IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルプス電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-測位装置、及び、クロック補正方法 図1
  • 特許-測位装置、及び、クロック補正方法 図2
  • 特許-測位装置、及び、クロック補正方法 図3
  • 特許-測位装置、及び、クロック補正方法 図4
  • 特許-測位装置、及び、クロック補正方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】測位装置、及び、クロック補正方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/06 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G01S5/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023564776
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2022038185
(87)【国際公開番号】W WO2023100489
(87)【国際公開日】2023-06-08
【審査請求日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2021196786
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸光
(72)【発明者】
【氏名】高井 大輔
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/013220(WO,A1)
【文献】特開2012-195840(JP,A)
【文献】特開2016-053551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0243716(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00- 5/14
G01S 11/02-11/10
G01S 13/74-13/84
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
H01L 7/00- 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信部の位置を測位する測位装置であって、
第1無線通信部と、
前記第1無線通信部から既知の第1所定距離の位置に配置される第2無線通信部と、
前記第1無線通信部から送信される第1周波数の信号を前記第2無線通信部が受信したときの位相と、前記第1無線通信部から送信される第2周波数の信号を前記第2無線通信部が受信したときの位相とに基づいて前記第1無線通信部及び前記第2無線通信部の間の距離を求める距離算出部と、
前記距離算出部によって算出される距離と、前記第1所定距離との差に基づいて、前記第1無線通信部及び前記第2無線通信部のクロックが同期するように補正する同期制御部と
を含む、測位装置。
【請求項2】
前記第1所定距離をL0、前記第1無線通信部及び前記第2無線通信部の間における前記第1周波数の信号の波数と、前記第1無線通信部及び前記第2無線通信部の間における前記第2周波数の信号の波数とをn、前記第1周波数の信号を前記第2無線通信部が受信したときの位相をP1、前記第2周波数の信号を前記第2無線通信部が受信したときの位相をP2とすると、
前記距離算出部は、次式に従って前記第1無線通信部及び前記第2無線通信部の間の距離Lを求める、請求項1に記載の測位装置。
【数1】
【請求項3】
前記同期制御部による前記クロックの補正が行われた状態において、前記移動通信部から送信される前記第1周波数の第1信号を前記第1無線通信部が受信するときの第1位相と、前記移動通信部から送信される前記第2周波数の第2信号を前記第1無線通信部が受信するときの第2位相と、前記移動通信部から送信される前記第1周波数の前記第1信号を前記第2無線通信部が受信するときの第3位相と、前記移動通信部から送信される前記第2周波数の前記第2信号を前記第2無線通信部が受信するときの第4位相とに基づいて、前記移動通信部と前記第1無線通信部との距離と、前記移動通信部と前記第2無線通信部との距離との距離差を算出する距離差算出部と、
前記距離差算出部によって求められる前記距離差に基づいて、前記第1無線通信部及び前記第2無線通信部に対する前記移動通信部の位置を求める測位部と
をさらに含む、請求項1又は2に記載の測位装置。
【請求項4】
前記第1無線通信部及び前記第2無線通信部は、複数のアンテナを有し、
前記第1無線通信部の前記複数のアンテナで信号が受信される際の位相差に基づいて前記移動通信部から前記第1無線通信部に前記信号が到来する第1到来方向を求める、又は、前記第2無線通信部の前記複数のアンテナで信号が受信される際の位相差に基づいて前記移動通信部から前記第2無線通信部に前記信号が到来する第2到来方向を求める、方向導出部をさらに含み、
前記測位部は、前記距離差算出部によって求められる前記距離差と、前記方向導出部によって求められる前記第1到来方向又は前記第2到来方向とに基づいて、前記第1無線通信部及び前記第2無線通信部に対する前記移動通信部の位置を求める、請求項3に記載の測位装置。
【請求項5】
前記方向導出部は、前記第1無線通信部の前記複数のアンテナで前記第1信号及び前記第2信号の少なくともいずれか一方が受信される際の位相差から前記第1到来方向を求める、又は、前記第2無線通信部の前記複数のアンテナで前記第1信号及び前記第2信号の少なくともいずれ一方が受信される際の位相差から前記第2到来方向を求める、請求項4に記載の測位装置。
【請求項6】
前記第1無線通信部から既知の第2所定距離の位置に配置される第3無線通信部をさらに含み、
前記距離算出部は、前記第1無線通信部から送信される前記第1周波数の信号を前記第3無線通信部が受信したときの位相と、前記第1無線通信部から送信される前記第2周波数の信号を前記第3無線通信部が受信したときの位相とに基づいて前記第1無線通信部及び前記第3無線通信部の間の距離を求め、
前記同期制御部は、前記距離算出部によって算出される前記第1無線通信部及び前記第3無線通信部の間の距離と、前記第2所定距離との差から、前記第1無線通信部及び前記第3無線通信部のクロックが同期するように補正し、
前記距離差算出部は、前記第1無線通信部及び前記第3無線通信部の前記クロックの補正が行われた状態において、前記移動通信部から送信される前記第1周波数の前記第1信号を前記第3無線通信部が受信するときの第5位相と、前記移動通信部から送信される前記第2周波数の前記第2信号を前記第3無線通信部が受信するときの第6位相と、前記第1位相及び前記第2位相とに基づいて、前記移動通信部と前記第1無線通信部との距離と、前記移動通信部と前記第3無線通信部との距離との距離差を算出し、
前記測位部は、前記距離差算出部によって求められる、前記移動通信部と前記第1無線通信部との距離と、前記移動通信部と前記第2無線通信部との距離との距離差と、前記移動通信部と前記第1無線通信部との距離と、前記移動通信部と前記第3無線通信部との距離との距離差とに基づいて、前記第1無線通信部、前記第2無線通信部、及び前記第3無線通信部に対する前記移動通信部の位置を求める、請求項3に記載の測位装置。
【請求項7】
前記第2無線通信部から既知の第2所定距離の位置に配置される第3無線通信部をさらに含み、
前記距離算出部は、前記第2無線通信部から送信される前記第1周波数の信号を前記第3無線通信部が受信したときの位相と、前記第2無線通信部から送信される前記第2周波数の信号を前記第3無線通信部が受信したときの位相とに基づいて前記第2無線通信部及び前記第3無線通信部の間の距離を求め、
前記同期制御部は、前記距離算出部によって算出される前記第2無線通信部及び前記第3無線通信部の間の距離と、前記第2所定距離との差から、前記第2無線通信部及び前記第3無線通信部のクロックが同期するように補正し、
前記距離差算出部は、前記移動通信部から送信される前記第1周波数の前記第1信号を前記第3無線通信部が受信するときの第5位相と、前記移動通信部から送信される前記第2周波数の前記第2信号を前記第3無線通信部が受信するときの第6位相と、前記第3位相及び前記第4位相とに基づいて、前記移動通信部と前記第2無線通信部との距離と、前記移動通信部と前記第3無線通信部との距離との距離差を算出し、
前記測位部は、前記距離差算出部によって求められる、前記移動通信部と前記第1無線通信部との距離と、前記移動通信部と前記第2無線通信部との距離との距離差と、前記移動通信部と前記第2無線通信部との距離と、前記移動通信部と前記第3無線通信部との距離との距離差とに基づいて、前記第1無線通信部、前記第2無線通信部、及び前記第3無線通信部に対する前記移動通信部の位置を求める、請求項3に記載の測位装置。
【請求項8】
前記同期制御部によって前記第1無線通信部及び前記第2無線通信部のクロックが同期するように補正された状態で前記移動通信部から送信される信号を前記第1無線通信部及び前記第2無線通信部がそれぞれ受信した第1時刻及び第2時刻の差と、前記距離差算出部によって算出される前記距離差とに基づいて、前記距離差の品質を評価する、請求項3に記載の測位装置。
【請求項9】
移動通信部の位置を測位する測位装置のクロックを補正するクロック補正方法であって、
前記測位装置は、
第1無線通信部と、
前記第1無線通信部から既知の第1所定距離の位置に配置される第2無線通信部と、
前記第1無線通信部から送信される第1周波数の信号を前記第2無線通信部が受信したときの位相と、前記第1無線通信部から送信される第2周波数の信号を前記第2無線通信部が受信したときの位相とに基づいて前記第1無線通信部及び前記第2無線通信部の間の距離を求める距離算出部と
を含み、
前記距離算出部によって算出される距離と、前記第1所定距離との差に基づいて、前記第1無線通信部及び前記第2無線通信部のクロックが同期するように補正する、クロック補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測位装置、及び、クロック補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、無線基地局間を同期させるための同期信号を供給する親装置と、第1チャネル及び第2チャネルを有する伝送路を介して前記親装置と接続される子装置とを備える時刻同期システムがある。前記子装置は、GPS(Global Positioning System)の基準信号を受信するGPS受信部と、前記親装置への上り信号の第1チャネルに前記基準信号を多重する多重部と、前記上り信号を前記伝送路を介して送信する送信部とを具備する。前記親装置は、前記子装置への下り信号の第2チャネルに遅延測定信号を多重する多重部と、前記下り信号を前記伝送路を介して送信する送信部と、前記子装置からの上り信号から第1チャネル及び第2チャネルを分離する分離部と、前記第2チャネルの遅延測定信号に基づいて前記伝送路の遅延時間を測定する遅延測定部と、前記遅延時間をもとに前記第1チャネルの基準信号の位相を補正する第1位相補正部と、前記第1位相補正部で補正された基準信号に基づいて前記第1同期信号を出力する出力部とを具備する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-004834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
GPSの信号は、反射によるマルチパス等の通信環境等の影響を受けやすいため、GPSの信号を用いてGPSの基準信号の位相を補正する方法では、補正の精度に限界がある。
【0005】
ところで、無線通信装置同士でTOA(Time Of Arrival)を用いて測位を行う場合に、RTT(Round Trip Time)を計測する場合には、無線通信装置同士のクロックの位相に1ns(ナノ秒)レベルの精度が求められる。
【0006】
そこで、無線通信装置同士のクロックの位相を高精度に補正可能な測位装置、及び、クロック補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態の測位装置は、移動通信部の位置を測位する測位装置であって、第1無線通信部と、前記第1無線通信部から既知の第1所定距離の位置に配置される第2無線通信部と、前記第1無線通信部から送信される第1周波数の信号を前記第2無線通信部が受信したときの位相と、前記第1無線通信部から送信される第2周波数の信号を前記第2無線通信部が受信したときの位相と、前記第1所定距離とに基づいて前記第1無線通信部及び前記第2無線通信部の間の距離を求める距離算出部と、前記距離算出部によって算出される距離と、前記第1所定距離との差から、前記第1無線通信部及び前記第2無線通信部の同期を行う、同期調整部とを含む。
【発明の効果】
【0008】
無線通信装置同士のクロックの位相を高精度に補正可能な測位装置、及び、クロック補正方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の測位装置を搭載した車両10を示す図である。
図2】実施の形態の測位装置100を搭載した車両10とスマートフォン200の構成を示すブロック図である。
図3】式(7)を満たす2本の双曲線を示す図である。
図4】式(7)を満たす2本の双曲線と、無線通信部110A及び110Bの受信可能領域とを示す図である。
図5】第3測位方法で求まる4本の双曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の測位装置、及び、クロック補正方法を適用した実施形態について説明する。
【0011】
<実施形態>
図1は、実施形態の測位装置を搭載した車両10を示す図である。図1には、車両10の平面視における中心を原点OとしたXY座標系を示す。車両10のボディの四隅には、複数の無線通信部110が配置されている。無線通信部110は、無線通信装置の一例である。図1では、一例として10個の無線通信部110を示す。車両10の前方の左右端部には無線通信部110が1つずつ設けられ、車両10の後方の左右端部には無線通信部110が1つずつ設けられている。また、車両10の左側方の前後端部と前後方向の真ん中とに無線通信部110が1つずつ設けられ、車両10の右側方の前後端部と前後方向の真ん中とに無線通信部110が1つずつ設けられている。
【0012】
10個の無線通信部110のうちのいずれか1つは第1無線通信部の一例であり、他のいずれか1つは第2無線通信部の一例であり、さらに他のいずれか1つは第3無線通信部の一例である。
【0013】
ここでは、一例として、車両10の右側方の前端部に設けられる無線通信部110を無線通信部110Aとして区別し、車両10の右側方の後端部に設けられる無線通信部110を無線通信部110Bとして区別し、車両10の右側方の前後方向の真ん中に設けられる無線通信部110を無線通信部110Cとして区別する。無線通信部110Aは第1無線通信部の一例であり、無線通信部110Bは第2無線通信部の一例であり、無線通信部110Cは第3無線通信部の一例である。
【0014】
10個の無線通信部110が動作に利用するクロックの周波数は、すべて等しい。各無線通信部110は、スマートフォン200との間でデータを送信又は受信するための無線通信部であり、一例としてBluetooth(登録商標)規格の近距離無線通信器である。各無線通信部110は複数のアンテナを有する。なお、ここでは無線通信部110がBluetooth規格の近距離無線通信器である形態について説明するが、WLAN(Wireless Local Area Network)やその他の規格の通信を行う機器であってもよい。
【0015】
図2は、実施の形態の測位装置100を搭載した車両10とスマートフォン200の構成を示すブロック図である。測位装置100は、車両10に搭載される10個の無線通信部110と、車両10に搭載されるECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)120とを含む。各無線通信部110は、複数のアンテナ111を有する。各無線通信部110に接続されるアンテナ111の数は、2以上であればよく、3つ程度であってもよい。
【0016】
スマートフォン200は、移動通信部の一例であり、車両10の外にあるときに測位装置100によって位置が求められる(測位される)。スマートフォン200は、制御部210及び通信部220を有する。利用者は、スマートフォン200を通じて、車両10のリモートキーの解錠/施錠、自動駐車支援の操作等を行うことができる。
【0017】
無線通信部110は、例えば、PA(Power Amplifier)、LNA(Low Noise Amplifier)、OM(Orthogonal Modulator)、ODM(Orthogonal DeModulator)、VCO(Voltage Controlled Oscillator)、PLL(Phase Locked Loop)、及びコーデック処理部等を含む。PAはアンテナ111に接続されている。無線通信部110は、ECU120によって制御され、測距のためにBluetoothのパケット信号で通信する。
【0018】
ECU120は、測位装置100用のECUである。車両10にはECU120以外にも種々のECUが搭載されており、ECU120と車載ネットワークを介して通信可能に接続されている。
【0019】
ECU120は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び内部バス等を含むコンピュータによって実現される。ECU120は、主制御部121、距離算出部122、同期制御部123、距離差算出部124、方向導出部125、測位部126、及びメモリ127を有する。主制御部121、距離算出部122、同期制御部123、距離差算出部124、方向導出部125、測位部126は、ECU120が実行するプログラムの機能(ファンクション)を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ127は、ECU120のメモリを機能的に表したものである。
【0020】
以下では、ECU120が実行可能な第1測位方法から第4測位方法について説明する。第1測位方法から第4測位方法のいずれにおいても、主制御部121は、ECU120の制御処理を統括する処理部であり、距離算出部122、同期制御部123、距離差算出部124、方向導出部125、測位部126が実行する処理以外の処理を実行する。
【0021】
また、メモリ127は、主制御部121、距離算出部122、同期制御部123、距離差算出部124、方向導出部125、測位部126が上述のような処理を実行するために必要なプログラムやデータ等を格納する。
【0022】
また、第1測位方法から第4測位方法のいずれにおいても、ECU120は、同期処理を行う。このため、まず同期処理について説明し、その後に第1測位方法から第4測位方法について説明する。第1測位方法から第4測位方法の説明では、距離算出部122、同期制御部123、距離差算出部124、方向導出部125、測位部126について説明する。
【0023】
<同期処理>
同期処理は、同期制御部123が、距離算出部122によって算出される距離に基づいて行う処理であり、無線通信部110A及び110Bのクロックが同期するように補正する。クロックの補正は、実施形態のクロック補正方法によって実現される。無線通信部110A及び110Bのクロックは、無線通信部110A及び110Bが動作に利用するクロックである。無線通信部110A及び110Bは、Bluetoothのパケット信号で通信する。なお、同期処理では、各無線通信部110に接続される複数のアンテナ111のうちのいずれか1つを基準のアンテナ111として用いればよい。
【0024】
距離算出部122は、無線通信部110Aから送信される周波数f1のパケット信号を無線通信部110Bが受信したときの位相と、無線通信部110Aから送信される周波数f2のパケット信号を無線通信部110Bが受信したときの位相とに基づいて無線通信部110A及び110Bの間の距離Lを求める。ここで、周波数f1は第1周波数の一例であり、周波数f2は第2周波数の一例である。周波数f1、f2は、Bluetoothの通信帯域に含まれる複数のチャンネルのうちのいずれか2つであり、無線通信部110A及び110Bの間における波数が同一になる周波数である。所定距離L0は第1所定距離の一例であり、無線通信部110A及び110Bの間の距離である。無線通信部110A及び110Bは、車両10の側部の前後端部に取り付けられているため、所定距離L0は既知である。
【0025】
より具体的には、距離算出部122は、次のようにして無線通信部110A及び無線通信部110Bの間の距離Lを求める。距離Lを求めるにあたり、距離算出部122は、無線通信部110Aに周波数f1のパケット信号と周波数f2のパケット信号とを送信させる。周波数f1及びf2のパケット信号は無線通信部110Bによって受信される。なお、所定距離L0を表すデータは、メモリ127に格納されている。
【0026】
ここで、無線通信部110A及び110Bの間における周波数f1のパケット信号の波数と、無線通信部110A及び110Bの間における周波数f2のパケット信号の波数とをn、周波数f1のパケット信号を無線通信部110Bが受信したときの位相をP1、第2周波数のパケット信号を無線通信部110Bが受信したときの位相をP2、周波数f1のパケット信号の波長をλ1、周波数f2のパケット信号の波長をλ2とすると、距離算出部122は、次式(1A)~(1E)に従って無線通信部110A及び110Bの間の距離Lを求めることができる。
【0027】
具体的には、周波数f1のパケット信号についての波数n、位相P1、波長λ1を用いると、距離Lは次式(1)で表すことができる。
【0028】
【数1】
【0029】
同様に、周波数f2のパケット信号についての波数n、位相P2、波長λ2を用いると、距離Lは次式(2)で表すことができる。
【0030】
【数2】
【0031】
式(1)より次式(3)が得られる。
【0032】
【数3】
【0033】
同様に式(2)より次式(4)が得られる。
【0034】
【数4】
【0035】
式(3)、(4)から波数nを消去し、次に示すように変形して行くと、距離Lは次式(5)で表すことができる。ただし、cは光速(3×10m/sec)である。
【0036】
【数5】
【0037】
同期制御部123は、距離算出部122によって算出される距離Lと、所定距離L0との差(L-L0)から、無線通信部110A及び110Bのクロックが同期するように補正する。無線通信部110A及び110Bのクロックがずれていると、位相P1、P2が大きくなるため、式(5)で求まる距離Lと既知の距離である所定距離L0との差(L-L0)が大きくなる。同期制御部123は、距離の差(L-L0)に基づいて、無線通信部110A及び110Bのクロックが同期するように、無線通信部110A及び110Bのうちの少なくとも一方のクロックの位相を補正すればよい。同期制御部123は、クロックの位相を1ns(ナノ秒)レベルの精度で補正することができる。例えば、360度を1MHzで10ビットの分解能で解析すれば、位相を1nsのレベルで解析可能であり、1nsレベルの精度で補正することができる。
【0038】
また、例えば、距離の差(L-L0)と、無線通信部110A及び110Bのクロックの位相の補正量との関係を予め測定してテーブル形式のデータを作成してメモリ127に格納しておき、距離の差(L-L0)に応じた位相の補正量を読み出して、無線通信部110A及び110Bのうちのいずれか一方のクロックの位相を補正すればよい。
【0039】
なお、ここでは、一例として、距離算出部122が無線通信部110Aに周波数f1及びf2のパケット信号を送信させて、無線通信部110Bが受信する場合について説明したが、これとは逆に、距離算出部122が無線通信部110Bに周波数f1及びf2のパケット信号を送信させて、無線通信部110Aが受信することにより、無線通信部110Bから送信したパケット信号に基づいて、無線通信部110A及び110Bのクロックの位相を補正することができる。このように、無線通信部110A及び110Bの間で双方向にパケット信号の送受信を行って同期処理を行うことにより、無線通信部110A及び110Bのクロックの位相が一致するように、位相の補正をより高精度に行うことができる。
【0040】
<第1測位方法>
距離差算出部124は、同期制御部123によるクロックの補正が行われた状態において、スマートフォン200から送信される周波数f1のパケット信号を無線通信部110Aが受信するときの位相α1と、スマートフォン200から送信される周波数f2のパケット信号を無線通信部110Aが受信するときの位相α2と、スマートフォン200から送信される周波数f1の信号を無線通信部110Bが受信するときの位相α3と、スマートフォン200から送信される周波数f2の信号を無線通信部110Bが受信するときの位相α4とに基づいて、スマートフォン200と無線通信部110Aとの距離L1と、スマートフォン200と無線通信部110Bとの距離L2との距離差を算出する。
【0041】
ここで、スマートフォン200から送信される周波数f1のパケット信号は、第1信号の一例であり、無線通信部110Aが受信するときの位相α1は、第1位相の一例である。スマートフォン200から送信される周波数f2のパケット信号は、第2信号の一例であり、無線通信部110Aが受信するときの位相α2は、第2位相の一例である。スマートフォン200から送信される周波数f1の信号を無線通信部110Bが受信するときの位相α3は、第3位相の一例である。スマートフォン200から送信される周波数f2の信号を無線通信部110Bが受信するときの位相α4は、第4位相の一例である。なお、第1測位方法では、各無線通信部110に接続される複数のアンテナ111のうちのいずれか1つを基準のアンテナ111として用いればよい。複数のアンテナ111は、後述する第2測位方法において用いるが、測位装置100が第2測位方法を行わない場合には、各無線通信部110はアンテナ111を1つ有していればよい。
【0042】
距離L1と距離L2との距離差の絶対値|L1-L2|を次式(6)のように表すことができる。
【0043】
【数6】
【0044】
距離差算出部124は、式(6)から波数nを消去することにより、絶対値|L1-L2|を次式(7)のように算出する。ただし、cは光速である。
【0045】
【数7】
【0046】
このように距離差算出部124が距離L1と距離L2との距離差(|L1-L2|)を求めると、測位部126は、距離差算出部124によって求められる距離差(|L1-L2|)に基づいて、無線通信部110A及び110Bに対するスマートフォン200の位置を求める。
【0047】
図3は、式(7)を満たす2本の双曲線を示す図である。図3には、2本の双曲線を破線で示す。無線通信部110A及び110Bに対するスマートフォン200の位置は、無線通信部110A及び110Bのアンテナ111の基準点を焦点とする2本の双曲線上のどこかにあることになる。測位部126は、スマートフォン200の位置を2本の双曲線上の位置に絞ることができ、スマートフォン200の大凡の位置を求めることができる。
【0048】
<第2測位方法>
第2測位方法では、距離差算出部124が第1測位方法によって式(7)で表される距離差(|L1-L2|)を求めた上で、方向導出部125がスマートフォン200から無線通信部110A及び110Bにパケット信号が到来する到来方向を求め、2本の双曲線と到来方向とに基づいて、無線通信部110A及び110Bに対するスマートフォン200の位置を求める。
【0049】
方向導出部125は、無線通信部110Aの複数のアンテナ111でパケット信号が受信される際の位相差に基づいて、スマートフォン200から無線通信部110Aに信号が到来する到来方向を求めるともに、無線通信部110Bの複数のアンテナでパケット信号が受信される際の位相差に基づいて、スマートフォン200から無線通信部110Bに信号が到来する到来方向を求める。
【0050】
より具体的には、方向導出部125は、無線通信部110Aの複数のアンテナ111で周波数f1のパケット信号が受信される際の位相差に基づいて、スマートフォン200から無線通信部110Aにパケット信号が到来する到来方向を求める。ここで、方向導出部125は、周波数f2のパケット信号が受信される際の位相差に基づいて到来方向を求めてもよいし、周波数f1及びf2の2つのパケット信号が受信される際の位相差に基づいて2つの到来方向を求めてもよいが、ここでは、一例として周波数f1のパケット信号が受信される際の位相差に基づいて到来方向を求める形態について説明する。スマートフォン200から無線通信部110Aにパケット信号が到来する到来方向は、第1到来方向の一例である。
【0051】
また、方向導出部125は、無線通信部110Bの複数のアンテナ111で周波数f1のパケット信号が受信される際の位相差に基づいて、スマートフォン200から無線通信部110Bにパケット信号が到来する到来方向を求める。ここで、方向導出部125は、周波数f2のパケット信号が受信される際の位相差に基づいて到来方向を求めてもよいし、周波数f1及びf2の2つのパケット信号が受信される際の位相差に基づいて2つの到来方向を求めてもよいが、ここでは、一例として周波数f1のパケット信号が受信される際の位相差に基づいて到来方向を求める形態について説明する。スマートフォン200から無線通信部110Bにパケット信号が到来する到来方向は、第2到来方向の一例である。
【0052】
このようにして方向導出部125が2つの到来方向を求めると、測位部126は、距離差算出部124によって求められる距離差と、方向導出部125によって求められる2つの到来方向とに基づいて、無線通信部110A及び110Bに対するスマートフォン200の位置を求める。
【0053】
図4は、式(7)を満たす2本の双曲線と、無線通信部110A及び110Bの受信可能領域とを示す図である。無線通信部110Aの受信可能領域110A1は、スマートフォン200が受信可能領域110A1内に存在する場合に、無線通信部110Aがスマートフォン200からパケット信号を受信可能な領域を表す。無線通信部110Bの受信可能領域110B1は、スマートフォン200が受信可能領域110B1内に存在する場合に、無線通信部110Bがスマートフォン200からパケット信号を受信可能な領域を表す。重複領域110AB1は、受信可能領域110A1と受信可能領域110B1との重複領域である。
【0054】
また、図4において、矢印Aは、方向導出部125が無線通信部110Aについて導出したパケット信号の到来方向を表す。矢印Bは、方向導出部125が無線通信部110Bについて導出したパケット信号の到来方向を表す。
【0055】
無線通信部110A及び110Bに対するスマートフォン200の位置は、矢印Aによって表されるベクトルAと、矢印Bによって表されるベクトルBとの交点であって、いずれかの双曲線上に位置する交点として求まるが、実際には誤差等によって、このような交点が求まらない場合がある。そのような場合には、次のようにすればよい。ベクトルA又はBを延長して交点を求め、交点に最も近い双曲線上の点をスマートフォン200の位置として求めればよい。図4の場合には、ベクトルAを延長してベクトルA1を生成し、ベクトルA1とベクトルBの交点S11を最も近い双曲線上の点S2をスマートフォン200の位置にすればよい。このため、測位部126は、スマートフォン200の位置を交点S2の位置に特定することができる。
【0056】
<第3測位方法>
第3測位方法では、3つの無線通信部110A、110B、110Cを用いてスマートフォン200の位置を測位する。また、第3測位方法では、測位装置100は、第2測位方法のように方向導出部125で到来方向を導出することを行わない。このため、測位装置100が第2測位方法を実行せずに第3測位方法を実行する場合には、測位装置100は方向導出部125を含まなくてもよい。
【0057】
前提として、距離算出部122は、無線通信部110A及び110Bの間の距離Lを求めるとともに、無線通信部110A及び110Cの間の距離Lを求める。距離算出部122は、無線通信部110A及び110Bの間の距離Lについては、上述した同期処理と同様に求める。
【0058】
また、距離算出部122は、無線通信部110Aから送信される周波数f1のパケット信号を無線通信部110Cが受信したときの位相と、無線通信部110Aから送信される周波数f2のパケット信号を無線通信部110Cが受信したときの位相とに基づいて無線通信部110A及び110Cの間の距離Lを求める。所定距離L00は、既知の第2所定距離の一例であり、例えば、無線通信部110Aの複数のアンテナ111の基準点と、無線通信部110Cの複数のアンテナ111の基準点との間の距離である。無線通信部110A及び110Cの間の距離Lの求め方は、無線通信部110A及び110Bの間の距離Lの求め方と同様である。

【0059】
また、同期制御部123は、上述した同期処理と同様に無線通信部110A及び110Bのクロックが同期するように補正するとともに、距離算出部122によって算出される無線通信部110A及び110Cの間の距離Lと、所定距離L00との差から、無線通信部110A及び110Cのクロックが同期するように補正する。
【0060】
距離差算出部124は、無線通信部110A、110B、及び110Cのクロックの補正が行われた状態において、スマートフォン200から送信される周波数f1のパケット信号を無線通信部110Cが受信するときの位相α5と、スマートフォン200から送信される周波数f2のパケット信号を無線通信部110Cが受信するときの位相α6と、位相α1及びα2とに基づいて、スマートフォン200と無線通信部110Aとの距離と、スマートフォン200と無線通信部110Cとの距離との距離差を算出する。位相α5は第5位相の一例であり、位相α6は第6位相の一例である。
【0061】
測位部126は、距離差算出部124によって求められる、スマートフォン200と無線通信部110Aとの距離と、スマートフォン200と無線通信部110Bとの距離との距離差と、スマートフォン200と無線通信部110Aとの距離と、スマートフォン200と無線通信部110Cとの距離との距離差とに基づいて、無線通信部110A、110B、及び110Cに対するスマートフォン200の位置を求める。
【0062】
第3測位方法では、スマートフォン200と無線通信部110Aとの距離と、スマートフォン200と無線通信部110Bとの距離との距離差に基づいて図3に示すような2本の双曲線が求まり、スマートフォン200と無線通信部110Aとの距離と、スマートフォン200と無線通信部110Cとの距離との距離差に基づいて同様に2本の双曲線が求まる。すなわち、第3測位方法では、4本の双曲線が求まる。
【0063】
図5は、第3測位方法で求まる4本の双曲線を示す図である。図5には、図3と同様に、スマートフォン200と無線通信部110Aとの距離と、スマートフォン200と無線通信部110Bとの距離との距離差に基づいて求まる2本の双曲線を破線で示す。また、スマートフォン200と無線通信部110Aとの距離と、スマートフォン200と無線通信部110Cとの距離との距離差に基づいて求まる2本の双曲線を一点鎖線で示す。
【0064】
無線通信部110A及び110Bに対するスマートフォン200の位置は、破線で示す2本の双曲線と、一点鎖線で示す2本の双曲線との交点のうち、車両10の外側にある交点S3である。測位部126は、スマートフォン200の位置を交点S3の位置に特定することができる。スマートフォン200の位置を交点S3に特定できるのは、無線通信部110A及び110Bの組み合わせで得られる距離差に基づいて求まる2本の双曲線(破線)上に位置するという条件と、無線通信部110A及び110Cの組み合わせで得られる距離差に基づいて求まる2本の双曲線(一点鎖線)上に位置するという条件とを満たす点であるからである。
【0065】
<第3測位方法の変形例>
第3測位方法では、同期制御部123は、無線通信部110A及び110Bのクロックが同期するように補正するとともに、無線通信部110A及び110Cのクロックが同期するように補正する形態について説明した。このために、距離算出部122は、無線通信部110A及び110Bの間の距離Lを求めるとともに、無線通信部110A及び110Cの間の距離Lを求めた。
【0066】
しかしながら、第3測位方法の変形例では、同期制御部123は、無線通信部110A及び110Bのクロックが同期するように補正するとともに、無線通信部110B及び110Cのクロックが同期するように補正してもよい。このようにしても、無線通信部110A、110B、及び110Cのクロックが同期するように補正することができる。この場合には、距離算出部122は、無線通信部110A及び110Bの間の距離Lを求めるとともに、無線通信部110B及び110Cの間の距離Lを求めればよい。
【0067】
距離差算出部124は、無線通信部110A、110B、及び110Cのクロックの補正が行われた状態において、スマートフォン200から送信される周波数f1のパケット信号を無線通信部110Cが受信するときの位相α5と、スマートフォン200から送信される周波数f2のパケット信号を無線通信部110Cが受信するときの位相α6と、位相α3及びα4とに基づいて、スマートフォン200と無線通信部110Bとの距離と、スマートフォン200と無線通信部110Cとの距離との距離差を算出すればよい。
【0068】
測位部126は、無線通信部110A及び110Bの組み合わせで得られる距離差に基づいて求まる2本の双曲線上に位置するという条件と、無線通信部110B及び110Cの組み合わせで得られる距離差に基づいて求まる2本の双曲線上に位置するという条件とを満たす点を無線通信部110A、110B、及び110Cに対するスマートフォン200の位置として求めればよい。
【0069】
<第4測位方法>
第4測位方法では、同期制御部123によるクロックの補正が行われて無線通信部110A及び110Bのクロックが同期しているという条件の下で、時刻t1、t2と、距離L1及びL2の距離差の絶対値|L1-L2|を求める。時刻t1、t2、それぞれ、無線通信部110A及び110Bがパケット信号を受信した時刻であり、それぞれ第1時刻、第2時刻の一例である。距離差の絶対値|L1-L2|は、第1測位方法で説明したように距離差算出部124によって式(6)に従って算出される。
【0070】
第4測位方法では、主制御部121は、時刻t1、t2と、光速cとを用いて、スマートフォン200と無線通信部110Aとの間の距離と、スマートフォン200と無線通信部110Bとの間の距離との距離差ΔLを求める。距離差ΔLは、次式(8)のように表すことができる。なお、時刻t1、t2の差(t1-t2)は、第1時刻及び第2時刻の差の一例である。
【0071】
【数8】
【0072】
距離差算出部124が算出する距離差の絶対値|L1-L2|は、位相α1、α2を用いて算出されるのに対して、主制御部121が時刻t1、t2と光速cとを用いて算出する距離差ΔLは、時刻t1、t2及び光速cに基づいて算出されるため、距離差の絶対値|L1-L2|よりも精度が高く、距離差の絶対値|L1-L2|の評価基準として利用可能である。
【0073】
このため、主制御部121は、距離差ΔLを用いて距離差の絶対値|L1-L2|を評価する。評価には距離差L1-L2の精度(品質)を表す品質係数Qを用いる。品質係数Qは、距離差ΔLの絶対値|ΔL|を用いて次式(9)で表すことができる。
【0074】
【数9】
【0075】
主制御部121は、式(9)に従って時刻t1、t2の差と、距離差算出部124によって算出される距離差L1-L2とに基づいて、距離差L1-L2の品質を評価する。第4測位方法によれば、距離差算出部124が算出する距離差の絶対値|L1-L2|の品質を評価する品質係数Qを算出することができる。品質係数Qは、例えば、第1測位方法、第2測位方法、及び第3測位方法でスマートフォン200の位置を求める際に、距離差算出部124によって算出される距離差L1-L2を評価する際に利用可能である。
【0076】
以上のように、測位装置100では、同期制御部123は、距離算出部122によって算出される距離Lと、所定距離L0との差(L-L0)から、無線通信部110同士のクロックが同期するように、無線通信部110のクロックの位相を補正する。クロックの位相を1ns(ナノ秒)レベルの精度で補正することができる。
【0077】
したがって、無線通信部110同士のクロックの位相を高精度に補正可能な測位装置100を提供することができる。
【0078】
また、距離算出部122は、式(1)~(5)に従って無線通信部110同士の間の距離Lを確実かつ容易に求めることができ、同期制御部123は、距離算出部122によって算出される距離Lと、所定距離L0との差(L-L0)に基づいて無線通信部110のクロックの位相を補正するので、確実かつ容易にクロックの位相を1ns(ナノ秒)レベルの精度で補正することができる。
【0079】
また、第1案では、測位部126は、距離差算出部124によって求められる距離差(|L1-L2|)が表す2本の双曲線(無線通信部110A及び110Bについての双曲線)上の位置にスマートフォン200の位置を絞ることができ、スマートフォン200の大凡の位置を求めることができる。2本の双曲線は、無線通信部110A及び110Bを用いたTOAでの測位によって得られる。したがって、無線通信部110同士のクロックの位相を高精度に補正し、TOAによってスマートフォン200の大凡の位置を求めることができる測位装置100を提供することができる。
【0080】
また、第2案では、測位部126は、距離差算出部124によって求められる距離差が表す2本の双曲線(無線通信部110A及び110Bについての双曲線)と、方向導出部125が無線通信部110A及び110Bについて導出したパケット信号の到来方向との交点をスマートフォン200の位置として特定することができる。2本の双曲線は、無線通信部110A及び110Bを用いたTOAでの測位によって得られ、到来方向は、無線通信部110A及び110Bを用いたAOAによる角度検出によって得られる。したがって、無線通信部110同士のクロックの位相を高精度に補正し、TOAとAOAを組み合わせてスマートフォン200の位置を特定可能な測位装置100を提供することができる。
【0081】
また、第3案では、スマートフォン200と無線通信部110A及び110Bとの間の距離差に基づいて求まる2本の双曲線と、スマートフォン200と無線通信部110A及び110Cと間の距離差に基づいて求まる2本の双曲線との交点をスマートフォン200の位置として特定できる。4本の双曲線は、無線通信部110A及び110Bを用いたTOAでの測位と、無線通信部110A及び110Cを用いたTOAでの測位とによって得られる。したがって、無線通信部110同士のクロックの位相を高精度に補正し、TOAでの測位によってスマートフォン200の位置を特定可能な測位装置100を提供することができる。
【0082】
なお、スマートフォン200と無線通信部110A及び110Bとの間の距離差に基づいて求まる2本の双曲線と、スマートフォン200と無線通信部110B及び110Cと間の距離差に基づいて求まる2本の双曲線との交点をスマートフォン200の位置として特定することも可能である。
【0083】
以上、本開示の例示的な実施形態の測位装置、及び、クロック補正方法について説明したが、本開示は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0084】
なお、本国際出願は、2021年12月3日に出願した日本国特許出願2021-196786に基づく優先権を主張するものであり、その全内容は本国際出願にここでの参照により援用されるものとする。
【符号の説明】
【0085】
10 車両
100 測位装置
110、110A、110B、110C 無線通信部
120 ECU
122 距離算出部
123 同期制御部
124 距離差算出部
125 方向導出部
126 測位部
200 スマートフォン
図1
図2
図3
図4
図5