(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】光学シート、光学シート付き偏光板、光学シート付きタッチパネル及び表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G02B5/00 B
(21)【出願番号】P 2020025335
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-12-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】柏木 剛
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-048791(JP,A)
【文献】特開2011-232584(JP,A)
【文献】特開2014-126654(JP,A)
【文献】特開2017-045060(JP,A)
【文献】特開2012-163735(JP,A)
【文献】特開2013-242724(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0082191(KR,A)
【文献】特開2019-020486(JP,A)
【文献】特開2018-112618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
G02B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルと、
前記表示パネルに設けられた光学シートと、を備え、
前記光学シートは、基材と、前記基材に接合する光学機能層と、を備
え、
前記光学機能層は、光吸収部と光透過部とを有し、
前記光透過部の屈折率は、前記光吸収部の屈折率よりも高く、
前記光吸収部は、前記
表示パネルから前記基材に向けて光が透過する方向である出光側へ先細りとなる台形形状であり、
JIS C 2138:2007に準拠する、25℃での前記光学シートの比誘電率が、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で3.18以上3.51以下であ
り、
前記光学シートは、前記光学機能層の前記基材側とは反対側の面に設けられる第1の紫外線硬化樹脂層をさらに備え、
前記第1の紫外線硬化樹脂層は、ウレタンアクリレートを含み、
前記光学シート最表面のうちの一方を前記第1の紫外線硬化樹脂層が形成し、前記光学シート最表面のうちの他方を前記基材の前記光学機能層側とは反対側の面が形成し、
前記光学シートの厚みが、100μm以上500μm以下であり、
前記光吸収部は、ベース樹脂と、前記ベース樹脂に保持される光吸収粒子とを含み、
前光吸収粒子は、カーボンブラックを含み、
前記光吸収部100重量部に対して、前記光吸収粒子は、10重量部以上30重量部以下で含まれ、
前記光吸収粒子100重量部に対して、前記カーボンブラックは、10重量部以上50重量部以下で含まれる、表示装置。
【請求項2】
前記光学機能層は、複数の前記光透過部に跨がる状態で前記光透過部と一体となり且つ前記光透過部と同一の材料からなるランド部をさらに有しており、
前記光吸収部は、前記光学機能層の一対の主面のうちの一方から露出し、
前記ランド部は前記一対の主面のうちの他方を形成し且つ前記基材に接合するとともに、前記光吸収部を前記基材側から覆っている、請求項
1に記載の
表示装置。
【請求項3】
表示パネルと、
前記表示パネルに設けられた光学シートと、を備え、
前記光学シートは、基材と、前記基材に接合する光学機能層と、を備
え、
前記光学機能層は、光吸収部と光透過部とを有し、
前記光透過部の屈折率は、前記光吸収部の屈折率よりも高く、
前記光吸収部は、前記
表示パネルから前記基材に向けて光が透過する方向である出光側へ先細りとなる台形形状であり、
JIS C 2138:2007に準拠する、25℃での前記光学シートの誘電正接が、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で0.0102以上0.0197以下であ
り、
前記光学シートは、前記光学機能層の前記基材側とは反対側の面に設けられる第1の紫外線硬化樹脂層をさらに備え、
前記第1の紫外線硬化樹脂層は、ウレタンアクリレートを含み、
前記光学シート最表面のうちの一方を前記第1の紫外線硬化樹脂層が形成し、前記光学シート最表面のうちの他方を前記基材の前記光学機能層側とは反対側の面が形成し、
前記光学シートの厚みが、100μm以上500μm以下であり、
前記光吸収部は、ベース樹脂と、前記ベース樹脂に保持される光吸収粒子とを含み、
前光吸収粒子は、カーボンブラックを含み、
前記光吸収部100重量部に対して、前記光吸収粒子は、10重量部以上30重量部以下で含まれ、
前記光吸収粒子100重量部に対して、前記カーボンブラックは、10重量部以上50重量部以下で含まれる、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルが形成する映像光に光学的作用を付与する光学シートに関する。まあ、本発明は、当該光学シートを備える光学シート付き偏光板、光学シート付きタッチパネル及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルや有機LED(Organic Light Emitting Diode)パネル等の表示パネルに設置され、表示パネルが形成する映像光に光学的作用を付与する光学シートが従来から知られている。
【0003】
例えば特許文献1には光学シートとしてのルーバーフィルムが開示される。このルーバーフィルムは、光吸収部と光透過部とを交互に配列する光学機能層を備える。
【0004】
ルーバーフィルムは、表示パネルからの映像光が広範囲に拡がることを抑制するために用いられたり、覗き見抑制機能の付与のために用いられたりする。
【0005】
一方で、特許文献2には有機LEDパネルとタッチパネルとを備える表示装置が開示されている。特許文献2は、比誘電率の低い粘着剤で表示装置を構成する複数の部材間を接合し、これによりタッチパネルの誤作動の抑制を図ることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-45060号公報
【文献】国際公開第2019/049726号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ルーバーフィルムはタッチパネル付きの表示装置に組み込まれる場合がある。この際、ルーバーフィルムの誘電率が高いと表示パネルで生じる駆動ノイズ等の影響でタッチパネルが誤作動し易くなる。しかしながら、ルーバーフィルム等の光学シートは通常、多層構造であるため、誘電率を調整し難い構造になっている。またルーバーフィルムでは光吸収部に誘電率の上昇を招き得る成分を含有させることがあり、この場合、誘電率の調整がより難しくなる。
【0008】
本発明は上記実情を鑑みてなされたものであり、タッチパネルの誤作動を好適に抑制できる光学シート、光学シート付き偏光板、光学シート付きタッチパネル及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る光学シートは、基材と、前記基材に接合する光学機能層と、を備え、前記光学機能層は、光吸収部と光透過部とを有し、JIS C 2138:2007に準拠する、25℃での比誘電率が、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で3.18以上3.51以下である、光学シートである。
【0010】
本発明に係る光学シートは、前記光学機能層の前記基材側とは反対側の面に設けられる第1の紫外線硬化樹脂層をさらに備えてもよい。
【0011】
本発明に係る光学シートは、前記基材の前記光学機能層側とは反対側の面に設けられる第2の紫外線硬化樹脂層をさらに備えてもよい。
【0012】
光学シート最表面のうちの一方を前記第1の紫外線硬化樹脂層が形成し、光学シート最表面のうちの他方を前記基材の前記光学機能層側とは反対側の面が形成してもよい。
この場合、光学シートの厚みは、100μm以上500μm以下でもよい。光学シートの厚みは、250μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0013】
また、光学シート最表面のうちの一方を前記第1の紫外線硬化樹脂層が形成し、光学シート最表面のうちの他方を前記第2の紫外線硬化樹脂層が形成し、前記基材の厚みは、50μm以上でもよい。前記基材の厚みは、130μm以上が好ましい。
【0014】
また、光学シート最表面のうちの一方を前記光学機能層の前記基材側とは反対側の面が形成し、光学シート最表面のうちの他方を前記基材の前記光学機能層側とは反対側の面が形成し、前記光学シートの厚みは、500μm以下であり、前記基材の厚みは、50μm以上でもよい。前記光学シートの厚みは、220μm以下であり、前記基材の厚みは、50μm以上であることが好ましい。
【0015】
また、前記光学機能層は、複数の前記光透過部に跨がる状態で前記光透過部と一体となり且つ前記光透過部と同一の材料からなるランド部をさらに有しており、前記光吸収部は、前記光学機能層の一対の主面のうちの一方から露出し、前記ランド部は前記一対の主面のうちの他方を形成し且つ前記基材に接合するとともに、前記光吸収部を前記基材側から覆っていてもよい。
【0016】
また、前記光吸収部は、ベース樹脂と、前記ベース樹脂に保持される光吸収粒子とを含み、前光吸収粒子は、カーボンブラックを含んでもよい。
この場合、前記光吸収部100重量部に対して、前記光吸収粒子は、10重量部以上30重量部以下で含まれ、前記光吸収粒子100重量部に対して、前記カーボンブラックは、10重量部以上50重量部以下で含まれてもよい。
【0017】
また、本発明に係る他の光学シートは、基材と、前記基材に接合する光学機能層と、を備え、前記光学機能層は、光吸収部と光透過部とを有し、JIS C 2138:2007に準拠する、25℃での誘電正接が、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で0.0102以上0.0197以下である、光学シートである。
【0018】
また、本発明に係る光学シート付き偏光板は、偏光板と、前記光学シートと、を備える。
【0019】
また、本発明に係る光学シート付きタッチパネルは、タッチパネルと、前記タッチパネルに設けられた前記光学シートと、を備える。
【0020】
また、本発明に係る表示装置は、表示パネルと、前記表示パネルに設けられた前記光学シートと、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、タッチパネルの誤作動を好適に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る光学シートを備える表示装置の層構成を示す概略的な断面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る光学シートの層構成を示す概略的な断面図である。
【
図3】第2の実施の形態に係る光学シートの層構成を示す概略的な断面図である。
【
図4】第3の実施の形態に係る光学シートの層構成を示す概略的な断面図である。
【
図5】
図1に示す表示装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の各実施の形態に係る光学シート等について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0024】
また、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「光学シート」は板やフィルムと呼ばれ得るような部材をも含む概念であり、したがって、「光学シート」は、「光学フィルム」等と呼ばれる部材と、呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
【0025】
また、「シート面(板面、フィルム面)」とは、対象となるシート状(板状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材(板状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。また、シート面の法線とは、シート面に直交する線を意味し、法線に平行な方向のことを法線方向と呼ぶ。また、以下の説明では、シート面(板面、フィルム面)のことを、主面と呼ぶ場合もある。
【0026】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0027】
<<第1の実施の形態>>
図1は、第1の実施の形態に係る光学シート1を備える表示装置DPの層構成を示す概略的な断面図である。
図1に示す表示装置DPは、有機LED(Organic Light Emitting Diode)パネル15と、光学シート1と、円偏光板20と、タッチパネル30と、カバーガラス40と、をこの順に積層して構成されている。
【0028】
光学シート1は、有機LEDパネル15の表示面(表面)15A上に配置されている。光学シート1の表面と円偏光板20の裏面は粘着層で貼り合わされ、円偏光板20の表面とタッチパネル30の裏面は粘着層で貼り合わされ、タッチパネル30の表面とカバーガラス40の裏面は粘着層で貼り合わされている。
【0029】
上記各粘着層は、いわゆるOCA(Optical Clear Adhesive)であり、高い光透過率を有する。本例では、有機LEDパネル15と光学シート1とが粘着層で貼り合わされていないが、これらについても粘着層で貼り合わせてもよい。
【0030】
円偏光板20は、偏光子と、位相差板とを有し、位相差板は有機LEDパネル15側に配置され、偏光子は、位相差板の有機LEDパネル15側とは反対側の面に接合されている。具体的には、偏光子は直線偏光子であり、位相差板は、λ/4位相差板である。
【0031】
タッチパネル30は透明基材を含むものであり、静電容量方式を採用するものである。タッチパネル30は、透明基材としての透明なガラス板と、ガラス板上に例えばモザイク状のパターン等で配置された透明なセンサ電極とを含むものでもよい。またカバーガラス40は保護機能を有するものであるが、反射防止機能等のその他の機能を有してもよい。
【0032】
ちなみに図示例のように円偏光板20が光学シート1よりも外光入射側(カバーガラス40側)に配置される場合には、カバーガラス40から有機LEDパネル15に向けて外光が入射した際に、円偏光板20によって外光が光学シート1まで入射し難くなる。これにより、例えば光学シート1内での多重反射が抑制され得る。その結果、虹ムラや干渉縞等の視認性阻害事象の発生が抑制され、画像の良好な視認性を確保できる。
【0033】
なお、表示装置DPが組み立てられる前の段階において、光学シート1と円偏光板20は、互いに一体とされた光学シート付き偏光板の形態で流通してもよい。また、光学シート1とタッチパネル30は、互いに一体とされた光学シート付きタッチパネルの形態で流通してもよい。
【0034】
<光学シート>
以下、
図2を参照しつつ光学シート1について詳述する。
図2に示す光学シート1は、基材11と、光学機能層12と、第1の紫外線硬化樹脂層13と、を備える。基材11及び光学機能層12は互いに接合されており、第1の紫外線硬化樹脂層13は光学機能層12を基材11側とは反対の側から覆っている。
【0035】
有機LEDパネル15からの映像光は、第1の紫外線硬化樹脂層13から入射して基材11から出射される。光学機能層12は光吸収部12aと光透過部12bとを有する。光学機能層12は、有機LEDパネル15からの映像光の一部を光吸収部12aで吸収又は反射することで例えば映像光の配向を調整するようになっている。
【0036】
光学シート1は、JIS C 2138:2007に準拠する、25℃での比誘電率が、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で3.18以上3.51以下になるように、及び/又は、JIS C 2138:2007に準拠する、25℃での誘電正接が、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で0.0102以上0.0197以下になるように構成されている。
【0037】
上記のように光学シート1の比誘電率が3.18以上3.51以下であるか、及び/又は、誘電正接が0.0102以上0.0197以下である場合には、光学シート1がタッチパネル30とともに表示装置DPに組み込まれた際に、タッチパネルの誤作動を好適に抑制できるようになる。本件発明者はこのような比誘電率及び/又は誘電正接の値と得られる効果との関係を鋭意研究を通して見出し、本発明に到った。このような光学シート1の比誘電率及び/又は誘電正接は、基材11の材質及び厚み、光学機能層12の材質、厚み及び光吸収部12aにおける光吸収成分の含有量、第1の紫外線硬化樹脂層13の材質及び厚み等を適宜調整することにより設定することができる。
【0038】
なお、光学シート1の厚みは100μm以上500μm以下であることが好ましく、250μm以上300μm以下であることがより好ましい。比誘電率及び/又は誘電正接は厚みに応じて変動するものであるが、光学シート1の厚みが上記範囲である場合、特に250μm以上300μm以下である場合、比誘電率及び/又は誘電正接を上記所望の範囲に設定し易くなるとともに、適度な厚みの確保により取り扱いが容易になる。
【0039】
(基材)
基材11は、樹脂やガラス等からなる光透過性を有する透明基材であり、例えばポリカーボネート、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオリフィン、ポリアクリレート、又はポリアミドを主成分とするフィルム、ガラスなどから構成される。基材11の厚みは、例えば60μm以上250μm以下であり、基材11の屈折率は、例えば1.46以上1.67以下である。なお、主成分とは、ある物質を構成する複数の成分のうちの物質全体に対して50%以上の割合で含まれる成分又は最も多く含まれる成分のことを意味する。
【0040】
また、基材11自体のJIS C 2138:2007に準拠する、25℃での比誘電率は、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で3.1以上3.6以下であることが好ましい。また、基材11自体のJIS C 2138:2007に準拠する、25℃での誘電正接は、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で0.0100以上0.0200以下であることが好ましい。
【0041】
基材11自体の比誘電率及び/又は誘電正接が上記の範囲である場合、光学シート1の比誘電率を上記した3.18以上3.51以下にするとともに、誘電正接を上記した0.0102以上0.0197以下に設定し易くなる。ただし、基材11自体の比誘電率及び/又は誘電正接が上記の範囲である場合であっても、光学機能層12や第1の紫外線硬化樹脂層13の材質や厚さ等によっては光学シート1の比誘電率及び/又は誘電正接が所望の範囲から外れる場合も生じ得る。しかしながら、このような場合にあっても、光学機能層12や第1の紫外線硬化樹脂層13の材質や厚さ等を適正に設定しさえすれば、所望の比誘電率及び/又は誘電正接の光学シート1が得られる。
【0042】
(光学機能層)
光学機能層12は光吸収部12aと光透過部12bとを有する所謂ルーバーフィルムであり、光透過部12bと光吸収部12aは、光学機能層12の一対の主面の各々に平行な第1方向D1に沿って交互に配列されている。
図1における符号D2は、上記一対の主面の各々に平行で且つ第1方向D1に直交する第2方向を示しており、光吸収部12aと光透過部12bは第2方向D2で直線状に延びる。なお、第1方向D1と第2方向D2とは直交関係でなくてもよい。
【0043】
光吸収部12aは光を吸収する部分であって、光吸収粒子をベース樹脂、言い換えるとバインダー樹脂中に含んだものである。光吸収粒子としては、例えばカーボンブラックを含有したアクリルビーズ等を用いることができる。なお、光吸収部12aは、バインダー樹脂に例えば黒色フィラーを含ませたものでもよく、その組成は特に限られるものではない。
【0044】
光学シート1は、光学機能層12から基材11に向けて映像光を透過させるように設置され、光吸収部12aによって例えば映像光の配向を調整するものであり、本実施の形態における光吸収部12aの断面形状は、光の出光側へ先細りとなる台形形状となっている。一方、光透過部12bの断面形状は、光の入光側へ先細りとなる台形形状となる。ただし、光吸収部12a及び光透過部12bの断面形状は要求される機能に応じて種々の形状を採用することができるものであって、特に限られるものではなく、例えば矩形状であってもよい。
【0045】
以下においては、光学機能層12の一対の主面のうちの入光側の主面のことを第1主面121と呼び、出光側の主面のことを第2主面122と呼ぶ。上述した基材11は光学機能層12の第2主面122上に設けられ、第1の紫外線硬化樹脂層13は光学機能層12の第1主面121上に設けられている。本実施の形態では、光学シート1最表面のうちの一方(図中下側に位置する面)を第1の紫外線硬化樹脂層13が形成し、光学シート最表面のうちの他方(図中上側に位置する面)を基材11の光学機能層12側とは反対側の面が形成している。
【0046】
また本実施の形態における光学機能層12は、複数の光透過部12bに跨がる状態で光透過部bと一体となり且つ光透過部12bと同一の材料からなるフィルム状のランド部12cをさらに有している。光吸収部12aは、光学機能層12の一対の主面のうちの一方である第1主面121(図中下側の面)から露出し、ランド部12cは光学機能層12の一対の主面のうちの他方である第2主面122を形成し且つ基材11に接合するとともに、光吸収部12aを基材11側から覆っている。ただし、光学機能層12は以上に説明したようなランド部12cを有していなくもよい。
【0047】
光吸収部12aにおけるベース樹脂を構成する材料は特に限定されないが、硬化型樹脂であることが好ましい。具体的には例えば、紫外線若しくは電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂と溶剤乾燥型樹脂(塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)との混合物、又は、熱硬化型樹脂等が挙げられる。光吸収部12aにおけるベース樹脂の屈折率は1.47以上1.65以下であることが好ましく、1.49以上1.57以下であることがより好ましい。ベース樹脂の屈折率が高いと光吸収部12aが割れ易くなるため、屈折率は1.57以下が良い。比誘電率及び/又は誘電正接を低下させるとともに光学性能の低下を抑制する観点では、光吸収部12aを紫外線硬化型アクリル系樹脂、例えば紫外線硬化型ウレタンアクリレートから形成することがよい。
【0048】
一方で、光透過部12bは光を透過させる部分であり、例えば可視光透過性の樹脂からなる。光透過部12bの材料は特に限定されないが、硬化型樹脂であることが好ましい。具体的には例えば、紫外線若しくは電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂と溶剤乾燥型樹脂(塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)との混合物、又は、熱硬化型樹脂等が挙げられる。
【0049】
なお、本実施の形態における光透過部12bは基材11と接合されるため、基材11との接合強度を向上させる観点で基材11と相性が良いことが望まれる。また光吸収部12aを充填させるために光透過部12bに形成される空隙は例えば金型によって形成されるため、光透過部12bは離型剤を含有させる等により離型が良好となる性状を確保することが望まれる。例えば基材11がポリカーボネートを主成分とする場合、上記二つの要望を充足させ得る光透過部12bの材料としては、接合強度向上の観点でフェノキシレチルアクリレートと、離型性確保の観点でリン酸エステルとを含む材料が好適に用いられ得る。
【0050】
また、光透過部12bの屈折率は1.47以上1.65以下であることが好ましく、1.49以上1.57以下であることがより好ましい。屈折率が高いと光透過部12bが割れ易くなるため、屈折率は1.57以下が良い。また、光透過部12bの屈折率は、上記光吸収部12aのベース樹脂の屈折率よりも高い又は同一であることが望ましい。光透過部12bの屈折率が光吸収部12aのベース樹脂の屈折率よりも高い場合には、光透過部12bから光吸収部12aに向かう光の全反射を利用した光学設計が可能となり、例えば光の利用効率を高めることができる。また、光透過部12bの屈折率が光吸収部12aのベース樹脂の屈折率と同一の場合、光の全反射や屈折が起きないため、例えば表示装置の表面から光学シート1までの距離が離れたとしても、透過光と全反射光、屈折光の2重像の発生を防止することが可能となる。比誘電率及び/又は誘電正接を低下させるとともに光学性能の低下を抑制する観点では、光透過部12bを紫外線硬化型アクリル系樹脂、例えば紫外線硬化型ウレタンアクリレートから形成することがよい。
【0051】
また、光学機能層12における光吸収部12aおよび光透過部12bの配列のピッチは特に限定されないが、ルーバーフィルムの機能を効果的に発揮する観点から、15μm以上100μm以下であることが好ましく、30μm以上100μm以下であることがより好ましい。また、光吸収部12aの高さ(厚み)は60μm以上150μm以下であることが好ましい。またランド部12cの厚みは、10μm以上50μm以下であることが好ましい。また光吸収部12aの第1方向D1における最大幅(露出する側の端部の幅)は、5μm以上15μm以下であることが好ましい。5μmよりも小さいと光学性能が損なわれる虞があり、15μmよりも大きいと比誘電率及び/又は誘電正接を低下させ難くなる虞がある。
【0052】
また光学機能層12自体のJIS C 2138:2007に準拠する、25℃での比誘電率は、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で3.1以上3.6以下であることが好ましい。また、光学機能層12自体のJIS C 2138:2007に準拠する、25℃での誘電正接は、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で0.0100以上0.0200以下であることが好ましい。
【0053】
光学機能層12自体の比誘電率及び/又は誘電正接が上記の範囲である場合、光学シート1の比誘電率を上記した3.18以上3.51以下にするとともに、誘電正接を上記した0.0102以上0.0197以下に設定し易くなる。ただし、光学機能層12自体の比誘電率及び/又は誘電正接が上記の範囲である場合であっても、基材11や第1の紫外線硬化樹脂層13の材質や厚さ等によっては光学シート1の比誘電率及び/又は誘電正接が所望の範囲から外れる場合も生じ得る。しかしながら、このような場合にあっても、基材11や第1の紫外線硬化樹脂層13の材質や厚さ等を適正に設定しさえすれば、所望の比誘電率及び/又は誘電正接の光学シート1が得られる。
【0054】
ここで、光吸収部12aにおける光吸収粒子がカーボンブラック等の誘電体を含む場合、当該誘電体は光学シート1の比誘電率及び/又は誘電正接の増加を招き得る。一方で、比誘電率及び/又は誘電正接を低下させるためにカーボンブラック等の誘電体の量を減少させた場合には、光吸収部12aの光学性能の低下が生じ得る。このような比誘電率及び/又は誘電正接の抑制及び光学性能の低下の抑制の観点から、光吸収部12aが、ベース樹脂とベース樹脂に保持される光吸収粒子とを含み、光吸収粒子がカーボンブラックを含む場合においては、光吸収部12aを100重量部としたとき、光吸収粒子は10重量部以上30重量部以下で含まれるのがよい。そして、光吸収粒子100重量部に対して、カーボンブラックは、10重量部以上50重量部以下で含まれるのがよい。カーボンブラック等の誘導体の含有量を過剰に少なくせず且つ多くしないことで、比誘電率及び/又は誘電正接の抑制と、光学性能の低下の抑制とを両立させ易くなる。
【0055】
(第1の紫外線硬化樹脂層)
第1の紫外線硬化樹脂層13は光学機能層12を覆うことにより、光学機能層12を保護する機能を有する。また、本件発明者は、紫外線硬化型樹脂からなる層で光学機能層12側のみを覆うことにより比誘電率及び誘電正接を効果的に抑制できることを見出し、光学機能層12に第1の紫外線硬化樹脂層13を接合させている。第1の紫外線硬化樹脂層13の厚みは、例えば5μm以上50μm以下であり、第1の紫外線硬化樹脂層13の屈折率は、例えば1.47以上1.65以下である。
【0056】
第1の紫外線硬化樹脂層13の材料は特に限定されないが、硬化型樹脂であることが好ましい。具体的には例えば、紫外線若しくは電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂と溶剤乾燥型樹脂(塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)との混合物等が挙げられる。
【0057】
本実施の形態では、光学シート1が表示装置に組み込まれた際に、第1の紫外線硬化樹脂層13が他の光学部材、具体的には有機LEDパネル15の表面材と隣り合う状況になることが想定されるが、この状況下では、第1の紫外線硬化樹脂層13が他の光学部材に接触したとしても、他の光学部材を傷付けず且つ他の光学部材と密着しないことが望まれる。そこで第1の紫外線硬化樹脂層13は高い摺動性を確保することが望ましく、これを充足するためにスリップ剤を含んでもよい。スリップ剤としては、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アルミド、ワックス(パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス)、シリコーンオイル等が用いられ得る。また本実施の形態における第1の紫外線硬化樹脂層13はマット層として形成されており、表面が粗くなっている。これにより、有機LEDパネル15と密着することを回避し易くなっている。なお、比誘電率及び/又は誘電正接を低下させるとともに光学性能の低下を抑制する観点では、第1の紫外線硬化樹脂層13を紫外線硬化型アクリル系樹脂系、例えば紫外線硬化型ウレタンアクリレートから形成することがよい。
【0058】
第1の紫外線硬化樹脂層13自体のJIS C 2138:2007に準拠する、25℃での比誘電率は、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で3.1以上3.6以下であることが好ましい。また、第1の紫外線硬化樹脂層13自体のJIS C 2138:2007に準拠する、25℃での誘電正接は、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で0.0100以上0.0200以下であることが好ましい。
【0059】
第1の紫外線硬化樹脂層13自体の比誘電率及び/又は誘電正接が上記の範囲である場合、光学シート1の比誘電率を上記した3.18以上3.51以下にするとともに、誘電正接を上記した0.0102以上0.0197以下に設定し易くなる。ただし、第1の紫外線硬化樹脂層13自体の比誘電率及び/又は誘電正接が上記の範囲である場合であっても、基材11や光学機能層12の材質や厚さ等によっては光学シート1の比誘電率及び/又は誘電正接が所望の範囲から外れる場合も生じ得る。しかしながら、このような場合にあっても、基材11や光学機能層12の材質や厚さ等を適正に設定しさえすれば、所望の比誘電率及び/又は誘電正接の光学シート1が得られる。
【0060】
以上に説明した第1の実施の形態に係る光学シート1は、光学シート1は、基材11と、光学機能層12と、を備える、詳しくは、光学シート1は第1の紫外線硬化樹脂層13をさらに備え、光学シート1最表面のうちの一方を第1の紫外線硬化樹脂層13が形成し、光学シート最表面のうちの他方を基材11の光学機能層12側とは反対側の面が形成する。そして、光学シート1は、JIS C 2138:2007に準拠する、25℃での比誘電率が、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で3.18以上3.51以下になるように、及び/又は、JIS C 2138:2007に準拠する、25℃での誘電正接が、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で0.0102以上0.0197以下になるように構成されている。
【0061】
このような光学シート1では、その比誘電率及び/又は誘電正接が過剰に大きくないことでタッチパネル30とともに表示装置DPに組み込まれた場合におけるタッチパネル30の誤作動を好適に抑制できる。
【0062】
<<第2の実施の形態>>
次に第2の実施の形態に係る光学シート2について
図3を参照しつつ説明する。
図3に示す光学シート2は、基材11と、光学機能層12と、第1の紫外線硬化樹脂層13と、第2の紫外線硬化樹脂層14と、を備える。本実施の形態では、光学シート1最表面のうちの一方(図中下側に位置する面)を第1の紫外線硬化樹脂層13が形成し、光学シート最表面のうちの他方(図中上側に位置する面)を第2の紫外線硬化樹脂層14が形成している。
【0063】
この光学シート2も、第1の実施の形態と同様に、JIS C 2138:2007に準拠する、25℃での比誘電率が、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で3.18以上3.51以下になるように、及び/又は、JIS C 2138:2007に準拠する、25℃での誘電正接が、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で0.0102以上0.0197以下になるように構成されている。
ここで、光学シート2の厚みは100μm以上500μm以下であることが好ましく、270μm以上450μm以下であることがより好ましい。光学シート1の厚みが上記範囲である場合、特に270μm以上450μm以下である場合、比誘電率及び/又は誘電正接を上記所望の範囲に設定し易くなる。また、基材11の厚みは例えば50μm以上であり、60μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましい。なお、その他の基材11、光学機能層12及び第1の紫外線硬化樹脂層13の好ましい条件は第1の実施の形態と同じである。
【0064】
また第2の紫外線硬化樹脂層14は例えば基材11の保護のために設けられる。第2の紫外線硬化樹脂層14の厚みは、例えば5μm以上50μm以下であり、第2の紫外線硬化樹脂層14の屈折率は、例えば1.47以上1.65以下である。第2の紫外線硬化樹脂層14の材料は特に限定されないが、硬化型樹脂であることが好ましい。具体的には例えば、紫外線若しくは電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂と溶剤乾燥型樹脂(塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)との混合物、又は、熱硬化型樹脂等が挙げられる。比誘電率及び/又は誘電正接を低下させるとともに光学性能の低下を抑制する観点では、第2の紫外線硬化樹脂層14を紫外線硬化型アクリル系樹脂、例えば紫外線硬化型ウレタンアクリレートから形成することがよい。
【0065】
また、第2の紫外線硬化樹脂層14は、第1の紫外線硬化樹脂層13と同じ材料で且つ同じ厚みで形成されることが好ましい。この場合、第2の紫外線硬化樹脂層14の線膨張係数及び第1の紫外線硬化樹脂層13の線膨張係数を揃えることができ、カール等の不具合が抑制され得る。また、製造コストの抑制も図れる。
【0066】
以上に説明した第2の実施の形態に係る光学シート2でも、その比誘電率及び/又は誘電正接が過剰に大きくないことでタッチパネル30とともに表示装置DPに組み込まれた場合におけるタッチパネル30の誤作動を好適に抑制できる。また、後述する実施例で示されるが、第2の実施の形態に係る光学シート2は、第2の紫外線硬化樹脂層14を設けない以外ほぼ同じ条件となる第1実施の形態に係る光学シート1よりも比誘電率及び誘電正接が大きくなる傾向がある。ただし、第2の実施の形態に係る光学シート2は第2の紫外線硬化樹脂層14を有することで良好な耐久性及び使い勝手を確保できる。
【0067】
<<第3の実施の形態>>
次に第3の実施の形態に係る光学シート3について
図4を参照しつつ説明する。
図4に示す光学シート3は、基材11と、光学機能層12とを備え、光学シート1最表面のうちの一方(図中下側に位置する面)を光学機能層12の基材11側とは反対側の面が形成し、光学シート最表面のうちの他方(図中上側に位置する面)を基材11の光学機能層12側とは反対側の面が形成している。
【0068】
この光学シート3も、第1の実施の形態と同様に、JIS C 2138:2007に準拠する、25℃での比誘電率が、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で3.18以上3.51以下になるように、及び/又は、JIS C 2138:2007に準拠する、25℃での誘電正接が、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で0.0102以上0.0197以下になるように構成されている。光学シート3の厚みは500μm以下であることが好ましく、基材11の厚みは50μm以上であることが好ましく、光学シート3の厚みが220μm以下であり且つ基材11の厚みが50μm以上であることがより好ましい。なお、その他の基材11及び光学機能層12の好ましい条件は第1の実施の形態と同じである。
【0069】
以上に説明した第3の実施の形態に係る光学シート3も、その比誘電率及び/又は誘電正接が過剰に大きくないことでタッチパネル30とともに表示装置DPに組み込まれた場合におけるタッチパネル30の誤作動を好適に抑制できる。本実施の形態では光学シート1の全体の厚みを抑制することにより比誘電率及び/又は誘電正接を抑制している。このような第3の実施の形態に係る光学シート3によれば、単純な2層構造であるため生産性を向上できる。
【0070】
<<変形例>>
第1の実施の形態では、光学シート1が有機LEDパネル15とタッチパネル30との間に設けられるが、光学シート1~3は
図5の変形例に示すように表示装置のカバーガラス40上に設けられてもよい。この場合、光学シート1~3は覗き見抑制機能を発揮する。一方で、カバーガラス40上に光学シート1~3が設けられる場合、比誘電率及び誘電正接が過剰に低いとタッチパネル30の感度が損なわれ得る。ここで、光学シート1~3のJIS C 2138:2007に準拠する、25℃での比誘電率が、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で3.18以上3.51以下である場合、及び、JIS C 2138:2007に準拠する、25℃での誘電正接が、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で0.0102以上0.0197以下である場合には、タッチパネル30の感度が好適となり且つ誤作動も抑制される。よって、光学シート1~3はタッチパネル30のいずれの側に配置された場合であっても有益である。
【0071】
また、以上に説明した各実施の形態では、有機LEDパネル15とともに光学シート1~3を用いることを想定したものであるが、光学シート1~3は液晶パネルとともに表示装置を構成してもよい。また光学シートは、基材11、光学機能層12及び第2の紫外線硬化樹脂層14のみを備えるものでもよい。
【実施例】
【0072】
以下、本発明の実施例1~4及び比較例1を説明する。実施例1~4及び比較例1は、光吸収部12aの形状に対応する凸部分を有する金型を用いて作製されている。実施例1~4の作製で用いた金型の凸部分は、先細り形状であり、先端側の幅が4μmであり、基端側の幅が10μmである。そして、凸部分の高さは、102μmである。そして、凸部分は、ピッチ39μmで配置されている。比較例1の作製に用いた金型では、凸部分の高さが120μmである。
【0073】
(実施例1)
実施例1は、第1の実施の形態に対応するものであり、基材11と、光学機能層12と、第1の紫外線硬化樹脂層13と、を備える。
基材11として、厚み130μmのポリカーボネイトフィルム(AGC社製、カーボグラス)が用いられた。
光学機能層12のうちの光透過部12bの形成材料として、屈折率1.56の紫外線硬化型ウレタンアクリレートが用いられた。そして、基材11上に当該紫外線硬化型ウレタンアクリレートが設けられ、上述した金型で光吸収部12aの形状に対応する凹部が形成された後、離れ型及びUV照射による硬化を行うことで、基材11上に厚み12μmのランド部12cと光透過部12bとが形成された。
【0074】
光学機能層12のうちの光吸収部12aの形成材料として、屈折率1.49の紫外線硬化型ウレタンアクリレートからなるベース樹脂と、カーボンブラックを含有した平均粒径4μmのアクリルビーズからなる光吸収粒子と、を含む材料が用いられた。光吸収粒子は形成材料全体において20重量%で含有されている。そして、このような光吸収部12aの形成材料を、光透過部12bに塗工し、ドクターブレードで上記凹部内に押し込み、その後、UV照射による硬化を行うことで、光吸収部12aが形成された。
第1の紫外線硬化樹脂層13の形成材料として、屈折率1.51の紫外線硬化型ウレタンアクリレートが用いられた。この紫外線硬化型ウレタンアクリレートを光吸収部12a上に設け、マット面が形成されるように金型を押し当てた上でUV照射による硬化を行うことで、第1の紫外線硬化樹脂層13が形成された。
【0075】
実施例1の各要素の厚み及び光学シート総厚みは、以下の通りである。
基材11の厚みは、130μmである。
光学機能層12のうちのランド部12cの厚みは、12μmである。
光学機能層12のうちの光透過部12bの厚みは、102μmである。
光学機能層12のうちの光吸収部12aの厚みは、102μmである。
第1の紫外線硬化樹脂層13の厚みは、25μmである。
光学シート総厚みは、269μmである。
【0076】
(実施例2)
実施例2は、第2の実施の形態に対応するものであり、基材11と、光学機能層12と、第1の紫外線硬化樹脂層13と、第2の紫外線硬化樹脂層14と、を備える。
基材11として、厚み130μmのポリカーボネイトフィルム(AGC社製、カーボグラス)が用いられた。
光学機能層12のうちの光透過部12bの形成材料として、屈折率1.56の紫外線硬化型ウレタンアクリレートが用いられた。
光学機能層12のうちの光吸収部12aの形成材料として、屈折率1.49の紫外線硬化型ウレタンアクリレートからなるベース樹脂と、カーボンブラックを含有した平均粒径4μmのアクリルビーズからなる光吸収粒子と、を含む材料が用いられた。光吸収粒子は形成材料全体において20重量%で含有されている。
第1の紫外線硬化樹脂層13の形成材料として、屈折率1.51の紫外線硬化型ウレタンアクリレートが用いられた。
光学機能層12及び第1の紫外線硬化樹脂層13の形成手順は、実施例1と同じである。
一方、第2の紫外線硬化樹脂層14の形成材料として、屈折率1.51の紫外線硬化型ウレタンアクリレートが用いられた。紫外線硬化型ウレタンアクリレートを基材11上に設け、マット面が形成されるように金型を押し当てた上でUV照射による硬化を行うことで、第2の紫外線硬化樹脂層14が形成された。
【0077】
実施例2の各要素の厚み及び光学シート総厚みは、以下の通りである。
基材11の厚みは、130μmである。
光学機能層12のうちのランド部12cの厚みは、29μmである。
光学機能層12のうちの光透過部12bの厚みは、102μmである。
光学機能層12のうちの光吸収部12aの厚みは、102μmである。
第1の紫外線硬化樹脂層13の厚みは、25μmである。
第2の紫外線硬化樹脂層14の厚みは、25μmである。
光学シート総厚みは、311μmである。
【0078】
(実施例3)
実施例3は、第2の実施の形態に対応するものであり、基材11と、光学機能層12と、第1の紫外線硬化樹脂層13と、第2の紫外線硬化樹脂層14と、を備える。
基材11として、厚み250μmのポリカーボネイトフィルム(AGC社製、カーボグラス)が用いられた。
光学機能層12のうちの光透過部12bの形成材料として、屈折率1.56の紫外線硬化型ウレタンアクリレートが用いられた。
光学機能層12のうちの光吸収部12aの形成材料として、屈折率1.49の紫外線硬化型ウレタンアクリレートからなるベース樹脂と、カーボンブラックを含有した平均粒径4μmのアクリルビーズからなる光吸収粒子と、を含む材料が用いられた。光吸収粒子は形成材料全体において20重量%で含有されている。
第1の紫外線硬化樹脂層13の形成材料として、屈折率1.51の紫外線硬化型ウレタンアクリレートが用いられた。
第2の紫外線硬化樹脂層14の形成材料として、屈折率1.51の紫外線硬化型ウレタンアクリレートが用いられた。
各層の形成手順は、実施例2と同じである。
【0079】
実施例3の各要素の厚み及び光学シート総厚みは、以下の通りである。
基材11の厚みは、250μmである。
光学機能層12のうちのランド部12cの厚みは、19μmである。
光学機能層12のうちの光透過部12bの厚みは、102μmである。
光学機能層12のうちの光吸収部12aの厚みは、102μmである。
第1の紫外線硬化樹脂層13の厚みは、25μmである。
第2の紫外線硬化樹脂層14の厚みは、25μmである。
光学シート総厚みは、421μmである。
【0080】
(実施例4)
実施例4は、第3の実施の形態に対応するものであり、基材11と、光学機能層12と、を備える。
基材11として、厚み100μmのポリカーボネイトフィルム(AGC社製、カーボグラス)が用いられた。
光学機能層12のうちの光透過部12bの形成材料として、屈折率1.56の紫外線硬化型ウレタンアクリレートが用いられた。
光学機能層12のうちの光吸収部12aの形成材料として、屈折率1.49の紫外線硬化型ウレタンアクリレートからなるベース樹脂と、カーボンブラックを含有した平均粒径4μmのアクリルビーズからなる光吸収粒子と、を含む材料が用いられた。光吸収粒子は形成材料全体において20重量%で含有されている。
光学機能層12の形成手順は、実施例1等と同じである。
【0081】
実施例4の各要素の厚み及び光学シート総厚みは、以下の通りである。
基材11の厚みは、100μmである。
光学機能層12のうちのランド部12cの厚みは、18μmである。
光学機能層12のうちの光透過部12bの厚みは、102μmである。
光学機能層12のうちの光吸収部12aの厚みは、102μmである。
光学シート総厚みは、220μmである。
【0082】
(比較例1)
比較例1は、実施形態と同様の基材と光学機能層とを備えるが、光学機能層に、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合わせ用基材が設けられている。
基材として、厚み130μmのポリカーボネイトフィルム(AGC社製、カーボグラス)が用いられた。
光学機能層のうちの光透過部の形成材料として、屈折率1.56の紫外線硬化型ウレタンアクリレートが用いられた。
光学機能層のうちの光吸収部の形成材料として、屈折率1.49の紫外線硬化型ウレタンアクリレートからなるベース樹脂と、カーボンブラックを含有した平均粒径4μmのアクリルビーズからなる光吸収粒子と、を含む材料が用いられた。光吸収粒子は形成材料全体において20重量%で含有されている。
紫外線硬化型接着剤は、厚み25μmを有する。
貼り合わせ用基材は、厚み100μmのポリカーボネートフィルムである。
【0083】
比較例1の各要素の厚み及び光学シート総厚みは、以下の通りである。
基材の厚みは、130μmである。
光学機能層のうちのランド部の厚みは、42μmである。
光学機能層のうちの光透過部の厚みは、120μmである。
光学機能層のうちの光吸収部の厚みは、120μmである。
紫外線硬化型接着剤の厚みは、25μmである。
貼り合わせ用基材の厚みは、100μmである。
光学シート総厚みは、417μmである。
【0084】
実施例1~4及び比較例1の寸法条件、それぞれの比誘電率及び誘電正接の測定結果を以下の表1に示す。比誘電率及び誘電正接は、JIS C 2138:2007に準拠する自動平衡ブリッジ法にて25℃の環境下で測定された。測定には、プレジションLCRメータ E4980A(アジレント・テクノロジ株式会社製)が用いられた。比誘電率及び誘電正接の測定では、1KHz、10KHz、100KHz、1MHzにおける比誘電率及び誘電正接が測定された。
【0085】
【0086】
各実施例1~4ではそれぞれ、JIS C 2138:2007に準拠する、25℃での比誘電率が、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で3.18以上3.51以下になっており、JIS C 2138:2007に準拠する、25℃での誘電正接が、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲で0.0102以上0.0197以下になっている。これら光学シートをタッチパネル30とともに使用した際、タッチパネル30の誤作動は確認されなかった。
【0087】
実施例1は、第2の紫外線硬化樹脂層14を備えない以外は実施例2とほぼ同じ条件であるが、実施例2よりも比誘電率及び誘電正接が低い。この結果によれば、比誘電率及び誘電正接を抑制する場合においては、紫外線硬化型樹脂からなる層で光学機能層12側のみを覆うことが効果的である、と言える。
また、実施例2と実施例3の結果から、第1、2の紫外線硬化樹脂層13,14がいずれもウレタンアクリレートであるときには、比誘電率及び誘電正接を効果的に低く抑えられていると言える。一方で、実施例2と実施例3とを比較すると、基材11の厚みが大きい方である実施例3は、実施例2よりも比誘電率及び誘電正接が低い。この結果によれば、第1の紫外線硬化樹脂層13と第2の紫外線硬化樹脂層14とがそれぞれ最表面を形成する構成では、これらの間にある基材11が厚い程、比誘電率及び誘電正接が低下すると推認される。実施例2は基材11の厚みが130μmであり1KHzのときの比誘電率3.49、誘電正接が0.0190である。このような値を考慮すると、基材11の厚みが130μm以上であれば、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲での比誘電率は3.18以上3.51以下に収まり、誘電正接は0.0102以上0.0197以下に収まると推認される。
また、実施例4では、光学シートの厚みが薄いことに起因して比誘電率及び誘電正接が抑制されていると推認される。一般に比誘電率及び誘電正接は、誘電体の厚みが小さい程、低くなる。実施例4では、厚み220μmであって、1KHzのときの比誘電率3.51、1MHZのときの誘電正接が0.0196である。したがって、光学シート1が基材11と光学機能層12とで構成される場合には、全体の厚みが220μm以下で且つ基材11の厚みが100μm以上あれば、周波数1KHz以上1MHz以下の範囲での比誘電率は3.18以上3.51以下に収まり、誘電正接は0.0102以上0.0197以下に収まると推認される。
【0088】
一方、比較例1では、比誘電率及び誘電正接が高くなる。これは、全体の厚み、紫外線硬化型接着剤及び貼り合わせ用基材の材質に起因するものと考えられる。
【符号の説明】
【0089】
1,2,3…光学シート
11…基材
12…光学機能層
121…第1主面
122…第2主面
12a…光吸収部
12b…光透過部
12c…ランド部
13…第1の紫外線硬化樹脂層
14…第2の紫外線硬化樹脂層