(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】通信装置及び通信方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/32 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
H04N1/32
(21)【出願番号】P 2021025837
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083840
【氏名又は名称】前田 実
(72)【発明者】
【氏名】山口 友久
【審査官】三沢 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-049354(JP,A)
【文献】特開昭55-058665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマリチャネルの再同期信号として、S信号、Sbar信号又はPP信号を受信する受信部と、
前記受信部が前記プライマリチャネルの再同期信号の受信を継続している受信時間を計測する再同期信号計測部と、
前記受信時間が閾値時間よりも長い場合に、コントロールチャネルへ移行する制御を行うコントロールチャネル移行制御部と、を備え
、
前記閾値時間は、前記S信号、前記Sbar信号及び前記PP信号の各々に応じて定められた時間であり、
前記再同期信号計測部は、前記受信部が前記S信号を受信している場合には、前記受信部が前記S信号の受信を継続している前記受信時間が、前記S信号に応じて定められた前記閾値時間よりも長いか否かを判断し、前記受信部が前記Sbar信号を受信している場合には、前記受信部が前記Sbar信号の受信を継続している前記受信時間が、前記Sbar信号に応じて定められた前記閾値時間よりも長いか否かを判断し、前記受信部が前記PP信号を受信している場合には、前記受信部が前記PP信号の受信を継続している前記受信時間が、前記PP信号に応じて定められた前記閾値時間よりも長いか否かを判断すること
を特徴とするファクシミリ通信機能を有する通信装置。
【請求項2】
プライマリチャネルの再同期信号として、S信号、Sbar信号又はPP信号を受信する受信部と、
前記受信部が前記プライマリチャネルの再同期信号の受信を継続している受信時間を計測する再同期信号計測部と、
前記受信時間が閾値時間よりも長い場合に、コントロールチャネルへ移行する制御を行うコントロールチャネル移行制御部と、を備え
、
前記閾値時間は、前記S信号及び前記Sbar信号のペアに応じて予め定められた時間、又は、前記PP信号に応じて定められた時間であり、
前記再同期信号計測部は、前記受信部が前記S信号及び前記Sbar信号のペアを受信している場合には、前記受信部が前記S信号及び前記Sbar信号のペアの受信を継続している前記受信時間が、前記S信号及び前記Sbar信号のペアに応じて定められた前記閾値時間よりも長いか否かを判断し、前記受信部が前記PP信号を受信している場合には、前記受信部が前記PP信号の受信を継続している前記受信時間が、前記PP信号に応じて定められた前記閾値時間よりも長いか否かを判断すること
を特徴とするファクシミリ通信機能を有する通信装置。
【請求項3】
前記コントロールチャネル移行制御部は、前記受信時間が前記閾値時間よりも長い場合に、前記受信部に、前記プライマリチャネルの再同期信号の受信を停止させ、前記コントロールチャネルの再同期信号を受信させること
を特徴とする請求項1
又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記閾値時間は、ITU-T勧告V.34で規定されるシンボル速度が速いほど、短い時間となること
を特徴とする請求項1から
3の何れか一項に記載の通信装置。
【請求項5】
プライマリチャネルの再同期信号として、S信号、Sbar信号又はPP信号を受信し、
前記プライマリチャネルの再同期信号の受信を継続している受信時間を計測し、
前記受信時間が閾値時間よりも長い場合に、コントロールチャネルへ移行する制御を行う
ファクシミリ通信における通信方法であって、
前記閾値時間は、前記S信号、前記Sbar信号及び前記PP信号の各々に応じて定められた時間であり、
前記S信号が受信されている場合には、前記S信号の受信が継続されている前記受信時間が、前記S信号に応じて定められた前記閾値時間よりも長いか否かが判断され、前記Sbar信号が受信されている場合には、前記Sbar信号の受信が継続されている前記受信時間が、前記Sbar信号に応じて定められた前記閾値時間よりも長いか否かが判断され、前記PP信号が受信されている場合には、前記PP信号の受信が継続されている前記受信時間が、前記PP信号に応じて定められた前記閾値時間よりも長いか否かが判断されること
を特徴とするファクシミリ通信における通信方法。
【請求項6】
プライマリチャネルの再同期信号として、S信号、Sbar信号又はPP信号を受信し、
前記プライマリチャネルの再同期信号の受信を継続している受信時間を計測し、
前記受信時間が閾値時間よりも長い場合に、コントロールチャネルへ移行する制御を行う
ファクシミリ通信における通信方法であって、
前記閾値時間は、前記S信号及び前記Sbar信号のペアに応じて予め定められた時間、又は、前記PP信号に応じて定められた時間であり、
前記S信号及び前記Sbar信号のペアが受信されている場合には、前記S信号及び前記Sbar信号のペアの受信が継続されている前記受信時間が、前記S信号及び前記Sbar信号のペアに応じて定められた前記閾値時間よりも長いか否かが判断され、前記PP信号が受信されている場合には、前記PP信号の受信が継続されている前記受信時間が、前記PP信号に応じて定められた前記閾値時間よりも長いか否かが判断されること
を特徴とするファクシミリ通信における通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信装置及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、VoIP(Voice over Internet Protocol)回線を用いて、ファクシミリ通信が行われている。
例えば、ITU-T(International Telecommunication Unit Telecommunication Standardization Sector)勧告のV.34で規定されている半二重変調方式を用いる伝送手順では、以下のような手順で、ファクシミリ通信が行われている。
フェーズ1で通信規格が決定され、フェーズ2でシンボルレート及びキャリア周波数が決定され、フェーズ3でプライマリチャネルの等化器トレーニングが行われる。フェーズ3の後、コントロールチャネルのスタートアップが行われ、変調パラメータシーケンスMPhが交換されて、プライマリチャネルの信号速度が決定される。この後、プライマリチャネル再同期が行われる。
【0003】
プライマリチャネル再同期では、送信側は、同期用のS信号、同期用のSbar信号、同期用のPP信号、シーケンスB1と、それに引き続きメッセージフレームと、メッセージの終端を意味するRCP(Rerurn to Control for Partial page)フレームを送信する。
【0004】
受信側は、S信号、Sbar信号、PP信号及びシーケンスB1を順番に受信することで、プライマリチャネルの再同期を行い、続くメッセージフレームと、RCPフレームとを受信することができる。
【0005】
しかしながら、受信側において、S信号、Sbar信号、PP信号及びシーケンスB1が受信できないと、プライマリチャネル再同期に失敗して、メッセージフレーム及びRCPフレームを受信することができなくなってしまう。
【0006】
このため、特許文献1に記載されたファクシミリ装置は、S信号又はSbar信号を検出する間の期間が所定の期間を超えた場合に、PP信号及びシーケンスB1を受信して、メッセージフレーム及びRCPフレームを受信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のファクシミリ装置でも、PP信号又はシーケンスB1が検出されない場合には、プライマリチャネルの再同期に失敗し、通信エラーとなってしまう。
【0009】
そこで、本開示の一又は複数の態様は、プライマリチャネルの再同期に失敗したとしても、通信エラーとならないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様に係るファクシミリ通信機能を有する通信装置は、プライマリチャネルの再同期信号として、S信号、Sbar信号又はPP信号を受信する受信部と、前記受信部が前記プライマリチャネルの再同期信号の受信を継続している受信時間を計測する再同期信号計測部と、前記受信時間が閾値時間よりも長い場合に、コントロールチャネルへ移行する制御を行うコントロールチャネル移行制御部と、を備え、前記閾値時間は、前記S信号、前記Sbar信号及び前記PP信号の各々に応じて定められた時間であり、前記再同期信号計測部は、前記受信部が前記S信号を受信している場合には、前記受信部が前記S信号の受信を継続している前記受信時間が、前記S信号に応じて定められた前記閾値時間よりも長いか否かを判断し、前記受信部が前記Sbar信号を受信している場合には、前記受信部が前記Sbar信号の受信を継続している前記受信時間が、前記Sbar信号に応じて定められた前記閾値時間よりも長いか否かを判断し、前記受信部が前記PP信号を受信している場合には、前記受信部が前記PP信号の受信を継続している前記受信時間が、前記PP信号に応じて定められた前記閾値時間よりも長いか否かを判断することを特徴とする。
【0011】
本開示の一態様に係るファクシミリ通信における通信方法は、プライマリチャネルの再同期信号として、S信号、Sbar信号又はPP信号を受信し、前記プライマリチャネルの再同期信号の受信を継続している受信時間を計測し、前記受信時間が閾値時間よりも長い場合に、コントロールチャネルへ移行する制御を行うファクシミリ通信における通信方法であって、前記閾値時間は、前記S信号、前記Sbar信号及び前記PP信号の各々に応じて定められた時間であり、前記S信号が受信されている場合には、前記S信号の受信が継続されている前記受信時間が、前記S信号に応じて定められた前記閾値時間よりも長いか否かが判断され、前記Sbar信号が受信されている場合には、前記Sbar信号の受信が継続されている前記受信時間が、前記Sbar信号に応じて定められた前記閾値時間よりも長いか否かが判断され、前記PP信号が受信されている場合には、前記PP信号の受信が継続されている前記受信時間が、前記PP信号に応じて定められた前記閾値時間よりも長いか否かが判断されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一又は複数の態様によれば、プライマリチャネルの再同期に失敗したとしても、通信エラーとならないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係るFAXのIP回線における接続形態の一例を示すブロック図である。
【
図2】ITU-T勧告V.34に規定された半二重動作の信号シーケンスを説明するための概略図である。
【
図3】継続するファクシミリ原稿がある場合の信号シーケンスである。
【
図4】継続するファクシミリ原稿がない場合の信号シーケンスである。
【
図5】実施の形態に係るFAXの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図6】制御部の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図7】(A)及び(B)は、ハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図8】FAXのプライマリチャネル再同期処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、実施の形態に係るファクシミリ装置(以下、FAXという)110A、110BのIP(Internet Protcol)回線における接続形態の一例を示すブロック図である。
図1に示されているファクシミリ通信システム100は、FAX110A、110Bと、VoIP-TA(Terminal Adaptor)101A、101Bと、ルータ102A、102Bと、を有する。
ルータ102A、102Bは、IP回線103に接続されている。
【0015】
ここで、FAX110A、110Bは、同様に構成されているため、FAX110A、110Bの各々を特に区別する必要がない場合には、FAX110A、110Bの各々をFAX110という。
【0016】
ここでは、送信機としてのFAX110Aから受信機としてのFAX110Bへ、IP回線103を介して、画像情報を伝送するファクシミリ通信を説明する。
IP回線103を介したファクシミリ通信では、ファクシミリ送信信号を音声信号とみなし、その音声信号を音声パケットに加工して、VoIPにより通信が行われる。
【0017】
FAX110Aは、VoIP-TA101Aに接続され、アナログ音声信号としてファクシミリ信号を送出する。
VoIP-TA101Aは、このファクシミリ信号をITU―T勧告G.711に基づいて符号化することで、符号化された音声情報を生成し、その符号化された音声情報をルータ102Aへ送出する。
【0018】
ルータ102Aは、VoIP-TA101A及びIP回線103に接続され、VoIP-TA101Aにより符号化された音声情報を受け取る。
ルータ102Aは、符号化された音声情報を、RTP(Real-time Transport Protocol)に従ってパケット化することでRTPパケットを生成する。例えば、ルータ102Aは、予め定められたパケットサイズ(例えば、20msec)の符号化された音声情報を格納することで、RTPパケットを生成する。そして、ルータ102Aは、連続するRTPパケットによって構成されるRTPフレームを、IP回線103へ伝播する。
なお、ルータ102Aは、VoIP-TA101Aの指示に従い、IP回線103との接続と、開放とを行い、相手先であるルータ102Bとの経路を選択し、通信を可能にする。
【0019】
IP回線103は、インターネットによる電話回線である。IP回線103は、任意の宛先へRTPパケットを伝播する。
【0020】
ルータ102Bは、IP回線103及びVoIP-TA101Bに接続され、IP回線103からRTPパケットを受け取り、そのRTPパケットから符号化された音声情報を取り出し、その符号化された音声情報をVoIP-TA101Bへ送出する。
【0021】
VoIP-TA101Bは、ルータ102B及びFAX110Bに接続され、符号化された音声情報を、ITU―T勧告G.711に基づいて復号化することで、ファクシミリ信号を生成する。そして、VoIP-TA101Bは、そのファクシミリ信号をFAX110Bへ送出する。
FAX110Bは、ファクシミリ信号を受信し、図示しない媒体である記録紙に記録する。
【0022】
ファクシミリ通信は、一般に送信機側と、受信機側とで同期をとりながら、手順信号と、画像データとの転送を繰り返し行う。このように、送信機側と、受信機側とで同期を必要とする通信方式において、通信信号の欠落は、送信機と、受信機との間の同期を失わせることとなる。
【0023】
また、ITU-T勧告T.30付属書FにはITU-T勧告V.34にて規定されている半二重変調方式を用いる伝送手順について規定されており、ITU-T勧告T.4付属書Aにて規定されている誤り訂正モード(ECM)の使用が必須となっている。
【0024】
誤り訂正モードでは、送信側のファクシミリ装置が、ファクシミリ通信で伝送する画像情報を、誤り検出が可能な情報を付加した複数のメッセージフレームに分割して送信する。
そして、受信側のファクシミリ装置が、受信したメッセージフレームから誤りを検出すると、送信側のファクシミリ装置に対して、誤りフレームの再送を要求する。
送信側のファクシミリ装置は、受信側のファクシミリ装置から再送要求を受信すると、再送要求のあったフレームを受信側のファクシミリ装置へ再送信する。
【0025】
図2から
図4は、ITU-T勧告V.34に規定された半二重動作の信号シーケンスを説明するための概略図である。
図2に示されているように、ITU-T勧告V.34に規定された半二重動作では、フェーズ1で通信規格が決定され、フェーズ2でシンボル速度及びキャリア周波数が決定され、フェーズ3でプライマリチャネルの等化器トレーニングが行われる。
【0026】
フェーズ3のあと、コントロールチャネルの同期が行われ、変調パラメータシーケンスMPhが交換されて、プライマリチャネルの信号速度が決定される。
その後、プライマリチャネル再同期が行われる。
【0027】
プライマリチャネル再同期では、送信側のファクシミリ装置は、同期用の128シンボルのS信号、同期用の16シンボルのSbar信号、同期用の288シンボルのPP信号、及び、シーケンスB1を送信し、それに引き続きメッセージフレームと、メッセージの終端を意味するRCPフレームとを送信する。
【0028】
プライマリチャネル再同期において、受信側のファクシミリ装置は、S信号、及び、S信号からSbar信号への遷移を検出することで、大まかに送信側のファクシミリ装置におけるモデムとクロック同期を合わせる。そして、受信側のファクシミリ装置は、続くPP信号も使って同期合わせを実行し、その後、メッセージフレーム及びRCPフレームまで信号を受信する。
【0029】
その後、
図3又は
図4に示すコントロールチャネル再同期が行われ、続くコントロールチャネルにおいて誤りフレームの再送手順を含むポストメッセージ手順が行われる。
図3は、継続するファクシミリ原稿がある場合の信号シーケンスであり、
図4は、継続するファクシミリ原稿がない場合の信号シーケンスを示している。
【0030】
受信側のファクシミリ装置は、メッセージフレームを正しく受け取った場合、ポストメッセージ手順において、MCFを返す。一方、メッセージフレームに誤りがある場合は、受信側のファクシミリ装置は、PPRを返すことで、受信できなかったメッセージフレームの再送を要求することができる。
【0031】
送信側のファクシミリ装置は、ポストメッセージ手順において、PPRを受信した場合、エラー部分のみを再送する。一方、MCFを受信した場合は、送信側のファクシミリ装置は、次のページがあれば送信し、次のページがなければ、DCNを送信して、切断処理を行う。
【0032】
このプライマリチャネルでのメッセージフレームの伝送と、コントロールチャネルでのポストメッセージ手順における伝送とを繰り返すことで、誤り訂正モードを用いたファクシミリ通信が実現される。
【0033】
プライマリチャネル再同期において、受信側のファクシミリ装置は、S信号、Sbar信号及びPP信号を順に正しく受信する必要がある。S信号、Sbar信号及びPP信号を順に正しく受信できない場合は、シーケンスは先に進まない。
一方、送信側のファクシミリ装置は、プライマリチャネルの送信が終わると、
図3又は
図4に示すようなコントロールチャネル再同期手順に移行する。ここでは、送信側のファクシミリ装置は、Sh信号、Shbar信号及びシーケンスALTを送信して受信モデムからのSh信号又はPPh信号を待つ。
【0034】
さらに、VoIP回線の受信側機器、例えば、VoIP-TAによっては、PLC(Packet Loss Concealment)機能を有する場合がある。
PLC機能は、その音声の切断が会話において不快感を与えることを避けるため、パケットロスが発生した場合に、その前後の音声データから損失部分を補間することで音声の切断部分を埋め、音声会話において違和感の少ない通話にする機能である。
【0035】
しかしながら、このPLC機能は、ファクシミリ通信においては、偽りのファクシミリ信号を挿入する機能であるため、通信エラーの原因になる。
このように、プライマリチャネル再同期中にパケットロスが発生し、PLC機能により音声データの補間が行われると送信ファクシミリ装置も受信ファクシミリ装置も先に進むことができず、ファクシミリ通信に失敗してしまう。
【0036】
図5は、実施の形態に係るFAX110の構成を概略的に示すブロック図である。
FAX110は、記憶部111と、読取部112と、印刷部113と、操作部114と、通信部115と、制御部120とを備える。
【0037】
記憶部111は、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等を利用した記憶装置である。例えば、記憶部111は、制御部120によって実行されるソフトウェアであるプログラムを記憶する。また、記憶部111は、そのプログラムの実行時に発生するデータ及びそのプログラムの実行時に使用するデータを記憶する。
【0038】
例えば、記憶部111は、ITU-T勧告V.34に規定されているプライマリチャネルの再同期信号であるS信号、Sbar信号及びPP信号の各々の継続時間として、予め定められた値を記憶する再同期信号時間記憶部として機能する。継続時間は、それぞれの信号を受信している受信時間と比較するための閾値時間である。
各信号の継続時間は、
図2に示すV.34通信シーケンスのフェーズ2で決定されたシンボル速度が早いほど短い時間となるように決定されればよい。具体的には、ITU-T勧告V.34に規定されている各々の再同期信号のシンボル数(例えば、S信号:128T、Sbar信号:16T、PP信号:288T)を、そのシンボル速度(例えば、2400、2800、3000、3200又は3429〔シンボル/秒〕)で除算した値、又は、その除算した値が長いほど長くなる値を、各信号の継続時間とすることができる。即ち、各々の再同期信号のシンボル数に対して一番シンボル速度が遅い速度で除算した値を継続時間としてもよい。
【0039】
なお、上記のようにして算出された値については、予め定められた検出誤差が考慮されてもよい。例えば、予め定められた検出誤差が大きければ大きいほど大きな値となる調整値が、算出された値に加算されてもよい。具体的には、継続時間を計測するタイマが±10%の計測誤差を有する場合には、上記のようにして算出された値の10%の値を調整値としてもよい。
また、この調整値については、操作部114を介してユーザが変更してもよい。
【0040】
読取部112は、図示しないCCD(Charge Coupled Device)等を利用したスキャナ装置である。読取部112は、原稿から画像を読み取り、ドットイメージデータに変換する。ドットイメージデータは、ITU-T勧告T.4等に従って符号化される。符号化されたデータは、記憶部111に記憶される。
【0041】
印刷部113は、図示しない感熱記録方式又は電子写真方式等のプリンタ装置である。印刷部113は、通信部115が受信した画像データをITU-T勧告T.4等に従って復号化し、ハードコピーとして出力する。
【0042】
操作部114は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置によりFAX110の状態等を表示する表示部と、FAX110を操作するために必要な各種設定値を設定するためのテンキー又はスタートキー等の入力部とを備える。
【0043】
通信部115は、電話回線104との接続を制御するNCU(Network Control Unit)及びモデム116等からなり、通信を行う通信装置である。
【0044】
モデム116は、デジタル信号を伝送路の特性に合わせたアナログ信号に変調して送信するとともに、伝送路からのアナログ信号をデジタル信号に復調して受信する。FAX110間で交換される画像データ及び手順信号は、このモデム116を介して授受される。言い換えると、モデム116は、プライマリチャネルの再同期信号として、S信号、Sbar信号又はPP信号を受信する受信部として機能する。
【0045】
制御部120は、FAX110での処理を制御する。例えば、制御部120は、システムバス117を介して、記憶部111、読取部112、印刷部113、操作部114及び通信部115を制御する。
【0046】
図6は、制御部120の構成を概略的に示すブロック図である。
制御部120は、受信制御部121と、再同期信号処理部122と、再同期信号計測部123と、コントロールチャネル移行制御部124とを備える。
【0047】
受信制御部121は、ファクシミリ受信の実行を制御する。例えば、受信制御部121は、ファクシミリ受信の実行に際し、再同期信号処理部122、再同期信号計測部123及びコントロールチャネル移行制御部124を制御する。
【0048】
再同期信号処理部122は、通信部115に含まれるモデム116が、プライマリチャネルの再同期信号であるS信号、Sbar信号、PP信号及びシーケンスB1のそれぞれを検出したか否かを監視する。
【0049】
再同期信号計測部123は、再同期信号処理部122にて、プライマリチャネルの再同期信号の各々を検出した場合に、計測を開始し、記憶部111に記憶されている対応する信号の継続時間が満了したか否かを判断する。
例えば、再同期信号計測部123は、通信部115がプライマリチャネルの再同期信号の受信を継続している受信時間を計測する。そして、再同期信号計測部123は、その受信時間が継続時間よりも長いか否かを判断する。
【0050】
具体的には、再同期信号計測部123は、通信部115がS信号を受信している場合には、通信部115がS信号の受信を継続している受信時間が、S信号に応じて定められた閾値時間である継続時間よりも長いか否かを判断する。また、再同期信号計測部123は、通信部115がSbar信号を受信している場合には、通信部115がSbar信号の受信を継続している受信時間が、Sbar信号に応じて定められた閾値時間である継続時間よりも長いか否かを判断する。さらに、再同期信号計測部123は、通信部115がPP信号を受信している場合には、通信部115がPP信号の受信を継続している受信時間が、PP信号に応じて定められた閾値時間である継続時間よりも長いか否かを判断する。
【0051】
コントロールチャネル移行制御部124は、プライマリチャネルの再同期信号の受信時間が閾値時間である継続時間よりも長い場合に、コントロールチャネルへ移行する制御を行う。
例えば、コントロールチャネル移行制御部124は、受信時間が閾値時間である継続時間よりも長い場合に、通信部115に、プライマリチャネルの再同期信号の受信を停止させ、コントロールチャネルの再同期信号を受信させる。
具体的には、コントロールチャネル移行制御部124は、通信部115に含まれるモデム116に対して、プライマリチャネルの受信を停止し、コントロールチャネルの再同期信号待ちに移行するように制御する。
【0052】
以上に記載された制御部120の一部又は全部は、例えば、
図7(A)に示されているように、メモリ10と、メモリ10に格納されているプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ11とにより構成することができる。このようなプログラムは、ネットワークを通じて提供されてもよく、また、記録媒体に記録されて提供されてもよい。即ち、このようなプログラムは、例えば、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
なお、メモリ10は、
図5に示されている記憶部111であってもよい。
【0053】
また、制御部120の一部又は全部は、例えば、
図7(B)に示されているように、単一回路、複合回路、プログラムで動作するプロセッサ、プログラムで動作する並列プロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路12で構成することもできる。
以上のように、制御部120は、処理回路網により実現することができる。
【0054】
図8は、FAX110のプライマリチャネル再同期処理を示すフローチャートである。
まず、再同期信号処理部122は、モデム116がITU-T勧告V.34の再同期信号であるS信号を検出したか否かを判断する(S10)。S信号が検出された場合(S10でYes)には、処理はステップS11に進む。
【0055】
ステップS11では、再同期信号計測部123は、プライマリチャネルの再同期信号であるS信号の継続時間の計測を開始する。
【0056】
次に、再同期信号計測部123は、ステップS11で計測を開始し、モデム116がS信号の受信を継続している時間である受信時間が、記憶部111に記憶されているS信号の継続時間よりも長くなったか否かを判断する(S12)。受信時間がS信号の継続時間よりも長くなった場合(S12でYes)には、処理はステップS20に進み、受信時間がS信号の継続時間以下である場合(S12でNo)には、処理はステップS13に進む。
【0057】
ステップS13では、再同期信号処理部122は、モデム116がITU-T勧告V.34の再同期信号であるSbar信号を検出したか否かを判断する。Sbar信号が検出された場合(S13でYes)には、処理はステップS14に進み、Sbar信号が検出されていない場合(S13でNo)には、処理はステップS12に戻る。
【0058】
ステップS14では、再同期信号計測部123は、プライマリチャネルの再同期信号であるSbar信号の継続時間の計測を開始する。
【0059】
次に、再同期信号計測部123は、ステップS14で計測を開始し、モデム116がSbar信号の受信を継続している時間である受信時間が、記憶部111に記憶されているSbar信号の継続時間よりも長くなったか否かを判断する(S15)。受信時間がSbar信号の継続時間よりも長くなった場合(S15でYes)には、処理はステップS20に進み、受信時間がSbar信号の継続時間以下である場合(S15でNo)には、処理はステップS16に進む。
【0060】
ステップS16では、再同期信号処理部122は、モデム116がITU-T勧告V.34の再同期信号であるPP信号を検出したか否かを判断する。PP信号が検出された場合(S16でYes)には、処理はステップS17に進み、PP信号が検出されていない場合(S16でNo)には、処理はステップS15に戻る。
【0061】
ステップS17では、再同期信号計測部123は、プライマリチャネルの再同期信号であるPP信号の継続時間の計測を開始する。
【0062】
次に、再同期信号計測部123は、ステップS17で計測を開始し、モデム116がPP信号の受信を継続している時間である受信時間が、記憶部111に記憶されているPP信号の継続時間よりも長くなったか否かを判断する(S18)。受信時間がPP信号の継続時間よりも長くなった場合(S18でYes)には、処理はステップS20に進み、受信時間がPP信号の継続時間以下である場合(S18でNo)には、処理はステップS19に進む。
【0063】
ステップS19では、再同期信号処理部122は、モデム116がITU-T勧告V.34のシーケンスB1を検出したか否かを判断する。シーケンスB1が検出された場合(S19でYes)には、受信制御部121は、モデム116をプライマリチャネルデータの受信処理へ移行させる。シーケンスB1が検出されていない場合(S19でNo)には、処理はステップS18に戻る。
【0064】
ステップS20では、コントロールチャネル移行制御部124は、コントロールチャネルに移行する制御を行う。具体的には、コントロールチャネル移行制御部124は、通信部115に含まれるモデム116に対して、プライマリチャネルの受信処理を強制停止させ、コントロールチャネルの再同期信号の検出待ちに移行するように制御する。これにより、モデム116は、コントロールチャネルの再同期信号の検出を行う。
【0065】
以上に記載された実施の形態では、再同期信号処理部122は、モデム116が再同期信号である、S信号、Sbar信号及びPP信号のそれぞれを検出したか否かを監視しているが、本実施の形態は、このような例に限定されない。例えば、通信部115に含まれるモデム116とのインターフェイスによっては、再同期信号の各信号の検出を通知しない場合があるため、再同期信号処理部122は、モデム116の信号受信状態の継続時間を監視してもよい。具体的には、再同期信号処理部122は、モデム116が、S信号若しくはSbar信号受信中、PP信号受信中、又は、プライマリチャネルデータ受信中等の各受信状態である時間として受信時間が、各受信状態に対して規定された継続時間よりも長くなったか否かを監視してもよい。
【0066】
言い換えると、この場合には、閾値時間である継続時間は、S信号及びSbar信号のペアに応じて予め定められた時間、又は、PP信号に応じて定められた時間となる。そして、再同期信号計測部123は、通信部115がS信号及びSbar信号のペアを受信している場合には、通信部115がS信号及びSbar信号のペアの受信を継続している受信時間が、S信号及びSbar信号のペアに応じて定められた閾値時間である継続時間よりも長いか否かを判断する。また、再同期信号計測部123は、通信部115がPP信号を受信している場合には、通信部115がPP信号の受信を継続している受信時間が、PP信号に応じて定められた閾値時間である継続時間よりも長いか否かを判断する。
【0067】
以上の実施の形態によれば、FAX110において、プライマリチャネル再同期時に送信側から送信されるS信号、Sbar信号又はPP信号のそれぞれの再同期信号の受信時間が計測される。さらに、それぞれの再同期信号に対して予め規定される継続時間と、その受信時間とが比較され、受信時間が対応する継続時間よりも長い場合は、コントロールチャネルに移行する制御が行われる。これにより、プライマリチャネルにおいてデータを受信するための再同期信号を含む音声パケットが損失し、PLC機能による音声データの補間処理が実行されプライマリチャネルの再同期に失敗した場合でも、ITU-T勧告T.4付属書Aにて規定されている誤り訂正モードによる誤り訂正を実行することができる。
【0068】
なお、以上に記載された実施の形態は、FAX110を例に説明したが、本実施の形態は、このような例に限定されない。例えば、複合装置等、ファクシミリ通信機能を有する通信装置であれば、どのような装置であっても本実施の形態を適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
110 FAX、 111 記憶部、 112 読取部、 113 印刷部、 114 操作部、 115 通信部、 116 モデム、 120 制御部、 121 受信制御部、 122 再同期信号処理部、 123 再同期信号計測部、 124 コントロールチャネル移行制御部。