(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20250109BHJP
G06F 1/20 20060101ALI20250109BHJP
B60W 50/02 20120101ALI20250109BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B60R16/02 660A
G06F1/20 D
B60W50/02
B60R11/02 W
(21)【出願番号】P 2021040925
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 恒一
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-153719(JP,A)
【文献】特開2020-112994(JP,A)
【文献】特開2020-057992(JP,A)
【文献】特開2020-164105(JP,A)
【文献】特開2018-160870(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0129482(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102018211519(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60R 11/00 - 11/06
B60W 10/00 - 60/00
G06F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末を備える車両に搭載され、前記通信端末を管理するための情報処理装置であって、
前記通信端末の温度又は負荷を
第1の所定の周期で繰り返し取得することと、
前記第1の所定の周期で取得された温度又は負荷が第1の所定の閾値を超えているか否かを判定することと、
前記第1の所定の周期で取得された温度又は負荷が
前記第1の所定の閾値を超えている場合に、
前記通信端末の冷却ファンの風量の制御を含む、前記通信端末の過昇温を抑制するためのサーマル制御を
開始することと、
前記サーマル制御を開始した後に、前記サーマル制御のログの記録を開始することと、
前記サーマル制御のログの記録を開始した後に、前記通信端末の温度又は負荷を、前記第1の所定の周期よりも短い第2の所定の周期で繰り返し取得することと、
前記第2の所定の周期で取得された温度又は負荷が、前記第1の所定の閾値よりも温度又は負荷が低い第2の所定の閾値以下であるか否かを判定することと、
前記第2の所定の周期で取得された温度又は負荷が前記第2の所定の閾値以下である場合に、前記サーマル制御を終了することと、
前記サーマル制御を終了した後に、前記サーマル制御のログの記録を終了することと、
前記サーマル制御のログの記録を終了した後に、前記サーマル制御の開始から終了までの期間における前記通信端末の温度又は負荷の推移、前記サーマル制御の開始から終了までの期間における前記冷却ファンの風量の推移、及び、前記サーマル制御の開始から終了までに要した時間を含む、前記サーマル制御の開始から終了までの期間における前記サーマル制御のログを、サーバ装置へ送信することと、
を実行する制御部を備える、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載される情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される機器と該機器を制御する制御装置との間に、機器から入力される信号の適否を判定する装置を介在させる技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、車両に搭載される通信端末を適正に動作させる上で有効な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、通信端末を備える車両に搭載され、前記通信端末を管理するための情報処理装置として捉えることができる。その場合の情報処理装置は、例えば、
前記通信端末の温度又は負荷を取得することと、
取得された温度又は負荷が所定の閾値を超えている場合に、前記通信端末の過昇温を抑制するためのサーマル制御を行うことと、
前記サーマル制御のログを、サーバ装置へ送信することと、
を実行する制御部を備えるようにしてもよい。
【0006】
なお、本開示は、上記した処理をコンピュータが実行する情報処理方法として捉えてもよく、又は該情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして捉えてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、車両に搭載される通信端末を適正に動作させる上で有効な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】車載システムに含まれる状態管理ECU及び通信端末のハードウェア構成例を示す図である。
【
図4】状態管理ECUの機能構成例を示すブロック図である。
【
図5】状態管理ECUで行われる処理ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
近年、V2X(Vehicle-to-Everything)等の車両用通信技術の進歩に伴い、外部の機
器と通信可能な機器(通信端末)を搭載する車両の開発が進められている。また、5G(5th-Generation)又は5G以降の移動体通信規格のように、高速且つ大容量の無線通信を行うことができる移動体通信の開発も進められている。高速且つ大容量の無線通信を行う通信端末では、多大な量のデータを高速に処理する必要があるため、通信端末の温度管理
が重要となる。
【0010】
そこで、本開示に係る情報処理装置では、制御部が、通信端末の温度又は負荷を取得する。取得された温度又は負荷が所定の閾値を超えている場合、制御部は、通信端末の過昇温を抑制するためのサーマル制御を行う。サーマル制御では、例えば、通信端末を冷却するための機器(例えば、冷却ファン等)の作動、通信端末の動作クロックの低下、又は通信端末の動作電圧の低下等が行われる。これにより、通信端末の過昇温が抑制されるため、通信端末が外部機器と通信不能な状態に陥ることを抑制することができる。また、制御部は、サーマル制御のログをサーバ装置へ送信する。サーマル制御のログには、例えば、サーマル制御が開始されてから終了するまでの期間における通信端末の温度又は負荷の推移、サーマル制御の実行手順、及びサーマル制御の実行時間等が含まれる。これにより、サーバ装置は、サーマル制御のログを蓄積することができる。サーバ装置に蓄積されたログは、車両に搭載される機器の後継機の開発、又は車両に搭載される機器の改良等に活用することができる。
【0011】
<実施形態>
以下、本開示の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0012】
(システムの概要)
本開示を適用する車両管理システムについて、
図1及び
図2に基づいて説明する。
図1は、車両管理システムの概要を示す図である。
図2は、車載システム10の概略構成を示す図である。本実施形態における車両管理システムは、車両1に搭載される車載システム10と、サーバ装置2と、を含んで構成される。
図1に示す例では、サーバ装置2の管理下にある車両1が1台のみ図示されているが、複数台でもよい。
【0013】
車載システム10は、
図2に示すように、ECU(Electronic Control Unit)101
、状態管理ECU102、通信端末103、及びバッテリ104等を含む。ECU101、状態管理ECU102、及び通信端末103は、CAN(Controller Area Network)
規格の車内ネットワーク(CAN-BUS)等を介して相互に接続されている。
【0014】
ECU101は、車両1の駆動用モータを制御するモータECU、及びマルチメディア機器(カーナビゲーションシステム、及びオーディオ等)を制御するマルチメディアECU等の複数のECUを含み、車両1に搭載される各種の機器を制御する。
【0015】
通信端末103は、無線通信を通じてネットワークに接続する。例えば、通信端末103は、ネットワークを通じて、外部の機器からマルチメディア用のデータ(例えば、カーナビゲーションシステム用の地図データ等)をダウンロードしたり、車両1の各種データを外部の機器へアップロードしたりする機能を有する。本例では、通信端末103は、後述するサーマル制御のログを、ネットワークを通じてサーバ装置2へ送信する機能も有する。
【0016】
状態管理ECU102は、通信端末103の状態を管理する。本例では、状態管理ECU102は、通信端末103の温度が所定の閾値を超えたときに後述のサーマル制御を行う機能、及びサーマル制御のログを通信端末103からサーバ装置2へ送信させる機能を有する。斯様な状態管理ECU102は、本開示に係る情報処理装置に相当する。
【0017】
バッテリ104は、ECU101、状態管理ECU102、及び通信端末103の電源である。
【0018】
サーバ装置2は、ネットワークを通じて車載システム10と通信することで、車両1を管理する。本例では、サーバ装置2は、車載システム10から送信されるサーマル制御のログを蓄積する機能を有する。サーバ装置2に蓄積されるログは、車両1に搭載される機器の後継機の開発、又は車両1に搭載される機器の改良等に活用される。
【0019】
(ハードウェア構成)
図3は、車載システム10に含まれる状態管理ECU102及び通信端末103の各々のハードウェア構成例を示す図である。
【0020】
状態管理ECU102は、車両1に搭載されるマイクロコンピュータである。状態管理ECU102は、
図3に示すように、プロセッサ1021、主記憶部1022、補助記憶部1023、及び車内通信部1024等を含んで構成される。これらプロセッサ1021、主記憶部1022、補助記憶部1023、及び車内通信部1024は、互いにバスにより接続される。状態管理ECU102のハードウェア構成は、
図3に示す例に限定されず、適宜構成要素の省略、置換、又は追加が行われてもよい。
【0021】
状態管理ECU102は、プロセッサ1021が補助記憶部1023に格納されているプログラムを主記憶部1022の作業領域にロードして実行することにより、所定の目的に合致した機能を実現する。なお、状態管理ECU102の一部又は全部の機能は、ASIC又はFPGA等のハードウェア回路により実現されてもよい。
【0022】
プロセッサ1021は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)である。プロセッサ1021は、様々な情報処理の演算を行う
ことで、状態管理ECU102を制御する。
【0023】
主記憶部1022は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。主記憶部1022は、例えば、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を含む。主記憶部1022には、前述したように、プロセッサ1021がプログラムを実行するための作業領域が設定される。
【0024】
補助記憶部1023は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。補助記憶部1023は、例えば、EPROM(Erasable Programmable ROM)、又はHDD(Hard Disk
Drive)等を含む。補助記憶部1023は、各種のプログラム、各種のデータ、及び各種のテーブルを読み書き自在に記録媒体に格納する。補助記憶部1023に格納されるプログラムには、OS(Operating System)に加え、サーマル制御に関連する機能を実現するためのプログラムが含まれる。なお、補助記憶部1023に格納されている情報の一部又は全部は、主記憶部1022に格納されてもよい。
【0025】
車内通信部1024は、状態管理ECU102を車内ネットワークに接続するためのインタフェースである。車内通信部1024は、車内ネットワークを通じて、ECU101及び状態管理ECU102等との通信を行う。
【0026】
上記したように構成される状態管理ECU102で実行される一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。
【0027】
次に、通信端末103は、車両1に搭載される通信機器である。通信端末103は、
図3に示すように、プロセッサ1031、主記憶部1032、補助記憶部1033、車内通信部1034、車外通信部1035、冷却ファン1036、及び温度センサ1037等を含んで構成される。なお、通信端末103のハードウェア構成は、
図3に示す例に限定されず、適宜構成要素の省略、置換、又は追加が行われてもよい。
【0028】
通信端末103は、プロセッサ1031が補助記憶部1033に格納されているプログラムを主記憶部1032の作業領域にロードして実行することにより、所定の目的に合致した機能を実現する。なお、通信端末103の一部又は全部の機能は、ASIC又はFPGA等のハードウェア回路により実現されてもよい。
【0029】
通信端末103のプロセッサ1031と主記憶部1032と車内通信部1034とは状態管理ECU102のプロセッサ1021と主記憶部1022と車内通信部1024とに各々同一であるため、その説明が省略される。
【0030】
補助記憶部1033は、ECU100の補助記憶部1033と同一の構成に加え、リムーバブルメディアを含むことができる。リムーバブルメディアは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、又はCD(Compact Disc)若しくはDVD(Digital Versatile Disc)等のディスク記録媒体である。
【0031】
車外通信部1035は、通信端末103をネットワークに接続するためのインタフェースである。車外通信部1035は、例えば、LTE(Long Term Evolution)、LTE-
Advanced、DSRC(Dedicated Short Range Communication)、及び5G(5th
Generation)等の移動体通信方式、又は、Wi-Fi等の無線通信方式によって、ネッ
トワークに接続する。
【0032】
冷却ファン1036は、プロセッサ1031を空冷するための機器である。本例の冷却ファン1036は、バッテリ104を電源として作動する電動の送風機である。冷却ファン1036の作動/停止、及び送風量(回転速度)は、状態管理ECU102によって制御される。
【0033】
温度センサ1037は、プロセッサ1031の温度を検出するセンサである。ここで、通信端末103のプロセッサ1031、主記憶部1032、及び補助記憶部1033が1つの筐体内に配置される場合であれば、温度センサ1037は、該筐体内の雰囲気温度を検出するように構成されてもよい。また、温度センサ1037は、プロセッサ1031の温度を直に検出するように構成されてもよい。斯様な温度センサ1037により検出された温度は、車内通信部1034を通じて、状態管理ECU102へ送信される。
【0034】
上記したように構成される通信端末103で実行される一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。
【0035】
(状態管理ECUの機能構成)
次に、本実施形態における状態管理ECU102の機能構成例について、
図4に基づいて説明する。
図4は、状態管理ECU102の機能構成例を示すブロック図である。本例における状態管理ECU102は、
図4に示すように、その機能構成要素として、取得部F110、サーマル制御部F120、及びログ送信部F130を有する。取得部F110、サーマル制御部F120、及びログ送信部F130は、補助記憶部1023に格納されているプログラムをプロセッサ1021が実行することにより実現される。取得部F110とサーマル制御部F120とログ送信部F130との何れか、又はその一部は、ハードウェア回路により実現されてもよい。また、状態管理ECU102の機能構成は、
図4に示す例に限定されず、適宜機能構成要素の省略、置換、又は追加が行われてもよい。
【0036】
取得部F110は、通信端末103のプロセッサ1031の温度を取得する。具体的には、取得部F110は、プロセッサ1031の温度を要求する信号(以下、「温度要求信号」と記す場合もある。)を、車内通信部1024を通じて通信端末103へ送信する。
温度要求信号を受信した通信端末103では、プロセッサ1031が、温度センサ1037の検出温度を、車内通信部1034を通じて状態管理ECU102へ送信する。これにより、取得部F110は、車内通信部1024を通じて、温度センサ1037により検出されたプロセッサ1031の温度を取得することができる。プロセッサ1031の温度の取得は、所定の周期で繰り返し実行される。そして、取得部F110により取得されたプロセッサ1031の温度は、取得部F110からサーマル制御部F120へ渡される。
【0037】
サーマル制御部F120は、取得部F110により取得されたプロセッサ1031の温度が所定の閾値を超えているかを判定する。ここでいう「所定の閾値」は、通信端末103において適正且つ安定した通信を実現することができるプロセッサ1031の温度範囲の上限値から所定のマージンを差し引いた温度であり、実験又はシミュレーション等の結果に基づいて定められる。その際の所定の閾値は、固定値であってもよいが、外気温度又は車両1の室内の温度が高くなるほど低い温度に設定される可変値でもよい。
【0038】
取得部F110により取得されたプロセッサ1031の温度が所定の閾値を超えていると判定された場合、サーマル制御部F120は、サーマル制御を実行する。サーマル制御は、通信端末103のプロセッサ1031の過昇温を抑制するための制御である。本例のサーマル制御では、サーマル制御部F120が、通信端末103の冷却ファン1036を作動させる。具体的には、サーマル制御部F120は、冷却ファン1036の作動を要求する信号(以下、「冷却開始信号」と記す場合もある。)を、車内通信部1024を通じて通信端末103へ送信する。冷却開始信号には、冷却ファン1036の風量(回転速度)を指定する情報が含まれるようにしてもよい。その際、冷却ファン1036の風量は、取得部F110により取得されたプロセッサ1031の温度が高くなるほど多くなるように設定されてもよい。或いは、冷却ファン1036の風量は、通信端末103のプロセッサ1031の負荷が大きくなるほど多くなるように設定されてもよい。ここでいう「負荷」は、通信端末103に対して要求されている送受信データの量、又はプロセッサ1031の使用率等である。冷却開始信号を受信した通信端末103では、プロセッサ1031が、冷却ファン1036を作動させる。その際、冷却ファン1036の風量を指定する情報が冷却開始信号に含まれていれば、プロセッサ1031は、当該情報に基づいてバッテリ104から冷却ファン1036へ印加される電圧を制御することで、冷却ファン1036の風量を指定の風量に調整する。
【0039】
上記したサーマル制御は、通信端末103のプロセッサ1031の温度が目標値以下に低下するまで継続される。その際、サーマル制御部F120は、取得部F110を通じてプロセッサ1031の温度を取得する処理、及び取得された温度が目標値以下まで低下したかを判定する処理を、上記した所定の周期よりも短い周期で繰り返し実行する。そして、取得部F110により取得されたプロセッサ1031の温度が目標値以下まで低下すると、サーマル制御を終了する。具体的には、サーマル制御部F120は、冷却ファン1036の作動停止を要求する信号(以下、「冷却停止信号」と記す場合もある。)を、車内通信部1024を通じて通信端末103へ送信する。冷却停止信号を受信した通信端末103では、プロセッサ1031が、冷却ファン1036の作動を停止させる。具体的には、プロセッサ1031は、バッテリ104から冷却ファン1036への電圧の印加を停止させる。なお、ここでいう「目標値」は、所定の閾値から所定値αを差し引いた温度である。
【0040】
また、サーマル制御部F120は、サーマル制御のログを記録する機能も有する。サーマル制御のログは、例えば、サーマル制御の開始から終了までの期間におけるプロセッサ1031の温度及び負荷の推移、サーマル制御の開始から終了までの期間における冷却ファン1036の風量の推移、及びサーマル制御の開始から終了までに要した時間等が含まれる。斯様なログは、補助記憶部1023に記録される。補助記憶部1023に記録され
たログは、サーマル制御が終了した時点でサーマル制御部F120からログ送信部F130へ渡される。
【0041】
ログ送信部F130は、サーマル制御部F120から受け取ったログを、サーバ装置2へ送信する。具体的には、ログ送信部F130は、サーバ装置2に対するログの送信を要求する信号(以下、「ログ送信要求信号」と記す場合もある。)を、車内通信部1024を通じて通信端末103へ送信する。その際のログ送信要求信号には、サーマル制御部F120から受け取ったログも含まれる。ログ送信要求信号を受信した通信端末103では、プロセッサ1031が、該ログ送信要求信号に含まれているログを、車外通信部1035を通じてサーバ装置2へ送信する。
【0042】
(処理の流れ)
本実施形態における状態管理ECU102で行われる処理の流れについて
図5に基づいて説明する。
図5は、状態管理ECU102において所定の周期で繰り返し実行される処理ルーチンを示すフローチャートである。なお、
図5に示す処理の実行主体は状態管理ECU102のプロセッサ1021であるが、ここでは状態管理ECU102の機能構成要素を主体として説明する。
【0043】
図5の処理ルーチンでは、取得部F110が、通信端末103のプロセッサ1031の温度(
図5中の「TempC」)を取得する(ステップS101)。具体的には、取得部F110が、前述した温度要求信号を、車内通信部1024を通じて通信端末103へ送信する。これに対し、通信端末103では、プロセッサ1031が、温度センサ1037により検出されるプロセッサ1031の温度TempCを、車内通信部1034を通じて状態管理ECU102へ送信する。通信端末103から送信された温度TempCは、車内通信部1024を通じて取得部F110へ渡される。取得部F110により取得されたプロセッサ1031の温度TempCは、取得部F110からサーマル制御部F120へ渡され、それをトリガにしてサーマル制御部F120がステップS102の処理を実行する。
【0044】
ステップS102では、サーマル制御部F120が、取得部F110により取得されたプロセッサ1031の温度TempCが所定の閾値(
図5中の「Tempthre」)より高いかを判定する。所定の閾値Tempthreは、前述したように、通信端末103において適正且つ安定した通信を実現することができるプロセッサ1031の温度範囲の上限値から所定のマージンを差し引いた温度である。取得部F110により取得されたプロセッサ1031の温度TempCが所定の閾値Tempthre以下であれば(ステップS102で否定判定)、本処理ルーチンの実行が終了される。一方、取得部F110により取得されたプロセッサ1031の温度TempCが所定の閾値Tempthreより高ければ(ステップS102で肯定判定)、サーマル制御部F120がステップS103の処理を実行する。
【0045】
ステップS103では、サーマル制御部F120が、サーマル制御を開始する。具体的には、サーマル制御部F120は、前述した冷却開始信号を、車内通信部1024を通じて通信端末103へ送信する。冷却開始信号を受信した通信端末103では、プロセッサ1031が、冷却ファン1036を作動させる。その際、冷却ファン1036の風量を指定する情報が冷却開始信号に含まれていれば、プロセッサ1031は、当該情報に基づいてバッテリ104から冷却ファン1036へ印加される電圧を制御することで、冷却ファン1036の風量を指定の風量に調整する。サーマル制御部F120は、ステップS103の処理を実行し終えると、ステップS104の処理を実行する。
【0046】
ステップS104では、サーマル制御部が、サーマル制御のログの記録を開始する。サ
ーマル制御のログは、前述したように、サーマル制御の開始から終了までの期間におけるプロセッサ1031の温度及び負荷の推移、サーマル制御の開始から終了までの期間における冷却ファン1036の風量の推移、及びサーマル制御の開始から終了までに要した時間等が含まれる。斯様なログは、補助記憶部1023に記録される。サーマル制御部F120は、ステップS104の処理を実行し終えると、ステップS105の処理を実行する。
【0047】
ステップS105では、サーマル制御部F120が、取得部F110を通じて、プロセッサ1031の温度TempCを再度取得する。サーマル制御部F120は、ステップS105の処理を実行し終えると、ステップS106の処理を実行する。
【0048】
ステップS106では、サーマル制御部F120が、ステップS105で取得されたプロセッサ1031の温度TempCが目標値(
図5中の「Temptrg」)以下であるかを判定する。目標値Temptrgは、前述したように、所定の閾値Tempthreから所定値αを差し引いた温度である。ステップS105で取得されたプロセッサ1031の温度TempCが目標値Temptrgより高ければ(ステップS106で否定判定)、サーマル制御部F120が、ステップS104-S105の処理を再度実行する。一方、ステップS105で取得されたプロセッサ1031の温度TempCが目標値Temptrg以下まで低下していれば(ステップS106で肯定判定)、サーマル制御部F120が、ステップS107の処理を実行する。
【0049】
ステップS107では、サーマル制御部F120が、サーマル制御を終了する。具体的には、サーマル制御部F120は、前述した冷却停止信号を、車内通信部1024を通じて通信端末103へ送信する。冷却停止信号を受信した通信端末103では、プロセッサ1031が、冷却ファン1036の作動を停止させる。サーマル制御部F120は、ステップS107の処理を実行し終えると、ステップS108の処理を実行する。
【0050】
ステップS108では、サーマル制御部が、サーマル制御のログの記録を終了する。これに伴い、サーマル制御部F120は、今回のサーマル制御のログを補助記憶部1023から読み出して、ログ送信部F130へ渡す。ログ送信部F130は、今回のサーマル制御のログをサーマル制御部F120から受け取ったことをトリガにして、ステップS109の処理を実行する。
【0051】
ステップS109では、ログ送信部F130が、今回のサーマル制御のログを、サーバ装置2へ送信する。具体的には、ログ送信部F130は、前述したログ送信要求信号を、車内通信部1024を通じて通信端末103へ送信する。ログ送信要求信号を受信した通信端末103では、プロセッサ1031が、該ログ送信要求信号に含まれているログを、車外通信部1035を通じてサーバ装置2へ送信する。
【0052】
図5に示す処理ルーチンによれば、高速且つ大容量の無線通信を行うことができる5Gの無線通信方式で通信端末103がデータの送受信を行っても、通信端末103のプロセッサ1031が過昇温することを抑制することができる。これにより、通信端末103のプロセッサ1031が過昇温することに起因して、通信端末103が外部の機器と通信不能な状態に陥ることを抑制することができる。すなわち、通信端末103を適正に動作させることが可能となる。また、サーマル制御のログがサーバ装置2へ送信されることで、サーバ装置2においてサーマル制御のログを蓄積することもできる。これにより、サーバ装置2に蓄積されたサーマル制御のログを解析することで、車両1に搭載される機器の後継機の開発、又は車両1に搭載される機器の改良等を効率的に行うことが可能になる。
【0053】
<変形例1>
前述した実施形態では、冷却ファン1036を作動させる方法によりサーマル制御を行う例について述べたが、通信端末103のプロセッサ1031の動作クロックを低下させる方法、又は通信端末103のプロセッサ1031の動作電圧(バッテリ104からプロセッサ1031へ印加される電圧)を低下させる方法によりサーマル制御を行ってもよい。これらの方法によれば、通信端末103により単位時間あたりに送受信されるデータ量が減少する可能性はあるものの、プロセッサ1031の過昇温を抑制することができる。その結果、通信端末103が外部の機器と通信不能な状態に陥ることを抑制することができる。
【0054】
<変形例2>
前述した実施形態では、通信端末103のプロセッサ1031の温度が所定の閾値を超えたことをトリガにして、サーマル制御が実行される例について述べたが、通信端末103のプロセッサ1031の負荷が所定の閾値を超えたことをトリガにして、サーマル制御が実行されてもよい。すなわち、通信端末103に対して要求されている送受信データの量が所定の閾値を超えたこと、又はプロセッサ1031の使用率が所定の閾値を超えたこと等をトリガにして、サーマル制御が実行されてもよい。その場合の「所定の閾値」は、通信端末103により送受信されるデータ量がそれ以上増加すると、又はプロセッサ1031の使用率がそれ以上増加すると、プロセッサ1031が過昇温する虞があるデータ量又は使用率から所定のマージンを差し引いた値である。これにより、前述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
<その他>
上記した実施形態及び変形例はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。また、本開示において説明した処理及び構成は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。さらに、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。また、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成で実現するかは柔軟に変更可能である。
【0056】
また、本開示は、上記の実施形態又は変形例で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよく、又はネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、データ及びプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、又は化学的な作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体である。斯様な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、又はハードディスクドライブ(HDD)等)、又は光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、又はブルーレイディスク等)等の任意のタイプのディスクである。また、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、又はSSD(Solid State Drive)等の媒体でもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 車両
10 車載システム
101 ECU
102 状態管理ECU
1021 プロセッサ
1022 主記憶部
1023 補助記憶部
1024 車内通信部
F110 取得部
F120 サーマル制御部
F130 ログ送信部
103 通信端末
1031 プロセッサ
1032 主記憶部
1033 補助記憶部
1034 車内通信部
1035 車外通信部
1036 冷却ファン
1037 温度センサ
104 バッテリ
2 サーバ装置