(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20250108BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20250108BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 B
G06F1/16 312E
H05K7/20 H
H05K7/20 G
(21)【出願番号】P 2024082571
(22)【出願日】2024-05-21
【審査請求日】2024-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴身 侑大
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡伸
(72)【発明者】
【氏名】星野 鷹典
(72)【発明者】
【氏名】尾上 祐介
【審査官】漆原 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2024-002778(JP,A)
【文献】特開2007-272272(JP,A)
【文献】米国特許第11775034(US,B2)
【文献】特開2023-074730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
G06F 1/16
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
筐体と、
前記筐体の上面に臨む複数のキーキャップを有し、厚み方向に空気を流通させるための連通孔が設けられたキーボード装置と、
前記筐体内に設けられた基板と、
前記基板の一部を相互間に跨ぐように配置され、互いに向かい合う側面にそれぞれ吐出口が設けられた一対のファンと、
を備え、
前記キーボード装置は、前記一対のファンと上下にオーバーラップする第1領域と、前記一対のファンの前記吐出口の間に挟まれた吐出空間と上下にオーバーラップする第2領域と、を除く領域に前記連通孔を有
し、
前記筐体は、
前記吐出空間に面して配置され、前記一対のファンの並び方向に沿って延在する外壁と、
前記外壁に形成され、前記吐出空間を前記筐体の外部と連通させる通気口と、
を有し、
前記筐体内には、前記吐出空間から見て前記通気口側とは反対側に位置すると共に、前記一対のファンの間を繋ぐように設けられることで、前記吐出空間を前記筐体内の他の空間から仕切る気密壁が設けられ、
前記連通孔は、前記他の空間と上下にオーバーラップする位置にある
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項
1に記載の電子機器であって、
前記気密壁から連続するように前記ファンの側面に沿って設けられることで、前記吐出空間と前記ファンの吸込口との間を仕切る第2気密壁を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の電子機器であって、
前記ファンは、
インペラと、
上面及び下面を有し、前記インペラを回転可能に収容したファン筐体と、
前記ファン筐体の下面に形成された吸込口と、
を有し、
前記ファンは、前記ファン筐体の上面が前記キーボード装置の下面に当接している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
電子機器であって、
筐体と、
前記筐体の上面に臨む複数のキーキャップを有し、厚み方向に空気を流通させるための連通孔が設けられたキーボード装置と、
前記筐体内に設けられた基板と、
前記基板の一部を相互間に跨ぐように配置され、互いに向かい合う側面にそれぞれ吐出口が設けられた一対のファンと、
を備え、
前記キーボード装置は、前記一対のファンと上下にオーバーラップする第1領域と、前記一対のファンの前記吐出口の間に挟まれた吐出空間と上下にオーバーラップする第2領域と、を除く領域に前記連通孔を有し、
前記ファンは、
インペラと、
上面及び下面を有し、前記インペラを回転可能に収容したファン筐体と、
前記ファン筐体の下面に形成された吸込口と、
を有し、
前記ファンは、前記ファン筐体の上面が前記キーボード装置の下面に当接している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器であって、
前記ファンは、前記ファン筐体の上面には吸込口を有していない
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーボード装置を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器はCPU等の発熱体を搭載している。このような電子機器は、発熱体を冷却するためのファンやヒートシンクを搭載している(例えば特許文献1参照)。本出願人は、このような電子機器の冷却構造に関し、キーボード装置を厚み方向に貫通する連通孔を有し、この連通孔をファンの直上に設けた構成を提案している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第7371170号公報
【文献】特許第6846547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の構成では、左右のファンがそれぞれ一対の吐出口を備え、2方向に空気を吐出することができる。一方の吐出口を出た空気は、その直後にあるヒートシンクを通過して筐体外に排出される。他方の吐出口を出た空気は、左右のファンの間に配置された基板の表面に沿って流れ、基板に実装された電子部品を冷却しつつ筐体外に排出される。
【0005】
ところで、このような電子機器の冷却性能をさらに向上させるため、特許文献2のキーボード装置の連通孔を特許文献1の構成に適用することを考えてみた。この場合、例えば飲料等の液体がキーボード装置にこぼされた際、液体が連通孔を通して直下のファンに導入された後に基板上に吐出され、電子部品が不具合を生じる可能性がある。また特許文献1の構成は、左右のファンの間の気圧がファンの吐出圧によって他の空間よりも高くなる。このため、特許文献2の連通孔を特許文献1の構成に適用する場合は、筐体内の気圧差も考慮しないと連通孔が正常に機能しなくなる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、冷却性能を向上させることができ、さらに不具合の発生を抑制することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る電子機器は、筐体と、前記筐体の上面に臨む複数のキーキャップを有し、厚み方向に空気を流通させるための連通孔が設けられたキーボード装置と、前記筐体内に設けられた基板と、前記基板の一部を相互間に跨ぐように配置され、互いに向かい合う側面にそれぞれ吐出口が設けられた一対のファンと、を備え、前記キーボード装置は、前記一対のファンと上下にオーバーラップする第1領域と、前記一対のファンの前記吐出口の間に挟まれた吐出空間と上下にオーバーラップする第2領域と、を除く領域に前記連通孔を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、冷却性能を向上させることができ、さらに不具合の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、筐体の内部構造を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、筐体の上面に設けられる吸気構造の設置範囲を説明するための模式的な平面図である。
【
図4】
図4は、筐体のファン及びその周辺部での模式的な側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。
図1に示すように、本実施形態の電子機器10は、クラムシェル型のノート型PCである。電子機器10は、蓋体11と筐体12をヒンジ14で相対的に回動可能に連結した構成である。本実施形態ではノート型PCの電子機器10を例示しているが、電子機器はノート型PC以外、例えばタブレット型PC、スマートフォン、又は携帯用ゲーム機等でもよい。
【0012】
蓋体11は、薄い扁平な箱状の筐体である。蓋体11はディスプレイ16を搭載している。ディスプレイ16は、例えば有機ELディスプレイや液晶ディスプレイである。
【0013】
筐体12は、薄い扁平な箱体である。筐体12の上面12aにはキーボード装置18及びタッチパッド19が臨んでいる。以下、筐体12及びこれに搭載された各構成要素について、オペレータがキーボード装置18を操作する姿勢を基準とし、筐体12の幅方向(左右)をそれぞれX1,X2方向、筐体12の奥行方向(前後)をそれぞれY1,Y2方向、筐体12の厚み方向(上下)をそれぞれZ1,Z2方向と呼んで説明する。X1,X2方向をまとめてX方向と呼ぶこともあり、Y1,Y2方向及びZ1,Z2方向についても同様にY方向、Z方向と呼ぶことがある。これら各方向は、説明の便宜上定めた方向であり、電子機器10の使用状態又は設置姿勢等によって変化する場合も当然にあり得る。
【0014】
筐体12は、上面12aを形成するプレート状部材20と、底面12bを形成するカバー部材21と、四周の側面12cを形成する立壁部材22とで構成することができる。プレート状部材20は、キーボード装置18が配置される矩形状の大きな開口部20aを有する。開口部20aの周囲はキーボード装置18を囲むベゼル20bを形成する。カバー部材21はプレート状に形成されている(
図3参照)。後述するように、本実施形態の筐体12はカバー部材21のY2縁部付近に突出部48が設けられている。立壁部材22は、プレート状部材20の四周縁部とカバー部材21の四周縁部との間で起立しており、全体として枠状を成している。
【0015】
ヒンジ14は、筐体12の後縁部に形成された凹状のヒンジ配置溝12dに設置され、筐体12と蓋体11とを連結する。ヒンジ14は、例えば回転軸となるヒンジシャフト14aをヒンジ筐体14bの長手方向の両端部にそれぞれ支持した構造である(
図4参照)。本実施形態のヒンジ14は、ヒンジ筐体14bがヒンジ配置溝12dの長手方向に沿って延在した、いわゆるワンバー形状に構成されている。ヒンジ14は、ヒンジ筐体14bが蓋体11と一体となって回転しつつ斜め後方へと下降する(
図4参照)。ヒンジ14は、このようにして蓋体11の回動角度を稼ぐ構造、いわゆるドロップダウン構造である。ヒンジ14の構造は上記以外でもよい。
【0016】
図2は、筐体12の内部構造を模式的に示す平面図である。
図2は、プレート状部材20を取り外して筐体12の内部を上から見た図である。
【0017】
図2に示すように、筐体12の内部には、冷却モジュール24と、マザーボード25と、バッテリ装置26とが収容されている。筐体12の内部には、さらに各種の電子部品や機械部品等が設けられる。
【0018】
マザーボード(基板)25は、電子機器10のメインボードとなる回路基板である。マザーボード25は、筐体12のY2側寄りに配置され、X方向に延在している。バッテリ装置26は、電子機器10の電源となる充電池である。バッテリ装置26は、マザーボード25のY1側寄りに配置され、X方向に延在している。
【0019】
本実施形態のマザーボード25は、CPU(Central Processing Unit)25aを実装している。マザーボード25は、CPU25a以外にも、各種の電子部品、例えばGPU(Graphics Processing Unit)、メモリ、通信モジュール等を実装することができる。
【0020】
マザーボード25は、例えば上面(第1面25A)がCPU25a等の実装面となり、下面(第2面25B)が筐体12に対する取付面となる。
【0021】
次に、冷却モジュール24の構成例を説明する。
【0022】
CPU25aは、筐体12内に搭載された電子部品中で最大級の発熱量の発熱体である。冷却モジュール24は、CPU25aが発生する熱を吸熱及び拡散し、筐体12外へと排出することができる。冷却モジュール24は、CPU25a以外の発熱体、例えばGPU等を冷却するように構成してもよい。
【0023】
図2に示すように、本実施形態の冷却モジュール24は、金属プレート27と、ヒートパイプ28と、一対のヒートシンク29,29と、一対のファン30,30とを備える。
【0024】
金属プレート27は、銅又はアルミニウム等の熱伝導率が高い金属で形成された薄いプレートである。本実施形態の金属プレート27は銅プレートである。金属プレート27は、左右のファン30,30の間でX方向に延在している。これにより金属プレート27は、左右のファン30,30の間に配置されたマザーボード25の一部(部分25C)と、部分25Cに実装されたCPU25aを第1面25A側(Z1側)から覆っている。金属プレート27はCPU25a等の熱を吸熱して拡散する熱拡散部材として機能する。金属プレート27はCPU25aの表面に接続される。金属プレート27とCPU25aとの間には、例えば熱伝導グリース及びCPU25aの外形と略同一サイズの銅ブロック等が介在する。金属プレート27のX方向に沿う各縁部には板ばね32が取り付けられている。板ばね32は金属プレート27をCPU25aに対して押し付ける部品である。
【0025】
ヒートパイプ28は、パイプ型の熱輸送デバイスである。ヒートパイプ28は、金属パイプを薄く扁平に潰して断面楕円形状に形成し、内側の密閉空間に作動流体を封入した構成である。作動流体としては、水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。ヒートパイプ28は、長手方向の中央部が金属プレート27のCPU25aに対する接続面の裏面に固定されている。ヒートパイプ28の両端部は、それぞれ左右のヒートシンク29のZ1側表面(上部29a)に固定されている(
図4参照)。各ヒートパイプ28は、長手方向の中央部がCPU25aとZ方向にオーバーラップしている。これによりヒートパイプ28は、金属プレート27に伝達されたCPU25aの熱を効率よく受け取り、両端のヒートシンク29へと高い効率で輸送することができる。
【0026】
ヒートシンク29は、薄い金属プレートで形成された複数枚のフィンをX方向に等間隔に並べた構造である。各フィンは所定のベースプレート上でZ方向に起立し、Y方向に延在している。ヒートシンク29の隣接するフィンの間には、ファン30から送られた空気が通過する隙間が形成されている。ヒートシンク29はアルミニウム又は銅のような高い熱伝導率を有する金属で形成されている。ヒートシンク29は、ファン30のY2側の側面30a(吐出口34a)に対向配置される。
【0027】
一対のファン30,30は、相互間にマザーボード25の部分25C及び金属プレート27を跨ぐようにX方向に並んで配置され、互いに向かい合っている。各ファン30は、Y2側の側面30aに吐出口34aを有する。吐出口34aはその後方のヒートシンク29に近接し、対向している。各ファン30は、互いの対向方向を向いた側面30bに吐出口34bを有する。左右のファン30の吐出口34b,34bは、相互間に部分25Cを挟んで対向している。各ファン30は、Z方向を向いた上下の面30c,30dのうち、Z2側の下面30dに吸込口35を有することができる。本実施形態の場合、ファン30のZ1側の上面30cはキーボード装置18の下面18aに当接している(
図4参照)。
【0028】
ファン30は、ファン筐体30eの内部に収容したインペラ30fをモータによって回転させる遠心ファンである(
図4参照)。これによりファン30は、吸込口35から吸い込んだ空気を吐出口34a,34bから吐出することができる。
【0029】
次に、ファン30によって筐体12内に空気を導入し、ファン30から吐出された空気を筐体12外に排出する吸排気構造について説明する。
【0030】
図3は、筐体12の上面12aに設けられる吸気構造の設置範囲を説明するための模式的な平面図である。
図4は、筐体12のファン30及びその周辺部での模式的な側面断面図である。
図5は、筐体12の模式的な底面図である。
【0031】
先ず、電子機器10の吸気構造について説明する。
【0032】
図3~
図5に示すように、電子機器10の吸気構造は、筐体12の上面12aに開口するキーボード通気口(連通孔)36と、筐体12の底面12bに開口する底面通気口38とを有することができる。
【0033】
キーボード通気口36は、キーボード装置18の厚み方向(Z方向)に空気を流通させることで、筐体12外の空気を筐体12内のファン30の吸込口35へと導入するための連通孔である。キーボード装置18は、複数のキースイッチ40と、ベース部材41と、フレーム42とを備える。
【0034】
各キースイッチ40は、ベース部材41の上面41a側で支持されている。各キースイッチ40は、例えばシザー構造のガイド機構と、シリコーンゴム等の弾性材料で形成されたドーム状のラバードームとでキーキャップ40aを上下動可能に支持した構成である。
【0035】
ベース部材41は、例えば上から下に向かって順に、メンブレンシートと、板金部材と、導光板とを積層した積層プレートである。ベース部材41の下面はキーボード装置18の下面18aを形成する。メンブレンシートは、例えば押圧された場合に接点が閉じる三層構造のスイッチシートである。メンブレンシートは、キーキャップ40aが押し下げされた際に圧縮されるラバードームによって接点が閉じられる。板金部材は、各所に切り起こしや孔部が形成された金属プレートである。導光板は、下面18a側に設置された光源が発する光を左右方向に導き、光を各キーキャップ40aに照射するための透明な樹脂プレートである。導光板は省略してもよく、この場合は板金部材の下面に防水シート等を積層するとよい。
【0036】
フレーム42は、樹脂や金属等で形成された網目状のプレートである。フレーム42は、各キーキャップ40aの周囲を仕切るアイソレーションフレームである。フレーム42には、各キーキャップ40aが上下動可能に配置される複数のキー配置孔42aが設けられている。つまりフレーム42は、キー配置孔42aの周縁にある仕切り壁で各キーキャップ40a,40a間を仕切っている。フレーム42は、これら仕切り壁の下端面42bがベース部材41の上面41aに支持され、固定される。フレーム42は、プレート状部材20と一体成形されてもよい。
【0037】
図4に示すように、キーボード通気口36は、ベース部材41を厚み方向に貫通し、空気の流通を可能とする。キーボード通気口36は、キーボード装置18の上から各キーキャップ40aとフレーム42との隙間を通過した空気Aを、ベース部材41の下面18a側へと流通させることができる。
図4中に示す1点鎖線の矢印は空気の流れを模式的に示したものであり、
図2でも同様である。
【0038】
フレーム42は、キーボード通気口36での空気Aの流通を一層円滑にするための切欠部42cを設けることもできる。切欠部42cは、例えばフレーム42の一部の下端面42bを凹状に切り欠くことで上面41a上にトンネル状の流路を形成するものである。
図4に示すように、少なくともキーボード通気口36の上にあるフレーム42は、キーボード通気口36の上面開口を覆う部分に切欠部42cを設けることが好ましい。これにより空気Aを一層円滑にキーボード通気口36へと導入することができる。切欠部42cはキーボード通気口36の直上以外にも設けることができる。そうすると、上面41aに沿ったXY方向での空気Aの流れが一層円滑となり、キーボード通気口36への空気Aの流通が一層円滑になる。
【0039】
図3に示すように、キーボード装置18は、平面視で見た場合に、左右の第1領域A1と、左右の第1領域A1の間に挟まれた第2領域A2とを除く領域A0の範囲内にキーボード通気口36を配置している。
【0040】
第1領域A1は、左右のファン30と上下にオーバーラップする範囲である。つまり第1領域A1はファン30の直上の範囲である。
【0041】
第2領域A2は、左右のファン30,30の間に挟まれ、各ファン30の吐出口34bから空気が吐出される吐出空間S1(
図2参照)と上下にオーバーラップする範囲である。
図2に示すように吐出空間S1のX方向の範囲は、左右のファン30の側面30b,30bの間と、左右のヒートシンク29,29の間とで囲まれた範囲とすることができる。吐出空間S1のY方向の範囲は、Y2側の立壁部材22の一部である外壁22Aと、左右のファン30,30の間を繋ぐように延在する気密壁44aとで囲まれた範囲とすることができる。吐出空間S1のZ方向の範囲は、キーボード装置18の下面18aとカバー部材21の上面とで囲まれた範囲であり、本実施形態では一部に後述する突出部48の内側空間48cも含む。
【0042】
気密壁44aは、吐出空間S1を筐体12内の他の空間S2から仕切る壁である。他の空間S2は、上記した領域A0と上下にオーバーラップする範囲を含む。気密壁44aは、例えばスポンジやゴムを帯板状に形成した部材である。気密壁44aは、空気の通過を完全に遮断できる必要はないが、ある程度の通気抵抗を有して空気の流れる方向を規制できる必要がある。気密壁44aは、例えば左右のファン30の側面30bのY1側端部同士を繋ぐように略X方向に沿って延在する帯状部材である。気密壁44aは、マザーボード25の第1面25Aとキーボード装置18の下面18aとの間で起立するように設けられる。気密壁44aは、さらにマザーボード25の第2面25Bとカバー部材21の上面との間で起立するように設けられる。
図2に示す構成例の気密壁44aは多少クランクし、マザーボード25上にある各種部品を避けている。
【0043】
左右のファン30の側部にも気密壁44aと同様な気密壁44b,44cを設けることができる。気密壁44bは、例えばファン30の側面30bに沿ってY方向に延在するように、面30c,30dの端に設けられている。気密壁44bは気密壁44aの端部から連続する。気密壁44cは、例えば側面30bに沿ってX方向に延在するように、面30c,30dの端に設けられている。気密壁44cは気密壁44bの端部から連続する。本実施形態の場合、ファン30の上面30cはプレート状部材20の下面に当接している(
図4参照)。このため、気密壁44b,44cはファン30の下面30dとカバー部材21との間のみに設置すればよく、上面30cとキーボード装置18との間には設置しなくてもよい。
【0044】
図4及び
図5に示すように、底面通気口38は、筐体12外の空気を底面12b側からファン30の吸込口35へと導入するための開口である。本実施形態の場合、底面通気口38は、カバー部材21と、底面12bから突出した突出部48の側壁48aとに跨るように形成されている。
【0045】
突出部48はX方向に長尺でZ方向に扁平な角筒状を成している。突出部48のX方向長さは、筐体12のX方向幅の略全長に亘っている。突出部48は底面12bの前後方向(Y方向)でY2側に寄った位置に設けられている。突出部48は、その長手方向(X方向)に沿って延在する一対の側壁48a,48bを有する。Y2側の側壁48bは後述する外壁22Aの直前にある。ヒートシンク29の下部29bは突出部48の内側空間48cに挿入されている(
図4参照)。突出部48は省略されてもよく、この場合、底面通気口38はカバー部材21のみに形成するとよい。
【0046】
図5の参照符号49は、電子機器10を載置面に載置する際の脚部となるゴム脚である。Y2側のゴム脚49は、突出部48の底面に設けられている。
図4ではゴム脚49の図示は省略している。突出部48は、長手方向の端部(左右の端面)のそれぞれに所定の入出力ポートを備えることもできる。
【0047】
次に、電子機器10の排気構造について説明する。
【0048】
図2~
図5に示すように、筐体12のY2側縁部(後縁部)には、Y1側に凹んだヒンジ配置溝12dが設けられている。Y2側の立壁部材22は、Y1側にオフセットした位置にヒンジ配置溝12dの奥面を形成する外壁22Aを有する。外壁22Aは、Y2側の立壁部材22の長手方向(X方向)で大部分をY1側に凹ませた部分である。外壁22Aはファン30,30の並び方向(X方向)に沿って延在している。ヒートシンク29は、筐体12内で外壁22Aと吐出口34aとの間に配置されている。外壁22Aは、Z方向に沿って起立したプレート状部材で構成することができる。
【0049】
外壁22Aはカバー部材21と一体に形成することもできる。つまり四周の立壁部材22はカバー部材21と一体に形成することもできる。外壁22Aは、他の3辺(Y1側、X1側、及びX2側)の立壁部材22と別体に形成することもできる。本実施形態の筐体12では、外壁22Aは筐体12内に設置された構造部材(フレーム部材46)に形成しており(
図4参照)、他の3辺の立壁部材22と別体である。
【0050】
図4に示すように、電子機器10の排気構造は、Z方向で3階建てに配置された上部通気口50aと、通気口50bと、下部通気口50cとを有することができる。以下では、上下3段に並ぶ通気口50a~40cをまとめて「通気口50」と呼ぶこともある。
図2では、通気口50a~50cについて、まとめて通気口50として図示している。
【0051】
上段の上部通気口50aは、外壁22Aの上端を凹状に切り欠いたように形成されている。中段の通気口50bは、外壁22Aを板厚方向(Y方向)に貫通している。通気口50bは上部通気口50aの下に位置している。下段の下部通気口50cは、筐体12の底面12bから突出した突出部48の側壁48bに貫通形成されている。各通気口50a~40cは、外壁22A又は側壁48bの長手方向(X方向)に沿って複数の小窓状の開口を並べて構成することができる。
【0052】
図2に示すように、本実施形態の電子機器10では、通気口50をX方向で3つの位置P1~P3に区分けすることができる。各位置P1~P3に属する通気口50a~50cは、それぞれ複数の小窓状の開口部をX方向に並べた構成とすることができる。左右両端の位置P1,P2に属する通気口50は、ファン30の吐出口34aから吐出され、左右のヒートシンク29を通過した空気を筐体12外に排出する。中央の位置P3に属する通気口50は、ファン30の吐出口34bから吐出され、中央の金属プレート27の表面やマザーボード25の部分25Cの表面を通過した空気を筐体12外に排出する。つまり位置P3に属する通気口50は、吐出空間S1を筐体12の外部と連通させるものであり、吐出空間S1の空気を筐体12外に排出する。
【0053】
次に、冷却モジュール24による冷却動作について説明する。
【0054】
電子機器10は、CPU25a等の発熱体が発生する熱が金属プレート27に伝達されて拡散すると共に、ヒートパイプ28で左右のヒートシンク29に効率よく輸送される。左右のファン30は、キーボード通気口36及び底面通気口38から外気(冷風)を吸込口35に吸い込み、吐出口34a,34bから吐出する。
【0055】
ここで、キーボード通気口36は、ファン30及び吐出空間S1と上下にオーバーラップする領域A1,A2以外の領域A0に含まれる位置に設けられている(
図3参照)。このため、
図4に示すようにキーボード通気口36を通過した空気Aは、吐出空間S1外の空間S2に導入される(
図2も参照)。空間S2に導入された空気Aは、各ファン30の下面30dとカバー部材21との間に形成された隙間G、及びファン30の側面30a,30b以外の側面とフレーム部材46との間に形成された隙間を通して吸込口35へと円滑に吸い込まれる。
【0056】
左右のファン30の吐出口34aから吐出された空気は、ヒートシンク29を通過して冷却する。冷却後の空気(温風)は、位置P1,P2に属する各通気口50~52を通して筐体12外へと排出される。
【0057】
左右のファン30の吐出口34bから吐出された空気は、吐出空間S1を経由し、吐出空間S1のY2側に面した配置された位置P3に属する各通気口50~52を通して筐体12外へと排出される。具体的には、吐出口34bからの空気は、金属プレート27の表面に沿って流れて金属プレート27及びヒートパイプ28を冷却し、同時に部分25C及びここに実装されたCPU25aの電子部品を直接的に冷却する。冷却後の空気(温風)は、位置P3に属する各通気口50~52を通して筐体12外へと排出される。
【0058】
以上のように、本実施形態の電子機器10は、筐体12と、キーボード装置18と、筐体12内に設けられた基板であるマザーボード25と、マザーボード25の一部である部分25Cを相互間に跨ぐように配置され、互いに向かい合う側面30bにそれぞれ吐出口34bが設けられた一対のファン30とを備える。キーボード装置18は、筐体12の上面12aに臨む複数のキーキャップ40aを有し、厚み方向に空気Aを流通させるための連通孔であるキーボード通気口36が設けられている。ここでキーボード装置18は、一対のファン30と上下にオーバーラップする第1領域A1と、吐出空間S1と上下にオーバーラップする第2領域A2とを除く領域A0にキーボード通気口36を有する。
【0059】
従って、電子機器10は、外気(空気A)を筐体12の上方からキーボード通気口36を通して筐体12内のファン30の吸込口35に導入することができる。このため電子機器10は、ファン30の風量を増大させることができ、冷却性能を向上させることができる。また電子機器10は、キーボード通気口36を有することで、底面通気口38を省略するか又は最小限の開口面積に抑えることができる。その結果、電子機器10は筐体12の底面12bをフラットな外観に構成でき、意匠性が向上する。
【0060】
しかも本実施形態の電子機器10は、領域A1,A2を除く領域A0にキーボード通気口36を設けている。
【0061】
第1に、仮にキーボード通気口36がファン30の直上領域である第1領域A1に設けられた構成を考えてみる。この構成では、例えば飲料等の液体がキーボード装置18にこぼされた際、この液体がキーボード通気口36を通して直下にあるファン30に直接的に導入される。そうすると液体がファン30の吐出口34bから吐出空間S1に吐出される。その結果、この構成では、マザーボード25及びこれに実装されたCPU25a等の電子部品が不具合を生じる可能性がある。この点、本実施形態の電子機器10は、第1領域A1にキーボード通気口36を設けないことで、このような不具合の発生を抑制することができる。
【0062】
第2に、仮にキーボード通気口36が吐出空間S1の直上領域である第2領域A2に設けられた構成を考えてみる。先ず、筐体12内では、吐出空間S1は左右のファン30の吐出口34bからの吐出圧によって正圧となる一方、他の空間S2はファン30の吸込口35に空気が吸引されて負圧となる。このため、第2領域A2にキーボード通気口36がある場合は、直下の吐出空間S1が正圧であるために空気Aを筐体12内へと円滑に導入することができない。さらに吐出空間S1にある高温の排気が、外気との気圧差によってキーボード通気口36を逆流してキーボード装置18の上部に排出される可能性もある。そうするとユーザはキーボード装置18から上に噴き出す高温の排気を受けて不快感を受ける懸念がある。次に、この構成では、例えば飲料等の液体がキーボード装置18にこぼされた際、この液体がマザーボード25及びこれに実装されたCPU25a等の電子部品に直接降りかかって不具合を引き起こす懸念もある。この点、本実施形態の電子機器10は、第2領域A2にキーボード通気口36を設けないことで、キーボード通気口36の正常な動作を確保し、これらの問題の発生を抑制することができる。
【0063】
筐体12は、吐出空間S1に面して配置され、一対のファン30の並び方向であるX方向に沿って延在する外壁22Aと、外壁22Aに形成され、吐出空間S1を筐体12の外部と連通させる通気口50とを有することができる。電子機器10は、吐出空間S1から見て通気口50側とは反対側に位置する気密壁44aを筐体12内に有する。気密壁44aは、一対のファン30の間を繋ぐように設けられることで、吐出空間S1を筐体12内の他の空間S2から仕切ることができる。キーボード通気口36は、他の空間S2と上下にオーバーラップする位置にあることができる。そうすると、電子機器10はキーボード通気口36の直下にある空間S2を吐出空間S1からより確実に仕切ることができる。その結果、電子機器10は、キーボード通気口36での一層正常な吸気機能を確保でき、またキーボード通気口36を通した液体が吐出空間S1に漏れ出すことも一層確実に防止できる。
【0064】
電子機器10は、気密壁44aから連続するようにファン30の側面30bに沿って設けられることで、吐出空間S1とファン30の吸込口35との間を仕切る気密壁(第2気密壁)44bを有することもできる。そうすると、吐出空間S1を筐体12内の他の空間S2から一層確実に仕切ることができる。
【0065】
ファン30は、インペラ30fと、上面30c及び下面30dを有し、インペラ30fを回転可能に収容したファン筐体30eと、ファン筐体30eの下面30dに形成された吸込口35とを有することができる。ファン30はファン筐体30eの上面30cがキーボード装置18の下面18aに当接していることができる。これによりファン30はその高さを最大限に確保して風量を増加させることができる。しかもファン30は上面30cをキーボード装置18に当てて配置することで、筐体12内の薄い上下スペース内に容易に設置できる。
【0066】
この場合、ファン30はファン筐体30eの上面30cには吸込口を有していないことができる。すなわちファン30は上面30cがキーボード装置18の下面18aに当接した構成では、この上面30cに吸込口を設けても吸込み量はほとんど増加しない。よって本実施形態の場合、上面30cに吸込口を設ける利点はほとんどない。しかも電子機器10は、上記したようにキーボード通気口36を通した空気Aを円滑に下面30d側の吸込口35に導入することができる。このため電子機器10はファン30の吸込み量は十分に確保でき、大きな風量を確保できる。
【0067】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
10 電子機器
11 蓋体
12 筐体
14 ヒンジ
16 ディスプレイ
18 キーボード装置
22 立壁部材
24 冷却モジュール
25 マザーボード
29 ヒートシンク
30 ファン
34a,34b 吐出口
30e ファン筐体
36 キーボード通気口
44a~44c 気密壁
50a 上部通気口
50b 通気口
50c 下部通気口
【要約】
【課題】冷却性能を向上させることができ、さらに不具合の発生を抑制することができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、筐体と、前記筐体の上面に臨む複数のキーキャップを有し、厚み方向に空気を流通させるための連通孔が設けられたキーボード装置と、前記筐体内に設けられた基板と、前記基板の一部を相互間に跨ぐように配置され、互いに向かい合う側面にそれぞれ吐出口が設けられた一対のファンと、を備え、前記キーボード装置は、前記一対のファンと上下にオーバーラップする第1領域と、前記一対のファンの前記吐出口の間に挟まれた吐出空間と上下にオーバーラップする第2領域と、を除く領域に前記連通孔を有する。
【選択図】
図3