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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】スピーカー装置、及び音響システム
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/28 20060101AFI20250109BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20250109BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20250109BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H04R1/28 310Z
H04R1/02 102B
H04R1/28 310C
H04R1/02 101F
B60R11/02 S
H04R3/00 310
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020162631
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022055183
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大聖寺 健
(72)【発明者】
【氏名】野呂 正夫
【審査官】稲葉 崇
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-016785(JP,U)
【文献】実開平02-041594(JP,U)
【文献】特開2010-063078(JP,A)
【文献】実開昭58-114689(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-1/46
H04R 3/00-3/14
B60R 9/00-11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に連通する第1面と、前記車室内に連通していない第2面とを有する第1スピーカーと、
車外に対して連通する第1面と、車外に対して連通していない第2面とを有する第2スピーカーと、
境界を形成する面で閉空間が形成されるキャビネットと、
を備え、
前記第1スピーカーの第2面は、背面であり、
前記第2スピーカーの第2面は、背面であり、
前記第1スピーカー及び前記第2スピーカーに対して逆相の音信号が供給され、
前記第1スピーカーの第2面及び前記第2スピーカーの第2面を前記閉空間側に向けて前記境界に配置したスピーカー装置。
【請求項2】
車室内に連通する第1面と、前記車室内に連通していない第2面とを有する第1スピーカーと、
車外に対して連通する第1面と、車外に対して連通していない第2面とを有する第2スピーカーと、
境界を形成する面で閉空間が形成されるキャビネットと、
を備え、
前記第1スピーカーの第2面は、放音面であり、
前記第2スピーカーの第2面は、放音面であり、
前記第1スピーカー及び前記第2スピーカーに対して逆相の音信号が供給され、
前記第1スピーカーの第2面及び前記第2スピーカーの第2面を前記閉空間側に向けて前記境界に配置したスピーカー装置。
【請求項3】
前記第1スピーカー及び前記第2スピーカーは、同軸上で同じ向きに配置される
請求項1または2に記載のスピーカー装置。
【請求項4】
車室内に連通する第1面と、前記車室内に連通していない第2面とを有する第1スピーカーと、
車外に対して連通する第1面と、車外に対して連通していない第2面とを有する第2スピーカーと、
境界を形成する面で閉空間が形成されるキャビネットと、
を備え、
前記第1スピーカーの第2面は、背面であり、
前記第2スピーカーの第2面は、放音面であり、
前記第1スピーカー及び前記第2スピーカーに対して同相の音信号が供給され、
前記第1スピーカーの第2面及び前記第2スピーカーの第2面を前記閉空間側に向けて前記境界に配置したスピーカー装置。
【請求項5】
車室内に連通する第1面と、前記車室内に連通していない第2面とを有する第1スピーカーと、
車外に対して連通する第1面と、車外に対して連通していない第2面とを有する第2スピーカーと、
境界を形成する面で閉空間が形成されるキャビネットと、
を備え、
前記第1スピーカーの第2面は、放音面であり、
前記第2スピーカーの第2面は、背面であり、
前記第1スピーカー及び前記第2スピーカーに対して同相の音信号が供給され、
前記第1スピーカーの第2面及び前記第2スピーカーの第2面を前記閉空間側に向けて前記境界に配置したスピーカー装置。
【請求項6】
前記第1スピーカー及び前記第2スピーカーは、同軸上で互いの背面同士が対向して配置される
請求項4または5に記載のスピーカー装置。
【請求項7】
前記第1スピーカー及び前記第2スピーカーの放音面同士が互いに対向して配置される請求項4または5に記載のスピーカー装置。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載のスピーカー装置と、
位相差のある2つの音信号である第1の音信号及び第2の音信号を生成し、前記第1の音信号を前記第1スピーカーに供給するとともに、前記第2の音信号を前記第2スピーカーに供給する位相制御部とを備える、
音響システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スピーカー装置、及び音響システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカー装置において、スピーカー背面を車外に向けて配置し無限大バッフルとする技術がある(例えば、特許文献1参照)。主スピーカー及び補助スピーカーを備えるスピーカー装置において、主スピーカーの背面に対して、補助スピーカーの放音面を向けて設置する技術がある(例えば、特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5988874号明細書
【文献】特開平9-74599号公報
【文献】特許第4079827号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スピーカー装置において、低音を再生するためには大きなエンクロージャーが必要である。しかしながら、スピーカー装置の設置スペースが限定される場合など、大きなエンクロージャーを設置できない場合がある。
【0005】
また、スピーカー装置を他の物体に対して強固に取り付けることができない場合には、再生エネルギーが音ではなく振動に変わってしまう。また、スピーカー装置の設置場所が複雑であったり、スピーカー装置の軽量化が求められたりする場合には、エンクロージャーの薄肉化が必要な場合がある。この場合には、エンクロージャーを他の物体に取り付けることが困難となってしまう
【0006】
本開示は、スピーカー装置の振動を抑制しつつ低音再生を可能するスピーカー装置、及び音響システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のスピーカー装置は、室内に連通する第1面と、前記室内に連通していない第2面とを有する第1スピーカーと、室外に対して連通する第1面と、室外に対して連通していない第2面とを有する第2スピーカーと、境界を形成する面で閉空間が形成されるキャビネットと、を備え、前記第1スピーカーの第2面及び前記第2スピーカーの第2面を前記閉空間側に向けて前記境界に配置したスピーカー装置である。
【0008】
本開示の音響システムは、前記スピーカー装置と、位相差のある2つの音信号である第1の音信号及び第2の音信号を生成し、前記第1の音信号を前記第1スピーカーに供給するとともに、前記第2の音信号を前記第2スピーカーに供給する位相制御部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るスピーカー装置の断面図である。
図2】第1実施形態に係るスピーカー装置の側面図である。
図3】第1実施形態に係るスピーカー装置の正面図である。
図4図1中のA-A線矢視図である。
図5】第1実施形態に係る音響システムのブロック図である。
図6】第2実施形態に係るスピーカー装置の断面図である。
図7】第2実施形態に係るスピーカー装置の側面図である。
図8】第2実施形態に係る音響システムのブロック図である。
図9】第3実施形態に係るスピーカー装置の断面図である。
図10】第3実施形態に係るスピーカー装置の側面図である。
図11】第4実施形態に係るスピーカー装置の断面図である。
図12】第5実施形態に係るスピーカー装置の断面図である。
図13】第6実施形態に係るスピーカー装置の断面図である。
図14】第6実施形態に係るスピーカー装置の側面図である。
図15図13中のB-B線矢視図である。
図16】第7実施形態に係るスピーカー装置の正面図である。
図17図16中のC-C線矢視図である。
図18図16中のD-D線矢視図である。
図19】第1スピーカーのモデルを示す概略図である。
図20図19に示す第1スピーカーのモデルにおける音の歪を示すグラフである。
図21】同じ向きで配置された第1スピーカー及び第2スピーカーを備えるスピーカー装置のモデルを示す概略図である。
図22図21に示すスピーカー装置のモデルにおける音の歪を示すグラフである。
図23】逆向きで配置された第1スピーカー及び第2スピーカーを備えるスピーカー装置のモデルを示す概略図である。
図24図23に示すスピーカー装置のモデルにおける音の歪を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面において各部の寸法及び縮尺は実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に記載する実施形態は、本発明の好適な具体例である。このため、本実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0011】
図1は、第1実施形態に係るスピーカー装置1Aの断面図である。図2は、スピーカー装置1Aの側面図である。図3は、スピーカー装置1Aの正面図である。図4は、図1中のA-A線矢視図である。図1図4に示されるスピーカー装置1Aは、例えば、自動車等の車両に搭載される車載用のスピーカー装置として使用できる。スピーカー装置1Aは、例えば、ドアトリムを介して、車両のドアに取り付けられてもよい。なお、スピーカー装置1Aの用途は、車載用に限定されず、他の用途でもよい。
【0012】
スピーカー装置1Aは、第1スピーカー10Aと第2スピーカー20Aとを備える。図1では、スピーカー装置1Aの一部が断面で示される。この断面は、第1スピーカー10Aの軸線Z1及び第2スピーカー20Aの軸線Z2を含む平面でスピーカー装置1Aを切断した断面である。軸線Z1は、後述する振動板2の振動方向に平行で、かつ、振動板2の中心を通る線分である。軸線Z1方向は軸線Z1が延在する方向である。
【0013】
第1スピーカー10Aの説明では、軸線Z1方向において、振動板2が配置される側が正面側であり、その反対側が背面側である。軸線Z1方向に離間する2つの面において、振動板2が配置される面は放音面であり、その反対側の面は背面である。軸線Z2についても同様である。また、互いに直交する3方向を、X方向、Y方向、Z方向とする。Z方向は、軸線Z1方向と平行である。
【0014】
後述するキャビネット30Aの説明において、図示右側を正面側とし、図示左側を背面側とする。なお、後述する他の実施形態では、キャビネットの正面側及び背面側と、第1スピーカーの正面側及び背面側、又は、第2スピーカーの正面側及び背面側が同じ側ではない場合がある。
【0015】
第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Aは、同じ構成であるが、第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Aは異なる構成でもよい。第1スピーカー10Aは、振動板2と駆動部3とスピーカーフレーム4とを有する。第2スピーカー20Aは、振動板2と駆動部3とスピーカーフレーム4とを有する。軸線Z1及び軸線Z2は、同軸である。
【0016】
振動板2は、シート材で構成され、振動により放音する振動体である。当該シート材は、例えば、樹脂材料を繊維基材に含浸させた状態で硬化又は固化することで得られる。当該樹脂材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、変性ゴム樹脂及びフェノール樹脂等が挙げられる。当該繊維基材としては、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、シリカ繊維、金属繊維、チタン酸カリウム繊維、ジルコニア繊維、ポリアクリレート繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、綿繊維、麻繊維及びセルロース繊維等が挙げられる。
【0017】
振動板2は、軸線Z1又は軸線Z2に沿う方向に振動する。振動板2は、コーン型である。なお、振動板2の形状は、コーン型に限定されず、例えば、ドーム型等でもよい。
【0018】
駆動部3は、入力される電気信号に基づいて振動板2を駆動する機構である。駆動部3は、磁場を生じさせる磁気回路と、振動板2に接続されるボイスコイルとを含む。磁気回路は、マグネット及びヨークを含む。ボイスコイルは、電気信号が入力されることで、当該マグネットとの間における磁力の相互作用により振動板2を振動させる。この振動により、振動板2から当該電気信号に基づく音が放音される。なお、駆動部3は、電気信号に基づいて振動板2を駆動することができればよく、ボイスコイル及びマグネットを有する構成に限定されず、任意である。
【0019】
第1スピーカー10Aは、室内J1に連通する第1面11と、室内J1に連通していない第2面12とを有する。第2スピーカー20Aは、室外J2に対して連通する第1面21と、室外J2に対して連通していない第2面22とを有する。室内J1に連通するとは、室内J1の空間に接し、後述するキャビネット30Aの内部空間に接しないことをいう。室内J1に連通していないとは、キャビネット30Aの内部空間に接し、室内J1の空間に接しないことをいう。室外J2に対して連通するとは、室外J2の空間に接し、キャビネット30Aの内部空間に接しないことをいう。室外J2に対して連通していないとは、キャビネット30Aの内部空間に接し、室外J2の空間に接しないことをいう。
【0020】
スピーカー装置1Aが自動車に搭載される場合において、室内J1は、自動車の車室内であり、室外J2は、自動車の外部である。自動車のドアにスピーカー装置1Aを設置した場合、ドアを開いたときに、第1スピーカー10Aの第1面11が車外に接していても、ドアを閉じた状態で、車室内に接する場合には、第1面11は室内J1に接する。また、第2スピーカー20Aの第1面21が車外に連通する開口部内の空間に接する場合には、第1面21は室外J2に連通する。車室内は、ドア又は窓を開けた状態において、車外に連通しても、室内J1である。
【0021】
第1スピーカー10Aの第1面11は放音面であり、第2面12は背面である。第2スピーカー20Aの第1面21は放音面であり、第2面22は背面である。第1スピーカー10Aの放音面は室内J1に連通し、第2スピーカー20Aの放音面は室外J2に連通する。
【0022】
スピーカー装置1Aは、第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Aを保持するキャビネット30Aを備える。キャビネット30Aは、箱型を成し、第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Aを保持する。キャビネット30Aは、正面板31Aと背面板32Aと側面板33Aと側面板34Aと側面板35Aと側面板36Aとを含む。正面板31A及び背面板32AはZ方向に対向する。側面板33A及び側面板34AはX方向に対向する。側面板35A及び側面板36AはY方向に対向する。側面板33Aには、開口部37Aが形成される。開口部37Aは、Z方向において、側面板33Aの中央部に形成される。
【0023】
キャビネット30Aは、境界を形成する面で閉空間を形成する。境界を形成する面は、正面板31A、背面板32A、側面板33A、側面板34A、側面板35A、及び側面板36Aを含む。境界を形成する面は、後述する第1キャビネット40Aの背面板42A、及び第2キャビネット50Aの正面板51Aを含む。境界を形成する面は、後述する連結部60Aの内壁板71A、内壁板72A、及び内壁板73Aを含む。キャビネット30Aは、第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Aを保持した状態において、閉じられた内部空間である閉空間を形成する。境界を形成する面で閉空間を形成するとは、第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Aを保持した状態で、閉じられた内部空間を形成することを含む。
【0024】
第1スピーカー10Aの第2面12及び第2スピーカー20Aの第2面22は、閉空間側に向けてキャビネット30Aの境界に配置される。第2面12及び第2面22が、閉空間側に向けてキャビネット30Aの境界に配置されるとは、第2面12及び第2面22が、キャビネット30Aの内部空間に接するように配置されることを含む。
【0025】
キャビネット30Aには、取付片8が設けられている。取付片8は、キャビネット30Aの側面板33A~36Aから外側に張り出している。スピーカー装置1Aは、取付片8を介して、他の部材に取り付けられる。スピーカー装置1Aの外部において、取付片8よりも正面側が室内J1であり、取付片8よりも背面側が室外J2となる。取付片8は、フランジでもよく、チャンネル等でもよい。
【0026】
キャビネット30Aは、第1キャビネット40A、第2キャビネット50A、及び連結部60Aを備える。連結部60Aは、Z方向において、第1キャビネット40Aと第2キャビネット50Aとの間に配置される。連結部60Aは、第1キャビネット40Aと第2キャビネット50Aとを連通する。
【0027】
第1キャビネット40Aは、第1スピーカー10Aを保持する。第1キャビネット40Aは、Z方向に対向する正面板31Aと背面板42Aとを含む。第1キャビネット40Aは、側面板33Aの第1部分43Aと、側面板34Aの第1部分44Aと、側面板35Aの第1部分45Aと、側面板36Aの第1部分46Aとを含む。
【0028】
正面板31Aには、第1スピーカー10Aを保持する開口部38Aが形成される。開口部38Aの周縁部に、第1スピーカー10Aのスピーカーフレーム4が固定される。第1スピーカー10Aの振動板2及び駆動部3は、第1キャビネット40A内に収容される。
【0029】
側面板33Aの第1部分43A及び側面板34Aの第1部分44AはX方向に対向する。側面板35Aの第1部分45A及び側面板36Aの第1部分46AはY方向に対向する。X方向において、背面板42Aと側面板34Aとの間には、開口部47Aが形成される。
【0030】
第2キャビネット50Aは、第2スピーカー20Aを保持する。第2キャビネット50Aは、Z方向に対向する正面板51Aと背面板32Aとを含む。第2キャビネット50Aは、側面板33Aの第2部分53Aと、側面板34Aの第2部分54Aと、側面板35Aの第2部分55Aと、側面板36Aの第2部分56Aとを含む。
【0031】
正面板51Aには、第2スピーカー20Aを保持する開口部57Aが形成される。開口部57Aの周縁部に、第2スピーカー20Aのスピーカーフレーム4が固定される。第2スピーカー20Aの振動板2及び駆動部3は、第2キャビネット50A内に収容される。
【0032】
側面板33Aの第2部分53A及び側面板34Aの第2部分54AはX方向に対向する。側面板35Aの第2部分55A及び側面板36Aの第2部分56AはY方向に対向する。X方向において、正面板51Aと側面板34Aとの間には、開口部58Aが形成される。
【0033】
連結部60Aは、X方向に対向する内壁板71Aと側面板34Aの第3部分64Aとを含む。連結部60Aの内部空間は、開口部47A及び開口部58Aを通じて、第1キャビネット40Aの内部空間と第2キャビネット50Aの内部空間とに連通する。
【0034】
キャビネット30Aの内部空間は、第1キャビネット40Aの内部空間と、第2キャビネット50Aの内部空間と、連結部60Aの内部空間とを含む。キャビネット30Aの内部空間は、閉空間であり、室内J1及び室外J2と連通されていない。第1スピーカー10Aの背面である第2面12と、第2スピーカー20Aの背面である第2面22とは、キャビネット30Aの内部空間に接する。
【0035】
第2スピーカー20Aの正面側には、室外J2と連通する開放空間J3が形成される。開放空間J3は、開口部37Aを通じて、室外J2に連通する。開放空間J3はZ方向において、第1キャビネット40Aの背面板42Aと、第2キャビネット50Aの正面板51Aとの間に形成された空間を含む。
【0036】
開放空間J3は、図4に示されるように、内壁板71A、内壁板72A及び内壁板73Aによって、キャビネット30Aの内部空間と区切られる。内壁板72A及び内壁板73Aは、Y方向において、第2スピーカー20Aの外側に配置される。内壁板72Aは、Y方向において、側面板35Aに対向する。内壁板73Aは、Y方向において、側面板36Aと対向する。
【0037】
次に図5を参照して第1実施形態に係る音響システム86Aについて説明する。図5は、音響システム86Aのブロック図である。音響システム86Aは、スピーカー装置1A及び位相制御装置80Aを備える。位相制御装置80Aは、制御ユニット81を含む。制御ユニット81は、第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Aに出力される電気信号S1及び電気信号S2を制御する。制御ユニット81は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路82と半導体メモリー等の記憶回路83とを有する。
【0038】
記憶回路83には、制御プログラム及び電気信号の位相制御を行うために用いる各種パラメータが記憶される。また、記憶回路83は、処理回路82の作業領域として機能する。処理回路82は、記憶回路83から制御プログラムを読み出す。処理回路82は読み出した制御プログラムを実行することによって、スピーカー装置1Aの制御中枢として機能する。制御ユニット81は、電気信号S1を第1スピーカー10Aに出力し、電気信号S2を第2スピーカー20Aに出力する。
【0039】
処理回路82は、第1スピーカー10Aに出力される電気信号S1及び第2スピーカー20Aに出力される電気信号S2の位相を制御する位相制御部85Aとして機能する。処理回路82は、遅延回路84を含む。位相制御部85Aは、位相差のある2つの音信号である第1の音信号及び第2の音信号を生成する。第1の音信号は、電気信号S1である。第2の音信号は電気信号S2である。
【0040】
処理回路82は、互いに逆相となる電気信号S1及び電気信号S2を生成する。これにより、第1スピーカー10Aの振動板2及び第2スピーカー20Aの振動板2は互いに逆方向に振動する。ここでいう「逆方向に振動する」とは、第2スピーカー20Aの振動板2が正面側に動く場合は、第1スピーカー10Aの振動板2が背面側に動くことであり、第2スピーカー20Aの振動板2が背面側に動く場合は、第1スピーカー10Aの振動板2が正面側に動くことである。
【0041】
例えば、第2スピーカー20Aの振動板2が背面側に動く場合、第1スピーカー10Aの振動板2は正面側に動く。第2スピーカー20Aの振動板2が背面側に動くと、キャビネット30A内に振動が伝達される。キャビネット30Aにおいて、第2キャビネット50Aの内部空間、連結部60Aの内部空間、及び第1キャビネット40Aの内部空間の順に振動が伝達される。このように、第2スピーカー20Aの振動板2の振動が背面側に動いた場合には、第1キャビネット40Aの内部空間において、第1スピーカー10Aの振動板2に対して、背面側から正面側に振動板2を押し出すように、振動が伝わる。位相制御部85は、第1スピーカー10Aの振動板2が背面側から正面側に動くように、電気信号S1が位相制御するので、キャビネット30Aの内部空間において、空気の粗密が抑制される。空気の粗密が抑制されるとは、キャビネット30Aの内部の圧力変化が抑制されることをいう。
【0042】
同様に、例えば、第2スピーカー20Aの振動板2が正面側に動く場合、第1スピーカー10Aの振動板2は背面側に動く。第2スピーカー20Aの振動板2が正面側に動くと、キャビネット30A内に振動が伝達される。キャビネット30Aにおいて、第2キャビネット50Aの内部空間、連結部60Aの内部空間、及び第1キャビネット40Aの内部空間の順に振動が伝達される。このように、第2スピーカー20Aの振動板2の振動が正面側に動いた場合には、第1キャビネット40Aの内部空間において、第1スピーカー10Aの振動板2に対して、背面側から振動板2を引くように、振動が伝わる。位相制御部85は、第1スピーカー10Aの振動板2が正面側から背面側に動くように、電気信号S1を位相制御するので、キャビネット30Aの内部空間において、空気の粗密が抑制される。
【0043】
上述したように、第1スピーカー10Aの振動板2が変位する方向と、第2スピーカー20Aの振動板2が変位する方向とは逆方向である。このため、電気信号S1の位相と電気信号S2の位相とは、逆相の関係にある。但し、キャビネット30Aにおいて、第2スピーカー20Aの振動は、内部空間の空気を介して、第1スピーカー10Aに伝わる。従って、第2スピーカー20Aの振動が第1スピーカー10Aに伝わるまでには時間が掛かる。
【0044】
遅延回路84は、電気信号S2に対して電気信号S1を遅延させることができる。遅延回路84は、第2スピーカー20Aから第1スピーカー10Aへ振動の伝達経路に応じて、電気信号S2に対して電気信号S1を遅延させる。ここでいう振動の伝達経路とは、キャビネット30Aの内部における空気を介した振動の伝達経路をいう。遅延回路84は、第2スピーカー20Aの振動が、キャビネット30Aの内部の空気を介して、第1スピーカー10Aに伝達されるタイミングで、第1スピーカー10Aが同じように振動するように、電気信号S1を遅延させる。位相制御部85Aは、第2スピーカー20Aから第1スピーカー10Aに伝達される振動の位相と、第1スピーカー10Aに入力される電気信号S1による振動板2の変位の位相とが逆位相となるように、電気信号S1及び電気信号S2を位相制御する。なお、伝達経路を介して伝わる振動が小さい場合には、遅延回路84を省略してもよい。また、キャビネット30Aの容積が小さく、伝達経路が短い場合にも、位相差が起こりにくいため、遅延回路84を省略してもよい。特に、キャビネット30Aの共振周波数が低い(数十~数百Hz)場合には遅延回路84を省略することができる。
【0045】
スピーカー装置1Aでは、第1スピーカー10Aの背面及び第2スピーカー20Aの背面がキャビネット30Aの内部空間に接する。第2スピーカー20Aの振動板2による振動は、キャビネット30Aの内部空間を通じて伝達され、第1スピーカー10Aの振動板2に伝達される。スピーカー装置1Aは、キャビネット30Aの内部空間の粗密を制御する。
【0046】
このようなスピーカー装置1Aでは、キャビネット30Aの内部空間の空気の粗密を抑制することができ、キャビネット30Aの内部の空気の振動方向と、第1スピーカー10Aの振動板2の振動方向とを合わせることができる。第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Aは、同軸上に配置され、同じ向きに配置される。これにより、第1スピーカー10Aの振動板2がキャビネット30Aの内部空間を圧縮(または膨張)させる動きをする時に、第2スピーカー20Aの振動板2がキャビネット30Aの内部空間を膨張(または圧縮)させる動きをすることによりキャビネット30Aの内部空間の空気の粗密が抑制される。また、第1スピーカー10Aの振動板2がキャビネット30Aの正面側に動く時に、第2スピーカー20Aの振動板2がキャビネット30Aの背面側に動くことによりキャビネット30Aの重心移動が抑制され、キャビネット30Aの振動が抑制される。
【0047】
スピーカー装置1Aでは、第2スピーカー20Aの放音面が室外J2に連通する。このようなスピーカー装置1Aによれば、第2スピーカー20Aを無限大バッフルとして機能させることにより、大きなエンクロージャーを不要として低音を再生することができる。そのため、スピーカー装置1Aの大型化が回避され、低音再生が実現される。
【0048】
スピーカー装置1Aではキャビネット30Aの内部空間を密閉空間とすることができ、室外J2から、キャビネット30Aの内部空間への異物の混入を防止できる。車載スピーカーとしてスピーカー装置1Aを適用した場合、車外空間である室外J2から、キャビネット30Aの内部空間への水、ほこり等の異物の混入が防止される。キャビネット30Aの内部への異物の混入が防止されるので、キャビネット30Aを介して、室内J1への異物の混入が防止される。
【0049】
次に第2実施形態に係るスピーカー装置1Bについて説明する。図6は、スピーカー装置1Bの断面図である。図7は、スピーカー装置1Bの側面図である。第2実施形態に係るスピーカー装置1Bが第1実施形態に係るスピーカー装置1Aと異なる点は、第2スピーカー20Bの配置が違う点、キャビネット30Bの構成が違う点、及び図8に示される位相制御部85Bによる位相制御が違う点である。第2実施形態の説明において、第1実施形態と異なる点について主に説明する。スピーカー装置1Bは、第1スピーカー10Aと第2スピーカー20Bとを備える。第2スピーカー20Bは、第1実施形態の第2スピーカー20Aと逆向きに配置される。
【0050】
第2スピーカー20Bは、室外J2に対して連通する第1面21と、室外J2に対して連通していない第2面22とを有する。第2スピーカー20Bの第1面21は背面であり、第2面22は放音面である。第2スピーカー20Bの背面は室外J2に連通する。Z方向において、第1スピーカー10Aの背面と、第2スピーカー20Bの背面とが対向する。
【0051】
スピーカー装置1Bは、第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Bを保持するキャビネット30Bを備える。キャビネット30Bは、箱型を成し、第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Bを保持する。キャビネット30Bは、正面板31Aと背面板32Aと側面板33Bと側面板34Aと側面板35Aと側面板36Aとを含む。正面板31A及び背面板32AはZ方向に対向する。側面板33B及び側面板34AはX方向に対向する。側面板33Bには、開口部37Bが形成される。開口部37Bは、Z方向において、第2スピーカー20Bに対応する位置に形成される。X方向から見て、開口部37B内に第2スピーカー20Bの振動板2及び駆動部3が配置される。
【0052】
キャビネット30Bは、第1キャビネット40A、第2キャビネット50B、及び連結部60Bを備える。連結部60Bは、Z方向において、第1キャビネット40Aと第2キャビネット50Bとの間に配置される。連結部60Bは、第1キャビネット40Aと第2キャビネット50Bとを連通する。
【0053】
第1キャビネット40Aは、側面板33Bの第1部分43Aと、側面板34Aの第1部分44Aと、側面板35Aの第1部分45Aと、側面板36Aの第1部分46Aとを含む。
【0054】
側面板33Bの第1部分43A及び側面板34Aの第1部分44AはX方向に対向する。
【0055】
第2キャビネット50Bは、第2スピーカー20Bを保持する。第2キャビネット50Bは、Z方向に対向する内壁板51Bと背面板32Aとを含む。第2キャビネット50Bは、側面板33Bの第2部分53Bと、側面板34Aの第2部分54Bと、側面板35Aの第2部分55Bと、側面板36Aの第2部分56Bとを含む。
【0056】
内壁板51Bには、第2スピーカー20Bを保持する開口部57Bが形成される。開口部57Bを取り囲む周縁部に、第2スピーカー20Bのスピーカーフレーム4が固定される。第2スピーカー20Bの振動板2及び駆動部3は、第2キャビネット50Bの外部に配置される。第2スピーカー20Bは、Z方向において、第1キャビネット40Aの背面板42Aと、第2キャビネット50Bの内壁板51Bとの間に配置される。
【0057】
側面板33Bの第2部分53B及び側面板34Aの第2部分54BはX方向に対向する。側面板35Aの第2部分55B及び側面板36Aの第2部分56BはY方向に対向する。X方向において、内壁板51Bと側面板34Aとの間には、開口部58Bが形成される。
【0058】
連結部60Bは、X方向に対向する内壁板71Bと側面板34Aの第3部分64Bとを含む。連結部60Bの内部空間は、第1キャビネット40Aの内部空間と第2キャビネット50Bの内部空間とに連通する。開口部58Bを通じて、第2キャビネット50Bと連結部60Bとが連通される。開口部47Aを通じて、連結部60Bと第1キャビネット40Aとが連通される。
【0059】
キャビネット30Bの内部空間は、第1キャビネット40Aの内部空間と、第2キャビネット50Bの内部空間と、連結部60Bの内部空間とを含む。キャビネット30Bの内部空間は、閉空間であり、室内J1及び室外J2と連通されていない。第1スピーカー10Aの背面である第2面12と、第2スピーカー20Bの放音面である第2面22とは、キャビネット30Bの内部空間に接する。
【0060】
第2スピーカー20Bの背面側には、室外J2と連通する開放空間J4が形成される。開放空間J4は、開口部37Bを通じて、室外J2に連通する。開放空間J4はZ方向において、第1キャビネット40Aの背面板42Aと、第2キャビネット50Bの内壁板51Bとの間に形成される。
【0061】
開放空間J4は、内壁板71B、内壁板72B及び内壁板73Bによって、キャビネット30Bの内部空間と区切られる。内壁板72B及び内壁板73Bは、Y方向において、第2スピーカー20Bの外側に配置される。内壁板72Bは、Y方向において、側面板35Aに対向する。内壁板73Bは、Y方向において、側面板36Aと対向する。
【0062】
次に図8を参照して第2実施形態に係る音響システム86Bについて説明する。図8は、音響システム86Bのブロック図である。音響システム86Bは、スピーカー装置1B及び位相制御装置80Bを備える。位相制御装置80Bは、制御ユニット81を含む。
【0063】
スピーカー装置1Bに適用される位相制御装置80Bの装置構成は、第1実施形態の位相制御装置80Aの装置構成と同様である。制御ユニット81は、電気信号S1を第1スピーカー10Aに出力し、電気信号S2を第2スピーカー20Bに出力する。
【0064】
処理回路82は、同相となる電気信号S1及び電気信号S2を生成する。これにより、第1スピーカー10Aの振動板2及び第2スピーカー20Bの振動板2は同じ方向に振動する。ここでいう「同じ方向に振動する」とは、第2スピーカー20Bの振動板2が正面側に動く場合は、第1スピーカー10Aの振動板2が正面側に動くことであり、第2スピーカー20Bの振動板2が背面側に動く場合は、第1スピーカー10Aの振動板2が背面側に動くことである。
【0065】
例えば、第2スピーカー20Bの振動板2が正面側に動く場合、第1スピーカー10Aの振動板2は正面側に動く。第2スピーカー20Bの振動板2が正面側に動くと、キャビネット30B内に振動が伝達される。キャビネット30Bにおいて、第2キャビネット50Bの内部空間、連結部60Bの内部空間、及び第1キャビネット40Aの内部空間の順に振動が伝達される。このように、第2スピーカー20Bの振動板2の振動が正面側に動いた場合には、第1キャビネット40Aの内部空間において、第1スピーカー10Aの振動板2に対して、背面側から正面側に振動板2を押し出すように、振動が伝わる。位相制御部85Bは、第1スピーカー10Aの振動板2が背面側から正面側に動くように、電気信号S1を位相制御するので、キャビネット30Bの内部空間において、空気の粗密が抑制される。
【0066】
同様に、例えば、第2スピーカー20Bの振動板2が背面側に動く場合、第1スピーカー10Aの振動板2は背面側に動く。第2スピーカー20Bの振動板2が背面側に動くと、キャビネット30B内に振動が伝達される。キャビネット30Bにおいて、第2キャビネット50Bの内部空間、連結部60Bの内部空間、及び第1キャビネット40Aの内部空間の順に振動が伝達される。このように、第2スピーカー20Bの振動板2の振動が背面側に動いた場合には、第1キャビネット40Aの内部空間において、第1スピーカー10Aの振動板2に対して、背面側に振動板2を引くように、振動が伝わる。位相制御部85Bは、第1スピーカー10Aの振動板2が正面側から背面側に動くように、電気信号S1を位相制御するので、キャビネット30Bの内部空間において、空気の粗密が抑制される。
【0067】
遅延回路84は、電気信号S2に対して電気信号S1を遅延させることができる。遅延回路84は、第2スピーカー20Bから第1スピーカー10Aへ振動の伝達経路に応じて、電気信号S2に対して電気信号S1を遅延させる。ここでいう振動の伝達経路とは、キャビネット30Bの内部における空気を介した振動の伝達経路をいう。遅延回路84は、第2スピーカー20Bの振動が、キャビネット30Bの内部の空気を介して、第1スピーカー10Aに伝達されるタイミングで、第1スピーカー10Aが同じように振動するように、電気信号S1を遅延させる。位相制御部85Bは、第2スピーカー20Bから第1スピーカー10Aに伝達される振動の位相と、第1スピーカー10Aに入力される電気信号S1による振動板2の変位の位相とが同位相となるように、電気信号S1及び電気信号S2を位相制御する。なお、伝達経路を介して伝わる振動が小さい場合には、遅延回路84を省略してもよい。また、キャビネット30Bの容積が小さく、伝達経路が短い場合にも、位相差が起こりにくいため、遅延回路84を省略してもよい。特に、キャビネット30Bの共振周波数が低い(数十~数百Hz)場合には遅延回路84を省略することができる。
【0068】
このような第2実施形態のスピーカー装置1Bにおいても、第1実施形態のスピーカー装置1Aと同様に、キャビネット30Bの内部空間の空気の粗密を抑制するとともに、キャビネット30Bの重心移動を抑制することができる。
【0069】
次に第3実施形態に係るスピーカー装置1Cについて説明する。図9は、スピーカー装置1Cの断面図である。図10は、スピーカー装置1Cの側面図である。スピーカー装置1Cのキャビネット30Cは、第1スピーカー10Bを保持する第1キャビネット40Cと、第2スピーカー20Aを保持する第2キャビネット50Cと、これらの第1キャビネット40Cと第2キャビネット50Cとを連結する連結部60Cとを備える。第1スピーカー10Bは、第1実施形態の第1スピーカー10Aと逆向きに配置される。
【0070】
第1スピーカー10Aの第1面11は放音面であり、第2面12は背面である。第2スピーカー20Aの第1面21は背面であり、第2面22は放音面である。第1スピーカー10Bの放音面は室内J1に連通し、第2スピーカー20Bの背面は室外J2に連通する。Z方向において、第1スピーカー10Bの放音面と、第2スピーカー20Aの放音面とが対向する。スピーカー装置1Cでは、第1スピーカー10Bの背面と、第2スピーカー20Aの放音面とが、キャビネット30Cの内部空間に接する。
【0071】
第1キャビネット40Cは、Z方向に対向する正面板31Cと内壁板42Cとを含む。第1スピーカー10Bは、内壁板42Cの開口部に取り付けられる。第1スピーカー10Bの背面は、Z方向において、正面板31Cと対向する。第2キャビネット50Cは、Z方向に対向する背面板32Cと内壁板51Cとを含む。第2スピーカー20Aは、背面板32Cの開口部に取り付けられる。第2スピーカー20Aの駆動部3は、Z方向において、背面板32Cから外側に張り出す。
【0072】
第1キャビネット40Cと第2キャビネット50Cとの間には、室内J1に連通する連通空間J5が形成される。連通空間J5は、内壁板42Cと内壁板51Cと間に形成される。連通空間J5は、キャビネット30Cの側面板33Cに形成された開口部37Cを通じて、室内J1と連通する。
【0073】
スピーカー装置1Cに適用される位相制御装置80Bの処理回路82は、同相となる電気信号S1及び電気信号S2を生成することができる。遅延回路84は、電気信号S2に対して電気信号S1を遅延させることができる。このような第3実施形態のスピーカー装置1Cにおいても、第2実施形態のスピーカー装置1Bと同様に、キャビネット30Cの内部空間の空気の粗密を抑制するとともに、キャビネット30Cの重心移動を抑制することができる。
【0074】
図11は、第4実施形態に係るスピーカー装置1Dの断面図である。スピーカー装置1Dのキャビネット30Dは、第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Aを保持する。
【0075】
第1スピーカー10Aの第1面11は放音面であり、第2面12は背面である。第2スピーカー20Aの第1面21は背面であり、第2面22は放音面である。第1スピーカー10Aの放音面は室内J1に連通する。第2スピーカー20Aの背面は室外J2に連通する。Z方向において、第1スピーカー10Aの背面と、第2スピーカー20Aの放音面とが対向する。スピーカー装置1Dでは、第1スピーカー10Aの背面と、第2スピーカー20Aの放音面とが、キャビネット30Dの内部空間に接する。
【0076】
スピーカー装置1Dに適用される位相制御装置80Bの処理回路82は、同相となる電気信号S1及び電気信号S2を生成することができる。このような第4実施形態のスピーカー装置1Dにおいても、第1実施形態のスピーカー装置1Aと同様に、キャビネット30Dの内部空間の空気の粗密を抑制することができる。
【0077】
図12は、第5施形態に係るスピーカー装置1Eの断面図である。スピーカー装置1Eのキャビネット30Eは、第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Bを保持する。
【0078】
第1スピーカー10Aの第1面11は放音面であり、第2面12は背面である。第2スピーカー20Bの第1面21は放音面であり、第2面22は背面である。第1スピーカー10Aの放音面は室内J1に連通する空間に接する。第2スピーカー20Bの放音面は室外J2に連通する空間に接する。Z方向において、第1スピーカー10Aの背面と、第2スピーカー20Bの背面とが対向する。スピーカー装置1Eでは、第1スピーカー10Aの背面と、第2スピーカー20Bの背面とが、キャビネット30Dの内部空間に接する。
【0079】
スピーカー装置1Eに適用される位相制御装置80Aの処理回路82は、逆相となる電気信号S1及び電気信号S2を生成する。このような第5実施形態のスピーカー装置1Eにおいても、第1実施形態のスピーカー装置1Aと同様に、キャビネット30Eの内部空間の空気の粗密を抑制することができる。
【0080】
図13は、第6実施形態に係るスピーカー装置1Fの断面図である。図14は、スピーカー装置1Fの側面図である。図15は、図13中のB-B線矢視図である。第6実施形態に係るスピーカー装置1Fが、第2実施形態に係るスピーカー装置1Bと異なる点は、開放空間J6がX方向に連続する点と、Y方向において、第2スピーカー20Bの両側に、それぞれ連結部60Fが設けられる点である。
【0081】
スピーカー装置1Fは、第1スピーカー10Aと第2スピーカー20Bとキャビネット30Fとを備える。キャビネット30Fは、第1スピーカー10Aを保持する第1キャビネット40Aと、第2スピーカー20Bを保持する第2キャビネット50Bと、第1キャビネット40Aと第2キャビネット50Bとを連結する連結部60Fとを有する。
【0082】
スピーカー装置1Fのキャビネット30Fにおいて、X方向に対向する側面板33F及び側面板34Fに開口部37F及び開口部38Fが設けられる。側面板33Fに開口部37Fが設けられ、側面板34Fに開口部38Fが設けられる。開放空間J6は、X方向において、開口部37Fから開口部38Fまで形成される。連結部60Fは、Y方向において、側面板35Fと側面板36Fとの間に形成される。
【0083】
このような第6実施形態のスピーカー装置1Fにおいても、第2実施形態のスピーカー装置1Bと同様に、キャビネット30Fの内部空間の空気の粗密を抑制するとともに、キャビネット30Fの重心移動を抑制することができる。
【0084】
次に第7実施形態に係るスピーカー装置1Gについて説明する。図16は、スピーカー装置1Gの正面図である。図17は、図16中のC-C線矢視図である。図18は、図16中のD-D線矢視図である。図17に示されるスピーカー装置1Gの断面形状は、図2に示される第2実施形態のスピーカー装置1Bの断面形状と同じである。図18に示されるスピーカー装置1Gの断面形状は、図17に示される断面形状を上下反転させたものである。
【0085】
スピーカー装置1Gは、第1スピーカー10Aと第2スピーカー20Bとキャビネット30Gとを備える。キャビネット30Gは、第1スピーカー10Aを保持する第1キャビネット40Gと、第2スピーカー20Bを保持する第2キャビネット50Gと、第1キャビネット40Gと第2キャビネット50Gとを連結する連結部60Gとを有する。
【0086】
キャビネット30Gは、正面板31Gと背面板32Gと側面板33Gとを含む。側面板33Gは、筒状を成すように形成される。側面板33Gは、軸線Z1及び軸線Z2を取り囲むように形成される。
【0087】
連結部60Gは、Z方向において、第1キャビネット40Gと第2キャビネット50Gとの間に形成される。連結部60Gの内部空間は、第1キャビネット40Gの内部空間と、第2キャビネット50Gの内部空間とに連通される。連結部60Gの断面形状は、扇状を成す。
【0088】
側面板33Gには開口部37Gが形成される。第2スピーカー20Bの背面側には、室外J2に連通する開放空間J7が形成される。開放空間J7は、開口部37Gを通じて、室外J2に連通する。開口部37G及び連結部60Gは、側面板33Gの周方向において、交互に配置される。第1キャビネット40G及び第2キャビネット50Gは、例えば3つの連結部60Gによって連結される。
【0089】
このような第7実施形態のスピーカー装置1Gにおいても、第2実施形態のスピーカー装置1Bと同様に、キャビネット30Gの内部空間の空気の粗密を抑制するとともに、キャビネット30Gの重心移動を抑制することができる。
【0090】
スピーカー装置1Gのキャビネット30Gの外形は円形である。スピーカー装置1Gは、スペアタイヤの中央の開口部に装着されてもよい。例えば、車両のトランクルームにおいて、スピーカー装置1Gはスペアタイヤに保持され、第1スピーカー10Aの第1面11が車室内に連通し、第2スピーカー20Bの第1面21が車室外に連通してもよい。
【0091】
次に図19及び図20を参照して、第1スピーカー10Aのモデルにおける音の歪みについて説明する。図19は第1スピーカー10Aのモデルを示す概略図である。図示右側がプラス方向であり、図示左側がマイナス方向である。第1スピーカー10Aの放音面がプラス方向に配置され、背面がマイナス方向に配置される。
【0092】
図20は、図19に示す第1スピーカー10Aのモデルにおける音の歪を示すグラフである。横軸に電気信号を示し、縦軸に振動板2の変位を示す。図20に示されるグラフG1は、第1スピーカー10Aのモデルにおける電気信号と振動板2の変位との関係を示す。スピーカーにおいて、構造上、電気信号に対して、プラス方向とマイナス方向とで振動板2の変位に対称性がない。これが音の歪みであり、2次歪みである。
【0093】
次に、図21及び図22を参照して、同じ向きで配置された第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Aを備えるスピーカー装置91のモデルにおける音の歪みについて説明する。図21は、スピーカー装置91のモデルを示す概略図である。スピーカー装置91では、第1スピーカー10Aの放音面がプラス方向に配置され、背面がマイナス方向に配置される。第2スピーカー20Aの放音面がプラス方向に配置され、背面がマイナス方向に配置される。
【0094】
図22は、図21に示すスピーカー装置91のモデルにおける音の歪を示すグラフである。図22に示されるグラフG2は、第2スピーカー20Aのモデルにおける電気信号と変動板2の変位との関係を示すグラフである。同じ向きに第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Aを配置して、音を出力した場合には、第1スピーカー10Aの振動板2の変位及び第2スピーカー20Aの振動板2の変位において、同じような歪みが現れる。
【0095】
次に、図23及び図24を参照して、逆向きで配置された第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Bを備えるスピーカー装置92のモデルにおける音の歪みについて説明する。図23は、スピーカー装置92のモデルを示す概略図である。スピーカー装置92では、第1スピーカー10Aの放音面がプラス方向に配置され、背面がマイナス方向に配置される。第2スピーカー20Bの放音面がマイナス方向に配置され、背面がプラス方向に配置される。
【0096】
図24は、図23に示すスピーカー装置92のモデルにおける音の歪を示すグラフである。図24に示されるグラフG3は、第2スピーカー20Bのモデルにおける電気信号と振動板2の変位との関係を示すグラフである。スピーカー装置92は、第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Bに対して、逆位相の電気信号S1及び電気信号S2を出力する。この場合のスピーカー装置92による振動板2の変位は、グラフG3のように歪みが軽減される。グラフG3は、プラス方向及びマイナス方向において、0点を中心として対称である。これにより、音質として影響が少ない3次歪みとなる。
【0097】
なお、前述した実施形態は、本開示の代表的な形態を示したに過ぎず、本開示は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加が可能である。
【0098】
前述の実施形態において、室内J1及び室外J2を例示しているが、室内J1及び室外J2は、逆であってもよい。例えば図1に示される第1実施形態において、符号J1で示される方が室外であり、符号J2で示される方が室内でもよい。この場合には、符号10Aで示されるスピーカーが第2スピーカーであり、符号20Aで示されるスピーカーが第1スピーカーである。第2実施形態~第7実施形態においても、室内J1及び室外J2が逆でもよい。
【0099】
スピーカー装置1Aにおいて、第1スピーカー10Aの第2面12が放音面でもよい。この場合、第1スピーカー10Aの背面が室内J1に連通し、放音面が室内J1に連通しない。スピーカー装置1Aにおいて、第1スピーカー10Aの第2面12が放音面であり、第2スピーカー20Aの第2面22が放音面である構成でもよい。スピーカー装置1Aにおいて、第1スピーカー10Aの第2面12が放音面であり、第2スピーカー20Aの第2面22が背面である構成でもよい。スピーカー装置1Aにおいて、第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Aの放音面同士が対向して配置される構成でもよい。
【0100】
前述の実施形態において、第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Aに逆相の音信号を供給しているが、逆相以外の音信号を供給することもできる。前述の実施形態において、第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Bに同相の音信号を供給しているが、同相以外の音信号を供給することもできる。
【0101】
前述の実施形態において、第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Aは、同軸上に配置されているが、第1スピーカー10A及び第2スピーカー20Aの配置は同軸上に限定されない。第1スピーカー10Aの軸線Z1及び第2スピーカーの軸線Z2は平行であり、第1スピーカー10Aの軸線Z1に沿った方向から見た場合、第1スピーカー10Aと第2スピーカー20Aとは重なっていてもよい。
【0102】
第1スピーカー10Aの軸線Z1と、第2スピーカー20Aの軸線Z2とは、平行でなくてもよい。軸線Z1は、軸線Z2に対して傾斜していてもよい。
【0103】
前述の実施形態において、位相制御部85Aは、周波数に応じて、位相制御を変更してもよい。位相制御部84Aは、例えば、周波数が100Hz以下の場合に位相を変更せず、周波数が100Hzを超える場合に位相を逆相とすることができる。
【符号の説明】
【0104】
1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G…スピーカー装置、10A,10B…第1スピーカー、11…第1面、12…第2面、20A,20B…第2スピーカー、21…第1面、22…第2面、30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G…キャビネット、85A,85B…位相制御部、86A,86B…音響システム、J1…室内、J2…室外、Z1…軸線、Z2…軸線。
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