(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20250109BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20250109BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20250109BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G06F3/12 329
G06F3/12 303
G06F3/12 331
G06F3/12 335
G06F3/12 378
G06F3/12 385
G03G21/00 396
B41J29/38 204
B41J2/01 401
(21)【出願番号】P 2020198923
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 享嗣
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-065155(JP,A)
【文献】特開2016-194771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
B41J 29/00-29/70
H04N 1/00
G03G 21/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
事業者との契約の契約条件に基づいた契約印刷を実行する資格を有する契約対象機として認識される契約モードと、前記契約印刷を実行しない通常モードとで動作可能な印刷装置であって、
前記印刷装置は、本体筐体と、サーバと通信する通信インタフェースと、コントローラと、を備え、
前記本体筐体には、前記契約モードの前記契約印刷の専用の消耗品であって、第1種消耗品と、前記契約モードおよび前記通常モードのいずれの印刷でも使用可能な消耗品である第2種消耗品との中から1つ以上の消耗品が装着可能であって、
前記コントローラは、
前記サーバからの有効化指示をトリガとして、前記印刷装置の前記契約モードを有効化するモード有効化処理を実行し、
前記モード有効化処理の際に前記本体筐体に前記第2種消耗品が装着されている場合は、前記モード有効化処理に続いて、前記印刷装置の状態を前記契約印刷が可能な契約印刷状態に変更する状態変更処理をさらに実行する、印刷装置。
【請求項2】
前記第1種消耗品は、契約に基づいて事業者からユーザに提供される消耗品であって、前記第2種消耗品は、前記印刷装置の購入時に前記印刷装置と同梱されている消耗品である、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記本体筐体には、前記契約印刷以外の印刷に使用可能な第3種消耗品が装着可能であり、
前記コントローラは、
前記モード有効化処理において、前記印刷装置に前記第2種消耗品および前記第3種消耗品の少なくとも一方が装着されており、かつ、前記第1種消耗品が装着されていない場合に、前記印刷装置の前記契約モードを有効化する、請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記モード有効化処理の際に前記第3種消耗品が装着されている場合は、当該第3種消耗品を第1種消耗品および前記第2種消耗品の少なくとも一方への換装を待機する換装待機状態に変更する待機状態変更処理を実行する、請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記印刷装置の前記契約モードを有効化した場合、前記サーバに前記第1種消耗品の提供要求を送信する要求送信処理を実行する、請求項1~4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記印刷装置の前記契約モードを有効化した場合、前記本体筐体に装着されている前記消耗品の残量を検出する残量検出処理を実行し、
前記要求送信処理の際に、前記提供要求に、前記残量検出処理で検出した前記消耗品の残量を示す残量情報を含めて前記サーバに送信する、請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記有効化指示に応答して、前記印刷装置の稼働状態が前記契約モードの有効化に適しているか否かを判定する稼働状態判定処理を実行し、
前記稼働状態判定処理において、前記印刷装置の稼働状態が前記契約モードの有効化に適していると判定した場合に、前記モード有効化処理を実行する、請求項1~6のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記コントローラは、
前記稼働状態判定処理において、前記印刷装置で発生しているエラーが、予め定められた条件に合致する場合に、前記契約モードの有効化に不適であると判定する、請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記コントローラは、
前記印刷装置と前記サーバとの通信状態を監視する通信監視処理と、
前記印刷装置の前記契約モードが有効化されており、前記通信状態が、前記印刷装置と前記サーバとが通信可能な状態であり、かつ、前記本体筐体に前記第1種消耗品または前記第2種消耗品が装着されている場合に、前記印刷装置を前記契約印刷状態に変更する、請求項1~8のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項10】
請求項5
又は請求項6に記載の印刷装置と、前記サーバと、を含む印刷システムであって、
前記印刷装置の前記コントローラは、
前記提供要求に、前記印刷装置に装着されている消耗品の種類を示す種類情報を含めて前記サーバに送信し、
前記サーバは、サーバ制御部を含み、前記サーバ制御部は、
前記印刷装置に前記有効化指示を送信する指示送信処理と、
前記印刷装置からの前記提供要求を受信する要求受信処理と、
前記種類情報に基づき、前記印刷装置に前記第2種消耗品が装着されているか否かを判定する消耗品判定処理を実行し、
前記印刷装置に前記第2種消耗品が装着されていない場合は、前記印刷装置のユーザへの前記第1種消耗品の提供を指示する提供指示処理を実行し、
前記印刷装置に前記第2種消耗品が装着されている場合は、前記提供指示処理を実行しない、印刷システム。
【請求項11】
事業者との契約の契約条件に基づいた契約印刷を実行する資格を有する契約対象機として認識される契約モードと、前記契約印刷を実行しない通常モードとで動作可能な印刷装置と、サーバと、を含む印刷システムであって、
前記印刷装置は、本体筐体と、前記サーバと通信する通信インタフェースと、コントローラと、を備え、
前記本体筐体には、前記契約モードの前記契約印刷の専用の消耗品であって、第1種消耗品と、前記契約モードおよび前記通常モードのいずれの印刷でも使用可能な消耗品である第2種消耗品との中から1つ以上の消耗品が装着可能であって、
前記コントローラは、
前記サーバからの有効化指示をトリガとして、前記印刷装置の前記契約モードを有効化するモード有効化処理を実行し、
前記モード有効化処理の際に前記本体筐体に前記第2種消耗品が装着されている場合は、前記モード有効化処理に続いて、前記印刷装置の状態を前記契約印刷が可能な契約印刷状態に変更する状態変更処理をさらに実行し、
かつ、
前記コントローラは、
前記印刷装置の前記契約モードを有効化した場合、前記サーバに前記第1種消耗品の提供要求を送信する要求送信処理と、
前記印刷装置の前記契約モードを有効化した場合、前記本体筐体に装着されている前記消耗品の残量を検出する残量検出処理と、
を実行し、
前記要求送信処理の際に、前記提供要求に、前記印刷装置に装着されている消耗品の種類を示す種類情報と前記残量検出処理で検出した前記消耗品の残量を示す残量情報とを含めて前記サーバに送信し、
前記サーバは、サーバ制御部を含み、
前記サーバ制御部は、
前記印刷装置に前記有効化指示を送信する指示送信処理と、
前記印刷装置からの前記提供要求を受信する要求受信処理と、
前記種類情報に基づき、前記印刷装置に前記第2種消耗品が装着されているか否かを判定する消耗品判定処理を実行し、
前記印刷装置に前記第2種消耗品が装着されていない場合は、前記印刷装置のユーザへの前記第1種消耗品の提供を指示する提供指示処理を実行し、
前記印刷装置に前記第2種消耗品が装着されている場合は、前記提供指示処理を実行せず、
かつ、前記サーバ制御部は、
前記要求受信処理において
、前記印刷装置から前記残量情報を受信し、
前記残量情報が示す前記消耗品の残量が所定の閾値以下である消耗品については、前記
第2種消耗品であっても前記提供指示処理を実行する
、印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷装置および印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、特許文献1に開示されているように、印刷装置を利用するユーザに定額印刷サービスが広く提供されている。定額印刷サービスとは、印刷装置ごとに加入可能なサービスであり、サブスクリプションサービスとも呼ばれる。例えば、定額印刷サービスは、予め定められた期間中、予め設定された枚数までなら、一定の利用料金で印刷可能とするサービスである。契約で定められた量を超過する利用に対しては、超過料金が発生してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザが定額印刷サービスに申し込むと、サービス提供事業者のサーバと、ユーザの印刷装置との間で各種情報の送受信が行われる。これは、サーバが契約対象機となる印刷装置を特定するためであるとともに、ユーザの印刷装置において定額印刷サービスの提供に係る、各種の設定を行うためでもある。
【0005】
従来の定額印刷サービスでは、サーバが印刷装置を契約対象機として認識した後に、サーバがユーザに対して、定額印刷専用の消耗品を定額印刷のスターターキットとして提供していた。ところが、この場合、ユーザが契約を締結してから、ユーザの手元にスターターキットが届いて定額印刷が可能になるまで、タイムラグが生じるという問題があった。このような課題は、定額印刷以外にも、契約条件に基づいた印刷であれば同様に生じる可能性がある。また、スターターキットの提供に関わらず、契約に基づく印刷を行うための専用の消耗品が設定されている場合、ユーザが契約してから、その専用の消耗品を手に入れるまでにタイムラグが生じ得るといえる。
【0006】
本開示は、前記問題点を鑑みたものであり、契約締結から契約条件に基づく印刷の開始までのタイムラグを小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本開示の第1態様の印刷装置は、事業者との契約の契約条件に基づいた契約印刷を実行する資格を有する契約対象機として認識される契約モードと、前記契約印刷を実行しない通常モードとで動作可能な印刷装置であって、前記印刷装置は、本体筐体と、サーバと通信する通信インタフェースと、コントローラと、を備え、前記本体筐体には、前記契約モードの前記契約印刷の専用の消耗品であって、第1種消耗品と、前記契約モードおよび前記通常モードのいずれの印刷でも使用可能な消耗品である第2種消耗品との中から1つ以上の消耗品が装着可能であって、前記コントローラは、前記サーバからの有効化指示をトリガとして、前記印刷装置の前記契約モードを有効化するモード有効化処理を実行し、前記モード有効化処理の際に前記本体筐体に前記第2種消耗品が装着されている場合は、前記モード有効化処理に続いて、前記印刷装置の状態を前記契約印刷が可能な契約印刷状態に変更する状態変更処理をさらに実行する。
【0008】
前記の課題を解決するために、本開示の第10態様の印刷システムは、第5態様から第9態様のいずれか1つの印刷装置と、前記サーバと、を含む印刷システムであって、前記印刷装置の前記コントローラは、前記提供要求に、前記印刷装置に装着されている消耗品の種類を示す種類情報を含めて前記サーバに送信し、前記サーバは、サーバ制御部を含み、前記サーバ制御部は、前記印刷装置に前記有効化指示を送信する指示送信処理と、前記印刷装置からの前記提供要求を受信する要求受信処理と、前記種類情報に基づき、前記印刷装置に前記第2種消耗品が装着されているか否かを判定する消耗品判定処理を実行し、前記印刷装置に前記第2種消耗品が装着されていない場合は、前記印刷装置のユーザへの前記第1種消耗品の提供を指示する提供指示処理を実行し、前記印刷装置に前記第2種消耗品が装着されている場合は、前記提供指示処理を実行しない。
【発明の効果】
【0009】
第1態様の印刷装置によれば、印刷装置のモードを問わずに使用可能な消耗品を印刷装置に装着することで、印刷装置を契約モードの有効化とともに、契約印刷が可能な状態にすることができる。
【0010】
換言すると、ユーザは第2種消耗品を印刷装置に装着することで、第1種消耗品の入手を待つことなく契約印刷を開始することができる。そのため、契約締結から契約条件に基づいた契約印刷を開始するまでのタイムラグを小さくすることができる。
【0011】
第10態様の印刷システムによれば、提供要求を受信しても、印刷装置に第2種消耗品が装着されている場合は、替えとなる第1種消耗品をユーザに発送しない。これにより、ユーザの手元にすでに消耗品がある場合に、余分に消耗品を提供することを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1に係る印刷システムの要部構成を示すブロック図である。
【
図2】カートリッジ情報の一具体例を示す図である。
【
図3】実施形態1に係る印刷システムにおいて、契約の締結から初回契約カートリッジの発送までの処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図4】印刷装置におけるモード・ステータス設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】サーバにおける発送判定の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態1に係る印刷システムにおいて、印刷装置1が契約モードを有効化した後の処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図7】消耗品判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
≪印刷システムの概要≫
以下、本開示の一実施形態について、
図1~
図6を参照して説明する。
図1は、本実施形態における印刷システム100の要部構成を示すブロック図である。本実施形態に係る印刷システム100は、
図1に示すとおり、印刷装置1と、インクカートリッジ4と、サーバ9と、ユーザ端末2と、を含んで構成される。なお、印刷システム100においてユーザ端末2は必須の構成ではない。また、印刷システム100を構成する各装置は、インターネットなどの通信網を介して、互いに通信することができる。
【0014】
印刷装置1は、事業者との契約が締結された場合、その契約の契約条件に基づいた印刷である契約印刷を実行することが可能な印刷装置である。サーバ9は印刷装置1とネットワークを介して通信する外部の装置であって、印刷装置1を管理する管理装置の一例である。本実施形態では、サーバ9は事業者が管理するサーバである。
【0015】
本開示において、契約とは、印刷装置1のユーザと事業者との間で締結される契約であって、事業者がユーザによって指定された印刷装置1を介して特定のサービスを提供する契約である。換言すると、ユーザはある印刷装置1に対する契約を締結するといえる。また、印刷装置1は、契約の対象となる装置であるともいえる。以下では、ユーザが指定した、契約の対象となる印刷装置1を「契約対象機」と称する。
【0016】
契約の締結時には、サービスの利用期間、利用料金、サービスを適用した印刷の上限枚数などの具体的な条件(契約条件)が取り決められる。なお、この契約条件は後から変更可能であってもよい。また、ユーザは印刷装置1を任意のタイミングで契約対象機として登録、または変更することが可能であってもよい。ここで言う「登録」とは、新規登録であっても、以前登録しており、契約を解除した印刷装置1を再登録することであってもよい。
【0017】
本実施形態では、一例として、サービスとは定額印刷サービスであることとする。定額印刷サービスとは、契約条件が示す利用期間および印刷の上限枚数の範囲内であれば、契約条件が示す定額の利用料金で、契約印刷の一例である「定額印刷」を実行できるサービスである。定額印刷サービスの詳細な規定は適宜定められてよいが、例えば、定額印刷サービスは、前述の利用期間および上限枚数を超えない範囲であれば、定額印刷に使用する消耗品および/または交換品を定額でユーザに提供するものであってよい。
【0018】
なお、定額印刷サービスにおいて、下記(1)(2)のタイミングは異なっていてもよい。
【0019】
(1)サーバ9が、印刷装置1を契約対象機として認識するタイミング
(2)サーバ9が、印刷装置1で定額印刷サービスの利用が開始されたとみなすタイミング
すなわち、定額印刷サービスにおいて、サーバ9が印刷装置1を「契約対象機ではあるが、まだ定額印刷サービスの利用は開始されていない」と認識することがあってもよい。なお、(2)における「定額印刷サービスの利用開始」とは、あくまで「サービスの利用開始」であって、定額印刷を実際に実施したか否かには関わらない。
【0020】
また、定額印刷サービスが有料のサービスである場合、(2)のタイミングは、「印刷装置1に係る定額印刷サービスの課金を開始するタイミング」と同義と捉えてよい。本明細書では、特段の記載が無い限り、定額印刷サービスは有料のサービスであることとする。したがって、(2)のタイミングは、課金開始のタイミングであることとする。
【0021】
印刷装置1は、インクカートリッジまたはトナーカートリッジなどの消耗品が装着可能であって、消耗品を用いて印刷を実行する機能と通信機能とを備えている装置であれば、その具体的な種類は特に限定されない。例えば、印刷装置1は、インクジェットプリンタまたはレーザープリンタであってもよい。あるいは、印刷装置1は、スキャナまたはファクシミリなどの他の機能を併せて備えるMFP(Multi Function Printer)であってもよい。
【0022】
本実施形態では一例として、印刷装置1が、インクを吐出することによって、データを印刷用紙に印刷するインクジェットプリンタである場合について説明する。印刷装置1の本体筐体には、1つ以上のインクカートリッジが装着される。本実施形態では、一例として、印刷装置1には、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(BK)の4色のインクカートリッジがそれぞれ装着されるものとする。なお、印刷装置1には、図示されていないが、液晶ディスプレイやランプなどの表示部と、ボタンなどの入力部とが設けられていてもよい。また、液晶ディスプレイは、タッチパネルと一体に構成されることにより、入力部として機能するように構成されてもよい。
【0023】
サーバ9は、1台以上の印刷装置1を管理する管理装置である。
図2の例では、サーバ9は1台の印刷装置1とのみ接続しているが、サーバ9は複数の印刷装置1と通信接続してよい。
【0024】
事業者が使用するサーバ9は、印刷装置1と通信ネットワークを介して通信し、印刷装置1と協働して、契約手続に係る一連の情報処理を完遂する。以下では、契約手続に係る一連の情報処理を、契約関連処理と称する。これにより、サーバ9は、印刷装置1を契約対象機として認識することができ、最終的に、印刷システム100上で、印刷装置1が契約対象機として認識されたことになる。
【0025】
本実施形態では、一例として、サーバ9は、印刷装置1を契約対象機として認識したことをトリガとして、事業者が指定する契約専用の消耗品をユーザに提供することを決定する。事業者からユーザへの消耗品の提供方法は特に限定されない。例えば事業者は、ユーザに対して定額印刷の専用の消耗品を、郵送により発送してもよい。ユーザは、提供された定額印刷の専用の消耗品を印刷装置1に装着する。これにより、印刷装置1は、定額印刷を実行することができるようになる。
【0026】
≪内部構成≫
(インクカートリッジ4)
インクカートリッジ4は、カートリッジメモリ42を有する。カートリッジメモリ42は、情報の読み出しおよび書き込みが可能なメモリである。カートリッジメモリ42は例えば、フラッシュROM(Read Only Memory)またはEEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable ROM)である。
【0027】
カートリッジメモリ42は、インクカートリッジ4に関する情報を記憶するために、第1領域421と、第2領域422と、第3領域423と、を有している。第1領域421は、カートリッジIDを記憶している。第2領域422は、カートリッジ種別を記憶している。第3領域423は、インク残量を記憶している。第3領域は、書き替え可能なデータであってよい。なお、カートリッジIDおよびインク残量を記憶するための各領域は、本開示において適宜省略されてもよい。
【0028】
カートリッジIDは、例えば、個々のインクカートリッジ4を識別するための固有のシリアルナンバーである。カートリッジIDは、そのインクカートリッジのインクの色、型番、製造メーカおよび製造ロットなどを示す情報を含んでいてもよい。
【0029】
カートリッジ種別は、インクカートリッジ4の種別を示す情報である。本実施形態では、インクカートリッジ4の種別として、少なくとも、「契約」、「同梱」、「市販」の3種類の種別が設定され得る。
【0030】
種別「契約」が第2領域422に格納されているインクカートリッジは、定額印刷の専用のインクカートリッジである。以下では、この種別のインクカートリッジを、契約カートリッジ(第1種消耗品)と称する。本実施形態では、契約カートリッジは、定額印刷サービスの事業者からユーザに発送される。また、本実施形態では、契約カートリッジの初回の発送は、契約が締結された後に、印刷装置1が契約モードになったことをトリガにして実行されてよい。
【0031】
種別「同梱」が第2領域422に格納されているインクカートリッジは、ユーザに購入されるなどして、新品の印刷装置1が納品されるときに、該印刷装置1に付属して納品されるインクカートリッジである。以下では、この種別のインクカートリッジを、同梱カートリッジ(第2種消耗品)と称する。同梱カートリッジは、通常印刷にも、定額印刷にも使用可能な消耗品である。また、同梱カートリッジは、印刷装置1の使用準備動作(例えば、新品の印刷装置1が印刷できるようになるまでの初期動作)のときに、印刷装置1に初めてインクを充填(初期充填)する際に用いられるインクカートリッジ4であってよい。
【0032】
なお、同梱カートリッジは、ユーザが印刷装置1の購入時に入手できるのであれば、印刷装置1と物理的に同梱されているものでなくてもよい。また、同梱カートリッジは、契約カートリッジおよび/または市販カートリッジよりも含有するインクの量が少なくてもよい。
【0033】
より詳しくは、同梱カートリッジは、通常モードの印刷装置1に装着された場合は、市販カートリッジと同様に、印刷装置1の契約モードを有効化させることができるカートリッジである。また、同梱カートリッジは、契約モードの印刷装置1に装着された場合は、契約カートリッジと同様に契約印刷が可能である消耗品でもある。
【0034】
種別「市販」が第2領域422に格納されているインクカートリッジは、家電量販店または通販サイトなどから購入可能な市販のインクカートリッジである。以下では、この種別のインクカートリッジを、市販カートリッジ(第3種消耗品)と称する。市販カートリッジは、印刷装置1のメーカによって製造された、いわゆる純正品であってもよいし、該メーカ以外のサードパーティによって製造された、いわゆる互換消耗品であってもよい。
【0035】
印刷装置1は、印刷装置1の契約モード(後述)が有効化されており、かつ、印刷装置1に装着されているカートリッジが契約カートリッジまたは同梱カートリッジである場合に、定額印刷を実行することができる。換言すると、印刷装置1は、市販カートリッジが装着されている場合は、契約印刷を実行することができない。契約カートリッジは、事業者から、印刷装置1についての契約を結んだユーザに対して提供される。ユーザへの契約カートリッジの提供方法は特に限定されない。本実施形態では一例として、サーバ9の指示を受けた発送サーバが、予め登録されたユーザの住所に契約カートリッジを発送することとする。
【0036】
本実施形態では、新規に契約対象機となった印刷装置1が使用するための契約カートリッジ一式を「初回契約カートリッジ」と称する。換言すると、初回契約カートリッジとは、定額印刷に最初に使用されるための契約カートリッジである。
【0037】
インク残量は、インクカートリッジ4のインクの残量を示す情報である。インク残量は、一例として、満杯から空までの複数の段階に対応する値で構成され、該値が第3領域423に格納されている。インク残量の各段階は、前述の値に基づいて、「FULL」~「EMPTY」などのように言葉でユーザに通知されてもよいし、「100%」~「0%」などの数値でユーザに通知されてもよいし、これらを組み合わせた表現によってユーザに通知されてもよい。
【0038】
印刷装置1の本体筐体は、コネクタ101を有する。インクカートリッジ4が印刷装置1の本体筐体に装着されると、コネクタ101がカートリッジメモリ42と電気的に接続される。これにより、印刷装置1のコントローラ80は、インクカートリッジ4のカートリッジメモリ42と通信可能になる。
【0039】
(印刷装置1)
印刷装置1はコントローラ80と、通信インタフェース81と、本体メモリ82とを有する。コントローラ80は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)を有する。コントローラ80は、印刷装置1の本体筐体に設けられた、本体メモリ82および通信インタフェース81と電気的に接続されている。コントローラ80は、種々の動作を実行することによって、印刷装置1に印刷に関連する各種処理を行わせる。
【0040】
また、コントローラ80は、印刷装置1とサーバ9との通信状態を監視する通信監視処理を実行してもよい。この通信監視処理は、印刷装置1の電源がオン状態の間、印刷装置1における他の処理とは関係なく、定期的に実行されてよい。
【0041】
なお、コントローラ80は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを備えてもよい。この場合、本体メモリ82に、印刷装置の制御方法を実現する制御プログラムが保存され、プロセッサが制御プログラムにしたがって動作することによって、コントローラ80が印刷装置1に各種処理を行わせてもよい。
【0042】
また、コントローラ80は、制御プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な、本体メモリ82などの記録媒体を備えていてもよい。当該記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、制御プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを利用してもよい。また、制御プログラムは、当該制御プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して前記コンピュータに供給されてもよい。なお、本開示の一態様は、制御プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0043】
印刷装置1にインクカートリッジ4が装着されると、
図1に示すように、インクカートリッジ4は、コントローラ80と電気的に接続される。これにより、コントローラ80は、カートリッジメモリ42からの情報の読出処理と、カートリッジメモリ42への情報の書込処理(書き替え処理を含む)とを実行することが可能となる。
【0044】
本体メモリ82は、情報の読み出しおよび書き込みが可能なメモリである。本体メモリ82は、例えばフラッシュROMまたはEEPROM(登録商標)である。本体メモリ82は、一例として、領域821から領域827までの7つの領域を有し、各領域には、具体的には、以下の各種情報が記憶されている。
【0045】
領域821には、カートリッジ情報が記憶されている。カートリッジ情報は、印刷装置1に装着される各色のインクカートリッジ4に関する情報である。具体的には、カートリッジ情報は、それぞれのカートリッジメモリ42から読み出されるカートリッジIDと、カートリッジ種別と、インク残量とを、1つのインクカートリッジ4ごとに対応付けた情報を含む。
【0046】
図2は、領域821に記憶されているカートリッジ情報の一具体例を示す図である。カートリッジ情報は、一例として、各色のインクカートリッジ4の行(row)ごとに、カートリッジIDのカラム(column)と、カートリッジ種別のカラムと、インク残量のカラムとを有する構成である。
【0047】
コントローラ80は、領域821からカートリッジ情報を読み出し、印刷装置1におけるインクカートリッジ4の装着状況を把握することができる。そして、コントローラ80は、前述の判定処理において、把握した装着状況に基づいて、契約モードの有効化の適否を判定することができる。
【0048】
図示の例では、シアンの行の各カラムには「No Cartridge」の値が格納されている。これにより、コントローラ80は、印刷装置1においてシアンのインクカートリッジ4が装着されていないと判断することができる。図示の例では、カートリッジ種別のカラムには、ブラック、マゼンタ、イエローの順に、それぞれ、「同梱」、「市販」、「契約」の値が格納されている。これにより、コントローラ80は、現在印刷装置1に装着されているブラックのインクカートリッジ4が同梱カートリッジであり、マゼンタのインクカートリッジ4が市販カートリッジであり、イエローのインクカートリッジ4が契約カートリッジであると判断することができる。また、コントローラ80は、インク残量のカラムに基づいて、各色のインクカートリッジ4のインク残量を判断することもできる。
【0049】
本実施形態では、カートリッジ情報は、印刷装置1におけるインクカートリッジ4の装着状況に応じて、コントローラ80が契約モードの有効化の適否を判定するために参照する。契約モードについては後で詳述する。
【0050】
コントローラ80が参照するカートリッジ情報の具体例については別図に基づいて後に詳述する。
【0051】
領域822には、装置IDが記憶されている。装置IDは、印刷装置1を識別するための識別情報である。装置IDとは、例えば印刷装置のシリアルナンバーである。
【0052】
領域823には、モード情報が記憶されている。モード情報は、印刷装置1の動作モードを示す情報である。本実施形態では、一例として、「契約モード」と、印刷装置1が契約対象機ではなく、通常の印刷装置として動作することを意味する「通常モード」との2種類のモードが定義される。
【0053】
(モード情報)
「契約モード」とは、印刷装置1の動作モードの1つであり、印刷装置1がサーバ9に契約に基づく契約印刷を実行する資格を有する契約対象機であると認識される動作モードである。「通常モード」とは、印刷装置1の動作モードの1つであり、契約印刷を実行しない動作モードである。なお、印刷装置1が通常モードの場合、印刷装置1は契約対象機としてサーバ9に認識されない。本実施形態の印刷装置1は、契約モードでも通常モードでも動作可能であり、いずれか一方のモードで動作する。
【0054】
通常モードでは、印刷装置1は契約印刷ではなく、通常印刷を実行する。通常印刷とは、市販カートリッジを用いた印刷であって、印刷によってインク残量が無くなった場合はユーザが新たな市販カートリッジを購入して補充して行う印刷である。換言すると、通常印刷とは、印刷量に伴い市販カートリッジの購入コストがかかる印刷である。本実施形態では、「通常印刷」のことを単に「印刷」とも称する。
【0055】
印刷装置1の出荷時において、領域823には、デフォルトで通常モードに対応する値が格納されている。サーバ9は、契約締結時にユーザが指定した印刷装置1に、契約モードを有効化することを指示する有効化指示を送信する。コントローラ80は、サーバ9からの有効化指示をトリガとして、領域823の値を契約モードに対応する値に設定する。本実施形態において、「印刷装置1の契約モードを有効化する」とは、コントローラ80が、領域823の値を契約モードに対応する値に設定することを意味する。
【0056】
なお、コントローラ80は、所定の条件が満たされた場合に、契約モードの有効化を解除してもよい。すなわち、コントローラ80は、モード情報を通常モードに対応する値に戻すことがあってもよい。例えば、コントローラ80は、サーバ9から契約モードの終了指示を受信した場合に、印刷装置1のモードを通常モードに戻してもよい。
【0057】
(ステータス情報)
領域824には、ステータス情報が記憶されている。ステータス情報は、印刷装置1における契約の適用有無を示す情報である。本実施形態では、ステータス情報は、契約の適用が開始されていない状態である「課金前」と、契約の適用が開始されている状態である「課金後」との2種類の状態が定義される。印刷装置1の出荷時には、領域624には初期値として、「課金前」に対応する値が格納されている。コントローラ80は領域824のステータス情報の値を書き替えることができる。本実施形態において、「印刷装置1のステータスを変更する」とは、コントローラ80が、領域824の値を変更することを意味する。
【0058】
(モード情報およびステータス情報と印刷装置1の状態)
印刷装置1の状態は、モード情報とステータス情報の組み合わせにより定義される。モード情報が「通常モード」を示しているときは、ステータス情報に関わらず、印刷装置1は契約対象機として認識されず、定額印刷は不可能である。
【0059】
また、モード情報が「契約モード」であって、ステータス情報が「課金前」であるときは、印刷装置1は契約対象機として認識されているが、課金が開始されていない状態である。本実施形態では、サーバ9から印刷装置1の契約モードを有効化するよう指示された時点で印刷装置1に市販カートリッジのみが装着されている場合に、印刷装置1が「契約モード」、かつ「課金前」になる。すなわち、印刷装置1が「契約モード」かつ「課金前」である状態とは、印刷装置1が本体筐体に装着された市販カートリッジが契約カートリッジおよび同梱カートリッジの少なくとも一方へ換装されるのを待機している状態であるともいえる。したがって、本実施形態では、印刷装置1が「契約モード」かつ「課金前」である状態を、「換装待機状態」とも称する。
【0060】
また、モード情報が「契約モード」であって、ステータス情報が「課金後」であるときは、印刷装置1は契約対象機であって、かつ、課金が開始されている状態である。すなわち、この状態は、印刷装置1が契約印刷の可能な状態であるといえる。本実施形態では、印刷装置1が「契約モード」かつ「課金後」である状態のことを、「契約印刷状態」とも称する。
【0061】
なお、印刷装置1は、契約印刷状態であっても、契約印刷以外の印刷を実行可能であってよい。例えば、印刷装置1が契約印刷状態のときに、印刷装置1に装着されている同梱カートリッジまたは契約カートリッジを外して、市販カートリッジを装着したとする。この場合、印刷装置1はサーバ9に契約対象機として認識された状態(すなわち、契約印刷状態)であるまま、市販カートリッジを用いて実行可能な通常印刷を実行してもよい。また、印刷装置1は換装待機状態のときに、契約印刷以外の印刷を実行可能であってよい。例えば、印刷装置1が換装待機状態のときに、印刷装置1に装着されている市販カートリッジを用いて実行可能な通常印刷を実行してもよい。
【0062】
領域825には、通信ステータスが記憶されている。通信ステータスは、印刷装置1とサーバ9との通信状態を示す情報である。なお、通信ステータスは、印刷装置1がオンラインであるかオフラインであるかを示す情報であってもよい。通信インタフェース81が通信ネットワークと接続されて外部の装置と通信可能である場合、印刷装置1がオンラインであることを示す値が通信ステータスとして領域825に記憶される。一方、通信インタフェース81が通信ネットワークと接続されず、外部の装置と通信できない場合、印刷装置1がオフラインであることを示す値が通信ステータスとして領域825に記憶される。他の例では、コントローラ80は、通信インタフェース81を介して、既知の通信プロトコルにしたがってサーバ9との通信状態を監視してもよい。この場合、コントローラ80は、サーバ9側の問題で印刷装置1がサーバ9と通信できない状態を、前述のオンラインおよびオフラインと区別し、当該状態を示す別の値を領域825に記憶してもよい。
【0063】
領域826には、第1枚数カウンタが記憶されている。第1枚数カウンタは、印刷装置1において印刷された印刷物の枚数の累計である。すなわち、第1枚数カウンタの値は、通常印刷によって印刷された印刷物の枚数と、定額印刷によって印刷された印刷物の枚数との累計である。領域827には、第2枚数カウンタが記憶されている。第2枚数カウンタは、印刷装置1において定額印刷によって印刷された印刷物の枚数を示す。第2枚数カウンタは、印刷装置1が未契約モードから契約モードを有効化する度にカウントが0にリセットされてもよいし、今まで印刷装置1において定額印刷によって印刷された印刷物の枚数の累計であってもよい。以降、特段の記載がない限り、第2枚数カウンタの値は、今まで定額印刷によって印刷された印刷物の枚数の累計であることとする。
【0064】
本体メモリ82は、前述した情報の他に、例えば、印刷装置1における累計印刷枚数を記憶するための領域を有していてもよい。
【0065】
通信インタフェース81は、例えばインターネットなどの不図示の通信ネットワークを介して、印刷装置1とサーバ9との通信を行う。通信インタフェース81は、サーバ9から受信したリクエストをコントローラ80に出力する。ここで、「リクエスト」とは、契約関連処理において、サーバ9から送信される各種の要求、指示、問合せなどを指す。通信インタフェース81は、コントローラ80が、前述のリクエストに応答して演算し、出力した結果を、「レスポンス」としてサーバ9に返信する。本実施形態では、通信インタフェース81によるレスポンスの返信は省略されてもよい。例えば、リクエストが、印刷装置1内の各種の設定を変更する指示である場合、コントローラ80は指示にしたがって印刷装置1内の各種の設定を変更する。しかし、設定が変更された旨の通知を通信インタフェース81を介してサーバ9に返信することは省略されてもよい。
【0066】
(サーバ9)
サーバ9は、サーバ通信部91と、サーバメモリ92と、サーバ制御部93を備えている。サーバ通信部91は、サーバ9と印刷装置1との通信を行う通信インタフェースである。サーバ通信部91は、サーバ制御部93から入力されたリクエストを印刷装置1に送信する。サーバ通信部91は、送信したリクエストに応じて印刷装置1から送られてきたレスポンスを受信し、サーバ制御部93に出力する。
【0067】
また、サーバ通信部91は、印刷装置1のユーザが操作するユーザ端末2とも通信し、ユーザ端末2との間で情報を送受信する。本実施形態では、サーバ通信部91は、ユーザ端末2との間で、契約締結のために必要な各種情報をやりとりする。具体的には、サーバ通信部91は、ユーザ端末2から契約締結を要求する契約要求メッセージを受信してもよい。この契約要求メッセージには、印刷装置1を識別する装置IDが含まれ得る。この契約要求メッセージに応答して、サーバ制御部93が契約関連処理を実行した後、サーバ通信部91は、印刷装置1を契約対象機として認識した旨の通知を、ユーザ端末2に送信してもよい。
【0068】
サーバメモリ92は、サーバ9の動作に必要なデータを記憶する記憶装置である。サーバメモリ92は、印刷装置1ごとに装置情報を記憶する領域921を有している。装置情報は、印刷装置1に関する種々の情報をまとめたデータである。装置情報は、印刷装置1の1台ごとに作成される。装置情報は、例えば、装置IDと、契約フラグと、開始フラグと、契約上限枚数と、第2枚数カウンタと、定額印刷枚数と、を含んでいてもよい。他にも、装置情報は、例えば、印刷装置1の型番、製造年月日等を含んでいてもよい。
【0069】
装置IDは、サーバ9が印刷装置1を一意に識別するための識別情報である。契約フラグは、印刷装置1が契約モードを有効化したか否か、すなわち、契約対象機として認識済みであるか否かを示す情報である。
【0070】
開始フラグは、印刷装置1において定額印刷サービスが開始されたか否かを示す情報である。本実施形態では、開始フラグは、印刷装置1に対する課金が開始されたか否かを示す情報でもある。開始フラグの初期値は「未」を意味する値に設定する。開始フラグ「未」とは、印刷装置1において定額印刷サービスがまだ開始されていない状態を意味する。
【0071】
サーバ9のサーバ制御部93は、印刷装置1のコントローラ80から、印刷装置1において定額印刷サービスが開始された旨が通知された場合、開始フラグを「未」から「済」を意味する値に設定する。開始フラグ「済」とは、印刷装置1において定額印刷サービスが開始された状態を意味する。
【0072】
契約上限枚数は、印刷装置1が、契約で定められた所定の期間において定額印刷可能な上限の枚数である。第2枚数カウンタは、印刷装置1における第2枚数カウンタと同義の情報である。定額印刷枚数は、印刷装置1が定額印刷サービスを開始してから、該定額印刷サービスを利用して印刷した印刷物の枚数を示す情報である。なお、印刷装置1について、ユーザが一度契約を解除した後に再契約した場合、定額印刷枚数は、最新の契約における、定額印刷サービスの開始を起点として、該定額印刷サービスを利用して印刷した印刷物の枚数を示す。サーバ9のサーバ制御部93は、印刷装置1のコントローラ80からの通知に応じて、サーバメモリ92の領域921に記憶された装置情報の、第2枚数カウンタ、および定額印刷枚数の値を更新する。
【0073】
サーバ制御部93は、サーバ9を統括的に制御するCPUである。サーバ制御部93は所定のタイミングで、印刷装置1にリクエストを作成し、作成したリクエストをサーバ通信部91に出力する。本実施形態では、リクエストは、例えば、印刷装置1の契約モードを有効化させるための指示を含む。以降、「印刷装置1の契約モードを有効化させるための指示」のことを、単に「有効化指示」とも称する。サーバ制御部93は、ユーザ端末から送信された契約要求メッセージが受信されたことをトリガとして、サーバ通信部91を制御し、ユーザが希望する印刷装置1に対して、前述の有効化指示を送信する。
【0074】
また、サーバ制御部93は、サーバ通信部91を介して印刷装置1から受信したレスポンスに基づいて、サーバメモリ92の領域921に装置情報を新規に記憶させたり、既に記憶されている装置情報を更新したりする。より詳細には例えば、サーバ通信部91がユーザ端末から、新規に契約締結を希望する印刷装置1に関して契約要求メッセージを受信すると、サーバ制御部93は、その印刷装置1の装置情報を領域921に新規に登録する。このとき、サーバ制御部93は、契約フラグの初期値として「未」を意味する値に設定する。契約フラグ「未」とは、ユーザと事象者との間で契約は締結されたが、定額印刷を実行する予定の印刷装置1が契約モードを有効化したことを、サーバ9自身がまだ確認していない状態を意味する。そして、サーバ制御部93は、印刷装置1との通信を介して、印刷装置1が契約モードを有効化した旨を確認した場合に、該印刷装置1の契約フラグを「済」を意味する値に更新する。この処理に基づいて、印刷装置1は、サーバ9を含む印刷システム100上で、契約対象機として認識される。
【0075】
ユーザ端末2は、ユーザが契約締結のための種々の入力操作を実行するための端末装置である。ユーザ端末2は、ユーザによって入力された、契約締結に関する種々の情報を含む契約要求メッセージをサーバ9に送信する。ユーザ端末2としては、例えば、PC(Personal Computer)、スマートフォン等、標準的な通信機能を備えた情報処理端末が採用され得る。
【0076】
≪契約締結~初回契約カートリッジの発送までの処理の流れ≫
図3は、本開示の一実施形態に係る印刷システム100において、契約の締結から初回契約カートリッジの発送までの処理の流れを示すシーケンス図である。
【0077】
ステップS1では、ユーザ端末2は、ユーザの入力操作にしたがって、契約要求メッセージをサーバ9に送信する。契約要求メッセージには、ユーザが定額印刷を実行させたい印刷装置1の装置IDが含まれている。サーバ9のサーバ通信部91は契約要求メッセージを受信する。
【0078】
ステップS2では、サーバ9のサーバ制御部93は、サーバ通信部91が契約要求メッセージを受信したことに応答して、印刷装置1に対してリクエストを送信する。このリクエストには有効化指示が含まれている(指示送信処理)。
【0079】
一方、印刷装置1では、ステップS1およびステップS2とは直接関係しない所定のタイミングで、ステップS3およびステップS4の処理が実行される。
【0080】
ステップS3において、印刷装置1のコントローラ80は、印刷装置1の本体筐体に対するインクカートリッジ4の装着を検出する。
【0081】
ステップS4において、コントローラ80は、検出したインクカートリッジ4それぞれのカートリッジメモリ42を参照することで、各インクカートリッジ4のカートリッジ情報を読み取る。なお、ステップS3の実行時点で印刷装置1に1つもインクカートリッジ4が装着されていなかったことが検出された場合、コントローラ80はステップS4の処理を実行しなくてもよい。ステップS3においてサーバ9が有効化指示を送信すると、コントローラ80はステップS5の処理を実行する。
【0082】
ステップS5において、コントローラ80は、サーバ9から送信された有効化指示を、通信インタフェース81を介して受信する。コントローラ80は続いて、ステップS6の処理を実行する。
【0083】
なお、印刷装置1において、ステップS3~S4の処理とステップS5の処理とは順不同であってよいし、ステップS3~S4の処理とステップS5の処理とはそれぞれ独立したタイミングに行われてもよい。また、ステップS3およびステップS4の処理は、定期的に実行されてもよい。また、ステップS3およびステップS4の処理は、印刷装置1にインクカートリッジ4が装着されたことをセンサ等で検出し、該装着の検出をトリガとして実行されてもよい。
【0084】
ステップS6において、印刷装置1のコントローラ80は、有効化指示を受信したことをトリガとしてモード・ステータス設定処理を実行する。モード・ステータス設定処理とは、印刷装置1の種々の状態が契約モードの有効化に適しているか否かを判定し、判定結果に応じて印刷装置1のモードおよび/またはステータス(すなわち、印刷装置1の状態)を設定する処理である。モード・ステータス設定処理については後で詳述する。
【0085】
ステップS7では、コントローラ80は、ステップS6のモード・ステータス設定処理の結果、コントローラ80が印刷装置1の契約モードを有効化したか否かを判定する。モード・ステータス設定処理において印刷装置1の契約モードを有効化した場合(ステップS7でYES)、コントローラ80はステップS8の処理を実行する。コントローラ80が契約モードを有効化しなかった場合(ステップS7でNO)、印刷装置1およびサーバ9は以降のステップに記載の処理は実行しない。
【0086】
ステップS8では、コントローラ80は、サーバ9に契約モードの有効化が完了した旨の通知(有効化完了通知)を送信する(要求送信処理)。有効化完了通知には、印刷装置1が読み取った各インクカートリッジ4のカートリッジ情報のうち、少なくとも、カートリッジ種別を示す情報(種類情報)が含まれている。なお、有効化完了通知には、印刷装置1が検出したカートリッジ情報のうち、各インクカートリッジ4のインク残量が含まれていてもよい。
【0087】
サーバ9はこの有効化完了通知をトリガとして、初回契約カートリッジの発送要否を判定し、発送要と判定した場合は初回契約カートリッジの発送を指示する。したがって、有効化完了通知は、換言すると、サーバ9への契約カートリッジの提供要求であるといえる。
【0088】
ステップS9において、サーバ9は有効化完了通知を受信する(要求受信処理)。サーバ9は有効化完了通知への応答として、ステップS10の処理を実行する。
【0089】
ステップS10において、サーバ制御部93は印刷装置1を契約対象機として認識する。
【0090】
ステップS11において、サーバ制御部93は、発送判定を実行する。発送判定とは、初回契約カートリッジの発送要否を判定する処理である。
【0091】
ステップS12において、サーバ制御部93は、発送判定において初回契約カートリッジの発送要と判定されたか否かを判定する。なお、ここでの「発送要と判定された」とは、印刷装置1に装着可能な全色の初回契約カートリッジの発送が必要であると判定された場合だけでなく、一部の色の初回契約カートリッジのみ発送が必要であると判定された場合も含んでいてよい。初回契約カートリッジの発送要と判定された場合(ステップS12でYES)、サーバ制御部93はステップS13を実行する。一方、初回契約カートリッジの発送不要と判定された場合(ステップS12でNO)、サーバ制御部93はステップS13を実行せず処理を終了する。
【0092】
ステップS13において、サーバ制御部93は、印刷装置1のユーザへの初回契約カートリッジの発送を指示する(提供指示処理)。発送の指示先は特に限定されない。例えば、サーバ制御部93は、契約カートリッジの発送を管理する発送管理サーバ等に、印刷装置1のユーザへの初回契約カートリッジの発送を指示してもよい。
【0093】
例えば、印刷システム100において、サーバ9は、ユーザおよび印刷装置1に関する顧客情報を管理する機能を備えた情報管理サーバと、顧客情報に基づいて契約カートリッジの発送を管理する機能を備えた発送管理サーバとで構成されていてもよい。この場合、情報管理サーバがS8にて印刷装置1を契約対象機として認識した後、情報管理サーバは、発送管理サーバに対して、印刷装置1のユーザの住所宛てに初回契約カートリッジを発送するように指示する。この指示にしたがって、発送管理サーバは、初回契約カートリッジの発送の手続を進めて、最終的に、初回契約カートリッジ一式がユーザの手元に届けられる。
【0094】
以上説明した
図3の処理によれば、印刷装置1が契約モードを有効化したときに、有効化完了通知によって、契約カートリッジの提供をサーバ9に要求することができる。したがって、印刷装置1は、印刷装置1の契約モードを有効化してからサーバ9に契約カートリッジの提供を遅滞なく要求することができる。
【0095】
≪モード・ステータス設定処理≫
図4は、印刷装置1におけるモード・ステータス設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0096】
ステップS61において、コントローラ80は、印刷装置1の稼働状態が契約モードの有効化に適しているか否かを判定する(稼働状態判定処理)。印刷装置1がどのような稼働状態の場合に「有効化に適している」と判定するかは、印刷装置1の種類、用途、および契約条件等に応じて適宜定められてよい。
【0097】
このように、印刷装置1の稼働状態によって印刷装置1の契約モードの有効化の適否を判定することによって、印刷装置1が、契約モードの有効化には不適な稼働状態である場合に、契約モードの有効化に関する処理が開始されることを防止することができる。これにより、契約モードの有効化に関する処理が完遂することなく中断してしまう不都合を回避することができる。
【0098】
例えば、コントローラ80は、ステップS61において、印刷装置1において発生しているエラーが、予め定められた条件に合致する場合に、有効化不適と判定してもよい。より具体的に言えば、コントローラ80は、印刷装置1において特定種類のエラーが発生している場合に、有効化不適と判定してもよい。「特定種類のエラー」とは、例えば、電源オフの操作を伴うエラー、コントローラ80の動作を強制終了させ得るエラー、物理的またはソフトウェア的に定額印刷が実行できない状態になるエラー等が挙げられる。なお、これらのエラーが印刷装置1で発生しているか否かは、常時、または定期的に、コントローラ80が監視していてよい。
【0099】
これにより、コントローラ80は、印刷装置1に特定のエラーが生じている状況下では、サーバ9から有効化指示を受信しても契約モードを有効化しないようにすることができる。したがって、契約モードを有効化するのに適さないエラーが発生している印刷装置1において、契約モードの有効化に関する処理が実行されることを防止することができる。
【0100】
印刷装置1の稼働状態が有効化に不適であると判定された場合(ステップS61でNO)、コントローラ80は以降のステップS62~ステップS65の処理を実行せず、モード・ステータス設定処理を終了する。一方、印刷装置1の稼働状態が有効化に適であると判定された場合(ステップS61でYES)、コントローラ80はステップS62を実行する。
【0101】
ステップS62において、コントローラ80は、印刷装置1に契約カートリッジが装着されているか否かを判定する。印刷装置1に1つでも契約カートリッジが装着されている場合は(ステップS62でYES)、コントローラ80は以降のステップS62~ステップS65の処理を実行せず、モード・ステータス設定処理を終了する。すなわち、コントローラ80は印刷装置1の契約モードを有効化せず、通常モードのままとする。一方、印刷装置1に契約カートリッジが装着されていない場合(ステップS62でNO)、印刷装置1はステップS63を実行する。
【0102】
なお、ステップS62の判定処理は必須の処理ではない。しかしながら、このような判定処理を追加することで、印刷装置1に同梱カートリッジおよび市販カートリッジのうち少なくとも一方が装着されており、かつ、契約カートリッジが装着されていない場合に限って、印刷装置1の契約モードを有効化させることができる。
【0103】
したがって、ステップS62の判定処理によれば、本来は印刷装置1が契約モードを有効化してから入手可能なはずの契約カートリッジが、印刷装置1が通常モードのときに装着されるという、予期せぬ事態が発生した場合に、印刷装置1の契約モードが有効化されることを防止することができる。
【0104】
ステップS63において、コントローラ80は、印刷装置1の本体メモリ82のカートリッジ情報のカートリッジ種別を参照することで、装着されているインクカートリッジ4が1つ以上同梱カートリッジであるか否かを判定する。1つ以上同梱カートリッジが装着されている場合(ステップS63でYES)、コントローラ80は、ステップS64を実行する。一方、同梱カートリッジが1つも装着されていない場合(ステップS63でNO)、コントローラ80は、ステップS65を実行する。
【0105】
ステップS64において、コントローラ80は、印刷装置1の契約モードを有効化する(モード有効化処理)。そして、コントローラ80は、印刷装置1のステータスを課金後にする。すなわち、コントローラ80は、印刷装置1を契約印刷状態に変更する(状態変更処理)。
【0106】
ステップS65において、コントローラ80は、印刷装置1の契約モードを有効化する(モード有効化処理)。そして、コントローラ80は、印刷装置1のステータスを課金前にする。すなわち、コントローラ80は、印刷装置1を換装待機状態に変更する(待機状態変更処理)。
【0107】
また、コントローラ80は、ステップS64またはステップS65の後、すなわち印刷装置1の契約モードを有効化させた場合に、本体筐体に装着されているインクカートリッジ4それぞれの残量を検出する残量検出処理を実行してもよい。残量検出処理を実行する場合、コントローラ80は、後述するステップS8において送信する有効化完了通知に、残量検出処理で検出した各インクカートリッジ4の残量を示す情報(残量情報)を含めてサーバ9に送信してもよい。
【0108】
コントローラ80が残量検出処理を実行して、残量情報をサーバ9に送信することによって、印刷装置1は、契約カートリッジの提供要求をサーバに送信するときに、インク残量もサーバ9に通知することができる。これにより、サーバ9において、各インクカートリッジ4のインク残量に基づいて、契約カートリッジの提供の要否および/または提供タイミングを決定することができる。
【0109】
以上説明したモード・ステータス設定処理によれば、コントローラ80は、印刷装置1に1つ以上同梱カートリッジが装着されている場合(ステップS63でYES)、印刷装置1を契約印刷状態に変更する。したがって、モード・ステータス設定処理によれば、ユーザは契約締結後に同梱カートリッジを印刷装置1に装着することで、事業者からの契約カートリッジの提供を待つことなく印刷装置1を契約印刷が可能な状態にすることができる。したがって、本実施形態の印刷システム100は、契約締結から契約条件に基づいた契約印刷を開始するまでのタイムラグを小さくすることができる。
【0110】
また、モード・ステータス設定処理によれば、コントローラ80は、印刷装置1に契約カートリッジも同梱カートリッジも装着されていない場合(S62でNOかつS63でNO)に、印刷装置1を換装待機状態に変更して、契約カートリッジまたは同梱カートリッジが装着されるまで契約印刷を実施しないようにすることができる。
【0111】
≪発送判定≫
図5は、サーバ9における発送判定の処理の流れを示すフローチャートである。なお、
図5のフローは、
図3のシーケンス図のS7時点の処理に相当する。すなわち、サーバ9は、印刷装置1から有効化完了通知を受信した状態であるとする。
【0112】
ステップS111において、サーバ制御部93は、有効化完了通知に含まれているカートリッジ情報を参照し、印刷装置1に装着されているインクカートリッジ4のなかに、1つでも同梱カートリッジが含まれているか否かを判定する。同梱カートリッジが1つ以上含まれている場合(ステップS111でYES)、サーバ制御部93はステップS112の処理を実行する。一方、同梱カートリッジが1つも含まれていない場合、サーバ制御部93はステップS115の処理を実行する。
【0113】
ステップS112において、サーバ制御部93は、初回契約カートリッジの発送不要であると決定する。ステップS112を実行した場合、サーバ制御部93はステップS113の判定を実行する。
【0114】
ステップS113において、サーバ制御部93は、有効化完了通知に含まれていたカートリッジ情報を参照することで、印刷装置1に同梱カートリッジであって、かつインク残量が所定の閾値以下であるインクカートリッジ4が装着されているか否かを判定する。
【0115】
印刷装置1に同梱カートリッジであって、かつインク残量が所定の閾値以下であるインクカートリッジ4が装着されている場合(ステップS113でYES)、サーバ制御部93は、ステップS113でYESの条件を満たすインクカートリッジ4と同じ色の契約カートリッジを、初回契約カートリッジとして発送要であると決定する。
【0116】
印刷装置1に同梱カートリッジであって、かつインク残量が所定の閾値以下であるインクカートリッジ4が装着されていない場合(ステップS113でNO)、サーバ制御部93は、ステップS112の決定を維持する。すなわち、サーバ制御部93は、初回契約カートリッジの発送不要の決定を維持する。
【0117】
ステップS113およびS114の処理によれば、同梱カートリッジであっても残量が少ないカートリッジについては、替えとなる契約カートリッジを初回契約カートリッジとしてユーザに発送する。前述の通り、同梱カートリッジは通常印刷にも使用可能なインクカートリッジ4である。したがって、印刷装置1の契約モードが有効化される前に、同梱カートリッジを用いて通常印刷が行われていることもある。ステップS113およびS114の処理によれば、コントローラ80が契約モードを有効化した時点で、すでに消耗品の残量が減少していた場合に、消耗品の残量が無くなる前に替えの第1種消耗品を発送することができる。
【0118】
一方、ステップS111において、同梱カートリッジが1つも含まれていない場合(ステップS111でNO)、サーバ制御部93はステップS115の処理を実行する。ステップS115において、サーバ制御部93は、初回契約カートリッジの発送要と決定する。
【0119】
≪全体フロー≫
図6は、印刷システム100において、印刷装置1が契約モードを有効化した後の処理の流れを示すシーケンス図である。
図6は、一例として、印刷システム100において
図3と同様の処理の流れを経た後の、印刷装置1およびサーバ9の処理の流れを示している。すなわち、印刷装置1は
図6の開始時点で契約モードを有効化していることとする。
【0120】
ステップS20では、印刷装置1のコントローラ80は、印刷装置1にいずれかのカートリッジが装着された場合に、これを検知する。例えば、
図2のステップS13の後、ユーザの手元に初回契約カートリッジが発送される。ユーザがこの初回契約カートリッジを印刷装置1に装着したときに、印刷装置1のコントローラ80は該装着を検知する。
【0121】
コントローラ80が印刷装置1に対するカートリッジの装着をどのように検知するかは、印刷装置1のハードウェアまたはソフトウェアの仕様を鑑みて、適宜定められてよい。例えば、印刷装置1は、カートリッジを装着するための開口を有する本体筐体を備えていてもよい。そして、コントローラ80は、印刷装置1の本体筐体へのカートリッジの装着を検知してもよい(検知処理)。これにより、印刷装置1は、カートリッジが装着された場合に、該装着されたカートリッジが、定額印刷に適切なカートリッジであるか否かを、遅滞なく判定することができる。
【0122】
例えば、コントローラ80は、本体筐体にカートリッジが接触したことを検知した場合に、本体筐体にカートリッジが装着されたと判定してもよい。例えば、コントローラ80は、センサまたは機械的な機構に基づいて、本体筐体に対するカートリッジの接触を検知してもよい。
【0123】
また、コントローラ80は、本体筐体へのカートリッジの装着に係るユーザ操作を検知した場合に、「本体筐体へカートリッジが装着された」とみなしてもよい。例えば、印刷装置1が本体筐体の開口を開閉するためのカバーを備えている場合、コントローラ80は、前記カバーが閉じられたことを、センサまたは機械的な機構に基づいて検知してもよい(検知処理)。そして、コントローラ80は、該カバーが閉じられたことを検知した場合に、本体筐体へ消耗品が装着されたとみなしてもよい。これにより、印刷装置1は、ユーザが本体筐体にカートリッジを装着して本体筐体を閉めたタイミングで、カートリッジが特定種類の消耗品であるか否かを判定することができる。これにより、定額印刷に適切な消耗品が装着されているか、遅滞なく判定することができる。
【0124】
ステップS21では、コントローラ80は、消耗品判定処理を実行する。消耗品判定処理とは、印刷装置1に装着されている1つ以上のカートリッジに、定額印刷が可能な状態である契約印刷状態への変更条件に合致する、特定種類のカートリッジが含まれているか否かを判定する処理である。本実施形態では、「特定種類のカートリッジ」とは、契約カートリッジのことである。
【0125】
≪消耗品判定処理≫
図7は、消耗品判定処理の流れを示すフローチャートである。なお、前述の通り、本実施形態に係るコントローラ80は、通信監視処理を定期的に実行していることとする。
【0126】
ステップS211において、コントローラ80は、印刷装置1がサーバ9と通信可能な状態であるか否かを判定する。例えば、コントローラ80は本体メモリ82の通信ステータスの情報を参照することで、印刷装置1とサーバ9との通信状態を特定することができる。印刷装置1とサーバ9が通信可能な状態である場合(ステップS211でYES)、コントローラ80は、ステップS212を実行する。
【0127】
なお、ステップS211の判定処理は必須ではない。しかしながら、ステップS211の判定処理を実行することで、印刷装置1は、印刷装置1とサーバ9が、契約印刷に関する種々の情報を通信可能なときに、契約印刷を実行可能にすることができる。
【0128】
ステップS212において、コントローラ80は、印刷装置1に契約カートリッジが1つ以上装着されているか否かを判定する。印刷装置1に契約カートリッジが1つ以上装着されている場合(ステップS212でYES)、コントローラ80は、ステップS213を実行する。
【0129】
ステップS213において、コントローラ80は、印刷装置1が契約印刷状態への変更条件に合致していると判定する。
【0130】
一方、印刷装置1とサーバ9が通信不可能な状態である場合(ステップS211でNO)、または、印刷装置1に契約カートリッジが1つも装着されていない場合(ステップS212でNO)、コントローラ80はステップS214を実行する。
【0131】
ステップS214において、コントローラ80は、印刷装置1が契約印刷状態への変更条件に合致していないと判定する。
【0132】
再び
図7に戻り説明する。ステップS22において、コントローラ80は、前述の消耗品判定処理の結果に応じた処理を実行する。すなわち、コントローラ80は、印刷装置1が契約印刷状態への変更条件に合致している場合(ステップS22でYES)、ステップS23の処理を実行する。一方、印刷装置1が契約印刷状態への変更条件に合致していない場合(ステップS22でNO)場合、コントローラ80は、再びステップS20の処理を実行するまで待機する。
【0133】
ステップS23において、コントローラ80は、印刷装置1のステータスを「課金後」に変更することによって、印刷装置1を契約印刷状態に変更する。その後、コントローラ80はサーバ9に、印刷装置1を契約印刷状態へ変更させたことを通知する。これにより、印刷装置1からサーバ9に、印刷装置1で定額印刷サービスの利用を開始する旨を通知することができる。なお、コントローラ80はサーバ9に、状態変更とともに、第2枚数カウンタの値を通知してもよい。
【0134】
また、前述の通知の送信タイミングは、ステップS26の定額印刷までの間であれば、特に限定されない。例えば、コントローラ80が定期的にサーバ9と通信する仕様の場合、コントローラ80はステップS22の処理を実行した直後の通信タイミングで、前述の通知をサーバ9に送信してよい。
【0135】
ステップS24において、サーバ9は、印刷装置1についての課金を開始させる。具体的には、サーバ9のサーバ制御部93は前述の通知を受信すると、印刷装置1についての装置情報を更新する。具体的には、サーバ9のサーバ制御部93は、サーバメモリ92に格納された装置情報のうち、通知を受けた印刷装置1の装置情報に含まれる開始フラグを「済」に変更する。サーバ9は続いて、ステップS25を実行する。
【0136】
ステップS25において、サーバ9のサーバ制御部93は、課金開始時の印刷枚数を記憶する。具体的には、サーバ制御部93は、コントローラ80からの通知に含まれている第2枚数カウンタの値を、該通知を送信してきた印刷装置1の装置情報の第2枚数カウンタの値として記憶する。これにより、印刷装置1において定額印刷サービスが開始されたとき、すなわち課金開始時の第2枚数カウンタの値が、サーバ9に記憶される。通知の送信後、サーバ9はステップS26を実行する。
【0137】
ステップS26において、印刷装置1は、定額印刷を実行する。例えば、印刷装置1は、ステップS23およびサーバ9への通知の送信後、ユーザの入力操作、またはパーソナルコンピュータ等、印刷装置1と有線または無線で接続された機器からの印刷指示にしたがって、定額印刷を実行する。定額印刷の実行後、コントローラ80は本体メモリ82の領域827の第2枚数カウンタの値を更新した上で、サーバ9に、更新後の第2枚数カウンタの値を通知する。サーバ9は該第2枚数カウンタの値を受信する。
【0138】
ステップS27において、サーバ9のサーバ制御部93は、受信した第2枚数カウンタの値から、領域921の装置情報に記憶していた第2枚数カウンタの値を差し引いた値を、定額印刷枚数として記憶する。また、サーバ制御部93は、受信した第2枚数カウンタの値で、装置情報の第2枚数カウンタの値を更新する。
【0139】
以降、印刷装置1からサーバ9に所定のタイミングで、第2枚数カウンタの値が送信される。サーバ9のサーバ制御部93は、第2枚数カウンタの値を受信する度に、前回受信した第2枚数カウンタの値、すなわち装置情報に記憶された第2枚数カウンタの値と、受信した最新の第2枚数カウンタの値との差分枚数を、定額印刷枚数として装置情報に記憶させる。これにより、サーバ9は、印刷装置1において定額印刷サービスを利用して印刷された印刷物の枚数を把握することができる。
【0140】
以上の処理によれば、印刷装置1は、印刷装置1とサーバ9が通信可能で、かつ、契約カートリッジが1つ以上装着されている場合に、定額印刷を可能にする。これにより、印刷装置1とサーバ9が、定額印刷に関する種々の情報を通信可能なときに、定額印刷が実行可能になる。すなわち、定額印刷の「定額」の期間のカウントが始まる。したがって、印刷装置1は、適切なタイミングで定額印刷サービスを開始させることができる。
【0141】
また、以上の処理によれば、印刷装置1はステップS23の処理の後、サーバ9に、印刷装置1を契約印刷状態へ変更したことを通知する。これにより、印刷装置1からサーバ9に、印刷装置1で定額印刷サービスの利用を開始する旨を通知することができる。また、サーバ9はコントローラ80からの通知によって、定額印刷に係る課金の開始タイミングを適切に決定することができる。
【0142】
〔変形例1〕
以上の説明では、印刷装置1がインクジェットプリンタである場合について説明した。しかしながら、印刷装置1は、トナーカートリッジおよびドラムカートリッジ、またはろなーカートリッジとドラムカートリッジが一体となった複合カートリッジを装着可能なプリンタであってもよい。印刷装置1がトナーカートリッジおよびドラムカートリッジを装着可能なプリンタである場合、実施形態1において説明したインクカートリッジ4と同様の情報を、トナーカートリッジおよび/またはドラムカートリッジに格納しておく。そして、印刷装置1のコントローラ80は、これらトナーカートリッジおよび/またはドラムカートリッジからカートリッジ情報を読み取って、本体メモリ82の領域821に記憶させてよい。以降のカートリッジ情報の扱いは、実施形態1で説明したものと同様である。
【0143】
〔変形例2〕
以上の説明では、印刷装置1のモードが契約モードと通常モードの2種類である場合について説明した。しかしながら、印刷装置1のモードの数および種類は実施形態1で説明した一例に限られない。例えば、印刷装置1について2種類の契約が可能であるとする。この場合、印刷装置1のモードは、いずれの契約に係るモードも有効化されていない通常モードと、1つ目の契約に係る契約印刷が可能な第1契約モードと、2つ目の契約に係る契約印刷が可能な第2契約モードと、の3種類であってもよい。同様に、契約の種類が増加した場合、その分だけ契約モードの種類が増加してもよい。また、印刷装置1のモードとして、通常モードとは異なるモードであって、契約の締結に関わらない他のモードがあってもよい。
【0144】
また、契約印刷の種類も定額印刷に限定されない。例えば、モードが第1契約モード、かつステータスが課金後の場合は定額印刷が可能であり、モードが第2契約モード、かつステータスが課金後の場合は、一定の印刷量まで印刷を許可する定量印刷が可能であってもよい。このように、契約印刷が複数種類存在する場合、コントローラ80は有効化した契約モードに応じた種類の契約印刷を可能にすることが望ましい。なお、いずれの契約印刷を可能にした場合であっても、市販カートリッジのみを印刷装置1に装着した場合は、都度、通常印刷を実行可能としてもよい。
【0145】
〔ソフトウェアによる実現例〕
印刷装置1およびサーバ9の制御ブロックは、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0146】
後者の場合、印刷装置1およびサーバ9は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、前記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、前記コンピュータにおいて、前記プロセッサが前記プログラムを前記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。前記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。前記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、前記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、前記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して前記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、前記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0147】
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0148】
1 印刷装置
2 ユーザ端末
4 インクカートリッジ
9 サーバ
42 カートリッジメモリ
80 コントローラ
81 通信インタフェース
82 本体メモリ
91 サーバ通信部
92 サーバメモリ
93 サーバ制御部
100 印刷システム
101 コネクタ