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特許7615483末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマー
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/54 20060101AFI20250109BHJP
   C07C 67/14 20060101ALI20250109BHJP
   C08G 65/38 20060101ALI20250109BHJP
   C08G 65/48 20060101ALI20250109BHJP
   C08F 20/18 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C07C69/54 B CSP
C07C67/14
C08G65/38
C08G65/48
C08F20/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020165549
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057344
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】321011907
【氏名又は名称】エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152928
【弁理士】
【氏名又は名称】草部 光司
(72)【発明者】
【氏名】山田暁彦
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/116565(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/063936(WO,A1)
【文献】特公昭47-037164(JP,B2)
【文献】特開2007-231083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/54
C08G 65/00
C08F 20/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(2)で表される、末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマー。
【化1】

(一般式(2)において、Aは水素原子、アクリル基又はメタクリル基のいずれかを表し、Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。ナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。)
【請求項2】
下記一般式(3)で表される、末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマー。
【化2】
(一般式(3)において、Rは水素原子又はメチル基であり、ナフタレン環は水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。)
【請求項3】
下記一般式(8)で表される1,4-ジヒドロキシナフタレン化合物の縮合反応によって下記一般式(9)で表されるナフタレンエーテルオリゴマーとし、下記一般式(6)で表される化合物を反応させることを特徴とする下記一般式(2)で表される、末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーの製造法。
【化3】

(一般式(8)においてナフタレン環は水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【化4】
(一般式(9)においてナフタレン環は水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。)
【化5】
(一般式(6)において、Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
【化6】
(一般式(2)において、Aは水素原子、アクリル基又はメタクリル基のいずれかを表し、Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。ナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。)
【請求項4】
下記一般式(4)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物に一般式(6)で表される化合物を反応させて一般式(10)で表されるモノメタクリレート化合物とし、さらに一般式(4)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物と共縮合させることを特徴とする下記一般式(1)で表される、末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーの製造法。
【化7】
(一般式(4)においてナフタレン環は水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【化8】
(一般式(6)において、Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
【化9】
(一般式(10)において、Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。ナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。)
【化10】
(一般式(1)において、Aは水素原子、アクリル基又はメタクリル基のいずれかを表し、Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。ナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。)
【請求項5】
下記一般式(8)で表される1,4-ジヒドロキシナフタレン化合物を一般式(6)で表される化合物を反応させて一般式(11)で表されるモノメタクリレート化合物とし、さらに一般式(8)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物と共縮合させることを特徴とする下記一般式(2)で表される、末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーの製造法。
【化11】

(一般式(8)においてナフタレン環は水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【化12】

(一般式(6)において、Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
【化13】
(一般式(11)において、Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。ナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。)
【化14】

(一般式(2)において、Aは水素原子、アクリル基又はメタクリル基のいずれかを表し、Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。ナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。)
【請求項6】
成分として請求項1又は2に記載されたナフタレンエーテルオリゴマーを含有することを特徴とする重合性組成物。
【請求項7】
成分として請求項1又は2に記載されたナフタレンエーテルオリゴマーと請求項1又は2に記載されたナフタレンエーテルオリゴマー以外の重合性二重結合基を有する化合物を含有することを特徴とする、重合性組成物
【請求項8】
請求項6又は7に記載の重合性組成物を、加熱又は光照射により重合させることを特徴とする、重合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマー及びその製造法、並びに末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーを含有する重合性組成物、その重合方法及びその重合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化が進むにつれ、電子素子の高集積化を行うために、プリント配線の多層化が進み、絶縁層と導体層を交互に形成、積層するいわゆるビルドアップ工法が多く採用されるようになっている。そのため、ここに使用される絶縁樹脂材料には、高集積された部品の放熱に耐える耐熱性を要求されている。
【0003】
また、近く到来するであろう5G(第5世代移動通信システム)社会においては4K/8Kの超高解像度動画や大量のデータを、瞬時に遅延なく伝送し、自動運転やVR/AR技術と融合させる5G通信インフラサービスがもたらされると予想される。5Gは、既存のLTEサービスと比較して10倍以上の10Gbpsを超える高速・大容量通信スペックを持った桁違いの無線技術であり、これを支える基板材料としては耐熱性など種々の特性が求められている。現在、5G向けのワイヤレス機器の主要な基板材料には、既存のガラスエポキシ樹脂やポリイミド樹脂ベースが用いられているが、より低誘電率特性に優れ、より高耐熱性で吸水性も低い材料が必要である。更に、ポリマーフィルムを用いた銅張積層板などフレキシブルでかつ、耐熱性を有する高分子膜や高分子材料が求められている。いずれにおいても、高分子材料の耐熱性は重要な因子となっている。
【0004】
一方、ポリメチルメタクリレートをはじめとする(メタ)アクリル樹脂は、その透明性から光学材料、電子材料など多岐の用途に用いられている。しかし、その耐熱性の低さから熱履歴を受ける部位や耐熱性を要求される用途においては使用できないという問題があった。そのため、耐熱性を有するアクリレートの重合物やアクリレートと種々のモノマーの共重合物なども検討されている。
【0005】
樹脂材料に耐熱性を付与するために樹脂を構成する高分子鎖に多環芳香族分子を挿入する方法が知られている。例えば、多環芳香族分子としてフルオレン骨格を導入した樹脂が種々検討されている。例えば、フルオレンビスフェノールとエピクロヒドリンとから誘導されるエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とから誘導されるフルオレンエポキシ(メタ)アクリレートが知られている(特許文献1 特開2001-166469)。該文献により、耐熱性を発現させるためにフルオレン骨格を導入したウレタン樹脂が開示されている。
【0006】
また、側鎖にナフタレン環を持つ高分子化合物も知られている(特許文献2 特開平9-255726)。アクリロイルジメチルナフタレン化合物から得られる重合体であって、側鎖にナフタレン核を含む耐熱性ポリマーである。このアクリロイルジメチルナフタレン化合物はジメチルナフタレンをハロプロピオニルハライドとフリーデル-クラフツ反応させ、そののち、脱ハロゲン化水素反応させて合成されている。
【0007】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体に、多環芳香族基を分子内に有するアルコールを反応させることにより得られた多環芳香族含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体も開示されている(特許文献3 特開2006-312709)。多環芳香族基としては、アントラセン環、ナフタレン環、フルオレン環が開示されており、多環芳香族基を分子内に有するアルコーとしては、9-フルオレンメタノール、9-フルオレンエタノール、1-ナフタレンメタノール、1-ナフタレンエタノール、9-アントラセンメタノールが開示されている。いずれも多環芳香族基は高分子鎖の側鎖にあり、ペンダントしているといえる。
【0008】
更に、本出願人らは、ナフトヒドロキノンのジアクリレート化合物として1,2,4-トリ(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物をすでに開示している(特許文献4 特開2010-138331)。また、4,4’-ジアルコキシ-2,2’-ビナフタレン-1,1’-ジ(メタ)アクリレート化合物も開示している(特許文献5 特開2011-256119)。これらの化合物を重合させることにより、ナフタレン骨格を主鎖に含む重合体が得られることを開示している。さらにまた、ナフトヒドロキノンのジアクリレート化合物としては、2,3-(ビス)アリールチオ-1,4-ナフタレンジオールジ(メタ)アクリレートも開示されている(特許文献6 特開2007-131780)。
【0009】
一方、芳香族ポリエーテルも種々知られている。例えばポリフェニレンエーテル系樹脂である(例えば、特許文献7 特開昭55-145752)。ベンゼン環がエーテル結合でつながっている重合体である。また、ナフタレンジカルボン酸エステルと、エチレングリコールをエステル交換して得られるポリエチレンナフタレートも開示されている(特許文献8 特開2014-133818)。1- ナフトールとビスクロロメチルナフタレンの重縮合反応により得られるナフトール樹脂も知られている(例えば、特許文献9 特開2015-189926)。これらの化合物の重合体は高屈折率を有するが、耐熱性という観点では十分ではなかった。
【0010】
そしてまた、末端にヒドロキシル基を有する芳香族ポリエーテルが開示されている(特許文献10 特開2009-93919)。この芳香族ポリエーテルとしては、芳香族部分として、1,4-フェニレン、1,3-フェニレン、1,2-フェニレン、2-フェニル-1,4-フェニレン、2-フェノキシ-1,4-フェニレン、1,4-ナフチレン、2,3-ナフチレン、1,5-ナフチレン、2,6-ナフチレン、2,7-ナフチレン、ビフェニル-4,4’-ジイル、ビフェニル-3,3’-ジイル、ビフェニル-3,4’-ジイル、3,3’-ジフェニルビフェニル-4,4’-ジイル、3,3’-ジフェノキシビフェニル-4,4’-ジイル、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイル、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイル、ジフェニルスルホン-4,4’-ジイル、ベンゾフェノン-4,4’-ジイルが列記されている。当該発明の目的は、末端にビニル基を有し、分子内にイオン交換基を有する芳香族ポリエーテルを合成し、多孔性基材の細孔内にイオン交換性でなおかつ架橋した電解質樹脂を合成することであるが、特に、どの芳香族化合物が良いかとの記載はなく、耐熱性についての記載もなく、実施例において記載されているのは、4,4’-ビフェノールの縮合物のみである。末端にアクリル基を有する化合物の開示もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2001-166469号公報
【文献】特開平9-255726号公報
【文献】特開2006-312709号公報
【文献】特開2010-138331号公報
【文献】特開2011-256119号公報
【文献】特開2007-131780号公報
【文献】特開昭55-145752号公報
【文献】特開2014-133818号公報
【文献】特開2015-189926号公報
【文献】特開2009-93919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ナフタレンを骨格中に含むポリマーは、耐熱性を有するとともにナフタレン環のもつ機械的、光学的なさまざまな物理特性を有する。しかしながら、ナフタレンを骨格中に含むポリマーは、難溶性、難成型性であるため、樹脂のハンドリングが難しい。一方、アクリル樹脂は透明性など種々の優れた特性を有するが、耐熱性に問題がある。そこで、本発明の課題は、高い耐熱性を有しているとともに、透明性に優れ、かつ樹脂のハンドリングが容易なアクリル樹脂を提供することにある。そして、高密度化・高集積化の半導体素子や集積回路や通信機器の基板や膜に使用できるポリマー及びそのモノマーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、ナフタレン化合物の構造と物性に関してさらに鋭意検討した結果、本発明に示す末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーが、複数の連続したナフタレンエーテル構造を持つことにより、高い耐熱性を持つことを見出し、且つ入手容易な原料を使用した実用的な製造法を見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明の第1の要旨は、下記一般式(1)で表される、末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーに存する。
【0015】
【化1】
【0016】
一般式(1)において、Aは水素原子、アクリル基又はメタクリル基のいずれかを表し、Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。ナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。
【0017】
本発明の第2の要旨は、下記一般式(2)で表される、末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーに存する。
【0018】
【化2】
【0019】
一般式(2)において、Aは水素原子、アクリル基又はメタクリル基のいずれかを表し、Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。ナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。)
【0020】
本発明の第3の要旨は、下記一般式(3)で表される、末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーに存する。
【0021】
【化3】
【0022】
一般式(3)において、Rは水素原子又はメチル基であり、ナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。)
【0023】
本発明の第4の要旨は、下記一般式(4)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物の縮合反応によって下記一般式(5)で表されるナフタレンエーテルオリゴマーとし、下記一般式(6)で表される化合物を反応させることを特徴とする下記一般式(1)で表される、末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーの製造法に存する。
【0024】
【化4】
【0025】
一般式(4)においてナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0026】
【化5】
【0027】
一般式(5)においてナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。
【0028】
【化6】
【0029】
一般式(6)において、Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0030】
【化7】
【0031】
一般式(1)において、Aは水素原子、アクリル基又はメタクリル基のいずれかを表し、Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。ナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。
【0032】
本発明の第5の要旨は、下記一般式(8)で表される1,4-ジヒドロキシナフタレン化合物の縮合反応によって下記一般式(9)で表されるナフタレンエーテルオリゴマーとし、下記一般式(6)で表される化合物を反応させることを特徴とする下記一般式(2)で表される、末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーの製造法に存する。
【0033】
【化8】
【0034】
一般式(8)においてナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0035】
【化9】
【0036】
一般式(9)においてナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。
【0037】
【化10】
【0038】
一般式(6)において、Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0039】
【化11】
【0040】
一般式(2)において、Aは水素原子、アクリル基又はメタクリル基のいずれかを表し、Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。ナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。
【0041】
本発明の第6の要旨は、下記一般式(4)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物に一般式(6)で表される化合物を反応させて一般式(10)で表されるモノメタクリレート化合物とし、さらに一般式(4)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物と共縮合させることを特徴とする下記一般式(1)で表される、末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーの製造法に存する。
【0042】
【化12】
【0043】
一般式(4)においてナフタレン環は水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0044】
【化13】
【0045】
一般式(6)において、Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0046】
【化14】
【0047】
一般式(10)において、Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。ナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。
【0048】
【化15】
【0049】
一般式(1)において、Aは水素原子、アクリル基又はメタクリル基のいずれかを表し、Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。ナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。
【0050】
本発明の第7の要旨は、下記一般式(8)で表される1,4-ジヒドロキシナフタレン化合物を一般式(6)で表される化合物を反応させて一般式(11)で表されるモノメタクリレート化合物とし、さらに一般式(8)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物と共縮合させることを特徴とする下記一般式(2)で表される、末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーの製造法に存する。
【0051】
【化16】
【0052】
一般式(8)においてナフタレン環は水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0053】
【化17】
【0054】
一般式(6)において、Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0055】
【化18】
【0056】
一般式(11)において、Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。ナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。
【0057】
【化19】
【0058】
一般式(2)において、Aは水素原子、アクリル基又はメタクリル基のいずれかを表し、Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。ナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。
【0059】
本発明の第8の要旨は、成分として第1の要旨乃至第3の要旨の何れか一つに記載されたナフタレンエーテルオリゴマーを含有することを特徴とする、重合性組成物に存する。
【0060】
本発明の第9の要旨は、成分として第1の要旨乃至第3の要旨の何れか一つに記載されたナフタレンエーテルオリゴマーと第1の要旨乃至第3の要旨の何れか一つに記載されたナフタレンエーテルオリゴマー以外の重合性二重結合基を有する化合物を含有することを特徴とする、重合性組成物に存する。
【0061】
本発明の第10の要旨は、第8又は第9の要旨に記載の重合性組成物を、加熱又は光照射により重合させることを特徴とする、重合方法に存する。
【0062】
本発明の第11の要旨は、第10の要旨に記載の重合性組成物の重合方法によって得られる重合物に存する。
【0063】
本発明の記載において、「(メタ)アクリル基」という記載は、「アクリル基」又は「メタクリル基」を表す。
【発明の効果】
【0064】
本発明の末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーは、複数の連続したナフタレンエーテル構造を持つことにより、高い耐熱性を持ち、また末端に(メタ)アクリル基を持つため容易に単独で重合または他の重合性二重結合を持つ化合物と共重合可能であることから、耐熱性高分子原料、特に5G材料向けの樹脂原料として有用である。また、原料は入手容易であり、製造工程も容易であるため、安価に製造できる。
【0065】
本発明の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明によって、より明白となる。
【発明を実施するための形態】
【0066】
(化合物)
本発明の末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーは、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0067】
【化20】
【0068】
一般式(1)において、Aは水素原子、アクリル基又はメタクリル基のいずれかを表し、Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。ナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。
【0069】
一般式(1)において、ナフタレン環の水素原子は、他の置換基で置換されていてもよい。置換基としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子が挙げられる。炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられ、該アルキル基は分岐していてもよい。炭素数5~15のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、炭素数1~10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基等が挙げられ、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、が挙げられ、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、i-プロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、i-ブチルアミノ基、t-ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基等が挙げられ、炭素数5~15のモノアリールアミノ基としては、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基等が挙げられ、炭素数1~10のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基等が挙げられ、炭素数5~15のジアリールアミノ基としては、ジフェニルアミノ基等が挙げられ、炭素数1~10のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、i-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、i-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2-エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基等が挙げられ、炭素数5~15のアリールチオ基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられ、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペントキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基等が挙げられ、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基等が挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0070】
本発明の一般式(1)で表される末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーの具体例としては、例えば、1,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、2,3-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、1,2-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、1,3-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、1,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、1,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、2,3-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、1,2-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、1,3-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、1,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、1,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、2,3-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、1,2-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、1,3-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、1,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、1,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、2,3-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、1,2-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、1,3-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、1,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート等が挙げられる。
【0071】
更に、ナフタレン骨格の水素原子が置換されている化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、2-ヒドロキシ-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、2-ヒドロキシ-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、2-ヒドロキシ-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、2-メチル-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、2-メチル-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、2-メチル-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、2-メチル-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、2,3-ジクロロ-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、2,3-ジクロロ-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、2,3-ジクロロ-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、2,3-ジクロロ-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、2-カルボキシル-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、2-カルボキシル-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、2-カルボキシル-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、2-カルボキシル-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、2-フェノキシカルボニル-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、2-フェノキシカルボニル-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、2-フェノキシカルボニル-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、2-フェノキシカルボニル-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート等が挙げられる。
【0072】
そして更に、例えば、2-ヒドロキシ-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、2-ヒドロキシ-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、2-ヒドロキシ-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、2-ヒドロキシ-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、2-メチル-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、2-メチル-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、2-メチル-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、2-メチル-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、2,3-ジクロロ-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、2,3-ジクロロ-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、2,3-ジクロロ-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、2,3-ジクロロ-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、2-カルボキシル-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、2-カルボキシル-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、2-カルボキシル-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、2-カルボキシル-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、2-フェノキシカルボニル-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、2-フェノキシカルボニル-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、2-フェノキシカルボニル-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、2-フェノキシカルボニル-1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート等が挙げられる。
【0073】
又、例えば、1-ヒドロキシ-2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、1-ヒドロキシ-2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、1-ヒドロキシ-2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、1-ヒドロキシ-2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、1-メチル-2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、1-メチル-2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、1-メチル-2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、1-メチル-2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、1-カルボキシル-2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、1-カルボキシル-2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、1-カルボキシル-2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、1-カルボキシル-2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、1-フェノキシカルボニル-2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、1-フェノキシカルボニル-2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、1-フェノキシカルボニル-2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、1-フェノキシカルボニル-2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート等が挙げられる。
【0074】
又更に、例えば、1-ヒドロキシ-2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、1-ヒドロキシ-2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、1-ヒドロキシ-2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、1-ヒドロキシ-2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、1-メチル-2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、1-メチル-2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、1-メチル-2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、1-メチル-2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、1-カルボキシル-2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、1-カルボキシル-2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、1-カルボキシル-2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、1-カルボキシル-2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、1-フェノキシカルボニル-2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノアクリレート、1-フェノキシカルボニル-2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、1-フェノキシカルボニル-2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のモノメタクリレート、1-フェノキシカルボニル-2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート等が挙げられる。
【0075】
上記挙げた具体例の中でも、製造しやすさから、1,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、1,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート、が好ましく、1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジアクリレート、4-ジヒドロキシナフタレン縮合物のジメタクリレート(一般式(3)においてナフタレン環の水素原子が置換されていない化合物)が物性的にも原料入手容易性の点から特に好ましい。
【0076】
一般式(1)、(2)において、nは1から50の整数を表すが、nが特定の整数である化合物であってもよく、nが異なる整数である化合物の混合物であってもよい。製造の容易さや相溶性の点から、nは1から20が好ましい。
【0077】
(製造法)
次に本発明の末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーの製造法について説明する。
【0078】
本発明の一般式(1)で表される末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーは、ジヒドロキシナフタレン化合物の縮合反応とフェノール性水酸基のエステル化反応の2段階反応であるが、反応の順序はどちらでもよいため、2通りの製造法が可能である。すなわち、ジヒドロキシナフタレン化合物の縮合反応~得られたナフタレンエーテルオリゴマーのエステル化(以後「縮合~エステル化」とする)法とジヒドロキシナフタレン化合物のモノエステル化~得られたモノエステル化合物とジヒドロキシナフタレン化合物の共縮合反応(以後「エステル化~縮合」とする)法である。
【0079】
(縮合~エステル化)
まず、ジヒドロキシナフタレン化合物の縮合反応~得られたナフタレンエーテルオリゴマーのエステル化(「縮合~エステル化」)法について説明する。本発明の一般式(1)で表される末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーは、下記一般式(4)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物を触媒の存在下で縮合反応によって下記一般式(5)で表されるナフタレンエーテルオリゴマーとした後、下記一般式(6)とのエステル化反応により得ることができる。
【0080】
【化21】
【0081】
一般式(4)においてナフタレン環は水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0082】
【化22】
【0083】
一般式(5)においてナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。
【0084】
【化23】
【0085】
一般式(6)において、Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0086】
【化24】
【0087】
一般式(1)において、Aは水素原子、アクリル基又はメタクリル基のいずれかを表し、Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。ナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。
【0088】
(第1反応:ジヒドロキシナフタレン化合物の縮合反応)
まず、ジヒドロキシナフタレン化合物を出発原料として、ナフタレンエーテルオリゴマーを合成する方法について説明する。本発明の末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーの前駆体である下記一般式(5)で表されるナフタレンエーテルオリゴマーは、反応式-1に従って、下記一般式(4)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物を出発原料として、触媒の存在下、縮合反応により得ることができる。
【0089】
【化25】
【0090】
反応式-1においてナフタレン環は水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。
【0091】
当該反応において、原料となるジヒドロキシナフタレン化合物の具体的な例としては、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2-ヒドロキシ-1,4-ジヒドロキシナフタレン、2-メチル-1,4-ジヒドロキシナフタレン、2-カルボキシル-1,4-ジヒドロキシナフタレン、2-フェノキシカルボニル-1,4-ジヒドロキシナフタレン等が挙げられ、入手容易性の点から1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレンが好ましく、1,4-ジヒドロキシナフタレンが物性的にも原料の供給安定性においても特に好ましい。
【0092】
当該ジヒドロキシナフタレン化合物は、酸素に対して不安定な化合物が多いため、ヒドロキシル基を公知の保護基によって保護された形で用いてもよい。例えば、水酸基をアセチル基などで保護した状態で縮合反応をさせてもよい。
【0093】
反応式-1において使用される触媒としては、鉱酸(硫酸、塩酸)、有機酸(メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸)、ルイス酸(フッ化ホウ素エーテラート、三塩化アルミニウム、四塩化チタン、三塩化鉄、二塩化亜鉛)、固体酸触媒(フタムラ化学社製)、アンバーリスト(オルガノ社製)、ナフィオン(デュポン社製、ナフィオンはデュポン社登録商標)、テトラアルコキシチタン化合物(テトライソプロポキシチタン、テトラn-ブトキシチタン、テトラメトキシチタン)、有機スズ化合物(ジラウリン酸ジブチルスズ、ジブチルスズオキシド)等が挙げられる。
【0094】
触媒の添加量としては、一般式(4)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物に対して、好ましくは0.01重量%以上、50重量%未満、より好ましくは、0.1重量%以上、20重量%未満である。0.01重量%未満であると、反応が完結せず、また、50重量%以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
【0095】
当該反応は溶媒中もしくは無溶媒で行う。用いられる溶媒としては使用する触媒と反応しなければ特に種類を選ばず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭素系溶媒、メタノール、エタノール、1-プロパノール等のアルコール溶媒が用いられる。
【0096】
当該反応の反応温度は、通常20℃以上、200℃以下、好ましくは50℃以上、150℃以下である。20℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、200℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。
【0097】
当該反応における反応時間は、反応温度によって異なるが、通常0.5時間から20時間程度である。より好ましくは1時間から10時間である。
【0098】
反応終了後、必要に応じて未反応原料・溶媒及び触媒を洗浄・減圧留去・濾過等の操作を単独あるいは複数組み合わせる方法で除去する。生成物が固体の場合は反応途中に結晶が析出するので、濾過によって固液分離を行い、必要に応じてアルコールやヘキサン等の貧溶媒から再結晶させる。あるいはそのままドライアップして結晶を得ることができる。生成物が液体の場合は、そのままドライアップし、必要に応じて蒸留等の精製を行ってナフタレンエーテルオリゴマーを得ることができる。
【0099】
(第2反応:ナフタレンエーテルオリゴマーのエステル化反応)
次に、第1反応で得られたナフタレンエーテルオリゴマーを原料として、末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーを合成する方法について説明する。下記一般式(1)で表される本発明の末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーは、反応式-2に従って、下記一般式(5)で表されるナフタレンエーテルオリゴマーを出発原料として、下記一般式(6)とのエステル化反応により得ることができる。
【0100】
【化26】
【0101】
反応式-2においてAは水素原子、アクリル基又はメタクリル基のいずれかを表し、Aはアクリル基又はメタクリル基を表す。ナフタレン環の水素原子は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0102】
反応式-2において、原料となるナフタレンエーテルオリゴマーの具体的な例としては、1,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物、2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物、1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物、1,5-ジヒドロキシナフタレン縮合物、2,3-ジヒドロキシナフタレン縮合物、1,2-ジヒドロキシナフタレン縮合物、1,3-ジヒドロキシナフタレン縮合物、1,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物、2,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物、2-ヒドロキシ-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物、2-メチル-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物、2-カルボキシル-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物、2-フェノキシカルボニル-1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物等が挙げられ、入手容易性の点から1,6-ジヒドロキシナフタレン縮合物、2,7-ジヒドロキシナフタレン縮合物、1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物が好ましく、1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物が特に好ましい。
【0103】
反応式-2において、エステル化反応の原料となる一般式(6)で表される化合物の具体例としては、アクリル酸クロライド、アクリル酸ブロマイド、アクリル酸ヨージド、メタクリル酸クロライド、メタクリル酸ブロマイド、メタクリル酸ヨージド等が挙げられる。
【0104】
上記挙げた具体例の中でも、クロロ化合物が入手容易性、反応性の点で好ましい。
【0105】
反応式-2において一般式(6)で表される化合物の使用量としては、ナフタレンエーテルオリゴマーの水酸基に対して、好ましくは2.0モル倍以上、10.0モル倍未満、より好ましくは、2.2モル倍以上、5.0モル倍未満である。2.0モル倍未満であると、反応が完結せず、また、10.0モル倍以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
【0106】
反応式-2において使用される塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、リチウムジイソプロピルアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、4,4-ジメチルアミノピリジン、ピペリジン、γ-ピコリン、ルチジン等が挙げられる。
【0107】
塩基性化合物の添加量としては、ナフタレンエーテルオリゴマーに対して、好ましくは2.0モル倍以上、10.0モル倍未満、より好ましくは、2.2モル倍以上、8.0モル倍未満である。2.0モル倍未満であると、反応が完結せず、また、10.0モル倍以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
【0108】
当該反応は溶媒中もしくは無溶媒で行う。用いられる溶媒としては使用する原料と反応しなければ特に種類を選ばず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭素系溶媒、メタノール、エタノール、1-プロパノール等のアルコール溶媒、水等が用いられ、これらの溶媒は2種類以上混合して用いてもよい。
【0109】
無機塩基の水溶液中にナフタレンエーテルオリゴマーを溶解させ、一般式(6)で表される化合物と反応させる場合は、相間移動触媒の使用が有効である。相間移動触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルエチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロマイド、トリオクチルブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラフブチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルエチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムクロライド、トリオクチルブチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0110】
相間移動触媒の添加量としては、ナフタレンエーテルオリゴマーに対して、好ましくは 0.01モル倍以上、1.0モル倍未満、より好ましくは、0.03モル倍以上、0.5モル倍未満である。0.01モル倍未満であると、反応速度が遅く、また、1.0モル倍以上だと生成物の純度が低下するので好ましくない。
【0111】
当該反応の反応温度は、通常0℃以上、100℃以下、好ましくは10℃以上、50℃以下である。0℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、100℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。
【0112】
当該反応における反応時間は、反応温度によって異なるが、通常0.5時間から20時間程度である。より好ましくは1時間から10時間である。
【0113】
反応終了後、必要に応じて未反応原料・溶媒及び触媒を洗浄・減圧留去・濾過等の操作を単独あるいは複数組み合わせる方法で除去する。生成物が固体の場合は反応途中に結晶が析出するので、濾過によって固液分離を行い、必要に応じてアルコールやヘキサン等の貧溶媒から再結晶させる。あるいはそのままドライアップして結晶を得ることができる。生成物が液体の場合は、そのままドライアップし、必要に応じて蒸留等の精製を行って末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーを得ることができる。
【0114】
本反応によって得られる末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーは、複数の連続したナフタレンエーテル構造を持つ化合物であるが、反応条件等により、ナフタレンエーテル構造の数は1~50の間のある分布を持った混合物となる。本発明の目的に用いる場合においては、特に、ある特定のナフタレンエーテル構造の数の化合物を分離する必要はなく、混合物のままで用いてもよい。一部未反応物を含んでいてもよい。また、用途によっては、Aが水素原子でAが(メタ)アクリル基である化合物の混合物でもよい。
【0115】
(エステル化~縮合)
次に、ジヒドロキシナフタレン化合物のモノエステル化~得られたモノエステル化合物とジヒドロキシナフタレン化合物の共縮合反応(「エステル化~縮合」)法について説明する。本発明の一般式(1)で表される末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーは、下記一般式(4)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物に一般式(6)で表される化合物を反応させて一般式(10)で表されるモノメタクリレート化合物とし、さらに一般式(4)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物と共縮合させることにより得ることができる。
【0116】
【化27】
【0117】
一般式(4)においてナフタレン環は水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0118】
【化28】
【0119】
一般式(6)においてZは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0120】
【化29】
【0121】
一般式(10)において、Aはアクリル基、メタクリル基のいずれかを表す。ナフタレン環は水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0122】
【化30】
【0123】
一般式(1)において、Aは水素原子、アクリル基、メタクリル基のいずれかを表し、Aはアクリル基、メタクリル基、のいずれかを表す。ナフタレン環は水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。
【0124】
(第1反応:ジヒドロキシナフタレン化合物のモノエステル化反応)
まず、ジヒドロキシナフタレン化合物を出発原料として、ジヒドロキシナフタレン化合物のモノエステル化合物を合成する方法について説明する。本発明の末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーの前駆体である下記一般式(10)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物のモノエステル化合物は、反応式-3に従って、下記一般式(4)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物を出発原料として、下記一般式(6)とのエステル化反応により得ることができる。
【0125】
【化31】
【0126】
反応式-3において、ナフタレン環は水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子、Rは水素原子又はメチル基を表す。Aはアクリル基、メタクリル基のいずれかを表す。
【0127】
反応式-3において、原料となるジヒドロキシナフタレン化合物の具体的な例としては、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2-ヒドロキシ-1,4-ジヒドロキシナフタレン、2-メチル-1,4-ジヒドロキシナフタレン、2-カルボキシル-1,4-ジヒドロキシナフタレン、2-フェノキシカルボニル-1,4-ジヒドロキシナフタレン等が挙げられ、入手容易性の点から1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレンが好ましく、1,4-ジヒドロキシナフタレンが特に好ましい。
【0128】
当該ジヒドロキシナフタレン化合物は、酸素に対して不安定なため、ヒドロキシル基を公知の保護基によって保護された形で用いてもよい。
【0129】
反応式-3において、エステル化反応の原料となる一般式(6)で表される化合物の具体例としては、アクリル酸クロライド、アクリル酸ブロマイド、アクリル酸ヨージド、メタクリル酸クロライド、メタクリル酸ブロマイド、メタクリル酸ヨージド等が挙げられる。
【0130】
上記挙げた具体例の中でも、クロロ化合物が入手容易性、反応性の点で好ましい。
【0131】
反応式-3において一般式(6)で表される化合物の使用量としては、ジヒドロキシナフタレン化合物に対して、好ましくは1.0モル倍以上、5.0モル倍未満、より好ましくは、1.2モル倍以上、3.0モル倍未満である。1.0モル倍未満であると、反応が完結せず、また、5.0モル倍以上だとジエステル化合物が増加してしまい収率及び純度が低下するので好ましくない。
【0132】
反応式-3において使用される塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、リチウムジイソプロピルアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、4,4-ジメチルアミノピリジン、ピペリジン、γ-ピコリン、ルチジン等が挙げられる。
【0133】
塩基性化合物の添加量としては、ジヒドロキシナフタレン化合物に対して、好ましくは1.0モル倍以上、5.0モル倍未満、より好ましくは、1.2モル倍以上、3.0モル倍未満である。1.0モル倍未満であると、反応が完結せず、また、5.0モル倍以上だとジエステル化合物が増加してしまい収率及び純度が低下するので好ましくない。
【0134】
当該反応は溶媒中もしくは無溶媒で行う。用いられる溶媒としては使用する原料と反応しなければ特に種類を選ばず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭素系溶媒、メタノール、エタノール、1-プロパノール等のアルコール溶媒、水等が用いられ、これらの溶媒は2種類以上混合して用いてもよい。
【0135】
当該反応の反応温度は、通常0℃以上、100℃以下、好ましくは10℃以上、50℃以下である。0℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、100℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。
【0136】
反応終了後、必要に応じて未反応原料・溶媒及び触媒を洗浄・減圧留去・濾過等の操作を単独あるいは複数組み合わせる方法で除去する。生成物が固体の場合は反応途中に結晶が析出するので、濾過によって固液分離を行い、必要に応じてトルエンやヘキサン等の貧溶媒から再結晶させる。あるいはそのままドライアップして結晶を得ることができる。生成物が液体の場合は、そのままドライアップし、必要に応じて蒸留等の精製を行ってジヒドロキシナフタレン化合物のモノエステル化合物を得ることができる。
【0137】
(第2反応:ジヒドロキシナフタレンモノエステル化合物とジヒドロキシナフタレン化合物の共縮合反応)
次に、第1反応で得られたジヒドロキシナフタレンモノエステル化合物を出発原料として、末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーを合成する方法について説明する。下記一般式(1)で表される本発明の末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーは、反応式-4に従って、下記一般式(10)で表されるジヒドロキシナフタレンモノエステル化合物と下記一般式(4)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物とを触媒の存在下、共縮合反応することによって得ることができる。
【0138】
【化32】
【0139】
反応式-4においてAは水素原子、アクリル基、メタクリル基のいずれかを表し、Aはアクリル基、メタクリル基、のいずれかを表す。ナフタレン環は水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~15のアリール基、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~15のアリールオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、炭素数5~15のモノアリールアミノ基、炭素数1~10のジアルキルアミノ基、炭素数5~15のジアリールアミノ基、チオール基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数5~15のアリールチオ基、カルボキシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数5~15のアリールオキシカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1から50の整数である。
【0140】
反応式-4において、原料となるジヒドロキシナフタレンモノエステル化合物の具体的な例としては、1,6-ジヒドロキシナフタレンモノアクリレート、2,7-ジヒドロキシナフタレンモノアクリレート、1,4-ジヒドロキシナフタレンモノアクリレート、1,5-ジヒドロキシナフタレンモノアクリレート、2,3-ジヒドロキシナフタレンモノアクリレート、1,2-ジヒドロキシナフタレンモノアクリレート、1,3-ジヒドロキシナフタレンモノアクリレート、1,7-ジヒドロキシナフタレンモノアクリレート、2,6-ジヒドロキシナフタレンモノアクリレート、2-ヒドロキシ-1,4-ジヒドロキシナフタレンモノアクリレート、2-メチル-1,4-ジヒドロキシナフタレンモノアクリレート、2-カルボキシル-1,4-ジヒドロキシナフタレンモノアクリレート、2-フェノキシカルボニル-1,4-ジヒドロキシナフタレンモノアクリレート、1,6-ジヒドロキシナフタレンモノメタクリレート、2,7-ジヒドロキシナフタレンモノメタクリレート、1,4-ジヒドロキシナフタレンモノメタクリレート、1,5-ジヒドロキシナフタレンモノメタクリレート、2,3-ジヒドロキシナフタレンモノメタクリレート、1,2-ジヒドロキシナフタレンモノメタクリレート、1,3-ジヒドロキシナフタレンモノメタクリレート、1,7-ジヒドロキシナフタレンモノメタクリレート、2,6-ジヒドロキシナフタレンモノメタクリレート、2-ヒドロキシ-1,4-ジヒドロキシナフタレンモノメタクリレート、2-メチル-1,4-ジヒドロキシナフタレンモノメタクリレート、2-カルボキシル-1,4-ジヒドロキシナフタレンモノメタクリレート、2-フェノキシカルボニル-1,4-ジヒドロキシナフタレンモノメタクリレート等が挙げられ、入手容易性の点から1,6-ジヒドロキシナフタレンモノアクリレート、1,6-ジヒドロキシナフタレンモノメタクリレート、2,7-ジヒドロキシナフタレンモノアクリレート、2,7-ジヒドロキシナフタレンモノメタクリレート、1,4-ジヒドロキシナフタレンモノアクリレート、1,4-ジヒドロキシナフタレンモノメタクリレートが好ましく、1,4-ジヒドロキシナフタレンモノアクリレート、1,4-ジヒドロキシナフタレンモノメタクリレートが特に好ましい。
【0141】
反応式-4において、もう1つの原料となるジヒドロキシナフタレン化合物の具体的な例としては、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2-ヒドロキシ-1,4-ジヒドロキシナフタレン、2-メチル-1,4-ジヒドロキシナフタレン、2-カルボキシル-1,4-ジヒドロキシナフタレン、2-フェノキシカルボニル-1,4-ジヒドロキシナフタレン等が挙げられ、入手容易性の点から1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレンが好ましく、1,4-ジヒドロキシナフタレンが特に好ましい。
【0142】
当該ジヒドロキシナフタレン化合物は、酸素に対して不安定なため、ヒドロキシル基を公知の保護基によって保護された形で用いてもよい。
【0143】
反応式-4において使用される触媒としては、鉱酸(硫酸、塩酸)、有機酸(メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸)、ルイス酸(フッ化ホウ素エーテラート、三塩化アルミニウム、四塩化チタン、三塩化鉄、二塩化亜鉛)、固体酸触媒(フタムラ化学社製)、アンバーリスト(オルガノ社製)、ナフィオン(デュポン社製、ナフィオンはデュポン社登録商標)、テトラアルコキシチタン化合物(テトライソプロポキシチタン、テトラn-ブトキシチタン、テトラメトキシチタン)、有機スズ化合物(ジラウリン酸ジブチルスズ、ジブチルスズオキシド)等が挙げられる。
【0144】
触媒の添加量としては、一般式(10)で表されるジヒドロキシナフタレンモノエステル化合物に対して、好ましくは0.01重量%以上、50重量%未満、より好ましくは、0.1重量%以上、20重量%未満である。0.01重量%未満であると、反応が完結せず、また、50重量%以上だと副反応が起こり収率及び純度が低下するので好ましくない。
【0145】
当該反応は溶媒中もしくは無溶媒で行う。用いられる溶媒としては使用する触媒と反応しなければ特に種類を選ばず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭素系溶媒、メタノール、エタノール、1-プロパノール等のアルコール溶媒が用いられる。
【0146】
当該反応の反応温度は、通常20℃以上、200℃以下、好ましくは50℃以上、150℃以下である。20℃未満だと、反応時間がかかりすぎ、200℃を超えて加熱すると、不純物が多くなり目的化合物の純度が低下し、共に好ましくない。
【0147】
当該反応における反応時間は、反応温度によって異なるが、通常0.5時間から20時間程度である。より好ましくは1時間から10時間である。
【0148】
反応終了後、必要に応じて未反応原料・溶媒及び触媒を洗浄・減圧留去・濾過等の操作を単独あるいは複数組み合わせる方法で除去する。生成物が固体の場合は反応途中に結晶が析出するので、濾過によって固液分離を行い、必要に応じてアルコールやヘキサン等の貧溶媒から再結晶させる。あるいはそのままドライアップして結晶を得ることができる。生成物が液体の場合は、そのままドライアップし、必要に応じて蒸留等の精製を行ってナフタレンエーテルオリゴマーを得ることができる。
【0149】
本反応によって得られる末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーは、複数の連続したナフタレンエーテル構造を持つ化合物であるが、反応条件等により、ナフタレンエーテル構造の数は1~50の間のある分布を持った混合物となる。本発明の目的に用いる場合においては、特に、ある特定のナフタレンエーテル構造の数の化合物を分離する必要はなく、混合物のままで用いてもよい。一部未反応物を含んでいてもよい。また、用途によっては、Aが水素原子でAが(メタ)アクリル基である化合物の混合物でもよい。
【0150】
(重合性組成物)
本発明の重合性組成物は、成分として前記の末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーを含有することを特徴とする。
【0151】
本発明の重合性組成物は、必要に応じてナフタレンエーテルオリゴマー以外の重合性二重結合基を有する化合物を含有することが出来る。含有できるナフタレンエーテルオリゴマー以外の重合性二重結合基を有する化合物としては、特に限定されず、従来公知のラジカル重合性化合物、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステル等の二重結合を有する有機化合物を用いることができる。これらのラジカル重合性化合物は、一種でも二種以上の混合物であっても良い。
【0152】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能アクリル系モノマーや、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリル系モノマーをあげることができる。
【0153】
単官能アクリル系モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート-、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノール誘導体のアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、ω-カルボキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー等が挙げられる。
【0154】
多官能アクリル系モノマーとしては、例えばネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸ジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、炭素数2~5の脂肪族変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、炭素数2~5の脂肪族変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0155】
分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーとしては、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、およびウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0156】
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応によって得られる。エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂があげられる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えばジャパンエポキシレジン社製エピコート827(商品名、以下同じ)、エピコート828、エピコート1001、エピコート1004等があげられ、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、エピコート806、エピコート4004P等があげられる。また、ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピコート152、エピコート154等があげられる。
【0157】
ポリエステル(メタ)アクリレートはポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との反応によって得られる。ポリエステルポリオールは、多価アルコールと多塩基酸との反応によって得られる。多価アルコールとしては、例えばネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリシクロデカンジメチロール、ビス-[ヒドロキシメチル]-シクロヘキサン等があげられる。多塩基酸としては、例えばコハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等があげられる。
【0158】
ウレタン(メタ)アクリレートはポリオールと有機ポリイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物との三者の反応によって得られるものや、ポリオールを使用せずに有機ポリイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物との二者の反応によって得られるものがあげられる。ポリオールとしてはポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール、前記多価アルコールと前記多塩基酸との反応によって得られるポリエステルポリオール、前記多価アルコールと前記多塩基酸とε-カプロラクトンとの反応によって得られるカプロラクトンポリオール、及びポリカーボネートポリオール(例えば、1,6-ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの反応によって得られるポリカーボネートポリオール等)等が挙げられる。有機ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート等が挙げられる。三者の反応によって得られるものや、二者の反応によって得られるものをそれぞれ単独で使用してもよく、又両者を併用してもよい。
【0159】
本発明のラジカル重合性組成物には、条件によっては、更に、カチオン重合性化合物やアニオン重合性化合物を併用してもよい。
【0160】
併用してもよいカチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル等が挙げられる。エポキシ化合物として一般的なものは、脂環式エポキシ化合物、エポキシ変性シリコーン、芳香族のグリシジルエーテル等が挙げられる。脂環式エポキシ化合物としては、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製、商品名:セロキサイド2021P、セロキサイドはダイセル社の登録商標)、(3,3’,4,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル(ダイセル社製、商品名:セロキサイド8010)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。エポキシ変性シリコーンとしては、東芝GEシリコーン製UV-9300等が挙げられる。芳香族グリシジル化合物としては、2,2’-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン等が挙げられる。オキセタン化合物としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(オキセタンアルコール)(東亜合成社製、商品名:OXT-101)、2-エチルヘキシルオキセタン(東亜合成社製、商品名:OXT-212)、キシリレンビスオキセタン(東亜合成社製、商品名:OXT-121)、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン(東亜合成社製、商品名:OXT-221)等が挙げられる。ビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。これらのカチオン重合性化合物は、一種でも二種以上の混合物であっても良い。
【0161】
[重合開始剤]
本発明の重合性組成物は、必要に応じて重合開始剤を添加することができる。重合性化合物は、高温状態では重合開始剤がなくても重合を開始する場合があり、本発明において重合開始剤は必ずしも必要ではないが、重合開始剤を用いた方が重合反応をスムーズに開始することができるので好ましい。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が用いられる。ラジカル重合開始剤としては、エネルギーを与えられることにより重合性化合物に対して活性なラジカルを発生するものであれば特に限定されない。一般には市販されているラジカル重合開始剤を用いることができる。通常便宜的に、熱エネルギーを与えて用いるものを熱ラジカル重合開始剤と呼び、光エネルギーを与えるものを光ラジカル重合開始剤と呼ぶ。本発明は熱ラジカル重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤のどちらも使用することが可能である。条件によっては、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤を併用してもよい。
【0162】
熱ラジカル重合開始剤としては有機過酸化物とアゾ系化合物が挙げられる。有機過酸化物の具体例としては、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート類などのパーオキシエステル類、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサンなどのパーオキシケタール類、 ラウロイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類が挙げられる。また、アゾ系化合物の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロ)ニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カーボニトリル)などのアゾニトリル類が挙げられる。
【0163】
また、熱ラジカル重合開始剤を比較的低温で使用するためにペルオキシド、ヒドロペルオキシド等の酸化剤系開始剤に対して遷移金属やアミン、アスコルビン酸等の還元剤(ラジカル重合促進剤)を組み合わせるいわゆるレドックス開始剤系を用いることもできる。この場合、例えば、酸化剤系開始剤と還元剤を混合したものを熱重合開始剤として使用してもよいし、酸化剤系開始剤を熱重合開始剤として添加した後、還元剤を重合制御剤とともに、又は別に添加してもよいし、還元剤を熱重合開始剤として添加した後、酸化剤系開始剤を重合制御剤とともに、又は別に添加してもよい。ただし、重合に用いる温度範囲内であっても、酸化剤系開始剤と還元剤を添加すると、場合によっては重合反応が暴走するおそれがあるため、酸化剤系開始剤を熱重合開始剤として添加した後、還元剤を重合制御剤とともに、又は別に添加することが好ましい。
【0164】
光ラジカル重合開始剤としては、オニウム塩、ベンジルメチルケタール系、α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、ビイミダゾール系重合開始剤、トリアジン系重合開始剤、チオキサントン系重合開始剤等を用いることができる。
【0165】
オニウム塩としては通常ヨードニウム塩又はスルホニウム塩が用いられる。ヨードニウム塩としては、4-イソブチルフェニル-4’-メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサメトキシアンチモネート、4-イソプロピルフェニル-4’-メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタメトキシフェニルボレート、4-イソプロピルフェニル-4’-メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート等が挙げられ、例えばビー・エー・エス・エフ社製イルガキュア250(イルガキュアはビー・エー・エス・エフ社の登録商標)、ローディア社製ロードシル2074(ロードシルはローディア社の登録商標)、サンアプロ社製のIK-1等を用いることができる。一方、スルホニウム塩としてはS,S,S’,S’-テトラフェニル-S,S’-(4、4’-チオジフェニル)ジスルホニウムビスヘキサメトキシフォスフェート、ジフェニル-4-フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサメトキシフォスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサメトキシフォスフェート等が挙げられ、例えばダイセル社製CPI-100P、CPI101P、CPI-200K、ビー・エー・エス・エフ社製イルガキュア270、ダウ・ケミカル社製UVI6992等を用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で用いても2種以上併用しても構わない。
【0166】
ベンジルメチルケタール系重合開始剤としては、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名「イルガキュア651」ビー・エー・エス・エフ社製)等が挙げられ、α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤としては2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名「ダロキュア1173」ビー・エー・エス・エフ社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア184」ビー・エー・エス・エフ社製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(商品名「イルガキュア2959」ビー・エー・エス・エフ社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-1-オン(商品名「イルガキュア127」ビー・エー・エス・エフ社製)が挙げられる。
【0167】
特に、ベンジルメチルケタール系重合開始剤である2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名「イルガキュア651」ビー・エー・エス・エフ社製)、α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤である2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名「ダロキュア1173」ビー・エー・エス・エフ社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア184」ビー・エー・エス・エフ社製)が好ましい。
【0168】
また、アセトフェノン系重合開始剤であるアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-エトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-メトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-イソプロポキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-イソブトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ベンジル系重合開始剤であるベンジル、4,4’-ジメトキシベンジル、アントラキノン系重合開始剤である2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-フェノキシアントラキノン、2-(フェニルチオ)アントラキノン、2-(ヒドロキシエチルチオ)アントラキノン等も用いることができる。
【0169】
ビイミダゾール系重合開始剤としては、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体等が挙げられる。
【0170】
α-アミノケトン系重合開始剤としては、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名「イルガキュア907」ビー・エー・エス・エフ社製)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルフォリノブチロフェノン(商品名「イルガキュア369」ビー・エー・エス・エフ社製)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-4-イル-フェニル)ブタンー1-オン(商品名「イルガキュア379」ビー・エー・エス・エフ社製)等が挙げられる。
【0171】
アシルホスフィンオキサイド系重合開始剤としては2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド(商品名「イルガキュアTPO」ビー・エー・エス・エフ社製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(商品名「イルガキュア819」ビー・エー・エス・エフ社製)等が挙げられる。
【0172】
オキシムエステル系重合開始剤としては1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-、2-(о-ベンゾイルオキシム)(商品名「イルガキュアOXE01」ビー・エー・エス・エフ社製)、エタノン、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-、1-(о-アセチルオキシム)(商品名「イルガキュアOXE02」ビー・エー・エス・エフ社製)、[8-[[(アセチルオキシ)イミノ][2-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)フェニル]メチル]-11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール-5-イル]-,(2,4,6-トリメチルフェニル)(商品名「イルガキュアOXE03」ビー・エー・エス・エフ社製)等が挙げられる。
【0173】
トリアジン系重合開始剤としては2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0174】
チオキサントン系重合開始剤としては、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0175】
本発明で用いることができる、オニウム塩系重合開始剤、ベンジルメチルケタール系重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、ビイミダゾール系重合開始剤、トリアジン系重合開始剤、チオキサントン系重合開始剤は、それぞれ単独で用いることもできるが、用途等に合わせて、複数種類を合わせて用いることもできる。
【0176】
光ラジカル重合開始剤を含有する場合、本発明の重合性組成物には、光重合増感剤が含まれてもよい。光重合増感剤としては、例えば、N-メチルアクリドン、N-ブチルアクリドンのようなアクリドン誘導体、アントラセン、9,10-ジアルコキシアントラセン、9-アルコキシアントラセンのようなアントラセン誘導体、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン誘導体等が挙げられる。
【0177】
更に、本発明の重合性組成物には、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂などのバインダーポリマーが含まれていてもよい。また、アルカリ可溶性樹脂が含まれていてもよい。
【0178】
そして更に、顔料及び/又は染料を含んでいてもよい。また、顔料を含む場合はその分散剤を含んでもよい。
【0179】
顔料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。 有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。これらの顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0180】
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。染料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、顔料と染料を併用してもよい。
【0181】
顔料を分散させる分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液が挙げられる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。
【0182】
なお、本発明の重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記以外に、希釈剤、有機又は無機の充填剤、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、表面改質剤、浸透促進剤、保湿剤、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、安定剤、滑剤、可塑剤等の各種樹脂添加剤を配合してもよい。
【0183】
(重合方法)
本発明の重合性組成物は、例えば熱重合させる場合、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶融混練法などによって重合させることができる。塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法においては、通常の回分式重合反応器、連続式重合反応器を用いることができる。一方、溶融混練法では、単軸押出機、二軸押出機、加圧ニーダー、バンバリー等を用いることができる。
【0184】
溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法においては、溶媒が用いられる。溶液重合法において用いられる溶媒としては、用いるラジカル重合性化合物やラジカル重合開始剤との溶解性が良好なものが好ましい。例えば、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、アセトニトリル、ベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、シアノベンゼン、ジメチルフォルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0185】
本発明の重合性組成物には界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、公知のものであればよく特に限定されるものではないが、例えば、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルアリールスルフォン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類、脂肪酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類などのアニオン性界面活性剤(ここで、「塩類」とは、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。)、ソルビタンエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類などの親水性のノニオン性界面活性剤類が挙げられる。これらの中から、何れかが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0186】
乳化重合においては、乳化剤を含有してもよい。乳化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホサクシン酸ナトリウムのエステル、アベックス(Abex)アニオン界面活性剤(アルコラック社)、アルキルフェノキシポリエトキシエタノール(HLB=13~19)、エトキシ脂肪酸アルコール(HLB=13~19)、酸化エチレンおよび酸化プロピレンのブロック共重合体等があげられる。
【0187】
また、乳化重合に際して、水溶性保護コロイドを使用してもよい。このような保護コロイドの代表例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ポリ(酸化エチレン-酸化プロピレン)ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサゾリン、ポリビニルピロリドン(PVP)、および上記化合物の共重合体が挙げられる。保護コロイドは通常、モノマーに対して0.1~1.5重量%の割合で使用される。
【0188】
また、懸濁重合においては、分散安定剤なども用いることができる。分散安定剤としては、例えば、水溶性あるいは油溶性の部分ケン化ポリビニルアルコール;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性セルロース;アクリル酸重合体、メチルビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ゼラチンなどの水溶性ポリマー;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、グリセリンモノステアレート、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロックコポリマーなどの油溶性乳化剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンオレート、ラウリン酸ナトリウムなどの水溶性乳化剤;硫酸バリウム、及び硫酸カルシウム等の硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩;リン酸カルシウム等のリン酸塩;酸化アルミニウム、及び酸化チタン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化第二鉄等の金属水酸化物;等の無機化合物が挙げられ、これらは1種又は2種以上の組合せで使用することができる。
【0189】
その他、重合に際しては、反応系に、澱粉・セルロース、澱粉・セルロースの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子0~50重量%(対単量体)や、その他0~10重量%の、炭酸(水素)塩、二酸化炭素、アゾ化合物、不活性有機溶媒等の各種発泡剤;キレート剤;カオリン、タルク、二酸化珪素等の無機微粒子;ポリ塩化アルミ、硫酸アルミ、硫酸マグネシウム、などの多価金属塩などを添加してもよい。
【0190】
溶融混練手法によって、ポリマーを加熱溶融させ、混練させることにより、ポリマー主鎖等の切断、水素引き抜き等によって、ポリマーを合成することができる。溶融混練には通常熱可塑性ポリマーが用いられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等のスチレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。またポリエステル、ポリアミド等の縮合系樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール等のエンジニアリングプラスチック等、熱可塑性エラストマー等も用いることができる。
【0191】
溶融混練温度は用いる樹脂にもよるが、100~400℃の温度が用いられる。樹脂に重合性二重結合を有するモノマーとラジカル重合開始剤を含有させ、溶融混錬させることも可能である。
【0192】
重合性組成物に光を照射し重合させ光硬化させる場合、当該光重合性組成物をフィルム状に成形して光硬化させることもできるし、塊状に成形して光硬化させることもできる。UVインクとして液滴を基材に塗布した状態で重合させることもできる。フィルム状に成形して光硬化させる場合は、液状の当該光重合性組成物を例えばポリエステルフィルムなどの基材にバーコーターなどを用いて膜厚5~300ミクロンになるように塗布する。一方、スピンコーティング法やスクリーン印刷法により、さらに薄い膜厚あるいは厚い膜厚にして塗布することもできる。
【0193】
このようにして調製した重合性組成物からなる塗膜に、300nmから500nmの波長範囲を含む紫外線を1~1000mW/cm程度の強さで光照射することにより、光硬化物を得ることができる。用いる光源としては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ガリウムドープドランプ、ブラックライト、405nm紫外線LED、395nm紫外線LED、385nm紫外線LED、365nm紫外線LED、青色LED、白色LED、フュージョン社製のDバルブ、Vバルブ等が挙げられる。また、太陽光等の自然光を使用することもできる。
【0194】
(熱分解温度測定法)
樹脂組成物の熱分解温度は、昇温速度10℃/分において当該樹脂組成物の重量が5%減少した時の温度をその指標とした。具体的には、粉末にした樹脂組成物10mgの試料を島津製示差熱・熱重量同時測定装置(DTA-50)にて窒素雰囲気(窒素流量:100ml/分)、昇温速度10℃/分での5%重量減温度を求める。
【実施例
【0195】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、例示を目的として提示をしたものである。すなわち、以下の実施例は、網羅的であったり、記載した形態そのままに本発明を制限したりすることを意図したものではない。よって、本発明は、その趣旨を超えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。また、特記しない限り、すべての部および百分率は重量基準である。
【0196】
本発明の化合物の同定は下記の機器を用いて行った。
赤外線(IR)分光光度計:PerkinElmer社製、FT-IR(Spectrum Two)
核磁気共鳴装置(NMR):日本電子社製、型式ECS-400
平均分子量(GPC):日本分光社製、2000シリーズ
【0197】
(合成例1)1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物の合成
攪拌機、温度計付きの150mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、1,4-ジヒドロキシを20.0g(125ミリモル)、溶媒のトルエンを30g、触媒のメタンスルホン酸を3.0g(31ミリモル)加え、100~110℃で1時間撹拌した。室温まで冷却後、ヘキサンを加えて分散し、吸引濾過により固液分離した。ウェットケーキをイオン交換水で洗浄後乾燥することにより収量15.6gの灰色固体を得た。
【0198】
(1)IR(cm-1):3342、1674、1633、1594、1514、1457、1378、1258、1220、1150、1067、976、917、826、760、691、666、549、463.
(2)H-NMR(400MHz,DMSO‐d):δ=4.291(bs),6.558-8.191(m)、10.125(bs).
(3)数平均分子量:Mn=320
【0199】
(合成実施例1)1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物ジメタクリレートの合成
攪拌機、温度計付きの150mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物5.0g(15.6ミリモル)、トルエン10g、10%NaOH水溶液27.8g(70ミリモル)、50%テトラブチルアンモニウムブロマイド水溶液0.8g(1.2ミリモル)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(TEMPO)5mgを加え、攪拌した。反応温度15~20℃で、塩化メタクリロイル4.9g(49.6ミリモル)のトルエン7.5g溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後さらに1時間攪拌し、反応中に析出した不溶分を濾別した。濾液をイオン交換水で洗浄し、トルエン層を濃縮することにより、収量6.3gの褐色樹脂を得た。
【0200】
(1)IR(cm-1):3069、2926、1734、1675、1635、1598、1508、1457、1424、1378、1313、1291、1258、1218、1112、1075、1040、1011、943、875、830、806、759、730、695、674、644、586、551、493、465.
(2)H-NMR(400MHz,DMSO‐d6):δ=2.095(s),5.996(s),6.441(s),7.144-8.242(m).
(3)数平均分子量:Mn=440
【0201】
(重合実施例1)単独重合
合成実施例1で得られた1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物ジメタクリレート1g、熱重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬社製)80mg、溶媒としてトルエン9gを室温で混合し、60℃で6時間、80℃で2時間攪拌したところ、ゲル化した。冷却後、トルエンを濃縮留去し、得られた黄土色固体をメタノールで分散洗浄した後に濾過・乾燥を行って、黄土色固体0.7gを得た。
【0202】
得られた重合物に、1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物ジメタクリレートの良溶媒であるトルエン、アセトン、ジメチルホルムアミドを加えたが、全く溶解しなかった。よって、1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物ジメタクリレートの重合物であることが確認できた。
【0203】
(重合実施例2)共重合
合成実施例1で得られた1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物ジメタクリレート1g、メチルメタクリレート0.5g、熱重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬社製)80mg、溶媒としてトルエン9gを室温で混合し、80℃で1時間攪拌したところ、ゲル化した。冷却後、トルエンを濃縮留去し、得られた黄土色固体をメタノールで分散洗浄した後に濾過・乾燥を行って、黄土色固体1.3gを得た。
【0204】
得られた重合物に、1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物ジメタクリレートの良溶媒であるトルエン、アセトン、ジメチルホルムアミドを加えたが、全く溶解しなかった。よって、1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物ジメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合物であることが確認できた。
【0205】
(評価実施例1)
合成実施例1で得られた1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物ジメタクリレート10mg、重合性化合物としてメチルメタクリレート1.0g(10ミリモル)および熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.32g(2.0ミリモル)をN-メチルピロリドン2gと混合させ、10分間窒素置換した後、80℃で8時間攪拌した。試験管中の溶液を室温まで冷却し、水中に投入して再沈殿させた。沈殿物を濾過し、80℃で4時間減圧乾燥させ表1の収率で樹脂組成物を得た。上記「熱分解温度測定法」にて5%重量減温度を求め、それぞれ表1に示した。
【0206】
(評価実施例2)
1,4-ジヒドロキシナフタレン縮合物ジメタクリレートの配合量を100mgに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、その結果を表1に示した。
【0207】
(比較例1)
重合性化合物としてメチルメタクリレート1.0g(10ミリモル)および熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.32g(2.0ミリモル)をN-メチルピロリドン2gと混合させ、10分間窒素置換した後、80℃で8時間攪拌した。試験管中の溶液を室温まで冷却し、水中に投入して再沈殿させた。沈殿物を濾過し、80℃で4時間減圧乾燥させ表1の収率で樹脂組成物を得た。上記「熱分解温度測定法」にて5%重量減温度を求め、それぞれ表1に示した。
【0208】
【表1】
【0209】
重合実施例より、本発明の末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーは単独でラジカル重合により高分子化すると共に、メチルメタクリレートなどの重合性二重結合を持つ化合物と共重合可能であることがわかる。また、共重合物の評価実施例において、(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーの含有量が増加するに伴い5%重量減温度が上昇することから、該(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーが共重合物の耐熱性を向上することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0210】
本発明に示す末端に(メタ)アクリル基を有するナフタレンエーテルオリゴマーは、複数の連続したナフタレンエーテル構造を持つことにより、高い耐熱性を持ち、また末端に(メタ)アクリル基を持つため容易に単独で重合または他の重合性二重結合を持つ化合物と共重合可能であることから、耐熱性高分子原料、特に5G材料向けの樹脂原料として有用である。また、原料は入手容易であり、製造工程も容易であるため、安価に製造できるため、産業上非常に有用な化合物である。