(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】電動式妻引戸の制御方式、制御装置、及び、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
E05F 15/655 20150101AFI20250109BHJP
E05F 15/657 20150101ALI20250109BHJP
E05F 5/00 20170101ALI20250109BHJP
B61D 19/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E05F15/655
E05F15/657
E05F5/00 A
B61D19/02 V
(21)【出願番号】P 2020172591
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2020012766
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 覚
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-174077(JP,A)
【文献】特開2003-262072(JP,A)
【文献】特開平09-095140(JP,A)
【文献】特開2007-138631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F5/00
15/00-15/79
B61D19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式の妻引戸の制御方式であって、
電動力以外の外力によって前記妻引戸が開いたときに制動力を発生させ、該制動力を発生させた状態で、前記妻引戸の状態に関する情報に基づき、前記妻引戸が人力によって開けられたか否かを判定する、
制御方式。
【請求項2】
前記制動力を発生させた状態で、所定時間が経過した時の前記妻引戸の移動量が所定値より大きい場合に前記妻引戸が人力によって開けられたと判定する、
請求項1に記載の制御方式。
【請求項3】
前記制動力を発生させた状態で、所定時間における前記妻引戸の減速量が所定値より小さい場合に前記妻引戸が人力によって開けられたと判定する、
請求項1に記載の制御方式。
【請求項4】
前記所定時間の開始時点は、前記妻引戸の移動量が所定値を超過した時点である、
請求項3に記載の制御方式。
【請求項5】
前記所定時間の開始時点は、前記妻引戸が開いてから一定時間が経過した時点である、
請求項3に記載の制御方式。
【請求項6】
前記制動力を発生させてから所定時間が経過した後も、状態観測部によって推定された力の推定値が所定値より大きい場合に前記妻引戸が人力によって開けられたと判定する、
請求項1に記載の制御方式。
【請求項7】
前記力の推定値に関する所定値は、前記妻引戸を備えた車両が最大カントで停車したときに前記妻引戸に作用する重力の、前記妻引戸の移動方向における分力に相当する値以上である、
請求項6に記載の制御方式。
【請求項8】
前記妻引戸が人力によって開けられたか否かの判定は、前記妻引戸の移動量が所定値を超過した時点、又は、前記妻引戸が開いてから所定時間が経過した時点から開始される、
請求項6又は7に記載の制御方式。
【請求項9】
前記制動力を発生させた状態で、所定時間が経過した時の前記妻引戸の移動量が所定値より大きいという第1条件、
前記制動力を発生させた状態で、所定時間における前記妻引戸の減速量が所定値より小さいという第2条件、及び、
前記制動力を発生させてから所定時間が経過した後も、状態観測部によって推定された力の推定値が所定値より大きいという第3条件、のうちの少なくとも2つが満たされた場合に、前記妻引戸が人力によって開けられたと判定する、
請求項1に記載の制御方式。
【請求項10】
前記第1条件及び前記第2条件の順に2つの条件が満たされた場合、
前記第2条件及び前記第3条件の順に2つの条件が満たされた場合、
前記第1条件及び前記第3条件の順に2つの条件が満たされた場合、又は、
前記第1条件、前記第2条件、及び前記第3条件の順に3つの条件が満たされた場合に、前記妻引戸が人力によって開けられたと判定する、
請求項9に記載の制御方式。
【請求項11】
前記妻引戸が人力によって開けられたか否かを判定する際に用いられる設定値は、前記妻引戸を備えた車両が走行中であるか否か、或いは、前記妻引戸を備えた車両が停車中であるか否かに応じて切り替えられる、
請求項1乃至10の何れかに記載の制御方式。
【請求項12】
前記妻引戸が人力によって開けられたと判定しない場合に、前記妻引戸が人力以外の外力によって開けられたと判定する、
請求項1乃至11の何れかに記載の制御方式。
【請求項13】
前記妻引戸が人力によって開けられたと判定した場合に、電動機によって前記妻引戸を開く、
請求項1乃至12の何れかに記載の制御方式。
【請求項14】
前記妻引戸が人力以外の外力によって開けられたと判定した場合に、電動機によって前記妻引戸を閉じる、
請求項1乃至13の何れかに記載の制御方式。
【請求項15】
前記妻引戸の状態に関する情報は、前記妻引戸の移動量、前記妻引戸の減速量、及び、前記妻引戸に作用する外力の推定値のうちの少なくとも1つである、
請求項1乃至14の何れかに記載の制御方式。
【請求項16】
電動式の妻引戸の制御装置であって、
電動力以外の外力によって前記妻引戸が開いたときに制動力を発生させ、該制動力を発生させた状態で、前記妻引戸の状態に関する情報に基づき、前記妻引戸が人力によって開けられたか否かを判定する、
制御装置。
【請求項17】
電動式の妻引戸の制御プログラムであって、
コンピュータに、
電動力以外の外力によって前記妻引戸が開いたときに制動力を発生させ、該制動力を発生させた状態で、前記妻引戸の状態に関する情報に基づき、前記妻引戸が人力によって開けられたか否かを判定する機能を実現させる、
制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動式妻引戸の制御方式、制御装置、及び、制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両に設置される手動式の妻引戸を全開状態又は全閉状態で保持するための装置が知られている(特許文献1参照。)。この装置は、全開状態又は全閉状態にある妻引戸が車両走行中の遠心力や振動・衝撃等の外力を受けた場合であってもその状態を維持できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の装置は、人が手動で妻引戸を開けるときの負担を軽減できない。妻引戸を動かすための動力源を備えていないためである。また、上述の装置が動力源を備えていたとしても、人が手動で妻引戸を開けるときの負担を適切に軽減することはできない。この装置は、人が手動で妻引戸を開けたことを検知できず、妻引戸を動かすタイミングを適切に制御できないためである。
【0005】
そこで、人が妻引戸を開けたことを検知することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る制御方式は、電動式の妻引戸の制御方式であって、電動力以外の外力によって前記妻引戸が開いたときに制動力を発生させ、該制動力を発生させた状態で、前記妻引戸の状態に関する情報に基づき、前記妻引戸が人力によって開けられたか否かを判定する。
【発明の効果】
【0007】
上述の制御方式は、人が妻引戸を開けたことを検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】妻引戸に関する開扉力、妻引戸の移動量、及び妻引戸の移動速度の推移を示す図である。
【
図4】妻引戸に関する開扉力、妻引戸の移動量、及び妻引戸の移動速度の推移を示す図である。
【
図5】妻引戸に関する開扉力、妻引戸の移動量、及び妻引戸の移動速度の推移を示す図である。
【
図6】妻引戸に関する開扉力、妻引戸の移動量、及び妻引戸の移動速度の推移を示す図である。
【
図7】カントのある線路を通過する鉄道車両内の妻引戸に作用する外力を示す図である。
【
図8A】制御方式の第1実施例の制御ブロック図である。
【
図8B】制御方式の第1実施例の別の制御ブロック図である。
【
図9】制御方式の第1実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
【
図10】制御方式の第2実施例の制御ブロック図である。
【
図11】制御方式の第2実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
【
図12】制御方式の第3実施例の制御ブロック図である。
【
図13】制御方式の第3実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
【
図14】制御方式の第4実施例の制御ブロック図である。
【
図15】制御方式の第4実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
【
図16】制御方式の第5実施例の制御ブロック図である。
【
図17】制御方式の第5実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
【
図18】制御方式の第6実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
【
図19】制御方式の第7実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
【
図20】制御方式の第8実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
【
図21】制御方式の第9実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
【
図22】制御方式の第10実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る電動式の妻引戸SDの制御方式CSについて説明する。
図1は、制御方式CSの概略図である。制御方式CSは、主に、制御装置CD、情報取得装置SR、電動機MR、駆動機構DM、及び妻引戸SDによって構成されている。制御装置CDと情報取得装置SRとを繋ぐ実線は、制御装置CDと情報取得装置SRとが電気的に接続されていることを示す。制御装置CDと電動機MRとを繋ぐ実線についても同様である。電動機MRと駆動機構DMとを繋ぐ二重線は、電動機MRと駆動機構DMとが機械的に連結されていることを示す。駆動機構DMと妻引戸SDとを繋ぐ二重線についても同様である。
【0010】
制御装置CDは、CPU、揮発性記憶装置、及び不揮発性記憶装置等を備えたマイクロコンピュータである。制御装置CDは、例えば、不揮発性記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによって各種機能を実現するように構成されている。
【0011】
情報取得装置SRは、妻引戸SDに関する情報を取得するように構成されている。情報取得装置SRは、例えば、妻引戸SDの位置を測定するためのセンサである。妻引戸SDの位置を測定するためのセンサは、例えば、電動機MRの動きを検出するエンコーダである。エンコーダは、電動機MRとしての回転モータの回転軸の回転位置(回転角度)を検出するロータリエンコーダであってもよく、電動機MRとしてのリニアモータの可動部の位置を検出するリニアエンコーダであってもよい。情報取得装置SRは、妻引戸SDが全閉位置にあることを検知するためのセンサ、電動機MRに供給される電流を測定するセンサ、及び、電動機MRに供給される電圧を測定するセンサ等の少なくとも1つを含んでいてもよい。但し、妻引戸SDが全閉位置にあることを検知するためのセンサは、妻引戸SDが開けられたか否かを検知するように構成されていてもよい。妻引戸SDが全閉位置にあることを検知するためのセンサは、例えば、リミットスイッチ等の接触式センサである。但し、妻引戸SDが全閉位置にあることを検知するためのセンサは、近接センサ等の非接触式センサであってもよい。
【0012】
電動機MRは、電気エネルギを力学的エネルギに変換するように構成されている。電動機MRは、例えば、回転モータ又はリニアモータ等である。
【0013】
駆動機構DMは、電動機MRが発生させた力学的エネルギを利用して妻引戸SDを動かすことができるように構成されている。駆動機構DMは、例えば、ボールネジ機構、ラックピニオン機構、又はリニアモータによる直接駆動機構等である。
【0014】
妻引戸SDは、鉄道車両の車両間に構成される貫通路を仕切るための妻面に設置される扉である。妻引戸SDは、両開式であってもよく、片開式であってもよい。
【0015】
妻引戸SDは、鉄道車両の側面に設置される乗降用の扉である側引戸とは異なる。電動式の側引戸には、鉄道車両の走行中に開いてしまうのを確実に防止するため、全閉状態の側引戸を機械的にロックする施錠装置が設けられている。電動機MR等が発生させた力学的エネルギを利用して側引戸の全閉状態を保持するだけでは、振動又は衝撃等によって側引戸が開いてしまうのを完全には防止できないためである。この施錠装置により、側引戸は、如何なる振動及び衝撃等によっても開かないように構成され、鉄道車両の走行中に乗客等が開状態の側引戸から転落してしまうのを確実に防止できるようにしている。
【0016】
一方、妻引戸SDは、空調による車内環境の維持、又は、車外騒音の侵入防止等のために、基本的には全閉状態で保持され、人が通り抜ける間だけ開状態となるように構成されている。また、他車両で発生した火災等による煙又は有毒ガスの流入を防ぐためにも、妻引戸SDは、基本的には全閉状態で保持され、人が通り抜ける間だけ開状態となるように構成されている。
【0017】
なお、日本では、2004年12月27日付で通知された"鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準の一部改正について"によって、妻引戸SDの全開状態を保つための止め金具の設置が禁止されている。
【0018】
このように、妻引戸SDは、基本的には全閉状態となるように、且つ、鉄道車両の走行中であっても人が通り抜ける間は開状態となるように構成されている。そのため、妻引戸SDは、鉄道車両の走行中には、振動、衝撃、又は、鉄道車両が線路の曲線部を通過するときに発生する遠心力等に起因する外力を受けて開いてしまうおそれがある。また、妻引戸SDは、鉄道車両の停止中であっても、線路の曲線部に設けられたカントによって鉄道車両が傾いているときには、重力に起因する外力を受けて開いてしまうおそれがある。なお、「カント」は、線路の曲線部に敷設された一対のレールのそれぞれの上面の間に設定される高低差であり、曲線部を通過する鉄道車両に加わる遠心力を相殺することで鉄道車両が安全に走行できるようにするために設けられている。
【0019】
そのため、本実施形態では、妻引戸SDは、人力以外の外力を受けたときには、全閉状態が維持されるように構成される。なお、「外力」は、電動力以外の力であり、「人力」は、人が妻引戸SDを開ける際に妻引戸SDに加える外力である。また、「電動力」は、電動機MRが発生させる力である。
【0020】
妻引戸SDを全閉状態で保持する手段としては、側引戸を全閉状態で保持するために用いられる施錠機構と同様の施錠機構を設けることが考えられる。しかしながら、妻引戸が設けられる貫通路は、緊急時に車両間を移動するための避難通路となり得る。そのため、妻引戸SDを全閉状態で保持する手段として施錠機構を採用することは、安全性の観点から適切でない。施錠機構の不具合等で妻引戸SDを開けることができない事態に陥る可能性があるためである。
【0021】
したがって、妻引戸SDは、バネ等を利用した機械的なラッチ機構等、定常的な保持力を発生させる保持機構によって全閉状態で保持されるとともに、その保持力を超える外力が加わった場合には保持機構による保持から解放されて開くように構成される。
【0022】
また、妻引戸SDは、人が手動(人力)で妻引戸SDを開けようとしていることが検知された場合に、電動力によって自動的に開くように構成されている。なお、妻引戸SDは、人が手動(人力)で妻引戸SDを開けようとしていることが検知された場合に加え、妻引戸SDの近くに設置された押しボタンスイッチが押された場合、或いは、妻引戸SDの近くに設置された赤外線センサ等の人検知手段により妻引戸SDへの人の接近が検知された場合に、電動力によって自動的に開くように構成されていてもよい。
【0023】
但し、機械的なラッチ機構を用いて妻引戸SDの全閉状態を保持するだけでは、妻引戸SDは、ラッチ機構による保持力を超える外力が加えられた場合に不必要に開いてしまう。この場合、ラッチ機構による保持力を超える外力は、例えば、鉄道車両の走行中の振動、衝撃、又は、鉄道車両が線路の曲線部を通過するときに発生する遠心力等に起因する。
【0024】
妻引戸SDが不必要に開いてしまうのを抑制するために保持力が増強されてもよいが、保持力が過度に強くなってしまうと、例えば電源が故障した場合等、電動機MRが利用できない場合に、手動(人力)によって妻引戸SDを開くことが困難になってしまう。これは、安全性の観点から好ましくない。妻引戸SDは隣接車両への避難経路ともなり得るためである。
【0025】
このため、ラッチ機構による保持力は、電源喪失時の手動開扉を妨げないレベルとされる。そして、そのレベルを超える外力によって妻引戸SDが開いてしまった場合には、妻引戸SDは、電動力によって閉じられる。このように構成することで、電動式の妻引戸SDの制御方式CSは、ラッチ機構による保持力が必要以上に強くなることを回避できる。
【0026】
電動式の妻引戸SDの制御方式CSは、妻引戸SDが電動力によらずに外力によって開けられたことを検知した場合、妻引戸SDが人力によって開けられたのか、或いは、人力以外の外力によって開けられたのかを判定するように構成される。そして、望ましくは、制御方式CSは、特別なセンサ又はスイッチ等を用いることなく、電動機MRの制御の際に利用される情報を用いることによって、妻引戸SDが人力によって開けられたのか、或いは、人力以外の外力によって開けられたのかを判定するように構成される。ここでは、「電動機MRの制御」は、例えば、妻引戸SDの開閉のための制御である。また、「特別なセンサ又はスイッチ等」は、例えば、人が妻引戸SDを開けようとしていることを認識するための画像を取得するカメラ等の画像センサ、妻引戸SDへの人の接近を検知する赤外線センサ、妻引戸SDを開けるための開指令を発生させるための押しボタンスイッチ、又は、妻引戸SDの取っ手に人の手が触れたことを検知するための静電スイッチ等である。但し、制御方式CSは、「特別なセンサ又はスイッチ等」の設置を排除しない。
【0027】
制御方式CSは、妻引戸SDが開けられたか否かを検知するためのリミットスイッチ又は近接センサ等を用いる代わりに、妻引戸SDの位置を測定するためのセンサの出力に基づき、妻引戸SDが電動機MRの制御によらずに開扉したことを判定するように構成されていてもよい。或いは、制御方式CSは、妻引戸SDが人力によって開けられたのか、或いは、人力以外の外力によって開けられたのかを判定するように構成されていてもよい。
【0028】
また、制御方式CSは、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定した場合に、閉扉動作を起動するように構成される。閉扉動作は、電動力によって妻引戸SDを閉じる動作である。例えば、制御方式CSは、電動機MRが発生させる力によって駆動機構DMを動作させ、妻引戸SDが全閉状態になるまで妻引戸SDを閉方向に移動させる。
【0029】
また、制御方式CSは、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定した場合に、開扉動作を起動するように構成される。開扉動作は、電動力によって妻引戸SDを開ける動作である。例えば、制御方式CSは、電動機MRが発生させる力によって駆動機構DMを動作させ、妻引戸SDが全開状態になるまで妻引戸SDを開方向に移動させる。
【0030】
次に、妻引戸SDに加わる開扉力について説明する。妻引戸SDに加わる開扉力は、妻引戸SDを開けようとする力であり、主に、人力に基づく開扉力、振動又は衝撃に基づく開扉力、鉄道車両が線路の曲線部を通過するときに発生する遠心力に基づく開扉力、及び、曲線部に設けられたカントによって鉄道車両が傾いているときの、妻引戸SDに作用する重力の、妻引戸SDの開方向における分力に基づく開扉力(以下、「重力に基づく開扉力」とする。)等がある。
【0031】
人力に基づく開扉力は、典型的には、保持機構による保持から妻引戸SDを解放し、且つ、妻引戸SDを開方向に移動させようとする意思を有する人によって、妻引戸SDに継続的に適用される外力である。人力に基づく開扉力の大きさは、妻引戸SDを開けようとする各人によって異なる。
【0032】
振動又は衝撃に基づく開扉力は、典型的には、人力に基づく開扉力が妻引戸SDに適用される期間よりも短い期間に亘って妻引戸SDに適用される外力である。振動又は衝撃に基づく開扉力は、人力に基づく開扉力よりも顕著に大きい場合もあるが、その適用期間は、長くとも数百ミリ秒程度である。
【0033】
遠心力に基づく開扉力、及び、重力に基づく開扉力は、典型的には、鉄道車両の運転状況等により、長時間に亘って継続する場合もあり得るが、その大きさはあまり大きくない。すなわち、遠心力に基づく開扉力、及び、重力に基づく開扉力は、典型的には、振動又は衝撃に基づく開扉力よりも長時間に亘って継続する場合もあり得るが、その大きさは、人力に基づく開扉力よりも小さく、且つ、振動又は衝撃に基づく開扉力よりも小さい。
【0034】
妻引戸SDに加わる各開扉力の上述のような特徴を利用し、制御方式CSは、妻引戸SDが外力によって開けられた場合の運動力学的な挙動に基づき、妻引戸SDが人力によって開けられたのか、或いは、人力以外の外力によって開けられたのかを判定できる。そして、制御方式CSは、例えば、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定した場合、電動機MRによって妻引戸SDを自動的に開け、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定した場合は、電動機MRによって妻引戸SDを自動的に閉めて全閉状態を保つ。
【0035】
この場合、制御方式CSは、例えば、エンコーダ等の情報取得装置SRによって所定周期で繰り返し取得される、妻引戸SDの開方向における妻引戸SDの状態に関する情報を、直接測定可能な状態量として利用する。直接測定可能な状態量は、例えば、妻引戸SDの開方向における妻引戸SDの位置、速度、加速度、又は移動量等である。妻引戸SDの速度は、妻引戸SDの位置を微分することによって導き出されてもよく、妻引戸SDの加速度は、妻引戸SDの速度を微分することによって導き出されてもよい。妻引戸SDの移動量は、第1時点での妻引戸SDの位置と第2時点での妻引戸SDの位置と間の差として導き出されてもよい。また、制御方式CSは、例えば、妻引戸SDを保持し或いは動かすための電動力を発生させる電動機MRの出力を制御する。
【0036】
例えば、回転モータによって妻引戸SDが駆動される構成では、妻引戸SDの状態に関する情報は、回転モータの回転軸の回転位置(回転角度)、回転速度(回転角速度)、回転加速度(回転角加速度)、又は累積回転角度等である。或いは、リニアモータによって妻引戸SDが駆動される構成では、妻引戸SDの状態に関する情報は、リニアモータの可動部の位置、移動速度、移動加速度、又は累積移動距離等である。妻引戸SDの位置、移動速度、移動加速度、又は累積移動距離等は、電動機MRの可動部の位置、移動速度、移動加速度、又は累積移動距離等から間接的に導き出され得るためである。
【0037】
次に、
図2を参照し、制御方式CSによって実現される支援処理について説明する。支援処理は、人が妻引戸SDを開けるのを支援する処理である。
図2は、支援処理のフローチャートである。
図2に示す例では、支援処理は、妻引戸SDが全閉状態のときに実行される。
【0038】
制御方式CSは、最初に、妻引戸SDが電動力によらずに外力によって開けられたか否かを判定する(ステップST1)。
図2に示す例では、制御方式CSは、妻引戸SDに設置されたリミットスイッチの出力に基づいて妻引戸SDが開けられたか否かを判定する。なお、リミットスイッチは、例えば、妻引戸SDの戸袋内に設置されていてもよく、妻引戸SDの戸袋外に設置されていてもよい。
【0039】
そして、制御方式CSは、妻引戸SDが開けられたと判定した場合(ステップST1のYES)、制動力を発生させる(ステップST2)。制動力は、妻引戸SDの移動速度を減速するための力である。
図2に示す例では、制動力は、電動機MRによって加えられる。但し、制動力は、電動機MR以外のアクチュエータによって加えられてもよい。
【0040】
その後、制御方式CSは、妻引戸SDが人力によって開けられたか否かを判定する(ステップST3)。
図2に示す例では、制御方式CSは、制動力が妻引戸SDに加えられた状態で妻引戸SDが外力によって開けられた場合における妻引戸SDの運動力学的な挙動を測定する。そして、制御方式CSは、測定した妻引戸SDの運動力学的な挙動に基づいて妻引戸SDが人力によって開けられたのか否かを判定する。
【0041】
制動力を発生させた上で判定を行う理由は、制動力を加えることで妻引戸SDの運動力学的な挙動にメリハリがつき、以降の判定が容易になるからである。具体的には、妻引戸SDに制動力が加えられていない状態、すなわち、妻引戸SDが自由に移動可能な状態では、妻引戸SDが何れの外力によって開けられたのかを判定する前に、人力以外の外力によって妻引戸SDが全開されてしまうおそれがあるためである。或いは、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定できた場合であっても、そのときには既に妻引戸SDが全開状態になってしまっているおそれがあるためである。言い換えれば、妻引戸SDが開いたときに制動力を加えなければ、制御方式CSは、人力以外の外力によって妻引戸SDが全開状態になってしまうのを防止できないためであり、また、人が妻引戸SDを開けるのを適時に支援することができないためである。
【0042】
なお、制御方式CSは、測定した妻引戸SDの運動力学的な挙動と、電動機MRの制御に関する情報とに基づいて妻引戸SDが人力によって開けられたのか、或いは、人力以外の外力によって開けられたのかを判定してもよい。電動機MRの制御に関する情報は、例えば、後述の推力指令値f*又は推力実際値f等である。
【0043】
そして、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定した場合(ステップST3のYES)、制御方式CSは、電動機MRによる開扉動作を開始させる(ステップST4)。但し、制御方式CSは、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定した場合、電動機MRによる開扉動作を開始させることなく、制動力を解除するだけであってもよい。
【0044】
妻引戸SDが人力によって開けられたとは判定できない場合(ステップST3のNO)、制御方式CSは、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定し、電動機MRによる閉扉動作を開始させる(ステップST5)。但し、制御方式CSは、妻引戸SDが人力によって開けられたとは判定できない場合、電動機MRによる開扉動作を開始させることなく、支援処理を終了させてもよい。
【0045】
次に、
図3~
図6を参照し、妻引戸SDの運動力学的な挙動の例について説明する。
図3~
図6は、それぞれ、妻引戸SDに加わる開扉力、妻引戸SDの移動量、及び、妻引戸SDの移動速度の時間的推移を示す。具体的には、
図3~
図6のそれぞれは、時間軸としての横軸と、開扉力、移動量、及び移動速度に対応する縦軸とを有する。そして、
図3~
図6のそれぞれは、開扉力の推移を実線で表し、移動量の推移を一点鎖線で表し、移動速度の推移を二点鎖線で表している。
【0046】
振動又は衝撃に基づく開扉力が制動力より小さく且つその継続時間が比較的短い場合(以下、「第1の場合」とする。)、妻引戸SDは、
図3の二点鎖線で示すように、その開扉力の大きさと妻引戸SDの慣性とに基づいて決まる初速度で開き始めるが、制動力によって短時間で停止する。
図3に示す例では、妻引戸SDは、時点t0で開き始め、時点t1で停止している。妻引戸SDが開いてから停止するまでの妻引戸SDの移動量L1は大きくない。
【0047】
振動又は衝撃に基づく開扉力が制動力以上であり且つその継続時間が比較的短い場合(以下、「第2の場合」とする。)、妻引戸SDは、
図4の二点鎖線で示すように、その外力の大きさと妻引戸SDの慣性とに基づいて決まる初速度で開き始める。その後、妻引戸SDは、制動力によって減速するが、
図3の場合に比べて初速度が大きいため、停止するまでにある程度の時間を要する。
図4に示す例では、妻引戸SDは、時点t0で開き始め、時点t1で停止している。妻引戸SDが開いてから停止するまでの妻引戸SDの移動量は、
図3に示す移動量L1よりも顕著に大きい。なお、
図4に示す例では、妻引戸SDの加速は、妻引戸SDが開けられた直後に終了している。
【0048】
振動又は衝撃に基づく開扉力が制動力より小さく且つその継続時間が比較的長い場合(以下、「第3の場合」とする。)、妻引戸SDは、
図5の二点鎖線で示すように、制動力の大きさがその開扉力の大きさを上回るまでは加速し続け、制動力の大きさが開扉力の大きさを上回ると減速に転じる。しかしながら、妻引戸SDは、
図3及び
図4のそれぞれにおけるような短時間で停止することはなく、停止するまでに比較的長い時間を要する。
【0049】
振動又は衝撃に基づく開扉力が制動力以上であり且つその継続時間が比較的長い場合(以下、「第4の場合」とする。)、妻引戸SDは、
図6の二点鎖線で示すように、制動力の大きさがその開扉力の大きさを上回るまでは加速し続ける。
図6に示す例では、開扉力は、一過性の外力であるため、
図6の実線で示すように、そのピークを過ぎると減少に転じ、やがて消滅する。
【0050】
なお、
図3~
図6のそれぞれに示す例では、振動又は衝撃に基づく開扉力が一過性の外力であるため、妻引戸SDは、開方向に移動した後で、全開位置に達することなく停止する。しかしながら、人力に基づく開扉力が制動力よりも大きい場合、妻引戸SDは、典型的には、少なくとも人が通り抜けることができる程度に開くまでは開方向に移動し続ける。人力に基づく開扉力は、基本的には、その人が妻引戸SDを開けようとしている限り、制動力よりも大きい状態で維持されるためである。
【0051】
次に、
図7を参照し、遠心力に基づく開扉力fcent、及び、重力に基づく開扉力fcantについて説明する。
図7は、カントのある線路を通過する鉄道車両内に設置された妻引戸SDに作用する外力を示す図であり、鉄道車両が利用するレールRL及び枕木RTのそれぞれの断面を含む。具体的には、
図7は、カント値がゼロのときのレールRL及び枕木RTの状態を点線で表し、カント値がゼロでないときのレールRL及び枕木RTの状態を実線で表している。また、
図7は、カント値がゼロでない線路の上にある鉄道車両(図示せず。)の内部に設置された妻引戸SDを模式的に示している。
【0052】
鉄道車両が曲線部を通過する際、鉄道車両の枕木方向において妻引戸SDに加わる力fc(図示せず。)は、遠心力に基づく開扉力fcent、及び、重力に基づく開扉力fcantを用いて下記の式で表される。なお、「枕木方向」は、鉄道車両の進行方向に垂直で且つレール平面に平行な方向である。
【0053】
【数1】
上記の式において、mは妻引戸SDの質量を表し、vは鉄道車両の走行速度を表し、rは曲線部の曲線半径を表し、gは重力加速度を表し、g
Lは重力加速度の開方向成分を表し、Lgaugeは軌間(レールRLの幅)を表し、Lcantはカント値を表す。
【0054】
上記の式から明らかなように、妻引戸SDに加わる力fcは、曲線部の曲線半径r若しくはカント値Lcant等の線路(軌道)側の条件、又は、鉄道車両の走行速度vによって大きく変動する。
【0055】
鉄道車両が曲線部に停止している場合(以下、「第5の場合」とする。)、遠心力に基づく開扉力fcentはゼロであるため、妻引戸SDに加わる力fcは、fc = fcent - fcant = -fcantとなる。
【0056】
例えば、ある鉄道事業者の場合、軌間Lgaugeが1435mmの標準ゲージにおいてカント値Lcantの最大値は200mm程度である。この場合、妻引戸SDの質量mが40kgであれば、妻引戸SDに加わる力fcの大きさ(絶対値)|fc|は、下記の式で示すように、60N未満である。
【0057】
【数2】
このとき、妻引戸SDに加わる力fcの継続時間は長時間に亘る可能性があるが、その大きさは一定である。そのため、妻引戸SDに加わる力fc以上の制動力が加わると、一旦開いた妻引戸SDは減速し、やがて停止する。
【0058】
鉄道車両が比較的低速で曲線部を通過する場合(以下、「第6の場合」とする。)、遠心力に基づく開扉力fcent、及び、重力に基づく開扉力fcantは、振動又は衝撃に基づく開扉力に比べ、長時間に亘って作用し続ける。しかしながら、遠心力に基づく開扉力fcentの大きさは、重力に基づく開扉力fcantの大きさと同等或いはそれ以下である。また、遠心力に基づく開扉力fcentと重力に基づく開扉力fcantとは互いに逆向きである。そのため、両者の合力である力fcの大きさ(絶対値)は、カント値が最大のときの重力に基づく開扉力fcantの大きさ以下である。そのため、第6の場合においても、制動力が加わると、一旦開いた妻引戸SDは減速し、やがて停止する。
【0059】
鉄道車両が比較的高速で曲線部を通過する場合(以下、「第7の場合」とする。)、遠心力に基づく開扉力fcent、及び、重力に基づく開扉力fcantのそれぞれの継続時間は、振動又は衝撃に基づく開扉力の継続時間との比較の観点では、鉄道車両が比較的低速で曲線部を通過する場合とほぼ同等であると考えられる。すなわち、第7の場合における、遠心力に基づく開扉力fcent、及び、重力に基づく開扉力fcantのそれぞれの継続時間は、鉄道車両が比較的低速で曲線部を通過する場合と同様に、振動又は衝撃に基づく開扉力の継続時間よりも顕著に長い。
【0060】
また、第7の場合における、遠心力に基づく開扉力fcent、及び、重力に基づく開扉力fcantのそれぞれの大きさは、鉄道車両の走行速度v、曲線部の曲線半径r、又はカント値Lcantによって大きく変動し得るが、乗客の安全性及び乗り心地等の観点から、一定の範囲内に抑えられる必要がある。そのため、両者の合力である力fcの大きさ(絶対値)は、実際的には、カント値が最大のときの重力に基づく開扉力fcantの大きさと同等或いはそれ以下である。なお、この場合の力fcの向きは、遠心力に基づく開扉力fcentの向きと同じである。そのため、第7の場合においても、制動力が加わると、一旦開いた妻引戸SDは減速し、やがて停止する。
【0061】
ここで再び
図1を参照し、電動式の妻引戸SDの制御方式CSが利用可能な動力学的な情報について説明する。制御方式CSが利用可能な動力学的な情報は、電動機MRとして回転モータが採用される場合には、回転モータの回転軸の回転位置(回転角度)を検出するロータリエンコーダから得られる情報を含む。
【0062】
一般にデジタル制御を行うシステムで使用されるロータリエンコーダは、回転モータの回転軸と共に回転するエンコーダ回転部の回転数に比例した周波数を有するパルス信号を出力する。
【0063】
このようなシステムは、典型的には、パルス信号の周期を算出してその逆数から回転角速度を算出し、或いは、所定時間内に出力されたパルス信号のパルス数をカウントして回転角速度の検出値とする。
【0064】
しかしながら、制御方式CSは、全閉状態(回転モータの回転軸が静止した状態)から動き始める妻引戸SD、すなわち、低速で回転する回転モータを制御対象としている。特に、妻引戸SDが動き始めるときは、回転モータの回転角速度は極めて低く、ロータリエンコーダが出力するパルス信号の周波数も極めて低いため、検出値の精度が低い、或いは、検出遅れが非常に大きいという問題がある。電動機MRとしてリニアモータが採用される場合についても同様である。
【0065】
そこで、制御方式CSは、妻引戸SDが人力によって開けられたか否かを判定するための条件の基礎となる物理量を適宜組み合わせて使用するように構成されている。
【0066】
具体的には、制御方式CSは、上述のような外力(開扉力)の特徴に基づき、以下に示すような3つの条件のうちの少なくとも1つが満たされた場合に、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定する。この場合、制御方式CSは、閉扉動作を開始させてもよい。また、制御方式CSは、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定できない場合に、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定してもよい。この場合、制御方式CSは、開扉動作を開始させてもよい。例えば、制御方式CSは、3つの条件の全てが満たされた場合に、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定し、閉扉動作を開始させて妻引戸SDを全閉状態にしてもよい。また、制御方式CSは、所定時間内に何れの条件も満たされなかった場合に、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定し、開扉動作を開始させて妻引戸SDを全開状態にしてもよい。
【0067】
第1の条件は、「制動力の発生後に所定時間D1が経過しても、妻引戸SDの移動量が所定値Ltに達していないこと」である。制御方式CSは、第1の条件が満たされたか否かを判定することによって、上述の第1、第5、及び第6の場合のそれぞれにおいて、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたか否かを判定できる。
【0068】
第2の条件は、「制動力の発生後の所定時間D2における減速度が所定値DCtより大きいこと」である。制御方式CSは、第2の条件が満たされたか否かを判定することによって、上述の第2、第6、及び第7の場合のそれぞれにおいて、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたか否かを判定できる。
【0069】
第3の条件は、「制動力の発生後に開扉力の推定値が所定時間D3に亘って所定値Ft以下となったこと」である。制御方式CSは、第3の条件が満たされたか否かを判定することによって、上述の第3、第4、第6、及び第7の場合のそれぞれにおいて、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたか否かを判定できる。
【0070】
そして、制御方式CSは、制動力の発生後に所定時間D4が経過しても、第1~第3の条件が何れも満たされない場合には、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定できる。
【0071】
なお、制御方式CSは、所定時間D1~D4、移動量としての所定値Lt、減速度としての所定値DCt、及び、開扉力の推定値としての所定値Ft等の各数値が小さいほど、様々な判定をより早期に行うことができる。様々な判定は、例えば、妻引戸SDが開けられたか否かの判定、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられた否かの判定、及び、妻引戸SDが人力によって開けられたか否かの判定等である。すなわち、制御方式CSは、各数値が小さいほど、妻引戸SDが僅かに開けられた段階で、妻引戸SDが人力によって開けられたか否かを判定でき、開扉動作をより早期に開始させることによって妻引戸SDを開けようとする人の負担をより効果的に軽減できる。
【0072】
しかしながら、制御方式CSは、各数値が小さいほど、より高い頻度で、実際には妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたにもかかわらず、妻引戸SDが人力によって開けられたと誤判定してしまうおそれがある。
【0073】
一方、重力に基づく開扉力、及び、人力に基づく開扉力は、鉄道車両が走行中であるか否かにかかわらず妻引戸SDに作用するが、振動又は衝撃に基づく開扉力、及び、遠心力に基づく開扉力は、基本的には、鉄道車両が走行中である場合にのみ、妻引戸SDに作用する。
【0074】
したがって、制御方式CSは、鉄道車両が停車中であることを検知できれば、鉄道車両が走行中であるときに用いられた各数値の大きさよりも各数値の大きさを小さくすることによって、妻引戸SDを開けようとする人の負担をより効果的に軽減できる。各数値の大きさを小さくしても、誤判定の頻度が高くなることはないためである。
【0075】
反対に、制御方式CSは、鉄道車両が走行中であることを検知できれば、鉄道車両が停車中であるときに用いられた各数値の大きさよりも各数値の大きさを大きくすることによって、上述のような誤判定を防止できる。そして、制御方式CSは、誤判定を防止することにより、妻引戸SDが人力によって開けられているにもかかわらず、閉扉動作を開始させてしまったり、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられているにもかかわらず、開扉動作を開始させてしまったりするのを防止できる。
【0076】
なお、鉄道車両が走行中であるか停車中であるかを表す情報は、鉄道車両においては極めて基本的な情報である。そのため、制御方式CSは、どのような状況においても、そのような基本的な情報を容易に利用することができる。
【0077】
上述のような構成により、制御方式CSは、妻引戸SDを全閉状態で保持するための保持機構による保持力を小さくすることによって、手動で妻引戸SDを開けようとする人の負担を軽減でき、妻引戸SDの利用者の利便性を高めることができる。その上で、制御方式CSは、妻引戸SDが人力によって開けられたか否かをより正確に判定できる。そのため、制御方式CSは、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定した場合には、開扉動作によって妻引戸SDを自動的に開けることができる。したがって、制御方式CSは、妻引戸SDを開けようとする人の負担を更に軽減でき、妻引戸SDの利用者の利便性を更に高めることができる。
【0078】
また、制御方式CSは、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたか否かをより正確に判定できる。そのため、制御方式CSは、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定した場合には、閉扉動作によって妻引戸SDを自動的に閉めることができる。
【0079】
また、制御方式CSは、特別なセンサ又はスイッチ等を新たに設けることなく、妻引戸SDが人力によって開けられたか否かを判定できる。そして、制御方式CSは、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定した場合には、開扉動作によって妻引戸SDを自動的に開けることができる。
【0080】
また、制御方式CSは、エンコーダが発するパルス信号に基づいて妻引戸SDの状態に関する情報を検出するデジタル制御を利用して上述の機能を実現する場合、妻引戸SDの移動速度を複数の段階に分け、各段階に適した物理量を用いて種々の判定を行ってもよい。
【0081】
例えば、制御方式CSは、妻引戸SDの移動速度(電動機MRの回転軸の回転速度)が低い初期段階では、パルス信号のパルス数の積算値から導き出される位置検出値に基づき、妻引戸SDが人力によって開けられたか否か等の判定を行ってもよい。
【0082】
また、制御方式CSは、妻引戸SDの移動速度(電動機MRの回転軸の回転速度)が増加して精度の高い速度検出値(位置検出値の時間微分値)が得られるようになった段階では、速度検出値に基づき、妻引戸SDが人力によって開けられたか否か等の判定を行ってもよい。
【0083】
また、制御方式CSは、妻引戸SDの移動速度(電動機MRの回転軸の回転速度)が更に増加して精度の高い加速度検出値(速度検出値の時間微分値)が得られるようになった段階では、加速度検出値から導き出される外力推定値に基づき、妻引戸SDが人力によって開けられたか否か等の判定を行ってもよい。
【0084】
また、制御方式CSは、位置検出値に基づく判定と、速度検出値に基づく判定と、外力推定値に基づく判定とを順に実行し、その全てにおいて妻引戸SDが人力によって開けられたと判定できた場合に、妻引戸SDが人力によって開けられたと最終判定してもよい。
【0085】
或いは、制御方式CSは、位置検出値に基づく判定と、速度検出値に基づく判定とを順に実行し、双方において妻引戸SDが人力によって開けられたと判定できた場合に、妻引戸SDが人力によって開けられたと最終判定してもよい。位置検出値に基づく判定と外力推定値に基づく判定とを順に実行する場合、或いは、速度検出値に基づく判定と外力推定値に基づく判定とを順に実行する場合についても同様である。
【0086】
また、制御方式CSは、鉄道車両が走行中であるか否かを表す情報に基づき、鉄道車両が停車中であるか否かを検知してもよい。そして、制御方式CSは、振動又は衝撃に基づく開扉力の影響のない停車中であることが検知できた場合には、種々の判定に用いられる閾値等の数値を、鉄道車両が走行中である際に用いられる数値とは別の数値に切り替えてもよい。種々の判定は、例えば、妻引戸SDが人力によって開けられたか否かの判定、及び、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたか否かの判定等を含む。この構成により、制御方式CSは、利用者が手動で妻引戸SDを開ける際の妻引戸SDの操作性を更に向上させることができる。
【0087】
次に、
図8Aを参照し、制御方式CSの第1実施例について説明する。
図8Aは、制御方式CSの第1実施例の制御ブロック図である。
図8Aに示す例では、制御方式CSは、主に、シーケンス制御部1、速度パターン発生部2、速度調節部3、推力調節部4、インバータ制御部5、電流/推力変換部6、回転モータ7、エンコーダ8、戸閉スイッチ9、速度検出部10、位置検出部11、移動量検出部12、駆動機構DM、及びインバータIVで構成されている。
【0088】
シーケンス制御部1は、妻引戸SDの開閉のためのシーケンス制御を行うように構成されている。
図8Aに示す例では、シーケンス制御部1は、妻引戸SDの開閉指令a及び妻引戸SDの位置情報s等に基づいて制御指令bを生成するように構成されている。
【0089】
開閉指令aは、例えば、妻引戸SDの近くに設置された押しボタンスイッチの1つである開ボタンスイッチが押されたときに開ボタンスイッチが出力する開指令、又は、押しボタンスイッチの別の1つである閉ボタンスイッチが押されたときに閉ボタンスイッチが出力する閉指令等である。
【0090】
位置情報sは、エンコーダ8が出力するパルス信号pに基づいて位置検出部11が検出する妻引戸SDの状態に関する情報である。
【0091】
制御指令bは、例えば、妻引戸SDの移動方向、又は、目標位置までの移動量等に関する指令である。目標位置は、例えば、妻引戸SDの移動方向が開方向の場合における全開位置、又は、妻引戸SDの移動方向が閉方向の場合における全閉位置等である。
【0092】
速度パターン発生部2は、速度指令値v*を生成するように構成されている。
図8Aに示す例では、速度パターン発生部2は、シーケンス制御部1からの制御指令b及び妻引戸SDの位置情報sに基づいて速度指令値v*を生成するように構成されている。
【0093】
速度調節部3は、推力指令値f*を生成するように構成されている。
図8Aに示す例では、速度調節部3は、速度実際値vと速度指令値v*とが一致するように推力指令値f*を生成するように構成されている。具体的には、速度調節部3は、速度指令値v*から速度実際値vを減算して得られる値である、速度実際値vと速度指令値v*との間の偏差に基づいて推力指令値f*を生成するように構成されている。より具体的には、速度調節部3は、PID制御等のフィードバック制御により、推力指令値f*を生成するように構成されている。また、速度調節部3は、推力指令値f*が推力制限値f
limitを超えないよう、推力指令値f*を制限するように構成されている。
【0094】
速度実際値vは、エンコーダ8が出力するパルス信号pに基づいて速度検出部10が検出する妻引戸SDの速度に関する情報である。
【0095】
推力制限値flimitは、開閉指令a及び位置情報s等に基づいてシーケンス制御部1が算出する値である。
【0096】
推力調節部4は、操作量eを生成するように構成されている。
図8Aに示す例では、推力調節部4は、推力実際値fと推力指令値f*とが一致するように操作量eを生成するように構成されている。具体的には、推力調節部4は、推力指令値f*から推力実際値fを減算して得られる値である、推力実際値fと推力指令値f*との間の偏差に基づいて操作量eを生成するように構成されている。より具体的には、推力調節部4は、PID制御等のフィードバック制御により、操作量eを生成するように構成されている。そして、推力調節部4は、生成した操作量eをインバータ制御部5に対して出力する。
【0097】
推力実際値fは、インバータIVが出力する電流iに基づいて電流/推力変換部6が算出する値であり、交流電動機である回転モータ7が発生させる、妻引戸SDを動かすための推力に相当する。
【0098】
インバータ制御部5は、推力調節部4からの操作量eに基づいてインバータIVを制御するように構成されている。
図8Aに示す例では、インバータ制御部5は、PWM制御によってインバータIV(回転モータ7)を制御する。
【0099】
インバータIVは、回転モータ7に電力Eを供給して妻引戸SDを動かすように構成されている。具体的には、インバータIVは、直流電力を三相交流電力に変換して回転モータ7に供給する。
【0100】
電流/推力変換部6は、インバータIVが出力する電流iを検出して回転モータ7が発生させる推力に等価な推力実際値fを出力する。回転モータ7が三相交流電動機である場合、電流/推力変換部6は、例えば、インバータIVと回転モータ7との間を接続するU相、V相、及びW相のそれぞれに対応する3本の電力線のうちの2本に設けられる2つの電流センサを含む。この場合、電流センサは、接触式センサであってもよいし、カレントトランス方式又はホール素子方式等の非接触式センサであってもよい。
【0101】
ここでは、妻引戸SDの駆動装置である回転モータ7として、インバータIVで駆動される交流電動機が適用されているが、インバータIVの代わりのDCチョッパ又はPWMコンバータで駆動される直流電動機が適用されてもよい。
【0102】
図8Bは、制御方式CSの第1実施例に関する別の構成例を示す制御ブロック図である。
図8Bに示す例では、インバータ制御部5の代わりにDCチョッパ制御部5Aが用いられ、インバータIVの代わりにDCチョッパCPが用いられている。そして、
図8Bに示す例では、回転モータ7は、直流電動機である。
【0103】
エンコーダ8は、ロータリエンコーダであり、回転モータ7の回転軸の回転に応じ、その回転軸の角速度を検出するためのパルス信号pを出力するように構成されている。電動機MRがリニアモータの場合、エンコーダ8は、リニアエンコーダであり、妻引戸SD(リニアモータの可動部)の移動に応じ、その移動速度を検出するためのパルス信号を出力するように構成されていてもよい。
【0104】
戸閉スイッチ9は、妻引戸SDが全閉位置にあるときに全閉信号cを出力するように構成されている。言い換えれば、戸閉スイッチ9は、妻引戸SDが全閉位置にないときには全閉信号cを出力しないように構成されている。具体的には、戸閉スイッチ9は、例えば、妻引戸SDが全閉位置にあるときに全閉信号cをオンレベル(高電圧レベル)にし、妻引戸SDが全閉位置にないときに全閉信号cをオフレベル(低電圧レベル)にする。
【0105】
速度検出部10は、エンコーダ8が出力するパルス信号pの所定時間内のパルス数(周波数に相当)又はパルス信号pの周期の逆数から妻引戸SDの速度実際値vを導き出すように構成されている。
【0106】
位置検出部11は、エンコーダ8が出力するパルス信号pのパルス数を積算して妻引戸SDの位置情報sを検出するように構成されている。
【0107】
移動量検出部12は、妻引戸SDの移動量を検出するように構成されている。具体的には、移動量検出部12は、位置情報sに基づいて妻引戸SDの移動量を検出するように構成されている。より具体的には、移動量検出部12は、第1時点に検出された位置情報sと第2時点に検出された位置情報sとの差に基づき、第1時点と第2時点との間の期間における妻引戸SDの移動量を検出する。
【0108】
また、移動量検出部12は、妻引戸SDの移動量に基づき、妻引戸SDが人力によって開けられたか人力以外の外力によって開けられたかを判定する。
【0109】
次に、
図9を参照し、制御方式CSの第1実施例で実行される支援処理について説明する。
図9は、制御方式CSの第1実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
図9に示すフローチャートは、
図2に示すステップST3の具体的な内容を表すステップST3Aを有する点で
図2に示すフローチャートと異なる。しかしながら、
図2に示すフローチャートと
図9に示すフローチャートとはその他の点で共通している。
【0110】
最初に、シーケンス制御部1は、妻引戸SDが開けられたか否かを判定する(ステップST1)。
図2に示す例では、シーケンス制御部1は、インバータIVの停止中に、全閉信号cのレベルに基づいて妻引戸SDが開けられたか否かを判定する。但し、シーケンス制御部1は、妻引戸SDの位置情報sに基づいて妻引戸SDが開けられたか否かを判定してもよい。この場合、戸閉スイッチ9は、省略されてもよい。
【0111】
そして、シーケンス制御部1は、妻引戸SDが開けられたことを検知した場合(ステップST1のYES)、制動力を発生させる(ステップST2)。具体的には、シーケンス制御部1は、速度指令値v*がゼロとなるように速度パターン発生部2に対して制御指令bを出力する。この場合、インバータ制御部5は、電動機MRの一例である回転モータ7の回転軸の角速度がゼロ(停止状態)で維持されるようにインバータIVを動作させる。また、シーケンス制御部1は、所定の制動力設定値を推力制限値flimitとして速度調節部3に対して出力する。この場合、速度調節部3が出力する推力指令値f*は、制動力設定値によって制限される。その結果、回転モータ7が発生させる制動力は、制動力設定値に対応する大きさに制限される。
【0112】
その後、移動量検出部12は、制動が開始された後で所定時間D1(
図3参照。)が経過するまでに妻引戸SDの移動量が所定値Lt(
図3参照。)を超過したか否かを判定する(ステップST3A)。
【0113】
そして、移動量検出部12は、制動が開始された後で、所定時間D1が経過するまでに、妻引戸SDの移動量が所定値Ltを超過したと判定した場合(ステップST3AのYES)、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定する。この場合、移動量検出部12は、電動機MRによる開扉動作を開始させる(ステップST4)。具体的には、移動量検出部12は、シーケンス制御部1に対して制御指令wopnを出力する。シーケンス制御部1は、制御指令wopnを受けて開扉動作を開始させ、妻引戸SDが電動力によって開けられるようにする。すなわち、移動量検出部12は、人力によって開けられた妻引戸SDの開方向への移動を電動力によって継続させる。
【0114】
一方、移動量検出部12は、所定時間D1が経過しても妻引戸SDの移動量が所定値Ltに達していないと判定した場合(ステップST3AのNO)、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定する。
図3に示す妻引戸SDの運動力学的な挙動は、この場合に相当する。この場合、移動量検出部12は、電動機MRによる閉扉動作を開始させる(ステップST5)。具体的には、移動量検出部12は、シーケンス制御部1に対して制御指令w
clsを出力する。シーケンス制御部1は、制御指令w
clsを受けて閉扉動作を開始させ、人力以外の外力によって開けられた妻引戸SDが電動力によって閉じられるようにする。
【0115】
具体的には、
図3に示すように妻引戸SDに加わる開扉力、妻引戸SDの移動量、及び、妻引戸SDの移動速度が推移する場合、シーケンス制御部1は、時点taにおいて、妻引戸SDが開けられたことを検知して制動力を発生させる。
【0116】
そして、移動量検出部12は、時点tbにおいて、所定時間D1が経過しても妻引戸SDの移動量が所定値Ltに達していないと判定し、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定する。この場合、移動量検出部12は、シーケンス制御部1に対して制御指令wclsを出力する。シーケンス制御部1は、制御指令wclsを受けて閉扉動作を開始させ、人力以外の外力によって開けられた妻引戸SDが電動力によって閉じられるようにする。
【0117】
次に、
図10を参照し、制御方式CSの第2実施例について説明する。
図10は、制御方式CSの第2実施例の制御ブロック図である。
図10に示す制御方式CSは、
図8Aに示す移動量検出部12の代わりに減速量検出部13を有する点で
図8Aに示す制御方式CSと異なる。しかしながら、
図10に示す制御方式CSと
図8Aに示す制御方式CSとはその他の点で共通している。そのため、以下では、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳説する。なお、
図10に示す制御方式CSでは、
図8Bに示す制御方式CSのように、インバータ制御部5の代わりにDCチョッパ制御部5Aが採用され、インバータIVの代わりにDCチョッパCPが採用され、且つ、交流電動機の代わりに直流電動機が回転モータ7として採用されてもよい。以下で説明される他の制御方式CSにおいても同様である。
【0118】
減速量検出部13は、妻引戸SDの減速量を検出するように構成されている。具体的には、減速量検出部13は、速度実際値vに基づいて妻引戸SDの減速量を検出するように構成されている。より具体的には、減速量検出部13は、第1時点に検出された速度実際値vと第2時点に検出された速度実際値vとの差に基づき、第1時点と第2時点との間の期間における妻引戸SDの減速量を検出する。
【0119】
また、減速量検出部13は、妻引戸SDの減速量に基づき、妻引戸SDが人力によって開けられたか人力以外の外力によって開けられたかを判定する。
【0120】
次に、
図11を参照し、制御方式CSの第2実施例で実行される支援処理について説明する。
図11は、制御方式CSの第2実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
図11に示すフローチャートは、
図2に示すステップST3の具体的な内容を表すステップST3B1及びステップST3B2を有する点で
図2に示すフローチャートと異なる。しかしながら、
図2に示すフローチャートと
図11に示すフローチャートとはその他の点で共通している。そのため、以下では、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳説する。
【0121】
制動力の発生後、減速量検出部13は、制動力の発生時から所定時間D2A(
図4参照。)が経過したか否かを判定する(ステップST3B1)。
【0122】
そして、減速量検出部13は、制動力の発生時から所定時間D2Aが経過したと判定した場合(ステップST3B1のYES)、所定時間D2(
図4参照。)における減速量DC(
図4参照。)が所定値DCt(
図4参照。)以上であるか否かを判定する(ステップST3B2)。減速量検出部13は、妻引戸SDの動きが停止したか否かを判定してもよい。
【0123】
なお、所定時間D2は、例えば、妻引戸SDの移動量が所定値Ltに達したと判定された時点tdを起点としてもよく、妻引戸SDが開いたと判定されてから所定時間が経過した時点を起点としてもよい。
【0124】
そして、減速量検出部13は、減速量DCが所定値DCt未満であると判定した場合(ステップST3B2のNO)、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定する。この場合、減速量検出部13は、電動機MRによる開扉動作を開始させる(ステップST4)。具体的には、減速量検出部13は、シーケンス制御部1に対して制御指令wopnを出力する。シーケンス制御部1は、制御指令wopnを受けて開扉動作を開始させ、妻引戸SDが電動力によって開けられるようにする。すなわち、減速量検出部13は、人力によって開けられた妻引戸SDの開方向への移動を電動力によって継続させる。なお、減速量DCが所定値DCt未満である場合は、妻引戸SDが加速している場合を含む。
【0125】
一方、減速量検出部13は、減速量DCが所定値DCt以上であると判定した場合(ステップST3B2のYES)、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定する。
図4に示す妻引戸SDの運動力学的な挙動は、この場合に相当する。なお、減速量検出部13は、妻引戸SDの動きが停止したと判定した場合も同様に、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定してもよい。この場合、減速量検出部13は、電動機MRによる閉扉動作を開始させる(ステップST5)。具体的には、減速量検出部13は、シーケンス制御部1に対して制御指令w
clsを出力する。シーケンス制御部1は、制御指令w
clsを受けて閉扉動作を開始させ、人力以外の外力によって開けられた妻引戸SDが電動力によって閉じられるようにする。
【0126】
また、減速量検出部13は、一定の期間(所定時間D2)を挟んだ2つの時点のそれぞれにおける妻引戸SDの移動速度の差(変化量)に基づいて妻引戸SDの減速状態を評価するように構成されている。そのため、減速量検出部13は、振動的な外力又は不安定な人力等に起因する妻引戸SDの移動速度の瞬間的な変化による影響を回避できる。すなわち、減速量検出部13は、誤判定を防止できる。
【0127】
具体的には、
図4に示すように妻引戸SDに加わる開扉力、妻引戸SDの移動量、及び、妻引戸SDの移動速度が推移する場合、シーケンス制御部1は、時点taにおいて、妻引戸SDが開けられたことを検知して制動力を発生させる。
【0128】
そして、減速量検出部13は、時点tcにおいて、制動力の発生後に所定時間D2Aが経過したと判定したときに、所定時間D2における減速量DCが所定値DCt以上であると判定し、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定する。なお、減速量DCは、時点tdでの妻引戸SDの移動速度と、時点teでの妻引戸SDの移動速度との差である。この場合、減速量検出部13は、シーケンス制御部1に対して制御指令wclsを出力する。シーケンス制御部1は、制御指令wclsを受けて閉扉動作を開始させ、人力以外の外力によって開けられた妻引戸SDが電動力によって閉じられるようにする。
【0129】
次に、
図12を参照し、制御方式CSの第3実施例について説明する。
図12は、制御方式CSの第3実施例の制御ブロック図である。
図12に示す制御方式CSは、
図8Aに示す移動量検出部12の代わりに状態観測部14及び外力判定部15を有する点で
図8Aに示す制御方式CSと異なる。しかしながら、
図12に示す制御方式CSと
図8Aに示す制御方式CSとはその他の点で共通している。そのため、以下では、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳説する。
【0130】
状態観測部14は、状態観測理論に基づいて妻引戸SDに作用する外力を推定するように構成されている。具体的には、状態観測部14は、速度実際値vと推力指令値f*とに基づいて回転モータ7の回転軸に作用する力を、妻引戸SDに作用する外力の推定値である外力推定値festとして算出する。状態観測部14は、速度実際値vと推力実際値fとに基づいて回転モータ7の回転軸に作用する力を外力推定値festとして算出してもよい。状態観測部を実現する手法は、Luenbergerの観測器、逆システムに基づく状態フィードバック方式、及び最小次元オブザーバ等、種々の方式が実用化されている。状態観測部14は、何れの方式に基づいて実現されてもよい。なお、状態観測部を実現する手法は、公知の技術であることから詳細な説明を省略する。
【0131】
外力判定部15は、妻引戸SDに作用する外力に基づいて妻引戸SDが人力によって開けられたか否かを判定するように構成されている。具体的には、外力判定部15は、状態観測部14が出力する外力推定値festに基づいて妻引戸SDが人力によって開けられたか否かを判定する。
【0132】
次に、
図13を参照し、制御方式CSの第3実施例で実行される支援処理について説明する。
図13は、制御方式CSの第3実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
図13に示すフローチャートは、
図2に示すステップST3の具体的な内容を表すステップST3C1~ステップST3C3を有する点で
図2に示すフローチャートと異なる。しかしながら、
図2に示すフローチャートと
図13に示すフローチャートとはその他の点で共通している。そのため、以下では、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳説する。
【0133】
制動力の発生後、外力判定部15は、制動力の発生時から所定時間D3(
図6参照。)が経過したか否かを判定する(ステップST3C1)。
【0134】
そして、外力判定部15は、制動力の発生時から所定時間D3が経過したと判定した場合(ステップST3C1のYES)、その後に、外力推定値festが所定時間D3A以上継続して所定値Ft以下になっているか否かを判定する(ステップST3C2)。
【0135】
そして、外力判定部15は、外力推定値festが所定時間D3A以上継続して所定値Ft以下になっていないと判定した場合(ステップST3C2のNO)、妻引戸SDが開いたことが検知された時点から所定時間D3Bが経過したか否かを判定する(ステップST3C3)。
【0136】
そして、外力判定部15は、妻引戸SDが開いたことが検知された時点から所定時間D3Bが経過したと判定した場合(ステップST3C3のYES)、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定する。この場合、外力判定部15は、電動機MRによる開扉動作を開始させる(ステップST4)。具体的には、外力判定部15は、シーケンス制御部1に対して制御指令wopnを出力する。シーケンス制御部1は、制御指令wopnを受けて開扉動作を開始させ、妻引戸SDが電動力によって開けられるようにする。すなわち、外力判定部15は、人力によって開けられた妻引戸SDの開方向への移動を電動力によって継続させる。
【0137】
このように、外力判定部15は、妻引戸SDが開いたことが検知された時点から所定時間D3Bが経過しても、外力推定値festが所定値Ft以下にならない場合、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定し、開扉動作を開始させるようにする。
【0138】
一方、外力判定部15は、外力推定値festが所定時間D3A以上継続して所定値Ft以下になっていると判定した場合(ステップST3C2のYES)、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定する。
図6に示す妻引戸SDの運動力学的な挙動は、この場合に相当する。この場合、外力判定部15は、電動機MRによる閉扉動作を開始させる(ステップST5)。具体的には、外力判定部15は、シーケンス制御部1に対して制御指令w
clsを出力する。シーケンス制御部1は、制御指令w
clsを受けて閉扉動作を開始させ、人力以外の外力によって開けられた妻引戸SDが電動力によって閉じられるようにする。
【0139】
具体的には、
図6に示すように妻引戸SDに加わる開扉力、妻引戸SDの移動量、及び、妻引戸SDの移動速度が推移する場合、シーケンス制御部1は、時点taにおいて、妻引戸SDが開いたことを検知して制動力を発生させる。
【0140】
そして、外力判定部15は、時点tfにおいて、制動力の発生時から所定時間D3が経過したと判定したときに、外力推定値festの推移の監視を開始する。
図6に示す例では、外力推定値festの推移は、開扉力の推移に相当する。そして、外力判定部15は、時点tgにおいて、外力推定値festが所定値Ft以下になったことを検知し、更に、時点thにおいて、外力推定値festが所定時間D3A以上継続して所定値Ft以下になっていると判定する。そして、外力判定部15は、妻引戸SDが開いたことが検知された時点taから所定時間D3Bが経過したか否かを判定する。時点thでは、妻引戸SDが開いたことが検知された時点taからの経過時間は、所定時間D3Bに達していない。その後、外力判定部15は、時点tiにおいて、妻引戸SDが開いたことが検知された時点taから所定時間D3Bが経過したと判定し、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定する。この場合、外力判定部15は、シーケンス制御部1に対して制御指令w
clsを出力する。シーケンス制御部1は、制御指令w
clsを受けて閉扉動作を開始させ、人力以外の外力によって開けられた妻引戸SDが電動力によって閉じられるようにする。
【0141】
次に、
図14を参照し、制御方式CSの第4実施例について説明する。
図14は、制御方式CSの第4実施例の制御ブロック図である。
図14に示す制御方式CSは、
図8Aに示す移動量検出部12の後段に減速量検出部13を有する点で
図8Aに示す制御方式CSと異なる。しかしながら、
図14に示す制御方式CSと
図8Aに示す制御方式CSとはその他の点で共通している。そのため、以下では、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳説する。
【0142】
減速量検出部13は、妻引戸SDの減速量を検出するように構成されている。具体的には、減速量検出部13は、速度実際値vに基づいて妻引戸SDの減速量を検出するように構成されている。より具体的には、減速量検出部13は、第1時点に検出された速度実際値vと第2時点に検出された速度実際値vとの差に基づき、第1時点と第2時点との間の期間における妻引戸SDの減速量を検出する。
【0143】
また、減速量検出部13は、妻引戸SDの減速量と、移動量検出部12が出力する制御指令wopn又は制御指令wclsとに基づき、妻引戸SDが人力によって開けられたか人力以外の外力によって開けられたかを判定する。
【0144】
次に、
図15を参照し、制御方式CSの第4実施例で実行される支援処理について説明する。
図15は、制御方式CSの第4実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
図15に示すフローチャートは、
図2に示すステップST3の具体的な内容を表すステップST3D1及びステップST3D2を有する点で
図2に示すフローチャートと異なる。しかしながら、
図2に示すフローチャートと
図15に示すフローチャートとはその他の点で共通している。そのため、以下では、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳説する。
【0145】
制動力の発生後、移動量検出部12は、制動が開始された後で所定時間D1(
図4参照。)が経過するまでに妻引戸SDの移動量が所定値Lt(
図4参照。)を超過したか否かを判定する(ステップST3D1)。
【0146】
そして、移動量検出部12は、制動が開始された後で、所定時間D1が経過するまでに、妻引戸SDの移動量が所定値Ltを超過したと判定した場合(ステップST3D1のYES)、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定する。
図4に示す妻引戸SDの運動力学的な挙動は、この場合に相当する。この場合、移動量検出部12は、減速量検出部13に対して制御指令w
opnを出力する。
【0147】
一方、移動量検出部12は、所定時間D1が経過しても妻引戸SDの移動量が所定値Ltに達していないと判定した場合(ステップST3D1のNO)、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定する。
図3に示す妻引戸SDの運動力学的な挙動は、この場合に相当する。この場合、移動量検出部12は、減速量検出部13に対して制御指令w
clsを出力する。
【0148】
その後、妻引戸SDの移動量が所定値Ltを超過したと判定された場合(ステップST3D1のYES)、減速量検出部13は、所定時間D2(
図4参照。)における減速量DC(
図4参照。)が所定値DCt(
図4参照。)以上であるか否かを判定する(ステップST3D2)。減速量検出部13は、妻引戸SDの動きが停止したか否かを判定してもよい。すなわち、減速量検出部13は、移動量検出部12によって妻引戸SDが人力によって開けられたと判定された場合、制動力の発生時から所定時間D2Aが経過した後で、所定時間D2における減速量DCが所定値DCt以上であるか否かを判定する。
【0149】
そして、減速量検出部13は、減速量DCが所定値DCt未満であると判定した場合(ステップST3D2のNO)、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定する。すなわち、減速量検出部13は、移動量検出部12によって妻引戸SDが人力によって開けられたと判定され、且つ、減速量DCが所定値DCt未満であると判定した場合に、妻引戸SDが人力によって開けられたと最終判定する。この場合、減速量検出部13は、電動機MRによる開扉動作を開始させる(ステップST4)。具体的には、減速量検出部13は、シーケンス制御部1に対して制御指令wopnを出力する。シーケンス制御部1は、制御指令wopnを受けて開扉動作を開始させ、妻引戸SDが電動力によって開けられるようにする。すなわち、減速量検出部13は、人力によって開けられた妻引戸SDの開方向への移動を電動力によって継続させる。なお、減速量DCが所定値DCt未満である場合は、妻引戸SDが加速している場合を含む。
【0150】
一方、減速量検出部13は、減速量DCが所定値DCt以上であると判定した場合(ステップST3D2のYES)、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定する。
図4に示す妻引戸SDの運動力学的な挙動は、この場合に相当する。減速量検出部13は、妻引戸SDの動きが停止したと判定した場合も同様に、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定してもよい。すなわち、減速量検出部13は、移動量検出部12によって妻引戸SDが人力によって開けられたと判定された場合であっても、減速量DCが所定値DCt以上であると判定した場合、或いは、妻引戸SDの動きが停止したと判定した場合には、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと最終判定する。
【0151】
また、妻引戸SDの移動量が所定値Ltを超過していないと判定された場合(ステップST3D1のNO)、減速量検出部13は、所定時間D2における減速量DCが所定値DCt以上であるか否かを判定することなく、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと最終判定する。すなわち、減速量検出部13は、移動量検出部12によって妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定された場合には、所定時間D2における減速量DCが所定値DCt以上であるか否かを判定することなく、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと最終判定する。
図3に示す妻引戸SDの運動力学的な挙動は、この場合に相当する。
【0152】
妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと最終判定した場合、減速量検出部13は、電動機MRによる閉扉動作を開始させる(ステップST5)。具体的には、減速量検出部13は、シーケンス制御部1に対して制御指令wclsを出力する。シーケンス制御部1は、制御指令wclsを受けて閉扉動作を開始させ、人力以外の外力によって開けられた妻引戸SDが電動力によって閉じられるようにする。
【0153】
具体的には、
図4に示すように妻引戸SDに加わる開扉力、妻引戸SDの移動量、及び、妻引戸SDの移動速度が推移する場合、シーケンス制御部1は、時点taにおいて、妻引戸SDが開けられたことを検知して制動力を発生させる。
【0154】
そして、移動量検出部12は、時点taにおいて、所定時間D1が経過するまでに妻引戸SDの移動量が所定値Ltを超過したと判定する。この場合、移動量検出部12は、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定し、減速量検出部13に対して制御指令wopnを出力する。
【0155】
しかしながら、減速量検出部13は、移動量検出部12が制御指令wopnを出力している場合であっても、時点tcにおいて、所定時間D2Aが経過したと判定し、且つ、所定時間D2における減速量DCが所定値DCt以上であると判定したときには、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと最終判定する。すなわち、減速量検出部13は、移動量検出部12により妻引戸SDが人力によって開けられたと判定された場合であっても、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと最終判定する。この場合、減速量検出部13は、シーケンス制御部1に対して制御指令wclsを出力する。シーケンス制御部1は、制御指令wclsを受けて閉扉動作を開始させ、人力以外の外力によって開けられた妻引戸SDが電動力によって閉じられるようにする。
【0156】
次に、
図16を参照し、制御方式CSの第5実施例について説明する。
図16は、制御方式CSの第5実施例の制御ブロック図である。
図16に示す制御方式CSは、
図8Aに示す移動量検出部12の後段に減速量検出部13、状態観測部14、及び外力判定部15を有する点で
図8Aに示す制御方式CSと異なる。しかしながら、
図16に示す制御方式CSと
図8Aに示す制御方式CSとはその他の点で共通している。そのため、以下では、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳説する。
【0157】
減速量検出部13は、妻引戸SDの減速量を検出するように構成されている。具体的には、減速量検出部13は、速度実際値vに基づいて妻引戸SDの減速量を検出するように構成されている。
【0158】
また、減速量検出部13は、妻引戸SDの減速量と、移動量検出部12が出力する制御指令wopn又は制御指令wclsとに基づき、妻引戸SDが人力によって開けられたか人力以外の外力によって開けられたかを判定する。
【0159】
状態観測部14は、状態観測理論に基づいて妻引戸SDに作用する外力を推定するように構成されている。具体的には、状態観測部14は、速度実際値vと推力指令値f*とに基づいて回転モータ7の回転軸に作用する力を、妻引戸SDに作用する外力の推定値である外力推定値festとして算出する。
【0160】
外力判定部15は、妻引戸SDに作用する外力に基づいて妻引戸SDが人力によって開けられたか否かを判定するように構成されている。具体的には、外力判定部15は、状態観測部14が出力する外力推定値festに基づいて妻引戸SDが人力によって開けられたか否かを判定する。
【0161】
また、外力判定部15は、外力推定値festと、減速量検出部13が出力する制御指令wopn又は制御指令wclsとに基づき、妻引戸SDが人力によって開けられたか人力以外の外力によって開けられたかを判定する。
【0162】
次に、
図17を参照し、制御方式CSの第5実施例で実行される支援処理について説明する。
図17は、制御方式CSの第5実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
図17に示すフローチャートは、
図2に示すステップST3の具体的な内容を表すステップST3E1~ステップST3E4を有する点で
図2に示すフローチャートと異なる。しかしながら、
図2に示すフローチャートと
図17に示すフローチャートとはその他の点で共通している。そのため、以下では、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳説する。
【0163】
制動力の発生後、移動量検出部12は、制動が開始された後で所定時間D1(
図5参照。)が経過するまでに妻引戸SDの移動量が所定値Lt(
図5参照。)を超過したか否かを判定する(ステップST3E1)。
【0164】
そして、移動量検出部12は、制動が開始された後で、所定時間D1が経過するまでに、妻引戸SDの移動量が所定値Ltを超過したと判定した場合(ステップST3E1のYES)、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定する。
図5に示す妻引戸SDの運動力学的な挙動は、この場合に相当する。この場合、移動量検出部12は、減速量検出部13に対して制御指令w
opnを出力する。
【0165】
一方、移動量検出部12は、所定時間D1が経過しても妻引戸SDの移動量が所定値Ltに達していないと判定した場合(ステップST3E1のNO)、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定する。
図3に示す妻引戸SDの運動力学的な挙動は、この場合に相当する。この場合、移動量検出部12は、減速量検出部13に対して制御指令w
clsを出力する。
【0166】
その後、妻引戸SDの移動量が所定値Ltを超過したと判定された場合(ステップST3E1のYES)、減速量検出部13は、所定時間D2(
図5参照。)における減速量DC(
図5参照。)が所定値DCt(
図5参照。)以上であるか否かを判定する(ステップST3E2)。減速量検出部13は、妻引戸SDの動きが停止したか否かを判定してもよい。すなわち、減速量検出部13は、移動量検出部12によって妻引戸SDが人力によって開けられたと判定された場合、制動力の発生時から所定時間D2Aが経過した後で、所定時間D2における減速量DCが所定値DCt以上であるか否かを判定する。
【0167】
そして、減速量検出部13は、減速量DCが所定値DCt以上であると判定した場合(ステップST3E2のYES)、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定する。
図4に示す妻引戸SDの運動力学的な挙動は、この場合に相当する。減速量検出部13は、妻引戸SDの動きが停止したと判定した場合も同様に、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定してもよい。すなわち、減速量検出部13は、移動量検出部12によって妻引戸SDが人力によって開けられたと判定された場合であっても、減速量DCが所定値DCt以上であると判定した場合、或いは、妻引戸SDの動きが停止したと判定した場合には、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定する。この場合、減速量検出部13は、外力判定部15に対して制御指令w
clsを出力する。
【0168】
一方、減速量検出部13は、減速量DCが所定値DCt未満であると判定した場合(ステップST3E2のNO)、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定する。すなわち、減速量検出部13は、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定され、且つ、減速量DCが所定値DCt未満であると判定した場合に、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定する。なお、減速量DCが所定値DCt未満である場合は、妻引戸SDが加速している場合を含む。
図5に示す妻引戸SDの運動力学的な挙動は、この場合に相当する。この場合、減速量検出部13は、外力判定部15に対して制御指令w
opnを出力する。
【0169】
その後、減速量DCが所定値DCt未満であると判定された場合(ステップST3E2のNO)、外力判定部15は、外力推定値festが所定時間D3A以上継続して所定値Ft以下になっているか否かを判定する(ステップST3E3)。すなわち、外力判定部15は、減速量検出部13によって妻引戸SDが人力によって開けられたと判定された場合、制動力の発生時から所定時間D3(
図5参照。)が経過したと判定した後で、外力推定値festが所定時間D3A以上継続して所定値Ft以下になっているか否かを判定する。
【0170】
そして、外力判定部15は、外力推定値festが所定時間D3A以上継続して所定値Ft以下になっていないと判定した場合(ステップST3E3のNO)、妻引戸SDが開いたことが検知された時点から所定時間D3Bが経過したか否かを判定する(ステップST3E4)。
【0171】
そして、外力判定部15は、妻引戸SDが開いたことが検知された時点から所定時間D3Bが経過したと判定した場合(ステップST3E4のYES)、妻引戸SDが人力によって開けられたと最終判定する。この場合、外力判定部15は、電動機MRによる開扉動作を開始させる(ステップST4)。具体的には、外力判定部15は、シーケンス制御部1に対して制御指令wopnを出力する。シーケンス制御部1は、制御指令wopnを受けて開扉動作を開始させ、妻引戸SDが電動力によって開けられるようにする。すなわち、外力判定部15は、人力によって開けられた妻引戸SDの開方向への移動を電動力によって継続させる。
【0172】
一方、外力判定部15は、外力推定値festが所定時間D3A以上継続して所定値Ft以下になっていると判定した場合(ステップST3E3のYES)、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定する。すなわち、外力判定部15は、移動量検出部12及び減速量検出部13のそれぞれによって妻引戸SDが人力によって開けられたと判定された場合であっても、外力推定値festが所定時間D3A以上継続して所定値Ft以下になっていると判定した場合には、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと最終判定する。
図5に示す妻引戸SDの運動力学的な挙動は、この場合に相当する。
【0173】
また、妻引戸SDの移動量が所定値Ltを超過していないと判定された場合(ステップST3E1のNO)、減速量検出部13は、ステップST3E2の判定を実行することなく、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定する。すなわち、減速量検出部13は、移動量検出部12によって妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定された場合には、所定時間D2における減速量DCが所定値DCt以上であるか否かを判定することなく、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定する。
【0174】
そして、減速量検出部13によって妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定された場合には、外力判定部15は、外力推定値festが所定時間D3A以上継続して所定値Ft以下になっているか否かを判定することなく、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと最終判定する。
【0175】
同様に、所定時間D2における減速量DCが所定値DCt以上であると判定された場合(ステップST3E2のYES)、外力判定部15は、ステップST3E3の判定を実行することなく、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと最終判定する。すなわち、外力判定部15は、減速量検出部13によって妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定された場合には、外力推定値festが所定時間D3A以上継続して所定値Ft以下になっているか否かを判定することなく、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定する。
【0176】
これらの場合、外力判定部15は、電動機MRによる閉扉動作を開始させる(ステップST5)。具体的には、外力判定部15は、シーケンス制御部1に対して制御指令wclsを出力する。シーケンス制御部1は、制御指令wclsを受けて閉扉動作を開始させ、人力以外の外力によって開けられた妻引戸SDが電動力によって閉じられるようにする。
【0177】
具体的には、
図5に示すように妻引戸SDに加わる開扉力、妻引戸SDの移動量、及び、妻引戸SDの移動速度が推移する場合、シーケンス制御部1は、時点taにおいて、妻引戸SDが開けられたことを検知して制動力を発生させる。
【0178】
そして、移動量検出部12は、時点tdにおいて、所定時間D1が経過するまでに妻引戸SDの移動量が所定値Ltを超過したと判定する。この場合、移動量検出部12は、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定し、減速量検出部13に対して制御指令wopnを出力する。
【0179】
そして、減速量検出部13は、時点tcにおいて、所定時間D2Aが経過したと判定し、且つ、時点teにおいて、所定時間D2における減速量DCが所定値DCt以上でないと判定する。この場合、減速量検出部13は、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定し、外力判定部15に対して制御指令wopnを出力する。
【0180】
しかしながら、外力判定部15は、移動量検出部12及び減速量検出部13のそれぞれが制御指令wopnを出力している場合であっても、時点tfにおいて、制動力の発生時から所定時間D3が経過したと判定し、且つ、時点thにおいて、外力推定値festが所定時間D3A以上継続して所定値Ft以下になっていると判定したときには、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと最終判定する。すなわち、外力判定部15は、移動量検出部12及び減速量検出部13のそれぞれにより妻引戸SDが人力によって開けられたと判定された場合であっても、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと最終判定する。この場合、外力判定部15は、シーケンス制御部1に対して制御指令wclsを出力する。シーケンス制御部1は、制御指令wclsを受けて閉扉動作を開始させ、人力以外の外力によって開けられた妻引戸SDが電動力によって閉じられるようにする。
【0181】
次に、
図18~
図22を参照し、制御方式CSの第6実施例~第10実施例で実行される支援処理について説明する。
【0182】
図18は、制御方式CSの第6実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
図18に示すフローチャートは、ステップST2A~ステップST2Cを有する点で、制御方式CSの第1実施例で実行される支援処理に関する
図9に示すフローチャートと異なる。しかしながら、
図9に示すフローチャートと
図18に示すフローチャートとはその他の点で共通している。
【0183】
図19は、制御方式CSの第7実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
図19に示すフローチャートは、ステップST2A~ステップST2Cを有する点で、制御方式CSの第2実施例で実行される支援処理に関する
図11に示すフローチャートと異なる。しかしながら、
図11に示すフローチャートと
図19に示すフローチャートとはその他の点で共通している。
【0184】
図20は、制御方式CSの第8実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
図20に示すフローチャートは、ステップST2A~ステップST2Cを有する点で、制御方式CSの第3実施例で実行される支援処理に関する
図13に示すフローチャートと異なる。しかしながら、
図13に示すフローチャートと
図20に示すフローチャートとはその他の点で共通している。
【0185】
図21は、制御方式CSの第9実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
図21に示すフローチャートは、ステップST2A~ステップST2Cを有する点で、制御方式CSの第4実施例で実行される支援処理に関する
図15に示すフローチャートと異なる。しかしながら、
図15に示すフローチャートと
図21に示すフローチャートとはその他の点で共通している。
【0186】
図22は、制御方式CSの第10実施例で実行される支援処理のフローチャートである。
図22に示すフローチャートは、ステップST2A~ステップST2Cを有する点で、制御方式CSの第5実施例で実行される支援処理に関する
図17に示すフローチャートと異なる。しかしながら、
図17に示すフローチャートと
図22に示すフローチャートとはその他の点で共通している。
【0187】
図18~
図22のそれぞれに示す例では、制動力を発生させた後、制御装置CDは、鉄道車両が走行中であるか否かを判定する(ステップST2A)。鉄道車両が走行中のときと停止中のときとで判定パラメータの内容を切り替えるためである。
【0188】
具体的には、制御装置CDは、鉄道車両が走行中であると判定した場合(ステップST2AのYES)、走行時用判定パラメータをセットし(ステップST2B)、鉄道車両が走行中でないと判定した場合(ステップST2AのNO)、停止時用判定パラメータをセットする(ステップST2C)。
【0189】
判定パラメータは、支援処理において用いられる設定値である。判定パラメータは、典型的には、制御装置CDにおける不揮発性記憶装置に予め記憶されている。また、判定パラメータは、典型的には、ゼロ以外の値として設定されるが、ゼロであってもよい。走行時用判定パラメータは、鉄道車両が走行しているときに用いられる判定パラメータであり、停止時用判定パラメータは、鉄道車両が停止しているときに用いられる判定パラメータである。
【0190】
図18に示す第6実施例では、走行時用判定パラメータ及び停止時用判定パラメータは、それぞれ、所定時間D1、及び、妻引戸SDの移動量に関する所定値Ltを含む。走行時用判定パラメータとしての所定時間D1は、典型的には、停止時用判定パラメータとしての所定時間D1よりも大きい。所定値Ltについても同様である。
【0191】
図19に示す第7実施例では、走行時用判定パラメータ及び停止時用判定パラメータは、それぞれ、所定時間D2、所定時間D2A、及び、妻引戸SDの減速量に関する所定値DCtを含む。走行時用判定パラメータとしての所定時間D2は、典型的には、停止時用判定パラメータとしての所定時間D2よりも大きい。所定時間D2A及び所定値DCtについても同様である。
【0192】
図20に示す第8実施例では、走行時用判定パラメータ及び停止時用判定パラメータは、それぞれ、所定時間D3、所定時間D3A、所定時間D3B、及び、外力推定値festに関する所定値Ftを含む。走行時用判定パラメータとしての所定時間D3は、典型的には、停止時用判定パラメータとしての所定時間D3よりも大きい。所定時間D3A、所定時間D3B、及び所定値Ftについても同様である。
【0193】
図21に示す第9実施例では、走行時用判定パラメータ及び停止時用判定パラメータは、それぞれ、所定時間D1、所定時間D2、妻引戸SDの移動量に関する所定値Lt、及び、妻引戸SDの減速量に関する所定値DCtを含む。走行時用判定パラメータとしての所定時間D1は、典型的には、停止時用判定パラメータとしての所定時間D1よりも大きい。所定時間D2、所定値Lt、及び所定値DCtについても同様である。
【0194】
図22に示す第10実施例では、走行時用判定パラメータ及び停止時用判定パラメータは、それぞれ、所定時間D1、所定時間D2、所定時間D3A、所定時間D3B、妻引戸SDの移動量に関する所定値Lt、妻引戸SDの減速量に関する所定値DCt、及び、外力推定値festに関する所定値Ftを含む。走行時用判定パラメータとしての所定時間D1は、典型的には、停止時用判定パラメータとしての所定時間D1よりも大きい。所定時間D2、所定時間D3A、所定時間D3B、所定値Lt、所定値DCt、及び所定値Ftについても同様である。
【0195】
上述の通り、本発明の実施形態に係る制御方式CSは、例えば
図1に示すような電動式の妻引戸SDの制御方式CSであって、妻引戸SDが開いたときに制動力を発生させ、制動力を発生させた状態で、妻引戸SDの状態に関する情報に基づき、妻引戸SDが人力によって開けられたか否かを判定するように構成されている。この構成により、制御方式CSは、人が妻引戸SDを開けたことを検知できる。そのため、制御方式CSは、妻引戸SDが人力によって開けられたことを正確に検知した上で、様々な機能を実行できる。例えば、制御方式CSは、人が妻引戸SDを開けるときの負担を軽減できる。妻引戸SDが人力によって開けられたことを正確に検知した上で、人が妻引戸SDを開けるときの負担を軽減するための動作(以下、「支援動作」とする。)を開始させることができるためである。支援動作は、例えば、電動力によって妻引戸を開ける動作である。支援動作は、制動力を解除するための動作であってもよい。また、制御方式CSは、人が妻引戸SDを開けていないにもかかわらず、支援動作が誤って開始してしまうのを防止できる。妻引戸SDが人力によって開けられたのではないことを正確に検知できるためである。
【0196】
妻引戸SDの状態に関する情報は、例えば、妻引戸SDの移動量、妻引戸SDの減速量、及び、妻引戸SDに作用する外力の推定値のうちの少なくとも1つであってもよい。具体的には、妻引戸SDの状態に関する情報は、エンコーダ8が出力するパルス信号pから導き出される位置情報s、速度実際値v、推力指令値f*、又は推力実際値f等である。この構成により、制御方式CSは、簡易且つ正確に、妻引戸SDが人力によって開けられたか否かを判定できる。
【0197】
制御方式CSは、例えば
図9に示すように、制動力を発生させた状態で、所定時間D1が経過した時の妻引戸SDの移動量が所定値Ltより大きい場合に妻引戸SDが人力によって開けられたと判定してもよい。或いは、制御方式CSは、所定時間D1が経過するまでに妻引戸SDの移動量が所定値Ltを超過した場合に妻引戸SDが人力によって開けられたと判定してもよい。この構成により、制御方式CSは、制動力が加えられた状態の妻引戸SDを動かそうとする外力の大きさ及び継続時間に応じて変化する妻引戸SDの移動量に基づき、その外力が人力であるのか人力以外の外力であるのかを正確に判定できる。その結果、制御方式CSは、人が妻引戸SDを開けるときの負担をより確実に且つ適時に軽減できる。
【0198】
或いは、制御方式CSは、例えば
図11に示すように、制動力を発生させた状態で、所定時間D2における妻引戸SDの減速量が所定値DCtより小さい場合に妻引戸SDが人力によって開けられたと判定してもよい。この場合、所定時間D2の開始時点は、例えば、妻引戸SDの移動量が所定値Ltを超過した時点であってもよく、妻引戸SDが開いてから一定時間が経過した時点であってもよい。また、減速量DCが所定値DCtより小さい場合は、妻引戸SDが加速している場合を含んでいてもよい。この構成により、制御方式CSは、制動力が加えられた状態の妻引戸SDを動かそうとする外力の大きさ及び継続時間に応じて変化する妻引戸SDの減速量に基づき、その外力が人力であるのか人力以外の外力であるのかを正確に判定できる。その結果、制御方式CSは、人が妻引戸SDを開けるときの負担をより確実に且つ適時に軽減できる。
【0199】
或いは、制御方式CSは、例えば
図13に示すように、制動力を発生させてから所定時間D3Aが経過した後も、状態観測部14によって推定された力の推定値である外力推定値festが所定値Ftより大きい場合に、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定してもよい。或いは、制御方式CSは、所定時間D3Aが経過しても外力推定値festが所定値Ftを下回ることがなかった場合に、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定してもよい。
【0200】
この場合、外力推定値festに関する所定値Ftは、望ましくは、妻引戸SDを備えた車両が最大カントで停車したときに妻引戸SDに作用する重力の、妻引戸SDの移動方向における分力に相当する値以上である。また、外力推定値festに基づく判定は、望ましくは、妻引戸SDの移動量が所定値Ltを超過した時点、又は、妻引戸SDが開いてから所定時間が経過した時点から開始される。例えば、外力推定値festに基づく判定は、望ましくは、妻引戸SDが開いたことが検知された時点から開始される。
【0201】
この構成により、制御方式CSは、制動力が加えられた状態の妻引戸SDを動かそうとする外力の大きさ及び継続時間に応じて変化する外力推定値festに基づき、その外力が人力であるのか人力以外の外力であるのかを正確に判定できる。その結果、制御方式CSは、人が妻引戸SDを開けるときの負担をより確実に且つ適時に軽減できる。
【0202】
或いは、制御方式CSは、制動力を発生させた状態で、所定時間D1が経過した時の妻引戸SDの移動量が所定値Ltより大きいという第1条件(例えば
図9のステップST3A参照。)、制動力を発生させた状態で、所定時間D2における妻引戸SDの減速量が所定値DCtより小さいという第2条件(例えば
図11のステップST3B2参照。)、及び、制動力を発生させてから所定時間が経過した後も、状態観測部14によって推定された力の推定値である外力推定値festが所定値Ftより大きいという第3条件(例えば
図13のステップST3C2)のうちの少なくとも2つが満たされた場合に、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定するように構成されていてもよい。
【0203】
例えば、制御方式CSは、(1)第1条件及び第2条件の順に2つの条件が満たされた場合(例えば
図15のステップST3D1及びステップST3D2参照。)、(2)第2条件及び第3条件の順に2つの条件が満たされた場合、(3)第1条件及び第3条件の順に2つの条件が満たされた場合、又は、(4)第1条件、第2条件、及び第3条件の順に3つの条件が満たされた場合(例えば
図17のステップST3E1~ステップST3E3参照。)に、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定するように構成されていてもよい。
【0204】
この構成により、制御方式CSは、制動力が加えられた状態の妻引戸SDを動かそうとする外力の大きさ及び継続時間に応じて変化する、妻引戸SDの移動量、妻引戸SDの減速量、及び、外力推定値festの少なくとも2つに基づき、その外力が人力であるのか人力以外の外力であるのかをより正確に判定できる。その結果、制御方式CSは、人が妻引戸SDを開けるときの負担をより確実に且つ適時に軽減できる。
【0205】
妻引戸SDが人力によって開けられたか否かを判定する際に用いられる設定値は、例えば
図18~
図22のそれぞれにおけるステップST2A~ステップST2Cに示すように、妻引戸SDを備えた車両が走行中であるか否か、或いは、妻引戸SDを備えた車両が停車中であるか否か、或いは、妻引戸SDを備えた車両が走行中であるか停車中であるかに応じて切り替えられてもよい。この構成により、制御方式CSは、例えば、鉄道車両が走行中のときに比べ、鉄道車両が停車中のときの判定をより早期に行うことができる。そのため、制御方式CSは、開扉動作をより早期に開始させることによって、人が妻引戸を開けるときの負担を更に軽減することができる。或いは、制御方式CSは、例えば、鉄道車両が停車中のときに比べ、鉄道車両が走行中のときの判定をより正確に(より厳格に)行うことができる。そのため、制御方式CSは、誤判定をより確実に防止できる。
【0206】
制御方式CSは、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定しない場合に、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定してもよい。すなわち、制御方式CSによる判定は、妻引戸SDが人力によって開けられたか、又は、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたかの二者択一であってもよい。
【0207】
制御方式CSは、例えば
図2のステップST4に示すように、妻引戸SDが人力によって開けられたと判定した場合に、電動機MRによって妻引戸SDを開くように構成されていてもよい。この構成により、制御方式CSは、人が力を加えなくとも妻引戸SDを開けることができる。そのため、制御方式CSは、人が妻引戸SDを開けるときの負担を確実に軽減できる。
【0208】
制御方式CSは、例えば
図9のステップST5に示すように、妻引戸SDが人力以外の外力によって開けられたと判定した場合に、電動機MRによって妻引戸SDを閉じるように構成されていてもよい。この構成により、制御方式CSは、妻引戸SDが人力以外の外力によって開いてしまった場合であっても、妻引戸SDを直ぐに閉めることができる。そのため、制御方式CSは、その後に人が妻引戸SDを開けようとする際に、支援処理を遅滞なく開始させることによって、人が妻引戸を開けるときの負担を確実に軽減することができる。
【0209】
また、本発明の実施形態に係る制御装置CDは、例えば
図1に示すような電動式の妻引戸SDの制御装置CDであって、妻引戸SDが開いたときに制動力を発生させ、その制動力を発生させた状態で、妻引戸SDの状態に関する情報に基づき、妻引戸SDが人力によって開けられたか否かを判定するように構成されている。この構成により、制御装置CDは、人が妻引戸SDを開けたことを検知できる。そのため、制御装置CDは、妻引戸SDが人力によって開けられたことを正確に検知した上で、様々な機能を実行できる。例えば、制御装置CDは、人が妻引戸SDを開けるときの負担を軽減できる。妻引戸SDが人力によって開けられたことを正確に検知した上で、支援動作を開始させることができるためである。
【0210】
また、本発明の実施形態に係る制御プログラムは、電動式の妻引戸の制御プログラムであって、コンピュータ(マイクロコンピュータ)に、妻引戸SDが開いたときに制動力を発生させ、制動力を発生させた状態で、妻引戸SDの状態に関する情報に基づき、妻引戸SDが人力によって開けられたか否かを判定する機能を実現させるように構成されている。この制御プログラムは、典型的には、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されている。制御プログラムが記録された記録媒体は、プログラム製品として配布され得る。
【0211】
図23は、制御装置CDのハードウェア構成例を示す図である。
図23に示す制御装置CDは、バスBで相互に接続されるドライブ装置100、補助記憶装置102、メモリ装置103、CPU104、インタフェース装置105、表示装置106、及び入力装置107等を有する。制御装置CDの機能を実現させる制御プログラムは、例えば、CD-ROM等の記録媒体101によって提供される。そして、制御プログラムを記録した記録媒体101がドライブ装置100にセットされると、制御プログラムは、記録媒体101からドライブ装置100を介して補助記憶装置102にインストールされる。但し、制御プログラムは、必ずしも記録媒体101を介してインストールされる必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータからダウンロードされ且つインストールされてもよい。補助記憶装置102は、インストールされたプログラムを格納するとともに、必要なデータ等を格納するように構成されている。メモリ装置103は、制御プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置102からプログラムを読み出して格納するように構成されている。CPU104は、メモリ装置103に格納されたプログラムに従って制御装置CDの機能を実現するように構成されている。インタフェース装置105は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。表示装置106は、制御プログラムに関する情報等を表示するように構成されている。入力装置107は、キーボード又はマウス等で構成され、様々な指示を制御装置CDに入力するために用いられる。
【0212】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に限定されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形及び置換等が適用され得る。また、上述の実施形態を参照して説明された特徴のそれぞれは、技術的に矛盾しない限り、適宜に組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0213】
1・・・シーケンス制御部 2・・・速度パターン発生部 3・・・速度調節部 4・・・推力調節部 5・・・インバータ制御部 5A・・・DCチョッパ制御部 6・・・電流/推力変換部 7・・・回転モータ 8・・・エンコーダ 9・・・戸閉スイッチ 10・・・速度検出部 11・・・位置検出部 12・・・移動量検出部 13・・・減速量検出部 14・・・状態観測部 15・・・外力判定部 100・・・ドライブ装置 101・・・記録媒体 102・・・補助記憶装置 103・・・メモリ装置 104・・・CPU 105・・・インタフェース装置 106・・・表示装置 107・・・入力装置 B・・・バス CD・・・制御装置 CP・・・DCチョッパ CS・・・制御方式 DM・・・駆動機構 IV・・・インバータ MR・・・電動機 RL・・・レール RT・・・枕木 SD・・・妻引戸 SR・・・情報取得装置