(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】排気浄化装置及びエンジン
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20250108BHJP
F01N 3/18 20060101ALI20250108BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20250108BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20250108BHJP
【FI】
F01N3/08 B
F01N3/18 A
F01N3/24 L
F01N3/24 T
F01N13/08 C
F01N13/08 Z
(21)【出願番号】P 2024034893
(22)【出願日】2024-03-07
(62)【分割の表示】P 2021006377の分割
【原出願日】2021-01-19
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】井上 剛
(72)【発明者】
【氏名】森満 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岩本 浩平
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-042672(JP,A)
【文献】特開2010-090836(JP,A)
【文献】特開2015-075042(JP,A)
【文献】特開2017-172518(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0195106(US,A1)
【文献】国際公開第2005/073528(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011003356(DE,A1)
【文献】韓国登録特許第10-0638279(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01N 3/18
F01N 3/24
F01N 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスの窒素酸化物を浄化する排気浄化装置であって、
エンジンから排出された前記排気ガスを所定の排気方向へ流通させる排気通路に設けられ、前記排気ガスの還元を促進する触媒と、
前記排気通路の内側へ延びるように設けられた支持部材と、
前記支持部材の端部に、前記排気ガスを還元する還元剤を前記触媒に向けて前記排気方向に沿って噴射する噴射孔と、
前記排気方向において前記噴射孔よりも上流側に設けられ、少なくとも前記排気方向の対向方向であって前記噴射孔の側とは反対側に冷却媒体を排出する排出孔と、を備え、
前記還元剤を前記噴射孔に供給する還元剤供給管と、前記冷却媒体を前記排出孔に供給する接続管とを、前記支持部材の内側に設けていることを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
前記排出孔は、供給された前記冷却媒体の全量を排出することを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記排気通路の壁を貫通して設けられ、
前記排気通路の内側で前記支持部材の端部に取り付けられた噴射ノズルを備え、前記噴射ノズルは、前記噴射孔及び前記排出孔を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
前記接続管は、過給機で昇圧された昇圧空気を前記エンジンへ供給する過給通路から分岐されていて、
前記排出孔は、前記接続管を介して前記過給通路に接続されていて、前記過給通路から前記接続管を流通する前記昇圧空気を前記冷却媒体として噴射することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の排気浄化装置。
【請求項5】
前記接続管は、前記過給通路における前記昇圧空気の給気方向において、前記過給通路に設けられるインタークーラよりも下流側で前記過給通路から分岐して構成されていることを特徴とする請求項4に記載の排気浄化装置。
【請求項6】
前記接続管を通過する前記昇圧空気の流量を所定の調整量以下に調整する調整機構を更に備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の排気浄化装置。
【請求項7】
前記噴射孔と前記排出孔とは、前記排気通路の径方向において同じ位置に配置されるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の排気浄化装置。
【請求項8】
船体に搭載される前記エンジンに適用されることを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載の排気浄化装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の排気浄化装置を備えることを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスの窒素酸化物を浄化する排気浄化装置、及びこの排気浄化装置を備えるエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
舶用又は陸用のエンジンでは、排気ガス中の窒素酸化物を還元して排気ガスを浄化する、いわゆるSCRシステムで構成された排気浄化装置を備えている。排気浄化装置は、排気ガスの排気通路内に触媒を設けると共に、触媒に向けて尿素を供給することで、触媒に蓄積された窒素酸化物を還元するように構成される。
【0003】
排気浄化装置は、例えば、特許文献1に開示されるように、噴射ノズルによって還元剤である尿素水を排気管の内部に供給するように構成されている。更に、特許文献1の排気浄化装置は、加圧空気供給ポンプによってエアタンクに加圧された加圧空気を噴射ノズルに供給して、この加圧空気を利用することで尿素の霧化を促進する、いわゆるエアアシスト尿素噴射システムを採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなエアアシスト尿素噴射システム(エアアシスト機能)を採用する場合、加圧空気を収容したエアタンク、すなわち船体又は設備に設けられた加圧空気タンクを利用することが一般的である。大型船や中型船等のように船体が比較的大きい場合には、設置スペースに余裕があるため、加圧空気タンクを設けることができるが、小型船のように船体が比較的小さい場合には、設置スペースに余裕がなく、加圧空気タンクを設けることが困難な場合がある。そのため、小型船等では、エアアシスト機能を採用していない。
【0006】
ところで、排気浄化装置では、排気管の壁付近に噴射ノズルを配置すると、尿素等の還元剤が排気通路の壁面に付着したり、還元剤及び排気ガスが適切に混合されない等の不具合が生じるおそれがある。このような不具合を抑制するために、排気浄化装置では、排気管の中央付近に噴射孔が位置するように噴射ノズルを配置することがある。しかしながら、排気管の中央付近の噴射ノズルに排気ガスの熱害が生じ、例えば、排気ガスの熱によって噴射ノズルの耐久性が低下し、また、還元剤の噴射中に噴射ノズルに還元剤が固着するおそれがある。その場合、噴射ノズルから還元剤を正常に噴射できなくなり、排気ガスを正常に浄化できなくなる等、噴射ノズルが正常に動作しないおそれがある。
【0007】
なお、エアアシスト尿素噴射システムでは、加圧空気が噴射ノズルを冷却することで、噴射ノズルに対する排気ガスの熱害が抑制されることがある。しかしながら、エアアシスト尿素噴射システムを採用しない小型船等では、噴射ノズルを冷却することができず、噴射ノズルの耐久性の低下や、噴射ノズルの還元剤の固着が発生し、噴射ノズルが正常に動作しないおそれがある。
【0008】
本発明は、還元剤噴射のエアアシスト機能の有無に拘わらず、噴射ノズルの熱害を抑制する排気浄化装置、及びこの排気浄化装置を備えるエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の排気浄化装置は、排気ガスの窒素酸化物を浄化する排気浄化装置であって、エンジンから排出された前記排気ガスを所定の排気方向へ流通させる排気通路に設けられ、前記排気ガスの還元を促進する触媒と、前記排気通路の内側へ延びるように設けられた支持部材と、前記支持部材の端部に、前記排気ガスを還元する還元剤を前記触媒に向けて前記排気方向に沿って噴射する噴射孔と、前記排気方向において前記噴射孔よりも上流側に設けられ、少なくとも前記排気方向の対向方向であって前記噴射孔の側とは反対側に冷却媒体を排出する排出孔と、を備え、前記還元剤を前記噴射孔に供給する還元剤供給管と、前記冷却媒体を前記排出孔に供給する接続管とを、前記支持部材の内側に設けていることを特徴とする。
【0010】
上記の本発明の排気浄化装置において、前記排出孔は、供給された前記冷却媒体の全量を排出する。
【0011】
上記の本発明の排気浄化装置において、前記支持部材は、前記排気通路の壁を貫通して設けられ、前記排気通路の内側で前記支持部材の端部に取り付けられた噴射ノズルを備え、前記噴射ノズルは、前記噴射孔及び前記排出孔を有する。
【0012】
上記の本発明の排気浄化装置において、前記接続管は、過給機で昇圧された昇圧空気を前記エンジンへ供給する過給通路から分岐されていて、前記排出孔は、前記接続管を介して前記過給通路に接続されていて、前記過給通路から前記接続管を流通する前記昇圧空気を前記冷却媒体として噴射する。
【0013】
上記の本発明の排気浄化装置において、前記接続管は、前記過給通路における前記昇圧空気の給気方向において、前記過給通路に設けられるインタークーラよりも下流側で前記過給通路から分岐して構成されている。
【0014】
上記の本発明の排気浄化装置は、前記接続管を通過する前記昇圧空気の流量を所定の調整量以下に調整する調整機構を更に備える。
【0015】
上記の本発明の排気浄化装置において、前記噴射孔と前記排出孔とは、前記排気通路の径方向において同じ位置に配置されるように構成されている。
【0016】
上記の本発明の排気浄化装置は、船体に搭載される前記エンジンに適用される。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明のエンジンは、上記の何れかの排気浄化装置を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、還元剤噴射のエアアシスト機能の有無に拘わらず、噴射ノズルの熱害を抑制する排気浄化装置、及びこの排気浄化装置を備えるエンジンを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る排気浄化装置が適用される船舶の例を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る排気浄化装置が適用される船舶の例を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る排気浄化装置の例を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る排気浄化装置における噴射ノズルの例を示す模式図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る排気浄化装置における噴射ノズルの他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る排気浄化装置1について図面を参照して説明する。排気浄化装置1は、
図1及び
図2に示すように、船舶100(例えば、小型船)に搭載されるエンジン2(例えば、エンジン2)に対して適用され、船体101(例えば、小型の船体101)に取り付けられてエンジン2から排出される排気ガスを浄化する。
図1は、水平方向に排気ガスを排出するエンジン2に対して排気浄化装置1が適用される例を示す。
図2は、垂直方向に排気ガスを排出するエンジン2に対して排気浄化装置1が適用される例を示す。
【0021】
エンジン2は、シリンダヘッドやシリンダブロックからなる複数の気筒を有して構成される。
図3に示すように、エンジン2は、空気を吸入する吸気通路を構成する吸気管3と、排気ガスを所定の排気方向に排出する排気通路を構成する排気管4とに接続されている。吸気管3は、過給機5に接続されていて、エンジン2は、過給機5によって昇圧された昇圧空気を吸気管3を介して吸入する。排気管4には、排気浄化装置1が設けられ、エンジン2は、排気管4を介して排出した排気ガスを排気浄化装置1によって浄化する。
【0022】
過給機5は、例えば、排気過給式で構成され、
図3に示すように、過給通路を構成する過給管6と、タービン7と、コンプレッサ8と、インタークーラ9とを備える。
【0023】
過給管6は、エンジン2の吸気管3に接続されていて、昇圧空気を吸気管3へ供給する。タービン7は、エンジン2の排気管4内に設けられていて、排気管4を流通する排気ガスの流れを利用して回転し、その回転駆動力をコンプレッサ8に入力する。コンプレッサ8は、過給管6における吸気管3側を下流側とする昇圧空気の給気方向の上流側で過給管6に設けられ、タービン7から入力した回転駆動力によって駆動し、過給管6内の空気を昇圧する。インタークーラ9は、過給管6における昇圧空気の給気方向においてコンプレッサ8よりも下流側で過給管6に設けられ、インタークーラ9よりも下流側に供給される昇圧空気を冷却する。
【0024】
例えば、エンジン2は、発電機(図示せず)に接続されていて、発電機はエンジン2の動力によって駆動して発電する。エンジン2は、発電機の負荷に応じて過給機5からの昇圧空気の吸気を調整し、発電機の負荷が高くなる程、昇圧空気の圧力が高められる。また、エンジン2を船舶推進用として搭載した船舶100が前進する場合、エンジン2の負荷が高くなるため、過給機5の昇圧空気の圧力が高められ、船舶100が停止(アイドリング状態)の場合、エンジン2の負荷が低いため、過給機5の昇圧空気の圧力は弱まる。
【0025】
排気浄化装置1は、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元して排気ガスを浄化する、いわゆるSCR(選択触媒還元)システムで構成されている。排気浄化装置1は、排気管4に対して設けられ、排気ガスの排気方向において過給機5のタービン7よりも下流側に配置される。なお、排気管4は、排気浄化装置1を経由して排気ガスを排出する通路と、排気浄化装置1を経由せずに排気ガスを排出する通路とに分かれていてもよい。
【0026】
例えば、排気浄化装置1は、
図3に示すように、触媒反応器10と、噴射ノズル11と、還元剤供給機構12と、冷却媒体供給機構13とを備えている。
【0027】
触媒反応器10は、エンジン2の排気管4内に設けられ、NOx還元触媒等の触媒14を備えている。触媒14は、噴射ノズル11によって噴射された尿素水等を還元剤として、排気管4を流通する排気ガスに含まれる窒素酸化物を窒素及び水に選択還元する還元反応を促進し、排気ガスを浄化する。
【0028】
噴射ノズル11は、エンジン2の排気管4内で、排気ガスの排気方向において触媒反応器10よりも上流側で、且つ過給機5よりも下流側に設けられる。また、噴射ノズル11は、触媒反応器10の触媒14に向けて尿素水等の還元剤を噴射するように構成される。
【0029】
噴射ノズル11は、排気管4の内壁面よりも排気管4の内側に配置され、好ましくは、排気管4の径方向の中央付近に配置されるとよい。例えば、噴射ノズル11は、排気管4の壁を貫通して排気管4の内側へ延びるように設けられた支持部材15によって支持されることにより、排気管4の内側に配置される。支持部材15は、排気管4の壁に設けられた貫通孔4aに挿入される。支持部材15の端部を排気管4の径方向の中央付近に配置すると、支持部材15の端部に取り付けられた噴射ノズル11は、排気管4の径方向の中央付近に配置される。なお、排気管4に対して噴射ノズル11が1つだけ配置される場合には、排気管4内に均一に還元剤を噴射できるように、噴射ノズル11は排気管4の径方向の中央に配置されてよい。
【0030】
支持部材15は、排気ガスの排気方向と交差するように延在していて、好ましくは、排気方向に向かって傾斜して配置されるとよく、この場合、貫通孔4aは、支持部材15の外径よりも大きい内径で形成される。支持部材15を傾斜させることで、噴射ノズル11や支持部材15に対して排気ガスが抜け易くなり、噴射ノズル11や支持部材15に気泡が滞留する現象を抑制することができる。
【0031】
噴射ノズル11は、噴射孔16と、還元剤通路17と、排出孔18と、冷却媒体通路19とを備えている。噴射孔16は、排気方向に沿って還元剤を噴射するように構成され、例えば、噴射ノズル11の排気方向側の面に設けられる。
【0032】
還元剤通路17は、噴射ノズル11の内部に設けられ、還元剤供給機構12に接続されていて、還元剤供給機構12から供給された還元剤を噴射孔16へ流通させる。
【0033】
排出孔18は、少なくとも排気方向の対向方向に向けて冷却媒体を排出するように構成され、例えば、噴射ノズル11の排気方向とは反対側の面に設けられる。なお、噴射ノズル11の排気方向とは反対側の面を平面状に形成していて、排出孔18はその平面に開口されてよい。噴射ノズル11は、噴射孔16と排出孔18とを排気管4の径方向において同じ位置に配置して構成されるとよい。例えば、排出孔18は、噴射ノズル11、特に噴射孔16を冷却媒体でエアカーテン状に覆うように、噴射ノズル11の外径に応じた円錐状の噴霧形態で冷却媒体を排出する。
【0034】
冷却媒体通路19は、噴射ノズル11の内部に設けられ、冷却媒体供給機構13に接続されていて、冷却媒体供給機構13から供給された冷却媒体を排出孔18へ流通させる。噴射ノズル11は、冷却媒体供給機構13によって供給される冷却媒体の全量を冷却媒体通路19及び排出孔18から排出するように構成される。なお、冷却媒体通路19は、噴射ノズル11内で、還元剤通路17を包むように構成されてもよい。例えば、冷却媒体通路19は、還元剤通路17の外周を囲う1つの管状に構成され、あるいは。還元剤通路17の外周に沿って間隔を空けて配置される複数の管状に構成される。
【0035】
還元剤供給機構12は、尿素水等の還元剤を噴射ノズル11へ流通させる還元剤供給通路を構成する還元剤供給管20を備えている。還元剤供給管20の還元剤供給通路は、噴射ノズル11の還元剤通路17に接続されている。還元剤供給管20は、支持部材15内に設けられてよく、あるいは、支持部材15とは別体で設けられてもよい。例えば、還元剤供給機構12は、所定の供給ユニット21によって還元剤を還元剤供給管20を介して噴射ノズル11へ供給する。供給ユニット21は、例えば、タンク(図示せず)に収容された還元剤をポンプ(図示せず)によって供給するように構成されてよい。
【0036】
なお、還元剤供給機構12は、一定の圧力、例えば、0.75MPaで還元剤供給管20を介して還元剤を供給する一方、噴射ノズル11で噴射されなかった還元剤を戻す還元剤戻り通路を構成する還元剤戻り管22を備えている。還元剤戻り管22の還元剤戻り通路は、噴射ノズル11の還元剤通路17に接続されている。還元剤戻り管22は、支持部材15内に設けられてよく、あるいは、支持部材15とは別体で設けられてもよい。還元剤供給機構12は、還元剤戻り管22を流通する還元剤の戻りの流量を調整する調量弁(図示せず)を備えていて、還元剤戻り管22の流路を絞ることにより、噴射ノズル11の噴射量を増加させることができる。
【0037】
冷却媒体供給機構13は、過給機5の過給管6を流通する昇圧空気を冷却媒体として利用するように構成され、過給管6の過給通路から分岐した接続通路を構成する接続管23を備えている。接続管23は、過給管6における昇圧空気の給気方向においてインタークーラ9よりも下流側で過給管6から分岐していて、インタークーラ9で冷却された昇圧空気を過給管6から取り込み、昇圧空気からなる冷却媒体を噴射ノズル11へ流通させる。接続管23の接続通路は、噴射ノズル11の冷却媒体通路19に接続されている。接続管23は、支持部材15内に設けられてよく、あるいは、支持部材15とは別体で設けられてもよい。
【0038】
また、冷却媒体供給機構13は、接続管23を流通する昇圧空気から不要物を捕捉するフィルター24と、接続管23を流通する昇圧空気の圧力(流圧)を調整する調整機構である調圧弁25とを備える。調圧弁25は、接続管23を通過して噴射ノズル11へ供給される昇圧空気を減圧して、噴射ノズル11の冷却専用の昇圧空気の流量を所定の調整量以下に調整する。
【0039】
なお、過給機5からエンジン2へ昇圧空気が供給されている間、冷却媒体供給機構13は、昇圧空気を冷却媒体として噴射ノズル11へ供給するところ、過給機5からエンジン2へ供給される昇圧空気の圧力が変化する場合でも、冷却媒体供給機構13は、調圧弁25によって一定圧力の昇圧空気を噴射ノズル11へ供給する。また、過給機5からエンジン2へ昇圧空気が供給されない場合には、冷却媒体供給機構13は、昇圧空気を噴射ノズル11へ供給しない。
【0040】
上記のように、本発明によれば、排気ガスの窒素酸化物を浄化する排気浄化装置1は、エンジン2から排出された排気ガスを所定の排気方向へ流通させる排気管4(排気通路)に設けられ、排気ガスの還元を促進する触媒14と、排気方向において触媒14よりも上流側で排気管4に設けられ、排気ガスを還元する還元剤を噴射する噴射ノズル11とを備えている。噴射ノズル11は、触媒14に向けて還元剤を噴射する噴射孔16と、少なくとも排気方向の対向方向に冷却媒体を排出する排出孔18とを備えている。
【0041】
これにより、本発明の排気浄化装置1によれば、噴射ノズル11から排気方向の対向方向に冷却媒体を排出することで、排出された冷却媒体が排気ガスに対するエアカーテンとして噴射ノズル11に作用するので、噴射ノズル11を排気ガスに起因する熱害から保護することができる。そのため、還元剤噴射のエアアシスト機能を備えることなく、熱害による噴射ノズル11の耐久性の低下を抑制し、また、熱害による噴射ノズル11への還元剤の固着を抑制することができる。従って、噴射ノズル11から還元剤を正常に噴射することができ、排気ガスを正常に浄化することができる等、噴射ノズル11を正常に動作させることができる。
【0042】
本発明の排気浄化装置1において、噴射ノズル11は、噴射ノズル11に供給された冷却媒体の全量を排出孔18から排出するように構成される。これにより、冷却媒体は、噴射ノズル11の冷却専用の媒体として噴射ノズル11に供給されているので、冷却媒体の全量を排気方向の対向方向に排出することで、冷却媒体によるエアカーテン効果をより好適に得ることができ、排気ガスの熱害から噴射ノズル11をより好適に冷却して保護することができる。
【0043】
本発明の排気浄化装置1は、排気管4の壁を貫通して排気管4の内側へ延びるように設けられた支持部材15を更に備えている。噴射ノズル11は、排気管4の内側で支持部材15の端部に取り付けられ、噴射孔16から排気方向に沿って還元剤を噴射するように構成される。これにより、排気管4の内壁から排気管4の内側に離間した位置で還元剤を排気方向に沿って噴射することにより、還元剤の拡散性を好適に確保することができる。そのため、触媒14に対して還元剤を一様に供給することができるので、排気ガスを好適に還元して浄化することができる。
【0044】
本発明の排気浄化装置1は、過給機5で昇圧された昇圧空気をエンジン2へ供給する過給管6(過給通路)から分岐した接続管23(接続通路)を更に備えている。噴射ノズル11は、接続管23を介して過給管6に接続されていて、過給管6から接続管23を流通する昇圧空気を冷却媒体として噴射する。これにより、排気浄化装置1が適用されるエンジン2の吸気を冷却媒体として利用することで、エアタンクやエアポンプ等の冷却媒体の貯留手段を別途設けることなく、冷却媒体を確保することができる。そのため、冷却媒体の貯留手段を搭載しない小型の船舶100に対して排気浄化装置1を適用することができ、すなわち、小型の船体101に排気浄化装置1を適用することが可能である。従って、排気浄化装置1の汎用性を高めることができる。
【0045】
本発明の排気浄化装置1は、接続管23は、過給管6における昇圧空気の給気方向において、過給管6に設けられるインタークーラ9よりも下流側で過給管6から分岐して構成されている。これにより、インタークーラ9を通過して冷却された昇圧給気を冷却媒体として利用することで、昇圧給気の排出による噴射ノズル11の冷却効果を高めるだけでなく、昇圧給気が噴射ノズル11を通過する際に噴射ノズル11内部の冷却効果を高めることができる。
【0046】
本発明の排気浄化装置1は、接続管23を通過する昇圧空気の流量を所定の調整量以下に調整する調圧弁25(調整機構)を更に備えている。ところで、接続管23を通過する昇圧空気の量を制限していない場合、必要以上に接続管23に昇圧空気が流入して、エンジン2に吸入される昇圧空気の量が少なくなってしまう。この場合、エンジン2から排出される排気ガスの温度(排気温度)が高くなるので、噴射ノズル11の熱害リスクが高くなってしまう。これに対して、本発明では、調整機構として調圧弁25を設けているので、昇圧空気が必要以上に接続管23に流入することがなく、エンジン2に昇圧空気を安定して供給できるので、噴射ノズル11の熱害リスクを低減することができる。
【0047】
本発明の排気浄化装置1は、噴射ノズル11は、噴射孔16と排出孔18とが排気管4の径方向において同じ位置に配置されるように構成されている。これにより、排気管4の径方向において、還元剤の噴射の真裏で冷却媒体が排出されるので、排出された冷却媒体を、排気ガスの流通に対するエアカーテンとして、噴射ノズル11に作用させるだけでなく、噴射された還元剤に対しても作用させることができる。そのため、還元剤の尿素等が析出することをより好適に抑制することができる。
【0048】
本発明の排気浄化装置1は、船体101に搭載されるエンジン2に適用される。これにより、長時間運転される船用のエンジン2においても噴射ノズル11の耐久性を好適に確保することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、排気浄化装置1を、小型の船舶100、すなわち、小型の船体101に適用する例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。他の例では、排気浄化装置1は、大型船や中型船に適用されてもよい。
【0050】
大型船や中型船は、エアタンク等からなる冷却媒体の貯留手段を設けることができるので、排気浄化装置1は、冷却媒体供給機構13が過給機5の昇圧空気を冷却媒体として利用する構成でなくてもよい。例えば、大型船や中型船の排気浄化装置1は、冷却媒体供給機構13が船体101に備わるエアタンク等の給気機器を利用する構成でもよく、この場合、冷却媒体供給機構13は、給気機器の給気を取り込んで冷却媒体として利用して、噴射ノズル11へ供給してもよい。あるいは、排気浄化装置1は、冷却媒体供給機構13がその他の外部機器から冷却媒体を取り込んでもよい。
【0051】
また、本実施形態では、排気浄化装置1が、1つの排気管4に対して1つの噴射ノズル11を備える例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。他の例では、排気浄化装置1は、エンジン2の大きさに応じて、1つの排気管4に対して2つ以上の噴射ノズル11を備えてもよい。例えば、大型船や中型船の大きいエンジン2では、
図5に示すように、1つの排気管4に対して2つの噴射ノズル11を備えてもよい。
【0052】
なお、本実施形態では、1つの排気管4に対して1つの噴射ノズル11が備えられる場合に、1つの噴射ノズル11が排気管4の径方向の中央に配置される例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。他の例では、排気浄化装置1は、1つの排気管4に対して噴射ノズル11が2つ以上配置される場合には、排気管4内に均一に還元剤を噴射できるように、噴射ノズル11は排気管4の径方向の中央付近に均等に配置されてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、噴射ノズル11が1つの噴射孔16を備える例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、他の例では、噴射ノズル11は2つ以上の噴射孔16を備えてもよい。
【0054】
更に、本実施形態では、噴射ノズル11が1つの排出孔18を備える例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、他の例では、噴射ノズル11は2つ以上の排出孔18を備えてもよい。また、他の例では、噴射ノズル11は、噴射ノズル11の排気方向とは反対側の面で排気方向と同方向に開口した排出孔18だけでなく、噴射ノズル11の外周面(側面)で排気方向と交差する方向に開口した1つ以上の排出孔18を備えてもよい。あるいは、他の例では、噴射ノズル11は、排気方向の対向方向に向けて冷却媒体を排出できれば、噴射ノズル11の外周面(側面)に排気方向と交差する方向に開口した排出孔18だけを備えてもよい。
【0055】
なお、本実施形態では、排気浄化装置1は、船舶100のエンジン2に適用される例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、排気浄化装置1は、船舶100以外のエンジン2に適用されてもよい。
【0056】
本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う排気浄化装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1 排気浄化装置
2 エンジン
3 吸気管(吸気通路)
4 排気管(排気通路)
5 過給機
6 過給管(過給通路)
9 インタークーラ
10 触媒反応器
11 噴射ノズル
14 触媒
15 支持部材
16 噴射孔
18 排出孔
20 還元剤供給管(還元剤供給通路)
23 接続管(接続通路)
25 調圧弁(調整機構)
100 船舶
101 船体