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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】表面保護コーティング剤、硬化物及び積層物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/14 20060101AFI20250109BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20250109BHJP
   C09D 201/04 20060101ALI20250109BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20250109BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20250109BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D175/04
C09D201/04
C09D183/04
B05D7/24 302P
B32B27/30 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021037555
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137861
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 祐希
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良樹
(72)【発明者】
【氏名】戸上 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 彰寛
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-147746(JP,A)
【文献】特開2008-144178(JP,A)
【文献】特開2016-060818(JP,A)
【文献】特開2016-104853(JP,A)
【文献】特開2016-019973(JP,A)
【文献】特開2002-317142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 - 201/10
B05D 1/00 - 7/26
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボン酸含有量が0.01mol/kg未満である水酸基含有(メタ)アクリル樹脂
(B)ポリイソシアネート及び
(C)水酸基含有フッ素樹脂
を含み、コーティング剤固形分における(A)成分と(C)成分との質量比[(A)成分の質量/(C)成分の質量]は、10以上であり、
(A)成分及び(C)成分100質量部に対し、単官能性のイソシアナート化合物の含有量が0.1質量部未満である、
表面保護コーティング剤。
【請求項2】
(D)有機変性シリコーンを含む、請求項1に記載の表面保護コーティング剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の表面保護コーティング剤の硬化物。
【請求項4】
請求項3に記載の硬化物及び基材を含む、積層物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面保護コーティング剤、硬化物及び積層物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、自動車用部品等の各種工業製品の保護フィルムには、熱可塑性ポリウレタン等のプラスチック基材が用いられている。このようなプラスチック基材は擦り傷や汚れの付着によって、外観や物性を損なう恐れがあり、持続的な効果を発現するようコーティング剤により表面処理が行われる。
【0003】
このようなコーティング剤として、紫外線硬化型ハードコーティング剤が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平6-029382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記紫外線硬化型ハードコーティング剤では、高硬度になることにより、硬化物の伸度が低いことが問題としてある。この観点から紫外線硬化型ハードコーティング剤以外のコーティング剤が検討されている。また、コーティング膜が紫外線により劣化することがあり、十分な耐候性を有する硬化物を製造できるコーティング剤が求められている。そこで、しかしながら、上記UV硬化型塗料、EB硬化型塗料、シリカ系ハードコート剤では、高硬度にするための硬質モノマーの使用や、架橋密度を高めることによる硬化収縮時の歪みの増大により、素材への密着性が低下したり、クラックが発生するという問題が生じやすい。本発明が解決しようとする課題は、耐汚染性、高伸度、耐候性試験後も高伸度を維持することができる硬化物を製造できるコーティング剤を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の表面保護コーティング剤により、上記課題が解決されることを見出した。
【0007】
本開示により以下の項目が提供される。
(項目1)
(A)水酸基含有(メタ)アクリル樹脂
(B)ポリイソシアネート及び
(C)水酸基含有フッ素樹脂
を含む、表面保護コーティング剤。
(項目2)
(D)有機変性シリコーンを含む、上記項目に記載の表面保護コーティング剤。
(項目3)
上記項目のいずれか1項に記載の表面保護コーティング剤の硬化物。
(項目4)
上記項目に記載の硬化物及び基材を含む、積層物。
【0008】
本開示において、上述した1又は複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得る。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態に係る表面保護コーティング剤を用いることにより、耐汚染性、伸度、耐候性試験後の伸度が良好な硬化物を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の全体にわたり、各物性値、含有量等の数値の範囲は、適宜(例えば下記の各項目に記載の上限及び下限の値から選択して)設定され得る。具体的には、数値αについて、数値αの上限及び下限としてA4、A3、A2、A1(A4>A3>A2>A1とする)等が例示される場合、数値αの範囲は、A4以下、A3以下、A2以下、A1以上、A2以上、A3以上、A1~A2、A1~A3、A1~A4、A2~A3、A2~A4、A3~A4等が例示される。
【0011】
[表面保護コーティング剤:コーティング剤ともいう]
本開示は、(A)水酸基含有(メタ)アクリル樹脂、(B)ポリイソシアネート及び(C)水酸基含有フッ素樹脂を含む、表面保護コーティング剤を提供する。
【0012】
<水酸基含有(メタ)アクリル樹脂(A):(A)成分ともいう。>
(A)成分は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0013】
(A)成分は、水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位及び水酸基含有モノマー由来の構成単位を含む共重合体等が例示される。
【0014】
本開示において「(メタ)アクリル」は「アクリル及びメタクリルからなる群より選択される少なくとも1つ」を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」は「アクリレート及びメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1つ」を意味する。また「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル及びメタクリロイルからなる群より選択される少なくとも1つ」を意味する。
【0015】
(水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート)
水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレートは、
【化1】
(式中、Ra1は水素原子、又はメチル基であり、Ra2はアルキル基である。)
で表わされる。水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレートは、単独又は2種以上で使用され得る。
【0016】
a2の炭素数の上限及び下限は、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1等が例示される。1つの実施形態において、Ra2の炭素数は1~22が好ましい。
【0017】
アルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基等が例示される。
【0018】
直鎖アルキル基は、-C2n+1(nは1以上の整数)の一般式で表される。直鎖アルキル基は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基(ミリスチル基)、ペンタデシル基、ヘキサデシル基(パルミチル基)、ヘプタデシル基、オクタデシル基(ステアリル基)、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が例示される。
【0019】
分岐アルキル基は、直鎖アルキル基の少なくとも1つの水素原子がアルキル基によって置換された基である。分岐アルキル基は、i-プロピル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ジエチルペンチル基、トリメチルブチル基、トリメチルペンチル基、トリメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基等が例示される。
【0020】
シクロアルキル基は、単環シクロアルキル基、架橋環シクロアルキル基、縮合環シクロアルキル基等が例示される。
【0021】
本開示において、単環は、炭素の共有結合により形成された内部に橋かけ構造を有しない環状構造を意味する。また、縮合環は、2つ以上の単環が2個の原子を共有している(すなわち、それぞれの環の辺を互いに1つだけ共有(縮合)している)環状構造を意味する。架橋環は、2つ以上の単環が3個以上の原子を共有している環状構造を意味する。
【0022】
単環シクロアルキル基は、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基、3,5,5-トリメチルシクロヘキシル基等が例示される。
【0023】
架橋環シクロアルキル基は、トリシクロデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等が例示される。
【0024】
縮合環シクロアルキル基は、ビシクロデシル基等が例示される。
【0025】
水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレートは、水酸基非含有直鎖アルキル(メタ)アクリレート、水酸基非含有分岐アルキル(メタ)アクリレート、水酸基非含有シクロアルキル(メタ)アクリレート等が例示される。
【0026】
水酸基非含有直鎖アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸イコシル、(メタ)アクリル酸ヘンイコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル等が例示される。
【0027】
水酸基非含有分岐アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等が例示される。
【0028】
水酸基非含有シクロアルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が例示される。
【0029】
これらの中でも、レベリング性、プラスチック基材との密着性に寄与することから、アルキル基の炭素数が1~20程度のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。また、アルキル基の炭素数が異なる水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレートを併用することによって、(A)成分のガラス転移温度等の物性が調節可能となる。
【0030】
(A)成分の全構成単位100モル%に占める水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量の上限及び下限は、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10モル%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は10~90モル%が好ましい。
【0031】
(A)成分の全構成単位100モル%に占める水酸基非含有アルキル基の炭素数が1~7である水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量の上限及び下限は、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10モル%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は10~90モル%が好ましい。
【0032】
(A)成分の全構成単位100モル%に占める水酸基非含有アルキル基の炭素数が8~22である水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量の上限及び下限は、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10モル%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は10~90モル%が好ましい。
【0033】
(A)成分の全構成単位100質量%に占める水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量の上限及び下限は、95、94.5、94、93、92、91、90、89、88.5、88、87、86、85、84、83、82、81、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は20~95質量%が好ましく、80~95質量%がより好ましい。
【0034】
(A)成分の全構成単位100質量%に占める水酸基非含有アルキル基の炭素数が1~7である水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量の上限及び下限は、95、94.5、94、93、92、91、90、89、88.5、88、87、86、85、84、83、82、81、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は20~95質量%が好ましく、20~85質量%がより好ましい。
【0035】
(A)成分の全構成単位100質量%に占める水酸基非含有アルキル基の炭素数が8~22である水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量の上限及び下限は、95、94.5、94、93、92、91、90、89、88.5、88、87、86、85、84、83、82、81、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は20~95質量%が好ましく、30~65質量%がより好ましい。
【0036】
(水酸基含有モノマー)
水酸基含有モノマーは、単独又は2種以上で使用され得る。
【0037】
水酸基含有モノマーは、下記構造式
【化2】
[式中、Ra3は水素原子又はメチル基であり、Ra4はNHRa4A’又はORa4B’であり、
a4A’は水酸基含有アルキル基であり、
a4B’は(Ra4B1’O)
(Ra4B1’はアルキレン基であり、nは1以上の整数である。)
又は
a4B2’O(C(=O)(CHO)
(Ra4B2’はアルキレン基であり、mは1以上の整数である。)
である。]
で表わされる。
【0038】
本開示において、「水酸基含有アルキル基」はアルキル基の1つの水素原子が水酸基によって置換された基である。水酸基含有アルキル基は、水酸基含有直鎖アルキル基、水酸基含有分岐アルキル基、水酸基含有シクロアルキル基等が例示される。
【0039】
アルキレン基は、直鎖アルキレン基、分岐アルキレン基、シクロアルキレン基等が例示される。
【0040】
直鎖アルキレン基は一般式:-(CH-(nは1以上の整数)で表される。直鎖アルキレン基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デカメチレン基等が例示される。
【0041】
分岐アルキレン基は、直鎖アルキレン基の少なくとも1つの水素原子がアルキル基によって置換された基である。分岐アルキレン基は、ジエチルペンチレン基、トリメチルブチレン基、トリメチルペンチレン基、トリメチルヘキシレン基(トリメチルヘキサメチレン基)等が例示される。
【0042】
シクロアルキレン基は、単環シクロアルキレン基、架橋環シクロアルキレン基、縮合環シクロアルキレン基等が例示される。またシクロアルキレン基は、1個以上の水素原子が直鎖又は分岐アルキル基によって置換されていてもよい。
【0043】
単環シクロアルキレン基は、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロデシレン基、3,5,5-トリメチルシクロヘキシレン基等が例示される。
【0044】
架橋環シクロアルキレン基は、トリシクロデシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基等が例示される。
【0045】
縮合環シクロアルキレン基は、ビシクロデシレン基等が例示される。
【0046】
本開示において、炭化水素基(アルキル基、アルキレン基、アリーレン基、アリーレンアルキレンアリーレン基等)の炭素数に言及されていない炭化水素基の炭素数の上限及び下限は、30、29、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1等が例示される。
【0047】
水酸基含有モノマーは、水酸基含有(メタ)アクリルエステル、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリルアミド等が例示される。
【0048】
水酸基含有(メタ)アクリルエステルは、上記構造式のRa4がORa4B1’OH、すなわちRa4B’が水酸基含有アルキル基であるモノマーである。記号の意味は上記と同じである。水酸基含有アルキル基の炭素数は1~4が好ましい。
【0049】
水酸基含有(メタ)アクリルエステルは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0050】
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートは、Ra4がO(Ra4B1’O)Hであるモノマーである。記号の意味は上記と同じである。1つの実施形態において、nは1以上が好ましく、1~60がより好ましく、Ra4B1’はエチレン基、プロピレン基が好ましい。
【0051】
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートの市販品は、ブレンマーPE-90、ブレンマー200、ブレンマー350、ブレンマーPME-400、ブレンマーAE-400、ブレンマーPME-1000、ブレンマーPME-2000(日油(株)社製)等が例示される。
【0052】
カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、Ra4がORa4B2’O(C(=O)(CHO)Hであるモノマーである。記号の意味は上記と同じである。1つの実施形態において、mは1以上が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい。Ra4B2’は炭素数2~6のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0053】
カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの市販品は、「プラクセルFM1」、「プラクセルFM2」、「プラクセルFM1D」「プラクセルFM2D」、「プラクセルFM3」、「プラクセルFM3X」、「プラクセルFM4」、「プラクセルFM-5」「プラクセルFA1」、「プラクセルFA2」、「プラクセルFA1D」、「プラクセルFA1DDM」、「プラクセルFA2D」、「プラクセルFA3」、「プラクセルFA4」、「プラクセルFA5」(いずれも(株)ダイセル製)等が例示される。
【0054】
水酸基含有(メタ)アクリルアミドは、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N-(1-メチル-2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド等が例示される。
【0055】
水酸基を2個以上有するモノマーは、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0056】
(A)成分の全構成単位100モル%に占める水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量の上限及び下限は、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10モル%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は10~90モル%が好ましい。
【0057】
(A)成分の全構成単位100質量%に占める水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量の上限及び下限は、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11.5、11、10、9、8、7、6、5.5、5質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は5~80質量%が好ましく、5~25質量%がより好ましい。
【0058】
(A)成分中の水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位と水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位とのモル比(水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレートmol/水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートmol)の上限及び下限は、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1等が例示される。1つの実施形態において、上記モル比は、0.1~9が好ましい。
【0059】
(A)成分中の水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位と水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位との質量比(水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレートmass/水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートmass)の上限及び下限は、19、18、17.5、17.2、17、16、15、13、11、10、9、8、7.9、7.7、7.5、7、6、5、4.9、4.7、4.5、4.3、4.1、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.25等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0.25~19が好ましい。
【0060】
(水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート及び水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート以外のモノマー:その他のモノマーともいう)
(A)成分を製造する際には、水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート及び水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートのいずれにも該当しないモノマーを用いてもよい。その他のモノマーは、単独又は2種以上で使用され得る。
【0061】
その他のモノマーは、(メタ)アクリル酸、α,β-不飽和カルボン酸、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、スチレン類、α-オレフィン、不飽和アルコール、アリール(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート及びそれらの塩、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド及びそれらの塩、連鎖移動性モノマー、(メタ)アクリルアミド類、ビニルアミン、(メタ)アクリロニトリル、上記以外の単官能性モノマー、ビス(メタ)アクリルアミド、ジ(メタ)アクリルエステル、ジビニルエステル、上記以外の二官能性モノマー、三官能性モノマー、四官能性モノマー等が例示される。
【0062】
(A)成分の全構成単位100モル%に占めるその他のモノマー由来の構成単位の含有量の上限及び下限は、20、15、10、9、5、4、1、0.9、0.5、0.1、0モル%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0~20モル%が好ましい。
【0063】
(A)成分の全構成単位100質量%に占めるその他のモノマー由来の構成単位の含有量の上限及び下限は、20、15、10、9、5、4、1、0.9、0.5、0.1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0~20質量%が好ましい。
【0064】
(A)成分中の水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位とその他のモノマー由来の構成単位とのモル比(その他のモノマーmol/水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレートmol)の上限及び下限は、0.30、0.25、0.20、0.15、0.10、0.05、0等が例示される。1つの実施形態において、上記モル比は、0~0.30が好ましい。
【0065】
(A)成分中の水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位とその他のモノマー由来の構成単位との質量比(その他のモノマーmass/水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレートmass)の上限及び下限は、0.29、0.25、0.20、0.15、0.10、0.05、0等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0~0.29が好ましい。
【0066】
(A)成分中の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位とその他のモノマー由来の構成単位とのモル比(その他のモノマーmol/水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートmol)の上限及び下限は、4、3、2、1、0.9、0.7、0.5、0.3、0.1、0等が例示される。1つの実施形態において、上記モル比は、0~4が好ましい。
【0067】
(A)成分中の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位とその他のモノマー由来の構成単位との質量比(その他のモノマーmass/水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートmass)の上限及び下限は、3.3、3、2、1、0.7、0.5、0.3、0.1、0等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0~3.3が好ましい。
【0068】
<(A)成分の物性等>
(A)成分のガラス転移温度の上限及び下限は、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、0、-5、-10、-15、-20、-22、-25、-30、-35、-40、-45、-50、-55、-60℃等が例示される。1つの実施形態において、上記ガラス転移温度は-60~60℃が好ましく、-30~30℃がより好ましい。
【0069】
ガラス転移温度はFoxの式より算出される。
Foxの式:1/Tg=(Wa/Tga)+(Wb/Tgb)+・・・+(Wn/Tgn)
Tg:コポリマーのガラス転移温度(K)
Wa:モノマーAの質量%
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K)
Wb:モノマーBの質量%
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K)
Wn:モノマーNの質量%
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K)
【0070】
(A)成分の水酸基価の上限及び下限は、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、85、82、80、75、70、60、55、50、45、40、30、25、20、10mgKOH/g等が例示される。1つの実施形態において、上記水酸基価は10~200mgKOH/gが好ましく、20~100mgKOH/gがより好ましい。
【0071】
水酸基価はJIS K1557-1に準拠する方法により測定される。
【0072】
(A)成分の水酸基当量の上限及び下限は、2.4、2、1.9、1.7、1.5、1.3、1.0、0.9、0.7meq/g等が例示される。1つの実施形態において、上記水酸基当量は0.7~2.4meq/gが好ましい。
【0073】
本開示において、水酸基当量は固形1g中に存在する水酸基の物質量である。
【0074】
(A)成分の酸価の上限及び下限は、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0meq/g等が例示される。1つの実施形態において、上記酸価は、特に硬化性を考慮すると、0~0.7meq/gが好ましい。
【0075】
酸価はJIS K0070に準拠する方法により測定される。
【0076】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)の上限及び下限は、100000、90000、80000、70000、60000、50000、40000、30000、20000、10000、5000、4000、3000等が例示される。1つの実施形態において、上記重量平均分子量(Mw)は、3000~100000が好ましく、10000~80000がより好ましい。
【0077】
(A)成分の数平均分子量(Mn)の上限及び下限は、100000、90000、80000、70000、60000、50000、40000、30000、20000、10000、5000、4000、3000等が例示される。1つの実施形態において、上記数平均分子量(Mn)は、3000~100000が好ましく、3000~80000がより好ましい。
【0078】
重量平均分子量及び数平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により適切な溶媒下で測定したポリスチレン換算値として求められ得る。詳細な条件は下記のようなもの等が例示される。
機種:製品名「HLC-8220」(東ソー(株)製)
カラム:製品名「PLgel MIXED-C」(Agilent Technology製)×2本
展開溶媒、流量:テトラヒドロフラン、1.0mL/分
測定温度:40℃
検出器:RI
標準:単分散ポリスチレン
ポリマー濃度:0.2%
【0079】
(A)成分の分子量分布(Mw/Mn)の上限及び下限は、10、9、7.5、5、2.5、2、1.5等が例示される。1つの実施形態において、上記分子量分布(Mw/Mn)は、1.5~10が好ましい。
【0080】
(A)成分は、各種公知の方法で製造され得る。(A)成分の製造方法は、水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート及び水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート、並びに必要に応じてその他のモノマーを、無溶媒下又は有機溶媒中で、通常は重合開始剤の存在下、80~180℃程度において、1~10時間程度共重合反応させる方法等が例示される。(A)成分を製造する際に用いられる有機溶媒及び重合開始剤は、後述のもの等が例示される。
【0081】
コーティング剤固形分100質量%中の(A)成分の含有量の上限及び下限は、95、90、85、80、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、60、59、55、50、49、48、46、45、40、35、30質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は30~95質量%が好ましく、40~80質量%がより好ましい。
【0082】
<ポリイソシアネート(B):(B)成分ともいう。>
ポリイソシアネートは、単独又は2種以上で使用され得る。
【0083】
本開示において、「ポリイソシアネート」とは、2個以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有する化合物である。
【0084】
ポリイソシアネートは、直鎖脂肪族ポリイソシアネート、分岐脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート並びにこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、アロファネート体、アダクト体等が例示される。
【0085】
直鎖脂肪族ポリイソシアネートは、メチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が例示される。
【0086】
分岐脂肪族ポリイソシアネートは、ジエチルペンチレンジイソシアネート、トリメチルブチレンジイソシアネート、トリメチルペンチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が例示される。
【0087】
脂環族ポリイソシアネートは、単環脂環族ポリイソシアネート、架橋環脂環族ポリイソシアネート、縮合環脂環族ポリイソシアネート等が例示される。
【0088】
単環脂環族ポリイソシアネートは、水添キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、シクロヘプチレンジイソシアネート、シクロデシレンジイソシアネート、3,5,5-トリメチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が例示される。
【0089】
架橋環脂環族ポリイソシアネートは、トリシクロデシレンジイソシアネート、アダマンタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が例示される。
【0090】
縮合環脂環族ポリイソシアネートは、ビシクロデシレンジイソシアネート等が例示される。
【0091】
芳香族基は、単環芳香族基、縮合環芳香族基等が例示される。また芳香族基は、1個以上の水素原子が直鎖又は分岐アルキル基によって置換されていてもよい。
【0092】
単環芳香族基は、フェニル基(フェニレン基)、トリル基(トリレン基)、メシチル基(メシチレン基)等が例示される。また縮合環芳香族基は、ナフチル基(ナフチレン基)等が例示される。
【0093】
芳香族ポリイソシアネートは、単環芳香族ポリイソシアネート、縮合環芳香族ポリイソシアネート等が例示される。
【0094】
単環芳香族ポリイソシアネートは、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート等のジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルテトラメチルメタンジイソシアネート等のテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が例示される。
【0095】
縮合環芳香族ポリイソシアネートは、1,5-ナフチレンジイソシアネート等が例示される。
【0096】
ポリイソシアネートのビウレット体は、
下記構造式:
【化3】
[式中、nは、0以上の整数であり、RbA~RbEはそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、Rbα~Rbβはそれぞれ独立に、イソシアネート基又は
【化4】
(nb1は、0以上の整数であり、Rb1~Rb5はそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、R’~R’’はそれぞれ独立に、イソシアネート基又はRbα~Rbβ自身の基である。Rb4~Rb5、R’’は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)である。RbD~RbE、Rbβは、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]で表される化合物等が例示される。
【0097】
ポリイソシアネートのビウレット体は、デュラネート24A-100、デュラネート22A-75P、デュラネート21S-75E(以上旭化成(株)製)、デスモジュールN3200A(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体)(以上住友バイエルウレタン(株)製)等が例示される。
【0098】
ポリイソシアネートのイソシアヌレート体は、
下記構造式:
【化5】
[式中、nは、0以上の整数であり、RiA~RiEはそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、Riα~Riβはそれぞれ独立に、イソシアネート基又は
【化6】
(ni1は、0以上の整数であり、Ri1~Ri5はそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、R’~R’’ はそれぞれ独立に、イソシアネート基又はRiα~Riβ自身の基である。Ri5、R’’は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)である。RiD~RiE、Riβは、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]で表される化合物等が例示される。
【0099】
ポリイソシアネートのイソシアヌレート体の市販品は、デュラネートTPA-100、デュラネートTKA-100、デュラネートMFA-75B、デュラネートMHG-80B(以上旭化成(株)製)、コロネートHXR(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)(以上東ソー(株)製)、タケネートD-127N(水添キシレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)(以上三井化学(株)製)、VESTANAT T1890/100(イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体(以上エボニック・ジャパン(株)製)、タケネートD-204EA-1(トリレンジイソイアネートのイソシアヌレート体)(以上三井化学(株)製)、コロネート2037(以上東ソー(株)製)等が例示される。
【0100】
ポリイソシアネートのアロファネート体は、
下記構造式:
【化7】
[式中、nは、0以上の整数であり、Rは、アルキル基又はアリール基であり、R~Rはそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、Rα~Rγはそれぞれ独立に、イソシアネート基又は
【化8】
(n1は、0以上の整数であり、R~Rはそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、R’~R’’’はそれぞれ独立に、イソシアネート基又はRα~Rγ自身の基である。R~R、R’~R’’は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)である。R~R、Rα~Rβは、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]で表される化合物等が例示される。
【0101】
ポリイソシアネートのアロファネート体の市販品は、コロネート2793(東ソー(株)製)、タケネートD-178N(三井化学(株)製)等が例示される。
【0102】
ポリイソシアネートのアダクト体は、
下記構造式:
【化9】
[式中、nadは0以上の整数であり、RadA~RadEは、それぞれ独立にアルキレン基又はアリーレン基であり、Rad1~Rad2は、それぞれ独立に
【化10】
(式中、nad’は0以上の整数であり、
ad’~Rad’’は、それぞれ独立にアルキレン基又はアリーレン基であり、
ad’’’は、Rad1~Rad2自身の基であり、
ad’~Rad’’’は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)
であり、RadD~RadE、Rad2は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]
で示されるトリメチロールプロパンとポリイソシアネートのアダクト体、
下記構造式
【化11】
[式中、nad1は0以上の整数であり、
adα~Radεは、それぞれ独立にアルキレン基又はアリーレン基であり、
adA~RadBは、それぞれ独立に
【化12】
(式中、nad1’は0以上の整数であり、
adδ’~Radε’は、それぞれ独立にアルキレン基又はアリーレン基であり、
adB’は、RadA~RadB自身の基であり、
adδ’~Radε’、RadB’は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)
adδ~Radεは、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]
で示されるグリセリンとポリイソシアネートのアダクト体等が例示される。
【0103】
ポリイソシアネートのアダクト体は、デュラネートP301-75E(以上旭化成(株)製)、タケネートD-110N、タケネートD-160N(以上三井化学(株)製)、コロネートL(以上東ソー(株)製)等が例示される。
【0104】
ポリイソシアネートのNCO含有率(NCO%)の上限及び下限は、30、25、20、15、10%等が例示される。1つの実施形態において、上記NCO含有率(NCO%)は、10~30%が好ましい。
【0105】
ポリイソシアネートのイソシアネート基当量の上限及び下限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1meq/g等が例示される。1つの実施形態において、上記イソシアネート基当量は1~10meq/gが好ましい。
【0106】
本開示において、イソシアネート基当量は、固形1g中に存在するイソシアネート基の物質量を意味する。
【0107】
ポリイソシアネートのイソシアネート基当量と(A)成分の水酸基当量との比(NCO/OH)の上限及び下限は、4、3、2、1.75、1.5、1.25、1、0.75、0.5、0.25、0.1、0.05等が例示される。1つの実施形態において、上記比(NCO/OH)は、0.05~4が好ましい。
【0108】
消費OH基量の上限及び下限は、150、125、100、75、50、25、10mgKOH/g等が例示される。1つの実施形態において、上記消費OH基量は10~150mgKOH/gが好ましい。
【0109】
本開示において、消費OH基量は、主剤中のOH基をどれだけ消費するNCOを加えたかを示す指標である。消費OH基量は下記式
消費OH基量=イソシアネート基当量×56.1
により算出される。
【0110】
コーティング剤固形分100質量%中のポリイソシアネートの含有量の上限及び下限は、45、43、41、40、39、36、35、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は10~45質量%が好ましい。
【0111】
<水酸基含有フッ素樹脂(C):(C)成分ともいう。>
(C)成分は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0112】
本開示において「水酸基含有フッ素樹脂」は、フッ素含有単量体由来の構成単位を含み、かつ水酸基を1個以上有する樹脂を意味する。
【0113】
フッ素含有単量体は、フルオロオレフィン等が例示される。
【0114】
本開示において「フルオロオレフィン」は、水素原子の1個以上がフッ素原子で置換されたオレフィンを意味する。
【0115】
フルオロオレフィンは、単独又は2種以上で使用され得る。フルオロオレフィンは、CF=CF、CF=CFCl、CF=CHF、CF=CH、CF=CFCF、CF=CHCF、CFCH=CHF、CFCF=CH、CH=CX(CFY(式中、X及びYは、独立に水素原子又はフッ素原子であり、fは2~10の整数である。)等が例示される。
【0116】
水酸基含有フッ素樹脂の全構成単位100モル%に占めるフルオロオレフィン由来の構成単位の含有量の上限及び下限は、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20モル%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は20~100モル%が好ましく、30~70モル%がより好ましく、40~60モル%が特に好ましい。
【0117】
水酸基含有フッ素樹脂は、水酸基含有単量体由来の構成単位を含む。
【0118】
水酸基含有フッ素樹脂に含まれる水酸基含有単量体は、水酸基含有ビニルエーテル、水酸基含有アリルエーテル、水酸基含有ビニルエステル、水酸基含有アリルエステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、アリルアルコール等が挙げられる。
【0119】
水酸基含有ビニルエーテルは、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ポリアルキレングリコールモノビニルエーテル等が例示される。
【0120】
ヒドロキシアルキルビニルエーテルは、ヒドロキシ直鎖アルキルビニルエーテル、ヒドロキシ分岐アルキルビニルエーテル、ヒドロキシシクロアルキルビニルエーテル等が例示される。
【0121】
ヒドロキシ直鎖アルキルビニルエーテルは、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、5-ヒドロキシペンチルビニルエーテル等が例示される。
【0122】
ヒドロキシ分岐アルキルビニルエーテルは、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシ-2-メチルブチルビニルエーテル等が例示される。
【0123】
ヒドロキシシクロアルキルビニルエーテルは、4-ヒドロキシシクロペンチルビニルエーテル、4-ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル等が例示される。
【0124】
ポリアルキレングリコールモノビニルエーテルは、ポリメチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等が例示される。
【0125】
ポリメチレングリコールモノビニルエーテルは、ジメチレングリコールモノビニルエーテル、トリメチレングリコールモノビニルエーテル、テトラメチレングリコールモノビニルエーテル、ペンタメチレングリコールモノビニルエーテル、ヘキサメチレングリコールモノビニルエーテル、ヘプタメチレングリコールモノビニルエーテル、オクタメチレングリコールモノビニルエーテル、ノナメチレングリコールモノビニルエーテル、デカメチレングリコールモノビニルエーテル等が例示される。
【0126】
ポリエチレングリコールモノビニルエーテルは、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノビニルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノビニルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタエチレングリコールモノビニルエーテル、ノナエチレングリコールモノビニルエーテル、デカエチレングリコールモノビニルエーテル等が例示される。
【0127】
ポリプロピレングリコールモノビニルエーテルは、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、テトラプロピレングリコールモノビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールモノビニルエーテル、ヘキサプロピレングリコールモノビニルエーテル、ヘプタプロピレングリコールモノビニルエーテル、オクタプロピレングリコールモノビニルエーテル、ノナプロピレングリコールモノビニルエーテル、デカプロピレングリコールモノビニルエーテル等が例示される。
【0128】
水酸基含有アリルエーテルは水酸基含有ビニルエーテルのビニル基をアリル基に置換した化合物である。
【0129】
1つの実施形態において、水酸基含有フッ素樹脂に含まれる水酸基含有単量体は、CH=CHO-CH-cC10-CHOH、CH=CHCHO-CH-cC10-CHOH、CH=CHO-CH-cC10-CH-(OCHCH15OH、CH=CHOCHCHOH、CH=CHCHOCHCHOH、CH=CHOCHCHCHCHOH、CH=CHCHOCHCHCHCHOHが好ましく、フルオロオレフィンとの共重合性の点から、CH=CHCHOCHCHOHまたはCH=CHOCHCHCHCHOHがより好ましい。なお、「-cC10-」はシクロへキシレン基を表し、「-cC10-」の結合部位は、通常1,4-である。
【0130】
水酸基含有フッ素樹脂の全構成単位100モル%に占める水酸基含有単量体由来の構成単位の含有量の上限及び下限は、35、30、25、20、15、10、5、4、3、2、1、0.5、0.1モル%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0.1~35モル%が好ましく、0.5~35モル%がより好ましく、3~25モル%がさらに好ましく、5~25モル%がよりさらに好ましく、5~20モル%が特に好ましい。
【0131】
フルオロオレフィン、水酸基含有単量体のいずれにも該当しない単量体は、不飽和カルボン酸、アルケン、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステル、(メタ)アクリル酸エステル等が例示される。
【0132】
水酸基含有フッ素樹脂の全構成単位100モル%に占めるフルオロオレフィン、水酸基含有単量体のいずれにも該当しない単量体由来の構成単位の含有量の上限及び下限は、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0モル%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0~60モル%が好ましく、5~60モル%がより好ましく、10~50モル%がさらに好ましい。
【0133】
フルオロオレフィン由来の構成単位及びフッ素原子非含有単量体由来の構成単位を含む水酸基含有フッ素樹脂は、フルオロエチレン・ビニルエーテル共重合体等が例示される。
【0134】
フルオロエチレン・ビニルエーテル共重合体は、フルオロエチレン・ビニルエーテル共重合体、クロロトリフルオロエチレン-ビニルエーテル共重合体、クロロトリフルオロエチレン-ビニルエーテル-ビニルエステル共重合体、クロロトリフルオロエチレン-ビニルエステル-アリルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ビニルエステル共重合体、テトラフルオロエチレン-ビニルエステル-アリルエーテル共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等が例示される。
【0135】
水酸基含有フッ素樹脂の市販品は、ルミフロン200F、ルミフロン710F、ルミフロン916F、ルミフロン200、ルミフロン400、ルミフロン552、ルミフロン600X、ルミフロン800、ルミフロン810Y、ルミフロン910LM、ルミフロン936、ルミフロン9010、ルミフロン200MEK、ルミフロン9716、ルミフロン9721、ルミフロンFE4300、ルミフロンFE4400、ルミフロンFE4500、ルミフロンFD1000(AGC(株)製)等が例示される。
【0136】
水酸基含有フッ素樹脂の水酸基価の上限及び下限は、500、450、400、350、300、250、200、150、125、110、100、90、75、50、40、31、30、25、10mgKOH/g等が例示される。1つの実施形態において、上記水酸基価は1~500mgKOH/gが好ましい。
【0137】
水酸基含有フッ素樹脂の数平均分子量の上限及び下限は、30000、29000、27500、25000、22500、20000、19000、17500、15000、12500、10000、9000、7500、5000、2500、1000、900、500、100等が例示される。1つの実施形態において、上記数平均分子量は100~30000が好ましい。
【0138】
水酸基含有フッ素樹脂の重量平均分子量の上限及び下限は、50000、40000、30000、29000、27500、25000、22500、20000、19000、17500、15000、12500、10000、9000、7500、5000、2500、1000、900、500、100等が例示される。1つの実施形態において、上記重量平均分子量は100~50000が好ましい。
【0139】
コーティング剤固形分100質量%中の水酸基含有フッ素樹脂の含有量の上限及び下限は、50、45、40、35、30、25、24、23、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は1~50質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。
【0140】
コーティング剤固形分における(A)成分と(B)成分との質量比[(A)成分の質量/(B)成分の質量]の上限及び下限は、9.5、9、8、7、6、5.5、5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.8、0.7等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0.7~9.5が好ましい。
【0141】
コーティング剤固形分における(A)成分と(C)成分との質量比[(A)成分の質量/(C)成分の質量]の上限及び下限は、95、90、75、50、25、10、9、5、4、3、2、1.5、1、0.9、0.7、0.6等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0.6~95が好ましい。
【0142】
コーティング剤固形分における(B)成分と(C)成分との質量比[(B)成分の質量/(C)成分の質量]の上限及び下限は、45、30、25、10、9、8、7、5、4.5、4、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.5、0.4、0.2等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0.2~45が好ましい。
【0143】
<有機変性シリコーン(D):(D)成分ともいう。>
1つの実施形態において、上記コーティング剤は有機変性シリコーンを含み得る。(C)成分は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0144】
本開示において、「有機変性シリコーン」は、シリコーンに有機基を導入したものをいう。有機変性シリコーンは、側鎖型有機変性シリコーン、両末端型有機変性シリコーン、片末端型有機変性シリコーン、側鎖両末端型有機変性シリコーン等が例示される。
【0145】
有機変性シリコーンは、水酸基含有有機変性シリコーン、アミノ基含有有機変性シリコーン、エポキシ基含有有機変性シリコーン、メルカプト基含有有機変性シリコーン、カルボキシル基含有有機変性シリコーン等が例示される。
【0146】
水酸基含有有機変性シリコーンは、水酸基含有アクリル樹脂変性シリコーン、水酸基含有ポリエステル樹脂変性シリコーン、水酸基含有ポリエーテル樹脂変性シリコーン、水酸基含有カルビノール樹脂変性シリコーン等が例示される。
【0147】
水酸基含有アクリル樹脂変性シリコーンの市販品は、ZX-028-G((株)T&K TOKA製)、BYK-SILCLEAN3700(ビックケミー・ジャパン(株)製)、サイマックUS-270(東亞合成(株)製)等が例示される。
【0148】
水酸基含有ポリエステル樹脂変性シリコーン又は水酸基含有ポリエーテル樹脂変性シリコーンの市販品は、BYK-370、BYK-375、BYK-377、BYK-SILCLEAN3720(ビックケミー・ジャパン(株)製)、X-22-4952、KF-6123(信越化学工業(株)製)等が例示される。
【0149】
水酸基含有カルビノール樹脂変性シリコーンの市販品は、X-22-4039、X-22-4015、X-22-4952、X-22-4272、X-22-170BX、X-22-170DX、KF-6000、KF-6001、KF-6002、KF-6003、KF-6123、X-22-176F(信越化学工業(株)製)、サイラプレーンFM-4411、サイラプレーンFM-4421、サイラプレーンFM-4425、サイラプレーンFM-0411、サイラプレーンFM-0421、サイラプレーンFM-DA11、サイラプレーンFM-DA21、サイラプレーンFM-DA26(JNC(株)製)等が例示される。
【0150】
アミノ基含有有機変性シリコーンの市販品は、KF-868、KF-865、KF-864、KF-859、KF-393、KF-860、KF-880、KF-8004、KF-8002、KF-8005、KF-867、KF-8021、KF-869、KF-861、KF-877、KF-889、X-22-3939A(信越化学工業(株)製)等が例示される。
【0151】
エポキシ基含有有機変性シリコーンの市販品は、X-22-343、KF-101、KF-1001、X-22-2000、X-22-2046、KF-102、X-22-4741、KF-1002、KF-1005(信越化学工業(株)製)等が例示される。
【0152】
メルカプト基含有有機変性シリコーンの市販品は、KF-2001、KF-2004(信越化学工業(株)製)等が例示される。
【0153】
カルボキシル基含有有機変性シリコーンの市販品は、X-22-3701E(信越化学工業(株)製)等が例示される。
【0154】
有機変性シリコーンの水酸基価の上限及び下限は、500、450、400、350、300、250、200、150、100、50、10、0mgKOH/g等が例示される。1つの実施形態において、上記水酸基価は0~500mgKOH/gが好ましい。
【0155】
コーティング剤固形分100質量%中の有機変性シリコーンの含有量の上限及び下限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0~10質量%が好ましい。
【0156】
<硬化触媒(E):(E)成分ともいう>
1つの実施形態において、上記コーティング剤は、硬化触媒を含み得る。硬化触媒は単独又は2種以上で含まれ得る。
【0157】
硬化触媒は、有機金属触媒、有機アミン触媒等が例示される。
【0158】
有機金属触媒は、有機典型金属触媒、有機遷移金属触媒等が例示される。
【0159】
有機典型金属触媒は、有機錫触媒、有機ビスマス触媒等が例示される。
【0160】
有機錫触媒は、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等が例示される。
【0161】
有機ビスマス触媒は、オクチル酸ビスマス等が例示される。
【0162】
有機遷移金属触媒は、有機チタン触媒、有機ジルコニウム触媒、有機鉄触媒等が例示される。
【0163】
有機チタン触媒は、チタンエチルアセトアセテート等が例示される。
【0164】
有機ジルコニウム触媒は、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等が例示される。
【0165】
有機鉄触媒は、鉄アセチルアセトネート等が例示される。
【0166】
有機アミン触媒は、ジアザビシクロオクタン、ジメチルシクロヘキシルアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、エチルモルホリン、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン及びトリエチレンジアミン等が例示される。
【0167】
コーティング剤固形分100質量%中の硬化触媒の含有量の上限及び下限は、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0~1質量%が好ましい。
【0168】
<有機溶媒(F):(F)成分ともいう。>
1つの実施形態において、上記コーティング剤は有機溶媒を含み得る。有機溶媒は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0169】
有機溶媒は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン等が例示される。これらの中でも樹脂の溶解性の観点から、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエンが好ましい。
【0170】
コーティング剤100質量%中の有機溶媒の含有量の上限及び下限は、90、85、80、75、70、65、60質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は60~90質量%が好ましい。
【0171】
上記コーティング剤の固形分量(不揮発分量)の上限及び下限は、40、35、30、25、20、15、10%等が例示される。1つの実施形態において、上記固形分量(不揮発分量)は、10~40%が好ましい。
【0172】
<添加剤>
上記コーティング剤には、上記(A)~(F)成分のいずれにも該当しない剤を添加剤として含み得る。
【0173】
添加剤は、消泡剤、防滑剤、防腐剤、防錆剤、pH調整剤、酸化防止剤、顔料、染料、滑剤、レベリング剤、導電剤、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリペンタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、イソプレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、ポリオレフィンおよびこれらの誘導体等、シリコーン樹脂、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物、アミン、カルボン酸無水物、長鎖アルキル基含有アルコール等が例示される。
【0174】
1つの実施形態において、添加剤の含有量は、コーティング剤100質量部に対して、1質量部未満、0.1質量部未満、0.01質量部未満、0質量部等が例示される。また、(A)~(F)成分のいずれか100質量部に対して、1質量部未満、0.1質量部未満、0.01質量部未満、0質量部等が例示される。
【0175】
上記コーティング剤は、(A)~(C)成分、並びに必要に応じて(D)~(F)成分及び添加剤が、各種公知の手段により分散・混合されることにより製造され得る。なお、各成分の添加順序は特に限定されない。また、分散・混合手段としては、各種公知の装置(乳化分散機、超音波分散装置等)を用いることができる。
【0176】
上記表面保護コーティング剤は、熱硬化性表面保護コーティング剤、ペイントプロテクションフィルム用表面保護コーティング剤、ペイントプロテクションフィルム用熱硬化性表面保護コーティング剤等として使用され得る。
【0177】
ペイントプロテクションフィルム(PPF)は、自動車やバイクの車体の塗装面に貼り付けて、車体の塗装面を飛び石や汚れから保護するものである。PPFは、車体の塗装面への貼り付け時には、車体の曲面に合わせるように伸ばしながら(変形させながら)貼り付けられる。そのため、上記コーティング剤がペイントプロテクションフィルムを製造するために使用される場合、製造された積層物は伸度が良好であることが求められ得る。また、上記のように、PPFは自動車やバイクの車体の塗装面に貼り付けられるものである。そのため、上記コーティング剤がペイントプロテクションフィルムを製造するために使用される場合、製造された積層物は耐候劣化によって物性低下が生じるため、耐候性が良好であることが求められ得る。
【0178】
[硬化物]
本開示は、上記表面保護コーティング剤の硬化物を提供する。
【0179】
1つの実施形態において、上記硬化物は、上記表面保護コーティング剤の熱硬化物である。硬化条件は後述のもの等が例示される。
【0180】
[積層物]
本開示は、上記硬化物及び基材を含む、積層物を提供する。
【0181】
上記基材は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリオレフィン、ナイロン、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、ノルボルネン系樹脂等のプラスチックからなる基材等が例示される。
【0182】
基材は必要に応じて表面処理(コロナ放電等)がなされていてもよい。また、基材は、その片面あるいは両面に、本開示のコーティング剤以外のコーティング剤による層が設けられていてもよい。
【0183】
塗工方法は、スプレー、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ドットコーター等が例示される。
【0184】
塗工量は特に限定されない。塗工量は、乾燥後の質量が3~25g/m程度となる量が好ましく、5~20g/mとなる量がより好ましい。
【0185】
加熱方法は、循風乾燥機等による乾燥等が例示される。乾燥(硬化)条件は90~170℃程度で、時間が30秒~2分程度等が例示される。
【0186】
1つの実施形態において、上記積層物の製造方法は、養生工程を含む。養生の条件は、室温または加温条件等が例示される。加温する場合、40~60℃程度で、1~7日程度が例示される。
【実施例
【0187】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を具体的に説明する。但し、上述の好ましい実施形態における説明及び以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供するものではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。また、各実施例及び比較例において、特に説明がない限り、部、%等の数値は質量基準である。
【0188】
製造例1
撹拌器、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備え付けた4口フラスコにメチルメタクリレートを24部、ブチルアクリレートを59部、2-ヒドロキシルエチルアクリレートを17部加え、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを2部、溶媒として酢酸エチルを153部加え、77℃まで徐々に昇温し、9時間反応を行い、固形分濃度35%のポリマー溶液(数平均分子量26000、重量平均分子量70000)を得た。
【0189】
特段言及がない限り、製造例1以外の製造例、及び比較製造例は、下記表のように変更した以外は、製造例1と同様にして行った。
【0190】
【表1】
【0191】
<略称の説明>
MMA:メチルメタクリレート
BA:ブチルアクリレート
LMA:ラウリルメタクリレート

HEA:2-ヒドロキシルエチルアクリレート
HEMA:2-ヒドロキシルエチルメタクリレート
【0192】
実施例1
製造例1のポリマーを固形分換算で100部、デュラネートTPA-100(旭化成(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、固形分濃度100%)を45部、ルミフロン916F(AGC(株)製、フルオロエチレン・ビニルエーテル交互共重合体、固形分濃度100%)を10部、ジオクチルスズジラウレート(固形分濃度100%)を0.17部、アセチルアセトン24部をよく混合し、MEKにて固形分濃度25%まで希釈することでコーティング剤を調製した。
【0193】
特段言及がない限り、実施例1以外の実施例及び比較例は、下記表のように変更した以外は、実施例1と同様にして行った。
【0194】
【表2】
【0195】
<略称の説明>
TPA-100:デュラネートTPA-100(旭化成(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、固形分濃度100%)
24A-100:デュラネート24A-100(旭化成(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、固形分濃度100%)
D-160N:タケネートD-160N(三井化学(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、固形分濃度75%)

LF916F:ルミフロン916F(AGC(株)製、フルオロエチレン・ビニルエーテル交互共重合体、水酸基価100mgKOH/g、固形分濃度100%)
LF200F:ルミフロン200F(AGC(株)製、フルオロエチレン・ビニルエーテル交互共重合体、水酸基価31mgKOH/g、固形分濃度100%)

BYK3700:BYK-SILCLEAN3700(ビックケミージャパン(株)製、アクリル変性シリコーン、固形分濃度25%)
【0196】
積層物の作製
コーティング剤を、熱可塑性ウレタンフィルム(185μm厚)に、乾燥後の塗膜厚が10μmになるようにバーコーターで塗工し、120℃で2分間乾燥した。その後、40℃×5日間のエージングを実施し、積層物を作製した。
【0197】
伸度
上記の試験片をJIS-3号ダンベルにて打ち抜き、テンシロン万能材料試験機(商品名「RTC-1250A」、株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて、引張速度200mm/min、標線間距離20mmの条件で測定した。
破断伸度(%)=100×(L-20)/20
L:硬化物破断時の硬化物長さ
【0198】
耐候試験後伸度
上記積層物に対し、超促進耐候性試験機(ダイプラ・メタルウェザー)を使用し、以下を1サイクルとして10サイクル実施した。
照射4時間(温度60℃、湿度50%、照度90mW/cm
結露4時間(温度30℃、湿度98%、前後10秒のシャワー)
暗黒6分間(温度50℃、湿度50%)
試験後のフィルムについて上記と同様にして伸度を測定した。
【0199】
耐汚染性の評価
積層物表面にマジックインキNo.700(寺西化学工業(株)製)で印を書き、1分後にウエスで当該印を拭き取ることにより評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎:1往復の拭き取りで完全に印が消失する
○:5往復以内の拭き取りで完全に印が消失する
△:5往復以上の拭き取り後もうっすらと印が確認される
×:拭き取り後もはっきりと印が残存する