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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】電気分解設備用電極板
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/02 20210101AFI20250108BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20250108BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20250108BHJP
【FI】
C25B11/02 301
C25B1/04
C25B9/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023570400
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 DE2022100387
(87)【国際公開番号】W WO2022262894
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-11-14
(31)【優先権主張番号】102021115582.7
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102022112593.9
(32)【優先日】2022-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルセル エーマン
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト ヴェーナー
(72)【発明者】
【氏名】ラモン ユアヤンツ
(72)【発明者】
【氏名】トアステン ケラー
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-201618(JP,A)
【文献】特開2019-179759(JP,A)
【文献】特開平10-204672(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101818357(CN,A)
【文献】国際公開第2019/207811(WO,A1)
【文献】特表2012-507828(JP,A)
【文献】特表2020-517420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 11/00-11/097
C25B 1/00- 9/77
C25B 13/00-15/08
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
C02F 1/46- 1/469
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属薄板で作製された、電気分解システム(10)用電極板(1)であって、活性場(3)を取り囲み、前記活性場(3)と同様に、矩形の基本形状を有するフレーム領域(2)を有し、前記フレーム領域(2)が、変形されていない金属板の基準平面(E)の状態で構成されており、前記活性場(3)が、複数の線状エンボスストリップ(14、15)を含む、前記基準平面(E)を起点として隆起および陥凹している個々のエンボス要素(14、15、16、17)の形態のエンボス構造部(6)を有し、前記複数の線状エンボスストリップ(14、15)が、隆起した線状エンボスストリップ(14)と陥凹した線状エンボスストリップ(15)とが、行の方向と列の方向との両方において交互の様式で形成されるような様式で、行と列との配置で位置付けられており、ある行の全ての線状エンボスストリップ(14、15)が、前記活性場(3)の長手方向の側面およびそれに平行な流れ方向(DR)に対して同一の様式で傾斜しており、次の並びの前記線状エンボスストリップ(14、15)が、等しく、かつ反対向きの傾斜を有する、電極板(1)。
【請求項2】
前記エンボス構造部(6)のサブクラスタ(11)が、2行の線状エンボスストリップ(14、15)によって形成されており、合計で少なくとも4つのこのようなサブクラスタ(11)が、直列に接続され、少なくとも3つの隆起した線状エンボスストリップ(14)および少なくとも3つの陥凹した線状エンボスストリップ(15)が、各行に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の電極板(1)。
【請求項3】
2つのサブクラスタ(11)間の距離(A’)が、ある行に配置された前記線状エンボスストリップ(14、15)の前記長手方向において測定される投影長さ(L’)の少なくとも20分の1、多くとも10分の1に相当することを特徴とする、請求項2に記載の電極板(1)。
【請求項4】
前記エンボス構造部(6)の最初と最後の行において、前記隆起した線状エンボスストリップ(14)が、全長(L)を有し、これが、残りの行の前記線状エンボスストリップ(14、15)についても同様であり、短縮された線状エンボスストリップ(24)と交互に配置され、これらの線状エンボスストリップ(24)の短縮部が、前記エンボス構造部(6)の縁部に向かう前記活性場(3)の入口領域と出口領域にあることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の電極板(1)。
【請求項5】
前記基準平面(E)を起点とする、前記隆起した線状エンボスストリップ(14)の高さ(h)が、陥凹した前記線状エンボスストリップ(15)の高さ(h)と、前記電極板(1)の板厚(s)を超える分だけ異なることを特徴とする、請求項1に記載の電極板(1)。
【請求項6】
前記線状エンボスストリップ(14、15)が、前記流れ方向(DR)に対して45°±15°の角度(α)で傾斜しており、前記線状エンボスストリップ(14、15)の前記長手方向および横断方向の両方において台形状の様式で輪郭が形成されており、前記線状エンボスストリップ(14、15)の立ち上がり面(18)が、前記電極板(1)の第1の側面(7)に対して45°±15°の角度(β;180°-γ)で傾斜していることを特徴とする、請求項1に記載の電極板(1)。
【請求項7】
前記列の前記方向において全ての線状エンボスストリップ(14、15)の前記配置の側面に位置し、前記フレーム領域(2)の境界となるエンボス要素(16、17、20、21)のうちの2つの列が、均一なエンボス方向を有することを特徴とする、請求項1に記載の電極板(1)。
【請求項8】
前記フレーム領域(2)の境界となる前記エンボス要素(16、17)が、エンボス点として構成されていることを特徴とする、請求項7に記載の電極板(1)。
【請求項9】
前記フレーム領域(2)の境界となる前記エンボス要素(20、21)は各々、V字形状を示し、傾斜した線状エンボスストリップ(14、15)の各行が、「開く山括弧」記号および「閉じる山括弧」記号の様式で2つのV字形状エンボス要素(20、21)によって囲まれていることを特徴とする、請求項7に記載の電極板(1)。
【請求項10】
金属板から請求項1に記載の電極板(1)を製造するための方法であって、複数の個々のエンボス要素(14、15、16、17)が、成形によって製造され、前記エンボス要素(14、15、16、17)が、前記電極板(1)の両側に前記基準平面(E)を越えて異なる距離だけ突出し、前記電極板(1)の両側に線状エンボスストリップ(14、15)の杉綾模様を共に示す、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気分解システムにおける使用を意図した電極板に関する。さらに、本発明は、電気分解システム用に、特に水素製造用に、電極板を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、欧州特許第2507410号明細書には、電気分解によって水素を生成するための装置が記載されている。記載されている電気分解システムは、海水、汽水、または淡水の水源から採取した水で運転するのに好適であるとされている。その水は、搬送ガス流に供給され、その結果、水の少なくとも一部が、蒸発形態で搬送ガス流に吸収される。このようにして投入された搬送ガス流は、最終的に電解槽に供給される。
【0003】
欧州特許第1587760号明細書には、複数の電気分解板を含む電気分解セルが開示されている。電気分解板は、筐体内部の溝付き装置に固定されている。公知の電気分解セルの筐体は、流体が流れることを可能にする入口および出口を有する。複数の板は、筐体内に積層形態で配置されている。
【0004】
西独国特許出願公開第19956787号明細書に記載されている電気分解板は、外側の非導電性フレームと、その非導電性フレームに取り付けられた導電性のバイポーラグラファイトプレートと、で構成されている。電解質供給領域において電解質溶液を強制的に誘導するために、プラスチックエプロンが設けられている。
【0005】
独国特許発明第102013225159号明細書から公知の電気化学セルの配置は、例えば、水または水性電解質の通過のために提供されており、網目構造を有するか、または多孔質材料から形成されている平坦構造の形態の基本要素を含む。複数の基本要素は、互いに重なるように配置され、基本要素の縁部領域は、充填剤を使用して流体密に接続される。
【0006】
国際公開第2019/121947号および同第2020/030644号の文献に記載されている様々な電気化学システムは各々、流体空間を区切る複数のセパレータ板の配置を有する。記載されている電気化学システムは、燃料電池または電気分解セルであり得る。
【0007】
欧州特許出願公開第3725916号明細書は、水素を生成するための装置における使用を意図し、ガスの通過のための開口部を有する電気分解板を開示しており、開口部の縁部は、電気的に非導電材料で覆われている。
【0008】
バイポーラ電気容器は、欧州特許出願公開第3575442号明細書から公知であり、水素製造用に提供されている。容器のアノードおよび/またはカソードは、多孔質電極として構成されている。バイポーラ容器の膜は、無機成分を有する多孔質膜である。欧州特許出願公開第3575442号明細書による装置は、アルカリ電解に好適であるとされている。
【0009】
水素電気分解システムを、エネルギーおよび/または媒体の流れが起こる、より包括的なシステムに組み込むための方法は、例えば、国際公開第2014/144556号および独国実用新案第202011102525号明細書の文献に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、先行技術と比較して、製造関連だけでなく、電気技術的および流体的な態様も考慮されている、電極板の形態の電気分解板の製造をさらに発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する電極板によって解決される。本課題はまた、請求項10に記載の電極板を製造するための方法によっても解決される。製造方法に関連して以下に説明する本発明の実施形態および利点はまた、必要な変更を加えて、装置、すなわち、電解槽において使用される電極板にも適用され、その逆もまた同様である。
【0012】
電極板は、完成したシステム、すなわち、電解槽で電気化学反応が起こる活性場を取り囲むフレーム領域を有する。活性場は、三次元で構造化されている。典型的な実施形態では、三次元構造は、フレーム領域には適用されない。フレーム領域は、平坦であり、変形されていない平坦な金属薄板によって形成され、基準平面を形成する。活性場は、フレーム領域と同様に、したがって電極板全体が、長方形、典型的には正方形ではない基本形状を有する。複数の電極板は、電気分解セルのスタックに組み立てられるように設けられている。
【0013】
活性場には、複数の線状、すなわち、直線状のエンボスストリップを含む、基準平面を起点として隆起および陥凹している個々のエンボス要素の形態のエンボス構造部がある。線状エンボスストリップは、隆起した線状エンボスストリップと陥凹した線状エンボスストリップとが、行の方向と列の方向との両方において交互の様式で形成されるような様式で、行と列との配置で位置付けられており、ある行の全ての線状エンボスストリップは、活性場の長手方向の側面およびそれに平行な流れ方向に対して同一の様式で傾斜しており、次の行の線状エンボスストリップは、等しく、かつ反対向きの傾斜を有する。エンボスストリップは、電極板の機械的安定性と流れ誘導との両方に寄与している。エンボスストリップはまた、使用されている金属薄板を介して電流を導通させることもできる。杉綾模様で行われる線状エンボスストリップの配置は、電極板の表面の領域で、通り過ぎる流体に対して特に均一な流れと流体分布を可能にする。さらに、金属薄板を基準平面から基準平面に垂直な両方向に成形することにより、電極板の機械的安定性が大幅に向上し、特に150μm~500μmの範囲の特に薄い金属板の使用が可能になる。
【0014】
電気分解セルのさらなる構成要素、例えば、ガス拡散層は、電極板の線状エンボスストリップに隣接することができる。細長い線状エンボスストリップと他の構成要素との間の境界領域は、平坦であり、これは、機械的負荷に関しても電荷の流れに関しても有利である。これは、水素製造のための大規模な電気分解システムに特に関連性がある。
【0015】
製造技術の点で有利な実施形態によれば、エンボス構造部のサブクラスタは、いずれの場合にも、2行の線状エンボスストリップによって形成されており、例えば、合計で少なくとも4つのこのようなサブクラスタが、直列に接続されている。直列接続とは、流体または電解質の流れ方向を指し、典型的な実施形態では、電極板の長手方向に対応する。サブクラスタが3行以上の線状エンボスストリップで構成されるような変形形態も実装することができる。いずれの場合でも、2つのサブクラスタ間の距離は、例えば、ある行に配置された線状エンボスストリップの、電極板の長手方向において測定される投影長さの少なくとも5%、多くても10%に相当する可能性がある。
【0016】
線状エンボスストリップに加えてエンボス点を構成することもできるエンボス要素は、例えば、ステンレス鋼又はチタンなどの金属薄板で作製された電極板の多くの可能な構成において、活性場の長さおよび幅に比べて比較的小さな寸法を有する。例えば、少なくとも3つの隆起したエンボス要素および少なくとも3つの陥凹したエンボス要素、具体的には線状エンボスストリップが各行に配置される。
【0017】
流体または電解質の入口領域および/または出口領域、すなわち、エンボス構造部の最初と最後の行において、隆起した線状エンボスストリップは、全長を有することができ、これは、残りの行の線状エンボスストリップについても同様であり、一方、陥凹した線状エンボスストリップは、大幅に短縮された、具体的には多くとも半分の長さの線状エンボスストリップとして構成されており、陥凹した線状エンボスストリップの短縮部は、エンボス構造部の縁部に向かっている。対応する様式では、エンボス構造部の入力側および/または出力側の縁部にある隆起した線状エンボスストリップを短縮することが可能であり、一方、陥凹した線状エンボスストリップは、短縮されていない形態である。線状エンボスストリップの片側短縮部は、例えば、フレームまたはシールなど、電気分解スタックの構成要素を電極板と表面接触させるために、いずれの場合でも使用することができる。
【0018】
さらなる可能な発展形態によれば、隆起した線状エンボスストリップの高さは、陥凹した線状エンボスストリップの高さとは異なり、線状エンボスストリップの「隆起した」または「陥凹した」外観は、線状エンボスストリップが金属板のどちらの側から見られるかに常に依存する。「エンボスストリップの高さ」の代わりに、「エンボス深さ」という用語もまた使用される。エンボス深さは、変形されていない金属板の基準平面に対して直交して測定されなければならない。金属板の片側と反対側ではエンボス深さが異なるため、エンボス構造部が非対称になる。この非対称性を使用して、電極板のカソード側とアノード側とで異なる流動条件を明確に設定することができる。具体的には、カソード側に付与されたエンボス深さとアノード側に付与されたエンボス深さとの間の差は、金属板の基準平面から測定される金属板の板厚よりも大きい。
【0019】
一般に、電極板は、変形されていない金属板の表面から異なる距離だけ電極板の両側に突出し、電極板の両側に杉綾模様を共に示す、複数の個々のエンボス要素を製造することによる成形プロセスによって効率的に製造することができる。
【0020】
杉綾模様の形態の構造部を含む電極板には、単層コーティングまたは多層コーティングを施すことができる。電極板全体が、必ずしも均一な様式でコーティングされるとは限らない。具体的には、活性場にのみコーティングが存在し、フレーム領域には存在しなくてもよい。また、活性場とは異なる方法でフレーム領域をコーティングすることもまた可能である。
【0021】
全ての実施形態において、電極板の利点は、特に、三次元両面構成が、活性場上に均一に分布する層状媒体の流れをサポートすることである。活性場の盛り上がりおよび陥凹は、単に表面から点状の様式で突出しているのでなければ、大きく修正した様式で正弦波の形状に基づくことができる。正弦波の輪郭とは対照的に、特に、変形されていない金属板の表面から最大距離における平面にある水平部が存在することがある。これは、線状エンボスストリップを通る長手方向面および横断面の両方に適用される。いずれの場合も、線状エンボスストリップの立ち上がり面は、例えば、金属板の表面が変形していないか、または著しく変形していない平面に対して30°~60°の角度で傾斜しており、その結果、長手方向および横断方向において面が台形状になることがある。
【0022】
電極板の平面図において、個々の線状エンボスストリップは、例えば、電極板の長手方向の側面に対して大きさが均一である45°±15°の角度で傾斜してもよい。記載されている長手方向面および横断面の形状と共に、これにより、電解槽の運転中のデッドスペースを回避するように構成された流れ誘導効果がもたらされ、特に陥凹部における定常渦の形成が最小限に抑えられる。
【0023】
変更された実施形態によれば、流体または電解質の流れ方向に対して斜めに配置された線状エンボスストリップの配置、具体的には杉綾模様のような配置は、2行のエンボス要素、例えば、エンボス点によって側面に配置されており、これらは、活性場の長手方向の側面に配列され、エンボス構造部の列の方向に配向されている。これらのエンボス要素は、線状エンボスストリップと比較すると小さく、具体的にはほぼ点状のエンボス要素であり、活性場の縁部、すなわち、フレーム領域への移行部においてストリップ状に各々配列されており、関連する狭い領域では流れが緩和されるという効果を有する。特に、流れ成分は、活性場の中心と比較して、電極板の長手方向に直交して減衰される。
【0024】
点状の盛り上がりの代わりに、エンボス要素はまた、活性場の側方領域に存在してもよく、これらのエンボス要素は、流体または電解質の流入領域から流出領域まで延在し、これらのエンボス要素の各々は、V字形状を示し、このようなV字形状エンボス要素は、線状エンボスストリップの各行の最初と最後に配列される。本明細書では、エンボス要素のV字側は、ある行に並んだ線状エンボスストリップに向けられている。これは、傾斜した線状エンボスストリップの各行が、「開く山括弧」記号および「閉じる山括弧」記号の様式で2つのV字形状エンボス要素によって囲まれていることを意味する。山括弧のように見えるV字形状エンボス要素は、電極板上に載置されている電気分解スタックの構成要素によって部分的にのみ覆われるような様式で寸法決定することができる。フレーム段を形成することができる構成要素は、活性表面の外側に配列され、V字脚の形状である流路様陥凹部は、被覆部から突出し、各V字形状エンボス要素の中央屈曲部は、被覆部の下方に配列される。この構成により、2つの利点が得られる。一方では、活性場の縁部での非機能的な媒体の流れがほとんど防止され、他方では、V字形状エンボス要素によって形成された流路を通る媒体の小さな流れが許容され、デッドスペースに流体が蓄積するのを防止する。
【0025】
活性場全体において、電極板の構造部は、流れる電解質または流体も、基準平面によって画定された平面に垂直な移動成分を受けることを確実にする。基準平面から離れる、または基準平面に向かうこれらの流れ成分は、特に、流れ方向において連続する列の線状エンボスストリップが、最初の列では活性場の長手方向に対して均一な角度で位置付けられ、次の列では反対向きで同じ大きさの角度で傾斜したエンボスストリップから交互に構成されるという事実によって生成され、全ての線状エンボスストリップにも、点状および任意の他のエンボス要素にも存在する、既に述べた立ち上がり面の角度もまた、役割を果たす。
【0026】
以下では、本発明のいくつかの例示的な実施形態が、図面を用いてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】電気分解システム用電極板の第1の例示的な実施形態の平面図である。
図2図1に類似した図で示した、電気分解システム用電極板の第2の例示的な実施形態の図である。
図3】電極板のエンボス構造部の詳細平面図である。
図4】エンボス構造部の断面図である。
図5】エンボス構造部の断面図である。
図6】(図4および図5に関して)切断線を概略的にマーキングしたエンボス構造部の更なる平面図である。
図7】活性場の長手方向の側面上にV字形状エンボス要素を有する電極板の斜視図である。
図8】活性場の入口領域および出口領域においてエンボスストリップが大幅に短縮された電極板の斜視背面図である。
図9図6に類似して示した図7による電極板の概略図である。
図10図9に類似して示した図8による電極板の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
特に明記しない限り、以下の説明は、全ての例示的な実施形態に関する。全ての図において、互いに対応する部分または基本的に同じ効果を有する部分は、同じ参照符号で識別されている。
【0029】
参照符号1で全体的にマークされた電極板は、薄鋼板で作製されており、略して電気分解システム10とも称される、水素製造用の電気分解システム(さらに図示せず)における使用を対象とする。このような電気分解システムの基本的な構造および機能に関しては、冒頭で引用した先行技術に言及されている。
【0030】
電極板1は、金属薄板から形成されており、非正方形の矩形を有し、三次元構造の活性表面3を取り囲む平面フレーム領域2を有する。フレーム領域2には、大きさの異なる複数の開口部4、5があり、開口部4、5は、例示的な実施形態では円形であり、特に、媒体の通過、または電気分解セルのスタックを共に保持するためのタイロッドの挿入に使用することができる。金属板は、平板状に変形していない状態でフレーム領域2に存在する。変形していない平坦な金属板は、基準平面Eを形成し(図5を参照)、エンボス構造部6が基準平面Eから上向きおよび下向きに形成される。
【0031】
活性表面3には、電極板1の基準平面Eから両側に突出するエンボス構造部6がある。金属板の第1の側面7では、エンボス構造部6は、隆起したエンボス領域8(図4を参照)と称され、これは、基準平面Eから、見る人に向かって立ち上がっている。隆起したエンボス領域8は、陥凹したエンボス領域9と交互に配置されており、陥凹したエンボス領域9もまた基準平面Eから立ち上がっているが、見る人からは遠ざかっている。
【0032】
エンボス構造部6は、図1による例示的な実施形態と図2による例示的な実施形態との両方に関する図3から特に分かるように、サブクラスタ11の形態で分割されている。全体として、エンボス構造部6は、行と列とのパターンを有し、各サブクラスタ11は、2行の線状エンボスストリップ14、15を含む。
【0033】
電気分解システム10を動作させるとき、DRで示す電解質の流れ方向は、活性場3および電極板1全体の長手方向に対応する。個々のエンボスストリップ14、15は、流れ方向DRに対して45°±15°の均一な角度で傾斜している。各エンボスストリップ14、15の全長は、Lで示され、流れ方向DRに横断して投影された長さ、すなわち、視覚的に短縮された長さは、L’で示される。A’で示される2つのサブクラスタ11間の距離は、長さL’と同様に、流れ方向DRにおいて測定され、投影長さL’の5%~10%である。また、長さLは、薄板長さと称され、L’は、投影薄板長さと称される。
【0034】
線状エンボスストリップ14、15、すなわち、薄板に加えて、基準平面Eを起点として隆起点16および陥凹点17の形態のエンボス点16、17はまた、図1および図2による実施形態では、活性表面3に形成される。要約すると、線状エンボスストリップ14、15およびエンボス点16、17は、エンボス要素とも称される。
【0035】
全ての図において、隆起したエンボス領域8に帰属するエンボス要素14、16は、実線で識別され、陥凹したエンボス要素15、17は、破線で識別されている。同じ方向に傾斜した線状エンボスストリップ14、15によって形成されている各行の最初と最後には、図1及び図2の場合、エンボス点16、17がある。
【0036】
これら任意選択のエンボス点16、17を含め、隆起したエンボス要素14、16と陥凹したエンボス要素15、17とが、各行に交互に配置されている。主として同様に、隆起した線状エンボスストリップ14と陥凹した線状エンボスストリップ15とは、線状エンボスストリップ14、15によって形成され、電極板1の長手方向に延在する列において、常に交互に配置され、その結果、全ての場合において、杉綾模様のエンボスストリップ14、15の配置が合計で1つ存在する。好ましくは、サブクラスタ11の数は、少なくとも2つ、具体的には6つ以上である。
【0037】
図1による例示的な実施形態とは対照的に、図2による例示的な実施形態では、活性場3の2つの長手方向の側面の各々に、隆起したエンボス点16の行がある。これらの行は、エンボス構造部6の縁部クラスタ13とも称される。図2に概説した構成から逸脱して、基準平面Eを起点とする、交互に隆起したエンボス点16と陥凹したエンボス点17との第1の縁部クラスタ13を形成してもよい。いずれの場合でも、縁部クラスタ13が構築されるエンボス点16、17は、隆起したエンボス領域8に完全に帰属するか、または陥凹したエンボス領域9に完全に帰属するかのいずれかであり得、既に説明した様式で、線状エンボスストリップ14、15上の各行の最初と最後をマークするそれらのエンボス点16、17に隣接して線状に並ぶ。
【0038】
他の全ての図に関する、図4および図5の断面図A-AおよびB-B(図6を参照)から分かるように、隆起したエンボス領域8の、hで示すエンボス深さ、すなわち、エンボス要素14、16の高さは、陥凹したエンボス領域9の、hで示すエンボス深さと、明らかに、すなわち、電極板1の、sで示す板厚を超える分だけ異なる。本実施例では、電極板1の第1の側面7は、x-y平面にある。エンボス要素14、15、16、17は、z方向に延在している。各エンボスストリップ15、16の2つの端部において18で示す立ち上がり面は、x-y平面に対して45°±15°の角度βで斜めに位置付けられている。
【0039】
エンボスストリップ15、16の延長線を横断した断面B-B(図6を参照)を示す図5では、隆起したエンボス領域8の構造部幅は、Bで示され、陥凹したエンボス領域9の構造部幅は、Bで示されている。さらに、図5には角度γが示されており、エンボスストリップ15、16の長手方向の側面における立ち上がり面18の傾斜は、180°と角度γとの間の差に相当し、角度βのように30°~60°の範囲にある。
【0040】
線状エンボスストリップ14、15の台形状の輪郭は、図4および図5の両方に見ることができる。第1の側面7に平行な平面にあり、そこからhまたはhだけ離間している、線状エンボスストリップ14、15の水平部は、図5では19で示されている。図4および図5による理想的な表現から逸脱して、水平部19と立ち上がり面18との間の移行部、ならびに立ち上がり面18と第1の側面7との間の移行部は、丸みを帯びていてもよい。全てのエンボス要素14、15、16、17は、成形法によって製造される。活性表面3へのコーティングの塗布は、成形前および/または成形後に可能である。
【0041】
線状エンボスストリップ14、15の輪郭に関する限り、図4および図5による実施形態と図7図10による例示的な実施形態との間に差はない。
【0042】
図7および図9による実施形態では、縁部クラスタ13は、V字形状エンボス要素20、21によって付与される。本明細書では、傾斜した線状エンボスストリップ14、15上の各行の最初と最後に、エンボス要素20は、印刷字体の「開く山括弧」記号として現れ、エンボス要素20は、印刷字体の「閉じた山括弧」記号として現れる。流れ方向DRは、図6と同様に、図9のx方向に対応する。図7からわかるように、活性場3の側面領域において、V字形状エンボス要素20、21のすぐ隣には、エンボスストリップ14、15と比較して短縮された、陥凹したエンボスストリップ22、または隆起したエンボスストリップ23がある。これらの短縮されたエンボスストリップ22、23の長さは、残りのエンボスストリップ14、15の全長Lの半分を超える。
【0043】
エンボス構造部6の変更された側面領域に加えて、図8および図10による例示的な実施形態では、活性場3の入口領域および出口領域にも変更がある。図1および図2、ならびに図7とは対照的に、図8は、任意に「後側面」と称される電極板1の側面を示している。図10では、図6および図9と同様に、電極板1の「前側面」が記号の様式で示されている。図8から分かるように、大幅に短縮され陥凹した線状エンボスストリップ24は、2つの隆起した線状エンボスストリップ14の間のいずれの場合にも、活性場3の入口領域に配置されている。短縮された線状エンボスストリップ24の長さは、線状エンボスストリップ14、15の別様に均一な長さLの半分未満である。これにより、エンボス構造部6の縁部には、構成要素(図示せず)と電極板1の第1の側面7との間に平坦な接点を設けることができる空間が作製され、短縮されていない線状エンボスストリップ14と前述の構成要素との間に重なりが生じる。同じことが、図1による配置に関連して、図示の電極板1の詳細の右側縁部に配列されている電解質の出口領域にも適用される。図8および図10の場合、全体として矩形のエンボス構造部6の全ての4つの縁部領域は、線状エンボスストリップ14、15のみで形成されたエンボス構造部6の中央領域と比較して、変更されている。
【符号の説明】
【0044】
1 電極板
2 フレーム領域
3 活性場
4 フレーム領域の開口部(大)
5 フレーム領域の開口部(小)
6 エンボス構造部
7 金属板の第1の側面
8 隆起したエンボス領域(基準平面を起点とする)
9 陥凹したエンボス領域(基準平面を起点とする)
10 電気分解システム
11 サブクラスタ
12 2つのサブクラスタ間の自由空間
13 縁部クラスタ
14 隆起した線状エンボスストリップ(基準平面を起点とする)
15 陥凹した線状エンボスストリップ(基準平面を起点とする)
16 隆起したエンボス点(基準平面を起点とする)
17 陥凹したエンボス点(基準平面を起点とする)
18 エンボス要素の立ち上がり面
19 エンボス要素の水平部
20 V字形状エンボス要素
21 V字形状エンボス要素
22 側面領域において短縮され、陥凹したエンボスストリップ
23 側面領域において短縮され、隆起したエンボスストリップ
24 入口領域または出口領域において大幅に短縮されたエンボスストリップ
α、β、γ 角度
A’ サブクラスタ間の距離
隆起したエンボス領域における構造部幅
陥凹したエンボス領域における構造部幅
DR 流れ方向
隆起したエンボス領域の高さ
陥凹したエンボス領域の高さ
L 薄板長さ
L’ 流れ方向の(投影された)薄板厚さ
s 板厚
E 基準平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10