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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】建物構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/00 20060101AFI20250109BHJP
   E04B 9/30 20060101ALI20250109BHJP
   E06B 9/17 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E04B9/00 S
E04B9/30 A
E06B9/17 W
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020129891
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026421
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 大
(72)【発明者】
【氏名】宮地 宏和
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 裕也
(72)【発明者】
【氏名】末澤 貴大
(72)【発明者】
【氏名】石川 達也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 靖曜
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-101095(JP,U)
【文献】特開2007-037986(JP,A)
【文献】実開平06-020736(JP,U)
【文献】特開昭61-158561(JP,A)
【文献】窓辺の工夫 ,高田建築事務所ウェブページ,日本,高田建築事務所,2019年05月27日,https://www.takada-arc.com/blog/10783,4 窓の取付高さの工夫
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00-9/36
E06B 9/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
勾配天井の勾配方向下側に設けられる外壁と、
前記外壁に形成される開口部と、
前記外壁に沿って前記勾配天井の下端に形成され、下方に向かって開いた下方開口を有する箱状の溝部と、
前記溝部の内部に設けられ、前記開口部に入射する光を遮る光遮蔽材の上端部が取り付けられる取付部と、
を備え、
前記溝部は前記勾配天井に埋め込まれる天井埋込式であり、
前記溝部の前記開口部と反対側の側板の下端は、前記開口部の上側の額縁の下面の高さよりも低く、
前記外壁の屋外側に軒を備え、
当該軒の軒裏は、化粧軒裏面材の上側に耐火面材を備えており、前記勾配天井と平行で、且つ、当該軒裏の前記外壁側の端部が当該勾配天井の下端よりも高い位置に配置されており、
前記外壁の屋外側で前記開口部の上にシャッターボックスを備え、
当該シャッターボックスは、上面が前記軒裏と同じ勾配で形成され、その側面に前記耐火面材の端部が当接することを特徴とする建物構造。
【請求項2】
前記溝部は前記開口部と反対側の前記側板の下端から、当該溝部の下方に向かって延びて形成され、当該溝部の前記下方開口の一部を覆うカバー体が形成されており、
前記カバー体は平板状で、その下面は前記勾配天井と同じ勾配であることを特徴とする請求項1に記載の建物構造。
【請求項3】
前記開口部は、矩形枠内に透光部を有し、
前記透光部の上端が前記カバー体の下端よりも高いことを特徴とする請求項2に記載の建物構造。
【請求項4】
前記カバー体は、前記勾配天井を形成する天井材と同一材料で、同色に形成されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の建物構造。
【請求項5】
前記カバー体は、その基端側に前記勾配天井を形成する天井材の小口面及び下面の一部を覆う見切り部が形成されることを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載の建物構造。
【請求項6】
前記勾配天井は、天井下地材により形成された下地面に化粧クロスを貼り付けて形成されるものであり、
前記溝部は、一対の側面下地板と、前記側面下地板の上端同士を結ぶ上面下地板と、を有し、
前記溝部は、前記開口部側の側面下地板及び前記上面下地板の当該溝部の内側の面に前記勾配天井と同一の化粧クロスが貼り付けられ、
前記開口部と反対側の側面下地板は、前記勾配天井を形成する前記天井下地材の小口面及び下面の一部を覆う見切り部が形成される化粧側板に覆われることを特徴とする請求項1に記載の建物構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、勾配天井を有するとともに、当該勾配天井に埋め込み式のカーテンボックスなどの溝部が配置された建物構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、勾配天井を有する建物であって、埋め込み式のカーテンボックスが配置された建物構造が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に開示されている勾配天井及びカーテンボックスは、石膏ボードで形成されている。さらに、勾配天井の下端とカーテンボックスの側板との接合箇所には、側面視略逆T字状のジョイナーが配置される。そして、勾配天井からジョイナーを経てカーテンボックスの内部までクロスを被覆することにより、皺を生じさせることなくクロスを貼り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-20736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1における建物構造においては、窓などの開口部とカーテンボックスとの位置関係が記載されていない。ところで近年、開口部廻りでは、大開口の天井高サッシを設けることで、屋内空間と屋外空間との繋がりを演出し、屋内空間をより居心地の良い空間とすることが求められている。一方、カーテンボックスは、天井に視覚的な境界を形成することになり、屋内外の空間が隔てられた印象となりやすい。
【0005】
そこで本発明は、天井埋込式のカーテンボックスなどの溝部を設けた勾配天井を有する建物構造であって、勾配天井の下端から外部に開かれた印象とすることができ、屋内空間と屋外空間との繋がりを演出することができる建物構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建物構造は、勾配天井の勾配方向下側に設けられる外壁と、前記外壁に形成される開口部と、前記外壁に沿って前記勾配天井の下端に形成され、下方に向かって開いた下方開口を有する箱状の溝部と、前記溝部の内部に設けられ、前記開口部に入射する光を遮る光遮蔽材の上端部が取り付けられる取付部と、を備え、前記溝部は前記勾配天井に埋め込まれる天井埋込式であり、前記溝部の前記開口部と反対側の側板の下端は、前記開口部の上側の額縁の下面の高さよりも低く、前記外壁の屋外側に軒を備え、当該軒の軒裏は、化粧軒裏面材の上側に耐火面材を備えており、前記勾配天井と平行で、且つ、当該軒裏の前記外壁側の端部が当該勾配天井の下端よりも高い位置に配置されており、前記外壁の屋外側で前記開口部の上にシャッターボックスを備え、当該シャッターボックスは、上面が前記軒裏と同じ勾配で形成され、その側面に前記耐火面材の端部が当接することを特徴としている。
【0007】
本発明の建物構造は、前記溝部は前記開口部と反対側の前記側板の下端から、当該溝部の下方に向かって延びて形成され、当該溝部の前記下方開口の一部を覆うカバー体が形成されており、前記カバー体は平板状で、その下面は前記勾配天井と同じ勾配であることを特徴としている。
【0008】
本発明の建物構造は、前記開口部は、矩形枠内に透光部を有し、前記透光部の上端が前記カバー体の下端よりも高いことを特徴としている。
【0009】
本発明の建物構造は、前記カバー体は、前記勾配天井を形成する天井材と同一材料で、同色に形成されることを特徴としている。
【0010】
本発明の建物構造は、前記カバー体は、その基端側に前記勾配天井を形成する天井材の小口面及び下面の一部を覆う見切り部が形成されることを特徴としている。
【0011】
本発明の建物構造は、前記勾配天井は、天井下地材により形成された下地面に化粧クロスを貼り付けて形成されるものであり、前記溝部は、一対の側面下地板と、前記側面下地板の上端同士を結ぶ上面下地板と、を有し、前記溝部は、前記開口部側の側面下地板及び前記上面下地板の当該溝部の内側の面に前記勾配天井と同一の化粧クロスが貼り付けられ、前記開口部と反対側の側面下地板は、前記勾配天井を形成する前記天井下地材の小口面及び下面の一部を覆う見切り部が形成される化粧側板に覆われることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の建物構造によると、溝部の開口部と反対側の側板の下端が、開口部の上側の額縁の下面の高さよりも低く形成されているので、屋内側から見た場合に、勾配天井の下端のすぐ下に開口部が配置されているように視認されることとなり、開口部を通して屋外側を視認することができ、勾配天井と屋外とをつながった印象とすることができる。
【0014】
本発明の建物構造によると、溝部は開口部と反対側の側板の下端から、溝部の下方に向かって形成され、当該溝部の前記下方開口の一部を覆うカバー体が形成されており、当該カバー体は、勾配天井と同じ勾配であるので、勾配天井の延長のように視認することができ、屋内側から見て、溝部の下方開口が視認されにくくなるとともに、カバー体の先端のすぐ下に、開口部が配置されているように視認されることとなり、開口部を通して屋外側を視認することができ、勾配天井と屋外とをつながった印象とすることができる。
【0015】
本発明の建物構造によると、開口部の透光部の上端が前記カバー体の下端よりも高いので、カバー体の下端のすぐ下には透光部を視認することができ、勾配天井から延長されたカバー体のすぐ下に透光部が配置されているように視認されることとなり、カバー体の先端から屋外側を視認することができ、勾配天井と屋外とをつながった印象とすることができる。
【0016】
本発明の建物構造によると、カバー体は、勾配天井を形成する天井材と同一材料で、同色に形成されているので、勾配天井とカバー体とがより一体的に視認されることとなり、カバー体の先端が勾配天井の延長として視認され、勾配天井と屋外とをよりつながった印象とすることができる。
【0017】
本発明の建物構造によると、カバー体の基端側に前記勾配天井を形成する前記天井材の小口面及び下面の一部を覆う見切り部が形成されるので、カバー体が見切り材を兼ねることができ、天井材の小口面にカバー体が突き合わせられる場合と比べて、意匠性を高めることができる。
【0018】
本発明の建物構造によると、溝部の開口部側の側面下地板及び溝部の上面下地板の内側の面に、勾配天井と同一の化粧クロスが貼り付けられているので、屋内側から見て視認されやすい位置には、すべて同一の化粧クロスが貼り付けられることとなり、勾配天井と溝部とが一体的となることで、屋外との連続性を保つことができる。また、開口部と反対側の側面下地板を覆う化粧上板は、勾配天井を形成する天井材の小口面及び下面の一部を覆う見切り部が形成されているので、勾配天井と側板とが鋭角となる部分には、クロスを設けずに見切り部が形成されることとなり、クロスの切れを抑制することができる。
【0019】
本発明の建物構造によると、外壁の屋外側に形成される軒の軒裏が勾配天井と同じ勾配で平行に配置されており、軒裏の外壁側の端部が勾配天井の下端よりも高い位置に配置されているので、屋内側から見てより屋内外を一体的な印象とすることができる。また、軒裏に設けられる化粧軒裏面材の上側に配置された耐火面材は、シャッターボックスの側面に当接することで耐火ラインを形成しており、シャッターボックスが途切れる位置では、シャッターボックスの上面が軒裏と同じ勾配で形成されることで、耐火面材の側端縁がシャッターボックスの側面に当接して耐火ラインを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第一実施形態の建物構造を説明する断面図。
図2】第一実施形態の建物構造の開口部、溝部、及びシャッターボックスが設けられていない位置の断面図。
図3】第一実施形態の建物構造の透光部の上端とカバー体の下端との高さ関係を説明する図。
図4】第二実施形態の建物構造を説明する断面図。
図5】第三実施形態の建物構造を説明する断面図。
図6】第三実施形態の建物構造の化粧側板の下端と、開口部の上側の額縁との高さ関係を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第一実施形態〕
以下、第一の実施形態の建物構造1aについて、図1から図3を参照しつつ説明する。本実施形態の建物構造1aは、例えば木造2階建の戸建住宅の建物構造1aである。本発明の建物構造1aは、木造に限定されるものではなく、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物に用いられる建物構造1aであってもよい。また、本発明の建物構造1aは、戸建住宅に限定されるものではなく、集合住宅であってもよく、又は住宅以外の建物であってもよい。また、建物構造1aは、2階建ての建物に限定されるものではなく、平屋建てや3階建て以上の建物であってもよい。本実施形態の建物構造1aは、屋内の勾配天井2と、軒裏4が勾配天井2と平行な勾配となる軒3と、勾配天井2と軒裏4との境界に形成され、開口部5を有する外壁6と、を備えている。本実施形態においては、勾配天井2、及び開口部5は、建物の最上階である2階に形成されており、軒3は、図示しない屋根から連続して配置されるものである。なお、勾配天井2及び開口部5は、必ずしも最上階に形成されるものに限定されるものではない。軒3は屋根から連続して配置されるものに限定されず、最上階よりも下階の外壁6から突出するように配置されるものであってもよい。建物構造1aの勾配天井2及び開口部5は、最上階以外のどの階に設置されるものであってもよい。
【0022】
勾配天井2は、図1に示すように、以下のように形成される。まず、勾配梁7に図示しない野縁受けを吊り下げて、勾配天井2の勾配方向と平行に鋼製野縁8を固定する。そして、当該鋼製野縁8に2枚の石膏ボードからなる天井下地板9を張り付ける。その後、天井下地板9に水平方向に延びる板野縁10を貼り付け、その下に木製板状の天井材11を貼り付けて、勾配天井2を形成している。勾配梁7は、図示しない棟木と、外壁6の内部で、且つ、開口部5の上に配置される軒桁12との間に架設されている。
【0023】
また、勾配梁7の上面には、垂木13が固定されており、当該垂木13の上に、図示しない野地板、ルーフィング材、屋根材が配置されて、建物の屋根を形成している。
【0024】
勾配天井2の勾配方向下側に外壁6が形成されており、外壁6には、開口部5が形成されている。勾配天井2の内、開口部5が形成された位置の外壁6に沿って、勾配天井2の下端に、下方に向かって開いた下方開口14を有する箱状の溝部15が形成されている。溝部15は、内部にロールスクリーン16の上端を固定する取付部17が形成されている。ロールスクリーン16は、シート状のスクリーン本体と、当該スクリーン本体を巻き取り及び引き出し可能な巻き取り部と、当該巻き取り部を溝部15の化粧上板20に取り付ける取付部17とを有している。ロールスクリーン16は、開口部5の屋内側に配置されて、開口部5から入射する外光や視線を遮断する光遮蔽材である。なお、本発明の光遮蔽材は、ロールスクリーン16に限定されるものではなく、カーテンやブラインドなどの他の光遮蔽材であってもよい。
【0025】
溝部15は、石膏ボードからなる一対の側面下地板18と、一対の側面下地板18の上端同士を接続する上面下地板19とで、下地溝を形成している。溝部15は、上面下地板19の下面に化粧上板20を貼り付けるとともに、開口部5から離れる側の側面下地板18に第一化粧側板21を貼り付け、開口部5側の側面下地板18に第二化粧側板22を貼り付ける。これらの化粧上板20、第一化粧側板21、及び第二化粧側板22は、天井材11と同一材料で同一色に形成されることが好ましい。例えば天井材11が非着色の木製である場合には、化粧上板20、第一化粧側板21、及び第二化粧側板22も非着色の木製であることが好ましい。なお、化粧上板20、第一化粧側板21、及び第二化粧側板22は、溝部15の内面を形成するものであり、屋内側からの視線から隠されていて、ほとんど視認されることはない部分であるので、天井材11と異なる材料や色彩であってもよい。溝部15の第一化粧側板21の下端は、前記開口部5の上側の額縁23の下面の高さよりも低くなるように配置されている。
【0026】
溝部15の第一化粧側板21の下端には、カバー体24aが固定されている。カバー体24aは、平板状であり、第一化粧側板21の下端から、勾配天井2と同じ勾配で、当該溝部15の下方に向かって伸びて形成されている。カバー体24aは、その基端部に勾配天井2を形成する天井材11の小口面及び下面の一部を覆うように見切り部25が形成されている。カバー体24aは複数の板を積層して形成されており、カバー体24aの見切り部25は、上側が勾配方向の上向きに突出して形成されており、天井材11の上面に当接し、天井材11を石膏ボードの天井下地板9に距離をあけて固定する板野縁10の役割を果たす。カバー体24aの見切り部25は、下側の端面が天井材11の小口面と突きつけられており、当該下側の端面のさらに下部がわずかに勾配方向の上向きに突出することで溝を形成しており、天井材11の小口面及び下面の一部を覆っている。カバー体24aの先端は、水平方向に、溝部15の下方開口14の2分の1以上を覆うように伸びている。これにより、屋内側から見て、溝部15の内部はカバー体24aに隠蔽されて見えず、カバー体24aの先端からそのまま開口部5が設置されているように視認される。
【0027】
カバー体24aは、勾配天井2を形成する天井材11と同一材料で、同色であることが好ましい。ここで、例えば天井材11が木製である場合には、カバー体24aも同一種類の木製であることが好ましい。また、天井材11が非着色である場合には、カバー体24aも非着色であることが好ましく、天井材11が着色されている場合には、カバー体24aも同色に着色されていることが好ましい。なお、カバー体24aは、これに限定されるものではなく、異なる材料や異なる色のものであっても、屋内側から見て天井材11と一体的に見える配色や意匠性を損なわないものであればよい。
【0028】
外壁6に形成される開口部5は、矩形枠27と透光部28とからなる複数枚の障子29と、当該障子29を引き違い可能に収めたサッシ枠30と、サッシ枠30の屋内側に形成され、内壁材との見切材となる額縁23と、により形成されている。サッシ枠30は、図示しないが、例えば、下端が床面と面一となるフルフラットサッシである。また、額縁23は、開口部5の屋内側の側縁及び上縁に形成されており、図示しないが、開口部5の下縁は床材がフルフラットのサッシ枠30にそのまま連続している。なお、開口部5のサッシ枠30は、床面と面一になるフルフラットサッシのものに限定されるものではなく、例えばサッシ枠30の下端が腰高さとなる腰窓のサッシ枠であってもよい。サッシ枠30が腰高さとなる場合には、額縁23は、開口部5の屋内側の側縁及び上縁のみならず、開口部5の屋内側の下縁にも形成される。障子29の透光部28はガラス板であり、矩形枠27はアルミニウム製の枠内にグレイジングチャンネル31によって透光部28が支持されて形成されている。
【0029】
透光部28は、図3に示すように、その上端がカバー体24aの先端よりも高い位置となるように配置されている。具体的には透光部28を形成するガラス板の視認可能な位置の上端、すなわちガラス板の上端部を支持するグレイジングチャンネル31の下端よりもカバー体24aの先端が低い位置となっている。上側のグレイジングチャンネル31の下端とカバー体24aの最も低い位置との距離αは例えば20~30mmである。なお、この寸法に限定されるものではない。したがって、屋内側から見た場合に、カバー体24aによって、開口部5の額縁23やサッシ枠30及び障子29の矩形枠27が見えにくくなるので、カバー体24aの先端のすぐ下に透光部28が視認されることとなり、透光部28を透過して屋外が視認されることとなる。これにより、屋内空間を開放的な視界の開かれた空間とすることができる。
【0030】
外壁6の屋外側に形成される軒3は、図示しない棟木及び軒桁12の上に架設されて、軒桁12よりも屋外側に突出する垂木13により支持されている。垂木13の上には図示しないが、野地板、ルーフィング材、及び屋根材が配置されて、建物の屋根から連続して配置されている。垂木13の下には、母屋材32を介して野縁33が固定され、この野縁33に耐火面材34が貼り付けられ、耐火面材34に板野縁10を介して、軒裏4を形成する化粧軒裏面材35が配置される。耐火面材34及び化粧軒裏面材35は、屋内の勾配天井2と平行であり、当該軒裏4の外壁6側の端部が勾配天井2の下端よりも高い位置に配置されている。
【0031】
外壁6の屋外側には、開口部5よりも上にシャッターボックス36が設けられている。シャッターボックス36は、上面の一部が軒裏4と同じ勾配となるように形成されており、これにより垂木13と干渉することなく、シャッターボックス36の下面が開口部5よりも上となるように配置している。シャッターボックス36の屋外側の側面には、耐火面材34の上端側の端部が当接しており、耐火面材34とシャッターボックス36とで、軒裏4端部の耐火ラインを形成している。図2に示すように、開口部5が設けられていない位置においては、シャッターボックス36が途切れており、耐火面材34の側端縁がシャッターボックス36の側面に当接しつつ、外壁6面に当接して、耐火ラインを形成することができる。
【0032】
〔第二実施形態〕
次に、第二実施形態の建物構造1bについて、図4を参照しつつ説明する。なお、第一実施形態の建物構造1aと同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。第二実施形態の建物構造1bは、第一実施形態と同様に、勾配天井2、開口部5、及び軒3が形成されており、勾配天井2の開口部5が形成された位置の外壁6に沿って、勾配天井2の下端に、下方に向かって開いた下方開口14を有する箱状の溝部15が形成されている。溝部15は、内部に2本のカーテンレール38が設けられている。本実施形態においては、2本のカーテンレール38が光遮蔽材の上端を固定する取付部である。また、本実施形態においては、カーテンレール38に吊り下げられたカーテン37が、本発明における光遮蔽材に相当する。なお、本実施形態の溝部15の収まりとする場合に、光遮蔽材は、カーテン37に限定されるものではなく、ロールスクリーンやその他の外光及び外部からの視線を遮ることが可能な光遮蔽材であってもよい。光遮蔽材がカーテン37で無い場合には、取付部はカーテンレール38ではなく、光遮蔽材の上端を固定することができる他の部材となる。
【0033】
溝部15は、石膏ボードからなる一対の側面下地板18と、一対の側面下地板18の上端同士を接続する上面下地板19とで、下地溝を形成し、上面下地板19の下面に化粧上板20を貼り付けるとともに、開口部5から離れる側の側面下地板18に第一化粧側板21を貼り付け、開口部5側の側面下地板18に第二化粧側板22を貼り付ける。これらの化粧上板20、第一化粧側板21、及び第二化粧側板22は、第一実施形態と同様に、天井材11と同一材料で同一色に形成されることが好ましい。
【0034】
そして、溝部15の第一化粧側板21の下端には、カバー体24bが固定されている。本実施形態におけるカバー体24bは、第一化粧側板21の下端から、勾配天井2と同じ勾配で、当該溝部15の下方に向かってわずかに突出して形成されている。溝部15内の2本のカーテンレール38に吊り下げられるカーテン37との干渉を避けるために、カバー体24bの突出する長さは第一実施形態に比べて短く形成されている。カバー体24bは、勾配天井2を形成する天井材11の小口面及び下面の一部を覆うように見切り部25が形成されている。カバー体24bは、勾配天井2を形成する天井材11と同一材料で、同色であることが好ましい。カバー体24bの下端は、開口部5に形成される上側の額縁23の下面よりも低く形成されている。
【0035】
外壁6の屋外側に形成される軒3及びシャッターボックス36は、第一の実施形態と同様の構成であるので説明を省略する。
【0036】
〔第三実施形態〕
次に、第三実施形態の建物構造1cについて、図5及び図6を参照しつつ説明する。なお、第一実施形態及び第二実施形態の建物構造1a,1bと同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。第三実施形態の建物構造1cは、第一実施形態及び第二実施形態と同様に、勾配天井2、開口部5、及び軒3が形成されており、勾配天井2の開口部5が形成された位置の外壁6に沿って、勾配天井2の下端に、下方に向かって開いた下方開口14を有する箱状の溝部15が形成されている。溝部15は、第二実施形態と同様に、内部に2本のカーテンレール38が設けられている。本実施形態においては、2本のカーテンレール38が光遮蔽材の上端を固定する取付部である。また、本実施形態においては、カーテンレール38に吊り下げられたカーテン37が、本発明における光遮蔽材に相当する。なお、本実施形態の溝部15の収まりとする場合に、光遮蔽材は、カーテン37に限定されるものではなく、ロールスクリーンやその他の外光及び外部からの視線を遮ることが可能な光遮蔽材であってもよい。光遮蔽材がカーテン37で無い場合には、取付部はカーテンレール38ではなく、光遮蔽材の上端を固定することができる他の部材となる。
【0037】
勾配天井2は、以下のように形成される。まず、勾配梁7に図示しない野縁受けを吊り下げて、勾配天井2の勾配方向と平行に鋼製野縁8を固定する。そして、当該鋼製野縁8に2枚の石膏ボードからなる天井下地板9を張り付ける。そして、天井下地板9の下面に化粧クロス39を貼り付けて、勾配天井2を形成している。
【0038】
また溝部15は、石膏ボードからなる一対の側面下地板18と、一対の側面下地板18の上端同士を接続する上面下地板19とで、下地溝を形成している。そして、開口部5側の側面下地板18及び上面下地板19の溝部15の内側の面に、それぞれ、勾配天井2と同一の化粧クロス39が貼り付けられる。開口部5と反対側の側面下地板18の溝部15の内側の面には化粧側板40が張り付けられている。化粧側板40は、勾配天井2を形成する天井下地板9の端部が挿入され、天井下地板9の小口面及び下面の一部を覆う溝状の見切り部26が形成されている。化粧側板40は、勾配天井2を形成する化粧クロス39と近似する質感及び色であることが好ましい。
【0039】
溝部15の開口部5側の側面下地板18及び溝部15の上面下地板19の内側の面に、勾配天井2と同一の化粧クロス39が貼り付けられているので、屋内側から溝部15の内部が見える場合に、視認されやすい位置には、すべて同一の化粧クロス39が貼り付けられることとなり、勾配天井2と溝部15とが一体的となる。これにより溝部15によって、屋内外の境界が強調されることがなくなり、屋内と屋外との連続性を保つことができる。また、開口部5と反対側の側面下地板18の溝部15の内側の面には化粧側板40が張り付けられており、この化粧側板40に勾配天井2の天井材11の小口面及び下面の一部を覆う見切り部26が形成されているので、勾配天井2と溝部15との突き合わせられる位置が鋭角となるが、化粧クロス39を設けずに見切り部26が形成されることとなり、化粧クロス39の切れを抑制しつつ、化粧クロス39端部の収まりをきれいに見せることができる。
【0040】
溝部15の開口部5と反対側の側板である化粧側板40の下端は、図6に示すように、開口部5の上側の額縁23の下面の高さよりも低く形成されている。開口部5の上側の額縁23と化粧側板40の下端との間の距離βは例えば約20~30mmである。なお、この寸法に限定されるものではない。これにより、屋内側から見た場合に、勾配天井2の下端のすぐ下に開口部5が配置されているように視認されることとなり、開口部5を通して屋外側を視認することができ、勾配天井2と屋外とをつながった印象とし、屋内側からの景観をよりクリアなものとすることができる。
【0041】
外壁6の屋外側に形成される軒3及びシャッターボックス36は、第一の実施形態と同様の構成であるので説明を省略する。
【0042】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る建物構造1a,1b,1cは、屋内から屋外の景観を楽しむことができる住宅の建物構造1として好適である。
【符号の説明】
【0044】
1a,1b,1c 建物構造
2 勾配天井
4 軒裏
5 開口部
6 外壁
11 天井材
14 下方開口
15 溝部
16 ロールスクリーン(光遮蔽材)
17 取付部
18 側面下地板
19 上面下地板
20 化粧上板
21 第一化粧側板
22 第二化粧側板
23 額縁
24a,b カバー体
25 カバー体の見切り部
26 化粧側板の見切り部
28 透光部
34 耐火面材
37 カーテン(光遮蔽材)
38 カーテンレール(取付部)
40 化粧側板(側板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6