IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ Terra Drone株式会社の特許一覧

特許7615445鉄筋の配置の設計を支援する方法、プログラム及び設計支援装置
<>
  • 特許-鉄筋の配置の設計を支援する方法、プログラム及び設計支援装置 図1
  • 特許-鉄筋の配置の設計を支援する方法、プログラム及び設計支援装置 図2
  • 特許-鉄筋の配置の設計を支援する方法、プログラム及び設計支援装置 図3
  • 特許-鉄筋の配置の設計を支援する方法、プログラム及び設計支援装置 図4
  • 特許-鉄筋の配置の設計を支援する方法、プログラム及び設計支援装置 図5
  • 特許-鉄筋の配置の設計を支援する方法、プログラム及び設計支援装置 図6
  • 特許-鉄筋の配置の設計を支援する方法、プログラム及び設計支援装置 図7
  • 特許-鉄筋の配置の設計を支援する方法、プログラム及び設計支援装置 図8
  • 特許-鉄筋の配置の設計を支援する方法、プログラム及び設計支援装置 図9
  • 特許-鉄筋の配置の設計を支援する方法、プログラム及び設計支援装置 図10
  • 特許-鉄筋の配置の設計を支援する方法、プログラム及び設計支援装置 図11
  • 特許-鉄筋の配置の設計を支援する方法、プログラム及び設計支援装置 図12
  • 特許-鉄筋の配置の設計を支援する方法、プログラム及び設計支援装置 図13
  • 特許-鉄筋の配置の設計を支援する方法、プログラム及び設計支援装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】鉄筋の配置の設計を支援する方法、プログラム及び設計支援装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20250109BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20250109BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/10 200
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024144274
(22)【出願日】2024-08-26
【審査請求日】2024-08-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517403651
【氏名又は名称】Terra Drone株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】宇都本 彰夫
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-040999(JP,A)
【文献】特開2019-114259(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111400805(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108549748(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第118094729(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/28
G06Q 50/08
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋の配置の設計を支援する設計支援装置が行う方法であって、
仮想的な立体物の外面を構成する複数の平面図形の中から任意に選択された1つの前記平面図形を、基準図形と呼び、
前記基準図形と接する前記平面図形に平行な平面を、第1基準平面と呼び、
前記基準図形に平行な平面を、第2基準平面と呼び、
前記鉄筋を表す仮想的な線であって、1以上の直線部を含む線を、鉄筋線と呼び、
前記鉄筋線の2つの端における一方の前記端を始端、他方の前記端を終端と呼び、
前記鉄筋線における前記始端側からi番目(iは1以上の整数を示す。)の前記直線部を、第i直線部と呼び、
1以上の前記直線部がそれぞれ異なる前記第1基準平面に含まれており、前記基準図形の平面上に位置する前記鉄筋線を、基準鉄筋線と呼び、
前記基準鉄筋線の1つの前記直線部が含まれた前記第1基準平面に関する情報を、当該1つの直線部の直線部情報と呼び、
前記基準鉄筋線の前記始端に接した前記第1基準平面に関する情報を、始端情報と呼び、
前記基準鉄筋線の前記終端に接した前記第1基準平面に関する情報を、終端情報と呼び、
前記立体物の外面を構成する複数の前記平面図形に関する平面図形情報を取得する第1工程と、
取得した前記平面図形情報に基づいて、1以上の前記平面図形を描画する第2工程と、
入力される指示に応じて、描画した前記平面図形の1つを前記基準図形として選択し、選択した前記基準図形の平面上に位置する前記基準鉄筋線について前記始端情報、各前記直線部の前記直線部情報、及び、前記終端情報を取得する第3工程と、
取得した前記始端情報、各前直線部の前記直線部情報、及び、前記終端情報に基づいて、前記基準鉄筋線を描画する第4工程と、
入力される指示に応じて、選択した前記基準図形に平行な複数の前記第2基準平面に関する第2基準平面情報を取得する第5工程と、
取得した前記第2基準平面情報が示す複数の前記第2基準平面の各々に位置する前記鉄筋線であって、取得した前記始端情報が示す前記第1基準平面に前記始端が接しており、取得した前記第i直線部の前記直線部情報が示す前記第1基準平面に前記第i直線部が含まれており、かつ、取得した前記終端情報が示す前記第1基準平面に前記終端が接している前記鉄筋線を決定する第6工程と、
前記第6工程において決定した前記鉄筋線に基づいて、前記鉄筋の3次元モデルを生成する第7工程とを有する、
方法。
【請求項2】
前記第3工程は、
入力される指示に応じて、前記基準鉄筋線についての前記始端情報を取得する始端情報取得工程と、
前記始端情報取得工程の後、入力される指示に応じて、前記始端側の前記直線部から前記終端側の前記直線部に向かって順番に前記直線部情報を取得する直線部情報取得工程と、
前記直線部情報取得工程の後、入力される指示に応じて、前記終端情報を取得する終端情報取得工程とを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3工程において取得する前記始端情報、前記直線部情報、及び、前記終端情報は、前記第1基準平面に関する情報として、前記基準図形に接する1つの前記平面図形を示す情報、及び、当該1つの平面図形から当該1つの平面図形に平行な前記第1基準平面までの距離を示す情報を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基準図形を構成する複数の辺の中から任意に選択された1つの前記辺を、第0辺と呼び、
第i辺は、第(i-1)辺に隣接する前記辺であり、
前記始端情報取得工程は、入力される指示に応じて、前記基準図形の1つの前記辺を前記第0辺として選択し、選択した前記第0辺において前記基準図形と接する1つの前記平面図形を示す情報、及び、当該1つの平面図形から当該1つの平面図形に平行な前記第1基準平面までの距離を示す情報を含んだ前記始端情報を取得することを含み、
前記直線部情報取得工程は、前記第i直線部の直線部情報を取得する場合、入力される指示に応じて、第i辺を選択し、選択した前記第i辺において前記基準図形と接する1つの前記平面図形を示す情報、及び、当該1つの平面図形から当該1つの平面図形に平行な前記第1基準平面までの距離を示す情報を含んだ前記第i直線部の前記直線部情報を取得することを含み、
前記終端情報取得工程は、入力される指示に応じて、第L辺(Lは2以上の整数を示す。)を選択し、選択した前記第L辺において前記基準図形と接する1つの前記平面図形を示す情報、及び、当該1つの平面図形から当該1つの平面図形に平行な前記第1基準平面までの距離を示す情報を含んだ前記終端情報を取得することを含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第4工程は、前記直線部情報取得工程及び前記終端情報取得工程において第k辺(kは2からLまでの整数を示す。)を選択した場合、前記基準鉄筋線の第(k-1)直線部を、確定された前記直線部を表す所定の態様で描画する直線部描画工程を含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1つの前記基準鉄筋線を規定する情報であって、前記始端情報、各前記直線部の前記直線部情報、及び、前記終端情報を含んだ情報を、基準鉄筋線情報と呼び、
前記第3工程において、同じ前記基準図形に配置され、互いの端部が平行に延びて接触した2つの前記基準鉄筋線の前記基準鉄筋線情報をそれぞれ取得した場合、入力される指示に応じて、当該2つの基準鉄筋線に基づく2つの前記鉄筋が前記端部に対応する部分で連結されることを示す連結設定情報を取得する第8工程と、
前記連結設定情報により連結の設定が行われた2つの前記基準鉄筋線の前記端部を前記直線部の延伸方向に沿って移動させる指示が入力された場合、前記端部での連結が保たれるように、当該2つの基準鉄筋線の基準鉄筋線情報をそれぞれ変更する第9工程とを有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2基準平面情報が示す複数の前記第2基準平面について決定した複数の前記鉄筋線を、鉄筋線群と呼び、
第1の前記鉄筋線群における第i直線部を含んだ平面と、第2の前記鉄筋線群における第p直線部(pは1以上の整数を示す。)を含んだ平面とが平行である場合に、入力される指示に応じて、当該第1の鉄筋線群の前記鉄筋線に基づいて生成される前記鉄筋の3次元モデルの前記第i直線部に対応する表面と、当該第2の鉄筋線群の前記鉄筋線に基づいて生成される前記鉄筋の3次元モデルの前記第p直線部に対応する表面とが接するように、当該第1の鉄筋線群を平行移動させる第10工程を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2基準平面情報が示す複数の前記第2基準平面について決定した複数の前記鉄筋線を、鉄筋線群と呼び、
前記鉄筋線群が表す複数の前記鉄筋を、鉄筋群と呼び、
1つの前記鉄筋群に属する1つの前記鉄筋と、他の1つの前記鉄筋群に属する他の1つの前記鉄筋とが互いに平行に延びた直線状の部分を持つ場合、当該1つの鉄筋における当該直線状の部分と、当該他の1つの鉄筋における当該直線状の部分との間に架け渡される前記鉄筋であって、当該直線状の部分に対して垂直な方向に伸びた前記鉄筋を、補強用鉄筋と呼び、
前記補強用鉄筋を表す線を、補強用鉄筋線と呼び、
第1の前記鉄筋線群における第i直線部と、第2の前記鉄筋線群における第p直線部(pは1以上の整数を示す。)とが平行に延びている場合に、入力される指示に応じて、当該第i直線部に対応する前記鉄筋の直線状の部分と当該第p直線部に対応する前記鉄筋の直線状の部分との間に架け渡される複数の前記補強用鉄筋を表した複数の前記補強用鉄筋線を決定する第11工程を有し、
前記第7工程は、前記第11工程において決定した複数の前記補強用鉄筋線に基づいて、複数の前記補強用鉄筋の3次元モデルを生成することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
入力される指示に応じて、前記立体物の外面を構成する複数の前記平面図形の中から選択した1つの前記平面図形に対して垂直な方向から見た図面であって、前記第6工程において決定した複数の前記鉄筋線を表した2次元の前記図面を生成する第13工程を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
鉄筋の配置の設計を支援する設計支援装置に行わせる命令を含んだプログラムであって、
前記命令に従って前記設計支援装置が行う処理は、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載された方法の各工程を含む、
プログラム。
【請求項11】
鉄筋の配置の設計を支援する設計支援装置であって、
処理部と、
前記処理部において実行される命令を記憶した記憶部とを有し、
前記処理部が前記命令に従って行う処理は、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載された方法の各工程を含む、
設計支援装置。
【請求項12】
鉄筋の配置の設計を支援する設計支援装置であって、
請求項1~請求項9のいずれか一項に記載された方法の各工程を行う手段を備えた
設計支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
コンピュータを用いて鉄筋の配置の設計を支援する方法、プログラム及び設計支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータを用いて鉄筋コンクリート造の構造物における鉄筋の配置(配筋)の設計を支援する方法として、例えば下記の特許文献による方法が知られている。この配筋設計支援方法は、梁と柱の接合部の配筋パターンを計算機に入力する配筋パターン入力工程と、かぶり厚さを含むデータを計算機に入力する基本データ入力工程と、梁、柱、梁筋、柱筋のサイズを含むデータを計算機に入力する寸法データ入力工程と、前記工程により入力された、配筋パターン、基本データ、寸法データに基づいて、計算機により配筋図を作成する配筋図作成工程とを有する。配筋パターン入力工程は、あらかじめ準備された格子状のパターン画面上で、概ねの配筋位置を選択する。これにより、配筋パターンの入力を画面上で容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平05-61946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では建物等の設計に3次元モデルが用いられるようになってきている。鉄筋の3次元モデルを用いて配筋設計を行えば、躯体における鉄筋の収まり具合や鉄筋の干渉等を視覚的に把握できるため、設計のチェックや仕上がり状態の確認が容易になる。しかしながら、配筋設計では扱う鉄筋の数が多いため、個々の鉄筋の3次元モデルを手作業で作成するのは非常に手間がかかる。また配筋設計では、干渉等の不具合を回避するための設計変更が発生し易く、鉄筋の配置を全体的に修正することが必要になる場合があるため、設計変更に伴う3次元モデルの修正作業の負担が大きいという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、3次元モデルの鉄筋を容易に配置することができ、設計変更による作業負担を大幅に軽減できる配筋の設計支援方法、プログラム及び設計支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、鉄筋の配置の設計を支援する設計支援装置が行う方法であって、仮想的な立体物の外面を構成する複数の平面図形の中から任意に選択された1つの平面図形を、基準図形と呼び、基準図形と接する平面図形に平行な平面を、第1基準平面と呼び、基準図形に平行な平面を、第2基準平面と呼び、鉄筋を表す仮想的な線であって、1以上の直線部を含む線を、鉄筋線と呼び、鉄筋線の2つの端における一方の端を始端、他方の端を終端と呼び、鉄筋線における始端側からi番目(iは1以上の整数を示す。)の直線部を、第i直線部と呼び、1以上の直線部がそれぞれ異なる第1基準平面に含まれており、基準図形の平面上に位置する鉄筋線を、基準鉄筋線と呼び、基準鉄筋線の1つの直線部が含まれた第1基準平面に関する情報を、当該1つの直線部の直線部情報と呼び、基準鉄筋線の始端に接した第1基準平面に関する情報を、始端情報と呼び、基準鉄筋線の終端に接した第1基準平面に関する情報を、終端情報と呼び、立体物の外面を構成する複数の平面図形に関する平面図形情報を取得する第1工程と、取得した平面図形情報に基づいて、1以上の平面図形を描画する第2工程と、入力される指示に応じて、描画した平面図形の1つを基準図形として選択し、選択した基準図形の平面上に位置する基準鉄筋線について始端情報、各直線部の直線部情報、及び、終端情報を取得する第3工程と、取得した始端情報、各前直線部の直線部情報、及び、終端情報に基づいて、基準鉄筋線を描画する第4工程と、入力される指示に応じて、選択した基準図形に平行な複数の第2基準平面に関する第2基準平面情報を取得する第5工程と、取得した第2基準平面情報が示す複数の第2基準平面の各々に位置する鉄筋線であって、取得した始端情報が示す第1基準平面に始端が接しており、取得した第i直線部の直線部情報が示す第1基準平面に第i直線部が含まれており、かつ、取得した終端情報が示す第1基準平面に終端が接している鉄筋線を決定する第6工程と、第6工程において決定した鉄筋線に基づいて、鉄筋の3次元モデルを生成する第7工程とを有する、方法。
【0007】
本発明の第2の態様は、鉄筋の配置の設計を支援する設計支援装置に行わせる命令を含んだプログラムであって、命令に従って設計支援装置が行う処理は、上記第1の態様の方法の各工程を含む、プログラムである。
【0008】
本発明の第3の態様は、鉄筋の配置の設計を支援する設計支援装置であって、処理部と、処理部において実行される命令を記憶した記憶部とを有し、処理部が命令に従って行う処理は、上記第1の態様の方法の各工程を含む、設計支援装置である。
【0009】
本発明の第4の態様は、鉄筋の配置の設計を支援する設計支援装置であって、上記第1の態様の方法の各工程を行う手段を備えた、設計支援装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、3次元モデルの鉄筋を容易に配置することができ、設計変更による作業負担を大幅に軽減できる配筋の設計支援方法、プログラム及び設計支援装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態に係る設計支援装置の構成の一例を示す図である。
図2図2A図2Dは、本実施形態における用語を説明するための図である。
図3図3は、本実施形態に係る配筋の設計支援方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図4図4Aは、立体物の外面を構成する平面図形の例を示す図である。図4Bは、立体物内に配置された鉄筋線群の例を示す図である。
図5図5Aは、立体物内に配置された鉄筋線群の例を示す図である。図5Bは、鉄筋の3次元モデルの例を示す図である。
図6図6は、基準鉄筋線に関する情報を入力する処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図7図7A図7Hは、基準鉄筋線に関する情報を入力する方法の一例を図解した図である。
図8図8Aは、設計した配筋に基づいて生成される2次元図面の一例を示す図である。図8Bは、設計した配筋に基づいて生成される鉄筋の数量表の一例を示す図である。
図9図9は、2つの鉄筋群の各鉄筋を連結する処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図10図10Aは、基準図形側から見た鉄筋線群の一例を示す図である。図10Bは、立体物内に配置された鉄筋線群の一例を示す図である。図10Cは、3次元モデルの鉄筋の連結部分を拡大した図である。
図11図11は、2つの鉄筋群の各鉄筋を接触させる処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図12図12A及び図12Bは、複数の鉄筋線群の一例を示す図である。図12Cは、立体物内に配置された鉄筋線群の一例を示す図である。図12D及び図12Eは、3次元モデルの鉄筋の接触部分を拡大した図である。
図13図13は、2つの鉄筋の間に補強用の鉄筋群を掛け渡す処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図14図14A及び図14Bは、補強用鉄筋線の一例を示す図である。図14C図14Eは、3次元モデルの補強用鉄筋の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施形態に係る設計支援装置1の構成の一例を示す図である。図1に設計支援装置1は、ユーザ(設計者)の指示に応じて、鉄筋コンクリート造の躯体等における鉄筋の配置(配筋)の設計を支援する処理を行う。図1の例において、設計支援装置1は、通信部11と、入力部12と、表示部13と、記憶部14と、処理部15を有する。
【0013】
通信部11は、インターネット等の通信ネットワークを介して他の装置(設計用の情報を提供するサーバ等)と通信を行う。通信部11は、例えばイーサネット(登録商標)や無線LAN等の所定の通信規格に準拠して通信を行う装置(ネットワークインターフェースカード等)を含む。
【0014】
入力部12は、ユーザの操作に応じた指示やその他の情報を処理部15に入力する。例えば、入力部12は、タッチパネル、タッチパッド、キーボード、マウス、ボタン、スイッチ、マイク、カメラ等の入力機能を備えた機器を少なくとも1つ含む。
【0015】
表示部13は、処理部15において生成される映像信号に応じた映像を表示する装置であり、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プロジェクタ等の表示機器を含む。
【0016】
記憶部14は、処理部15において実行可能な命令を含む1以上のプログラム141や、処理部15による処理の過程で一時的に保存されるデータ、処理部15の処理に利用されるデータ、処理部15の処理の結果として得られたデータ等を記憶する。記憶部14は、例えば、主記憶装置(RAM、ROM等)と補助記憶装置(フラッシュメモリ、SSD、ハードディスク、メモリカード、光ディスク等)を含んでよい。記憶部14は、1つの記憶装置から構成されてもよいし、複数の記憶装置から構成されてもよい。記憶部14が複数の記憶装置から構成される場合、各記憶装置は、コンピュータのバスや他の任意の通信手段を介して処理部15に接続されてよい。
【0017】
処理部15は、設計支援装置1の全体的な動作を統括的に司り、所定の情報処理を実行する。処理部15は、例えば、記憶部14に格納された1以上のプログラム141の命令に応じて処理を実行する1以上のプロセッサ(CPU(central processing unit)、MPU(micro-processing unit)、DSP(digital signal processor)、GPU(graphics processing unit)、NPU(neural network processing unit)等)を含む。処理部15は、記憶部14に記憶される1以上のプログラム141の命令を1以上のプロセッサが実行することにより、1以上のコンピュータとして動作する。設計支援装置1は、複数のコンピュータを有していてもよく、本実施形態に係る処理の少なくとも一部を複数のコンピュータが連携して実行してもよい。
【0018】
処理部15は、特定の機能を実現するように構成された1以上の専用のハードウェア(ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field-programmable gate array)等)を含んでもよい。処理部15は、本実施形態において説明する全ての処理を1以上のコンピュータにおいて実行してもよいし、1以上のコンピュータと専用のハードウェアにおいてそれぞれ一部の処理を実行してもよいし、専用のハードウェアにおいて全ての処理を実行してもよい。
【0019】
プログラム141は、例えばコンピュータ読み取り可能な記録媒体(光ディスク、メモリカード、USBメモリ、その他の非一時的な有形の媒体)に記録されていてもよい。処理部15は、そのような記録媒体に記録された1以上のプログラム141の少なくとも一部を不図示の記録媒体読み取り装置(光ディスク装置等)やインターフェース装置(USBインターフェース等)により読み込んで、記憶部14に書き込んでもよい。あるいは処理部15は、通信ネットワークに接続される他の装置から通信部11により1以上のプログラム141の少なくとも一部をダウンロードして、記憶部14に書き込んでもよい。1以上のプログラム141は、後述する本実施形態に係る処理の少なくとも一部を処理部15において実行させる命令を含んでよい。
【0020】
ここで、本実施形態の理解を容易にするために、本実施形態における用語の一部について、図2A図2Dを参照して説明する。
【0021】
図2Aは、立体物の一例を示す図である。
本実施形態では、鉄筋の3次元的な配置を設計する際の基準として、仮想的な立体物が与えられる。立体物は、例えば、内部に鉄筋が配置される鉄筋コンクリート造の構造物(躯体等)の外形を表す。立体物の外面は、複数の平面図形によって構成される。図2Aの例に示す立体物2の外面は、8つの平面図形F1~F8によって構成されている。
【0022】
図2Bは、基準図形と第1基準平面について説明するための図である。
「基準図形」は、上述した立体物の外面を構成する複数の平面図形の中から任意に選択された1つの平面図形である。本実施形態では、配筋の設計にあたってまず基準図形が選択される。図2Bの例では、図2Aに示す立体物2の平面図形F7が基準図形として選択されている。
「第1基準平面」は、立体物の外面において基準図形と接する平面図形に平行な平面である。図2Bの例では、基準図形(平面図形F7)に接する6つの平面図形(F1~F6)にそれぞれ平行な6つの第1基準平面(PA1~PA6)が点線で示されている。
【0023】
図2Cは、第2基準平面について説明するための図である。
「第2基準平面」は、基準図形に平行は平面である。図2Cの例では、基準図形(平面図形F7)に平行な複数の第2基準平面PBが点線で示されている。
【0024】
「鉄筋線」は、鉄筋を表す仮想的な線であって、1以上の直線部を含む線である。
「始端」と「終端」は、鉄筋線の2つの端における一方と他方である。2つの端のどちらを「始端」とし、どちらを「終端」とするかは、任意に選択される。
「第i直線部」(iは1以上の整数を示す。)は、鉄筋線における1以上の直線部のうち、始端側から数えてi番目に位置する直線部である。
【0025】
図2Dは、基準鉄筋線について説明するための図である。
「基準鉄筋線」は、1以上の直線部がそれぞれ異なる第1基準平面に含まれており、基準図形の平面上に位置する鉄筋線である。図2Dの例に示す基準鉄筋線3は、基準図形(平面図形F7)の平面上に位置しており、始端30と終端32の間に2つの直線部(31-1、31-2)を有する。第1直線部31-1は第1基準平面PA2に含まれており、第2直線部31-2は第1基準平面PA3に含まれている。
【0026】
「第0辺」は、基準図形を構成する複数の辺の中から任意に選択された1つの辺である。第i辺は、第(i-1)辺に隣接する。例えば、第0辺は第1辺に隣接し、第1辺は第2辺に隣接し、第2辺は第3辺に隣接する。図2Dの例では、基準図形(平面図形F7)における6つの辺のうち、平面図形F1に接する辺が第0辺に選ばれている。この例において、第1辺~第5辺はそれぞれ平面図形F2~F6に接する辺である。
【0027】
「直線部情報」は、基準鉄筋線の1つの直線部が含まれた第1基準平面に関する情報である。図2Dの例において、第1直線部31-1の直線部情報は第1基準平面PA2に関する情報であり、第2直線部31-2の直線部情報は第1基準平面PA3に関する情報である。
「始端情報」は、基準鉄筋線の始端に接した第1基準平面に関する情報である。図2Dの例において、始端30の始端情報は第1基準平面PA1に関する情報である。
「終端情報」は、基準鉄筋線の終端に接した第1基準平面に関する情報である。図2Dの例において、終端32の終端情報は第1基準平面PA4に関する情報である。
「基準鉄筋線情報」は、1つの基準鉄筋線を規定する情報であって、当該1つの基準鉄筋線についての始端情報、各直線部の直線部情報、及び、終端情報を含む。
【0028】
本実施形態では、ユーザの指示に従って取得された基準鉄筋線情報が規定する基準鉄筋線に基づいて、ユーザの指示(後述する第2基準平面情報)により設定された複数の第2基準平面の各々に鉄筋線が決定され、決定された鉄筋線に基づいて鉄筋の3次元モデルが生成される。
「鉄筋線群」は、後述する第2基準平面情報が示す複数の第2基準平面について決定された複数の鉄筋線である。
「鉄筋群」は、鉄筋線群が表す複数の鉄筋である。
【0029】
次に、図3のフローチャートを参照して、本実施形態に係る配筋の設計支援方法を説明する。
ステップST100は、本発明の第1工程の一例である。
ステップST105は、本発明の第2工程の一例である。
ステップST110は、本発明の第3工程の一例である。
ステップST115は、本発明の第4工程の一例である。
ステップST120は、本発明の第5工程の一例である。
ステップST125は、本発明の第6工程の一例である。
ステップST135は、本発明の第7工程の一例である。
【0030】
ST100:
設計支援装置1は、ユーザにより入力された立体物の3次元モデルから、立体物の外面を構成する複数の平面図形に関する情報(平面図形情報)を取得する。例えば設計支援装置1は、立体物のエッジを抽出し、エッジに囲まれた範囲を平面図形として特定し、特定した各平面図形に関する情報を平面図形情報として取得する。
【0031】
ST105:
設計支援装置1は、ステップST100で取得した平面図形情報に基づいて、立体物における1以上の平面図形を描画する。図4Aは、平面図形情報に基づいて設計支援装置1が描画する立体物とその平面図形の例を示す。図4Aの例では、立体物2における一部の平面図形(F1、F2、F4、F5、F7)がユーザにより選択され、2次元的に並べられている。
【0032】
ST110:
設計支援装置1は、ユーザにより入力される指示に応じて、ステップST105で描画した平面図形の1つを基準図形として選択し、選択した基準図形の平面上に位置する基準鉄筋線について始端情報、各直線部の直線部情報、及び、終端情報を取得する。
【0033】
例えば設計支援装置1は、ユーザにより入力される指示に応じて、まず始端情報を取得する(始端情報取得工程)。始端情報を取得すると、次に設計支援装置1は、ユーザにより入力される指示に応じて、始端側の直線部から終端側の直線部に向かって順番に直線部情報を取得する(直線部情報取得工程)。全ての直線部の直線部情報を取得すると、設計支援装置1は、ユーザにより入力される指示に応じて、終端情報を取得する(終端情報取得工程)。
【0034】
設計支援装置1が始端情報、直線部情報、終端情報として取得する第1基準平面に関する情報は、例えば、基準図形に接する1つの平面図形を示す情報と、当該1つの平面図形からこれに平行な第1基準平面までの距離(オフセット)を示す情報とを含む。平面図形によって第1基準平面の姿勢が特定され、平面図形からの距離によって第1基準平面の位置が特定される。
【0035】
なお、平面図形と平行で距離の等しい平面は2通り存在するが、立体物の内側に鉄筋が位置することを前提とする場合、2通りの平面のうち立体物の内側を通る平面を第1基準平面として特定してよい。
【0036】
図6は、基準鉄筋線に関する情報を入力するステップST110の処理の一例を説明するためのフローチャートである。
ステップST300~ST310は、本発明の始端情報取得工程の一例である。
ステップST315~ST325は、本発明の直線部情報取得工程(第1直線部)の一例である。
ステップST335、ST340、ST350は、本発明の直線部情報取得工程(第2直線部以降)の一例である。
ステップST335、ST340、ST365は、本発明の終端情報取得工程の一例である。
ステップST355は、本発明の直線部描画工程の一例である。
【0037】
まず設計支援装置1は、ユーザにより入力される指示に応じて、基準図形の1つの辺を第0辺として選択する(ST300)。設計支援装置1は、ユーザにより入力される指示に応じて、この第0辺に対応する平面図形(第0辺において基準図形に接する平面図形)から、これに平行な第1基準平面までの距離を取得する(ST305)。そして設計支援装置1は、ステップST300において選択した第0辺に対応する平面図形を示す情報と、ステップST305において得られた平面図形から第1基準平面までの距離を示す情報とを含んだ始端情報を取得する(ST310)。
【0038】
次に設計支援装置1は、ユーザにより入力される指示に応じて、第0辺に隣接する第1辺を選択する(ST315)。設計支援装置1は、ユーザにより入力される指示に応じて、この第1辺に対応する平面図形(第1辺において基準図形に接する平面図形)から、これに平行な第1基準平面までの距離を取得する(ST320)。そして設計支援装置1は、ステップST315において選択した第1辺に対応する平面図形を示す情報と、ステップST320において得られた平面図形から第1基準平面までの距離を示す情報とを含んだ第1直線部の直線部情報を取得する(ST325)。
【0039】
ステップST325において第1直線部の直線部情報を取得した後、次に設計支援装置1は、i=2として(ST330)ステップST335の処理に進む。
【0040】
設計支援装置1は、ユーザにより入力される指示に応じて、前回選択した第(i-1)辺に隣接する第i辺を選択する(ST335)。設計支援装置1は、ユーザにより入力される指示に応じて、この第i辺に対応する平面図形(第i辺において基準図形に接する平面図形)から、これに平行な第1基準平面までの距離を取得する(ST340)。
【0041】
ステップST340において平面図形からの距離を取得した第1基準平面が、基準鉄筋線の終端を規定するものでない場合(ST345のNo)、設計支援装置1は、ステップST335において選択した第1辺に対応する平面図形を示す情報と、ステップST340において得られた平面図形から第1基準平面までの距離を示す情報とを含んだ第i直線部の直線部情報を取得する(ST350)。
【0042】
ステップST350において第i直線部の直線部情報を取得した場合、設計支援装置1は、第(i-1)直線部を表示部13において描画する(ST355)。iが2以上の場合、第i直線部の直線部情報を取得したときに、第(i-1)直線部を規定する3つの第1基準平面(直線部の両端を規定する2つの第1基準平面、直線部を含む第1基準平面)が決まるため、設計支援装置1はこの3つの第1基準平面に基づいて第(i-1)直線部を描画する。
【0043】
ステップST350において第i直線部の直線部情報を取得すると、設計支援装置1は、iに1を加算して(ST360)ステップST335に戻り、ステップST335以降の処理を繰り返す。
【0044】
ステップST340において平面図形からの距離を取得した第1基準平面が、基準鉄筋線の終端を規定するものである場合(ST345のNo)、設計支援装置1には、基準鉄筋線の終端を確定させるユーザの指示が入力される。この場合、設計支援装置1は、ステップST335において選択した第1辺に対応する平面図形を示す情報と、ステップST340において得られた平面図形から第1基準平面までの距離を示す情報とを含んだ終端情報を取得する(ST365)。
【0045】
図7A図7Hは、基準鉄筋線に関する情報を入力する方法の一例を図解した図である。
この例において、ユーザは平面図形F7を基準図形として選び、その基準図形(F7)において平面図形F1に接した辺を第0辺として選択する(図7A)。第0辺を選択すると、この第0辺に接する平面図形F1に平行な第1基準平面PA1のガイド線(点線)が画面に表示される。ユーザは、第1基準平面PA1のガイド線をマウスポインタ等の操作により平行移動させることで、平面図形F1から第1基準平面PA1までの距離を指定する(図7B)。平面図形F1から第1基準平面PA1までの距離は数値によって表してもよいし、ガイド線と数値の両方で表してもよい。ユーザが第1基準平面PA1のガイド線の平行移動を止めると、そのガイド線の位置で平面図形F1から第1基準平面PA1までの距離が決まり、始端情報(平面図形F1を示す情報、平面図形F1から第1基準平面PA1までの距離を示す情報)が設計支援装置1に取得される。
【0046】
次にユーザは、第0辺に隣接する第1辺として、基準図形(F7)において平面図形F2に接した辺を選択する(図7C)。第1辺を選択すると、この第1辺に接する平面図形F2に平行な第1基準平面PA2のガイド線が画面に表示される。ユーザは、第1基準平面PA2のガイド線を平行移動させることで、平面図形F2から第1基準平面PA2までの距離を指定する(図7D)。ユーザが第1基準平面PA2のガイド線の平行移動を止めると、そのガイド線の位置で平面図形F2から第1基準平面PA2までの距離が決まり、第1直線部の直線部情報(平面図形F2を示す情報、平面図形F2から第1基準平面PA2までの距離を示す情報)が設計支援装置1に取得される。
【0047】
次にユーザは、第1辺に隣接する第2辺として、基準図形(F7)において平面図形F3に接した辺を選択する(図7E)。第2辺を選択すると、この第2辺に接する平面図形F3に平行な第1基準平面PA3のガイド線が画面に表示される。ユーザは、第1基準平面PA3のガイド線を平行移動させることで、平面図形F3から第1基準平面PA3までの距離を指定する(図7F)。ユーザが第1基準平面PA3のガイド線の平行移動を止めると、そのガイド線の位置で平面図形F3から第1基準平面PA3までの距離が決まる。このとき、第1直線部を規定する3つの第1基準平面(PA1~PA3)が決まるため、この3つの第1基準平面に基づいて、第1直線部31-1が描画される。
【0048】
平面図形F3から第1基準平面PA3までの距離が決まった状態で、次にユーザは、第2辺に隣接する第3辺として、基準図形(F7)において平面図形F4に接した辺を選択する(図7G)。ユーザが第3辺を選択したことで、第2辺に対応する第1基準平面PA3は、基準鉄筋線の終端を規定する平面でないことが確定する。この場合、平面図形F3を示す情報、及び、平面図形F3から第1基準平面PA3までの距離を示す情報は、第2直線部の直線部情報として設計支援装置1に取得される。
【0049】
ユーザが第3辺を選択すると、この第3辺に接する平面図形F4に平行な第1基準平面PA4のガイド線が画面に表示される。ユーザは、第1基準平面PA4のガイド線を平行移動させることで、平面図形F4から第1基準平面PA4までの距離を指定する(図7H)。ユーザが第1基準平面PA4のガイド線の平行移動を止めると、そのガイド線の位置で平面図形F3から第1基準平面PA3までの距離が決まる。このとき、第2直線部を規定する3つの第1基準平面(PA2~PA4)が決まるため、この3つの第1基準平面に基づいて第2直線部31-2が描画される。
【0050】
平面図形F4から第1基準平面PA4までの距離が決まった状態で、ユーザは、基準鉄筋線の終端を確定させる指示を入力する。これにより、平面図形F4を示す情報、及び、平面図形F4から第1基準平面PA4までの距離を示す情報は、終端情報として設計支援装置1に取得される。
【0051】
図7A図7Hに示した上述の方法により、基準鉄筋線3を規定する情報(基準鉄筋線情報)として、始端情報、第1直線部の直線部情報、第2直線部の直線部情報、及び、終端情報が取得される。
【0052】
ST115:
図3に戻る。
ステップST110において基準鉄筋線情報を取得すると、設計支援装置1は、取得した基準鉄筋線情報に基づいて基準鉄筋線3を描画する。例えば設計支援装置1は、上述したステップST355(図6)の処理において、基準鉄筋線情報を入力する処理と並行して直線部の描画を行う。設計支援装置1は、他のガイド線等と区別可能な所定の態様(図7F図7Gの例では太い線)で基準鉄筋線の各直線部を描画する。
【0053】
ST120:
設計支援装置1は、ユーザにより入力される指示に応じて、ステップST110で選択した基準図形に平行な複数の第2基準平面(図2C)に関する第2基準平面情報を取得する。例えば設計支援装置1は、基準図形に垂直な方向において第2基準平面を配置する範囲、その範囲における第2基準平面の間隔等を第2基準平面情報として取得する。
【0054】
ST125:
設計支援装置1は、ステップST120において取得した第2基準平面情報が示す複数の第2基準平面の各々に位置するように鉄筋線を決定する。この鉄筋線は、ステップST110で取得した始端情報が示す第1基準平面に始端が接しており、ステップST110で取得した第i直線部の直線部情報が示す第1基準平面に第i直線部が含まれており、かつ、ステップST110で取得した終端情報が示す第1基準平面に終端が接している。すなわち、各第2基準平面上の鉄筋線は、基準図形上の基準鉄筋線と同じ第1基準平面を用いて規定される。
【0055】
ST130:
設計支援装置1は、第2基準平面情報が示す複数の第2基準平面について決定された複数の鉄筋線(鉄筋線群)を描画する。図4Bは及び図5Aは、立体物内に配置された鉄筋線群の例を示す図である。図4B及び図5Aの例では、基本図形(F7)の基準鉄筋線3に基づいて、立体物2内の基本図形(F7)と垂直な方向に、基準鉄筋線3と平行な複数の鉄筋線4が配置されている。図4Bに示す鉄筋線4は1つの直線部で構成され、図5Aに示す鉄筋線4は2つの直線部でL字状に構成される。
【0056】
ST135:
設計支援装置1は、ステップST125において決定した鉄筋線に基づいて、鉄筋の3次元モデルを生成する。例えば設計支援装置1は、鉄筋線の始端から終端までの間で、中心線を鉄筋線と概ね一致させるように伸びた円筒体を、鉄筋の3次元モデルとして生成する。この場合、設計支援装置1は、3次元モデルの生成に必要なパラメータ(円筒体の径、円筒体の折れ曲がり部分の曲げ半径等)の値として、任意の鉄筋に適用される既定の値を用いてもよいし、ユーザが個々の鉄筋群に対して個別に設定した値を用いてもよい。
【0057】
ST140:
設計支援装置1は、入力されるユーザの指示に応じて、ステップST135において生成した鉄筋の3次元モデルを描画する。図5Bは、鉄筋の3次元モデルの例を示す図であり、図5Aの鉄筋線4に基づいて生成される鉄筋5の折れ曲がり部分を拡大した図である。
【0058】
ST270:
設計支援装置1は、ステップST100~ST140によりユーザが設計した配筋に基づいて、2次元の図面(配筋図)を生成する。すなわち設計支援装置1は、入力されるユーザの指示に応じて、立体物の外面を構成する複数の平面図形の中から選択した1つの平面図形に対して垂直な方向から見た2次元の配筋図を生成する。2次元の配筋図は、ステップST125において決定した複数の鉄筋線を表す。図8Aは、自動生成される2次元の図面の一例を示す。
【0059】
また設計支援装置1は、ステップST100~ST140によりユーザが設計した配筋に基づいて、鉄筋の数量表を作成する。図8Bは、自動生成される数量表の一例を示す。2次元の図面や数量表に表示される情報(鉄筋群の名前、符号等)は、例えばステップST100~ST140の設計の過程でユーザが設計支援装置1に登録してもよい。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、ユーザにより入力される指示に応じて、立体物(躯体等)の外面を構成する平面図形の1つが基準図形として選択され、その基準図形上に配置される基準鉄筋線を規定するための情報(始端情報、直線部情報、終端情報)が取得される。基準鉄筋線の各直線部は、その基準図形に接する平面図形に平行な第1基準平面に含まれており、基準鉄筋線の始端と終端も、その基準図形に接する平面図形に平行な第1基準平面に接している。ユーザにより入力される指示に応じて、基準図形に平行な複数の第2基準平面に関する情報(第2基準平面情報)が取得されると、当該複数の第2基準平面の各々に配置される鉄筋線が決定される。各第2基準平面に配置される鉄筋線の各直線部は、基準鉄筋線の各直線部と同じ第1基準平面に含まれており、各第2基準平面に配置される鉄筋線の始端は、基準鉄筋線の始端と同じ第1基準平面に接しており、各第2基準平面に配置される鉄筋線の終端は、基準鉄筋線の終端と同じ第1基準平面に接している。複数の第2基準平面に配置される複数の鉄筋線が決定されると、その複数の鉄筋線に基づいて、複数の鉄筋の3次元モデルが自動的に生成される。これにより、立体物の外面の平面図形を基準とする非常に簡単な情報(基準図形、第1基準平面、第2基準平面)を用いて配筋の設計を行い、その設計の結果から鉄筋の3次元モデルを自動的に生成することができる。従って、配筋設計において3次元モデルの鉄筋を容易に配置すること可能となる。また、設計変更があった場合でも、非常に簡単な情報を用いて鉄筋の配置を容易に変更し、その変更を鉄筋の3次元モデルへ自動的に反映させることができる。そのため、3次元モデルを手作業で変更する場合に比べて、設計変更による作業負担を大幅に軽減することができる。
【0061】
本実施形態では、鉄筋線に基づいて鉄筋の3次元モデルが生成されるため、3次元モデルのみで配筋設計を行う場合に比べて、鉄筋の中心位置を基準とした寸法や距離を明確にしながら設計を行うことができる。また、鉄筋線を用いることによって、3次元モデルのみで配筋設計を行う場合よりも正確で利用し易い2次元の図面を容易に自動作成することができる。
【0062】
本実施形態では、鉄筋の配置を鉄筋線と3次元モデルの両方で表現できるため、多数の鉄筋を3次元モデルで表現した場合に見難くなる場合は、鉄筋線での表現に切り替えることによって鉄筋の配置を見やすくすることができる。また、3次元モデルでの表現を鉄筋線での表現に切り替えることで、描画の負荷が軽減されるため、処理能力の低いハードウェアでも鉄筋の3次元の配置パターンをスムーズに表示することができる。
【0063】
次に、本実施形態の幾つかの変形例について説明する。
【0064】
(変形例1)
図9は、2つの鉄筋群の各鉄筋を連結する処理の一例を説明するためのフローチャートである。
設計支援装置1は、既に述べたステップST100~ST140の処理(図3)により、2つの基準鉄筋線に基づいた2つの鉄筋線群を決定する。この2つの基準鉄筋線は、同じ基準図形に配置されており、互いの端部が平行に伸びて接触している。
【0065】
設計支援装置1は、ステップST110において上述した2つの基準鉄筋線の基準鉄筋線情報をそれぞれ取得した場合、ユーザにより入力される指示に応じて、当該2つの基準鉄筋線に基づく2つの鉄筋が、互いの鉄筋線の端部(平行に伸びて接触した端部)に対応する部分で連結されることを示す連結設定情報を取得する(ST200)。
【0066】
設計支援装置1は、連結設定情報により連結の設定が行われた2つの基準鉄筋線の端部を直線部の延伸方向に沿って移動させるようにユーザの指示が入力された場合、この端部での連結が保たれるように、当該2つの基準鉄筋線の基準鉄筋線情報をそれぞれ変更する(ST205)。例えば設計支援装置1は、連結された2つの直線部の端部をユーザの指示に応じて移動させても、当該2つの直線部それぞれの長さの和が一定に保たれるように、各基準鉄筋線の基準鉄筋線情報を変更する。
【0067】
2つの基準鉄筋線の基準鉄筋線情報が決まると、設計支援装置1は、第2基準平面情報が示す複数の第2基準平面の各々において、連結された2つの基準鉄筋線に基づく2つの鉄筋線を決定する(ST210)。設計支援装置1は、各第2基準平面において決定した2つの鉄筋線の3次元モデルを生成し(ST215)、ユーザの指示に応じて描画する(ST220)。設計支援装置1は、ユーザにより入力される指示に応じて、配筋の結果に応じた2次元図面、数量表の作成を行う(ST270)。
【0068】
図10Aは、基準図形側から見た鉄筋線群の一例を示す図であり、互いの端部が連結するように設定された2つの鉄筋線4-1、4-2を示す。鉄筋線4-1と鉄筋線4-2は、連結部分6Aにおいて互いの端部が連結するように設定されている。図10Bは、図10Aに示す連結された鉄筋線4-1、4-2を表した斜視図である。図10Cは、鉄筋線4-1、4-2に対応する3次元モデルの鉄筋5-1、5-2の連結部分6Bを拡大した図である。
【0069】
この変形例によれば、2つの基準鉄筋線について連結の設定を行うことにより、図10Cに示すように、端部が連結した鉄筋(3次元モデル)を生成することが可能となる。また、2つの基準鉄筋線の端部について連結の設定を行った場合、この端部を直線部の長手方向に移動させても、端部での連結が維持されるように基準鉄筋線情報が自動的に変更される。そのため、端部の連結位置の変更を容易に行うことができる。
【0070】
(変形例2)
図11は、2つの鉄筋群の各鉄筋を接触させる処理の一例を説明するためのフローチャートである。
設計支援装置1は、既に述べたステップST100~ST140の処理(図3)により、2つの基準鉄筋線に基づいた2つの鉄筋線群を決定する。この変形例において、一方の鉄筋線群における第i直線部(iは1以上の整数を示す。)を含んだ平面と、他方の鉄筋線群における第p直線部(pは1以上の整数を示す。)を含んだ平面とが平行となっている。
【0071】
設計支援装置1は、ユーザにより入力される指示に応じて、上述した一方の鉄筋線群の鉄筋線に基づいて生成される鉄筋の3次元モデルの第i直線部に対応する表面と、他方の鉄筋線群の鉄筋線に基づいて生成される鉄筋の3次元モデルの第p直線部に対応する表面とが接するように、それぞれの鉄筋の直径を考慮して、一方の鉄筋線群の鉄筋線を自動的に平行移動させる(ST230)。
【0072】
ステップST230において一方の鉄筋線群の鉄筋線4が平行移動すると、設計支援装置1は、この平行移動した鉄筋線群の3次元モデルを生成する(ST235)。設計支援装置1は、ユーザにより入力される指示に応じて、接触した2つの鉄筋群の3次元モデルを描画する(ST240)。また設計支援装置1は、ユーザにより入力される指示に応じて、配筋の結果に応じた2次元図面、数量表の作成を行う(ST270)。
【0073】
図12A及び図12Bは、複数の鉄筋線群の一例を示す図であり、図12Aに示す連結された鉄筋線4-1及び4-2と、鉄筋線4-1及び4-2に対して直交する方向に伸びた鉄筋線4-3を示す。鉄筋線4-1及び4-2の鉄筋線群に向かって鉄筋線4-3の鉄筋線群を平行移動させると、図12Bに示すように、両者が接した状態となる。図12Cは、図12Bに示すように鉄筋線4-1及び4-2及び鉄筋線4-3が接した状態を示す斜視図である。図12D及び図12Eは、鉄筋線4-1に対応する鉄筋5-1と鉄筋線4-3に対応する鉄筋5-3とが接した状態を示す拡大図である。
【0074】
この変形例によれば、2つの鉄筋線群に対応する2つの鉄筋群の各鉄筋が接した状態となるように、それぞれの鉄筋の直径を考慮して、一方の鉄筋線を他方の鉄筋線に対して自動的に平行移動させるため、鉄筋群を接触させる配置パターンの設計を容易に行うことができる。
【0075】
(変形例3)
図13は、2つの鉄筋の間に補強用の鉄筋群を掛け渡す処理の一例を説明するためのフローチャートである。
設計支援装置1は、既に述べたステップST100~ST140の処理(図3)により、2つの基準鉄筋線に基づいた2つの鉄筋線群を決定する。この変形例において、一方の鉄筋線群における第i直線部(iは1以上の整数を示す。)と、他方の鉄筋線群における第p直線部(pは1以上の整数を示す。)とが平行に延びている。
【0076】
設計支援装置1は、入力されるユーザの指示に応じて、上述した一方の鉄筋線群の第i直線部に対応する鉄筋の直線状の部分と、他方の鉄筋線群の第p直線部に対応する鉄筋の直線状の部分との間に掛け渡される複数の補強用鉄筋を表した複数の補強用鉄筋線を決定する(ST250)。
【0077】
ここで「補強用鉄筋」は、1つの鉄筋群に属する1つの鉄筋と、他の1つの鉄筋群に属する他の1つの鉄筋とが互いに平行に延びた直線状の部分を持つ場合、当該1つの鉄筋における直線状の部分と、当該他の1つの鉄筋における当該直線状の部分との間に架け渡される鉄筋である。補強用鉄筋は、鉄筋の上述した直線状の部分に対して垂直な方向に伸びている。また「補強用鉄筋線」は、補強用鉄筋線を表す線である。
【0078】
設計支援装置1は、ステップST250において決定した複数の補強用鉄筋線に基づいて、複数の補強用鉄筋の3次元モデルを生成する(ST255)。設計支援装置1は、ユーザにより入力される指示に応じて、生成した補強用鉄筋の3次元モデルを描画する(ST260)。また設計支援装置1は、ユーザにより入力される指示に応じて、配筋の結果に応じた2次元図面、数量表の作成を行う(ST270)。
【0079】
図14Aは、補強用鉄筋線が掛け渡される前の鉄筋線の例を示し、図14Bは、図14Aの例に対して補強用鉄筋線が掛け渡された後の鉄筋線の例を示す。図14A及び図14Bの例において、鉄筋線4-1及び4-4の鉄筋線群は互いに平行に伸びており、鉄筋線4-2及び4-3の各鉄筋線群も互いに平行に伸びている。また鉄筋線4-1及び4-2の各鉄筋線群が互いに接しているとともに互いに直交しており、鉄筋線4-3及び4-4の各鉄筋線群が互いに接しているとともに互いに直行している。補強用鉄筋線4-5、4-5、4-6は、それぞれ、鉄筋線4-1及び4-2が直交する箇所と、鉄筋線4-3及び4-4が直交する箇所との間に掛け渡されている。
図14C図14Eは、補強用鉄筋を含む鉄筋の3次元モデルの一例を示す図である。鉄筋5-1~5-4は、それぞれ鉄筋線4-1~4-4に対応し、補強用鉄筋5-5~5-7は、補強用鉄筋線4-5~4-7に対応する。
【0080】
この変形例によれば、既に作成された鉄筋線の構造に対して、補強用鉄筋線を比較的簡単な操作により追加し、3次元モデルに変換することが可能となる。補強用鉄筋線は、通常の鉄筋線のように平面図形に対して平行にしなくても作成できるため、様々な配置パターンを設計することができる。
【0081】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0082】
上述した実施形態では、基準図形と第1基準平面とのなす角度が直角である例を挙げたが、本実施形態の他の例では、少なくとも一部の第1基準平面において、基準図形とのなす角度が直角以外の角度であってもよい。
【0083】
上述した設計支援装置1により実行される処理の一部は、他の装置(サーバ装置、端末装置等)により実行されてもよい。この場合、設計支援装置1と他の装置とにおける複数のコンピュータによって本実施形態に係る設計支援装置としての処理が実行されていると言える。
【符号の説明】
【0084】
1…設計支援装置、11…通信部、12…入力部、13…表示部、14…記憶部、141…プログラム、15…処理部、2…立体物、3…基準鉄筋線、30…始端、31-1,31-2…直線部、32…終端、4,4-1~4-4…鉄筋線、4-5~4-7…補強用鉄筋線、5,5-1~5-5…鉄筋、F1~F8…平面図形、PA1~PA6…第1基準平面、PB…第2基準平面
【要約】
【課題】3次元モデルの鉄筋を容易に配置することができ、設計変更による作業負担を大幅に軽減できる配筋の設計支援方法、プログラム及び設計支援装置を提供する。
【解決手段】立体物の外面を構成する複数の平面図形の1つが基準図形としてユーザにより選択され、基準図形の平面上に位置する基準鉄筋線を規定するための情報(基準鉄筋線情報)がユーザにより入力される(ST110)。基準鉄筋線情報は、立体物の外面において基準図形に接する平面図形に平行な第1基準平面に基づいて、基準鉄筋線の始端、終端、直線部を定める情報である。基準鉄筋線に基づく複数の鉄筋線は、基準図形に平行な複数の第2基準平面上に位置する。各第2基準平面上に位置する鉄筋線の始端、終端、直線部は、基準鉄筋線の始端、終端、直線部を定める基準鉄筋線情報(第1基準平面の情報)に基づいて決定される。鉄筋の3次元モデルは、鉄筋線に基づいて生成される。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14