(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】細胞ピッキング装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/26 20060101AFI20250109BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C12M1/26
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2021045154
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】武田 明莉
(72)【発明者】
【氏名】細野 凌
(72)【発明者】
【氏名】和田 康佑
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 純
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/176093(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/019625(WO,A1)
【文献】特開2007-041468(JP,A)
【文献】特開2007-161389(JP,A)
【文献】特開2010-279197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料容器内の試料から細胞を吸引するための細胞ピッキング装置であって、
ピペットチップが取り付け可能な吸引アームを駆動するモータと、
前記モータの動作を検知する検知部と、
を備え、
前記検知部は、
前記モータにより回転駆動する回転軸と、
前記回転軸に取り付けられ前記回転軸と一体となって回転する回転盤と、
前記回転盤の近傍に設けられるセンサと、
を含み、
前記回転盤は、前記回転盤の周方向に等間隔で設けられる複数のスリット、
を有し、
前記センサは、前記複数のスリットを検知することにより、前記モータの脱調の有無を検知し、
前記複数のスリットのうちの1つのスリットは、他のスリットとは周方向の幅が異なる初期位置検知用スリットであり、前記センサは、前記初期位置検知用スリットを検知することにより、前記モータの初期位置を検知する、細胞ピッキング装置。
【請求項2】
前記検知部は、前記センサにより検知した前記初期位置検知用スリットを含む前記複数のスリットの数に基づいて、前記モータの脱調の有無を検知する、請求項1に記載の細胞ピッキング装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記センサにより検知した前記初期位置検知用スリットの周方向の幅に基づいて、前記モータの初期位置を検知する、請求項1または請求項2に記載の細胞ピッキング装置。
【請求項4】
前記複数のスリットは、前記回転盤の外周端部に設けられる、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の細胞ピッキング装置。
【請求項5】
前記センサは、前記回転盤の一の面に対向する投光部と、前記回転盤の他の面に対向する受光部とを備える、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の細胞ピッキング装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記回転盤の第1の方向への回転により前記検知したスリットの周方向の幅を算出し、前記検知したスリットの周方向の幅が前記初期位置検知用スリットの幅と一致するとき、前記検知したスリットが前記初期位置検知用スリットであると判断する、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の細胞ピッキング装置。
【請求項7】
前記複数のスリットのうちの1つのスリットは、前記初期位置検知用スリットおよび他のスリットとは周方向の幅が異なる補助スリットであり、前記センサは、前記補助スリットを検知することにより、前記モータの補助位置を検知する、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の細胞ピッキング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞ピッキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養容器等の容器から特定の細胞を吸引する場合、作業者は、顕微鏡により対象の細胞の位置を確認しながらピペット等の吸引器具を用いて手作業で細胞を吸引する。しかしながら、このような作業は熟練を要するため、熟練していない作業者にとって細胞の吸引作業は容易ではない。下記特許文献1では、細胞の吸引作業を支援する細胞吸引システムが提案されている。
【0003】
特許文献1に記載された細胞吸引システムにおいては、容器に収納された細胞を吸引する管状のチップが吸引部に取り付けられる。チップの先端部が特定の細胞に近接するように吸引部が搬送部により3次元的に位置調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたような細胞吸引システムにおいては、チップが取り付けられた吸引部を移動させるための駆動部としてモータが必要である。細胞吸引システムは、微細なサイズの細胞の吸引作業を行うため、モータによる吸引部の動作には高い精度が求められる。
【0006】
本発明の目的は、モータの動作の正確性を確認することが可能な細胞ピッキング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に従う細胞ピッキング装置は、試料容器内の試料から細胞を吸引するための細胞ピッキング装置であって、ピペットチップが取り付け可能な吸引アームを駆動するモータと、モータの動作を検知する検知部とを備える。検知部は、モータにより回転駆動する回転軸と、回転軸に取り付けられ回転軸と一体となって回転する回転盤と、回転盤の近傍に設けられるセンサとを含む。回転盤は、回転盤の周方向に等間隔で設けられる複数のスリットを有する。センサは、複数のスリットを検知することにより、モータの脱調の有無を検知する。複数のスリットのうちの1つのスリットは、他のスリットとは周方向の幅が異なる初期位置検知用スリットであり、センサは、初期位置検知用スリットを検知することにより、モータの初期位置を検知する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、モータの動作の正確性を確認することが可能な細胞ピッキング装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る細胞ピッキング装置の構成を示す模式図である。
【
図2】本実施の形態に係るモータおよび検知部を示す側面図である。
【
図5】初期位置検知の処理を示すフローチャートである。
【
図6】他の実施の形態に係る検知部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態に係る細胞ピッキング装置について説明する。
【0011】
(1)細胞ピッキング装置の構成
以下、本発明の実施の形態に係る細胞ピッキング装置100について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る細胞ピッキング装置100の構成を示す模式図である。
図1に示すように、細胞ピッキング装置100は、吸引部10、観察部40および制御部50を備える。吸引部10は、吸引アーム11、駆動部20および検知部30を備える。また、細胞ピッキング装置100には、試料容器41およびピペットチップラック60が与えられる。
【0012】
試料容器41は、例えばシャーレであり、細胞を含む試料を収容する。吸引アーム11が試料容器41に近づくことで、細胞の吸引動作が行われる。ピペットチップラック60は、複数の交換用ピペットチップ61を保持する。吸引アーム11がピペットチップラック60に近づくことで、交換用ピペットチップ61の交換動作が行われる。
【0013】
吸引部10は、ピペット型の吸引アーム11を含む。吸引アーム11の先端には、ピペットチップラック60に保持されたいずれかの交換用ピペットチップ61が取り付けられる。以下、吸引アーム11に取り付けられた交換用ピペットチップ61を単にチップ12と呼ぶ。吸引部10は、チップ12を通して試料容器41内の細胞を吸引し、図示しない培養プレートのウェル等に吸引した細胞を吐出する。その後、新たな交換用ピペットチップ61および新たなウェルを用いて同様の動作が繰り返される。
【0014】
駆動部20は、吸引アーム11を3次元方向に移動させるためのモータ21を備える。
図1において、位置関係を明確にするために互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印が付されている。X方向およびY方向は水平面内で直交し、Z方向は上下方向に相当する。モータ21は、例えば、吸引アーム11を水平面内(XY平面内)で所定の軸を中心に回転移動させるためのモータを含む。また、モータ21は、例えば、吸引アーム11を鉛直面内(XZ平面内)で所定の軸を中心に回転移動させるためのモータを含む。また、モータ21は、例えば、吸引アーム11を鉛直方向(Z方向)に進退させるためのモータを含む。モータ21としては、例えば、ステッピングモータが使用される。検知部30は、モータ21の脱調および初期位置を検知するための機能部である。
【0015】
観察部40は、試料容器41が載置されるステージを備える。観察部40は、ステージ上の試料容器41を照明する機能を備える。観察部40は、また、試料容器41内の試料を顕微鏡により拡大しつつ観察するための機能、試料容器41内の試料を拡大しつつ撮像する機能を備える。
【0016】
制御部50は、CPU(中央演算処理装置)およびメモリ等を含む。制御部50は、吸引部10および観察部40を制御する。制御部50は、吸引部10の駆動部20を制御することにより、吸引アーム11を3次元方向に移動させる。制御部50は、観察部40を制御することにより、観察部40が備える顕微鏡により拡大された試料の画像を取得する。また、制御部50は、観察部40を制御することにより、観察部40において撮像された試料の画像を取得する。表示部51は、例えばLCD(液晶ディスプレイ)パネルを含み、観察部40より取得された画像等を表示する。操作部52は、ユーザの操作を受け付ける。ユーザは操作部52を操作することにより、制御部50に対して吸引アーム11の動作指示を与えることができる。
【0017】
(2)検知部の構成
次に、
図2~
図4を参照しながら検知部30の構成について説明する。
図2は、本実施の形態に係るモータ21および検知部30を示す側面図である。
図2~
図4において、位置関係を明確にするために互いに直交するX1方向、Y1方向およびZ1方向を示す矢印が付されている。
図2~
図4のX1,Y1,Z1方向は、
図1のX,Y,Z方向と一致する場合もあり、一致しない場合もある。モータ21の取り付け態様に応じて、両者の方向の関係が決まる。便宜上、Z1方向を検知部30の上下方向として説明する。
【0018】
検知部30は、回転軸31、回転盤32およびセンサ33を備える。回転軸31は、モータ21の回転出力により駆動する軸である。回転盤32は、回転軸31に固定されている。回転盤32は例えば金属製の円盤である。回転盤32は、モータ21の駆動により回転軸31と一体的に回転する。センサ33は、回転盤32の外周端部を挟み込むように配置されている。センサ33は、吸引部10が備える所定の部材34に固定されている。センサ33は、第1部材331および第2部材332を有する。第1部材331および第2部材332が、回転盤32の外周端部を上下から挟み込んでいる。第1部材331および第2部材332の一方は光を発する投光部を備え、他方は投光部から発せられた光を受光する受光部を備える。つまり、センサ33は、回転盤32の一の面に対向する投光部と、回転盤32の他の面に対向する受光部とを備える。センサ33は、投光部から発せられた光の受光部における受光の有無を判断することで、第1部材331および第2部材332の間の物体を検知することが可能である。このように本実施の形態においてはセンサ33として光電センサを用いている。光電センサの光源としては、例えば、可視光線、赤外線などを用いることができる。
【0019】
図3は、検知部30の平面図である。
図3に示すように、回転盤32の外周端部には、複数のスリットSLが設けられている。複数のスリットSLは、複数の脱調検知用スリットSL1と1つの初期位置検知用スリットSL2とを含んでいる。
図3で示した例では、7個の脱調検知用スリットSL1が設けられている。なお、初期位置検知用スリットSL2も、脱調検知用のスリットとして機能する。
【0020】
複数のスリットSLは、回転盤32の外周上に等間隔で配置されている。具体的には、各スリットSLの周方向での中心位置が等間隔となっている。また、隣り合う2つの脱調検知用スリットSL1間の周方向での間隔も等しくなっている。
図3に示すように、脱調検知用スリットのスリット幅はK1であり、初期位置検知用スリットSL2のスリット幅はK2である。スリット幅K1,K2は、回転盤32の周方向の幅である。ここで、K1<K2であり、初期位置検知用スリットSL2のスリット幅K2は、脱調検知用スリットSL1のスリット幅K1より大きい。K1とK2とは異なる幅であればよいので、K1>K2であってもよい。
【0021】
図3に示すように、回転盤32の外周端部にはセンサ33が位置している。
図3は、回転盤32の平面図であるので、回転盤32の上方に位置しているセンサ33の第1部材331が描かれている。センサ33の第2部材332は回転盤32の背面側に位置している。
図3では、センサ33が、1つの脱調検知用スリットSL1と重なっている状態を示している。検知部30は、以上の構成を備えることにより、次に説明する脱調検知および初期位置検知を行う。
【0022】
(3)脱調検知
検知部30によるモータ21の脱調検知の方法について説明する。制御部50は、パルス信号をモータ21に与えることにより、モータ21を駆動する。モータ21が駆動すると、回転軸31を回転中心として回転盤32が回転する。回転盤32が回転すると、
図3で示すように、センサ33の第1部材331および第2部材332の間を、回転盤32の外周部が通過する。センサ33は、第1部材331および第2部材332の間を通過するスリットSLを検知する。つまり、センサ33は、第1部材331および第2部材332の間を通過する脱調検知用スリットSL1および初期位置検知用スリットSL2を検知する。
【0023】
制御部50は、センサ33からスリットSLの検知情報を取得する。制御部50は、モータ21にパルス信号を与えている間に検知されたスリットSLの数をカウントする。制御部50は、モータ21に与えたパルス数とスリットSLの検知数に基づいて、モータ21が脱調しているか否かを判定する。つまり、モータ21が正確に動作している場合には、与えられるパルス数とモータの回転角度との関係が決まる。制御部50は、検知したスリットSLの数から算出されるモータの回転角度が、パルス数に応じた回転角度と一致するか否かにより、モータ21の脱調の有無を判定することができる。
【0024】
なお、初期位置検知用スリットSL2のスリット幅K2は、脱調検知用スリットSL1のスリット幅K1と異なるが、制御部50は、スリットSLの検知数のみをカウントする。したがって、初期位置検知用スリットSL2も、脱調検知用のスリットとして用いられる。
【0025】
(4)初期位置検知
次に、検知部30によるモータ21の初期位置検知の方法について説明する。
図4は、検知部30の一部拡大平面図である。
図4は、回転盤32の平面図であり、初期位置検知用スリットSL2を拡大した図である。
図5は、初期位置検知の方法を示すフローチャートである。まず、
図5に示すステップS1において、制御部50は、回転盤32を
図4に示すR1方向に回転させ、P1-P2間のパルス数を取得する。具体的には、制御部50は、回転盤32をR1方向に回転させ、センサ33がスリットSLを検出したか否かを判定する。
図4の例では、センサ33が位置P1を通過した直後にスリットSLを検出する。その後、制御部50は、センサ33が回転盤32を検出したか否かを判定する。
図4の例では、センサ33が位置P2に到達した直後に回転盤32を検出する。そして、制御部50は、センサ33の検知位置が位置P1から位置P2まで移動する間に出力したパルス信号のパルス数を取得する。
【0026】
次に、ステップS2において、制御部50は、ステップS1で検知したスリットSLが初期位置検知用スリットSL2であるか否かを判定する。制御部50は、ステップS1で取得したパルス数からスリットSLのスリット幅を求め、そのスリット幅が、初期位置検知用スリットSL2のスリット幅K2に一致するか否かを判定する。検知したスリットSLが初期位置検知用スリットSL2であると判定された場合、処理はステップS3へ移行する。検知したスリットSLが初期位置検知用スリットSL2でない場合には、ステップS1に戻り、次のスリットSLの検知を行う。
【0027】
ステップS3において、制御部50は、センサ33が位置P2を検知している状態の回転盤32をR2方向に回転させる。そして、制御部50は、センサ33が位置P3を検知した時点で回転盤32を停止させる。このときに回転盤32を回転させるためのパルス数は予め設定されている。ステップS4において制御部50は、停止位置において、スリットSL2を検知したか回転盤32を検知したかの判定を行う。停止位置において回転盤32が検知された場合、ステップS5において、制御部50は、回転盤32をR1方向に回転させ、センサ33が位置P1を検知した時点で回転盤32を停止させる。つまり、モータ21は脱調していないと判定されるので、モータ21を初期位置でスタンバイさせる。これによりモータ21の回転方向をP1からP2に向かう方向(次に回転駆動する方向)に合わせた上でモータ21が停止する。ステップS4において、停止位置においてスリットSL2が検知されたと判定された場合、ステップS6において、制御部50は、モータ21の脱調が発生していると判定し、処理を終了する。制御部50は、例えば、表示部51にモータ21が脱調している旨のメッセージを表示する。
【0028】
以上説明したように、本実施の形態の回転盤32には、回転盤32の周方向に等間隔で複数のスリットSLが設けられる。回転盤32が備える複数のスリットSLのうちの1つのスリットSLは、他のスリットSLとは周方向の幅が異なる初期位置検知用スリットSL2である。センサ33は、初期位置検知用スリットSL2を検知することにより、モータ21の初期位置を検知可能である。また、センサ33が検知したスリットSLの数をカウントすることにより、モータ21の脱調の有無を検知可能である。
【0029】
本実施の形態の細胞ピッキング装置100は、1枚の回転盤32および1個のセンサ33により、モータ21の脱調検知および初期位置検知が可能である。脱調検知用および初期位置検知用に個別に回転盤およびセンサを設ける場合と比べて、装置構成を小さくすることができるとともに、装置コストを小さくすることができる。脱調検知用および初期位置検知用に個別に回転盤およびセンサを設ける場合には、これらの部材が干渉しないように位置の調整を行う必要があり、装置構成が大きくなるが、本実施の形態の検知部30は、コンパクトな構成とすることができる。また、本実施の形態において、スリットSLの幅を変えることで脱調検知および初期位置検知を行うことが可能であり、両検知を行うために装置の仕組みが複雑とならない。
【0030】
(5)他の実施の形態
図6は、他の実施の形態に係る回転盤32Aを示す平面図である。回転盤32Aには、上記実施の形態と同様、周方向に等間隔に複数のスリットSLが設けられている。また、上記実施の形態と同様、複数のスリットSLの中の1つは、スリット幅K2を有する初期位置検知用スリットSL2である。回転盤32Aは、
図3の回転盤32と異なり、初期位置検知用スリットSL2の対向側(180度反転側)に補助スリットSL3が設けられている。補助スリットSL3のスリット幅K3は、K1より大きく、K2より小さい。回転盤32A以外の構成は、
図1~
図5を用いて説明した上記の実施の形態の細胞ピッキング装置100と同様である。回転盤32Aを有する検知部30を利用することにより、検知部30は、補助スリットSL3を用いて初期位置以外の別の位置を検知可能である。
図6の例では、初期位置から180度反転した位置を検知可能である。つまり、初期位置を含めモータ21の2つの回転位置を検知可能である。さらに、スリットSLの中にスリット幅の異なるスリットSLを含めることにより、モータ21の3か所以上の回転位置を検知可能である。
【0031】
上記実施の形態において、回転盤32の各スリットを検知するセンサ33として光電センサを例に挙げて説明したが、センサの種類は特に限定されるものではない。他にも、レーザセンサ、近接センサなどを利用可能である。また、上記実施の形態において、センサ33として透過型の光電センサを用いたが、反射型の光電センサを用いてもよい。
【0032】
上記実施の形態において、モータ21は、吸引アーム11をXY平面内で回転させるモータ、吸引アーム11をXZ平面内で回転させるモータ、または、吸引アーム11をZ方向に進退させるモータのいずれかである場合を例に説明した。本実施の形態の検知部30は、吸引アーム11を移動させるためのいずれかのモータに適用してもよいし、複数のモータに適用させてもよい。
【0033】
(6)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。上記の実施の形態では、R1方向が第1の方向の例であり、R2方向が第2の方向の例である。また、上記の実施の形態では、補助スリットSL3により検知されるモータ21の回転位置が、補助位置の例である。
【0034】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する種々の要素を用いることもできる。
【0035】
(7)態様
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0036】
(第1項)
試料容器内の試料から細胞を吸引するための細胞ピッキング装置であって、
ピペットチップが取り付け可能な吸引アームを駆動するモータと、
前記モータの動作を検知する検知部と、
を備え、
前記検知部は、
前記モータにより回転駆動する回転軸と、
前記回転軸に取り付けられ前記回転軸と一体となって回転する回転盤と、
前記回転盤の近傍に設けられるセンサと、
を含み、
前記回転盤は、前記回転盤の周方向に等間隔で設けられる複数のスリット、
を有し、
前記センサは、前記複数のスリットを検知することにより、前記モータの脱調の有無を検知し、
前記複数のスリットのうちの1つのスリットは、他のスリットとは周方向の幅が異なる初期位置検知用スリットであり、前記センサは、前記初期位置検知用スリットを検知することにより、前記モータの初期位置を検知する。
【0037】
モータの動作の正確性を確認することが可能な細胞ピッキング装置を提供することができる。
【0038】
(第2項)
第1項に記載の細胞ピッキング装置であって、
前記検知部は、前記センサにより検知した前記初期位置検知用スリットを含む前記複数のスリットの数に基づいて、前記モータの脱調の有無を検知してもよい。
【0039】
初期位置検知用スリットを脱調検知にも利用できる。
【0040】
(第3項)
第1項または第2項に記載の細胞ピッキング装置であって、
前記検知部は、前記センサにより検知した前記初期位置検知用スリットの周方向の幅に基づいて、前記モータの初期位置を検知してもよい。
【0041】
スリットの幅の違いを利用してモータの初期位置を検知可能である。
【0042】
(第4項)
第1項~第3項のいずれか一項に記載の細胞ピッキング装置であって、
前記複数のスリットは、前記回転盤の外周端部に設けられてもよい。
【0043】
回転盤の外周部にセンサを配置することができる。
【0044】
(第5項)
第1項~第4項のいずれか一項に記載の細胞ピッキング装置であって、
前記センサは、前記回転盤の一の面に対向する投光部と、前記回転盤の他の面に対向する受光部とを備えてもよい。
【0045】
投光部および受光部の間にある回転盤および回転盤のスリットを検知可能である。
【0046】
(第6項)
第1項~第5項のいずれか一項に記載の細胞ピッキング装置であって、
前記検知部は、前記回転盤の第1の方向への回転により前記検知したスリットの周方向の幅を算出し、前記検知したスリットの周方向の幅が前記初期位置検知用スリットの幅と一致するとき、前記検知したスリットが前記初期位置検知用スリットであると判断してもよい。
【0047】
初期位置検知の処理においても、脱調を検知可能である。
【0048】
(第7項)
第1項~第6項のいずれか一項に記載の細胞ピッキング装置であって、
前記複数のスリットのうちの1つのスリットは、前記初期位置検知用スリットおよび他のスリットとは周方向の幅が異なる補助スリットであり、前記センサは、前記補助スリットを検知することにより、前記モータの補助位置を検知してもよい。
【0049】
スリットの幅の違いを利用して、モータの複数の回転位置を検知可能である。
【符号の説明】
【0050】
10…吸引部、11…吸引アーム、12…ピペットチップ、20…駆動部、21…モータ、30…検知部、31…回転軸、32…回転盤、33…センサ、331…第1部材、332…第2部材、40…観察部、50…制御部、100…細胞ピッキング装置