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7615767蓄電セルの制御装置、蓄電装置、充電システム、充電電圧の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】蓄電セルの制御装置、蓄電装置、充電システム、充電電圧の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/10 20060101AFI20250109BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20250109BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H02J7/10 H
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021031472
(22)【出願日】2021-03-01
(65)【公開番号】P2022132800
(43)【公開日】2022-09-13
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成本 悟
(72)【発明者】
【氏名】福島 敦史
(72)【発明者】
【氏名】今中 佑樹
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-184534(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181489(WO,A1)
【文献】特開2007-018871(JP,A)
【文献】特開2014-045626(JP,A)
【文献】特開昭51-085437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/10
H01M 10/48
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電セルの制御装置であって、
前記蓄電セル又は電気的に接続された複数の前記蓄電セルのSOC又は残存容量を電流積算法により算出し、
電流積算法により算出したSOC又は残存容量に基づいて、前記蓄電セル又は前記複数の蓄電セルの充電電圧の指令値を決定し、
前記蓄電セル又は前記複数の蓄電セルの充電電流が所定値より小さい場合、前記充電電圧の指令値を引き上げる、蓄電セルの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電セルの制御装置であって、
充電電流が所定値より小さい状態の継続時間が閾値未満の場合、前記充電電圧の指令値を引き上げない、蓄電セルの制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蓄電セルの制御装置であって、
電流積算法により算出したSOC又は残存容量を、前記蓄電セル又は前記複数の蓄電セルを満充電に充電した時のSOC又は残存容量に補正する、蓄電セルの制御装置。
【請求項4】
蓄電装置であって、
蓄電セルと、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記蓄電装置の充電電圧を制御する外部の充電制御装置に対して、前記充電電圧の指令値を送信する、蓄電装置。
【請求項5】
蓄電セルと、
前記蓄電セルの制御装置と、を備え、
前記蓄電セルは、SOC-OCV特性において、SOCの変化量に対するOCVの変化量が相対的に低い低変化領域と相対的に高い高変化領域を有する二次電池セル、又は残存容量-OCV特性において、残存容量の変化量に対するOCVの変化量が相対的に低い低変化領域と相対的に高い高変化領域を有する二次電池セルであり、
前記制御装置は、前記蓄電セル又は電気的に接続された複数の前記蓄電セルのSOC又は残存容量を電流積算法により算出し、電流積算法により算出したSOC又は残存容量に基づいて、前記蓄電セル又は前記複数の蓄電セルの充電電圧の指令値を決定し、
前記制御装置は、少なくとも前記高変化領域において、前記蓄電セル又は前記複数の蓄電セルの充電電流を所定値と比較し、前記蓄電セル又は前記複数の蓄電セルの充電電流が所定値より小さい場合、前記充電電圧の指令値を引き上げる、蓄電装置。
【請求項6】
請求項5に記載の蓄電装置であって、
前記制御装置は、前記低変化領域と前記高変化領域の双方の領域において、前記蓄電セル又は前記複数の蓄電セルの充電電流を所定値と比較し、前記蓄電セル又は前記複数の蓄電セルの充電電流が所定値より小さい場合、前記充電電圧の指令値を引き上げる、蓄電装置。
【請求項7】
充電システムであって、
電力を出力する電力装置と、
前記電力装置に接続された蓄電装置と、
前記電力装置の出力を制御する充電制御装置と、を含み、
前記蓄電装置は、
蓄電セルと、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の制御装置と、を含み、
前記制御装置は、
前記蓄電セル又は電気的に接続された複数の前記蓄電セルのSOC又は残存容量を電流積算法により算出し、
電流積算法により算出したSOC又は残存容量に基づいて、前記蓄電セル又は前記複数の蓄電セルの充電電圧の指令値を決定し、
決定した充電電圧の指令を前記充電制御装置に対して送信し、
前記充電制御装置は、前記電力装置の出力電圧を前記制御装置から受信した指令値に制御して、前記蓄電セル又は前記複数の蓄電セルを充電する、充電システム。
【請求項8】
請求項7に記載の充電システムであって、
前記充電制御装置は、前記蓄電セル又は前記複数の蓄電セルを満充電に充電し、
前記制御装置は、電流積算法により算出したSOC又は残存容量を、前記蓄電セル又は前記複数の蓄電セルを満充電に充電した時のSOC又は残存容量に補正する、充電システム。
【請求項9】
充電電圧の制御方法であって、
流積算法を用いて求めた蓄電セル又は複数の前記蓄電セルのSOC又は残存容量に基づいて、前記蓄電セル又は前記複数の蓄電セルの充電電圧の指令値を決定し、
前記蓄電セル又は前記複数の蓄電セルの充電電流が所定値より小さい場合、前記充電電圧の指令値を引き上げる、充電電圧の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電セルを充電する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓄電セルの充電方式として、定電流・定電圧充電が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5525862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
充電中、電流経路上に位置する通電部品や蓄電セルが、充電電流によるジュール熱で発熱する場合がある。通電部品は、例えば、リレーなどの電子部品、バスバー等の構造部材などである。
この発明は、通電部品や蓄電セルの発熱を抑えつつ、蓄電セルを充電することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
蓄電セルの制御装置は、前記蓄電セルのSOC又は残存容量を電流積算法により算出し、電流積算法を用いて求めたSOC又は残存容量に基づいて、前記蓄電セルの充電電圧の指令値を決定する。
【0006】
本技術は、制御装置、蓄電装置、充電システム及び蓄電セルの充電方法に適用することが出来る。
【発明の効果】
【0007】
本構成は、通電部品や蓄電セルの発熱を抑えつつ、蓄電セルを充電することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】自動車の側面図
図2】バッテリの分解斜視図
図3】二次電池セルの平面図
図4】二次電池セルの断面図
図5】バッテリの回路図
図6】二次電池のSOC-OCV特性
図7】充電電圧カーブ
図8】参照テーブル
図9】充電電圧カーブ
図10図9のB部を拡大した図
図11】管理装置のモード遷移図
図12】充電電圧の制御シーケンス
図13】充電電圧の所定値と範囲Bとの関係を示す図
図14】バッテリの充電特性
図15】バッテリの充電特性
【発明を実施するための形態】
【0009】
蓄電セルの制御装置の概要を説明する。
蓄電セルの制御装置は、前記蓄電セルのSOC又は残存容量を電流積算法により算出し、電流積算法を用いて求めたSOC又は残存容量に基づいて、前記蓄電セルの充電電圧の指令値を決定する。電流積算法は、常時計測可能な電流の積算値に基づいてSOCを推定する。そのため、電流積算法を用いることで、OCV法や満充電法とは異なり、充電中のSOCを逐次算出することが出来る。OCV法は、SOC-OCVの相関性を利用してSOCを推定する方法、満充電法は、満充電時のSOCを100%とする方法である。電流積算法により逐次算出されるSOCに基づいて、充電電圧を決定するから、充電中のSOC変化に応じた緻密な充電電圧制御が可能である。
【0010】
従って、充電電圧をSOCによらず固定値にする場合に比べて、充電電流を高精度に制御することが出来る。そのため、ジュール熱による通電部品や蓄電セルの発熱を抑えつつ、蓄電セルを充電することが出来る。更に、目標値に対する充電電流の偏差に応じて、充電電圧を増減調整するフィードバック制御と異なり、SOCに基づいて充電電圧を決定して制御する方法であるため、正帰還による充電電流の振動が起き難い。SOCに限らず残存容量に基づいて、蓄電セルの充電電圧の指令値を決定する場合も、同様の効果を奏することが出来る。
【0011】
制御装置は、前記蓄電セルの充電電流が所定値より小さい場合、充電電圧の指令値を引き上げてもよい。この構成では、電流積算法によるSOCや残存容量の推定誤差により充電電流が所定値より小さくなった場合、充電電圧の指令値を引き上げることで、充電電流を所定値に近づけることが出来る。充電電流を所定値に近づけることで、充電途中に充電電流がゼロになって充電が停止することを回避して、充電を継続することが出来る。充電の継続により、目標SOCや目標残存容量まで蓄電セルを充電することが出来る。
【0012】
制御装置は、充電電流が所定値より小さい状態の継続時間が閾値未満の場合、充電電圧の指令値を引き上げなくてもよい。この構成では、電流計測誤差やノイズの影響で、充電電流が所定値よりも一時的に小さくなった場合、充電電圧の指令値が引き上げられることを抑制できる。そのため、意図しない充電電圧の引き上げにより、通電部品や蓄電セルが発熱することを抑制できる。
【0013】
電流積算法により算出したSOC又は残存容量を、前記蓄電セルを満充電に充電した時のSOC又は残存容量に、補正してもよい。この構成では、電流積算法を用いて算出したSOC又は残存容量を、満充電時のSOC(=100[%])又は残存容量(=満充電容量[Ah])に補正することで、電流積算法によるSOC又は残存容量の推定誤差を無くすことが出来る。推定誤差を無くすことで、SOC又は残存容量の推定精度を向上させることが出来る。
【0014】
蓄電装置は、蓄電セルと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記蓄電装置の充電電圧を制御する外部の充電制御装置に対して、充電電圧の指令値を送信してもよい。「外部の充電制御装置」は、例えば、車載用の蓄電装置の場合、車両ECUであり、充電を制御する蓄電装置以外の制御装置を意味する。この構成では、充電制御装置が、蓄電装置から送信された指令値に従って、蓄電装置の充電電圧を制御する。つまり、制御装置と充電制御装置の協動により、蓄電セルの充電電圧を制御することが出来る。この構成は、本技術を、蓄電装置の充電制御機能を「蓄電装置の制御装置」と「外部の充電制御装置」で分担する充電システムに適用できる点でメリットがある。
【0015】
前記蓄電セルは、SOC-OCV特性において、SOCの変化量に対するOCVの変化量が相対的に低い低変化領域と相対的に高い高変化領域を有する二次電池セル、又は残存容量-OCV特性において、残存容量の変化量に対するOCVの変化量が相対的に低い低変化領域と相対的に高い高変化領域を有する二次電池セルであり、前記制御装置は、少なくとも前記高変化領域において、前記蓄電セルの充電電流を所定値と比較し、前記蓄電セルの充電電流が所定値より小さい場合、充電電圧の指令値を引き上げてもよい。低変化領域と高変化領域を有する二次電池セルは、SOC又は残存容量の推定誤差により、高変化領域において、充電電流が所定値よりも小さくなり充電が停止し易い。本構成を適用することにより、高変化領域において、途中で停止することなく、蓄電セルを目標SOC又は目標残存容量まで充電することが出来る。
【0016】
前記制御装置は、前記低変化領域と前記高変化領域の双方の領域において、前記蓄電セルの充電電流を所定値と比較し、前記蓄電セルの充電電流が所定値より小さい場合、充電電圧の指令値を引き上げてもよい。この構成では、低変化領域、高変化領域のいずれの領域においても、充電電流が所定値より小さいと、充電電圧を引き上げるので、低変化領域と高変化領域を含む全域において、途中で停止することなく、蓄電セルを目標SOCまで充電することが出来る。
【0017】
<実施形態1>
1.バッテリ50の構成
実施形態1では、車載用のバッテリ50を例示する。図1は自動車の側面図である。自動車10は、駆動装置としてエンジン20を有する。図1は、エンジン20及びバッテリ50のみ図示し、自動車10を構成する他の部品は省略している。バッテリ50は蓄電装置の一例である。
【0018】
バッテリ50は、図2に示すように、組電池60と、回路基板ユニット65と、収容体71を備える。
【0019】
収容体71は、合成樹脂材料からなる本体73と蓋体74とを備えている。本体73は有底筒状である。本体73は、底面部75と、4つの側面部76とを備えている。4つの側面部76によって上端部分に上方開口部77が形成されている。
【0020】
収容体71は、組電池60と回路基板ユニット65を収容する。組電池60は12個の二次電池セル62を有する。12個の二次電池セル62は、3並列で4直列に接続されている。
【0021】
回路基板ユニット65は、組電池60の上部に配置されている。回路基板ユニットは、組電池60のパワーライン55であるバスバー57を備えている。図5のブロック図では、並列に接続された3つの二次電池セル62を1つの電池記号で表している。二次電池セル62は「蓄電セル」の一例である。
【0022】
蓋体74は、本体73の上方開口部77を閉鎖する。蓋体74の周囲には外周壁78が設けられている。蓋体74は、平面視略T字形の突出部79を有する。蓋体74の前部のうち、一方の隅部に正極の外部端子51が固定され、他方の隅部に負極の外部端子52が固定されている。
【0023】
バッテリ50は、正負の外部端子51、52に接続された負荷に対して電力を供給する。バッテリ50は、正負の外部端子51、52に接続された発電装置30により充電される。
【0024】
図3及び図4に示すように、二次電池セル62は、直方体形状のケース82内に電極体83を非水電解質と共に収容したものである。ケース82は、ケース本体84と、その上方の開口部を閉鎖する蓋85とを有している。
【0025】
電極体83は、詳細については図示しないが、銅箔からなる基材に活物質を塗布した負極要素と、アルミニウム箔からなる基材に活物質を塗布した正極要素との間に、多孔性の樹脂フィルムからなるセパレータを配置したものである。
【0026】
これらはいずれも帯状で、セパレータに対して負極要素と正極要素とを幅方向の反対側にそれぞれ位置をずらした状態で、ケース本体84に収容可能となるように扁平状に巻回されている。
【0027】
正極要素には正極集電体86を介して正極端子87が、負極要素には負極集電体88を介して負極端子89がそれぞれ接続されている。正極集電体86及び負極集電体88は、平板状の台座部90と、この台座部90から延びる脚部91とからなる。台座部90には貫通孔が形成されている。脚部91は正極要素又は負極要素に接続されている。
【0028】
正極端子87及び負極端子89は、端子本体部92と、その下面中心部分から下方に突出する軸部93とからなる。そのうち、正極端子87の端子本体部92と軸部93とは、アルミニウム(単一材料)によって一体成形されている。負極端子89においては、端子本体部92がアルミニウム製で、軸部93が銅製であり、これらを組み付けたものである。
【0029】
正極端子87及び負極端子89の端子本体部92は、蓋85の両端部に絶縁材料からなるガスケット94を介して配置され、このガスケット94から外方へ露出されている。
【0030】
蓋85は、圧力開放弁95を有している。圧力開放弁95は、図3に示すように、正極端子87と負極端子89の間に位置している。圧力開放弁95は、ケース82の内圧が制限値を超えた時に、開放して、ケース82の内圧を下げる。
【0031】
図5を参照して、バッテリ50の電気的構成を説明する。バッテリ50は、遮断装置53と、組電池60と、電流検出部54と、管理装置100と、温度センサ115と、を備える。
【0032】
組電池60は、直列接続された複数の二次電池セル62から構成されている。この実施形態では、直列接続されるセル数は「4」である。二次電池セル62は、本発明の「蓄電セル」の一例である。
【0033】
組電池60の正極は、パワーライン55Pにより、正極の外部端子51と接続されている。組電池60の負極は、パワーライン55Nにより、負極の外部端子52に接続されている。
【0034】
遮断装置53は、組電池60の正極に位置し、正極のパワーライン55Pに設けられている。遮断装置53は、リレーやFETを用いることが出来る。
【0035】
遮断装置53は、正常時、CLOSE状態(normally close)に制御される。バッテリ50に異常があった場合、遮断装置53を用いて電流を遮断することで、バッテリ50を保護することが出来る。
【0036】
電流検出部54は、組電池60の電流I[A]を検出する。電流検出部54は抵抗でもよい。抵抗式の電流検出部54は、電圧の極性(正負)から放電と充電を判別できる。電流検出部54は、磁気センサでもよい。温度センサ115は、接触式あるいは非接触式で、組電池60の温度T[℃]を計測する。
【0037】
管理装置100は、回路基板ユニット65に設けられている。管理装置100は、電圧検出回路110と、制御装置120と、電源回路130と、を備える。
【0038】
電圧検出回路110は、信号線によって、各二次電池セル62の両端にそれぞれ接続され、各二次電池セル62のセル電圧Vsを計測する。また、各二次電池セル62のセル電圧Vsから組電池60の総電圧Vtを計測する。組電池60の総電圧Vtは、直列に接続された4つの二次電池セル62の合計電圧である。
【0039】
制御装置120は、演算機能を有するCPU121と、記憶部であるメモリ123と、を含む。制御装置120は、電流検出部54、電圧検出回路110、温度センサ115の出力から、組電池60の電流I、各二次電池セル62のセル電圧Vs、組電池60の総電圧Vt及び温度Tを監視する。また、外部端子51の電圧から充電電圧Vcを検出することが出来る。
【0040】
メモリ123は、フラッシュメモリやEEPROM等の不揮発性の記憶媒体である。メモリ123には、組電池60の状態を監視する監視プログラム及び監視プログラムの実行に必要なデータが記憶されている。
【0041】
メモリ123は、バッテリ50の充電電圧Vcの制御シーケンス(図12)を実行する制御プログラム及び制御プログラムの実行に必要なデータが記憶されている。制御プログラムの実行に必要なデータには、図8に示す参照テーブルのデータが含まれる。
【0042】
バッテリ50には、配線23を介して、車両負荷25と発電装置30が接続されている。車両負荷25は、エンジン始動装置や補機類でもよい。エンジン始動装置はエンジンを始動するモータである。補機類は、ヘッドライド、パワーステアリング機構、エアコン、オーディオなどである。
【0043】
発電装置30は、車両発電機31と整流器33と電圧調整部35とを含む。車両発電機31は、エンジン20の動力により発電する交流発電機である。整流器33は、車両発電機31の出力する電力を、整流して交流から直流に変換する。
【0044】
電圧調整部35は、発電装置30の出力電圧Vcを調整する。電圧調整は、車両発電機31の励磁電流を制御することで出力電圧Vcを調整してもよいし、出力電圧VcをPWM制御する方法でもよい。
【0045】
発電装置30の発電量が車両負荷25の電気負荷量を上回っている場合、発電装置30によりバッテリ50を充電することが出来る。発電装置30の発電量が車両負荷25の電気負荷量よりも小さい場合、バッテリ50は放電し、発電量の不足を補う。発電装置30は、電力を出力する電力装置の一例である。
【0046】
車両ECU(Electronic Control Unit)40は、通信線41を介してバッテリ50と通信可能に接続されており、通信線42を介して発電装置30と通信可能に接続されている。
【0047】
車両ECU40は、バッテリ50から送信される充電電圧Vcの指令値に基づいて電圧調整部35を制御することで、発電装置30の出力電圧Vc、つまりバッテリ50の充電電圧Vcをコントロールする。車両ECU40は、本発明の「外部の充電制御装置」に相当する。外部はバッテリ外部の意味である。
【0048】
2.二次電池セル62のOCV特性とSOC推定
図6は横軸をSOC[%]、縦軸をOCV[V]として、二次電池セル62のSOC-OCV相関特性Yoを示している。以下、「Yo」を「OCVカーブ」とする。
【0049】
SOC(充電状態)は、満充電容量に対する残存容量の比率であり、以下の(1)式により表すことが出来る。
【0050】
OCVは、二次電池セル62の開放電圧である。開放電圧は、無電流又は無電流とみなせる場合の二次電池セル62の両端電圧である。
【0051】
SOC=(Cr/Co)×100・・・・・・・・・・(1)
Coは二次電池セルの満充電容量、Crは二次電池セルの残存容量である。
【0052】
二次電池セル62は、図6に示すように、SOCの変化量に対するOCVの変化量が相対的に低い低変化領域Lと、相対的に高い高変化領域Hを含む複数の充電領域を有している。
【0053】
具体的には、2つの低変化領域L1、L2と、3つの高変化領域H1、H2、H3を有している。
【0054】
図6に示すように、低変化領域L1はSOCの値で35[%]~62[%]の範囲に位置しており、低変化領域L2はSOCの値で68[%]~96[%]の範囲に位置している。
【0055】
低変化領域L1、L2は、SOCの変化量に対するOCVの変化量が非常に小さくOCVが3.3[V]、3.35[V]で略一定のプラトー領域である。プラトー領域とは、SOCの変化量に対するOCVの変化量が判定値以下の領域である。判定値は、一例として2[mV/%]である。
【0056】
第1高変化領域H1は、SOCの値で62[%]よりも大きく68[%]未満の範囲にあり、2つの低変化領域L1、L2の間に位置している。第2高変化領域H2は、SOCの値で35[%]未満の範囲にあり、低変化領域L1よりも低SOC側に位置している。第3高変化領域H3は、SOCの値で96[%]より大きい範囲にあり、低変化領域L2よりも高SOC側に位置している。
【0057】
第1~第3高変化領域H1~H3は、低変化領域L1、L2に比べて、SOCの変化量に対するOCVの変化量(図6に示すグラフの傾き)が相対的に高い関係となっている。
【0058】
SOC-OCV相関特性において、上記したプラトー領域L1、L2を有する二次電池セル62として、正極活物質にリン酸鉄リチウム(LiFePO4)、負極活物質にグラファイトを用いたリン酸鉄系のリチウムイオン電池セルが有る。
【0059】
プラトー領域L1、L2は、SOC変化に対してOCVがほとんど変化しないため、プラトー領域L1、L2を有する二次電池セル62は、OCVとの相関性からSOCを推定することが難しい。
【0060】
管理装置100は、二次電池セル62のSOCを電流積算法により推定する。電流積算法は、(2)で示すように、電流Iの時間積分値に基づいて、SOC[%]を推定する。電流Iの符号を、充電時はプラス、放電はマイナスとする。SOCに限らず、残存容量Crを電流積算法で算出することもできる。
【0061】
SOC=SOCo+100×(∫Idt/Co)・・・(2)
SOCoは、SOCの初期値、Iは電流である。
【0062】
3.二次電池セル62の充電電圧Vcsの指令値の決定
図7は、充電電圧カーブYcを示している。充電電圧カーブYcは、横軸をSOC[%]、縦軸を電圧[V]として、各SOCに対する二次電池セル62の充電電圧Vcsを示している。
【0063】
充電電圧カーブYcは、全SOCにおいてOCVカーブYoよりも高く、SOCが高いほど、充電電圧Vcsは高い。VcsとOCVの電圧差ΔVにより、二次電池セル62を充電することが出来る。電圧差ΔVと充電電流Icの関係は、下記の通りである。
【0064】
Ic=ΔV/r・・・・・(3)
「r」は、二次電池セルの内部抵抗である。
【0065】
充電電流Icが最大許容電流Imを超えないように、電圧差ΔVを定めることで、(4)式に示すように、Vcsを決定することが出来る。各SOCについて、Vcsを求めることで、充電電圧カーブYcを決定出来る。
Vcs=OCV+ΔV・・・・・(4)
【0066】
電圧差ΔVは、満充電付近を除いて、充電電流Icが定電流となるように決定することも出来る。
ΔV/r=Const(ただし、Im未満)
【0067】
満充電付近は、二次電池セル62の電圧が急激に上昇する。満充電付近は、電圧差ΔVは小さくなるため、他の領域に比べて充電電流Icは小さい。
【0068】
メモリ123は、充電電圧カーブYcsの参照テーブルを記憶する。参照テーブルは、SOCと充電電圧Vcsとを対応付けて記憶したテーブルである(図8参照)。
【0069】
管理装置100は、二次電池セル62のSOCを電流積算法により推定し、得られたSOCを参照テーブルに参照することで、1セル当たりの充電電圧Vcsの指令値を決定する。
【0070】
そして、充電電圧Vcsの指令値に基づいて、発電装置30の出力電圧Vcを制御することで、充電電流Icを最大許容電流値Im以下に抑えつつ、バッテリ50を充電することが出来る。
【0071】
充電電圧カーブYcsは、充電電流Icが最大許容電流値Im以下になるように、OCVに対する電圧差ΔVが設定されている。そのため、充電中、電流経路上に位置する通電部品や二次電池セル62の発熱を抑えることが出来る。通電部品は、遮断装置53やバスバー57などである。
【0072】
4.SOCの推定誤差による電圧差ΔVの減少
電流積算法は、電流検出部54による充放電電流Icの計測誤差が時間経過とともに蓄積するため、SOCの推定誤差が発生する。
【0073】
SOCの推定誤差が発生すると、SOCの推定誤差がない場合に比べて、充電電圧VcsとOCVの電圧差ΔVが変動し、電圧差ΔVが小さくなる場合がある。また、電圧の大小関係が反転する場合がある。
【0074】
例えば、SOCが真値に対してマイナスの推定誤差があった場合、図9に示すように、充電電圧カーブYcは、推定誤差の分だけ、SOC軸(横軸)の右方向に位置がずれる。図9の例では、SOCの推定誤差は-10%であり、推定誤差発生時の充電電圧カーブYdは、推定誤差がない場合の充電電圧カーブYcから、右方向に位置が10%ずれる。「V7」のポイントが、「V7'」のポイントにずれる。
【0075】
図9のYd-Yo(推定誤差有)を、図7のYc-Yo(推定誤差なし)と比較すると、SOC2%~18%の範囲(図9のA部)とSOC95%~100%の範囲(図9のB部)で電圧差ΔVが変動している。
【0076】
図10は、図9のB部を拡大した図である。図9のYd-Yo(推定誤差有)の場合、図7のYc-Yo(推定誤差なし)の場合と比較して、時刻t1以降、電圧差ΔVは減少しており、時刻t2で電圧の大小関係が反転する。
【0077】
電圧差ΔVが減少する時刻t1以降、SOC推定誤差がない場合に比べて、充電電流Icは小さくなり、電圧の大小関係が反転する時刻t2以降、充電が停止する可能性がある。こうした電圧差ΔVの変動は、高変化領域H1、H2で発生し易い。
【0078】
管理装置100は、充電電流Icが所定値Ib1よりも小さい場合、充電電圧Vcを引き上げる制御を行う。
【0079】
所定値Ib1は、充電が停止せず、継続可能である否かを判断する値であり、充電電流Icの期待値Ic0よりも小さい。期待値Ic0は、(3)式により定まる充電電流Icの理論値である。所定値Ib1は、各SOCに共通の数値としてもよいし、固有の数値でもよい。
【0080】
充電電圧Vcの引き上げにより、充電電圧VcsとOCVの電圧差ΔVを引き上げ前よりも大きくすることで、充電電流Icを期待値Ic0に近づけることが出来る。そのため、充電途中に充電電流Icがゼロになって充電が停止することを抑制し、充電を継続することが出来る。
【0081】
充電電圧Vcの引き上げは、1セル当たりの充電電圧Vcsに換算して、最大値Vcmを超えない範囲で行ってもよい。最大値VcmはSOC100[%]の充電電圧Vcsである(図7図9参照)。
【0082】
5.管理装置100のモード遷移と充電電圧Vcの制御シーケンス
管理装置100には、図11に示すように、監視モードとスリープモードの2つのモードが設定されている。
【0083】
監視モードは、所定周期Nでバッテリ50の状態を監視するモード、スリープモードは、監視機能の一部を停止して、管理装置100の電力消費を抑えるモードである。
【0084】
管理装置100は、バッテリ50の電流Iからバッテリ50の非使用、使用を判断してモード遷移を行う。つまり、電流Iが電流判定値未満の場合(非使用と判断)、スリープモードに移行し、電流Iが電流判定値以上の場合(使用と判断)、監視モードに移行する。
【0085】
自動車10が駐車中の場合、バッテリ50は、充電も放電もしない非使用状態になるため、電流Iは電流判定値未満となり、管理装置100はスリープモードに移行する。一方、走行中、停車中やアイドリングストップ中など駐車以外の状態の場合、自動車10との間で充放電をして、バッテリ50は使用状態となる。そのため、管理装置100は、監視モードに移行する。
【0086】
管理装置100は、監視モードに移行することをトリガとして、充電電圧Vcの制御シーケンスを開始する。
【0087】
充電電圧Vcの制御シーケンスは、図12に示すように、S10~S70の7つのステップから構成されている。
【0088】
制御シーケンスが開始すると、管理装置100は、電流検出部54、電圧検出回路110、温度センサ115等の計測機器を用いて、組電池60の電流I、各二次電池セル62のセル電圧Vs、組電池60の総電圧Vt、組電池60の温度Tを計測する。そして、電流積算法により、組電池60のSOCを推定する(S10)。
【0089】
次に、管理装置100は、電流積算法を用いて求めたSOCから、1セル当たりの充電電圧Vcsの指令値を決定する。
【0090】
1セル当たりの充電電圧Vcsは、SOCをメモリ123に記憶された参照テーブル(図8)に参照することにより、決定することが出来る。例えば、SOC=40[%]の場合、1セル相当の充電電圧Vcsの指令値は「V7」である。
【0091】
管理装置100は、その後、車両ECU40に対して充電電圧Vcの指令値を送信する(S20)。充電電圧Vcの指令値と共に、バッテリ50のSOCを送信する。SOCの情報を送ることで、車両ECU40にて、バッテリ50のSOCを監視できる。
【0092】
車両ECU40に対して送信する指令値は、バッテリ50の充電電圧Vcの指令値であり、図8の参照テーブルから決定した1セル当たりの充電電圧Vcsに対してセル数「4」を乗じた値である。
【0093】
車両ECU40は充電電圧Vcの指令値を受信すると、発電装置30の出力電圧Vcを受信した指令値に制御する。
【0094】
管理装置100は、指令値の送信後、充電電圧Vcの大ききを判定する(S31)。具体的には、充電電圧Vcの指令値Vcoと計測値Vctの差が比較値Aよりも小さいか、判定する。充電電圧(計測値)Vctは、例えば、バッテリ50の外部端子51の電圧より計測できる。
【0095】
Vco-Vct≦A・・・・・(4)
【0096】
充電電圧Vcの計測値Vctは、配線の抵抗等による電圧降下により、指令値Vcoよりも小さな値となる。指令値Vcoと計測値Vctとの差が比較値Aよりも小さい場合(S31:YES)、発電装置30は、指令値通りに出力しており、バッテリ50は、指令した充電電圧Vcにて、充電中であると判断できる。
【0097】
S31でYES判定である場合、管理装置100は、充電電流Icが所定値Ib1より小さいか否かを判断する。
【0098】
この実施形態では、充電電流Icを、範囲B(図13参照)と比較する。範囲Bは、所定値Ib1より電流値が小さく、ゼロを含む範囲(Ib1~Ib2)である。
【0099】
Ib2<B<Ib1・・・・(5)
Bは、SOCにより異なっていてもいし、全SOCで共通していてもよい。
【0100】
充電電流Icが範囲Bに含まれている場合、充電電流Icは、所定値Ib1よりも小さいと判断する(S33:YES)。
【0101】
充電電流Icが所定値Ib1以上の場合(S33:NO)、管理装置100は、監視モードからスリープモードに、モードの遷移があるか否かを判定する(S60)。モード遷移がなく監視モードが継続している場合(S60:NO)、S10に戻る。
【0102】
制御シーケンスの開始後、発電装置30は指令値通りに出力しており(S31:YES)、かつ充電電流Icが所定値Ib1であり(S33:NO)、かつ監視モードからモード遷移がない場合(S60:NO)、S10、S20、S31、S60の処理が、所定周期Nで繰り返される(ループR)。
【0103】
これにより、組電池60の電流I、各二次電池セルのセル電圧Vs、組電池の総電圧Vt及び温度Tが所定周期Nで計測されると共に、計測された電流Iの積算値に基づいて、組電池60のSOCが逐次算出される。
【0104】
制御装置120は、電流積算法を用いて逐次算出されたSOCを、図8の参照テーブルに参照することにより、逐次算出される各SOCに対応するバッテリ50の充電電圧Vcの指令値を決定する。制御装置120は、充電中、各SOCの情報と共に、各SOCに対応する充電電圧Vcの指令値の情報を車両ECU40に送信する。車両ECU40は、発電装置30を制御し、発電装置30の出力電圧Vcを指令値に制御する。これにより、充電中、連続的に変化するSOCに応じて充電電圧Vcを連続的に変化させることが出来、充電電流Icを最大許容電流値Im以下の定電流に制御しつつ、バッテリ50を充電することが出来る。
【0105】
次に充電中、充電電流Icが所定値Ib1より小さい場合(S33:YES)について説明を行う。
【0106】
S33でYES判定した場合、管理装置100は、充電電流Icが所定値Ib1より小さい状態(範囲Bに含まれている状態)の継続時間Tsをカウントし、閾値D[s]と判定する(S40)。
【0107】
閾値Dは、電圧計測誤差やノイズによる誤検出を避けるため、充電電流Icが所定値Ib1よりも小さい状態が持続しているかを、検証する値である。
【0108】
継続時間Tsが閾値Dよりも長い場合、管理装置100は、車両ECU40に対して、充電電圧Vcの指令値を、現在値から引き上げる指令を送信する(S50)。
【0109】
充電電圧Vcの引き上げにより、充電電圧VcsとOCVの電圧差ΔVが引き上げ前より大きくなり、充電電流Icを期待値Ic0に近づけることが出来る。そのため、充電途中に充電電流Icが、ゼロになって充電が停止することを抑制し、バッテリ50の充電を継続することが出来る。
【0110】
充電電圧Vcの指令値の引き上げ後、処理の流れとしては、S60に移行し、モード遷移の有無を判定し、モード遷移がなければ、S10に戻る。
【0111】
また、継続時間Tsが閾値D未満の場合、S50に移行せずに、S60に移行する。従って、充電電圧Vcの指令値の引き上げは実行されず、充電電圧Vcの指令値は、現在値に維持される。
【0112】
そして、自動車10が走行から駐車に移行することに伴って、監視モードからスリープモードに遷移すると、S70に移行する。
【0113】
S70に移行すると、管理装置100は、充電電圧Vcの指令値の引き上げをリセットする。リセットは、充電電圧Vcの指令値を、引き上げ前の初期の状態に戻すことである。これにより、充電電圧Vcの制御シーケンスは、終了する。
【0114】
バッテリ50が目標SOCまで充電された場合も、S70に移行して、充電電圧Vcの指令値の引き上げをリセットし、充電電圧Vcの制御シーケンスは、終了する。
【0115】
目標SOCは満充電でもいし、それ以外でもい。目標SOC及び充電終了は、車両ECU40が決定して車両ECU40で制御してもよいし、管理装置100が決定して管理装置100で制御してもよい。
【0116】
図12の制御シーケンスは、充電開始後、二次電池セル62が低変化領域L1、L2、高変化領域H1~H3のどちらの領域にある場合でも、常時実行される。
【0117】
制御シーケンスを常に実行することで、二次電池セル62がどの領域にあっても、ほぼ期待値Ic0で充電を行うことが可能となり、二次電池セル62や通電部品57の発熱を抑えつつ、二次電池セル62を充電することが出来る。
【0118】
図14、15は、バッテリ50の充電特性を示す図である。図14、15は、充電電圧カーブYcに従って充電電圧Vcを制御した時のSOCの推移を示しており、SOCの推定誤差により充電開始から大凡95[s]が経過した時点で充電停止(図中のC部)が起きている。充電開始時点のSOCは96%である。
【0119】
充電電圧Vcの引き上げを実行しない場合(図14)、大凡SOC98.5[%]までしか、充電することが出来ない。
【0120】
充電電圧Vcの引き上げを実行する場合(図15)、充電停止を抑制して充電を継続することが出来る。
【0121】
図15の例では、充電電流Icが範囲Bに含まれる状態(Icが範囲Bの上限値Ib1を下回る状態)が3度発生している。そのため、充電電圧Vcの指令値の引き上げを3回行っており、最終的には、満充電、つまりSOC100[%]まで充電できている(D部)。「満充電」は、所定の充電終了条件に至るまで、二次電池セル62を充電した状態であり、一般的には、SOC=100[%]である。所定の充電終了条件は、例えば、二次電池セル62が所定の上限電圧に達してからの充電時間を終了条件とすることが出来る。上限電圧に達してから10分充電すると、満充電などである。
【0122】
また、充電電圧Vcの指令値を引き上げると、バッテリ50に対して突入電流が流れ、電流値が一時的に上昇する。一時的に電流値が上昇することで、二次電池セル62の内部では分極が起きて抵抗値が大きくなる。そのため、電流はピークを過ぎると、低下する。以上のことから、充電電圧Vcの指令値の引き上げに伴い、充電電流Icの波形は、シャープな波状となる(E部)。
【0123】
6.効果説明
本構成では、電流積算法を用いて求めたSOCに応じて充電電圧Vcの指令値を決定する。本構成では、充電電圧VcをSOCに依存しない固定値とする場合(例えば、1セルに換算してVcmの場合)と比べて、バッテリ50の充電電圧Vc及び充電電流Icを、バッテリ50のSOCに応じて緻密に制御できる。
【0124】
具体的には、充電電流Icが最大許容電流Imを超えない範囲内において、SOCが高い程、充電電圧Vcを高くすることで、低SOCから高SOCの全SOCについて、ジュール熱による通電部品や二次電池セル62の発熱を抑えつつ、二次電池セル62を充電することが出来る。
【0125】
バッテリ50は、SOCの使用範囲を管理する場合があり、例えば、使用範囲が60~80[%]の場合、70[%]で充電を開始した場合、SOCが80[%]に達した時点で、充電を終了することがある。この構成は、充電を制御するための管理情報であるSOCを用いて充電電圧Vcを決定するので、緻密な充電制御を可能にしつつ、充電制御に必要な情報を必要最小限に抑えることが出来る。
【0126】
充電中における二次電池セル62の発熱を抑制する方法として、充電電流Icが期待値Ic0に一致するように、充電電圧Vcをフィードバック制御する方法が考えられる。しかし、フィードバック制御は、信号の遅れ(例えば、制御装置120と車両ECU40との間の通信による信号の遅れ)などの影響で、制御対象である充電電流Icが振動することがある。本構成は、SOCに応じて充電電圧Vcを変化させる制御であるから、フィードバック制御と比べて、充電電流Icが安定し易い、というメリットがある。
【0127】
SOCの推定誤差を補正する方法として、OCV法を用いた補正方法や、バッテリ50を満充電まで充電する補正方法がある。
【0128】
OCV法は、OCV-SOCの相関性を利用して、SOCを求める方法である。OCV法を用いた補正方法は、電流積算法とOCV法でそれぞれSOCを算出し、電流積算法により求めたSOCを、OCV法を用いて求めたSOCに補正する方法である。SOCの補正により、電流積算法によるSOCの推定誤差を無くすことが出来る。OCV法は、二次電池セル62のOCV(開路電圧)を特定するのに時間が掛かる(電圧が安定するまでの安定時間が必要)という課題がある。
【0129】
満充電まで充電する補正方法は、バッテリ50を満充電まで充電し、電流積算法により求めたSOCを、満充電時のSOC(SOC=100[%])に補正する方法である。満充電時のSOC(SOC=100[%])に補正することにより、電流積算法によるSOCの推定誤差を無くすことが出来る。
【0130】
いずれの補正方法も、補正したSOCを初期値(満充電による補正方法の場合、SOC=100[%])として、補正後は、電流積算法でSOCを推定する。
【0131】
バッテリ50が満充電未満を使用範囲としている場合、例えばSOCで60~80[%]である場合、通常は使用範囲内でバッテリ50を充電し、前回補正から所定期間が経過した時など、SOCの推定誤差が蓄積した段階で、バッテリ50を満充電まで充電することで、電流積算法によるSOCを補正することが出来る。
【0132】
しかし、満充電への充電時、SOCの推定誤差が蓄積しているから、図14を参照して説明したように、充電途中で充電が停止して満充電に至らず、SOCを補正出来ない場合がある。この場合、推定誤差を無くせないまま、電流積算法によるSOC推定が継続されることにより、SOCの推定誤差は許容値を超えて拡大してゆく。
【0133】
本構成では、図15に示すように、SOCの推定誤差により、充電電流Icが所定値Ib1より小さくなった場合、充電電圧Vcの指令値を引き上げる。指令値の引き上げにより、充電途中の充電停止を抑制しつつ、二次電池セル62を満充電(SOC100[%])まで充電することが出来る。そのため、電流積算法により求めたSOCを満充電時のSOC(SOC100[%])に補正することで、電流積算法により蓄積したSOCの推定誤差を無くすことができ、SOCの推定精度を維持することが出来る。
【0134】
本構成では、継続時間Tsが閾値D未満の場合、充電電圧Vcの指令値を引き上げない。この構成では、電流計測誤差やノイズの影響で、充電電流Icが所定値Ib1よりも一時的に小さくなった場合、充電電圧Vcの指令値が引き上げられることを抑制できる。
【0135】
本構成では、制御装置120から車両ECU40に充電電圧Vcの指令値を送り、指令値を受けた車両ECU40が充電電圧Vcを調整する。つまり、制御装置120と車両ECU40の協動により、二次電池セル62の充電電圧Vcを制御することが出来る。この構成は、本技術を、バッテリ50の充電制御機能を「蓄電装置の制御装置120」と「外部の充電制御装置(車両ECU40)」で分担する充電システムに適用できる点でメリットがある。
【0136】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0137】
(1)実施形態では、蓄電セルの一例として、SOC-OCV特性において、低変化領域Lと高変化領域Hを有する二次電池セルを示した。二次電池セルは、必ずしも2つの変化領域を有する特性である必要はない。1つの変化領域しか有さない二次電池セルでもよい。また、蓄電セルは、キャパシタなどでもよい。蓄電セルは、複数セルに限らず、単セルでもよい。また、複数セルが直並列に接続されていてもよい。
【0138】
(2)実施形態では、バッテリ50を自動車に使用した例を示した。これ以外にも、自動二輪用や鉄道用にも使用することも出来る。また、バッテリ50の使用用途は、自動車等の移動体用に限定されない。無停電電源装置や発電システムの蓄電装置など、定置用として使用することも出来る。
【0139】
(3)実施形態では、充電電圧Vcの指令値を、バッテリ50の管理装置100により算出した。充電電圧Vcの指令値は、車両ECU40で決定してもよい。例えば、管理装置100から車両ECU40に対してSOCの情報のみ通知して、車両ECU40にて充電電圧Vcの参照テーブル(図8)を参照することで、充電電圧Vcの指令値を決定してもよい。また、充電電圧Vcを引き上げる制御も同様である。
【0140】
(4)実施形態では、S31、S33、S40の3つのステップで、いずれもYES判定であった場合に、充電電圧の指令値を引き上げた。S31、S40のステップは実行せず、S33のみ実行してもよい。S33でYES判定であった場合に、充電電圧の指令値を引き上げてもよい。
【0141】
(5)実施形態では、充電電流Icが所定値Ib1より小さい状態の継続時間Tsが閾値D以上の場合、充電電圧Vcの指令値を引き上げた。充電電流Icが所定値Ib1より低下した場合、直ちに充電電圧Vcの指令値を引き上げてもよい。
【0142】
(6)実施形態では、範囲Bと比較することにより、充電電流Icが所定値Ib1より小さいか判断した。充電電流Icと所定値Ib1の差を求めて、所定値Ib1よりも小さいか判断してもよい。IcとIc0の差が、許容範囲外の場合、充電電流Icは所定値Ib1より小さいと判断してもよい。
【0143】
(7)充電電圧Vcの参照テーブルは、バッテリ50の温度ごとに設けてもよい。バッテリ50の温度情報から、使用する参照テーブルを選択して、充電電圧Vcの指令値を決定してもよい。また、参照テーブルに限らず、充電電圧カーブYcをメモリ123に記憶しておき、それを参照することで、充電電圧Vcの指令値を決定してもよい。
【0144】
(8)実施形態では、充電電圧Vcの制御周期を、バッテリ50の計測周期Nと同周期とした。充電電圧Vcの制御周期は、バッテリ50の計測周期Nと異なっていてもよい。例えば、充電電圧Vcの制御周期を、バッテリ50の計測周期の10倍程度としてもよい。
【0145】
(9)実施形態では、充電電圧Vcの指令値の引き上げのリセット(S70)を、管理装置100のモード遷移をトリガ信号として実行した。指令値のリセットは、他の信号をトリガ信号として実行してもよい。例えば、管理装置100から車両ECU40に対して満充電要求信号を出力する場合、その信号をトリガとして、充電電圧Vcの指令値の引き上げをリセットしてもよい。
【0146】
(10)実施形態では、低変化領域Lと高変化領域Hの双方について、バッテリ50の充電電流Icを所定値Ib1と比較し、充電電流Icが所定値Ib1より小さい場合、充電電圧Vcの指令値を引き上げた。低変化領域Lと高変化領域Hのうち、少なくとも高変化領域Hにおいて、充電電流Icを所定値Ib1と比較し、充電電流Icが所定値より小さい場合、充電電圧Vcの指令値を引き上げてもよい。つまり、充電電圧Vcの指令値を引き上げる処理は、高変化領域内において実行されていれば、低変化領域Lは実行しても、しなくてもどちらでもよい。二次電池セルが高変化領域、低変化領域のどちらに含まれているかは、電流積算法により求めたSOCで判断可能である。
【0147】
(11)実施形態では、バッテリ50を満充電まで充電した例を説明した。充電の目標SOCは、満充電(SOC=100[%])に限らず、80%や90%など満充電以外でもよい。また、プラトー領域内で充電を行ってもよい。
【0148】
(12)実施形態では、発電装置30の出力する電力で、バッテリ50を充電した。バッテリ50の充電は、発電装置30の出力に限らない。充電装置や電力変換器(例えば、コンバータ)などの出力で充電してもよい。つまり、蓄電装置であるバッテリ50を充電する電力装置は、発電装置30に限らず、充電装置や電力変換器でもよい。
【0149】
(13)実施形態では、二次電池セル62のSOC[%]を電流積算法により算出し、電流積算法を用いて求めたSOC[%]に基づいて、二次電池セル62の充電電圧Vcの指令値を決定した。二次電池セル62の残存容量[Ah]を電流積算法により算出し、電流積算法を用いて求めた残存容量[Ah]に基づいて、二次電池セル62の充電電圧Vcの指令値を決定してもよい。この場合、「SOC-OCV相関特性」に代えて「残存容量―OCV相関特性」を用いることが出来、「SOC―Vcsの充電電圧カーブ」に代えて「残存容量―Vcsの充電電圧カーブ」を用いることが出来る。実施形態では、満充電まで充電してSOCを補正する例を説明したが、満充電まで充電して残存容量Crを補正することも出来る。
【0150】
Cr=Cro+(∫Idt)・・・(6)
Cr:残存容量、Cro:残存容量の初期値、I:電流
【符号の説明】
【0151】
10 自動車
30 発電システム
40 車両ECU(本発明の「充電制御装置」に相当)
50 バッテリ(本発明の「蓄電装置」に相当)
60 組電池
100 管理装置
120 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15