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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ステープラ
(51)【国際特許分類】
   B25C 5/02 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
B25C5/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021069383
(22)【出願日】2021-04-15
(65)【公開番号】P2022164105
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木甲斐 智明
(72)【発明者】
【氏名】永田 智一
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-230482(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0145093(US,A1)
【文献】実開平03-036779(JP,U)
【文献】実開昭62-035780(JP,U)
【文献】特開2005-193316(JP,A)
【文献】実開平01-087878(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C 5/00 - 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針を打ち出す針打ち出し部と、
前記針打ち出し部で打ち出された針の針足を曲げる針足曲げ部と、
前記針打ち出し部と前記針足曲げ部を、相対的に近づく方向及び離れる方向に移動可能に連結する連結部とを備え、
前記針足曲げ部は、
針足を曲げるガイド面を有したクリンチャと、
前記針打ち出し部との間に用紙を挟持する挟持部と、前記挟持部に前記ガイド面を露出させる開口部を含み、前記針打ち出し部が前記針足曲げ部に近づく方向である第1の方向に移動可能に支持されるクリンチャガイドと、
前記第1の方向に対して交する第2の方向に沿って移動可能に支持され、前記クリンチャガイドの第1の方向への移動を規制する第1位置と、前記クリンチャガイドの前記第1の方向への移動の規制を解除する第2位置との間で移動可能なスライダと、
前記第1の方向に沿って移動可能に支持され、前記第1の方向に移動することで前記スライダを前記第2位置に移動させるクリンチャスイッチとを有し、
前記針打ち出し部は、前記クリンチャスイッチを前記第1の方向に押圧する押圧部を有し、
前記クリンチャスイッチは、前記クリンチャを挟んで前記連結部と反対側に位置し、前記針打ち出し部方向に突出し、用紙を介して前記押圧部に押される被押圧部と、前記第1の方向に移動する動作で前記スライダを前記第2の方向に押す作用部を有し、
前記スライダは、前記作用部に押される被作用部と、前記第2の方向に沿って移動する係止部を有し、
前記クリンチャガイドは、前記係止部と係止する被係止部と、前記第2の方向に沿って前記被係止部に隣接して設けられ、前記係止部が入る退避部とを有し、前記係止部が前記退避部に入ることで、前記第1の方向に沿って前記針打ち出し部方向とは反対方向に移動する
ステープラ。
【請求項2】
前記クリンチャスイッチの前記作用部と前記スライダの前記被作用部の一方が、前記第1の方向に対して傾斜した斜面で構成される
請求項1に記載のステープラ。
【請求項3】
前記スライダが第1位置に移動することで、前記スライダの前記係止部が、前記クリンチャガイドの前記被係止部に係止する位置にあり、前記クリンチャスイッチの前記被押圧部が、前記クリンチャガイドの前記挟持部より前記針打ち出し部方向に突出する待機位置に前記クリンチャスイッチが位置するとき、前記クリンチャスイッチの前記作用部が前記スライダの前記被作用部から離れる
請求項1または請求項2に記載のステープラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針で用紙を綴じるステープラに関する。
【背景技術】
【0002】
コ字状に成形されたステープルと称す針の針足を、用紙を貫通させて用紙の裏面側で折り曲げして用紙を綴じるようにしたステープラでは、針を収納するマガジンと、マガジン内に収納された針を用紙に向けて打ち出すドライバを備えたハンドル部及びマガジンから打ち出されて用紙を貫通した針の針足を屈曲させるクリンチャを備えたクリンチャ部とがそれぞれの後端部において回動自在に支持されて構成されている。
【0003】
そして、針の針足が用紙を貫通した後に、針足を用紙の裏面に沿わせて密着するように折り曲げるようにしたフラットクリンチと称すステープラにおいては、クリンチャ部が、針の針足が用紙を貫通し、針クラウンが用紙に接するまでの間、用紙をクリンチャに対して上方位置に支持させておくための用紙載置部材や、この用紙載置部材を上方位置に保持させるスライダを有しており、これらの部品がクリンチャアームに組み付けられて構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、フラットクリンチと称すステープラにおいては、スライダを直線動作で移動させるリンクがハンドル部に設けられる。リンクは、クリンチャが設けられる位置と、ハンドル部とクリンチャ部が連結される後端部との間で、ハンドル部からクリンチャ部へと延伸し、ハンドル部の動きをスライダに伝達して、スライダを作動させる。
【0005】
また、直線動作で移動する規制片(スライダに相当)と、上操作枠(ハンドル部に相当)に押されて作動する駆動片(リンクに相当)が、軸を介して連結される構成も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
このような従来のステープラにおいては、クリンチャが設けられる位置と、ハンドル部とクリンチャ部が連結される後端部との間に、ハンドル部からクリンチャ部へとリンク等の伝達部材が延伸する。このため、リンクを超えて後端部方向へ用紙を挿入できないことから、用紙の中央付近を綴じる中綴じと称す形態のステープラに適用することが不向きである。
【0007】
そこで、軸を支点に回転し、スライダの機能を持つL字型本体を、用紙を介して押す構成としたことで中綴じに適用可能なステープラが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-311647号公報
【文献】実開平4-23270号
【文献】特許第5065411号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3では、L字型本体は、用紙に押される部位と、底部の上部材の作動の有無を切り替えるスライダとしての機能を持つ部位が一体に構成され、軸を支点に回転する。しかし、L字型本体は回転動作の繰り返しにより軸及び軸を受ける部位が摩耗しやすく、軸及び軸を受ける部位が摩耗すると、スライダとしての機能を持つ部位の移動量が規定の範囲からずれ、底部の上部材が作動するタイミングがずれる作動不良を起こす可能性があった。このため、L字型本体を樹脂で形成すると、ステープラの耐久性が低下し、金属で形成するとステープラが高コストとなってしまう。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、耐久性を向上させたステープラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため、本発明は、針を打ち出す針打ち出し部と、針打ち出し部で打ち出された針の針足を曲げる針足曲げ部と、針打ち出し部と針足曲げ部を、相対的に近づく方向及び離れる方向に移動可能に連結する連結部とを備え、針足曲げ部は、針足を曲げるガイド面を有したクリンチャと、針打ち出し部との間に用紙を挟持する挟持部と、挟持部にガイド面を露出させる開口部を含み、針打ち出し部が針足曲げ部に近づく方向である第1の方向に移動可能に支持されるクリンチャガイドと、第1の方向に対して交する第2の方向に沿って移動可能に支持され、クリンチャガイドの第1の方向への移動を規制する第1位置と、クリンチャガイドの第1の方向への移動の規制を解除する第2位置との間で移動可能なスライダと、第1の方向に沿って移動可能に支持され、第1の方向に移動することでスライダを第2位置に移動させるクリンチャスイッチとを有し、針打ち出し部は、クリンチャスイッチを第1の方向に押圧する押圧部を有し、クリンチャスイッチは、クリンチャを挟んで連結部と反対側に位置し、針打ち出し部方向に突出し、用紙を介して押圧部に押される被押圧部と、第1の方向に移動する動作でスライダを第2の方向に押す作用部を有し、スライダは、作用部に押される被作用部と、第2の方向に沿って移動する係止部を有し、クリンチャガイドは、係止部と係止する被係止部と、第2の方向に沿って被係止部に隣接して設けられ、係止部が入る退避部とを有し、係止部が退避部に入ることで、第1の方向に沿って針打ち出し部方向とは反対方向に移動するステープラである。
【0013】
本発明では、用紙が挟持部に置かれ、針打ち出し部と針足曲げ部が相対的に近づく方向に移動すると、針打ち出し部の押圧部が用紙に接し、用紙を介してクリンチャスイッチの被押圧部が第1の方向に押される。
【0014】
クリンチャスイッチが第1の方向に移動すると、作用部がスライダの被作用部を押し、スライダが第2の方向に押される。スライダが第2の方向に移動すると、スライダの係止部がクリンチャガイドの被係止部と対向する位置から、退避部と対向する位置に移動し、クリンチャガイドが第1の方向に移動可能となる。
【0015】
これにより、クリンチャガイドは、用紙を介して挟持部が押され、第1の方向に移動する。クリンチャガイドが第1の方向に移動するのに伴い、用紙を貫通した針の針足がクリンチャのガイド面に押し付けられ、一対の針足が互いに内側に向けて折り曲げられて用紙を綴じる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、用紙に押されるクリンチャスイッチと、クリンチャガイドを作動させるスライダが別部品で構成されることで、互いが直線動作で移動する構成とすることができ、回転動作で移動する構成と比較して、連続使用下での各部品の摩耗が抑制され、ステープラの耐久性が向上する。
【0017】
また、本発明によれば、用紙の一方の端部から他方の端部の間の中央付近を針で綴じる中綴じの形態で、用紙を貫通した針足が、用紙の裏面に沿わせて密着するような形態で折り曲げられて用紙を綴じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】本実施の形態のステープラの一例を示す要部側断面図である。
図1B】本実施の形態のステープラの一例を示す全体側断面図である。
図1C】本実施の形態のステープラの一例を示す全体側面図である。
図1D】本実施の形態のステープラの一例を示す全体上面図である。
図1E】本実施の形態のステープラの一例を示す全体下面図である。
図1F】本実施の形態のステープラの一例を示す全体斜視図である。
図2】本実施の形態のステープラで使用される針の一例を示す説明図である。
図3A】本実施の形態のステープラの動作の一例を示す要部側断面図である。
図3B】本実施の形態のステープラの動作の一例を示す要部側断面図である。
図4A】本実施の形態のステープラの動作の一例を示す要部正面図である。
図4B】本実施の形態のステープラの動作の一例を示す要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明のステープラの実施の形態について説明する。
【0020】
<本実施の形態のステープラの構成例>
図1Aは、本実施の形態のステープラの一例を示す要部側断面図、図1Bは、本実施の形態のステープラの一例を示す全体側断面図である。また、図1Cは、本実施の形態のステープラの一例を示す全体側面図、図1Dは、本実施の形態のステープラの一例を示す全体上面図、図1Eは、本実施の形態のステープラの一例を示す全体下面図、図1Fは、本実施の形態のステープラの一例を示す全体斜視図である。更に、図2は、本実施の形態のステープラで使用される針の一例を示す説明図である。
【0021】
ステープラ1は、図2に示すようなステープルと称す針10を打ち出す針打ち出し部2と、針打ち出し部2で打ち出された針10の一対の針足11を曲げる針足曲げ部3と、針打ち出し部2と針足曲げ部3を、相対的に近づく方向及び離れる方向に移動可能に連結する連結部4とを備える。
【0022】
ステープラ1において、針打ち出し部2と針足曲げ部3が相対的な動きで近づく方向を第1の方向と称し、第1の方向に交する方向を第2の方向と称す。
【0023】
針打ち出し部2は、針10を収納するマガジン20と、マガジン20に収納された針10を打ち出すドライバ21と、ドライバ21を作動させるハンドル部22を備える。針打ち出し部2は、マガジン20とハンドル部22が、軸23を支点に回転可能に連結される。
【0024】
マガジン20は、所定本数の針10が連結された図示しない針連結体が収納可能に構成され、針連結体から分離された針10が通る針打ち出し口20aを、軸23が設けられる側と反対の前側の端部に備える。また、マガジン20は、針連結体をプッシャ20dを介してマガジン前壁20bに押し付けるバネ20cを備える。
【0025】
ドライバ21は、ハンドル部22に取り付けられ、ハンドル部22が軸23を支点に回転することで、マガジン前壁20bに沿って移動し、針連結体から1本の針10を分離し、針打ち出し口20aから打ち出す。
【0026】
針足曲げ部3は、針足11を曲げるガイド面31aを有したクリンチャ31を備える。また、針足曲げ部3は、針打ち出し部2のマガジン20との間に用紙を挟持する挟持部32aと、挟持部32aにクリンチャ31のガイド面31aを露出させる開口部32bを有するクリンチャガイド32を備える。更に、針足曲げ部3は、クリンチャガイド32の第1の方向への移動を規制する第1位置と、クリンチャガイドの第1の方向への移動の規制を解除する第2位置との間で移動可能なスライダ33と、スライダ33を第2位置に移動させるクリンチャスイッチ34を備える。
【0027】
クリンチャ31は、針10の一対の針足11を、内側に折り曲げる方向に誘導する形状の溝を有したガイド面31aが、針打ち出し部2と対向する一の向きである上向きで、針足曲げ部3の基台30に取り付けられる。
【0028】
クリンチャガイド32は、針打ち出し部2のマガジン20と対向して挟持部32aが設けられ、マガジン20の針打ち出し口20aと対向して、挟持部32aに開口部32bが設けられる。
【0029】
クリンチャガイド32は、針足曲げ部3の基台30に対して、第1の方向である矢印A1方向及び矢印A1と反対向きの矢印A2方向に、回転動作または直線動作で移動可能に支持される。
【0030】
スライダ33はクリンチャガイド作動部材の一例で、針足曲げ部3の基台30に対して、第1の方向に対して交する第2の方向である矢印B1方向及び矢印B1と反対向きの矢印B2方向に、直線動作で移動可能に支持される。
【0031】
クリンチャスイッチ34は、クリンチャ31を挟んで連結部4と反対側に設けられ、針足曲げ部3の基台30に対して、矢印A1方向(第1の方向)及び矢印A2方向に、直線動作で移動可能に支持される。
【0032】
クリンチャスイッチ34は、クリンチャガイド32の挟持部32aから針打ち出し部2の方向に突出し、用紙を介して押される被押圧部34aと、クリンチャスイッチ34が矢印A1方向に移動する動作で、スライダ33を矢印B1方向(第2の方向)に押す作用部34bを備える。作用部34bは、矢印A1、A2で示すクリンチャスイッチ34の移動方向に対して、矢印A2で示す上側がスライダ33に近く、矢印A1で示す下側がスライダ33から離れる方向に傾斜した斜面で構成される。
【0033】
スライダ33は、クリンチャスイッチ34の作用部34bに押される被作用部33aと、スライダ33が矢印B1、矢印B2方向に移動する動作で、同矢印B1、矢印B2方向に沿って移動する係止部33bを備える。
【0034】
スライダ33は、矢印B1、B2で示す移動方向に沿った一方の端部に、被作用部33aがクリンチャスイッチ34の作用部34bと対向して設けられる。また、スライダ33は、クリンチャガイド32と対向する面に、クリンチャがガイド32に向かって矢印A2方向に突出する形状の係止部33bが設けられる。
【0035】
クリンチャガイド32は、スライダ33の係止部33bと係止する被係止部32cと、スライダ33の係止部33bが入る退避部32dを備える。
【0036】
クリンチャガイド32は、スライダ33と対向する面に、スライダ33に向かって矢印A1方向に突出する形状の被係止部32cが設けられる。また、クリンチャガイド32は、スライダ33と対向する面に、被係止部32cが突出する矢印A1方向と反対向きの矢印A2方向に凹状となる退避部32dが、矢印B1方向に沿って被係止部32cに隣接して設けられる。
【0037】
クリンチャガイド32は、挟持部32aが針打ち出し部2に近づく矢印A2方向へバネ32eで付勢される。スライダ33は、被作用部33aがクリンチャスイッチ34の作用部34bに近づく矢印B2方向へバネ33cで付勢される。クリンチャスイッチ34は、被押圧部34aがクリンチャガイド32の挟持部32aから針打ち出し部2の方向に突出する矢印A2方向へバネ34cで付勢される。
【0038】
クリンチャガイド32は、挟持部32aが針打ち出し部2に近づく矢印A2方向へバネ32eで付勢され、被係止部32cがスライダ33の係止部33bに係止した状態をクリンチャガイド32の待機位置と称す。
【0039】
スライダ33は、被作用部33aがクリンチャスイッチ34の作用部34bに近づく矢印B2方向へバネ33cで付勢され、係止部33bがクリンチャガイド32の被係止部32cと対向する位置に移動して、係止部33bが被係止部32cに係止し、クリンチャガイド32の第1の方向への移動を規制する第1位置を、スライダ33の待機位置と称す。
【0040】
クリンチャスイッチ34は、被押圧部34aがクリンチャガイド32の挟持部32aから針打ち出し部2の方向に突出する矢印A2方向へバネ34cで付勢され、作用部34bがスライダ33の被作用部33aを押していない状態、本例では、作用部34bが被作用部33aから離れた状態をクリンチャスイッチ34の待機位置と称す。
【0041】
針打ち出し部2は、クリンチャスイッチ34を作動させる押圧部24を備える。押圧部24は、針足曲げ部3の方向に突出する形状で、クリンチャスイッチ34の被押圧部34aと対向してハンドル部22に設けられる。
【0042】
ステープラ1は、針打ち出し部2と連結部4が連結部材25で連結され、針足曲げ部3と連結部4が連結部材35で連結される。ステープラ1は、本例では連結部材25が撓むことで、針打ち出し部2と針足曲げ部3が、相対的に近づく方向及び離れる方向に移動する。ステープラ1は、所謂中綴じの形態で用紙を綴じられるようにするため、針打ち出し部2と針足曲げ部3の間に入れられた用紙の一方の端部から他方の端部の間の中央付近にクリンチャ31が対向するように、用紙の綴じ位置となるクリンチャ31と、連結部4との間の距離Lが設定される。また、ステープラ1は、クリンチャ31と連結部4との間に、針打ち出し部2と針足曲げ部3との間を通り、動きを伝達する部材が設けられていない。
【0043】
ステープラ1は、用紙の挿入位置を規制する挿入位置規制部5を備える。挿入位置規制部5は、図1A図1Bに示すクリンチャ31の位置(綴じ位置)からの距離が近づく方向及び離れる方向に、連結部材35に沿って移動可能に支持される。用紙を挿入位置規制部5に突き当てる位置まで挿入することで、用紙の端部から綴じ位置までの距離を規定可能である。
【0044】
挿入位置規制部5は、連結部材35に対する位置を固定するダイヤル50を備える。ダイヤル50は、図示しないネジと同軸上に設けられ、連結部材35の下面側で挿入位置規制部5の左右を連結し、連結部材35の一方の側部と他方の側部に作用する作用部材51を、ネジの締結により移動させ、挿入位置規制部5の左右両側から連結部材35を挟む。これにより、1つのダイヤル50の操作で、挿入位置規制部5を連結部材35に対して固定、固定を解除する。
【0045】
ステープラ1は、綴じ位置の目標を示す位置合わせマーク6aを針打ち出し部2に備え、位置合わせマーク6bを針足曲げ部3に備える。位置合わせマーク6aは、ハンドル部22の上面に、図1A図1Bに示すクリンチャ31の位置に合わせて凹凸による立体的な表記、印刷による平面的な表記等を設けて構成される。位置合わせマーク6bは、クリンチャガイド32の左右両側で、基台30の上面に、図1A図1Bに示すクリンチャ31の位置に合わせて凹凸による立体的な表記、印刷による平面的な表記等を設けて構成される。
【0046】
<本実施の形態のステープラの動作例>
図3A図3Bは、本実施の形態のステープラの動作の一例を示す要部側断面図、図4A図4Bは、本実施の形態のステープラの動作の一例を示す要部正面図である。
【0047】
ステープラ1は、用紙Pが挟持部32aに置かれ、ハンドル部22が矢印A1方向に押されて針打ち出し部2が針足曲げ部3方向に移動すると、マガジン20が用紙Pに接する。マガジン20が用紙Pに接した状態で、ハンドル部22が更に矢印A1方向に押されると、ハンドル部22が軸23を支点にマガジン20に対して回転し、マガジン20に収納された針10がドライバ21で針打ち出し口20aから打ち出される。マガジン20が用紙Pに接した状態で、針10が針打ち出し口20aから打ち出されると、針足11が用紙Pを貫通する。そして、用紙Pを貫通した針足11が、クリンチャガイド32の開口部32bに入る。
【0048】
また、ステープラ1は、マガジン20が用紙Pに接した状態で、ハンドル部22が更に矢印A1方向に押されると、押圧部24が用紙Pに接し、用紙Pを介してクリンチャスイッチ34の被押圧部34aを矢印A1方向に押す。
【0049】
クリンチャスイッチ34は、用紙Pを介して押圧部24に押されることで、バネ34cを圧縮しながら矢印A1方向に移動する。クリンチャスイッチ34が矢印A1方向に移動すると、作用部34bがスライダ33の被作用部33aに接する。作用部34bが所定の方向に傾斜した斜面で構成されることで、作用部34bがスライダ33の被作用部33aに接した状態で、クリンチャスイッチ34が矢印A1方向に移動すると、被作用部33aを矢印B1方向に押す力が発生し、図3Aに示すように、スライダ33がバネ33cを圧縮しながら矢印B1方向に移動する。
【0050】
スライダ33が待機位置(第1位置)から第2位置まで、矢印B1方向に移動すると、係止部33bがクリンチャガイド32の被係止部32cと対向する位置から、退避部32dと対向する位置に移動する。スライダ33の係止部33bが、クリンチャガイド32の退避部32dと対向する位置に移動すると、クリンチャガイド32は、矢印A1方向に移動可能となる。
【0051】
これにより、ステープラ1は、マガジン20が用紙Pに接した状態で、ハンドル部22が更に矢印A1方向に押されると、図3Bに示すように、クリンチャガイド32は、用紙Pを介して挟持部32aが押され、バネ32eを圧縮しながら矢印A1方向に移動する。
【0052】
クリンチャガイド32が矢印A1方向に移動すると、図4Aに示すように、用紙Pを貫通した針10の針足11がクリンチャ31のガイド面31aに押し付けられ、ガイド面31aの形状により、一対の針足11が互いに内側に向けて折り曲げられる力が掛かる。これにより、図4Bに示すように、用紙Pを貫通した針足11が、用紙Pの裏面に沿わせて密着するように折り曲げられて用紙Pが綴じられる。
【0053】
ステープラ1では、用紙に押されるクリンチャスイッチ34と、クリンチャガイド32を作動させるスライダ33が別部品で構成されることで、互いが直線動作で移動する構成とすることができる。これにより、クリンチャスイッチに相当する部品とスライダに相当する部品を一体で構成し、この部品が回転動作で移動する構成と比較して、連続使用下での各部品の摩耗が抑制され、耐久性が向上する。
【0054】
また、クリンチャスイッチ34の作用部34bを斜面で構成して、スライダ33の被作用部33aが斜面に沿って移動する構成としたことで、接触する面を広くすることができ、連続使用下で部品の摩耗を抑え、耐久性能が向上する。更に、接触圧力を低くすることができることから、耐久性を落とさずに、ハンドル部22の押圧部24,クリンチャスイッチ34、スライダ33及びクリンチャガイド32をプラスチックで構成することができ、安価かつ軽量な構造を実現できる。なお、スライダ33の被作用部33aを斜面で構成しても良い。
【0055】
また、スライダ33の係止部33bが、クリンチャガイド32の被係止部32cに係止する待機位置にスライダ33が移動し、クリンチャスイッチ34の被押圧部34aが、クリンチャガイド32の挟持部32aより針打ち出し部2方向に突出する待機位置にクリンチャスイッチ34が移動すると、クリンチャスイッチ34の作用部34bがスライダ33の被作用部33aから離れる。これにより、用紙Pを介してクリンチャスイッチ34が押される初期の段階で、不用意にスライダ33が作動することを抑制でき、クリンチャガイド32が作動するタイミングがずれる作動不良を起こす可能性を低減できる。
【0056】
更に、クリンチャ31と連結部4との間に、針打ち出し部2と針足曲げ部3との間を通り、動きを伝達する部材が設けられていない。これにより、針打ち出し部2と針足曲げ部3の間に入れられた用紙の一方の端部から他方の端部の間の中央付近にクリンチャ31が対向するように、用紙の綴じ位置となるクリンチャ31と、連結部4との間の距離Lを設定することができる。従って、所謂中綴じの形態で、用紙Pを貫通した針足11が、用紙Pの裏面に沿わせて密着するように折り曲げられて用紙Pを綴じることができる。距離Lは、例えばB5サイズの用紙の縦方向の長さである257mmから、A2サイズの用紙の縦方向の長さである594mmの中央付近を綴じることができる距離に設定することで、用紙サイズに応じて中綴じの形態で用紙を綴じることが可能である。
【0057】
なお、以上説明したステープラ1は、クリンチャ31が所定の位置で固定された構成であるが、待機位置では矢印A2方向にバネで付勢されて、ガイド面31aがクリンチャガイド32の挟持部32aと略同一面に露出し、針10の針足11で押されて矢印A1方向に移動する構成でも良い。
【符号の説明】
【0058】
1・・・ステープラ、2・・・針打ち出し部、20・・・マガジン、20a・・・針打ち出し口、20b・・・マガジン前壁、20c・・・バネ、21・・・ドライバ、22・・・ハンドル部、23・・・軸、24・・・押圧部、3・・・針足曲げ部、30・・・基台、31・・・クリンチャ、31a・・・ガイド面、32・・・クリンチャガイド、32a・・・挟持部、32b・・・開口部、32c・・・被係止部、32d・・・退避部、32e・・・バネ、33・・・スライダ(クリンチャガイド作動部材)、33a・・・被作用部、33b・・・係止部、33c・・・バネ、34・・・クリンチャスイッチ、34a・・・被押圧部、34b・・・作用部、34c・・・バネ、4・・・連結部、10・・・針、11・・・針足
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
図3A
図3B
図4A
図4B