(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】放射線撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/42 20240101AFI20250109BHJP
G01T 7/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61B6/42 500S
G01T7/00 A
A61B6/42 500W
(21)【出願番号】P 2021044309
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角 誠
(72)【発明者】
【氏名】石本 一
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-000242(JP,A)
【文献】特表2003-522330(JP,A)
【文献】特開2018-004262(JP,A)
【文献】特開2015-027416(JP,A)
【文献】特開平07-313561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
G01T 1/00-1/16、1/167-7/12
G03B 42/00-42/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受けた放射線の強度を電気信号に変換する放射線検出部と、
前記放射線検出部を収容する筐体と、を備え、
前記筐体の所定領域以外の部分は、エタノールよりも消毒効果が高い消毒液に対する耐久性を有する材料で形成されて
おり、
前記所定領域は、ユーザーが操作可能な操作部が設けられた領域である放射線撮影装置。
【請求項2】
前記筐体の前記所定領域の部分は、
金属を含んでおり、
少なくともその表面が、前記消毒液に対する耐久性を有している請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記所定領域の部分は、前記消毒液に対する耐久性を有する耐腐食性金属で形成されている請求項2に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記所定領域の部分は、金属と、前記消毒液に対する耐久性を有する材料からなり当該金属の表面を被覆する保護膜と、で形成されている請求項2に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記所定領域は
、他の装置の部品が接続される接続部が露出する領域
を含む請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の放射線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可搬型の放射線撮影装置の技術分野においては、堅牢性の向上及び軽量化を目的として、例えば特許文献1に記載されているように、筐体の少なくとも一部をマグネシウム合金等の金属で形成することが従来行われている。
また、可搬型の放射線撮影装置は、撮影の際に被検者と接触することが多々ある。このため、可搬型の放射線撮影装置を用いた撮影では、消毒のため、消毒用エタノール等の消毒液で筐体の表面を清拭することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、感染症対策の強化に伴い、消毒用エタノールよりも消毒効果の高い消毒液(例えば、次亜塩素酸ナトリウム)が放射線撮影装置の消毒に用いられるようになってきた。
しかし、こうした消毒効果の高い消毒液は、多くの金属を腐食させる性質を有することがある。このため、筐体に金属を含む放射線撮影装置は、清拭されることによって筐体が腐食してしまう可能性がある。
筐体の腐食は、例えば、筐体と内部の放射線検出部との導通をとれなくし(ノイズを逃がすことができないようにし)、放射線画像の画質を低下させる(例えば画像ムラが生じる)等の原因になってしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、従来よりも消毒効果が高い消毒液を用いて消毒がなされるような環境下で放射線撮影装置を使用する場合であっても、当該放射線撮影装置が生成する放射線画像の画質が低下することがないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る放射線撮影装置は、
受けた放射線の強度を電気信号に変換する放射線検出部と、
前記放射線検出部を収容する筐体と、を備え、
前記筐体の所定領域以外の部分は、エタノールよりも消毒効果が高い消毒液に対する耐久性を有する材料で形成されており、
前記所定領域は、ユーザーが操作可能な操作部が設けられた領域である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来よりも消毒効果が高い消毒液を用いて消毒がなされるような環境下で放射線撮影装置を使用する場合であっても、当該放射線撮影装置が生成する放射線画像の画質が低下することがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る放射線撮影装置の一例を示す分解斜視図である。
【
図2】同実施形態に係る放射線撮影装置の他の例を示す分解斜視図である。
【
図3】同実施形態に係る放射線撮影装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。しかし、本発明は、図面に図示されたものに限定されるものではない。
【0010】
<1.放射線撮影装置の概略構成>
始めに、本実施形態に係る放射線撮影装置(以下、撮影装置100)の概略構成について説明する。
図1は撮影装置100の一例を示す分解斜視図、
図2は撮影装置100の他の例を示す分解斜視図である。
【0011】
撮影装置100は、受けた放射線の線量分布に応じた放射線画像を生成するためのものである。
撮影装置100は、例えば
図1に示すように、放射線検出部1と、筐体2と、を備えている。
【0012】
[1-1.放射線検出部]
放射線検出部1は、受けた放射線の強度を電気信号に変換するものである。
放射線検出部1は、基板11と、電子部品12と、を備えている。
【0013】
〔1-1-1.基板〕
基板11は、図示しない複数の半導体素子を有している。
また、放射線検出部1は、各半導体素子に近接して設けられる図示しない複数のスイッチ素子や、各スイッチ素子に接続される図示しない走査線及び信号線、各半導体素子に接続されるバイアス線、等を備えている。
本実施形態に係る基板11の正面視形状は矩形の板状となっている。
複数の半導体素子は、基板11の表面に二次元的に分布するように形成されている。
本実施形態に係る半導体素子は、マトリクス(行列状)に配列されている。
以下、基板11における半導体素子が形成された面を素子形成面11aと称する。
【0014】
〔1-1-2.電子部品〕
電子部品12は、基板11に電気的に接続されている。
電子部品12は、半導体素子に電圧を印加するための電源回路121と、各スイッチ素子を制御するための走査回路122と、電荷を画像データとして読み出す読み出し回路123と、画像データを他の装置へ出力するための通信回路124と、各回路121~124を制御する制御回路125と、図示しない配線と、を備えている。
各回路121~125は、基板11の素子形成面11aと反対側の面に配置されている。
以下、放射線検出部1における素子形成面11aと反対側の面を部品搭載面11bと称する。
図示しない配線は、例えばフレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuits
)で構成され、素子形成面11aにある走査線、信号線、バイアス線の各端子と、部品搭載面11bにある各回路121~125と、を接続している。
【0015】
通信回路124は、接続部124aを有している。
接続部124aは、他の装置(例えば放射線発生装置、コンソール等)の部品が接続されるもので、例えば、他の装置から延びるケーブルの先端(プラグ)が差し込まれるコネクターで構成されている。
本実施形態に係る接続部124aは、部品搭載面11bの周縁部に、後述する筐体2の側面部212に形成された開口212aと対向するように設けられている。
本実施形態に係る接続部124aは、内側に窪んだ(筐体2の表面から出ない)形状をしている。すなわち、筐体2を清拭する際の布等が触れにくい構造になっている。
なお、接続部は、筐体2に設けられ、放射線検出部1と電気的に接続されていてもよい。
【0016】
[1-2.筐体]
筐体2は、放射線検出部1を収容するものである。
本実施形態に係る筐体2は、矩形のパネル状をしている。
また、筐体2は、箱体21と、蓋体22と、を備えている。
【0017】
〔1-2-1、箱体〕
箱体21は、前面部211を有している。
また、本実施形態に係る箱体21は、側面部212と、操作部213と、を更に有している。
本実施形態に係る前面部211及び側面部212は一体に形成されている。
なお、前面部211と側面部212とは別部材であってもよい。
【0018】
(前面部)
前面部211は、基板11の素子形成面11aと平行に広がるように形成されている。
本実施形態に係る前面部211は、矩形の平板状に形成されている。
前面部211の外側表面は、撮影装置100(筐体2)の放射線入射面211a(前面)となる。
【0019】
(側面部)
側面部212は、前面部211の周縁部から、放射線入射面211aと直交する方向であって前面部211から離れる方向に延設されている。
側面部212の外側表面は、撮影装置100(筐体2)の側面となる。
本実施形態に係る側面部212は、放射線検出部1の接続部124aと対向する領域に接続部124aを露出させる開口212aが形成されている。
【0020】
(操作部)
操作部213は、ユーザーが操作可能となっている。
本実施形態に係る操作部213は、電源スイッチ、操作ボタン、インジケーター等を有している。
そして、操作部213は、放射線検出部1と電気的に接続されている。
本実施形態に係る操作部213は、側面部212の一部をなしている。
なお、操作部は、放射線検出部1の部品搭載面の周縁部に設けられていてもよい。その場合、側面部212における操作部と対向する領域(本実施形態における操作部213が存在する領域)が、操作部を露出させる開口となっていてもよい。
【0021】
〔1-2-2.蓋体〕
蓋体22は、背面部221を有している。
本実施形態に係る蓋体22は、全体が背面部221となっている。
本実施形態に係る背面部221は、前面部211と略等しい矩形に形成されている。
背面部221は、放射線検出部1を挟んで箱体21の前面部211と対向するとともに当該前面部211と平行に広がるように配置されている。
このため、背面部221の外側表面は、撮影装置100(筐体2)の背面となる。
また、背面部221は、箱体21の側面部212に当接するとともに側面部212に取り付けられている。
本実施形態に係る蓋体22は、箱体21の側面部212にネジ止めされている。
【0022】
〔1-2-3.筐体の耐久性について〕
このように構成された筐体2の所定領域以外の部分は、消毒液に対する耐久性を有する材料で形成されている。
本実施形態に係る所定領域は、操作部213が設けられた領域、及び接続部124aが露出する領域(開口212aが形成された領域)のうちの少なくとも一方の領域である。
撮影装置100の表面のうち、所定領域が占める割合は2%程度である。
このため、撮影装置100の表面のうち98%以上が、消毒液に対する耐久性を有しているとも言える。
また、本実施形態に係る筐体2は、所定領域の部分も、消毒液に対する耐久性を有する材料で形成されている。
この消毒液、及び当該消毒液に対する耐久性を実現するための材料構成については後述する。
【0023】
〔1-2-4.筐体その他〕
なお、
図1には、側面部212が前面部211と一体形成された筐体2(箱体21)を例示したが、筐体2は、側面部212が背面部221と一体になったものであってもよいし、前面部211、側面部212及び背面部221がそれぞれ別々の部材となっているものであってもよい。
また、筐体2は、前面部211と背面部221の両方が、それぞれ側面部を備えたものであってもよい。
また、
図1には、箱体21と蓋体22とを備える筐体2を例示したが、例えば
図2に示す放射線撮影装置100Aのように、前面部211と、背面部214と、前面部211の両端と背面部214の両端とをそれぞれつなぐ一対の側面部215と、を有し筒状に形成された筒体21Aと、筒体21Aの開口部をそれぞれ閉塞する一対の蓋体22Aと、を備えた筐体2Aのようなものであってもよい。
【0024】
<2.筐体の材料構成>
次に、上記筐体2の材料構成について説明する。
図3は撮影装置100の一例を示す断面図である。
【0025】
筐体2の所定領域をなす操作部213及び接続部124aのうちの少なくとも一方、並びに筐体2を構成する箱体21及び蓋体22は、それぞれ以下のような材料構成となっている。
【0026】
[2-1.所定領域]
本実施形態に係る操作部213及び接続部124aのうちの少なくとも一方は、消毒液に対する耐久性を有する材料で形成されている。
ここでいう消毒液は、消毒用エタノールよりも消毒効果が高いもので、且つ樹脂は腐食させないが、金属(消毒液に対する耐久性を有する耐腐食性金属は除く)を腐食させるものである。
こうした消毒液としては、例えば次亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。
次亜塩素酸ナトリウムは、消毒用エタノールでは消毒が難しい細菌芽胞やノロウイルス等のノンエンベロープウイルスにも効果があり、消毒用エタノールよりも消毒効果が高い。
なお、操作部213や接続部124aは、ユーザーの操作や外部からの衝撃に耐えるために強度が必要であったり、ノイズを防ぐためにグラウンドとの電気的な接続が必要であったりする。このため、本実施形態に係る操作部213及び接続部124aのうちの少なくとも一方は、金属を含む材料で構成される場合がある。
【0027】
金属を含む材料としては、例えば、耐腐食性金属M
R、複合材料C等が挙げられる。
耐腐食性金属M
Rとしては、例えば、ステンレス等が挙げられる。
耐腐食性金属M
Rで形成された箱体21は、表層部だけでなく厚さ方向内部まで(例えば
図3(a)に示したように全体に亘って)耐腐食性金属M
Rが存在する。
【0028】
また、複合材料Cとしては、例えば
図3(b)に示すように、金属Mと、消毒液に対する耐久性を有する材料からなり当該金属Mの表面を被覆する保護膜Fと、を有するものが含まれる。すなわち、複合材料Cは、少なくともその表面が、消毒液に対する耐久性を有する材料で形成されている。
複合材料Cを構成する金属Mは、耐腐食性金属M
Rであってもよいし、消毒液により腐食する金属であってもよい。
保護膜Fには、樹脂、耐腐食性金属M
Rの薄膜等が含まれる。
薄膜は、めっき、蒸着等により形成されたものであってもよいし、シート状に形成され、貼り付けられたものであってもよい。
【0029】
なお、
図3には、(a)に示した筐体2全体が厚さ方向内部まで同一材料で形成されたものと、(b)に示した筐体2全体が複合材料Cで形成されたものを例示したが、筐体2は、例えば、所定領域が厚さ方向内部まで同一材料で形成され他の領域が複合材料Cで形成されたもの、又は所定領域が複合材料Cで形成され他の領域が厚さ方向内部まで同一材料で形成されたものであってもよい。
また、操作部213を形成する材料及び接続部124aの端子以外の部分のうちの少なくとも一方は、樹脂又は樹脂を含む材料で形成されていてもよい。
【0030】
[2-2.箱体の材質]
本実施形態に係る箱体21は、操作部213が設けられた領域、及び接続部124aが露出する領域以外の部分が、消毒液に対する耐久性を有する材料で形成されている。
また、箱体21は、少なくとも前面部211が、放射線の透過を邪魔しない材料で形成されている。
この消毒液に対する耐久性を有し、且つ放射線の透過を邪魔しない材料には、樹脂を含む材料と、上記金属を含む材料と、がある。
【0031】
樹脂を含む材料には、例えば、炭素繊維強化樹脂P
C(Carbon Fiber Reinforced Plastic:CFRP)、ガラス繊維強化樹脂P
G(Glass Fiber Reinforced Plastic:GFRP)等が含まれる。
樹脂を含む材料P
C,P
Gで形成された箱体21は、耐腐食性金属M
Rで形成された場合と同様、表層部だけでなく厚さ方向内部まで(例えば
図3(a)に示すように全体に亘って)樹脂を含む材料P
C,P
Gが存在する。
【0032】
[2-3.蓋体の材質]
本実施形態に係る蓋体22(背面部221)は、全体が、消毒液に対する耐久性を有する材料で形成されている。
蓋体22を形成する材料には、上記炭素繊維強化樹脂、上記ガラス繊維強化樹脂、上記耐腐食性金属、上記複合材料等が含まれる。
なお、蓋体22は、箱体21と同一の材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよい。
なお、樹脂を含む材料で蓋体22を形成する場合には、繊維が短く切断された(シート状又は長い紐状になっていない)ものを用いるのが好ましい。このようにすれば、ユーザーが指をかけるための凹部や、蓋体22を箱体21に固定するためのネジ孔の形成を容易に行うことができる。
【0033】
<3.作用・効果>
以上説明してきた撮影装置100は、放射線検出部1と、筐体2と、を備え、筐体2の所定領域(操作部213が設けられた領域、及び接続部124aが露出する領域のうちの少なくとも一方の領域)以外の部分は、消毒液に対する耐久性を有する材料(炭素繊維強化樹脂、ガラス繊維強化樹脂、耐腐食性金属、複合材料等)で形成されている。
こうした材料で形成された筐体2は、次亜塩素酸ナトリウム等の従来よりも消毒効果が高い消毒液を用いて清拭されても腐食しないので、例えば、筐体2と放射線検出部1との導通をとれなくなる等の問題が生じない。
このため、撮影装置100によれば、従来よりも消毒効果が高い消毒液を用いて消毒がなされるような環境下で撮影装置100を使用する場合であっても、当該撮影装置100が生成する放射線画像の画質が低下することがなくなる。
【0034】
特に、消毒液に対する耐久性を有する材料を炭素繊維強化樹脂、ガラス繊維強化樹脂、耐腐食性金属等とすれば、筐体2の表面以外(内部)も消毒液に対する耐久性を有することになるため、例えば、筐体2表面の微細な穴から消毒液が入り込み、筐体2が内部から腐食してしまうといったことを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0035】
100 放射線撮影装置
1 放射線検出部
11 基板
11a 素子形成面
111 半導体素子
11b 部品搭載面
12 電子部品
121 電源回路
122 走査回路
123 読み出し回路
124 通信回路
124a 接続部
125 制御回路
2 筐体
21 箱体
211 前面部
211a 放射線入射面
212 側面部
212a 開口
213 操作部
22 蓋体
221 背面部
100A 放射線撮影装置
2A 筐体
21A 筒体
214 背面部
215 側面部
22A 蓋体
C 複合材料
F 保護膜
M 金属
MR 耐腐食性金属
PC 炭素繊維強化樹脂
PG ガラス繊維強化樹脂