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特許7615509Noxaタンパク質に由来するペプチドを含む細胞外小胞産生促進用組成物、及びこれを用いた細胞外小胞の生産方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】Noxaタンパク質に由来するペプチドを含む細胞外小胞産生促進用組成物、及びこれを用いた細胞外小胞の生産方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20250109BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20250109BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20250109BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 15/87 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C12N5/071
C07K7/08 ZNA
C07K7/06
C12N5/0775
C12N5/10
C12N15/87 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023507310
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 KR2021006905
(87)【国際公開番号】W WO2022055077
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】10-2020-0115145
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523034117
【氏名又は名称】エクソキャリバー セラピューティクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】キム,テ-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジ ヘ
(72)【発明者】
【氏名】ミュン,スン-ヒョン
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-115769(JP,A)
【文献】国際公開第2010/050448(WO,A1)
【文献】特表2015-523069(JP,A)
【文献】Biochemical and Biophysical Research Communications,2019年,Vol.518,pp.80-86
【文献】Biochemical and Biophysical Research Communications,2018年,Vol.495,pp.1661-1667
【文献】Journal of Peptide Science,2013年,Vol.19,pp.485-490
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 7/00-14/825
C12N 5/00-5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる1種以上のペプチドと、
糖と、
MOPS[3-(N-morpholino)propanesulfonic acid]と、
を含むことを特徴とする細胞外小胞産生促進用組成物。
【請求項2】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる1種以上のペプチドと、
糖を含む溶液と、
MOPS[3-(N-morpholino)propanesulfonic acid]と、
を含むことを特徴とする細胞外小胞産生用培地。
【請求項3】
前記糖は、グルコース(glucose)、スクロース(sucrose)、及びソルビトール(sorbitol)からなる群から選ばれる1種以上である、請求項2に記載の細胞外小胞産生用培地。
【請求項4】
前記溶液は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、グルコン酸ナトリウム(Na-gluconate)、グルコン酸カリウム(K-gluconate)、リン酸ナトリウム(NaPO)、及びリン酸カリウム(KPO)からなる群から選ばれる1種以上をさらに含む、請求項2に記載の細胞外小胞産生用培地。
【請求項5】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる1種以上のペプチド、糖を含む溶液、並びにMOPS[3-(N-morpholino)propanesulfonic acid]を含む培地を準備する培地準備段階と、
培地及び細胞株を混合する混合段階と、
を含むことを特徴とする細胞外小胞の生産方法。
【請求項6】
前記糖は、グルコース(glucose)、スクロース(sucrose)、及びソルビトール(sorbitol)からなる群から選ばれる1種以上である、請求項5に記載の細胞外小胞の生産方法。
【請求項7】
前記溶液は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、グルコン酸ナトリウム(Na-gluconate)、グルコン酸カリウム(K-gluconate)、スクロース(Sucrose)、リン酸ナトリウム(NaPO)、及びリン酸カリウム(KPO)からなる群から選ばれる1種以上をさらに含む、請求項5に記載の細胞外小胞の生産方法。
【請求項8】
前記細胞株は、CT26(マウス結腸癌)、HeLa(ヒト子宮頸癌)、HEK293(ヒト腎臓上皮)、3T3-L1(マウス脂肪細胞)、及びHMSC(ヒト間葉系幹細胞)からなる群から選ばれるいずれか1つである、請求項5に記載の細胞外小胞の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2020年9月9日に大韓民国特許庁に提出された大韓民国特許出願第10-2020-0115145号に対して優先権を主張し、当該特許出願の開示事項は本明細書に参照によって組み込まれる。
【0002】
本発明は、Noxaタンパク質由来ペプチドを含む細胞外小胞産生促進用組成物、及びこれを用いた細胞外小胞(Extracellular vesicle,EV)の生産方法に関する。具体的には、アポトーシスに重要な役割を担うNoxaタンパク質に由来するペプチド(Peptide)を含む組成物、及び糖を含む溶液を用いて細胞外小胞を効率的に大量生産する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞外小胞(Extracellular vesicle,EV)は、細胞よりも小さい単位のリン脂質二重層で包まれた袋のことを指し、あらゆる種類の体液に存在する。これは、細胞間に内容物又は情報を交換する役割を担い、近年では、新しいドラッグデリバリーシステムとして利用可能であるという点から注目されている。他のドラッグデリバリーシステムに比し、個々の免疫系の抵抗が少ないこと、細胞膜等の天然のバリアに大きく影響されないこと、特定の細胞への選択性があることなど、他のドラッグデリバリーシステムに比して大きな利点を有している。
【0004】
細胞外小胞は、その大きさ及び生成過程によって、エクソソーム(Exosome)、アポトーシス小体(Apoptotic body)、及びマイクロベシクル(Microveslcles,Ectosome)の3つに分類される。当該エクソソームの大きさは30~150nmであり、細胞内エンドソーム(Endosome)に由来する。当該アポトーシス小体の大きさは、100~5000nmであり、アポトーシスの初期段階で破壊される細胞骨格に由来する。マイクロベシクルの大きさは、50~1000nmであり、特定薬物や物理的ストレスによって細胞膜が突出することで形成される。細胞外小胞のうちエクソソーム及びマイクロベシクルは、新しいドラッグデリバリーシステムとして注目されており、特にエクソソームを用いた研究が多く行われている。
【0005】
エクソソームは、細胞内に陷入した細胞膜から形成される。エンドサイトーシス(Endocytosis)によって細胞膜が細胞の内側に陷入すると、初期エンドソーム(Early sorting endosome,ESE)が形成される。当該初期エンドソームは、小胞体(Endoplasmic reticulum,ER)やゴルジ体(Trans-golgi network,TGN)などと結合し得る。当該初期エンドソームは、後期エンドソーム(Late sorting endosome,LSE)を形成した後、他の細胞質内の物質をエンドソームに取り込むか、エンドソーム内の物質を細胞質内に放出しながら、腔内小胞(Intraluminal vesicle)を含む多胞体(Multivesicular bodies,MVB)を形成する。当該多胞体はオートファゴソーム(Autophagosome)と結合した後、リソソーム(Lysosome)と結合して分解されるか、細胞膜の内側に結合して腔内小胞を細胞外に放出する。このように放出された腔内小胞をエクソソームと称する。当該エクソソームを分離及び精製するための指標としては、CD9、CD63、CD81、フロチリン(flotillin)、HSP70、又はHSP90などがある。
【0006】
エクソソームは、細胞間を移動することで様々な機能を果たす。当該エクソソームは、細胞内の様々な細胞小器官と相互作用し、その結果として、内部にタンパク質、DNA又はRNA等の細胞成分を含む他、アミノ酸等の代謝産物を含むこともある。そのため、当該エクソソームは細胞間の相互作用によって、生殖、発生、免疫反応、又は癌を含む様々な疾病の発生などにおいて重要な役割を担う。
【0007】
エクソソームの診断及び治療への利用が、活発に研究されている。当該エクソソームは、細胞内外に存在するあらゆる物質を反映することができ、当該エクソソームを用いて脳血管疾患、中枢神経疾患等を診断する試みがなされており、特に、癌の診断に対する研究が多く行われている。エクソソームに含まれるDNA、RNA又はタンパク質などの解析による癌診断の可能性は、近年非常に活発に提示されている。
【0008】
また、エクソソームは、新しいドラッグデリバリーシステムとして注目されている。当該エクソソームは、リポソーム(Liposome)に比べて容易に細胞内に入るだけでなく、免疫系の抵抗をほとんど受けない。さらに、当該エクソソームの膜表面には、豊富なリガンド(Ligand)が存在するため、受容体を介した細胞特異的な情報伝達の可能性を示している。
【0009】
そして、マイクロベシクルは、細胞膜が細胞の外側に突出することで形成される。代表的なものとしては、血小板と、赤血球から形成されるマイクロベシクルとがあるが、これらは、細胞が活性化したとき、せん断応力(Shear stress)が加わったとき、又はアポトーシスが生じたときに形成される。当該マイクロベシクルは、由来した細胞の細胞膜と類似の構成を有するので、免疫系からの影響をほとんど受けずに、容易に細胞内に入ることができ、細胞特異的な情報伝達の可能性を示している。
【0010】
ただし、このような利点があるにもかかわらず、細胞外小胞を効率的かつ均一に大量生産することは困難であるという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明者らは、上記のような問題点を解決するために、アポトーシスにおいて重要な役割を担うNoxaタンパク質に由来するペプチド(Peptide)と、その誘導体(Derivative)とを特定条件下で細胞株に処理することで、多量の細胞外小胞(Extracellular vesicle,EV)を効率的かつ均一に大量生産する方法を完成した。
【0012】
また、本発明者らは、細胞膜を通過しにくい物質を、細胞外小胞に担持させることができることを確認した。
【0013】
そこで、本発明の目的は、Noxaタンパク質由来ペプチドを含む細胞外小胞産生促進用組成物を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、Noxaタンパク質由来ペプチド;及び、糖を含む溶液;を含む細胞外小胞産生用培地を提供することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、細胞外小胞産生用培地を用いた細胞外小胞の生産方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、細胞外小胞産生用培地を用いた細胞外小胞搭載物(Payload)のローディング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、Noxaタンパク質由来ペプチドを含む細胞外小胞産生促進用組成物、及びこれを用いた細胞外小胞(Extra-cellular vesicle,EV)の生産方法に関する。具体的には、アポトーシスに重要な役割を担うNoxaタンパク質に由来するペプチド(Peptide)を含む組成物、及び糖を含む溶液を用いて細胞外小胞を効率的に大量生産する方法に関する。
【0018】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0019】
本発明の一例は、Noxaタンパク質由来ペプチド、その誘導体、又はそれらの組み合わせを含む細胞外小胞産生促進用組成物に関する。
【0020】
本発明において、Noxaタンパク質は、Bcl-2 homology 3(BH3)ドメインを介して、Mcl1及びBcl2A1に結合し阻害することによって、BAX及びBAKタンパク質を活性化させ、またシトクロムC(Cytochrome-c)が細胞質に放出されることにより、カスパーゼシステム(Caspase system)が活性化してアポトーシスが誘導されると考えられている。
【0021】
本発明における用語“ペプチド(peptide)”とは、ペプチド結合によってアミノ酸残基が互いに結合して形成された線形の分子を意味する。
【0022】
本発明における用語“誘導体”とは、本発明のペプチドのN末端、C末端などが化学的に修飾された、又はアミノ酸が追加されて変形されたペプチドを意味するが、これに限定されず、本発明のペプチドと同一又は類似の機能を果たすペプチドを意味する。
【0023】
本発明に係る一具体例において、Noxaタンパク質由来ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドに対して約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約98%以上、又は約99%以上の相同性を有するペプチドであってもよい。
【0024】
本発明に係る一具体例において、Noxaタンパク質由来ペプチドの誘導体は、配列番号2~21のいずれか一つのアミノ酸配列からなるペプチドに対して約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約98%以上、又は約99%以上の相同性を有するペプチドであってもよい。
【0025】
本発明においてペプチドは、ペプチド固相合成(Solid phase peptide synthesis)を用いて化学的に直接合成する方法、自動合成装置を用いて合成する方法、又は、ペプチドをコードする塩基配列をベクターに挿入し発現させる方法等で製造されるものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0026】
本発明における用語“ベクター(Vector)”とは、宿主細胞において目的遺伝子を発現させるための手段を意味する。
【0027】
本発明におけるベクターは、例えば、プラスミド(Plasmid)ベクター、コスミド(Cosmid)ベクター、及びバクテリオファージ(Bacteriophage)ベクターと、アデノウイルス(Adenovirus)ベクター、レトロウイルス(Retrovirus)ベクター、及びアデノ関連ウイルス(Adeno-associated virus,AAV)ベクターのようなウイルスベクターを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0028】
本発明の他の一例は、配列番号1~配列番号21のアミノ酸配列を含むペプチド群から選ばれる少なくとも1種以上のペプチド;及び、糖を含む溶液;を含む細胞外小胞産生用培地に関する。
【0029】
本発明における溶液に含まれるペプチドの濃度は、10~80μM、10~70μM、10~60μM、10~50μM、10~40μM、15~80μM、15~70μM、15~60μM、15~50μM、15~40μM、20~80μM、20~70μM、20~60μM、20~50μM又は20~40μMであってもよく、例えば、20~40μMであってもよいが、これに限定されない。
【0030】
本発明における糖は、グルコース、ソルビトール、及びスクロースからなる群から選ばれる1種以上であってもよく、例えば、スクロースであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0031】
本発明における溶液に含まれるグルコースの濃度は、溶液が本発明のグルコース以外の糖を含む場合に、3~70mM、3~60mM、3~50mM、4~70mM、4~60mM、4~50mM、5~70mM、5~60mM、又は5~50mMであってもよく、例えば、5~50mMであってもよいが、これに限定されない。
【0032】
本発明における溶液に含まれるグルコースの濃度は、溶液が本発明のグルコース以外の糖を含まない場合に、80~300mM、80~290mM、80~280mM、80~270mM、80~260mM、80~250mM、90~300mM、90~290mM、90~280mM、90~270mM、90~260mM、90~250mM、100~300mM、100~290mM、100~280mM、100~270mM、100~260mM、又は100~250mMであってもよく、例えば、100mM~250mMであってもよいが、これに限定されない。
【0033】
本発明における溶液に含まれるスクロースの濃度は、80~300mM、80~290mM、80~280mM、80~270mM、80~260mM、80~250mM、90~300mM、90~290mM、90~280mM、90~270mM、90~260mM、90~250mM、100~300mM、100~290mM、100~280mM、100~270mM、100~260mM、又は100~250mMであってもよく、例えば、100mM~250mMであってもよいが、これに限定されない。
【0034】
本発明における溶液に含まれるソルビトールの濃度は、100~350mM、100~340mM、100~330mM、100~320mM、100~310mM、100~300mM、125~350mM、125~340mM、125~330mM、125~320mM、125~310mM、125~300mM、150~350mM、150~340mM、150~330mM、150~320mM、150~310mM、又は150~300mMであってもよく、例えば、150mM~300mMであってもよいが、これに限定されない。
【0035】
本発明における培地は、固形培地及び液体培地からなる群から選ばれる1種以上であってもよく、例えば、液体培地であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0036】
本発明における溶液に含まれるMOPS[3-(N-morpholino)propanesulfonic acid]の濃度は、7~13mM、7~12mM、7~11mM、8~13mM、8~12mM、8~11mM、9~13mM、9~12mM、9~11mM、10~13mM、10~12mM、10~11mMであってもよく、例えば、10mMであってもよいが、これに限定されない。
【0037】
本発明における溶液のpHは、5~10、5~9、5~8、6~10、6~9、6~8、7~10、7~9、又は7~8であってもよく、例えば、7~8であってもよい。
【0038】
本発明における溶液のpHは、細胞外小胞を生産する上で重要であり、pHが10を超える、又はpHが5未満である場合には、細胞外小胞が産生されないことがある。
【0039】
本発明における溶液は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、グルコン酸ナトリウム(Na-gluconate)、グルコン酸カリウム(K-gluconate)、リン酸ナトリウム(NaPO)、及びリン酸カリウム(KPO)からなる群から選ばれる1種以上をさらに含むものであってもよい。
【0040】
本発明における溶液に含まれる塩化ナトリウム(NaCl)の濃度は、1mM以下であってもよく、0~0.8mM、0~0.6mM、0~0.4mM、0.1~1mM、0.1~0.8mM、0.1~0.6mM、又は0.1~0.4mMであってもよく、例えば、0.1mMであってもよいが、これに限定されない。
【0041】
本発明における溶液に含まれる塩化カリウム(KCl)の濃度は、1mM以下であってもよく、0~0.8mM、0~0.6mM、0~0.4mM、0.1~1mM、0.1~0.8mM、0.1~0.6mM、又は0.1~0.4mMであってもよく、例えば、0.1mMであってもよいが、これに限定されない。
【0042】
本発明における溶液に含まれるグルコン酸ナトリウム(Na-gluconate)の濃度は、1mM以下であってもよく、0~0.8mM、0~0.6mM、0~0.4mM、0.1~1mM、0.1~0.8mM、0.1~0.6mM、又は0.1~0.4mMであってもよく、例えば、0.1mMであってもよいが、これに限定されない。
【0043】
本発明における溶液に含まれるグルコン酸カリウム(K-gluconate)の濃度は、1mM以下であってもよく、0~0.8mM、0~0.6mM、0~0.4mM、0.1~1mM、0.1~0.8mM、0.1~0.6mM、又は0.1~0.4mMであってもよく、例えば、0.1mMであってもよいが、これに限定されない。
【0044】
本発明における溶液に含まれるリン酸ナトリウム(NaPO)の濃度は、1mM以下であってもよく、0~0.8mM、0~0.6mM、0~0.4mM、0.1~1mM、0.1~0.8mM、0.1~0.6mM、又は0.1~0.4mMであってもよく、例えば、0.1mMであってもよいが、これに限定されない。
【0045】
本発明における溶液に含まれるリン酸カリウム(KPO)の濃度は、1mM以下であってもよく、0~0.8mM、0~0.6mM、0~0.4mM、0.1~1mM、0.1~0.8mM、0.1~0.6mM、又は0.1~0.4mMであってもよく、例えば、0.1mMであってもよいが、これに限定されない。
【0046】
本発明の一実施例において、溶液は、グルコース5mM、MOPS10mM、及びスクロース250mMを含むものであってもよい。
【0047】
本発明の一実施例において、溶液は、グルコース255mM、及びMOPS10mMを含むものであってもよい。
【0048】
本発明の一実施例において、溶液は、グルコース5mM、MOPS10mM、及びソルビトール250mMを含むものであってもよい。
【0049】
本発明のさらに他の一例は、次の段階を含む細胞外小胞の生産方法に関する:
配列番号1~配列番号21のアミノ酸配列を含むペプチド群から選ばれる少なくとも1種以上のペプチド、及び糖を含む溶液を含む培地を準備する培地準備段階;及び
培地と細胞株とを混合する混合段階。
【0050】
本発明において、細胞株は、CT26(マウス結腸癌)、HeLa(ヒト子宮頸癌)、HEK293(ヒト腎臓上皮)、3T3-L1(マウス脂肪細胞)、及びHMSC(ヒト間葉系幹細胞)からなる群から選ばれる1種であってもよく、例えば、HeLa、又はHEK293であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0051】
本発明のさらに他の一例は、次の段階を含む細胞外小胞搭載物(Payload)のローディング方法に関する:
配列番号1~配列番号21のアミノ酸配列を含むペプチド群から選ばれる少なくとも1種以上のペプチド、及び糖を含む溶液を含む培地を準備する培地準備段階;及び
培地、搭載物(Payload)、及び細胞株を混合する混合段階。
【0052】
本発明において、搭載物(Payload)は、タンパク質、DNA、RNA、プラスミドDNA及び抗癌物質からなる群から選ばれる1種以上であってもよく、例えば、プラスミドDNAであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0053】
本発明において、ローディング(loading)は、細胞外小胞に搭載物(Payload)を担持させることを意味するが、これに限定されない。
【0054】
本発明において、抗癌物質は、抗癌タンパク質、腫瘍抑制遺伝子、及び抗癌剤からなる群から選ばれる1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0055】
本発明において、抗癌タンパク質は、アスパラギナーゼ、ボツリヌス毒素(Botulinum toxin)、破傷風毒素(Tetanus toxin)、志賀毒素(Shiga toxin)、ジフテリア毒素(Diphtheria toxin,DT)、リシン(ricin)、シュードモナス外毒素(Pseudomonas exotoxin,PE)、サイトリシンA(cytolysin A,ClyA)、γ-ゲロニン(γ-Gelonin)、血管内皮増殖因子(vscular endothelial growth factor、VEGF)、アンジオポエチン1(angiopoietin 1,Ang1)、アンジオポエチン2(Ang2)、形質転換増殖因子-β(transforming growth factor-β)、TGF-βインテグリン(integrin)、血管内皮カドヘリン(VE-cadherin)、プラスミノーゲン活性剤(plasminogen activator,PA)、エフリン(ephrin)、血小板由来増殖因子(PDGF)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1,monocyte chemotactic protein-1)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、胎盤増殖因子(placenta growth factor,PIGF)、VHL(von HippelLindau)、APC(Adenomatous polyposis coli)、CD95(cluster of differentiation 95)、ST5(Suppression of tumorigenicity 5)、YPEL3(Yippee like 3)、ST7(Suppression of tumorigenicity 7)、及びST14(Suppression of tumorigenicity 14)からなる群から選ばれる1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0056】
本発明において、腫瘍抑制遺伝子は、VHL(von HippelLindau)、APC(Adenomatous polyposis coli)、CD95(cluster of differentiation 95)、ST5(Suppression of tumorigenicity 5)、YPEL3(Yippee like 3)、ST7(Suppression of tumorigenicity 7)、及びST14(Suppression of tumorigenicity 14)からなる群から選ばれる1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0057】
本発明において、抗癌剤は、メトトレキサート(methotrexate)、5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、ゲムシタビン(gemcitabine)、アラビノシルシトシン(arabinosylcytosine)、ヒドロキシウレア(hydroxy urea)、メルカプトプリン(mercaptopurine)、チオグアニン(thioguanine)、ナイトロジェンマスタード(nitrogen mustard)、シクロスポラミド(cyclosporamide)、アントラシクリン(anthracycline)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、エピルビシン(epirubicin)、イダルビシン(idarubicin)、ピキサントロン(pixantrone)、サバルビシン(sabarubicin)、バルルビシン(valrubicin)、アクチノマイシンD(actinomycin D)、ビンクリスチン(vincristine)、タキソール(taxol)、コンブレタスタチンA4(combretastatin A4)、フマギリン(Fumagillin)、ハービマイシン(herbimycin A)、2-メトキシエストラジオール(2-methoxyestradiol)、OGT 2115、TNP 470、トラニラスト(tranilast)、XRP44X、サリドマイド(thalidomide)、エンドスタチン(endostatin)、サルモシン(salmosin)、アンジオスタチン(angiostatin)、プラスミノーゲン(plasminogen)、アポリポタンパク質(apolipoprotein)のクリングルドメイン(kringle domain)、オキサロプラチン、カルボプラチン(carboplatin)、シスプラチン(cisplatin)、ボルテゾミブ(Bortezomib)、及び放射性核種(radionuclides)からなる群から選ばれる1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0058】
本発明の細胞外小胞産生促進用ペプチド、及びこれを用いた細胞外小胞の生産方法によれば、細胞外小胞を効率的かつ均一に大量生産でき、また組換えタンパク質又はプラスミドDNAだけでなく、細胞膜を通過しにくい薬物を担持した細胞外小胞を効率的に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1は、eMTDΔ4ペプチドを本発明の一実施例に係る溶液と組み合わせてHeLa細胞株に処理した場合に、細胞外小胞が産生されてプレートの底に沈んでいる様子を顕微鏡で観察した写真である。
図2図2は、eMTDΔ4ペプチドを本発明の一実施例に係る溶液と組み合わせてHeLa細胞株に処理した場合に、細胞外小胞が産生された様子を顕微鏡で観察した写真である。
図3図3は、eMTDΔ4ペプチドをグルコース、ソルビトール、又はスクロースを含む溶液と組み合わせてHeLa細胞株に処理したときに、細胞外小胞が産生される様子を顕微鏡で観察した写真である。
図4図4は、蛍光タンパク質であるEGFPを、エクソソームの指標であるHSP90に結合し、HeLa細胞株にトランスフェクションした後、産生された細胞外小胞を共焦点顕微鏡で観察した写真である。
図5図5は、膜タンパク質であるCD9にmEmeraldを、CD81にmCherryを結合して、HeLa細胞株にトランスフェクションした後、共焦点顕微鏡を用いて細胞外小胞が産生される過程を2秒間隔で撮影した写真である。
図6図6は、HeLa細胞株で産生された細胞外小胞の大きさを原子顕微鏡で測定した写真である。
図7図7は、HEK-293細胞株において、MTD、eMTDΔ4、及びその誘導体によって産生される細胞外小胞の数量をブラッドフォード(Bradford)溶液で定量したヒートマップ(Heat-map)である。
図8図8は、HEK-293細胞株において、MTD、eMTDΔ4、及びその誘導体によって産生される細胞外小胞の大きさと数量をNTA(Nanoparticle Tracking Analysis)システムで分析したグラフである。
図9図9は、細胞外小胞に組換えタンパク質であるTRAILタンパク質を担持させた後、アクリルアミドゲル電気泳動(acrylamide gel electrophoresis)を行った結果である。
図10図10は、細胞外小胞に、プラスミドDNAであるpUC19とpEGFP-C1とを担持させた後、アガロースゲル電気泳動(agarose gel electrophoresis)を行った結果である。
図11図11は、細胞外小胞にプラスミドDNAを担持させた後、これを分離する過程を図式化した模式図である。
図12図12は、HeLa細胞株にeMTDΔ4を処理して産生された細胞外小胞に、細胞膜をよく通過する薬物であるドキソルビシン(doxorubicin)を担持させた後、共焦点顕微鏡でその結果を確認した写真である。
図13図13は、HeLa細胞株にeMTDΔ4を処理して産生された細胞外小胞に、細胞膜を通過しにくい薬物であるPI(propidium iodide)を担持させた後、共焦点顕微鏡でその結果を確認した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明は、例示的な実施形態を参照してより詳細に説明される。これらの例示的な実施形態は、本開示をより詳細に説明する目的のためにのみ提供され、したがって、本開示の目的によれば、これらの例が本開示の範囲を制限するように解釈されないことは、当業者にとって明らかであろう。
【実施例
【0061】
製造例1.Noxaタンパク質由来ペプチド及びその誘導体の製造
Noxaタンパク質のミトコンドリア標的ドメイン(mitochondrial targeting domain,MTD)を、表1の配列番号1に示した。MTD由来のペプチドの合成は、基本的に、0.25mmol単位の手動Fmoc合成法を用いた。具体的には、樹脂とジメチルホルムアミド(Dimethylformamide,DMF)とを用いて洗浄した後、20%ピぺリジン/ジメチルホルムアミド(piperidine/DMF)溶液を10mL添加した。1分間撹拌した後、再度ジメチルホルムアミドで洗浄し、ニンヒドリン試験(ninhydrin test)によりピペリジンが残存していないことを確認した(樹脂が青色に変化)。
【0062】
カップリング(coupling)を行うために、次の溶液を準備した:1mmolのFmoc-アミノ酸(Fmoc-amino acid)、2.1mlの0.45M HBTU/HOBT[(2-(1H-benzotriazol-1-yl)-1,1,3,3-tetramethyluronium hexafluorophosphate,Hexafluorophosphate Benzotriazole Tetramethyl Uronium/Hydroxybenzotriazole](1mmol)、348μLのDIEA(N,N-Diisopropylethylamine)(2mmol)。
【0063】
樹脂に、調製した溶液を加えて30分間振盪した。当該樹脂から溶液を除いた後、ジメチルホルムアミドで樹脂を洗浄した。その後、アミノ酸のカップリングのため、再び溶液を加え、カップリング工程を繰り返し、Noxaタンパク質由来のeMTDΔ4及びその誘導体ペプチドを合成した。
【0064】
このようにして合成されたペプチドを高速液体クロマトグラフィー(機器:Waters 2690分離モジュール、流速:1.0ml/min、勾配:0-20% B、5分;20-50% B、20分;50-80% B、5分、A; 0.1% TFA水溶液, B; 0.1% TFAアセトニトリル、カラム:waters C18,5ミクロン、検出:220nm、純度:95%)、及び質量分析装置(HP 1100シリーズLC/MSD)で解析した。合成したペプチドを表1の配列番号2~21として示した。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例2.細胞外小胞産生用溶液の製造
Noxaタンパク質のミトコンドリア標的ドメインに由来するeMTDΔ4とその誘導体ペプチドを用いた細胞外小胞の生産のために、下記表2に示す組成及び含有量を含む実施例1及び比較例1~18の溶液を製造した。
【0067】
【表2】
【0068】
実験例1.癌細胞株の培養
1-1.細胞株及び試薬の準備
製造例1のNoxaタンパク質由来ペプチド及びその誘導体の細胞外小胞産生誘導活性を試験するに先立って癌細胞株を培養した。
【0069】
培養に必要なDMEM(Dulbecco’modified eagle medium)、RPMI 1640、FBS(Fatal bovine serum)、トリプシン-EDTA(Trypsin-ethylenediaminetetraacetic acid)、及びHBSS(Hank’s balanced salt solution)は、Gibco社から購入し、形質転換(transfection)試薬であるエフェクテン(Effectene)は、Qiagen社から購入した。HeLa及びHEK293細胞株は、韓国細胞株バンク(KCLB)から購入した。
【0070】
1-2.培養
HeLa及びHEK293細胞株を3回以上継代培養(Subculture)して実験に用いた。HeLa細胞株は、10%のウシ胎児血清(Fetal bovine serum,FBS)が含まれたDMEMを、HEK-293細胞株は、10%のウシ胎児血清が含まれたRPMI 1640を使用し、5%(v/v)CO、37℃の条件下で培養した。
【0071】
実験例2.細胞外小胞の生産
2-1.細胞外小胞の生産
HeLa細胞株を6ウェルプレート(Well plate)に培養し、培養液を除去した後、実施例1の溶液をHeLa細胞株に処理した。
【0072】
対照群(Control)には、ペプチドを処理せず、実験群(Experiment)には、配列番号2のeMTDΔ4ペプチド(最終濃度:20μM)を処理した。10分経過後に光学顕微鏡(Bright field)を用いて、細胞外小胞が産生されることを観察した結果を図1に示した。
【0073】
図1から確認できるように、対照群プレートの底はきれいであったが、実験群には、小さい細胞外小胞粒子が形成されてプレートの底に沈んでいた。
【0074】
2-2.様々な溶液を用いた細胞外小胞の生産
配列番号4のR(8):MTDペプチド及び実施例1及び比較例1~18の溶液を用いて、実験例2-1の実験方法によって細胞外小胞を生産した結果を図2A図2Sに示した。
【0075】
図2Aから確認できるように、細胞外小胞が多数生成されており、大部分の粒子はプレートの底に沈んでいた。
しかし、図2B図2Sから確認できるように、細胞外小胞は生成されないため、プレートの底に沈殿した細胞外小胞は観察できず、細胞内のアポトーシス時に発生する粒子の形成のみが観察された。
【0076】
2-3.様々な糖を用いた細胞外小胞の生産
配列番号4のR(8):MTDペプチド及び表3に示した実施例1~実施例3の溶液を用いて、実験例2-1の実験方法によって細胞外小胞を生産した結果を図3A図3Cに示した。
【0077】
【表3】
【0078】
図3A図3Cから確認できるように、スクロースの代わりに、グルコースやソルビトールを過剰に添加しても、細胞外小胞は良好に形成された。
【0079】
実験例3.細胞外小胞の形状の確認
エクソソームの指標であるHSP90タンパク質をHeLa細胞株に形質転換(Transfection)させるために、HeLa細胞株を6ウェルプレートに一晩培養した後、エフェクテンとpEGFP-HSP90とがクローニングされたプラスミドを細胞株に処理し、4時間後に培養液を入れ換えた。
【0080】
翌日、HeLa細胞株から培養液を除去し、実施例1溶液を添加した。対照群にはペプチドを処理せず、実験群には配列番号2のeMTDΔ4ペプチド(最終濃度:20μM)を処理した。HSP90タンパク質は、488nmのアルゴンレーザーを用いて励起(Excitation)させた。10分間後に共焦点顕微鏡(Leica TCS SP5 Microsystems)を用いて対照群と実験群とを観察し、その結果を図4に示した。
【0081】
図4から確認できるように、対照群では、細胞形態は壊れておらず、HSP90タンパク質は細胞質内に位置していた。しかし、実験群(eMTDΔ4)では、細胞形態が損なわれ、HSP90タンパク質を含む細胞外小胞がプレートの底に沈殿していることが確認された。
その理由は、細胞質側のHSP90タンパク質が、細胞外小胞の生成時に生じた細胞膜の欠損を介して細胞外に放出されたためと判断された。
【0082】
実験例4.細胞外小胞の生成過程の確認
HeLa細胞株を12ウェルプレートに一晩培養し、細胞外小胞の指標であるCD9タンパク質を確認するために、エフェクテンとmEmerald-CD9とがクローニングされたプラスミドを処理し、4時間後に培養液を入れ換えた。
【0083】
翌日、HeLa細胞株から培養液を除去し、実施例1溶液を処理した。それぞれのHeLa細胞株にeMTDΔ4ペプチド(最終濃度:20μM)を処理した後、mEmerald-CD9を励起させるために488nm波長のレーザーを利用した。その後、共焦点顕微鏡を用いて約2秒間隔で写真を撮りながら10分間観察し、その結果を図5Aに示した。
【0084】
また、細胞外小胞の指標であるCD81タンパク質を確認するために、mEmerald-CD9の代わりに、mCherry-CD81がクローニングされたプラスミドをHeLa細胞株に処理すること、及びmCherry-CD81を561nm波長のレーザーを用いて励起させること以外は、前記CD9タンパク質を観察するための方法と同じ過程を行い、その結果を図5Bに示した。
【0085】
図5A及び図5Bで確認できるように、CD9タンパク質及びCD81タンパク質のいずれも、細胞外小胞の形成を観察するために十分であり、CD9タンパク質及びCD81タンパク質は、細胞外マトリックスに放出された。また、放出手順は具体的に特定することはできないが、産生後数秒で細胞外小胞が細胞外マトリックスに放出されることが確認できた。
【0086】
実験例5.細胞外小胞の大きさの確認
HeLa細胞株を培養プレート(Culture plate)に培養し、eMTDΔ4ペプチド(最終濃度:20μM)を実施例1溶液と共に細胞株に処理し、10分間後に4%(v/v)パラホルムアルデヒド(Paraformaldehyde)で固定した。
【0087】
その後、原子顕微鏡(Surface Imaging Systems,NANO Station II)を用いて観察し(ピラミッド状先端、146~236kHzの周波数、21~98N/mのばね定数、225nmの長さ、及び0.01~0.02Ωcmの抵抗を有するカンチレバー)、観察した結果を図6A図6Cに示した。
【0088】
図6Aから確認できるように、様々な大きさの細胞外小胞が生成され、その大きさを測定することができた。細胞外小胞の大きさを測定した結果を、図6B及び図6Cのグラフに示した。
図6B及び図6Cから確認できるように、細胞外小胞の大きさは約200nm程度と測定された。このような結果は、本発明における細胞外小胞が、従来知られている細胞外小胞の大きさと同等の大きさを有していることを証明する。
【0089】
実験例6.細胞外小胞の産生量の確認
293-HEK細胞株を6ウェルプレートに2×10個/mLずつ培養し、翌日、実施例1溶液及び配列番号1~21のいずれか一つのペプチドを細胞株に処理した。20分間後に溶液を除去し、12000rcfで遠心分離した後、上清を回収し、ブラッドフォード溶液を用いて細胞外小胞を定量し、その結果を図7及び表4に示した。
【0090】
【表4】
【0091】
図7及び表4から確認できるように、表4に示したペプチドは、産生量に差はあるものの、ほとんどが良好に細胞外小胞を産生していることがわかる。
また、ペプチド処理における最終濃度が10μMから20μM、及び40μMへと増加するに連れて、細胞外小胞に含まれるタンパク質量が増加する傾向があることを確認することができた。
【0092】
実験例6.細胞外小胞の大きさ及び数量の確認
293-HEK細胞株を10cm培養皿に90%コンフルエンシー(約2×10cell)で培養した後、培養液を除去し、eMTDΔ4ペプチド(最終濃度:20μm)を実施例1の溶液5mlに溶かして細胞株に処理した。20分間後に溶液を除去し、12000rcfで遠心分離した後、NTA(Nanoparticle Tracking Analysis )システム(Nanosight LM10,Malvern Instruments)を用いて細胞外小胞の大きさと数量を測定し、その結果を図8A図8D及び表5に示した。
【0093】
【表5】
【0094】
図8A図8D及び表5から確認できるように、細胞外小胞の大きさは、eMTDΔ4ペプチドを用いると、平均(mean)184.5nm、最頻値(mode)126.3nm、及び標準偏差(SD)87.8nmを示した。
MTDペプチドを用いると、平均181.1nm、最頻値115.6nm、及び標準偏差75.2nmを示した。
TU17ペプチドを用いると、平均229.6nm、最頻値150.9nm、及び標準偏差104.3nmを示した。
TU114ペプチドを用いると、平均231.1nm、最頻値182.3nm、及び標準偏差110.2nmを示した。
【0095】
したがって、本発明の細胞外小胞産生促進用ペプチドを特定溶液条件下で用いると、様々な大きさを有する細胞外小胞を効率的に大量生産可能であることが確認できた。
【0096】
実験例7.組換えタンパク質を担持した細胞外小胞の生産
293-HEK細胞株を6ウェルプレートに90%コンフルエンシーで培養した後、培養液を除去し、eMTDΔ4ペプチド(最終濃度:25μM)と組み換え(recombinant)TRAILとを、それぞれ25μM、2μg/mlの濃度で実施例1の溶液に溶かして細胞株に処理した。上清を採取し、PEG(最終濃度:8%)を添加した後、12000rcfで10分間遠心分離して細胞外小胞を沈殿させ、これをSDS-アクリルアミドゲルにかけてTRAILタンパク質を確認し、その結果を図9及び表6に示した。
【0097】
【表6】
【0098】
図9及び表6から確認できるように、本発明の細胞外小胞産生促進用ペプチドを特定溶液条件下で用いると、細胞外小胞生成過程において、外部で添加した組換えタンパク質を細胞外小胞に効率的に担持させることができた。
【0099】
実験例8.プラスミドDNAを担持した細胞外小胞の生産
293-HEK細胞株を6ウェルプレートに90%コンフルエンシーで培養した後、培養液を除去し、eMTDΔ4ペプチド(最終濃度:25μM)とプラスミドDNA(PUC19 3μg/ml、EGFP-C1 6μg/ml)とを実施例1の溶液に溶かして細胞株に処理した。
【0100】
上清1.15mlを採取し、Qiagen緩衝液P3 0.35mlを追加して全量を1.5mlにし、そのうち0.75mlをDNAミニプレップカラム(miniprep column)(Qiagen)に通過させ、通過した溶液はフェノールで精製し、エタノールを用いて沈殿させた。
【0101】
カラムに結合したDNA 30μlとエタノールで沈殿させたDNA 30μlとを水に溶かした後、カラムに結合したDNA 10μl及びエタノールで沈殿させたDNA 10μlをアガロースゲル電気泳動し、EtBrで染色して確認した結果を図10に示した。
【0102】
図10から確認できるように、細胞外小胞生成過程において、外部で添加したプラスミドDNAを細胞外小胞に担持させることができた。
【0103】
また、図11に示す過程によって、細胞外小胞からプラスミドDNAを再び分離することができる。
【0104】
したがって、本発明の細胞外小胞産生促進用ペプチドを特定溶液条件下で用いると、細胞外小胞にプラスミドDNAを効率的に担持させることができる。
【0105】
実験例9.ドキソルビシン(Doxorubicin)を担持した細胞外小胞の生産
ドキソルビシンは、細胞膜をよく通過する薬物であり、乳癌、膀胱癌、カポジ肉腫、リンパ腫又は急性リンパ性白血病など癌治療に使われる薬物である。まず、HeLa細胞株を12ウェルプレートに一晩培養した後、エフェクテンを、pEGFP-HSP90がクローニングされたプラスミドを処理し、4時間後に培養液を入れ換えた。翌日、HeLa細胞株から培養液を除去し、細胞株を準備した。
【0106】
対照群にはペプチドを処理せず、ドキソルビシンのみを処理し、実験群には、eMTDΔ4ペプチド(最終濃度:25μM)とドキソルビシン(最終濃度:100μM)とを実施例1溶液に溶かして処理した後、10分間後に共焦点顕微鏡を用いて観察し、その結果を図12に示した。
【0107】
図12から確認できるように、産生された細胞外小胞は、エクソソーム指標であるHSP90タンパク質の他にドキソルビシンも含んでいた。
【0108】
実験例10.PI(propidium iodide)を担持した細胞外小胞の生産
PI(propidium iodide)は、細胞膜を通過しにくい薬物であり、細胞の染色に使用可能な蛍光物質である。まず、HSP90タンパク質をHeLa細胞株にトランスフェクションさせ、細胞株を準備した。
【0109】
対照群にはペプチドを処理せず、PIのみを処理し、実験群にはeMTDΔ4ペプチド(最終濃度:25μM)を5μg/ml PIと共に実施例1溶液に溶かして細胞株に処理した後、10分間後に共焦点顕微鏡を用いて観察し、その結果を図13に示した。
【0110】
図13から確認できるように、生成された細胞外小胞は、エクソソーム指標であるHSP90タンパク質の他にPIも含んでいた。
【0111】
したがって、タンパク質、DNA、細胞膜を通過できない様々な薬物などを細胞外小胞に担持させることができ、これは新しいドラッグデリバリーシステムとして有用に使用可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、Noxaタンパク質由来ペプチドを含む細胞外小胞産生促進用組成物及びこれを用いた細胞外小胞(Extra-cellular vesicle,EV)の生産方法に関する。具体的には、アポトーシスに重要な役割を担うNoxaタンパク質に由来するペプチド(Peptide)を含む組成物、及び糖を含む溶液を用いて細胞外小胞を効率的に大量生産する方法に関する。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図2L
図2M
図2N
図2O
図2P
図2Q
図2R
図2S
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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