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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】床構造及び床構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/024 20060101AFI20250109BHJP
   E04F 15/18 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E04F15/024 606B
E04F15/18 Y
E04F15/024 606D
E04F15/18 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021198761
(22)【出願日】2021-12-07
(65)【公開番号】P2023084527
(43)【公開日】2023-06-19
【審査請求日】2024-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】安田 理恵
(72)【発明者】
【氏名】中原 潤平
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 勝人
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-196008(JP,A)
【文献】特開2010-001600(JP,A)
【文献】特開平07-004008(JP,A)
【文献】特開2001-271432(JP,A)
【文献】登録実用新案第3113642(JP,U)
【文献】特開2007-16437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00-15/22
H02G 3/22- 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下地板の下方に、スペーサ材を挟んで配置されるダウン床板と、前記ダウン床板の下面を支持する第一床支持材と、少なくとも前記ダウン床板よりも下方に配置される第一断熱材と、を有し、前記床下地板と前記ダウン床板との間に配線空間が形成されるとともに、前記床下地板に当該床下地板の上側の空間に配線を接続する配線接続口が形成される配線床部と、
前記床下地板と面一に配置される隣接床下地板の下方に配置され、当該隣接床下地板の下面を支持する第二床支持材と、少なくとも前記隣接床下地板よりも下方に配置される第二断熱材と、を、有する一般床部と、
を備えることを特徴とする床構造。
【請求項2】
前記第一床支持材は、床束に支持される大引の側面に固定される第一根太であり、
前記第二床支持材は、前記大引の上面に載置されて固定される第二根太であることを特徴とする請求項1に記載の床構造。
【請求項3】
請求項2に記載の床構造を施工する床構造の施工方法であって、
前記隣接床下地板と、前記第二根太と、少なくとも前記第二根太の間に配置される前記第二断熱材と、が一体となった一般床パネルを敷設して、前記一般床部を形成する工程と、
前記ダウン床板と、前記第一根太と、少なくとも前記第一根太の間に配置される前記第一断熱材と、が一体となった配線床パネルを敷設する工程と、
前記ダウン床板の上に、前記スペーサ材及び前記床下地板を設けて、前記配線床部を形成する工程と、
を備えることを特徴とする床構造の施工方法。
【請求項4】
前記第一床支持材は、梁の上面に固定される第一の床版であり、
前記第二床支持材は、前記梁の上面に固定される前記第一の床版よりも厚い第二の床版であることを特徴とする請求項1に記載の床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下に配線可能な床構造及び当該床構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、主にオフィスなどのOAフロアにおいて、2重床を採用し、床面よりも下方に配線スペースを設けたものが知られている(特許文献1参照)。例えば特許文献1は、根太を挟んで上側面材及び下側面材が形成されており、この上側面材と下側面材との間の空間が配線空間となっている。また、例えば床板とその下地となる床面や床束との間に間隔を形成可能なスペーサ部材を配置し、当該スペーサ部材によって、床板の下に形成された溝に配線を収納したものが知られている(特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-100538号公報
【文献】特開2007-16437号公報
【文献】特開2010-1600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、住宅の床面は床束の上に大引が架設され、当該大引の上に根太を架設して、根太の上に床板を配置する場合に、根太の間には断熱材が配置されて、外部との気密断熱性を保っている。しかし、配線経路を設けた位置には、断熱材を配置することができないので、断熱欠損が生じ、気密性や断熱性を保つことができない問題がある。また、例えばコンセントなどの接続部は床上に接続させる必要があるので、断熱欠損による気密性や断熱性に問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、床下に配線経路を有しつつ、断熱欠損が生じない床構造及び床構造の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の床構造は、床下地板の下方に、スペーサ材を挟んで配置されるダウン床板と、前記ダウン床板の下面を支持する第一床支持材と、少なくとも前記ダウン床板よりも下方に配置される第一断熱材と、を有し、前記床下地板と前記ダウン床板との間に配線空間が形成されるとともに、前記床下地板に当該床下地板の上側の空間に配線を接続する配線接続口が形成される配線床部と、前記床下地板と面一に配置される隣接床下地板の下方に配置され、当該隣接床下地板の下面を支持する第二床支持材と、少なくとも前記隣接床下地板よりも下方に配置される第二断熱材と、を、有する一般床部と、を備えることを特徴としている。
【0007】
本発明の床構造は、前記第一床支持材は、床束に支持される大引の側面に固定される第一根太であり、前記第二床支持材は、前記大引の上面に載置されて固定される第二根太であることを特徴としている。
【0008】
本発明の床構造の施工方法は、上記された床構造を施工する施工方法であって、前記隣接床下地板と、前記第二根太と、少なくとも前記第二根太の間に配置される前記第二断熱材と、が一体となった一般床パネルを敷設して、前記一般床部を形成する工程と、前記ダウン床板と、前記第一根太と、少なくとも前記第一根太の間に配置される前記第一断熱材と、が一体となった配線床パネルを敷設する工程と、前記ダウン床板の上に、前記スペーサ材及び前記床下地板を設けて、前記配線床部を形成する工程と、を備えることを特徴としている。
【0009】
本発明の床構造は、前記第一床支持材は、梁の上面に固定される第一の床版であり、前記第二床支持材は、前記梁の上面に固定される前記第一の床版よりも厚い第二の床版であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の床構造によると、配線床部と一般床部とが備わっており、配線床部が床下地板とダウン床板との間にスペーサ材が設けられて配線空間が形成されており、ダウン床板の下方に第一断熱材が形成されているので、配線ケーブルは第一断熱材よりも上であり、且つ、床下地板よりも下に配線されることとなるので、配線空間によって断熱欠損が生じることがない。また、配線接続口は床下地板のみを貫通して上側の空間に向かって開口して形成されることとなり、第一断熱材に欠損を生じさせることがなく、床上の空間の気密性及び断熱性を保ちつつ、床面に配線接続口を設けることができる。
【0011】
本発明の床構造によると、大引の上面に載置されて固定される第二根太が隣接床下地板の下面を支持しつつ、大引の側面に固定される第一根太がダウン床板の下面を支持するので大引の高さを変更することなく、ダウン床板を隣接床下地板よりも下げることができ、施工性よく配線空間を形成することができる。
【0012】
本発明の床構造の施工方法によると、隣接床下地板と、第二根太と、第二断熱材と、が一体となった一般床パネルを配置することで一般床部を形成し、ダウン床板と、第一根太と、第一断熱材と、が一体となった配線床パネルを敷設し、ダウン床板の上に、スペーサ材及び床下地板を設けて、配線床部を形成するので、床下地板、根太、断熱材を一つずつ施工する場合に比べて施工性を高めることができる。また、一般床部を一般床パネルで形成し、配線床部を配線床パネルで形成しているので、配線を通したい部分だけ一般床パネルに替えて配線床パネルを配置し、スペーサ材及び床下地板を設けて配線床部を形成し、他の部分は一般床部を形成すればよいので、少ない労力で床面の自由な位置に配線を接続するコンセントなどの配線接続口を形成することができる。
【0013】
本発明の床構造によると、第一の床版と、第一の床版よりも厚い第二の床版との厚さの差によって配線空間が形成されることとなるので、施工性を低下させることなく、断熱欠損の無い床下の配線空間を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第一実施形態の床構造を示す大引に対して直角な断面図。
図2】第一実施形態の床構造を示す大引に対して平行な断面図。
図3】説明をわかりやすくするために第一断熱材及び第二断熱材の記載を省略した第一実施形態の床構造を示す大引に対して直角な断面図。
図4】説明をわかりやすくするために第一断熱材及び第二断熱材の記載を省略した第一実施形態の床構造を示す大引に対して平行な断面図。
図5】(A)は図4のA部分拡大図、(B)は図5のB部分拡大図。
図6】第一実施形態の床構造の施工方法を示す図であり、配線床パネル及び一般床パネルを大引に取り付ける状態を説明する図。
図7】スペーサ材及び床下地板をダウン床板の上に固定する状態を説明する図。
図8】第二実施形態の床構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の第一実施形態に係る床構造1a及び床構造の施工方法について、図1から図7を参照しつつ説明する。本実施形態の床構造1aは、例えば戸建住宅の1階に形成される床構造1aであり、比較的大きな居住空間の床面を形成する床構造1aである。なお、本実施形態の床構造1aが用いられる建築物は、戸建住宅に限られるものではなく、集合住宅や様々な非居住性の施設であってもよい。また、本実施形態の床構造1aは1階に設けられるものに限定されるものではないが、床構造1aは、その上側の空間が屋内空間であり、下側が屋外となっており、断熱性及び気密性が求められる構造である。
【0016】
本実施形態の床構造1aは、図1図2、及び図5に示すように、基礎又は土間コンクリート11上に立設される床束12と、床束12の上に架設される大引13と、当該大引13に支持されて床下地板14の下に配線空間Sが形成される配線床部2と、配線空間Sが形成されない一般床部3と、を備える。床束12は、例えば鋼製で、ターンバックルを回転させて高さ調整可能に形成されている。床束12は、下端プレートが基礎又は土間コンクリート11にコンクリート用のビスを打ち込んで固定されており、上端に形成された大引受けプレートが鋼製の大引13にビス固定されて立設されている。また、大引13は、鋼製の四角筒状であり、図示しないが、剛性を高めるために、側面に蛇行するリブがプレス加工されている。床束12は基礎又は土間コンクリート11上に複数立設されており、大引13は複数の床束12に架設されて水平に固定されている。大引13は、複数本が間隔をあけて平行に架設されている。
【0017】
配線床部2は、図1図2、及び図5に示すように、端部が大引13の側面に固定されて大引13の間に架設される第一根太40と、第一根太40に下面が支持されるダウン床板41と、ダウン床板41の下面に沿って配置される第一断熱材42と、ダウン床板41の上面に固定されるスペーサ材15と、スペーサ材15の上に固定される床下地板14と、を有して形成されている。
【0018】
第一根太40は、角材で形成される根太である。両側の大引13の側面にそれぞれ対向するように上向きに開いた溝形の根太受金物43が固定されており、第一根太40の端部が当該根太受金物43に挿入されて図示しないビスで固定されることにより、第一根太40は大引13の間に架設される。なお、本発明における「第一床支持材」は、本実施形態においては第一根太40がこれに相当する。
【0019】
ダウン床板41は、第一根太40の上面に固定される合板である。ダウン床板41は例えば正方形又は長方形に形成されており、第一根太40はダウン床板41の両側縁に沿って当該ダウン床板41の下面に固定されている。第一根太40の長さは互いに隣接する大引13の間の距離に等しい。ダウン床板41は第一根太40の両端から大引13の長さの半分程度突出して形成されており、第一根太40を大引13の間に架設した状態でダウン床板41は大引13の上にまで延びて配置されている。
【0020】
第一断熱材42は、図1及び図2に示すように、矩形の板状に形成されており、ダウン床板41の両側縁の下面に固定される2つの第一根太40の間に収納される。第一断熱材42は、上面がダウン床板41の下面に当接し、下面が第一根太40の下面よりも低い位置まで形成されている。第一断熱材42は、例えば、無機繊維系断熱材、発砲プラスチックフォーム断熱材、その他の公知の様々な断熱材を用いることができる。
【0021】
ダウン床板41、第一根太40、及び第一断熱材42は、図6に示すように、一体の配線床パネル4として形成され施工されており、施工工程を簡略化している。
【0022】
ダウン床板41の上面に固定されるスペーサ材15は、図5に示すように、断面形状が高さ方向よりも幅方向に長い角材によって形成されており、ダウン床板41の両側縁の上面に固定される。床下地板14はスペーサ材15の上面に固定される板材であり、ダウン床板41の上側に当該ダウン床板41からスペーサ材15の高さ分の距離を開けて配置されている。床下地板14は合板製であり、ダウン床板41の2本のスペーサ材15の間に架設される。ダウン床板41と床下地板14との間には、配線ケーブル16を収納可能な配線空間Sが形成されている。
【0023】
配線ケーブル16は、例えば電気ケーブルである。配線ケーブル16は、これに限定されるものではなく、アンテナ線、LANケーブル、電話線、ガス線等の様々な配線ケーブル16を収納することができる。そして床下地板14の上には所望の床化粧材17を貼り付けられる。床下地板14及び床化粧材17には、配線を上側の空間に接続する位置に、配線接続口18が形成される。配線接続口18は、例えば、床下地板14及び床化粧材17に設けられた円形孔に挿入されて固定される蓋つきの円筒形状の部材で形成されており、内部に収納されるコンセント7に床上の空間からプラグを抜き差し可能に構成されている。
【0024】
配線床部2は部屋の中央の床から外壁又は間仕切壁19にまで延びており、配線ケーブル16は外壁又は間仕切壁19の内部に引き込まれて電源に接続している。
【0025】
一般床部3は、図3及び図4に示すように、大引13の上面に載置されて固定される第二根太50と、第二根太50に下面が支持される隣接床下地板51と、隣接床下地板51の下面に沿って配置される第二断熱材52と、を有する。第二根太50は、角材で形成される根太である。隣接する2本の大引13の上面に、第二根太50の端部の下面が当接して図示しないビスで大引13に固定されることにより、第二根太50は大引13に架設される。なお、本発明における「第二床支持材」は、本実施形態においては第二根太50がこれに相当する。
【0026】
隣接床下地板51は、第二根太50の上面に固定される合板である。隣接床下地板51は、例えば正方形又は長方形に形成されており、隣接床下地板51の下面に、例えば3本の第二根太50が互いに平行に固定されている。第二根太50の長さは互いに隣接する大引13の間の距離よりも大引13の幅程度長く形成されており、両端がそれぞれ大引13の上に半分程度重なる。隣接床下地板51は、第二根太50とほぼ等しい長さであり、第二根太50は一端が隣接床下地板51の端縁から僅かに突出し、他端が隣接床下地板51の端縁よりも僅かに内側に配置さてれ、隣接床下地板51と僅かにずれるように固定されており、隣接床下地板51を敷設したときにずれた部分が繋ぎ目となって第二根太50及び隣接床下地板51が一体となって床下地の面を形成する。
【0027】
第二断熱材52は、図1及び図2に示すように、矩形の板状に形成されており、隣接床下地板51の下面に沿って第二根太50の間、及び最も外側の第二根太50と隣接床下地板51の端縁との間に形成されている。第二断熱材52は、上面が上面が隣接床下地板51の下面に当接し、下面が第一根太40の下面よりも低い位置まで形成されている。第一断熱材42は、例えば、無機繊維系断熱材、発砲プラスチックフォーム断熱材、その他の公知の様々な断熱材を用いることができる。
【0028】
隣接床下地板51、第二根太50、及び第二断熱材52は、図6に示すように、一体の一般床パネル5として形成され施工されており、床構造1aの施工を簡略化している。
【0029】
以上のように形成される床構造の施工方法は、図6に示すように、基礎又は土間コンクリート11の所定位置に床束12を立設し、当該床束12の上に大引13を互いに平行に等間隔で架設する。そして、第一根太40を固定する位置の大引13の側面に根太受金物43を固定し、当該根太受金物43に第一根太40の端部が挿入されるように、配線床パネル4を配置してビスで固定する。また、大引13の上に第二根太50の端部が載置されるように一般床パネル5を敷設して、ビスで固定する。第一根太40は大引13の側面に架設され、第二根太50は大引13の上面に載置して架設されているので、図7に示すように、第一根太40が第二根太50よりも低い位置に配置されることとなり、配線床パネル4のダウン床板41が一般床パネル5の隣接床下地板51よりも低い位置に配置され、ダウン床板41を底面とする溝状の配線空間Sが形成される。そして、図7に示すように、配線空間Sに例えば電気ケーブル等の配線ケーブル16を収納し、ダウン床板41の上にスペーサ材15を固定し、当該スペーサ材15の上に床下地板14を設けて、配線空間Sを閉じる。床下地板14と、一般床パネル5の隣接床下地板51とは、面一に配置され、当該床下地板14及び隣接床下地板51の上に床化粧材17を貼り付けて、床構造の施工方法を完了する。
【0030】
このように本実施形態の床構造1aによると、配線床部2の床下地板14とダウン床板41との間に形成される配線空間Sに配線ケーブル16が配線され、配線接続口18によって床上に接続するとともに、ダウン床板41の下面に沿って第一断熱材42が形成されるので、配線ケーブル16を床上に接続させるためのルートが断熱材よりも上に配置されることとなり、断熱材の欠損を抑制することができる。そして、ダウン床板41を支持する第一根太40は大引13の側面に架設され、隣接床下地板51を支持する第二根太50は大引13の上面に架設されることで、ダウン床板41を隣接床下地板51よりも低くする構成であるので、大引13の高さを変更することなく、施工性よく配線空間Sを形成することができる。
【0031】
さらに、本実施形態の床構造1aの施工方法によると、隣接床下地板51と、第二根太50と、第二断熱材52と、が一体となった一般床パネル5を配置することで一般床部3を形成し、ダウン床板41と、第一根太40と、第一断熱材42と、が一体となった配線床パネル4を敷設し、ダウン床板41の上に、スペーサ材15及び床下地板14を設けて、配線床部2を形成するので、現場での施工性を高めることができ、少ない労力で床面の自由な位置に配線ケーブル16を接続するコンセント7などの配線接続口18を形成することができる。
【0032】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態に係る床構造1bについて、図8を参照しつつ説明する。なお、第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態の床構造1bは、例えば戸建住宅の1階よりも上の階である上階に形成される床構造1bであり、1階よりも屋外側に突出して形成される突出部の屋内の居住空間の床面を形成する床構造1bである。突出部は、その下側の空間が屋外空間となる構造であれば、例えば、オーバーハングであってもよく、又は突出部の下に独立柱が設けられる構造であってもよい。なお、本実施形態の床構造1bが用いられる建築物は、戸建住宅に限られるものではなく、集合住宅や様々な非居住性の施設であってもよい。
【0033】
本実施形態の床構造1bは、建築物の構造躯体である梁6に支持されて配線空間Sが形成される配線床部2と、配線空間Sが形成されない一般床部3と、を備える。梁6はフランジを上下に配置したH形鋼である。配線床部2は、梁6の上側のフランジに端部が固定される第一の床版20と、第一の床版20の上に固定されるダウン床板21と、ダウン床板21の上面に固定されるスペーサ材15と、スペーサ材15の上面に固定される床下地板14と、第一の床版20の下面に沿って固定されている第一断熱材22と、を有する。
【0034】
第一の床版20は例えば押出セメント成型板であり、厚さ60mmに形成されている。なお、第一の床版20の材質や厚さはこれに限定されるものではないが、後述する第二の床版30よりも厚さが薄く形成される。第一の床版20は両端がそれぞれ梁6の上側フランジに固定されて、隣接する梁6の間に架設されている。本発明における「第一床支持材」は本実施形態においては第一の床版20がこれに相当する。
【0035】
ダウン床板21は第一の床版20の上に防湿シートを挟んで敷設されるパーティクルボードである。ダウン床板21は第一の床版20の上面全体にわたって敷設されている。ダウン床板21の上面に固定されるスペーサ材15は、断面形状が高さ方向よりも幅方向に長い角材によって形成されており、複数本が平行に配置されている。床下地板14はスペーサ材15の上面に固定される板材であり、ダウン床板21の上側に当該ダウン床板21からスペーサ材15の高さ分の距離を開けて配置されている。床下地板14は合板製であり、複数のスペーサ材15の間に架設され、ダウン床板21と床下地板14との間に、配線ケーブル16を収納可能な配線空間Sが形成されている。第一断熱材22は、第一の床版20の下に固定される断熱材である。第一断熱材22は、例えば、無機繊維系断熱材、発砲プラスチックフォーム断熱材、その他の公知の様々な断熱材を用いることができる。
【0036】
配線ケーブル16は、例えば電気ケーブルである。配線ケーブル16は、第一実施形態と同様に、例えばアンテナ線、LANケーブル、電話線、ガス線等の様々な配線であってもよい。床下地板14の上には所望の床化粧材17を貼り付けられる。床下地板14及び床化粧材17には、配線を上側の空間に接続する位置に、配線接続口18が形成される。配線接続口18は、例えば、床下地板14及び床化粧材17に設けられた円形孔に挿入されて固定される蓋つきの円筒形状の部材で形成されており、内部に収納されるコンセント7に床上の空間からプラグを抜き差し可能に構成されている。配線床部2は部屋の中央の床から外壁又は間仕切壁19にまで延びており、配線ケーブル16は外壁又は間仕切壁19の内部に引き込まれて電源に接続している。
【0037】
一般床部3は、梁6の上側のフランジに端部が固定される第二の床版30と、第二の床版30の上に固定される隣接床下地板51と、第二の床版30の下面に沿って固定されている第二断熱材32と、を有する。
【0038】
第二の床版30は例えばALC製であり、厚100mmに形成されている。なお、第二の床版30の材質や厚さはこれに限定されるものではないが、第一の床版20よりも厚さが厚く形成される。第二の床版30は両端がそれぞれ梁6の上側フランジに固定されて、隣接する梁6の間に架設されている。本発明における「第二床支持材」は本実施形態においては第二の床版30がこれに相当する。
【0039】
隣接床下地板31は第二の床版30の上に防湿シートを挟んで敷設されるパーティクルボードである。隣接床下地板31は第二の床版30の上面全体にわたって敷設されている。隣接床下地板31の上には床化粧材17が貼り付けられている。第二断熱材32は、第二の床版30の下に固定される断熱材である。第二断熱材32は、例えば、無機繊維系断熱材、発砲プラスチックフォーム断熱材、その他の公知の様々な断熱材を用いることができる。なお、第一断熱材22と第二断熱材32とは一体となった構成であってもよい。
【0040】
以上のように、本実施形態の床構造1bは、第一の床版20と、第一の床版20よりも厚い第二の床版30との厚さの差によって配線空間Sが形成されることとなるので、施工性を低下させることなく、断熱欠損の無い床下の配線空間Sを形成することができる。
【0041】
なお、建築物によっては、1階の床構造として、第一実施形態の床構造1aが用いられ、建築物の2階以上の上階形成される突出部の床構造として、第二実施形態の床構造1bの構造が用いられていてもよい。
【0042】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る床構造1a,1b及び床構造の施工方法は、例えば大空間の部屋が設けられる住宅の床構造1a,1b及び当該床構造の施工方法として好適である。
【符号の説明】
【0044】
1a 床構造(第一実施形態)
1b 床構造(第二実施形態)
2 配線床部
3 一般床部
4 配線床パネル
5 一般床パネル
14 床下地板
15 スペーサ材
20 第一の床版(第二実施形態の第一床支持材)
21 ダウン床板(第二実施形態)
22 第一断熱材(第二実施形態)
30 第二の床版(第二実施形態の第二床支持材)
31 隣接床下地板(第二実施形態)
32 第二断熱材(第二実施形態)
40 第一根太(第一実施形態の第一床支持材)
41 ダウン床板(第一実施形態)
42 第一断熱材(第一実施形態)
50 第二根太(第一実施形態の第二床支持材)
51 隣接床下地板(第一実施形態)
52 第二断熱材(第一実施形態)
S 配線空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8