(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】試験方法および試験装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20250109BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20250109BHJP
【FI】
H01L21/66 A
G01R31/26 C
(21)【出願番号】P 2020141942
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 明
(72)【発明者】
【氏名】茶薗 佑毅
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-175080(JP,A)
【文献】特開2004-309413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01R 31/26
G01N 21/956
G01N 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象の半導体チップを試験する試験方法であって、
1つの半導体チップに含まれる複数の欠陥の画像であって、1つまたは複数の前記半導体チップについての前記画像から生成され、複数の前記欠陥の評価結果の分布である基準分布を取得する基準分布取得段階と、
前記基準分布
と試験対象の前記半導体チップの欠陥の画像から得た情報とを比較して、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する判定段階と
を備える試験方法。
【請求項2】
試験対象の半導体チップを試験する試験方法であって、
複数の半導体チップの欠陥の画像から生成された、欠陥モード毎の基準分布を取得する基準分布取得段階と、
前記基準分布
と試験対象の前記半導体チップの欠陥の画像から得た情報とを比較して、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する判定段階と、
複数の前記半導体チップの電気特性を取得する電気特性取得段階と、
複数の前記半導体チップ毎に、前記欠陥の画像と前記電気特性を対応づけ、前記欠陥モードと前記電気特性の相関を取得する相関取得段階と
を備え、
前記判定段階において、前記電気特性および前記基準分布に基づいて、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する
試験方法。
【請求項3】
試験対象の半導体チップを試験する試験方法であって、
複数の半導体チップの欠陥の画像から生成された、欠陥モード毎の基準分布を取得する基準分布取得段階と、
前記基準分布
と試験対象の前記半導体チップの欠陥の画像から得た情報とを比較して、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する判定段階と
を備え、
前記判定段階において、前記欠陥の試験対象の前記半導体チップへの影響度を算出することにより、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する
試験方法。
【請求項4】
試験対象の半導体チップを試験する試験方法であって、
複数の半導体チップの欠陥の画像から生成された、欠陥モード毎の基準分布を取得する基準分布取得段階と、
前記基準分布に基づいて、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する判定段階と
を備え、
前記判定段階において、前記欠陥の試験対象の前記半導体チップへの影響度を算出することにより、試験対象の前記半導体チップの良否を判定し、
前記影響度は、前記欠陥が試験対象の前記半導体チップの半導体素子が形成された領域である活性領域にあるか否かに基づいて算出される
試験方法。
【請求項5】
試験対象の半導体チップを試験する試験方法であって、
複数の半導体チップの欠陥の画像から生成された、欠陥モード毎の基準分布を取得する基準分布取得段階と、
前記基準分布に基づいて、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する判定段階と
を備え、
前記判定段階において、前記欠陥の試験対象の前記半導体チップへの影響度を算出することにより、試験対象の前記半導体チップの良否を判定し、
前記影響度は、前記欠陥と試験対象の前記半導体チップのゲート配線の距離に基づいて算出される
試験方法。
【請求項6】
試験対象の半導体チップを試験する試験方法であって、
1つの半導体チップに含まれる複数の欠陥の画像であって、1つまたは複数の前記半導体チップについての前記画像から生成され、複数の前記欠陥の評価結果の分布である基準分布を取得する基準分布取得段階と、
前記基準分布に基づいて、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する判定段階と
を備え、
前記基準分布の横軸は前記半導体チップ内の前記欠陥の個数であり、縦軸はそれぞれの前記欠陥の個数を有する前記半導体チップの個数である
試験方法。
【請求項7】
試験対象の半導体チップを試験する試験方法であって、
複数の半導体チップの欠陥の画像から生成された、欠陥モード毎の基準分布を取得する基準分布取得段階と、
前記基準分布に基づいて、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する判定段階と、
複数の前記半導体チップの電気特性を取得する電気特性取得段階と、
複数の前記半導体チップ毎に、前記欠陥の画像と前記電気特性を対応づけ、前記欠陥モードと前記電気特性の相関を取得する相関取得段階と
を備え、
前記基準分布の横軸は前記半導体チップ内の前記欠陥の個数であり、縦軸はそれぞれの前記欠陥の個数を有する前記半導体チップの個数であり、
前記判定段階において、前記電気特性および前記基準分布に基づいて、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する
試験方法。
【請求項8】
試験対象の半導体チップを試験する試験方法であって、
複数の半導体チップの欠陥の画像から生成された、欠陥モード毎の基準分布を取得する基準分布取得段階と、
前記基準分布に基づいて、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する判定段階と
を備え、
前記基準分布の横軸は前記半導体チップ内の前記欠陥の個数であり、縦軸はそれぞれの前記欠陥の個数を有する前記半導体チップの個数であり、
前記判定段階において、前記欠陥の試験対象の前記半導体チップへの影響度を算出することにより、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する
試験方法。
【請求項9】
前記相関取得段階において、前記欠陥モード毎に、前記欠陥モードと前記電気特性の相関を表示する
請求項
2または7に記載の試験方法。
【請求項10】
前記判定段階において、前記欠陥モードの内、前記電気特性との相関が高い前記欠陥モードの前記基準分布に基づいて、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する
請求項
2、7または9のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項11】
前記欠陥の画像を取得する画像取得段階を更に備え、
前記基準分布取得段階において、前記欠陥の画像から前記基準分布を生成する
請求項
1から10のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項12】
前記基準分布取得段階において、ウェハ単位で前記基準分布を作成する
請求項
1から11のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項13】
前記判定段階において、試験対象の前記半導体チップの欠陥の画像から得た情報と前記基準分布との差異に基づいて、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する
請求項1から
12のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項14】
前記判定段階において、ユーザーにより入力された入力基準分布との差異に基づいて、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する
請求項1から
12のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項15】
前記欠陥は結晶欠陥である
請求項1から
14のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項16】
前記基準分布の横軸は前記欠陥のサイズであり、縦軸は前記欠陥の個数である
請求項1から
5のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項17】
試験対象の前記半導体チップは、前記基準分布を取得するのに用いた1つまたは複数の前記半導体チップに含まれている
請求項1から
16のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項18】
試験対象の前記半導体チップは、前記基準分布を取得するのに用いた1つまたは複数の前記半導体チップに含まれていない
請求項1から
16のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項19】
前記基準分布は、良品の前記半導体チップが有するべき分布である
請求項1から18のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項20】
試験対象の半導体チップを試験する試験装置であって、
1つの半導体チップに含まれる複数の欠陥の画像であって、1つまたは複数の前記半導体チップについての前記画像から生成され、複数の前記欠陥の評価結果の分布である基準分布を取得する基準分布作成部と、
前記基準分布
と試験対象の前記半導体チップの欠陥の画像から得た情報とを比較して、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する判定部と
を備える試験装置。
【請求項21】
試験対象の半導体チップを試験する試験装置であって、
複数の半導体チップの欠陥の画像から生成された、欠陥モード毎の基準分布を取得する基準分布作成部と、
前記基準分布
と試験対象の前記半導体チップの欠陥の画像から得た情報とを比較して、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する判定部と、
複数の前記半導体チップの電気特性を取得する電気特性取得部と、
複数の前記半導体チップ毎に、前記欠陥の画像と前記電気特性を対応づけ、前記欠陥モードと前記電気特性の相関を取得する相関取得部と
を備え、
前記判定部は、前記電気特性および前記基準分布に基づいて、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する
試験装置。
【請求項22】
試験対象の半導体チップを試験する試験装置であって、
複数の半導体チップの欠陥の画像から生成された、欠陥モード毎の基準分布を取得する基準分布作成部と、
前記基準分布
と試験対象の前記半導体チップの欠陥の画像から得た情報とを比較して、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する判定部と
を備え、
前記判定部は、前記欠陥の試験対象の前記半導体チップへの影響度を算出することにより、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する
試験装置。
【請求項23】
試験対象の半導体チップを試験する試験装置であって、
1つの半導体チップに含まれる複数の欠陥の画像であって、1つまたは複数の前記半導体チップについての前記画像から生成され、複数の前記欠陥の評価結果の分布である基準分布を取得する基準分布作成部と、
前記基準分布に基づいて、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する判定部と
を備え、
前記基準分布の横軸は前記半導体チップ内の前記欠陥の個数であり、縦軸はそれぞれの前記欠陥の個数を有する前記半導体チップの個数である
試験装置。
【請求項24】
試験対象の半導体チップを試験する試験装置であって、
複数の半導体チップの欠陥の画像から生成された、欠陥モード毎の基準分布を取得する基準分布作成部と、
前記基準分布に基づいて、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する判定部と、
複数の前記半導体チップの電気特性を取得する電気特性取得部と、
複数の前記半導体チップ毎に、前記欠陥の画像と前記電気特性を対応づけ、前記欠陥モードと前記電気特性の相関を取得する相関取得部と
を備え、
前記基準分布の横軸は前記半導体チップ内の前記欠陥の個数であり、縦軸はそれぞれの前記欠陥の個数を有する前記半導体チップの個数であり、
前記判定部は、前記電気特性および前記基準分布に基づいて、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する
試験装置。
【請求項25】
試験対象の半導体チップを試験する試験装置であって、
複数の半導体チップの欠陥の画像から生成された、欠陥モード毎の基準分布を取得する基準分布作成部と、
前記基準分布に基づいて、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する判定部と
を備え、
前記基準分布の横軸は前記半導体チップ内の前記欠陥の個数であり、縦軸はそれぞれの前記欠陥の個数を有する前記半導体チップの個数であり、
前記判定部は、前記欠陥の試験対象の前記半導体チップへの影響度を算出することにより、試験対象の前記半導体チップの良否を判定する
試験装置。
【請求項26】
前記欠陥は結晶欠陥である
請求項
20から
25のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項27】
前記基準分布の横軸は前記欠陥のサイズであり、縦軸は前記欠陥の個数である
請求項
20から
22のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項28】
試験対象の前記半導体チップは、前記基準分布を取得するのに用いた1つまたは複数の前記半導体チップに含まれている
請求項
20から
27のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項29】
試験対象の前記半導体チップは、前記基準分布を取得するのに用いた1つまたは複数の前記半導体チップに含まれていない
請求項
20から
27のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項30】
前記基準分布は、良品の前記半導体チップが有するべき分布である
請求項20から29のいずれか一項に記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップの試験方法および試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップの画像に基づいて、欠陥検査を行っている(例えば、特許文献1参照)。半導体チップの画像試験において、電気的な特性が問題ないものまで不良と判定している場合がある。
特許文献1 特開2009-044083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体チップの画像試験において、電気的な特性が問題ないものまで不良と判定するケースを減らすことが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、半導体チップを試験する試験方法を提供する。試験方法は、基準分布取得段階を備えてよい。基準分布取得段階において、複数の半導体チップの欠陥の画像から生成された、欠陥モード毎の基準分布を取得してよい。試験方法は、判定段階を備えてよい。判定段階において、基準分布に基づいて、半導体チップの良否を判定してよい。
【0005】
試験方法は、画像取得段階を備えてよい。画像取得段階において、半導体チップの欠陥の画像を取得してよい。基準分布取得段階において、欠陥の画像から基準分布を生成してよい。
【0006】
基準分布作成段階において、ウェハ単位で基準分布を作成してよい。
【0007】
試験方法は、複数の半導体チップの電気特性を取得する電気特性取得段階を備えてよい。判定段階において、電気特性および基準分布に基づいて、半導体チップの良否を判定してよい。
【0008】
試験方法は、相関取得段階を備えてよい。相関取得段階において、半導体チップ毎に、欠陥の画像と電気特性を対応づけ、欠陥モードと電気特性の相関を取得する相関取得段階を備えてよい。
【0009】
相関取得段階において、欠陥モード毎に、欠陥モードと電気特性の相関を表示してよい。
【0010】
判定段階において、欠陥モードの内、電気特性との相関が高い欠陥モードの基準分布に基づいて、半導体チップの良否を判定してよい。
【0011】
判定段階において、欠陥の半導体チップへの影響度を算出することにより、半導体チップの良否を判定してよい。
【0012】
判定段階において、影響度は、欠陥が半導体チップの活性内にあるか否かに基づいて算出されてよい。判定段階において、影響度は、欠陥と半導体チップのゲートの距離に基づいて算出されてよい。
【0013】
判定段階において、基準分布との差異に基づいて、半導体チップの良否を判定してよい。判定段階において、ユーザーにより入力された入力基準分布との差異に基づいて、半導体チップの良否を判定してよい。
【0014】
本発明の第2の態様においては、半導体チップを試験する試験装置を提供する。試験装置は、基準分布作成部を備えてよい。基準分布作成部は、複数の半導体チップの欠陥の画像から生成された、欠陥モード毎の基準分布を取得してよい。試験装置は、判定部を備えてよい。判定部は、基準分布に基づいて、半導体チップの良否を判定してよい。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る試験装置100の一例を示す図である。
【
図4】本発明の一つの実施形態に係るフローチャートである。
【
図5A】欠陥画像の光学写真の輝度分布をとり、白黒2値化した画像である。
【
図5B】2値化する前の欠陥画像に含まれる各ピクセルの輝度値の分布例を示す。
【
図7】複数の半導体チップ40の影響度と漏れ電流の関係をプロットした図である。
【
図8】影響度の判定値と一致率の関係を示す図である。
【
図9】欠陥モードと電気特性との相関を取得するフローチャートを示す図である。
【
図10】データ測定段階S201において、画像取得部2が取得する画像の一例である。
【
図11】データ測定段階S201において、電気特性取得部12が取得する電気特性の一例である。
【
図12】データ測定段階S201において、電気特性取得部12が取得する電気特性の一例である。
【
図13】データ測定段階S201において、電気特性取得部12が取得する電気特性の一例である。
【
図14】データ測定段階S201において、電気特性取得部12が取得する電気特性の一例である。
【
図15】データ測定段階S201において、電気特性取得部12が取得する電気特性の一例である。
【
図16】データ測定段階S201において、電気特性取得部12が取得する電気特性の一例である。
【
図17】データ測定段階S201において、電気特性取得部12が取得する電気特性の一例である。
【
図18】主成分分析段階S202における主成分分析のフローチャートを示す図である。
【
図19】主成分分析段階S202の結果を表す図である。
【
図20】レベル分割段階S203における半導体チップ40の電気特性の分類方法のフローチャートを示す図である。
【
図21】レベル分割段階S203における半導体チップ40の電気特性の分類結果を示す図である。
【
図22】特徴抽出段階S205における特徴抽出の方法を示す図である。
【
図23】グループ分割段階S206におけるグループ分割の結果を示す図である。
【
図24】相関取得段階S208において相関取得部26が取得する相関の一例である。
【
図25】相関取得段階S208において相関取得部26が取得する相関の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る試験装置100の一例を示す図である。本例の試験装置100は、画像取得部2、カメラ制御部4、光源6、ステージ部8、ステージ制御部10、電気特性取得部12、台14、表示部16、操作部18、データ処理部20を備える。試験装置100は、半導体ウェハ30を試験する。また同様に、試験装置100は、半導体ウェハ30をダイシングすることにより個片化した半導体チップ40を試験する。半導体チップ40は、一例として、PINダイオードが形成されている。
【0019】
画像取得部2は、半導体ウェハ30に含まれる複数の半導体チップ40の欠陥の画像を取得する。つまり、画像取得部2は、半導体ウェハ30の欠陥の画像を取得してよい。本例の半導体チップ40の欠陥とは、転位等の結晶欠陥である。欠陥の画像とは、半導体ウェハ30に光を照射し、半導体チップ40の所定の領域(例えば、半導体チップ40の全体、または、半導体チップ40において素子が形成された領域)において基板表面からの散乱光および反射光を撮像した画像であってよい。当該領域の画像において、欠陥が存在する領域は、欠陥が存在しない領域に比べて暗く(または明るく)表示される。画像取得部2は、一例としてカメラに設けられた撮像素子等の光学系である。画像取得部2は、カメラ制御部4によって制御される。カメラ制御部4は、一例としてカメラに設けられた信号処理装置等の制御系である。
【0020】
光源6は、半導体ウェハ30に光を照射する。光源6が照射する光は、可視光成分を含んでよく、非可視光成分を含んでもよい。光源6は、照射光の各波長成分の強度を調整可能であってよい。また、欠陥の画像のコントラスト等は、光源6によって調整される。
【0021】
ステージ部8には、複数の半導体チップ40を含む半導体ウェハ30が載置される。ステージ部8は、ステージ制御部10によって制御される。ステージ制御部10は、ステージ部8に設けられたアクチュエータを制御することでステージ部8を駆動し、画像取得部2と半導体ウェハ30との相対位置を調整する。
【0022】
電気特性取得部12は、台14に載置された半導体チップ40の電気特性を取得する。電気特性取得部12は、半導体ウェハ30から切り出された半導体チップ40の電気特性を取得してよく、半導体ウェハ30から切り出される前の半導体チップ40の電気特性を取得してもよい。半導体チップ40の電気特性とは、例えば、半導体チップ40の所定の端子に所定の電圧を印加したときに、半導体チップ40の所定の領域に流れる漏れ電流であるが、これに限定されない。電気特性取得部12は、半導体チップ40の所定の領域の電圧または電流の、大きさ、周波数および変化速度の少なくとも一つを測定してよい。
【0023】
データ処理部20は、カメラ制御部4、ステージ制御部10および電気特性取得部12を制御することにより、画像取得または電気特性の取得を行う。換言すれば、画像取得部2、ステージ部8および電気特性取得部12は、データ処理部20に制御されてよい。本例のデータ処理部20は、演算装置、メモリ、信号入出力装置等を含むコンピュータである。操作部18は、ユーザーによる操作結果に応じた信号を、データ処理部20に入力する。操作部18は、例えばキーボードまたはポインティングデバイスである。ユーザーは、操作部18を操作することで、試験装置100を操作できる。表示部16は、データ処理部20から入力される表示データに応じた情報を表示する。
【0024】
データ処理部20は、基準分布作成部22、判定部24および相関取得部26を有する。基準分布作成部22は、欠陥の画像から、欠陥モード毎の基準分布を作成する。欠陥モードとは、欠陥を評価するための指標である。欠陥モードとは、欠陥の属性を示す情報であってもよい。欠陥モードとは、例えば、半導体チップ40に占める欠陥の面積の総和である。また、欠陥モードとは、欠陥の大きさであってもよく、欠陥の個数であってもよい。また、特定の欠陥の面積の総和であってもよく、特定の欠陥の大きさであってもよく、特定の欠陥の個数であってもよい。特定の欠陥とは、例えば、貫通らせん転位である。貫通らせん転位は、漏れ電流原因になると知られている。
【0025】
欠陥モード毎の基準分布とは、欠陥の画像を欠陥モードに関して評価した際の、半導体チップ40の個数または欠陥数をプロットした際の分布である。例えば基準分布は、欠陥の面積の総和を横軸とし、該当する半導体チップ40の個数を縦軸としたヒストグラムである。また基準分布は、欠陥の大きさを横軸とし、該当する欠陥の個数を縦軸としたヒストグラムであってもよい。基準分布は、良品の半導体チップ40が有するべき分布である。基準分布は、電気試験等の試験において良品と判定された1つまたは複数の半導体チップ40から生成してよい。不良率が低いことが予め判明していれば、多数の半導体チップ40の分布の平均を基準分布としてもよい。
【0026】
判定部24は、基準分布作成部22が作成した基準分布から半導体チップ40の良否の判定を行う。判定対象の半導体チップ40は、基準分布を作成するのに用いた半導体チップ40に含まれてもよく、含まれていなくてもよい。基準分布が1つの半導体チップ40に含まれる欠陥の分布である場合、判定部24は、判定対象の半導体チップ40に含まれる欠陥の分布と基準分布とを比較して、当該半導体チップ40の良否を判定してよい。また、基準分布が半導体チップ40の個数の分布である場合、判定部24は、判定対象の半導体チップ40が基準分布のどの位置に配置されるかにより、当該半導体チップ40の良否を判定してよい。つまり、判定部24は、判定対象の半導体チップ40の欠陥の画像から得た情報から、当該半導体チップ40の良否を判定してよい。
【0027】
相関取得部26は、基準分布作成部22が作成した基準分布と電気特性取得部12が取得した半導体チップ40の電気特性の相関を取得する。基準分布は欠陥モード毎に作成されるため、欠陥モード毎に電気特性との相関を取得できる。したがって、電気特性と相関の高い欠陥モードを判定することができる。試験装置100は、複数の欠陥モードのうち、電気特性との相関が最も高い欠陥モードについて画像試験を行ってよい。
【0028】
図2は、基準分布の一例を示す図である。
図2において、横軸に欠陥サイズ、縦軸に欠陥個数を示している。
図2においては、半導体チップ40における3mm四方の領域に含まれる欠陥の分布を表している。なお、
図2においては、1500個の半導体チップ40の平均の分布を表している。
【0029】
図2において、欠陥サイズが「8」の位置において、欠陥数のピークが発生している。本例の半導体チップ40には、微小な貫通らせん転位が多く存在する。このため、基準分布におけるピークは、貫通らせん転位に対応すると考えられる。なお、欠陥サイズが0に近づくほど欠陥数が増大しているが、これは画像上の微小なノイズを欠陥として計数しているためと考えられる。
図2より、平均的な半導体チップ40には、同様の欠陥サイズの貫通らせん転位が含まれることが分かる。なお貫通らせん転位は漏れ電流の原因になるが、微小なサイズの貫通らせん転位であれば、それほど大きな問題にならない。
図2に示す基準分布は、良品の半導体チップ40に含まれている欠陥分布である。従って、半導体チップ40に欠陥が存在していても、
図2に示されるような基準分布と同様の欠陥分布であれば、当該半導体チップ40は良品と判定できる。一方で、試験対象の半導体チップ40の欠陥分布が基準分布と異なる分布であれば、当該半導体チップ40は不良と判定できる。
【0030】
したがって、基準分布に基づいて、半導体チップ40の良否を判定することが可能である。つまり、基準分布と同様に判定する半導体チップ欠陥サイズの分布を取得し、基準分布と比較することにより、半導体チップ40の良否を判定することができる。例えば、半導体チップ40の欠陥分布が、基準分布のピークに対応するピークのみを持つ場合は、良品と判定し、半導体チップ40の欠陥分布が、基準分布のピークに対応するピーク以外のピークを持つ場合は、不良品と判定する。
【0031】
従来、画像試験において、貫通らせん転位があった場合は、不良品と判定していて、電気的な特性が問題ないものまで不良と判定している場合があった。基準分布と比較して、半導体チップ40の良否を判定することにより、貫通らせん転位がある場合でも良品と判定することができるようになり、画像試験と電気特性の試験の差異を減らすことができる。
【0032】
図3は、基準分布の他の例を示す図である。
図3において、横軸に半導体チップ40内の欠陥個数、縦軸にそれぞれの欠陥個数を有する半導体チップ40の個数を示している。なお、
図3において、半導体チップ数の合計は、1500個である。複数の半導体チップは、所定の試験により良品であることが判明しているチップであってよく、試験前のチップであってもよい。ただし、不良率が十分低いことが推定できる半導体チップの集合であることが好ましい。
【0033】
図3においては、欠陥個数が50の近傍において極大となる欠陥個数のピークが発生している。
図2と同様に、複数の半導体チップはほとんどが良品であるので、当該ピークに含まれている半導体チップは、良品の可能性が高い。
【0034】
したがって、
図2と同様に基準分布に基づいて、半導体チップ40の良否を判定することが可能である。つまり、基準分布と同様に、試験対象の半導体チップ40の欠陥個数を取得し、基準分布のどの位置に存在するかによって、半導体チップ40の良否を判定することができる。例えば、半導体チップ40の欠陥個数が、基準分布のピーク部分に存在する場合は、良品と判定し、半導体チップ40の欠陥個数が、基準分布のピーク部分以外に存在する場合(
図3中のピークよりも右側に存在する場合)は、不良品と判定する。ピーク部分とは、例えばピーク部分の3σの範囲であってよく、2σの範囲であってよく、他の範囲であってもよい。σはピーク部分の標準偏差である。
図3の場合でも、基準分布と比較して、半導体チップ40の良否を判定することにより、貫通らせん転位等の欠陥がある場合でも良品と判定することができるようになり、画像試験と電気特性の試験の差異を減らすことができる。続いて、電気特性の試験との組み合わせについて説明する。
【0035】
図4は、本発明の一つの実施形態に係るフローチャートである。
図4のフローチャートは、画像取得段階S101、基準分布取得段階S102、ダイシング段階S103、電気特性取得段階S104および判定段階S105を備える。
【0036】
画像取得段階S101において、画像取得部2は、試験対象の半導体チップ40の欠陥画像を取得する。また画像取得段階S101においては、画像取得部2は、複数の半導体チップ40の欠陥の画像を取得してよい。続く基準分布取得段階S102において、データ処理部20は、試験対象の半導体チップ40に対応する基準分布を取得する。基準分布は、試験対象の半導体チップ40と同一の構造を有する複数の半導体チップ40の欠陥分布から生成された分布である。データ処理部20は、画像取得段階S101で取得した複数の半導体チップ40の欠陥の画像から基準分布を生成してよい。データ処理部20は、外部の装置から基準分布の情報を取得してもよい。データ処理部20は、半導体チップ40の欠陥の画像から生成された、欠陥モード毎の基準分布を取得してよい。
【0037】
基準分布取得段階S102において、さらに、基準分布と試験対象の半導体チップ40の欠陥画像から、当該半導体チップ40の影響度を算出してよい。影響度とは、各欠陥が半導体チップ40の電気特性に与える影響を考慮して算出した指標である。影響度が大きいほど、半導体チップ40が不良である確率が高い。
【0038】
例えば半導体チップ40の各欠陥のサイズ等の値が、基準分布におけるピークからどれだけ乖離しているかに基づいて、各欠陥の影響値を算出する。各欠陥の影響値を積算したものが、半導体チップ40の影響度である。例えば
図2に示すように欠陥サイズ(画像上の欠陥面積、または、画像上のピクセル数)を欠陥モードとした場合、基準分布に対応するピーク部分に含まれる欠陥の影響値を0とする。また、当該ピーク部分に含まれない欠陥については、欠陥サイズを当該欠陥の影響値とする。当該ピーク部分は、ピークの3σの範囲であってよく、2σの範囲であってよく、他の範囲であってもよい。つまり、半導体チップ40の影響度は、半導体チップ40内の欠陥のうち、基準分布のピーク部分に含まれない欠陥の面積の合計で計算できる。なお、影響度の算出は、判定段階S105の前に行わればよく、電気特性取得段階S104の後であってもよい。
【0039】
基準分布取得段階S102において、基準分布は、ウェハ単位で作成されてよい。ウェハ単位で基準分布を作成することにより、各ウェハ単位で半導体チップ40を評価することができる。
【0040】
ダイシング段階S103において、半導体ウェハ30を半導体チップ40に個片化する。続いて、電気特性取得段階S104において、半導体チップ40の電気特性を取得する。本例では、電気特性とは漏れ電流である。
【0041】
判定段階S105において、基準分布に基づいて、半導体チップ40の良否を判定する。判定段階S105において、電気特性および基準分布に基づいて、半導体チップ40の良否を判定してもよい。判定段階S105では、電気特性を用いた電気試験と、欠陥画像を用いた画像試験の両方において良品と判定された場合に、半導体チップ40を良品としてよい。画像試験においては、上述した影響度に基づいて、半導体チップ40の良否を判定してよい。影響度が所定の閾値以下の場合に、半導体チップ40を良品と判定してよい。電気特性および基準分布から算出した影響度に基づいて、半導体チップ40の良否を判定することにより、電気特性の試験だけでは判定できない長期信頼性等に関しても判定することが可能である。
【0042】
また、影響度を算出せずとも、判定段階S105において、試験対象の半導体チップ40の欠陥分布と、基準分布との差異に基づいて、半導体チップ40の良否を判定してよい。判定段階105において、ユーザーにより入力された入力基準分布との差異に基づいて、半導体チップ40の良否を判定してよい。基準分布および入力基準分布との差異に基づいても、半導体チップ40の良否を判定することができる。
【0043】
図5Aおよび
図5Bは、欠陥サイズの算出方法を示す図である。
図5Aは、欠陥画像の光学写真の輝度分布をとり、白黒2値化した画像である。
図5Aにおいて、結晶に転位が生じている部分が白くなっている。なお
図5Aは、半導体チップ40の欠陥画像に含まれる欠陥の近傍を拡大した画像である。
図5Aにおいて、白い領域の面積を算出することにより、欠陥サイズを算出することできる。
【0044】
図5Bは、2値化する前の欠陥画像に含まれる各ピクセルの輝度値の分布例を示す。
図5Bでは、欠陥画像の各ピクセルの輝度値を256階調で示している。
図5Bの例では、輝度値が大きいほど暗く(黒)、輝度値が小さいほど明るい(白)。欠陥画像において、転位が生じていないピクセルは黒くなり、転位が生じたピクセルは白くなる。このため、
図5Bに示す分布には、転位が生じていない黒色のピクセル群のピークと、転位が生じている白色のピクセル群のピークとが生じている。2つのピークを分離する閾値を設定することで、欠陥画像を
図5Aのように2値化できる。また、白色のピークに含まれるピクセル数を計数することで、当該欠陥のサイズを算出できる。
【0045】
図6は、影響度の算出方法の一例を示す図である。本例においては、欠陥が存在する位置に応じて、当該欠陥の影響値を補正する。例えば、欠陥が存在する位置によっては、電気特性に影響を与えないか、影響が非常に小さい場合がある。
図6の半導体チップ40上には、欠陥52と欠陥54が存在している。また、半導体チップ40は、影響度の算出の際に、活性領域62および外周領域64に区別されている。活性領域62は、半導体基板の内部にトランジスタまたはダイオード等の半導体素子が形成された領域である。外周領域64は、活性領域62の外側において活性領域62を囲んで設けられている。外周領域64には、ガードリングまたはフィールドプレート等の耐圧構造が形成されてよい。ガードリングは、半導体基板の上面視において活性領域62を囲むP型の領域である。フィールドプレートは、半導体基板の上面視において活性領域62を囲むポリシリコン等の導電部材である。本例では活性領域62が設けられる面をxy面とし、xy面と垂直な面をz軸とする。
図6では、x軸方向に活性領域62を横切って、ゲート配線66が設けられている。ゲート配線66は、ゲートパッド(不図示)に接続され、各トランジスタにゲート電位を供給する。ゲート配線66は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0046】
影響度の算出は、チップ内に存在する欠陥の影響値の合計で計算できる。本例の影響度は、欠陥52と欠陥54の影響値を合算したものである。本例では、外周領域64のみに存在している欠陥54の影響値を0として、影響度の計算に含めない。半導体チップ40の外周領域64は、半導体チップ40の活性領域の外側であるため、欠陥が存在しても、漏れ電流への影響が小さいためである。また、活性領域62と外周領域64にまたがって存在する欠陥は、影響度の計算に含めてよい。判定段階S105において、影響度は、欠陥が半導体チップ40の活性(活性領域62)内にあるか否かに基づいて算出されてよい。
【0047】
また、判定段階S105において、影響度は、欠陥と半導体チップ40のゲート配線66との距離に基づいて算出されてよい。当該距離が所定の閾値以上の欠陥は、影響値を0としてよい。欠陥と半導体チップ40のゲート配線66とが十分離れていれば、欠陥がゲート配線66に与える影響が小さいためである。
【0048】
図7は、複数の半導体チップ40の影響度と漏れ電流の関係をプロットした図である。横軸は影響度、縦軸は漏れ電流を示す。電気試験においては、例えば漏れ電流が2μA(1×10
-6A)以上の半導体チップ40を不良とする。また、従来の画像試験においては、欠陥が存在する場合、すなわち、影響度が0より大きい半導体チップ40を不良と判定している。
【0049】
図7に示すように、影響度が0より大きい半導体チップ40であっても、漏れ電流が閾値以下となる場合がある。本例によれば、影響度と比較する判定値として0より大きい値を用いることで、本来は不良でない半導体チップ40を良品と判定できる。当該判定値は、
図7に示す関係に基づいて定めてよい。例えば当該判定値は、影響度による良否判定と、電気試験による良否判定の結果の一致率ができるだけ高くなるように設定されてよい。
【0050】
図8は、影響度の判定値と一致率の関係を示す図である。一致率は、電気試験:良、影響度(画像試験):良になる割合と、電気試験:不良・影響度(画像試験):不良になる割合を合算したものである。また、影響度が判定値以下の半導体チップ40を良品と判定する。例えば、影響度の判定値が0の場合、影響度が0以下の半導体チップ40を良品と判定する。
【0051】
図8において、良品とする影響度の判定値を増加させていくと、一致率が大きくなる。一致率が大きくなると、画像試験と電気特性の試験の差異を減らすことができる。したがって、画像試験のみでも判定することも可能である。
【0052】
図9は、欠陥モードと電気特性との相関を取得するフローチャートを示す図である。
図9のフローチャートは、データ測定段階S201、主成分分析段階S202、レベル分割段階S203、画像集約段階S204、特徴抽出段落S205、グループ分割段階S206、数値化・パターン抽出段階S207および相関取得段階S208を備える。
【0053】
データ測定段階S201において、試験装置100は、データを測定する。つまり、画像取得部2は、半導体ウェハ30の欠陥の画像を取得してよい。電気特性取得部12は、半導体ウェハ30を個片化した半導体チップ40の電気特性を取得してよい。データ測定段階S201において、
図4のフローチャートの画像取得段階S101、基準分布取得段階S102、ダイシング段階S103および電気特性取得段階S104が実施されてよい。
【0054】
図10は、データ測定段階S201において、画像取得部2が取得する画像の一例である。
図10において、半導体チップ40中にある欠陥を点で表している。
図10中では、一つの半導体チップ40には、欠陥72、欠陥74、欠陥76が存在している。画像を取得するウェハはそれぞれ、チップ化され、電気特性取得部12で電気特性を取得する。
【0055】
図11、
図12、
図13、
図14、
図15、
図16および
図17は、データ測定段階S201において、電気特性取得部12が取得する電気特性の一例である。それぞれの半導体チップ40の電気特性は、
図11から
図17に示されるいずれかの電気特性と同様であってよい。図中において、横軸は印加電圧、縦軸は漏れ電流を示す。印加電圧は、それぞれケース1、ケース2、ケース3およびケース4に分けられている。ケース1からケース4のうち、ケース1が最小の印加電圧を示し、ケース4が最大の印加電圧を示す。
図11から
図17に示すように、半導体チップ40の電気特性は、欠陥分布等に応じて複数の分布傾向が表れる。
【0056】
図12、
図14、
図17では、電圧ケース1の時から漏れ電流が流れている。他の例では、電圧ケース1では、漏れ電流がほとんど流れていない。また、漏れ電流が立ち上がる印加電圧も、それぞれの例で異なっている。このように電気特性にはさまざまな傾向が表れるため、電気特性取得部12が取得した電気特性を分類して解析することが好ましい。
【0057】
図18は、主成分分析段階S202における主成分分析のフローチャートを示す図である。
図11から
図17の各電気特性はケース1からケース4の4変数で表すことできる。ケース1からケース4は、
図11から
図17に示される印加電圧を4分割した際の点線に相当する。点線と漏れ電流曲線が交わった箇所の値が変数となる。したがって、主成分分析により現在の変数における主軸を抽出する事ができる。主成分分析のフローチャートは、平均値算出段階S301、共分散行列生成段階S302、固有値計算段階S303および固有ベクトル算出段階S304を備えてよい。
【0058】
図19は、主成分分析段階S202の結果を表す図である。
図19では、半導体チップ40の電気特性の分析結果を第1主軸と第2主軸を用いて2次元上にプロットしている。
図19における一つのプロットが、一つの半導体チップ40の電気特性に対応する。
【0059】
図20は、レベル分割段階S203における半導体チップ40の電気特性の分類方法のフローチャートを示す図である。本例では、
図19に示した各プロットを、複数のクラスに分類する。つまり。それぞれの半導体チップ40の電気特性を、複数のクラスに分類する。レベル分割による電気特性の分類は、一例として、k-meansである。k-meansは、予め分割したい数を指定してクラスタリングするための手法である。対象点に対しランダムにクラスを割り当てる(S402)。クラス数は1から開始する。クラスの重心を計算して点のクラスを一番近い重心のクラスに変更する(S403)。変化が無くなるまで繰り返して計算する手法である。本手法を用いてクラスタリングが可能である。電気特性のクラス数は事前には分からないため,クラス数を変化させながらクラスタリングを順次行うのが好ましい(S401)。本手法によりクラス数毎のクラスタリングされた点間の重心からの距離の合計値を算出する(S404)。本距離値の変化が分類クラス数を変更前後で最も変化が大きい分類クラス数を電気特性分類クラス数として決定する(S405)。
【0060】
図21は、レベル分割段階S203における半導体チップ40の電気特性の分類結果を示す図である。
図21において、半導体チップ40の電気特性の結果は、クラス1、クラス2、クラス3、クラス4およびクラス5に分類されている。
図21においては、それぞれのクラスを、形状の異なるマークで示している。
【0061】
その後、クラスタリングされた結果に伴って、欠陥画像からの特徴量の抽出を行う。欠陥画像からの特徴量の抽出は、電気特性のクラス毎に行う。欠陥画像からの特徴量とは、前述した欠陥モードの値であってよい。つまり、電気特性のクラスが同一と分類された複数の半導体チップ40の欠陥画像から、それぞれの欠陥モードの値を抽出することで、電気特性のクラスと、それぞれの欠陥モードとの相関の強さを算出できる。画像集約段階S204において、同一のクラスにクラスタリングされた半導体チップ40の画像を集約する。
【0062】
図22は、特徴抽出段階S205における特徴抽出の方法を示す図である。
図22では、視画像とX線トポグラフィー画像の変化点を導出する。視画像とは、半導体チップ40からの可視光を撮像した画像である。X線トポグラフィー画像とは、X線源から出たビームによって取得される半導体チップ40の2次元マッピング画像である。変化点とは、画像上において隣接する画素との輝度値の差分が、予め定められた基準値以上の画素である。変化点の検出はいずれか一方の画像の変化の場合でも抽出する事とする。
図22では、視画像の変化のプロファイルを点線で、X線トポグラフィー画像の変化のプロファイルを実線で示している。
図22では、複数の画像90の変化点を抽出している。
図22では、プロファイルが算出された後に、複数の画像90において変化を探索する順番が矢印にて示されている。また、画像90では、欠陥78、欠陥80および欠陥82が存在している。
図22では、1つの画像90に欠陥78、欠陥80が存在し、別の画像90に欠陥82が存在している。チップ内に発生欠陥候補部は欠陥が発生していない領域として差異が存在しているため本方式にて画像特徴として有効な部位を探索する。変化点が発生している箇所のxy座標を記憶しておき、これを全面に渡って実行する。変化のxy点座標の集合体を出力する。k-meansを用いて、それぞれのxy点座標の集合体を出力する。
【0063】
図23は、グループ分割段階S206におけるグループ分割の結果を示す図である。グループ分割段階S206では、半導体チップ40の画像で検出された欠陥の各ドットをクラスタリングし、ドットを集合画像92に集めて一つの欠陥にする。グループ分割を実施することにより、欠陥78、欠陥80および欠陥82を
図23のように特定でき、それぞれのチップの面積等を取得することで数値化・パターン抽出段階S207において特徴量を計算することできる。欠陥モード毎に特徴量を取得することができる。
【0064】
数値化・パターン抽出段階S207において、特徴量を計算する。特徴量とは、例えば、画像特徴の内、面積、重心座標、長さである。特徴量は、データ処理部20に記憶され、新しくウェハを検査する際に比較され、デバイス特性の分類クラスを推定するのに役立てることができる。
【0065】
図24は、相関取得段階S208において相関取得部26が取得する相関の一例である。
図24では、100個程度の半導体チップ40について、電気特性のクラスと欠陥モードaとの相関をグラフ化している。欠陥モードaとは、特定の欠陥モードを示す。
図24において、横軸は欠陥モードaの値を示しており、縦軸は、電気特性のクラスを示している。
【0066】
図25は、相関取得段階S208において相関取得部26が取得する相関の他の例である。
図25では、100個程度の半導体チップ40について、電気特性のクラスと欠陥モードdとの相関をグラフ化している。欠陥モードdとは、欠陥モードaと異なる特定の欠陥モードを示す。
図24と
図25を比較すると、欠陥モードdの方が欠陥モードaと比べ、電気特性との相関が高いことが分かる。したがって、欠陥モードdの画像特徴を検査することにより、電気特性試験と近い結果が得られることが分かる。
【0067】
相関取得段階S208において、半導体チップ40毎に、欠陥の画像と電気特性を対応づけ、欠陥モードと電気特性の相関を取得してよい。相関取得段階S208において、欠陥モード毎に、表示部16は、欠陥モードと電気特性の相関を表示してよい。相関取得段階S208を備えることにより、電気特性試験と近い結果が得られる欠陥モードを見出すことが容易になる。
【0068】
また、判定段階S105において、欠陥モードの内、電気特性との相関が高い欠陥モードの基準分布に基づいて、半導体チップ40の良否を判定してもよい。電気特性との相関が高い欠陥モードの基準分布に基づいて、良否の判定を行うことにより、良否判定の精度を上げることができる。
【0069】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0070】
2・・画像取得部、4・・カメラ制御部、6・・光源、8・・ステージ部、10・・ステージ制御部、12・・電気特性取得部、14・・台、16・・表示部、18・・操作部、20・・データ処理部、22・・基準分布作成部、24・・判定部、26・・相関取得部、30・・半導体ウェハ、40・・半導体チップ、52・・欠陥、54・・欠陥、62・・活性領域、64・・外周領域、66・・ゲート配線、72・・欠陥、74・・欠陥、76・・欠陥、78・・欠陥、80・・欠陥、82・・欠陥、90・・画像、92・・集合画像、100・・試験装置