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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20250109BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20250109BHJP
   G03G 9/09 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G03G9/097 374
G03G9/08 391
G03G9/09
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020218791
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022103890
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 啓司
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-062315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
G03G 9/08
G03G 9/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂および金属顔料を含有するトナー母体粒子と、
ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子を含有する外添剤と、
を含み、
前記金属顔料の少なくとも一部は、前記トナー母体粒子の表面に存在しており、
前記ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の数平均一次粒径が8~40nmである、
静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記トナー母体粒子は、前記結着樹脂の粒子と前記金属顔料とを凝集及び融着させたものである、
請求項1に記載の静電荷像現像用トナー
【請求項3】
前記ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の量が、前記トナー母体粒子の量に対して0.05~2.0質量%である、
請求項1または2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子中のランタン原子の量が、3~12質量%である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子が、下記一般式(1)で表されるカップリング剤で表面処理されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
X-M(OR) (1)
(一般式(1)において、
Mはチタンまたはケイ素を表し、
Xは炭素数4~12のアルキル基を表し、
Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基を表す)
【請求項6】
前記カップリング剤で表面処理された前記ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の炭素含有率が、1.0~8.0質量%である、
請求項5に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
下記式(A)により表される前記トナーの粒子表面におけるランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の付着強度が、45~85%の範囲内にある、
請求項1~6のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の付着強度=(超音波処理後の前記静電荷像現像用トナーのSr原子存在比率/超音波処理前の前記静電荷像現像用トナーのSr原子存在比率)×100・・・式(A)
(式(A)における、超音波処理後の前記静電荷像現像用トナーは、前記静電荷像現像用トナー3gを100mLのプラスチックカップ中で、ポリオキシエチルフェニルエーテルの0.2質量%水溶液40gに湿潤させ、超音波式ホモジナイザーにて、超音波エネルギーを、電流値60μAで3分間印加した後、目開き1μmのフィルターを使用して濾過を行い、60mLの純水を用いて洗浄し、乾燥した後の前記静電荷像現像用トナーであり、
式(A)における、Sr原子存在比率は、前記静電荷像現像用トナーの表面をX線電子分光で測定して得られる、個々の原子のピーク面積から、下記式(B)に基づいて算出される値である
Sr原子存在比率=(ピーク面積Sr/(ピーク面積+ピーク面積+ピーク面積Si+ピーク面積Ti+ピーク面積Sr))×100 atom%・・・式(B))
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式による画像形成装置の普及に伴い、その用途が多様化している。当該画像形成装置によって、商業印刷分野でみられるような、高付加価値画像の出力が求められることがあり、例えば、金属光沢を有する画像の形成も求められている。金属光沢を有する画像は、通常、光輝性トナーを用いて形成される。
【0003】
光輝性トナーは、結着樹脂の他に、アルミニウムや、黄銅、青銅、ニッケル、ステンレス、亜鉛等の金属粉末からなる金属顔料を含む(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-62315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような結着樹脂と金属顔料とを含む光輝性トナーでは、結着樹脂の帯電特性と、金属顔料の帯電特性とが大きく異なる。つまり、金属顔料が存在する部分と、存在しない部分とでは、帯電特性が大きく異なる。そのため、トナー表面における帯電特性が不均一になりやすかった。トナー表面の帯電特性が不均一であると、連続印字時に、トナーの帯電量分布が広くなる。そして、帯電量の低い光輝性トナーは、画像形成装置の感光層等から脱落しやすく、大気中に飛散しやすい、という課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものである。具体的には、金属顔料を含み、連続印字時にもトナー飛散発生を抑制できる、静電荷像現像用トナーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の静電荷像現像用トナーを提供する。
結着樹脂および金属顔料を含有するトナー母体粒子と、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子を含有する外添剤と、を含む、静電荷像現像用トナー。
【発明の効果】
【0008】
本発明の静電荷像現像用トナーによれば、連続印字を行った際にも静電荷像現像用トナーが飛散し難く、さらに金属光沢を有する高付加価値の画像を形成可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明は当該実施の形態に限定されない。
【0010】
前述のように、従来の金属顔料を含む光輝性トナーでは、光輝性トナー表面の帯電特性が不均一になりやすく、連続印字時に光輝性トナーが飛散しやすかった。光輝性トナーが飛散すると、環境に影響を及ぼすだけでなく、所望の領域以外に光輝性トナーが付着してしまい、高品質な画像が得られ難い、という課題もあった。
【0011】
当該課題に対して、本発明者らが鋭意検討したところ、結着樹脂および金属顔料を含有するトナー母体粒子と、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子を含有する外添剤と、を含む静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」とも称する)によれば、連続印字を行った場合であっても、トナーが飛散し難いことが明らかとなった。その理由としては、以下のように考えられる。
【0012】
結着樹脂および金属顔料を含有するトナー母体粒子の表面には凹凸があり、通常、金属顔料を含む箇所が凸部となり、金属顔料を含まない箇所が凹部になる。一方、ランタン含有チタン酸ストロンチウムは球形状に近い構造を有し、上記凹凸を有する母体粒子と混合すると、トナー母体粒子表面の凹部に入り込む。また、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子は、上記金属顔料と帯電特性が近い。したがって、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子が、トナー母体粒子表面の凹部に入り込むと、トナー表面の帯電特性が均一になる。
【0013】
また、ランタン含有チタン酸ストロンチウムは比較的比重が大きく、トナー母体粒子と混合した際に、その一部がトナー母体粒子内に入りこんで比較的強固に固定される。したがって、連続印字を行ったり、現像器内でストレスを受けても、トナー母体粒子表面でランタン含有チタン酸ストロンチウムが移動したり遊離したりし難く、十分にその効果を発揮できる。
【0014】
ここで、本発明のトナーは、トナー母体粒子および外添剤を少なくとも含んでいればよいが、本発明の目的および効果を損なわない範囲において、他の成分を含んでいてもよい。また、本発明のトナーは、一成分現像剤であってもよく、二成分現像剤であってもよい。トナーが二成分現像剤である場合には、トナー母体粒子および外添剤(以下、これらをまとめて「トナー粒子」とも称する)の他に、キャリア粒子をさらに含む。以下、各成分について詳しく説明する。
【0015】
(1)トナー母体粒子
トナー母体粒子は、少なくとも結着樹脂および金属顔料を少なくとも含む。必要に応じて離型剤等をさらに含んでいてもよい。
【0016】
(結着樹脂)
結着樹脂は、トナー粒子を記録媒体に結着させる機能を担う樹脂である。結着樹脂は、非晶性樹脂および結晶性樹脂を含むことが好ましい。
【0017】
結着樹脂の含有量は、トナー母体粒子の総量に対して50~95質量%が好ましく、70~90質量%がより好ましい。結着樹脂の量が当該範囲であると、トナーを用いて形成した画像が記録媒体に定着しやすくなる。
【0018】
・非晶性樹脂
結着樹脂が含む非晶性樹脂は、結晶性を実質的に有さない樹脂であればよい。本明細書において、結晶性を実質的に示さないとは、当該樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さないことをいう。
【0019】
非晶性樹脂の例には、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、非晶性ポリエステル樹脂等が含まれる。これらの中でも、環境差による変動が小さいという理由から、ビニル樹脂が好ましい。結着樹脂は、非晶性樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0020】
ビニル樹脂は、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、その例には(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等が含まれる。これらの中でも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル樹脂がより好ましい。本明細書において、(メタ)アクリルとは、メタクリル、アクリル、およびこれらの混合物を表す。
【0021】
以下、好ましいスチレン・(メタ)アクリル酸エステル樹脂(以下、「スチレン・(メタ)アクリル樹脂」とも称する)について説明する。
【0022】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂は、少なくとも、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて得られる樹脂である。本明細書におけるスチレン系単量体には、CH=CH-Cの構造式で表されるスチレンの他に、スチレン骨格に、任意の側鎖や官能基が結合した化合物も含む。また、本明細書における(メタ)アクリル酸エステル単量体には、CH=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル化合物やメタクリル酸エステル化合物の他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等、任意の側鎖や官能基が結合したエステル化合物も含む。
【0023】
上記スチレン系単量体の具体例には、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン等が含まれる。スチレン・(メタ)アクリル樹脂は、これら由来の構造を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0024】
一方、(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル単量体が含まれる。スチレン・(メタ)アクリル樹脂は、これら由来の構造を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0025】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂中の、スチレン系単量体に由来する構成単位の含有率は40~90質量%が好ましい。また、スチレン・(メタ)アクリル樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、10~60質量%が好ましい。なお、スチレン・(メタ)アクリル樹脂は、上記スチレン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構造だけでなく、他の単量体由来の構造を含んでいてもよい。
【0026】
他の単量体の例には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシル基を有する化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する化合物が含まれる。スチレン・(メタ)アクリル樹脂は、これら由来の構造を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0027】
ただし、スチレン・(メタ)アクリル樹脂中の他の単量体由来の構成単位の含有率は、0.5~20質量%が好ましい。
【0028】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10,000~100,000が好ましい。スチレン・(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量が当該範囲であると、得られる画像の強度が高まる。
【0029】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂の製造方法は、特に制限されない。一般的な過酸化物、過硫化物、過硫酸塩、アゾ化合物等の任意の重合開始剤を用い、塊状重合、溶液重合、乳化重合法、ミニエマルション法、分散重合法等の公知の重合手法により、スチレン系単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、必要に応じて他の単量体と、を重合すればよい。また、分子量を調整するため、一般的な連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤は特にされず、その例には、n-オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステル等が含まれる。
【0030】
なお、スチレン・(メタ)アクリル樹脂を製造する際、複数段階に分けて、重合を行ってもよい。例えば、スチレン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体の種類や比率等を変えて多段階に重合を行うことで、非晶性樹脂の物性を所望の範囲に調整することが可能となる。
【0031】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されないが、低温定着性などの定着性、並びに、耐熱保管性および耐ブロッキング性等の耐熱性を確実に得る観点から、25~60℃が好ましい。
【0032】
また、トナー母体粒子の機械的強度を高め、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の埋没を抑制するため、非晶性樹脂は、上記スチレン・(メタ)アクリル樹脂と共に、非晶性ポリエステル樹脂を含んでいてもよい。
【0033】
非晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸またはその誘導体と、多価アルコールまたはその誘導体と、を重縮合して得られる樹脂である。重縮合の際には、必要に応じて触媒を使用してもよい。
【0034】
多価カルボン酸の例には、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β-メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン-3,5-ジエン-1,2-ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタール酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニル酢酸、p-フェニレン二酢酸、m-フェニレンジグリコール酸、p-フェニレンジグリコール酸、o-フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル-p,p’-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸等の2価のカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等の3価以上のカルボン酸;これらのアルキルエステル;これらの酸無水物;これらの酸塩化物等が含まれる。非晶性ポリエステル樹脂は、これら由来の構造を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。上記の中でも、フマル酸、マレイン酸、メサコン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
【0035】
一方、多価アルコールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等の2価のアルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン等の3価以上のポリオール;これらのエステル化合物;これらのヒドロキシカルボン酸;等が含まれる。非晶性ポリエステル樹脂は、これら由来の構造を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0036】
ここで、結着樹脂全量に対する、非晶性樹脂の総量は、5~30質量%が好ましい。非晶性ポリエステルの量が、5質量%以上であると、得られる画像の強度が高まりやすい。一方、非晶性樹脂の量が30質量%以下であると、結晶性樹脂の量が相対的に十分になりやすく、低温での定着性が良好になりやすい。
【0037】
・結晶性樹脂
結着樹脂が結晶性樹脂を含むと、トナー母体粒子の柔軟性が高まりやすく、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子が、トナー母体粒子の周囲に固着しやすくなる。なお、本明細書において「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを意味する。「明確な吸熱ピーク」とは、DSCにおいて、昇温速度10℃/分で測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークを意味する。なお、吸熱ピークの半値幅が小さいほど結晶化度が高いといえる。
【0038】
ここで、結晶性樹脂の種類は特に制限されないが、結晶性ポリエステル樹脂が特に好ましい。結着樹脂が結晶性ポリエステル樹脂を含有すると、トナー母体粒子が加熱によって溶融しやすくなり、低温定着性が良好になる。
【0039】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、以下の多価カルボン酸と、以下の多価アルコールとの重縮合反応によって得られる樹脂である。
【0040】
多価カルボン酸の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n-ドデシルコハク酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラダカンジオール等の飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸;これらの無水物;これらのアルキル(炭素数1~3)エステル等が含まれる。結晶性ポリエステル樹脂は、これら由来の構造を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0041】
多価アルコールの例には、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール等の脂肪族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール等の3価以上の多価アルコールが含まれる。結晶性ポリエステル樹脂は、これら由来の構造を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0042】
結着樹脂中の結晶性ポリエステルの総量は、結着樹脂全量に対して、5~20質量%が好ましい。結晶性ポリエステルの量が、5質量%以上であると、低温定着性が得られやすくなる。また、結晶性ポリエステルの量が、20質量%以下であるとトナーを調製しやすくなる。
【0043】
本明細書における結晶性ポリエステル樹脂の融点は、60~90℃が好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の融点は、以下のように測定する。まず試料3.0gをアルミニウム製パンに封入し、示差走査熱量計(例えば、ダイヤモンドDSC、パーキンエルマー社製)を用い、昇温速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する(第1昇温過程)。次いで、冷却速度10℃/minで200℃から0℃まで冷却する(冷却過程)。そして昇温速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する(第2昇温過程)。そして、これらの測定結果からDSC曲線を作製し、第1昇温過程における結晶性ポリエステル樹脂由来の吸熱ピークトップ温度を、融点(Tm)とする。なお、リファレンスには、空のアルミニウム製パンを使用する。
【0044】
・ハイブリッド樹脂
結着樹脂は、ビニル系セグメントとポリエステル系セグメントとを有する樹脂(ハイブリッド樹脂)をさらに含んでいてもよい。当該ハイブリッド樹脂では、ビニル系セグメントとポリエステル系セグメントとが、両反応性単量体由来の構造を介して結合されていることが好ましい。結着樹脂がハイブリッド樹脂を含むと、非晶性樹脂に対する結晶性樹脂の分散性がより良好になる。
【0045】
ハイブリッド樹脂中のビニル系セグメントは、ビニル樹脂から構成される。ここで、ビニル樹脂は、上述の非晶性樹脂で説明したものと同様である。なお、ハイブリッド樹脂中におけるビニル系セグメントの量は、全セグメント量に対して0.5~20質量%が好ましい。
【0046】
一方、ハイブリッド樹脂中のポリエステル系セグメントは、多価カルボン酸と多価アルコールとを触媒の存在下で、重縮合反応して得られる結晶性ポリエステル樹脂から構成されることが好ましい。多価カルボン酸および多価アルコールは、上述の結晶性樹脂で説明したものと同様である。なお、ハイブリッド樹脂中におけるポリエステル系セグメントの量は、全セグメント量に対して0.5~20質量%が好ましい。
【0047】
両反応性単量体とは、結晶性ポリエステル樹脂およびビニル樹脂の両方と反応可能な単量体である。両反応性単量体は、分子内に、結晶性ポリエステル樹脂(ポリエステル系セグメント)と反応する、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、第1級アミノ基および第2級アミノ基からなる群から選択される基と、ビニル樹脂(ビニル系セグメント)と反応するエチレン性不飽和基と、を有することが好ましい。両反応性単量体としては、ヒドロキシ基またはカルボキシル基とエチレン性不飽和基とを有する単量体がより好ましく、カルボキシル基とエチレン性不飽和基とを有する単量体がさらに好ましい。すなわち、両反応性単量体は、ビニル系カルボン酸であることが好ましい。
【0048】
両反応性単量体の具体例には、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸や、これらのヒドロキシアルキル(炭素原子数1~3個)エステルが含まれる。両反応性単量体は、反応性の観点からアクリル酸、メタクリル酸、またはフマル酸が好ましい。
【0049】
ハイブリット樹脂中の両反応性単量体由来の構成単位の量は、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性および耐久性を向上させる観点から、ビニル系セグメントの量100質量部に対して1~10質量部が好ましく、4~8質量部がより好ましい。
【0050】
ハイブリッド樹脂の調製方法特に制限されず、公知の方法で調製できる。代表的な方法としては、次の三つが挙げられる。
【0051】
(1)ポリエステル系セグメントを予め重合しておき、当該ポリエステル系セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、ビニル系セグメントを形成するための単量体を反応させる方法。
【0052】
(2)ビニル系セグメントを予め重合しておき、当該ビニル系セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、ポリエステル系セグメントを形成するための多価カルボン酸および多価アルコールを反応させる方法。
【0053】
(3)ポリエステル系セグメントおよびビニル系セグメントをそれぞれ準備し、これらに両反応性単量体を反応させて、両者を結合させる方法。
【0054】
上記いずれの方法のいずれであってもよいが、上記(2)の方法が好ましい。具体的には、ポリエステル系セグメントを形成する多価カルボン酸および多価アルコール、ならびにビニル系セグメントを形成するビニル樹脂および両反応性単量体を混合し、重合開始剤を加えてビニル系セグメント樹脂と両反応性単量体とを付加重合させる。その後、エステル化触媒を加えて、ポリエステル系セグメントを結合させる方法が好ましい。
【0055】
ポリエステル重合セグメントを合成するための触媒は、公知の触媒であってもよく、その例には、酸化ジブチルスズ、2-エチルヘキサン酸スズ(II)等のスズ化合物;チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物;等が含まれる。また、エステル化助触媒の例には、没食子酸等が含まれる。
【0056】
(金属顔料)
金属顔料は、金属を含み、画像に金属光沢を付与可能な顔料であれば特に制限されない。例えば、アルミニウム、黄銅、青銅、ニッケル、ステンレス、亜鉛、銅、銀、金、白金等の金属粉末であってもよく、金属蒸着された薄片状ガラス粉等であってもよい。金属顔料は、これらを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。これらの中でも、入手容易性等の観点で、アルミニウムが好ましい。金属顔料の表面は、シリカ粒子や、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等で被覆されていてもよい。
【0057】
金属顔料の形状は特に制限されず、球形であってもよく、鱗片状や扁平状であってもよい。
【0058】
金属顔料の粒径は、体積基準のメジアン径で100~1000nmが好ましく、150~500nmがより好ましい。金属顔料の平均粒径が、このような範囲である場合に、金属光沢を有する画像が得られやすい。一方で、金属顔料の平均粒径が当該範囲であると、本発明の課題も生じやすい。
【0059】
金属顔料の含有量は、トナー母体粒子の総量に対して1~70質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましい。金属顔料の量が当該範囲であると、トナーを用いて形成した画像において、高品質な画像が得られやすい。
【0060】
(離型剤)
トナー母体粒子は、離型剤をさらに含んでいてもよい。離型剤は、現像時にトナー粒子から染み出し、定着離型性等を高めるための成分である。
【0061】
離型剤には、通常ワックスが用いられる。離型剤の具体例には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス;フィッシャートロプシュワックス;マイクロクリスタリンワックス等の分枝鎖状炭化水素ワックス;パラフィンワックス、サゾールワックス等の長鎖炭化水素系ワックス;ジステアリルケトン等のジアルキルケトン系ワックス;カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等のエステル系ワックス;エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等のアミド系ワックス;等が含まれる。トナー母体粒子は、これらの離型剤を、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0062】
離型剤の含有量は、トナー母体粒子の総量に対して2~30質量%が好ましい。離型剤の量が当該範囲であると、定着離型性が良好になりやすい。
【0063】
(その他)
トナー母体粒子は、上記結着樹脂、金属顔料、および離型剤の他に、他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分の例には、金属顔料以外の着色剤や、荷電制御剤等が含まれる。
【0064】
着色剤の例には、カーボンブラック、磁性体、顔料および染料等が含まれる。トナー母体粒子は、着色剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。着色剤の量は、所望の色や、着色剤の種類等に合わせて適宜選択される。
【0065】
一方、荷電制御剤は、摩擦帯電により正または負の帯電を与えることのできる物質であれば特に限定されず、公知の種々の正帯電制御剤および負帯電制御剤を用いることができる。荷電制御剤の例には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、および、サリチル酸金属塩またはその金属錯体等が含まれる。トナー母体粒子は、荷電制御剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。荷電制御剤の量は、結着樹脂の総量100質量部に対して2~20質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。
【0066】
(トナー母体粒子の構造)
トナー母体粒子の構造は、単層構造であってもよいし、コアとその表面を被覆するシェル層とを備えるコア・シェル構造のような多層構造であってもよい。シェル層は、コアの全表面を被覆していなくてもよく、部分的にコアが露出していてもよい。コア・シェル構造の断面は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM:TransmissionElectronMicroscope)、走査型プローブ顕微鏡(SPM:ScanningProbeMicroscope)等の公知の観察手段によって、確認できる。なお、本明細書でいうコア・シェル構造には、三重以上の構造も含む。
【0067】
トナー母体粒子が、コア・シェル構造であると、コアとシェル層とでガラス転移点、融点、硬度等の特性を異ならせることができる。したがって、目的に応じた物性を有するトナー母体粒子とすることができる。例えば、結着樹脂、金属顔料、離型剤等を含有し、ガラス転移点が比較的低いコアの表面に、ガラス転移点が比較的高い樹脂を凝集、融着させて、シェル層を形成することもできる。
【0068】
トナー母体粒子の平均円形度は、0.920~0.100が好ましい。トナー母体粒子の円形度が当該範囲内であると、トナー粒子どうしの接触点が小さくなる。これにより、外力応答性が向上し、流動化度が高まる。その結果、トナー補給性に優れたトナーが得られる。なお、平均円形度が当該範囲であると、転写効率も良好になる。なお、平均円形度は、フロー式粒子像分析装置(例えば、FPIA-3000、Sysmex社製)等を用いて測定できる。
【0069】
具体的には、トナー母体粒子を界面活性剤水溶液に湿潤させ、超音波分散を1分間行う。分散後、上記フロー式粒子像分析装置を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000~10000個の適正濃度で測定を行う。円形度は下記式で算出される。なお、平均円形度は、各トナー母体粒子の円形度を合計し、測定した全粒子数で割った算術平均値である。
円形度=(粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
【0070】
また、トナー母体粒子の体積平均粒径は、体積基準のメジアン径(D50)で、4.5~8.0μmが好ましい。画質向上の観点ではより小径であることが好ましいが、粒径が小さいと、トナー母体粒子の付着力が高まり、流動化度が低くなる傾向がある。これに対し、トナー母体粒子の体積平均粒径が上記範囲内であれば、出力画像の画質とトナー補給性とを両立させることができ、帯電、現像、転写、クリーニング等も良好に行うことができる。なお、トナー母体粒子の体積平均粒径は、5.0~6.2μmがより好ましい。体積平均粒径が当該範囲であると、ドット再現性も高まり、より高画質な画像が得られる。
【0071】
トナー母体粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、粒度分布測定装置(例えばマルチサイザー3、ベックマン・コールター社製)に、データ処理用のコンピューターシステム(例えば、Software V3.51、ベックマン・コールター社製)を接続した装置を用いて測定、算出できる。
【0072】
より具体的には、トナー母体粒子0.02gを、界面活性剤水溶液20mlに馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー母体粒子分散液を作製する。界面活性剤水溶液の例には、界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈したものが含まれる。このトナー母体粒子分散液を、電解液ISOTONII(ベックマン・コールター社製)に測定濃度5~10%になるまで滴下していき、測定機カウントを25000個に設定して測定する。ここで、粒度分布測定装置のアパチャー径は100μmのものを使用する。測定は、2~60μmの範囲を256分割しての頻度数を算出し、体積積算分率が大きい方から50%の粒径を体積基準メジアン径(D50)とする。
【0073】
(トナー母体粒子の調製方法)
上述のトナー母体粒子の調製方法は特に制限されないが、乳化凝集法で調製することが好ましい。乳化凝集法によれば、粒度分布がシャープであり、粒径が高度に制御されたトナー母体粒子を得ることができる。
【0074】
乳化凝集法でトナー母体粒子を調製する場合、以下の手順でトナー母体粒子を調製できる。まず、水系媒体中に金属顔料が分散された金属顔料分散液を調製する。一方で、水系媒体中に結着樹脂微粒子が分散された結着樹脂分散液も調製する。そして、上記金属顔料分散液と結着樹脂分散液とを混合して、金属顔料および結着樹脂微粒子を凝集、会合、融着させて、トナー母体粒子とする。そしてトナー母体粒子を濾別し、乾燥させる。
【0075】
上記金属顔料および結着樹脂微粒子を凝集させる際、凝集剤を用いてもよい。凝集剤の例には、金属の塩が含まれ、具体例には、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩等の一価の金属の塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅等の二価の金属の塩;鉄、アルミニウム等の三価の金属の塩;が含まれる。より具体的な例には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が含まれる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中で特に好ましくは二価の金属の塩である。二価の金属の塩を使用すると、少量で金属顔料および結着樹脂の微粒子を凝集させることができる。
【0076】
(2)外添剤
外添剤は、トナー粒子の流動性や帯電特性等を制御する機能を果たす成分である。外添剤は、少なくともランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子を含んでいればよいが、他の粒子をさらに含んでいてもよい。
【0077】
(ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子)
ランタン含有チタン酸ストロンチウムは、チタン酸ストロンチウムに、反応性が高く、かつ結晶成長し難いランタン元素をドープした化合物である。ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子中のランタン原子の量は、3~12質量%が好ましく、5~10質量%がより好ましい。ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子中のランタンの量が多くなるほど、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の形状が球形に近づきやすくなり、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子が、トナー母体粒子表面の凹部に固定化されやすくなる。ただし、ランタンのドープ量が多すぎる場合には、トナーの誘電率が増加し、損失誘電率が増加して、現像電界に対する応答性が低下することがある。これに対し、ランタンの量が12質量%以下であれば、高画像濃度での連続印字を行ったとしても、現像性が良好になる。
【0078】
ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子中のランタンの量は、走査型蛍光X線分析装置(例えば、ZSX Primus IV、リガク社製)を用いて測定できる。具体的な測定方法としては、サンプル2gを直径20mmの錠剤成形リングに充填し、加圧してペレット化する。その後、下記条件で測定を行う。
X線発生部条件:ターゲット Rh、管電圧 50kV
分光系条件:スリット S2、分光結晶 LiF、検出器 SC
【0079】
一方で、チタン酸ランタンおよびチタン酸ストロンチウムの比率を変えた試料を複数準備し、上記走査型蛍光X線分析装置で同様に測定を行い、検量線を作成する。当該検量線作成の際、ランタンの比率は、下記式から算出する。
ランタンの比率[質量%]=ランタン[質量%]/(ランタン[質量%]+ストロンチウム[質量%]
そして、当該検量線と上述の測定値とを比較し、ランタンの量を求める。
【0080】
上記ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の数平均一次粒径は、8nm~40nmが好ましく、10nm~30nmがより好ましい。ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の数平均一次粒径が当該範囲であると、上述のように、トナー母体粒子表面の凹凸に入り込みやすく、トナー母体粒子の表面に付着しやすい。
【0081】
ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の数平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」とも称する。)による観察によって特定できる。具体的には、SEM(例えばJEM-7401F、日本電子社製等)により、3万倍に拡大したトナーのSEM写真を撮影する。そして、当該SEM写真を観察してランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の一次粒子の粒径(フェレ径)を測定する。粒径の測定は、SEM画像において粒子の総数が100~200個程度となるような領域を選択して行う。そして、100個の粒子について粒径(フェレ径)を測定し、平均値を数平均一次粒径とする。
【0082】
上記ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子は、カップリング剤によって表面処理されていてもよい。ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子がカップリング剤によって表面処理されていると、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子のトナー母体粒子に対する付着性や、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子どうしの凝集性が調整される。また、カップリング剤で処理されたランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子は、トナー母体粒子の凹部に固定化されやすい。
【0083】
カップリング剤の種類は特に制限されず、その例には、ヘキサメチルジシラザン等のアルキルシラザン系化合物;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン系化合物;ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン等のクロロシラン系化合物;シリコーンオイル;シリコーンワニス等;下記一般式(1)で表されるカップリング剤が含まれる。
X-M(OR) (1)
上記一般式(1)において、Mはチタンまたはケイ素を表し、好ましくはケイ素である。また、Xは炭素数4~12のアルキル基を表す。さらに、Rはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基を表す。
【0084】
カップリング剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用可能である。上記の中でも特に、一般式(1)で表されるシランカップリング剤またはチタンカップリング剤が好ましい。上記構造を有するシランカップリング剤またはチタンカップリング剤は、アルキル基を構造中に含むため疎水性が高い。したがって、トナー粒子(特にランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子)に水が吸着難くなり、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の電気特性が変化し難くなる。
【0085】
上記一般式(1)で表されるシランカップリング剤の具体例には、イソブチルトリメトキシシラン、へキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン等が含まれる。
【0086】
ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子のカップリング剤による処理方法とは特に制限されないが、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の表面にカップリング剤を噴霧したり、気化したカップリング剤とランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子とを混合し、加熱処理する方法が一例として挙げられる。このとき、水、アミン、その他の触媒を使用しても良い。上記カップリング剤による表面修飾は窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0087】
また、カップリング剤と、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子と、溶媒とを混合し、当該混合液の加熱や乾燥を行う方法であってもよい。このとき、カップリング剤およびランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子のいずれか一方を先に溶媒に分散させておいてもよく、全ての成分を同時に混合してもよい。
【0088】
ここで、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子のカップリング剤による処理量は、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の炭素含有率が、1.0~8.0質量%となる量が好ましく、炭素含有率は、2.0~7.0%がより好ましい。ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の炭素含有率は、表面処理量と相関する特性値である。例えば、アルキルシランカップリング剤を用いた場合、表面処理量が多いほど、炭素含有率が高まる。また、アルキルシランカップリング剤のアルキル基の炭素数が多い場合にも、炭素含有率が高まる。炭素含有率が、上記範囲にあると、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子が適度な疎水性を有し、電気特性が変化し難くなるだけでなく、トナー母体粒子に付着しやすくなる。
【0089】
ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の炭素含有率は、酸素気流下で、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子を燃焼させ、発生したCOおよびCOの吸光度を赤外分光光度計(IR)で測定して特定できる。具体的には、市販のカーボン分析装置(例えばIR-212、LECO社製)の秤部にセラミック製のるつぼを置き、るつぼの中に測定試料(ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子)1gを入れる。さらに、助燃剤をスパーテル1杯分添加する。そして、燃焼ガスとして酸素を用いて燃焼処理を行って、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子中の炭素量を測定する。
【0090】
ここで、トナー粒子中における、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の量は、トナー母体粒子の量に対して0.05~2.0質量%が好ましく、0.1~1.0質量%がより好ましい。ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の量が0.05質量%以上であると、トナー母体粒子の凹部がランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子によって埋まりやすくなり、トナーの帯電特性が均一になりやすい。一方、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の量が2.0質量%以下であると、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子が凝集したりし難く、良好な帯電特性が得られやすい。
【0091】
(その他の粒子)
外添剤は、上記ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の他に、トナー粒子の流動性や帯電特性等を制御するため、他の粒子を含んでいてもよい。他の粒子の例には、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子及び酸化ホウ素粒子等が含まれる。他の粒子の個数平均一次粒径は、例えば、分級や分級品の混合等によって調整可能である。
【0092】
他の粒子は、公知の表面修飾剤によって、疎水化処理されていてもよい。表面修飾剤の例には、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤;アルミネート系カップリング剤;脂肪酸;脂肪酸の金属塩またはそのエステル化物;ロジン酸;シリコーンオイル等が含まれる。
【0093】
なお、他の粒子の量は、トナー母体粒子の量に対して0.05~2.0質量%が好ましく、0.1~1.0質量%がより好ましい。
【0094】
(3)トナー粒子の物性
上記トナー母体粒子および外添剤を含むトナー粒子の大きさおよび形状は、本発明の効果および目的を損なわない範囲であれば特に制限されない。通常、トナー粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、4.5μm以上8.0μm以下が好ましく、トナー粒子の平均円形度は、0.920以上1.000以下が好ましい。トナー粒子の体積基準のメジアン径(D50)の測定方法やトナー粒子の平均円形度の測定方法は、トナー母体粒子の体積平均粒径の測定方法やトナー粒子の平均円形度の測定方法と同様である。
【0095】
ここで、上記トナー粒子を含むトナーでは、下記式(A)で求められる、トナーの粒子表面におけるランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の付着強度が、45~85%の範囲内にある、ことが好ましい。付着強度は50%以上80%以下がより好ましい。
ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の付着強度=(超音波処理後のトナーのSr原子存在比率/超音波処理前のトナーのSr原子存在比率)×100・・・式(A)
【0096】
上記式(A)において、超音波処理後のトナーとは、トナー(もしくはトナー粒子)3gを100mLのプラスチックカップ中で、ポリオキシエチルフェニルエーテルの0.2質量%水溶液40gに湿潤させ、超音波式ホモジナイザーにて、超音波エネルギーを、電流値60μAで3分間印加した後、目開き1μmのフィルターを使用して濾過を行い、60mLの純水を用いて洗浄し、乾燥させた後のトナー(トナー粒子)をいう。超音波式ホモジナイザーの例には、US-1200、日本製機社製等が含まれる。後述のように、二成分現像剤では、トナー粒子とキャリア粒子とを含むが、この場合、キャリア粒子が存在するトナーの状態で上記超音波処理を行ってもよく、トナーからキャリア粒子を取り除いて、トナー粒子のみにしてから、上記超音波処理を行ってもよい。また、超音波処理前のトナーとは、上記超音波処理を行っていない状態のトナーをいう。
【0097】
式(A)における、Sr原子存在比率は、トナー粒子の表面をX線電子分光で測定して得られる、個々の原子のピーク面積から下記式(B)に基づいて算出される値をいう。なお、本明細書において、ピーク面積元素とは、下付きで表した元素のピーク面積を表す。
Sr原子存在比率=(ピーク面積Sr/(ピーク面積+ピーク面積+ピーク面積Si+ピーク面積Ti+ピーク面積Sr))×100 atom%・・・式(B)
【0098】
上記Sr原子存在比率のより具体的な特定方法を以下に示す。まず、X線光電子分光分析装置(例えば、K-Alpha、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)により、以下の測定条件で、トナー粒子最表面から3nm以内に存在するストロンチウム元素のピーク面積(ピーク面積Sr)、炭素元素のピーク面積(ピーク面積Y)、酸素元素のピーク面積(ピーク面積)、ケイ素元素のピーク面積(ピーク面積Si)、およびチタン元素のピーク面積(ピーク面積Ti)を特定する。各ピーク面積は、各々の原子ピーク面積から相対感度因子を用いて特定する。そして、得られた各ピーク面積から、上記式(B)に基づき、Sr原子存在比率を求める。
(測定条件)
X線 :Alモノクロ線源
加速 :12kV、6mA
分解能 :50eV
ビーム系 :400μm
パスエネルギー:50eV
ステップサイズ:0.1eV
【0099】
ここで、上述のランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の付着強度を特定する場合には、上記超音波処理の前後に、X線電子分光測定を行い、それぞれSr原子存在比率を求める。そして、超音波処理前後のSr原子存在比率の比を特定する。
【0100】
超音波処理前後のSr原子存在比率の比は、トナー粒子における、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の付着強度を表す。すなわち、トナー母体粒子に、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子が、どの程度の強さで固定化されているかを表している。ここで、上記付着強度が45%未満である場合には、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子がトナー母体粒子に付着していたとしても、一か所に留まり難く、帯電特性の均一化に寄与できないことがある。一方、上記付着強度が85%超である場合には、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の多くが、トナー母体粒子内に埋没してしまっている可能性があり、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の添加効果(トナー粒子の流動性向上や帯電特性の均一化等)が十分に得られないことがある。これに対し、上記付着強度が45%以上85%以下であると、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子が適度な強度でトナー母体粒子に付着しており、トナー粒子の流動性が良好になったり、帯電特性が均一になったりしやすい。
【0101】
(4)トナー粒子の製造方法
上記トナー粒子の製造方法は特に制限されず、公知の方法で製造することができる。例えば、上記で説明したトナー母体粒子の調製方法によってトナー母体粒子を調製し、当該トナー母体粒子の表面に外添剤を付着させればよい。
【0102】
トナー母体粒子の表面に外添剤を付着させる方法は、トナー母体粒子と外添剤とを十分に混合可能な方法であればよく、例えばタービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機等の公知の混合装置を使用して混合してもよい。
【0103】
得られたトナー粒子は、そのままトナー(一成分現像剤)として使用してもよいが、以下のようにキャリア粒子と混合して二成分現像剤として使用することが好ましい。
【0104】
(5)二成分現像剤
二成分現像剤は、上述のトナー粒子と、キャリア粒子等とを混合することにより調製できる。
【0105】
二成分現像剤が含むキャリア粒子は、従来公知の磁性粒子であってもよい。キャリア粒子の例には、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属や、これらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金を含む粒子が含まれる。フェライトは、銅、亜鉛、ニッケル、マンガン等の重金属を含有するフェライトであってもよく、アルカリ金属及び/またはアルカリ土類金属を含有する軽金属フェライトであってもよい。
【0106】
また、キャリア粒子は、磁性体からなる芯材粒子と、その表面を被覆する被覆層とを有する被覆型キャリア粒子であってもよい。さらに、樹脂中に磁性体の微粉末が分散された樹脂分散型のキャリア粒子であってもよい。これらの中でも特に、被覆型キャリア粒子が好ましい。
【0107】
被覆型キャリア粒子の芯材中止の例には、鉄粉、フェライト、マグネタイト等の金属粒子や、これら金属を樹脂中に分散したものが含まれ、マグネタイト粒子またはフェライト粒子であることが好ましい。また、キャリア粒子の芯材粒子に、ストロンチウムを含有することも好ましい。芯材粒子が、ストロンチウムを含有すると、芯材粒子の表面の凹凸が大きくなり、被覆層で被覆しても、芯材粒子の一部が表面に露出する。その結果、キャリア粒子の抵抗が所望の範囲に調整される。
【0108】
被覆型キャリア粒子の被覆層を構成する樹脂の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニル及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体やスチレン-アクリル酸共重合体等の共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂又はその変成樹脂(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等による変成樹脂);ポリテトラクロルエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロルトリフルロルエチレン等のフッ素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素-ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂等が含まれる。
【0109】
これらの中でも、ポリアクリレート樹脂が好ましく、脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構造を含むことがより好ましく、脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物とメタクリル酸メチルの共重合体がさらに好ましい。被覆層が当該樹脂を含むと、被覆層の疎水性が高くなり、特に高温高湿下においてキャリア粒子の水分吸着量が減少する。したがって、高温高湿下におけるキャリアの帯電量低下が抑制されやすい。また、脂環式(メタ)アクリル酸エステル由来の構造は、剛直な環状骨格を有するため、被覆層の強度が高くなり、キャリアの耐久性が良好となる。
【0110】
被覆型キャリア粒子の調製方法は公知の方法とすることができ、湿式コート法や乾式コート法等で調製できる。
【0111】
ここで、キャリア粒子の抵抗は1.0×10~1.0×1011Ω・cmが好ましく、1.0×10~5.0×1010Ω・cmがより好ましい。キャリア粒子の抵抗が上記範囲であると、トナーにおいて、帯電した電荷がリークし難く、かつ現像器内での帯電の立ち上がりが良好になる。なお、上記キャリア粒子の抵抗とは、初期のキャリア粒子の抵抗を表し、キャリア粒子単体の抵抗を表す。抵抗は、磁気ブラシによる現像条件下で、動的に測定する。具体的には、感光体ドラムと同寸法のアルミ製電極ドラムを感光体ドラムに置き換え、現像スリーブ上にキャリア粒子を供給して磁気ブラシを形成させ、この磁気ブラシを電極ドラムと摺擦させ、このスリーブとドラムとの間に電圧(500V)を印加して両者間に流れる電流を測定する。そして、キャリア粒子の抵抗DVRを下記式から算出する。
DVR(ΩCM)=(V/I)×(N×L/Dsd)
V:現像スリーブとドラム間の電圧(V)
I:測定電流値(A)
N:現像ニップ幅(cm)
L:現像スリーブ長(cm)
DSD:現像スリーブとドラム間距離(cm)
なお、本明細書では、キャリア粒子の抵抗DVR測定の際の、各条件をV=500V、N=1cm、L=6cm、Dsd=0.6mmとする。
【0112】
また、キャリア粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で10μm以上100μm以下が好ましく、20μm以上80μm以下がより好ましい。キャリア粒子の体積基準のメジアン径は、例えば、湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置(HELOS;SYMPATEC社)で測定できる。
【0113】
なお、キャリア粒子は、上述のトナー粒子に適量混合すればよい。当該混合に用いられる混合装置の例には、ナウターミキサー、WコーンおよびV型混合機等が含まれる。
【0114】
二成分現像剤中のキャリア粒子およびトナー粒子の合計に対するトナー粒子の比率(トナー濃度)は4.0~8.0質量%が好ましい。トナー粒子の比率が4.0~8.0質量%であると、トナーの帯電量が適切となり、初期および連続印字後の画質がより良好となる。
【実施例
【0115】
以下、本発明の具体的な実施例を比較例とともに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中において「部」および「%」は、特に断りのない限り「質量部」および「質量%」を意味する。
【0116】
A.トナー母体粒子の調製
A-1.金属顔料分散液の調製
以下の材料を準備した。
・アルミニウム顔料(昭和アルミパウダー社製2173EA):100質量部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製ネオゲンR):1.5質量部
・イオン交換水:900質量部
そして、上記アルミニウム顔料のペーストから溶剤を除去した後、全ての材料を混合し、乳化分散機キャビトロン(太平洋機工社製CR1010)を用いて1時間分散させた。これにより、金属顔料(アルミニウム顔料)が分散した金属顔料分散液(固形分:10質量%)を得た。
【0117】
A-2.非晶性樹脂粒子分散液の調製
(1)第一段重合
以下の材料を含む単量体混合液1を準備した。
・スチレン:584質量部
・アクリル酸n-ブチル:160質量部
・メタクリル酸:56質量部
【0118】
一方、撹拌装置、温度センサー、冷却管、および窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部、およびイオン交換水3000質量部を仕込んだ。そして、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させたものを添加し、液温75℃とした。そして、上記単量体混合液1を1時間かけて滴下した。滴下後、75℃にて2時間撹拌しながら重合を行うことにより、樹脂微粒子分散液aを得た。
【0119】
(2)第二段重合
以下の材料を含む単量体混合液2を準備した。
・スチレン:239質量部
・アクリル酸n-ブチル:111質量部
・メタクリル酸:26質量部
・n-オクチルメルカプタン:3質量部
【0120】
一方、撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込んで、80℃に加熱した。別途、上記の樹脂微粒子分散液a 42質量部(固形分換算)、マイクロクリスタリンワックス HNP-0190(日本精蝋社製)70質量部を、単量体混合液2に80℃で溶解または分散させた溶液を準備した。そして、当該溶液を上記反応容器に添加し、循環経路を有する機械式分散機 CLEARMIX(エム・テクニック社製)により、1時間混合分散させて乳化粒子(油滴)を含む分散液を得た。
【0121】
さらに、当該分散液に、過硫酸カリウム5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃にて1時間撹拌しながら重合を行い、樹脂微粒子分散液bを得た。
【0122】
(3)第三段重合
以下の材料を含む単量体混合液3を準備した。
・スチレン:380質量部
・アクリル酸n-ブチル:132質量部
・メタクリル酸:39質量部
・n-オクチルメルカプタン:6質量部
【0123】
上述の樹脂微粒子分散液bに、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液を添加した。当該溶液に、80℃の温度条件下で、上記単量体混合液3を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱撹拌して重合を行った。その後、28℃まで冷却して、非晶性樹脂粒子分散液を得た。
【0124】
A-3.結晶性樹脂粒子分散液の調製
(1)結晶性樹脂の調製
セバシン酸(分子量202.25)220質量部と、1,12-ドデカンジオール(分子量202.33)298質量部とを、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応容器に入れ160℃に加熱し、溶解させた。その後、2-エチルヘキサン酸スズ(II)2.5質量部および没食子酸0.2質量部を加えて210℃に昇温し、8時間反応を行った。さらに8.3kPaにて1時間反応を行い、結晶性樹脂を得た。
【0125】
得られた結晶性樹脂について、示差走査熱量計 ダイヤモンドDSC(パーキンエルマー社製)を用いて昇温速度10℃/minの条件でDSC曲線を取得した。吸熱ピークトップ温度を測定する手法による融点(Tm)の測定結果は82.8℃であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー HLC-8120GPC(東ソー社製)による分子量を測定の結果、標準スチレン換算の重量平均分子量は28000であった。
【0126】
(2)結晶性樹脂粒子分散液の作製
上記結晶性樹脂100質量部を酢酸エチル400質量部に溶解させた。次いで、5.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液25質量部を添加して、樹脂溶液を調製した。この樹脂溶液を、撹拌装置を有する容器へ投入し、樹脂溶液を撹拌しながら、0.26質量%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液638質量部を30分間かけて滴下混合した。ラウリル硫酸ナトリウム水溶液の滴下中、反応容器内の液が白濁し、さらに、ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を全量滴下すると、結晶性樹脂粒子が均一に分散した乳化液が調製された。次いで、上記乳化液を40℃に加熱し、ダイヤフラム式真空ポンプ V-700(BUCHI社製)を使用して、150hPaの減圧下で酢酸エチルを蒸留除去し、結晶性ポリエステル樹脂が分散した結晶性樹脂粒子分散液を得た。
【0127】
A-4.トナー母体粒子の調製
(1)凝集・融着工程
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、非晶性樹脂粒子分散液300質量部(固形分換算)と、結晶性樹脂粒子分散液60質量部(固形分換算)と、イオン交換水1100質量部と、金属顔料分散液40質量部(固形分換算)とを仕込み、液温を30℃に調整した。その後、5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10に調整した。次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間保持した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて85℃まで昇温し、85℃で保持して粒子成長反応を継続させた。コールターマルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)にて凝集粒子の粒径を測定し、体積基準のメディアン径が6.2μmになった時点で、塩化ナトリウム40質量部をイオン交換水160質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、さらに、熟成工程として液温度80℃にて1時間にわたって加熱撹拌することにより粒子間の融着を進行させ、これにより、円形度が0.97のトナー母体粒子の分散液を調製した。
【0128】
(2)洗浄・乾燥工程
生成したトナー母体粒子の分散液をバスケット型遠心分離機(MARKIII 型式番号60×40+M、松本機械社製)で固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで40℃のイオン交換水で洗浄し、その後、フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥することにより、トナー母体粒子を得た。
【0129】
B.ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の作製
B-1.表面処理されたランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子1の調製
(1)ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子1の調製
硫酸法で得られたメタチタン酸を脱鉄漂白処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えpH9.0とし、脱硫処理を行った。その後、塩酸によりpH5.8まで中和し、ろ過水洗を行った。洗浄済みケーキに水を加え、TiO量が1.85モル/Lであるスラリーとした。その後、塩酸を加えpH1.0とし解膠処理を行った。処理後、TiO量で0.625モル メタチタン酸を採取し、3Lの反応容器に投入した。更に、塩化ストロンチウム水溶液および塩化ランタン、塩化バリウム水溶液をSrO/LaО/TiOモル比で1.00/0.08/1.00となるように合計量で0.719モル添加した。その後、TiO濃度が0.313モル/Lとなるように調整した。次に、撹拌混合しながら90℃に加温した。そして、5N水酸化ナトリウム水溶液296mLを12時間かけて添加し、その後、95℃で1時間撹拌を続け反応を終了した。
【0130】
当該反応スラリーを50℃まで冷却し、pH5.0となるまで塩酸を加え1時間撹拌を続けた。得られた沈殿をデカンテーション洗浄し、当該沈殿を含むスラリーに塩酸を加えpH6.5に調整した。そして、固形分に対して9質量%のイソブチルトリメトキシシランを添加して1時間撹拌した。次いで、ろ過・洗浄を行い、得られたケーキを120℃の大気中で8時間乾燥し、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子1を得た。得られた粒子を透過型電子顕微鏡にて観察して数平均一次粒径を重量基準で算出したところ、20nmであった。
【0131】
(2)表面処理
上記で得られたランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子1を反応容器に入れた。窒素雰囲気下、粉末を回転羽根で撹拌しながら、粉体100gに対して、ヘキサン60gで希釈した疎水化処理剤イソブチルトリメトキシシラン20gを添加した。200℃に加熱し、120分間撹拌後、冷却水で冷却し、表面処理されたランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子1を得た。なお、炭素含有率は、後述の方法で測定した。
【0132】
B-2.表面処理されたランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子2~4、および15の調製
ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子1の作製時の、水酸化ナトリウム添加時間を変更した以外は、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子1と同様に調製した。これにより、表1に示すように、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の粒径および表面処理量(炭素含有率)が変化した。
【0133】
B-3.表面処理されたランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子5~7の調製
ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子1の作製時における、SrO/LaО/TiOモル比を変更した以外は、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子1と同様に調製した。これにより、表1に示すように、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子のランタン含有比率が変化した。
【0134】
B-4.表面処理されたランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子8~12、および14の調製
ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子1の表面処理を行う際のシランカップリング剤を、表1に示すように、オクチルトリエトキシシラン(C8)、デシルトリメトキシシラン(C10)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ポリジメチルシロキサン(PMDS)、無し、またはペンチルトリメトキシシラン(C5)に変更した以外は、上記と同様に調製した。これにより、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の表面処理量(炭素含有率)が変化した。
【0135】
B-5.表面処理されたランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子13の調製
ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子1の表面処理を行う際の攪拌時間を変更した以外は、上記と同様に調製した。これにより、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の表面処理量(炭素含有率)が変化した。
【0136】
B-6.表面処理されたランタン非含有チタン酸ストロンチウム粒子16の調製
ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子1の作製に、塩化ランタンを添加しなかった以外は、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子1と同様に調製した。
【0137】
B-7.ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子中の炭素含有率の測定方法
酸素気流下で、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子を燃焼させ、発生したCOおよびCOの吸光度を赤外分光光度計(IR)により測定した。具体的には、市販のカーボン分析装置(IR-212、LECO Co.Ltd製)の秤部にセラミック製のるつぼを置き、るつぼの中に測定試料1gを秤量した。測定試料を秤量後、助燃剤をスパーテル1杯分添加した。そして、測定試料と助燃剤を添加したるつぼを装置のセラミック台に載置し、燃焼ガスとして酸素を用いて燃焼処理を行い、カーボン量を測定した。
【0138】
C.トナー粒子の調製
C-1.トナー粒子1の調製(実施例1)
上述のトナー母体粒子100質量部、シリカ粒子1(HMDS処理、数平均一次粒径=20nm)1.0質量部、シリカ粒子2(HMDS処理、数平均一次粒径=8nm)0.4質量部、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子1 0.5質量部を混合し、ヘンシェルミキサー型式FM20C/I(日本コークス工業社製)に入れた。そして、羽根先端周速が50m/sとなるようにして回転数を設定して20分間撹拌し、トナー母体粒子とランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子1とを含むトナー粒子1を調製した。ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子混合時の温度は40℃±1℃とし、41℃になった場合は、ヘンシェルミキサーの外浴に冷却水を5L/分の流量で冷却水を流した。一方、39℃になった場合は、1L/分の流量で冷却水を流し、でヘンシェルミキサー内部の温度制御を実施した。得られたトナー粒子における、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の付着強度を、後述の方法で測定した。
【0139】
C-2.トナー粒子2~25の調製(実施例2~25、および比較例1、2)
ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の種類または量を表1に示すように変更した以外は、トナー粒子1と同様に調製した。
【0140】
C-3.ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の付着強度
(超音波処理前のトナー(トナー粒子)のストロンチウム表面比率(atom%)の特定)
上記各トナー粒子について、X線光電子分光分析装置(例えば、K-Alpha、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)により、以下の測定条件で、トナー粒子最表面から3nm以内に存在するストロンチウム元素のピーク面積(ピーク面積Sr)、炭素元素のピーク面積(ピーク面積)、酸素元素のピーク面積(ピーク面積)、ケイ素元素のピーク面積(ピーク面積Si)、およびチタン元素のピーク面積(ピーク面積Ti)を特定した。各元素のピーク面積は、各々の原子ピーク面積から相対感度因子を用いて特定した。
(測定条件)
X線 :Alモノクロ線源
加速 :12kV、6mA
分解能 :50eV
ビーム系 :400μm
パスエネルギー:50eV
ステップサイズ:0.1eV
【0141】
得られた元素濃度から、以下の式(B)に基づき、超音波処理前のトナー粒子のSr原子存在比率を求めた。
Sr原子存在比率=(ピーク面積Sr/(ピーク面積+ピーク面積+ピーク面積Si+ピーク面積Ti+ピーク面積Sr))×100 atom%・・・式(B))
【0142】
(超音波処理後のトナー(トナー粒子)のストロンチウム表面比率(atom%)の特定)
続いて、以下の超音波処理を行った。まず、トナー粒子3gを100mlのプラスチックカップ中に入れ、ポリオキシエチルフェニルエーテルの0.2質量%水溶液40gにて湿潤させた。そして、超音波式ホモジナイザー(US-1200、日本製機社製)にて、本体装置に附属の電流計の値が60μAを示すように超音波エネルギーを調整し、3分間超音波処理した。その後、目開き1μmのフィルターを使用して濾過を行い、60mlの純水を用いて洗浄し、乾燥させた。
【0143】
その後、上記と同様に、X線電子分光測定を行い、超音波処理後のトナー粒子のストロンチウム表面比率を求めた。そして、以下の式(A)に基づき、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の付着強度を求めた。
ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子の付着強度=(超音波処理後のトナー粒子のSr原子存在比率/超音波処理前のトナー粒子のSr原子存在比率)×100・・・式(A)
得られた値を表1に示す。なお、当該値が45%以上85%以下である場合が合格である。
【0144】
C-5.着色トナー(トナー粒子26)の調製(参考例)
トナー母体粒子を調製する際に金属顔料分散液の代わりに、以下の着色粒子分散液を使用した以外は、上述のトナー粒子1と同様にトナー粒子26を調製した。
【0145】
(着色剤粒子分散液の調製)
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解させた。この溶液を撹拌しながら、着色剤粒子(カーボンブラックリーガル330R、キャボット社製)420質量部を徐々に添加した。次いで、撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の分散液を調製した。分散液中の着色剤粒子の粒子径を、粒度分布測定器「Nanotrack Wave(マイクロトラックベル社製)を用いて測定したところ、117nmであった。
【0146】
D.二成分現像剤の調製
D-1.キャリア粒子の調製
(1)キャリア芯材粒子の調製
MnO 35mol%、MgO 14.5mol%、Fe 50mol%、およびSrO 0.5mol%の比率で各成分を秤量した。当該混合物を水と混合し、湿式のメディアミルで5時間粉砕してスラリーを得た。得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥し、真球状の粒子を得た。当該粒子を粒度調整した後、950℃で2時間加熱し、仮焼成を行った。直径0.3cmのステンレスビーズを用いて湿式ボールミルで1時間粉砕した。その後、さらに直径0.5cmのジルコニアビーズを用いて4時間粉砕した。
【0147】
バインダーであるポリビニルアルコール(PVA)を固形分に対して0.8質量%添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、電気炉にて、温度1350℃、5時間保持し、本焼成を行った。その後、解砕し、さらに分級して粒度調整し、磁力選鉱により低磁力品を分別してキャリア芯材粒子を得た。キャリア芯材粒子の粒径は35μmであった。
【0148】
(2)被覆層用材料の調製
0.3質量%のベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液中に、メタクリル酸シクロヘキシルおよびメタクリル酸メチルを質量比(共重合比)で5:5となるように添加し、単量体総量の0.5質量%にあたる量の過硫酸カリウムを添加して乳化重合を行った。当該重合物をスプレードライで乾燥し、被覆層用材料を調製した。得られた被覆層用材料の重量平均分子量は50万であった。
【0149】
(3)キャリア粒子の調製
水平撹拌羽根付き高速撹拌混合機に、上記キャリア芯材粒子100質量部と、上記被覆層用材料4.5質量部とを投入し、水平回転翼の周速が8m/secとなる条件で、22℃で15分間混合撹拌した。その後、120℃で50分間混合して、機械的衝撃力(メカノケミカル法)の作用で芯材粒子の表面に被覆層を形成し、キャリア粒子を調製した。
【0150】
D-2.二成分現像剤の調製
(1)二成分現像剤1の調製
上記のようにして調製したトナー粒子1およびキャリア粒子を、トナー粒子濃度が6.5質量%となるようにして混合し、二成分現像剤1とした。混合は、V型混合機を用いて30分間行った。
【0151】
(2)二成分現像剤2~26の調製
トナー粒子1をトナー粒子2~26に変更した以外は、二成分現像剤1と同様に二成分現像剤2~23を調製した。
【0152】
E.評価
上述の各二成分現像剤(トナー)について、トナー飛散量を以下のように評価した。結果を表1に示す。
【0153】
〔トナー飛散量評価〕
トナー飛散量測定はパーティクルカウンター(KR-12A、RION社製)を使用して、以下のように測定した。二成分現像剤が投入された現像器を、現像ローラを回転可能な駆動機にセットし、パーティクルカウンターの吸い込み口を現像ローラの手前側端部より1cm離した位置にセットした。パーティクルカウンターの粒径測定レンジを2~10μmに設定し、現像ローラを270rpmで回転させた。パーティクルカウンターでの測定は20秒カウント10秒停止を5回繰り返し、5回の平均値を飛散量とした。
【0154】
また、上記飛散量測定は、現像器に二成分現像剤を充填して1分攪拌した後(初期)、現像器を市販の電子写真画像形成装置bizhub C368(コニカミノルタ社製)に搭載し、23℃、50%RHの環境下にて、印字面積率5%の横帯を50000枚印刷した後(耐久NN環境)、および30℃、80%RHの環境下にて、印字面積率5%の横帯を50000枚印刷した後(耐久HH環境)、の3回実施し、以下の条件で評価した。なお、以下の評価のうち、◎および○を合格とした。
◎:トナー飛散量が20000個/Lより少ない
○:トナー飛散量が20000個/Lより多く50000個/L以下である
×:トナー飛散量が50000個/Lより多い
【0155】
【表1】
【0156】
上記表1に示すように、トナー母体粒子と、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子とを含むトナーでは、初期、耐久NN環境、および耐久HH環境のいずれにおいても、トナー飛散量が少なかった(実施例1~23)。これに対し、トナー母体粒子とランタンを含まないチタン酸ストロンチウム粒子とを組み合わせた場合には、初期の飛散量は少なかったものの、印字後の飛散量は多かった(比較例1)。トナー表面の帯電特性が十分に均一化され難かったと推察される。
【0157】
一方、チタン酸ストロンチウム粒子自体を含まない場合には、初期からトナー飛散量が多かった(比較例2)。
【0158】
また、ランタン含有チタン酸ストロンチウム粒子をシランカップリング剤によって、表面処理した場合(実施例1~18、20、および21)には、表面処理していない場合(比較例19)と比較して、初期の飛散量が少なくなった。ただし、チタン酸ストロンチウム粒子の粒径が比較的大きくなったり(実施例22)、チタン酸ストロンチウム粒子の含有量が比較的多くなったり(実施例23)する場合には、飛散量が多くなりやすかった。
【0159】
なお、金属顔料を含まない参考例では、チタン酸含有ストロンチウムを含まなくても、飛散量が多くなり難かった。つまり、本願の課題は、金属顔料を含む場合に生じる課題である、といえる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明の静電荷像現像用トナーによれば、連続印字時でもトナー飛散発生を抑制できる。したがって、種々の印刷分野において、有用である。