(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】多芯ケーブルの芯線整列装置
(51)【国際特許分類】
H01R 43/28 20060101AFI20250108BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20250108BHJP
H01R 43/048 20060101ALI20250108BHJP
B21F 1/00 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
H01R43/28
H02G1/14
H01R43/048 Z
B21F1/00 C
(21)【出願番号】P 2023551345
(86)(22)【出願日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2022034996
(87)【国際公開番号】W WO2023054063
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2021158371
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】白井 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】岡田 基
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶紀
(72)【発明者】
【氏名】岡田 守弘
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-208650(JP,A)
【文献】特開平2-281584(JP,A)
【文献】特開2020-48402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/28
H02G 1/14
H01R 43/048
B21F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の芯線の先端部がシースから露出した多芯ケーブルを把持する部材であって、前記露出した複数の芯線が所定の先端方向を向くように前記多芯ケーブルを把持する第1把持部材と、
前記第1把持部材を駆動して前記多芯ケーブルを把持させる第1駆動部と、
複数の櫛歯を有し、前記第1把持部材よりも前記先端方向に設けられた整列部材と、
前記複数の櫛歯が前記複数の芯線の間に差し入れられるように、前記第1把持部材および前記整列部材のうちの少なくとも一方を移動させる第2駆動部と、
前記芯線の前記第1把持部材によって把持される部分と前記櫛歯が差し入れられる部分との間に、前記先端方向に交差する交差方向に凸した屈曲部を形成する屈曲装置と、
前記第1駆動部、前記第2駆動部、および前記屈曲装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1駆動部を制御して、前記第1把持部材に前記多芯ケーブルを把持させる把持制御と、
前記屈曲装置を制御して、前記複数の芯線に前記屈曲部を形成させる屈曲制御と、
前記把持制御および前記屈曲制御の後に、前記第2駆動部を制御して、前記複数の櫛歯を前記複数の芯線の間に差し入れる整列制御と、を行うように構成されている、
多芯ケーブルの芯線整列装置。
【請求項2】
前記屈曲装置は、
前記交差方向に凸した突起部を有する第1屈曲部材と、
前記突起部が嵌る受部を有する第2屈曲部材と、
少なくとも前記第1屈曲部材を前記交差方向に移動させることにより、前記第1屈曲部材と前記第2屈曲部材とを接近させる第3駆動部と、を備え、
前記第1屈曲部材と前記第2屈曲部材とは、前記第1把持部材によって把持された状態の前記多芯ケーブルを挟んで前記突起部と前記受部とが向かい合うように設けられ、
前記制御装置は、前記屈曲制御において、前記第3駆動部を駆動させて前記第1屈曲部材と前記第2屈曲部材とを接近させ、前記複数の芯線を前記突起部と前記受部とによって挟み込むことにより、前記複数の芯線に前記屈曲部を形成する、
請求項1に記載の多芯ケーブルの芯線整列装置。
【請求項3】
前記第1屈曲部材は、前記突起部を収容しまたは突出させることが可能な本体を備えており、
前記突起部を前記本体に収容しまたは前記本体から突出させる第4駆動部と、
前記第1屈曲部材および前記第2屈曲部材を前記第1把持部材に対して前記先端方向に移動させる移動装置と、をさらに備え、
前記第1屈曲部材と前記第2屈曲部材とは、前記突起部が前記本体に収容された状態において、前記第1把持部材によって把持された状態の前記多芯ケーブルの前記複数の芯線を挟持することが可能に構成され、
前記制御装置は、
前記突起部が収容された状態の前記第1屈曲部材と前記第2屈曲部材とを接近させて前記複数の芯線を挟持させ、さらに前記移動装置を制御して前記第1屈曲部材および前記第2屈曲部材を前記先端方向に移動させるしごき制御を、前記屈曲制御の前に行い、
前記しごき制御の後であって前記屈曲制御の前に、前記第4駆動部を制御して前記突起部を突出させる、
請求項2に記載の多芯ケーブルの芯線整列装置。
【請求項4】
前記第1屈曲部材には、前記複数の芯線に対応するとともに前記先端方向に直交する直交方向に並んだ複数の第1溝が形成されており、
前記第1屈曲部材は、前記第2屈曲部材とともに前記複数の芯線を挟持する際に、前記複数の第1溝で前記複数の芯線に接する、
請求項3に記載の多芯ケーブルの芯線整列装置。
【請求項5】
前記第1屈曲部材は、前記複数の第1溝が形成されるとともに前記直交方向に延びる軸線周りに回転する第1ローラを備えている、
請求項4に記載の多芯ケーブルの芯線整列装置。
【請求項6】
前記第2屈曲部材には、前記複数の芯線に対応するとともに前記先端方向に直交する直交方向に並んだ複数の第2溝が形成されており、
前記第2屈曲部材は、前記第1屈曲部材とともに前記複数の芯線を挟持する際に、前記複数の第2溝で前記複数の芯線に接する、
請求項3~5のいずれか一つに記載の多芯ケーブルの芯線整列装置。
【請求項7】
前記第2屈曲部材は、前記複数の第2溝が形成されるとともに前記直交方向に延びる軸線周りに回転する第2ローラを備えている、
請求項6に記載の多芯ケーブルの芯線整列装置。
【請求項8】
前記屈曲部を形成しているときの前記突起部および前記受部よりも前記先端方向に設けられ、前記複数の芯線を把持可能な第2把持部材と、
前記第2把持部材を駆動して前記複数の芯線を把持させる第5駆動部と、をさらに備え、
前記制御装置は、
前記屈曲制御において、前記第5駆動部を制御して前記第2把持部材に前記複数の芯線を把持させるとともに、前記第1駆動部を制御して前記第1把持部材に前記多芯ケーブルを解放させ、
前記屈曲制御の後に前記把持制御を行い、前記把持制御において、前記第1駆動部を制御して前記第1把持部材に前記多芯ケーブルを把持させるとともに、前記第5駆動部を制御して前記第2把持部材に前記複数の芯線を解放させる、
請求項2~7のいずれか一つに記載の多芯ケーブルの芯線整列装置。
【請求項9】
前記第2把持部材は、前記整列制御における前記整列部材の移動方向に関して前記複数の芯線よりも前方に配置された第1アームと、後方に配置された第2アームと、を備え、
前記第1アームは、前記整列制御において、前記複数の芯線を支持する、
請求項8に記載の多芯ケーブルの芯線整列装置。
【請求項10】
前記屈曲装置は、
前記第1把持部材よりも前記先端方向に設けられ、前記複数の芯線を把持可能な第2把持部材と、
前記第2把持部材を駆動して前記複数の芯線を把持させる他の駆動部と、
前記第1把持部材と前記第2把持部材とを接近させるアクチュエータと、を備え、
前記制御装置は、前記屈曲制御において、前記第1駆動部を制御して前記第1把持部材に前記多芯ケーブルを把持させるとともに、前記他の駆動部を制御して前記第2把持部材に前記複数の芯線を把持させ、さらに、前記アクチュエータを制御して前記第1把持部材と前記第2把持部材とを接近させることにより、前記複数の芯線に前記屈曲部を形成する、
請求項1に記載の多芯ケーブルの芯線整列装置。
【請求項11】
前記第1把持部材によって前記多芯ケーブルが把持された状態において前記複数の芯線を挟持可能な挟持部材と、
前記挟持部材を駆動して前記複数の芯線を挟持させる挟持装置と、
前記挟持部材を前記第1把持部材に対して前記先端方向に移動させる移動装置と、をさらに備え、
前記制御装置は、前記挟持装置を制御して前記挟持部材に前記複数の芯線を挟持させ、さらに前記移動装置を制御して前記挟持部材を前記先端方向に移動させるしごき制御を、前記屈曲制御の前に行う、
請求項1、2、または10に記載の多芯ケーブルの芯線整列装置。
【請求項12】
前記整列部材の移動方向のうち、前記複数の櫛歯が前記複数の芯線から離れる方向を離脱方向とするとき、
前記複数の櫛歯は、前記複数の芯線をそれぞれ挟持する複数の隙間を互いの間に形成しており、前記離脱方向に向かうほど前記複数の隙間同士が離れるように前記離脱方向に向かって広がっている、
請求項1~11のいずれか一つに記載の多芯ケーブルの芯線整列装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多芯ケーブルの芯線整列装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多芯ケーブルの芯線に端子を圧着するのに先立って、多芯ケーブルの複数の芯線を整列させることが従来から行われている。例えば特許文献1には、複数の芯線を一括ピッチ揃え治具に挿通させてクランプ状に挟み込み、一定の狭いピッチで並列に固定する方法が開示されている。特許文献1の一括ピッチ揃え治具は、多芯ケーブルのシース部分が挿通されるシース部分用の孔と、シース部分用の孔から分岐し、それぞれ1本の芯線が挿通される複数の芯線用の孔と、を備えた治具である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図17は、特許文献1に記載された一括ピッチ揃え治具を使って芯線2を整列させることにより形成されると考えられる多芯ケーブル1の平面図である。特許文献1の一括ピッチ揃え治具で芯線を整列させると、芯線2の並び方向(
図17の紙面上下方向)において端の芯線2、例えば下端の芯線2Rは、先端が紙面下方に移動するように曲げられる。これにより、芯線2Rの先端部は、中央の芯線2Cの先端部よりも芯線2の根元側に引っ込む。
図17に示すように、特許文献1の一括ピッチ揃え治具で芯線2を整列させると、複数の芯線2の先端は、中央の芯線2Cの先端が最も凸した略円弧状の軌跡に沿って配列される。端子を圧着するために、かかる複数の芯線2を
図17のカット線CLで切り揃える(以下、「揃え切り」とも呼ぶ)と、端子の圧着はできるが、芯線2の長さが異なってしまう。
図17に示すように、中央の芯線2Cが切られる長さは、端の芯線2Rが切られる長さよりも長い。この複数の芯線2の間の長さの差が問題となる可能性がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、多芯ケーブルの複数の芯線を整列させる芯線整列装置であって、整列後の芯線の先端位置を揃えることができる芯線整列装置を提供することである。
【0006】
本発明に係る多芯ケーブルの芯線整列装置は、第1把持部材と、第1駆動部と、整列部材と、第2駆動部と、屈曲装置と、制御装置と、を備える。前記第1把持部材は、複数の芯線の先端部がシースから露出した多芯ケーブルを把持する部材であって、前記露出した複数の芯線が所定の先端方向を向くように前記多芯ケーブルを把持する。前記第1駆動部は、前記第1把持部材を駆動して前記多芯ケーブルを把持させる。前記整列部材は、複数の櫛歯を有し、前記第1把持部材よりも前記先端方向に設けられている。前記第2駆動部は、前記複数の櫛歯が前記複数の芯線の間に差し入れられるように、前記第1把持部材および前記整列部材のうちの少なくとも一方を移動させる。前記屈曲装置は、前記芯線の前記第1把持部材によって把持される部分と前記櫛歯が差し入れられる部分との間に、前記先端方向に交差する交差方向に凸した屈曲部を形成する。前記制御装置は、前記第1駆動部、前記第2駆動部、および前記屈曲装置を制御する。前記制御装置は、把持制御と、屈曲制御と、整列制御と、を行うように構成されている。前記把持制御は、前記第1駆動部を制御して、前記第1把持部材に前記多芯ケーブルを把持させる制御である。前記屈曲制御は、前記屈曲装置を制御して、前記複数の芯線に前記屈曲部を形成させる制御である。前記整列制御は、前記把持制御および前記屈曲制御の後に行われる。前記整列制御は、前記第2駆動部を制御して、前記複数の櫛歯を前記複数の芯線の間に差し入れる制御である。
【0007】
上記多芯ケーブルの芯線整列装置によれば、整列制御において各芯線が整列部材に引っ張られても、各芯線の形成された屈曲部が変形するため、各芯線の先端の位置が動きにくい。そのため、整列後の芯線の先端位置を揃えることができる。
【0008】
本発明に係る芯線整列装置の好ましい一態様によれば、前記屈曲装置は、前記交差方向に凸した突起部を有する第1屈曲部材と、前記突起部が嵌る受部を有する第2屈曲部材と、少なくとも前記第1屈曲部材を前記交差方向に移動させることにより、前記第1屈曲部材と前記第2屈曲部材とを接近させる第3駆動部と、を備えている。前記第1屈曲部材と前記第2屈曲部材とは、前記第1把持部材によって把持された状態の前記多芯ケーブルを挟んで前記突起部と前記受部とが向かい合うように設けられている。前記制御装置は、前記屈曲制御において、前記第3駆動部を駆動させて前記第1屈曲部材と前記第2屈曲部材とを接近させ、前記複数の芯線を前記突起部と前記受部とによって挟み込むことにより、前記複数の芯線に前記屈曲部を形成する。
【0009】
上記多芯ケーブルの芯線整列装置によれば、屈曲部は、突起部と受部とによって芯線を挟み込むことにより形成される。そのため、屈曲部の形成場所や形状のばらつきを抑制することができる。
【0010】
上記芯線整列装置のうちの好ましい一態様によれば、前記第1屈曲部材は、前記突起部を収容しまたは突出させることが可能な本体を備えている。芯線整列装置は、前記突起部を前記本体に収容しまたは前記本体から突出させる第4駆動部と、前記第1屈曲部材および前記第2屈曲部材を前記第1把持部材に対して前記先端方向に移動させる移動装置と、をさらに備えている。前記第1屈曲部材と前記第2屈曲部材とは、前記突起部が前記本体に収容された状態において、前記第1把持部材によって把持された状態の前記多芯ケーブルの前記複数の芯線を挟持することが可能に構成されている。前記制御装置は、前記突起部が収容された状態の前記第1屈曲部材と前記第2屈曲部材とを接近させて前記複数の芯線を挟持させ、さらに前記移動装置を制御して前記第1屈曲部材および前記第2屈曲部材を前記先端方向に移動させるしごき制御を、前記屈曲制御の前に行う。さらに、前記制御装置は、前記しごき制御の後であって前記屈曲制御の前に、前記第4駆動部を制御して前記突起部を突出させる。
【0011】
上記多芯ケーブルの芯線整列装置によれば、整列制御の前にしごき制御を行うことにより、複数の芯線を予備的に整列させ、また、真っ直ぐに伸ばすことができる。そのため、整列部材に複数の芯線を挿入しやすくなる。また、屈曲部を形成するための第1屈曲部材および第2屈曲部材によってしごき制御を行うことができるため、芯線整列装置の構成部材を少なくすることができる。
【0012】
上記芯線整列装置のうちの好ましい一態様によれば、前記第1屈曲部材には、前記複数の芯線に対応するとともに前記先端方向に直交する直交方向に並んだ複数の第1溝が形成されている。前記第1屈曲部材は、前記第2屈曲部材とともに前記複数の芯線を挟持する際に、前記複数の第1溝で前記複数の芯線に接する。上記芯線整列装置のうちの他の好ましい一態様によれば、前記第2屈曲部材には、前記複数の芯線に対応するとともに前記先端方向に直交する直交方向に並んだ複数の第2溝が形成されている。前記第2屈曲部材は、前記第1屈曲部材とともに前記複数の芯線を挟持する際に、前記複数の第2溝で前記複数の芯線に接する。
【0013】
上記一態様に係る多芯ケーブルの芯線整列装置によれば、第1溝により、整列制御の前に芯線を直交方向に予備的に整列させることができる。そのため、整列部材に複数の芯線をさらに挿入しやすくなる。上記他の一態様に係る多芯ケーブルの芯線整列装置によれば、第2溝により、整列制御の前に芯線を直交方向に予備的に整列させることができる。芯線整列装置は、第1溝と第2溝とをともに備えていてもよく、一方だけを備えていてもよい。
【0014】
上記一態様に係る芯線整列装置のうちの好ましい一態様によれば、前記第1屈曲部材は、前記複数の第1溝が形成されるとともに前記直交方向に延びる軸線周りに回転する第1ローラを備えている。上記他の一態様に係る芯線整列装置のうちの好ましい一態様によれば、前記第2屈曲部材は、前記複数の第2溝が形成されるとともに前記直交方向に延びる軸線周りに回転する第2ローラを備えている。
【0015】
これらの多芯ケーブルの芯線整列装置によれば、しごき制御において第1ローラまたは第2ローラが回転するため、第1屈曲部材および第2屈曲部材をスムーズに移動させることができる。
【0016】
本発明に係る芯線整列装置の好ましい一態様によれば、芯線整列装置は、前記屈曲部を形成しているときの前記突起部および前記受部よりも前記先端方向に設けられ、前記複数の芯線を把持可能な第2把持部材と、前記第2把持部材を駆動して前記複数の芯線を把持させる第5駆動部と、をさらに備えていてもよい。前記制御装置は、前記屈曲制御において、前記第5駆動部を制御して前記第2把持部材に前記複数の芯線を把持させるとともに、前記第1駆動部を制御して前記第1把持部材に前記多芯ケーブルを解放させる。さらに、前記制御装置は、前記屈曲制御の後に前記把持制御を行い、前記把持制御において、前記第1駆動部を制御して前記第1把持部材に前記多芯ケーブルを把持させるとともに、前記第5駆動部を制御して前記第2把持部材に前記複数の芯線を解放させる。
【0017】
上記多芯ケーブルの芯線整列装置によれば、屈曲制御時、屈曲部よりも先端方向に位置する第2把持部材によって芯線が把持されているため、屈曲部の形成によって芯線の先端は動かない。これにより、屈曲制御後の複数の芯線の先端位置をより揃えることができる。
【0018】
上記芯線整列装置のうちの好ましい一態様によれば、前記第2把持部材は、前記整列制御における前記整列部材の移動方向に関して前記複数の芯線よりも前方に配置された第1アームと、後方に配置された第2アームと、を備えている。前記第1アームは、前記整列制御において、前記複数の芯線を支持する。
【0019】
上記多芯ケーブルの芯線整列装置によれば、整列制御時に、整列部材の移動方向前方側に配置された第1アームが芯線を支持するため、整列部材の差し入れによって芯線が逃げることが抑制される。そのため、芯線の整列をより確実に行うことができる。
【0020】
本発明に係る芯線整列装置の好ましい一態様によれば、前記屈曲装置は、前記第1把持部材よりも前記先端方向に設けられ、前記複数の芯線を把持可能な第2把持部材と、前記第2把持部材を駆動して前記複数の芯線を把持させる他の駆動部と、前記第1把持部材と前記第2把持部材とを接近させるアクチュエータと、を備えている。前記制御装置は、前記屈曲制御において、前記第1駆動部を制御して前記第1把持部材に前記多芯ケーブルを把持させるとともに、前記他の駆動部を制御して前記第2把持部材に前記複数の芯線を把持させ、さらに、前記アクチュエータを制御して前記第1把持部材と前記第2把持部材とを接近させることにより、前記複数の芯線に前記屈曲部を形成する。
【0021】
上記多芯ケーブルの芯線整列装置によれば、第1把持部材と第2把持部材との接近によって芯線を折り曲げることにより、屈曲部を形成することができる。
【0022】
本発明に係る芯線整列装置の好ましい一態様によれば、芯線整列装置は、前記第1把持部材によって前記多芯ケーブルが把持された状態において前記複数の芯線を挟持可能な挟持部材と、前記挟持部材を駆動して前記複数の芯線を挟持させる挟持装置と、前記挟持部材を前記第1把持部材に対して前記先端方向に移動させる移動装置と、をさらに備えている。前記制御装置は、前記挟持装置を制御して前記挟持部材に前記複数の芯線を挟持させ、さらに前記移動装置を制御して前記挟持部材を前記先端方向に移動させるしごき制御を、前記屈曲制御の前に行う。
【0023】
上記多芯ケーブルの芯線整列装置によっても、しごき制御を行うことができる。
【0024】
本発明に係る芯線整列装置の好ましい一態様によれば、前記整列部材の移動方向のうち、前記複数の櫛歯が前記複数の芯線から離れる方向を離脱方向とするとき、前記複数の櫛歯は、前記複数の芯線をそれぞれ挟持する複数の隙間を互いの間に形成しており、前記離脱方向に向かうほど前記複数の隙間同士が離れるように前記離脱方向に向かって広がっている。
【0025】
上記多芯ケーブルの芯線整列装置によれば、複数の隙間に複数の芯線をそれぞれ通すことにより、整列後の複数の芯線の間隔を、整列前よりも広い所望の間隔とすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る多芯ケーブルの芯線整列装置によれば、整列後の芯線の先端位置を揃えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】多芯ケーブルの芯線整列装置の斜視図である。
【
図3】屈曲装置が前進するとともに、屈曲装置が開いた状態の芯線整列装置の側面図である。
【
図4】しごき制御において屈曲装置が多芯ケーブルを挟持した状態の芯線整列装置の側面図である。
【
図5】第1整列ローラおよび第2整列ローラの背面図である。
【
図6】しごき制御において屈曲装置が前進している状態の芯線整列装置の側面図である。
【
図7】屈曲装置が開き、突起部が突出した状態の芯線整列装置の側面図である。
【
図8】第2把持装置が芯線を把持した状態の芯線整列装置の背面図である。
【
図9】屈曲部を形成中の芯線整列装置の側面図である。
【
図10】屈曲部が形成された後の芯線整列装置の側面図である。
【
図12】整列部材が下降した状態の芯線整列装置の側面図である。
【
図13】芯線を整列させた状態の整列部材の背面図である。
【
図14】芯線が整列した状態の多芯ケーブルの平面図である。
【
図15】整列部材を退避させた状態の芯線整列装置の側面図である。
【
図17】従来の方法で芯線を整列させた多芯ケーブルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[装置の構成]
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る多芯ケーブル1の芯線整列装置10の斜視図である。芯線整列装置10の処理対象である電線は、複数の芯線2の先端部がシース3から露出した多芯ケーブル1である。以下では、特に断らない限り、芯線2とは、シース3から露出した芯線のことを指す。多芯ケーブル1は、芯線整列装置10に装着される前に、端部のシース3を剥く処理、撚り合わされた複数の芯線2の撚りをほどく処理などが行われている。多芯ケーブル1は、ここでは、5本の芯線2を有している。ただし、多芯ケーブル1が有する芯線2の数は限定されない。複数の芯線2は、全てコア線であってもよく、シールドに接続されたドレイン線が含まれていてもよい。複数の芯線2にドレイン線が含まれる場合には、ドレイン線には絶縁処理が施されていることが好ましい。
【0029】
本実施形態に係る芯線整列装置10は、5本の芯線2の両端部、すなわち計10の芯線2の端部を整列させる。多芯ケーブル1はそのためにU字に曲げられており、多芯ケーブル1の芯線2の全ての端部は同じ向きを向いている。以下では、露出した複数の芯線2が向けられる方向を前方とも呼び、多芯ケーブル1または芯線2の先端方向とも呼ぶ。左方および右方は、前方に向かって見た左方および右方とする。図面において、F、Rr、L、R、U、Dはそれぞれ、前後左右上下を表している。ただし、これらの方向は説明の都合上のものであり、芯線整列装置10の設置態様等を何ら限定するものではない。また、図面では、図示または説明の都合により、芯線整列装置10の一部の部材の図示を省略している場合や簡略化している場合がある。
【0030】
図2は、芯線整列装置10の背面図である。
図3は、芯線整列装置10の右側面図である。
図1~
図3に示すように、本実施形態に係る芯線整列装置10は、第1把持装置20と、屈曲装置30と、移動装置70と、整列装置80と、第2把持装置90と、を備えている。第1把持装置20は、露出した複数の芯線2が前方を向くように多芯ケーブル1を把持する。屈曲装置30は、引っ張りに対する余裕を複数の芯線2に生じさせるように、複数の芯線2に屈曲部2a(
図10参照)を形成する。屈曲部2aの形成のことは、以下では「癖付け」とも呼ぶ。移動装置70は、屈曲装置30を前後方向に移動させる装置である。整列装置80は、複数の芯線2を左右方向に所定の間隔で整列させる。第2把持装置90は、少なくとも癖付けの際に芯線2を把持するように構成されている。
【0031】
第1把持装置20は、芯線整列装置10の中で最も後方に位置している。
図3に示すように、第1把持装置20は、露出した複数の芯線2が前方を向くように多芯ケーブル1を把持する第1クランプ21と、第1クランプ21を駆動して多芯ケーブル1を把持させる第1把持アクチュエータ22(
図16参照)と、を備えている。第1把持アクチュエータ22は、ここでは、エア駆動のアクチュエータである。ただし、第1把持アクチュエータ22の種類は特に限定されない。第1把持アクチュエータ22は、例えば、電動のアクチュエータであってもよい。第1把持装置20は、複数の芯線2が水平面に沿って左右方向に並ぶように多芯ケーブル1を保持している。第1把持装置20は、複数の芯線2が水平面に沿って左右方向に並ぶように多芯ケーブル1を周方向に回転させる回転機構を有していてもよい。
【0032】
屈曲装置30は、複数の芯線2に屈曲部2aを形成する。屈曲装置30は、ここでは、複数の芯線2を下方に屈曲させて、下方に凸した屈曲部2aを複数の芯線2に形成する(
図10参照)。下方は、第1把持装置20に保持された状態の芯線2の軸線方向(ここでは前後方向)に交差する方向のうちの1方向である。屈曲部2aを形成するために芯線2を屈曲させる方向は、芯線2の軸線方向に交差する方向であればよく、下方には限定されない。詳しくは後述するが、屈曲装置30は、各芯線2のうち、第1クランプ21によって把持される部分と整列装置80の櫛歯81a(
図2参照)が差し入れられる部分との間にある部分に屈曲部2aを形成する。屈曲装置30は、第1把持装置20よりも前方に配置されている。
【0033】
図3に示すように、屈曲装置30は、第1屈曲部材40と、第2屈曲部材50と、支持部材60と、を備えている。第1屈曲部材40と第2屈曲部材50とは、第1クランプ21によって把持された状態の多芯ケーブル1を挟んで向かい合うように設けられている。ここでは、第1屈曲部材40は、多芯ケーブル1の上方に配置されている。第2屈曲部材50は、多芯ケーブル1の下方に配置されている。支持部材60は、それぞれ上下方向に回動可能なように、第1屈曲部材40および第2屈曲部材50を支持している。屈曲装置30は、少なくとも第1屈曲部材40を下方に移動させることにより、第1屈曲部材40と第2屈曲部材50とを接近させる挟持アクチュエータ31を備えている。ここでは、挟持アクチュエータ31は、第1屈曲部材40を下方に向かって回動させ、第2屈曲部材50を上方に向かって回動させることにより、第1屈曲部材40と第2屈曲部材50とを接近させる。ただし、第2屈曲部材50は移動不能に支持部材60に固定されていてもよく、挟持アクチュエータ31は第1屈曲部材40だけを移動させるように構成されていてもよい。挟持アクチュエータ31は、ここでは、エア駆動のアクチュエータである。ただし、挟持アクチュエータ31の種類は特に限定されない。
【0034】
以下、第1屈曲部材40と第2屈曲部材50とが芯線2を挟み込んだ状態のことを「屈曲装置30が閉じた状態」とも呼ぶ。第1屈曲部材40と第2屈曲部材50とが離れ、芯線2を挟み込んでいない状態のことを「屈曲装置30が開いた状態」とも呼ぶ。
図3は、屈曲装置30が開いた状態の芯線整列装置10の側面図である。
図4に、屈曲装置30が閉じた状態の芯線整列装置10の側面図を示す。
【0035】
図3に示すように、第1屈曲部材40は、本体41と、下方に凸した(
図7参照)突起部42と、本体41の後端に設けられた第1整列ローラ43と、を有している。本実施形態では、突起部42は可動式である。本体41は、突起部42を収容し、または突出させることが可能に構成されている。屈曲装置30は、突起部42を本体41に収容し、または本体41から突出させる突出アクチュエータ32を備えている。
図3に示すように、本体41に収容された状態では、突起部42は、本体41の下辺と面一か、または本体41の下辺から僅かに突出している。
図7に示すように、本体41から突出させた状態では、突起部42は、本体41の下面よりも下方に突出する。突起部42の下端部には、先端ローラ42aが設けられている。先端ローラ42aは、左右方向に延びる回転軸を有し、前後方向に回転可能である。先端ローラ42aの左右方向の幅は、複数の芯線2が左右方向に並んだときの幅よりも長く設定されている。突出アクチュエータ32は、ここでは、エアシリンダである。ただし、突出アクチュエータ32の種類は特に限定されない。
【0036】
第1整列ローラ43は、整列装置80による整列の前に、複数の芯線2を左右方向に予備的に整列させるためのローラである。第1整列ローラ43は、左右方向に延びる軸線周りに回転するように構成されている。
図5は、第1整列ローラ43、および、後述する第2整列ローラ52の背面図である。
図5に示すように、第1整列ローラ43には、複数の第1溝43aが形成されている。複数の第1溝43aは、左右方向に並んでいる。左右方向は、複数の芯線2の軸線方向である前後方向に直交する方向であり、芯線2の並び方向である。複数の第1溝43aは、複数の芯線2に対応するように構成されている。複数の第1溝43aは、それぞれ、芯線2の直径に対応する直径を有する半円筒状の溝である。第1溝43aの数は、芯線2の数と同じである。第1溝43aは、前後方向に回転する第1整列ローラ43の周方向の全周にわたって形成されている。なお、突起部42の先端ローラ42aにも、第1溝43aと同様の複数の溝が形成されていてもよい。あるいは、第1屈曲部材40は、第1整列ローラ43を備えなくてもよく、例えば、本体41の下面に形成された複数の第1溝43aを備えていてもよい。
【0037】
図3に示すように、第2屈曲部材50は、第2整列ローラ52と、前部ローラ53と、を備えている。第2整列ローラ52は、第2屈曲部材50の後端に設けられ、第1整列ローラ43と上下方向に向かい合っている。
図5に示すように、第2整列ローラ52は、第1整列ローラ43と同様に構成され、複数の第2溝52aが形成されている。第2溝52aは、屈曲装置30が閉じると、複数の第1溝43aと向かい合うように構成されている。第2整列ローラ52は、左右方向に延びる軸線周りに回転する。複数の第2溝52aは、それぞれ、芯線2の直径に対応する直径を有する半円筒状の溝であり、その数は芯線2の数と同じである。複数の第2溝52aは、複数の芯線2に対応している。なお、第2屈曲部材50は、例えば、第2整列ローラ52ではなく、上面に形成された複数の第2溝52aを備えていてもよい。前部ローラ53は、第2整列ローラ52よりも前方に設けられている。前部ローラ53も前後方向に回転可能に構成されたローラであり、第2溝52aと同様の複数の溝を有していてもよい。
【0038】
第2整列ローラ52と前部ローラ53とは、第1屈曲部材40の突起部42に対応する受部51を構成している。受部51は、突起部42が突出した状態で屈曲装置30が閉じると、突起部42が嵌るように構成されている。
図7に示すように、受部51と第1屈曲部材40の突起部42とは、第1クランプ21によって把持された状態の多芯ケーブル1を挟んで上下方向に向かい合っている。突起部42が突出した状態で屈曲装置30が閉じると、突起部42は、第2整列ローラ52と前部ローラ53との間に収容される。屈曲部2aは、挟持アクチュエータ31の駆動によって第1屈曲部材40と第2屈曲部材50とが接近し、複数の芯線2が突起部42と受部51とで挟み込まれることによって形成される。より詳しくは、屈曲部2aは、受部51を構成する第2整列ローラ52と前部ローラ53とによって複数の芯線2が支持された状態で、突起部42が複数の芯線2を第2整列ローラ52と前部ローラ53との間に押し込むことによって形成される。
【0039】
第1屈曲部材40と第2屈曲部材50とは、突起部42が本体41に収容された状態においても、第1クランプ21によって把持された状態の多芯ケーブル1の複数の芯線2を挟持することが可能に構成されている。詳しくは、
図4に示すように、第1屈曲部材40と第2屈曲部材50とは、第1整列ローラ43および第2整列ローラ52によって複数の芯線2を挟持する。第1屈曲部材40および第2屈曲部材50は、複数の芯線2を挟持する際に、それぞれ複数の第1溝43aおよび複数の第2溝52aで複数の芯線2に接するように構成されている。
【0040】
支持部材60は、第1屈曲部材40を回動可能に支持する第1回動軸61と、第2屈曲部材50を回動可能に支持する第2回動軸62と、を備えている。第1屈曲部材40および第2屈曲部材50は、それぞれ第1回動軸61および第2回動軸62を軸に回動することにより、接近または離反する。
【0041】
移動装置70は、支持部材60を介して第1屈曲部材40および第2屈曲部材50を前後方向に移動させる。
図3は、最も屈曲装置30が前進した状態の芯線整列装置10を示している。
図4は、屈曲装置30が最も後退した状態の芯線整列装置10を示している。移動装置70は、ここでは、支持部材60を前後方向に移動可能に支持している。
図3に示すように、移動装置70は、保持台71と、ガイドレール72と、移動アクチュエータ73と、を備えている。保持台71は、屈曲装置30の支持部材60の下方に設けられ、支持部材60を支持している。保持台71は、ガイドレール72に摺動自在に係合している。ガイドレール72は、前後方向に延びている。保持台71は、ガイドレール72に沿って前後方向に移動可能である。移動アクチュエータ73は、保持台71をガイドレール72に沿って移動させる駆動部である。移動アクチュエータ73も、ここでは、エアシリンダである。ただし、移動アクチュエータ73の種類は特に限定されない。
【0042】
図1および
図2に示すように、U字に曲げられた多芯ケーブル1の両端を処理するため、第1把持装置20および屈曲装置30は、左右一対設けられている。移動装置70は、一対の屈曲装置30を同時に移動させるように構成されている。一対の屈曲装置30は、ともに保持台71上に設けられている。第2把持装置90も、同様の理由で、左右一対設けられている。ただし、芯線整列装置10は、多芯ケーブル1の一端を処理するように構成されていてもよく、その場合、芯線整列装置10が有する第1把持装置20、屈曲装置30、および第2把持装置90の数は、それぞれ1つでもよい。
【0043】
図2に示すように、整列装置80は、屈曲装置30よりも上方に設けられている。整列装置80は、複数の芯線2を整列させる左右一対の整列部材81と、一対の整列部材81を上下方向に移動させる挿入アクチュエータ82と、一対の整列部材81を前後方向に移動させる退避アクチュエータ83と、を備えている。挿入アクチュエータ82および退避アクチュエータ83は、ここではともにエアシリンダであるが、それには限定されない。
図2に示すように、整列部材81は、左右方向および上下方向に延びる平板状の部材である。整列部材81の左右方向の位置は、多芯ケーブル1が第1把持装置20に保持された状態における芯線2の位置と重なっている。また、
図3に示すように、整列部材81は、第1クランプ21よりも多芯ケーブル1の先端側、ここでは前方に設けられている。
【0044】
図11は、整列部材81の背面図である。
図11に示すように、整列部材81は、その間に複数の芯線2が差し入れられる複数の櫛歯81aを有している。複数の櫛歯81aは、複数の芯線2の並び方向、ここでは左右方向に並んで設けられている。複数の櫛歯81aは、複数の芯線2をそれぞれ挟持する複数の隙間81bを互いの間に形成している。挿入アクチュエータ82は、複数の櫛歯81aが複数の芯線2の間に差し入れられるように、整列部材81を移動させる。
図11に示すように、整列部材81の下端において、複数の隙間81bは、第1整列ローラ43および第2整列ローラ52によって整列された複数の芯線2と略同じ間隔で並んでいる。整列部材81が下方に移動され、複数の芯線2に当接すると、複数の芯線2は、複数の隙間81bにそれぞれ押し込まれる。
【0045】
複数の櫛歯81aは、上方に向かうほど複数の隙間81b同士が離れるように、上方に向かって広がっている。上方は、整列部材81の移動方向のうち、複数の櫛歯81aが複数の芯線2から離れる離脱方向である。整列部材81の下端が複数の芯線2に当接した後、さらに整列部材81が下降すると、複数の芯線2は、隙間81bに沿って左右方向に広がるように移動する。挿入アクチュエータ82は、芯線2が隙間81bの上端81b1に達するような上下方向の位置で整列部材81を停止させるように構成されている。整列部材81の上記位置は、挿入アクチュエータ82のストロークエンドに対応していてもよい。ただし、挿入アクチュエータ82は、制御によって上記位置で整列部材81を停止させてもよい。
【0046】
図12は、整列部材81が下降した状態の芯線整列装置10の側面図である。
図12に示すように、整列部材81は、屈曲部2aよりも前方で複数の芯線2に挿入される。
図15に示すように、退避アクチュエータ83は、ここからさらに、複数の芯線2の先端よりも前方まで一対の整列部材81を退避させるように構成されている。
【0047】
第2把持装置90は、芯線2を把持可能に構成されている。
図2に示すように、第2把持装置90は、複数の芯線2を把持可能な第2クランプ91と、第2クランプ91を駆動して複数の芯線2を把持させる第2把持アクチュエータ92と、スライド機構93と、芯線規制部96(
図3参照)と、を備えている。スライド機構93は、第2クランプ91を左右方向に移動させる。スライド機構93は、ガイドレール94と、スライドアクチュエータ95と、を備えている。第2クランプ91は、ガイドレール94に摺動自在に係合している。ガイドレール94は、左右方向に延びている。第2クランプ91は、ガイドレール94に沿って左右方向に移動可能である。スライドアクチュエータ95は、第2クランプ91をガイドレール94に沿って移動させる駆動部である。スライドアクチュエータ95も、ここでは、エアシリンダである。ただし、スライドアクチュエータ95の種類は特に限定されない。
図2は、第2クランプ91が多芯ケーブル1よりも左右方向の外方に位置した状態を示している。
図8は、芯線2を把持可能なように、第2クランプ91が左右方向の内方側に移動した状態を示している。
【0048】
図2に示すように、第2クランプ91は、上下一対のアーム91d、91uを備えている。第2クランプ91は、下部アーム91dと上部アーム91uとで芯線2を挟み込むことによって、芯線2を把持する。下部アーム91dは、下方側の第2把持アクチュエータ92dによって上下方向に移動される。上部アーム91uは、上方側の第2把持アクチュエータ92uによって上下方向に移動される。工程については後述するが、
図9は、屈曲部2a(
図10参照)を形成中の芯線整列装置10の側面図である。
図9に示すように、第2クランプ91は、屈曲部2aを形成しているときの突起部42および受部51よりも前方に設けられている。
図9に示すように、本実施形態では、屈曲部2aを形成しているとき、屈曲装置30は、例えば
図3の状態よりも後退している。例えば
図3に示すようなときには、第2クランプ91は、突起部42および受部51よりも後方に位置している。ただし、第2クランプ91は、常に突起部42および受部51よりも前方となるような位置に設けられていてもよい。
図12に示すように、第2クランプ91は、芯線2に挿入されるときの整列部材81よりも前方を把持するように構成されている。
【0049】
芯線規制部96は、第2クランプ91よりも後方に設けられ、第2クランプ91とともに左右方向および前後方向に移動する。芯線規制部96は、上下一対で構成されている。芯線規制部96は、第2クランプ91が複数の芯線2を把持しているとき、複数の芯線2から僅かに離れるように設けられている。
図12に示すように、芯線規制部96は、前後方向に関して、屈曲部2aと整列部材81との間に設けられている。
【0050】
図16は、芯線整列装置10のブロック図である。
図16に示すように、芯線整列装置10は、第1把持装置20の第1把持アクチュエータ22と、屈曲装置30の挟持アクチュエータ31および突出アクチュエータ32と、移動装置70の移動アクチュエータ73と、整列装置80の挿入アクチュエータ82および退避アクチュエータ83と、第2把持装置90の第2把持アクチュエータ92およびスライドアクチュエータ95と、を制御する制御装置100を備えている。制御装置100は、上記各アクチュエータに接続され、それらの動作を制御している。制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えば、中央演算処理装置(以下、CPUという)と、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えていてもよい。制御装置100の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。また、各部は、プロセッサであってもよいし、回路であってもよい。制御装置100は、例えば、プログラマブルコントローラやコンピュータなどであってもよい。
【0051】
[芯線の整列工程]
以下では、本実施形態に係る芯線整列装置10による芯線2の整列工程について説明する。工程の開始時、芯線整列装置10は、
図2および
図3に示した状態となっている。すなわち、屈曲装置30は、前進しているとともに、開いている。突起部42は、本体41に収容されている。第2クランプ91は、外方に退避している。整列部材81は、後退しているとともに、芯線2よりも上方に位置している。第1クランプ21は、複数の芯線2が左右方向に並ぶように、多芯ケーブル1を把持している。芯線2の整列工程では、制御装置100は、大別して、しごき制御、屈曲制御、把持制御、および整列制御の4段階の制御を行う。屈曲制御はしごき制御の後に行われ、把持制御はしごき制御の後に行われる。整列制御は把持制御の後に行われる。
【0052】
まず、しごき制御について説明する。しごき制御では、第1整列ローラ43および第2整列ローラ52を使って、複数の芯線2を狭い間隔で整列させるとともに、真っ直ぐに伸ばす。しごき制御では、制御装置100は、突起部42が収容された状態の第1屈曲部材40と第2屈曲部材50とを接近させて複数の芯線2を挟持させ、さらに移動装置70を制御して第1屈曲部材40および第2屈曲部材50を前方に移動させる。
【0053】
より詳しくは、しごき制御において、制御装置100は、まず、移動装置70を制御して、屈曲装置30を後退させる。次のステップでは、制御装置100は、挟持アクチュエータ31を制御して、屈曲装置30を閉じる。これにより、芯線整列装置10は、
図4に示す状態となる。
図4に示すように、このとき、第1屈曲部材40および第2屈曲部材50は、多芯ケーブル1のシース3を挟持している。このとき、第1屈曲部材40および第2屈曲部材50は、第1整列ローラ43および第2整列ローラ52によって多芯ケーブル1のシース3を挟持している。
【0054】
続いて、制御装置100は、移動装置70を制御して屈曲装置30を前方に移動させる。これにより、
図5に示すように、第1整列ローラ43の各第1溝43aと第2整列ローラ52の各第2溝52aとの間に各芯線2が通される。これにより、複数の芯線2は、第1溝43aおよび第2溝52aのピッチに対応する狭いピッチで左右方向に整列するとともに、真っ直ぐに伸ばされる。また、第1整列ローラ43および第2整列ローラ52が回転することにより、屈曲装置30はスムーズに前方に移動する。
図6は、しごき制御において屈曲装置30が前進している状態の芯線整列装置10を示している。
【0055】
制御装置100は、しごき制御の後であって屈曲制御の前に、突出アクチュエータ32を制御して突起部42を突出させるように構成されている。詳しくは、
図7に示すように、制御装置100は、挟持アクチュエータ31を制御して屈曲装置30を開放するとともに、突出アクチュエータ32を制御して突起部42を本体41から突出させる。
【0056】
次に屈曲制御について説明する。屈曲制御は、屈曲装置30を制御して、複数の芯線2に屈曲部2aを形成させる制御である。制御装置100は、屈曲制御において、第2把持アクチュエータ92を制御して第2クランプ91に複数の芯線2を把持させる。それとともに、制御装置100は、第1把持アクチュエータ22を制御して第1クランプ21に多芯ケーブル1を解放させる。詳しくは、制御装置100は、スライド機構93を制御して第2クランプ91を左右方向の内方側に移動させ、さらに、第2クランプ91に複数の芯線2を把持させる。また、制御装置100は、第1クランプ21に多芯ケーブル1を解放させる。多芯ケーブル1の解放時の第1クランプ21と多芯ケーブル1との隙間は、好ましくは1mm程度であるとよい。ただし、多芯ケーブル1の解放時、第1クランプ21と多芯ケーブル1とは接していてもよい。ここで、多芯ケーブル1の「解放」とは、屈曲部2aの形成時に多芯ケーブル1が動く状態となっていることを意味する。これにより、芯線整列装置10は、
図8に示す状態となる。この間、屈曲装置30は、
図7に示す位置まで移動される。なお、突起部42を本体41から突出させる制御と、第2クランプ91に複数の芯線2を把持させる制御と、第1クランプ21に多芯ケーブル1を解放させる制御と、屈曲装置30を移動させる制御とは、どのような順序で行われてもよく、同時に行われてもよい。
【0057】
屈曲制御では、続いて、
図9に示すように、屈曲装置30が閉じられる。これにより、第1屈曲部材40の突起部42と第2屈曲部材50の受部51とによって、複数の芯線2に屈曲部2a(
図10参照)が形成される。制御装置100は、屈曲制御において、挟持アクチュエータ31を駆動させて第1屈曲部材40と第2屈曲部材50とを接近させ、複数の芯線2を突起部42と受部51とによって挟み込むことにより、複数の芯線2に屈曲部2aを形成する。その後、
図10に示されるように、屈曲装置30は開かれる。
【0058】
把持制御は、整列部材81による芯線2の整列時に多芯ケーブル1が動かないように、再び第1クランプ21に多芯ケーブル1を把持させる制御である。本実施形態では、制御装置100は、屈曲制御の後に把持制御を行うように構成されており、把持制御において、第1把持アクチュエータ22を制御して第1クランプ21に多芯ケーブル1を把持させる。また、制御装置100は、把持制御において、第2把持アクチュエータ92を制御して第2クランプ91に複数の芯線2を解放させる。ここで、芯線2の「解放」とは、整列部材81による芯線2の整列時に芯線2が動く状態となっていることを意味する。芯線2の「解放」には、芯線2に第2クランプ91が触れている状態が含まれ得る。屈曲制御時のまま芯線2が第2クランプ91に把持されて動けない状態では、芯線2の整列ができないため、把持制御では、第2クランプ91に複数の芯線2を解放させる。本実施形態では、第2クランプ91の上部アーム91uだけが上方側の第2把持アクチュエータ92uの駆動によって上方に移動され、下部アーム91dは、そのまま複数の芯線2を支持する。
【0059】
ただし、把持制御は、屈曲制御の前に行われてもよい。本実施形態では、屈曲制御時、屈曲部2aよりも前方に位置する第2クランプ91によって芯線2が把持されている。そのため、屈曲部2aの形成によって多芯ケーブル1の屈曲部2aよりも後方部分が前方に動き、芯線2の先端は動かない。これにより、屈曲制御後の複数の芯線2の先端位置をより揃えることができる。把持制御を屈曲制御の前に行う変形例では、屈曲制御時、屈曲部2aよりも後方に位置する第1クランプ21によって多芯ケーブル1が把持される。そのため、屈曲部2aの形成によって芯線2の先端が後方に動き、多芯ケーブル1の屈曲部2aよりも後方部分は動かない。この場合、芯線2の先端部が上下方向にも動き得ることにより、屈曲制御後の複数の芯線2の先端位置が若干ばらつくおそれはあるが、第2把持装置90が必要なくなる。従って、1つの好適な変形例では、把持制御は屈曲制御の前に行われてもよい。その場合、把持制御においては、第1クランプ21による多芯ケーブル1の把持だけが行われてもよい。
【0060】
制御装置100は、屈曲制御および把持制御の後に、挿入アクチュエータ82を制御して、整列部材81の複数の櫛歯81aを複数の芯線2の間に差し入れる整列制御を行う。詳しくは、制御装置100は、挿入アクチュエータ82を制御して、
図12に示すように、整列部材81を下方に移動させる。これにより、
図13に示すように、複数の櫛歯81a同士の隙間81bに複数の芯線2がそれぞれ差し込まれた状態となる。前述したように、複数の隙間81bに複数の芯線2がそれぞれ差し込まれる直前には、複数の芯線2と隙間81bとの位置関係は、
図11のようなものである。隙間81bの上端81b1まで芯線2が差し込まれると、
図13に示すように、複数の芯線2は、所定の間隔P1で左右方向に並ぶ。
【0061】
整列制御時には、第2クランプ91は、左右方向に動くように複数の芯線2を「解放」しているが、前後方向には動きにくいように、芯線2に触れていてもよい。前述したように、本実施形態では、第2クランプ91のアームのうち、整列制御における整列部材81の移動方向に関して複数の芯線2よりも前方(ここでは下方)に配置された下部アーム91dは、整列制御時、複数の芯線2を支持している。また、整列制御時、芯線規制部96は、整列部材81の後方側で芯線2の上下方向の動きを規制している。特に、芯線2よりも下方の芯線規制部96は、整列部材81の押圧によって複数の芯線2が下方に動くことを規制している。かかる下部アーム91dおよび芯線規制部96の支持により、複数の芯線2が整列部材81の複数の隙間81bに確実に挿入される。
【0062】
図14は、芯線2が整列した状態の多芯ケーブル1の平面図である。
図14は、
図13の状態を上方から見た図である。
図14に示すように、本実施形態に係る芯線整列装置10によって芯線2を整列させると、複数の芯線2の先端の位置が高精度に揃う。前述したように、
図17は、特許文献1に開示されている一括ピッチ揃え治具によって芯線2を整列させた多芯ケーブル1の平面図である。特許文献1に開示されている一括ピッチ揃え治具によって芯線2を整列させた多芯ケーブル1では、既に述べた理由により、複数の芯線2の先端の位置は、中央部ほど突出する。このような状態の複数の芯線2の先端を揃え切りすると、芯線2の長さが中央部ほど短くなってしまう。これにより、問題が発生することがあり得る。
【0063】
それに対して、本実施形態に係る芯線整列装置10による芯線2の整列では、屈曲部2aが芯線2の整列時の引っ張りに対する余裕を生じさせる。例えば、
図14において、中央の芯線2Cは、整列部材81に挿入されることによってもほとんど動かない。そのため、中央の芯線2Cの屈曲部2aは、ほとんど伸ばされることがない。一方、例えば、
図14の右端の芯線2Rは、整列部材81に挿入されることによって右方に動かされる。そのため、右端の芯線2Rの屈曲部2aは、いくらか伸ばされる。代わりに、屈曲部2aが伸ばされることにより、右端の芯線2Rの先端はほとんど動かない。かかる理由により、本実施形態に係る芯線整列装置10によれば、整列後の複数の芯線2の先端の位置を高精度に揃えることができる。従って、芯線2の揃え切りを行わなくても問題がない可能性もあり、また、芯線2の揃え切りを行っても、複数の芯線2の長さと先端部の位置とが両方とも揃う。
【0064】
制御装置100は、続いて、
図15に示すように、退避アクチュエータ83を制御して、整列部材81を複数の芯線2から抜く。さらに、図示は省略するが、芯線整列装置10の各部を初期状態に戻すことにより、複数の芯線2の整列工程が終了する。
【0065】
[実施形態の作用効果]
以下に、本実施形態に係る芯線整列装置10が奏する作用効果について説明する。本実施形態に係る芯線整列装置10は、各芯線2の第1クランプ21によって把持される部分と整列部材81の櫛歯81aが差し入れられる部分との間に屈曲部2aを形成する屈曲装置30を備えている。制御装置100は、整列制御の前に、屈曲装置30を制御して複数の芯線2に屈曲部2aを形成させるように構成されている。かかる芯線整列装置10によれば、前述した理由により屈曲部2aが芯線2の引っ張りに対する緩衝部となる。そのため、整列後の芯線2の先端位置を揃えることができる。
【0066】
本実施形態では、屈曲装置30は、芯線2の軸線方向に交差する方向に凸した突起部42を有する第1屈曲部材40と、突起部42が嵌る受部51を有する第2屈曲部材50と、備えている。制御装置100は、屈曲制御において、第1屈曲部材40と第2屈曲部材50とを接近させ、複数の芯線2を突起部42と受部51とによって挟み込むことにより、複数の芯線2に屈曲部2aを形成するように構成されている。かかる芯線整列装置10によれば、複数の芯線2を突起部42と受部51とで挟み込むことにより、屈曲部2aの形成場所や形状のばらつきを抑制することができる。なお、本実施形態では、受部51は、突起部42が嵌る空間を、2つのローラ52、53の間の底部のない空間として形成していたが、底部を有する凹部として形成してもよい。受部51の構成は特に限定されない。
【0067】
本実施形態では、複数の櫛歯81aは、複数の芯線2をそれぞれ挟持する複数の隙間81bを互いの間に形成しており、整列部材81の離脱方向(ここでは上方)に向かうほど複数の隙間81b同士が離れるように、離脱方向に向かって広がっている。かかる芯線整列装置10によれば、複数の隙間81bに複数の芯線2をそれぞれ通すことにより、整列後の複数の芯線2の間隔を、整列前よりも広い所望の間隔(ここでは、間隔P1)とすることができる。また、櫛歯81aの挟持力の適切な設定により、隙間81b内で芯線2を前後方向に滑らなくすることが容易にでき、これによって、芯線2の整列時に屈曲部2aの方が伸ばされやすくなる。その結果、整列後の複数の芯線2の先端位置をより揃えやすくなる。
【0068】
本実施形態では、第1屈曲部材40は、突起部42を収容しまたは突出させることが可能な本体41を備えている。芯線整列装置10は、突起部42を本体41に収容しまたは本体から突出させる突出アクチュエータ32と、第1屈曲部材40および第2屈曲部材50を芯線2の先端方向に移動させる移動装置70と、をさらに備えている。制御装置100は、突起部42が収容された状態の第1屈曲部材40と第2屈曲部材50とを接近させて複数の芯線2を挟持させ、さらに移動装置70を制御して第1屈曲部材40および第2屈曲部材50を芯線2先端方向に移動させるしごき制御を、屈曲制御の前に行う。また、制御装置100は、しごき制御の後であって屈曲制御の前に、突出アクチュエータ32を制御して突起部42を突出させるように構成されている。かかる芯線整列装置10によれば、整列制御の前にしごき制御を行うことにより、複数の芯線2を予備的に整列させ、また、真っ直ぐに伸ばすことができる。そのため、整列部材81に複数の芯線2を挿入しやすくなる。また、屈曲部2aを形成するための第1屈曲部材40および第2屈曲部材50によってしごき制御を行うことができるため、芯線整列装置10の構成部材を少なくすることができる。
【0069】
なお、しごき制御は、屈曲装置30ではなく、しごき作業用の部材によって行われてもよい。例えば、芯線整列装置10は、第1クランプ21によって多芯ケーブル1が把持された状態において複数の芯線2を挟持可能な挟持部材と、挟持部材を駆動して複数の芯線2を挟持させる挟持装置と、第1クランプ21に対して挟持部材を芯線2の先端方向に移動させる移動装置と、を備えていてもよい。制御装置100は、挟持装置を制御して挟持部材に複数の芯線2を挟持させ、さらに移動装置を制御して挟持部材を芯線2の先端方向に移動させるしごき制御を、屈曲制御の前に行ってもよい。かかる変形例の挟持部材は、例えば、第1屈曲部材40から突起部42を除いたような部材と、第2屈曲部材50と同様の部材と、を含んでいてもよい。かかる変形例の挟持装置は、例えば、挟持アクチュエータ31と同様のものであってもよい。かかる変形例の移動装置は、移動装置70と同様のものであってもよい。かかる変形例の屈曲装置30は、固定された突起部42を有する第1屈曲部材40のような部材と、第2屈曲部材50と同様の部材と、を含んでいてもよい。このような変形例に係る芯線整列装置10によっても、しごき制御を行うことができる。ただし、上記した挟持部材等の構成は一例であり、特に限定されない。
【0070】
本実施形態では、第1屈曲部材40および第2屈曲部材50には、それぞれ、複数の芯線2に対応するとともに芯線2の並び方向(ここでは、左右方向)に並んだ複数の第1溝43aおよび複数の第2溝52aが形成されている。第1屈曲部材40および第2屈曲部材50は、複数の芯線2を挟持する際に、それぞれ複数の第1溝43aおよび複数の第2溝52aで複数の芯線2に接する。かかる芯線整列装置10によれば、第1溝43aおよび第2溝52aにより、整列制御の前に、芯線2を並び方向に予備的に整列させることができる。そのため、整列部材81に複数の芯線2をさらに挿入しやすくなる。
【0071】
本実施形態では、第1屈曲部材40は、複数の第1溝43aが形成されるとともに左右方向に延びる軸線周りに回転する第1整列ローラ43を備え、第2屈曲部材50は、複数の第2溝52aが形成されるとともに左右方向に延びる軸線周りに回転する第2整列ローラ52を備えている。かかる芯線整列装置10によれば、しごき制御において第1整列ローラ43および第2整列ローラ52が回転するため、第1屈曲部材40および第2屈曲部材50をスムーズに移動させることができる。なお、第1整列ローラ43および第2整列ローラ52のうちの一方がない場合でも、ある程度の同様の効果を奏することができる。
【0072】
本実施形態に係る芯線整列装置10は、屈曲部2aを形成しているときの突起部42および受部51よりも前方に設けられ、複数の芯線2を把持可能な第2クランプ91を備えている。制御装置100は、屈曲制御において、第2クランプ91に複数の芯線2を把持させるとともに、第1クランプ21に多芯ケーブル1を解放させるように構成されている。また、制御装置100は、屈曲制御の後に把持制御を行うように構成されており、把持制御において、第1クランプ21に多芯ケーブル1を把持させるとともに、第2クランプ91に複数の芯線2を解放させる。かかる芯線整列装置10によれば、屈曲制御時、屈曲部2aよりも前方に位置する第2クランプ91によって芯線2が把持されているため、屈曲部2aの形成によって芯線2の先端が動かない。これにより、屈曲制御後の複数の芯線2の先端位置をより揃えることができる。ただし、整列制御では、芯線2の先端は動く必要があるため、第2クランプ91は芯線2を解放し、第1クランプ21が多芯ケーブル1を把持する。
【0073】
本実施形態では、第2クランプ91は、整列制御における整列部材81の移動方向に関して、複数の芯線2よりも前方(ここでは下方)に配置された下部アーム91dと、後方(ここでは上方)に配置された上部アーム91uと、を備えており、下部アーム91dと上部アーム91uとで芯線2を挟むことにより芯線2を把持する。下部アーム91dは、整列制御においては、複数の芯線2を支持する。かかる芯線整列装置10によれば、下部アーム91dの支持により、整列制御時の整列部材81の差し入れによって芯線2が逃げることが抑制される。そのため、芯線2の整列をより確実に行うことができる。
【0074】
[他の実施形態]
以上、本発明の好適な一実施形態について説明した。ただし、上記実施形態は例示に過ぎず、他にも種々の実施形態が可能である。例えば、上記した実施形態では、屈曲装置30は、突起部42を有する第1屈曲部材40と、受部51を有する第2屈曲部材50と、を備え、複数の芯線2を突起部42と受部51との間に挟み込むことによって、複数の芯線2に屈曲部2aを形成していた。しかし、屈曲装置の構成は、これには限定されない。例えば、屈曲装置は、第1クランプよりも芯線2の先端方向に設けられ、複数の芯線2を把持可能な第2クランプと、第2クランプを駆動して複数の芯線2を把持させる第2把持アクチュエータと、第1クランプと第2クランプとを接近させる移動アクチュエータと、を備えていてもよい。この構成は、最初の実施形態と同じであってもよく、上記記載に反しない限りで異なっていてもよい。ただし、制御装置は、屈曲制御において、第1把持アクチュエータを制御して第1クランプに多芯ケーブル1を把持させるとともに、第2把持アクチュエータを制御して第2クランプにも複数の芯線2を把持させてもよい。さらに、制御装置は、移動アクチュエータを制御して第1クランプと第2クランプとを接近させることにより、複数の芯線2に屈曲部2aを形成してもよい。言い換えると、多芯ケーブル1の把持された両端の間の距離を縮めることにより、芯線2を折り曲げてもよい。屈曲装置は、折り曲げ位置を決めるガイド部材を有していてもよい。かかる方式は、最初の実施形態の第1屈曲部材40、第2屈曲部材50、またはその両方と組み合わされてもよい。
【0075】
上記した実施形態では、しごき制御、整列制御等において第1クランプ21は不動であり、屈曲装置30および整列部材81が移動していた。しかし、1つの部材の他の部材に対する移動は相対的なものであり、動く方は限定されない。例えば、しごき制御等においては、第1クランプ21が移動し、屈曲装置30は不動であってもよい。または、しごき制御等において、第1クランプ21および屈曲装置30の両方が移動してもよい。同様に、例えば整列制御等においては、第1クランプ21、第2クランプ91、芯線規制部96等が移動し、整列部材81は不動であってもよい。または、整列制御等において、整列部材81と他の部材とがともに移動してもよい。
【0076】
上記した実施形態では、芯線2の軸線方向と屈曲部2aの凸方向とは直交し、芯線2の軸線方向と整列部材81の移動方向とは直交していた。しかし、芯線2の軸線方向と屈曲部2aの凸方向とは交差していればよく、直交していなくてもよい。同様に、芯線2の軸線方向と整列部材81の移動方向とは交差していればよく、直交していなくてもよい。
【0077】
上記した実施形態では、しごき制御が行われていたが、しごき制御は行われなくてもよい。上記した実施形態では、多芯ケーブル1を屈曲装置30に対してスムーズに動かすために、第1整列ローラ43、第2整列ローラ52その他のローラが用いられたが、ローラはなくてもよい。上記した実施形態では、複数の芯線2を予備的に整列させるために、複数の芯線2を複数の第1溝43aおよび第2溝52aにそれぞれ通したが、これらの溝はなくてもよい。第1溝43aおよび第2溝52aは、いずれか一方だけが設けられていてもよい。または、第1溝43aおよび第2溝52aは、複数の芯線2の1本1本に対応していなくてもよい。例えば、第1溝43aおよび第2溝52aは、それぞれ、全ての芯線2が通る幅の広い溝であってもよい。
【0078】
その他、特に言及されない限り、上記した実施形態は本発明を限定しない。例えば、上記した実施形態では、挿入アクチュエータ82は、整列部材81を上下方向に移動させることによって、第1把持装置20およびこれに把持された多芯ケーブル1と整列部材81とを接近離反させたが、部材同士の間の相対移動では、いずれの部材が動いてもよく、両方の部材が動いてもよい。また、上記した複数の実施形態の各構成は、可能な限りにおいて互いに組み合わせ得る。
【符号の説明】
【0079】
1 多芯ケーブル
2 芯線
2a 屈曲部
3 シース
10 芯線整列装置
20 第1把持装置
21 第1クランプ(第1把持部材)
22 第1把持アクチュエータ(第1駆動部)
30 屈曲装置
31 挟持アクチュエータ(第3駆動部)
32 突出アクチュエータ(第4駆動部)
40 第1屈曲部材
41 本体
42 突起部
43 第1整列ローラ(第1ローラ)
43a 第1溝
50 第2屈曲部材
51 受部
52 第2整列ローラ(第2ローラ)
52a 第2溝
70 移動装置
80 整列装置
81 整列部材
81a 櫛歯
81b 隙間
82 挿入アクチュエータ(第2駆動部)
90 第2把持装置
91 第2クランプ(第2把持部材)
91d 下部アーム(第1アーム)
91u 上部アーム(第2アーム)
92 第2把持アクチュエータ(第5駆動部)
100 制御装置