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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】カメラ装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 11/04 20210101AFI20250109BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20250109BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20250109BHJP
   G03B 17/04 20210101ALI20250109BHJP
   H04N 5/222 20060101ALI20250109BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20250109BHJP
【FI】
G03B11/04 A
G03B15/00 P
G03B17/56 A
G03B17/04
H04N5/222 100
H04N23/55
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021032272
(22)【出願日】2021-03-02
(65)【公開番号】P2022133541
(43)【公開日】2022-09-14
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】奥村 圭亮
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0269772(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 11/00-11/06
G03B 15/00
G03B 17/56
G03B 17/04
H04N 5/222-5/257
H04N 23/00
H04N 23/40-23/76
H04N 23/90-23/259
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
前記ベース部材に対して第一回転軸を中心に回転可能に取り付けられたカメラと、
前記ベース部材に対して前記第一回転軸と平行する別の第二回転軸を中心に、前記カメラを覆うカバー位置と前記カメラを外部に露出させる開放位置との間で回転可能に取り付けられたシャッター部材と、
前記ベース部材に対して前記第一回転軸と平行する別の第三回転軸を中心に回転可能に取り付けられた動力伝達部材と、
前記動力伝達部材を回転駆動するモータと、を備え、
前記動力伝達部材は、当該動力伝達部材の第一の回転角度範囲において前記動力伝達部材の回転に伴って前記カメラを回転させ、
前記第一の回転角度範囲と異なる前記動力伝達部材の第二の回転角度範囲において前記動力伝達部材の回転に伴って前記シャッター部材を回転させ
前記動力伝達部材は、前記第三回転軸から径方向に離れた位置において前記第三回転軸の周方向に互いに間隔をあけて配置された第一係止ピン及び第二係止ピンと、を有し、
前記カメラは、前記第一回転軸の径方向に延びて形成された第一係止溝を有し、
前記第一係止ピンは、前記動力伝達部材が前記第一の回転角度範囲に位置するときに前記第一係止溝に挿入され、少なくとも前記動力伝達部材が前記第二の回転角度範囲に位置するときに前記第一係止溝から抜け出し、
前記カメラは、前記第一係止ピンが前記第一係止溝に挿入された状態で前記動力伝達部材の回転に伴って回転し、
前記シャッター部材は、少なくとも前記開放位置に配された状態で前記第三回転軸を中心とする円弧状に形成されるとともに、前記第二係止ピンが挿入される第二係止溝を有し、
前記第二係止ピンは、前記動力伝達部材が少なくとも前記第一の回転角度範囲に位置するときに前記第二係止溝の長手方向に移動可能とされ、かつ、前記動力伝達部材が前記第二の回転角度範囲に位置するときに前記第二係止溝の長手方向の端部に接し、
前記シャッター部材は、前記第二係止ピンが前記第二係止溝の長手方向の端部に接することで前記動力伝達部材の回転に伴って回転するカメラ装置。
【請求項2】
前記動力伝達部材の前記第一の回転角度範囲と前記第二の回転角度範囲とは、前記第三回転軸を中心とする前記動力伝達部材の周方向に隣り合わせて位置し、
前記動力伝達部材が前記第二の回転角度範囲において前記第一の回転角度範囲から前記第二の回転角度範囲に向かう第一回転方向に回転した際には、前記シャッター部材が前記開放位置から前記カバー位置に向けて移動し、
前記動力伝達部材が前記第二の回転角度範囲において前記第一回転方向と逆の第二回転方向に回転した際には、前記第二の回転角度範囲において前記シャッター部材が前記カバー位置から前記開放位置に向けて移動する請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項3】
前記動力伝達部材が前記第一の回転角度範囲において前記カメラと係合することで、前記カメラは前記動力伝達部材の回転に伴って回転し、
前記動力伝達部材は、前記第一の回転角度範囲から外れて位置することで、前記カメラとの係合が解除され、
前記動力伝達部材が前記第二の回転角度範囲において前記シャッター部材と係合することで、前記シャッター部材は前記動力伝達部材の回転に伴って回転し、
前記動力伝達部材は、前記第二の回転角度範囲から外れて位置することで、前記シャッター部材との係合が解除される請求項1又は請求項2に記載のカメラ装置。
【請求項4】
前記動力伝達部材は、前記第二の回転角度範囲に位置するときに、前記第一回転軸を中心とする前記カメラの回転を抑制するように前記カメラを支持する支持ピンを有する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のカメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータ(アクチュエータ)の駆動力を利用してカメラの向きを変えるカメラ装置(監視カメラ装置)が開示されている。特許文献1のカメラ装置は、カメラの向きを変える動作に連動してカメラをその光軸方向に移動させる機構も備える。すなわち、特許文献1のカメラ装置は、カメラ(同一の対象物)を同時に2つの方向(カメラの向きを変える方向、及び、光軸方向)に動かすように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-107772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のカメラ装置をウェブ会議などで用いる場合には、プライバシーの保護などを目的として、不要にカメラで撮影されてしまうことを防ぐために、カメラを覆うシャッターを設けることが考えられる。このようなシャッターは、カメラを覆う位置と覆わない位置との間で移動可能に設けられるとよい。シャッターは、例えば手動で動かすことも考えられるが、カメラ装置が手の届かない場所あるいは届きにくい場所に設置される場合には不便である。そこで、モータの駆動力を利用してシャッターを動かすことが考えられる。
【0005】
しかしながら、カメラとシャッターとは互いに独立して動かす必要がある。このため、特許文献1に基づいてシャッター付きのカメラ装置を作製しようとしても、カメラを動かすためのモータ及び駆動機構と、シャッターを動かすためのモータ及び駆動機構とを別々に用意する必要がある。その結果、カメラ装置の部品点数が増加したり、カメラ装置の構造が複雑化したりしてしまう。また、モータはカメラ装置におけるコストの割合が大きいため、モータが増えることでカメラ装置のコストが高くなってしまう、という問題もある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、部品点数を抑えて構造の簡素化を図りながら、同一のモータの駆動力によってカメラとシャッターとを独立して動かすことが可能なカメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、ベース部材と、前記ベース部材に対して第一回転軸を中心に回転可能に取り付けられたカメラと、前記ベース部材に対して前記第一回転軸と平行する別の第二回転軸を中心に、前記カメラを覆うカバー位置と前記カメラを外部に露出させる開放位置との間で回転可能に取り付けられたシャッター部材と、前記ベース部材に対して前記第一回転軸と平行する別の第三回転軸を中心に回転可能に取り付けられた動力伝達部材と、前記動力伝達部材を回転駆動するモータと、を備え、前記動力伝達部材は、当該動力伝達部材の第一の回転角度範囲において前記動力伝達部材の回転に伴って前記カメラを回転させ、前記第一の回転角度範囲と異なる前記動力伝達部材の第二の回転角度範囲において前記動力伝達部材の回転に伴って前記シャッター部材を回転させ、前記動力伝達部材は、前記第三回転軸から径方向に離れた位置において前記第三回転軸の周方向に互いに間隔をあけて配置された第一係止ピン及び第二係止ピンと、を有し、前記カメラは、前記第一回転軸の径方向に延びて形成された第一係止溝を有し、前記第一係止ピンは、前記動力伝達部材が前記第一の回転角度範囲に位置するときに前記第一係止溝に挿入され、少なくとも前記動力伝達部材が前記第二の回転角度範囲に位置するときに前記第一係止溝から抜け出し、前記カメラは、前記第一係止ピンが前記第一係止溝に挿入された状態で前記動力伝達部材の回転に伴って回転し、前記シャッター部材は、少なくとも前記開放位置に配された状態で前記第三回転軸を中心とする円弧状に形成されるとともに、前記第二係止ピンが挿入される第二係止溝を有し、前記第二係止ピンは、前記動力伝達部材が少なくとも前記第一の回転角度範囲に位置するときに前記第二係止溝の長手方向に移動可能とされ、かつ、前記動力伝達部材が前記第二の回転角度範囲に位置するときに前記第二係止溝の長手方向の端部に接し、前記シャッター部材は、前記第二係止ピンが前記第二係止溝の長手方向の端部に接することで前記動力伝達部材の回転に伴って回転するカメラ装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カメラ装置の部品点数を抑えて構造の簡素化を図りながら、同一のモータの駆動力によってカメラとシャッターとを独立して動かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るカメラ装置であって、シャッター部材が開放位置に配された状態を示す斜視図である。
図2図1のカメラ装置において、シャッター部材がカバー位置に配された状態を示す斜視図である。
図3図1,2のカメラ装置の分解斜視図である。
図4図1~3のカメラ装置において、カメラ及びシャッター部材と動力伝達部材との位置関係を示し、動力伝達部材が第一の回転角度範囲に位置し、シャッター部材が開放位置に配され、カメラが前方に向いている状態を示す図である。
図5図1~4のカメラ装置のカメラを示す斜視図である。
図6図1~4のカメラ装置のシャッター部材を示す斜視図である。
図7図1~4のカメラ装置の動力伝達部材を示す斜視図である。
図8図1~3のカメラ装置において、カメラ及びシャッター部材と動力伝達部材との位置関係を示し、動力伝達部材が第一の回転角度範囲に位置し、シャッター部材が開放位置に配され、カメラが斜め上方に向いている状態を示す図である。
図9図1~3のカメラ装置において、カメラ及びシャッター部材と動力伝達部材との位置関係を示し、動力伝達部材が第一の回転角度範囲に位置し、シャッター部材が開放位置に配され、カメラが斜め下方に向いている状態を示す図である。
図10図1~3のカメラ装置において、カメラ及びシャッター部材と動力伝達部材との位置関係を示し、動力伝達部材が第二の回転角度範囲に位置し、シャッター部材が開放位置に配され、カメラが斜め下方に向いている状態を示す図である。
図11図1~3のカメラ装置において、カメラ及びシャッター部材と動力伝達部材との位置関係を示し、動力伝達部材が第二の回転角度範囲に位置し、シャッター部材が開放位置とカバー位置との間に配されている状態を示す図である。
図12図1~3のカメラ装置において、カメラ及びシャッター部材と動力伝達部材との位置関係を示し、動力伝達部材が第二の回転角度範囲に位置し、シャッター部材がカバー位置に配されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1~12を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1~4に示すように、カメラ装置1は、ベース部材2と、カメラ3と、シャッター部材4と、動力伝達部材5と、モータ6と、を備える。本実施形態のカメラ装置1は、減速ギア機構7をさらに備える。
【0011】
ベース部材2は、カメラ3、シャッター部材4、動力伝達部材5、モータ6、減速ギア機構7を取り付けるように構成されている。本実施形態のベース部材2は、カメラ3、動力伝達部材5、モータ6、減速ギア機構7を収容するケースとして構成されている。
ベース部材2は、ベース本体21と、側壁部22と、を有する。図4においては、側壁部22が省略されている。ベース本体21には、主にカメラ3、動力伝達部材5、モータ6、減速ギア機構7が取り付けられる。ベース本体21には、その内部に収容されたカメラ3を外部に臨ませる開口部21Aが形成されている。
【0012】
以下の説明では、ベース本体21の開口部21Aが向く方向(X軸正方向)を前方と呼び、前方と逆の方向(X軸負方向)を後方と呼ぶことがある。また、前後方向(X軸方向)に直交する一つ目の方向(Y軸方向)を幅方向と呼び、前後方向に直交する二つ目の方向(Z軸方向)を上下方向と呼ぶことがある。また、図面におけるZ軸正方向を上方と呼び、Z軸負方向を下方と呼ぶことがある。
【0013】
側壁部22は、ベース本体21の幅方向の一方側(Y軸正方向側)に取り付けられ、ベース本体21に取り付けられたカメラ3、シャッター部材4の一部(後述する第一側板部43Aの一部)、動力伝達部材5、モータ6、減速ギア機構7を覆う。
【0014】
図1~5に示すカメラ3は、画像や映像を撮影するものである。カメラ3は、ベース部材2に対して第一回転軸A1を中心に回転可能に取り付けられる。また、カメラ3は、第一回転軸A1の径方向に延びて形成された第一係止溝31を有する。以下、本実施形態のカメラ3について具体的に説明する。
【0015】
本実施形態のカメラ3は、内部に撮影用のレンズ(不図示)が設けられる筒部32を有する。カメラ3の光軸OAは、筒部32の中心軸線と一致している。なお、光軸OAは、例えば筒部32の中心軸線に対してずれて位置してもよい。
カメラ3は、ベース部材2のうち開口部21Aが形成された位置に配置される。カメラ3は、筒部32の長手方向の第一端部において光軸OAに直交する方向に延びる第一回転軸A1を中心として、ベース部材2に対して回転可能に取り付けられる。本実施形態において、第一回転軸A1は幅方向(Y軸方向)に延びている。これにより、カメラ3がベース部材2に対して回転することで、カメラ3の光軸OAが向く方向が上下に変化する(例えば図8,9参照)。本実施形態では、図1,5に示すように、第一回転軸A1をなす軸体33がカメラ3に設けられ、当該軸体33が挿入される孔34がベース部材2に形成されるが、これに限ることはない。
【0016】
図3,4に示すように、カメラ3は、筒部32がベース部材2の開口部21Aからベース部材2の内側(後方)に延びるように配置される。図3~5に示すように、カメラ3の第一係止溝31は、ベース部材2の開口部21Aよりも内側(後方)に位置する筒部32の長手方向の第二端部に位置している。また、第一係止溝31は、筒部32の幅方向の一方側(Y軸正方向側)に位置している。第一係止溝31は、筒部32の長手方向に直線状に延びており、筒部32の長手方向における筒部32の第二端部側に開口している。
【0017】
図1~4及び図6に示すシャッター部材4は、カメラ3を覆うための部材であり、ベース部材2に対して、第一回転軸A1と平行する別の第二回転軸A2を中心に回転可能に取り付けられている。シャッター部材4は、第二回転軸A2を中心に回転することで、図2に示すようにカメラ3を覆うカバー位置P41と、図1,4に示すようにカメラ3を外部に露出させる開放位置P42との間で移動可能である。図3~4に示すように、シャッター部材4は、第二回転軸A2が延びる方向(幅方向)から見て円弧状に形成された第二係止溝41を有する。以下、本実施形態のシャッター部材4について具体的に説明する。
【0018】
図1~4及び図6に示すように、本実施形態のシャッター部材4は、シャッター本体42と、一対の側板部43と、を有する。
シャッター本体42は、カメラ3を覆うための部位である。シャッター本体42は、第二回転軸A2から径方向に離れて位置し、図4に示すように幅方向から見て第二回転軸A2を中心とする円弧状となるように湾曲した板状に形成されている。第二回転軸A2は、第一回転軸A1よりも後方(X軸負方向)に離れて位置する。
シャッター本体42は、図2,12に示すようにシャッター部材4がカバー位置P41に配された状態において、ベース部材2の開口部21Aの前方に位置する。これにより、シャッター本体42がカメラ3を覆う。一方、図1,4に示すようにシャッター部材4が開放位置P42に配された状態では、シャッター本体42は、ベース部材2の開口部21Aの下側に位置する。これにより、シャッター本体42はカメラ3を覆わない。
図4,12に示すようにシャッター本体42を幅方向の一方側(Y軸正方向側)から見ると、シャッター本体42のカバー位置P41は、開放位置P42に対してシャッター本体42が時計回り方向(以下、第一回転方向RD1と呼ぶ。)に位置する。
【0019】
図1~3及び図6に示すように、一対の側板部43は、シャッター本体42の幅方向(Y軸方向)の両端から第二回転軸A2側に向かうように第二回転軸A2の径方向に延びる板状に形成されている。各側板部43の板厚方向は幅方向に向いている。一対の側板部43は幅方向に間隔をあけて位置する。一対の側板部43は、シャッター部材4をベース部材2に取り付けた状態において、幅方向におけるカメラ3の両側に位置する。
図3,6に示すように、一対の側板部43には、第二回転軸A2をなす軸体44が挿入される孔45が形成されている。一対の側板部43のうち幅方向の一方側(Y軸正方向側)に位置する第一側板部43Aの孔45には、ベース部材2の側壁部22に設けられた軸体44が挿入される。
【0020】
図3~5に示すように、シャッター部材4の第二係止溝41は、第一側板部43Aに形成されている。第二係止溝41は、シャッター部材4が開放位置P42に配された状態で後述する動力伝達部材5の第三回転軸A3を中心とする円弧状に形成されている。図4のように幅方向の一方側(Y軸正方向側)から見て、第二係止溝41のうち第一回転方向RD1側に位置する第一端部411(第二係止溝41の長手方向の端部)には、円弧状とされた第二係止溝41の径方向内側に延びる窪み47が形成されている。
【0021】
図3,4に示す動力伝達部材5は、ベース部材2に対して第一回転軸A1と平行する別の第三回転軸A3を中心に回転可能に取り付けられる。本実施形態において、動力伝達部材5の第三回転軸A3は、第一回転軸A1だけではなく、第二回転軸A2に対してもずれて位置する。動力伝達部材5は、図4,8,9に示すように第一の回転角度範囲RA1に位置する状態において動力伝達部材5の回転に伴ってカメラ3を回転させる。また、動力伝達部材5は、図10~12に示すように第一の回転角度範囲RA1とは異なる第二の回転角度範囲RA2に位置する状態において動力伝達部材5の回転に伴ってシャッター部材4を回転させる。以下、本実施形態の動力伝達部材5について具体的に説明する。
【0022】
図3,7に示すように、本実施形態の動力伝達部材5は、第三回転軸A3を中心とする円形の板状に形成された歯車(ギア)である。動力伝達部材5の中心には、第三回転軸A3をなす軸体54が挿入される孔55が形成されている。本実施形態において第三回転軸A3をなす軸体54は、ベース本体21に設けられている。
動力伝達部材5は、その板厚方向を幅方向に向けた状態で、幅方向においてカメラ3とシャッター部材4の第一側板部43Aとの間に配置される。これにより、動力伝達部材5は、カメラ3に対して幅方向の一方側(Y軸正方向側)に位置する。この状態において、動力伝達部材5の第三回転軸A3は、前後方向において第一回転軸A1と第二回転軸A2との間に位置する。また、第三回転軸A3は、前後方向において第一回転軸A1よりも第二回転軸A2の近くに位置する。
【0023】
図3,4,7に示すように、動力伝達部材5は、第一係止ピン51と、第二係止ピン52と、支持ピン53と、を有する。第一係止ピン51、第二係止ピン52及び支持ピン53は、いずれも第三回転軸A3から径方向に離れて位置する。また、第一係止ピン51、第二係止ピン52及び支持ピン53は、第三回転軸A3の周方向において互いに間隔をあけて配置されている。
第一係止ピン51及び支持ピン53は、動力伝達部材5のうち幅方向(Y軸方向)においてカメラ3に対向する第一対向面5aに設けられている。一方、第二係止ピン52は、動力伝達部材5のうち幅方向(Y軸方向)においてシャッター部材4の第一側板部43Aに対向する第二対向面5bに設けられている。
【0024】
第一係止ピン51は、図4,8,9に示すように、動力伝達部材5が第一の回転角度範囲RA1に位置するときにカメラ3の第一係止溝31に挿入されている。この状態においては、動力伝達部材5がカメラ3と係合し、第三回転軸A3を中心とする動力伝達部材5の回転に伴って、カメラ3が第一回転軸A1を中心に回転する。一方、図10~12に示すように、動力伝達部材5が第一の回転角度範囲RA1から外れて位置すると、動力伝達部材5の第一係止ピン51は、カメラ3の第二端部側に位置する第一係止溝31の開口端31Aから抜け出し、動力伝達部材5とカメラ3との係合状態が解除される。この状態では、動力伝達部材5が回転しても、カメラ3が回転することはない。
すなわち、図8,9に示すように、動力伝達部材5の第一の回転角度範囲RA1は、第一係止ピン51がカメラ3の第一係止溝31に挿入された状態、(すなわち動力伝達部材5がカメラ3と係合した状態)となる第一係止ピン51の回転角度範囲に対応している。
【0025】
以下、動力伝達部材5の回転とカメラ3の回転とが連動する機構(カメラ3のチルト機構)についてさらに説明する。
本実施形態では、第一回転軸A1と第三回転軸A3とが、図4,8,9に示すように幅方向から見て前後方向に並んで位置している。また、カメラ3の第一係止溝31は、前後方向において第一回転軸A1と第三回転軸A3との間に位置し、第一回転軸A1の径方向に延びている。
【0026】
図4に示すように、カメラ3の第一係止溝31に挿入された第一係止ピン51が、第一回転軸A1と第三回転軸A3との間に位置している状態では、カメラ3の光軸OAは前方(X軸正方向)に向く。
図4に示す状態から、図8に示すように、動力伝達部材5が第三回転軸A3を中心に反時計回り方向(以下、第二回転方向RD2と呼ぶ)に回転すると、カメラ3は第一回転軸A1を中心に第一回転方向RD1に回転する。これにより、カメラ3の光軸OAは斜め上方に向く。
【0027】
一方、図4に示す状態から、図9に示すように、動力伝達部材5が第三回転軸A3を中心に第一回転方向RD1に回転すると、カメラ3は第一回転軸A1を中心に第二回転方向RD2に回転する。これにより、カメラ3の光軸OAは斜め下方に向く。
図9に示す状態から、図10,11に示すように、動力伝達部材5をさらに第一回転方向RD1に回転すると、動力伝達部材5の第一係止ピン51は、カメラ3の第二端部側に位置する第一係止溝31の開口端31Aから抜け出し、動力伝達部材5とカメラ3との係合状態が解除される。
【0028】
図4,8~12に示すように、第二係止ピン52は、シャッター部材4の第一側板部43Aに形成された第二係止溝41に挿入されている。
図4,8,9に示すように、動力伝達部材5が第一の回転角度範囲RA1に位置するときに、シャッター部材4は開放位置P42に配置され、シャッター部材4の第二係止溝41は第三回転軸A3を中心とした円弧状になっている。このため、動力伝達部材5が第一の回転角度範囲RA1に位置するとき(すなわち、後述する第二の回転角度範囲RA2から外れて位置するとき)に、第二係止ピン52は、動力伝達部材5の回転に伴って第二係止溝41の長手方向に移動可能である。すなわち、動力伝達部材5が第一の回転角度範囲RA1に位置している状態では、動力伝達部材5とシャッター部材4との係合が解除されており、動力伝達部材5が回転してもシャッター部材4が回転することはない。図8,9には、動力伝達部材5が第一の回転角度範囲RA1(第一係止ピン51の回転角度範囲)に対応する第二係止ピン52の回転角度範囲が示されている。第一の回転角度範囲RA1に対応する第二係止ピン52の回転角度範囲は、第二係止ピン52が第二係止溝41の長手方向に移動可能な範囲に含まれている。
【0029】
図10~12に示すように、動力伝達部材5が第一の回転角度範囲RA1と異なる第二の回転角度範囲RA2に位置するときには、動力伝達部材5の第二係止ピン52がシャッター部材4の第二係止溝41の長手方向の第一端部411(端部)に接する。この状態においては、動力伝達部材5がシャッター部材4と係合し、第三回転軸A3を中心とする動力伝達部材5の回転に伴って、シャッター部材4が第二回転軸A2を中心に回転する。また、この状態においては、第一係止ピン51がカメラ3の第一係止溝31から抜け出している。
【0030】
動力伝達部材5の第二の回転角度範囲RA2は、第二係止ピン52がシャッター部材4の第二係止溝41の第一端部411に接した状態となる第二係止ピン52の回転角度範囲に対応している。また、動力伝達部材5の第二の回転角度範囲RA2は、シャッター部材4の開放位置P42からカバー位置P41に至るシャッター部材4の回転角度範囲に対応している。
【0031】
図10に示すように、動力伝達部材5の第一の回転角度範囲RA1と第二の回転角度範囲RA2とは、第三回転軸A3を中心とする動力伝達部材5の周方向に隣り合わせて位置している。具体的に、第一の回転角度範囲RA1と第二の回転角度範囲RA2とは、第一回転方向RD1に順番に並んでいる。第一の回転角度範囲RA1と第二の回転角度範囲RA2とは、例えば間隔をあけずに並んでもよいが、本実施形態では間隔をあけて並んでいる。
【0032】
このため、図9,10に示すように、第一の回転角度範囲RA1から第二の回転角度範囲RA2に向かうように動力伝達部材5を第一回転方向RD1に回転させた際には、第一係止ピン51が第一係止溝31から抜け出した後に動力伝達部材5が第一回転方向RD1にさらに回転した後に、第二係止ピン52が第二係止溝41の第一端部411に接する。逆に、第二の回転角度範囲RA2から第一の回転角度範囲RA1に向かうように動力伝達部材5を第二回転方向RD2に回転させた際には、第二係止ピン52が第二係止溝41の第一端部411から離れた後に動力伝達部材5が第二回転方向RD2にさらに回転した後に、第一係止ピン51が第一係止溝31に挿入される。
【0033】
以下、動力伝達部材5の回転とシャッター部材4の回転とが連動する機構についてさらに説明する。
図10に示すように、シャッター部材4が開放位置P42に配置された状態で動力伝達部材5が第二の回転角度範囲RA2において第一回転方向RD1に回転した際には、第二係止溝41の第一端部411に接した第二係止ピン52が、シャッター部材4を第一回転方向RD1に押すように回転させる。これにより、図10~12に示すように、シャッター部材4が開放位置P42からカバー位置P41に向けて移動する。
【0034】
ここで、第二係止溝41は、前述したようにシャッター部材4が開放位置P42に配置された状態で、第三回転軸A3を中心とした円弧状になっている。また、シャッター部材4の第二回転軸A2と動力伝達部材5の第三回転軸A3とが互いずれて位置する。このため、動力伝達部材5の第一回転方向RD1への回転に連動して、シャッター部材4が開放位置P42からカバー位置P41に向けて回転移動するにしたがって、第二係止溝41の第一端部411に接する第二係止ピン52は、第二係止溝41に対してその径方向内側に移動し、第二係止溝41の第一端部411に形成された窪み47に挿入される。
【0035】
一方、図12に示すように、シャッター部材4がカバー位置P41に配置された状態で動力伝達部材5が第二の回転角度範囲RA2において第二回転方向RD2に回転した際には、第二係止溝41の第一端部411の窪み47に挿入された第二係止ピン52が、シャッター部材4を第二回転方向RD2に押すように回転させる。これにより、図10~12に示すように、シャッター部材4がカバー位置P41から開放位置P42に向けて移動する。
【0036】
図10に示すように、シャッター部材4が開放位置P42に到達した状態では、第二係止ピン52が、第二係止溝41の第一端部411の窪み47から抜け出す。これにより、動力伝達部材5をさらに第二回転方向RD2に回転させても、第二係止ピン52がシャッター部材4を第二回転方向RD2に押すことはない。すなわち、シャッター部材4が開放位置P42からさらに第二回転方向RD2に回転することはない。
【0037】
支持ピン53は、図10~12に示すように、動力伝達部材5が第二の回転角度範囲RA2に位置するときに、第一回転軸A1を中心とするカメラ3の回転を抑制するようにカメラ3を支持する。また、支持ピン53は、図4,8,9に示すように、動力伝達部材5が第一の回転角度範囲RA1に位置する状態においてカメラ3の回転に干渉しないように、カメラ3から離れて位置する。
【0038】
以下、支持ピン53によってカメラ3を支持する具体的な態様について説明する。
図10~12に示すように、動力伝達部材5が第二の回転角度範囲RA2に位置するときに第一回転方向RD1に回転して、シャッター部材4を開放位置P42からカバー位置P41に移動させる際には、カメラ3よりも下方に位置する支持ピン53が、カメラ3の筒部32に近づくように上方に移動する。これにより、支持ピン53は、第一回転軸A1よりもベース部材2の内側(後方)に位置するカメラ3の筒部32の部位を下方から支持する。この状態においては、支持ピン53によってカメラ3の光軸OAが斜め下方に向いた状態に維持される。すなわち、動力伝達部材5の第一係止ピン51がカメラ3の第一係止溝31から抜け出した状態に、カメラ3の向きを所定の範囲内で維持することができる。
【0039】
モータ6は、前述した動力伝達部材5を回転駆動する。モータ6は、例えば動力伝達部材5の第三回転軸A3を直接駆動してもよい。本実施形態において、モータ6は、減速ギア機構7を介して動力伝達部材5を回転駆動する。減速ギア機構7は、モータ6の回転速度に対して動力伝達部材5の回転速度が小さくなるように、モータ6の駆動力を動力伝達部材5に伝達する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態のカメラ装置1では、動力伝達部材5が第一の回転角度範囲RA1において回転する場合には、動力伝達部材5の回転と連動してカメラ3が回転し、シャッター部材4は回転しない。一方、動力伝達部材5が第二の回転角度範囲RA2において回転する場合には、動力伝達部材5の回転と連動してシャッター部材4が回転し、カメラ3は回転しない。
このため、動力伝達部材5が回転する際に、カメラ3とシャッター部材4とが同時に移動することはない。すなわち、同一のモータ6と動力伝達部材5によって、カメラ3とシャッター部材4とを独立して動かすことができる。したがって、カメラ装置1の部品点数を少なく抑えてカメラ装置1の構造の簡素化を図りながら、カメラ3とシャッター部材4とを独立して動かすことができる。また、同一のモータ6を用いてカメラ3とシャッター部材4とを独立して動かすことができるため、従来と比較してモータ6の数を減らしたり、カメラ装置1の構造の簡素化を図ったりすることで、カメラ装置1のコスト削減も図ることができる。
【0041】
また、本実施形態のカメラ装置1では、図10~12に示したように、動力伝達部材5が第二の回転角度範囲RA2において第一の回転角度範囲RA1に近づくように第二回転方向RD2に回転することで、シャッター部材4がカバー位置P41から開放位置P42に向けて移動する。このため、動力伝達部材5が第二回転方向RD2に回転して第二の回転角度範囲RA2から第一の回転角度範囲RA1に移行すると、シャッター部材4は開放位置P42に配置される。これにより、動力伝達部材5が第一の回転角度範囲RA1において回転する際には、シャッター部材4を開放位置P42に配した状態(シャッター部材4がカメラ3を覆わない状態)で、動力伝達部材5の回転に伴ってカメラ3を回転させてカメラ3の向きを変えることができる。すなわち、カメラ3が撮影する方向(領域)を変えることができる。
【0042】
また、本実施形態のカメラ装置1では、動力伝達部材5が第一の回転角度範囲RA1において動力伝達部材5がカメラ3と係合することで、カメラ3が動力伝達部材5の回転に伴って回転する。一方、動力伝達部材5が第一の回転角度範囲RA1から外れて位置するときに、カメラ3と動力伝達部材5との係合が解除されることで、カメラ3は動力伝達部材5の回転に伴って回転しない。また、動力伝達部材5が第二の回転角度範囲RA2においてシャッター部材4と係合することで、シャッター部材4が動力伝達部材5の回転に伴って回転する。一方、動力伝達部材5が第二の回転角度範囲RA2から外れて位置するときに、シャッター部材4と動力伝達部材5との係合が解除されることで、シャッター部材4は動力伝達部材5の回転に伴って回転しない。
さらに、本実施形態のカメラ装置1では、動力伝達部材5とカメラ3との係合が、動力伝達部材5の第一係止ピン51がカメラ3の第一係止溝31に挿入されることで行われ、動力部材とシャッター部材4との係合が、動力伝達部材5の第二係止ピン52がシャッター部材4の第二係止溝41の第一端部411に接することで行われる。
このような具体的な構造により、同一のモータ6によって、確実にカメラ3とシャッター部材4とを、同時ではなく、別々に動かすことができる。
【0043】
また、本実施形態のカメラ装置1では、動力伝達部材5が、第二の回転角度範囲RA2に位置するときに、第一回転軸A1を中心とするカメラ3の回転を抑制するようにカメラ3を支持する支持ピン53を有する。このため、動力伝達部材5が第一の回転角度範囲RA1から第二の回転角度範囲RA2まで回転移動することで、動力伝達部材5の第一係止ピン51がカメラ3の第一係止溝31から抜け出た状態であっても、支持ピン53によってカメラ3の位置(姿勢)を維持することができる。これにより、動力伝達部材5が第二の回転角度範囲RA2から第一の回転角度範囲RA1まで回転移動する際に、動力伝達部材5の第一係止ピン51を確実にカメラ3の第一係止溝31に挿入することができる。
【0044】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0045】
本発明のカメラ装置においては、例えば、シャッター部材4の第二回転軸A2と動力伝達部材5の第三回転軸A3とが互いに一致してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…カメラ装置、2…ベース部材、3…カメラ、4…シャッター部材、5…動力伝達部材、6…モータ、31…第一係止溝、41…第二係止溝、411…第二係止溝41の第一端部(端部)、51…第一係止ピン、52…第二係止ピン、53…支持ピン、A1…第一回転軸、A2…第二回転軸、A3…第三回転軸、P41…カバー位置、P42…開放位置、RA1…第一の回転角度範囲、RA2…第二の回転角度範囲、RD1…第一回転方向、RD2…第二回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12