(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】液滴吐出ヘッドおよび記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20250108BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
B41J2/14 305
B41J2/01 303
(21)【出願番号】P 2024564783
(86)(22)【出願日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2024007138
【審査請求日】2024-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2023030202
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】都甲 真
(72)【発明者】
【氏名】山口 伸明
(72)【発明者】
【氏名】穂積 大輔
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-136870(JP,A)
【文献】特開2018-034372(JP,A)
【文献】特開2022-170964(JP,A)
【文献】特開2008-188920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/14
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルと、
前記ノズルに繋がる圧力室と、
電圧の印加によって変形して前記圧力室を変形させる圧電素子と
を有し、
前記圧電素子は、
前記圧力室と対向する表面電極と、
前記表面電極の周囲に位置し、前記表面電極の外形に応じた形状で延びる第1溝部と
を有し、
前記圧力室は、平面透視で円形状であり、
前記表面電極は、
前記圧力室と対向する領域に位置する平面視円形状の電極本体と、
前記電極本体から第1方向に延びる引出電極と
を有し、
前記第1溝部は、前記電極本体を囲み且つ両端が前記引出電極を挟むように前記引出電極の外方に位置する円弧状を有しており、
平面透視における前記圧力室の外縁と前記第1溝部の外縁との距離の最大値をA1、最小値をA2とし、平面視における前記表面電極の外縁と前記第1溝部の外縁との距離の最大値をB1、最小値をB2とした場合、以下の式(1)を満た
し、
平面視において、前記第1溝部の一端と他端との距離をE1とし、前記引出電極の幅をE2とし、前記表面電極の外縁と前記第1溝部の内縁との距離の平均値をE3とした場合、以下の式(3)を満たす、液滴吐出ヘッド。
A1-A2<B1―B2 ・・・(1)
(E1-E2)/2>E3 ・・・(3)
【請求項2】
液滴を吐出するノズルと、
前記ノズルに繋がる圧力室と、
電圧の印加によって変形して前記圧力室を変形させる圧電素子と
を有し、
前記圧電素子は、
前記圧力室と対向する表面電極と、
前記表面電極の周囲に位置し、前記表面電極の外形に応じた形状で延びる第1溝部と
を有し、
前記圧力室は、平面透視で円形状であり、
前記表面電極は、
前記圧力室と対向する領域に位置する平面視円形状の電極本体と、
前記電極本体から第1方向に延びる引出電極と
を有し、
前記第1溝部は、前記電極本体を囲み且つ両端が前記引出電極を挟むように前記引出電極の外方に位置する円弧状を有しており、
前記圧力室および前記表面電極は、平面透視で円形状であり、
平面透視における前記圧力室の中心と前記第1溝部の外縁との距離の最大値をC1、最小値をC2とし、平面視における前記表面電極の中心と前記第1溝部の外縁との距離の最大値をD1、最小値をD2とした場合、以下の式(2)を満た
し、
平面視において、前記第1溝部の一端と他端との距離をE1とし、前記引出電極の幅をE2とし、前記表面電極の外縁と前記第1溝部の内縁との距離の平均値をE3とした場合、以下の式(3)を満たす、液滴吐出ヘッド。
C1-C2<D1-D2 ・・・(2)
(E1-E2)/2>E3 ・・・(3)
【請求項3】
前記表面電極は、
前記圧力室と対向する領域に位置する電極本体と、
前記電極本体から第1方向に延びる引出電極と
を有し、
平面透視において前記第1溝部の外縁の一部が前記圧力室の外縁の外方に位置する場合、前記第1溝部の外縁は、前記第1方向、前記第1方向と反対方向である第2方向、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向、前記第3方向と反対方向である第4方向のうち前記第1方向において、前記圧力室の外縁から最も離れている、請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
前記表面電極は、
前記圧力室と対向する領域に位置する電極本体と、
前記電極本体から第1方向に延びる引出電極と
を有し、
平面視において、前記第1溝部の外縁は、前記第1方向、前記第1方向と反対方向である第2方向、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向、前記第3方向と反対方向である第4方向のうち前記第1方向において、前記電極本体の外縁から最も離れている、請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
液滴を吐出するノズルと、
前記ノズルに繋がる圧力室と、
電圧の印加によって変形して前記圧力室を変形させる圧電素子と
複数の前記圧電素子を有する平板形状の圧電アクチュエータと、
複数の前記圧力室を有する平板形状の流路部材と、
前記流路部材と前記圧電素子との間に位置する補強プレートと
を有し、
前記圧電素子は、
前記圧力室と対向する表面電極と、
前記表面電極の周囲に位置し、前記表面電極の外形に応じた形状で延びる第1溝部と
を有し、
平面透視において前記流路部材および前記補強プレートは、前記圧電アクチュエータよりも大きく、
前記流路部材は、前記圧電アクチュエータの外方に位置する領域に第1貫通孔を有し、
前記補強プレートは、前記第1貫通孔と対応する位置に第2貫通孔を有し、
平面透視において前記第2貫通孔は、前記第1貫通孔よりも大き
く、
平面透視における前記圧力室の外縁と前記第1溝部の外縁との距離の最大値をA1、最小値をA2とし、平面視における前記表面電極の外縁と前記第1溝部の外縁との距離の最大値をB1、最小値をB2とした場合、以下の式(1)を満たす、液滴吐出ヘッド。
A1-A2<B1―B2 ・・・(1)
【請求項6】
前記第1溝部は、前記圧電アクチュエータを厚み方向に貫通しており、
前記補強プレートは、
前記圧電アクチュエータとの接着面に、平面透視において前記第1溝部および前記圧力室の外方に第2溝部を有する、請求項
5に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第2溝部は、
平面透視において前記複数の圧力室のうち2以上の前記圧力室の周囲に沿って延びる複数の個別溝部と、
前記複数の個別溝部に連通する集合溝部と
を有し、
前記流路部材は、前記集合溝部と連通する連通孔を有し、
前記連通孔は、前記補強プレートとの接合面と反対の面に開口する、請求項
6に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項8】
前記補強プレートは、前記第2溝部の内部に前記圧電アクチュエータに接する柱部を有し、
平面透視において、前記圧電アクチュエータは、前記柱部と重なる位置にバンプを有する、請求項
6に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1に記載の液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドを制御する制御部と、を備える記録装置。
【請求項10】
請求項1に記載の液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドを保持するアームと、を備える記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液滴吐出ヘッドおよび記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置として、インクジェット記録方式を利用したインクジェットプリンタまたはインクジェットプロッタが知られている。このようなインクジェット方式の印刷装置には、液体を吐出させるための液滴吐出ヘッドが搭載されている。
【0003】
液滴吐出ヘッドは、圧力室の上部に位置する圧電素子を駆動させて圧力室内の圧力を変化させることにより、圧力室内の液体をノズルから吐出する。圧電素子は、圧電体と、圧電体の内部に位置する内部電極と、圧電体の表面に位置する表面電極とを有する。
【0004】
特許文献1には、圧電素子間におけるクロストークの発生を抑制する目的で、表面電極の周囲に表面電極を囲む溝部が形成された圧電素子を有するインクジェットヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様による液滴吐出ヘッドは、ノズルと、圧力室と、圧電素子とを有する。ノズルは、液滴を吐出する。圧力室は、ノズルに繋がる。圧電素子は、電圧の印加によって変形して圧力室を変形させる。圧電素子は、表面電極と、第1溝部とを有する。表面電極は、圧力室と対向する。第1溝部は、表面電極の周囲に位置し、表面電極の外形に応じた形状で延びる。平面透視における圧力室の外縁と第1溝部の外縁との距離の最大値をA1、最小値をA2とし、平面視における表面電極の外縁と第1溝部の外縁との距離の最大値をB1、最小値をB2とした場合、以下の式(1)を満たす。
A1-A2<B1―B2 ・・・(1)
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るプリンタの概略的な側面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るプリンタの概略的な平面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る液滴吐出ヘッドの模式的な分解斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るヘッド本体の要部を示す模式的な平面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示すVI-VI線矢視における模式的な断面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る圧電素子の模式的な平面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る圧電素子の模式的な平面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る圧電素子の模式的な平面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る圧電素子の模式的な平面図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る圧電素子の模式的な平面図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る補強プレートおよび流路部材の模式的な断面図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態に係るヘッド本体の要部を示す模式的な断面図である。
【
図14】
図14は、第1実施形態に係るヘッド本体の要部を示す模式的な平面図である。
【
図15】
図15は、第1実施形態に係る補強プレートの構成を示す平面図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係る圧電素子の構成を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示による液滴吐出ヘッドおよび記録装置を実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0009】
また、以下に示す実施形態では、「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」といった表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密に「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、例えば製造精度または設置精度などのずれを許容するものとする。
【0010】
また、以下参照する各図面では、説明を分かりやすくするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする直交座標系を示す場合がある。また、鉛直軸を回転中心とする回転方向をθ方向と呼ぶ場合がある。
【0011】
特許文献1に記載のインクジェットヘッドが有する溝部は、複数の圧力室を含む流路ユニットと、圧電素子を有するアクチュエータユニットとを接着した後に、表面電極の位置を基準にしてレーザ加工を行うことにより形成される。
【0012】
圧電素子の駆動変位を大きくするためには、平面透視において、圧力室の縁に沿うように溝部が形成されることが好ましい。しかしながら、流路ユニットにアクチュエータユニットを接着する際、アクチュエータユニットが流路ユニットに対して所望の位置からずれた状態で接着される場合がある。言い換えれば、圧力室に対する表面電極の位置が所望の位置からずれる場合がある。上述した従来技術では、表面電極の位置を基準にして溝部が形成されるため、表面電極の位置が所望の位置からずれてしまうと、溝部が圧力室の縁に沿わない配置となり、その結果、圧電素子の駆動変位が所望の値よりも小さくなるおそれがある。
【0013】
そこで、圧力室と表面電極との位置ずれが発生した場合であっても圧電素子の駆動変位が減少しにくいインクジェットヘッドの提供が期待されている。
【0014】
(第1実施形態)
<プリンタの構成>
まず、第1実施形態に係る記録装置の一例であるプリンタ1の概要について、
図1および
図2を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係るプリンタ1の概略的な側面図であり、
図2は、第1実施形態に係るプリンタ1の概略的な平面図である。第1実施形態に係るプリンタ1は、たとえば、カラーインクジェットプリンタである。
【0015】
図1に示すように、プリンタ1は、給紙ローラ2と、ガイドローラ3と、塗布機4と、ヘッドケース5と、複数の搬送ローラ6と、複数のフレーム7と、複数の液滴吐出ヘッド8と、搬送ローラ9と、乾燥機10と、搬送ローラ11と、センサ部12と、回収ローラ13とを備える。
【0016】
さらに、プリンタ1は、かかる給紙ローラ2、ガイドローラ3、塗布機4、ヘッドケース5、複数の搬送ローラ6、複数のフレーム7、複数の液滴吐出ヘッド8、搬送ローラ9、乾燥機10、搬送ローラ11、センサ部12および回収ローラ13を制御する制御部14を有している。
【0017】
プリンタ1は、印刷用紙Pに液滴を着弾させることにより、印刷用紙Pに画像または文字の記録を行う。印刷用紙Pは、記録媒体の一例である。印刷用紙Pは、使用前において給紙ローラ2に巻かれた状態になっている。そして、プリンタ1は、印刷用紙Pを、給紙ローラ2からガイドローラ3および塗布機4を介してヘッドケース5の内部に搬送する。
【0018】
塗布機4は、コーティング剤を印刷用紙Pに一様に塗布する。これにより、印刷用紙Pに表面処理を施すことができることから、プリンタ1の印刷品質を向上させることができる。
【0019】
ヘッドケース5は、複数の搬送ローラ6と、複数のフレーム7と、複数の液滴吐出ヘッド8とを収容する。ヘッドケース5の内部には、印刷用紙Pが出入りする部分などの一部において外部と繋がっている他は、外部と隔離された空間が形成されている。
【0020】
ヘッドケース5の内部空間は、必要に応じて、温度、湿度、および気圧などの制御因子のうち、少なくとも1つが制御部14によって制御される。搬送ローラ6は、ヘッドケース5の内部で印刷用紙Pを液滴吐出ヘッド8の近傍に搬送する。
【0021】
フレーム7は、矩形状の平板であり、搬送ローラ6で搬送される印刷用紙Pの上方に近接して位置している。また、
図2に示すように、フレーム7は、長手方向が印刷用紙Pの搬送方向に直交するように位置している。そして、ヘッドケース5の内部には、複数(たとえば、4つ)のフレーム7が、印刷用紙Pの搬送方向に沿って位置している。
【0022】
液滴吐出ヘッド8には、図示しない液体タンクから液体、たとえば、インクが供給される。液滴吐出ヘッド8は、かかる液体タンクから供給される液滴を吐出する。
【0023】
制御部14は、画像または文字などのデータに基づいて液滴吐出ヘッド8を制御し、印刷用紙Pに向けて液滴を吐出させる。液滴吐出ヘッド8と印刷用紙Pとの間の距離は、たとえば0.5~20mm程度である。
【0024】
液滴吐出ヘッド8は、フレーム7に固定されている。液滴吐出ヘッド8は、たとえば、長手方向の両端部においてフレーム7に固定されている。液滴吐出ヘッド8は、長手方向が印刷用紙Pの搬送方向に直交するように位置している。
【0025】
すなわち、第1実施形態に係るプリンタ1は、プリンタ1の内部に液滴吐出ヘッド8が固定されている、いわゆるラインプリンタである。なお、第1実施形態に係るプリンタ1は、ラインプリンタに限られず、いわゆるシリアルプリンタであってもよい。シリアルプリンタとは、液滴吐出ヘッド8を、印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向、たとえば、ほぼ直交する方向に往復させるなどして移動させながら記録する動作と、印刷用紙Pの搬送とを交互に行う方式のプリンタである。
【0026】
図2に示すように、1つのフレーム7に複数(たとえば、5つ)の液滴吐出ヘッド8が固定されている。
図2では、印刷用紙Pの搬送方向の前方に3個、後方に2個の液滴吐出ヘッド8が位置している例を示しており、印刷用紙Pの搬送方向において、それぞれの液滴吐出ヘッド8の中心が重ならないように液滴吐出ヘッド8が位置している。
【0027】
そして、1つのフレーム7に位置する複数の液滴吐出ヘッド8によって、ヘッド群8Aが構成されている。4つのヘッド群8Aは、印刷用紙Pの搬送方向に沿って位置している。同じヘッド群8Aに属する液滴吐出ヘッド8には、同じ色のインクが供給される。これにより、プリンタ1は、4つのヘッド群8Aを用いて4色のインクによる印刷を行うことができる。
【0028】
各ヘッド群8Aから吐出されるインクの色は、たとえば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。制御部14は、各ヘッド群8Aを制御して複数色のインクを印刷用紙Pに吐出することにより、印刷用紙Pにカラー画像を印刷することができる。
【0029】
なお、印刷用紙Pの表面処理をするために、液滴吐出ヘッド8からコーティング剤を印刷用紙Pに吐出してもよい。
【0030】
また、1つのヘッド群8Aに含まれる液滴吐出ヘッド8の個数、またはプリンタ1に搭載されているヘッド群8Aの個数は、印刷する対象または印刷条件に応じて適宜変更可能である。たとえば、印刷用紙Pに印刷する色が単色で、かつ1つの液滴吐出ヘッド8で印刷可能な範囲を印刷するのであれば、プリンタ1に搭載されている液滴吐出ヘッド8の個数は1つでもよい。
【0031】
ヘッドケース5の内部で印刷処理された印刷用紙Pは、搬送ローラ9によってヘッドケース5の外部に搬送され、乾燥機10の内部を通る。乾燥機10は、印刷処理された印刷用紙Pを乾燥する。乾燥機10で乾燥された印刷用紙Pは、搬送ローラ11で搬送されて、回収ローラ13で回収される。
【0032】
プリンタ1では、乾燥機10で印刷用紙Pを乾燥することにより、回収ローラ13において、重なって巻き取られる印刷用紙P同士が接着したり、未乾燥の液体が擦れたりすることを低減することができる。
【0033】
センサ部12は、位置センサ、速度センサまたは温度センサなどにより構成されている。制御部14は、かかるセンサ部12からの情報に基づいて、プリンタ1の各部における状態を判断し、プリンタ1の各部を制御することができる。
【0034】
ここまで説明したプリンタ1では、印刷対象(すなわち記録媒体)として印刷用紙Pを用いた場合について示したが、プリンタ1における印刷対象は印刷用紙Pに限られない。たとえば、印刷対象は、ロール状の布などであってもよい。
【0035】
また、プリンタ1は、印刷用紙Pを直接搬送する代わりに、搬送ベルト上に載せて搬送するものであってもよい。搬送ベルトを用いることで、プリンタ1は、枚葉紙、裁断された布、木材またはタイルなどを印刷対象とすることができる。
【0036】
また、プリンタ1は、液滴吐出ヘッド8から導電性の粒子を含む液滴を吐出するようにして、電子機器の配線パターンなどを印刷してもよい。また、プリンタ1は、液滴吐出ヘッド8から反応容器などに向けて所定量の液体の化学薬剤または化学薬剤を含んだ液滴を吐出させて、化学薬品を作製してもよい。
【0037】
<液滴吐出ヘッドの構成>
次に、
図3を用いて、第1実施形態に係る液滴吐出ヘッド8の構成について説明する。
図3は、第1実施形態に係る液滴吐出ヘッド8の模式的な分解斜視図である。
【0038】
液滴吐出ヘッド8は、ヘッド本体20と、配線部30と、筐体40と、1対の放熱板45とを有している。ヘッド本体20は、流路部材21と、補強プレート172(
図4参照)と、圧電アクチュエータ22(
図4参照)と、リザーバ23とを有している。
【0039】
以降の説明において、便宜的に、液滴吐出ヘッド8においてヘッド本体20が設けられる方向を「下」と表記し、ヘッド本体20に対して筐体40が設けられる方向を「上」と表記する場合がある。
【0040】
ヘッド本体20の流路部材21は、略平板形状であり、1つの主面である第1面21aと、かかる第1面21aの反対側に位置する第2面21b(
図6参照)とを有している。第1面21aは、不図示の開口を有し、リザーバ23からかかる開口を介して流路部材21の内部に液体が供給される。
【0041】
第2面21bには、印刷用紙Pに液滴を吐出する複数の吐出孔163(
図6参照)が位置している。流路部材21は、第1面21aから第2面21bに液体を流す流路を内部に有している。
【0042】
補強プレート172は、流路部材21の第1面21a上に位置している。補強プレート172は、流路部材21の第1面21aと対向する第1面172aと、かかる第1面172aの反対側に位置する第2面172b(
図6参照)とを有している。
【0043】
圧電アクチュエータ22は、補強プレート172の第1面172a上に位置している。圧電アクチュエータ22は、複数の圧電素子170(
図6参照)を有している。また、圧電アクチュエータ22には、配線部30のフレキシブル基板31が電気的に接続されている。
【0044】
圧電アクチュエータ22上にはリザーバ23が位置している。リザーバ23には、印刷用紙Pの搬送方向に直交し、かつ印刷用紙Pに平行な方向である主走査方向の両端部に開口23aが設けられている。リザーバ23は、内部に流路を有しており、外部から開口23aを介して液体が供給される。リザーバ23は、流路部材21に液体を供給する。また、リザーバ23は、流路部材21に供給される液体を貯留する。
【0045】
配線部30は、フレキシブル基板31と、配線基板32と、複数のドライバIC33と、押圧部材34と、弾性部材35とを有している。フレキシブル基板31は、外部から送られた所定の信号をヘッド本体20に伝達する。なお、
図3に示すように、第1実施形態に係る液滴吐出ヘッド8は、フレキシブル基板31を2つ有してもよい。
【0046】
フレキシブル基板31の一端部は、ヘッド本体20の圧電アクチュエータ22と電気的に接続されている。フレキシブル基板31の他端部は、リザーバ23のスリット部23bを挿通するように上方に引き出されており、配線基板32と電気的に接続されている。これにより、ヘッド本体20の圧電アクチュエータ22と外部とを電気的に接続することができる。
【0047】
配線基板32は、ヘッド本体20の上方に位置している。配線基板32は、複数のドライバIC33に信号を分配する。
【0048】
複数のドライバIC33は、フレキシブル基板31における一方の主面に位置している。
図3に示すように、第1実施形態に係る液滴吐出ヘッド8において、ドライバIC33は、1つのフレキシブル基板31上に2つずつ設けられているが、1つのフレキシブル基板31に設けられているドライバIC33の数は2つに限られない。
【0049】
ドライバIC33は、制御部14(
図1参照)から送られた駆動信号に基づいて、ヘッド本体20の圧電アクチュエータ22を駆動させる。これにより、ドライバIC33は、液滴吐出ヘッド8を駆動させている。
【0050】
押圧部材34は、断面視で略U字形状を有し、フレキシブル基板31上のドライバIC33を放熱板45に向けて内側から押圧している。これにより、第1実施形態では、ドライバIC33が駆動する際に発生する熱を、外側の放熱板45へ効率よく放熱することができる。
【0051】
弾性部材35は、押圧部材34における図示しない押圧部の外壁に接するように設けられている。かかる弾性部材35を設けることにより、押圧部材34がドライバIC33を押圧する際に、押圧部材34がフレキシブル基板31を破損させる可能性を低減することができる。
【0052】
弾性部材35は、たとえば、発泡体両面テープなどで構成されている。また、弾性部材35として、たとえば、非シリコン系の熱伝導シートを用いることにより、ドライバIC33の放熱性を向上させることができる。なお、弾性部材35は必ずしも設ける必要はない。
【0053】
筐体40は、配線部30を覆うように、ヘッド本体20上に配置されている。これにより、筐体40は配線部30を封止することができる。筐体40は、たとえば、樹脂または金属などで構成されている。
【0054】
筐体40は、主走査方向に長く延びる箱形状であり、主走査方向に沿って対向する1対の側面に第1開口40aおよび第2開口40bを有している。また、筐体40は、下面に第3開口40cを有しており、上面に第4開口40dを有している。
【0055】
第1開口40aには、放熱板45の一方が第1開口40aを塞ぐように配置されており、第2開口40bには、放熱板45の他方が第2開口40bを塞ぐように配置されている。
【0056】
放熱板45は、主走査方向に延びるように設けられており、放熱性の高い金属または合金などで構成されている。放熱板45は、ドライバIC33に接するように設けられており、ドライバIC33で生じた熱を放熱する。
【0057】
1対の放熱板45は、図示しないネジによってそれぞれ筐体40に固定されている。そのため、放熱板45が固定された筐体40は、第1開口40aおよび第2開口40bが塞がれ、第3開口40cおよび第4開口40dが開口した箱形状をなしている。
【0058】
第3開口40cは、リザーバ23と対向するように位置している。第3開口40cには、フレキシブル基板31および押圧部材34が挿通されている。
【0059】
第4開口40dは、配線基板32に設けられたコネクタ(不図示)を挿通するために設けられている。かかるコネクタと第4開口40dとの間を、樹脂などで封止すると、筐体40の内部に液体またはゴミなどが侵入しにくくなる。
【0060】
また、筐体40は、断熱部40eを有している。かかる断熱部40eは、第1開口40aおよび第2開口40bに隣り合うように配置されており、主走査方向に沿った筐体40の側面から外側へ向けて突出するように設けられている。
【0061】
また、断熱部40eは、主走査方向に延びるように形成されている。すなわち、断熱部40eは、放熱板45とヘッド本体20との間に位置している。このように、筐体40に断熱部40eを設けることにより、ドライバIC33で発生した熱が放熱板45を介してヘッド本体20に伝わりにくくなる。
【0062】
なお、
図3は、液滴吐出ヘッド8の構成の一例を示すものであり、
図3に示した部材以外の部材をさらに含んでもよい。
【0063】
<ヘッド本体の構成>
次に、第1実施形態に係るヘッド本体20の構成について説明する。
図4は、第1実施形態に係るヘッド本体20の要部を示す模式的な平面図である。
【0064】
上述したように、ヘッド本体20は、流路部材21と補強プレート172と圧電アクチュエータ22とを有する。流路部材21、補強プレート172および圧電アクチュエータ22は、平板形状を有しており、ヘッド本体20の下側から流路部材21、補強プレート172、圧電アクチュエータ22の順番で位置している(
図6参照)。
【0065】
図4に示すように、流路部材21および補強プレート172は、圧電アクチュエータ22よりも大きい。具体的には、流路部材21および補強プレート172の長手方向における幅は、圧電アクチュエータ22の長手方向における幅よりも大きい。また、流路部材21および補強プレート172の短手方向における幅は、圧電アクチュエータ22の短手方向における幅よりも大きい。
【0066】
流路部材21は、圧電アクチュエータ22の外方に位置する領域に第1貫通孔21cを有する。第1貫通孔21cは、たとえば、流路部材21の長手方向における両端部に形成される。
【0067】
補強プレート172は、かかる第1貫通孔21cと対応する位置に第2貫通孔172gを有する。具体的には、第2貫通孔172gは、第1貫通孔21cの上方であって、平面視で第1貫通孔21cと重なる位置に配置される。かかる第1貫通孔21cと第2貫通孔172gについては
図13を用いて後述する。
【0068】
圧電アクチュエータ22は、補強プレート172の略中央に位置している。圧電アクチュエータ22は、吐出領域24を有する。吐出領域24には、複数の圧電素子170が位置している。
【0069】
図5は、
図4に示す領域Vの模式的な拡大図である。なお、
図5は、圧電セラミック体171の表面に対して垂直な方向から圧電素子170を見た平面図である。なお、
図5では、後述する第1溝部100を省略して示している。
【0070】
図5に示すように、複数の圧電素子170は、流路部材21が有する複数の圧力室162に対応する位置に配置される。具体的には、複数の圧電素子170は、圧力室162の上方に後述する表面電極174の電極本体174aが位置するように配置されている。
【0071】
ここで、圧力室162を有する流路部材21の構成について説明する。
図6は、
図5に示すVI-VI線矢視における模式的な断面図である。なお、
図5に示すVI-VI線は、後述する表面電極174の電極本体174aの中心点P1と、後述する接続電極175の中心点P2とを通る直線である。
【0072】
図6に示すように、流路部材21は、複数のプレートが積層された積層構造を有している。具体的には、流路部材21は、キャビティプレート21A、ベースプレート21B、アパーチャ(しぼり)プレート21C、サプライプレート21D、マニホールドプレート21E,21F,21G、カバープレート21Hおよびノズルプレート21Iを有する。これらのプレートは、流路部材21の第1面21a側からこの順番で位置している。これらのプレートは、たとえばステンレス鋼(SUS)等の金属で形成される。
【0073】
流路部材21を構成するプレートには、多数の孔が形成されている。各プレートの厚さは、10μm~300μm程度である。これにより、孔の形成精度を高くすることができる。プレートは、これらの孔が互いに連通して個別流路164および供給マニホールド161を構成するように、位置合わせして積層されている。
【0074】
流路部材21において、供給マニホールド161と吐出孔163との間は、個別流路164で繋がっている。供給マニホールド161は、流路部材21の内部の第2面21b側に位置しており、吐出孔163は、流路部材21の第2面21bに位置している。
【0075】
個別流路164は、圧力室162と、個別供給流路165とを有している。圧力室162は、流路部材21の第1面21aに位置しており、個別供給流路165は、供給マニホールド161と圧力室162とを繋ぐ流路である。
【0076】
また、個別供給流路165は、他の部分よりも幅の狭いしぼり166を含んでいる。しぼり166は、個別供給流路165の他の部分よりも幅が狭いため、流路抵抗が高い。このように、しぼり166の流路抵抗が高いとき、圧力室162に生じた圧力は、供給マニホールド161に逃げにくい。
【0077】
つづいて、
図5および
図6を参照して圧電素子170および補強プレート172の構成について説明する。
図5および
図6に示すように、圧電素子170は、圧電セラミック体171と、補強プレート172と、内部電極173と、表面電極174と、接続電極175とを有する。
【0078】
圧電セラミック体171は、平板状の形状を有する。圧電セラミック体171は、補強プレート172を介して流路部材21の第1面21aに位置している。
【0079】
圧電セラミック体171は、たとえば、複数の圧電セラミック層171a,171bを含む。圧電セラミック層171a,171bは、たとえば、それぞれ20μm程度の厚さを有する。圧電セラミック層171a,171bのいずれの層も複数の圧力室162に跨がって延在している。複数の圧電素子170は、1つの圧電セラミック体171を共有している。
【0080】
圧電セラミック層171a,171bとしては、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料を用いることができる。
【0081】
ここでは、圧電セラミック体171が2つの圧電セラミック層171a,171bを含む場合の例を示しているが、圧電セラミック体171は、3つ以上の圧電セラミック層を含んでいてもよい。
【0082】
圧電セラミック層171bは、振動板の一例である。なお、振動板は、必ずしもPZTのような圧電セラミック体であることを要しない。
【0083】
内部電極173は、圧電セラミック体171の内部に位置する。具体的には、内部電極173は、2つの圧電セラミック層171a,171bの間に位置する。内部電極173は、圧電セラミック層171aおよび圧電セラミック層171bの間の領域に面方向の略全面にわたって形成されている。すなわち、内部電極173は、圧電アクチュエータ22に対向する領域内の全ての圧力室162と重なっている。かかる内部電極173は、複数の圧電素子170によって共用される共通電極として機能する。
【0084】
内部電極173は、たとえば、Ag-Pd系などの金属材料を用いることができる。内部電極173の厚さは、たとえば2μm程度である。
【0085】
なお、内部電極173は、圧電セラミック層171aに形成されたビアホールを介して、圧電セラミック体171の表面に位置する接続電極(図示せず)に電気的に接続される。かかる内部電極173用の接続電極は、接地され、グランド電位に保持されている。
【0086】
表面電極174は、電極本体174aと、引出電極174bとを有する。電極本体174aは、圧力室162と対向する領域に位置している。電極本体174aは、圧力室162より一回り小さく、圧力室162と略相似な形状である。
【0087】
図5に示すように、第1実施形態では、一例として、圧力室162および電極本体174aが平面透視で円形状である場合の例を示している。しかし、圧力室162および電極本体174aの形状は、本例に限定されない。この点については
図16を用いて後述する。
【0088】
引出電極174bは、電極本体174aから引き出されている。引出電極174bは、後述する接続電極175に向かって直線状に延びている。すなわち、引出電極174bの一端における圧力室162と対向する領域外に引き出された部分には、接続電極175が位置している。
【0089】
表面電極174の電極本体174aおよび引出電極174bは、たとえば、Au系などの金属材料を用いることができる。
【0090】
接続電極175は、たとえば、厚さが15μm程度の凸形状を有する。接続電極175は、圧電セラミック体171の表面に位置し、表面電極174に接続される。具体的には、接続電極175は、引出電極174b上に位置しており、引出電極174bを介して電極本体174aと電気的に接続される。接続電極175は、フレキシブル基板31(
図3参照)に設けられた電極と電気的に接合されている。
【0091】
接続電極175は、表面電極174に含有される金属(たとえば、Au)よりもイオンマイグレーションを生じさせ易い金属を含む。たとえば、接続電極175は、Ag,Cu,Sn,Pb,Niを含む。具体的には、接続電極175として、ガラスフリットを含む銀-パラジウムが用いられる。接続電極175は、バンプの一例である。
【0092】
また、圧電アクチュエータ22は、表面電極174とフレキシブル基板31との電気的な接続に必要な接続電極175とは別に、ダミー接続電極25を有する。ダミー接続電極25は、たとえば凸形状を有し、圧電セラミック体171の表面に位置する。ダミー接続電極25は、バンプの一例である。
【0093】
複数の表面電極174は、個別に電位を制御するために、それぞれが接続電極175、フレキシブル基板31および配線を介して、個別に制御部14(
図1参照)に電気的に接続されている。そして、表面電極174と内部電極173とを異なる電位にして、圧電セラミック層171aの分極方向に電界を印加すると、かかる圧電セラミック層171a内の電界が印加された部分が、圧電効果により変形する活性部として動作する。
【0094】
補強プレート172は、平板状の形状を有する。補強プレート172は、流路部材21と圧電素子170との間に位置する。具体的には、補強プレート172は、流路部材21の第1面21aと、圧電セラミック体171における表面電極174が位置する表面とは反対側の裏面との間に位置している。補強プレート172は、複数の圧力室162に跨がって延在しており、複数の圧力室162の天井部分を構成する。複数の圧電素子170は、1つの補強プレート172を共有している。
【0095】
なお、ヘッド本体20は、必ずしも補強プレート172を有することを要しない。この場合、圧電セラミック体171が複数の圧力室162の天井部分を構成する。
【0096】
すなわち、圧電アクチュエータ22における、表面電極174と、圧電セラミック層171a、補強プレート172および内部電極173における圧力室162に対向する部位とによって圧電素子170が構成されている。そして、かかる圧電素子170がユニモルフ変形することにより、圧力室162が押圧され、吐出孔163から液体が吐出される。吐出孔163は、ノズルプレート21Iを貫通するノズルの一例である。
【0097】
<第1溝部の構成>
図7~
図9は、第1実施形態に係る圧電素子170の模式的な平面図である。なお、
図7~
図9では、理解を容易にするために第1溝部100の大きさを誇張して示している。
【0098】
図7に示すように、圧電素子170は、第1溝部100を有する。第1溝部100は、平面視において表面電極に174における電極本体174aの周囲(外側)に位置し、電極本体174aの外形に応じた形状で延びている。すなわち、第1溝部100は、平面視において電極本体174aの外形に対して略相似形状をなしている。
【0099】
たとえば、
図7に示す例において、第1溝部100は、円形の電極本体174aを囲むように電極本体174aの外形に沿って円弧状に延びている。第1溝部100の長手方向における両端は、引出電極174bを挟むように引出電極174bの外方に位置する。具体的には、第1溝部100の長手方向における一端は引出電極174bの一方の側面と対向し、他端は引出電極174bの他方の側面と対向している。
【0100】
このように、電極本体174aの周囲に第1溝部100を設けることで、圧電セラミック体171の剛性を低くすることができることから、第1溝部100を設けない場合と比較して圧電素子170の駆動変位を大きくすることができる。
【0101】
ここで、
図7に示すように、平面透視において圧力室162の外縁に沿うように第1溝部100の外縁が形成された場合、圧力室162の外縁に沿わないように第1溝部100の外縁が形成された場合と比較して圧電素子170の駆動変位を大きくすることができる。
【0102】
しかしながら、流路部材21に圧電アクチュエータ22を接着する際、圧電アクチュエータ22が流路部材21に対して所望の位置からずれた状態で接着される場合がある。言い換えれば、圧力室162に対する表面電極174の位置が所望の位置からずれる場合がある。
図8および
図9には、圧力室162に対して表面電極174の位置が所望の位置(たとえば、
図7に示す位置)からずれた場合の圧電素子170を示している。たとえば、表面電極174の位置を基準にして第1溝部100が形成される場合、表面電極174の位置が所望の位置からずれてしまう問題がある。それにより、第1溝部100の外縁が圧力室162の外縁に沿わない配置となり、その結果、圧電素子170の駆動変位が所望の値よりも小さくなるおそれがある。
【0103】
そこで、第1溝部100は、圧力室162の外縁に沿う位置に形成される。具体的には、圧力室162、表面電極174および第1溝部100の構成は、
図8に示すように、圧力室162の外縁と第1溝部100の外縁との距離の最大値をA1、最小値をA2とし、表面電極174の外縁と第1溝部100の外縁との距離の最大値をB1、最小値をB2とした場合、以下の式(1)を満たしてもよい。
A1-A2<B1―B2 ・・・(1)
【0104】
かかる構成によれば、圧力室162の外縁と第1溝部100の外縁との位置ずれが、電極本体174aの外縁と第1溝部100の外縁との位置ずれよりも小さくなる。すなわち、第1溝部100は、表面電極174の外縁よりも圧力室162の外縁に沿う配置となり、圧力室162と表面電極174との位置ずれが発生した場合であっても圧電素子170の駆動変位が減少しにくい。
【0105】
また、圧力室162、表面電極174および第1溝部100の構成は、
図9に示すように、圧力室162の中心点P3と第1溝部100の外縁との距離の最大値をC1、最小値をC2とし、表面電極174の中心点P1と第1溝部100の外縁との距離の最大値をD1、最小値をD2とした場合、以下の式(2)を満たしてもよい。
C1-C2<D1-D2 ・・・(2)
【0106】
かかる構成によれば、圧力室162の中心と第1溝部100の外縁との位置ずれが、電極本体174aの中心と第1溝部100の外縁との位置ずれよりも小さくなる。すなわち、第1溝部100は、表面電極174の中心点P1よりも圧力室162の中心点P3により対応した配置となるため、圧力室162と表面電極174との位置ずれが発生した場合であっても圧電素子170の駆動変位が減少しにくい。
【0107】
また、第1溝部100は、圧電アクチュエータ22を厚み方向に貫通する(
図10参照)。かかる構成とした場合、第1溝部100が圧電アクチュエータ22を貫通しない場合と比較して、圧電セラミック体171の剛性をより低くすることができることから、圧電素子170の駆動変位をさらに大きくすることができる。
【0108】
なお、第1溝部100は、必ずしも圧電アクチュエータ22を貫通することを要しない。
【0109】
<第1溝部と圧力室および表面電極との位置関係>
次に、第1実施形態に係る第1溝部100と圧力室162および表面電極174との位置関係について説明する。
図10は、第1実施形態に係る圧電素子170の模式的な平面図である。
【0110】
図10に示すように、引出電極174bが電極本体174aからX軸正方向(第1方向の一例)に延びているとする。このとき、平面透視において第1溝部100の外縁の一部が圧力室162の外縁の外方に位置する場合、第1溝部100の外縁は、X軸正方向、X軸負方向(第2方向の一例)、Y軸正方向(第3方向の一例)およびY軸負方向(第4方向の一例)のうちX軸正方向に圧力室の外縁から最も離れていてもよい。
【0111】
また、第1溝部100と電極本体174aとの位置関係も同様であってもよい。すなわち、第1溝部100の外縁は、X軸正方向、X軸負方向、Y軸正方向およびY軸負方向のうちX軸正方向において、電極本体174aの外縁から最も離れていてもよい。
【0112】
図10に示すように、電極本体174aのX軸正方向側には、引出電極174bが位置するため、第1溝部100は、引出電極174bと重ならないように、引出電極174bの周辺には設けられていない。したがって、4方向のうちX軸正方向における第1溝部100の面積は、他の3方向における第1溝部100の面積よりも少ない。そのため、4方向のうちX軸正方向において第1溝部100の外縁が圧力室162の外縁から最も離れている場合、他の方向と比較して、圧電素子170の駆動変位が減少しにくい。
【0113】
第1溝部100と電極本体174aとの位置関係においても同様である。4方向のうちX軸正方向において第1溝部100の外縁と電極本体174aの中心とが最も離れている場合、他の方向と比較して、圧電素子170の駆動変位が減少しにくい。
【0114】
<第1溝部と表面電極との位置関係>
次に、第1実施形態に係る第1溝部100と表面電極174との位置関係について説明する。
図11は、第1実施形態に係る圧電素子170の模式的な平面図である。
【0115】
図8を用いて上述したように、圧力室162に対して表面電極174の位置が所望の位置からずれた場合であっても圧電素子170の駆動変位を減少しにくくするために、第1実施形態では圧力室162の外縁に沿う位置に第1溝部100を形成するものとする。
【0116】
ここで、仮に圧力室162と表面電極174とが左右方向(Y軸方向)に閾値以上ずれた場合、圧力室162の外縁に沿う位置に第1溝部100が形成されると、第1溝部100が表面電極174と重なるおそれがある。それにより、表面電極174の一部が削られることとなる。特に、表面電極174のうち引出電極174bが削られると、配線が断たれることになり、吐出機能が低下(喪失)してしまうおそれがある。
【0117】
そこで、引出電極174bとの間隔を一定以上確保するように第1溝部100を形成する。具体的には、第1溝部100と表面電極174との構成は、
図11に示すように、第1溝部100の一端と他端との距離をE1とし、引出電極174bの幅をE2とし、表面電極174の外縁と第1溝部100の内縁との距離の平均値をE3とした場合、以下の式(3)を満たしていてもよい。
(E1-E2)/2>E3 ・・・(3)
【0118】
かかる構成によれば、表面電極174と第1溝部100とで左右方向(Y軸方向)の位置ずれが生じたとしても、引出電極174bが削られにくくなる。その結果、表面電極174のうち引出電極174bが削られる場合と比較して、静電容量検査によって加工不良をいち早く判別でき、かつ吐出機能への影響を少なくすることができる。
【0119】
<第1貫通孔と第2貫通孔との大小関係>
次に、第1実施形態に係る第1貫通孔21cと第2貫通孔172gとの大小関係について説明する。
図12は、第1実施形態に係る補強プレート172および流路部材21の模式的な断面図である。
【0120】
図4を用いて上述したように、流路部材21は、圧電アクチュエータ22の外方に位置する領域に第1貫通孔21cを有する。また、補強プレート172は、第1貫通孔21cと対応する位置に第2貫通孔172gを有する。この場合、
図12に示すように、平面透視において第2貫通孔172gは第1貫通孔21cよりも大きくてもよい。かかる構成によれば、平面視において、流路部材21の第1貫通孔21cの位置が明確になるため、第1貫通孔21cの位置を目印として、流路部材21の有する圧力室162の外縁の位置を把握しやすくなる。そのため、圧電アクチュエータ22、補強プレート172および圧電アクチュエータ22を接着した後に、圧電アクチュエータ22に第1溝部100を形成する場合、第1貫通孔21cを基準として、容易に圧力室162の外縁に沿う位置に第1溝部100を形成することができる。
【0121】
なお、ここでは第1貫通孔21cおよび第2貫通孔172gがともに平面視円形状である例について説明したが、第1貫通孔21cおよび第2貫通孔172gの形状は本例に限定されない。たとえば、第1貫通孔21cおよび第2貫通孔172gの形状は、矩形形状であってもよいし、長孔形状であってもよい。
【0122】
<補強プレートの構成>
つづいて、
図13~
図15を用いて第1実施形態に係る補強プレート172の構成について説明する。
図13は、第1実施形態に係るヘッド本体20の要部を示す模式的な断面図である。
図14は、第1実施形態に係るヘッド本体20の要部を示す模式的な平面図である。
図15は、第1実施形態に係る補強プレート172の構成を示す平面図である。
【0123】
図13に示すように、補強プレート172は、圧電アクチュエータ22との接着面である第2面172bに、第2溝部172cを有していてもよい。第2溝部172cは、
図14に示すように、平面透視において第1溝部100および圧力室162と重ならない位置に形成される。具体的には、第2溝部172cは、平面透視において第1溝部100および圧力室162の外方に位置する。なお、
図14に示す一点鎖線は、第2溝部172cの側壁部を示している。
【0124】
このように、補強プレート172の圧電アクチュエータ22との接着面に第2溝部172cが形成されることで、圧電アクチュエータ22と補強プレート172とを接着する際に、余剰な接着剤または気泡を第2溝部172cに逃がす(流し込む)ことができる。そのため、転写ムラまたは気泡の噛みこみ等を発生しにくくすることができ、結果として吐出特性のバラツキを低減できる。また、第2溝部172cが第1溝部100および圧力室162と重ならない位置に形成されることで、第2溝部172cが第1溝部100および圧力室162と重なる位置に形成される場合と比べて、第1溝部100の形成時に第1溝部100と圧力室162とが連通してしまう可能性を低減できる。
【0125】
図15に示すように、第2溝部172cは、複数の個別溝部172eと、集合溝部172fとを有する。複数の個別溝部172eは、平面透視において複数の圧力室のうち2以上の圧力室162の周囲に沿って延びる。集合溝部172fは、複数の個別溝部172eに連通する。
【0126】
流路部材21は、集合溝部172fと連通する連通孔21dを有する。連通孔21dは、流路部材21の補強プレート172との接合面と反対の面である第2面21b(
図6参照)に開口する。
【0127】
すなわち、流路部材21の連通孔21dと第2溝部172cの個別溝部172eとは、集合溝部172fを介して連通している。そのため、圧電アクチュエータ22と補強プレート172とを接着する際に、第2溝部172cに流れ込んだアウトガスまたは気泡などは、個別溝部172e、集合溝部172fおよび連通孔21dを通って、液滴吐出ヘッド8の外に開放される。したがって、第2溝部172cの内圧が高くなりにくく、結果として吐出特性のバラツキを低減できる。
【0128】
また、
図13に示すように、補強プレート172は、第2溝部172cの内部に柱部172dを有する。柱部172dは、一端が圧電アクチュエータ22に位置し、他端が補強プレート172に位置する。
【0129】
柱部172dは、平面透視において、圧電アクチュエータ22の表面に位置する接続電極175またはダミー接続電極25と重なる位置に配置される。言い換えると、補強プレート172のうち、接続電極175またはダミー接続電極25の鉛直下方には、溝部が形成されていない。
【0130】
フレキシブル基板31と圧電アクチュエータ22とを電気的に接続させる際に、接続電極175およびダミー接続電極25には一定の圧力がかかる。このため、接続電極175またはダミー接続電極25の鉛直下方に溝部が形成されている場合、かかる圧力を受けきれずにヘッド本体20にクラックが発生してしまうおそれがある。そこで、上述のように第2溝部172cの内部であって、平面透視で接続電極175またはダミー接続電極25と重なる位置に柱部172dを形成すると、かかる柱部172dで圧力を受けることができ、ヘッド本体20にクラックを発生しにくくすることができる。
【0131】
このように、第1実施形態に係る液滴吐出ヘッド8によれば、圧力室162と表面電極174との位置ずれが発生した場合であっても圧電素子170の駆動変位が減少しにくい。
【0132】
(第2実施形態)
<圧電素子の形状>
図16は、第2実施形態に係る圧電素子170の構成を示す模式的な平面図である。圧電素子170の形状は、
図5に示した形状に限定されない。たとえば、
図16に示すように、圧電素子170の形状は、ボーリングピン状であってもよい。
【0133】
具体的には、平面視において、圧力室162は、角が丸みを帯びた菱形を有していてもよい。この場合、表面電極174における電極本体174aも、圧力室162の形状に合わせて、平面視において角が丸みを帯びた菱形を有する。引出電極174bは、電極本体174aが有する複数の角部のうち鋭角な角部から接続電極175に向かって直線状に延びている。接続電極175は、平面視円形である。
【0134】
この場合も同様に、圧電素子170は、表面電極174における電極本体174aの周囲に位置し、電極本体174aの外形に応じた形状で延びる第1溝部100(ここでは図示せず)を有していてもよい。また、この場合も同様に、かかる第1溝部100は、圧力室162の外縁に沿う位置に形成されていてもよい。
【0135】
一実施形態において、(1)液滴吐出ヘッド(一例として、液滴吐出ヘッド8)は、ノズル(一例として、吐出孔163)と、圧力室(一例として、圧力室162)と、圧電素子(一例として、圧電素子170)とを有する。ノズルは、液滴を吐出する。圧力室は、ノズルに繋がる。圧電素子は、電圧の印加によって変形して圧力室を変形させる。圧電素子は、表面電極(一例として、表面電極174)と、第1溝部(一例として、第1溝部100)とを有する。表面電極は、圧力室と対向する。第1溝部は、表面電極の周囲に位置し、表面電極の外形に応じた形状で延びる。平面透視における圧力室の外縁と第1溝部の外縁との距離の最大値をA1、最小値をA2とし、平面視における表面電極の外縁と第1溝部の外縁との距離の最大値をB1、最小値をB2とした場合、以下の式(1)を満たす。
A1-A2<B1―B2 ・・・(1)
【0136】
(2)液滴吐出ヘッドは、ノズルと、圧力室と、圧電素子とを有する。ノズルは、液滴を吐出する。圧力室は、ノズルに繋がる。圧電素子は、電圧の印加によって変形して圧力室を変形させる。圧電素子は、表面電極と、第1溝部とを有する。表面電極は、圧力室と対向する。第1溝部は、表面電極の周囲に位置し、表面電極の外形に応じた形状で延びる。圧力室および表面電極は、平面透視で円形状であり、平面透視における圧力室の中心と第1溝部の外縁との距離の最大値をC1、最小値をC2とし、平面視における表面電極の中心と第1溝部の外縁との距離の最大値をD1、最小値をD2とした場合、以下の式(2)を満たしていてもよい。
C1-C2<D1-D2 ・・・(2)
【0137】
(3)上記(1)または(2)の液滴吐出ヘッドにおいて、表面電極は、圧力室と対向する領域に位置する電極本体(一例として、電極本体174a)と、電極本体から第1方向に延びる引出電極(一例として、引出電極174b)とを有し、平面透視において第1溝部の外縁の一部が圧力室の外縁の外方に位置する場合、第1溝部の外縁は、第1方向、第1方向と反対方向である第2方向、第1方向および第2方向に直交する第3方向、第3方向と反対方向である第4方向のうち第1方向において、圧力室の外縁から最も離れていてもよい。
【0138】
(4)上記(1)または(2)の液滴吐出ヘッドにおいて、表面電極は、圧力室と対向する領域に位置する電極本体と、電極本体から第1方向に延びる引出電極とを有し、平面視において、第1溝部の外縁は、第1方向、第1方向と反対方向である第2方向、第1方向および第2方向に直交する第3方向、第3方向と反対方向である第4方向のうち第1方向において、電極本体の外縁から最も離れていてもよい。
【0139】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つの液滴吐出ヘッドにおいて、圧力室は、平面透視で円形状であり、表面電極は、圧力室と対向する領域に位置する平面視円形状の電極本体と、電極本体から第1方向に延びる引出電極とを有し、第1溝部は、電極本体を囲み且つ両端が引出電極を挟むように引出電極の外方に位置する円弧状を有しており、平面視において、第1溝部の一端と他端との距離をE1とし、引出電極の幅をE2とし、表面電極の外縁と第1溝部の内縁との距離の平均値をE3とした場合、以下の式(3)を満たしていてもよい。
(E1-E2)/2>E3 ・・・(3)
【0140】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つの液滴吐出ヘッドは、複数の圧電素子を有する平板形状の圧電アクチュエータ(一例として、圧電アクチュエータ22)と、複数の圧力室を有する平板形状の流路部材(一例として、流路部材21)と、流路部材と圧電素子との間に位置する補強プレート(一例として、補強プレート172)とを有し、平面透視において流路部材および補強プレートは、圧電アクチュエータよりも大きく、流路部材は、圧電アクチュエータの外方に位置する領域に第1貫通孔(一例として、第1貫通孔21c)を有し、補強プレートは、第1貫通孔と対応する位置に第2貫通孔(一例として、第2貫通孔172g)を有し、平面透視において第2貫通孔は、第1貫通孔よりも大きくてもよい。
【0141】
(7)上記(6)の液滴吐出ヘッドにおいて、第1溝部は、圧電アクチュエータを厚み方向に貫通しており、補強プレートは、圧電アクチュエータとの接着面に、平面透視において第1溝部および圧力室の外方に第2溝部(一例として、第2溝部172c)を有していてもよい。
【0142】
(8)上記(7)の液滴吐出ヘッドにおいて、第2溝部は、平面透視において複数の圧力室のうち2以上の圧力室の周囲に沿って延びる複数の個別溝部(一例として、個別溝部172e)と、複数の個別溝部に連通する集合溝部(一例として、集合溝部172f)とを有し、流路部材は、集合溝部と連通する連通孔(一例として、連通孔21d)を有し、連通孔は、補強プレートとの接合面と反対の面に開口してもよい。
【0143】
(9)上記(7)または(8)の液滴吐出ヘッドにおいて、補強プレートは、第2溝部の内部に圧電アクチュエータに接する柱部(一例として、柱部172d)を有し、平面透視において、圧電アクチュエータは、柱部と重なる位置にバンプ(一例として、接続電極175、ダミー接続電極25)を有してもよい。
【0144】
(10)記録装置(一例として、プリンタ1)は、上記(1)~(9)のいずれか1つに記載の液滴吐出ヘッドと、液滴吐出ヘッドを制御する制御部(一例として、制御部14)とを有していてもよい。
【0145】
(11)記録装置は、上記(1)~(9)のいずれか1つに記載の液滴吐出ヘッドと、液滴吐出ヘッドを保持するアームとを有していてもよい。
【0146】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0147】
例えば、液滴吐出ヘッドと、液滴吐出ヘッドを保持するアームとを備える記録装置(塗装ロボット)に本開示を適用してよい。塗装ロボットは、車体塗装に用いることができる。塗装ロボットに用いられる液滴吐出ヘッドは、粘度の高い塗料を吐出すること、塗料の吐出間隔が短いこと、吐出量も多い場合がある。そのため、圧電素子の駆動変位の減少による吐出性能の低下、及び断線による不吐出が、塗装品質に大きく影響する場合がある。
【0148】
しかしながら、本開示を適用すれば、圧電素子の駆動変位の減少が抑制され、圧力室間の変位ばらつきも抑制でき、断線による不吐出の発生確率を低減できることから、塗装ロボットに使用された場合においても、塗装品質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0149】
1 プリンタ
8 液滴吐出ヘッド
14 制御部
20 ヘッド本体
21 流路部材
21c 第1貫通孔
21d 連通孔
22 圧電アクチュエータ
25 ダミー接続電極
100 第1溝部
162 圧力室
163 吐出孔
170 圧電素子
171 圧電セラミック体
172 補強プレート
172c 第2溝部
172d 柱部
172e 個別溝部
172f 集合溝部
172g 第2貫通孔
173 内部電極
174 表面電極
174a 電極本体
174b 引出電極
175 接続電極
【要約】
本開示による液滴吐出ヘッドは、ノズルと、圧力室と、圧電素子とを有する。ノズルは、液滴を吐出する。圧力室は、ノズルに繋がる。圧電素子は、電圧の印加によって変形して圧力室を変形させる。圧電素子は、表面電極と、第1溝部とを有する。表面電極は、圧力室と対向する。第1溝部は、表面電極の周囲に位置し、表面電極の外形に応じた形状で延びる。平面透視における圧力室の外縁と第1溝部の外縁との距離の最大値をA1、最小値をA2とし、平面視における表面電極の外縁と第1溝部の外縁との距離の最大値をB1、最小値をB2とした場合、以下の式(1)を満たす。
A1-A2<B1―B2 ・・・(1)