域を有する。
【0027】
ストレージ13は、いわゆる補助記憶装置であって、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの大容量記憶デバイスである。本実施形態に係るストレージ13には、予め地図データD1が記録される。
【0028】
通信インタフェース14は、無線通信を介して課金サーバ30と通信可能に接続するための接続インタフェースである。
【0029】
インタフェース15は、車両Aに設けられたセンサ、機器等と接続するための接続インタフェースである。本実施形態に係るインタフェース15は、車両Aに設けられたセンサ20と接続される。また、本実施形態において、センサ20は、車両Aの速度及び走行距離を検出可能な信号(車速パルス)を出力する車速センサである。
【0030】
加速度センサ16は、車両Aの上下方向における加速度を計測する。なお、本実施形態では、車載器10が加速度センサ16を備えている構成を例としたが、これに限られることはない。他の実施形態では、加速度センサ16は車両Aに取り付けられ、車載器10はインタフェース15を介して車両Aの加速度センサ16から計測値を取得するようにしてもよい。
【0031】
CPU11は、予め用意されたプログラムに従って動作することで、路面状態推定部111、マップマッチング部112、及び送信部113としての機能を発揮する。
【0032】
路面状態推定部111は、加速度センサ16から取得した車両Aの加速度に基づいて、車両Aが走行する地点の路面の凹凸状態を推定する。
【0033】
マップマッチング部112は、複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データD1と、路面状態推定部111が推定した凹凸状態とを照合して、車両Aの地図データD1上の位置を推定する。
【0034】
送信部113は、車両Aの地図データD1上の推定位置を示す推定位置情報を課金サーバ30に送信する。
【0035】
(課金サーバの機能構成)
図3は、第1の実施形態に係る課金サーバの機能構成を示すブロック図である。
図3に示すように、課金サーバ30は、CPU31と、メモリ32と、ストレージ33と、通信インタフェース34とを備えている。
【0036】
CPU31は、予め用意されたプログラムに従って動作することで種々の機能を発揮するプロセッサである。CPU31の機能については後述する。
【0037】
メモリ32は、いわゆる主記憶装置であって、CPU31の動作に必要な記憶領域を有する。
【0038】
ストレージ33は、いわゆる補助記憶装置であって、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの大容量記憶デバイスである。本実施形態に係るストレージ33には、予め課金ポイント情報D2が記録される。
【0039】
通信インタフェース34は、無線通信を介して車載器10と通信可能に接続するための接続インタフェースである。
【0040】
CPU31は、予め用意されたプログラムに従って動作することで、取得部311、判定部312、及び課金処理部313としての機能を発揮する。
【0041】
取得部311は、車載器10から推定位置情報を取得する。
【0042】
判定部312は、課金ポイントの地図データ上の位置を示す課金ポイント情報D2と、車載器10から受信した推定位置情報とを照合して、車両Aが課金ポイントを通過したか否かを判定する。
【0043】
課金処理部313は、車両Aが課金ポイントを通過したと判定された場合に、車両Aに対し通行料金を課金する。
【0044】
(車載器の処理フロー)
図4は、第1の実施形態に係る車載器の処理の一例を示すフローチャートである。
ここでは、
図4を参照しながら、車載器10が車両Aの位置を推定する処理の詳細について説明する。
【0045】
車載器10の路面状態推定部111は、車両Aの車速センサ20及び車載器10の加速度センサ16から、センサ情報を取得する(ステップS100)。具体的には、路面状態推定部111は、車速センサ20から車両Aの速度及び走行距離を検出可能な車速パルスを取得する。また、路面状態推定部111は、加速度センサ16から車両Aの上下方向における加速度の計測値を取得する。なお、取得したセンサ情報は、取得時刻(タイムスタンプ)を付してストレージ13に蓄積される。
【0046】
次に、路面状態推定部111は、取得したセンサ情報に基づいて、車両Aが走行する地点の路面の凹凸状態を推定する(ステップS101)。
【0047】
本実施形態に係る路面状態推定部111は、路面の凹凸状態を表す推定値として、車両Aの上下方向における加速度に基づいて国際ラフネス指数(International Roughness Index、「IRI」とも記載する。)を算出する。IRIは、車両の上下方向における変位の累積値と、車両の走行距離とを比で表したものであり、路面の凹凸の程度を数値化したものである。単位は、例えばm/km、又はm/mである。また、算出したIRIはストレージ13に記録されて蓄積される。
【0048】
路面状態推定部111は、例えば、車両Aが所定距離を走行する毎に、IRIを算出する。この場合、路面状態推定部111は、前回IRIを算出した時刻から現在時刻までの期間にストレージ13に蓄積された車両Aの加速度に基づいて、各時刻における車両Aの上下方向への変位量を求める。そして、路面状態推定部111は、前回から現在までの変位の累積値を、走行距離で除して、IRIを算出する。
【0049】
なお、路面状態推定部111は、所定時間を経過する毎に、または、所定数のセンサ情報を収集する毎に、IRIを算出するようにしてもよい。
【0050】
次に、車載器10のマップマッチング部112は、ストレージ13に予め記録されている地図データD1と、路面状態推定部111が算出したIRIとを照合して、車両Aの地図データD1上の位置(走行位置)を推定する(ステップS102)。
【0051】
図5は、第1の実施形態に係る地図データの一例を示す図である。
図5に示すように、道路網は、複数のノード及びリンクにより構成される。ノードは、交差点、道路形状が変化する位置などの結節点を表す。リンクは、二つのノードを結ぶ線(道路)を表す。各道路は1つ又は複数のリンクにより構成される。地図データD1は、道路網を構成するノード及びリンクに関するノード情報D11及びリンク情報D12を含む。
【0052】
ノード情報D11は、ノードIDと、ノードの位置(緯度、経度)を表す座標情報とを含む。
【0053】
リンク情報D12は、リンクIDと、リンクの始点及び終点を表す情報(始点ノードID及び終点ノードID)と、凹凸状態情報とを含む。凹凸状態情報は道路上の複数の地点それぞれの路面の凹凸状態を表す指標である。本実施形態に係る凹凸状態情報は、複数の地点それぞれを含むリンクについて、計測車両を走行させて予め計測された基準IRIである。「道路上の複数の地点」は、それぞれリンクの代表地点(例えば、リンクの始点、終点、中間点、課金ポイント設置地点等)を示すものであってもよい。なお、凹凸状態情報は、計測車両を複数の異なる速度で走行させて計測した、速度別の基準IRIを含んでいてもよい。
【0054】
また、リンクを一定距離毎に複数の区間に分割して、リンクの区間別に基準IRIを設定してもよい。各区間は、例えば始点ノードからの距離で表される。
図5に示すように、ノードND1からノードND2までの道路を表すリンクLK1は、0m(始点ノードND1の位置)からX1mまでの区間1と、X1mからX2m(終点ノードND2の位置)までの区間2との二つの区間を有しているとする。この場合、リンクLK1の凹凸状態情報には、区間1の基準IRIと、区間2の基準IRIとがそれぞれ記録される。
【0055】
なお、凹凸状態情報は、基準IRIの値そのものではなく、基準IRIに基づくレベルで表されてもよい。例えば、凹凸状態情報は、
図5の例のように、基準IRIの値の大きさに応じて、「小」、「中」、「大」の3つのレベル(IRIレベル)で表されてもよい。また、凹凸状態情報は、更に複数のレベル(1~n段階)に分類されてもよい。
【0056】
マップマッチング部112は、地図データD1を参照して、路面状態推定部111が算出したIRIと一致する凹凸状態情報を有するリンクを、車両Aの走行位置であると推定する。例えば、マップマッチング部112は、IRIの値の大きさから、IRIレベル(「小」、「中」、「大」の何れか)を特定する。例えば特定したIRIレベルが「小」であったとすると、マップマッチング部112は、複数のリンクのうち、凹凸状態情報に記録された基準IRIのレベルが同じ「小」であるリンクを、車両の走行位置に相当するリンクであると推定する。
図5の例では、リンクLK1の区間1が、特定したIRIレベル(「小」)と同じレベルである。したがって、マップマッチング部112は、リンクLK1の区間1を、車両Aの走行位置として推定する。
【0057】
なお、凹凸状態情報として基準IRIの値そのものが記録されている場合、マップマッチング部112は、算出したIRIと、基準IRIとが略一致するリンクを、車両Aの走行位置として推定する。このとき、マップマッチング部112は、算出したIRIが基準IRIから所定範囲以内の値である場合、IRIと基準IRIとが略一致すると判断する。
【0058】
また、マップマッチング部112は、凹凸状態情報に速度別の凹凸状態情報(基準IRI、又は基準IRIレベル)が含まれている場合、車速パルスに基づく車両Aの速度と最も近い速度に対する凹凸状態情報を参照して、車両Aの走行位置(リンク、又は区間)を推定してもよい。これにより、マップマッチング部112は、より精度よく、車両Aの走行位置を推定することができる。
【0059】
なお、路面状態推定部111が算出したIRIが、複数のリンク(又は、区間)の基準IRIと一致する場合がある。このように、ある時刻t1に算出したIRIから走行位置となるリンク(又は、区間)を一つに絞り込めない場合は、マップマッチング部112は、この時刻t1の前(過去)又は次(未来)に算出したIRIとの組み合わせから、走行位置となるリンクを絞り込むようにしてもよい。
【0060】
図6は、第1の実施形態に係るマップマッチング部の機能を説明するための図である。
例えば、マップマッチング部112は、ストレージ13に記憶されているIRIのうち、ある時刻t
1(今回)と時系列に連続するIRIを読み出す。
図6の例では、マップマッチング部112は、前回(時刻t
1-1)、及び前々回(時刻t
1-2)に算出したIRIを読み出す。また、時刻t
1、時刻t
1-1、及び時刻t
1-2のIRIは、それぞれ「小」、「中」、「大」であったとする。
【0061】
マップマッチング部112は、地図データD1から、時刻t
1のIRI(「小」)と一致する基準IRIを有するリンク(又は、区間)として、リンクLK1(区間1)、リンクLK4、及びリンクLK7を抽出するとともに、これらリンクに接続するリンク(又は、区間)の組み合わせ候補を抽出する。
図6の例では、マップマッチング部112は3つの候補を抽出する。このうち、時刻t
1-2~時刻t
1のIRIの組み合わせと一致するリンク(又は、区間)組み合わせは、候補1のみである。したがって、マップマッチング部112は、候補1のリンクLK8、リンクLK9、及びリンクLK1(区間1)を、時刻t
1-2~時刻t
1それぞれにおける車両Aの走行位置として推定する。
【0062】
更に、マップマッチング部112は、複数のIRIの組み合わせに加えて、前回推定した走行位置(前回位置)からの位置関係に基づいて絞り込みを行うようにしてもよい。例えば、マップマッチング部112は、前回位置から到達不可能となる候補リンクを除外して絞り込みを行う。具体的には、マップマッチング部112は、前回位置を推定した時刻からの経過時間、及び車両Aの車速から、前回位置からの走行可能距離を推定する。マップマッチング部112は、候補リンクと前回位置との距離が走行可能距離を超える場合、この候補リンクは到達不可能であるとして除外する。マップマッチング部112は、候補リンクが一つに絞り込めるように、更に前のタイミングで推定した走行位置を参照してもよい。これにより、マップマッチング部112は、過去に推定した走行位置との位置関係に基づいて、車両Aの走行位置を推定することができる。
【0063】
同様に、マップマッチング部112は、次回のタイミングで推定した走行位置(次回位置)へ到達不可能となる候補リンクを除外してもよい。また、マップマッチング部112は、候補位置が一つに絞り込めるように、更に後のタイミングで推定した走行位置を参照してもよい。これにより、マップマッチング部112は、ある時刻において走行位置を一つに絞り込めなかった場合であっても、後の時刻で推定された走行位置から遡って、当該時刻の走行位置を推定することができる。
【0064】
次に、車載器10の送信部113は、マップマッチング部112が推定した車両Aの走行位置(推定位置情報)を課金サーバ30に送信する(ステップS103)。なお、送信部113は、逐次、推定位置情報を課金サーバ30に送信してもよいし、所定時間毎に複数の推定位置情報をまとめて課金サーバ30に送信してもよい。
【0065】
(課金サーバの処理フロー)
図7は、第1の実施形態に係る課金サーバの処理の一例を示すフローチャートである。
ここでは、
図7を参照しながら、課金サーバ30が実行する課金処理の詳細について説明する。
【0066】
課金サーバ30の取得部311は、車載器10から車両Aの推定位置情報を取得する(ステップS110)。
【0067】
次に、課金サーバ30の判定部312は、取得した推定位置情報と、ストレージ33に予め記録されている課金ポイント情報D2とを照合し、車両Aが課金ポイントを通過したか判定する(ステップS111)。
【0068】
図8は、第1の実施形態に係る課金ポイント情報の一例を示す図である。
図8の例では、ノードND1とノードND2とを接続するリンクLK1上に課金ポイントPN1が設けられている。課金ポイント情報D2は、課金ポイントIDと、課金ポイントが設けられたリンクを示す情報(リンクID)と、課金ポイントのリンク上の位置を示す情報とを含む。リンク上の位置は、例えば、リンクの始点ノードからの距離で表される。
課金ポイント情報D2には、課金ポイントPN1がリンクLK1の始点ノードND1からX3mの位置に設けられていることが記録されている。
【0069】
また、課金対象道路の入口及び出口の両方を課金ポイントとして設定する場合、課金ポイント情報D2は、課金ポイントが入口及び出口のどちらであるかを示す情報を更に含んでいてもよい。更に、課金ポイント情報D2は、課金ポイントそれぞれを通過した場合の通行料金を更に含んでいてもよい。
【0070】
判定部312は、車両Aの推定位置情報から、車両Aが課金ポイントを含まないリンクを走行していることを検出した場合、車両Aが課金ポイントを通過していないと判定する(ステップS111:NO)。この場合、課金サーバ30は車両Aに対する課金を行わずに、処理を終了する。
【0071】
一方、判定部312は、車両Aの推定位置情報から、車両Aが課金ポイントを含むリンクを走行したことを検出した場合、車両Aが課金ポイントを通過したと判定する(ステップS111:YES)。
【0072】
車両Aが課金ポイントを通過したと判定された場合(ステップS111:YES)、課金サーバ30の課金処理部313は、車両Aに対し、課金ポイントPN1を通過した場合の通行料金を課金する課金処理を実行する(ステップS112)。なお、課金処理部313は、車両Aがある課金対象道路の入口及び出口の両方の課金ポイントを通過したと判定された場合、この入口から出口までの距離に応じた通行料金を車両Aに対し課金するようにしてもよい。
【0073】
なお、
図7には、課金サーバ30が車載器10から推定位置情報を取得する度に、課金ポイントの通過判定、及び課金処理を行う例が示されているが、これに限られることはない。他の実施形態では、課金サーバ30は、所定時間(例えば1時間)毎に、課金ポイントの通過判定、及び課金処理を行うようにしてもよい。この場合、取得部311は、ステップS110において、車載器10から取得した推定位置情報をストレージ33に記憶して蓄積する。また、判定部312及び課金処理部313は、所定時間が経過したタイミングでストレージ33に蓄積された複数の推定位置情報を読み出して、上記したステップS111~S112を実行する。
【0074】
また、推定位置情報には車載器10又は車両Aを特定可能な識別情報(車載器ID等)が含まれており、取得部311は、ステップS110において、識別情報別(車両別)に推定位置情報をストレージ33に蓄積するようにしてもよい。このようにすることで、課金サーバ30は、
図7の一連の処理を、車両別に実行することができる。
【0075】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る車載器10は、加速度センサ16から取得した車両Aの加速度に基づいて、車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定する路面状態推定部111と、複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データD1と、車両が走行する地点の路面の凹凸状態とを照合して、車両Aの地図データD1上の位置を推定するマップマッチング部112と、を備える。
【0076】
このように、本実施形態に係る車載器10は、GNSSを利用することなく、路面の凹凸状態から車両Aの走行位置を推定するので、GNSSの測位誤差が生じやすい場所を走行している場合であっても、車両Aの走行位置を精度よく推定することができる。
【0077】
また、車載器10の路面状態推定部111は、車両Aの加速度に基づいて、路面の凹凸状態の推定値を表す国際ラフネス指数(IRI)を算出する。
【0078】
このようにすることで、車載器10は、搭載された車両の車種に依存せず、概ね共通のIRIを得ることができる。これにより、車載器10は、どのような車両に搭載されたとしても、精度よく車両の走行位置を推定することが可能である。
【0079】
また、車載器10のマップマッチング部112は、連続する複数の時刻それぞれにおいて算出したIRIの組み合わせに基づいて、車両Aの地図データ上の位置を推定する。
【0080】
このようにすることで、車載器10は、IRIの組み合わせに該当するリンク(又は、区間)の組み合わせを精度よく推定することができる。
【0081】
また、本実施形態に係る課金システム1は、車載器10と、課金サーバ30とを備える。課金サーバ30は、課金ポイントの地図データ上の位置を示す課金ポイント情報D2と、車載器10から受信した推定位置情報とを照合して、車両Aが課金ポイントを通過したか否かを判定する判定部312と、車両Aが課金ポイントを通過したと判定された場合に、車両Aに対し通行料金を課金する課金処理部313と、を備える。
【0082】
このように、車両Aの走行位置の推定(マップマッチング処理)を車載器10側で行うことにより、課金サーバ30の処理負荷を低減することができるとともに、車載器10及び課金サーバ30間の通信量を低減することができる。また、本実施形態に係る車載器10はGNSSの測位結果を使わないので、課金ポイントがGNSSの測位誤差が生じやすい位置に設けられていたとしても、測位誤差に影響されることなく走行位置を精度よく推定することができる。これにより、課金サーバ30において課金漏れや、誤課金が生じる可能性を低減させることができる。
【0083】
<第1の実施形態の変形例>
第1の実施形態では、路面状態推定部111が路面の凹凸状態の推定値として、車両Aの加速度からIRIを算出する態様について説明したが、これに限られることはない。本変形例では、路面状態推定部111が車両Aの加速度及び速度に基づいて、路面の凹凸状態を推定する態様について説明する。
【0084】
例えば、あるリンクA及びリンクBの長さがそれぞれ100mであったとする。また、リンクAには約10cmの溝が5個存在し、リンクBには約5cmの溝が10個存在しているとする。このとき、リンクA及びリンクBそれぞれを走行したときの車両Aの上下方向の変位の累積値は何れも100cmであり、IRIは何れも0.1[m/m]となる。このように、路面の凹凸状態(溝の大きさ、数)が異なるものの、IRIが一致してしまうリンクが存在すると、第1の実施形態に係る車載器10は、車両Aの走行位置(リンク)を推定することが困難になる場合がある。
【0085】
このようなリンクが存在することを想定して、本変形例に係る路面状態推定部111は、
図4のステップS101において、車両Aの加速度から、フーリエ変換などの技術を用いて車両Aの上下方向の変位(振動)の周波数を算出する。また、路面状態推定部111は、周波数及び車両Aの速度に基づいて路面の凹凸状態を推定する。具体的には、路面状態推定部111は、算出した周波数を車両Aの速度で除した値を、路面の凹凸状態の推定値として求める。なお、この値は、単位距離における路面の凹凸の数に相当する。
【0086】
また、地図データD1の凹凸状態情報には、同様に、計測車両で計測した凹凸状態の推定値(=周波数/速度)がリンク別に記録されているものとする。マップマッチング部112は、路面状態推定部111が算出した凹凸状態の推定値と、地図データD1の凹凸状態情報とを照合して、車両Aの走行位置を推定する。
【0087】
上記したリンクA及びリンクBの例では、溝の数が異なるため、凹凸状態の推定値も異なる値となる。したがって、マップマッチング部112におけるリンクAとリンクBとの識別が容易となる。これにより、車載器10は、車両Aの走行位置の推定精度を更に向上させることができる。
【0088】
<第2の実施形態>
次に、本開示の第2の実施形態に係る課金システム1について
図9~
図10を参照しながら説明する。第1の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。本実施形態に係る課金システム1では、車載器10の機能構成が第1の実施形態と異なっている。課金サーバ30の機能構成については、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0089】
(車載器の機能構成)
図9は、第2の実施形態に係る車載器の機能構成を示すブロック図である。
図9に示すように、本実施形態に係る車載器10は、GNSS測位部17を更に備えている。
【0090】
GNSS測位部17は、GNSS衛星から受信した衛星信号に基づいて推定した車両Aの位置座標を含む測位情報を生成する。
【0091】
また、本実施形態に係るマップマッチング部112は、地図データD1と、路面状態推定部111が推定した凹凸状態と、測位情報に含まれる位置座標とを照合して、車両Aの地図データ上の位置を推定する。
【0092】
(車載器の処理フロー)
図10は、第2の実施形態に係る車載器の処理の一例を示すフローチャートである。
ここでは、
図10を参照しながら、車載器10が車両Aの位置を推定する処理の詳細について説明する。
【0093】
車載器10のGNSS測位部17は、衛星信号に基づいて、車両Aの位置座標(緯度、経度)を推定して測位情報を生成する(ステップS200)。また、GNSS測位部17は、衛星信号に基づいて車両Aの速度及び走行距離を更に推定し、これらを測位情報に含めてもよい。
【0094】
また、車載器10の路面状態推定部111は、車両Aの車速センサ20及び車載器10の加速度センサ16から、センサ情報を取得する(ステップS201)。ステップS201の処理は、ステップS200と前後してもよいし、同時に行われてもよい。
【0095】
次に、路面状態推定部111は、加速度センサ16から取得した加速度と、車速センサ20の車速パルスに基づく車両Aの走行距離とに基づいてIRIを算出する(ステップS202)。また、路面状態推定部111は、GNSS測位部17による測位結果の確信度が所定の閾値以上である場合、車速パルスに基づく走行距離に代えて、GNSS測位部が推定した走行距離を使ってもよい。路面状態推定部111がIRIを算出する具体的な方法は、第1の実施形態(
図4のステップS101)と同様である。
【0096】
次に、車載器10のマップマッチング部112は、ストレージ13に予め記録されている地図データD1と、路面状態推定部111が算出したIRIと、GNSS測位部17が推定した車両Aの位置座標とを照合して、車両Aの地図データD1上の位置(走行位置)を推定する(ステップS203)。
【0097】
例えば、マップマッチング部112は、車両Aの位置座標から所定距離の範囲に存在するリンクを候補リンクとして抽出する。また、マップマッチング部112は、抽出した候補リンクのうち、路面状態推定部111が算出したIRIと一致する基準IRIを有するリンクを、車両Aの走行位置であると推定する。候補リンクから走行位置を絞り込む方法は、
図4のステップS102で説明した方法と同様である。
【0098】
次に、車載器10の送信部113は、マップマッチング部112が推定した車両Aの走行位置(推定位置情報)を課金サーバ30に送信する(ステップS204)。当該処理は、
図4のステップS103と同様である。
【0099】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る車載器10は、GNSS衛星から受信した衛星信号に基づいて推定した車両Aの位置座標(緯度、経度)を含む測位情報を生成するGNSS測位部17を更に備える。マップマッチング部112は、地図データD1と、車両の位置座標と、路面の凹凸状態とを照合して、車両Aの地図データD1上の位置を推定する。
【0100】
本実施形態に係る車載器10は、このようにGNSSを利用して測位した車両Aの位置座標から候補リンクを絞り込むことにより、車両Aの走行位置を推定する処理を高速化することができるとともに、走行位置の推定精度を更に向上させることができる。また、車載器10は、GNSSの測位誤差が生じやすい場所であっても、路面の凹凸状態から車両Aの走行位置を絞り込むことができるので、測位結果の確信度に影響されることなく、精度よく車両Aの走行位置を推定することができる。
【0101】
なお、本実施形態では、路面状態推定部111が第1の実施形態(
図4のステップS101)と同様に、IRIを路面の凹凸状態の推定値として算出する例について説明したが、これに限られることはない。路面状態推定部111は、第1の実施形態の変形例と同様の方法(推定値=周波数/速度)で、路面の凹凸状態を推定してもよい。なお、路面状態推定部111は、GNSS測位部17による測位結果の確信度が所定の閾値以上である場合、車速パルスに基づく車両Aの速度に代えて、GNSS測位部が推定した車両Aの速度を使ってもよい。
【0102】
<第3の実施形態>
次に、本開示の第3の実施形態に係る課金システム1について
図11~
図12を参照しながら説明する。上述の各実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。本実施形態に係る課金システム1では、課金サーバ30の機能構成が第1~第2の実施形態と異なっている。
【0103】
(課金サーバの機能構成)
図11は、第3の実施形態に係る課金サーバの機能構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る課金システム1は、車載器10に代えて、課金サーバ30側で車両Aの走行位置を推定する処理を行うようにしたものである。
図11に示すように、本実施形態に係る課金サーバ30のCPU31は、路面状態推定部314、及びマップマッチング部315としての機能を更に発揮する。
【0104】
課金サーバ30の路面状態推定部314及びマップマッチング部315の機能は、第1の実施形態に係る車載器10の路面状態推定部111及びマップマッチング部112の機能と同じである。
【0105】
また、課金サーバ30の取得部311は、車載器10からセンサ情報を取得する。センサ情報は、車載器10の加速度センサ16が計測した加速度と、車載器10が車速センサ20から取得した車速パルスとを含む。
【0106】
課金サーバ30のストレージ33には、課金ポイント情報D2(
図8)に加え、地図データD1(
図5)が更に記録されている。
【0107】
なお、図示は略すが、本実施形態に係る車載器10は、路面状態推定部111及びマップマッチング部112を省略してもよい。車載器10の送信部113は、車速センサ20及び加速度センサ16から取得したセンサ情報を、逐次、課金サーバ30に送信する。
【0108】
(課金サーバの処理フロー)
図12は、第3の実施形態に係る課金サーバの処理の一例を示すフローチャートである。
ここでは、
図12を参照しながら、課金サーバ30が実行する走行位置の推定処理及び課金処理の詳細について説明する。
【0109】
課金サーバ30の取得部311は、車載器10からセンサ情報を取得する(ステップS300)。センサ情報には、車両Aの加速度と、車速パルス(又は車速パルスに基づく車両Aの速度及び走行距離)とが含まれている。
【0110】
次に、課金サーバ30の路面状態推定部314は、車載器10から取得したセンサ情報に基づいて、車両Aが走行する地点の路面の凹凸状態を推定する(ステップS301)。当該処理は、第1の実施形態に係る車載器10の路面状態推定部111の処理(
図4のステップS101)と同じである。
【0111】
次に、課金サーバ30のマップマッチング部315は、ストレージ33に予め記録されている地図データD1と、路面状態推定部314が算出したIRIとを照合して、車両Aの地図データD1上の位置(走行位置)を推定する(ステップS302)。当該処理は、第1の実施形態に係る車載器10のマップマッチング部112の処理(
図4のステップS102)と同じである。
【0112】
次に、課金サーバ30の判定部312は、マップマッチング部315が推定した車両Aの位置(推定位置情報)と、ストレージ33に予め記録されている課金ポイント情報D2とを照合し、車両Aが課金ポイントを通過したか判定する(ステップS303)。当該処理は、第1の実施形態に係る判定部312の処理(
図7のステップS111)と同じである。
【0113】
また、課金サーバ30の課金処理部313は、車両Aが課金ポイントを通過していないと判定された場合(ステップS303:NO)、車両Aに対する課金を行わずに、処理を終了する。
【0114】
一方、課金処理部313は、車両Aが課金ポイントを通過したと判定された場合(ステップS303:YES)、車両Aに対し、課金ポイントを通過した場合の通行料金を課金する課金処理を実行する(ステップS304)。当該処理は、第1の実施形態に係る課金処理部313の処理(
図7のステップS112)と同じである。
【0115】
なお、本実施形態では、課金サーバ30の路面状態推定部314及びマップマッチング部315がIRIに基づいて路面状態の推定、及び走行位置の推定を行う例について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、路面状態推定部314及びマップマッチング部315は、第1の実施形態の変形例と同様に、車両Aの上下方向の振動の周波数と、車両Aの速度とに基づいて、凹凸状態の推定を行うようにしてもよい。これにより、マップマッチング部315は、より精度よく車両Aの走行位置を推定することができる。
【0116】
また、更に他の実施形態では、マップマッチング部315は、第2の実施形態と同様に、車載器10のGNSS測位部17の測位情報を更に用いて、車両Aの走行位置を推定してもよい。この場合、車載器10の送信部113は、GNSS測位部17が生成した測位情報を、逐次、課金サーバ30に送信する。また、課金サーバ30の取得部311は車載器10から測位情報を更に取得する。これにより、課金サーバ30のマップマッチング部315は、測位情報及び路面の凹凸状態の両方を使って、より正確に車両の走行位置を推定することが可能となる。
【0117】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る課金サーバ30は、車両Aに搭載された車載器10から、車両Aの加速度を含むセンサ情報を取得する取得部311と、加速度に基づいて、車両Aが走行する地点の路面の凹凸状態を推定する路面状態推定部314と、複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データD1と、凹凸状態とを照合して、車両Aの地図データD1上の位置(推定位置情報)を推定するマップマッチング部315と、課金ポイントの地図データ上の位置を示す課金ポイント情報D2と、車両Aの推定位置情報とを照合して、車両Aが課金ポイントを通過したか否かを判定する判定部312と、車両Aが課金ポイントを通過したと判定した場合に、車両Aに所定の通行料金を課金する課金処理部313と、を備える。
【0118】
このように、課金サーバ30に車両の走行位置を推定する機能を持たせることにより、車載器10の処理負荷を大幅に低減させることができる。これにより、車載器10を簡易且つ安価な構成とすることができる。
【0119】
<第4の実施形態>
次に、本開示の第4の実施形態に係る課金システム1について
図13~
図14を参照しながら説明する。本実施形態に係る課金システム1は、第3の実施形態に係る課金サーバ30とは異なり、車両Aの走行位置を推定せず、車両Aが課金ポイントを通過したか否かのみを監視する。したがって、図示は略すが、本実施形態では、課金サーバ30のマップマッチング部315を省略してもよい。
【0120】
(課金サーバの処理フロー)
図13は、第4の実施形態に係る課金サーバの処理の一例を示すフローチャートである。
ここでは、
図13を参照しながら、課金サーバ30が実行する課金処理の詳細について説明する。
【0121】
課金サーバ30の取得部311は、車載器10からセンサ情報を取得する(ステップS400)。また、課金サーバ30の路面状態推定部314は、取得したセンサ情報に基づいて、車両Aが走行する地点の路面の凹凸状態を推定する(ステップS401)。これらの処理は、第3の実施形態(
図12のステップS300~S301)と同じである。
【0122】
次に、課金サーバ30の判定部312は、ストレージ33に予め記録されている課金ポイント情報D3(
図14)と、路面状態推定部314が推定した路面の凹凸状態(IRI)とを照合し、車両Aが課金ポイントを通過したか判定する(ステップS402)。
【0123】
図14は、第4の実施形態に係る課金ポイント情報の一例を示す図である。
本実施形態に係る課金サーバ30のストレージには、上述の地図データD1及び課金ポイント情報D2に代えて、
図14に示す課金ポイント情報D3が記録されている。
【0124】
課金ポイント情報D3は、課金ポイントIDと、課金ポイントが設けられたリンクを示す情報(リンクID)と、課金ポイントのリンク上の位置を示す情報に加えて、課金ポイントが設けられたリンク(又は、区間)の凹凸状態情報を更に含む。
図14の例では、計測車両により予め計測された課金ポイント周辺(課金ポイントが設けられたリンク、又は区間)の基準IRIが凹凸状態情報として記録される。なお、凹凸状態情報は、計測車両を複数の速度で走行させて計測した、速度別の基準IRIを含んでいてもよい。
【0125】
判定部312は、課金ポイント情報D3に、算出したIRIと略一致する基準IRIを有する課金ポイントが存在しない場合、車両Aは課金ポイントを通過していないと判定する(ステップS402:NO)。この場合、課金処理部313は、車両Aに対する課金を行わずに、処理を終了する。
【0126】
一方、判定部312は、算出したIRIと略一致する基準IRIを有する課金ポイントが存在する場合、車両Aはこの課金ポイントを通過したと判定する(ステップS402:YES)。この場合、課金処理部313は、車両Aに対し、課金ポイントを通過した場合の通行料金を課金する課金処理を実行する(ステップS403)。ステップS403の処理は、第3の実施形態(
図12のステップS304)と同じである。
【0127】
なお、判定部312における課金ポイントの通過判定の精度を向上させるため、課金ポイントが設けられた地点の路面に、課金ポイント別に異なる凹凸パターンを付す(溝又は突起などを形成する)ようにしてもよい。そうすると、課金ポイント情報D3凹凸状態情報(IRI情報)は、路面の凹凸パターンにより、課金ポイント別に異なる値が設定されることとなる。これにより、判定部312は、車両Aが通過した課金ポイントを一つに絞り込むことが容易となる。
【0128】
なお、本実施形態では、課金サーバ30の路面状態推定部314がIRIに基づいて路面状態の推定、及び走行位置の推定を行う例について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、路面状態推定部314は、第1の実施形態の変形例と同様に、車両Aの上下方向の振動の周波数と、車両Aの速度とに基づいて、凹凸状態の推定を行うようにしてもよい。これにより、判定部312は、より精度よく車両Aが課金ポイントを通過したか否かを判定することができる。また、この場合、課金ポイント情報D3の凹凸状態情報には、計測車両で計測した凹凸状態の推定値(=周波数/速度)がリンク別に記録される。
【0129】
また、更に他の実施形態では、判定部312は、車載器10のGNSS測位部17の測位情報を更に用いて、車両Aが課金ポイントを通過したか判定してもよい。また、このとき、課金ポイント情報D3は、課金ポイントの位置座標(緯度、経度)を更に含む。これにより、課金サーバ30の判定部312は、測位情報及び路面の凹凸状態の両方を使って、より正確に車両Aが課金ポイントを通過したか判定することができる。
【0130】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る課金サーバ30は、車両Aに搭載された車載器10から車両Aの加速度を取得する取得部311と、加速度に基づいて、車両Aが走行する地点の路面の凹凸状態を推定する路面状態推定部314と、課金ポイントが設けられた地点の路面の凹凸状態情報を含む課金ポイント情報D3と、凹凸状態とを照合して、車両Aが課金ポイントを通過したか否かを判定する判定部312と、車両Aが課金ポイントを通過したと判定した場合に、車両Aに所定の通行料金を課金する課金処理部313と、を備える。
【0131】
このようにすることで、課金サーバ30は、車両Aが課金ポイントを通過したか否かのみを判定すればよいので、常時、マップマッチング処理(走行位置の推定)を行うよりも処理負荷を低減することができる。
【0132】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0133】
例えば、上記した実施形態において、地図データD1(又は、課金ポイント情報D3)の作成者が、計測車両によりリンク別の凹凸状態情報を計測する例について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、不図示のセンタサーバが複数の車載器からマップマッチング結果(車両の走行位置)及びセンサ情報(加速度等)を含むプローブデータを収集して、リンク別の凹凸状態情報を生成してもよい。なお、マップマッチング結果は、従来のマップマッチング技術に基づく位置推定結果であってよい。
【0134】
センタサーバは、あるリンクについて、複数の車載器から所定数(例えば、1万件)以上のプローブデータを収集すると、収集したプローブデータに基づいてこのリンクの凹凸状態情報を生成する。また、センタサーバは、所定数以上のプローブデータが集まっていないリンクについては、凹凸状態情報を「NULL」にする。なお、センタサーバは、所定数以上のプローブデータが集まっていないリンクについて、現時点で収集できたプローブデータに基づく凹凸状態情報を生成し、データ精度が低いことを示すフラグを付すようにしてもよい。センタサーバは、凹凸状態情報を生成する毎に、又は、所定時間が経過する毎に、凹凸状態情報を車載器10又は課金サーバ30に送信して、地図データD1又は課金ポイント情報D3を更新させる。なお、凹凸状態情報を生成する機能は、課金サーバ30が有していてもよい。
【0135】
また、上記した実施形態において、リンクの識別性を向上させるために、道路の路面に凹凸パターンを設けてもよい。これにより、地図データD1にリンクそれぞれで異なる凹凸状態情報を記録されることとなるので、車載器10又は課金サーバ30において、凹凸状態に基づく走行位置の推定精度を向上させることができる。なお、凹凸パターンは、測位誤差が生じやすい箇所など、一部の道路のみに設けてもよい。
【0136】
また、上記した実施形態において、車載器10又は課金サーバ30が車両Aの走行位置を示すリンク(又は、リンクの区間)を推定する例について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、車載器10又は課金サーバ30は、車両Aの走行レーンを推定してもよい。この場合、地図データD1(又は、課金ポイント情報D3)は、レーン別の凹凸状態情報を含む。また、走行レーンの推定精度を上げるために、レーンそれぞれに異なる凹凸パターンを付してもよい。このようにすることで、課金サーバ30は、レーン単位で車両Aに対する課金を行うことができる。これにより、課金サーバ30は、レーン毎に通行料金を異ならせるなど、柔軟な運用を行うことが可能となる。また、課金サーバ30は、車両Aの走行レーンが不正であった場合(例えば、許可された車両のみが走行可能なレーンを、許可されていない車両が不正に走行した場合)に、当該車両Aに対し罰金を課金するようにしてもよい。
【0137】
また、上記した実施形態において、車載器10が推定した推定位置情報を通行料金の課金処理に利用する例について説明したが、これに限られることはない。車載器10の推定位置情報は、ナビゲーション機能、フリート管理、テレマティクス保険などに利用してもよい。
【0138】
<付記>
上述の実施形態に記載の車載器、課金システム、課金サーバ、位置推定方法、課金方法、及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0139】
(1)本開示の第1の態様によれば、車載器(10)は、加速度センサから取得した車両の加速度に基づいて、車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定する路面状態推定部(111)と、複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データ(D1)と、車両が走行する地点の路面の凹凸状態とを照合して、車両の地図データ上の位置を推定するマップマッチング部(112)と、を備える。
【0140】
車載器は、GNSSを利用することなく、路面の凹凸状態から車両の走行位置を推定するので、GNSSの測位誤差が生じやすい場所を走行している場合であっても、車両の走行位置を精度よく推定することができる。
【0141】
(2)本開示の第2の態様によれば、第1の態様に係る車載器(10)において、路面状態推定部(111)は、加速度に基づいて国際ラフネス指数を算出し、国際ラフネス指数に基づいて凹凸状態を推定する。
【0142】
このようにすることで、車載器は、搭載された車両の車種に依存せず、概ね共通のIRIを得ることができる。これにより、車載器は、どのような車両に搭載されたとしても、精度よく車両の走行位置を推定することが可能である。
【0143】
(3)本開示の第3の態様によれば、第1の態様に係る車載器(10)において、路面状態推定部(111)は、加速度に基づいて車両が走行する地点の路面の凹凸に起因する車両の上下方向の振動の周波数を算出し、周波数と、車両から取得した速度とに基づいて、車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定する。
【0144】
このようにすることで、車載器は、道路別の凹凸状態の特徴(凹凸の数など)をより精密に検出することができるので、車両の走行位置の推定精度を更に向上させることができる。
【0145】
(4)本開示の第4の態様によれば、第1から第3の何れか一の態様に係る車載器(10)は、GNSS衛星から受信した衛星信号に基づいて推定した車両の位置座標を含む測位情報を生成するGNSS測位部(17)を更に備え、マップマッチング部(112)は、地図データ(D1)と車両の位置座標とを更に照合して、車両の地図データ上の位置を推定する。
【0146】
車載器は、このようにGNSSを利用して測位した車両の位置座標から候補リンクを絞り込むことにより、車両の走行位置を推定する処理を高速化することができるとともに、走行位置の推定精度を更に向上させることができる。また、車載器は、GNSSの測位誤差が生じやすい場所であっても、路面の凹凸状態から車両の走行位置を絞り込むことができるので、測位結果の確信度による影響されることなく、精度よく車両の走行位置を推定することができる。
【0147】
(5)本開示の第5の態様によれば、課金システム(1)は、第1から第4の何れか一の態様に係る車載器(10)と、車載器(10)と無線通信を介して接続される課金サーバ(30)と、を備える。車載器(10)は、車両の地図データ上の推定位置を示す推定位置情報を課金サーバ(30)に送信する送信部(113)を更に備える。課金サーバ(30)は、課金ポイントの地図データ上の位置を示す課金ポイント情報(D2)と、車載器(10)から受信した推定位置情報とを照合して、車両が課金ポイントを通過したか否かを判定する判定部(312)と、車両が課金ポイントを通過したと判定された場合に、車両に対し通行料金を課金する課金処理部(313)と、を備える。
【0148】
このように、車両の走行位置の推定(マップマッチング処理)を車載器側で行うことにより、課金サーバの処理負荷を低減することができるとともに、車載器及び課金サーバ間の通信量を低減することができる。また、車載器は、路面の凹凸状態情報を用いて走行位置を精度よく推定することができる。これにより、課金サーバにおいて課金漏れや、誤課金が生じる可能性を低減させることができる。
【0149】
(6)本開示の第6の態様によれば、課金サーバ(30)は、車両に搭載された車載器(10)から、車両の加速度を取得する取得部(311)と、加速度に基づいて、車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定する路面状態推定部(314)と、複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データ(D1)と、車両が走行する地点の路面の凹凸状態とを照合して、車両の地図データ上の位置を推定するマップマッチング部(315)と、課金ポイントの地図データ上の位置を示す課金ポイント情報(D2)と、推定した車両の地図データ上の位置とを照合して、車両が課金ポイントを通過したか否かを判定する判定部(312)と、車両が課金ポイントを通過したと判定した場合に、車両に所定の通行料金を課金する課金処理部(313)と、を備える。
【0150】
このように、課金サーバに車両の走行位置を推定する機能を持たせることにより、車載器の処理負荷を大幅に低減させることができる。これにより、車載器を簡易且つ安価な構成とすることができる。
【0151】
(7)本開示の第7の態様によれば、課金サーバ(30)は、車両に搭載された車載器(10)から車両の加速度を取得する取得部(311)と、加速度に基づいて、車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定する路面状態推定部(314)と、課金ポイントが設けられた地点の路面の凹凸状態情報を含む課金ポイント情報(D3)と、車両が走行する地点の路面の凹凸状態とを照合して、車両が課金ポイントを通過したか否かを判定する判定部(312)と、車両が課金ポイントを通過したと判定した場合に、車両に所定の通行料金を課金する課金処理部(313)と、を備える。
【0152】
このようにすることで、課金サーバは、車両が課金ポイントを通過したか否かのみを判定すればよいので、常時、マップマッチング処理(走行位置の推定)を行うよりも処理負荷を低減することができる。
【0153】
(8)本開示の第8の態様によれば、位置推定方法は、加速度センサ(16)から取得した車両の加速度に基づいて、車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定するステップと、複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データ(D1)と、車両が走行する地点の路面の凹凸状態とを照合して、車両の地図データ上の位置を推定するステップと、を有する。
【0154】
(9)本開示の第9の態様によれば、課金方法は、加速度センサ(16)から車両の加速度を取得するステップと、加速度に基づいて、車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定するステップと、複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データと、車両が走行する地点の路面の凹凸状態とを照合して、車両の地図データ上の位置を推定するステップと、課金ポイントの地図データ上の位置を示す課金ポイント情報(D2)と、推定した車両の位置とを照合して、車両が課金ポイントを通過したか否かを判定するステップと、車両が課金ポイントを通過したと判定した場合に、車両に所定の通行料金を課金するステップと、を有する。
【0155】
(10)本開示の第10の態様によれば、プログラムは、加速度センサ(16)から取得した車両の加速度に基づいて、車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定するステップと、複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データ(D1)と、車両が走行する地点の路面の凹凸状態とを照合して、車両の地図データ上の位置を推定するステップと、を車載器(10)に実行させる。
【0156】
(11)本開示の第11の態様によれば、プログラムは、車両に搭載された車載器(10)から車両の加速度を取得するステップと、加速度に基づいて、車両が走行する地点の路面の凹凸状態を推定するステップと、複数の地点それぞれの路面の凹凸状態情報を含む地図データ(D1)と、車両が走行する地点の路面の凹凸状態とを照合して、車両の地図データ上の位置を推定するステップと、課金ポイントの地図データ上の位置を示す課金ポイント情報(D2)と、推定した車両の位置とを照合して、車両が課金ポイントを通過したか否かを判定するステップと、車両が課金ポイントを通過したと判定した場合に、車両に所定の通行料金を課金するステップと、を課金サーバ(30)に実行させる。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本開示に係る車載器、課金システム、課金サーバ、位置推定方法、課金方法、及びプログラムによれば、車両の走行位置を精度よく推定することができる。
【符号の説明】
【0158】
1 課金システム
10 車載器
11 CPU
111 路面状態推定部
112 マップマッチング部
113 送信部
12 メモリ
13 ストレージ
14 通信インタフェース
15 インタフェース
16 加速度センサ(センサ)
17 GNSS測位部
20 車速センサ(センサ)
30 課金サーバ
31 CPU
311 取得部
312 判定部
313 課金処理部
314 路面状態推定部
315 マップマッチング部
32 メモリ
33 ストレージ
34 通信インタフェース
D1 地図データ
D2、D3 課金ポイント情報