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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】間仕切りパネル
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20250109BHJP
   H04R 1/32 20060101ALI20250109BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20250109BHJP
   H04R 3/12 20060101ALI20250109BHJP
   H04R 5/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H04R1/02 103E
H04R1/32 310A
H04R1/32 310Z
H04R1/40 310
H04R3/12
H04R5/02 G
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020215452
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022101074
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111763
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆
(72)【発明者】
【氏名】加藤 信一
(72)【発明者】
【氏名】山川 高史
(72)【発明者】
【氏名】大泉 好史
(72)【発明者】
【氏名】金子 勇
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-157857(JP,A)
【文献】特開2007-068074(JP,A)
【文献】特開2007-158958(JP,A)
【文献】特開2009-219068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/32
H04R 1/40
H04R 5/02
H04R 3/12
H04R 1/02
H04R 5/02
H04R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる位置に配置された複数の放音部であって、指向性の制御が可能な第1放音部と、指向性の定まった第2放音部と、を含む複数の放音部と、
前記第1放音部および前記第2放音部に音信号を増幅して供給するゲインのバランスを制御することにより前記第1放音部および前記第2放音部から放音される音の音像定位を制御する定位制御部と、
を含む間仕切りパネル。
【請求項2】
互いに異なる位置に配置された複数の放音部であって、指向性の制御が可能な第1放音部と、指向性の定まった第2放音部と、を含む複数の放音部と、
前記第1放音部および前記第2放音部に音信号を遅延させて供給する遅延時間のバランスを制御することにより前記第1放音部および前記第2放音部から放音される音の音像定位を制御する定位制御部と、
を含む間仕切りパネル。
【請求項3】
前記第1放音部は、放音面の曲率半径の制御が可能な平面スピーカを含む請求項1または2に記載の間仕切りパネル。
【請求項4】
前記第1放音部は、前記平面スピーカの放音面の曲率半径および傾斜が制御されることにより指向性が制御される請求項3に記載の間仕切りパネル。
【請求項5】
前記第1放音部は、複数の平面スピーカからなる請求項1または2に記載の間仕切りパネル。
【請求項6】
前記第1放音部は、前記複数の平面スピーカが制御されることにより全体としての指向性が制御される請求項5に記載の間仕切りパネル。
【請求項7】
前記第1放音部は、前記複数の平面スピーカの放音面の傾斜が制御されることにより全体としての指向性が制御される請求項6に記載の間仕切りパネル。
【請求項8】
前記第1放音部は、前記複数の平面スピーカの位置および傾斜が制御されることにより全体としての指向性が制御される請求項6に記載の間仕切りパネル。
【請求項9】
前記第1放音部は、前記複数の平面スピーカを駆動する各音信号を各々遅延させる遅延時間が制御されることにより全体としての指向性が制御される請求項6~8のいずれか1項に記載の間仕切りパネル。
【請求項10】
ユーザの頭部位置を検出する位置検出部と、
前記ユーザの頭部位置の検出結果に基づき、前記第1放音部の指向性を制御する指向性制御部と、
を含む請求項4、6~9のいずれか1項に記載の間仕切りパネル。
【請求項11】
前記位置検出部は、前記ユーザが発音する音声を収音し、収音した音声に基づいて前記頭部位置を検出する請求項10に記載の間仕切りパネル。
【請求項12】
前記位置検出部は、前記ユーザをカメラにより撮像し、撮像結果である画像の認識処理を行うことにより前記頭部位置を検出する請求項10に記載の間仕切りパネル。
【請求項13】
前記第2放音部は、ユーザの頭部背面の方向に放音する平面スピーカからなる請求項1~12のいずれか1項に記載の間仕切りパネル。
【請求項14】
前記間仕切りパネルは、複数のパネルを連結してなり、
前記定位制御部は、前記第1放音部が配置されたパネルに配置されたパネル制御部を含み、前記パネル制御部は当該第1放音部を制御する請求項1~12のいずれか1項に記載の間仕切りパネル。
【請求項15】
前記間仕切りパネルは、複数のパネルを連結してなり、
前記定位制御部は、前記第2放音部が配置されたパネルに配置されたパネル制御部を含み、前記パネル制御部は当該第2放音部を制御する請求項13に記載の間仕切りパネル。
【請求項16】
音響空間を囲う複数のパネルを連結してなる間仕切りパネルと、
前記間仕切りパネルに配置された複数の放音部であって、指向性の制御が可能な第1放音部と、指向性の定まった第2放音部と、を含む複数の放音部と、
前記複数の放音部を制御する制御部と、を含み、
前記制御部は、前記第1放音部および前記第2放音部に音信号を増幅して供給するゲインのバランスを制御することにより前記第1放音部および前記第2放音部から放音される音の音像定位を制御する定位制御部を含む音響装置。
【請求項17】
音響空間を囲う複数のパネルを連結してなる間仕切りパネルと、
前記間仕切りパネルに配置された複数の放音部であって、指向性の制御が可能な第1放音部と、指向性の定まった第2放音部と、を含む複数の放音部と、
前記複数の放音部を制御する制御部と、を含み、
前記制御部は、前記第1放音部および前記第2放音部に音信号を遅延させて供給する遅延時間のバランスを制御することにより前記第1放音部および前記第2放音部から放音される音の音像定位を制御する定位制御部を含む音響装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、快適な音響空間をユーザに提供する間仕切りパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、簡易な間仕切りパネルを用いて会話の守秘性を高めた音響空間を実現する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-91777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術は、間仕切りパネルによって区切られた空間内において、通話相手の音声が平面スピーカによってユーザに放音される。ここで、平面スピーカによって放音された音声は、間仕切りパネルによって区切られた空間内の広い領域に到達する。しかし、特許文献1に開示された技術は、空間内のユーザに聴かせる音声の音像定位を制御することが困難であるという問題があった。
【0005】
この発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、間仕切りパネルにより区切られた空間内における音像定位の制御を可能にする技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、互いに異なる位置に配置された複数の放音部と、前記複数の放音部に音信号を増幅して供給するゲインのバランスを制御することにより前記複数の放音部から放音される音の音像定位を制御する定位制御部と、を含む間仕切りパネルを提供する。
【0007】
また、この発明は、互いに異なる位置に配置された複数の放音部と、前記複数の放音部に音信号を遅延させて供給する遅延時間のバランスを制御することにより前記複数の放音部から放音される音の音像定位を制御する定位制御部と、を含む間仕切りパネルを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の一実施形態である間仕切りパネルを利用した音響装置の構成を示す斜視図である。
図2】同実施形態におけるコンピュータの機能構成を示すブロック図である。
図3】同実施形態における第1放音部の第1具体例の構成を示す断面図である。
図4】同第1具体例における可動スピーカ部の構成を示す平面図である。
図5】同実施形態の音響環境を示す平面図である。
図6】同実施形態の第1放音部の第2具体例における可動スピーカ部の構成を示す平面図である。
図7】同実施形態の第1放音部の第3具体例の構成を示す断面図である。
図8】同第3具体例における可動スピーカ部の構成を示す平面図である。
図9】同実施形態の第1放音部の第4具体例の構成を示す断面図である。
図10】同第4具体例における遅延制御スピーカ部の構成を示す平面図である。
図11】同実施形態における音像定位制御のための機能構成を例示するブロック図である。
図12】同実施形態における音像定位制御の第1具体例を示す図である。
図13】同実施形態における音像定位制御の第2具体例を示す図である。
図14】同実施形態における音像定位制御の第3具体例を示す図である。
図15】この発明の他の実施形態である間仕切りパネルの構成を示す側面図である。
図16】この発明の他の実施形態における平面スピーカの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態>
図1はこの発明の一実施形態である間仕切りパネル100を利用した音響装置1の構成を示す斜視図である。この音響装置1は、音響空間である会議用ブース110を囲う複数のパネル101~105を連結してなる間仕切りパネル100と、間仕切りパネル100に配置された複数の放音部(図示の例では、第1放音部21~24と第2放音部31および32)と、複数の放音部を制御する制御部としてのコンピュータ60を含む。
【0011】
図1に示すように、間仕切りパネル100は、高さが揃った矩形形状のパネル101、102、103、104および105を幅方向に連結してなるものである。ここで、パネル101、102、103、104および105は、幅方向に隣り合うもの同士が直角をなしており、直方体形状の会議ブース110を囲っている。また、パネル101および105は互いに離れており、このパネル101および105間の隙間が会議ブース110への出入口120となっている。
【0012】
会議ブース110内の床面の中央には、机130が配置される。また、会議ブース110内の床面には、この机130を間に挟んで、2個のソファが向かい合うように配置されている。1つはパネル102を背にしたソファ141、もう1つはパネル104を背にしたソファ142である。
【0013】
本実施形態では、遠隔会議において、ディスプレイ10と、指向性制御が可能な4個の第1放音部21~24と、指向性の定まった(あるいは固定された)2個の第2放音部31および32と、複数(図示の例では4個)の収音部41~44と、複数(図示の例では2個)のマスカ放音部51および52と、ノート型PC等のコンピュータ60とが利用される。
【0014】
ディスプレイ10は、遠隔会議において通話相手等の画像を表示するための手段であり、パネル103の内壁面の上部中央に配置される。第1放音部21~24は、遠隔会議において通話相手の音声を放音するための手段であり、放音面の曲率半径の制御が可能な平面スピーカを各々含む。また、本実施形態において、第1放音部21~24の各平面スピーカは、放音面の曲率半径および傾斜の両方の制御が可能である。図示の例において、第1放音部21はパネル101の上部中央に、第1放音部22はパネル103の上部においてディスプレイ10の右側に配置されており、各々、ソファ141に座ったユーザの左右の耳の方向に放音する。また、第1放音部23はパネル103の上部においてディスプレイ10の左側に、第1放音部24はパネル105の上部中央に配置されており、各々、ソファ142に座ったユーザの左右の耳の方向に放音する。
【0015】
第2放音部31および32は、第1放音部21~24と同様、遠隔会議において通話相手の音声を放音するための手段である。本実施形態において、第2放音部31および32は、強い指向性を有する平面スピーカにより構成されている。図示の例において、第2放音部31は、パネル102の内壁において、ソファ141の背もたれより上方の領域の略全域に亙って配置されており、ソファ141に座ったユーザの頭部背面の方向に放音する。また、第2放音部32は、パネル104の内壁において、ソファ142の背もたれより上方の領域の略全域に亙って配置されており、ソファ142に座ったユーザの頭部背面の方向に放音する。
【0016】
収音部41~44は、マイクロホン等により構成されており、遠隔会議において机130の上に配置され、会議ブース110内のユーザの音声を収音するための手段として機能する。マスカ放音部51および52は、スピーカ等により構成されており、会議ブース110内において発生した音声が会議ブース110外に漏れ出る場合に、その漏れ出る音声の聴取を困難にするマスカ音を発生する手段である。本実施形態において、マスカ放音部51および52は、パネル101および105の頂上部の出入口120寄りの位置に配置されており、ディスプレイ10に向かう方向の反対方向、具体的には会議ブース110の外側の下方に向けてマスカ音を放音する。本実施形態において、ディスプレイ10は、単に通話相手の画像等を表示するだけでなく、マスカ音の放音方向と逆方向にユーザを案内し、マスキング効果を高める役割を果たす。
【0017】
図2は本実施形態におけるコンピュータ60の機能構成を示すブロック図である。本実施形態において、コンピュータ60には遠隔会議のためのアプリケーションプログラムがインストールされている。コンピュータ60は、このアプリケーションプログラムを実行することにより遠隔会議制御部61およびブース内制御部62として機能する。
【0018】
遠隔会議制御部61は、インターネット等のネットワークを介してコンピュータ60と通話相手の会議端末とを接続し、両者間の画像および音声の双方向伝送を制御する手段である。
【0019】
ブース内制御部62は、表示制御部621と、通話制御部622と、位置検出部623と、指向性制御部624と、定位制御部625と、マスカ音制御部626とを含む。表示制御部621は、遠隔会議制御部61を介して通話相手の会議端末から画像を取得し、ディスプレイ10に表示させる手段である。通話制御部622は、収音部41~44により収音されたユーザの音声を遠隔会議制御部61を介して通話相手の会議端末に送信するとともに、遠隔会議制御部61を介して通話相手の会議端末から受信される音声を第1放音部21~24と第2放音部31および32とから放音する手段である。
【0020】
位置検出部623は、収音部41~44により収音される音声のレベルおよび位相に基づいて、音源であるユーザの頭部の位置を検出する手段である。指向性制御部624は、位置検出部623により検出されるユーザの頭部位置に基づいて、第1放音部21~24の指向性制御、第1放音部21~24と第2放音部31および32の放音レベルの制御を行う手段である。
【0021】
定位制御部625は、第1放音部21~24と第2放音部31および32のうちの複数の放音部により通話相手の音声の放音を行う場合に、ユーザに聴かせる音声の音像定位を制御する手段である。この音像定位の制御には、2つの態様がある。第1の態様において、定位制御部625は、複数の放音部に音信号を増幅して供給するゲインのバランスを制御することにより複数の放音部から放音される音の音像定位を制御する。第2の態様において、定位制御部625は、複数の放音部に音信号を遅延させて供給する遅延時間のバランスを制御することにより複数の放音部から放音される音の音像定位を制御する。この第1の態様および第2の態様は、いずれか一方のみを実行してもよく、両方を実行してもよい。なお、定位制御部625が行う音像定位の制御については、後に具体例を挙げて詳細に説明する。
【0022】
マスカ音制御部626は、誰も声を出していないときの会議ブース110内の暗騒音レベルを収音部41~44により測定し、この暗騒音レベルに基づいて、マスカ放音部51および52から放音するマスカ音のレベルを制御する手段である。
【0023】
以下、図1においてパネル104側からパネル102側に向かうX軸と、パネル101側からパネル103側に向かうY軸と、X軸およびY軸を含む水平面に対して直交するZ軸とからなる3次元直交座標系を想定し、本実施形態における第1放音部の第1具体例である第1放音部21~24の指向性制御について説明する。
【0024】
本実施形態において、指向性制御部624は、位置検出部623により検出されたユーザの頭部位置に基づき、第1放音部21~24の各放音面から放射された音がユーザの頭部領域内に到達するように第1放音部21~24の指向性を制御する指向性制御情報を発生する。
【0025】
この指向性制御情報は、第1傾斜角度情報と、第2傾斜角度情報と、曲率半径情報とを含む。ここで、第1傾斜角度情報および第2傾斜角度情報は、第1放音部21~24の各放音面のZ軸廻りの傾斜角度およびX軸廻りの傾斜角度を各々指定する情報であって、各放音面の中心における法線をユーザの頭部中心に向かせるための傾斜角度情報である。また、曲率半径情報は、第1放音部21~24の各放音面から放射された音をユーザの頭部付近において収束させるための各放音面の曲率半径を指定する情報である。第1放音部21~24では、指向性制御部624から各々に与えられる指向性制御情報に基づき、各々の放音面のZ軸廻りの傾斜角度、X軸廻りの傾斜角度および曲率半径を制御し、各々の放音面から放射される音をユーザの頭部に到達させる。
【0026】
会議ブース110内を複数のユーザが利用する場合には、4個の第1放音部21~24が複数のユーザに対する音声の提供を分担し、かつ、2個の第2放音部31および32が複数のユーザに対する音声の提供を分担する。
【0027】
例えばソファ141に第1ユーザが着席し、ソファ142に第2ユーザが着席したとする。この場合、例えば第1放音部21および22と第2放音部31が第1ユーザに音声を提供し、第1放音部23および24と第2放音部32が第2ユーザに音声を提供する。指向性制御部624は、このように第1ユーザに対する音の提供および第2ユーザに対する音の提供を分担させるための第1放音部21~24の指向性制御を行う。また、指向性制御部624は、第2放音部31から放射された音声は主に第1ユーザに届き、第2放音部32から放射された音声は主に第2ユーザに届くように、第2放音部31および32の出力音量を制御する。
【0028】
図3は第1放音部の第1具体例である第1放音部21の構成例を示す図である。図3は第1放音部21をX軸方向から見た断面図となっている。また、図示は省略したが、他の第1放音部22~24もこの第1放音部21と同じ構成である。
【0029】
図3に示すように、第1放音部21は、第1筐体211と、第2筐体212と、可動スピーカ部213とを含む。ここで、第1筐体211は、第2筐体212を収容するトレイ状の筐体であり、パネル101の内壁面に配置され、あるいは埋め込まれる。第2筐体212は、可動スピーカ部213を収容するトレイ状の筐体であり、Z軸方向に延びた2本の軸211Zにより第1筐体211の内壁に支持される。第2筐体212は、軸211Z廻りに回転可能である。可動スピーカ部213は、第1放音部21の放音面を有しており、X軸方向に延びた2本の軸212Xにより第2筐体212の内壁に支持される。可動スピーカ部213は、軸212X廻りに回転可能である。
【0030】
また、図3に示すように、第1放音部211は、第1傾斜制御部214と、第2傾斜制御部215とを有する。なお、実際には、第2傾斜制御部215は第1筐体211と第2筐体212との間に介在するが、図3では、図面が煩雑になるのを防止するため、第1筐体211における第2筐体212の反対側に図示されている。
【0031】
第1傾斜制御部214には、第1放音部21の放音面の軸211Z廻りの傾斜角度を指定する第1傾斜角度情報が指向性制御部624から与えられる。第1傾斜制御部214は、ステップモータを内蔵しており、このステップモータによって第2筐体212を回転駆動することにより、第1傾斜角度情報が示す角度だけ第1放音部21の放音面を軸211Z廻りに傾かせる。
【0032】
第2傾斜制御部215には、第1放音部21の軸212X廻りの傾斜角度を指定する第2傾斜角度情報が指向性制御部624から与えられる。第2傾斜制御部215は、ステップモータを内蔵しており、このステップモータによって可動スピーカ部213を回転駆動することにより、第2傾斜角度情報が示す角度だけ第1放音部21の放音面を軸212X廻りに傾かせる。
【0033】
図4は可動スピーカ部213の構成例を示す断面図である。図4に示すように、可動スピーカ部213は、曲率半径制御部216と、可撓性の平面スピーカ217と、曲率半径制御部216から突き出して平面スピーカ217を支持する複数の支持板218とを有する。
【0034】
平面スピーカ217は、可撓性を有する薄い平板状のスピーカである。この平面スピーカ217は、例えば静電型のスピーカである。
【0035】
曲率半径制御部216は、複数の支持板218を駆動する複数のステップモータを内蔵している。また、曲率半径制御部216は、メモリを内蔵しており、このメモリには、各種の曲率半径に対応付けて、その曲率半径を有する円筒面形状の放音面を実現するための複数の支持板218の突き出し長に関する情報が記憶されている。
【0036】
曲率半径制御部216には、第1放音部21の放音面、すなわち、可動スピーカ部213の放音面の曲率半径を指定する曲率半径情報が指向性制御部624から与えられる。曲率半径制御部216は、指向性制御部624から与えられた曲率半径情報に対応付けられた複数の支持板218の突き出し長に関する情報をメモリから読み出し、メモリから読み出した情報に従って複数の支持板218の突き出し長を制御する。このようにして、可動スピーカ部213の平面スピーカ217の放音面は、曲率半径情報により指定された曲率半径の放音面となる。この結果、可動スピーカ部213の平面スピーカ217の放音面から放音される音は、放音面である円筒形状の中心軸に収束する。
【0037】
図5は本実施形態において会議ブース110内に実現される音響環境を例示する平面図である。図5に示す例では、机130と第2放音部31の間にユーザ71の頭部がある。位置検出部623は、収音部41~44によって収音される音声に基づいて、音源であるユーザの頭部71の位置を検出する。第1放音部21および22と、第2放音部31は、遠隔会議の通話相手からの音声を放音する。その際、指向性制御部624は、位置検出部623により検出されたユーザ71の頭部の位置に基づき、第1放音部21および22の指向性制御と、第2放音部31の出力音量の制御を行う。この制御が行われる結果、第1放音部21および22の円筒形状の各放音面からユーザ71の頭部領域に通話相手の音声が届き、また、第2放音部31からも通話相手からの音声が平面波となって届く。
【0038】
このように本実施形態によれば、間仕切りパネル100により区切られた空間内の最適な領域(すなわち、ユーザ71の頭部がある領域)に通話相手の音声を放音することができる。従って、間仕切りパネル100により区切られた空間外への通話音声の漏洩を防止することができる。
【0039】
本実施形態の第1放音部21~24に関しては各種の態様が考えられる。第1放音部21~24の第2具体例では、可動スピーカ部213(図4参照)が図6に示す可動スピーカ部213aに置き換えられる。第1具体例では、可撓性を有する薄板状の平面スピーカ217が可動スピーカ部213(図4参照)に設けられていた。これに対し、第2具体例では、幅の狭い短冊状の平面スピーカ217aを幅方向に複数連結した平面スピーカ217a’が可動スピーカ部213aに設けられている。
【0040】
この平面スピーカ217a’において、複数の短冊状の平面スピーカ217aは、放音面が平面であるため、平面波を放射する面音源として機能する。しかしながら、平面スピーカ217a’を構成する各平面スピーカ217aは、隣の平面スピーカ217aに対して相対的に回転可能である。
【0041】
そして、第2具体例を採用した実施形態において、曲率半径制御部216は、複数の平面スピーカ217aを制御、具体的には複数の平面スピーカ217aの位置および傾斜を制御することにより第1放音部21の可動スピーカ部213a全体としての指向性を制御する。
【0042】
さらに詳述すると、曲率半径制御部216は、指向性制御部624から与えられる曲率半径情報に基づいて、平面スピーカ217a’を支持する複数の支持板218の突き出し長を制御する。この結果、複数の平面スピーカ217aの各放音面の位置および傾斜が制御され、複数の平面スピーカ217aの各放音面は、全体として、曲率半径情報が示す曲率半径を有する円筒形状の放音面となる。
【0043】
図7は第1放音部の第3具体例である第1放音部21bの構成を示す断面図である。この第3具体例では、上記第1具体例である第1放音部21~24が図7に示す構成に置き換えられている。第1放音部21bでは、第1具体例である第1放音部21(図4参照)における可動スピーカ部213が、図7に示す可動スピーカ部213bに置き換えられている。
【0044】
図8は可動スピーカ部213bの構成を示す平面図である。図8に示すように、可動スピーカ部213bは、第3傾斜制御部216bと、複数の短冊状の平面スピーカ217bと、第3傾斜制御部216bに各々の基端が固定され、各々の先端が各平面スピーカ217bの中心を支持する複数の支持板218bとを有する。第3傾斜制御部216bは、複数の平面スピーカ217bを複数の支持板218bの先端の支持軸廻り(図示の例ではZ軸廻り)に傾かせる複数のステップモータを内蔵している。
【0045】
第3傾斜制御部216bは、複数の平面スピーカ217bを制御、具体的には各平面スピーカ217bの傾斜を制御することにより第1放音部の可動スピーカ部213b全体としての指向性を制御する。
【0046】
第3傾斜制御部216bには、指向性制御部624から曲率半径情報が与えられる。第3傾斜制御部216bは、この曲率半径情報に基づいて、複数の平面スピーカ217bのZ軸廻りの傾斜角度を制御する。
【0047】
さらに詳述すると、第3傾斜制御部216bは、複数の平面スピーカ217bのうちの中央の平面スピーカ217bの放音面の中心線(当該平面スピーカ217bの長手方向に延びた中心線)から法線方向に曲率半径情報が示す曲率半径(すなわち、焦点距離)だけ離れた直線を音が収束する直線(以下、便宜上、収束線という)とする。そして、第3傾斜制御部216bは、他の平面スピーカ217bの放音面の中心線における法線群がこの収束線を通過するように各平面スピーカ217bのZ軸廻りの傾斜角度を制御する。このようにすることで、可動スピーカ部213bの複数の平面スピーカ217bから放射される音は、全て曲率半径情報により定まる収束線に収束することとなる。
【0048】
第3具体例において、複数の平面スピーカ217bの放音面は、円筒形状の放音面ではないので、同じ音信号を複数の平面スピーカ217bに与えると、各平面スピーカ217bから収束線に到達する音波に位相差が生じる可能性がある。そこで、各平面スピーカ217aに供給する音信号に対して遅延処理を施し、このような位相差を補償することが好ましい。
【0049】
図9は第1放音部の第4具体例である第1放音部21cの構成を示す断面図である。第1放音部21cでは、上記第1具体例の第1放音部21(図4参照)における可動スピーカ部213が、図9に示す遅延制御スピーカ部213cに置き換えられている。
【0050】
図10は遅延制御スピーカ部213cの構成を示す平面図である。図10に示すように、遅延制御スピーカ部213cは、遅延制御部216cと、幅の狭い複数の短冊状の平面スピーカ217cとを有する。ここで、平面スピーカ217cは、幅が狭いため、放音面の振動により発生する音は、放音面の中心線(短冊形状の平面スピーカ217bの長手方向に延びた中心線)の周囲の全方向に伝搬する。すなわち、幅が狭い平面スピーカ217cは、円筒形状の波面を有する音波を周囲に放射する線音源として機能する。
【0051】
遅延制御部216cは、複数の平面スピーカ217cを制御、具体的には各平面スピーカ217cに与える音信号の遅延時間を制御することにより第1放音部21の遅延制御スピーカ部213c全体としての指向性を制御する。
【0052】
遅延制御部216cには、指向性制御部624から曲率半径情報が与えられる。遅延制御部216cは、放音対象である音信号を遅延した複数の遅延音信号を複数の平面スピーカ217cに供給する手段であり、複数の平面スピーカ217cから放射された音が曲率半径情報により定まる収束線に同相で到達するように、各遅延音信号の遅延時間を制御する手段である。
【0053】
さらに詳述すると、遅延制御部216cは、複数の平面スピーカ217cのうちの中央の平面スピーカ217cの放音面の中心線(当該平面スピーカ217cの長手方向に延びた中心線)から法線方向に曲率半径情報が示す曲率半径(すなわち、焦点距離)だけ離れた直線を音が収束する収束線とする。そして、この中央の平面スピーカ217cに供給する遅延音信号の遅延時間を所定の最大値に設定する。
【0054】
次に遅延制御部216cは、中央の平面スピーカ217c以外の各平面スピーカ217cについて、当該平面スピーカ217cから収束線までの行路と、中央の平面スピーカ217cから収束線までの音の行路との行路差を求め、その行路差分の遅延時間を遅延時間の最大値から差し引くことにより、当該平面スピーカ217cに供給する遅延音信号の遅延時間を求める。
【0055】
遅延制御部216cは、このようにして各平面スピーカ217cに供給する遅延音信号の遅延時間を求め、放音対象の音信号から各遅延音信号を生成する。このようにすることで、遅延制御スピーカ部213cの複数の平面スピーカ217cから放射される音は、全て曲率半径情報により定まる収束線に収束することとなる。
【0056】
次に具体例を挙げ、本実施形態において行われる音像定位の制御について説明する。図11は本実施形態における音像定位のための制御の第1具体例の機能構成を示すブロック図である。また、図12は第1具体例における音像定位処理の態様を示す図である。
【0057】
図12に示すように、第1具体例では、パネル102において、第2放音部31の上に斜めに傾いた第1放音部25が配置される。また、第1具体例では、パネル104において、第2放音部32の上に斜めに傾いた第1放音部26が配置される。これらの第1放音部25および26は、上述した放音面の曲率半径の制御が可能な平面スピーカ等、指向性制御が可能なスピーカが好ましい。第1具体例では、ソファ141に座ったユーザ71に対し、パネル104の第1放音部26とパネル102の第2放音部31とが通話相手の音声を放音する。また、第1具体例では、ソファ142に座ったユーザ72に対し、パネル102の第1放音部25とパネル104の第2放音部32とが通話相手の音声を放音する。
【0058】
パネル102および104には、コンピュータ60(図1参照)のD/A変換器61eから放音対象である音信号が供給される。パネル102では、定位制御部625による制御の下、D/A変換器61eから供給される音信号を遅延時間td1だけ遅延させ、ゲインG1で増幅し、第1放音部25に供給する。また、パネル102では、定位制御部625による制御の下、D/A変換器61eから供給される音信号を遅延時間td2だけ遅延させ、ゲインG2で増幅し、第2放音部31に供給する。また、パネル104では、定位制御部625による制御の下、D/A変換器61eから供給される音信号を遅延時間td3だけ遅延させ、ゲインG3で増幅し、第1放音部26に供給する。また、パネル104では、定位制御部625による制御の下、D/A変換器61eから供給される音信号を遅延時間td4だけ遅延させ、ゲインG4で増幅し、第2放音部32に供給する。
【0059】
本実施形態において定位制御部625(図2参照)は、ユーザ71に聴かせる音声の音像位置に基づいて、遅延時間td3またはゲインG3と、遅延時間td2またはゲインG2とのバランスを制御し、ユーザ72に聴かせる音声の音像位置に基づいて、遅延時間td1またはゲインG1と、遅延時間td4またはゲインG4とのバランスを制御する。
【0060】
具体的には、ゲインG3をゲインG2に対して大きくすることにより、ユーザ71が聴く音声の音像位置はユーザ71の前方へ移動する。また、遅延時間td3を遅延時間td2に比べて短くすることによっても、ユーザ71が聴く音声の音像位置はユーザ71の前方へ移動する。ユーザ72が聴く音声の音像位置に関しても同様であり、遅延時間td1またはゲインG1と、遅延時間td4またはゲインG4との関係に依存する。
【0061】
図13は本実施形態において行われる音像定位の制御の第2具体例を示す図である。この第2具体例では、天井面をなすパネル106がユーザ71の上方に設けられている。そして、このパネル106とユーザ71の背後のパネル102との境界部を跨いで第1放音部27が配置されている。この第1放音部27の放音面は斜め下方のユーザ71の頭部に向いている。
【0062】
この態様では、第1放音部27と第2放音部31がユーザ71に聴かせる通話相手の音声を放音する。第2具体例では、定位制御部625による制御の下、放音対象の音信号を遅延時間td6だけ遅延させ、ゲインG6で増幅し、第1放音部27に供給する。また、第2具体例では、定位制御部625による制御の下、同音信号を遅延時間td2だけ遅延させ、ゲインG2で増幅し、第2放音部31に供給する。
【0063】
この態様において、コンピュータ60(図1参照)は、ゲインG6およびG2のバランスまたは遅延時間td6およびtd2のバランスを制御することにより、ユーザ71に聴かせる音声の音像定位を制御する。具体的には、ゲインG6をゲインG2に比較して大きくすることにより、ユーザ71が聴く音声の音像位置はユーザ71の頭部の上方に移動する。また、遅延時間td6を遅延時間td2に比較して短くした場合にも、ユーザ71が聴く音声の音像位置がユーザ71の頭部の上方に移動する。
【0064】
本実施形態では、3個以上の放音部を音像定位に関与させてもよい。図14に示す第3具体例では、パネル101に配置された第1放音部101と、パネル103に配置された第1放音部102と、パネル102に配置された第2放音部31が、ユーザ71に聴かせる通話相手の音声を放音する。第3具体例では、定位制御部625による制御の下、放音対象の音信号を遅延時間td7だけ遅延させ、ゲインG7で増幅し、第1放音部21に供給する。また、定位制御部625による制御の下、同音信号を遅延時間td8だけ遅延させ、ゲインG8で増幅し、第1放音部22に供給する。また、定位制御部625による制御の下、同音信号を遅延時間td2だけ遅延させ、ゲインG2で増幅し、第2放音部31に供給する。
【0065】
この態様において、コンピュータ60の定位制御部625(図1参照)は、ゲインG7、G2およびG8のバランスまたは遅延時間td7、td2およびtd8のバランスを制御することにより、ユーザ71に聴かせる音声の音像定位を制御する。具体的には、ゲインG2がゲインG8に比較して小さく、ゲインG7がゲインG2に比較して小さい場合には、ユーザ71が聴く音声の音像位置はディスプレイ10側に移動する。また、遅延時間td2を遅延時間td7に比較して短く、遅延時間td8を遅延時間td2に比較して短い場合にも、ユーザ71が聴く音声の音像位置はディスプレイ10側に移動する。
【0066】
以上のように、本実施形態によれば、間仕切りパネル100に配置された複数の放音部の制御によりユーザに聴かせる音声の音像定位を制御することができる。従って、遠隔会議において、ユーザにとって快適な音像定位での音響再生を行うことができる。
【0067】
<他の実施形態>
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態があり得る。例えば次の通りである。
【0068】
(1)図15はこの発明の他の実施形態である間仕切りパネル100dの構成を示す側面図である。本実施形態における間仕切りパネル100dは、図15に示すパネル101d~105dを、隣り合ったもの同士が互いに直角をなすように、幅方向に連結することにより構成される。
【0069】
パネル101d~105dの各々には、パネル制御部160と、パネル内配線170とが設けられている。パネル内配線170は、1本の配線でもよく、複数本の配線でもよい。パネル101d~105dのパネル内配線170は、パネル101d~105dが各々に設けられたコネクタにより連結されることにより相互に接続される。また、パネル101d~105dのパネル制御部160は、パネル内配線170を介して他のパネルのパネル制御部160と接続される。
【0070】
パネル101d~105dの各々には、例えば上記実施形態における第1放音部21~24、第2放音部31および32、ディスプレイ10のいずれか1つまたは複数が配置される。パネル101d~105dのパネル制御部160は、各パネルに配置された装置の制御を行う。すなわち、第1放音部が配置されたパネルのパネル制御部160は、同第1放音部を制御する第1パネル制御部として機能する。また、第2放音部が配置されたパネルのパネル制御部160は、同第2放音部を制御する第2パネル制御部として機能する。
【0071】
本実施形態において、パネル101d~105dのパネル制御部160およびパネル内配線170は、パネル101d~105dが各々に設けられたコネクタを介して連結されることにより、LAN(Local Area Network)を構成する。
【0072】
ここで、パネル101d~105dのパネル制御部160うちの1つはマスタ制御部として機能し、他はスレーブ制御部として機能する。マスタ制御部であるパネル制御部160は、上記第1実施形態(図1参照)のコンピュータ60と接続され、スレーブ制御部であるパネル制御部160に対し、パネル内配線170を介して音信号や各種の制御情報を供給する。
【0073】
例えば図1におけるコンピュータ60がパネル103dのパネル制御部160に接続されていたとする。コンピュータ60が第1放音部21に対して指向性制御情報を送る場合には、マスタ制御部であるパネル103dのパネル制御部160が、コンピュータ60から指向性制御情報を受け取って、スレーブ制御部であるパネル101dのパネル制御部160に送る。そして、パネル101dのパネル制御部160は、受け取った指向性制御情報に基づいて第1放音部21の指向性を制御する。
【0074】
本実施形態においても上記実施形態と同様な効果が得られる。また、本実施形態によれば、パネル101d~105dのパネル制御部160が各パネルに配置された装置の制御を行うので、コンピュータ60(図1参照)の制御負担が軽減される利点がある。
【0075】
(2)間仕切りパネルに設ける第1放音部の数、第2放音部の数は任意である。
【0076】
(3)上記実施形態では、5枚のパネルにより間仕切りパネルを構成したが、間仕切りパネルを構成するパネルの枚数も任意である。
【0077】
(4)第1放音部の第4具体例では、遅延制御スピーカ部213cから放射される音が収束する収束線を複数の平面スピーカ217cのうちの中央のものの放音面の法線方向に位置させたが、遅延制御部216cの処理により、この法線方向から傾いた方向に収束線を位置させてもよい。この場合、図9の第1傾斜制御部214を省略してもよい。
【0078】
(5)間仕切りパネル100のパネルに配置された第1放音部をパネルの壁面に平行な面内において回転可能な構成にしてもよい。この場合、第1放音部の放音面から放射される音が収束する収束線を回転させることができ、第1放音部の指向性制御の自由度が増す効果が得られる。
【0079】
(6)間仕切りパネルを構成する各パネルを、第1放音部または第2放音部の取り付けが容易な構成にしてもよい。例えば第1放音部または第2放音部の背面に突起等の第1係合部を設ける。そして、間仕切りパネルを構成する各パネルに、この第1係合部と係合する第2係合部を設け、第1係合部を第2係合部に係合させることにより第1放音部または第2放音部をパネルに取り付けるのである。この場合において、第1放音部または第2放音部のパネルへの取り付け態様の変更が容易な構成としておくことが好ましい。例えばパネルには、第1放音部または第2放音部の突起を収容して第1放音部または第2放音部を支持するレールを設ける。この態様によれば、第1放音部または第2放音部のパネルへの取り付け後、第1放音部または第2放音部をパネルのレールに沿ってスライドすることが可能である。このため、第1放音部または第2放音部の指向性制御を簡易に行うことが可能になる。
【0080】
(7)上記実施形態では、位置検出部623によるユーザの頭部位置の検出結果に基づいて、指向性制御部624が自動的に第1放音部21~24等の指向性制御を行った。しかし、そのようにする代わりに、平面スピーカの傾きを手動で制御する等により、第1放音部21~24等の指向性制御を手動で行うようにしてもよい。
【0081】
(8)第1放音部21~24等と第2放音部31および32を構成する複数のスピーカの音量および周波数特性を自動制御する手段を間仕切りパネル100に設けてもよい。
【0082】
(9)上記実施形態において、位置検出部623は、収音部41~44により収音された音声に基づいて、ユーザの頭部位置を検出した。しかし、そのようにする代わりに、位置検出部623は、カメラによりユーザを撮像し、撮像結果である画像の認識処理を行うことにより、ユーザの頭部位置を検出してもよい。
【0083】
(10)間仕切りパネル100に天井面パネルを設け、この天井面パネルの内壁に収音機能を兼ね備えた放音部を配置してもよい。このような収音機能を兼ね備えた放音部として、図16に示す平面スピーカ140が考えられる。
【0084】
図16に示すように、平面スピーカ140は、各々導電性を有する薄板である固定電極141および142と振動板143とを有する。ここで、固定電極141と振動板143との間および固定電極142と振動板143との間には絶縁物によるスペーサ144が挟まれており、固定電極141と振動板143と固定電極142は相互に離間した状態を保っている。
【0085】
固定電極141および142は、トランス150の2次側コイル152の両端に接続されている。振動板143は、直流電源153を介して2次側コイル152の中点に接続されている。
【0086】
トランス150には1次側コイル151aおよび151bがある。1次側コイル151aには通話相手の音声波形を示す音信号が与えられる。この結果、音信号に対応した交流電圧が2次側コイル152に発生する。ここで、2次側コイル152に発生する交流電圧の極性が正である場合、振動板143から固定電極141に向かう電界強度が減少し、振動板143から固定電極142に向かう電界強度が増加するため、振動板143は固定電極142側に移動する。また、2次側コイル152に発生する交流電圧の極性が負である場合、振動板143から固定電極141に向かう電界強度が増加し、振動板143から固定電極142に向かう電界強度が減少するため、振動板143は固定電極141側に移動する。このため、振動板143が音信号に応じて振動し、振動板143の板面の法線方向に平面波が放射される。
【0087】
外来の音が振動板143を振動させると、この振動板143の振動に応じた交流電圧が固定電極141および142間に発生し、この交流電圧に対応した交流電圧が1次側コイル151bに発生する。減算部155は、この1次側コイル151bに発生する交流電圧から1次側コイル151aに与えられる音信号を減算し、減算結果である音信号を収音結果としてコンピュータ60に供給する。
【0088】
(11)上記実施形態において、収音部41~44をコンピュータ60にケーブルで接続し、このケーブルを引っ張ることにより収音部41~44をユーサの近傍まで移動できるようにしてもよい。
【0089】
(12)第2放音部31および32を構成する平面スピーカを2分割し、分割した2枚の平面スピーカから音声を互いに逆相で放射するようにしてもよい。また、分割した2枚の平面スピーカの間に収音部41~44のいずれかを配置してもよい。
パネル内壁を吸音しても良い。
【0090】
(13)第1放音部21~24または第2放音部31および32を間仕切りパネル100に対して着脱可能にし、ワイヤレス給電できるようにしてもよい。
【0091】
(14)上記実施形態の間仕切りパネル100は、自立した衝立形状であったが、音響空間を囲うフレームの内壁に、上記間仕切りパネル100を構成する各パネルを設置することで、上記実施形態の音響装置1を構成してもよい。
【0092】
(15)第1放音部21~24または第2放音部31および32から通話相手の音声とマスカ音とのミックス音を放音してもよい。
【0093】
(16)上記実施形態では、ディスプレイ10がマスカ音の放音方向と逆方向にユーザを誘導する役割を果たしたが、ディスプレイ10以外の手段、例えばホワイトボードがこの役割を果たしてもよい。
【0094】
(17)上記実施形態では間仕切りパネルの内側向きにのみ平面スピーカを設置したが、外側向きに設置し、上記マスカ音を再生してもよい。その場合、3つの様態が考えられる。
【0095】
第1の態様では、当該間仕切りパネルにより囲われた空間が1つだけ存在する場合において、第1放音部21~24、第2放音部31および32の裏面に平面スピーカを配置し、これらの平面スピーカによりマスカ音を再生する。これにより当該空間内の会話の秘匿性を高められる。
【0096】
第2の態様では、各々間仕切りパネルにより囲われた複数の空間が図1のX軸方向に連なっており、第2放音部31および32の背面、すなわち、隣の空間にとっての第2放音部31および32の位置に平面スピーカを配置し、隣の空間の遠隔会議の通話相手の音声と上記マスカ音をミックスして再生する。これにより、遠隔会議の通話相手の音声を再生するスピーカとマスカ音を再生するスピーカを兼ねつつ隣り合うブース間の秘匿性を高めることができる。
【0097】
第3の態様では、表裏に平面スピーカを各々備え、脚部材により自立して移動する1枚のパネルにより間仕切りパネルが構成される。この場合、パネルにおいて、ユーザのいる側の平面スピーカには遠隔会議の通話相手の音声を再生させ、反対側の平面スピーカからはマスカ音を再生させる。これにより、ブースよりも手軽に秘匿性を保った会話ができる空間を提供できる。
【0098】
第3の態様において、遠隔会議の通話相手の音声を再生する平面スピーカはなくてもよい。また、マスカ音を再生する平面スピーカを配置する面と反対側の面に、上記ディスプレイやホワイトボード面を配してもよい。これにより、当該自立パネルをオープンスペースに無作為に分散配置するだけで、マスカ音を再生する平面スピーカの反対側の位置に話者を自然と誘導することができる。
【符号の説明】
【0099】
100,100d……間仕切りパネル、101~105,101d~105d……パネル、110……会議用ブース、120……出入口、130……机、141,142……ソファ、10……ディスプレイ、21~27……第1放音部、31,32……第2放音部、41~44……収音部、51,52……マスカ放音部、60……コンピュータ、61……遠隔会議制御部、62……ブース内制御部、621……表示制御部、622……通話制御部、623……位置検出部、624……指向性制御部、625……定位制御部、626……マスカ音制御部、71,72……ユーザ、211……第1筐体、212……第2筐体、213,213a,213b……可動スピーカ部、216……曲率半径制御部、216b……第3傾斜制御部、217,217a,217a’,217b……平面スピーカ、213c……遅延制御スピーカ部、216c……遅延制御部、218……支持板、211Z,212X……軸、160,162e,164e……パネル制御部、170……パネル内配線、61e……D/A変換器、140……平面スピーカ、141,142……固定電極、143……振動板、144……スペーサ、150……トランス、151a,151b……1次側コイル、152……2次側コイル、153……直流電源、155……減算部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16