IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許7615553不具合発生予測システム、画像形成システム、不具合発生予測方法及び画像形成制御方法
<>
  • 特許-不具合発生予測システム、画像形成システム、不具合発生予測方法及び画像形成制御方法 図1
  • 特許-不具合発生予測システム、画像形成システム、不具合発生予測方法及び画像形成制御方法 図2
  • 特許-不具合発生予測システム、画像形成システム、不具合発生予測方法及び画像形成制御方法 図3
  • 特許-不具合発生予測システム、画像形成システム、不具合発生予測方法及び画像形成制御方法 図4
  • 特許-不具合発生予測システム、画像形成システム、不具合発生予測方法及び画像形成制御方法 図5
  • 特許-不具合発生予測システム、画像形成システム、不具合発生予測方法及び画像形成制御方法 図6
  • 特許-不具合発生予測システム、画像形成システム、不具合発生予測方法及び画像形成制御方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】不具合発生予測システム、画像形成システム、不具合発生予測方法及び画像形成制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20250109BHJP
   G06F 11/30 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G06N20/00 130
G06F11/30 140D
G06F11/30 155
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020113042
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011723
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝又 啓揮
(72)【発明者】
【氏名】小林 一敏
(72)【発明者】
【氏名】川崎 智広
(72)【発明者】
【氏名】岡村 憩
【審査官】渡辺 順哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-124937(JP,A)
【文献】特開2015-174256(JP,A)
【文献】特開2013-122510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/07-11/36
G06N 3/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象の動作装置の各タイミングでの動作状況に係るデータを前記タイミングの情報と対応付けて取得する状況取得部と、
前記状況取得部により取得された前記動作状況に応じた今後の動作状況の予測を、現在から長さの異なる複数の期間について各々行う状況予測部と、
前記動作状況と、前記動作装置における所定の不具合の発生との第1対応関係を記憶する第3記憶部と、
前記予測された動作状況と、前記第1対応関係とに基づいて、前記不具合の発生可能性に係る所定の指標を求める不具合予測部と、
前記動作装置の動作設定と、当該動作設定の前記所定の不具合の発生への寄与の度合との第2対応関係を記憶する第4記憶部と、
前記動作設定を取得する設定取得部と、
を備え
前記不具合予測部は、取得された前記動作設定と、前記第2対応関係とに基づいて前記寄与の度合を取得し、当該寄与の度合により前記所定の指標を補正する
ことを特徴とする不具合発生予測システム。
【請求項2】
取得された前記動作状況に係るデータを記憶する第1記憶部を備えることを特徴とする請求項1記載の不具合発生予測システム。
【請求項3】
前記動作状況には、前記動作装置の環境状態を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の不具合発生予測システム。
【請求項4】
前記状況予測部は、前記動作状況に係るデータを教師データとして学習された機械学習モデルを有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の不具合発生予測システム。
【請求項5】
前記状況予測部により前記複数の期間についてそれぞれ予測された前記動作状況を記憶する第2記憶部と、
前記予測された動作状況と、当該予測された動作状況に係る前記複数の期間内のそれぞれ所定のタイミングでの実際の動作状況とを比較する比較部と、
前記比較部による比較結果に基づいて、前記機械学習モデルを更に学習させて更新する更新部と、
を備えることを特徴とする請求項4記載の不具合発生予測システム。
【請求項6】
前記動作状況に係るデータを教師データとして前記機械学習モデルを生成する生成部を備えることを特徴とする請求項4又は5記載の不具合発生予測システム。
【請求項7】
前記予測された動作状況は、所定の動作状況の発生確率に係る情報を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の不具合発生予測システム。
【請求項8】
前記不具合予測部は、前記異なる複数の期間について各々前記所定の指標を求めることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の不具合発生予測システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の不具合発生予測システムを備えることを特徴とする画像形成システム。
【請求項10】
不具合の発生を抑制する所定の動作を行う抑制動作部と、
前記抑制動作部の動作を制御する抑制制御部と、
を備え、
前記抑制制御部は、前記異なる複数の期間における前記所定の指標にそれぞれ応じた動作条件に従って、前記抑制動作部の動作を制御する
ことを特徴とする請求項記載の画像形成システム。
【請求項11】
監視対象の動作装置の各タイミングでの動作状況に係るデータを前記タイミングの情報と対応付けて取得する状況取得部と、
前記状況取得部により取得された前記動作状況に応じた今後の動作状況の予測を、現在から長さの異なる複数の期間について各々行う状況予測部と、
前記動作状況と、前記動作装置における所定の不具合の発生との第1対応関係を記憶する第3記憶部と、
前記予測された動作状況と、前記第1対応関係とに基づいて、前記不具合の発生可能性に係る所定の指標を求める不具合予測部と、
不具合の発生を抑制する所定の動作を行う抑制動作部と、
前記抑制動作部の動作を制御する抑制制御部と、
を備え、
前記抑制制御部は、前記異なる複数の期間における前記所定の指標にそれぞれ応じた動作条件に従って、前記抑制動作部の動作を制御する
ことを特徴とする画像形成システム。
【請求項12】
前記動作状況の少なくとも一部は、画像形成命令に係るジョブデータに基づいて取得されることを特徴とする請求項10又は11記載の画像形成システム。
【請求項13】
不具合発生予測システムの制御部による不具合発生予測方法であって、
監視対象の動作装置の各タイミングでの動作状況に係るデータを当該タイミングの情報と対応付けて取得する状況取得ステップ、
前記状況取得ステップで取得された前記動作状況に応じた今後の動作状況の予測を、現在から長さの異なる複数の期間について各々行う状況予測ステップ、
前記動作状況と、前記動作装置における所定の不具合の発生との第1対応関係を記憶するステップ、
前記予測された動作状況と、前記第1対応関係とに基づいて、前記不具合の発生可能性に係る所定の指標を求める不具合予測ステップ、
前記動作装置の動作設定と、当該動作設定の前記所定の不具合の発生への寄与の度合との第2対応関係を記憶するステップ、
前記動作設定を取得する設定取得ステップ、
を含み
前記不具合予測ステップでは、取得された前記動作設定と、前記第2対応関係とに基づいて前記寄与の度合を取得し、当該寄与の度合により前記所定の指標を補正する
ことを特徴とする不具合発生予測方法。
【請求項14】
画像形成システムの制御部による画像形成制御方法であって、
監視対象の動作装置の各タイミングでの動作状況に係るデータを前記タイミングの情報と対応付けて取得する状況取得ステップ、
前記状況取得ステップで取得された前記動作状況に応じた今後の動作状況の予測を、現在から長さの異なる複数の期間について各々行う状況予測ステップ、
前記動作状況と、前記動作装置における所定の不具合の発生との第1対応関係を記憶するステップ、
前記予測された動作状況と、前記第1対応関係とに基づいて、前記不具合の発生可能性に係る所定の指標を求める不具合予測ステップ、
不具合の発生を抑制する所定の動作を行う抑制動作ステップ、
前記抑制動作ステップでの動作を制御する抑制制御ステップ、
を含み、
前記抑制制御ステップでは、前記異なる複数の期間における前記所定の指標にそれぞれ応じた動作条件に従って、前記抑制動作ステップでの動作を制御する
ことを特徴とする画像形成制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、不具合発生予測システム、画像形成システム、不具合発生予測方法及び画像形成制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種動作を行う動作装置では、動作に伴う経時的な変化(主に劣化)の蓄積などにより、種々の不具合が発生する。このような不具合の発生は、単純な動作量や動作時間だけではなく、周囲の温度や湿度といった動作環境にも依存する。特許文献1では、画像形成装置において、障害の発生日を基準として、その前の兆候が得られる期間の使用状況を入力とする学習データに基づいて機械学習モデルを学習させ、現在の使用状況に基づいて障害の発生までの日数を予測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-174256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発生が予測される不具合が予測通りに生じては困る場合もある。これに対し、動作状況を変化させることで発生タイミングを多少調整することができる。しかしながら、動作状況には、即座に変更しにくいものや、変更したとしても不具合発生タイミングへの影響の大きさや即効性が異なるものがあるので、従来、予測されてからの対処を柔軟かつ効果的に行うことができない場合があるという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、より状況に応じた効果的な対処を可能に動作状況の予測結果を得ることのできる不具合発生予測システム、画像形成システム、不具合発生予測方法及び画像形成制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
監視対象の動作装置の各タイミングでの動作状況に係るデータを前記タイミングの情報と対応付けて取得する状況取得部と、
前記状況取得部により取得された前記動作状況に応じた今後の動作状況の予測を、現在から長さの異なる複数の期間について各々行う状況予測部と、
前記動作状況と、前記動作装置における所定の不具合の発生との第1対応関係を記憶する第3記憶部と、
前記予測された動作状況と、前記第1対応関係とに基づいて、前記不具合の発生可能性に係る所定の指標を求める不具合予測部と、
前記動作装置の動作設定と、当該動作設定の前記所定の不具合の発生への寄与の度合との第2対応関係を記憶する第4記憶部と、
前記動作設定を取得する設定取得部と、
を備え
前記不具合予測部は、取得された前記動作設定と、前記第2対応関係とに基づいて前記寄与の度合を取得し、当該寄与の度合により前記所定の指標を補正する
を備えることを特徴とする不具合発生予測システムである。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の不具合発生予測システムにおいて、
取得された前記動作状況に係るデータを記憶する第1記憶部を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の不具合発生予測システムにおいて、
前記動作状況には、前記動作装置の環境状態を含むことを特徴とする。
【0009】
また、請求項4記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の不具合発生予測システムにおいて、
前記状況予測部は、前記動作状況に係るデータを教師データとして学習された機械学習
モデルを有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の不具合発生予測システムにおいて、
前記状況予測部により前記複数の期間についてそれぞれ予測された前記動作状況を記憶する第2記憶部と、
前記予測された動作状況と、当該予測された動作状況に係る前記複数の期間内のそれぞれ所定のタイミングでの実際の動作状況とを比較する比較部と、
前記比較部による比較結果に基づいて、前記機械学習モデルを更に学習させて更新する更新部と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6記載の発明は、請求項4又は5記載の不具合発生予測システムにおいて、
前記動作状況に係るデータを教師データとして前記機械学習モデルを生成する生成部を備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7記載の発明は、請求項1~6のいずれか一項に記載の不具合発生予測システムにおいて、
前記予測された動作状況は、所定の動作状況の発生確率に係る情報を含むことを特徴とする。
【0015】
また、請求項記載の発明は、請求項1~7のいずれか一項に記載の不具合発生予測システムにおいて、
前記不具合予測部は、前記異なる複数の期間について各々前記所定の指標を求めることを特徴とする。
【0016】
また、請求項記載の発明は、
請求項1~8のいずれか一項に記載の不具合発生予測システムを備えることを特徴とする画像形成システムである。
【0017】
また、請求項10記載の発明は、請求項記載の画像形成システムにおいて、
不具合の発生を抑制する所定の動作を行う抑制動作部と、
前記抑制動作部の動作を制御する抑制制御部と、
を備え、
前記抑制制御部は、前記異なる複数の期間における前記所定の指標にそれぞれ応じた動作条件に従って、前記抑制動作部の動作を制御する
ことを特徴とする。
また、請求項11記載の発明は、
監視対象の動作装置の各タイミングでの動作状況に係るデータを前記タイミングの情報と対応付けて取得する状況取得部と、
前記状況取得部により取得された前記動作状況に応じた今後の動作状況の予測を、現在から長さの異なる複数の期間について各々行う状況予測部と、
前記動作状況と、前記動作装置における所定の不具合の発生との第1対応関係を記憶する第3記憶部と、
前記予測された動作状況と、前記第1対応関係とに基づいて、前記不具合の発生可能性に係る所定の指標を求める不具合予測部と、
不具合の発生を抑制する所定の動作を行う抑制動作部と、
前記抑制動作部の動作を制御する抑制制御部と、
を備え、
前記抑制制御部は、前記異なる複数の期間における前記所定の指標にそれぞれ応じた動作条件に従って、前記抑制動作部の動作を制御する
ことを特徴とする画像形成システムである。
【0018】
また、請求項12記載の発明は、請求項10又は11記載の画像形成システムにおいて、
前記動作状況の少なくとも一部は、画像形成命令に係るジョブデータに基づいて取得されることを特徴とする。
【0019】
また、請求項13記載の発明は、
不具合発生予測システムの制御部による不具合発生予測方法であって、
監視対象の動作装置の各タイミングでの動作状況に係るデータを当該タイミングの情報と対応付けて取得する状況取得ステップ、
前記状況取得ステップで取得された前記動作状況に応じた今後の動作状況の予測を、現在から長さの異なる複数の期間について各々行う状況予測ステップ、
前記動作状況と、前記動作装置における所定の不具合の発生との第1対応関係を記憶するステップ、
前記予測された動作状況と、前記第1対応関係とに基づいて、前記不具合の発生可能性に係る所定の指標を求める不具合予測ステップ、
前記動作装置の動作設定と、当該動作設定の前記所定の不具合の発生への寄与の度合との第2対応関係を記憶するステップ、
前記動作設定を取得する設定取得ステップ、
を含み
前記不具合予測ステップでは、取得された前記動作設定と、前記第2対応関係とに基づいて前記寄与の度合を取得し、当該寄与の度合により前記所定の指標を補正する
とを特徴とする。
また、請求項14記載の発明は、
画像形成システムの制御部による画像形成制御方法であって、
監視対象の動作装置の各タイミングでの動作状況に係るデータを前記タイミングの情報と対応付けて取得する状況取得ステップ、
前記状況取得ステップで取得された前記動作状況に応じた今後の動作状況の予測を、現在から長さの異なる複数の期間について各々行う状況予測ステップ、
前記動作状況と、前記動作装置における所定の不具合の発生との第1対応関係を記憶するステップ、
前記予測された動作状況と、前記第1対応関係とに基づいて、前記不具合の発生可能性に係る所定の指標を求める不具合予測ステップ、
不具合の発生を抑制する所定の動作を行う抑制動作ステップ、
前記抑制動作ステップでの動作を制御する抑制制御ステップ、
を含み、
前記抑制制御ステップでは、前記異なる複数の期間における前記所定の指標にそれぞれ応じた動作条件に従って、前記抑制動作ステップでの動作を制御する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に従うと、より状況に応じた効果的な対処を可能に動作状況の予測結果を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】画像形成装置における異常発生の予測動作の流れを説明する図である。
図3】動作パラメーター寄与データの例を示す図表である。
図4】不具合発生予測処理の制御手順を示すフローチャートである。
図5】予測モデル更新処理の制御手順を示すフローチャートである。
図6】トナーこぼれの不具合発生に係る短期抑制制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
図7】トナーこぼれの不具合発生に係る長期抑制制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の画像形成システムであり、動作状況予測システム及び不具合発生予測システムを含む画像形成装置1の機能構成を示すブロック図である。
【0023】
画像形成装置1は、制御部10と、記憶部20(第1記憶部、第2記憶部、第3記憶部、第4記憶部)と、通信部30と、インターフェイス40(I/O)と、形成動作部60(監視対象の動作装置)と、計測部70などを備える。インターフェイス40には、表示部51と、操作受付部52などが接続されている。
【0024】
制御部10は、画像形成装置1の全体動作を統括制御する。制御部10は、CPU11(Central Processing Unit)と、RAM12(Random Access Memory)などを有する。
【0025】
CPU11は、各種制御動作などに係る演算処理を行うハードウェアプロセッサーである。RAM12は、CPU11に作業用のメモリー空間を提供し、一時データなどを記憶する。RAM12に記憶されるデータには、画像形成命令に係る画像データ及び動作設定データを含むジョブデータを含む。なお、ジョブデータやその処理データを記憶するRAMは、その他のRAMと別個に専用領域が設定されていてもよい。
【0026】
記憶部20は、各種プログラムや設定データを記憶する。記憶部は、フラッシュメモリーなどの不揮発性メモリー及び/又はHDD(Hard Disk Drive)などを有する。記憶部20の一部は、揮発性メモリーであってもよい。記憶部20には、使用状況データ21と、環境計測データ22と、予測データ23と、不具合対応データ24と、動作パラメーター寄与データ25と、プログラム26などが記憶されている。
【0027】
使用状況データ21は、画像形成装置1が取得されるジョブデータ121に基づいて得られる画像形成装置1の形成動作部60の動作状況、例えば、画像サイズ、画像が形成される媒体の種別、累積画像形成枚数、画像形成範囲の分布、トナー濃度の分布、時間当たりの動作量(画像形成枚数など)の分布などのデータを含む。時間当たりの動作量には、複数の単位時間が定められててよい。例えば、単位時間としては、1時間、1日、各曜日、1週間、1か月などの一部又は全部を含んでよい。
【0028】
環境計測データ22は、計測部70により計測された画像形成装置1の内外の環境状態を記憶する。使用状況データ21及び環境計測データ22が本実施形態の動作状況に係るデータを構成し、第1記憶部の記憶内容に該当する。
【0029】
予測データ23は、後述のように予め予測された使用状況や環境状態の予測データを記憶保持する。なお、使用状況データ21、環境計測データ22及び予測データ23は、古くなって不要となったデータが削除されてよく、この場合、適宜な周期で記憶部20のメモリーが開放され、再利用される。予測データ23が本実施形態の第2記憶部の記憶内容に該当する。
【0030】
不具合対応データ24は、予め過去の事例や実験などにより画像形成装置1で発生する不具合と環境との間で定められた関係性に係る定量データである。動作パラメーター寄与データ25は、予め過去の事例や実験などにより画像形成装置1で発生する不具合に対する動作パラメーターの寄与度を示すデータである。プログラム26には、予測モデル261が含まれている。不具合対応データ24、動作パラメーター寄与データ25及びプログラム26については後述する。
【0031】
通信部30は、外部機器とのデータ通信を制御する。通信部30は、例えば、ネットワークカードを有し、LAN(Local Area Network)により接続された外部の電子機器、例えば、プリントサーバーとして動作するPC(Personal Computer)との通信を制御する。
【0032】
インターフェイス40は、周辺機器との接続に係る接続端子やドライバーを含む。インターフェイス40には、上述のように、表示部51と操作受付部52とが接続されている。
【0033】
表示部51は、例えば、表示画面を有し、制御部10の制御に基づいて各種情報、例えば、画像形成状況のステータスやユーザーから受け付ける設定に係るメニューなどを表示する。操作受付部52は、例えば、表示画面に重なって位置するタッチパネルを有し、ユーザーなどの外部からのタッチ操作を検出して入力信号として制御部10へ出力する。表示部51は、例えば、液晶表示画面を有するが、これに限らず、各色のLEDランプ(Light Emitting Diode)などを有していてもよい。また、操作受付部52は、タッチパネルに加えて/代えて、テンキー、キーボード、ポインティングデバイス(マウスなど)、押しボタンスイッチ、ロッカースイッチなどを有していてもよい。
【0034】
形成動作部60は、定められた媒体を供給して当該媒体の表面にジョブデータ121により指定された画像を形成する動作を行う。形成動作部60は、ここでは、電子写真方式によりシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のトナーを媒体に付与して定着させることで画像形成動作を行う。形成動作部60は、帯電部61と、露光部62と、現像部63と、定着部64と、除電部65と、クリーニング部66と、加振部67などを備える。
【0035】
帯電部61は、感光体ドラムを帯電させる。露光部62は、感光体ドラムの表面にレーザー光を照射して、形成対象の画像データに応じた潜像を形成する。現像部63は、露光部62により潜像が形成された感光体ドラムの表面に対して現像ローラー(現像スリーブ)により現像剤と混合されたトナーを供給して、潜像に応じたトナーを付着させる。感光体ドラムに付着したトナーは、媒体に転写される。定着部64は、媒体上のトナーを定着させて、画像を形成する。除電部65は、転写後の感光体ドラムに残留したトナー粒子(現像剤を含む)の電荷を除去する。クリーニング部66は、感光体ドラムに残留しているトナー粒子をブラシやブレードなどにより除去し、除去後の感光体ドラムの表面に潤滑剤を塗布する。
【0036】
加振部67は、形成動作部60の各構成、特に、現像部63を内部に収める筐体に振動を生じさせる。加振部67は、例えば、おもりなどを回転するモーターを有し、おもりの回転周期ごとに筐体に衝突することで打撃を加えて筐体に振動を生じさせる。この加振部67の動作により筐体内部に付着したトナーを落下させる。加振部67による加振強度は、画像形成装置1の画像形成精度などに悪影響を与えない範囲で複数段階に設定可能である。初期状態では、加振強度は最低限に弱く定められていてもよい。筐体内には、落下するトナーを吸引する吸引部の吸引口などが位置していてもよい。加振部67は、本実施形態の画像形成システムにおいて、少なくともトナーこぼれに係る不具合の発生を抑制する抑制動作部に含まれる。
【0037】
計測部70は、画像形成装置1の内外における環境状態を計測する。環境状態としては、例えば、温度や湿度が挙げられる。環境状態の計測データは、所定の周期、例えば、1分周期で制御部10に送られて、記憶部20の環境計測データ22に記憶される。また、個々の温度や湿度などの値だけではなく、これらの変化量や変化速度なども環境状態に含まれてよい。また、湿度は、通常用いられる相対湿度の他、絶対湿度が用いられてもよい。
【0038】
その他、画像形成装置1(画像形成システム)は、画像が形成された媒体に対して後処理、例えば、裁断などを行う各種後処理装置を備えていてもよい。また、画像形成システムとして動作する場合などに各部の動作状況を統括的に監視する監視装置が別途備えられていてもよい。
【0039】
次に、画像形成装置1の動作不具合について説明する。
画像形成装置1は、特に、形成動作部60を長期間継続的に利用することで、各部品、消耗品や固定組み立て部分などが劣化する。このような劣化が基準となるレベルを超えると、形成画像の画質に悪影響が生じ、画像の汚れ、にじみ、かすれや欠損といった不具合(ノイズ)が生じ得る。このような劣化に伴う画像への悪影響が現れる基準レベルは、画像の内容に応じて異なる。例えば、トナーごとの偏り、形成画像の濃度やサイズ、前の画像と次の画像との間での濃度や画像形成範囲の変化などに応じて、平均的な劣化状況よりも早く不具合が表れる場合があったり、反対に影響が出にくい場合があったりする。また、環境状態、すなわち、温度や湿度に応じた各部の状態の変化、例えば、クリーニング部66のブレードの硬さ(例えば、樹脂であって温度によって硬さが変化する)や、定着部64による定着温度の変化などにより、劣化の影響が強まったり弱まったりする場合もある。
【0040】
また、画像形成装置1の動作には、いくつかの可変パラメーターがある。例えば、トナーの帯電量(Q/M)、感光体ドラムの回転速度に対する現像ローラー(現像スリーブ)の回転速度の比(現像θ)、トナー濃度Tcなどの調整により、最高画像濃度Dmaxなどを変更することができる。また、状況によって、加振部67の動作頻度、クリーニング部66のブレードの当接角度、潤滑剤の塗布量などを変化させることができる。特には限られないが、ここでは、現像θを大小2通りで設定可能であり、現像θが大きく設定されている場合には、その旨を示すフラグ(現像θフラグ)がセットされ、現像θが小さく設定されている場合には、現像θフラグがリセット状態とされる。
【0041】
したがって、画像の不具合(形成画像の画質異常)が発生するか否かは、累積的な使用状況に加えて、直近の動作、環境状態などの影響(以上まとめて動作状況)や、動作パラメーターの設定などの組合せにより定まる。画像への異常の発生を前もって予測するには、今後の動作状況を予測したうえで、さらに、現在の動作パラメーターの影響を加味する。
【0042】
画像形成装置1では、動作状況の予測には、予測モデル261が利用される。予測モデル261は、過去の動作状況に係る予測データと実データとに基づいて(教師データとして)機械的に学習が可能なモデル(機械学習モデル)である。予測モデル261のアルゴリズムは、特には限られないが、出力内容に適したものが使い分けられてもよい。例えば、使用状況の学習、予測には、ニューラルネットワークなどを利用したディープラーニングにより学習させた機械学習モデルであってもよい。また、温度や湿度などの動作環境の学習、予測には、自己回帰和分移動平均(ARIMA)モデルなどが利用されてもよい。また、動作環境に係る変化点の抽出には、自己回帰忘却型学習アルゴリズム(SDAR)が利用されてもよい。これらにより、各期間の入力変数と同一の出力変数が予測値として得られてもよいし、時系列データが出力されてもよい。あるいは、動作状況に係る各変数の対応期間内での発生確率の分布のようなものが出力されてもよい。
【0043】
環境状態を含む動作状況は、予め不具合対応データ24として対応テーブル又は換算式(第1対応関係)により異常(不具合)発生のしやすさを示す指標値(不具合発生指数;不具合の発生可能性に係る所定の指標)と対応付けられている。複数の異常の種別(所定の不具合)に対してそれぞれ対応付けられる動作状況の要素の組合せは異なっていてよい。不具合対応データ24が、本実施形態の第3記憶部に記憶される内容に該当する。
【0044】
また、動作パラメーター(動作設定)は、それぞれ、動作パラメーター寄与データ25に基づいて異常発生への寄与を示すスコアに対応付けられ、さらに、各動作パラメーターに係るスコアの合計値が不具合発生指数に対する寄与の度合(寄与係数)に変換される(これらをまとめて第2対応関係)。最終的な不具合発生のしやすさは、得られた不具合発生指数に寄与度を乗じることで得られる。不具合発生指数は、異常の発生確率のような直接的な値であってもよいし、独自の指標値であってもよい。動作パラメーター寄与データ25が本実施形態の第4実施形態に記憶される内容に該当する。
【0045】
図2は、画像形成装置1における異常発生の予測動作の流れを説明する図である。
まず、入力データとしてジョブデータと計測データが取得され、ジョブデータから使用状況データが取得される(P1)。なお、累積的なデータ(例えば、累積画像形成枚数など)については、画像形成装置1から直接履歴データが取得されてもよいし、制御部10が計数保持していてもよい。また、ジョブデータには、途中で画像形成動作が中止された場合のキャンセルログなども含まれていてよい。動作状況(使用状況と計測データ)は、予測モデル261に入力されて、当該予測モデル261から今後の動作状況予測が出力される(P2)。
【0046】
ここで、この予測モデル261は、互いに異なる長短2種類の期間における動作状況予測を出力する。短期予測は、例えば、データが入力された時点から数時間~1日程度の期間における使用状況及び動作環境を予測する。長期予測は、例えば、データが入力された時点から2日~1か月程度の使用状況及び動作環境を予測する。
【0047】
使用状況及び動作環境の各予測データから不具合対応データ24に基づいて、不具合発生指数が算出される(P3)。この不具合発生指数も、上記短期の予測と長期の予測に対してそれぞれ別個に算出される。
【0048】
一方、使用状況及び動作環境の予測データは、それぞれ記憶保持されて、当該予測の対象期間の使用状況及び動作環境が取得、計測された段階で読み出されて比較される(P4)。比較結果は、機械学習モデルの各パラメーターにフィードバックされる(P5)。
【0049】
また、画像形成動作に係る現在の動作パラメーターが取得されて、動作パラメーター寄与データ25により不具合発生への寄与に係るスコアに各々変換される(P6)。各スコアは合算され、合計値が更に寄与係数に変換される(P7)。
【0050】
長短の不具合発生指数に寄与係数を乗じて補正済の不具合発生指数が算出される(P8)。
【0051】
図3は、動作パラメーター寄与データ25の例を示す図表である。ここでは、媒体の汚れの原因の一つであるトナーこぼれの発生に関係する動作パラメーターのスコア設定及びスコアの合算値(合計スコア)と寄与係数の関係を示す。ここでいうトナーこぼれとは、意図しないトナーが媒体に付着する状態全体を指し、例えば、現像部63から直接媒体上にこぼれる場合に加えて、現像やクリーニングに伴って飛散したトナー粒子が各部に付着して間接的に媒体を汚すような場合も含んでよい。
【0052】
図3(a)に示すように、トナーこぼれには、現像剤ライフ、すなわち、現在の現像剤が使用開始されてからの画像形成枚数と、トナーの帯電量(Q/M)と、加振部67による直近の加振後における出力枚数とが関係する動作パラメーターとされている。
【0053】
現像剤は、トナーと混合されて当該トナーを適度な帯電量及び電圧とする。現像剤は、現像ローラーに付着してトナーを運び、その後更に感光体ドラム表面の露光状態に応じて感光体ドラムへトナーを転写する。現像剤は、長期間利用されると劣化して、トナーを適切に感光体ドラムの表面へ運ぶことが困難になる。ここでは、例えば、現像剤ライフが500kp(50万枚)未満の場合、スコアは「0」である。500kp~1500kp(以下、「~」は前の数字以上後ろの数字未満を示す)の場合には、スコアは「3」となる。現像剤ライフが1500kp以上の場合には、スコアは「6」となる。
【0054】
同様に、帯電量が50μC/g以上の場合には、スコアは「0」である。帯電量が35~50μC/gの場合には、スコアは「7」である。帯電量が35μC/g未満の場合には、スコアは「15」である。また、加振部67による直近の加振後の出力枚数が500枚未満の場合には、スコアは「0」である。出力枚数が500~2000の場合には、スコアは「5」である。出力枚数が2000枚以上の場合には、スコアは「10」である。
【0055】
ここでは、スコアはそれぞれ3段階に区切られているが、これに限られない。また、段階で定めずに数式で連続的に定められてもよい。3段階のスコアはそれぞれ異なっており、すなわち、トナーこぼれに対して相対的に影響の大きい動作パラメーターのスコアが他の動作パラメーターのスコアに比して大きくなり得る。
【0056】
これら3つの動作パラメーターに応じて3つのスコアが取得されると、これら3つのスコアが合算されて合計スコアが求められる。図3(b)に示すように、合計スコアが4段階に分けられて、該当する合計スコアに応じて寄与係数が定まる。この寄与係数が別途求められた不具合発生指数に乗じられて、補正済の不具合発生指数が算出される。
【0057】
ここでは、合計スコアが10未満の場合には、寄与係数が0.8であり、すなわち、1.0よりも小さいので、動作パラメーターは、全体として不具合の発生を抑制する側に位置していることが分かる。一方で、合計スコアが17以上の場合には、寄与係数が1.0よりも大きくなるので、動作パラメーターは、全体として不具合の発生を促す側に位置していることが分かる。
【0058】
図4は、画像形成装置1で実行される不具合発生予測処理の制御部10による制御手順を示すフローチャートである。
この不具合発生予測処理は、本実施形態の動作状況予測方法(不具合発生予測方法)を含み、特には限られないが、画像形成装置1の動作開始時や動作中に、使用状況及び動作環境の短期予測期間程度~この半分程度の間隔で定期的に又はユーザーの入力操作などに基づいて開始される。
【0059】
制御部10(CPU11)は、適宜な期間内のジョブデータと、計測されて動作環境データを取得する(ステップS101)。制御部10は、ジョブデータに基づいて使用状況を取得する(ステップS102)。ジョブデータから使用状況を取得するための適宜な期間は、直近の所定時間などとされるが、画像形成装置1の起動時などの場合には、直近で画像形成装置1への電力供給が遮断されたタイミングから所定時間の期間とされてもよい。使用状況は、上記のように、例えば、平均的な画像形成枚数(プリントボリューム、A4サイズ換算などであってもよい)。各ジョブ当たりの画像形成枚数、平均的な各エリアの各色トナー付与濃度、マージンや隙間の大きさ(カバレッジ)及びその変化率などが挙げられる。上記のように、平均は、ジョブごと及び複数の単位時間で各々算出されてよく、上記所定時間内に複数個の平均対象期間が設定されてもよい。また、使用状況には、媒体の種別(サイズ、紙種、坪量など)などが含まれてもよく、更に、画像形成装置1が後処理装置や別途監視装置などを有する場合には、当該後処理装置や監視装置の使用に係る状況も含まれてもよい。
【0060】
動作環境データには、例えば、画像形成装置1の筐体内における上記所定の期間の温度及び湿度、並びに画像形成装置1の外側の所定位置における外部温度及び外部湿度などが含まれてもよい。取得された各データは、タイミングの情報と対応付けられる。ステップS101、S102の処理(図2におけるP1に対応)が本実施形態の状況取得部及び状況取得ステップを構成する。これにより、予測モデル261に入力される各タイミングでの動作状況に係るデータが得られる。
【0061】
制御部10は、得られた使用状況データを記憶部20に使用状況データ21として記憶させる。制御部10は、得られた動作環境データを記憶部20に環境計測データ22として記憶させる(ステップS103)。
【0062】
制御部10は、得られた動作状況データを予測モデル261に入力させる(ステップS104)。制御部10は、予測モデル261から出力される今後の動作状況の予測値をそれぞれ取得する(ステップS105)。この時に取得される予測値は、上述のように、短期間のものと長期間のものの2種類(長さの異なる複数の期間)である。ステップS104、S105の処理(図2におけるP2に対応)が本実施形態の状況予測部及び状況予測ステップを構成する。
【0063】
制御部10は、取得された各予測結果を予測期間の日時情報と対応付けて予測データ23として記憶部20に記憶させる(ステップS106)。制御部10は、不具合対応データ24に基づいて、取得された使用状況の予測と動作環境の予測とに応じた不具合発生のしやすさ(発生確率)に係る指標を不具合発生指数として長短各々(異なる複数の期間について)算出する(ステップS107;不具合予測部。図2のP3に対応)。
【0064】
制御部10は、現在の動作パラメーターを取得する(ステップS108;設定取得部)。制御部10は、動作パラメーター寄与データ25に基づき、各動作パラメーターに応じたスコアを取得して、これらを合算する。制御部10は、動作パラメーター寄与データ25を参照して、スコア合計値を寄与係数に変換する(ステップS109;図2のP6、P7に対応)。制御部10は、不具合発生指数に寄与係数を乗じて不具合発生指数を補正する(ステップS110;図2のP8に対応)。ステップS109、S110の処理も本実施形態の不具合予測部の構成に含まれてもよい。そして、制御部10は、不具合発生予測処理を終了する。
【0065】
図5は、予測モデル更新処理の制御部10による制御手順を示すフローチャートである。この予測モデル更新処理の実行頻度は、上記不具合発生予測処理の実行頻度以下であってよく、実行タイミングは互いに異なっていてもよい。例えば、予測モデル更新処理は、その日の画像形成動作が終了した後、電力供給が遮断される前に実行されてもよい。
【0066】
予測モデル更新処理が開始されると、制御部10(CPU)は、記憶部20に記憶された使用状況と動作環境の実際値を使用状況データ21及び環境計測データ22からそれぞれ取得する(ステップS201)。制御部10は、記憶された使用状況及び動作環境の予測値を予測データ23から取得する(ステップS202)。制御部10は、予測値のうち、実際値の取得タイミングに対応する期間をそれぞれ選択する(ステップS203)。
【0067】
制御部10は、実際値(実際の動作状況)と対応付けられた予測値(予測された動作状況)とを比較する(ステップS204;比較部。図2のP4に対応)。制御部10は、比較結果としてずれの度合(一致の度合)を取得する。ずれの度合は、一律に判定されるのではなく、特異的な変化の影響を軽減(イレギュラーな場合)及び/又は強調(実際の不連続な変化の場合)するように考慮されてよい。制御部10は、得られたずれの度合に応じて予測モデル261の各パラメーターにフィードバックし(学習させ)、予測モデル261を更新する(ステップS205;更新部。図2のP5に対応。生成部にも対応)。そして、制御部10は、予測モデル更新処理を終了する。
【0068】
なお、予測モデル更新処理は、更新時だけでなく初期学習時、すなわち予測モデルの生成時にも同じ処理が行われてよい。この場合には、初期学習に入力データ(教師データ)が予め準備されている必要がある。また、季節変動に伴う動作環境の変化などがある場合には、自機の計測データのみでは、学習に1年を要することになり得る。したがって、例えば、一般的な共通データを予め保持させておく又はネットワークを介して取得可能とするなどにより、効果的な初期学習が可能とされてもよい。
【0069】
上記のように、不具合の発生しやすさの情報が得られると、ユーザーが情報に応じた対応を行う。例えば、交換部品や代替品の手配、画像形成業務に係るスケジュールの調整など(短期的には、ジョブの順番を調整し、長期的には、メンテナンスによる停止時間を計画したりするなど)の他、画像形成装置1でも、実際の不具合が発生するまでの猶予が得られるように、不具合発生指数に従った動作条件で動作の調整が行われてもよい。この場合、その場しのぎではあるが即座に不具合が発生するのを回避する調整と、不具合の発生を長期的に引き延ばす調整とがある。前者の調整は、短期の不具合発生指数に応じて行われ、後者の調整は、長期の不具合発生指数に応じて行われる。
【0070】
図6は、トナーこぼれの不具合発生に係る短期的な予測結果に応じて実行する短期抑制制御処理の制御部10による制御手順を示すフローチャートである。この短期抑制制御処理は、上記不具合発生予測処理の結果が取得された場合に引き続いて実行されてよい。
【0071】
短期抑制制御処理が開始されると、制御部10(CPU11)は、得られた不具合発生指数が100以上であるか否かを判別する(ステップS301)。不具合発生指数が100以上であると判別された場合には(ステップS301で“YES”)、制御部(CPU11)は、加振部67による加振動作を行わせる設定を行う(ステップS302)。加振動作は画像形成動作中には行われないので、画像形成がなされていない場合には即座に実行され、画像形成動作中には、現在の画像形成動作が終了してから実行される。
【0072】
制御部10は、トナーのリフレッシュ動作の設定を行う(ステップS303)。リフレッシュ動作は、現像部63においてトナーカートリッジなどの供給部から供給されて保持されているトナーが使用されないまま長期間保持されると、劣化が生じるので、実際の画像形成に用いられない排出用潜像を感光体ドラムに形成し、当該排出用潜像の現像によりトナーを排出することで、トナーの入れ替わりを促進する。排出されたトナーは、媒体などに転写されずにクリーニング部66により除去される。そして、制御部10は、短期抑制制御処理を終了する。
【0073】
ステップS301の判別処理で、不具合発生指数が100以上ではない(100未満である)と判別された場合には(ステップS301で“NO”)、制御部10は、不具合発生指数が80以上であるか否かを判別する(ステップS304)。不具合発生指数が80以上であると判別された場合には(ステップS304で“YES”)、制御部10の処理は、ステップS303に移行する。
【0074】
不具合発生指数が80以上ではない(80未満である)と判別された場合には(ステップS304で“NO”)、制御部10は、不具合発生指数が50以上であるか否かを判別する(ステップS305)。50以上であると判別された場合には(ステップS305で“YES”)、制御部10は、現像θフラグがセット状態である、すなわち、現像θが高く設定されているか否かを判別する(ステップS306)。現像θフラグがセットされていると判別された場合には(ステップS306で“YES”)、制御部10は、現像θを低下させる。また、制御部10は、これに応じて最高画像濃度Dmaxを調整する(ステップS307)。制御部10は、現像θフラグをリセットする(ステップS308)。そして、制御部10は、短期抑制制御処理を終了する。
【0075】
現像θフラグがセットされていないと判別された場合には(ステップS306で“NO”)、制御部10は、短期抑制制御処理を終了する。
【0076】
ステップS305の判別処理で、不具合発生指数が50以上ではないと判別された場合には(ステップS305で“NO”)、制御部10は、現像θフラグがリセット状態であるか否かを判別する(ステップS309)。リセット状態であると判別された場合には(ステップS309で“YES”)、制御部10は、現像θを上昇させる。また、制御部10は、これに応じて最高画像濃度Dmaxを調整する(ステップS310)。制御部10は、現像θフラグをセットする(ステップS311)。そして、制御部10は、短期抑制制御処理を終了する。現像θフラグがリセット状態ではない(セットされている)と判別された場合には(ステップS309で“NO”)、制御部10は、短期抑制制御処理を終了する。
【0077】
このように、不具合発生指数が高い場合には、加振動作の即時実行やトナーのリフレッシュ動作などにより、現時点でトナーこぼれにつながる要因を速やかに低減させる。あた、不具合発生指数が中程度まで上昇してきている場合には、現像θを低下させることでトナーの飛散を減らし、トナーこぼれのトリガー要素を低減させる。
【0078】
図7は、トナーこぼれの不具合発生に係る長期的な予測結果に応じて実行する長期抑制制御処理の制御部10による制御手順を示すフローチャートである。この長期抑制制御処理は、上記不具合発生予測処理の結果が取得された場合に、短期抑制制御処理に更に引き続いて実行されてよい。
【0079】
長期抑制制御処理が開始されると、制御部10(CPU11)は、不具合発生指数が50以上であるか否かを判別する(ステップS401)。不具合発生指数が50以上であると判別された場合には(ステップS401で“YES”)、制御部10は、加振部67の加振強度が上限値に設定されているか否かを判別する(ステップS402)。上限値ではないと判別された場合には(ステップS402で“NO”)、制御部10は、加振強度を一段階強める(上昇させる)設定を行う(ステップS403)。
【0080】
制御部10は、トナー濃度Tcの目標値が下限値であるか否かを判別する(ステップS404)。トナー濃度Tcの目標値がお下限値ではないと判別された場合には(ステップS404で“NO”)、制御部10は、トナー濃度Tcの目標値を1段階低下させる設定を行う(ステップS405)。トナー濃度Tcの目標値は、上記帯電量を上昇させることで低下する。そして、制御部10は、長期抑制制御処理を終了する。
【0081】
ステップS404の判別処理で、トナー濃度Tcの目標値が既に下限値であると判別された場合には(ステップS404で“YES”)、制御部10は、加振強度が上限値であるか、又は不具合発生指数が50以上であるか否かを判別する(ステップS431)。いずれかであると判別された場合には(ステップS431で“YES”)、制御部10は、長期抑制制御処理を終了する。いずれでもないと判別された場合には(ステップS431で“NO”)、制御部10は、加振部67による加振強度を1段階上昇させる設定を行う(ステップS432)。そして、制御部10は、長期抑制制御処理を終了する。
【0082】
ステップS402の判別処理で、加振強度が上限値であると判別された場合には(ステップS402で“YES”)、制御部10は、トナー濃度Tcの目標値が下限値であるか否かを判別する(ステップS411)。トナー濃度Tcの目標値が下限値ではないと判別された場合には(ステップS411で“NO”)、制御部10の処理は、ステップS405へ移行する。
【0083】
トナー濃度Tcの目標値が下限値であると判別された場合には(ステップS411で“YES”)、制御部10は、現像剤ライフが1500kp以上であるか否かを判別する(ステップS412)。現像剤ライフが1500kp以上であると判別された場合には(ステップS412で“YES”)、制御部10は、現像剤を交換するように促す報知動作を行う。報知動作は、例えば、表示部51によりその旨を示す文字、警告の識別番号や図などを示すことで行われてよい。また、LEDランプなどが警告を示す色で点灯又は点滅されてもよい。ユーザー(管理者)は、この警告を見て交換現像剤の在庫確認及び/又は手配を行い、又はメンテナンス業者やサービスセンターなどに対応を依頼してもよい。そして、制御部10は、長期抑制制御処理を終了する。現像剤ライフが1500kp以上ではない(1500kp未満である)と判別された場合には(ステップS412で“NO”)、制御部10は、長期抑制制御処理を終了する。
【0084】
ステップS401の判別処理で、不具合発生指数が50以上ではない(50未満である)と判別された場合には(ステップS401で“NO”)、制御部10は、加振部67による加振強度を1段階低下させる設定を行う(ステップS421)。なお、加振強度が既に最低段階の場合には、そのまま最低強度で維持されてよい。
【0085】
制御部10は、不具合発生指数が30以上であるか否かを判別する(ステップS422)。不具合発生指数が30以上であると判別された場合には(ステップS422で“YES”)、制御部10の処理は、ステップS404へ移行する。
【0086】
不具合発生指数が30以上ではない(30未満である)と判別された場合には(ステップS422で“YES”)、制御部10は、トナー濃度Tcの目標値を1段階上昇させる設定を行う(ステップS423)。トナー濃度Tcの目標値が既に最大値である場合には、制御部10は、そのままトナー濃度Tcの目標値を維持してよい。そして、制御部10は、長期抑制制御処理を終了する。
【0087】
長期抑制制御処理は、即効性のある処理ではないので、不具合発生指数が30以上のように、短期抑制制御処理よりも低い段階で対処設定がなされる。一方で、短期抑制制御処理は、不具合の発生の可能性が高まった段階で短時間不具合を発生させにくい状態で持たせる処理であるので、不具合発生指数が50以上、特に80以上になってから対処がなされる。このように、長短2種類の不具合発生指数が求められることで、不具合発生の切迫の度合に応じて各々適切な対処を行うことができる。
【0088】
上記の他、トナーこぼれに影響のある動作パラメーターとして、例えば、かぶりマージン(感光体ドラムのバイアス電圧と現像電圧との差分。その大きさに応じてトナーの感光体ドラムへの付着しやすさが変化するので、トナーの消費量にも影響する)が挙げられる。上記短期抑制制御処理におけるリフレッシュ動作だけでなく、画像形成動作においてもトナーを多く消費して画像を形成するように設定を変更することで、劣化したトナーの現像部63への残留を低減させることができる。
上記の短期抑制制御処理及び上記抑制制御処理は、いずれも本実施形態の抑制制御部の動作を構成する。
【0089】
上記では、不具合の一例としてトナーこぼれについて説明したが、その他の不具合についても各々対応する使用状況や動作パラメーターに応じた予測及び予測結果に基づいて抑制動作がなされてよい。例えば、像流れの発生を予測してこれを抑制する場合、短期的に絶対湿度の上昇や紙粉の多い紙種などで発生の可能性が上がるように予想される。また、潤滑剤の不足やオゾン発生量などが影響し得るので、放電電圧の大小や滑剤塗布機構の使用期間、潤滑剤を塗布するブラシの当接角度などが動作パラメーターとして寄与係数の算出に用いられてもよい。
【0090】
また、クリーニング部66によるトナー粒子の除去不良に限定した予測では、クリーニング用のブレード部材の硬化度合に影響する形成動作部60の筐体内の温度や、除去されるトナー粒子の多寡に係るカバレッジ(部分カバレッジ)などが対応する入力データとなり得る。また、潤滑剤の不足に係る潤滑剤の塗布機構の使用期間や塗布ブラシの当接角度も動作パラメーターとして寄与係数の算出に用いられてよい。
【0091】
以上のように、本実施形態の動作状況検出システムを有する画像形成装置1は、制御部10を備える。制御部10は、状況取得部として、監視対象の画像形成装置1(ここでは、特に形成動作部60)の各タイミングでの動作状況に係るデータをタイミングの情報と対応付けて取得し、状況予測部として、取得された動作状況に応じた今後の動作状況の予測を、現在から長さの異なる複数の期間について各々行う。
このように複数の異なる期間について動作状況の予測を行うので、複数の予測内容に応じて短期的な対処と長期的な準備及び対処とを使い分けることができる。したがって、この動作状況の予測の結果により、より状況に応じた効果的な対処を可能とすることができる。
【0092】
また、画像形成装置1は、記憶部20を備え、第1記憶部として、取得された動作状況に係るデータを使用状況データ21及び環境計測データ22に記憶する。このように記憶保持することで、時系列データの入力や必要なデータの選択を容易に行うことができる。
【0093】
また、動作状況には、画像形成装置1の環境状態を含む。動作には、各部の温度や湿度も影響するので、これらも予測対象の動作状況に含めることで、より確実に未来の動作予測を行うことができる。
【0094】
また、制御部10は、状況予測部として、動作状況に係るデータを教師データとして学習された機械学習モデルである予測モデル261を有する。実データから得られた予測モデル261により動作予測を行うことで、個々の画像形成装置1の動作環境や使用特性などに応じて柔軟かつ適切に予測精度を向上させることができる。
【0095】
また、記憶部20は、第2記憶部として、状況予測部としての制御部10により複数の期間についてそれぞれ予測された動作状況を予測データ23に記憶する。制御部10は、比較部として、予測された動作状況と、当該予測された動作状況に係る複数の期間内のそれぞれ所定のタイミングでの実際の動作状況とを比較し、更新部として、その比較結果に基づいて、予測モデル261を更に学習させて更新する。
このように、自身の予測結果と対応する実際の動作状況とを比較して予測モデル261にフィードバックさせることで、画像形成装置1の使用状況の変化などにも柔軟に対応して適切な予測結果を出力することができる。
【0096】
また、制御部10は、生成部として、動作状況に係るデータを教師データとして予測モデル261を生成する。このように予測モデル261の生成も自機で実施可能とすることで、各画像形成装置1の使用特性や動作環境の特性に応じて適切な予測モデル261を各々利用して動作状況の予測を行うことができる。
【0097】
また、予測された動作状況は、所定の動作状況の発生確率に係る情報を含む。単なる代表的な予測値としてだけでなく、確率分布として表現されることで、予測の幅を考慮した対応をより柔軟に取ることが可能になる。
【0098】
また、本実施形態の不具合発生予測システムを有する画像形成装置1は、上記各構成を備え、また、記憶部20は、第3記憶部として、動作状況と、画像形成装置1における所定の不具合の発生との第1対応関係を不具合対応データ24に記憶し、制御部10は、不具合予測部として、予測された動作状況と、第1対応関係とに基づいて、不具合の発生可能性に係る所定の指標を求める不具合予測部と、を備える。
このように、得られた動作状況の予測結果に基づいて更に不具合の発生を予測するので、その日やその時間などの使用状況や環境の変化に応じて不具合が間もなく発生しやすい状況であるか、どの程度まだ使用が続けられるか、といった情報をより精度よく得ることができる。
【0099】
また、記憶部20は、第4記憶部として、画像形成装置1の動作パラメーターと、当該動作パラメーターの所定の不具合の発生への寄与の度合との第2対応関係(寄与係数)を動作パラメーター寄与データ25に記憶する。制御部10は、設定取得部として、動作パラメーターを取得し、不具合予測部として、取得された動作パラメーターと第2対応関係とに基づいて、寄与係数を取得し、当該寄与係数により不具合発生指数を補正する。このように、動作パラメーターを補助的に不具合の発生度合の推定に利用することで、より予測精度を向上させることができる。また、これらの動作パラメーターは、累積的な値よりはその場の値であるので、予測モデル261から切り離して補助的に不具合発生指数への寄与として評価することで、予測モデル261を必要以上に複雑化しない。
【0100】
また、制御部10は、不具合予測部として、異なる複数の期間について各々不具合発生指数を求める。複数の期間の動作状況予測に応じて不具合予測も複数の期間で行うことで、先のスケジュールなどを見ながらメンテナンスが可能になるまで短時間しのげばよいのか、ある程度長い間、早めに動作パラメーターなどを調整しながら現在のまま不具合を出さないように動作させる必要があるのかなど、状況に応じた対応を柔軟に行うことができる。
【0101】
また、本実施形態の画像形成装置1は、上記の不具合発生予測システムを備える。これにより、画像形成動作における画質への異常などの不具合の発生予測を長短の期間でそれぞれ得ることができる。特にビジネス用途などでは、画質に異常が出ては困る場合もあり、また、即座に使用停止してメンテナンスを行うことも困難な場合もあることから、このような不具合の発生予測により、スケジュールなどに応じてより柔軟かつ適切に対処可能となる。
【0102】
また、画像形成装置1は、加振部67など、不具合の発生を抑制する所定の動作を行う抑制動作部を備え、制御部10は、抑制制御部として、抑制動作部の動作を制御する。制御部10は、抑制制御部として、異なる複数の期間における不具合発生指数にそれぞれ応じた動作条件に従って、抑制動作部の動作を制御する。ここでいう抑制動作部は、不具合の発生を抑制するための専用の構成に限られず、通常の動作設定に対して当該設定を不具合が抑制されやすい状態に変更可能であるもの全般を含む。すなわち、画像形成装置1では、長期的及び短期的な不具合の発生予測に基づいて無理のない動作が可能に動作パラメーターなどを変えていくことができる。
【0103】
また、動作状況の少なくとも一部は、画像形成命令に係るジョブデータに基づいて取得される。直接的に動作設定や形成対象の画像に係る画像データを含むジョブデータを用いることで、適切に使用状況の特性や時系列変化を把握した予測モデル261が得られ、また、この予測モデル261により未来の使用状況を予測することが可能になる。
【0104】
また、本実施形態の動作状況予測方法は、監視対象の動作装置の各タイミングでの動作状況に係るデータを当該タイミングの情報と対応付けて取得する状況取得ステップ、状況取得ステップで取得された前記動作状況に応じた今後の動作状況の予測を、現在から長さの異なる複数の期間について各々行う状況予測ステップ、を含む。このような複数期間についての動作状況の予測により、短期的及び長期的な対応策を柔軟に立てることが可能になり、メンテナンスのタイミングや時間を効率的に設定して、好ましくないタイミングでのメンテナンスを避けやすくすることができる。
【0105】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、短期及び長期の2種類の不具合発生指数を出力したが、3種類以上、例えば、更に中期的な予測や上述の長期(2日~1か月)よりも更に長い予測がなされてもよい。また、短期と長期とで出力されるものは、同一の指標でなくてもよい。
【0106】
また、不具合発生指数を表示部51などに表示してもよく、この場合、短期抑制制御処理/長期抑制制御処理による設定変更によりどの程度不具合発生指数が低下しているかが併せて示されてもよい。
【0107】
また、上記実施の形態では、予測モデルとしてニューラルネットワークを利用した機械学習モデルと、ARIMAモデルとを例に挙げて説明したが、これらに限られない。例えば、パーセプトロン、ロジスティック回帰などアルゴリズムが用いられてもよいし、その他各種の時系列モデルが用いられてもよい。これらのモデルの学習における「教師データ」は、広く正解データ全般を意味する。
【0108】
また、機械学習モデルは、画像形成装置1内で生成される必要はなく、外部のコンピューターで生成されてもよい。また、更新の学習処理も外部で行われて、更新されたパラメーターのみがその後画像形成装置1により取得されてもよい。
【0109】
また、予測動作自体も画像形成装置1内でなされなくてもよいし、計測部70の計測結果の一部又は全部は、画像形成装置1により取得及び/又は記憶保持されなくてもよい。外部の計測機器により計測された結果を利用し、外部のコンピューターなどで予測に係る処理がなされてもよい。
【0110】
また、上記実施の形態では、画像形成装置1における画質上の不具合の発生を予測するものとして説明したが、画質に限らず他のトラブルの予測が可能であってもよい。また、画像形成装置1以外の動作装置(特に、物理的に何らかのものを動作させるもの)の動作状況に係る予測がなされてもよく、この場合には、予測された動作状況及び動作装置に応じた各種不具合の発生予測がなされてもよい。
【0111】
また、動作状況の予測は、必ずしも不具合の発生の予測に用いられる必要はない。例えば、動作装置のある部屋の空調設備の動作制御や、動作装置の使用者などの出勤スケジュールの調整などに利用されてもよい。
【0112】
また、機械学習モデルの更新は、必ずしも定期的に行われなくてもよい。イレギュラーなデータや異常なデータなどを含む学習では、かえって予測精度を低下させる場合もあるので、別途解析処理で学習データが生成された場合にのみ機械学習モデルの更新がなされてもよい。
【0113】
また、上記実施の形態では、動作パラメーターを別途算出された不具合発生指数に対する寄与を算出するものとして利用したが、動作パラメーターも不具合発生指数の算出に直接用いられてもよい。また、不具合の発生可能性を示す指標は、指数のような数値でなくてもよい。また、数値であっても、計算して得るものではなくてもよく、例えば、マトリクスで示された表などから得られるものであってもよい。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、処理動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0114】
1 画像形成装置
10 制御部
11 CPU
12 RAM
121 ジョブデータ
20 記憶部
21 使用状況データ
22 環境計測データ
23 予測データ
24 不具合対応データ
25 動作パラメーター寄与データ
26 プログラム
261 予測モデル
30 通信部
40 インターフェイス
51 表示部
52 操作受付部
60 形成動作部
61 帯電部
62 露光部
63 現像部
64 定着部
65 除電部
66 クリーニング部
67 加振部
70 計測部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7