(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】卵含有食品の風味を改善する方法
(51)【国際特許分類】
A23L 15/00 20160101AFI20250109BHJP
【FI】
A23L15/00 Z
(21)【出願番号】P 2020142777
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 勇人
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-187325(JP,A)
【文献】国際公開第2014/123175(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/118742(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/159225(WO,A1)
【文献】特開平11-221049(JP,A)
【文献】特開2016-171761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵含有食品の風味改善用の組成物であって、
下記成分(A)
および成分(B)を含有し:
(A)γ-Glu-Val-Gly
(B)メチオナール
前記卵含有食品が、酵素処理された卵を含有し、
前記酵素処理が、プロテアーゼ処理であり、
前記成分(A)の喫食濃度が3ppm(w/w)以上であ
り、
前記成分(B)の喫食濃度が0.1ppb(w/w)以上である、組成物。
【請求項2】
卵含有食品の製造用の組成物であって、
下記成分(A)
および成分(B)を含有し:
(A)γ-Glu-Val-Gly
(B)メチオナール
前記卵含有食品が、酵素処理された卵を含有し、
前記酵素処理が、プロテアーゼ処理であり、
前記成分(A)の喫食濃度が3ppm(w/w)以上であ
り、
前記成分(B)の喫食濃度が0.1ppb(w/w)以上である、組成物。
【請求項3】
前記製造される卵含有食品が、風味が改善された卵含有食品である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記風味改善が、卵風味の向上および/または苦味の低減である、請求項1または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記卵含有食品が、卵含有ソース、卵含有ソースを使用した食品、卵とじ食品、玉子焼、炒り卵含有食品、茶わん蒸し、オムライス、卵サンド、またはプリンである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記卵含有食品が、カルボナーラソース、カルボナーラソースを使用した食品、親子丼、カツ丼、天津飯、だし巻き卵、オムレツ、ニラ玉、炒飯、茶わん蒸し、またはオムライ
スである、請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
卵含有食品の風味を改善する方法であって、
下記成分(A)
および成分(B)を卵含有食品の原料に添加する工程を含み:
(A)γ-Glu-Val-Gly
(B)メチオナール
前記成分(A)の添加量が、前記卵100重量部に対し、0.0003重量部以上であり、
前記成分(B)の添加量が、前記卵100重量部に対し、0.1×10
-7
重量部以上であり、
前記卵含有食品が、酵素処理された卵を含有
し、
前記酵素処理が、プロテアーゼ処理である、方法。
【請求項8】
卵含有食品を製造する方法であって、
下記成分(A)
および成分(B)を卵含有食品の原料に添加する工程を含み:
(A)γ-Glu-Val-Gly
(B)メチオナール
前記成分(A)の添加量が、前記卵100重量部に対し、0.0003重量部以上であり、
前記成分(B)の添加量が、前記卵100重量部に対し、0.1×10
-7
重量部以上であり、
前記卵含有食品が、酵素処理された卵を含有
し、
前記酵素処理が、プロテアーゼ処理である、方法。
【請求項9】
前記製造される卵含有食品が、風味が改善された卵含有食品である、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記風味改善が、卵風味の向上および/または苦味の低減である、請求項
7または
9に記載の方法。
【請求項11】
前記卵含有食品が、卵含有ソース、卵含有ソースを使用した食品、卵とじ食品、玉子焼、炒り卵含有食品、茶わん蒸し、オムライス、卵サンド、またはプリンである、請求項
7~
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記卵含有食品が、カルボナーラソース、カルボナーラソースを使用した食品、親子丼、カツ丼、天津飯、だし巻き卵、オムレツ、ニラ玉、炒飯、茶わん蒸し、またはオムライスである、請求項
7~
11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵含有食品の風味を改善する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カルボナーラソース等の卵を含有するチルド食品は、喫食時に再加熱されることでタンパク質が加熱凝固し食感が悪化する。そのような食感の悪化を防止するため、卵をプロテアーゼ等の酵素で処理することが知られている(特許文献1および2)。しかし、そのような酵素処理を実施すると、苦味が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3254026号
【文献】特許第4312003号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、卵含有食品の風味を改善する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、γ-グルタミルペプチドおよび必要によりメチオナールを配合することにより卵含有食品の風味を改善できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は以下の通り例示できる。
[1]
卵含有食品の風味改善用の組成物であって、
下記成分(A)を含有する、組成物:
(A)γ-グルタミルペプチド。
[2]
卵含有食品の製造用の組成物であって、
下記成分(A)を含有する、組成物:
(A)γ-グルタミルペプチド。
[3]
前記製造される卵含有食品が、風味が改善された卵含有食品である、前記組成物。
[4]
前記風味改善が、卵風味の向上および/または苦味の低減である、前記組成物。
[5]
さらに、下記成分(B)を含有する、前記組成物:
(B)メチオナール。
[6]
前記成分(A)が、γ-Glu-Val-Glyである、前記組成物。
[7]
前記卵含有食品が、卵含有ソース、卵含有ソースを使用した食品、卵とじ食品、玉子焼、炒り卵含有食品、茶わん蒸し、オムライス、卵サンド、またはプリンである、前記組成物。
[8]
前記卵含有食品が、カルボナーラソース、カルボナーラソースを使用した食品、親子丼、カツ丼、天津飯、だし巻き卵、オムレツ、ニラ玉、炒飯、茶わん蒸し、またはオムライ
スである、前記組成物。
[9]
前記卵含有食品が、プロテアーゼ処理された卵を含有する、前記組成物。
[10]
卵含有食品の風味を改善する方法であって、
下記成分(A)を卵含有食品の原料に添加する工程を含む、方法:
(A)γ-グルタミルペプチド。
[11]
卵含有食品を製造する方法であって、
下記成分(A)を卵含有食品の原料に添加する工程を含む、方法:
(A)γ-グルタミルペプチド。
[12]
前記製造される卵含有食品が、風味が改善された卵含有食品である、前記方法。
[13]
前記風味改善が、卵風味の向上および/または苦味の低減である、前記方法。
[14]
さらに、下記成分(B)を卵含有食品の原料に添加する工程を含む、前記方法:
(B)メチオナール。
[15]
前記成分(A)が、γ-Glu-Val-Glyである、前記方法。
[16]
前記卵含有食品が、卵含有ソース、卵含有ソースを使用した食品、卵とじ食品、玉子焼、炒り卵含有食品、茶わん蒸し、オムライス、卵サンド、またはプリンである、前記方法。
[17]
前記卵含有食品が、カルボナーラソース、カルボナーラソースを使用した食品、親子丼、カツ丼、天津飯、だし巻き卵、オムレツ、ニラ玉、炒飯、茶わん蒸し、またはオムライスである、前記方法。
[18]
前記卵含有食品が、プロテアーゼ処理された卵を含有する、前記方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、卵含有食品の風味を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<1>有効成分
本発明においては、下記成分(A)を有効成分として利用する:
(A)γ-グルタミルペプチド。
【0009】
本発明においては、さらに、下記成分(B)を有効成分として利用してもよい:
(B)メチオナール。
【0010】
上記成分(A)および(B)(ただし、成分(B)については利用される場合のみ包含される)を総称して「有効成分」ともいう。
【0011】
有効成分を利用することにより、卵含有食品の風味を改善することができる、すなわち、卵含有食品の風味を改善する効果が得られる。同効果を「風味改善効果」ともいう。卵含有食品の風味の改善を、単に、「風味の改善」ともいう。すなわち、有効成分を利用することにより、有効成分を利用しない場合と比較して、卵含有食品の風味を改善することができる。例えば、成分(A)を利用することにより、成分(A)を利用しない場合と比
較して、卵含有食品の風味が改善されてよい。また、例えば、成分(A)および(B)を併用することにより、成分(A)を単独で利用する場合と比較して、卵含有食品の風味が改善されてよい。よって、有効成分は、卵含有食品の風味の改善に利用されてよい。
【0012】
また、有効成分を利用することにより、風味が改善された卵含有食品を製造することができる。よって、有効成分は、卵含有食品の製造(具体的には、風味が改善された卵含有食品の製造)に利用されてよい。
【0013】
風味の改善としては、卵風味の向上や苦味の低減が挙げられる。苦味の低減を、「苦味の抑制」ともいう。苦味としては、卵の酵素処理により生じる苦味が挙げられる。風味の測定および比較(例えば、卵風味や苦味の測定および比較)は、例えば、専門パネルによる官能評価により実施できる。
【0014】
有効成分は、後述する本発明の方法に記載の態様で風味の改善または卵含有食品の製造に利用されてよい。
【0015】
γ-グルタミルペプチドの種類は、特に制限されない。γ-グルタミルペプチドとしては、一般式:γ-Glu-X-Gly(Xはアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)で表されるγ-グルタミルトリペプチドおよび一般式:γ-Glu-Y(Yはアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)で表されるγ-グルタミルジペプチドが挙げられる。上記一般式において、「γ-」とは、グルタミン酸のγ位のカルボキシル基を介してXまたはYが結合していることを意味する。γ-グルタミルペプチドとしては、1種のγ-グルタミルペプチドを用いてもよく、2種またはそれ以上のγ-グルタミルペプチドを組み合わせて用いてもよい。
【0016】
アミノ酸として、具体的には、例えば、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、Cys、Met、Asn、Gln、Pro、Hyp等の中性アミノ酸、Asp、Glu等の酸性アミノ酸、Lys、Arg、His等の塩基性アミノ酸、Phe、Tyr、Trp等の芳香族アミノ酸、Orn、Sar、Cit、Nva、Nle、Abu、Tau、Hyp、t-Leu、Cle、Aib、Pen、Hse等の他のアミノ酸が挙げられる。
【0017】
なお、本発明において、アミノ酸残基の略号は以下のアミノ酸を意味する。
(1)Gly:グリシン
(2)Ala:アラニン
(3)Val:バリン
(4)Leu:ロイシン
(5)Ile:イソロイシン
(6)Met:メチオニン
(7)Phe:フェニルアラニン
(8)Tyr:チロシン
(9)Trp:トリプトファン
(10)His:ヒスチジン
(11)Lys:リジン
(12)Arg:アルギニン
(13)Ser:セリン
(14)Thr:トレオニン
(15)Asp:アスパラギン酸
(16)Glu:グルタミン酸
(17)Asn:アスパラギン
(18)Gln:グルタミン
(19)Cys:システイン
(20)Pro:プロリン
(21)Orn:オルニチン
(22)Sar:サルコシン
(23)Cit:シトルリン
(24)Nva:ノルバリン
(25)Nle:ノルロイシン
(26)Abu:α-アミノ酪酸
(27)Tau:タウリン
(28)Hyp:ヒドロキシプロリン
(29)t-Leu:tert-ロイシン
(30)Cle:シクロロイシン
(31)Aib:α-アミノイソ酪酸(別名:2-メチルアラニン)
(32)Pen:ペニシラミン
(33)Hse:ホモセリン
【0018】
アミノ酸誘導体とは、上記のようなアミノ酸の各種誘導体をいう。アミノ酸誘導体としては、例えば、特殊アミノ酸、非天然アミノ酸、アミノアルコール、ならびに末端カルボニル基、末端アミノ基、およびシステインのチオール基等の官能基の1またはそれ以上が各種置換基により置換されたアミノ酸が挙げられる。置換基として、具体的には、例えば、アルキル基、アシル基、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、スルフォニル基、および各種保護基が挙げられる。アミノ酸誘導体として、具体的には、例えば、Arg(NO2):N-γ-ニトロアルギニン、Cys(SNO):S-ニトロシステイン、Cys(S-Me):S-メチルシステイン、Cys(S-allyl):S-アリルシステイン、Val-NH2:バリンアミド、Val-ol:バリノール(別名:2-アミノ-3-メチル-1-ブタノール)、Met(O):メチオニンスルホキシド、およびCys(S-Me)(O):S-メチルシステインスルホキシドが挙げられる。
【0019】
γ-グルタミルペプチドとして、具体的には、例えば、γ-Glu-Val-Gly、γ-Glu-Cys-Gly、γ-Glu-Abu-Gly、γ-Glu-Nva-Gly、γ-Glu-Abu、γ-Glu-Nvaが挙げられる。γ-グルタミルペプチドとしては、特に、γ-Glu-Val-Glyが挙げられる。γ-Glu-Val-Gly(CAS 38837-70-6;Gluvalicineとも呼ぶ)の構造式を下記式(I)に示す。
【0020】
【0021】
本発明において、γ-グルタミルペプチドを構成するアミノ酸およびアミノ酸誘導体は、特記しない限り、いずれもL-体である。
【0022】
本発明において、γ-グルタミルペプチドは、いずれも、フリー体であってもよく、塩であってもよく、それらの混合物であってもよい。すなわち、「γ-グルタミルペプチド」という用語は、特記しない限り、フリー体のγ-グルタミルペプチド、もしくはその塩、またはそれらの混合物を意味する。また、これらγ-グルタミルペプチド(例えば、フ
リー体や塩)は、いずれも、特記しない限り、非水和物および水和物を包含してよい。
【0023】
塩は、経口摂取可能なものであれば特に制限されない。例えば、カルボキシル基等の酸性基に対する塩としては、具体的には、アンモニウム塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ジシクロへキシルアミン等の有機アミンとの塩、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸との塩が挙げられる。また、例えば、アミノ基等の塩基性基に対する塩としては、具体的には、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸等の無機酸との塩、酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、タンニン酸、酪酸、ヒベンズ酸、パモ酸、エナント酸、デカン酸、テオクル酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸、メチルマロン酸、アジピン酸等の有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩が挙げられる。なお、塩としては、1種の塩を用いてもよく、2種またはそれ以上の塩を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
γ-グルタミルペプチドとしては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。
【0025】
ペプチドの製造方法は特に制限されず、例えば公知の方法を利用できる。公知の方法としては、例えば、(1)化学的にペプチドを合成する方法や(2)酵素的な反応によりペプチドを合成する方法が挙げられる。アミノ酸残基数が2~3残基の比較的短いペプチドの合成には、特に、化学的に合成する方法を用いるのが簡便である。
【0026】
化学的にペプチドを合成する場合、ペプチド合成機を用いてペプチドを合成あるいは半合成することができる。化学的にペプチドを合成する方法としては、例えば、ペプチド固相合成法が挙げられる。合成されたペプチドは通常の手段、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーによって精製することができる。このようなペプチド固相合成法、およびそれに続くペプチド精製はこの技術分野においてよく知られたものである。
【0027】
酵素的な反応によりペプチドを合成する場合、例えば、WO2004/011653に記載の方法を
用いることができる。具体的には、例えば、カルボキシル基がエステル化またはアミド化されたアミノ酸またはジペプチドと、アミノ基がフリーの状態であるアミノ酸(例えばカルボキシル基が保護されたアミノ酸)とを、ペプチド生成酵素の存在下で反応させることにより、ジペプチドまたはトリペプチドを合成することができる。合成されたジペプチドまたはトリペプチドは、適宜精製することができる。ペプチド生成酵素としては、例えば、ペプチドを生成する能力を有する微生物の培養物、該培養物から分離した培養上清、該培養物から分離した菌体、該微生物の菌体処理物、それらから分離したペプチド生成酵素が挙げられる。ペプチド生成酵素としては、必要に応じて適宜精製されたものを用いることができる。
【0028】
また、γ-グルタミルペプチドは、例えば、当該γ-グルタミルペプチドの生産能を有する微生物を培養し、培養液または菌体から当該γ-グルタミルペプチドを回収することで製造することができる。具体的には、例えば、特開2012-213376に記載の方法により、
γ-グルタミルペプチドを高濃度に含有する酵母が得られる。また、γ-グルタミルペプチドは、例えば、当該γ-グルタミルペプチドを含有する農水畜産物から回収することで製造することができる。
【0029】
γ-グルタミルペプチドは、精製品であってもよく、そうでなくてもよい。すなわち、
γ-グルタミルペプチドとしては、当該ペプチドを高含有する素材を用いてもよい。「γ-グルタミルペプチドを高含有する」とは、γ-グルタミルペプチドの含有量が100ppm(w/w)以上であることをいう。すなわち、「γ-グルタミルペプチドを配合(添加)すること」には、当該ペプチドそのものを配合(添加)することに限られず、当該ペプチドを高含有する素材を配合(添加)することも包含される。γ-グルタミルペプチドを高含有する素材として、具体的には、例えば、当該ペプチドの生産能を有する微生物を培養して得られた培養液、菌体、培養上清等の発酵生産物、当該ペプチドを含有する農水畜産物、およびそれらの加工品が挙げられる。加工品としては、上記のような発酵生産物を、濃縮、希釈、乾燥、分画、抽出、精製等の処理に供したものが挙げられる。そのような加工品としては、例えば、γ-グルタミルペプチドを含有する酵母やγ-グルタミルペプチドを含有する酵母エキス(特開2012-213376)が挙げられる。γ-グルタミルペプチ
ドは、所望の程度に精製されていてよい。γ-グルタミルペプチドを含有する素材におけるγ-グルタミルペプチドの含有量は、例えば、0.1%(v/w)以上、0.5%(v/w)以上、1%(v/w)以上、3%(v/w)以上、5%(v/w)以上、10%(v/w)以上、30%(v/w)以上、50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、90%(w/w)以上、または95%(w/w)以上であってよい。
【0030】
メチオナールとしては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。
【0031】
メチオナールの製造方法は特に制限されず、例えば公知の方法を利用できる。メチオナールは、例えば、化学合成、酵素反応、抽出、発酵、またはその組み合わせにより製造することができる。
【0032】
メチオナールは、精製品であってもよく、そうでなくてもよい。すなわち、メチオナールとしては、メチオナールを高含有する素材を用いてもよい。「メチオナールを高含有する」とは、メチオナールの含有量が100ppb(w/w)以上であることをいう。すなわち、「メチオナールを配合(添加)すること」には、メチオナールそのものを配合(添加)することに限られず、メチオナールを高含有する素材を配合(添加)することも包含される。メチオナールは、所望の程度に精製されていてよい。メチオナールを含有する素材におけるメチオナールの含有量は、例えば、1ppm(w/w)以上、10ppm(w/w)以上、100ppm(w/w)以上、0.1%(v/w)以上、0.5%(v/w)以上、1%(v/w)以上、3%(v/w)以上、5%(v/w)以上、10%(v/w)以上、30%(v/w)以上、50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、90%(w/w)以上、または95%(w/w)以上であってよい。
【0033】
なお、有効成分の量(例えば含有量(濃度)や使用量)は、有効成分を含有する素材を用いる場合にあっては、当該素材中の有効成分そのものの量に基づいて算出されるものとする。また、有効成分の量(例えば含有量(濃度)や使用量)は、有効成分が塩または水和物を形成している場合にあっては、塩または水和物の質量を等モルのフリー体の質量に換算した値に基づいて算出されるものとする。
【0034】
<2>本発明の組成物
本発明の組成物は、有効成分を含有する組成物である。
【0035】
すなわち、本発明の組成物は、下記成分(A)を含有する組成物である:
(A)γ-グルタミルペプチド。
【0036】
本発明の組成物は、さらに、下記成分(B)を含有していてもよい:
(B)メチオナール。
【0037】
本発明の組成物を利用することにより、卵含有食品の風味を改善することができる、すなわち、風味改善効果が得られる。よって、本発明の組成物は、卵含有食品の風味の改善に利用されてよい。すなわち、本発明の組成物は、例えば、卵含有食品の風味改善用の組成物であってもよい。
【0038】
また、本発明の組成物を利用することにより、風味が改善された卵含有食品を製造することができる。よって、本発明の組成物は、卵含有食品の製造(具体的には、風味が改善された卵含有食品の製造)に利用されてよい。すなわち、本発明の組成物は、例えば、卵含有食品の製造(具体的には、風味が改善された卵含有食品の製造)用の組成物であってもよい。
【0039】
本発明の組成物は、後述する本発明の方法に記載の態様で風味の改善または卵含有食品の製造に利用されてよい。
【0040】
本発明の組成物は、有効成分からなるものであってもよく、有効成分以外の成分を含有していてもよい。
【0041】
有効成分以外の成分は、風味改善効果を損なわない限り、特に制限されない。有効成分以外の成分は、例えば、卵含有食品の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。有効成分以外の成分としては、食品または医薬品に配合される成分が挙げられる。
【0042】
他の成分として、具体的には、卵含有食品の製造に有効な成分を含有していてよい。卵含有食品の製造に有効な成分としては、後述する卵含有食品の原料が挙げられる。
【0043】
他の成分としては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
本発明の組成物は、例えば、有効成分および任意でその他の成分を適宜混合することにより製造することができる。
【0045】
本発明の組成物は、例えば、適宜製剤化されていてよい。製剤化にあたっては、添加剤を適宜使用してよい。添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、溶剤が挙げられる。添加剤は、例えば、本発明の組成物の形状等の諸条件に応じて、適宜選択できる。
【0046】
本発明の組成物の形状は、特に、制限されない。本発明の組成物は、例えば、粉末、フレーク、錠剤、ペースト、液体等の任意の形状であってよい。
【0047】
本発明の組成物における有効成分の含有量は、0%(w/w)より多く、且つ、100%(w/w)以下である。本発明の組成物における有効成分の総含有量は、例えば、1%(w/w)以上、2%(w/w)以上、5%(w/w)以上、10%(w/w)以上、または20%(w/w)以上であってもよく、100%(w/w)以下、99.9%(w/w)以下、50%(w/w)以下、20%(w/w)以下、10%(w/w)以下、5%(w/w)以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。
【0048】
有効成分として成分(A)および(B)が用いられる場合、本発明の組成物における成分(A)および(B)の含有量の比率は、風味改善効果が得られる限り、特に制限されない。本発明の組成物における成分(B)の含有量は、例えば、本発明の組成物における成分(A)の含有量に対する重量比で、0.0001%以上、0.001%以上、0.01
%以上、0.1%以上、または1%以上であってもよく、10%以下、1%以下、0.1%以下、0.01%以下、または0.001%以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。
【0049】
本発明の組成物に含有される各成分(すなわち、有効成分および任意でその他の成分)は、互いに混合されて本発明の組成物に含有されていてもよく、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、本発明の組成物に含有されていてもよい。例えば、本発明の組成物は、それぞれ別個にパッケージングされた各有効成分のセットとして提供されてもよい。このような場合、セットに含まれる成分は使用時に適宜併用することができる。
【0050】
<3>本発明の方法
本発明の方法は、有効成分を利用する工程を含む方法である。
【0051】
すなわち、本発明の方法は、下記成分(A)を利用する工程を含む方法である:
(A)γ-グルタミルペプチド。
【0052】
本発明の方法は、さらに、下記成分(B)を利用してもよい:
(B)メチオナール。
【0053】
本発明の方法により、具体的には有効成分を利用することにより、卵含有食品の風味を改善することができる、すなわち、風味改善効果が得られる。よって、本発明の方法は、卵含有食品の風味の改善のために実施されてよい。すなわち、本発明の方法は、例えば、卵含有食品の風味を改善する方法であってよい。同方法を「本発明の風味改善方法」ともいう。
【0054】
また、本発明の方法により、具体的には有効成分を利用することにより、風味が改善された卵含有食品を製造することができる。よって、本発明の方法は、卵含有食品の製造(具体的には、風味が改善された卵含有食品の製造)のために実施されてよい。すなわち、本発明の方法は、例えば、卵含有食品を製造する(具体的には、風味が改善された卵含有食品を製造する)方法であってよい。同方法を「本発明の卵含有食品製造方法」ともいう。
【0055】
有効成分は、卵含有食品の製造の際に卵含有食品の原料に添加することにより、風味の改善または卵含有食品の製造に利用することができる。すなわち、有効成分の利用としては、有効成分を卵含有食品の原料に添加することが挙げられる。すなわち、本発明の方法は、具体的には、例えば、有効成分を卵含有食品の原料に添加することを含む、卵含有食品の風味を改善する方法であってよい。また、本発明の方法は、具体的には、例えば、有効成分を卵含有食品の原料に添加することを含む、卵含有食品を製造する(具体的には、風味が改善された卵含有食品を製造する)方法であってよい。「添加」を「配合」ともいう。
【0056】
有効成分は、例えば、本発明の組成物の形態で本発明の方法に利用してよい。すなわち、「有効成分の利用」には、本発明の組成物の利用も包含される。例えば、「有効成分の添加」には、本発明の組成物の添加も包含される。
【0057】
本発明の方法により得られる卵含有食品を「本発明の卵含有食品」ともいう。本発明の卵含有食品は、具体的には、風味が改善された卵含有食品である。また、本発明の卵含有食品は、言い換えると、有効成分が添加された卵含有食品である。
【0058】
風味の改善または卵含有食品の製造は、例えば、有効成分を利用すること以外は、通常の卵含有食品の製造と同様に実施してよい。すなわち、風味の改善または卵含有食品の製造は、例えば、有効成分を利用すること以外は、通常の卵含有食品と同様の原料を用いて同様の製造条件で実施してよい。また、卵含有食品の原料や製造条件は、いずれも、適宜修正して風味の改善または卵含有食品の製造に利用してもよい。
【0059】
「卵含有食品」とは、卵を含有する食品を意味する。卵含有食品の種類は、風味の改善を希望するものであれば、特に制限されない。卵含有食品としては、加熱して喫食される卵含有食品が挙げられる。加熱して喫食される卵含有食品は、例えば、冷蔵または冷凍の形態で提供される加熱済みの卵含有食品であって、喫食時に再加熱されるものであってよい。卵含有食品として、具体的には、カルボナーラソースやカスタードソース等の卵含有ソースおよびそれを使用した食品、親子丼、カツ丼、天津飯等の卵とじ食品、だし巻き卵やオムレツ等の玉子焼、ニラ玉や炒飯等の炒り卵含有食品、茶わん蒸し、オムライス、卵サンド、プリンが挙げられる。カルボナーラソースを使用した食品としては、カルボナーラ(パスタ)が挙げられる。カスタードソースを使用した食品としては、シュークリームが挙げられる。例えば、カルボナーラソース、カルボナーラソースを使用した食品、卵とじ食品、玉子焼、炒り卵含有食品、茶わん蒸し、オムライスは、いずれも、喫食時に再加熱される卵含有食品であり得る。卵含有食品は、特に、酵素処理卵を含有する食品であってよい。言い換えると、卵含有食品に含有される卵は、特に、酵素処理卵であってよい。卵の酵素処理については後述する。
【0060】
「卵含有食品の原料」とは、卵含有食品を製造するための食品素材を意味する。卵含有食品の原料は、卵含有食品を製造できる限り、特に制限されない。卵含有食品の原料は、例えば、卵含有食品の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。卵含有食品の原料としては、上記例示したような卵含有食品の製造に通常用いられ得る原料が挙げられる。
【0061】
卵含有食品の原料としては、少なくとも、卵が用いられる。すなわち、卵含有食品の原料は、卵を含む。卵としては、鶏卵等の鳥の卵が挙げられる。卵としては、全卵、卵黄、卵白、またはそれらの組み合わせ等のいずれの画分を用いてもよい。卵としては、少なくとも、卵黄を含む画分、例えば全卵または卵黄、が用いられてもよい。卵は、液体や粉末等のいずれの形態で用いてもよい。
【0062】
卵含有食品の原料は、卵からなるものであってもよく、卵と他の原料との組み合わせであってもよい。他の原料としては、卵以外の、上記例示したような卵含有食品の製造に通常用いられ得る原料が挙げられる。他の原料として、具体的には、野菜や肉等の具材;糖、無機塩、有機酸、核酸、アミノ酸等の調味料;チーズ等の乳製品;油脂;アルコールが挙げられる。また、他の原料として、具体的には、プロテアーゼ等の、卵の酵素処理に用いられる酵素も挙げられる。他の原料としては、1種の原料を用いてもよく、2種またはそれ以上の原料を組み合わせて用いてもよい。他の原料は、例えば、予め卵と混合されていてもよく、卵含有食品の製造中に卵に添加されてもよい。
【0063】
他の原料の配合量は、所望の卵含有食品を製造できる限り、特に制限されない。他の原料の配合量は、例えば、卵含有食品の原料の種類や卵含有食品の種類等の諸条件に応じて適宜設定できる。
【0064】
有効成分は、風味改善効果が得られる限り、卵含有食品の製造工程のいずれの段階で卵含有食品の原料に添加してもよい。有効成分は、そのまま、あるいは適宜溶液等の所望の形態に調製して、卵含有食品の原料に添加することができる。「有効成分の添加」とは、有効成分を卵含有食品の原料と共存させる操作を総称してよい。有効成分として2種またはそれ以上の成分を用いる場合、有効成分の添加に関する記載は、特記しない限り、各有
効成分に独立に適用できる。有効成分として2種またはそれ以上の成分を用いる場合、有効成分は、全て同時に卵含有食品の原料に添加してもよく、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、卵含有食品の原料に添加してもよい。有効成分として2種またはそれ以上の成分を用いる場合、有効成分を卵含有食品の原料に添加する順序は特に制限されない。
【0065】
本発明の方法における有効成分の添加量や添加量比は、風味改善効果が得られる限り、特に制限されない。本発明の方法における有効成分の添加量や添加量比は、卵含有食品の原料の種類や卵含有食品の種類等の諸条件に応じて適宜設定できる。
【0066】
成分(A)(γ-グルタミルペプチド)の添加量は、例えば、卵100重量部に対し、0.00005重量部以上、0.0001重量部以上、0.0002重量部以上、0.0003重量部以上、0.0004重量部以上、0.0005重量部以上、0.001重量部以上、0.002重量部以上、または0.005重量部以上であってもよく、0.1重量部以下、0.05重量部以下、0.02重量部以下、0.01重量部以下、0.005重量部以下、0.002重量部以下、0.001重量部以下、または0.0005重量部以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。成分(A)の添加量は、具体的には、例えば、卵100重量部に対し、0.0003~0.1重量部、0.0004~0.05重量部、または0.0005~0.02重量部であってもよい。
【0067】
また、成分(A)(γ-グルタミルペプチド)は、卵含有食品の原料に、例えば、成分(A)の喫食濃度が所望の範囲となるように添加されてよい。成分(A)の喫食濃度は、例えば、0.5ppm(w/w)以上、1ppm(w/w)以上、2ppm(w/w)以上、3ppm(w/w)以上、4ppm(w/w)以上、5ppm(w/w)以上、10ppm(w/w)以上、または20ppm(w/w)以上であってもよく、200ppm(w/w)以下、100ppm(w/w)以下、50ppm(w/w)以下、または20ppm(w/w)以下であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。成分(A)の喫食濃度は、具体的には、例えば、3~200ppm(w/w)、4~100ppm(w/w)、または5~50ppm(w/w)であってもよい。
【0068】
成分(B)(メチオナール)の添加量は、例えば、卵100重量部に対し、0.001×10-7重量部以上、0.002×10-7重量部以上、0.005×10-7重量部以上、0.01×10-7重量部以上、0.02×10-7重量部以上、0.05×10-7重量部以上、0.1×10-7重量部以上、0.2×10-7重量部以上、0.5×10-7重量部以上、1×10-7重量部以上、2×10-7重量部以上、5×10-7重量部以上、または10×10-7重量部以上であってもよく、1000×10-7重量部以下、500×10-7重量部以下、200×10-7重量部以下、100×10-7重量部以下、50×10-7重量部以下、20×10-7重量部以下、10×10-7重量部以下、5×10-7重量部以下、2×10-7重量部以下、1×10-7重量部以下、0.5×10-7重量部以下、0.2×10-7重量部以下、または0.1×10-7重量部以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。成分(B)の添加量は、具体的には、例えば、卵100重量部に対し、0.001×10-7~1000×10-7重量部、0.01×10-7~100×10-7重量部、または0.1×10-7~10×10-7重量部であってもよい。
【0069】
また、成分(B)(メチオナール)は、卵含有食品の原料に、例えば、成分(A)の喫食濃度が所望の範囲となるように添加されてよい。成分(B)の喫食濃度は、例えば、0.001ppb(w/w)以上、0.002ppb(w/w)以上、0.005ppb(w/w)以上、0.01ppb(w/w)以上、0.02ppb(w/w)以上、0.05ppb(w/w)以上、0.1ppb(w/w)以上、0.2ppb(w/w)以上、
0.5ppb(w/w)以上、1ppb(w/w)以上、2ppb(w/w)以上、5ppb(w/w)以上、または10ppb(w/w)以上であってもよく、1000ppb(w/w)以下、500ppb(w/w)以下、200ppb(w/w)以下、100ppb(w/w)以下、50ppb(w/w)以下、20ppb(w/w)以下、10ppb(w/w)以下、5ppb(w/w)以下、2ppb(w/w)以下、1ppb(w/w)以下、0.5ppb(w/w)以下、0.2ppb(w/w)以下、または0.1ppb(w/w)以下であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。成分(B)の喫食濃度は、具体的には、例えば、0.001~1000ppb(w/w)、0.01~100ppb(w/w)、または0.1~10ppb(w/w)であってもよい。
【0070】
有効成分の添加についての記載は、本発明の組成物の添加を添加する場合にも準用できる。例えば、本発明の組成物は、上記例示した有効成分の添加量が得られるように添加することができる。
【0071】
上述の通り、卵含有食品に含有される卵は、特に、酵素処理卵であってよい。卵は、予め酵素処理されていてもよく、卵含有食品の製造工程において酵素処理されてもよい。本発明の方法は、卵を酵素処理する工程を含んでいてもよい。酵素処理としては、プロテアーゼ処理が挙げられる。プロテアーゼ処理等の酵素処理により、例えば、卵含有食品を加熱した際の食感の悪化が低減され得る。
【0072】
「プロテアーゼ」とは、タンパク質のペプチド結合を加水分解する酵素を意味してよい。プロテアーゼの種類は、卵含有食品を加熱した際の食感の悪化の低減等の所望の効果が得られる限り、特に制限されない。プロテアーゼは、エンドペプチダーゼであってもよく、エキソペプチダーゼであってもよい。また、プロテアーゼには、プロテイナーゼ(proteinase)やペプチダーゼ(peptidase)と呼ばれるものも包含される。プロテアーゼとし
て、具体的には、スブチリシン(subtilisin)、キモトリプシン(chymotrypsin)、トリプシン(trypsin)等のセリンプロテアーゼ(serine protease);パパイン(papain)、ブロメライン(bromelain)、カスパーゼ(caspase)、カルパイン(calpain)等のシス
テインプロテアーゼ(cysteine protease);ペプシン(pepsin)、カテプシン(cathepsin)等の酸性プロテアーゼ(acid protease);サーモリシン(thermolysin)等のメタロプロテアーゼ(metalloprotease)が挙げられる。プロテアーゼとしては、1種のプロテ
アーゼを用いてもよく、2種またはそれ以上のプロテアーゼを用いてもよい。
【0073】
プロテアーゼの由来は特に制限されず、微生物、動物、植物等いずれの由来のものを用いてもよい。また、プロテアーゼとしては、公知のプロテアーゼのホモログや人為的改変体を利用してもよい。プロテアーゼは、プロテアーゼ以外の成分を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。プロテアーゼとしては、例えば、プロテアーゼを産生する微生物の培養物、該培養物から分離した培養上清、該培養物から分離した菌体、該菌体の処理物、プロテアーゼを含有する農水畜産物、該農水畜産物の処理物、それらから分離したプロテアーゼが挙げられる。プロテアーゼは、所望の程度に精製されていてよい。
【0074】
プロテアーゼとしては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。プロテアーゼの市販品としては、市販の酵素製剤や市販の種麹が挙げられる。
【0075】
酵素処理の条件は、卵含有食品を加熱した際の食感の悪化の低減等の所望の効果が得られる限り、特に制限されない。酵素処理の条件としては、例えば、特許第3254026号や特
許第4312003号等に記載の酵素処理の条件を、そのまま、あるいは適宜改変して採用する
ことができる。
【0076】
酵素処理は、卵含有食品の製造工程の実施により併せて実施されてもよく、卵含有食品
の製造工程とは別個に実施されてもよい。また、酵素処理は、その一部が卵含有食品の製造工程の実施により併せて実施され、且つその残部が卵含有食品の製造工程とは別個に実施されてもよい。
【実施例】
【0077】
以下、非限定的な実施例を参照して、本発明をさらに具体的に説明する。
【0078】
プロテアーゼを水で200倍希釈し、プロテアーゼ溶液を得た。プロテアーゼ溶液20重量部と冷凍全卵80重量部を混合し、63℃で30分の酵素反応を実施した後、90℃で20分の酵素失活処理を実施し、酵素処理卵を得た。冷却後、酵素処理卵にγ-Glu-Val-Glyおよび/またはメチオナールを表1の配合で添加し、専門パネルによる官能評価により風味を評価した。
【0079】
結果を表1に示す。表中、「評価」は、×<△<○<◎の順に風味改善効果が高い(すなわち、×が最も低く、◎が最も高い)ことを示す。γ-Glu-Val-Glyおよび/またはメチオナールの配合により酵素処理卵の風味の改善が認められた。特に、γ-Glu-Val-Glyが苦味の低減に有効であった。また、特に、γ-Glu-Val-Glyおよびメチオナールを配合した場合に高い風味改善効果が得られた。
【0080】