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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/879 20180101AFI20250109BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B60N2/879
A47C7/38
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020031177
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021133798
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000219668
【氏名又は名称】東海化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 啓二
(72)【発明者】
【氏名】續木 敏晴
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/017232(WO,A1)
【文献】特開2008-296732(JP,A)
【文献】特開2017-007480(JP,A)
【文献】特開2016-130033(JP,A)
【文献】特開2017-105468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/879
A47C 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに取り付けられたケースと、
前記ケースに収容され、マス及び弾性体を備えるダイナミックダンパと、
を備える車両用シートであって、
前記弾性体は、貫通孔を有する1部材としての環状弾性体を少なくとも備え、
前記環状弾性体の貫通孔には、前記マスが嵌め込まれ、
前記環状弾性体の外周面は、前記ケースの内壁面に接触して配置され、
前記弾性体は、さらに、前記マスにおける前記貫通孔の貫通方向の一方側に配置されると共に前記環状弾性体とは別部材である第一弾性体シートと、
前記マスにおける前記貫通孔の貫通方向の他方側に配置されると共に前記環状弾性体とは別部材である第二弾性体シートと、を備え、
前記弾性体は、車両前後方向、車両左右方向及び車両上下方向のそれぞれにおいて、前記マスと前記ケースの内壁面との間に配置されており、
前記マスは、前記車両前後方向、前記車両左右方向及び前記車両上下方向のそれぞれにおいて前記弾性体と圧接した状態で、前記弾性体によって保持され、かつ、前記弾性体は、前記車両前後方向、前記車両左右方向及び前記車両上下方向のそれぞれに圧縮された状態で前記ケースに保持されており、
前記マスは、円柱状又は楕円柱状に形成されており、
前記環状弾性体は、円筒状又は楕円筒状に形成されており、
前記環状弾性体の筒状の内周面が、前記マスの柱状の外周面に接触しており、
前記環状弾性体が自由状態において、前記環状弾性体の内周面の内径は、前記マスの外周面の外径よりも小さく、
前記環状弾性体の前記貫通孔に、前記マスが非接着状態で嵌め込まれた状態にて、前記環状弾性体が前記マスの姿勢を保持しており、
前記環状弾性体の筒状の内周面は、前記マスの柱状の外周面に全周に亘って接触している、
車両用シート。
【請求項2】
前記第一弾性体シートは、前記環状弾性体の貫通孔における第一開口側に嵌め込まれ、前記マスにおける前記第一開口側の面に接触しており、
前記第二弾性体シートは、前記環状弾性体の貫通孔における前記第一開口とは反対側の第二開口側に嵌め込まれ、前記マスにおける前記第二開口側の面に接触している、請求項に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記マスは、径方向の幅よりも前記貫通孔の貫通方向における長さの方が長く、
前記環状弾性体は、径方向の幅よりも前記貫通孔の貫通方向における長さの方が長い、請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項4】
フレームと、
前記フレームに取り付けられたケースと、
前記ケースに収容され、マス及び弾性体を備えるダイナミックダンパと、
を備える車両用シートであって、
前記弾性体は、貫通孔を有する1部材としての環状弾性体を少なくとも備え、
前記環状弾性体の貫通孔には、前記マスが嵌め込まれ、
前記環状弾性体の外周面は、前記ケースの内壁面に接触して配置され、
前記マスは、円柱状又は楕円柱状に形成されており、
前記環状弾性体は、円筒状又は楕円筒状に形成されており、
前記環状弾性体が自由状態において、前記環状弾性体の内周面の内径は、前記マスの外周面の外径よりも小さく、
前記環状弾性体の前記貫通孔に、前記マスが非接着状態で嵌め込まれた状態にて、前記環状弾性体が前記マスの姿勢を保持しており、
前記環状弾性体の筒状の内周面は、前記マスの柱状の外周面に全周に亘って接触している、
車両用シート。
【請求項5】
前記マスは、径方向の幅よりも前記貫通孔の貫通方向における長さの方が長く、
前記環状弾性体は、径方向の幅よりも前記貫通孔の貫通方向における長さの方が長い、請求項に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記弾性体は、さらに、
前記環状弾性体の貫通孔における第一開口側に嵌め込まれ、前記マスにおける前記第一開口側の面に接触する第一弾性体シートと、
前記環状弾性体の貫通孔における前記第一開口とは反対側の第二開口側に嵌め込まれ、前記マスにおける前記第二開口側の面に接触する第二弾性体シートと、
を備える、請求項4又は5に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記ケースは、
外壁面を有するケース本体と、
前記ケース本体の内壁面のうち車両前後方向に法線成分を有する面に立設され、車両左右方向に対向して配置される一対の仕切壁と、
を備え、
前記ダイナミックダンパは、前記ケース本体の前記内壁面と前記一対の仕切壁とにより形成される収容空間に配置される、請求項1-6の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項8】
フレームと、
前記フレームに取り付けられたケースと、
前記ケースに収容され、マス及び弾性体を備えるダイナミックダンパと、
を備える車両用シートであって、
前記弾性体は、貫通孔を有する1部材としての環状弾性体を少なくとも備え、
前記環状弾性体の貫通孔には、前記マスが嵌め込まれ、
前記環状弾性体の外周面は、前記ケースの内壁面に接触して配置され、
前記弾性体は、さらに、前記マスにおける前記貫通孔の貫通方向の一方側に配置されると共に前記環状弾性体とは別部材である第一弾性体シートと、
前記マスにおける前記貫通孔の貫通方向の他方側に配置されると共に前記環状弾性体とは別部材である第二弾性体シートと、を備え、
前記弾性体は、車両前後方向、車両左右方向及び車両上下方向のそれぞれにおいて、前記マスと前記ケースの内壁面との間に配置されており、
前記マスは、前記車両前後方向、前記車両左右方向及び前記車両上下方向のそれぞれにおいて前記弾性体と圧接した状態で、前記弾性体によって保持され、かつ、前記弾性体は、前記車両前後方向、前記車両左右方向及び前記車両上下方向のそれぞれに圧縮された状態で前記ケースに保持されており、
前記ケースは、外壁面を有するケース本体と、前記ケース本体の内壁面のうち車両前後方向に法線成分を有する面に立設され、車両左右方向に対向して配置される一対の仕切壁と、を備え、前記ダイナミックダンパは、前記ケース本体の前記内壁面と前記一対の仕切壁とにより形成される収容空間に配置される、
車両用シート。
【請求項9】
前記第一弾性体シートは、前記環状弾性体の第一開口側の貫通方向端面に重ねて配置され、前記マスにおける前記第一開口側の面に接触しており、
前記第二弾性体シートは、前記環状弾性体の前記第一開口とは反対側の第二開口側の貫通方向端面に重ねて配置され、前記マスにおける前記第二開口側の面に接触している、請求項に記載の車両用シート。
【請求項10】
前記マスは、前記環状弾性体の前記第一開口から突出しており、且つ、前記環状弾性体の前記第二開口から突出している、請求項に記載の車両用シート。
【請求項11】
前記環状弾性体は、貫通方向の厚みが貫通方向に直交する方向の外形よりも小さな扁平形状に形成されている、請求項9又は10に記載の車両用シート。
【請求項12】
前記環状弾性体と前記第一弾性体シートとは異なる材料により成形され、
前記環状弾性体と前記第二弾性体シートとは異なる材料により成形されている、請求項9-11の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項13】
前記環状弾性体、前記第一弾性体シート、及び、前記第二弾性体シートは、同一材料により成形されている、請求項9-11の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項14】
前記第一弾性体シート及び前記第二弾性体シートは、前記環状弾性体に少なくとも一部において接着されている、請求項9-13の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項15】
前記第一弾性体シート及び前記第二弾性体シートは、前記環状弾性体に非接着で配置されている、請求項9-13の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項16】
前記環状弾性体は、矩形枠状に形成されており、
前記第一弾性体シート及び前記第二弾性体シートは、前記環状弾性体の外形と同一の矩形状に形成されている、請求項9-15の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項17】
前記マスは、円柱状又は楕円柱状に形成されており、
前記環状弾性体は、円筒状又は楕円筒状に形成されており、
前記環状弾性体の筒状の内周面が、前記マスの柱状の外周面に接触している、請求項に記載の車両用シート。
【請求項18】
前記第一弾性体シートは、前記環状弾性体の貫通孔における第一開口側に嵌め込まれ、前記マスにおける前記第一開口側の面に接触しており、
前記第二弾性体シートは、前記環状弾性体の貫通孔における前記第一開口とは反対側の第二開口側に嵌め込まれ、前記マスにおける前記第二開口側の面に接触している、請求項17に記載の車両用シート。
【請求項19】
前記マスは、径方向の幅よりも前記貫通孔の貫通方向における長さの方が長く、
前記環状弾性体は、径方向の幅よりも前記貫通孔の貫通方向における長さの方が長い、請求項17又は18に記載の車両用シート。
【請求項20】
前記弾性体は、前記一対の仕切壁により車両左右方向に圧縮されて配置されている、請求項7-19の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項21】
前記ケース本体は、
車両前後方向の一方に配置され、開口を有する容器形状に形成された第一ケース本体と、
車両前後方向の他方に配置され、前記第一ケース本体の開口を閉塞し、開口を有する容器形状又は蓋形状に形成された第二ケース本体と、
を備え、
前記弾性体は、前記第一ケース本体の内壁面と前記第二ケース本体の内壁面とにより車両前後方向に圧縮されて配置されている、請求項7-20の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項22】
前記フレームは、ヘッドレスト用ステーであり、
前記ケースは、前記ヘッドレスト用ステーに取り付けられる、請求項1-21の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項23】
前記マスの車両前後面と前記マスの車両左右面とを繋ぐ周面を第一周面とし、
前記マスの車両前後面と前記マスの車両上下面とを繋ぐ周面を第二周面とし、
前記マスの車両左右面と前記マスの車両上下面とを繋ぐ周面を第三周面とし、
前記環状弾性体の内周面は、前記マスにおける前記第一周面、前記第二周面及び前記第三周面の何れか1つの周面に全周に亘って接触して配置される、請求項1-22の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項24】
前記第一周面は、前記マスの重心に対する車両前後点及び車両左右点を含み、
前記第二周面は、前記マスの重心に対する車両前後点及び車両上下点を含み、
前記第三周面は、前記マスの重心に対する車両左右点及び車両上下点を含む、請求項23に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1-3には、車両の内燃機関や路面から車両用シートに伝達される振動を低減することを目的として、車両用シートを構成するヘッドレストやシートバック等にダイナミックダンパを設けることが記載されている。
【0003】
特許文献1-3には、一対の弾性体によりマスを挟む構成を有するダイナミックダンパが記載されている。また、特許文献2には、有底の容器形状の2つの弾性体をマスの両端のそれぞれに嵌め込む構成、及び、シート状の弾性体を直方体のマスの6面のそれぞれに配置する構成等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-007480号公報
【文献】特開2017-141022号公報
【文献】特開2014-073792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、一対の弾性体によりマスを挟み込む構成では、マスと弾性体との間に隙間が形成されやすく、マスが安定して保持されない状態となるおそれがある。結果として、当該隙間の影響によって、ダイナミックダンパが所望の特性を有することができないおそれがある。弾性体の形状精度を高精度にすることで解決することは可能ではあるが、高コストとなる。
【0006】
また、有底の容器形状の弾性体をマスに嵌め込む構成においては、マスと弾性体とを密着した状態にした場合に、容器形状における底面側と開口側(反底面側)とにおいて弾性特性が異なるおそれがある。そのため、ダイナミックダンパが所望の特性を得るようにすることが容易ではない。また、直方体のマスの各面に弾性体シートを配置する構成においては、弾性体シートの数が多いため、部品点数が多いことに加えて組付工数を要し、高コストを招来する。
【0007】
本発明は、マスの保持姿勢を改善し、低コストを図ることができ、所望の特性を有するダイナミックダンパを有する車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第一の態様の車両用シートは、フレームと、前記フレームに取り付けられたケースと、前記ケースに収容され、マス及び弾性体を備えるダイナミックダンパとを備える。前記弾性体は、貫通孔を有する1部材としての環状弾性体を少なくとも備える。前記環状弾性体の貫通孔には、前記マスが嵌め込まれ、前記環状弾性体の外周面は、前記ケースの内壁面に接触して配置され、前記弾性体は、さらに、前記マスにおける前記貫通孔の貫通方向の一方側に配置されると共に前記環状弾性体とは別部材である第一弾性体シートと、前記マスにおける前記貫通孔の貫通方向の他方側に配置されると共に前記環状弾性体とは別部材である第二弾性体シートと、を備え、前記弾性体は、車両前後方向、車両左右方向及び車両上下方向のそれぞれにおいて、前記マスと前記ケースの内壁面との間に配置されており、前記マスは、前記車両前後方向、前記車両左右方向及び前記車両上下方向のそれぞれにおいて前記弾性体と圧接した状態で、前記弾性体によって保持され、かつ、前記弾性体は、前記車両前後方向、前記車両左右方向及び前記車両上下方向のそれぞれに圧縮された状態で前記ケースに保持されている。前記マスは、円柱状又は楕円柱状に形成されており、前記環状弾性体は、円筒状又は楕円筒状に形成されており、前記環状弾性体の筒状の内周面が、前記マスの柱状の外周面に接触しており、前記環状弾性体が自由状態において、前記環状弾性体の内周面の内径は、前記マスの外周面の外径よりも小さく、前記環状弾性体の前記貫通孔に、前記マスが非接着状態で嵌め込まれた状態にて、前記環状弾性体が前記マスの姿勢を保持しており、前記環状弾性体の筒状の内周面は、前記マスの柱状の外周面に全周に亘って接触している。
本発明に係る第二の態様の車両用シートは、フレームと、前記フレームに取り付けられたケースと、前記ケースに収容され、マス及び弾性体を備えるダイナミックダンパとを備える。前記弾性体は、貫通孔を有する1部材としての環状弾性体を少なくとも備える。前記環状弾性体の貫通孔には、前記マスが嵌め込まれ、前記環状弾性体の外周面は、前記ケースの内壁面に接触して配置され、前記マスは、円柱状又は楕円柱状に形成されており、前記環状弾性体は、円筒状又は楕円筒状に形成されており、前記環状弾性体が自由状態において、前記環状弾性体の内周面の内径は、前記マスの外周面の外径よりも小さく、前記環状弾性体の前記貫通孔に、前記マスが非接着状態で嵌め込まれた状態にて、前記環状弾性体が前記マスの姿勢を保持しており、前記環状弾性体の筒状の内周面は、前記マスの柱状の外周面に全周に亘って接触している。
本発明に係る第三の態様の車両用シートは、フレームと、前記フレームに取り付けられたケースと、前記ケースに収容され、マス及び弾性体を備えるダイナミックダンパとを備える。前記弾性体は、貫通孔を有する1部材としての環状弾性体を少なくとも備える。前記環状弾性体の貫通孔には、前記マスが嵌め込まれ、前記環状弾性体の外周面は、前記ケースの内壁面に接触して配置され、前記弾性体は、さらに、前記マスにおける前記貫通孔の貫通方向の一方側に配置されると共に前記環状弾性体とは別部材である第一弾性体シートと、前記マスにおける前記貫通孔の貫通方向の他方側に配置されると共に前記環状弾性体とは別部材である第二弾性体シートと、を備え、前記弾性体は、車両前後方向、車両左右方向及び車両上下方向のそれぞれにおいて、前記マスと前記ケースの内壁面との間に配置されており、前記マスは、前記車両前後方向、前記車両左右方向及び前記車両上下方向のそれぞれにおいて前記弾性体と圧接した状態で、前記弾性体によって保持され、かつ、前記弾性体は、前記車両前後方向、前記車両左右方向及び前記車両上下方向のそれぞれに圧縮された状態で前記ケースに保持されている。前記ケースは、外壁面を有するケース本体と、前記ケース本体の内壁面のうち車両前後方向に法線成分を有する面に立設され、車両左右方向に対向して配置される一対の仕切壁と、を備え、前記ダイナミックダンパは、前記ケース本体の前記内壁面と前記一対の仕切壁とにより形成される収容空間に配置される。
【0009】
マスが環状弾性体の貫通孔に嵌め込まれている。従って、マスは、環状弾性体に安定した姿勢にて保持される。その結果、ダイナミックダンパは、容易に、所望の特性を有するようにできる。また、環状弾性体は、貫通孔を有する形状(例えば、筒状、枠形状等)に形成されている。従って、貫通孔を有する環状弾性体は、有底容器形状の弾性体に比べて、貫通方向の部位によって特性が異なる状態となることを抑制できる。このことからも、ダイナミックダンパは、所望の特性を有するようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両用シートの側面から見た部分断面図である。
図2】ヘッドレストの正面から見た図である。第一例のダンパユニットを示す。
図3図2のIII-III断面図であって、第一例のダンパユニット及びヘッドレスト用ステーの部分を含む。
図4図3の部品分解図である。
図5図2のV-V断面図であって、第一例のダンパユニット及びヘッドレスト用ステーの部分を含む。
図6図5の部品分解図である。
図7図2のIII-III断面図であって、第二例のダンパユニット及びヘッドレスト用ステーの部分を含む。
図8図7の部品分解図である。
図9図2のV-V断面図であって、第二例のダンパユニット及びヘッドレスト用ステーの部分を含む。
図10図9の部品分解図である。
図11図2のIII-III断面図であって、第三例のダンパユニット及びヘッドレスト用ステーの部分を含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1.適用対象)
車両用シート1の構成について図1を参照して説明する。車両用シート1は、図1に示すように、主として、シート本体11、シートバック12、ヘッドレスト13を備える。
【0012】
シート本体11は、座面を構成しており、フレーム11a及びクッション11bを備える。シートバック12は、シート本体11にリクライニング可能に連結されており、フレーム12a及びクッション12bを備える。ヘッドレスト13は、シートバック12の上端に連結されており、フレーム13a及びクッション13bを備える。ここで、ヘッドレスト13におけるフレーム13aは、ヘッドレスト用ステーと称される。
【0013】
また、車両用シート1は、ダンパユニット2をさらに備える。ダンパユニット2は、ケース20及びケース20に収容されるダイナミックダンパ30を備える。ダンパユニット2は、シート本体11のフレーム11a、シートバック12のフレーム12a、及び、ヘッドレスト13のフレーム13aの何れかに取り付けられる。本例においては、ダンパユニット2は、ヘッドレスト13のフレーム13aであるヘッドレスト用ステーに取り付ける場合を例にあげるが、他のフレーム11a,12aに取り付けるようにしてもよい。
【0014】
なお、ダイナミックダンパ30は、車両用シート1の振動支点から遠い位置であるヘッドレスト13に配置することによって、高い制振効果を期待できる。また、シートバック12は、シート本体11に支持点を中心に揺動するため、この点からも、ダイナミックダンパ30は、ヘッドレスト13に配置することによって高い制振効果を発揮する。
【0015】
(2.ヘッドレスト13の構成)
ヘッドレスト13の構成について、図2を参照して説明する。図2に示すように、ヘッドレスト13は、フレーム13aとしてのヘッドレスト用ステーと、クッション性を有するクッション13b(二点鎖線で示す)とを備える。
【0016】
フレーム13aとしてのヘッドレスト用ステーは、U字状に形成されており、U字状の両端が、車両下方に位置し、U字状の連結部分が、車両上方に位置する。ヘッドレスト用ステー(13a)は、一対の脚部16,16と、一対の脚部16,16の基端を接続する接続部17とを備える。一対の脚部16,16は、直線状に形成してもよいし、中間において屈曲した形状に形成してもよい。一対の脚部16,16の先端(U字状の両端)が、シートバック12(図1に示す)に嵌め込まれる部分となる。ヘッドレスト用ステー(13a)における接続部17(U字状の連結部分)は、図2に示すように直線状に形成してもよいし、湾曲した形状に形成してもよい。
【0017】
クッション13bは、袋状の表皮体と、表皮体の内部に配置された発泡部材とを備えており、表皮体と発泡部材とが一体化されている。クッション13bは、ヘッドレスト用ステー(13a)の接続部17及び一対の脚部16,16の基端側を被覆しており、ヘッドレスト用ステー(13a)の一対の脚部16,16の先端を露出させている。クッション13bの形状は、車両に応じて任意の形状に形成される。
【0018】
(3.ダンパユニットの例)
(3-1.第一例)
第一例のダンパユニット2について、図2図6を参照して説明する。図2に示すように、ダンパユニット2は、ヘッドレスト用ステー(13a)に取り付けられる場合を例にあげる。
【0019】
ダンパユニット2は、フレーム13aに取り付けられたケース20と、ケース20に収容されたダイナミックダンパ30とを備える。ケース20は、フレーム13aのうち、一対の脚部16,16の軸方向中央よりも基端寄りの部分と、接続部17とに固定されている。上記に限られず、ケース20は、フレーム13aの任意の位置に固定してもよい。
【0020】
ケース20は、図3図6に示すように、外壁面を有するケース本体21,22と、ケース本体21,22の内壁面に立設された仕切壁23,24とを備える。ケース20は、2つの部材(21,23と22,24)により構成される。もちろん、ケース20は、3以上の部材により構成されるようにしてもよい。
【0021】
本例においては、ケース20は、ケース本体として、第一ケース本体21を備える。第一ケース本体21は、開口を有する容器形状に形成されている。容器形状とは、底面を備えると共に、底面の周縁において囲む周壁を備える。つまり、周壁において底面の反対側に開口を有する。また、本例においては、第一ケース本体21は、貫通孔を有さない底面を有する場合を例にあげる。なお、底面と周壁との境界が明確に存在する必要はない。
【0022】
第一ケース本体21は、ヘッドレスト用ステー(13a)に対して車両後方に配置されている。第一ケース本体21は、取付部21aと、ダンパ保持部21bとを備える。取付部21aは、ヘッドレスト用ステー(13a)への取り付け部分に対応した形状に形成されている。つまり、取付部21aは、一対の脚部16,16の基端付近と接続部17とに対応したU字形状に形成されている。
【0023】
本例においては、取付部21aは、ヘッドレスト用ステー(13a)の取付対象部位の車両前後方向の一方面(後方面)に全長に亘って対向するような形状に形成されている。ただし、取付部21aは、ヘッドレスト用ステー(13a)の取付対象部位に部分的に連結される形状であればよく、任意の形状を採用できる。また、ダンパユニット2がシート本体11やシートバック12に取り付けられる場合には、対応するフレーム11a,12aの形状に対応する形状に形成されることになる。
【0024】
また、取付部21aの内壁面側には、ヘッドレスト用ステー(13a)の延在方向において断続的に、ヘッドレスト用ステー(13a)を位置決めするための複数の支持材21a1が設けられている。支持材21a1は、ヘッドレスト用ステー(13a)の外形における軸直角断面形状に対応するような凹状部分を有する。本例では、支持材21a1は、円弧凹状の部分を有する。支持材21a1は、例えば、各脚部16に対して2箇所ずつ設け、接続部17に対して2箇所設ける。もちろん、支持材21a1の数は、任意に決定される。
【0025】
さらに、取付部21aは、図示しないが、後述する第二ケース本体22と連結するための部位を有する。取付部21aは、連結機構として、例えば、係止爪や、ボルト等の締結部材を挿通するための筒等を備える。
【0026】
第一ケース本体21を構成するダンパ保持部21bは、取付部21aに連続して一体的に形成されており、本例においては、U字状の取付部21aの中央部分に設けられている。ダンパ保持部21bは、第一ケース本体21の底面の一部を構成しており、取付部21aの中央部分の全体に設けられている。ダンパ保持部21bの内壁面は、矩形且つ平面状に形成されている。ただし、ダンパ保持部21bは、矩形以外に、円形、楕円形、他の多角形等、任意の外形形状を採用してもよく、平面状以外に、湾曲面状、凹凸面状等、任意の面形状を採用してもよい。
【0027】
ケース20は、仕切壁として、第一仕切壁23を備える。第一仕切壁23は、第一ケース本体21の内壁面に設けられ、内壁面のうち車両前後方向に法線成分を有する面に立設されている。第一仕切壁23は、第一ケース本体21のうちダンパ保持部21bの内壁面に設けられている。特に、本例においては、第一仕切壁23は、車両前後方向に延在するように形成されている。
【0028】
本例においては、第一仕切壁23は、連続した矩形の枠形状に形成されている。つまり、第一仕切壁23は、車両左右方向に対向して配置される一対の壁と、車両上下方向に対向して配置される一対の壁とを有する。従って、第一ケース本体21のダンパ保持部21bと第一仕切壁23とによって、矩形容器状に形成されている。
【0029】
ケース20は、ケース本体として、第一ケース本体21に加えて、第二ケース本体22を備える。第二ケース本体22は、第一ケース本体21の開口を閉塞する。本例においては、第二ケース本体22は、開口を有する容器形状に形成されるようにしてもよいし、単なる蓋形状に形成されるようにしてもよい。本例においては、第二ケース本体22は、第一ケース本体21と同一形状に形成されている。従って、第二ケース本体22は、開口を有する容器形状に形成されている。
【0030】
第二ケース本体22は、ヘッドレスト用ステー(13a)に対して車両前方に配置されている。第二ケース本体22は、第一ケース本体21と同様に、取付部22aとダンパ保持部22bとを備える。取付部22aは、第一ケース本体21の取付部21aと同様に、複数の支持材22a1を備える。
【0031】
ケース20は、仕切壁として、第一仕切壁23に加えて、第二仕切壁24を備える。第二仕切壁24は、第二ケース本体22の内壁面に設けられている。第二仕切壁24は、第一仕切壁23と同一形状に形成されている。第二仕切壁24は、車両左右方向に対向して配置される一対の壁と、車両上下方向に対向して配置される一対の壁とを有する。従って、第二ケース本体22のダンパ保持部22bと第二仕切壁24とによって、矩形容器状に形成されている。
【0032】
そして、第一ケース本体21及び第一仕切壁23によって形成される矩形容器状と第二ケース本体22及び第二仕切壁24によって形成される矩形容器状とによって、直方体状の収容空間20aが形成される。収容空間20aは、閉空間である。つまり、第一ケース本体21のダンパ保持部21bと第二ケース本体22のダンパ保持部22bとが、車両前後方向に対向して配置されており、車両前後方向の一対の壁を構成する。第一仕切壁23の車両左右方向の一対の壁と、第二仕切壁24の車両左右方向の一対の壁とが、車両左右方向の一対の壁を構成する。第一仕切壁23の車両上下方向の一対の壁と、第二仕切壁24の車両上下方向の一対の壁とが、車両上下方向の一対の壁を構成する。
【0033】
ダイナミックダンパ30は、ケース20により形成される収容空間20aに配置されている。ダイナミックダンパ30は、マス40及び弾性体50を備える。マス40は、例えば、金属により形成されている。マス40は、任意の形状に形成される。本例では、マス40は、円柱状に形成されている。なお、マス40は、楕円柱状、多角柱状、球状等に形成してもよい。なお、マス40は、球状以外にすることによって、異方性を有することにより、方向性によって異なる制振特性を有するようにできる。
【0034】
マス40は、例えば、柱状の中心軸を車両上下方向に延びるように配置されている。つまり、マス40は、柱状の中心軸に直交する方向が車両前後方向且つ車両左右方向に延びるように配置されている。マス40の姿勢は、制振特性に応じて変更すればよい。
【0035】
ここで、マス40において、マス40の車両前後面とマス40の車両左右面とを繋ぐ周面を第一周面と定義する。また、マス40において、マス40の車両前後面とマス40の車両上下面とを繋ぐ周面を第二周面と定義する。マス40において、マス40の車両左右面とマス40の車両上下面とを繋ぐ周面を第三周面と定義する。マス40が円柱状に形成され上述した姿勢に配置された場合においては、第一周面は、円筒面となり、第二周面及び第三周面は、円柱の両端面と円柱の円筒面とを繋ぐ面となる。
【0036】
マス40の重心は、本例では、マス40の中心に位置する。そして、上述したマス40の第一周面は、マス40の重心に対する車両前後点及び車両左右点を含む。また、マス40の第二周面は、マス40の重心に対する車両前後点及び車両上下点を含む。マス40の第三周面は、マス40の重心に対する車両左右点及び車両上下点を含む。なお、マス40の重心がマス40の中心からずれた位置に位置してもよく、この場合、第一周面、第二周面及び第三周面は、当該重心に対応する点を含むようにされている。
【0037】
弾性体50は、マス40を保持し、ケース20に収容されている。弾性体50は、弾性を有する発泡樹脂材料、ゴムやエラストマー等の弾性材料、これらの複合材料を適用することができる。特に、本例では、弾性体50は、発泡樹脂材料を適用する。
【0038】
そして、弾性体50は、マス40とケース20との間に挟まれている。本例においては、弾性体50は、マス40の全面に接触しており、マス40の姿勢を保持している。また、弾性体50は、ケース20の内壁面に接触して配置されている。特に、弾性体50は、ケース20の収容空間20aにおいて、車両前後方向、車両左右方向及び車両上下方向に圧縮した状態で配置されている。
【0039】
本例においては、弾性体50は、貫通孔を有する1部材としての環状弾性体51を少なくとも備える。環状弾性体51は、周方向に全周に亘って連続した環状に形成してもよいし、1箇所にスリット(切込み)を有するC字状に形成してもよい。ただし、この場合の環状弾性体51は、組み付けられた状態において、環状に形成された状態となる。また、環状とは、円環状に限られず、楕円環状、多角形の環状を含む意味で用いる。
【0040】
環状弾性体51の貫通孔には、マス40が非接着状態で嵌め込まれており、マス40の姿勢を保持している。環状弾性体51の内周面は、マス40の第一周面、第二周面及び第三周面の何れか1つの周面に亘って接触して配置されている。本例では、環状弾性体51は、車両前後方向に貫通する貫通孔を備えている。環状弾性体51は、マス40の第三周面(車両左右面及び車両上下面)に全周に亘って接触して配置されている。また、環状弾性体51は、矩形枠状に形成されている。つまり、環状弾性体51の内周面及び外周面は、矩形に形成されている。環状弾性体51の内周面は、車両上下方向を長手方向となるような矩形に形成されている。
【0041】
環状弾性体51は、扁平形状、すなわち、貫通方向の厚みが貫通方向に直交する方向の外形よりも小さな形状に形成されている。環状弾性体51の貫通方向の厚みは、マス40の車両前後方向の最大厚みよりも小さい。つまり、マス40が環状弾性体51の貫通孔に嵌め込まれた状態において、環状弾性体51の第一開口から突出すると共に、環状弾性体51の第二開口(第一開口の反対側の開口)から突出する。
【0042】
また、環状弾性体51の内周面において車両左右方向の離間距離は、マス40の車両左右方向の最大厚みよりも僅かに小さい。従って、マス40が環状弾性体51の貫通孔に嵌め込まれた状態において、マス40は、環状弾性体51によって車両左右方向に圧縮されている。また、環状弾性体51の内周面において車両上下方向の離間距離は、マス40の車両上下方向の最大長さよりも僅かに小さい。従って、マス40が環状弾性体51の貫通孔に嵌め込まれた状態において、マス40は、環状弾性体51によって車両上下方向に圧縮されている。
【0043】
また、弾性体50は、環状弾性体51の他に、第一弾性体シート52を備える。第一弾性体シート52は、扁平状に形成されており、例えば、環状弾性体51の外周形状と同様の外周形状を有する。本例では、第一弾性体シート52は、環状弾性体51の外形と同一の矩形形状に形成されている。第一弾性体シート52は、環状弾性体51の第一開口側の貫通方向端面に重ねて配置される。つまり、第一弾性体シート52は、環状弾性体51の貫通孔の第一開口(車両後方の開口)を閉塞する。
【0044】
第一弾性体シート52は、環状弾性体51の少なくとも一部において接着され残りの部分において非接着で配置されるようにしてもよいし、環状弾性体51の全面に対して非接着で配置されるようにしてもよい。接着される場合には、両者の相対的な位置決めの精度が高い状態を維持できる。一方、非接着の場合には、製造工数を低減できる。
【0045】
第一弾性体シート52において環状弾性体51に接触する面は、平面状に形成されている。そして、第一弾性体シート52は、マス40において第一開口から車両後方に突出する面に圧縮された状態で接触する。
【0046】
第一弾性体シート52は、環状弾性体51と同様に、発泡樹脂材料、ゴム、エラストマー等により成形される。ただし、第一弾性体シート52は、環状弾性体51と異なる材料により成形してもよいし、環状弾性体51と同一材料により成形してもよい。両者を異なる材料により成形することにより、方向性によって異なる制振特性を有するようにできる。
【0047】
また、弾性体50は、環状弾性体51及び第一弾性体シート52の他に、第二弾性体シート53を備える。第二弾性体シート53は、第一弾性体シート52と同様に、扁平状に形成されており、例えば、環状弾性体51の外周形状と同様の外周形状を有する。本例では、第二弾性体シート53は、環状弾性体51の外形と同一の矩形形状に形成されている。第二弾性体シート53は、第一弾性体シート52と同一形状に形成されている。第二弾性体シート53は、環状弾性体51の第二開口側の貫通方向端面に重ねて配置される。つまり、第二弾性体シート53は、環状弾性体51の貫通孔の第二開口(車両前方の開口)を閉塞する。
【0048】
第二弾性体シート53は、環状弾性体51の少なくとも一部において接着されてもよいし、環状弾性体51の全面に対して非接着で配置されるようにしてもよい。接着される場合には、両者の相対的な位置決めの精度が高い状態を維持できる。一方、非接着の場合には、製造工数を低減できる。
【0049】
第二弾性体シート53において環状弾性体51に接触する面は、平面状に形成されている。そして、第二弾性体シート53は、マス40において第二開口から車両後方に突出する面に圧縮された状態で接触する。つまり、第一弾性体シート52と第二弾性体シート53とが、マス40を車両前後方向に挟み込む。
【0050】
第二弾性体シート53は、環状弾性体51と同様に、発泡樹脂材料、ゴム、エラストマー等により成形される。ただし、第二弾性体シート53は、環状弾性体51と異なる材料により成形されるようにしてもよいし、環状弾性体51と同一材料により成形されるようにしてもよい。両者を異なる材料により成形することにより、方向性によって異なる制振特性を有するようにできる。ただし、第二弾性体シート53は、第一弾性体シート52と同一材料により成形するのがよい。
【0051】
上述したように、マス40は、環状弾性体51の内周面、第一弾性体シート52の厚み方向の一方面、及び、第二弾性体シート53の厚み方向の一方面によって囲まれた空間に嵌め込まれている。マス40は、全面において接触している必要はなく、一部において隙間を介して配置されていてもよい。ただし、マス40は、車両前後方向、車両左右方向及び車両上下方向の全ての方向において、姿勢を維持できるように、保持されている。
【0052】
マス40及び弾性体50により構成されるダイナミックダンパ30は、ケース20の収容空間20aに配置されている。本例では、弾性体50の外形は、収容空間20aに対応する直方体状に形成されている。詳細には、弾性体50の外形は、収容空間20aよりも僅かに大きな直方体状に形成されている。
【0053】
環状弾性体51の外周面のうちの車両左右方向の一対の面は、第一仕切壁23及び第二仕切壁24における車両左右方向の一対の壁に接触して配置されている。つまり、環状弾性体51における車両左右方向の対向部分は、マス40と仕切壁23,24によって、車両左右方向に圧縮されている。
【0054】
環状弾性体51の外周面のうちの車両上下方向の一対の面は、第一仕切壁23及び第二仕切壁24における車両上下方向の一対の壁に接触して配置されている。つまり、環状弾性体51における車両上下方向の対向部分は、マス40と仕切壁23,24によって、車両上下方向に圧縮されている。
【0055】
第一弾性体シート52は、収容空間20aにおいて第一ケース本体21側に配置されている。第一弾性体シート52の厚み方向の他方面(車両後方面)が、第一ケース本体21のダンパ保持部21bに全面に亘って接触して配置されている。つまり、第一弾性体シート52の中央部分は、マス40と第一ケース本体21のダンパ保持部21bの内壁面によって、車両前後方向に圧縮されている。
【0056】
また、第一弾性体シート52の扁平形状の外周面は、環状弾性体51と同様に、第一仕切壁23及び第二仕切壁24に接触して配置されている。つまり、第一弾性体シート52は、第一仕切壁23及び第二仕切壁24によって、車両左右方向及び車両上下方向に圧縮されている。
【0057】
第二弾性体シート53は、収容空間20aにおいて第二ケース本体22側に配置されている。第二弾性体シート53の厚み方向の他方面(車両前方面)が、第二ケース本体22のダンパ保持部22bに全面に亘って接触して配置されている。つまり、第二弾性体シート53の中央部分は、マス40と第二ケース本体22のダンパ保持部22bの内壁面によって、車両前後方向に圧縮されている。
【0058】
また、第二弾性体シート53の扁平形状の外周面は、環状弾性体51と同様に、第一仕切壁23及び第二仕切壁24に接触して配置されている。つまり、第二弾性体シート53は、第一仕切壁23及び第二仕切壁24によって、車両左右方向及び車両上下方向に圧縮されている。
【0059】
そして、環状弾性体51、第一弾性体シート52の外周部分、及び、第二弾性体シートの外周部分は、第一ケース本体21のダンパ保持部21bの内壁面と第二ケース本体22のダンパ保持部22bの内壁面とによって、車両前後方向に圧縮されている。
【0060】
上記のように、マス40が環状弾性体51の貫通孔に嵌め込まれている。従って、マス40は、環状弾性体51に安定した姿勢にて保持される。その結果、ダイナミックダンパ30は、容易に、所望の特性を有するようにできる。また、環状弾性体51は、貫通孔を有する形状に形成されている。従って、貫通孔を有する環状弾性体51は、有底容器形状の弾性体に比べて、貫通方向の部位によって特性が異なる状態となることを抑制できる。このことからも、ダイナミックダンパ30は、所望の特性を有するようにできる。
【0061】
また、弾性体50は、環状弾性体51、第一弾性体シート52及び第二弾性体シート53による3層構造を有する。このように、弾性体50が、環状弾性体51を基本として両シート52,53を付加することにより、マス40の安定した姿勢保持力を有すると共に、それぞれの方向において所望の制振特性を有するようにできる。ダイナミックダンパ30は、例えば、車両前後方向、車両左右方向、及び、車両上下方向のそれぞれの方向において、所望の特性を有するようにできる。
【0062】
特に、弾性体50が上記3層構造を有することにより、環状弾性体51の材料と、第一弾性体シート52及び第二弾性体シート53の材料とを異なるものとすることが容易にできる。その結果、ダイナミックダンパ30は、マス40の安定した姿勢保持力を有しつつ、方向に応じた制振特性を容易に設定できる。ただし、環状弾性体51の材料と、第一弾性体シート52及び第二弾性体シート53の材料とを同一材料とした場合であっても、方向に応じた厚みを異ならせることによって、方向に応じた制振特性を設定することもできる。
【0063】
(3-2.第二例)
第二例のダンパユニット102について、図7図10を参照して説明する。以下においては、第二例のダンパユニット102について、第一例のダンパユニット2と異なる部分を主に説明する。なお、第一例と同一構成については、同一符号を付す。
【0064】
ダンパユニット102は、ケース120と、ダイナミックダンパ130とを備える。ケース120は、第一ケース本体121、第二ケース本体122と、第一仕切壁123、及び、第二仕切壁124とを備える。
【0065】
第一ケース本体121は、第一例の取付部21aと同様の取付部121aを有する。第一ケース本体121は、さらに、ダンパ保持部121bを備える。ダンパ保持部121bは、第一例のダンパ保持部21bとは形状が異なるが、同様の機能を有する。ダンパ保持部121bは、ほぼ半円筒状に近似した湾曲状に形成されている。ダンパ保持部121bの外壁面は、湾曲凸状に形成されており、内壁面は、湾曲凹状に形成されている。また、ダンパ保持部121bは、ほぼ円筒状の両端面の半分(半円形状)を有する。なお、ダンパ保持部121bは、半円筒状に限らず、半楕円筒状としてもよい。
【0066】
第二ケース本体122は、第一ケース本体121と同一形状に形成されている。第二ケース本体122は、第一例の取付部22aと同様の取付部122aを有する。第二ケース本体122は、さらに、第一ケース本体121のダンパ保持部121bと同一形状のダンパ保持部122bを備える。
【0067】
第一仕切壁123は、第一ケース本体121の内壁面に設けられ、ダンパ保持部121bの外側に設けられた周壁を形成する。第二仕切壁124は、第二ケース本体122の内壁面に設けられ、ダンパ保持部122bの外側に設けられた周壁を形成する。第一仕切壁123及び第二仕切壁124は、長方形の枠形状に形成されている。特に、第一仕切壁123及び第二仕切壁124は、車両上下方向を長手とする長方形の枠形状に形成されている。
【0068】
従って、第一ケース本体121のダンパ保持部121bと第一仕切壁123とによって、湾曲底面を有する矩形容器状に形成されている。また、第二ケース本体122のダンパ保持部122bと第二仕切壁124とによって、湾曲底面を有する矩形容器状に形成されている。そして、第一ケース本体121及び第一仕切壁123によって形成される矩形容器状と第二ケース本体122及び第二仕切壁124によって形成される矩形容器状とによって、収容空間120aが形成される。収容空間120aは、円柱状に近似した形状の空間である。
【0069】
ダイナミックダンパ130は、ケース120により形成される収容空間120aに配置されるダイナミックダンパ130は、マス140及び弾性体150を備える。マス140は、本例では、円柱状に形成される。ただし、マス140は、正多角柱状に形成されるようにしてもよい。
【0070】
弾性体150は、貫通孔を有する1部材としての環状弾性体151を少なくとも備える。環状弾性体151は、円筒状に形成されている。環状弾性体151は、径方向の厚みを同一とされている。つまり、環状弾性体151は、円筒状内周面及び円筒状外周面を有する。ただし、環状弾性体151は、円筒状内周面を有し、且つ、楕円筒状外周面を有するようにしてもよい。この場合、環状弾性体151の径方向の厚みが、周方向の位置によって異なる。
【0071】
環状弾性体151の内周面の内径は、マス140の外周面の外径よりも僅かに小さくされている。そして、環状弾性体151の貫通孔には、マス140が非接着状態で嵌め込まれており、マス140の姿勢を保持している。つまり、環状弾性体151の筒状の内周面が、マス140の柱状の外周面に全周に亘って接触している。
【0072】
ここで、環状弾性体151の内周面は、マス140の第一周面、第二周面及び第三周面の何れか1つの周面に亘って接触して配置されている。本例では、環状弾性体151は、車両上下方向に貫通する貫通孔を備えている。環状弾性体151は、マス140の第一周面(車両前後面及び車両左右面)に全周に亘って接触して配置されている。
【0073】
弾性体150は、さらに、第一弾性体シート152及び第二弾性体シート153を備える。第一弾性体シート152及び第二弾性体シート153は、円盤状に形成されている。第一弾性体シート152は、環状弾性体151の貫通孔における第一開口側に嵌め込まれ、マス140における第一開口側の面に接触している。第二弾性体シート153は、環状弾性体151の貫通孔における第二開口側に嵌め込まれ、マス140における第二開口側の面に接触している。
【0074】
マス140及び弾性体150により構成されるダイナミックダンパ130は、ケース120の収容空間120aに配置されている。本例では、弾性体150の外形は、ほぼ円柱状であり、円柱状に近似した形状である収容空間120aに対応する形状を有している。
【0075】
環状弾性体151の外周面のうち車両前後方向の部位は、第一ケース本体121のダンパ保持部121bの内壁面と第二ケース本体122のダンパ保持部122bの内壁面とによって、車両前後方向に圧縮されている。また、環状弾性体151の外周面のうち車両左右方向の部位は、第一仕切壁123及び第二仕切壁124によって車両左右方向に圧縮されている。
【0076】
また、環状弾性体151は、第一仕切壁123及び第二仕切壁124によって車両上下方向に圧縮されている。また、第一弾性体シート152は、第一仕切壁123及び第二仕切壁124と、マス140の軸方向端面とによって、車両上下方向に圧縮されている。第二弾性体シート153は、第一仕切壁123及び第二仕切壁124と、マス140の軸方向端面とによって、車両上下方向に圧縮されている。
【0077】
上記のように、マス140が環状弾性体151の貫通孔に嵌め込まれている。従って、マス140は、環状弾性体151に安定した姿勢にて保持される。その結果、ダイナミックダンパ130は、容易に、所望の特性を有するようにできる。
【0078】
(3-3.第三例)
第三例のダンパユニット202について、図11を参照して説明する。以下においては、第三例のダンパユニット202について、第二例のダンパユニット102と異なる部分を主に説明する。なお、第二例と同一構成については、同一符号を付す。
【0079】
第三例のダンパユニット202は、第二例のダンパユニット102に対して、ダンパ保持部221b,222b、マス240、弾性体250のうちの環状弾性体251の形状のみ相違する。ダンパ保持部221b,222bは、ほぼ半楕円筒状に近似した湾曲状に形成されている。マス240は、楕円柱状に形成され、環状弾性体251は、楕円筒状に形成されている。
【0080】
マス240及び環状弾性体251の楕円長軸が、車両左右方向に一致し、楕円短軸が、車両前後方向に一致するように、ケース20内に収容されている。従って、車両前後方向と車両左右方向のそれぞれにおいて、マス240が面する面積が異なる。その結果、車両前後方向と車両左右方向との制振特性を異なるようにできる。
【符号の説明】
【0081】
1:車両用シート、 2,102,202:ダンパユニット、 11:シート本体、11a:フレーム、 11b:クッション、 12:シートバック、 12a:フレーム、 12b:クッション、 13:ヘッドレスト、 13a:フレーム、 13b:クッション、 16:脚部、 17:接続部、 20,120:ケース、 20a,120a:収容空間、 21,121:第一ケース本体、 21a,121a:取付部、 21a1:支持材、 21b,121b,221b:ダンパ保持部、 22,122:第二ケース本体、 22a,122a:取付部、 22a1:支持材、 22b,122b,222b:ダンパ保持部、 23,123:第一仕切壁、 24,124:第二仕切壁、 30,130:ダイナミックダンパ、 40,140,240:マス、 50,150:弾性体、 51,151,251:環状弾性体、 52,152:第一弾性体シート、 53,153:第二弾性体シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11